(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】喘鳴検出装置、喘鳴検出方法、及び喘鳴検出プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 7/04 20060101AFI20220531BHJP
A61B 5/08 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
A61B7/04 M
A61B5/08
(21)【出願番号】P 2018170805
(22)【出願日】2018-09-12
【審査請求日】2021-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大上 直人
(72)【発明者】
【氏名】朝井 慶
(72)【発明者】
【氏名】橋野 賢治
(72)【発明者】
【氏名】松本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】土生川 千珠
(72)【発明者】
【氏名】村上 佳津美
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-158806(JP,A)
【文献】特開2014-61223(JP,A)
【文献】国際公開第2015/011923(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 7/00-7/04
A61B 5/08-5/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の肺音を測定するための音測定部と、
前記音測定部により測定された音に基づいて、前記被測定者の呼吸音量を導出する呼吸音量導出部と、
前記音の周波数毎の強度分布から極大点を抽出し、当該極大点の情報に基づいて喘鳴を検出する喘鳴検出部と、を備え、
前記喘鳴検出部は、前記呼吸音量が予め決められた範囲外となっている場合には、前記呼吸音量が前記範囲内となっている場合よりも前記喘鳴の検出感度を高い値に設定する喘鳴検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の喘鳴検出装置であって、
前記喘鳴検出部は、前記呼吸音量が前記範囲よりも大きい場合に、前記呼吸音量が前記範囲内となっている場合よりも前記検出感度を高い値に設定する喘鳴検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の喘鳴検出装置であって、
前記喘鳴検出部は、前記呼吸音量が前記範囲よりも小さい場合に、前記呼吸音量が前記範囲内となっている場合よりも前記検出感度を高い値に設定する喘鳴検出装置。
【請求項4】
請求項2記載の喘鳴検出装置であって、
前記喘鳴検出部は、前記呼吸音量が前記範囲よりも小さい場合に、前記呼吸音量が前記範囲内となっている場合よりも前記検出感度を高い値に設定し、更に、前記呼吸音量が前記範囲よりも小さい場合と、前記呼吸音量が前記範囲よりも大きい場合とで前記検出感度を異なる値に設定する喘鳴検出装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載の喘鳴検出装置であって、
前記喘鳴検出部は、前記強度分布から予め決められた閾値を超える強度の前記極大点を抽出し、当該極大点に基づいて喘鳴を検出し、前記閾値を低くすることで前記喘鳴の検出感度を高める喘鳴検出装置。
【請求項6】
被測定者の喘鳴を検出する喘鳴検出方法であって、
被測定者の肺音を測定するための音測定部により測定された音に基づいて、前記被測定者の呼吸音量を導出する呼吸音量導出ステップと、
前記音の周波数毎の強度分布から極大点を抽出し、当該極大点の情報に基づいて喘鳴を検出する喘鳴検出ステップと、を備え、
前記喘鳴検出ステップでは、前記呼吸音量が予め決められた範囲外となっている場合には、前記呼吸音量が前記範囲内となっている場合よりも前記喘鳴の検出感度を高い値に設定する喘鳴検出方法。
【請求項7】
被測定者の喘鳴を検出する喘鳴検出プログラムであって、
被測定者の肺音を測定するための音測定部により測定された音に基づいて、前記被測定者の呼吸音量を導出する呼吸音量導出ステップと、
前記音の周波数毎の強度分布から極大点を抽出し、当該極大点の情報に基づいて喘鳴を検出する喘鳴検出ステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムであり、
前記喘鳴検出ステップでは、前記呼吸音量が予め決められた範囲外となっている場合には、前記呼吸音量が前記範囲内となっている場合よりも前記喘鳴の検出感度を高い値に設定する喘鳴検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、喘鳴検出装置、喘鳴検出方法、及び喘鳴検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロフォンを利用して肺音を電気信号として取り出すことのできる装置が知られている(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。肺音とは、肺及び胸郭内で呼吸運動とともに発生し、正常、異常とは関係なく、心血管系を音源とする音を除く全ての音である。肺音は、呼吸により気道内に生じた空気の流れを音源とする生理的な音である呼吸音と、喘鳴又は胸膜摩擦音等の病的状態で発生する異常な音である副雑音とに分類される。
【0003】
特許文献1には、気道状態を適切に反映した指標値を得ることができる生体音検査装置が記載されている。この生体音検査装置は、生体音の複数の周波数帯域について、所定の区間内の帯域パワーを算出し、広帯域のパワーの平均値を基準パワーとし、特定の帯域のパワーを基準パワーに基づいて補正して気道状態を反映した指標値を得ている。
【0004】
特許文献2には、1種類の音センサを含む生体センサの属性情報(装着位置、測定部位、測定項目)に応じて、幾通りものアルゴリズム(生体パラメータを処理するアルゴリズム)を記憶しておくことによって、測定の目的に適った測定結果情報を導出する点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-99916号公報
【文献】特開2012-85906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
喘息の発作時に聞こえることがある副雑音としての喘鳴は、呼吸音に同期して発生する。そのため、喘鳴を検出するときには、呼吸音はノイズとなり、喘鳴の検出を難しくする要因となっている。
【0007】
呼吸音と喘鳴の音量は、身長、体重、又はBMI(Body Mass Index)等の被測定者の体型、或いは、被測定者の気道の径又は硬さ等に依存する。特に、体重又はBMIが大きい場合には、呼吸音と喘鳴が体表に伝わりにくくなるため、呼吸音も喘鳴も小さくなり検出が難しくなる。
【0008】
また、喘息の発作が大きくなると、呼吸が荒くなるため、呼吸音量が大きくなり、喘鳴の検出が難しくなる。さらに、喘息の発作が呼吸不全になるほど重症になると、呼吸が浅く小さくなるため、呼吸音も喘鳴も小さくなり、喘鳴の検出が難しくなる。
【0009】
特許文献1には、気道状態を反映した指標値を音量に基づいて補正することが示されているが、呼吸音量が小さい場合又は大きい場合に、喘鳴を検出できるかどうかは不明である。
【0010】
特許文献2には、幾通りものアルゴリズムを記憶しておくことによって、測定の目的に適った測定結果情報を導出する点が記載されているが、アルゴリズムの選択は、呼吸音量によるものではない。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、重症な喘息発作時の喘鳴、或いは、体重又はBMI等が大きい人の喘鳴を検出しやすくすることのできる喘鳴検出装置、喘鳴検出方法、及び喘鳴検出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)
被測定者の肺音を測定するための音測定部と、
前記音測定部により測定された音に基づいて、前記被測定者の呼吸音量を導出する呼吸音量導出部と、
前記音の周波数毎の強度分布から極大点を抽出し、当該極大点の情報に基づいて喘鳴を検出する喘鳴検出部と、を備え、
前記喘鳴検出部は、前記呼吸音量が予め決められた範囲外となっている場合には、前記呼吸音量が前記範囲内となっている場合よりも前記喘鳴の検出感度を高い値に設定する喘鳴検出装置。
【0013】
(1)によれば、呼吸音量が例えば大きい場合には、呼吸音量が上記の範囲となっている場合よりも検出感度が高く設定される。これにより、喘息の発作が大きく呼吸が荒くなる状態であっても、喘鳴が検出される可能性を高めることができる。または、呼吸音量が例えば小さい場合には、呼吸音量が上記の範囲となっている場合よりも検出感度が高く設定される。これにより、重症の喘息発作を生じている被測定者や体重又はBMIが大きい被測定者のように、呼吸が浅く小さくなる状態であっても、喘鳴が検出される可能性を高めることができる。一方で、呼吸音量が上記の範囲内となっている場合には、検出感度が相対的に低く設定されるため、喘鳴の誤検出を防いで、喘鳴を高精度に検出することができる。
【0014】
(2)
(1)記載の喘鳴検出装置であって、
前記喘鳴検出部は、前記呼吸音量が前記範囲よりも大きい場合に、前記呼吸音量が前記範囲内となっている場合よりも前記検出感度を高い値に設定する喘鳴検出装置。
【0015】
(2)によれば、呼吸音量が大きい場合には、呼吸音量が上記の範囲となっている場合よりも検出感度が高くなる。これにより、喘息の発作が大きく呼吸が荒くなる状態であっても、喘鳴が検出される可能性を高めることができる。
【0016】
(3)
(1)又は(2)記載の喘鳴検出装置であって、
前記喘鳴検出部は、前記呼吸音量が前記範囲よりも小さい場合に、前記呼吸音量が前記範囲内となっている場合よりも前記検出感度を高い値に設定する喘鳴検出装置。
【0017】
(3)によれば、呼吸音量が小さい場合には、呼吸音量が上記の範囲となっている場合よりも検出感度が高くなる。これにより、重症の喘息発作を生じている被測定者や体重又はBMIが大きい被測定者のように、呼吸が浅く小さくなる状態であっても、喘鳴が検出される可能性を高めることができる。
【0018】
(4)
(2)記載の喘鳴検出装置であって、
前記喘鳴検出部は、前記呼吸音量が前記範囲よりも小さい場合に、前記呼吸音量が前記範囲内となっている場合よりも前記検出感度を高い値に設定し、更に、前記呼吸音量が前記範囲よりも小さい場合と、前記呼吸音量が前記範囲よりも大きい場合とで前記検出感度を異なる値に設定する喘鳴検出装置。
【0019】
(4)によれば、呼吸音量が小さい場合には、呼吸音量が上記の範囲となっている場合よりも検出感度が高くなる。これにより、重症の喘息発作を生じている被測定者や体重又はBMIが大きい被測定者のように、呼吸が浅く小さくなる状態であっても、喘鳴が検出される可能性を高めることができる。また、呼吸音量が小さい場合と、呼吸音量が大きい場合とで検出感度が異なる値に設定されるため、喘鳴の検出のされやすさを呼吸音量の大小に合わせて最適化することができ、喘鳴の検出漏れをより高い確率で防ぐことができる。
【0020】
(5)
(1)から(4)のいずれか1つに記載の喘鳴検出装置であって、
前記喘鳴検出部は、前記強度分布から予め決められた閾値を超える強度の前記極大点を抽出し、当該極大点に基づいて喘鳴を検出し、前記閾値を低くすることで前記喘鳴の検出感度を高める喘鳴検出装置。
【0021】
(5)によれば、閾値を低くすることで、喘鳴の検出に用いられる極大点の数を増やすことが可能となり、喘鳴の検出感度を高めることができる。
【0022】
(6)
被測定者の喘鳴を検出する喘鳴検出方法であって、
被測定者の肺音を測定するための音測定部により測定された音に基づいて、前記被測定者の呼吸音量を導出する呼吸音量導出ステップと、
前記音の周波数毎の強度分布から極大点を抽出し、当該極大点の情報に基づいて喘鳴を検出する喘鳴検出ステップと、を備え、
前記喘鳴検出ステップでは、前記呼吸音量が予め決められた範囲外となっている場合には、前記呼吸音量が前記範囲内となっている場合よりも前記喘鳴の検出感度を高い値に設定する喘鳴検出方法。
【0023】
(6)によれば、(1)と同様の効果を得ることができる。
【0024】
(7)
被測定者の喘鳴を検出する喘鳴検出プログラムであって、
被測定者の肺音を測定するための音測定部により測定された音に基づいて、前記被測定者の呼吸音量を導出する呼吸音量導出ステップと、
前記音の周波数毎の強度分布から極大点を抽出し、当該極大点の情報に基づいて喘鳴を検出する喘鳴検出ステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムであり、
前記喘鳴検出ステップでは、前記呼吸音量が予め決められた範囲外となっている場合には、前記呼吸音量が前記範囲内となっている場合よりも前記喘鳴の検出感度を高い値に設定する喘鳴検出プログラム。
【0025】
(7)によれば、(1)と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、重症な喘息発作時の喘鳴や、体重又はBMIが大きい人の喘鳴を検出しやすくすることのできる喘鳴検出装置、喘鳴検出方法、及び喘鳴検出プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の喘鳴検出装置の一実施形態である喘鳴検出装置1の概略構成例を示す側面図である。
【
図2】
図1に示す喘鳴検出装置1におけるA-A線に沿った断面模式図である。
【
図3】
図1に示す統括制御部4の機能ブロックを示す図である。
【
図4】周波数変換部41の処理を説明するための模式図である。
【
図5】周波数変換部41による高速フーリエ変換後のフレームデータの一例を示す図である。
【
図6】
図5に示す肺音信号からノイズ成分を除去して得られた肺音信号の周波数毎の強度分布を示す図である。
【
図7】ノイズ除去後の肺音信号に設定される閾値の別例を示す図である。
【
図8】喘鳴検出装置1の動作例を説明するためのフローチャートである。
【
図9】喘鳴検出装置1の動作の変形例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(実施形態の喘鳴検出装置の概要)
まず、本発明の喘鳴検出装置の実施形態の概要について説明する。実施形態の喘鳴検出装置は、人の生体から肺音を測定し、測定音に喘鳴が含まれると判定した場合に、その旨を報知する。このようにすることで、被測定者への投薬の要否の判断、又は被測定者を病院に連れて行くかどうかの判断等を支援するものである。
【0029】
実施形態の喘鳴検出装置は、肺音を測定するための音測定部により測定された音に基づいて被測定者の呼吸音量を導出し、更に、この音の周波数毎の強度分布における極大点のうちの予め決められた閾値を超える強度となる極大点に基づいて喘鳴の有無を判定する。この喘鳴の有無の判定において、喘鳴検出装置は、上記の導出した呼吸音量が予め決められた範囲外となっている場合には、呼吸音量がこの範囲内となっている場合よりも上記の閾値を小さい値に設定する。
【0030】
このような動作によって、呼吸音量が例えば大きい場合には、呼吸音量が上記の範囲となっている場合よりも閾値が低く設定される。これにより、喘鳴の有無の判定に用いられる上記の極大点の数を増やすことが可能となり、喘鳴ありと判定される可能性を高める(言い換えると、喘鳴の検出感度を高める)ことができる。したがって、呼吸が荒くなる状態であっても、喘鳴の検出をしやすくすることが可能になる。
【0031】
また、呼吸音量が例えば小さい場合には、呼吸音量が上記の範囲となっている場合よりも閾値が低く設定される。これにより、喘鳴の有無の判定に用いられる極大点の数を増やすことが可能となり、喘鳴ありと判定される可能性を高める(言い換えると、喘鳴の検出感度を高める)ことができる。したがって、重症の喘息発作を生じている被測定者や体重又はBMIが大きい被測定者のように、呼吸が浅く小さくなる状態であっても、喘鳴の検出をしやすくすることが可能になる。
【0032】
以下、実施形態の喘鳴検出装置の具体的な構成例について説明する。
【0033】
(実施形態)
図1は、本発明の喘鳴検出装置の一実施形態である喘鳴検出装置1の概略構成例を示す側面図である。
図1に示すように、喘鳴検出装置1は、樹脂又は金属等の筐体で構成された棒状の把持部1bを有し、この把持部1bの一端側にはヘッド部1aが設けられている。
【0034】
把持部1bの内部には、喘鳴検出装置1の全体を統括制御する統括制御部4と、動作に必要な電圧を供給する電池5と、液晶表示パネル又は有機EL(Electro Luminescence)表示パネル等によって画像を表示する表示部6と、が設けられている。
【0035】
統括制御部4は、各種のプロセッサ、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)等を含み、プログラムにしたがって喘鳴検出装置1の各ハードウェアの制御等を行う。統括制御部4のROMには、喘鳴検出プログラムを含むプログラムが記憶されている。
【0036】
各種のプロセッサとしては、プログラムを実行して各種処理を行う汎用的なプロセッサであるCPU(Central Prosessing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。これら各種のプロセッサの構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0037】
統括制御部4は、各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせ又はCPUとFPGAの組み合わせ)で構成されてもよい。
【0038】
ヘッド部1aには、把持部1bの長手方向と略直交する方向の一方側(
図1において下方側)へ突出する測定ユニット3が設けられている。測定ユニット3の先端には、被測定者である生体の体表面Sに接触されて体表面Sからの圧力を受ける受圧部3aが設けられている。
【0039】
喘鳴検出装置1は、使用者の手Haの例えば人差し指がヘッド部1aにおける測定ユニット3の背面に置かれた状態で、測定ユニット3の受圧部3aがこの人差し指によって体表面Sに押圧されて使用される。
【0040】
図2は、
図1に示す喘鳴検出装置1におけるA-A線に沿った断面模式図である。
【0041】
図2に示すように、測定ユニット3は、音を測定する第一の音測定器M1と、第一の音測定器M1を内部の収容空間SP1に収容し、且つ生体の体表面Sに押圧された状態にて体表面Sによって塞がれる開口31hを有する有底筒状の第一ハウジング31と、開口31hを第一ハウジング31の外側から閉じると共に第一ハウジング31を覆うハウジングカバー32と、音を測定する第二の音測定器M2と、第二の音測定器M2を収容する収容空間SP2を形成しかつ開口34hを有する第二ハウジング34と、を備える。
【0042】
測定ユニット3は、ハウジングカバー32の一部が露出された状態にて、ヘッド部1aを構成する筐体2に形成された開口部に嵌合されて、筐体2に固定されている。
【0043】
ハウジングカバー32の筐体2からの露出部分の先端部は平面又は曲面となっており、この平面又は曲面が受圧部3aを構成している。筐体2は、音を透過可能な樹脂等によって構成されている。
【0044】
第一の音測定器M1は、肺音を測定するためのものであり、例えば、肺音の周波数域(一般的には10Hz以上1kHz以下)よりも広い帯域(例えば10Hz以上10kHz以下の周波数域)の音を測定するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)型マイクロフォン又は静電容量型マイクロフォン等で構成されている。第一の音測定器M1は音測定部として機能する。
【0045】
第一の音測定器M1は、図示省略のリード線等によって
図1に示す統括制御部4と電気的に接続されている。第一の音測定器M1によって測定された音の信号(以下、肺音信号という)は、統括制御部4に伝達される。
【0046】
喘鳴検出装置1の使用時においては、ハウジングカバー32の受圧部3aが体表面Sに接触し、体表面Sからの圧力によって、収容空間SP1が、ハウジングカバー32を介して体表面Sにより密閉された状態(以下、この状態を密閉状態という)になる。
【0047】
そして、生体から体表面Sに伝わる肺音によって受圧部3aが振動すると、この振動によって収容空間SP1の内圧が変動し、この内圧変動によって、肺音に応じた電気信号が第一の音測定器M1によって測定されることになる。
【0048】
第一ハウジング31は、
図2中の下方向に向かって略凸型の形状であり、樹脂又は金属等の空気より音響インピーダンスが高くかつ剛性の高い材料によって構成されている。第一ハウジング31は、密閉状態において、収容空間SP1の内部に、外部から音が伝わらないように、第一の音測定器M1の測定周波数帯の音を反射する材料にて構成されている。
【0049】
ハウジングカバー32は、有底筒状の部材であり、その中空部の形状は、第一ハウジング31の外壁形状とほぼ一致している。
【0050】
ハウジングカバー32は、音響インピーダンスが人体、空気、又は、水に近い素材でかつ生体適合性の良い可撓性を有する材料によって構成される。ハウジングカバー32の材料としては、例えばシリコーン又はエラストマ等が用いられる。
【0051】
第二の音測定器M2は、第一ハウジング31の周囲の音(人の声等の環境音、或いは、装置と生体又は衣服との間の擦れ音等)を測定するためのものであり、例えば、肺音の周波数域よりも広い帯域(例えば10Hz以上10kHz以下の周波数域)の音を測定するMEMS型マイクロフォン又は静電容量型マイクロフォン等で構成されている。
【0052】
第二の音測定器M2は、図示省略のリード線等によって
図1に示す統括制御部4と電気的に接続されている。第二の音測定器M2によって測定された音の信号(以下、周囲音信号という)は、統括制御部4に伝達される。
【0053】
第二の音測定器M2は、第一ハウジング31の受圧部3a側と反対側の面に固定されている。第二の音測定器M2の周囲は、第二ハウジング34によって覆われている。第二ハウジング34は、喘鳴検出装置1の周囲で発生する音が第二の音測定器M2を収容する収容空間SP2に侵入しやすいような素材(例えば樹脂)によって構成されている。
【0054】
第二ハウジング34には開口34hが形成されている。このため、この開口34hからも喘鳴検出装置1の周囲で発生する音が侵入しやすい構造となっている。
【0055】
図3は、
図1に示す統括制御部4の機能ブロックを示す図である。統括制御部4のプロセッサは、喘鳴検出プログラムを実行することで、前処理部40、周波数変換部41、ノイズ除去部42、呼吸音量導出部43、及び喘鳴検出部44として機能する。
【0056】
前処理部40は、第一の音測定器M1により測定された肺音信号と第二の音測定器M2により測定された周囲音信号を取得すると、これら肺音信号と周囲音信号の各々から特定の周波数域(例えば、喘鳴が存在し得る周波数の上限値と考えられる5kHz以下の周波数域等)の信号を抽出し、更に、この抽出した信号を増幅する前処理を行う。
【0057】
具体的には、前処理部40は、これら肺音信号と周囲音信号の各々に対してハイパスフィルタ処理又はローパスフィルタ処理等を行って特定の周波数域の信号を抽出する。前処理部40によって前処理された後の肺音信号及び周囲音信号は統括制御部4のRAMに記憶される。
【0058】
周波数変換部41は、前処理後の肺音信号と周囲音信号のうち、同一の期間(予め決められた長さ(例えば、数百ms等)の期間であり、以下ではフレーム期間という)に測定されたもの(フレームデータともいう)を対象として周波数変換(例えば高速フーリエ変換)を行う。
【0059】
周波数変換部41は、
図4に示すように、時刻t1においてフレームデータに高速フーリエ変換を行った後、時刻t2において、フレーム期間よりも短い所定期間(例えば数十ms)分の前処理後の肺音信号及び周囲音信号(図中の“新データ”)が新たにRAMに記憶されると、フレーム期間の開始時刻と終了時刻をそれぞれ上記の所定期間の長さだけ進めてフレーム期間を再設定し、再設定したフレーム期間の肺音信号及び周囲音信号(図中の残フレームデータと新データを合わせたもの)を新しいフレームデータとして、これを高速フーリエ変換する。
【0060】
このように、周波数変換部41は、フレーム期間を順次ずらしていきながら、フレームデータの周波数変換を実施する。
図5は、周波数変換部41による高速フーリエ変換後のフレームデータの一例を示す図である。なお、
図5では、縦軸を音圧レベル(単位はデシベル(dB))として示している。
【0061】
ノイズ除去部42は、
図5に例示されるような高速フーリエ変換後の各フレームデータに基づいて、このフレームデータの肺音信号に含まれる肺音成分以外のノイズ成分を除去する。
図6は、
図5に示す肺音信号から、
図5に示す周囲音信号に基づいてノイズ成分を除去して得られた肺音信号の周波数毎の強度分布を示す図である。
【0062】
呼吸音量導出部43は、ノイズ除去部42によってノイズ成分が除去された各フレーム期間の肺音信号に基づいて、このフレーム期間における被測定者の呼吸音量を導出する。呼吸音量導出部43は、例えば、ノイズ除去後のフレーム期間の肺音信号の二乗平均平方根(RMS)振幅を算出し、このRMS振幅をこのフレーム期間における被測定者の呼吸音量として導出する。
【0063】
喘鳴検出部44は、ノイズ除去部42によってノイズ成分が除去された各フレーム期間の肺音信号(例えば
図6に示すグラフ)から予め決められた抽出条件にしたがって極大点を抽出し、抽出した極大点の情報(周波数と音の強度の少なくとも一方)を、各フレーム期間と対応付けてRAMに記憶する。そして、喘鳴検出部44は、RAMに記憶された極大点の情報に基づいて喘鳴の有無を判定することで、喘鳴を検出する。
【0064】
上記の抽出条件とは、例えば、肺音信号のうちの予め決められた閾値を超える強度の範囲にある極大点を抽出するという条件である。例えば、
図6に示すように閾値TH1が決められている場合には、この閾値TH1よりも上側の波形における極大点(図中の破線の丸で囲った部分)が抽出される。
【0065】
喘鳴検出部44は、この抽出条件における閾値を、予め決められた閾値TH1と閾値TH2のいずれかに設定する。閾値TH2は、閾値TH1よりも小さい値である。
【0066】
例えば、
図6に示す強度分布において、
図7に示すように、
図6の閾値TH1よりも小さい閾値TH2が設定される場合には、抽出される極大点の数は、閾値TH1が設定されている場合よりも3つ増えることになる。
【0067】
喘鳴検出部44は、例えば、RAMに記憶されている極大点に、喘鳴と判断できる周波数域の極大点が1つ又は複数存在している場合に喘鳴ありと判定する。または、喘鳴検出部44は、例えば、RAMに記憶されているフレーム期間毎の極大点の情報にしたがって、周波数の略一致する極大点が抽出されたフレーム期間が所定回数連続しているか判定し、このようなフレーム期間が所定回数連続している場合に喘鳴ありと判定する。なお、極大点の情報を用いた喘鳴の判定処理はここに例示したものに限定されるものではない。
【0068】
このように、喘鳴検出部44は、上記の抽出条件にしたがって抽出された極大点の情報に基づいて喘鳴の検出を行う。このため、この抽出条件における閾値が閾値TH1に設定されている場合と、この抽出条件における閾値が閾値TH2に設定されている場合とでは、この閾値が閾値TH2に設定されている場合の方が、喘鳴の検出に用いられる極大点の情報が増えることになる。このため、喘鳴の検出感度は高くなる。
【0069】
喘鳴検出部44は、呼吸音量導出部43により導出された呼吸音量が予め決められた特定範囲内となっている場合には、抽出条件における閾値を閾値TH1に設定し、呼吸音量導出部43により導出された呼吸音量が上記の特定範囲外となっている場合には、抽出条件における閾値を閾値TH2に設定する。つまり、喘鳴検出部44は、呼吸音量が上記の特定範囲外となっている場合には、呼吸音量が上記の特定範囲内となっている場合よりも喘鳴の検出感度を高い値に設定する。
【0070】
前述したように、呼吸音と喘鳴の音量は、身長、体重、又はBMI等の被測定者の体型、或いは、被測定者の気道の径又は硬さ等に依存する。特に、体重又はBMIが大きい場合には、呼吸音と喘鳴が体表に伝わりにくくなるため、呼吸音も喘鳴も小さくなり検出が難しくなる。また、喘息の発作が大きくなると、呼吸が荒くなるため、呼吸音量が大きくなり、喘鳴の検出が難しくなる。さらに、喘息の発作が呼吸不全になるほど重症になると、呼吸が浅く小さくなるため、呼吸音も喘鳴も小さくなり、喘鳴の検出が難しくなる。
【0071】
つまり、呼吸音量が大きすぎる場合と小さすぎる場合には、喘鳴の検出がしにくくなるため、このような場合に喘鳴の検出感度を上げることで、喘鳴の検出漏れを防ぐことができる。一方で、喘鳴の検出感度を高くすると、喘鳴が誤検出される可能性は高くなる。したがって、喘鳴の検出感度は、喘鳴を検出しにくくなる状態である呼吸音量が大きい場合と小さい場合にのみ高くし、その他の場合には、喘鳴の検出精度を優先して、低くしておく必要がある。上記の特定範囲は、喘鳴の検出がしにくくなる呼吸音量の範囲を除いた範囲として実験的に決められる。
【0072】
(喘鳴検出装置1の動作例)
図8は、喘鳴検出装置1の動作例を説明するためのフローチャートである。喘鳴の検出処理の開始指示がなされると、統括制御部4は、第一の音測定器M1からの肺音信号の取得と、第二の音測定器M2からの周囲音信号の取得とを開始する。
【0073】
統括制御部4の前処理部40は、取得した肺音信号及び周囲音信号から特定の周波数域の信号を抽出してRAMに記憶する(ステップS1)。
【0074】
ステップS1の処理の開始によって、RAMに1フレーム期間分の肺音信号及び周囲音信号が記憶されると、周波数変換部41は、この1フレーム期間分の肺音信号及び周囲音信号を周波数変換する(ステップS2)。
【0075】
次に、ノイズ除去部42は、ステップS2にて周波数変換された肺音信号及び周囲音信号のうちの周囲音信号に基づいて、この肺音信号に含まれるノイズ成分を除去する(ステップS3)。
【0076】
次に、呼吸音量導出部43は、ステップS2にて周波数変換された肺音信号に基づいて、上記の1フレーム期間における被測定者の呼吸音量を導出する(ステップS4)。
【0077】
次に、喘鳴検出部44は、ステップS4にて導出された呼吸音量が上記の特定範囲内にあるか否かを判定する(ステップS5)。
【0078】
喘鳴検出部44は、呼吸音量が特定範囲内にあると判定した場合(ステップS5:YES)には、極大点の抽出条件における閾値を閾値TH1に設定する(ステップS6)。喘鳴検出部44は、呼吸音量が特定範囲外にある(呼吸音量が特定範囲よりも大きい、又は、呼吸音量が特定範囲よりも小さい)と判定した場合(ステップS5:NO)には、極大点の抽出条件における閾値を閾値TH2に設定する(ステップS7)。
【0079】
ステップS6又はステップS7の後、喘鳴検出部44は、ステップS3にてノイズ成分が除去された後の肺音信号のうち、ステップS6又はステップS7にて設定した閾値を超える範囲にある極大点を抽出し、抽出した極大点の情報をRAMに記憶する(ステップS8)。
【0080】
ステップS2の処理が行われてから上記の所定期間が経過する毎に、フレーム期間が再設定された上で、ステップS2~ステップS8までの処理が行われる。
【0081】
喘鳴検出部44は、ステップS2~ステップS8の処理によってRAMに記憶された極大点の情報に基づいて、喘鳴の有無を判定する(ステップS9)
【0082】
喘鳴検出部44は、ステップS9において“喘鳴あり”と判定した場合には、第一の音測定器M1及び第二の音測定器M2による音の測定を終了させ、検出結果(“喘鳴有り”)を例えば表示部6に表示して、これを報知し、検出処理を終了する。
【0083】
(喘鳴検出装置1の効果)
以上のように、喘鳴検出装置1によれば、被測定者の呼吸音量が上記の特定範囲よりも大きい場合には、呼吸音量が上記の特定範囲内となっている場合よりも喘鳴の検出感度が高く設定される。これにより、喘息の発作が大きく呼吸が荒くなる状態であっても、喘鳴が検出される可能性を高めることができる。
【0084】
また、喘鳴検出装置1によれば、被測定者の呼吸音量が上記の特定範囲よりも小さい場合には、呼吸音量が上記の特定範囲内となっている場合よりも喘鳴の検出感度が高く設定される。これにより、重症の喘息発作を生じている被測定者や体重又はBMIが大きい被測定者のように、呼吸が浅く小さくなる状態であっても、喘鳴が検出される可能性を高めることができる。
【0085】
また、喘鳴検出装置1によれば、呼吸音量が上記の特定範囲内となっている場合には、喘鳴の検出感度が相対的に低く設定されるため、喘鳴の誤検出を防いで、喘鳴を高精度に検出することができる。
【0086】
なお、喘鳴検出部44は、呼吸音量が特定範囲外である場合に設定する閾値TH2の大きさを、呼吸音量に応じて変えてもよい。例えば、喘鳴検出部44は、呼吸音量が特定範囲よりも大きく且つ第一の所定値よりも大きい場合には、呼吸音量が特定範囲よりも大きく且つこの第一の所定値以下の場合よりも閾値TH2を小さくする。
【0087】
また、喘鳴検出部44は、呼吸音量が特定範囲よりも小さく且つ第二の所定値よりも小さい場合には、呼吸音量が特定範囲よりも小さく且つこの第二の所定値以上の場合よりも閾値TH2を小さくする。このように、検出感度を4段階以上に分けて設定することで、喘鳴の検出のされやすさを、呼吸音量の大小に合わせて最適化することができる。したがって、喘鳴の検出漏れをより高い確率で防ぐことができる。
【0088】
また、
図8のフローチャートにおいて、ステップS5~ステップS7の処理を行う前に、ステップS3にてノイズ除去後の肺音信号から喘鳴検出部44が極大点を抽出してもよい。この場合には、喘鳴検出部44は、極大点の抽出後に、ステップS5~ステップS7の処理を行い、事前に抽出した極大点のうち、音の強度が閾値TH1又は閾値TH2以下となるものは除外してからRAMに記憶すればよい。
【0089】
また、
図8の動作例では、呼吸音量が特定範囲より大きい場合と、呼吸音量が特定範囲より小さい場合とのいずれの場合においても、ステップS7にて閾値TH2が設定されるものとしている。しかし、例えば、呼吸が浅くなっている人は喘鳴検出装置1の使用を推奨しないような使い方を想定するのであれば、ステップS5の判定において、呼吸音量が特定範囲より大きい場合にはステップS7の処理を行い、呼吸音量が特定範囲のうちの最大値以下である場合にはステップS6の処理を行うようにしてもよい。このようにした場合でも、喘息の発作が大きく呼吸が荒くなっている被測定者に対し、喘鳴が検出される可能性を高めることが可能である。
【0090】
また、逆に、呼吸が荒くなっている人は喘鳴検出装置1の使用を推奨しないような使い方を想定するのであれば、ステップS5の判定において、呼吸音量が特定範囲より小さい場合にはステップS7の処理を行い、呼吸音量が特定範囲のうちの最小値以上である場合にはステップS6の処理を行うようにしてもよい。このようにした場合でも、呼吸が浅く小さくなっている被測定者に対し、喘鳴が検出される可能性を高めることが可能である。
【0091】
また、極大点の上記の抽出条件は、上述したものには限らない。例えば、喘鳴検出部44は、ノイズ除去後の肺音信号から極大点と極小点を検出し、検出した各極大点から、その各極大点の両隣の2つの極小点を結ぶ直線までの、縦軸に沿った方向の距離を求める。そして、上記の抽出条件は、この距離が閾値thを超える極大点を抽出するものとする。この抽出条件の場合、喘鳴検出部44は、呼吸音量が特定範囲内の場合には閾値thを大きい第一の値に設定し、呼吸音量が特定範囲外の場合には閾値thを第一の値よりも小さい第二の値として、呼吸音量が特定範囲外の場合に、喘鳴の検出感度が高くなるようにすればよい。
【0092】
(喘鳴検出装置1の変形例)
図9は、喘鳴検出装置1の動作の変形例を説明するためのフローチャートである。
図9に示すフローチャートは、ステップS7が、ステップS11、ステップS12、及びステップS13に置換された点を除いては、
図8に示すフローチャートと同じである。
図9において
図8と同じ処理には同一符号を付して説明を省略する。
【0093】
喘鳴検出部44は、ステップS5において、呼吸音量が特定範囲外であると判定した場合(ステップS5:NO)には、更に、呼吸音量が特定範囲より大きいか否かを判定する(ステップS11)。喘鳴検出部44は、呼吸音量が特定範囲より小さいと判定した場合(ステップS11:NO)には、極大点の抽出条件における閾値として閾値TH1よりも小さい閾値TH3を設定する(ステップS12)。
【0094】
喘鳴検出部44は、呼吸音量が特定範囲より大きいと判定した場合(ステップS11:YES)には、極大点の抽出条件における閾値として閾値TH1よりも小さく且つ閾値TH3とは異なる閾値TH4を設定する(ステップS13)。ステップS12とステップS13の後は、ステップS8の処理が行われる。
【0095】
このように、
図9の動作例によれば、呼吸音量が小さい場合と、呼吸音量が大きい場合とで検出感度が異なる値に設定される。このため、喘鳴の検出のされやすさを、呼吸音量の大小に合わせて最適化することができ、喘鳴の検出漏れをより高い確率で防ぐことができる。
【0096】
<その他の変形例>
統括制御部4の機能をスマートフォン等の電子機器に持たせ、この電子機器に測定ユニット3を着脱可能な構成としてもよい。つまり、電子機器のプロセッサが喘鳴検出プログラムを実行することで、統括制御部4として機能するようにしてもよい。
【0097】
第二の音測定器M2は必須ではなく省略してもよい。第二の音測定器M2を省略する場合には、ノイズ除去部42を削除し、
図8及び
図9のステップS4以降では、ステップS2にて周波数変換後の肺音信号を対象として処理を行えばよい。また、測定ユニット3は、第一の音測定器M1が肺音を測定できるような構造であれば
図2に示した構造でなくともよい。
【符号の説明】
【0098】
1 喘鳴検出装置
1b 把持部
1a ヘッド部
2 筐体
3 測定ユニット
3a 受圧部
4 統括制御部
40 前処理部
41 周波数変換部
42 ノイズ除去部
43 呼吸音量導出部
44 喘鳴検出部
5 電池
6 表示部
S 体表面
Ha 手
31 第一ハウジング
31h 開口
SP1 収容空間
32 ハウジングカバー
34 第二ハウジング
34h 開口
SP2 収容空間
M1 第一の音測定器
M2 第二の音測定器