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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20220531BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019011404
(22)【出願日】2019-01-25
(65)【公開番号】P2020120539
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】東川 直樹
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-030443(JP,A)
【文献】特許第6279054(JP,B1)
【文献】特開2018-207664(JP,A)
【文献】特開2015ー097452(JP,A)
【文献】特開2011-193681(JP,A)
【文献】特開2012-233497(JP,A)
【文献】特開2018-186633(JP,A)
【文献】特開2015-006031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H05K 5/06,7/20
H01L 23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に水路が形成された筐体を備える電力変換装置であって、
前記筐体は、第1筐体構成体と第2筐体構成体とで構成され、
前記水路は、前記第1筐体構成体及び前記第2筐体構成体の一方から他方へ冷却水を流すように形成され、
前記第1筐体構成体及び前記第2筐体構成体はそれぞれ、前記水路のシール面である第1シール面と、前記第1筐体構成体と前記第2筐体構成体とのシール面であり、かつ前記第1シール面よりも外側に位置する第2シール面と、を有し、
前記第1シール面は、成形ガスケットによってシールされるとともに、前記第2シール面は、液体ガスケットによってシールされていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記第1筐体構成体及び前記第2筐体構成体の少なくとも一方は、前記第1シール面と前記第2シール面との間に、前記第1シール面及び前記第2シール面よりも凹んだ溝を有する請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1筐体構成体は、モータを駆動するインバータを収容し、前記第2筐体構成体は、DC/DCコンバータを収容する請求項1又は請求項2に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の電力変換装置は、インバータ回路等を備えた電力変換部と、電力変換部を収容する収容空間を有する筐体とを備えている。電力変換部は、発熱部品で構成されている。筐体の内部には、電力変換部を冷却するための冷却水が流れる水路が形成されている。筐体は、第1筐体構成体と第2筐体構成体とで構成されている。水路は、一方の筐体構成体から他方の筐体構成体へ冷却水を流すように形成されている。
【0003】
そして、第1筐体構成体と第2筐体構成体との間は、ガスケットによってシールされている。ガスケットは、収容空間の内外をシールするための第1部位と、水路の内外をシールするための第2部位と、第1部位と第2部位とを接続するための第3部位とが一体化された構成である。ガスケットは、ゴム製の成形ガスケットである。
【0004】
また、水路が形成された筐体を有する電力変換装置では、ガスケットの配置後に水路の内部の気密性が確保されているか否かを検査するのが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6279054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、成形ガスケットは、塩害に対する耐性が低いことが一般に知られている。このため、塩水が存在する環境で電力変換装置が使用され、塩水がガスケットに付着すると、ガスケットのシール性が低下する虞がある。この課題を解決するために、塩害に対する耐性の高い液体ガスケットを採用することが考えられる。しかしながら、液体ガスケットを採用した場合、液体ガスケットが乾燥した後で水路の気密検査を行う必要があり、液体ガスケットを乾燥させるのに長時間を要する。よって、電力変換装置の生産性が低下してしまう。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、シール性を高めつつ、生産性を向上できる電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するための電力変換装置は、内部に水路が形成された筐体を備える電力変換装置であって、前記筐体は、第1筐体構成体と第2筐体構成体とで構成され、前記水路は、前記第1筐体構成体及び前記第2筐体構成体の一方から他方へ冷却水を流すように形成され、前記第1筐体構成体及び前記第2筐体構成体はそれぞれ、前記水路のシール面である第1シール面と、前記第1筐体構成体と前記第2筐体構成体とのシール面であり、かつ前記第1シール面よりも外側に位置する第2シール面と、を有し、前記第1シール面は、成形ガスケットによってシールされるとともに、前記第2シール面は、液体ガスケットによってシールされていることを要旨とする。
【0009】
これによれば、塩害に対する耐性が高い液体ガスケットによって第2シール面をシールするとともに、成形ガスケット及び液体ガスケットによる二重シール構造とすることで、シール性を高めることができる。また、水路のシール面である第1シール面を成形ガスケットによってシールすることで、第1シール面をシールした直後であっても、水路の気密検査が可能になる。よって、電力変換装置の生産性を向上できる。
【0010】
また、上記電力変換装置について、前記第1筐体構成体及び前記第2筐体構成体の少なくとも一方は、前記第1シール面と前記第2シール面との間に、前記第1シール面及び前記第2シール面よりも凹んだ溝を有するのが好ましい。
【0011】
筐体の組立時において、後に液状ガスケットとなり得る液体が、第1筐体構成体の第2シール面と第2筐体構成体の第2シール面との間からはみ出すことがある。第1シール面と第2シール面との間に溝が形成されていない場合、はみ出した液体が成形ガスケットに付着することがある。すると、成形ガスケットの弾性が低下したり、液体ガスケットの種類によっては成形ガスケットが溶けたりすることによって、成形ガスケットのシール性が低下する虞がある。これに対し、第1シール面と第2シール面との間に溝が形成されていることによって、筐体の組立時において、液状ガスケットとなり得る液体が、第1筐体構成体の第2シール面と第2筐体構成体の第2シール面との間からはみ出したとしても溝に流れ込むため、成形ガスケットへの付着が抑制される。よって、成形ガスケットのシール性の低下を抑制できる。
【0012】
また、上記電力変換装置について、前記第1筐体構成体は、モータを駆動するインバータを収容し、前記第2筐体構成体は、DC/DCコンバータを収容する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シール性を高めつつ、生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】パワーコントロールユニットの分解斜視図。
図2】(a)は実施形態におけるパワーコントロールユニットの平面図、(b)はパワーコントロールユニットの正面図、(c)はパワーコントロールユニットの左側面図、(d)はパワーコントロールユニットの右側面図。
図3】第2ケース部材の平面図。
図4】第1ケース部材の底面図。
図5図2(a)における5-5線断面図。
図6】ケースの組立時の第1ケース部材及び第2ケース部材の分解斜視図。
図7】ケースの組立時の第1ケース部材の底面図。
図8】ケースの組立時のケースの部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、電力変換装置をパワーコントロールユニットに具体化した一実施形態を図1図8にしたがって説明する。なお、図面において、水平面を、直交するX,Y方向で規定するとともに、上下方向をZ方向で規定している。
【0016】
図1において、パワーコントロールユニット10は、平滑コンデンサ11と、インバータ12と、DC/DCコンバータ13とを備えている。
平滑コンデンサ11は、車載の高圧バッテリから高圧の直流を入力して平滑化し、インバータ12が備えるパワーモジュール12a,12bに出力する。
【0017】
インバータ12は、平滑コンデンサ11を通過後の直流を交流に変換するためのものである。インバータ12のパワーモジュール12a,12bはそれぞれ、複数個のパワースイッチング素子としてのIGBTを備えている。パワーモジュール12a,12bはそれぞれ、平滑コンデンサ11を介して車載の高圧バッテリから高圧の直流を入力する。
【0018】
パワーモジュール12a,12bにおける複数個のIGBTを用いて三相インバータ回路が形成されている。パワーモジュール12aにおける各相の出力端子は第1の三相モータに接続される。パワーモジュール12bにおける各相の出力端子は第2の三相モータに接続される。
【0019】
DC/DCコンバータ13は、例えば絶縁型DC/DCコンバータが用いられ、パワースイッチング素子、トランス、ダイオード、コンデンサ等により構成されている。DC/DCコンバータ13は、車載の高圧バッテリから高圧の直流を入力してパワースイッチング素子のスイッチング動作により12Vに降圧して低圧出力端子から12Vの車両低圧バッテリに出力する。
【0020】
このようにパワーコントロールユニット10は、2つのパワーモジュール12a,12bと、DC/DCコンバータ13とを備えており、高圧の直流電圧を入力して2つのモータを駆動することができるとともに降圧して低圧電圧を供給することができるようになっている。
【0021】
図1に示すように、電力変換装置としてのパワーコントロールユニット10は、筐体としてのケース14を備えている。ケース14は、第1筐体構成体としての四角筒状の第1ケース部材21と、第2筐体構成体としての有蓋四角筒状の第2ケース部材22とによって構成されている。第1ケース部材21及び第2ケース部材22はそれぞれ、アルミダイカスト製である。
【0022】
第1ケース部材21の内部は、内壁21aによって区画されている。第1ケース部材21の内部において内壁21aよりもZ方向の上側には、上室R1が区画形成されている。上室R1には、パワーモジュール12a,12bが配置されている。第1ケース部材21の内部における内壁21aよりもZ方向の下側には、下室R2が区画形成されている。下室R2には平滑コンデンサ11が配置されている。平滑コンデンサ11は、内壁21aに形成された2つの孔21h(図1では1つのみ図示)を介して各パワーモジュール12a,12bと接続されている。四角筒状の第1ケース部材21の上側開口部は、上側閉塞板23で塞がれる。
【0023】
第2ケース部材22は、第1ケース部材21とZ方向に重ねて配置される。Z方向において、第1ケース部材21は上側に位置し、第2ケース部材22は下側に位置する。第2ケース部材22は、有蓋四角筒状のケース本体24を有している。ケース本体24は、長方形状の蓋面24aと、蓋面24aの各縁部から延びる周壁24bとを有している。ケース本体24の蓋面24aには、上板25が重ねられている。よって、第2ケース部材22の蓋部22aは、ケース本体24の蓋面24a及び上板25からなる二層構造である。第2ケース部材22の蓋部22aは、第1ケース部材21の下側開口部を塞ぐ。ケース本体24の下側開口部は、下側閉塞板26で塞がれる。
【0024】
第1ケース部材21の内部には、平滑コンデンサ11とインバータ12とが収容されている。第2ケース部材22の内部には、DC/DCコンバータ13が収容されている。部品の配置として、Z方向において下から、DC/DCコンバータ13、平滑コンデンサ11、インバータ12(パワーモジュール12a,12b)の順に配置されている。
【0025】
図2(a)~図2(d)に示すように、ケース14は、長方形状の4つの側面(第1~第4側面S1~S4)を有し、隣接する側面同士は直角に交わっている。第1側面S1と第2側面S2とは対向し、第3側面S3と第4側面S4とは対向している。第1~第4側面S1~S4は、第1ケース部材21の周壁、及び第2ケース部材22の周壁24bによって構成されている。
【0026】
パワーコントロールユニット10は、ケース14内の部品を冷却するための水冷式冷却機構を備えている。図2(a)に示すように、ケース14の内部には、冷却水を流すための水路30が形成されている。図2(a)、図2(b)、及び図2(d)に示すように、第4側面S4には、冷却水の入口管P1と出口管P2が取り付けられている。入口管P1と出口管P2とは、Z方向に離間して配置されている。Z方向において、入口管P1は下側に、出口管P2は上側に位置している。
【0027】
図2(b)に示すように、水路30は、第2ケース部材22の内部に形成された第1水路31と、第1ケース部材21の内部に形成された第2水路32とによって構成されている。入口管P1から入る冷却水は、第1水路31→第2水路32の順に流れ、出口管P2から排出される。よって、水路30は、第2ケース部材22から第1ケース部材21へ冷却水を流すように形成されている。図2(a)に示すように、第1水路31は、水平方向(X-Y面)に延在するとともに平面視S字状に屈曲するS字水路31aと、Z方向に延在する第1接続水路31bとを有している。第2水路32は、水平方向(X-Y面)に延在するとともに平面視U字状に屈曲するU字水路32aと、Z方向に延在する第2接続水路32bとを有している。
【0028】
まず、第1水路31について説明する。
図1及び図3に示すように、第1水路31のS字水路31aは、第2ケース部材22の蓋部22aの内部に形成されている。図1に示すように、蓋面24aの上面には、S字状に延びる第1凹部241が形成されている。上板25の下面には、S字状に延びる第2凹部251が形成されている。そして、ケース本体24の蓋面24aと上板25とが、第1凹部241と第2凹部251とが対向するように重ねられることにより、S字水路31aが区画形成される。第1水路31の第1接続水路31bは、上板25をZ方向に貫通する貫通孔である。S字水路31aの一端部は、第1凹部241に形成された連通孔31hを介して入口管P1と連通し、S字水路31aの他端部は、第1接続水路31bと連通している。第1接続水路31bにおけるS字水路31aとは反対側の端部は、第2ケース部材22の外部に開口している。第1水路31において、冷却水は、入口管P1及び連通孔31hを通してS字水路31aの一端に供給され、S字水路31aを流れた後、S字水路31aの他端から第1接続水路31bに流入する。
【0029】
次に、第2水路32について説明する。
第2水路32のU字水路32aは、第1ケース部材21の内部における上室R1と下室R2との間に配置されている。
【0030】
図4に破線で示すように、第1ケース部材21の内壁21aは、上室R1に露出する側の面から突出する四角枠状の2つの突条部21b,21cを有している。2つの突条部21b,21cは、X方向に並んで配置されている。一方の突条部21bの開口部は、一方のパワーモジュール12aによって塞がれ、他方の突条部21cの開口部は、他方のパワーモジュール12bによって塞がれる。内壁21aにおける上室R1に露出する側の面と、突条部21cの内周面と、パワーモジュール12bとによって、第1冷却流路34aが区画形成されている。内壁21aにおける上室R1に露出する側の面と、突条部21bの内周面と、パワーモジュール12aとによって、第2冷却流路34bが区画形成されている。
【0031】
第1ケース部材21は、第3側面S3を構成する側壁の外面に凹設された凹部21dを有している。また、第1ケース部材21には、第3側面S3を構成する側壁を貫通する2つの貫通孔21eが形成されている。各貫通孔21eの一端は、凹部21dの底部に位置し、各貫通孔21eの他端は、内壁21aまで到達している。第1ケース部材21の凹部21dは、側面閉塞板27によって第1ケース部材21の外部から塞がれる。第1ケース部材21の凹部21dの内側と側面閉塞板27とによって、区画流路34cが区画形成されている。
【0032】
第1ケース部材21の内壁21aの内部には、第2接続水路32bと第1冷却流路34aとを繋ぐ第1流路35aと、貫通孔21eを介して第1冷却流路34aと区画流路34cとを繋ぐ第2流路35bとが形成されている。また、第1ケース部材21の内壁21aには、貫通孔21eを介して区画流路34cと第2冷却流路34bとを繋ぐ第3流路35cと、第2冷却流路34bと出口管P2とを繋ぐ第4流路35dとが形成されている。第1流路35a及び第4流路35dはX方向に延びる流路であり、第2流路35b及び第3流路35cはY方向に延びる流路である。U字水路32aにおいて、冷却水は、第1流路35a、第1冷却流路34a、第2流路35b、区画流路34c、第3流路35c、第2冷却流路34b、第4流路35dの順に流れる。
【0033】
第2水路32の第2接続水路32bは、第2側面S2を構成する第1ケース部材21の側壁の内部に形成されている。第2接続水路32bにおけるU字水路32aとは反対側の端部は、第1ケース部材21の外部に開口している。
【0034】
第1ケース部材21と第2ケース部材22とが重ねて配置された状態において、第1接続水路31bと第2接続水路32bとは連通し、第1水路31と第2水路32とは水路30を構成している。冷却水は、入口管P1から水路30のS字水路31aに供給され、S字水路31aを流れる。S字水路31aを流れる冷却水は、第1接続水路31b及び第2接続水路32bを通ってU字水路32aに流入し、U字水路32aを流れる。U字水路32aを流れる冷却水は、出口管P2から排出される。DC/DCコンバータ13は、S字水路31aを流れる冷却水によって冷却される。パワーモジュール12aは、U字水路32aの第2冷却流路34bを流れる冷却水によって冷却され、パワーモジュール12bは、U字水路32aの第1冷却流路34aを流れる冷却水によって冷却される。平滑コンデンサ11は、S字水路31aを流れる冷却水、及びU字水路32aを流れる冷却水の両方によって冷却される。
【0035】
図5に示すように、第1ケース部材21の周壁の下面211は、第2ケース部材22の上板25と対向する。図4に示すように、第1ケース部材21の周壁の下面211は、第2接続水路32bの開口を取り囲む第1環状部211aと、下面211の縁部に沿う第2環状部211bとを有している。第2環状部211bは、第1環状部211aよりも外側に位置するとともに、第1環状部211aと同一平面上に存在する。第1環状部211aには、下面211が凹設された環状の収容溝211cが形成されている。また、下面211における第1環状部211aと第2環状部211bとの間には、下面211が凹設された溝としてのU字状の第1溜まり溝211dが形成されている。収容溝211c及び第1溜まり溝211dはそれぞれ、第1環状部211a及び第2環状部211bよりも凹んでいる。
【0036】
図1に示すように、第2ケース部材22の上板25の上面221は、第1ケース部材21と対向する。図3及び図5に示すように、上板25は、上面221から第1接続水路31bの開口を取り囲むように突出する環状の第1突出部28と、上面221から突出するとともに上板25の縁部に沿う環状の第2突出部29とを有する。第2突出部29は、第1突出部28よりも外側に位置する。第1突出部28の先端面28aは、第2突出部29の先端面29aと同一平面上に存在する。また、上板25における第1突出部28と第2突出部29との間には、溝としてのU字状の第2溜まり溝221aが形成されている。第2溜まり溝221aは、第1突出部28の外周面の一部と、第2突出部29の内周面の一部と、上面221とによって形成されている。第2溜まり溝221aは、第1突出部28の先端面28a及び第2突出部29の先端面29aよりも凹んでいる。
【0037】
図5に示すように、第1ケース部材21と第2ケース部材22とが重ねられた状態において、第1環状部211aと第1突出部28の先端面28aとは対向し、第2環状部211bと第2突出部29の先端面29aとは対向する。
【0038】
第1ケース部材21の周壁の下面211と、第2ケース部材22の上板25の上面221との間には、2種類のガスケットが介在する。第1環状部211aと第1突出部28の先端面28aとの間には、成形ガスケット51が介在する。成形ガスケット51における第1環状部211a側の一部は、収容溝211cに収容される。成形ガスケット51は、第1環状部211aと第1突出部28の先端面28aとの間をシールすることによって、第1接続水路31bと第2接続水路32bとが連通する箇所において水路30の内外をシールする。よって、収容溝211cの底面における成形ガスケット51と接触する部分は、水路30をシールする第1シール面としての第1内側シール面A1である。また、第1突出部28の先端面28aにおける成形ガスケット51と接触する部分は、水路30をシールする第1シール面としての第2内側シール面A2である。本実施形態の成形ガスケット51は、ゴム製のOリングである。
【0039】
第2環状部211bと第2突出部29の先端面29aとの間には、液体ガスケット52が介在する。液体ガスケット52は、第2環状部211bと第2突出部29の先端面29aとの間をシールすることにより、ケース14の内外をシールしている。具体的には、液体ガスケット52は、平滑コンデンサ11が収容される下室R2の内外をシールしている。よって、第2環状部211bにおける液体ガスケット52と接触する部分は、第1ケース部材21と第2ケース部材22とをシールするとともに第1内側シール面A1よりも外側に位置する第2シール面としての第1外側シール面B1である。また、第2突出部29の先端面29aにおける液体ガスケット52と接触する部分は、第1ケース部材21と第2ケース部材22とをシールするとともに第2内側シール面A2よりも外側に位置する第2シール面としての第2外側シール面B2である。本実施形態の液体ガスケット52は、FIPGである。
【0040】
このように第1ケース部材21の周壁と第2ケース部材22の上板25との間には、成形ガスケット51と、水平方向(X-Y面)において成形ガスケット51よりも外側に位置する液体ガスケット52による二重シール構造が設けられている。
【0041】
本実施形態の作用をケース14の組立方法とともに説明する。
パワーコントロールユニット10の製造の際、ケース14は、以下のように組み立てられる。
【0042】
まず、第1ケース部材21の下室R2に平滑コンデンサ11を収容し、第2ケース部材22のケース本体24の内部にDC/DCコンバータ13を収容する。
続いて、図6に示すように、図1での第1ケース部材21の下側開口部が上を向くように、第1ケース部材21を配置する。
【0043】
次に、図7に示すように、第1ケース部材21の収容溝211cに成形ガスケット51を収容する。また、第1ケース部材21の第2環状部211bに、後に液体ガスケット52となる硬化前の液体52aを塗布する。
【0044】
そして、図6に示すように、第2ケース部材22の上板25の上面を下向きにした状態で、第1ケース部材21の上から被せるようにして、第1ケース部材21に第2ケース部材22を載置する。
【0045】
これにより、図8に示すように、第1ケース部材21の第1環状部211aと、第2ケース部材22の第1突出部28の先端面28aとが成形ガスケット51を介して対向する。また、第1ケース部材21の第2環状部211bと、第2ケース部材22の第2突出部29の先端面29aとが液体ガスケット52を介して対向する。このとき、後に液体ガスケット52となる硬化前の液体52aの一部が、第1環状部211aの第1外側シール面B1と第2突出部29の先端面29aの第2外側シール面B2との間からはみ出し、はみ出した液体52aが第1溜まり溝211dに流れ込むことがある。その後、第1ケース部材21と第2ケース部材22とを図示しない連結部材(例えば、ボルト及びナット)によって連結し、第1ケース部材21と第2ケース部材22とを一体化する。
【0046】
これにより、第1接続水路31bと第2接続水路32bとが連通し、水路30が形成される。また、第1環状部211aと第1突出部28の先端面28aとの間に成形ガスケット51が介在するとともに、成形ガスケット51は、第1環状部211aの第1内側シール面A1と第1突出部28の先端面28aの第2内側シール面A2とによって押し潰される。よって、成形ガスケット51は、第1接続水路31bと第2接続水路32bとが連通する箇所において水路30の内外をシールする。
【0047】
その後、水路30の気密検査を行う。具体的には、水路30に空気を流すことにより、水路30の内部の気密性が確保されているか否かを検査する。そして、気密検査により、水路30の気密性が確保されていることが確認された場合、液体52aを完全に硬化させ、液体ガスケット52とすることにより、ケース14の内外をシールする。これにより、第1ケース部材21と第2ケース部材22との組み立てが完了し、ケース14が完成する。なお、液体52aが完全に硬化する前に、第1ケース部材21が上側、第2ケース部材22が下側となるように、ケース14の向きを変えた場合、第1溜まり溝211dに溜まった液体52aが第2溜まり溝221aに流れ込むことがある。
【0048】
本実施形態の効果について説明する。
(1)塩害に対する耐性が高い液体ガスケット52によってケース14の内外をシールするとともに、成形ガスケット51と成形ガスケット51よりも外側に位置する液体ガスケット52による二重シール構造とすることで、シール性を高めることができる。また、水路30のシール面である第1内側シール面A1と第2内側シール面A2とを成形ガスケット51によってシールすることで、シールした直後であっても、水路30の気密検査が可能になる。よって、パワーコントロールユニット10の生産性を向上できる。
【0049】
(2)ケース14の組立時において、後に液体ガスケット52となり得る液体52aが、第1ケース部材21の第1外側シール面B1と、第2ケース部材22の第2外側シール面B2との間からはみ出すことがある。第1ケース部材21の周壁の下面211において、第1内側シール面A1と第1外側シール面B1との間には第1溜まり溝211dが形成されていない場合、はみ出した液体52aが成形ガスケット51に付着することがある。すると、成形ガスケット51の弾性が低下したり、液体ガスケット52の種類によっては成形ガスケット51が溶けたりすることによって、成形ガスケット51のシール性が低下する虞がある。これに対し、本実施形態では、第1ケース部材21の周壁の下面211において、第1内側シール面A1と第1外側シール面B1との間には第1溜まり溝211dが形成されている。このため、液体52aが第1外側シール面B1と第2外側シール面B2との間からはみ出したとしても、第1溜まり溝211dに流れ込むため、成形ガスケット51への付着が抑制される。よって、成形ガスケット51のシール性の低下を抑制できる。
【0050】
また、本実施形態では、第2ケース部材22の上板25において、第2内側シール面A2と第2外側シール面B2との間には第2溜まり溝221aが形成されている。このため、ケース14の組立時において、液体52aが完全に硬化する前に、第1ケース部材21が上側、第2ケース部材22が下側となるように、ケース14の向きを変えたとしても、第1溜まり溝211dに溜まった液体52aは第2溜まり溝221aに流れ込むため、成形ガスケット51への付着が抑制される。よって、成形ガスケット51のシール性の低下を抑制できる。
【0051】
(3)成形ガスケット51の周長が長いほど、成形ガスケット51の異物除去の範囲が大きくなるため、成形ガスケット51の周長は短い方が好ましい。本実施形態では、第1外側シール面B1(第2外側シール面B2)よりも周長の短い第1内側シール面A1(第2内側シール面A2)のみに成形ガスケット51を用いるため、成形ガスケット51の異物除去の範囲を小さくできる。よって、パワーコントロールユニット10の生産性を向上できる。
【0052】
(4)成形ガスケット51の周長が長いほど、捻れ等によって組み付け性が低下するため、成形ガスケット51の周長は短い方が好ましい。本実施形態では、第1外側シール面B1(第2外側シール面B2)よりも周長の短い第1内側シール面A1(第2内側シール面A2)のみに成形ガスケット51を用いるため、捻れ等による組み付け性の低下を抑制できる。よって、パワーコントロールユニット10の生産性を向上できる。
【0053】
(5)成形ガスケット51の周長が長いほど、第1ケース部材21と第2ケース部材22とを連結する際の成形ガスケット51の反力が大きくなるため、成形ガスケット51の周長は短い方が好ましい。本実施形態では、第1外側シール面B1(第2外側シール面B2)よりも周長の短い第1内側シール面A1(第2内側シール面A2)のみに成形ガスケットを用いるため、成形ガスケット51の反力を小さくできる。よって、第1ケース部材21と第2ケース部材22とを連結する際の連結部材の数を削減できる。
【0054】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○ 電力変換装置は、インバータ12及びDC/DCコンバータ13を備えるパワーコントロールユニット10に限定されず、例えば、インバータ12のみ、又はDC/DCコンバータ13のみを備える電力変換装置であってもよい。
【0055】
○ 筐体としてのケース14を構成する第1筐体構成体は、四角筒状の第1ケース部材21に限定されない。同様に、筐体としてのケース14を構成する第2筐体構成体は、有蓋四角筒状の第2ケース部材22に限定されない。例えば、第1筐体構成体は、有底筒状のケース部材であり、第2筐体構成体は、第1筐体構成体の開口部を閉塞する板状の蓋体であってもよい。また、例えば、第1筐体構成体は、有蓋筒状のケース部材であり、第2筐体構成体は、有底筒状のケース部材であってもよい。
【0056】
○ 上記実施形態の入口管P1を出口管に変更し、出口管P2を入口管に変更してもよい。この場合、水路30は、第1ケース部材21から第2ケース部材22へ冷却水を流す水路となる。
【0057】
○ S字水路31aは、S字状の水路に限定されず、平滑コンデンサ11及びDC/DCコンバータ13を冷却できるのであれば、形状及び構成を適宜変更してもよい。
○ U字水路32aは、U字状の水路に限定されず、パワーモジュール12a,12bを冷却できるのであれば、形状及び構成を適宜変更してもよい。
【0058】
○ 第2接続水路32bは、ケース14の内部に形成されるのであれば、第1ケース部材21の側壁に形成されていなくてもよい。例えば、第1~第4側面S1~S4を構成する第1ケース部材21の側壁とは独立して設けられた管の内側を第2接続水路32bとしてもよい。
【0059】
○ 成形ガスケット51は、ゴム製に限定されない。成形ガスケット51は、第1シール面をシールできるのであれば、金属製でもよいし、金属とゴムの複合材によって形成されていてもよい。
【0060】
○ 液体ガスケット52は、FIPGに限定されない。液体ガスケット52は、第2シール面をシールできるのであれば、例えば、パテ等でもよい。
○ 収容溝211cは、第2ケース部材22の上板25の第1突出部28の先端面28aに形成されていてもよい。この場合、収容溝211cの底面における成形ガスケット51と接触する部分が第2内側シール面A2となる。なお、収容溝211cは、第1ケース部材21のみに形成されてもよいし、第2ケース部材22のみに形成されてもよいし、第1ケース部材21及び第2ケース部材22の両方に形成されてもよい。
【0061】
○ 第1ケース部材21の周壁の下面211の第1溜まり溝211dを省略してもよい。
○ 第2ケース部材22の上板25の上面221の第2溜まり溝221aを省略してもよい。
【0062】
○ 第1ケース部材21に収容される部品は、インバータ12に限定されず、他の部品が収容されていてもよい。同様に、第2ケース部材22に収容される部品は、DC/DCコンバータ13に限定されず、他の部品が収容されていてもよい。
【0063】
○ 第1ケース部材21において、第1環状部211aと第2環状部211bとは、同一平面上に存在していなくてもよい。また、第2ケース部材22において、第1突出部28の先端面28aと第2突出部29の先端面29aとは、同一平面上に存在していなくてもよい。例えば、第1環状部211aが第2環状部211bよりも突出し、かつ第1突出部28の先端面28aが第2突出部29の先端面29aよりも凹んでいてもよい。反対に、第1環状部211aが第2環状部211bよりも凹み、かつ第1突出部28の先端面28aが第2突出部29の先端面29aよりも突出していてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10…電力変換装置としてのパワーコントロールユニット、12…インバータ、13…DC/DCコンバータ、14…筐体としてのケース、21…第1筐体構成体としての第1ケース部材、22…第2筐体構成体としての第2ケース部材、30…水路、51…成形ガスケット、52…液体ガスケット、211d…溝としての第1溜まり溝、221a…溝としての第2溜まり溝、A1…第1シール面としての第1内側シール面、A2…第1シール面としての第2内側シール面、B1…第2シール面としての第1外側シール面、B2…第2シール面としての第2外側シール面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8