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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】腕金用鳥害防止具
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/32 20110101AFI20220531BHJP
【FI】
A01M29/32
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018191229
(22)【出願日】2018-10-09
(65)【公開番号】P2020058276
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】森山 裕之
【審査官】川野 汐音
(56)【参考文献】
【文献】実開平4-136086(JP,U)
【文献】特開2017-209018(JP,A)
【文献】特開2011-182735(JP,A)
【文献】米国特許第9706767(US,B2)
【文献】韓国公開特許第2002-56793(KR,A)
【文献】韓国公開特許第2001-69099(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00-99/00
H02G 7/00
E04H 12/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピン碍子を少なくとも端部に取り付けた腕金に設置できる針山形の腕金用鳥害防止具であって、
帯板状の基板、及び、前記基板からその長手方向に林立し、先端の尖った複数の針体で構成した一対の防止具本体と、
前記腕金を端部の開口側から内部に導入自在に一端部を開口し、他端部を閉塞し、前記腕金の端部を外側から覆う有底箱形のキャップ本体と、を備え、
前記基板は、その長手方向に沿って一方の端部から突出した回動軸を有し、
前記キャップ本体は、
上面板の端部に形成し、前記回動軸を回動自在に支持し、離隔した状態で配置された一対の軸受部と、
外周から突出し、間接活線工事用の絶縁操作棒で把持できる把持部と、を有し、
前記防止具本体は、
複数の前記針体の先端が下向きに向かう第1の状態と、
前記基板を介して、前記腕金の上面から複数の前記針体の先端が上向きに向かう第2の状態に変換できる、腕金用鳥害防止具。
【請求項2】
前記キャップ本体の上面板は、先端縁から切り欠き、前記ピン碍子を支持する支持ボルトを逃げる逃げ部を有し、
前記キャップ本体の下面板は、先端縁から切り欠き、前記ピン碍子を支持する支持ボルトを外周方向から導入できる切り欠き部を有し、
前記下面板の切り欠き部に前記支持ボルトを導入した状態から、前記支持ボルトに螺合した一つ以上のナット部材を前記下面板に締結することで、前記腕金の端部に固定できる、請求項1記載の腕金用鳥害防止具。
【請求項3】
前記基板は、前記針体が突出する面と反対面に貼着した磁石板を有し、
前記磁石板は、前記腕金の上面に吸着できる、請求項1又は2記載の腕金用鳥害防止具。
【請求項4】
前記把持部は、基端縁を前記キャップ本体の底面板に固定した第1固定把持板からなる、請求項1から3のいずれかに記載の腕金用鳥害防止具。
【請求項5】
前記把持部は、基端縁を前記キャップ本体の下面板に固定した第2固定把持板からなる、請求項1から3のいずれかに記載の腕金用鳥害防止具。
【請求項6】
前記把持部は、基端縁を前記キャップ本体の下面板に回動自在に連結した可動把持板からなり、
前記可動把持板は、前記ピン碍子を支持する支持ボルトを先端部から導入でき、前記支持ボルトに螺合した一つ以上のナット部材の脱落を防止するナット脱落防止用の長穴を中央部に開口している、請求項1から3のいずれかに記載の腕金用鳥害防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腕金用鳥害防止具に関する。特に、絶縁操作棒を用いて、無停電状態で電気工事を実施できる間接活線工事に適した腕金用鳥害防止具であって、カラス又は鳩などの鳥類が電柱に固定した腕金に営巣することで発生する鳥害を防止する腕金用鳥害防止具の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電柱は、四角パイプ状の腕金を略水平状態で装架している。腕金は、ピン碍子を介して、架空送電線を支持している。カラス又は鳩などの鳥類が電柱に固定した腕金に営巣すると、鳥類の糞が電気装柱物に付着するなどの鳥害が発生する心配がある。このため、複数の傘の骨組み状の鳥害防止具、いわゆる、アンブレラボーン形の鳥害防止具を腕金に立設することで、鳥類の飛来を防止する鳥害対策が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、先端の尖った針体を林立した、いわゆる、針山形の鳥害防止具を腕金の上面に設置することで、鳥類の飛来を防止する鳥害対策も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-117269号公報
【文献】特開平11-289644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図16は、従来技術によるアンブレラボーン形の鳥害防止具の構成を示す側面図である。図17は、従来技術によるアンブレラボーン形の鳥害防止具を拡大した状態で示す正面図である。なお、本願の図16図17は、特許文献1の図1図2に相当している。
【0006】
図16又は図17を参照すると、従来技術によるアンブレラボーン形の鳥害防止具8は、真直に延びる円筒状の主軸部材81と二つの円環状の分岐部材82を備えている。又、鳥害防止具8は、長さの異なる複数の枝棒83と二つの管状のスリーブ84を備えている。
【0007】
図16又は図17を参照すると、分岐部材82は、主軸部材81を内部に挿入できる。枝棒83の基端部は、分岐部材82の外周に固定されている。そして、複数の枝棒83は、分岐部材82の遠心方向に放射状に配置されると共に、それらの先端部が分岐部材82から下り傾斜した状態で配置されている。
【0008】
図16又は図17を参照すると、スリーブ84は、主軸部材81を内部に挿入している。主軸部材81の基端部と下段の分岐部材82の間に、一方のスリーブ84を介在させることで、主軸部材81の基端部から下段の分岐部材82までの高さを規定できる。又、上段の分岐部材82と下段の分岐部材82の間に、他方のスリーブ84を介在させることで、上段の分岐部材82と下段の分岐部材82の間隔を規定できる。更に、主軸部材81の先端部に石突81aを締結することで、鳥害防止具8の構成部材を一体化できる。
【0009】
図16又は図17を参照すると、鳥害防止具8は、支持金具85を更に備えている。支持金具85は、L字状に屈曲した支持部材85aとL字状に屈曲したボルト部材85bを有している。又、支持金具85は、ナット部材85cと三角体状の押え部材85dを有している。
【0010】
図17を参照すると、支持部材85aは、主軸部材81の基端部を挿通できる挿通孔を一片の先端部側に開口している。主軸部材81の基端部を前記挿通孔に挿通し、ナット部材91nを主軸部材81の基端部に締結することで、支持部材85aの先端部に鳥害防止具8を固定できる。又、支持部材85aの一片の基端部側は、腕金Aの上面に載置されると共に、支持部材85aの他片は、腕金Aの側面に対向配置されている。
【0011】
図17を参照すると、ボルト部材85bは、その一端部が支持部材85aの一片に係止されている。又、ボルト部材85bは、雄ねじ部を他端部側に螺設している。支持部材85aの他片とボルト部材85bの一端部側が腕金Aの両側面に対向配置された状態では、ボルト部材85bの他端部側は、押え部材85dを貫通すると共に、支持部材85aの他片から突出している。そして、ボルト部材85bの雄ねじ部にナット部材85cを締結することで、支持金具85を介して、鳥害防止具8を腕金Aに支持できる。なお、押え部材85dは、その上面が腕金Aの下面に当接している。
【0012】
図16を参照すると、腕金Aは、電柱Pに片持ち支持されている。又、腕金Aは、略水平状態に配置されている。腕金Aには、三つのピン碍子Piを略等間隔で配置している。図17を参照すると、一対の腕金A・Aは、電柱Pを挟んで略平行に配置されている。
【0013】
図16又は図17を参照すると、特許文献1による鳥害防止具8は、隣接し合う一組のピン碍子Pi・Piの中央部に配置されると共に、対向する一対の腕金A・Aの中央部に配置されているので、複数の枝棒83の先端がピン碍子Piに接触することなく、複数の枝棒83が四つのピン碍子Piよりも内側の領域を覆うように放射状に配置され、鳥類の大きさに拘らず営巣を確実に防止することができる、としている。
【0014】
又、図16又は図17を参照すると、特許文献1による鳥害防止具8は、複数の枝棒83が鉛直方向に間隔をあけて複数設けることができるので、複数の枝棒83の配置密度を小さくして、飛来する鳥類による営巣をより確実に防止することができる、としている。
【0015】
図18は、従来技術による針山形の鳥害防止具の構成を示す斜視図であり、針山形の鳥害防止具を腕金に取り付けた状態図である。図19は、従来技術による針山形の鳥害防止具の構成を示す斜視分解組立図である。なお、本願の図18図19は、特許文献2の図5図2に相当している。
【0016】
図18又は図19を参照すると、従来技術による針山形の鳥害防止具9は、防止具本体91とC形の支持金具92で構成している。防止具本体91は、鳥類が腕金Aに飛来して営巣することを防止できる。防止具本体91は、絶縁性を有する合成樹脂で成形されている。支持金具92は、防止具本体91を腕金Aに取り付けでき、防止具本体91を支持できる。
【0017】
図18又は図19を参照すると、防止具本体91は、帯板状の格子板91gと先端の尖った複数の針体91pを備えている。格子板91gは、長手方向に延びる複数の竪桟部材911と、竪桟部材911と略直交する複数の横桟部材912で構成している。針体91pは、竪桟部材911と横桟部材912の交点、又は、横桟部材912の端縁部から立設している。
【0018】
図18又は図19を参照すると、支持金具92は、一組の把持片92a・92bと連結片92cを有している。一組の把持片92a・92bは、所定の間隔を設けて略平行に配置されている。一組の把持片92a・92bは、それらの先端部にボルト挿通孔92hを開口している。連結片92cは、一組の把持片92a・92bの基端部同士を連結している。
【0019】
図18又は図19を参照すると、一組の把持片92a・92bの間には、腕金Aをその側面方向から導入できる。腕金Aを一組の把持片92a・92bの間に導入後に、ボルト挿通孔92hにボルト部材93を挿通し、ボルト部材93の先端部側に図示しないナット部材を締結することで、支持金具92を腕金Aに固定できる。
【0020】
図18又は図19を参照すると、支持金具92は、矩形の挟持板94を更に備えている。挟持板94は、一方の把持片92aの上面に溶接で接合している。挟持板94は、その一側部から一対の鉤状の嵌合片94a・94aを立設している。又、挟持板94は、その他側部から一対の鉤状の係止片94b・94bを立設している。そして、嵌合片94aと係止片94bは、対向配置されている。
【0021】
図18又は図19を参照して、嵌合片94aと係止片94bとの間隔は、防止具本体91に形成した一組の竪桟部材911・911が嵌合する寸法を有している。一方の竪桟部材911を一対の嵌合片94a・94aに嵌合させた後に、他方の竪桟部材911を一対の係止片94b・94bに押し込むことにより、防止具本体91を挟持板94に取り付けることができる。
【0022】
図18又は図19に示した鳥害防止具9は、間接活線工事用の図示しない絶縁操作棒(いわゆる、絶縁ヤットコ)を用いて、腕金Aに取り付けることができる。そして、予め、防止具本体91を挟持板94に取り付けておく。
【0023】
次に、図18又は図19を参照して、図示しない絶縁ヤットコを用いて、支持金具92の連結片92cを把持する。次に、連結片92cを絶縁ヤットコで把持した状態で、絶縁ヤットコを操作して、腕金Aを一組の把持片92a・92bの間に導入する。
【0024】
次に、図18又は図19を参照して、図示しない絶縁ヤットコを用いて、ボルト挿通孔92hにボルト部材93を挿通する。次に、ボックスレンチ付きの絶縁操作棒(図示せず)を用いて、ボルト部材93の先端部側に図示しないナット部材を締結する。これにより、鳥害防止具9を腕金Aの上面に取り付けることができる(図18参照)。
【0025】
図16又は図17に示したアンブレラボーン形の鳥害防止具8と、図18又は図19に示した針山形の鳥害防止具9を対比すると、アンブレラボーン形の鳥害防止具8は、針山形の鳥害防止具9と比べて、構成が複雑なので、一般に単価が高い。したがって、複数の針山形の鳥害防止具9を腕金に配列することが、設置費用の面では好ましい。
【0026】
又、アンブレラボーン形の鳥害防止具8と、針山形の鳥害防止具9を対比すると、アンブレラボーン形の鳥害防止具8は、針山形の鳥害防止具9と比べて、複数の枝棒83で構成した外形が大きく、間接活線工事用の絶縁操作棒を用いて、腕金を迂回した縁線などを配設した腕金に取り付けるには、困難なことが多いという問題がある。
【0027】
同様に、特許文献2による針山形の鳥害防止具9は、間接活線工事用の絶縁操作棒を用いて、腕金を迂回した縁線などを配設した腕金にその側面側から取り付けるには、容易でないという問題がある。
【0028】
間接活線工事用の絶縁操作棒を用いて、腕金を迂回した縁線などを配設した腕金に容易に取り付けできる針山形の腕金用鳥害防止具が求められている。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0029】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、間接活線工事用の絶縁操作棒を用いて、腕金を迂回した縁線などを配設した腕金に容易に取り付けできる針山形の腕金用鳥害防止具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明者は、縁線などは腕金の上方に配設されていることに着目し、間接活線工事用の絶縁操作棒を用いて、腕金の開口側から針山形の鳥害防止具を腕金に取り付けることで、上記の課題を解決できると考え、これに基づいて、以下のような新たな針山形の腕金用鳥害防止具を発明するに至った。
【0031】
(1)本発明による腕金用鳥害防止具は、ピン碍子を少なくとも端部に取り付けた腕金に設置できる針山形の腕金用鳥害防止具であって、帯板状の基板、及び、前記基板からその長手方向に林立し、先端の尖った複数の針体で構成した一対の防止具本体と、前記腕金を端部の開口側から内部に導入自在に一端部を開口し、他端部を閉塞し、前記腕金の端部を外側から覆う有底箱形のキャップ本体と、を備え、前記基板は、その長手方向に沿って一方の端部から突出した回動軸を有し、前記キャップ本体は、上面板の端部に形成し、前記回動軸を回動自在に支持し、離隔した状態で配置された一対の軸受部と、外周から突出し、間接活線工事用の絶縁操作棒で把持できる把持部と、を有し、前記防止具本体は、複数の前記針体の先端が下向きに向かう第1の状態と、前記基板を介して、前記腕金の上面から複数の前記針体の先端が上向きに向かう第2の状態に変換できる。
【0032】
(2)前記キャップ本体の上面板は、先端縁から切り欠き、前記ピン碍子を支持する支持ボルトを逃げる逃げ部を有し、前記キャップ本体の下面板は、先端縁から切り欠き、前記ピン碍子を支持する支持ボルトを外周方向から導入できる切り欠き部を有し、前記下面板の切り欠き部に前記支持ボルトを導入した状態から、前記支持ボルトに螺合した一つ以上のナット部材を前記下面板に締結することで、前記腕金の端部に固定できることが好ましい。
【0033】
(3)前記基板は、前記針体が突出する面と反対面に貼着した磁石板を有し、前記磁石板は、前記腕金の上面に吸着できることが好ましい。
【0034】
(4)前記把持部は、基端縁を前記キャップ本体の底面板に固定した第1固定把持板からなってもよい。
【0035】
(5)前記把持部は、基端縁を前記キャップ本体の下面板に固定した第2固定把持板からなってもよい。
【0036】
(6)前記把持部は、基端縁を前記キャップ本体の下面板に回動自在に連結した可動把持板からなり、前記可動把持板は、前記ピン碍子を支持する支持ボルトを先端部から導入でき、前記支持ボルトに螺合した一つ以上のナット部材の脱落を防止するナット脱落防止用の長穴を中央部に開口していてもよい。
【発明の効果】
【0037】
本発明による腕金用鳥害防止具は、帯板状の基板及び基板に林立した複数の針体で構成した一対の防止具本体と、一対の基板を離隔した状態で、基板の端部と回動自在に連結すると共に、腕金の端部を外側から覆う有底箱形のキャップ本体と、を備え、複数の針体の先端が下向きに向かう第1の状態では、縁線に干渉することなく、腕金用鳥害防止具を腕金の開口側から腕金に取り付けることができ、複数の針体の先端が上向きに向かう第2の状態では、鳥類などが飛来して腕金に営巣することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の一実施形態による腕金用鳥害防止具の構成を示す斜視図である。
図2】前記実施形態による腕金用鳥害防止具の構成を示す図であり、図2(A)は、腕金用鳥害防止具の正面図、図2(B)は、腕金用鳥害防止具の平面図、図2(C)は、腕金用鳥害防止具の右側面図である。
図3】前記実施形態による腕金用鳥害防止具の要部を拡大した斜視図である。
図4】前記実施形態による腕金用鳥害防止具の構成を示す斜視分解組立図である。
図5】前記実施形態による腕金用鳥害防止具の構成を示す右側面図であり、一方の防止具本体と他方の防止具本体では、長さを異ならせている。
図6】防止具本体の図示を省略した第1変形例によるキャップ本体の構成を示す図であり、図6(A)は、第1変形例によるキャップ本体の縦断面図、図6(B)は、図6(A)の背面図である。
図7】防止具本体の図示を省略した第1変形例によるキャップ本体の使用状態を示す図であり、第1変形例によるキャップ本体を腕金の端部に装着する前の状態図である。
図8】防止具本体の図示を省略した第1変形例によるキャップ本体の使用状態を示す図であり、第1変形例によるキャップ本体を腕金の端部に装着した状態図である。
図9】防止具本体の図示を省略した第2変形例によるキャップ本体の構成を示す斜視図である。
図10】防止具本体の図示を省略した第2変形例によるキャップ本体の構成を示す図であり、図10(A)は、第2変形例によるキャップ本体の縦断面図、図10(B)は、図10(A)の背面図である。
図11】防止具本体の図示を省略した第2変形例によるキャップ本体の使用状態を示す図であり、第2変形例によるキャップ本体を腕金の端部に装着する前の状態図である。
図12】防止具本体の図示を省略した第2変形例によるキャップ本体の使用状態を示す図であり、第2変形例によるキャップ本体を腕金の端部に装着した状態図である。
図13】防止具本体の図示を省略した第2変形例によるキャップ本体の使用状態を示す図であり、図13(A)は、可動把持板を反時計方向に回動して、可動把持板に開口した長穴に支持ボルトを押し込んだ状態図、図13(B)は、図13(A)の下面図である。
図14】本発明による腕金用鳥害防止具を操作するための絶縁操作棒の構成を示す正面図である。
図15図14の要部を拡大した正面図である。
図16】従来技術によるアンブレラボーン形の鳥害防止具の構成を示す側面図である。
図17】従来技術によるアンブレラボーン形の鳥害防止具を拡大した状態で示す正面図である。
図18】従来技術による針山形の鳥害防止具の構成を示す斜視図であり、針山形の鳥害防止具を腕金に取り付けた状態図である。
図19】従来技術による針山形の鳥害防止具の構成を示す斜視分解組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0040】
本発明による腕金用鳥害防止具の構成を説明する前に、本発明による腕金用鳥害防止具を操作するための絶縁操作棒の構成を説明する。
【0041】
(絶縁操作棒の構成)
図14又は図15を参照すると、絶縁操作棒5は、長尺の操作棒51と工具部52で構成している。又、絶縁操作棒5は、作動棒53を備えている。工具部52は、操作棒51の先端部に取り付けている。
【0042】
図14又は図15を参照すると、工具部52は、開閉する一対の湾曲した把持腕5a・5bで構成している。そして、一方の把持腕5aは、基端部が固定された固定腕であり、他方の把持腕5bは、一方の把持腕5aの基端部に設けた回動軸5cを中心に回動する可動腕となっている。
【0043】
図14を参照すると、作動棒53は、操作棒51に沿って保持されている。作動棒53の先端部は、他方の把持腕5bに回動自在に連結している。そして、作動棒53の基端部に設けた操作レバー54を操作すると、一方の把持腕5aに対して、他方の把持腕5bを開閉できる。絶縁操作棒5は、操作棒51及び作動棒53の中間部が絶縁性を有するプラスチックパイプなどで構成され、間接活線工法に好適なように、絶縁性を確保している。
【0044】
図14を参照して、操作レバー54を握って、操作レバー54を操作棒51に近づけると、一方の把持腕5aに対して、他方の把持腕5bを閉じることができる。操作レバー54を解放すると、操作レバー54に連結したばね(図示せず)の力で、一方の把持腕5aに対して、他方の把持腕5bを開くことができる。図14又は図15は、一方の把持腕5aに対して、他方の把持腕5bが最大に開いた状態を示している。
【0045】
図14又は図15を参照して、一方の把持腕5aは、先細り状の把持爪51aを突出している。把持爪51aは、把持面50aを形成している。把持面50aは、回動軸5cの回転中心から遠心方向に沿って略平行に形成されている。同様に、他方の把持腕5bは、先細り状の把持爪51bを突出している。把持爪51bは、把持面50bを形成している。把持面50bは、把持面50aと所定の開角を設けて配置されている。図14又は図15を参照して、操作レバー54を握ると、把持面50bを把持面50aに近づけることができる。
【0046】
図14又は図15に示した絶縁操作棒5は、高所に配置された高圧配電線などを一対の把持爪51a・51bで把持できる、いわゆる「絶縁ヤットコ」になっている。
【0047】
(腕金用鳥害防止具の構成)
次に、本発明の一実施形態による腕金用鳥害防止具の構成を説明する。図1から図5を参照すると、本発明の一実施形態による腕金用鳥害防止具(以下、鳥害防止具と略称する)10は、腕金Aに取り付けることができる。腕金Aは、略水平状態で電柱Pに装架されている。又、腕金Aは、ピン碍子Piを少なくとも端部に取り付けている。
【0048】
図1から図5を参照して、鳥害防止具10を腕金Aに設置することで、鳥類などが飛来して腕金Aに営巣することを防止できる。
【0049】
図1から図5を参照すると、鳥害防止具10は、一対の防止具本体1・1と有底箱形のキャップ本体2を備えている。防止具本体1は、帯板状の基板1bと先端の尖った複数の円錐体状の針体1pで構成している。複数の針体1pは、基板1bからその長手方向に林立している。基板1b及び複数の針体1pは、絶縁性を有する合成樹脂で一体に構成することが好ましい。キャップ本体2は、絶縁性を有する合成樹脂で構成することが好ましい。
【0050】
図1から図5を参照すると、キャップ本体2は、一端部を開口している。キャップ本体2は、腕金Aをその端部の開口Op側から内部に導入できる(図4参照)。又、キャップ本体2は、他端部を閉塞している。キャップ本体2の内部に腕金Aの端部を導入すると、キャップ本体2は、腕金Aの端部を外側から覆うことができる。
【0051】
図2から図4を参照すると、基板1bは、回動軸1sを有している(図4参照)。回動軸1sは、基板1bの長手方向に沿って、一方の端部から突出している。回動軸1sは、丸鋼棒などから成ることが好ましく、丸鋼棒を基板1bの一方の端部に一体成形することが好ましい。
【0052】
一方、図2から図4を参照すると、キャップ本体2は、離隔した状態で配置された一対の軸受部2s・2sを有している。一対の軸受部2s・2sは、キャップ本体2の上面板2tの端部に形成している。回動軸1sを軸受部2sの軸受穴に挿入し、回動軸1sの端部に円筒状のキャップ部材2cを圧入することで、キャップ本体2に対して、回動軸1sを回動自在に支持できる。又、回動軸1sの端部にキャップ部材2cを圧入することで、一対の防止具本体1・1とキャップ本体2を離脱困難に連結できる。
【0053】
(キャップ本体の構成)
図1から図5を参照すると、キャップ本体2は、その外周から突出した把持部21を有している。把持部21は、間接活線工事用の絶縁操作棒5の工具部52に設けた一対の把持腕5a・5bで把持できる(図14又は図15参照)。そして、絶縁操作棒5は、鳥害防止具10を操作できる。実施形態による把持部21は、基端縁をキャップ本体2の底面板2bに固定した第1固定把持板からなっている。
【0054】
図2(B)又は図3及び図4を参照すると、キャップ本体2は、上面板2tの端縁から切り欠いた逃げ部22dを有している。キャップ本体2を腕金Aの開口Op側から挿入すると、逃げ部22dは、ピン碍子Piを支持する支持ボルトBsと干渉することなく、支持ボルトBsを逃げることができる。
【0055】
又、図4を参照すると、キャップ本体2は、下面板2uの端縁から切り欠いた切り欠き部23dを有している。図7を参照して、ピン碍子Piを支持する支持ボルトBsに螺合したナット部材Nを緩めた状態で、腕金Aをキャップ本体2の内部に導入すると、切り欠き部23dには、支持ボルトBsを外周方向から導入できる。
【0056】
図2又は図4を参照して、キャップ本体2の切り欠き部23dに支持ボルトBsを導入した状態から、支持ボルトBsに螺合したナット部材Nを下面板2uに締結することで、キャップ本体2を腕金Aの端部に固定できる。
【0057】
図5を参照して、実施形態による鳥害防止具10は、腕金Aに実装されるピン碍子Piの配置によって、防止具本体1の長さが異なる二種類の防止具本体1を用意しておくことが好ましい。
【0058】
図5を参照すると、電柱Pは、腕金Aの中央部を固定している。腕金Aの一端部側には、その端部にピン碍子Piを配置すると共に、電柱Pに隣接してピン碍子Piを配置している。腕金Aの他端部側には、その端部のみにピン碍子Piを配置している。このようなピン碍子Piの配置が想定されることから、L1<L2の関係にある二種類の防止具本体1を用意しておくことが好ましい。
【0059】
(腕金用鳥害防止具の作用)
次に、実施形態による鳥害防止具10の操作手順を説明しながら、鳥害防止具10の作用及び効果を説明する。
【0060】
最初に、図7を援用して、支持ボルトBsに螺合したナット部材Nを緩めておく。次に、図1又は図4を参照して、一対の把持腕5a・5bで把持部21を把持し、キャップ本体2の開口と腕金Aの端部の開口Opを対向配置する。
【0061】
次に、図4を参照して、絶縁操作棒5を用いて(図14又は図15参照)、一対の防止具本体1・1の間に、腕金Aを通過させた後に、キャップ本体2の内部に腕金Aの端部を導入する。この状態では、切り欠き部23dには、支持ボルトBsを外周方向から導入している。次に、支持ボルトBsに螺合したナット部材Nを鍔部13に締結することで、キャップ本体2を腕金Aの端部に固定できる(図5参照)。
【0062】
実施形態による鳥害防止具10は、複数の針体1pの先端が下向きに向かう第1の状態では、縁線に干渉することなく、腕金用鳥害防止具10を腕金Aの開口側から腕金Aに取り付けることができる。
【0063】
又、実施形態による鳥害防止具10は、複数の針体1pの先端が下向きに向かう第1の状態から(図3参照)、基板1bを略180度、回動することで、基板1bを介して、腕金Aの上面から複数の針体1pの先端が上向きに向かう第2の状態に変換できる。この場合、基板1bは、針体1pが突出する面と反対面に貼着した磁石板1mを有し、磁石板1mは、腕金Aの上面に吸着できるので、腕金Aの上面から複数の針体1pの先端が上向きに向かう第2の状態を確実に維持できる。
【0064】
更に、実施形態による鳥害防止具10は、他端部を閉塞し、腕金Aの端部を外側から覆う有底箱形のキャップ本体2を備えているので、腕金Aの端部の開口から鳥類などが進入して営巣することを防止できる。
【0065】
又、実施形態による鳥害防止具10は、支持ボルトBsに螺合したナット部材Nで下面板2uを腕金Aに締結しているので、鳥害防止具10を腕金Aに確実に固定できる。
【0066】
[第1変形例]
(キャップ本体の構成)
次に、第1変形例によるキャップ本体の構成を説明する。図6から図8を参照すると、第1変形例によるキャップ本体3は、腕金Aの端部に取り付けることができる。なお、図6から図8では、キャップ本体3に連結される一対の防止具本体1・1は、図示を省略している。
【0067】
図6から図8を参照すると、第1変形例によるキャップ本体3は、有底箱形に形成している。キャップ本体3は、一端部を開口している。キャップ本体3は、腕金Aをその端部の開口側から内部に導入できる(図7参照)。又、キャップ本体3は、他端部を閉塞している。キャップ本体3の内部に腕金Aの端部を導入すると、キャップ本体3は、腕金Aの端部を外側から覆うことができる(図8参照)。
【0068】
図6から図8を参照すると、キャップ本体3は、その外周から突出した把持部31を有している。把持部31は、間接活線工事用の絶縁操作棒5の工具部52に設けた一対の把持腕5a・5bで把持できる(図14又は図15参照)。そして、絶縁操作棒5は、キャップ本体3を操作できる。第1変形例による把持部31は、基端縁をキャップ本体3の下面板3uに固定した第2固定把持板からなっている。
【0069】
図6を参照すると、キャップ本体3は、上面板3tの端縁から切り欠いた逃げ部32dを有している。キャップ本体3を腕金Aの開口Op側から挿入すると、逃げ部32dは、ピン碍子Piを支持する支持ボルトBsと干渉することなく、支持ボルトBsを逃げることができる。
【0070】
又、図6を参照すると、キャップ本体3は、下面板3uの端縁から切り欠いた切り欠き部33dを有している。図7を参照して、ピン碍子Piを支持する支持ボルトBsに螺合したナット部材Nを緩めた状態で、腕金Aをキャップ本体3の内部に導入すると、切り欠き部33dには、支持ボルトBsを外周方向から導入できる。
【0071】
図7又は図8を参照して、キャップ本体3の切り欠き部33dに支持ボルトBsを導入した状態から、支持ボルトBsに螺合したナット部材Nを下面板3uに締結することで、キャップ本体3を腕金Aの端部に固定できる。
【0072】
(キャップ本体の作用)
次に、第1変形例によるキャップ本体3の操作手順を説明しながら、キャップ本体3の作用及び効果を説明する。
【0073】
最初に、図7を参照して、支持ボルトBsに螺合したナット部材Nを緩めておく。次に、図6又は図7を参照して、一対の把持腕5a・5bで把持部31を把持し、キャップ本体3の開口と腕金Aの端部の開口Opを対向配置する。
【0074】
次に、図8を参照して、絶縁操作棒5を用いて(図14又は図15参照)、キャップ本体3の内部に腕金Aの端部を導入する。この状態では、切り欠き部33dには、支持ボルトBsを外周方向から導入している。次に、支持ボルトBsに螺合したナット部材Nを鍔部13に締結することで、キャップ本体3を腕金Aの端部に固定できる(図8参照)。
【0075】
第1変形例によるキャップ本体3は、支持ボルトBsに螺合したナット部材Nで鍔部13を腕金Aに締結しているので、キャップ本体3を腕金Aに確実に固定できる。
【0076】
第1変形例によるキャップ本体3は、実施形態によるキャップ本体2と同様な効果を奏するが、把持部31がキャップ本体3の下面板3uから突出しているので、絶縁操作棒5で下方からアプローチし易いという特別な効果がある。
【0077】
[第2変形例]
(キャップ本体の構成)
次に、第2変形例によるキャップ本体の構成を説明する。図9から図13を参照すると、第2変形例によるキャップ本体4は、腕金Aの端部に取り付けることができる。なお、図9から図13では、キャップ本体4に連結される一対の防止具本体1・1は、図示を省略している。
【0078】
図9から図13を参照すると、第2変形例によるキャップ本体4は、有底箱形に形成している。キャップ本体4は、一端部を開口している。キャップ本体4は、腕金Aをその端部の開口側から内部に導入できる(図9参照)。又、キャップ本体4は、他端部を閉塞している。キャップ本体4の内部に腕金Aの端部を導入すると、キャップ本体4は、腕金Aの端部を外側から覆うことができる(図10参照)。
【0079】
図9から図13を参照すると、キャップ本体4は、その外周から突出した把持部41を有している。把持部41は、間接活線工事用の絶縁操作棒5の工具部52に設けた一対の把持腕5a・5bで把持できる(図11から図13参照)。第2変形例による把持部41は、基端縁をヒンジ41hでキャップ本体4の下面板4uに回動自在に連結した可動把持板からなっている。
【0080】
図9又は図10(B)を参照すると、把持部41は、長穴411を中央部に開口している。図12から図13を参照して、把持部41を反時計方向に回動すると、長穴411には、支持ボルトBsを先端部から導入できる。なお、ヒンジ41hは、把持部41の姿勢が維持できるように、緊締されている。
【0081】
図9又は図10(A)を参照すると、キャップ本体4は、上面板4tの端縁から切り欠いた逃げ部42dを有している。キャップ本体4を腕金Aの開口Op側から挿入すると、逃げ部42dは、ピン碍子Piを支持する支持ボルトBsと干渉することなく、支持ボルトBsを逃げることができる。
【0082】
又、図9又は図10(A)を参照すると、キャップ本体4は、下面板4uの端縁から切り欠いた切り欠き部43dを有している。図11を参照して、ピン碍子Piを支持する支持ボルトBsに螺合したナット部材Nを緩めた状態で、腕金Aをキャップ本体4の内部に導入すると、切り欠き部43dには、支持ボルトBsを外周方向から導入できる。
【0083】
図12を参照して、下面板4uの切り欠き部43dに支持ボルトBsを導入した状態から、支持ボルトBsに螺合したナット部材Nを下面板4uに締結することで、キャップ本体4を腕金Aの端部に固定できる。
【0084】
図13を参照して、図12に示した状態から、把持部41を反時計方向に回動すると、支持ボルトBsの先端部側を長穴411に嵌合できる。そして、支持ボルトBsに螺合したナット部材Nの脱落を防止できる。
【0085】
(キャップ本体の作用)
次に、第2変形例によるキャップ本体4の操作手順を説明しながら、キャップ本体4の作用及び効果を説明する。
【0086】
最初に、図11を参照して、支持ボルトBsに螺合したナット部材Nを緩めておく。次に、図9又は図11を参照して、一対の把持腕5a・5bで把持部41を把持し、キャップ本体4の開口と腕金Aの端部の開口Opを対向配置する。
【0087】
次に、図11を参照して、絶縁操作棒5を用いて(図14又は図15参照)、キャップ本体4の内部に腕金Aの端部を導入する。この状態では、切り欠き部43dには、支持ボルトBsを外周方向から導入している。次に、支持ボルトBsに螺合したナット部材Nを下面板4uに締結することで、キャップ本体4を腕金Aの端部に固定できる(図12参照)。
【0088】
次に、図13を参照して、図12に示した状態から、把持部41を反時計方向に回動すると、支持ボルトBsの先端部側を長穴411に嵌合できる。そして、ナット脱落防止キャップを用いることなく、支持ボルトBsに螺合したナット部材Nの脱落を防止できる。
【0089】
第2変形例によるキャップ本体4は、第1変形例によるキャップ本体3と同様な効果を奏するが、第2変形例によるキャップ本体4は、ナット脱落防止キャップを用いることなく、支持ボルトBsに螺合したナット部材Nの脱落を防止できる、という特別な効果がある。
【0090】
本発明による腕金用鳥害防止具は、以下の効果が期待できる。
(1)間接活線工事用の絶縁操作棒を用いて、針山形の鳥害防止具を腕金に容易に取り付けることができる。
(2)安価な針山の鳥害防止器を用いて、鳥害を防止できる。
(3)風などの振動によって腕金用鳥害防止具が腕金から外れる心配が無くなる。
(4)針体の先端が縁線又はピン碍子に接触する事態を抑制できる。
【符号の説明】
【0091】
1・1 一対の防止具本体
1b 基板
1p 針体
1s 回動軸
2 キャップ本体
2s・2s 一対の軸受部
5 絶縁操作棒
10 鳥害防止具(腕金用鳥害防止具)
21 把持部
A 腕金
Pi ピン碍子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19