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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】スライドドア支持装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 11/54 20060101AFI20220531BHJP
   E05D 15/10 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
E05F11/54 A
E05D15/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018212905
(22)【出願日】2018-11-13
(65)【公開番号】P2020079512
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】桐生 知仁
(72)【発明者】
【氏名】石黒 大樹
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-080468(JP,A)
【文献】特開2017-109549(JP,A)
【文献】特開2017-159815(JP,A)
【文献】特開2013-230779(JP,A)
【文献】特開2001-317269(JP,A)
【文献】実開昭56-140685(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第19723837(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00-17/00
E05D 1/00-15/58
B60J 5/00- 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の側面に形成されるドア開口部を開閉するスライドドアを前記車体に支持するスライドドア支持装置であって、
前記ドア開口部の下端部に配置される第1下側レールと、
前記ドア開口部の下端部において、前記第1下側レールよりも車両幅方向における内方に配置される第2下側レールと、
前記ドア開口部の上端部に配置される上側レールと、
前記スライドドアの下端部に連結される下側ガイドユニットと、
前記スライドドアの上端部に連結される上側ガイドユニットと、を備え、
前記第1下側レールは、車両前方に延びる直線部と、当該直線部の先端から車両前方に進むに連れて車両幅方向における内方に湾曲する湾曲部と、を有し、
前記第2下側レールは、車両前方に延びる直線部と、当該直線部の先端から車両前方に進むに連れて前記第1下側レールとの距離が次第に短くなるように湾曲する湾曲部と、を有し、
前記上側レールは、車両前方に延びる直線部と、当該直線部の先端から車両前方に進むに連れて車両幅方向における内方に湾曲する湾曲部と、を有し、
前記下側ガイドユニットは、前記第1下側レールに沿って移動する第1下側ガイドローラと、前記第2下側レールに沿って移動する第2下側ガイドローラと、基端部が前記スライドドアに対して回動可能に連結されるとともに当該基端部よりも先端寄りの位置で前記第1下側ガイドローラ及び前記第2下側ガイドローラを支持する下側回動アームと、を有し、
前記上側ガイドユニットは、前記上側レールに沿って移動する第1上側ガイドローラ及び第2上側ガイドローラと、前記上側レールに沿うように延びる転動面上を転動する上側ロードローラと、基端部が前記スライドドアに対して回動可能に連結されるとともに当該基端部よりも先端寄りの位置で前記第1上側ガイドローラ、前記第2上側ガイドローラ及び前記上側ロードローラを支持する上側回動アームと、を有する
スライドドア支持装置。
【請求項2】
前記上側レールは、前記転動面を有する
請求項1に記載のスライドドア支持装置。
【請求項3】
前記下側回動アームは、平板状をなす
請求項1又は請求項2に記載のスライドドア支持装置。
【請求項4】
前記下側ガイドユニットは、
前記下側回動アームの基端部と回動可能に連結され、前記スライドドアに固定される下側固定部と、
前記下側固定部を付勢する付勢部材と、を有し、
前記下側固定部と前記下側回動アームとの間をなす角度をアーム角度としたとき、
前記第1下側ガイドローラが前記第1下側レールの直線部及び湾曲部に沿って移動し、前記第2下側ガイドローラが前記第2下側レールの湾曲部に沿って移動する場合、前記スライドドアの開度が小さくなるに連れて、前記アーム角度が次第に小さくなるものであり、
前記付勢部材は、前記アーム角度が大きくなる方向に前記下側固定部を付勢する
請求項1~請求項3の何れか一項に記載のスライドドア支持装置。
【請求項5】
前記付勢部材は、前記アーム角度が小さくなるに連れて、前記下側固定部に対する付勢力を大きくする
請求項4に記載のスライドドア支持装置。
【請求項6】
前記アーム角度は、前記第1下側ガイドローラが前記第1下側レールの直線部に沿って移動し、前記第2下側ガイドローラが前記第2下側レールの直線部に沿って移動する場合に最大となるものであり、
前記付勢部材は、前記アーム角度が最大の場合でも、前記下側固定部を付勢する
請求項4又は請求項5に記載のスライドドア支持装置。
【請求項7】
前記付勢部材は、渦巻きばねである
請求項4~請求項6の何れか一項に記載のスライドドア支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドドア支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、側面にドア開口部が形成された車体と、ドア開口部を開閉するスライドドアと、スライドドアを車体に支持するスライドドア支持装置と、を備える車両が知られている。スライドドア支持装置は、スライドドアがドア開口部を開閉できるようにスライドドアを車両前後方向に移動可能に支持し、スライドドアが車両前後方向に移動するときに車体に干渉しないようにスライドドアを車両幅方向に移動可能に支持する。
【0003】
例えば、特許文献1には、図10に示すように、ドア開口部の下端部に配置される第1下側レール110及び第2下側レール120と、スライドドア200の下端部に連結される下側ガイドユニット130と、を有するスライドドア支持装置100が記載されている。
【0004】
第1下側レール110は、車両前後方向に延びる直線部111と、車両前方に進むに連れて車両幅方向における内方に湾曲する湾曲部112と、を有する。第2下側レール120は、車両前後方向に延びる直線部121と、車両前方に進むに連れて第1下側レール110との距離が次第に短くなるように湾曲する湾曲部122と、を有する。一方、下側ガイドユニット130は、第1下側レール110に沿って移動する第1ガイドローラ131と、第2下側レール120に沿って移動する第2ガイドローラ132と、車体に設けられた転動面上を転動するロードローラ133と、を有する。また、下側ガイドユニット130は、第1ガイドローラ131、第2ガイドローラ132及びロードローラ133を支持するとともにスライドドア200に対して回動可能に連結される回動アーム134を有する。
【0005】
そして、第1ガイドローラ131が第1下側レール110の直線部111に沿って移動し、第2ガイドローラ132が第2下側レール120の直線部121に沿って移動することにより、第1ガイドローラ131及び第2ガイドローラ132を支持する回動アーム134が車両前後方向に移動する。その結果、回動アーム134に連結されるスライドドア200が車両前後方向に移動する。また、第1ガイドローラ131が第1下側レール110の直線部111及び湾曲部112に沿って移動し、第2ガイドローラ132が第2下側レール120の湾曲部122に沿って移動することにより、第1ガイドローラ131及び第2ガイドローラ132を支持する回動アーム134が車両前後方向に移動しつつ車両幅方向に移動する。その結果、回動アーム134に連結されるスライドドア200が車両前後方向に移動しつつ車両幅方向に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-80468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようなスライドドア支持装置100において、第1ガイドローラ131が直線部111に沿って移動し、第2ガイドローラ132が直線部121に沿って移動する場合には、回動アーム134が第1下側レール110及び第2下側レール120に沿って動く。この場合には、ロードローラ133と転動面との接点において、ロードローラ133の回転方向(周方向)がロードローラ133の移動方向に対して傾かないため、ロードローラ133が転動面に対して横滑りしにくい。なお、図10における一点鎖線は、ロードローラ133の移動軌跡TRを示す。
【0008】
一方、第1ガイドローラ131が直線部111及び湾曲部112に沿って移動し、第2ガイドローラ132が湾曲部122に沿って移動する場合には、回動アーム134が回動しつつ第1下側レール110及び第2下側レール120に沿って動く。この場合には、図10に示すように、ロードローラ133と転動面との接点において、ロードローラ133の回転方向(周方向)がロードローラ133の移動方向に対して傾くため、ロードローラ133が転動面に対して横滑りしやすい。
【0009】
本発明の目的は、スライドドアの自重を支えるロードローラの横滑りを抑制できるスライドドア支持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するスライドドア支持装置は、車体の側面に形成されるドア開口部を開閉するスライドドアを前記車体に支持するスライドドア支持装置であって、前記ドア開口部の下端部に配置される第1下側レールと、前記ドア開口部の下端部において、前記第1下側レールよりも車両幅方向における内方に配置される第2下側レールと、前記ドア開口部の上端部に配置される上側レールと、前記スライドドアの下端部に連結される下側ガイドユニットと、前記スライドドアの上端部に連結される上側ガイドユニットと、を備え、前記第1下側レールは、車両前方に延びる直線部と、当該直線部の先端から車両前方に進むに連れて車両幅方向における内方に湾曲する湾曲部と、を有し、前記第2下側レールは、車両前方に延びる直線部と、当該直線部の先端から車両前方に進むに連れて前記第1下側レールとの距離が次第に短くなるように湾曲する湾曲部と、を有し、前記上側レールは、車両前方に延びる直線部と、当該直線部の先端から車両前方に進むに連れて車両幅方向における内方に湾曲する湾曲部と、を有し、前記下側ガイドユニットは、前記第1下側レールに沿って移動する第1下側ガイドローラと、前記第2下側レールに沿って移動する第2下側ガイドローラと、基端部が前記スライドドアに対して回動可能に連結されるとともに当該基端部よりも先端寄りの位置で前記第1下側ガイドローラ及び前記第2下側ガイドローラを支持する下側回動アームと、を有し、前記上側ガイドユニットは、前記上側レールに沿って移動する第1上側ガイドローラ及び第2上側ガイドローラと、前記上側レールに沿うように延びる転動面上を転動する上側ロードローラと、基端部が前記スライドドアに対して回動可能に連結されるとともに当該基端部よりも先端寄りの位置で前記第1上側ガイドローラ、前記第2上側ガイドローラ及び前記上側ロードローラを支持する上側回動アームと、を有する。
【0011】
上記構成によれば、スライドドアが開閉動作する場合、下側ガイドユニットにおいて、第1下側ガイドローラが第1下側レールに沿って移動し、第2下側ガイドローラが第2下側レールに沿って移動する。このため、下側回動アームは、スライドドアの開度によっては、第1下側レール又は第2下側レールに沿って移動するときに、第1下側レール又は第2下側レールの長手方向に対する姿勢が変化するように回動することがある。
【0012】
その一方で、スライドドアが開閉動作する場合、上側ガイドユニットにおいて、第1上側ガイドローラ及び第2上側ガイドローラが1本の上側レールに沿って移動する。このため、上側回動アームは、上側レールに沿って移動するときに、上側レールの長手方向に対する姿勢が変化するように回動しない。その結果、スライドドアの開度に関わらず、上側ロードローラと転動面との接点において、上側ロードローラの回転方向(周方向)が上側ロードローラの移動方向に対して傾きにくくなる。こうして、スライドドア支持装置は、スライドドアの自重を支える上側ロードローラが横滑りすることを抑制できる。
【0013】
上記スライドドア支持装置において、前記上側レールは、前記転動面を有することが好ましい。
上記構成のスライドドア支持装置は、車体に上側ロードローラの転動面を作り込む必要がなくなる。
【0014】
上記スライドドア支持装置において、前記下側回動アームは、平板状をなすことが好ましい。
上側回動アームに上側ロードローラを設ける場合には、下側回動アームの断面形状を曲げ剛性及びねじり剛性の高い形状としなくてもよくなる。この点、上記構成のスライドドア支持装置は、下側回動アームを簡素な形状にできる。
【0015】
上記スライドドア支持装置において、前記下側ガイドユニットは、前記下側回動アームの基端部と回動可能に連結され、前記スライドドアに固定される下側固定部と、前記下側固定部を付勢する付勢部材と、を有し、前記下側固定部と前記下側回動アームとの間をなす角度をアーム角度としたとき、前記第1下側ガイドローラが前記第1下側レールの直線部及び湾曲部に沿って移動し、前記第2下側ガイドローラが前記第2下側レールの湾曲部に沿って移動する場合、前記スライドドアの開度が小さくなるに連れて、前記アーム角度が次第に小さくなるものであり、前記付勢部材は、前記アーム角度が大きくなる方向に前記下側固定部を付勢することが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、アーム角度は、スライドドアが閉動作する場合に小さくなり、スライドドアが開動作する場合に大きくなる。言い換えれば、アーム角度が大きくなるとき、スライドドアが開動作する。この点、上記構成のスライドドア支持装置は、アーム角度が大きくなる方向に下側固定部を付勢する付勢部材を備える。このため、付勢部材は、下側固定部を介して、スライドドアを開方向に付勢できる。こうして、スライドドア支持装置は、スライドドアの開度が小さい場合に、第1下側レール及び第2下側レールと下側ガイドユニットとの係合態様に起因して、スライドドアに閉方向に作用する力を軽減できる。
【0017】
上記スライドドア支持装置において、前記付勢部材は、前記アーム角度が小さくなるに連れて、前記下側固定部に対する付勢力を大きくすることが好ましい。
上記構成のスライドドア支持装置は、スライドドアが全閉位置に位置するときに、アーム角度が最小となる点で付勢力が最大となる。このため、付勢部材は、スライドドアが全閉位置から開動作し始める際に、スライドドアを開方向に付勢する力を大きくできる。こうして、スライドドア支持装置は、スライドドアを全閉位置から開動作させるために必要な力を低減できる。
【0018】
上記スライドドア支持装置において、前記アーム角度は、前記第1下側ガイドローラが前記第1下側レールの直線部に沿って移動し、前記第2下側ガイドローラが前記第2下側レールの直線部に沿って移動する場合に最大となるものであり、前記付勢部材は、前記アーム角度が最大の場合でも、前記下側固定部を付勢することが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、スライドドアの開度が大きい場合でも、付勢部材が下側固定部を付勢するため、スライドドアの開閉動作時における下側固定部の姿勢が安定する。このため、スライドドア支持装置は、スライドドアの開度が大きい場合に、スライドドアの下端部の姿勢を安定させることができる。
【0020】
上記スライドドア支持装置において、前記付勢部材は、渦巻きばねであることが好ましい。
上記構成のスライドドア支持装置は、下側固定部に付勢力を付与しやすくなる。
【発明の効果】
【0021】
スライドドア支持装置は、スライドドアの自重を支えるロードローラの横滑りを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】スライドドア支持装置を備える車両の側面図。
図2】上側レール及び上側ガイドユニットの平面図。
図3】上側レール及び上側ガイドユニットの分解斜視図。
図4】上側レール及び上側ガイドユニットの端面図。
図5】下側レール及び下側ガイドユニットの平面図。
図6】下側レール及び下側ガイドユニットの分解斜視図。
図7】下側レール及び下側ガイドユニットの端面図。
図8】(a),(b)は、下側ガイドユニットの作用を説明する平面図。
図9】(a),(b)は、下側ガイドユニットの作用を説明する平面図。
図10】従来のスライドドア支持装置の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、スライドドア支持装置を備える車両の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、車両10は、側面にドア開口部11が設けられた車体12と、ドア開口部11を開閉するスライドドア13と、スライドドア13を車体12に支持するスライドドア支持装置20と、を備える。
【0024】
スライドドア13は、ドア開口部11を介した乗員の車両10に対する乗降を制限する全閉位置と、ドア開口部11を介した乗員の車両10に対する乗降を可能とする全開位置と、の間で開閉動作する。以降の説明では、スライドドア13の開き具合をスライドドア13の開度とも言う。すなわち、スライドドア13の開度は、全閉位置で最小となり、全開位置で最大となる。本実施形態では、スライドドア13は、車両10の利用者が手動で操作するスライドドアであるとする。
【0025】
図1に示すように、スライドドア支持装置20は、ドア開口部11の上端部に配置される上側レール30と、ドア開口部11の下端部に配置される第1下側レール40及び第2下側レール50と、ドア開口部11の後方に配置される中央レール60と、を備える。上側レール30、第1下側レール40、第2下側レール50及び中央レール60は、例えば、車体12に凹み形成した凹部内に配置される。上側レール30は、中央レール60よりも車両上方に配置され、第1下側レール40及び第2下側レール50は、中央レール60よりも車両下方に配置される。
【0026】
また、スライドドア支持装置20は、スライドドア13の上端部に連結される上側ガイドユニット70と、スライドドア13の下端部に連結される下側ガイドユニット80と、スライドドア13の車両上下方向における中央部に連結される中央ガイドユニット90と、を備える。上側ガイドユニット70及び下側ガイドユニット80は、スライドドア13の前端寄りの位置に連結され、中央ガイドユニット90は、スライドドア13の後端寄りの位置に連結される。
【0027】
次に、図2図4を参照して、上側レール30と上側ガイドユニット70とについて詳しく説明する。
図2に示すように、上側レール30は、車両前方に延びる直線部31と、直線部31の前端から車両前方に進むに連れて車両幅方向における内方に向かって湾曲する湾曲部32と、を有する。本実施形態において、車両前方に延びる直線部31は、車両前後方向と並行に延びるものだけでなく、車両前後方向に対して僅かに傾いた方向に延びるものを含むものとする。
【0028】
図3に示すように、上側レール30の直線部31及び湾曲部32は、長手方向において、略C字状の断面形状を有する。上側レール30の直線部31及び湾曲部32は、車両幅方向と交差する一対の規制壁33,34と、車両上下方向と交差する支持壁35と、を有する。一対の規制壁33,34は、車両幅方向に間隔をおいて配置される。支持壁35の上側レール30の内側面は、スライドドア13の自重が作用する転動面36となる。また、支持壁35は、上側レール30の一部を構成する点で、上側レール30に沿うように延びると言える。
【0029】
図2及び図3に示すように、上側ガイドユニット70は、ボルトなどの締結部材を介してスライドドア13の上端部に固定される上側固定部71と、上側固定部71(スライドドア13)に対して回動可能に連結される上側回動アーム72と、を有する。また、上側ガイドユニット70は、上側レール30に沿って移動する第1上側ガイドローラ73、第2上側ガイドローラ74及び上側ロードローラ75と、を有する。
【0030】
図3及び図4に示すように、上側回動アーム72は、車両上下方向と交差する上壁721及び下壁722と、上壁721及び下壁722を車両上下方向に接続する側壁723と、上壁721から車両幅方向における内方に延びる第1突出壁724及び第2突出壁725と、を有する。上壁721及び下壁722は、車両上下方向に延びる回動軸線回りに上側固定部71と相対的に回動可能に連結される。第1突出壁724は、車両上下方向に延びる回転軸線回りに第1上側ガイドローラ73を回転可能に支持し、第2突出壁725は、車両上下方向に延びる回転軸線回りに第2上側ガイドローラ74を回転可能に支持する。また、側壁723は、第1上側ガイドローラ73及び第2上側ガイドローラ74の回転軸線と直交する回転軸線回りに上側ロードローラ75を回転可能に支持する。
【0031】
図4に示すように、上側回動アーム72の第1上側ガイドローラ73、第2上側ガイドローラ74及び上側ロードローラ75は、上側レール30の内部に配置される。詳しくは、第1上側ガイドローラ73及び第2上側ガイドローラ74が、上側レール30の一対の規制壁33,34の間に配置され、上側ロードローラ75が上側レール30の支持壁35の転動面36上に配置される。そして、スライドドア13が開閉動作するとき、第1上側ガイドローラ73及び第2上側ガイドローラ74は、上側レール30の一方の規制壁に接した状態で回転することで、上側レール30に沿って移動する。また、スライドドア13が開閉動作するとき、上側ロードローラ75は、上側レール30の支持壁35(転動面36)に接した状態で回転することで、上側レール30に沿って移動する。こうして、スライドドア13が開閉動作するとき、上側ガイドユニット70は、スライドドア13の上端部を支持した状態で、上側レール30に沿って移動する。
【0032】
次に、図5図7を参照して、第1下側レール40及び第2下側レール50と下側ガイドユニット80とについて詳しく説明する。
図5に示すように、第1下側レール40及び第2下側レール50は、車両幅方向に隣り合うように配置され、第2下側レール50は、第1下側レール40よりも車両幅方向における内方に配置される。言い換えれば、第2下側レール50は、第1下側レール40よりも車室寄りに配置される。
【0033】
第1下側レール40は、車両前方に延びる直線部41と、直線部41の前端から車両前方に進むに連れて車両幅方向における内方に向かって湾曲する湾曲部42と、を有する。第2下側レール50は、車両前後方向に沿うように延びる直線部51と、直線部51の前端から車両前方に進むに連れて第1下側レール40との車両幅方向における距離LNが次第に短くなるように湾曲する湾曲部52と、を有する。詳しくは、第2下側レール50の湾曲部52は、車両前方に進むに連れて車両幅方向における外方に向かう第1湾曲部521と、車両前方に進むに連れて車両幅方向における内方に向かう第2湾曲部522と、を有する。
【0034】
第2下側レール50の直線部51と第1下側レール40との車両幅方向における距離LNは、車両前方に進むに連れて一定に維持される。第2下側レール50の第1湾曲部521と第1下側レール40との車両幅方向における距離LNは、車両前方に進むに連れて次第に短くなる。第2下側レール50の第2湾曲部522と第1下側レール40との車両幅方向における距離LNは、車両前方に進むに連れて一定に維持される。なお、上側レール30と同様に、第1下側レール40の直線部41及び第2下側レール50の直線部51は、車両前後方向と並行に延びるものだけでなく、車両前後方向に対して僅かに傾いた方向に延びるものを含むものとする。
【0035】
図5に示すように、第1下側レール40の直線部41は、第1下側レール40の湾曲部42よりも長く、第2下側レール50の直線部51は、第2下側レール50の湾曲部52よりも短い。また、第1下側レール40の直線部41は、第2下側レール50の直線部51よりも長い。さらに、本実施形態では、第1下側レール40の長手方向における湾曲部42の長さは、上側レール30の長手方向における湾曲部32の長さよりも短い。こうして、車両幅方向において、第1下側レール40及び第2下側レール50の全幅は、上側レール30の全幅よりも短くなるように構成される。この点で、第1下側レール40及び第2下側レール50は、車両幅方向における内方に対する突出量を抑えつつ、ドア開口部11の下端部に配置することが可能となる。
【0036】
図6及び図7に示すように、第1下側レール40及び第2下側レール50は、長手方向において、略C字状の断面形状を有する。第1下側レール40の直線部41及び湾曲部42は、車両幅方向と交差する一対の規制壁43,44を有する。一対の規制壁43,44は、車両幅方向に間隔をおいて配置される。同様に、第2下側レール50の直線部51及び湾曲部52は、車両幅方向と交差する一対の規制壁53,54を有する。一対の規制壁53,54は、車両幅方向に間隔をおいて配置される。
【0037】
図6及び図7に示すように、下側ガイドユニット80は、スライドドア13に固定される下側固定部81と、下側固定部81(スライドドア13)に対して回動可能に連結される下側回動アーム82と、下側固定部81と下側回動アーム82とを連結する軸部83と、を有する。また、下側ガイドユニット80は、第1下側レール40に沿って移動する第1下側ガイドローラ84と、第2下側レール50に沿って移動する第2下側ガイドローラ85と、下側固定部81を付勢する付勢部材86と、付勢部材86を覆うカバー87と、を有する。なお、下側ガイドユニット80は、上側ガイドユニット70において、スライドドア13の自重を支える上側ロードローラ75に相当する構成としての下側ロードローラを有しない。
【0038】
下側固定部81は、複数の部材で構成された棒状部材である。下側固定部81の基端部は、ボルトなどの締結部材を介して、スライドドア13の下端部に固定される。下側固定部81の先端部には、非円形の係合孔811が形成される。
【0039】
下側回動アーム82は、平板状をなした棒状部材である。下側回動アーム82の基端部には、円形の貫通孔821が形成される。また、下側回動アーム82の基端部よりも先端寄りには、付勢部材86の第2端を係止するための係止片822が形成される。係止片822は、下側回動アーム82の一部を切り起こすことで形成される。下側回動アーム82は、係止片822よりも先端寄りの位置で、第1下側ガイドローラ84及び第2下側ガイドローラ85を支持する。下側回動アーム82は、車両上下方向に延びる回転軸線回りに、第1下側ガイドローラ84及び第2下側ガイドローラ85を回転可能に支持する。
【0040】
軸部83は、下側固定部81の係合孔811に係合する係合軸部831と、付勢部材86を係止する係止軸部832と、を有する。係合軸部831は、下側固定部81の係合孔811に対応した非円形の断面形状を有する。係止軸部832には、付勢部材86の第1端が収まる係止溝833が径方向に形成される。軸部83は、下側固定部81の係合孔811に係合軸部831を係合させることで、下側固定部81と相対回転不能となる。一方、軸部83は、下側回動アーム82の貫通孔821に挿通されることで、下側回動アーム82と回動軸線CN回りに相対回転可能となる。
【0041】
図7に示すように、第1下側ガイドローラ84は、第1下側レール40の車両幅方向における内方の規制壁44に接するように、第1下側レール40の内部に配置される。また、第2下側ガイドローラ85は、第2下側ガイドローラ85が第2下側レール50の車両幅方向における外方の規制壁53に接するように、第2下側レール50の内部に配置される。言い換えれば、下側ガイドユニット80は、第1下側ガイドローラ84及び第2下側ガイドローラ85で、第1下側レール40及び第2下側レール50を車両幅方向に挟む。また、図5に示すように、第1下側ガイドローラ84の第1下側レール40の直線部41に係合し、第2下側ガイドローラ85が第2下側レール50の直線部51に係合する状態では、第1下側ガイドローラ84は、第2下側ガイドローラ85よりも車両前方に位置する。このため、上記状態では、下側回動アーム82は、基端が車両幅方向における外方よりも僅かに車両前方に傾いた方向を向く。
【0042】
付勢部材86は、いわゆる渦巻きばね(ぜんまいばね)である。付勢部材86は、下側固定部81と下側回動アーム82との連結部位に配置される。詳しくは、付勢部材86の第1端は、下側固定部81と一体化した軸部83の係止溝833に係止され、付勢部材86の第2端は、下側回動アーム82の係止片822に係止される。その結果、付勢部材86は、下側回動アーム82に対して下側固定部81を相対的に付勢する。下側固定部81と下側回動アーム82との間をなす角度を「アーム角度θ」とすると、付勢部材86は、図5に示す状態で、アーム角度θを大きくするような初期荷重が生じるように取り付けられる。また、付勢部材86は、アーム角度θの変化(減少)に伴い弾性変形することで、付勢力を増大させる。
【0043】
カバー87は、下側回動アーム82に、ボルトなどの締結部材を介して固定される。カバー87は、アーム角度θが変化する場合に、下側固定部81に接触しないような形状とすることが好ましい。
【0044】
そして、スライドドア13が開閉動作するとき、第1下側ガイドローラ84は、第1下側レール40の規制壁44に接した状態で回転することで、第1下側レール40に沿って移動する。同様に、第2下側ガイドローラ85は、第2下側レール50の規制壁53に接した状態で回転することで、第2下側レール50に沿って移動する。こうして、スライドドア13が開閉動作するとき、下側ガイドユニット80は、スライドドア13の下端部を支持した状態で、第1下側レール40及び第2下側レール50に沿うように移動する。
【0045】
なお、本実施形態において、中央レール60は、上側レール30と似た構成を有し、中央ガイドユニット90は、上側ガイドユニット70と似た構成を有する。このため、以降の説明では、中央レール60及び中央ガイドユニット90の説明を省略する。
【0046】
本実施形態の作用について説明する。
まず、図2を参照して、スライドドア13の開閉動作時における上側ガイドユニット70の作用について説明する。
【0047】
スライドドア13が開閉動作する場合には、上側ガイドユニット70が上側レール30に沿って移動する。このとき、第1上側ガイドローラ73及び第2上側ガイドローラ74は、上側レール30の一方の規制壁に接した状態で回転し、上側ロードローラ75は、上側レール30の支持壁35(転動面36)に接した状態で回転する。
【0048】
上側ガイドユニット70が上側レール30の直線部31に沿って移動する場合、すなわち、スライドドア13の開度が大きい場合には、上側回動アーム72が、上側固定部71との相対的な位置関係を維持しながら、上側レール30に沿って移動する。一方、上側ガイドユニット70が上側レール30の湾曲部32に沿って移動する場合、すなわち、スライドドア13の開度が小さい場合には、上側回動アーム72が、上側固定部71との相対的な位置関係を変化させながら、上側レール30に沿って移動する。
【0049】
ただし、上側回動アーム72は、上側レール30に沿って移動するときに、スライドドア13の開度に関わらず、上側レール30の長手方向に対する姿勢が変化しない。さらに、上側ロードローラ75の移動軌跡TRは、スライドドア13の開度に関わらず、上側レール30と並行になる。このため、スライドドア13の開度に関わらず、上側ロードローラ75と支持壁35の転動面36との接点において、上側ロードローラ75の回転方向(周方向)が上側ロードローラ75の移動方向に対して傾かない。このため、スライドドア13が開閉動作する場合には、上側ロードローラ75が上側レール30の支持壁35に対して横滑りしにくい。
【0050】
続いて、図5図8及び図9を参照して、スライドドア13の開閉動作時における下側ガイドユニット80の作用について説明する。
スライドドア13が開閉動作する場合には、下側ガイドユニット80が第1下側レール40及び第2下側レール50に沿って移動する。このとき、第1下側ガイドローラ84は、第1下側レール40の規制壁44に接した状態で回転し、第2下側ガイドローラ85は、第2下側レール50の規制壁53に接した状態で回転する。
【0051】
図5及び図8(a)に示すように、下側ガイドユニット80が第1下側レール40の直線部41及び第2下側レール50の直線部51に沿って移動する場合には、下側回動アーム82と下側固定部81との相対的な位置関係が維持される。言い換えれば、下側ガイドユニット80は、アーム角度θを維持しながら、第1下側レール40及び第2下側レール50に沿って移動する。なお、この場合のアーム角度θは、下側ガイドユニット80が取り得るアーム角度θのうち、最大の角度となる。また、付勢部材86は、図5に示す場合でも下側固定部81を付勢する点で、アーム角度θが最大の場合でも下側固定部81を付勢すると言える。
【0052】
一方、図8(b)及び図9(a),(b)に示すように、下側ガイドユニット80が第1下側レール40の直線部41及び湾曲部42並びに第2下側レール50の湾曲部52に沿って移動する場合には、下側回動アーム82と下側固定部81との相対的な位置関係が変化する。言い換えれば、下側ガイドユニット80は、アーム角度θを変化させながら、第1下側レール40及び第2下側レール50に沿って移動する。
【0053】
詳しくは、図8(b)、図9(a)及び図9(b)に順に示すように、スライドドア13が全閉位置に向かって閉動作する場合、下側回動アーム82は、下側回動アーム82の基端部が次第に車両前方を向くように回動しながら車両前方に移動する。この際、下側回動アーム82の基端部に連結された下側固定部81は、車両前方に移動しつつ、車両幅方向における内方に移動する。ただし、スライドドア13が閉動作するにあたり、下側固定部81は一定の姿勢を維持するため、下側ガイドユニット80が車両前方に進むに連れて、アーム角度θが小さくなる。そして、図9(b)に示すように、スライドドア13が全閉位置まで移動すると、アーム角度θが最小角度となり、下側ガイドユニット80が小さく折り畳まれた状態となる。
【0054】
一方、図9(b)、図9(a)及び図8(b)に順に示すように、スライドドア13が全閉位置から開動作する場合、下側回動アーム82は、下側回動アーム82の基端部が次第に車両幅方向における外方を向くように回動しながら車両後方に移動する。この際、下側回動アーム82の基端部に連結された下側固定部81は、車両後方に移動しつつ、車両幅方向における外方に移動する。ただし、スライドドア13が開動作するにあたり、下側固定部81は一定の姿勢を維持するため、下側ガイドユニット80が車両後方に進むに連れて、アーム角度θが大きくなる。そして、下側ガイドユニット80が図8(a)に示す位置まで到達すると、アーム角度θが最大角度となり、下側ガイドユニット80が最も展開された状態となる。
【0055】
以降の説明では、図8(a)に示すように、下側ガイドユニット80の第2下側ガイドローラ85が第2下側レール50の直線部51及び湾曲部52の境界に位置するときのスライドドア13の開度を「中間開度」とする。
【0056】
ところで、本実施形態のスライドドア13は、上側ガイドユニット70、中央ガイドユニット90及び下側ガイドユニット80によって、車体12の側方に支持される。このため、スライドドア13には、重心位置よりも高い位置にある上端部が車体12から離れようとするとともに、重心位置よりも低い位置にある下端部が車体12に近付こうとするモーメントが作用する。つまり、スライドドア13は、車両幅方向における外方に上側ガイドユニット70を引く力を上側ガイドユニット70に作用させ、車両幅方向における内方に下側ガイドユニット80を押す力を下側ガイドユニット80に作用させる。
【0057】
スライドドア13が下側ガイドユニット80を押す力は、スライドドア13の開度及び移動方向とは無関係であるため、図8(b)及び図9(a),(b)に示す場合にも、スライドドア13が下側ガイドユニット80を車両幅方向における内方に押すこととなる。すると、第2下側レール50の湾曲部52の傾斜により第2下側ガイドローラ85が車両前方に移動しやすくなったり、第1下側レール40の湾曲部42の傾斜により第1下側ガイドローラ84が車両前方に移動しやすくなったりする。つまり、下側回動アーム82は、基端部が車両前方を向くように回動しやすくなる。
【0058】
こうして、スライドドア13の開度が中間開度未満の場合には、下側回動アーム82を基端部が車両前方を向くように回動させようとするモーメントが発生する。スライドドア13の開度が中間開度未満のときにこうしたモーメントが発生すると、例えば、スライドドア13が全閉位置の近傍で閉動作する場合にスライドドア13の動作速度が急に高くなったり、スライドドア13が全閉位置から開動作する場合にスライドドア13を動作させるのに必要な力が大きくなったりする可能性がある。
【0059】
この点、本実施形態の下側ガイドユニット80は、アーム角度θが大きくなる方向に下側回動アーム82を付勢する付勢部材86であって、アーム角度θが小さくなるに連れて弾性変形量が大きくなる付勢部材86を有する。このため、スライドドア13が閉動作する場合に、スライドドア13の開度が中間開度未満となると、スライドドア13の開度が小さくなるに連れて下側回動アーム82に対する付勢力が大きくなる。したがって、スライドドア13が全閉位置に向かって閉動作する際に、スライドドア13の移動方向とは逆方向(開方向)の力がスライドドア13に作用するため、スライドドア13の動作速度が急に高くなりにくい。
【0060】
また、スライドドア13が全閉位置に位置する場合には、アーム角度θが最小となるため、付勢部材86の付勢力の大きさは最大となる。つまり、全閉位置に位置するスライドドア13が開動作し始めるときには、付勢部材86の付勢力により、アーム角度θが大きくなろうとする点で、スライドドア13が開方向に移動しようとする。したがって、スライドドア13が全開位置から開動作する際に、スライドドア13の移動方向と同方向(開方向)の力が作用することで、スライドドア13を開動作するために必要な力が大きくなりにくい。
【0061】
本実施形態の効果について説明する。
(1)上側ガイドユニット70の上側回動アーム72は、スライドドア13の開度に関わらず、上側レール30に沿って移動するときに、上側レール30の長手方向に対する姿勢が変化するように回動しない。このため、上側ロードローラ75と転動面36との接点において、上側ロードローラ75の回転方向(周方向)が上側ロードローラ75の移動方向に対して傾かない点で、上側ロードローラ75が転動面36に対して横滑りしにくくなる。こうして、スライドドア支持装置20は、スライドドア13の自重を支える上側ロードローラ75が横滑りすることを抑制できる。
【0062】
(2)スライドドア支持装置20において、上側レール30は、転動面36が設けられた支持壁35を有する。このため、スライドドア支持装置20は、車体12に上側ロードローラ75の転動面36を作り込む必要がなくなる。
【0063】
(3)下側回動アーム82に下側ロードローラを設けなくてもよい点で、下側回動アーム82の断面形状を曲げ剛性及びねじり剛性の高い形状としなくてもよくなる。つまり、スライドドア支持装置20は、下側回動アーム82を簡素な形状にできる。
【0064】
(4)スライドドア支持装置20は、下側ガイドユニット80のアーム角度θが大きくなるように下側固定部81を付勢する付勢部材86を備える。そして、付勢部材86は、下側固定部81を介して、スライドドア13が開動作するときの移動方向にスライドドア13を付勢する。その結果、スライドドア支持装置20は、スライドドア13の開度が小さい場合に、第1下側レール40及び第2下側レール50と下側ガイドユニット80との係合態様に起因して、スライドドア13の閉方向に作用する力を軽減できる。
【0065】
詳しくは、スライドドア支持装置20は、スライドドア13が閉動作する場合において、スライドドア13の開度が中間開度未満となるときに、スライドドア13の動作速度が急に上がることを抑制できる。こうして、スライドドア支持装置20は、スライドドア13を閉操作する利用者に危害感を与えることを抑制できる。また、スライドドア支持装置20は、スライドドア13が全閉位置から開動作する場合において、スライドドア13を開動作するために必要な操作力が大きくなることを抑制できる。つまり、スライドドア支持装置20は、スライドドア13を開操作する利用者の操作性が低下することを抑制できる。
【0066】
(5)スライドドア支持装置20は、スライドドア13が全閉位置に位置するときに、アーム角度θが作用となる点で付勢力が最大となる。このため、付勢部材86は、スライドドア13が全閉位置から開動作し始める際に、スライドドア13に比較的大きな力を開方向に付与する。こうして、スライドドア支持装置20は、付勢部材86の付勢力を、スライドドア13を開動作させるためのアシスト力として機能させるとともに、当該アシスト力を比較的大きくすることができる。
【0067】
(6)アーム角度θは、スライドドア13の開度が大きい場合、言い換えれば、第1下側ガイドローラ84が第1下側レール40の直線部41に沿って移動し、第2下側ガイドローラ85が第2下側レール50の直線部51に沿って移動する場合に最大となる。この点、本実施形態によれば、スライドドア13の開度が大きい場合でも、付勢部材86が下側固定部81を付勢するため、下側ガイドユニット80の姿勢が安定する。詳しくは、第1下側レール40及び第2下側レール50の内部での第1下側ガイドローラ84及び第2下側ガイドローラ85の姿勢が安定する。このため、スライドドア支持装置20は、スライドドア13の開度が大きい場合に、スライドドア13の下端部の姿勢を安定させることができる。
【0068】
(7)付勢部材86を渦巻きばねとしたことで、付勢部材86は、下側固定部81に付勢力を付与しやすくなる。
(8)下側ガイドユニット80が付勢部材86を備えない場合、下側ガイドユニット80を第1下側レール40及び第2下側レール50に組み付ける前に、下側固定部81に対して下側回動アーム82の動きが制限されない。このため、この場合には、第1下側レール40及び第2下側レール50に、下側回動アーム82の先端に支持される第1下側ガイドローラ84及び第2下側ガイドローラ85を挿入しにくくなる。
【0069】
これに対し、本実施形態の下側ガイドユニット80は、付勢部材86を備える。このため、付勢部材86の付勢力が作用することで、下側固定部81に対する下側回動アーム82の動きが制限される。したがって、第1下側レール40及び第2下側レール50に対する下側ガイドユニット80の組付時に、第1下側レール40及び第2下側レール50に、下側回動アーム82の先端に支持される第1下側ガイドローラ84及び第2下側ガイドローラ85を挿入しにくくなる事態を回避できる。
【0070】
(9)下側ガイドユニット80の付勢部材86は、スライドドア13が全閉位置に位置するとき、下側固定部81を介してスライドドア13を付勢する。全閉位置に位置するスライドドア13の姿勢、言い換えれば、車両走行時のスライドドア13の姿勢が安定化する。したがって、スライドドア支持装置20は、車両走行時にスライドドア13が僅かに動くことによる異音の発生を抑制できる。
【0071】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・付勢部材86は、板ばねなどの他のばねとしてもよいし、弾性変形可能なゴム及び樹脂としてもよい。例えば、付勢部材86を下側固定部81に取り付けられる板ばねとした場合、板ばねは、スライドドア13が全閉位置に位置するときに、下側回動アーム82又は車体12と下側固定部81との間で圧縮されることで弾性変形するようにしてもよい。
【0072】
・付勢部材86は、アーム角度θが最大開度よりも小さな所定の開度未満となる場合に下側固定部81を付勢してもよい。言い換えれば、付勢部材86は、スライドドア13の開度が中間開度以上の場合に、下側固定部81を付勢しなくてもよい。
【0073】
・上側レール30は、上側ロードローラ75が転動する支持壁35を有しなくてもよい。この場合、車体12に上側ロードローラ75が転動する面を形成することが好ましい。
・スライドドア13は、アクチュエータの駆動により開閉作動するいわゆるパワースライドドアとして構成してもよい。この場合には、スライドドア支持装置20は、スライドドア13の開度が小さい場合において、アクチュエータの制御が複雑化することを抑制できる。
【0074】
・中央ガイドユニット90は、上側ロードローラ75に相当する構成を有していてもよいし、有しなくてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10…車両、11…ドア開口部、12…車体、13…スライドドア、20…スライドドア支持装置、30…上側レール、31…直線部、32…湾曲部、33…規制壁、34…規制壁、35…支持壁、36…転動面、40…第1下側レール、41…直線部、42…湾曲部、43…規制壁、44…規制壁、50…第2下側レール、51…直線部、52…湾曲部、521…第1湾曲部、522…第2湾曲部、53…規制壁、54…規制壁、60…中央レール、70…上側ガイドユニット、71…上側固定部、72…上側回動アーム、721…上壁、722…下壁、723…側壁、724…第1突出壁、725…第2突出壁、73…第1上側ガイドローラ、74…第2上側ガイドローラ、75…上側ロードローラ、80…下側ガイドユニット、81…下側固定部、811…係合孔、82…下側回動アーム、821…貫通孔、822…係止片、83…軸部、831…係合軸部、832…係止軸部、833…係止溝、84…第1下側ガイドローラ、85…第2下側ガイドローラ、86…付勢部材、87…カバー、90…中央ガイドユニット、TR…移動軌跡、θ…アーム角度。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10