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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】光硬化性樹脂組成物、インキ及び塗料
(51)【国際特許分類】
   C08F 26/06 20060101AFI20220531BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20220531BHJP
   C08F 2/46 20060101ALI20220531BHJP
   C09D 11/101 20140101ALI20220531BHJP
   C09D 4/00 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
C08F26/06
C08F2/44 C
C08F2/46
C09D11/101
C09D4/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018535588
(86)(22)【出願日】2017-08-08
(86)【国際出願番号】 JP2017028766
(87)【国際公開番号】W WO2018037912
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】P 2016161767
(32)【優先日】2016-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108993
【氏名又は名称】株式会社大阪ソーダ
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本村 優奈
(72)【発明者】
【氏名】井上 聡
(72)【発明者】
【氏名】大橋 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】横山 勝敏
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-161411(JP,A)
【文献】特開2002-099081(JP,A)
【文献】特開2012-144605(JP,A)
【文献】特開平03-212460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 26/06
C08F 2/44
C08F 2/46
C09D 11/101
C09D 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式[I]で表される化合物を重合して得られる重合体(A)、エチレン性不飽和化合物(B)を含有し、
一般式[I]で表される化合物に基づく単量体単位の含有量が、重合体(A)100重量%中、100重量%であり、
重合体(A)の重量平均分子量が10,000~150,000であり、
重合体(A)の含有量が、光硬化性樹脂組成物全量に対して、1~50重量%であり、
エチレン性不飽和化合物(B)の含有量が、重合体(A)100重量部に対して、50~1200重量部であるプラスチック基材用光硬化性樹脂組成物。
【化1】
(式中、Rは[-CH-CR=CHR]基、グリシジル基、炭素数1~5のアルキル基又は水素原子を表し、それぞれのRは異なっていても同一でもよく、そのうちの少なくとも1個は[-CH-CR=CHR]基であり、[-CH-CR=CHR]基中のR及びRは、それぞれ、H又はCHを表す。)
【請求項2】
更に、光重合開始剤を含有し、プラスチック基材がポリプロピレン又はポリエチレンテレフタレートである請求項1に記載のプラスチック基材用光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプラスチック基材用光硬化性樹脂組成物を含むことを特徴とするインキ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のプラスチック基材用光硬化性樹脂組成物を含むことを特徴とする塗料。
【請求項5】
オーバープリントワニスである請求項4に記載の塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式[I]で表される化合物を重合して得られる重合体(A)を含有する光硬化性樹脂組成物、並びにその樹脂組成物を含んでなるインキ、塗料に関する。さらに詳しくはプラスチック基材との密着性に優れた光硬化性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光(例えば、紫外線)により硬化させる種々の樹脂組成物は、インキ、塗料、接着剤、フォトレジスト等に使用されている。例えば、紫外線硬化タイプの印刷インキは、硬化速度が速く短時間で硬化できること、溶剤を使わないので環境に適合していること、省資源・省エネルギーであること等の点が高く評価され実用化が広がっている。
【0003】
そのような樹脂組成物の中で、ジアリルフタレート(ジアリルオルソフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート)から誘導されたジアリルフタレート樹脂を含有する樹脂組成物は、紙用のUVオフセットインキとして採用されている。
【0004】
しかしながら、オフセットインキとして用いる際にジアリルフタレート樹脂を配合するとプラスチック基材との密着性が充分でないことが知られている(例えば、特許文献1)。また、顔料、紫外線硬化性樹脂、光重合開始剤を含有する非吸収材料用紫外線硬化型インクジェットインク組成物であって、紫外線硬化性樹脂中がトリアジン環を有する3官能以上のアリル基とポリエステルアクリレートと(メタ)アクリレートであるものが記載されている(特許文献2)。しかしながら、インクジェット用の組成物であり、プラスチック基材への密着性や乾燥性の点で不十分であった。
【0005】
近年、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)といった様々な種類のプラスチック製品が市販されており、ジアリルフタレート樹脂の欠点であるプラスチック基材との密着性の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭52-4310号公報
【文献】特開2005-68255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、プラスチック基材との密着性に優れた重合体(A)を含む光硬化性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意研究の結果、特定の構造を有する化合物を重合して得られる重合体(A)を含有する光硬化性樹脂組成物が、プラスチック基材との密着性に優れることを見出し、本発明に想到した。
【0009】
すなわち、本発明の光硬化性樹脂組成物は、
下記一般式[I]で表される化合物を重合して得られる重合体(A)を含有することを特徴とする。
【化1】
(式中、Rは[-CH-CR=CHR]基、グリシジル基、炭素数1~5のアルキル基又は水素原子を表し、それぞれのRは異なっていても同一でもよく、そのうちの少なくとも1個は[-CH-CR=CHR]基であり、[-CH-CR=CHR]基中のR及びRは、それぞれ、H又はCHを表す。)
【0010】
上記一般式[I]で表される化合物を重合して得られる重合体(A)を含有すると、プラスチック基材に対する密着性に優れ、乾燥性にも優れた光硬化性樹脂組成物となる。
また、この光硬化性樹脂組成物は特にPP(ポリプロピレン)樹脂に対する密着性に優れるため、従来のジアリルフタレート樹脂を用いた組成物では密着性を高くすることが困難であったPP樹脂用のインキ、塗料の成分として適している。
【0011】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、更に、エチレン性不飽和化合物(B)を含有することが好ましい。エチレン性不飽和化合物を用いることにより、光硬化性樹脂組成物の乾燥性が向上し、印刷に用いるのに適切な粘度に調整することができ、塗布作業性に優れた組成物となる。
【0012】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、更に、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤を含有することによって、光照射による重合がスムーズに進むため、硬化物を短時間に得ることができる。
【0013】
本発明のインキは、本発明の光硬化性樹脂組成物を含むことを特徴とする。
このインキは、プラスチック基材に印刷するためのインキとして適しており、特にPP樹脂製のシート、フィルム等の基材に印刷するためのインキとして適している。
【0014】
本発明の塗料は、本発明の光硬化性樹脂組成物を含むことを特徴とする。
この塗料は、プラスチック基材に描画するための塗料として適しており、特にPP樹脂製のシート、フィルム等の基材に描画するための塗料として適している。
また、本発明の塗料はオーバープリントワニスであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、インキ、塗料、接着剤及びフォトレジストの成分として使用した場合に、合成高分子の基材、特にプラスチック基材に対する密着性に優れる光硬化性樹脂組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
重合体(A)
本発明の光硬化性樹脂組成物は、下記一般式[I]で表される化合物を重合して得られる重合体(A)を含有することを特徴とする。
本発明において、重合体(A)を含有することにより、合成高分子の基材、特にプラスチック基材に対する密着性に優れる理由については定かではないが、以下のように推測される。
下記一般式[I]で表される化合物を重合して得られる重合体(A)では、イソシアヌレート環に基づく構造(下記一般式[I]中の環構造(イソシアネートの三量体))が連続して存在しており、連続して存在するイソシアヌレート環に基づく構造により、合成高分子の基材、特にプラスチック基材に対する密着性に優れるものと推測される。
【化2】
(式中、Rは[-CH-CR=CHR]基、グリシジル基、炭素数1~5(好ましくは炭素数1~3)のアルキル基又は水素原子を表し、それぞれのRは異なっていても同一でもよく、そのうちの少なくとも1個(特には2個が好ましく、3個がより好ましい)は[-CH-CR=CHR]基であり、[-CH-CR=CHR]基中のR及びRは、それぞれ、H又はCHを表す。)
【0018】
上記のとおり、Rは、少なくとも1個が[-CH-CR=CHR]基であり、2個が[-CH-CR=CHR]基であることが好ましく、3個が[-CH-CR=CHR]基であることがより好ましい。[-CH-CR=CHR]基の数が多いほど反応性が向上し、より高分子量の重合体が得られやすくなる。
【0019】
及びRは、H(水素原子)であることが好ましく、共にH(水素原子)であることがより好ましい。
【0020】
一般式[I]中、Rがアルキル基である場合、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0021】
一般式[I]で表される構造を有する化合物の具体例としては、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルモノエチルイソシアヌレート、ジアリルモノプロピルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、モノアリルジメチルイソシアヌレート、モノアリルジエチルイソシアヌレート、モノアリルジプロピルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、モノアリルモノエチルモノメチルイソシアヌレート、モノアリルイソシアヌレート、モノアリルジメタリルイソシアヌレート、モノアリルモノメタリルモノメチルイソシアヌレート等が挙げられる。これらのなかでも、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレートが好ましく、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレートがより好ましく、トリアリルイソシアヌレートが特に好ましい。
【0022】
上記式[I]で表される化合物を重合することで得られる重合体(A)を光硬化性樹脂組成物に用いることができる。さらには、上記一般式[I]で表される化合物と他の重合可能な化合物を共重合したものを光硬化性樹脂組成物に用いることも可能である。共重合可能な化合物として、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類、酢酸ビニル、ラウリン酸ビニル、安息香酸ビニル等の各種脂肪族及び芳香族カルボン酸ビニルエステル類、塩化ビニル、臭化ビニル等のビニル類、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン等のビニリデン類、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルアルキルエーテル類、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等のアリルエーテル類、酢酸アリル、安息香酸アリル等の各種脂肪族及び芳香族カルボン酸アリルエステル類、テレフタル酸ジアリル、クエン酸トリアリル等の多塩基酸アリルエステル類等が挙げられる。重合体(A)における共重合成分の配合比率は、2~50重量%であればよく、2~20重量%であることが好ましい。
【0023】
上記一般式[I]で表される化合物の具体例として挙げた化合物を得る方法の例としては、通常知られている重合方法により、合成してもよく、市販品を用いてもよい。
【0024】
上記一般式[I]で表される化合物の重合方法は、特に限定されず、通常の重合反応を用いることができる。上記重合反応には、必要に応じて、適宜重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤を用いることで、より高分子量の重合体(A)を短時間に得ることができる。
【0025】
一般式[I]で表される化合物の重合反応に用いる重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル等のアゾ開始剤、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、ベンゾイルパーオキサイド等の過酸化物開始剤、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1―オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン系、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾイン系、ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド等のリン系、チオキサントン等のイオウ系、ベンジル、9,10-フェナンスレンキノン等のベンジル系の光重合開始剤が挙げられる。
【0026】
重合開始剤の量は、一般式[I]で表される化合物の単量体100重量部に対して、5.0重量部以下であることが好ましく、3.0重量部以下であることがより好ましい。また、0.001~3.0重量部であることが特に好ましい。
【0027】
重合時の反応温度は60~240℃、例えば80~220℃であることが好ましい。反応時間は、0.1~100時間、例えば1~30時間であることが好ましい。
【0028】
上記一般式[I]で表される化合物を上述の方法等により重合することにより、上記一般式[I]で表される化合物に基づく単量体単位を有する重合体(A)を調製できる。
【0029】
上記一般式[I]で表される化合物に基づく単量体単位の含有量は、重合体(A)100重量%中、20重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることが更に好ましく、98重量%以上であることが特に好ましく、100重量%であってもよい。
【0030】
重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は250,000以下であることが好ましく、200,000以下であることがより好ましい。また、重合体(A)の重量平均分子量は2,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましい。また、重合体(A)の重量平均分子量は10,000~150,000であることがさらに好ましく、20,000~140,000であることが特に好ましい。
【0031】
重合体(A)の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、1.5~10.0が好ましく、3.0~7.5がより好ましい。
本明細書において、重合体(A)の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は実施例に記載の方法により測定される値である。
【0032】
本発明の光硬化性樹脂組成物中における重合体(A)の含有量は、光硬化性樹脂組成物全量に対して、1~50重量%であることが好ましく、1~40重量%であることがより好ましく、1~30重量%であることがさらに好ましい。下限は、1重量%であることが特に好ましく、5重量%であってもよい。重合体(A)の含有量が50重量%を超えると、エチレン性不飽和化合物(B)への溶解性が悪くなり、粘度も高くなり取扱い性が悪くなることがある。重合体(A)の含有量が1重量%未満であると、得られる光硬化性樹脂組成物に充分な乾燥性や密着性が得られないことがある。
【0033】
エチレン性不飽和化合物(B)
本発明の光硬化性樹脂組成物は、光照射により硬化可能であるエチレン性不飽和化合物(B)を含有することが好ましい。エチレン性不飽和化合物(B)は、炭素-炭素二重結合を1~20個有することが好ましく、1~10個有することがより好ましく、2~6個有することがさらに好ましい。エチレン性不飽和化合物(B)としては、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アリル化合物及びビニル化合物等が挙げられる。また、エチレン性不飽和化合物は2種以上の化合物の混合物を用いることも可能である。
【0034】
(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類の(メタ)アクリル酸エステル化合物、及びそれらにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加した(メタ)アクリル酸エステル化合物;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール類にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したものの(メタ)アクリル酸エステル化合物;エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アルキッド(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル化合物;エポキシ化大豆油アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル化合物を例示することができ、好ましくはペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類の(メタ)アクリル酸エステル化合物、及びそれらにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加した(メタ)アクリル酸エステル化合物であり、より好ましくはペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン等のアルコール類の(メタ)アクリル酸エステル化合物、及びそれらにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加した(メタ)アクリル酸エステル化合物である。
【0035】
(メタ)アリル化合物としては、ジ(メタ)アリルフタレート等を例示することができる。
ビニル化合物としては、スチレン、ジビニルベンゼン、N-ビニルピロリドン、酢酸ビニル等を例示することができる。
【0036】
中でも、重合体(A)との相溶性、光硬化した際の硬化性の点で、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、及びそれらにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したものが好ましい。
【0037】
本発明の光硬化性樹脂組成物に含有されるエチレン性不飽和化合物(B)の含有量は、光硬化性樹脂組成物中における重合体(A)100重量部に対して、50~1200重量部であることが好ましく、50~1000重量部であることがより好ましく、100~900重量部であることがさらに好ましい。
また、本発明の光硬化性樹脂組成物中における重合体(A)とエチレン性不飽和化合物(B)の比率(重合体:エチレン性不飽和化合物)は、重量比で、5:95~95:5の範囲であればよく、10:90~90:10の範囲であることが好ましく、10:90~70:30の範囲であることがより好ましく、10:90~50:50の範囲であることがさらに好ましい。上記範囲内であれば、プラスチック基材への充分な密着性が得られやすい。
【0038】
その他の添加物
本発明の光硬化性樹脂組成物は、重合開始剤を含んでいてもよく、特に光重合開始剤を含有することが好ましい。光硬化性樹脂組成物に含有される光重合開始剤としては、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、等のアセトフェノン系、ベンゾイン、ベンゾインエチルエ-テル等のベンゾイン系、ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド等のリン系、チオキサントン等のイオウ系、ベンジル、9,10-フェナンスレンキノン等のベンジル系が挙げられる。
【0039】
光硬化性樹脂組成物に含有される光重合開始剤の量は、光硬化性樹脂組成物全体に対して、0.1~15重量%の範囲であることが好ましく、0.5~12重量%の範囲がより好ましく、1~10重量%の範囲がさらに好ましい。
【0040】
光硬化性樹脂組成物には、光開始助剤(例えば、トリエタノールアミン等のアミン系光開始助剤)を併用してもよい。
光開始助剤の量は、光硬化性樹脂組成物全体に対して、0.1~5重量%の範囲であることが好ましく、0.5~3重量%の範囲がより好ましい。
【0041】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、種々の添加剤、例示すれば、安定剤(例えば、ハイドロキノン、メトキノン、メチルハイドロキノン等の重合禁止剤)、顔料(例えば、シアニンブルー、ジスアゾエロー、カーミン6b、レーキッドC、カーボンブラック、チタンホワイト)等の着色剤、充填剤、粘度調整剤等の各種添加剤を目的に応じて含有することができる。光硬化性樹脂組成物に含有される安定剤の量は、光硬化性樹脂組成物全体に対して、0.01~2重量%の範囲であることが好ましく、0.1~1重量%の範囲がより好ましい。
着色剤の量は、光硬化性樹脂組成物全体に対して、1~50重量%の範囲であることが好ましく、1~45重量%の範囲がより好ましい。
【0042】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、重合体(A)に、必要に応じて、エチレン性不飽和化合物(B)、さらには、光重合開始剤、光開始助剤、添加剤(例えば、安定剤、顔料)を混合することによって製造できる。本発明の光硬化性樹脂組成物は、光を照射することによって硬化する。硬化に用いる光は、一般に紫外線である。
【0043】
光硬化性樹脂組成物の硬化反応に用いる硬化装置、また、硬化条件は特に限定されず、通常の光硬化反応に用いられる方法であればよい。
【0044】
本発明の光硬化性樹脂組成物の用途は特に限定されない。インキ(例えば、光硬化性平版用印刷インキ、シルクスクリーンインキ、グラビアインキ等の印刷インキ)、塗料(例えば、紙用、プラスチック用、金属用、木工用等の塗料、例示すれば、オーバープリントワニス)、接着剤、フォトレジスト等の技術分野において使用できる。
本発明の光硬化性樹脂組成物を含むインキは本発明のインキであり、本発明の光硬化性樹脂組成物を含む塗料は本発明の塗料である。また、本発明の塗料はオーバープリントワニスであることが好ましい。
【0045】
例えば、インキの一般的作製方法は次のとおりである。エチレン性不飽和化合物(B)に重合体(A)及び安定剤等を60℃~100℃の温度で攪拌しながら溶解させワニスを作製する。このワニスに、顔料、光重合開始剤、その他添加剤を、バタフライミキサーで撹拌混合後、3本ロール等で練肉することでインキが得られる。
また、オーバープリントワニスの作成は、顔料を使用しない以外は、インキと同様の手順により行える。
【0046】
(実施例)
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0047】
重合体(A)の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)の測定重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)はGPCを用いて測定した。Mw、Mnは標準ポリスチレン換算の重量平均分子量、数平均分子量の値である。
カラム:ShodexLF-804×2本を直列に接続
流速:1.0mL/min
温度:40℃
検出:RID-20A
試料:試料30mgをテトラヒドロフラン3mLに溶解させ測定用のサンプルとした。
【0048】
製造例1 トリアリルイソシアヌレート重合体1の合成
3Lのセパラブルフラスコにトリアリルイソシアヌレート600gを加え、15gのベンゾイルパーオキサイドを加えて80℃で加熱攪拌した。1時間反応させた後、室温(25℃)まで冷却した。冷却後、フラスコにメタノールを加え、重合体を沈殿させた。得られた重合体を40℃で16時間減圧乾燥した(収量:73g、収率:12%、Mw=53,000、Mw/Mn=3.3)。得られた重合体を重合体1とし、実施例1、4~6に用いた。
【0049】
製造例2 トリアリルイソシアヌレート重合体2の合成
製造例1の反応時間を1.25時間とした以外は同様の方法で合成を行った。(収量:84g、収率:14%、Mw=94,000、Mw/Mn=5.3)。得られた重合体を重合体2とし、実施例2に用いた。
【0050】
製造例3 トリアリルイソシアヌレート重合体3の合成
製造例1の反応時間を1.5時間とした以外は同様の方法で合成を行った。(収量:94g、収率:16%、Mw=126,000、Mw/Mn=6.9)。得られた重合体を重合体3とし、実施例3に用いた。
【0051】
実施例1~6、比較例1、2
下記表1に記載の各組成の光硬化性樹脂組成物を調製し、光硬化性樹脂組成物の特性を評価した。
【0052】
【表1】
表1に示した重合体1~3以外の成分は下記のとおりである。
また、表1に示す組成量は重量部での表記である。
DAP樹脂:(株)大阪ソーダ製 ダイソーダップA(ジアリルフタレート樹脂)
トリアリルイソシアヌレート(モノマー)
DTMPTA:サートマー(株)製 SR355 ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート
Irgacure907:BASF ジャパン(株)製 2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン
Irganox1076:BASFジャパン(株)製 オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート
【0053】
1)光硬化性樹脂組成物の溶解性の評価
各製造例で得られた各重合体1~3、DAP樹脂、トリアリルイソシアヌレート(モノマー)、エチレン性化合物、及び重合開始剤を表1に記載した各組成量を添加し、加熱混合して光硬化性樹脂組成物を調製した。各組成物を室温(25℃)に冷却後、一晩経過したものの外観が透明であるかで溶解性を確認した。冷却後も外観が透明であったものを〇、白濁したものを×とした。結果は表2に示す。
【0054】
2)乾燥性試験
調製した光硬化性樹脂組成物を、プラスチックフィルム(ポリプロピレン基材:龍田化学株式会社製 無延伸高透明PPシート 品名:ハイピークリスタル ST-500 厚み0.3mm)にRIテスターを用いてコートし、出力120W/cmのメタルハライドランプ(ランプ距離11cm、コンベアスピード50m/min)で硬化させた。なお、UV硬化装置はアイグラフィックス株式会社製コンベア型紫外線硬化装置を用いた。塗膜を指で触り、面に指紋が付かない状態(タックフリー)になるまで複数回通過させ、その回数で乾燥性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0055】
3)密着性試験
調製した光硬化性樹脂組成物を、乾燥性試験と同様の方法でプラスチックフィルムにコートし、硬化させた。得られた塗膜に、ニチバン社製18mm幅のセロテープ(登録商標、品番:LP-18、粘着力:4.01N/10mm)を貼り付け、親指で10回強く擦った後、セロテープ(登録商標)を真上にゆっくりと引き離した。完全に剥離しなかったものを○、完全に剥離したものを×とした。評価結果を表2に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
実施例1~6に示すように、一般式[I]で表される化合物を重合して得られた重合体1~3を用いて調製した光硬化性樹脂組成物は、比較例1に示すようなDAP樹脂を用いて調製した光硬化性樹脂組成物と同等の乾燥性を有する。そして、DAP樹脂を用いて調製した比較例1やトリアリルイソシアヌレート(モノマー)を用いて調整した比較例2の光硬化性樹脂組成物では密着が難しいポリプロピレンシートへの密着性にも優れる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、プラスチック基材用のインキ(例えば、オフセットインキ)、塗料、接着剤、フォトレジスト等に使用可能である。