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特許7081411光学用活性エネルギー線重合性接着剤および光学用積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】光学用活性エネルギー線重合性接着剤および光学用積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/10 20060101AFI20220531BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220531BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220531BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20220531BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20220531BHJP
   C09J 167/06 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
C09J163/10
B32B27/00 D
B32B27/30 A
C09J4/02
C09J11/04
C09J167/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018171802
(22)【出願日】2018-09-13
(65)【公開番号】P2020041108
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】清野 数馬
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-147898(JP,A)
【文献】国際公開第2017/018459(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/169574(WO,A1)
【文献】特開2009-120726(JP,A)
【文献】特開2014-224250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/00,27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均一次粒子径が5~100nmの無機酸化物粒子(X)と、質量平均分子量が700以上の(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)と、質量平均分子量が500以下の(メタ)アクリレート系モノマー(B)とを含む光学用活性エネルギー線重合性接着剤であって、
無機酸化物粒子(X)が酸化ジルコニウム又は酸化チタンであり、
無機酸化物粒子(X)を、無機酸化物粒子(X)と活性エネルギー線重合性成分との合計100質量%中に1~50質量%含み、
(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)が、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-1)、およびポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-2)からなる群より選ばれ、
ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-2)は、二塩基酸もしくはその誘導体と多価アルコールとの重縮合によるポリエステル主鎖を有し、
(メタ)アクリレート系モノマー(B)が、水酸基、または複素環骨格の少なくともいずれかを有し、
(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)が、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-1)の場合、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-1)よりも(メタ)アクリレート系モノマー(B)を多く含み、
実質的に溶剤を含まない、
光学用活性エネルギー線重合性接着剤。
【請求項2】
さらに、芳香環を有し、水酸基および複素環骨格を有しない質量平均分子量が500以下の(メタ)アクリレート系モノマー(C)を含む、請求項1記載の光学用活性エネルギー線重合性接着剤。
【請求項3】
さらに、シクロアルカン骨格、またはシクロアルケン骨格の少なくとも一方を有し、水酸基、複素環骨格および芳香環を有しない質量平均分子量が500以下の(メタ)アクリレート系モノマー(D)を含む、請求項1または2記載の光学用活性エネルギー線重合性接着剤。
【請求項4】
エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-1)の質量平均分子量が20000以下、ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-2)の質量平均分子量が50000以下である、請求項1~3いずれか1項に記載の光学用活性エネルギー線重合性接着剤。
【請求項5】
第一の基材と、請求項1~4いずれか1項に記載の光学用活性エネルギー線重合性接着剤の硬化物である樹脂層と、第二の基材とを備えた光学用積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用活性エネルギー線重合性接着剤および光学用積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)等の画像表示装置は、その表面に防眩、視野角調整、およびハードコート等様々な機能を有する層が使用されている。そして、反射防止フィルムや導電性フィルム(ITOフィルム)など機能層を液晶パネルへ貼り合わせるときには、アクリルポリマーを使用した粘着剤が使用されていた。しかし、スマートフォン等の携帯情報端末は、テレビ用途と比較して画面が小さく、携帯性が要求されるため、市場からは液晶パネルの厚みを薄くする要求が強かった。粘着剤層の厚みを薄くすると粘着力が低下する粘着剤に代えて、接着剤層の厚みが薄い場合でも比較的高い接着力が得られる熱硬化型のエポキシ接着剤、ならびに紫外線硬化型のアクリル接着剤およびエポキシ系接着剤が検討されていた。
【0003】
加えて、市場からは、接着機能と光学機能を併せ持つ接着剤が求めらるようになり、更に接着剤の塗工、貼合プロセスの関係から無溶剤の接着剤が求められている。前記光学機能は、例えば屈折率制御が挙げられる。
液晶パネルは、ガラス基板および偏光板に位相差板等の複数の光学機能を有する層が積層した構成であるが、積層に使用する接着剤は、屈折率が1.47程度であるため、積層に使用する各部材(屈折率ガラス:1.52程度、アクリル樹脂:1.51程度、ポリカーボネート:1.60、ポリエチレンテレフタレート:1.65程度)との屈折率差が大きいので液晶パネルから発した光が各層を通過するたびに減衰して画面が暗くなるため、光を有効活用できていない問題があった。
【0004】
この問題に対し、無機粒子を配合した接着層用塗料、粘接着剤、接着剤が開示されている。(特許文献1~5)。
特許文献4には、4つのエステルユニットと(メタ)アクリロイル基とを有する分散剤と金属酸化物粒子を含有する接着剤が開示されている。
また、特許文献5には、(A)ウレタンアクリレートやエポキシアクリレート等のオリゴマー型アクリレートと(B)無機微粒子とを含有する組成物を硬化してなる樹脂層を特定の基材の表面に設けてなる複層フィルムが開示されている(請求項1、請求項4、[0103]~[0112])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-182819号公報
【文献】特開2012-001695号公報
【文献】特表平11-503773号公報
【文献】特開2014-224250号公報
【文献】WO2012/032919
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献4に開示される分散剤で得られる分散体の透明性ではディスプレイ業界の近年の高透過率の要求には十分とは言えず、また低温から高温までの幅広い温度条件で接着力を確保することはできなかった。
【0007】
また、特許文献5は、オリゴマー型アクリレートの他にモノマーの利用を開示し、具体的にはオリゴマー型アクリレートを主成分とし、少量のモノマーの併用を開示する。このような組成物は、接着性能が不十分であり、特に低温条件では剥がれやすいという問題があった。
【0008】
本発明は、無機酸化物粒子を良好に分散し、硬化後の接着剤層の屈折率を高い水準に調整(例えば、積層の対象である基材の屈折率よりもできるだけ高い値、具体的には1.54以上)することが可能であり、透明性が良好で、かつ低温~高温まで幅広い温度条件の接着力に優れた接着剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、平均一次粒子径が5~100nmの無機酸化物粒子(X)と、質量平均分子量が700以上の(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)と、質量平均分子量が500以下の(メタ)アクリレート系モノマー(B)とを含む光学用活性エネルギー線重合性接着剤であって、
(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)が、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-1)、およびポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-2)からなる群より選ばれ、
ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-2)は、二塩基酸もしくはその誘導体と多価アルコールとの重縮合によるポリエステル主鎖を有し、
(メタ)アクリレート系モノマー(B)が、水酸基、または複素環骨格の少なくともいずれかを有し、
(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)が、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-1)の場合、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-1)よりもアクリレートモノマー(B)を多く含み、
実質的に溶剤を含まない、
光学用活性エネルギー線重合性接着剤に関する。
【0010】
また、本発明は、さらに、芳香環を有し、水酸基および複素環骨格を有しない質量平均分子量が500以下の(メタ)アクリレート系モノマー(C)を含む、前記の光学用活性エネルギー線重合性接着剤に関する。
また、本発明は、さらに、シクロアルカン骨格、またはシクロアルケン骨格の少なくとも一方を有し、水酸基、複素環骨格および芳香環を有しない質量平均分子量が500以下の(メタ)アクリレート系モノマー(D)を含む、前記の光学用活性エネルギー線重合性接着剤に関する。
また、本発明は、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-1)の質量平均分子量が20000以下、ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-2)の質量平均分子量が50000以下である、前記の光学用活性エネルギー線重合性接着剤に関する。
【0011】
また、本発明は、第一の基材と、前記の光学用活性エネルギー線重合性接着剤の硬化物である樹脂層と、第二の基材とを備えた光学用積層体に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、透明性が良好であり、屈折率も高く、常温~低温条件の接着力に優れた接着剤の提供できるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。
<光学用活性エネルギー線重合性接着剤>
本発明の光学用活性エネルギー線重合性接着剤(以下、単に「接着剤」と称することがある)は、無機酸化物粒子(X)と、(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)と、(メタ)アクリレート系モノマー(B)とを含み、実質的に溶剤を含まない。
【0014】
ここで、「活性エネルギー線」とは、紫外線、可視光線、赤外線、エレクトロンビーム(EB)、及び放射線を含む、化学反応を生じさせるための活性化に必要なエネルギーを提供できる広義のエネルギー線を意味する。本発明の活性エネルギー線重合性接着剤は、前記活性エネルギー線の照射によって、重合反応が進行し、樹脂層等の硬化物を形成する。
【0015】
また、本明細書では、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリロイルオキシ」、及び「(メタ)アリル」と表記した場合には、特に断りがない限り、それぞれ、「アクリロイル及び/又はメタクリロイル」、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」、「アクリロイルオキシ及び/又はメタクリロイルオキシ」、及び「アリル及び/又はメタリル」を意味するものとする。
【0016】
本発明において平均一次粒子径が5~100nmの無機酸化物粒子()(以下無機酸化物粒子(X)ともいう)は、接着剤の屈折率を調整する機能を有する。平均一次粒子径が前記範囲内であることで所定の屈折率が得られる上、光散乱が生じ難く、透明性が優れる。なお本発明で平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査型電子顕微鏡(SEM)を使用した拡大画像(千倍~1万倍)から観察できる10~30個程度の粒子から算出した平均値である。
【0017】
<無機酸化物粒子(X)>
前記無機酸化物粒子(X)は、例えばチタニウム、亜鉛、ジルコニウム、アンチモン、インジウム、スズ、アルミニウムおよび珪素のうちいずれか1種の元素を含むことが好ましい。なお、前記元素は金属がより好ましい。
具体的には、五酸化アンチモン、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、スズドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、リンドープ酸化スズ(PTO)、アンチモン酸亜鉛(AZO)、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)、酸化スズ、ATO被覆酸化チタン、アルミニウムドープ酸化亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素等が挙げられる。これらのは、単独または2種類以上を併用できる。
【0018】
前記無機酸化物粒子(X)の形状は、球形状、直方体形状、針形状、繊維形状、紡錘形状および板形状が好ましい。
ここで球状以外の無機酸化物粒子の平均一次粒子径は、粒子の形を構成する最も短い辺を平均して平均一次粒子径とする。例えば、粒子に長軸長さと短軸長さがある場合は、短軸長さを平均して算出する。前記無機酸化物粒子(X)の平均一次粒子径は5~100nmであり、5~80nmであることが形成される接着剤の透明性の点で好ましい。
前記無機酸化物粒子(X)の屈折率は例えば、酸化チタン(屈折率2.5~2.7)、酸化亜鉛(屈折率1.95)、酸化ジルコニウム(屈折率2.4)、酸化アルミニウム(屈折率1.6~1.7)酸化珪素(屈折率1.45)などが挙げられる。中でも、酸化ジルコニウム、酸化チタンが好ましい。
【0019】
前記無機酸化物粒子(X)は、その表面をシランカップリング剤を使用して被覆層を形成することもできる。前記被覆層の存在により、無機酸化物粒子を接着剤中に分散し易くなる。
前記シランカップリング剤は、例えば、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリブトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどのメタクリロキシ基とアルキル基とアルコキシ基を2つ有するシラン化合物;、
γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどのアクリロキシ基とアルキル基とアルコキシ基を2つ有するシラン化合物;、
γ-メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシメチルトリメトキシシランなどの(メタ)アクリロキシアルキル基とアルコキシ基を3つ有するシラン化合物;、
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランなどのビニル基を有するアルコキシシラン;、
5-ヘキセニルトリメトキシシラン、9-デセニルトリメトキシシラン、スチリルトリメトキシシランなどのアルキル基を有するアルコキシシラン;、
γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシランなどのアミノアルキル基とアルコキシ基とを有するシラン;、
γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、β-メルカプトメチルフェニルエチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、6-メルカプトヘキシルトリメトキシシラン、10-メルカプトデシルトリメトキシシランなどのメルカプト基を有する化合物;、
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン;、
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ヘキサメチルシラザン、ジフェニルジメトキシシラン、1,3,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0020】
無機酸化物粒子(X)は、無機酸化物粒子(X)と活性エネルギー線重合性成分との合計100質量%中に1~50質量%含むことが好ましく、5~30質量%がより好ましい。1~50質量%含むことで、屈折率制御が容易になり、更に高温における接着力が良好となる傾向がある。これは温度変化による接着剤硬化膜の体積変化を緩和するためと推測される。
【0021】
<(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)>
(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)は、質量平均分子量が700以上のものであり、活性エネルギー線重合性成分の1つである。
(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)は、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-1)、およびポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-2)からなる群より選ばれる。
【0022】
<エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-1)>
エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-1)は、2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、カルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物とを少なくとも反応させてなるものである。
【0023】
エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-1)は、種々の方法で得ることができる。
例えば、2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物中のエポキシ基に対し、カルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物中のカルボキシル基をほぼ等量、具体的には±10%以内となるように反応させるのが好ましい。
あるいは、2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物中のエポキシ基に対し、多塩基酸中のカルボキシル基を当量未満の割合で反応させ、エポキシ基を残し、その残りのエポキシ基に対して、カルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物中のカルボキシル基をほぼ等量、具体的には±10%以内となるように反応させるのが好ましい。
あるいは、2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、多塩基酸と、カルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物とをすべて一緒に反応させても構わないが、この場合は、エポキシ基に対し、カルボキシル基の合計がほぼ等量、具体的には±10%以内となるように反応させるのが好ましい。
また、いずれの場合においても、反応系全体の「カルボキシル基」と「エポキシ基」のバランスが等量±10%以内にすることにより、カルボキシル基、またはエポキシ基が本発明の接着剤中に残りにくくなり、接着剤の保存安定性が良好となるため好ましい。
【0024】
2つ以上のエポキシ基を含有するエポキシ化合物としては、エポキシ基を2個含有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビフェノール・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、グリセリン・エピクロロヒドリン付加物のポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、ジヒドロキシアントラセン型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジフェニルスルホンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシベンゾフェノンジグリシジルエーテル、ビフェノールジグリシジルエーテル、ジフェニルメタンジグリシジルエーテル、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジルトルイジン、特開2004-156024号公報、特開2004-315595号公報、特開2004-323777号公報に開示されている柔軟性に優れたエポキシ化合物等が挙げられる。
【0025】
中でも、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビフェニル、フルオレン骨格を含有するエポキシ樹脂は、最終的に得られるエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-1)の屈折率が高くなるため好ましい。
本発明において、2つ以上のエポキシ基を含有するエポキシ化合物は単独で使用しても良いし、複数を併用しても構わない。
【0026】
エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-1)の製造の際に用い得るカルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、二塩基酸(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、フタル酸、コハク酸など)を水酸基含有アクリレート化合物でハーフエステル化したもの、または二塩基酸無水物を水酸基含有アクリレート化合物でハーフエステル化したもの、無水イタコン酸をアルキルアルコールでハーフエステル化したもの、および、これらの化合物にε-カプロラクトンを数mol付加したもの等が挙げられる。
【0027】
エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-1)の製造の際に用い得る多塩基酸としては、芳香族系、脂肪族系、および脂環族系が挙げられ、それぞれ特に制限が無く使用できる。屈折率の高いエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-1)が得られるという点で、多塩基酸を用いる場合は、芳香族多塩基酸を用いることが好ましい。
【0028】
芳香族系多塩基酸としては、より具体的には、例えば、芳香族ジカルボン酸としては、例えば、o-フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、2,5-ジメチルテレフタル酸、2,2’-ビフェニルジカルボン酸、4,4-ビフェニルジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ジフェニルメタン-4,4´-ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、1,2-アズレンジカルボン酸、1,3-アズレンジカルボン酸、4,5-アズレンジカルボン酸、(-)-1,3-アセナフテンジカルボン酸、1,4-アントラセンジカルボン酸、1,5-アントラセンジカルボン酸、1,8-アントラセンジカルボン酸、2,3-アントラセンジカルボン酸、1,2-フェナントレンジカルボン酸、4,5-フェナントレンジカルボン酸、3,9-ペリレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸や、無水フタル酸、4-メチル無水フタル酸等の芳香族ジカルボン酸無水物が挙げられ、これらの芳香族ジカルボン酸及びその無水物等が利用できる。
【0029】
脂肪族系多塩基酸としては、より具体的には、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、スベリン酸、マレイン酸、クロロマレイン酸、フマル酸、ドデカン二酸、ピメリン酸、シトラコン酸、グルタル酸、イタコン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられ、これらの脂肪族ジカルボン酸及びその無水物が利用できる。又、無水コハク酸の誘導体(メチル無水コハク酸物、2,2-ジメチル無水コハク酸、ブチル無水コハク酸、イソブチル無水コハク酸、ヘキシル無水コハク酸、オクチル無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、フェニル無水コハク酸等)、無水グルタル酸の誘導体(無水グルタル酸、3-アリル無水グルタル酸、2,4-ジメチル無水グルタル酸、2,4-ジエチル無水グルタル酸、ブチル無水グルタル酸、ヘキシル無水グルタル酸等)、無水マレイン酸の誘導体(2-メチル無水マレイン酸、2,3-ジメチル無水マレイン酸、ブチル無水マレイン酸、ペンチル無水マレイン酸、ヘキシル無水マレイン酸、オクチル無水マレイン酸、デシル無水マレイン酸、ドデシル無水マレイン酸、2,3-ジクロロ無水マレイン酸、フェニル無水マレイン酸、2,3-ジフェニル無水マレイン酸等)等の無水物誘導体も利用できる。
【0030】
脂環族系多塩基酸としては、より具体的には、例えば、脂環族ジカルボン酸としては、例えば、ダイマー酸、シクロプロパン-1α,2α-ジカルボン酸、シクロプロパン-1α,2β-ジカルボン酸、シクロプロパン-1β,2α-ジカルボン酸、シクロブタン-1,2-ジカルボン酸、シクロブタン-1α,2β-ジカルボン酸、シクロブタン-1α,3β-ジカルボン酸、シクロブタン-1α,3α-ジカルボン酸、(1R)-シクロペンタン-1β,2α-ジカルボン酸、trans-シクロペンタン-1,3-ジカルボン酸、(1β,2β)-シクロペンタン-1,3-ジカルボン酸、(1β,3β)-シクロペンタン-1,3-ジカルボン酸、(1S,2S)-1,2-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,1-シクロヘプタンジカルボン酸、クバン-1,4-ジカルボン酸、2,3-ノルボルナンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸等の飽和脂環属ジカルボン酸や、1-シクロブテン-1,2-ジカルボン酸、3-シクロブテン-1,2-ジカルボン酸、1-シクロペンテン-1,2-ジカルボン酸、4-シクロペンテン-1,3-ジカルボン酸、1-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、2-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,3-ジカルボン酸、2,5-ヘキサジエン-1α,4α-ジカルボン酸等の環内に不飽和二重結合が1もしくは2個有した不飽和脂環属ジカルボン酸が挙げられ、これらの脂環族ジカルボン酸及びその無水物等が利用できる。
【0031】
また、ヘキサヒドロ無水フタル酸の誘導体((3-メチル-ヘキサヒドロ無水フタル酸、4-メチル-ヘキサヒドロ無水フタル酸)、テトラヒドロ無水フタル酸の誘導体(1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、4-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニル-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸等)等の水素添化した無水フタル酸誘導体も脂環族ジカルボン酸無水物として利用できる。
【0032】
さらに、無水クロレンド酸、無水ヘット酸、ビフェニルジカルボン酸無水物、無水ハイミック酸、エンドメチレン-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、メチル-3,6-エンドメチレン-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1-シクロペンテン-1,2-ジカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、1,8-ナフタレンジカルボン酸無水物、オクタヒドロ-1,3-ジオキソ-4,5-イソベンゾフランジカルボン酸無水物等の酸無水物類も多塩基酸として使用可能である。
【0033】
<ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-2)>
ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-2)について説明する。
ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-2)は、二塩基酸もしくはその誘導体と多価アルコールとの重縮合によるポリエステル主鎖を有するものであり、多価アルコールとしてはジオールを用いることが好ましい。(メタ)アクリロイル基は種々の方法で導入することができる。
【0034】
例えば、末端にカルボキシル基が残るように主鎖を形成した後、水酸基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物を前記カルボキシル基に反応させたり、エポキシ基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物を前記カルボキシル基に反応させたり、
あるいは、
末端に水酸基が残るように主鎖を形成した後、カルボキシル基含有アクリレート化合物を前記の末端の水酸基に反応させたり、イソシアナト基と(メタ)アクリロリル基とを有する化合物を前記末端の水酸基に反応させたりすることにより得ることができる。
多塩基酸もしくはその誘導体として3官能のものや、多価アルコールとして3官能のものを用い、側鎖にカルボキシル基や水酸基を導入し、これらの官能基を起点として(メタ)アクリロリル基を導入することもできる。
【0035】
前記二塩基酸としては、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-2)の原料として前記したものを任意に使用できる。
また、二塩基酸の誘導体としては、二塩基酸の無水物や、エタノール等の低級アルコールと多塩基酸との反応生成物が挙げられる。
屈折率の高いポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-2)が得られるという点で、二塩基酸もしくはその誘導体としては、芳香族二塩基酸もしくはその誘導体を用いることが好ましい。
【0036】
また、多価アルコールとしては、数平均分子量(Mn):約50~500の比較的低分子量のポリオール類が挙げられるが、特に制限が無く使用できる。
【0037】
比較的低分子量のポリオール類としては、より具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ポリオキシエチレングリコール(付加モル数10以下)、ポリオキシプロピレングリコール(付加モル数10以下)、プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール,トリシクロデカンジメタノール、シクロペンタジエンジメタノール、ダイマージオール等の脂肪族又は脂環式ジオール類;
【0038】
1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,2-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4’-メチレンジフェノール、4,4’-(2-ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’-ジヒドロキシビフェノール、o-,m-及びp-ジヒドロキシベンゼン、4,4’-イソプロピリデンフェノール、ビスフェノールにアルキレンオキサイドを付加させた付加型ビスフェノール等の芳香族ジオール類等を挙げることができる。
【0039】
付加型ビスフェノールの原料ビスフェノールとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられ、原料アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0040】
また、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの3つ以上の水酸基を含有するポリオールを一部使用しても良い。
【0041】
前記、多価アルコールのうち、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの、分岐したアルカンに水酸基が2つ以上導入されたものが、オリゴマーの、密着性、耐熱性等の点で好ましい。
【0042】
また、多価アルコールとしては、分岐したアルカンに水酸基が2つ以上導入された多価アルコールを用いることが、密着性、耐熱性等の点で更に好ましい。前記例示化合物の中では、例えば、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0043】
(メタ)アクリロリル基の導入のために用いられる化合物について説明する。
カルボキシル基との反応を利用する際に用いられる水酸基と(メタ)アクリロリル基とを有する化合物としては、後で説明する水酸基と(メタ)アクリロリル基と有する化合物(B-1)を同様に例示できる。
カルボキシル基との反応を利用する際に用いられるエポキシ基と(メタ)アクリロリル基とを有する化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,2-グリシドキシエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、若しくは4,5-エポキシペンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0044】
水酸基との反応を利用する際に用いられるカルボキシル基含有アクリレート化合物としては、エポキシアクリレートオリゴマー(A-2)の原料として前記したものを任意に使用できる。
水酸基との反応を利用する際に用いられるイソシアナト基と(メタ)アクリロリル基とを有する化合物としては、イソシアン酸ビニル、イソシアン酸アリル、イソシアン酸(メタ)アクリロイル、イソシアナトアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0045】
(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)の質量平均分子量(Mwと称す。)は700以上であり、
エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-1)のMwは700以上20000以下の範囲であることが好ましい。更に、Mwが1000~10000の範囲がより好ましい。
一方、ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-2)のMwは700以上50000以下の範囲であることが好ましい。更に、Mwが1000~20000の範囲がより好ましい。
(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)のMwが700以上であることにより、接着剤の硬化膜、即ち接着層の柔軟性が向上し、接着力や耐久性が向上する。また、(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)のMwが大き過ぎないことによって、適度な流動性を発現し無機酸化物粒子(X)を効果的に分散できるばかりでなく、接着剤に含まれる他の成分との相溶性が向上し、形成される接着剤層の透明性が向上する。
なお、本発明におけるMwは、GPCにおけるポリスチレン換算の質量平均分子量である。詳細は後述の実施例に記載する。
【0046】
(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)は、無機酸化物粒子(X)を微分散するための分散剤として用いることができる。
無機酸化物粒子(X)100質量部に対し、(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)を10~500質量部用いることが好ましい。(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)を10質量部以上用いることにより無機酸化物粒子(X)の分散性が向上し、接着剤膜の透明性が向上する。(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)を500質量部以下用いることにより、分散時の粘度を適度に下げ、分散プロセスにおける解砕力が高めることができ分散しやすくなる。
【0047】
<質量平均分子量が500以下の(メタ)アクリレート系モノマー(B)>
前記(メタ)アクリレートモノマー(B)は、水酸基を有すか、または複素環骨格の少なくともいずれかを有すものである。水酸基および複素環骨格を有すものは水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマー(B-1)に分類することとする。
前述の(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)が、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-1)の場合、本発明の接着剤は、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-1)よりも(メタ)アクリレート系モノマー(B)を多く含む。(メタ)アクリレート系モノマー(B)を多く含むことによって、室温での接着力が向上するばかりでなく、低温での接着力も向上する。
【0048】
<水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマー(B-1)>
接着剤中に水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマー(B-1)を含むことで、基材の水酸基等と水素結合を形成し、室温および低温での接着力が向上する。
【0049】
前記モノマー(B-1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(メタ)アクリル酸エチル-α-(ヒドロキシメチル)等の水酸基を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸グリシジルラウリン酸エステル等の脂肪酸エステル系(メタ)アクリル酸エステル;
シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルー2-ヒドロキシエチルフタル酸、等の環状(メタ)アクリル酸エステル;
前記水酸基を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル水酸基を有する(メタ)アクリレートに対してε-カプロラクトンの開環付加させることで分子末端に水酸基付与した(メタ)アクリル酸エステル;
前記水酸基を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル水酸基を有する(メタ)アクリレートに対してエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを繰り返し付加したアルキレンオキサイド付加(メタ)アクリル酸エステル等;の脂肪族(メタ)アクリル酸エステル;
2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル;
ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0050】
前記モノマー(B-1)としては、低温での接着力に優れる点で、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルが好ましく、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルが特に好ましい。
【0051】
<複素環を有する(メタ)アクリレートモノマー(B-2)>
接着剤中に複素環を有する(メタ)アクリレートモノマー(B-2)を含むことで、複素環を構成するヘテロ原子(硫黄、酸素および窒素からなる群より選択される)と基材表面の水酸基等の官能基との間に水素結合が形成され、室温および低温での接着力が向上する。更に、環状構造により高温での凝集力が向上し、高温での接着力が向上する。
【0052】
硫黄、酸素および窒素からなる群より選択される2個以上のヘテロ原子を環員原子として含む複素環としては、ジチオラン環、ジチオール環等の二個以上の硫黄原子を有する複素環、カーボネート環、ジオキソラン環、ジオキサン環等の二個以上の酸素原子を有する複素環、イソシアヌル環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピラジン環、ピリミジン環、ピペラジン環等の二個以上の窒素原子を有する複素環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、オキサジン環、オキサジアゾール環、オキサジアジン環、モルホリン環等の酸素原子と窒素原子を有する複素環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、イソチアゾール環、チアジン環、チアジアゾール環、チアジアジン環、ジチアジン環等の硫黄原子と窒素原子を有する複素環などがあげられる。
これらの複素環の中で、高温から低温まで幅広い温度領域において優れる点で、二個以上の酸素原子を環員原子として有する複素環が好ましく、二個の酸素原子を環員原子として有する複素環が好ましい。また、縮合複素環よりも単環複素環が好ましく、芳香族複素環よりも脂肪族複素環が好ましい。より具体的には、ジオキソラン環、ジオキサン環が特に好ましい。
【0053】
複素環を有する(メタ)アクリレートモノマー(B-2)中の(メタ)アクリロイル基の数は、1~6個が高温から低温まで幅広い温度領域において接着力が向上する点で好ましく、1個であることが特に好ましい。
【0054】
複素環を有する(メタ)アクリレートモノマー(B-2)の具体例としては、(2-メチル-2-エチル-1,3ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イルメチル、(メタ)アクリル酸(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル、1,3-ジオキサン-2-オン-5-イル(メタ)アクリレート、1-(メタ)アクリロイル-4-メチルピペラジン、(メタ)アクリル酸11-[1’,3’,3’-トリメチルスピロ[3H-ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン-3,2’(3’H)-[1H]インドール]-5’-イルオキシ]ウンデシル、2,5-ビス((メタ)アクロイルオキシエチルチオメチル)-1,4-ジチアン、ビニルイミダゾール、アクリロイルモルホリン等が挙げられ、2-メチル-2-エチル-1,3ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イルメチルが、高温から低温まで幅広い温度領域において優れる点で好ましい。
【0055】
<芳香環を有し、水酸基および複素環骨格を有しない質量平均分子量が500以下の(メタ)アクリレート系モノマー(C)>
本発明の接着剤は、接着剤層の屈折率制御と接着力向上の観点で、芳香環を有し、水酸基および複素環骨格を有しない質量平均分子量が500以下の(メタ)アクリレート系モノマー(C)(以下、モノマー(C)ともいう)を含むことが好ましい。
モノマー(C)は屈折率調整の補助機能を有し、モノマー(C)を用いることで無機酸化物粒子(X)の使用量を少なくしながら屈折率制御が可能となる。そのため接着剤層の被膜を形成し易くなり接着力が向上する。モノマー(C)は芳香環を2つ以上有するものがより好ましい。
【0056】
モノマー(C)の具体例としては、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールプロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、アセトキシ化ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等の芳香環含有単官能アクリレート化合物;
ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFプロピレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2―アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等の芳香環含有2官能アクリレート化合物等が挙げられる。
【0057】
モノマー(C)としては屈折率制御と接着性に優れる観点で、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2―アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンが好ましく、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0058】
<シクロアルカン骨格、またはシクロアルケン骨格の少なくとも一方を有し、水酸基、複素環骨格および芳香環を有しない質量平均分子量が500以下の(メタ)アクリレート系モノマー(D)>
本発明の接着剤は、硬化収縮の低減や接着剤塗膜の凝集力が向上し接着性が向上する点でモノマー(D)を含むことが好ましい。
モノマー(D)としては、複数の環骨格を有すもの、即ち、2個以上のシクロアルカン骨格を有すもの、2個以上のシクロアルケン骨格を有すもの、シクロアルカン骨格とシクロアルケン骨格との両方を有すものが挙げられる。
複数の環骨格は、1つの環骨格が他の環骨格の一部を成すこともできるし、複数の環骨格はそれぞれ独立しており、環骨格同士がアルキレン結合、エーテル結合、エステル結合などにより結合していてもよい。
【0059】
1つの環骨格が他の環骨格の一部を成すものとしては、例えば、ノルボルナン骨格、ノルボルネン骨格、アダマンタン骨格が挙げられる。
ノルボルネン骨格やノルボルナン骨格を有する(メタ)アクリレート系モノマーは、(メタ)アクリロイル基を1個以上有していればよく、例えばジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
これらのうち、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレートのように、3個以上の環状骨格を有するモノマーは、嵩高さを増すことで硬化収縮を抑制し接着力の向上がみられるため特に好ましい。
【0060】
アダマンタン骨格を有する(メタ)アクリレート系モノマーは、3個以上の環状骨格を有するので、接着剤層の耐熱性を向上できる。具体的な化合物としては3-ヒドロキシ-1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-プロピル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、3,5-ジヒドロキシ-1-アダマンチル(メタ)アクリレート、1,3-アダマンチルジオールジ(メタ)アクリレート、1,3,5-アダマンチルトリ(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-1,5-アダマンチルジ(メタ)アクリレート、3,5-ジヒドロキシ-1-アダマンチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
α,β-エチレン性不飽和二重結合が1個の3-ヒドロキシ-1-アダマンチルアクリレート、2-メチル-2-アダマンチルアクリレート、2-エチル-2-アダマンチルアクリレートは、接着性が優れるため特に好ましい。
【0061】
複数の環骨格がそれぞれ独立しており、環骨格同士がアルキレン結合、エーテル結合、エステル結合などにより結合しているモノマーとしては、水添ビフェノールAのジアクリレートや3,3-ジシクロプロピルアクリレートなどがある。
【0062】
本発明の接着剤は、さらに、オリゴマーとして(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン系オリゴマー(A-3)を含むこともできる。ポリウレタン系オリゴマーの質量平均分子量は、500~100000であることが好ましい。
【0063】
(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン系オリゴマー(A-3)とは、ウレタン結合と(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。例えば、1個以上のイソシアネート基を有する化合物と水酸基を有する化合物を反応させて得られる末端にイソシアネート基を有する化合物に、水酸基を有する(メタ)アクリロイル基を反応させて得ることができる。
【0064】
少なくとも1個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、1,4-フェニレンビスメチレンジイソシアナート等の芳香族イソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート等が挙げられる
【0065】
(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン系オリゴマー(A-3)の具体例としては、EBECRYL210、EBECRYL220(以上、ダイセル・オルネックス社製)、CN9782、CN9783(以上、SARTOMER社製)、等の芳香族ポリウレタン系オリゴマー、紫光3000B、紫光7510B(以上、日本合成化学工業社製)、EBECRYL230、EBECRYL270、EBECRYL8402、EBECRYL8701、EBECRYL8804(以上、ダイセル・オルネックス社製)等の脂肪族ポリウレタン系オリゴマーが挙げられる。
【0066】
本発明の接着剤は、前述の(A)~(D)以外のその他(メタ)アクリレート化合物(E)(以下、化合物(E)ともいう)や、カチオン重合性化合物(F)(以下、化合物(F)ともいう)を含んでも良い。
本発明の接着剤は、さらに、スチレン、α―メチルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香環含有ビニル化合物等もモノマー(C)に準ずるものとして用いることができる。
【0067】
化合物(E)を含むことにより、光学用活性エネルギー線重合性接着剤の粘度を下げて塗工性を向上させたり、湿熱耐性等の耐久性をより向上させたりすることができる。
【0068】
化合物(E)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、および(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸(メタ)アリル、(メタ)アクリル酸1-ブテニル、(メタ)アクリル酸3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-イル、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル、および(メタ)アクリル酸ビニル等の他の不飽和基を含有する(メタ)アクリル酸エステル;
【0069】
(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチルエチル、および(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸(メトキシカルボニル)メチル、(メタ)アクリル酸2-(エトキシカルボニルオキシ)ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-(プロポキシカルボニルオキシ)エチル、および(メタ)アクリル酸2-(オクチルオキシカルボニルオキシ)ブチル等のカルボニル基を1つ有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸2-オキソブタノイルエチル、(メタ)アクリル酸3-オキソブタノイルプロピル、(メタ)アクリル酸2,3-ジ(オキソブタノイル)ブチル、(メタ)アクリル酸2,3-ジ(オキソブタノイル)ヘキシル等のカルボニル基を2つ有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステル;
【0070】
(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸3-プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ブトキシエチル、および(メタ)アクリル酸4-ブトキシエチル等のアルコキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物等のアルキレンオキサイド含有(メタ)アクリル酸誘導体;
【0071】
ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸2,2-ジメチルプロピルジオール、ジ(メタ)アクリル酸ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート、ジ(メタ)アクリル酸2,5-ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸1,2-オクタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、およびジ(メタ)アクリル酸2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール等の2官能(メタ)アクリル酸エステル;
トリ(メタ)アクリル酸1,2,3-プロパントリオール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールヘキサン、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールオクタン、およびトリ(メタ)アクリル酸1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタン等の3官能(メタ)アクリル酸エステル;
【0072】
テトラ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、テトラ(メタ)アクリル酸2,2-ビス(ヒドロキシメチル)1,3-プロパンジオール、およびヘプタ(メタ)アクリル酸ジ2,2-ビス(ヒドロキシメチル)1,3-プロパンジオールポリアルキレンオキサイド等の多官能(メタ)アクリル酸エステル;
グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のカチオン重合性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物;
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の1個のヘテロ原子を含む複素環を有する(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0073】
<カチオン重合性化合物(F)>
化合物(F)としては、3員環エーテルであるエポキシ基を有する化合物、4員環エーテルであるオキセタニル基を有する化合物、ビニルエーテル化合物、環状エステル化合物、環状ホルマ-ル化合物、環状カーボネート化合物および含フッ素環状化合物等が好ましい。前記化合物の内、環を有する化合物は、いずれも(メタ)アクリロイル基を有さず、したがって、化合物(A)、(B)および(C)とは異なるものである。
化合物(F)を含むことにより、接着剤の硬化収縮が小さくなり、常温における接着力が向上する。
【0074】
エポキシ基を有する化合物(エポキシ化合物)としては、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物等が好ましい。
【0075】
芳香族エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノ-ルAジグリシジルエーテル、ビスフェノ-ルFジグリシジルエーテル、ビスフェノ-ルSジグリシジルエーテル、ビスフェノ-ルAプロピレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、フェノ-ルノボラックエポキシ、クレゾ-ルノボラックエポキシ、ビフェニル型エポキシ、レゾルシンジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノ-ルエチレンオキサイドグリシジルエーテル、t-ブチルフェニルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0076】
脂肪族エポキシ化合物としては、脂肪族モノアルコール、および脂肪族ポリアルコール、ならびにそのアルキレンオキサイド付加物のグリシジルエーテルが好ましい。脂肪族エポキシ化合物は、例えば、アリルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオ-ルのジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオ-ルのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロ-ルプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびグリセリン等の脂肪族多価アルコールに対して1種または2種以上のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイド)を付加することで得られるポリエーテルポリオ-ルのポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0077】
脂環式エポキシ化合物としては、例えば、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、1,2:8,9ジエポキシリモネン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペ-ト、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペ-ト等が挙げられる。
【0078】
エポキシ化合物のエポキシ当量は、通常30~3000g/eq程度が好ましく、50~1500g/eqがより好ましい。エポキシ当量が30g/eq以上の場合、硬化後のシートの可撓性が優れ、接着力もより向上する。また、3000g/eq以下になると、硬化性に優れ接着力が向上する。
【0079】
オキセタニル基を有する化合物としては、例えば、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、ジ(1-エチル-3-オキセタニル)メチルエーテル、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、フェノ-ルノボラックオキセタン、3-エチル-{(3-トリエトキシシリルプロポキシ)メチル}オキセタンなどが挙げられる。
【0080】
ビニルエーテル化合物としては、例えば、n-アミルビニルエーテル、i-アミルビニルエーテル、n-ヘキシルビニルエーテル、n-オクチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、n-ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、オレイルビニルエーテル等の炭素数5~20のアルキルアルコールおよびアルケニルアルコールのビニルエーテル;
シクロヘキシルビニルエーテル、2-メチルシクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル等の脂肪族環または芳香族環を有するモノアルコールのビニルエーテル;
グリセロ-ルモノビニルエーテル、1,4-ブタンジオ-ルモノビニルエーテル、1,4-ブタンジオ-ルジビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオ-ルジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、ペンタエリトリト-ルジビニルエーテル、ペンタエリトリト-ルテトラビニルエーテル、トリメチロ-ルプロパンジビニルエーテル、トリメチロ-ルプロパントリビニルエーテル、1,4-ジヒドロキシシクロヘキサンモノビニルエーテル、1,4-ジヒドロキシシクロヘキサンジビニルエーテル、1,4-ジヒドロキシメチルシクロヘキサンモノビニルエーテル、1,4-ジヒドロキシメチルシクロヘキサンジビニルエーテル等の多価アルコールのモノビニルエーテルおよびポリビニルエーテル;
トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルモノビニルエーテル等のポリアルキレングリコールモノジビニルエーテルおよびジビニルエーテル;
グリシジルビニルエーテル、エチレングリコールビニルエーテルメタクリレート等のその他のビニルエーテルが挙げられる。
【0081】
環状エステル化合物としては、例えばラクトン等が挙げられる。環状カーボネート化合物としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。環状ホルマ-ル化合物としては、例えば、ジオキソラン、ジオキサン、トリオキサン等が挙げられる。化合物(F)は、単独または2種類以上併用できる。
【0082】
化合物(F)は、エポキシ基を有する化合物およびオキセタニル基を有する化合物が好ましい。エポキシ基を有する化合物およびオキセタニル基を有する化合物の中でも、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペ-ト、ビスフェノ-ルAジグリシジルエーテル、ビスフェノ-ルFジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオ-ルジグリシジルエーテルは、反応性が特に優れているため好ましい。
【0083】
本発明の接着剤は、光重合開始剤を含むことが好ましい。前記光重合開始剤、光励起によってラジカル重合を開始可能であれば良く特に限定されない。例えば、モノカルボニル化合物、ジカルボニル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アシルホスフィンオキシド化合物、アミノカルボニル化合物等が好ましい。
【0084】
具体的には、前記モノカルボニル化合物は、例えばベンゾフェノン、4-メチル-ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート、4-フェニルベンゾフェノン、4-(4-メチルフェニルチオ)フェニル-エタノン、3,3´-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4-(1,3-アクリロイル-1,3,3´-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4-(1,3-アクリロイル-1,4,7,10,13-ペンタオキソトリデシル)ベンゾフェノン、3,3´,4,4´-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミン塩酸塩、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-2-(1-オキソ-2-プロペニルオキシエチル)メタアンモニウムシュウ酸塩、2-/4-イソ-プロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-ヒドロキ-3-(3,4-ジメチル-9-オキソ-9Hチオキサントン-2-イロキシ-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミン塩酸塩、ベンゾイルメチレン-3-メチルナフト(1,2-d)チアゾリン等が挙げられる。
【0085】
前記ジカルボニル化合物は、例えば1,2,2-トリメチル-ビシクロ[2.1.1]ヘプタン-2,3-ジオン、ベンザイル、2-エチルアントラキノン、9,10-フェナントレンキノン、メチル-α-オキソベンゼンアセテート、4-フェニルベンザイル等が挙げられる。アセトフェノン化合物としては、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-ジ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-スチリルプロパン-1-オン重合物、ジエトキシアセトフェノン、ジブトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2,2-ジエトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、3,6-ビス(2-メチル-2-モルホリノ-プロパノニル)-9-ブチルカルバゾール等が挙げられる。
【0086】
前記ベンゾインエーテル化合物は、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイゾブチルエーテル、ベンゾインノルマルブチルエーテル等が挙げられる。アシルホスフィンオキシド化合物としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、4-n-プロピルフェニル-ジ(2,6-ジクロロベンゾイル)ホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0087】
前記アミノカルボニル化合物は、例えばメチル-4-(ジメトキシアミノ)ベンゾエート、エチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-n-ブトキシエチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、イソアミル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、4,4´-ビス-4-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4´-ビス-4-ジエチルアミノベンゾフェノン、2,5´-ビス(4-ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン等が挙げられる。
これらは単独または2種類以上併用できる。
【0088】
また光重合開始剤は、増感剤(例えば、有機アミン)を併用できる。また、前記ラジカル重合性の光重合開始剤に加えて、カチオン重合用の光重合開始剤を併用できる。
【0089】
本発明の接着剤は、(メタ)アクリロイル基を有しないものもバインダー樹脂として含むことができる。具体的には、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ビニル樹脂等が挙げられる。これらは、単独または2種類以上併用できる。
【0090】
前記バインダー樹脂は、接着剤100質量%中に20質量部以下を含むことが好ましい。
【0091】
本発明の接着剤は、さらに界面活性剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、無機充填剤、顔料、および染料等を適宜含むことができる。
【0092】
本発明の接着剤は、無機酸化物粒子の種類や添加量を制御することにより、高い屈折率の接着剤層を形成できる。
【0093】
前記接着剤層の屈折率を調整するためには、無機酸化物粒子を変更すればよい。具体的には、酸化チタン(屈折率2.5~2.7)、酸化ジルコニウム(屈折率2.4)、酸化亜鉛(屈折率1.95)などが挙げられる。また、化合物(C)を含むことで接着剤層の屈折率をさらに向上させることができる。
【0094】
本発明の接着剤は、(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)と平均一次粒子径が5~100nmの無機酸化物粒子(X)を充分に混合することで、接着剤中に無機酸化物粒子を良好に分散できる。
本発明の接着剤は種々の方法で製造することができる。
例えば、(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)と無機酸化物粒子(X)とを混合・分散した後で、モノマー(B)、および必要に応じて(C)~(F)から選ばれる少なくとも一つの化合物を添加することで接着剤を得ることもできるし、
(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)と無機酸化物粒子(X)と(B)~(F)から選ばれる少なくとも一つの化合物とを混合・分散した後で、必要に応じて(B)~(F)から選ばれる少なくとも一つの化合物をさらに添加することで接着剤を得ることもできるし、
無機酸化物粒子(X)とモノマー(B)、および必要に応じて(C)~(F)から選ばれる少なくとも一つの化合物と混合・分散した後で、(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)を添加することで接着剤を得ることもできる。
無機酸化物粒子(X)に対して(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)を分散剤として効果的に機能させるためには、(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)の存在下に無機酸化物粒子(X)を分散することが好ましい。
混合・分散には、ホモジナイザー、ニーダー、ロール、アトライター、スーパーミル、ボールミル、ビーズミルおよび乾式粉砕処理機等を使用できる。なお前記混合には、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、磁性ビーズ、スチレンビーズ等のメディアを使用しても良い
【0095】
分散の程度は、動的光散乱法を利用した日機装(株)製「ナノトラックUPA」で測定することができる。本発明では、後述する実施例1に記載した通り、無機酸化物分散ペーストを作成し、前記測定によりD99平均粒子径が300nm未満になるまで分散することができる。なおD99平均粒子径が200nm未満になるまで分散することがより好ましい。
【0096】
本発明の接着剤の使用方法を説明する。
本発明の接着剤は、接着する対象の部材(基材という)に塗布し、未硬化の状態の接着剤に他の基材を重ね合わせ、活性エネルギー線の照射により硬化することで接着剤層を形成し、両基材を貼り合わせる。そのため、使用する基材のいずれか一方は、活性エネルギー線が透過できる必要がある。前記接着剤層の厚みは、0.1~30μmが好ましく、0.1~20μmがより好ましい。また屈折率は、1.4~2に調整することが好ましく、1.5~1.8がより好ましい。
【0097】
前記基材は、金属、セラミックス、ガラス、プラスチック等が挙げられ、特に制限されるものではない。
前記基材の形状は、フィルム、シート、板、レンズ形状、円盤形状、繊維等が挙げられる。
【0098】
前記プラスチックは、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
また、前記プラスチック等を使用して光学部材を製造することができる。具体的には、偏光板、位相差板、保護フィルム、プリズムシート、および光拡散フィルム等が挙げられる。
【0099】
接着剤を塗布する方法は、公知の方法が利用できる。具体的には、例えばロッド、ワイヤーバー、マイクログラビア、グラビア、ダイ、カーテン、リップ、スロットおよびスピン等の塗布方法が挙げられる。また前記塗布後に熱風乾燥を行い溶剤を揮発させることができる。
【0100】
活性エネルギー線は、硬化可能な波長の電磁波および粒子線である。具体的には、紫外線、電子線、波長400~500nmの可視光線等が好ましい。これらの中でも紫外線および波長400~500nmの可視光線が好ましい。活性エネルギー線の照射源は、紫外線および波長400~500nmの可視光線は、例えば高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ガリウムランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ等が挙げられる。また電子線は、熱電子放射銃、電解放射銃等が挙げられる。
【0101】
接着剤の硬化に使用する活性エネルギー線は、5~2000mJ/cmが好ましく、50~1000mJ/cmがより好ましい。前記活性エネルギー線照射は、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱等による熱処理を併用することができる。
【0102】
本発明の接着剤は、様々な部材の接着に使用できるが、高い屈折率が得られるため、例えば陰極線管、フラットディスプレイパネル(液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ、発光ダイオードディスプレイ等)等の各種表示装置の製造に使用できる。
【実施例
【0103】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨およびその均等の範囲を逸脱しない範囲において、任意に変更しても良い。
なお、以下の説明において量を示す「部」および「%」は、断りのない限り質量基準である。
また、質量平均分子量は、東ソー株式会社製ゲルパーミエイションクロマトグラフィー「HLC-8220GPC」を使用した測定した数値であり、分離カラム:東ソー株式会社製「TSK-GELSUPERH5000」、「TSK-GELSUPERH4000」、「TSK-GELSUPERH3000」、および「TSK-GELSUPERH2000」を4本直列に繋ぎ、移動相に温度40℃のテトラヒドロフランを用いて、0.6ml/分の流速で測定した、ポリスチレン換算の質量平均分子量である。
【0104】
また、本発明で言う酸価は次のように測定した。共栓三角フラスコ中に試料を、約1g精密に量り採り、トルエン/エタノール(容積比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持した後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定した。
乾燥状態の樹脂の値として、酸価(mgKOH/g)を次式により求めた。
酸価(mgKOH/g)={(5.611×a×F)/S}/(不揮発分濃度/100)
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0105】
また、本発明で言う水酸基価は次のように測定した。共栓三角フラスコ中に試料、約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解する。更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)を正確に5ml加え、約1時間攪拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。乾燥状態の樹脂の値として、水酸基価(mgKOH/g)を次式により求めた。
水酸基価(mgKOH/g)=[{(b-a)×F×28.25}/S]/(不揮発分濃度/100)+D
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価(mgKOH/g)
【0106】
<エポキシアクリレートオリゴマー(A-1-1)の合成例>
撹拌機、還流冷却管、ガス導入管、温度計を備えた5口セパラブルフラスコに、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(坂本薬品工業株式会社製:SR-16HL、エポキシ当量125)を67.8部、コハク酸30.9部、アクリル酸を1.3部、ヒドロキノンモノメチルエーテルを0.1部、仕込み乾燥空気を導入しながら60℃に昇温し均一溶液になるまで混合した。
ここへテトラブチルアンモニウムボレートを0.5部添加し、100℃に昇温し8時間反応させオリゴマー(A-1-1)を得た。オリゴマー(A-1-1)の質量平均分子量は13000であった。
【0107】
<エポキシアクリレートオリゴマー(A-1-2)の合成例>
撹拌機、還流冷却管、ガス導入管、温度計を備えた5口セパラブルフラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製:JER828、エポキシ当量190)を72.0部、アクリル酸を5.5部、無水フタル酸を22.5部、ヒドロキノンモノメチルエーテルを0.1部、仕込み乾燥空気を導入しながら70℃に昇温し均一溶液になるまで混合した。
ここへテトラブチルアンモニウムボレートを0.5部添加し、100℃に昇温し8時間反応させオリゴマー(A-1-2)を得た。オリゴマー(A-1-2)の質量平均分子量は3200であった。
【0108】
<エポキシアクリレートオリゴマー(A-1-3)の合成例>
撹拌機、還流冷却管、ガス導入管、温度計を備えた5口セパラブルフラスコに、フルオレン含有エポキシ樹脂(大阪ガスケミカル株式会社製:OGSOLCG-500、エポキシ当量310)を50.8部、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレート(東亞合成株式会社製:アロニックスM-5300を49.2部、ヒドロキノンモノメチルエーテルを0.1部、仕込み乾燥空気を導入しながら70℃に昇温し均一溶液になるまで混合した。
ここへテトラブチルアンモニウムボレートを0.5部添加し、100℃に昇温し8時間反応させオリゴマー(A-1-3)を得た。オリゴマー(A-1-3)の質量平均分子量は1400であった。
【0109】
<エポキシアクリレートオリゴマー(A-1-4)の合成例>
撹拌機、還流冷却管、ガス導入管、温度計を備えた5口セパラブルフラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製:JER1001、エポキシ当量475)を86.2部、アクリル酸を13.8部、ヒドロキノンモノメチルエーテルを0.1部、仕込み乾燥空気を導入しながら70℃に昇温し均一溶液になるまで混合した。
ここへテトラブチルアンモニウムボレートを0.5部添加し、100℃に昇温し8時間反応させオリゴマー(A-1-4)を得た。オリゴマー(A-1-4)の質量平均分子量は1100であった。
【0110】
<エポキシアクリレートオリゴマー(A-1-5)の合成例(比較例用)>
撹拌機、還流冷却管、ガス導入管、温度計を備えた5口セパラブルフラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製:JER828、エポキシ当量190)を72.5部、アクリル酸を27.5部、ヒドロキノンモノメチルエーテルを0.1部、仕込み乾燥空気を導入しながら室温で均一溶液になるまで混合した。
ここへテトラブチルアンモニウムボレートを0.5部添加し、100℃に昇温し8時間反応させオリゴマー(A-1-5)を得た。オリゴマー(A-1-5)の質量平均分子量は550であった。
【0111】
<ポリエステルアクリレートオリゴマー(A-2-1)の合成例>
撹拌機、蒸留管、ガス導入管、温度計を備えた5口セパラブルフラスコに、アジピン酸342部、無水フタル酸347部、プロピレングリコール312部、酸化亜鉛0.04部を常圧下に乾燥窒素を通じつつ約180℃の温度で縮合水を留出させながら、エステル化を行い、酸価77mgKOH/gのポリエステルジカルボン酸を得た。このポリエステルジカルボン酸100部に次で4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル19.0部とテトラブチルアンモニウムボレートを0.5部とヒドロキノンモノメチルエーテル0.1部を加え、酸価が1mgKOH/g以下になるまで100℃で付加反応を行ないポリエステルアクリレートオリゴマー(A-2-1)を得た。オリゴマー(A-2-1)の質量平均分子量は1700であった。
【0112】
<ポリエステルアクリレートオリゴマー(A-2-2)の合成例>
撹拌機、蒸留管、ガス導入管、温度計を備えた5口セパラブルフラスコに、無水コハク酸502部、1,4-ブタンジオール498部、酸化亜鉛0.04部を常圧下に窒素ガスを通じつつ約210℃の温度で縮合水を留出させながら、エステル化を行った。ポリエステルの酸価が0.3以下になったときに真空ポンプをつなぎ徐々に真空度を上げ反応を完結し水酸基価14mgKOH/gのポリエステルポリオールを得た。このポリエステルポリオール100部に次でアクリル酸1.8部とヒドロキノンモノメチルエーテル0.1部を加え、100℃でエステル化を行ないポリエステルアクリレートオリゴマー(A-2-2)を得た。オリゴマー(A-2-2)の質量平均分子量は16000であった。
【0113】
<ポリエステルアクリレートオリゴマー(A-2-3)の合成例(比較例用)>
撹拌機、蒸留管、ガス導入管、温度計を備えた5口セパラブルフラスコに、アジピン酸313部、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール687部、酸化亜鉛0.04部を常圧下に乾燥窒素を通じつつ約180℃の温度で縮合水を留出させながら、エステル化を行い、水酸基価260mgKOH/gのポリエステルポリオールを得た。このポリエステルポリオール100部に次でアクリル酸33.4部とテトラブチルアンモニウムボレートを0.5部とヒドロキノンモノメチルエーテル0.1部を加え、酸価が1mgKOH/g以下になるまで100℃で付加反応を行ないポリエステルアクリレートオリゴマー(A-2-3)を得た。オリゴマー(A-2-3)の質量平均分子量は500であった。
【0114】
<実施例1>
エポキシアクリレートオリゴマー(A-1-1)を30部、二酸化ジルコニウム20部、4-ヒドロキシブチルアクリレート50部をビーズミル分散機に仕込み、メディアにジルコニアビースを使用して、分散を行い無機酸化物分散ペーストを得た。
得られた無機酸化物分散ペーストに光重合開始剤(イルガキュア184BASFジャパン社製)2部を溶解し接着剤を得た。
【0115】
<実施例2~23、比較例1~5>
表1~3の配合に従い原料の種類および配合量を変えた他は実施例1と同様に行うことで実施例2~11、および比較例1~6の接着剤を得た。
【0116】
表1~3の略称と性状は以下の通り。
ZrO:市販二酸化ジルコニウム(平均一次粒子径:20nm)
TiO:市販二酸化チタン(平均一次粒子径:20nm)
4HBA:4-ヒドロキシエチルアクリレート
AE-90:ジエチレングリコールモノアクリレート
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
CTFA:アクリル酸5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イルメチル
ACMO:アクリロイルモルホリン
PPEA:o-フェニルフェノキシエチルアクリレート
PBA:フェノキシベンジルアクリレート
BPEA:ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジアクリレート
A-BPEF:9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン
PEA:フェノキシエチルアクリレート
FA511AS:ジシクロペンテニルアクリレート
IBXA:イソボルニルアクリレート
A-DCP:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート
【0117】
[屈折率]
実施例、比較例で得られた各接着剤を剥離性フィルムに、バーコーターを使用して乾燥後の厚さが200μmになるように塗布し、剥離性フィルムを貼り合わせた。次にメタルハライドランプを使用して紫外線を2000mJ/cm照射し、硬化することで接着剤層を形成し、屈折率測定用の評価試料(剥離性フィルム/接着剤/剥離性フィルム構成)を得た。
前記評価試料から剥離性フィルムを剥離して、接着剤層の屈折率を、アッベ屈折計(アタゴ株式会社)を使用して屈折率を測定した。
【0118】
[ヘイズ]
実施例、比較例で得られた各接着剤を厚さ100μmのPETフィルム(易接着処理済、コスモシャインA-4100、東洋紡社製)に、バーコーターを使用して乾燥後の厚さが3μmになるように塗布し、剥離性フィルムを貼り合わせた。次にメタルハライドランプを使用してPET側から紫外線を400mJ/cm照射し、硬化することで接着剤層を形成し、ヘイズ測定用の評価試料を得た。
前記評価試料から剥離性フィルムを剥離して、ヘイズメーターNDH-2000(東京電色社製)を使用してヘイズ値を測定した。
【0119】
[接着力]
実施例、比較例で得られた各接着剤を前記同様にPETフィルム上に塗布した後、ガラス板を貼り合わせ、前記同様に紫外線を照射した評価試料を得た。またガラス板をポリプロピレン板(PP)またはステンレス板(SUS)に替えて前記同様に紫外線を照射した評価試料をそれぞれ得た。なお、ポリプロピレン板の接着面にはコロナ処理が施されている。
得られた評価試料について下記の方法で接着力を評価した。
ガラス板、ポリプロピレン板およびステンレス板を使用した評価試料(幅25mm・長さ100mm)を準備した。
室温(23℃、50%RH雰囲気下)、低温(0℃)、高温(60℃)の3つの温度環境下で、ショッパー型剥離試験器を使用して剥離角180°で剥離試験(引っ張り速度300mm/分;単位g/25mm幅)行い、剥離後の評価試料の状態を目視で観察した。剥離状態を4段階で評価した。◎、○、△の評価であれば、実用上、問題のないレベルである。
◎:剥離不可、あるいはPET基材が破断した。(極めて良好)
〇:PET基材が破壊しながら剥がれた。(良好)
△:PET基材の破壊と、PET基材と接着剤層が界面の剥離の混合で剥がれた。(使用可)
×:PET基材と接着剤層が界面で剥がれた。(使用不可)
【0120】
【表1】
【0121】
【表2】
【0122】
【表3】
【0123】
表1~3の結果から実施例は、接着力および低温、高温接着力が良好であり、ヘイズが低いため透明性が良好で、高い水準にまで屈折率を制御できる接着剤であることが分かる。このため、光学部材として好適に使用できる。
一方、比較例1では無機酸化物を有しないため、屈折率調整が難しい。比較例2は質量平均分子量700以上のエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-1)を使用していないため無機酸化物の分散が困難であり透明性が得られず、更に接着性能も劣る。比較例3は質量平均分子量700以上のポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー(A-1)を使用していないため無機酸化物の分散が困難であり透明性が得られず、更に接着性能も劣る。比較例4では、水酸基等を有する(メタ)アクリレート系モノマー(B)の量の方がエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーより少ないため無機酸化物の分散自体はできるものの、接着力が劣っていた。比較例5では水酸基等を有する(メタ)アクリレート系モノマー(B)を含有しないため接着力が悪かった。