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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】車両通信システム
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/023 20060101AFI20220531BHJP
   H04L 12/28 20060101ALI20220531BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
B60R16/023 P
H04L12/28 200Z
H01M10/48 P
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018526431
(86)(22)【出願日】2017-07-06
(86)【国際出願番号】 JP2017024765
(87)【国際公開番号】W WO2018008714
(87)【国際公開日】2018-01-11
【審査請求日】2020-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2016135239
(32)【優先日】2016-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 剛之
(72)【発明者】
【氏名】水田 芳彦
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-163552(JP,A)
【文献】特開2007-227150(JP,A)
【文献】特開2002-042897(JP,A)
【文献】国際公開第99/000721(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/023
H04L 12/28
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両通信システムであって、
車両に設けられた制御装置と、
前記制御装置と通信可能に接続され、前記車両に搭載されるバッテリに設けられた管理装置とを含み、
前記制御装置又は前記管理装置のうち一方が、他方の通信仕様を判別して通信仕様の切り換えを行い、
前記制御装置又は前記管理装置のうち一方が、他方から出力される判別信号に基づいて通信仕様を判別し、
前記管理装置が、前記車両の前記制御装置から出力される前記判別信号に基づいて車両の通信仕様を判別し、通信仕様の切り換えを行い、
前記管理装置は、車両起動時に前記制御装置から出力される起動信号を受信することを条件に、
前記バッテリの監視モードを休止モードから通常モードに切り換え、
前記制御装置は、前記起動信号の送信タイミングより遅らせて、前記管理装置に前記判別信号を送信する、車両通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両通信システムであって、
前記判別信号は、通信仕様に応じて、パルス幅又はパルス数の異なる信号である、車両通信システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両通信システムであって、
前記管理装置は、通信仕様を切り換えた後、前記制御装置とのデータ通信で前記車両が実行する制御を特定し、
特定した制御内容に従って、前記バッテリの状態を監視する、車両通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両とバッテリ間の通信に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、車両に搭載されるバッテリが記載されている。バッテリは、複数のバッテリセル、保護回路、電圧監視部、制御CPU等から構成されている。制御CPUはバッテリの内部に設けられており、バッテリセルの充放電電圧を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-203719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両とバッテリ間の通信仕様は、車両メーカーや車両の規格により異なる場合がある。そのため、バッテリが専用品以外のものに交換されると、通信仕様の不一致により、バッテリと車両との間でデータ通信を行うことが出来ない場合がある。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、通信仕様の不一致により、車両とバッテリ間が通信不能となることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書によって開示される車両通信システムは、車両に設けられた制御装置と、前記制御装置と通信可能に接続され、前記車両に搭載されるバッテリに設けられた管理装置とを含み、前記制御装置又は前記管理装置のうち一方が、他方の通信仕様を判別して通信仕様の切り換えを行う。尚、「通信仕様」とは、制御装置と管理装置間で通信を行うためのデータ形式、規約、手順など通信プロトコルの仕様を意図している。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、通信仕様の不一致により、車両とバッテリ間が通信不能となることを抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1に適用された車両の側面図
図2】バッテリの斜視図
図3】バッテリの分解斜視図
図4】バッテリの電気的構成を示すブロック図
図5】車両のネットワーク構成を示す図
図6】フレーム、レスポンス、起動信号を示す図
図7】監視モードにおける動作モードの遷移図
図8】通信仕様の選択テーブルを示す図
図9】起動信号の受信後にBMが実行する処理の流れを示すフローチャート図
図10】実施形態2において判別信号を示す図
図11】実施形態3において判別信号を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
初めに、本実施形態にて開示する車両通信システムの概要について説明する。
車両通信システムであって、車両に設けられた制御装置と、前記制御装置と通信可能に接続され、前記車両に搭載されるバッテリに設けられた管理装置とを含み、前記制御装置又は前記管理装置のうち一方が、他方の通信仕様を判別して通信仕様の切り換えを行う。この構成では、車両とバッテリ間で通信仕様を一致させることが出来るため、両間での通信が不能となることを抑制することが出来る。尚、「通信仕様」とは、制御装置と管理装置間で通信を行うためのデータ形式、規約、手順など通信プロトコルの仕様を意図している。
【0009】
また、本実施形態にて開示する車両通信システムの一実施態様として、前記制御装置又は前記管理装置のうち一方が、他方から出力される判別信号に基づいて通信仕様を判別する。この構成では、信号を利用して通信仕様を判別するので、制御装置、管理装置とも、新たに追加となる部品がない。
【0010】
また、本実施形態にて開示する車両通信システムの一実施態様として、前記判別信号は、通信仕様に応じて、パルス幅又はパルス数の異なる信号である。この構成では、パルス幅やパルス数の相違を検出することで、通信仕様を判別することが出来る。
【0011】
また、本実施形態にて開示する車両通信システムの一実施態様として、前記管理装置が、前記車両の前記制御装置から出力される前記判別信号に基づいて車両の通信仕様を判別し、通信仕様の切り換えを行う。この構成では、バッテリ側で通信仕様の切り換えを行うので、通信仕様の異なる車両間で、バッテリを共通使用することが出来る。
【0012】
また、本実施形態にて開示する車両通信システムの一実施態様として、前記制御装置は、車両起動時に前記管理装置に対して起動信号を送り、前記起動信号は、車両の通信仕様に応じたパルス幅又はパルス数の前記判別信号である。この構成では、車両起動後、直ぐに通信仕様の切り換えを行うことが可能であり、車両起動後、通信できない時間を短時間にできる。
【0013】
また、本実施形態にて開示する車両通信システムの一実施態様として、前記管理装置は、車両起動時に前記制御装置から出力される起動信号を受信することを条件に、前記バッテリの監視モードを休止モードから通常モードに切り換え、前記制御装置は、前記起動信号の送信タイミングより遅らせて、前記管理装置に前記判別信号を送信する。この構成では、
通常モードへの移行後に、管理装置が判別信号を受信し、通信仕様を判別する。そのため、休止モード中に通信仕様を判別する場合に比べて、通信仕様を正確に判別できる。
【0014】
また、本実施形態にて開示する車両通信システムの一実施態様として、前記管理装置は、通信仕様を切り換えた後、前記制御装置とのデータ通信で前記車両が実行する制御を特定し、特定した制御内容に従って、前記蓄電素子の状態を監視する。この構成では、車両が実行する制御に従って、バッテリの状態を監視することが出来る。
【0015】
<実施形態1>
次に、本発明の実施形態1を図1から図9によって説明する。
【0016】
1.バッテリの説明
図1は車両の側面図、図2はバッテリの斜視図、図3はバッテリの分解斜視図、図4はバッテリの電気的構成を示すブロック図である。
【0017】
車両1は、図1に示すように、バッテリ20を備えている。バッテリ20は、図2に示すように、ブロック状の電池ケース21を有しており、電池ケース21内には、複数の二次電池31からなる組電池30や回路基板28が収容されている。尚、以下の説明において、図2および図3を参照する場合、電池ケース21が設置面に対して傾きなく水平に置かれた時の電池ケース21の上下方向をY方向とし、電池ケース21の長辺方向に沿う方向をX方向とし、電池ケース21の奥行き方向をZ方向をとして説明する。
【0018】
電池ケース21は、図3に示すように、上方に開口する箱型のケース本体23と、複数の二次電池31を位置決めする位置決め部材24と、ケース本体23の上部に装着される中蓋25と、中蓋25の上部に装着される上蓋26とを備えて構成されている。ケース本体23内には、図3に示すように、各二次電池31が個別に収容される複数のセル室23AがX方向に並んで設けられている。
【0019】
位置決め部材24は、図3に示すように、複数のバスバー27が上面に配置されており、位置決め部材24がケース本体23内に配置された複数の二次電池31の上部に配置されることで、複数の二次電池31が、位置決めされると共に複数のバスバー27によって直列に接続されるようになっている。
【0020】
中蓋25は、図2に示すように、平面視略矩形状をなし、Y方向に高低差を付けた形状とされている。中蓋25のX方向両端部には、図示しないハーネス端子が接続される一対の端子部22P、22Nが設けられている。一対の端子部22P、22Nは、例えば、鉛合金等の金属からなり、22Pが正極側端子部、22Nが負極側端子部である。
【0021】
また、中蓋25は、図3に示すように、回路基板28が内部に収容可能とされており、中蓋25がケース本体23に装着されることで、二次電池31と回路基板28とが接続されるようになっている。
【0022】
次に図4を参照して、車両1の電気負荷10及びバッテリ20の電気的構成を説明する。車両1の電気負荷10はセルモータ等のエンジン始動装置10A、車両1の各制御を行う車両ECU(Electronic Control Unit)10B、装備品10Cを含む。装備品10Cには、ヘッドライド、車内灯、オーディオ、時計、セキュリティ装置が含まれている。尚、車両ECU10Bが本発明の「制御装置」に相当する。
【0023】
これら電気負荷10は、電源ライン36P、グランドライン36Nを介して、バッテリ20及び車両発電機15と接続されており、バッテリ20及び車両発電機15から電力供給される。すなわち、駐車中や停車中(アイドリングストップ時を含む)など、車両発電機15が発電していない時は、バッテリ20から電力が供給される。また、例えば、走行中で、負荷を発電量が上回っている時は、車両発電機15から電力が供給され、その余剰の電力によりバッテリ20は充電される。また、負荷を発電量が下回っている時は、その不足分を補うため、車両発電機15だけでなく、バッテリ20からも電力が供給される。
【0024】
バッテリ20は、組電池30と、電流センサ41と、温度センサ43と、電流遮断装置45と、組電池30を管理する管理装置50と、通信コネクタ接続部80を有する。組電池30は、直列接続された複数のリチウムイオン二次電池(本発明の「蓄電素子」の一例)31から構成されている。
【0025】
組電池30、電流センサ41、電流遮断装置45は、接続ライン35を介して、直列に接続されている。本例では、電流センサ41を負極側、電流遮断装置45を正極側に配置しており、電流センサ41は負極側端子部22N、電流遮断装置45は、正極側端子部22Pにそれぞれ接続されている。
【0026】
電流センサ41は、電池ケース21の内部に設けられており、二次電池31に流れる電流を検出する機能を果たす。温度センサ43は接触式あるいは非接触式で、二次電池31の温度[℃]を測定する機能を果たす。
【0027】
電流センサ41と温度センサ43は、信号線によって、管理装置50に電気的に接続されており、電流センサ41や温度センサ43の検出値は、管理装置50に取り込まれる構成になっている。
【0028】
電流遮断装置45は、電池ケース21の内部に設けられている。電流遮断装置45は、例えば、FET等の半導体スイッチやリレーであり、管理装置50からの指令(制御信号)に応答して、正極側の電力ライン35を開放することで、二次電池31の電流を遮断する機能を果たす。
【0029】
通信コネクタ接続部80は、ケース本体23の外面に設けられている。通信コネクタ接続部80に対して通信用コネクタ85を接続することで、管理装置50は、通信線(Linバス)Lを介して車両ECU10Bとの間で通信可能に接続される構造になっている。
【0030】
管理装置50は、電圧検出回路60とデータ処理部70とを備えており、回路基板28に設けられている。電圧検出回路60は、検出ラインを介して、各二次電池31の両端にそれぞれ接続され、データ処理部70からの指示に応答して、各二次電池31の電圧及び組電池30の総電圧を測定する機能を果たす。
【0031】
データ処理部70は、中央処理装置であるCPU71と、メモリ73と、通信部75とを含む。CPU71は、電流センサ41、電圧検出回路60、温度センサ43の出力から、二次電池31の電流、電圧、温度を監視しており、異常を検出した場合には、電流遮断装置45を作動して二次電池31が危険な状態になることを防いでいる。また、CPU71は通信部75を介して車両ECU10Bと通信を行う。
【0032】
2.車両ネットワークの通信仕様
車両ECU10Bは、図5に示すように、車載されるエンジン始動装置10Aや各装備品10C、バッテリ20とLINバスによって接続されている。そして、車両ECU10Bは、エンジン始動装置10A、各装備品10C及びバッテリ20と、LIN(Local Interconnect Network)通信プロトコルにより、シリアル通信を行う。以下、LIN通信プロトコルによるシリアル通信をLIN通信と呼ぶ。尚、車両ECU10Bとバッテリ20の管理装置50が本発明の車両通信システムUに相当する。
【0033】
LIN通信はマスタ-スレーブ方式の通信であり、マスターノードである車両ECU10Bはバッテリ20、車両発電機15、エンジン始動装置10A、装備品10C等を含む特定の車載電子機器を制御する構成となっている。LIN通信では図6の(A)に示す「ヘッダー100」と、図6の(B)に示す「レスポンス110」が1つのフレーム(言い換えれば、1つのメッセージ)を構成している。
【0034】
「ヘッダー100」は、図6の(A)に示すように、ブレイクフィールドF1、同期フィールドF2、IDフィールドF3の3パートから構成されており、マスターノードである車両ECU10BからLINバスに送信される。
【0035】
ブレイクフィールドF1は、信号レベルが所定期間、ドミナントレベルとなるフィールドであり、スレーブノードであるエンジン始動装置10Aや各装備品10C、バッテリ20に対して、ヘッダー100の開始を認識させるために設けられている。
【0036】
尚、「ドミナント」とは論理の「ゼロ」を意味しており、電圧ではローレベルである。また、「リセッシブ」とは、論理の「1」を意味しており、電圧ではハイレベルである。
【0037】
同期フィールドF2は、同期信号を送るフィールドであり、各スレーブノードが、マスターノードである車両ECU10Bとの同期を補正するために設けられている。IDフィールドF3は、ヘッダー100のID情報を送るフィールドである。
【0038】
ID情報はヘッダー100の識別子であり、通信相手や通信内容を判断するため、例えば、(1)~(3)の情報が予め対応付けられている。
(1)通信相手となるスレーブノードの情報
(2)通信相手となるスレーブとの間で送受信するデータの内容
(3)スレーブノードに対してデータの送信を要求するのか、受信を要求するのかに関する情報
【0039】
例えば、ID情報の「01」番には、通信相手となるスレーブノードとして「バッテリ」、通信するデータの内容として「二次電池の電圧、電流の送信要求」が割り当てられている。
【0040】
LINバスに接続された各スレーブノードは、マスターノードである車両ECU10Bから送信された「ヘッダー100」を受信すると、「ヘッダー100」に含まれるID情報から、上記した(1)~(3)の各情報を判断する。
【0041】
そして、スレーブノードからデータの送信を要求する場合、通信相手である特定のスレーブノードから、LINバスを通じて、「データフィールドF4を有するレスポンス110」が送信される。レスポンス110のデータフィールドF4には、通信相手である特定のスレーブノードにより、車両ECU10Bの要求するデータが書き込まれており、車両ECU10Bは、レスポンス110を受信することで、通信相手である特定のスレーブノードから必要なデータを受け取ることが出来る。
【0042】
一方、スレーブノードに対してデータの受信を要求する場合、マスターノードである車両ECU10Bから、LINバスを通じて、「データフィールドF4を有するレスポンス110」が送信される。レスポンス110のデータフィールドF4には、車両ECU10Bにより、送信するべきデータが書き込まれており、通信相手である特定のスレーブノードは、レスポンス110を受信することで、車両ECU10Bから必要なデータを受け取ることが出来る。
【0043】
上記例であれば、車両ECU10BからLINバスを通じて、ID情報「01番」のフレーム100が送信されると、バッテリ20がデータフィールドF4に「二次電池31の電圧、電流のデータ」を格納してレスポンス110を返すことで、車両ECU10Bは「二次電池31の電圧、電流のデータ」を受け取ることができる。
【0044】
このようにLIN通信は、「ヘッダー100」に含まれるID情報から通信相手やデータの内容など必要な情報を判断して、車両ECU10Bと、特定のスレーブノード(すなわち、エンジン始動装置10A、各装備品10C、バッテリ20のいずれか)の間で、シリアル通信を行うものである。尚、図6の(B)に示すF5は、データを正確に受信できたかどうかを確認するためのチャックサムが書き込まれるフィールドである。
【0045】
3.車両状態検出とバッテリの監視モード
バッテリ20には、図7に示すように「通常モード」と「休止モード」の2つの監視モードが設定されており、車両の状態に応じて、管理装置50は、監視モードの切り換えを行う。
【0046】
具体的に説明すると、車両ECU10Bは、IGスイッチやエンジンの状態、ドアの開閉状態、LIN通信の状態等より、車両が駐車状態か通常状態であるかを検出する。そして、車両が駐車状態から通常状態に移行する車両起動時にバッテリ20に対して「起動信号120」を送信する。尚、通常状態は、走行準備状態、走行状態、停車状態など、駐車以外の状態を言う。
【0047】
車両ECU10Bから起動信号120を受信すると、管理装置50は、車両は通常状態であると判断し、監視モードを通常モードに切り換える。通常モード中、管理装置50は、所定の短周期でバッテリ20の監視を行い、その情報を、LIN通信により車両ECU10Bに対して送信する。
【0048】
一方、車両ECU10Bは、車両が通常状態から駐車状態に移行すると、LIN通信を停止する。管理装置50は、車両ECU10BとのLIN通信が所定時間停止した状態が継続すると、車両は駐車状態であると判断し、監視モードを休止モードに切り換える。休止モード中、管理装置50は、所定の長周期でバッテリ20の監視を単独で行う状態となり、車両ECU10BとのLIN通信は停止状態が維持される。このように、車両が駐車状態である場合、バッテリ20の監視を長周期で単独で行うことにより、バッテリ20の低消費電力化を図ることが出来る。
【0049】
尚、車両起動時に、車両ECU10Bからバッテリ20に送信される起動信号120は、図6の(C)、(D)に示すように、所定期間、信号のレベルがドミナントレベルとなるパルス信号である。
【0050】
4.通信仕様の判別と切り換え処理
車両ネットワークはLIN通信を行う。しかしながら、LIN通信に準拠した通信仕様が車両メーカーで異なる場合がある。例えば、LIN通信では、ヘッダー100のID情報に基づいて通信相手や通信内容を判断するが、各ID情報に対して割り当てている通信相手や通信内容の情報(上記した(1)~(3)の情報)が、車両メーカーごとに異なる場合がある。
【0051】
車両メーカーの専用品ではないバッテリ20を使用するためには、LIN通信に準拠した車両メーカーの通信仕様を判別して、その車両メーカーと適合する通信仕様に切り換える必要がある。すなわち、上記例であれば、車両メーカー側が採用しているID情報の仕様を判別して、バッテリ20側でその車両メーカーと適合するID情報の仕様に切り換える必要がある。そこで、車両起動時に、車両ECU10Bからバッテリ20に送信される起動信号120を利用し、そのパルス幅Wの違いを検出することで、LIN通信に準拠した通信仕様の切り換えを行う。
【0052】
具体的に説明すると、車両ECU10Bから管理装置50に送られる起動信号120のパルス幅Wは、車両メーカーごとに、異なる値として決められている。一方、管理装置50のメモリ73には、図8に示す通信仕様の選択テーブルが設けられている。通信仕様の選択テーブルは、車両メーカーの情報と、車両メーカーの採用するLIN通信に準拠した通信仕様を、起動信号120のパルス幅Wと対応付けして記憶したものである。
【0053】
図8の例では、車両メーカーの情報としてA社~D社の4社の情報と、LIN通信に準拠した通信仕様のデータとして、各車両メーカーの採用するAタイプ~Dタイプの4パターンのデータが記憶されている。
【0054】
以下、図9を参照して管理装置50で実行される通信仕様の切り換え手順について説明する。尚、ここでは、バッテリ交換後、車両の初回起動に応答して、車両ECU10Bから交換されたバッテリ20に対して起動信号120が出力されたものとする。
【0055】
管理装置50のデータ処理部70は、車両ECU10Bから起動信号120を受信する(S10)と、起動信号120のパルス幅Wを検出する処理を行う(S20)。そして、検出したパルス幅Wを図8の選択テーブルに参照して、車両メーカーと通信仕様を判別する処理を行う(S30)。
【0056】
例えば、起動信号120のパルス幅がW1の場合、車両メーカーは「A社」であり、その車両に適合する通信仕様は「LIN通信に準拠したAタイプ」と判別できることから、この場合、管理装置50のデータ処理部70は、メモリ73の選択テーブルに記憶された4パターンの通信仕様から、「LIN通信に準拠したAタイプ」の通信仕様を選択して切り換える(S40)。これにより、ヘッダー100のID情報の仕様など、LIN通信に準拠した通信仕様が、車両1と交換されたバッテリ20間で一致することから、車両ECU10Bとバッテリ20間でLIN通信(データ通信)を行うことが可能となる。
【0057】
また、起動信号120のパルス幅がW2の場合、車両メーカーは「B社」であり、その車両に適合する通信仕様は「LIN通信に準拠したBタイプ」と判別できることから、この場合、管理装置50のデータ処理部70は、メモリ73の選択テーブルに記憶された4パターンの通信仕様から、「LIN通信に準拠したBタイプ」の通信仕様を選択して切り換える(S40)。これにより、ヘッダー100のID情報の仕様など、LIN通信に準拠した通信仕様が、車両1と交換されたバッテリ20間で一致することから、車両ECU10Bとバッテリ20間でLIN通信(データ通信)を行うことが可能となる。
【0058】
尚、図9に示す通信仕様の切り換え処理は、バッテリ交換後の初回だけでなく、管理装置50が起動信号120を受信する度に毎回実行してもよいが、バッテリ交換直後に1度行えば、その後は、再びバッテリ交換されない限り、通信仕様が不一致になることはない。そのため、バッテリ交換後の初回にのみ行うようにしてもよい。
【0059】
5.効果
以上説明したように、管理装置50が車両の通信仕様を判別して、それと一致する通信仕様に切り換えることから、交換されたバッテリ20がその車両1の専用品でない場合でも、両間でLIN通信を行うことが可能となる。また、信号を利用して通信仕様を判別するので、車両ECU10B、管理装置50ともに、新たに追加となる部品がない。
【0060】
また、本構成では、車両起動時に車両ECU10Bから出力される起動信号120を利用して、車両メーカーと通信仕様を判別する。そのため、車両起動後、直ぐに通信仕様の切り換えを行うことが可能であり、車両起動後、通信できない時間を短時間にできる。
【0061】
また、本構成では、バッテリ20側で通信仕様の切り換えを行うので、通信仕様の異なる車両間でバッテリ20を共通使用することが出来る。そのため、通信仕様の異なる車両ごとに専用のバッテリを設ける場合に比べて、管理面で優位であり、またコストメリットもある。すなわち、本構成では、通信仕様が異なる場合でも、通信仕様ごとに製品(バッテリ20)を用意する必要がないと言うメリットがある。
【0062】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図10によって説明する。
実施形態1では、車両起動時に車両ECU10Bから送信される起動信号120のパルス幅Wの違いを検出することで、通信仕様の切り換えを行った例を説明した。実施形態2では、車両起動時に、車両ECU10Bから管理装置50に対して起動信号120を送信すると共に、図10の(A)、(B)に示すように、起動信号120の送信タイミングから遅れて、車両メーカーの通信仕様に応じてパルス幅Wの異なる判別信号130を出力する。そして、管理装置50側で、判別信号130のパルス幅Wの違いを検出して、通信仕様の切り換えを行う。
【0063】
起動信号120の受信後は、監視モードが休止モードから通常モードに切り換わるため、本構成では、通常モードへの移行後に、管理装置50が判別信号130を受信し、パルス幅Wを検出する処理を行う。そのため、休止モード中にパルス幅Wを検出する場合に比べて、パルス幅Wを正確に検出することが可能となる。従って、車両の通信仕様を正確に判別することが出来、パルス幅Wの誤認識による通信仕様の切り換えミスを抑えることが出来る。
【0064】
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3を図11によって説明する。
実施形態2では、車両起動時に、車両ECU10Bから管理装置50に対して起動信号120を送信すると共に、起動信号120の送信タイミングから遅れて、車両メーカーの通信仕様に応じてパルス幅の異なる判別信号130を出力した。
【0065】
実施形態3では、図11の(A)、(B)に示すように、起動信号120の送信タイミングから遅れて、車両メーカーの通信仕様に応じてパルス数の異なる判別信号140を出力する。そして、管理装置50側で判別信号140のパルス数の違いを検出して、通信仕様の切り換えを行う。
【0066】
実施形態3の場合も、実施形態2と同様に、管理装置50は、通常モードへの移行後に、判別信号140を受信し、パルス数を検出する処理を行う。そのため、休止モード中にパルス数を検出する場合に比べて、パルス数を正確に検出することが可能となる。従って、車両の通信仕様を正確に判別することが出来、パルス数の誤認識による通信仕様の切り換えミスを抑えることが出来る。
【0067】
<実施形態4>
次に、本発明の実施形態4を説明する。
実施形態4は、通信仕様の切り換え後に、車両の実行するバッテリ20の充電制御を特定し、充電中、バッテリ20の状態を監視する。
【0068】
具体的に説明すると、管理装置50は、図9に示すS10~S40の実行により通信仕様を切り換えると、その後、車両ECU10BとのLIN通信により、車両の実行するバッテリ20の充電制御を特定する処理を行う。尚、車両の実行するバッテリ20の充電制御とは、車載の車両発電機15によるバッテリ20の充電制御であり、本例では、充電制御の内容として目標充電電圧や充電電流などを特定する。
【0069】
その後、管理装置50は、特定したバッテリ20の充電制御内容に従って、バッテリ20の状態を監視する。すなわち、電流センサ41の出力から組電池30の充電電流をモニタし、充電電流が適正か監視する。また、電圧検出回路60の出力から組電池30の総電圧を監視して、バッテリ20の充電状況を監視する。
【0070】
そして、充電電流に異常があった場合や、組電池30の総電圧が目標充電電圧付近に達すると、その情報を、LIN通信を通じて車両ECU10Bに通知する。これにより、車両ECU10Bは充電電流に異常があった場合、充電電流を調整するなどの対応を行うことが出来る。また、総電圧が目標充電電圧付近に達すると、その後の充電電圧を調整等することにより、目標充電電圧を超えないようにバッテリ20を充電することが出来る。
【0071】
この構成では、管理装置50が、車両の実行するバッテリ20の充電制御内容に従ってバッテリ20の状態を監視し、その結果を車両ECUに通知するので、バッテリ20の充電制御を高精度に行うことが出来る。
【0072】
<他の実施形態>
本技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0073】
(1)上記実施形態1~4では、LIN(Local Interconnect Network)通信に準拠した通信仕様としてID情報の仕様を切り換える例を示したが、例えば、レスポンス110のデータ長の仕様を切り換えるものであってもよい。また、LIN通信に準拠した通信仕様以外にも、例えば、CAN(Controller Area Network)通信に準拠した通信仕様を切り換えるようにしてもよい。また、車両ECU10Bと管理装置50間の通信プロトコルはLINやCANに限定されるものではなく、他の通信プロトコルに準拠する通信仕様を切り換えるものであってもよい。また、通信仕様として、LIN又はCANなど通信プロトコルの種類を判別して、通信プロトコルを切り換えるようにしてもよい。
【0074】
(2)上記実施形態1~4では、車両ECU10Bからバッテリ20に対して通信仕様を判別する信号を送信し、通信仕様をバッテリ20で切り換えた。これ以外にも、バッテリ20から車両ECU10Bに対して通信仕様を判別する信号を送信し、通信仕様を車両ECU10Bで切り換えるようにしてもよい。
【0075】
(3)上記実施形態1~4では、車両メーカー間で通信仕様が異なる場合を例示したが、これに限らず、本技術は、車両の規格によって通信仕様が異なる場合にも適用することが出来る。すなわち、車両の規格により通信仕様が異なる場合に、バッテリ20が、車両の規格に応じて通信仕様に切り換えるようにしてもよい。
【0076】
(4)上記実施形態1~4では、車両起動時に、通信仕様を切り換える処理を行ったが、通信仕様の切り換えタイミングは、バッテリの交換直後など、車両起動時以外であってもよい。
【0077】
(5)上記実施形態1~4では、信号のパルス幅やパルス数の相違から通信仕様を判別するようにしたが、例えば、通信用コネクタのピン数など信号以外の物理的な手段で通信仕様を判別するようにしてもよい。また、実施形態1では、車両起動時に車両からバッテリに対して通信仕様に応じてパルス幅の異なる起動信号を出力したが、通信仕様に応じてパルス数の異なる起動信号を出力するようにしてもよい。
【0078】
(6)上記実施形態4では、通信仕様の切り換え後、LIN通信を利用して車両ECUの実行するバッテリ20の充電制御を特定し、特定した充電制御に従って、バッテリ20の状態を監視した例を示した。これ以外にも、車両が実行する何らかの制御に従ってバッテリ20の状態を監視するものであれば、広く適用することが可能であり、充電制御に限定されるものではない。
【0079】
(7)車両1は、乗用自動車に限られず、自動二輪車、三輪の自動車、トラック等、任意の車両に適用することができる。
【0080】
(8)バッテリ20は、エンジン始動用のバッテリに用いられるものであってもよく、また、2つのバッテリを備えた車両において、2つのバッテリの双方に適用してもよいし、2つのバッテリの一方に適用してもよい。
【0081】
(9)バッテリ20の電圧は、12V、24V、又は48Vであってもよく、必要に応じて任意の電圧とすることができる。
【符号の説明】
【0082】
1:自動車
10B:車両ECU(本発明の「制御装置」の一例)
20:バッテリ
30:組電池
31:二次電池(本発明の「蓄電素子」の一例)
41:電流センサ
45:電流遮断装置
50:管理装置
60:電圧検出回路
70:データ処理部
73:メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11