(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20220531BHJP
【FI】
H01G4/30 513
H01G4/30 201G
H01G4/30 516
H01G4/30 201F
(21)【出願番号】P 2019061956
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2020-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100158207
【氏名又は名称】河本 尚志
(72)【発明者】
【氏名】西林 和博
(72)【発明者】
【氏名】野村 善行
(72)【発明者】
【氏名】村西 直人
【審査官】西間木 祐紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-124786(JP,A)
【文献】特開2012-009813(JP,A)
【文献】特開2013-179268(JP,A)
【文献】特開平04-061106(JP,A)
【文献】特開2017-073435(JP,A)
【文献】特開2017-073539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層と複数の内部電極が積層され、積層方向において相対する1対の主面と、前記積層方向に直行する幅方向において相対する1対の側面と、前記積層方向および前記幅方向の両方に直行する長さ方向において相対する1対の端面と、を有するセラミック素体を備え、
前記複数の内部電極は、前記1対の端面に露出し、
少なくとも前記1対の端面の一部を覆って下地外部電極が形成され、
前記内部電極の幅方向の端部に沿った前記側面と平行な前記セラミック素体の断面を見たとき、前記下地外部電極は、前記セラミック素体上に不連続に形成され、
前記セラミック素体は、前記不連続に形成された下地外部電極から部分的に露出した露出領域を有し、
前記露出領域が、樹脂を含有する樹脂層によって覆われ、
前記下地外部電極が、前記樹脂層から突出し、
前記下地外部電極
および前記樹脂層が、めっき膜によって覆われた、積層セラミック電子部品。
【請求項2】
前記端面において、前記セラミック素体の前記露出領域から前記内部電極が部分的に露出した、請求項1に記載された積層セラミック電子部品。
【請求項3】
前記内部電極の幅方向の端部に沿った前記側面と平行な前記セラミック素体の断面を見たとき、前記主面に最も近い前記内部電極が露出している部分の前記端面において、前記樹脂層の厚さが、前記下地外部電極の厚さの50%以下である、請求項2に記載された積層セラミック電子部品。
【請求項4】
前記樹脂層が絶縁性である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載された積層セラミック電子部品。
【請求項5】
前記端面における前記下地外部電極の最大厚さが前記1対の端面の最短距離の1/40以下である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載された積層セラミック電子部品。
【請求項6】
前記下地外部電極が、前記1対の主面の一部および前記1対の側面のうち少なくとも一方の一部を更に覆った、請求項1ないし4のいずれか1項に記載された積層セラミック電子部品。
【請求項7】
前記主面または前記側面における前記下地外部電極の最大厚さが、前記1対の主面の最短距離および前記1対の側面の最短距離のうち、大きい方の1/60以下である、請求項6に記載された積層セラミック電子部品。
【請求項8】
前記1対の主面または前記1対の側面において、前記セラミック素体の前記露出領域の少なくとも一部が、前記樹脂層によって覆われた、請求項6または7に記載された積層セラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層セラミック電子部品に関し、更に詳しくは、機械的強度および信頼性が改善された積層セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサ、積層セラミックサーミスタ、積層セラミックインダクタ、積層セラミック複合部品など積層セラミック電子部品が、電子機器に広く使用されている。特許文献1(特開平2003-243249号公報)に、積層セラミックコンデンサが開示されている。
図6に、特許文献1に開示された積層セラミックコンデンサ1000を示す。
【0003】
積層セラミックコンデンサ1000は、セラミック素体101を備えている。セラミック素体101の内部に、内部電極102が形成されている。セラミック素体101の端面に、導電性ペーストを焼付けて形成された下地外部電極103と、下地外部電極103上に形成されためっき膜104とからなる外部電極105が形成されている。
【0004】
このような積層セラミック電子部品において、セラミック素体と外部電極との間の機械的強度の向上が重要な課題になっている。すなわち、回路基板に実装した後に、外力や熱サイクルなどによって応力がかかっても、セラミック素体に亀裂が発生したり、外部電極がセラミック素体から剥離したりしない積層セラミック電子部品が求められている。
【0005】
積層セラミック電子部品において、セラミック素体と外部電極との間の機械的強度を向上させる方法として、種々の方法が検討されている。
【0006】
たとえば、上述した積層セラミックコンデンサ1000の構造において、下地外部電極103とめっき膜104との間に、ある程度の大きな厚みをもった導電性の樹脂層を追加で形成する方法がある。この方法によれば、外力や熱サイクルなどによる応力を樹脂層にて逃がすことができるため、機械的強度が改善される。
【0007】
また、別の方法として、セラミック素体101に、下地外部電極103を不連続に形成する方法がある。すなわち、下地外部電極103を形成する際に、セラミック素体101の端面に通常よりも薄く導電性ペーストを塗布することにより、焼付けによって形成された下地外部電極103を不連続にする方法がある。この方法によれば、下地外部電極103がセラミック素体101上に不連続に形成されているため、セラミック素体101に対する下地外部電極103の残留応力が緩和され、セラミック素体101と外部電極105との間の機械的強度が改善される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した、下地外部電極103とめっき膜104との間に、大きな厚みをもった導電性の樹脂層を追加で形成する方法には、外部電極105の厚さが大きくなってしまうという問題があった。
【0010】
一般的に、積層セラミック電子部品の外形寸法の規格は、外部電極の厚さも含めて規定される。そのため、導電性の樹脂層を形成したことにより、外部電極105の厚さが大きくなると、その分だけセラミック素体101の外形寸法を小さくすることが必要になる。そして、セラミック素体101の外形寸法を小さくするためには、内部電極102の積層数を減らしたり、内部電極102の面積を小さくしたりすることが必要になる。そのため、外部電極105に導電性の樹脂層を追加で形成した積層セラミックコンデンサは、外部電極105の厚さが大きいことに起因して、大容量化が難しいという問題があった。
【0011】
一方、下地外部電極103を不連続に形成する方法には、積層セラミックコンデンサの耐湿性などの信頼性が低下してしまうという問題があった。すなわち、下地外部電極103を不連続にする方法によれば、セラミック素体101の端面の下地外部電極103の不連続部分に内部電極102が露出することになり、セラミック素体101と内部電極102との隙間などから内部に水分が侵入し、IR(絶縁抵抗)が劣化するなど、信頼性が低下してしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上述した従来の問題を解決するためになされたものであり、その手段として本発明の一実施態様にかかる積層セラミック電子部品は、複数の誘電体層と複数の内部電極が積層され、積層方向において相対する1対の主面と、積層方向に直行する幅方向において相対する1対の側面と、積層方向および幅方向の両方に直行する長さ方向において相対する1対の端面と、を有するセラミック素体を備え、複数の内部電極は、1対の端面に露出し、少なくとも1対の端面の一部を覆って下地外部電極が形成され、内部電極の幅方向の端部に沿った側面と平行なセラミック素体の断面を見たとき、下地外部電極は、セラミック素体上に不連続に形成され、セラミック素体は、不連続に形成された下地外部電極から部分的に露出した露出領域を有し、露出領域が、樹脂を含有する樹脂層によって覆われ、下地外部電極が、樹脂層から突出し、下地外部電極および樹脂層が、めっき膜によって覆われたものとする。
【発明の効果】
【0013】
本願発明の積層セラミック電子部品は、下地外部電極がセラミック素体上に不連続に形成されているため、セラミック素体に形成した下地外部電極の残留応力が緩和されており、セラミック素体と外部電極との間の機械的強度が高い。また、本願発明の積層セラミック電子部品は、下地外部電極の不連続部分を樹脂層によって覆っているため、耐湿性などの信頼性が十分に確保されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1(A)は、実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ100の斜視図である。
図1(B)は、積層セラミックコンデンサ100の要部分解斜視図である。
【
図2】積層セラミックコンデンサ100の断面図である。
【
図3】
図3(A)、(B)は、それぞれ、積層セラミックコンデンサ100の製造方法の一例において実施される工程を示す断面図である。
【
図4】
図4(C)、(D)は、
図3(B)の続きであり、それぞれ、積層セラミックコンデンサ100の製造方法の一例において実施される工程を示す断面図である。
【
図5】
図5(E)、(F)は、
図4(D)の続きであり、それぞれ、積層セラミックコンデンサ100の製造方法の一例において実施される工程を示す断面図である。
【
図6】特許文献1に開示された積層セラミックコンデンサ1000を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面とともに、本発明を実施するための形態について説明する。なお、各実施形態は、本発明の実施の形態を例示的に示したものであり、本発明が実施形態の内容に限定されることはない。また、異なる実施形態に記載された内容を組合せて実施することも可能であり、その場合の実施内容も本発明に含まれる。また、図面は、明細書の理解を助けるためのものであって、模式的に描画されている場合があり、描画された構成要素または構成要素間の寸法の比率が、明細書に記載されたそれらの寸法の比率と一致していない場合がある。また、明細書に記載されている構成要素が、図面において省略されている場合や、個数を省略して描画されている場合などがある。
【0016】
本実施形態においては、積層セラミック電子部品として積層セラミックコンデンサを例に挙げて説明する。ただし、本願発明の積層セラミック電子部品の種類は任意であり、積層セラミックコンデンサには限られない。
【0017】
図1(A)、(B)、
図2に、実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ100を示す。ただし、
図1(A)は、積層セラミックコンデンサ100の斜視図である。
図1(B)は、積層セラミックコンデンサ100の要部分解斜視図であり、後述する複数の誘電体層1aのうちの2層を示している。
図2は、積層セラミックコンデンサ100の断面図であり、
図1(A)、(B)に、それぞれ一点鎖線矢印で示したX-X部分を示している。なお、図中に長さ方向L、幅方向W、高さ方向Tを示しており、以下の説明において、これらの方向に言及する場合がある。
【0018】
積層セラミックコンデンサ100は、複数の誘電体層1aと複数の内部電極2、3が積層された、セラミック素体1を備えている。セラミック素体1は、直方体形状からなり、高さ方向T(積層方向)において相対する1対の主面1Mと、高さ方向Tに直行する幅方向Wにおいて相対する1対の側面1Sと、高さ方向Tおよび幅方向Wの両方に直行する長さ方向Lにおいて相対する1対の端面1Eとを有している。
【0019】
セラミック素体1(誘電体層1a)の材質は任意であり、たとえば、BaTiO3を主成分とする誘電体セラミックスを使用することができる。ただし、BaTiO3に代えて、CaTiO3、SrTiO3、CaZrO3など、他の材質を主成分とする誘電体セラミックスを使用してもよい。誘電体層1aの厚さは、例えば、0.3~5.0μmである。
【0020】
内部電極2、3の材質は任意であり、たとえば、Niを使用することができる。ただし、Niに代えて、Cu、Pdなど、他の金属を使用してもよい。また、NiやCu、Pdなどは、他の金属との合金であってもよい。内部電極2、3の厚さは、例えば、0.1~3.0μmである。
【0021】
複数の内部電極2が、一方の端面1Eに引出されている。複数の内部電極3が、他方の端面1Eに引出されている。
【0022】
セラミック素体1の一方の端面1Eに、外部電極4が形成されている。セラミック素体1の他方の端面1Eに、外部電極5が形成されている。外部電極4、5は、それぞれ、キャップ状に形成されており、端面1Eから、1対の主面1Mおよび1対の側面1Sに延出して形成されている。
【0023】
複数の内部電極2が、外部電極4に接続されている。複数の内部電極3が、外部電極5に接続されている。
【0024】
図2に示すように、外部電極4、5は、それぞれ、セラミック素体1の外表面に形成された下地外部電極6を備えている。下地外部電極6は、
図2から分かるように、セラミック素体1上に不連続に形成されている。下地外部電極6の材質は任意であるが、たとえば、Cuおよびガラスを使用することができる。ただし、Cuに代えて、Ag、Niなど、他の金属を使用してもよい。また、CuやAg、Niなどは、他の金属との合金であってもよい。
【0025】
下地外部電極6が不連続に形成されているため、セラミック素体1は、下地外部電極6から部分的に露出した露出領域EAを有している。端面1Eにおいて、セラミック素体1の露出領域EAから内部電極2、3が部分的に露出している。
【0026】
そして、露出領域EAが、樹脂層7によって覆われている。樹脂層7の樹脂の種類は任意であるが、たとえば、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂などを使用することができる。なお、本実施形態においては、樹脂層7に絶縁性樹脂を使用した。しかしながら、樹脂層7は、導電性であってもよく、Agなどを含んだ導電性樹脂を使用してもよい。
【0027】
樹脂層7から露出した下地外部電極6が、めっき膜8によって覆われている。めっき膜8の材質、層数は任意であるが、たとえば、第1層目をNiめっき膜、第2層目をSnめっき膜とした2層構造にすることができる。ただし、
図2においては、見やすくするため、めっき膜8を1層に示している。めっき膜8の1層あたりの厚さは、例えば、0.1~5.0μmである。
【0028】
図2に示す断面(内部電極2、3の幅方向Wの端部に沿った側面1Sと平行なセラミック素体1の断面;
図1(A)、(B)に一点鎖線矢印で示すX-X部分の断面)を見たとき、主面1Mに最も近い内部電極2または3が露出している部分の端面1Eにおいて、樹脂層7の厚さが、下地外部電極6の厚さの50%以下であることが好ましい。50%以下であれば、めっき膜8が、セラミック素体1の露出領域EAを覆う樹脂層7の上に、良好に形成されるからである。そして、この部分にめっき膜8を設けたことにより、ESR(Equivalent Series Resistance;等価直列抵抗)などの電気特性が改善されるからである。
【0029】
セラミック素体1の端面1Eにおける下地外部電極6の最大厚さは、1対の端面1Eの最短距離の1/40以下であることが好ましい。1/40を超えると、下地外部電極6を不連続にすることが難しくなるからである。また、セラミック素体1の主面1M、側面1Sにおける下地外部電極6の最大厚さは、1対の主面1Mの最短距離および1対の側面1Sの最短距離のうち大きい方の1/60以下であることが好ましい。
【0030】
以上の構造からなる、実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ100は、下地外部電極6がセラミック素体1上に不連続に形成されているため、セラミック素体1に形成した下地外部電極6の残留応力が緩和されており、セラミック素体1と外部電極4、5との間の機械的強度が高い。
【0031】
また、実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ100は、下地外部電極6の不連続部分(セラミック素体1の露出領域EA)を樹脂層7によって覆っているため、耐湿性などの信頼性が十分に確保されている。
【0032】
積層セラミックコンデンサ100の製造方法の一例を、
図3(A)~
図5(F)を参照して説明する。
【0033】
まず、
図3(A)に示すセラミック素体1を作製する。
【0034】
図示は省略するが、まず、誘電体セラミックスの粉末、バインダ樹脂、溶剤などを用意し、これらを湿式混合してセラミックスラリーを作製する。
【0035】
次に、キャリアフィルム上に、セラミックスラリーをダイコータ、グラビアコーター、マイクログラビアコーターなどを用いてシート状に塗布し、乾燥させて、セラミックグリーンシートを作製する。
【0036】
次に、所定のセラミックグリーンシートの主面に、内部電極2、3を形成するために、予め用意した導電性ペーストを所望のパターン形状に印刷する。なお、保護層となるセラミックグリーンシートには、導電性ペーストは印刷しない。
【0037】
次に、セラミックグリーンシートを所定の順番に積層し、加熱圧着して一体化させ、未焼成のセラミック素体を作製する。
【0038】
次に、未焼成のセラミック素体を、所定のプロファイルで焼成して、セラミック素体1を完成させる。なお、このとき、セラミックグリーンシートの主面に印刷された導電性ペーストも同時に焼成され、セラミック素体1の内部に内部電極2、3が形成される。
【0039】
次に、セラミック素体1に下地外部電極6を形成するために、
図3(B)に示すように、セラミック素体1の両端部に、導電性ペースト16を塗布する。具体的には、セラミック素体1の端部を、導電性ペースト16が入れられた浴に浸す。なお、セラミック素体1の端面1Eだけではなく、1対の主面1Mおよび1対の側面1Sにも導電性ペースト16が塗布されるように、1回目は、セラミック素体1の端部を、導電性ペースト16が深く入れられた浴に浸す。そして、2回目は、余分な導電性ペースト16を除去するために、セラミック素体1の端部を、導電性ペースト16が浅く入れられた浴に浸す。セラミック素体1の端部を、3回以上、浴に浸してもよい。
【0040】
なお、本実施形態においては、セラミック素体1の端部に塗布する導電性ペースト16の厚さを、一般的な積層セラミックコンデンサを作製する場合よりも小さくしておく。下地外部電極6をセラミック素体1に不連続に形成するためである。
【0041】
次に、セラミック素体1を所定のプロファイルで加熱し、セラミック素体1の端部に塗布された導電性ペースト16をセラミック素体1に焼付ける。この結果、
図4(C)に示すように、セラミック素体1の両端部に、それぞれ、不連続な下地外部電極6が形成される。なお、セラミック素体1は、下地外部電極6から部分的に露出した露出領域EAを有している。
【0042】
次に、樹脂層7を形成するための樹脂を含む含浸液を作製する。具体的には、含浸液は、溶剤に樹脂が溶かされた溶液などである。
【0043】
次に、下地外部電極6が形成されセラミック素体1を、チャンバー内に収容する。チャンバーには、予め、樹脂を含む含浸液が入れられた浴を用意しておく。
【0044】
次に、チャンバー内を真空引きする。真空引きの時間は、たとえば5分程度とする。続いて、下地外部電極6が形成されセラミック素体1を、樹脂を含む含浸液が入れられた浴に含浸させる。続いて、チャンバー内の気圧を上昇させ、加圧する。加圧の時間は、たとえば5分程度とする。続いて、チャンバー内を大気圧に戻した後に、セラミック素体1を、チャンバー(樹脂を含む含浸液が入れられた浴)から取り出す。なお、上述した真空引きは、セラミック素体1を含浸液が入れられた浴に含浸させてからおこなってもよい。
【0045】
この結果、
図4(D)に示すように、セラミック素体1の外表面に樹脂17が付着する。なお、樹脂17は、セラミック素体1の露出領域EAにも付着する。
【0046】
次に、樹脂17が付着したセラミック素体1の外表面を洗浄し、不要な部分に付着した樹脂17を除去する。洗浄は、たとえば、セラミック素体1の露出領域EAに付着した樹脂17の厚さが、下地外部電極6の厚さの50%以下になるのを目安としておこなう。また、露出領域EAを除く下地外部電極6が形成されていない領域の樹脂17は、除去することが好ましい。続いて、セラミック素体1の液切り、乾燥をおこなう。
【0047】
次に、セラミック素体1を所定のプロファイルで加熱し、セラミック素体1の外表面に付着した樹脂17を硬化させる。加熱は、たとえば、150℃程度の温度で、60分程度の時間おこなう。この結果、
図5(E)に示すように、セラミック素体1の露出領域EAが、樹脂層7によって覆われる。
【0048】
次に、
図5(F)に示すように、電解めっきによりめっき膜8を形成して、下地外部電極6をめっき膜8によって覆う。なお、本実施形態においては、めっき膜8は、めっき成長により、露出領域EAに形成された樹脂層7も覆う。以上により、本実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ100が完成する。
【0049】
積層セラミックコンデンサ100の信頼性を確認するため、IR試験を実施した。積層セラミックコンデンサ100を作製し、実施例とした。また、積層セラミックコンデンサ100のチップサイズを1005(1.0mm×0.5mm×0.5mm)、積層数400枚、誘電体層の厚さを0.6μmとした。また、比較のために、積層セラミックコンデンサ100から樹脂層7を省略したもの、すなわち、不連続な下地外部電極6を形成した後、樹脂層7を形成することなくめっき膜8を形成したものを作製し、比較例とした。実施例72個および比較例72個を、温度65℃、相対湿度90%の環境下で電圧6.3Vを印加した状態で500時間放置したのち、各試料のIR値を測定した。そして、IR値が8.00以下の試料をIR劣化品とした。実施例においては、72個にIR劣化品は発生しなかった。一方、比較例においては、72個中9個のIR劣化品が発生した。以上より、積層セラミックコンデンサ100は、耐湿性が高く、信頼性が高いことが確認できた。
【0050】
以上、実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ100について説明した。しかしながら、本発明が上述した内容に限定されることはなく、発明の趣旨に沿って種々の変更をなすことができる。
【0051】
たとえば、上記実施形態では積層セラミックコンデンサ100を例に挙げて説明したが、本願発明の積層セラミック電子部品の種類は任意であり、積層セラミックコンデンサには限られず、積層セラミックサーミスタ、積層セラミックインダクタ、積層セラミック複合部品など、他の種類の積層セラミック電子部品であってもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、樹脂層7がセラミック素体1の露出領域EAの全面を覆っていたが、樹脂層7はセラミック素体1の露出領域EAの全面を覆っている必要はない。すなわち、樹脂層7は、セラミック素体1の露出領域EAの上に、一部が途切れた状態(途切れ途切れの状態)で形成されていてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、樹脂層7がセラミック素体1に接触していたが、樹脂層7はセラミック素体1に接触している必要はない。すなわち、セラミック素体1と樹脂層7との間に隙間があってもよい。なお、隙間は、セラミック素体1と樹脂層7とを完全に分離するものであってもよいし、セラミック素体1と樹脂層7とを部分的に分離するものであってもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、めっき膜8が下地外部電極6および樹脂層7の上に連続的に形成されていたが、めっき膜8は連続的に形成されている必要はない。すなわち、めっき膜8は、不連続に形成されていてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、露出領域EAに形成された樹脂層7の全体が、めっき膜8に覆われていたが、樹脂層7の全体がめっき膜8に覆われている必要はない。すなわち、樹脂層7は、めっき膜8によって部分的に覆われていてもよい。あるいは、樹脂層7は、めっき膜8によって全く覆われていなくてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、樹脂層7が絶縁性であったが、樹脂層7を導電性のものにしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、外部電極4、5が、セラミック素体1の端面1Eだけではなく、1対の主面1Mおよび1対の側面1Sにも形成されていたが、外部電極4、5を、端面1Eおよび主面1Mのみに形成してもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、下地外部電極6を、焼成済みのセラミック素体1の端部に後から焼付けによって形成したが、下地外部電極6は、セラミック素体1と同時焼成によって形成してもよい。
【0059】
本願発明の一実施態様にかかる積層セラミックコンデンサは、「課題を解決するための手段」の欄に記載したとおりである。
【0060】
この積層セラミックコンデンサは、セラミック素体の端面において、露出領域から内部電極が部分的に露出したものであってもよい。露出領域から内部電極が部分的に露出していても、本願発明においては、露出領域が樹脂層によって覆われるため、十分な耐湿性を確保することができるからである。
【0061】
また、内部電極の幅方向の端部に沿った側面と平行なセラミック素体の断面を見たとき、主面に最も近い内部電極が露出している部分の端面において、樹脂層の厚さが、下地外部電極の厚さの50%以下であることも好ましい。50%以下であれば、めっき膜が、セラミック素体の露出領域を覆う樹脂層の上にも良好に形成され、ESRなどの電気特性が改善される。
【0062】
また、樹脂層は絶縁性であってもよい。樹脂層が絶縁性であっても、下地外部電極とめっき膜は電気的に接続される。
【0063】
また、端面における下地外部電極の最大厚さが1対の端面1Eの最短距離の1/40以下であることも好ましい。1/40を超えると、下地外部電極を不連続にすることが難しくなるからである。
【0064】
また、セラミック素体1の主面1M、側面1Sにおける下地外部電極6の最大厚さは、1対の主面1Mの最短距離および1対の側面1Sの最短距離のうち大きい方の1/60以下であることが好ましい。
【0065】
また、1対の主面または1対の側面において、セラミック素体の露出領域の少なくとも一部が、樹脂層によって覆われることも好ましい。この場合には、電子部品の耐湿性をより向上させることができるからである。
【符号の説明】
【0066】
1・・・セラミック素体
1a・・・誘電体層
1M・・・主面
1S・・・側面
1E・・・端面
2、3・・・内部電極
4、5・・・外部電極
6・・・下地外部電極
7・・・樹脂層
8・・・めっき膜