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特許7081586表示体、冊子、IDカード、表示体の製造方法、および、表示体の製造装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】表示体、冊子、IDカード、表示体の製造方法、および、表示体の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/23 20140101AFI20220531BHJP
   B42D 25/328 20140101ALI20220531BHJP
   B42D 25/45 20140101ALI20220531BHJP
   B41M 3/14 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
B42D25/23
B42D25/328 100
B42D25/45
B41M3/14
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019503854
(86)(22)【出願日】2018-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2018009087
(87)【国際公開番号】W WO2018164237
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2017045328
(32)【優先日】2017-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017045329
(32)【優先日】2017-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017186286
(32)【優先日】2017-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】前平 誠
(72)【発明者】
【氏名】井ノ口 雅美
(72)【発明者】
【氏名】柳本 聖月
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-028443(JP,A)
【文献】特開2011-081165(JP,A)
【文献】特開平09-156199(JP,A)
【文献】特開2004-195818(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02559563(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 3/14
B42D 1/00 - 25/485
G09F 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察対象である表面と、
前記表面に覆われている第1画像パターンであって、表示体の所有者を特定するための1つ以上の第1情報要素を含む第1画像を前記表面を通じて表示する前記第1画像パターンと、
前記表面に覆われ、1つ以上の第2情報要素が埋め込まれた第2画像パターンであって、前記第2情報要素の判別が前記第2画像パターンの一部によって制限されており、前記第1画像とは異なり、かつ、前記表示体の前記所有者を特定するための第2画像を有する前記第2画像パターンと、
前記第2画像パターンと前記表面との間に位置し、前記第2画像パターンの前記一部を隠蔽することによって、前記第2情報要素の前記判別の制限を解除する隠蔽パターンと、を備え
前記第2画像パターンは、延設方向と前記延設方向に直交する配列方向とに沿って並び、第1の色を有する第1ドットと、前記第1の色とは異なる第2の色を有する第2ドットとを含む複数の印刷ドットを含み、
前記複数の印刷ドットは、前記第2情報要素が埋め込まれた第1ドット群と、前記第1ドット群を囲み、前記第2情報要素の判別を制限する第2ドット群とを含み、
各ドット群は、前記第1ドットが前記延設方向に沿って並ぶ第1列と、前記第2ドットが前記延設方向に沿って並ぶ第2列とをそれぞれ複数含み、
前記複数の印刷ドットでは、前記第1ドット群の前記第1列が、前記第2ドット群の前記第1列に前記延設方向において連続せず、
前記隠蔽パターンは、前記延設方向に延びる線状を有し、前記配列方向に沿って並ぶ複数の隠蔽部を備え、
各隠蔽部は、前記第1ドット群における1つの前記第1列に重なる
表示体。
【請求項2】
前記隠蔽パターンと前記表面との間に位置し、回折光を射出するように構成された凹凸を有する回折部をさらに備える
請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
前記回折部は、前記表面と対向する平面視において、前記第1画像パターンおよび前記隠蔽パターンの少なくとも一方の少なくとも一部を覆う
請求項2に記載の表示体。
【請求項4】
前記隠蔽パターンは金属によって形成されている
請求項1から3のいずれか一項に記載の表示体。
【請求項5】
前記第1画像パターンおよび前記第2画像パターンの少なくとも一方は、複数の印刷ドットが重なった重畳ドットを含む
請求項1から4のいずれか一項に記載の表示体。
【請求項6】
前記隠蔽部は、前記配列方向において等間隔で並んでいる
請求項1から5のいずれか一項に記載の表示体。
【請求項7】
第1シートと、前記第1シートとは異なる検証用の第2シートとをさらに備え、
前記第1画像パターン、および、前記第2画像パターンは前記第1シートに備えられており、
前記隠蔽パターンは前記第2シートに備えられており、
前記第2シートは、前記隠蔽パターンが前記第2画像パターンの一部を隠蔽するための第1位置と、前記隠蔽パターンによる隠蔽を解除するための第2位置との間で変位可能である
請求項1から6のいずれか一項に記載の表示体。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の表示体を備える冊子。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載の表示体を備えるIDカード。
【請求項10】
複数の印刷ドットの位置を示す印刷情報を前記複数の印刷ドットの一部を隠蔽するための隠蔽パターンの位置に準じて生成することと、
前記印刷情報に基づいて印刷対象の表面に前記複数の印刷ドットを形成することと、
前記複数の印刷ドットの一部が前記隠蔽パターンに隠蔽された表示体を、前記隠蔽パターンと前記印刷ドットとを重ね合わせることによって製造することと、を含み、
前記印刷情報を生成することは、
前記表面と対向する平面視において、前記表示体における前記複数の印刷ドットの前記一部と前記隠蔽パターンとが重なり、かつ、前記隠蔽パターンがない場合に前記複数の印刷ドットが表示する画像とは色調が異なる画像が表示されるように、前記隠蔽パターンの位置に準じて前記各印刷ドットの位置に関する情報を生成することを含
前記複数の印刷ドットは、延設方向と前記延設方向に直交する配列方向とに沿って延び、第1の色を有する第1ドットと、前記第1の色とは異なる第2の色を有する第2ドットとを含み、
前記複数の印刷ドットは、第1ドット群と前記第1ドット群を囲む第2ドット群とを含み、
各ドット群は前記第1ドットが前記延設方向に沿って並ぶ第1列と、前記第2ドットが前記延設方向に沿って並ぶ第2列とをそれぞれ複数含み、
前記複数の印刷ドットでは、前記第1ドット群の前記第1列が、前記第2ドット群の前記第1列に延設方向において連続せず、
前記隠蔽パターンは、前記延設方向に延びる線状を有し、前記配列方向に沿って並ぶ複数の隠蔽部を備え、
各隠蔽部は、前記第1ドット群における1つの前記第1列に重なる
表示体の製造方法。
【請求項11】
前記印刷情報を生成することは、
前記表面と対向する平面視において、前記表示体における前記複数の印刷ドットのうちの前記第1ドットの少なくとも一部のみと前記隠蔽パターンとが重なり、それによって、前記隠蔽パターンがない場合に前記複数の印刷ドットが表示する画像とは色調が異なる画像が表示されるように、前記隠蔽パターンの位置に準じて前記各印刷ドットの位置に関する情報を生成することを含む、
請求項10に記載の表示体の製造方法。
【請求項12】
前記印刷ドットは第1画像を表示するための前記1ドットと、第2画像を表示するための前記2ドットとを含み、
前記印刷情報を生成することは、
前記表面と対向する平面視において、前記表示体における前記第1ドットの一部と前記隠蔽パターンとが重なり、かつ、前記隠蔽パターンがない場合に前記印刷ドットが表示する画像とは色調が異なる前記第1画像を表示するように、前記隠蔽パターンの位置に準じて前記各印刷ドットの位置に関する情報を生成することと、
前記表面と対向する平面視において、前記表示体における前記第2ドットの一部と前記隠蔽パターンとが重なり、かつ、前記隠蔽パターンがない場合に前記印刷ドットが表示する画像とは色調が異なる前記第2画像を表示するように、前記隠蔽パターンの位置に準じて前記各印刷ドットの位置に関する情報を生成することとを含む、
請求項10または11に記載の表示体の製造方法。
【請求項13】
前記表示体は、前記表示体の所有者を認証するための媒体であり、
前記印刷情報を生成することは、
前記表面と対向する平面視において、前記表示体における前記複数の印刷ドットの前記一部と前記隠蔽パターンとが重なり、かつ、前記隠蔽パターンがない場合に前記複数の印刷ドットが表示する画像とは色調が異なる画像であって、前記所有者に関する画像が表示されるように、前記隠蔽パターンの位置に準じて前記各印刷ドットの位置に関する情報を生成することを含む
請求項10から12のいずれか一項に記載の表示体の製造方法。
【請求項14】
前記隠蔽パターンがない場合に前記複数の印刷ドットが表示する画像は、前記所有者の顔画像と前記顔画像の周りに位置する背景画像とを含み、
前記隠蔽パターンと重なる前記印刷ドットは、前記背景画像の一部を形成する
請求項13に記載の表示体の製造方法。
【請求項15】
複数の印刷ドットの位置を示す印刷情報を前記複数の印刷ドットの一部を隠蔽するための隠蔽パターンの位置に準じて生成する情報生成部と、
前記印刷情報に基づいて印刷対象の表面に前記複数の印刷ドットを形成する形成部と、
前記複数の印刷ドットの一部が前記隠蔽パターンに隠蔽されるように前記隠蔽パターンと前記印刷ドットとを重ね合わせる重畳部とを備え、
前記情報生成部は、
前記表面と対向する平面視において、前記印刷対象における前記複数の印刷ドットの前記一部と前記隠蔽パターンとが重なり、かつ、前記隠蔽パターンがない場合に前記複数の印刷ドットが表示する画像とは色調が異なる画像が表示されるように、前記隠蔽パターンの位置に準じて前記各印刷ドットの位置に関する情報を生成
前記複数の印刷ドットは、延設方向と前記延設方向に直交する配列方向とに沿って延び、第1の色を有する第1ドットと、前記第1の色とは異なる第2の色を有する第2ドットとを含み、
前記複数の印刷ドットは、第1ドット群と前記第1ドット群を囲む第2ドット群とを含み、
各ドット群は前記第1ドットが前記延設方向に沿って並ぶ第1列と、前記第2ドットが前記延設方向に沿って並ぶ第2列とをそれぞれ複数含み、
前記複数の印刷ドットでは、前記第1ドット群の前記第1列が、前記第2ドット群の前記第1列に延設方向において連続せず、
前記隠蔽パターンは、前記延設方向に延びる線状を有し、前記配列方向に沿って並ぶ複数の隠蔽部を備え、
各隠蔽部は、前記第1ドット群における1つの前記第1列に重なる
表示体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示体、冊子、IDカード、表示体の製造方法、および、表示体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パスポートやIDカードなどの個人を認証するために用いられる表示体は、表示体の所有者に紐付けられた情報、例えば顔画像を有している。所有者の顔画像は、例えば中間転写方式を用いて表示体が備える基材に形成される。中間転写方式では、まず、転写箔の受像層に、所有者の顔画像がインキを用いて印刷され、次いで、受像層上の顔画像が、受像層とともに転写対象である基材に転写される。これにより、表示体に所有者の顔画像が付与される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-152652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した表示体は、以下のような方法で変造されることがある。すなわち、受像層が顔画像を構成するインキとともに基材から剥がされた後、インキが受像層から除去される。そして、インキが除去された後の受像層に偽の顔画像が印刷されると、受像層が再び基材に貼り付けられる。これにより、表示体が変造されるため、こうした表示体の変造を抑えることが求められている。
【0005】
なお、こうした課題は、中間転写方式を用いて製造された表示体に限らず、表示体が備える基材に直に画像を印刷する方式を用いて製造された表示体の製造方法にも共通している。
【0006】
本発明は、変造を抑えることを可能とした表示体、冊子、IDカード、表示体の製造方法、および、表示体の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための表示体は、観察対象である表面と、前記表面に覆われている第1画像パターンであって、表示体の所有者を特定するための1つ以上の第1情報要素を含む第1画像を前記表面を通じて表示する第1画像パターンと、前記表面に覆われ、1つ以上の第2情報要素が埋め込まれた第2画像パターンであって、前記第2情報要素の判別が前記第2画像パターンの一部によって制限されており、前記第1画像とは異なり、かつ、前記表示体の前記所有者を特定するための第2画像を有する前記第2画像パターンと、前記第2画像パターンと前記表面との間に位置し、前記第2画像パターンの前記一部を隠蔽することによって、前記第2情報要素の前記判別の制限を解除する隠蔽パターンと、を備える。
【0008】
上記課題を解決するための冊子は、上記表示体を備える。
上記課題を解決するためのIDカードは、上記表示体を備える。
上記構成によれば、第2画像パターンの一部を隠蔽パターンが隠蔽することによって第2画像パターンに埋め込まれた第2情報要素の判別が制限された状態が解除される。そのため、第2情報要素が、第2画像パターンのみによって判別可能な状態である構成と比べて、表示体の変造が抑えられる。
【0009】
上記表示体において、前記隠蔽パターンと前記表面との間に位置し、回折光を射出するように構成された凹凸を有する回折部をさらに備えてもよい。上記構成によれば、表示体が回折部を備える分だけ、より表示体の変造が難しくなる。ひいては、表示体の変造がより抑えられる。
【0010】
上記表示体において、前記回折部は、前記表面と対向する平面視において、前記第1画像パターンおよび前記隠蔽パターンの少なくとも一方の少なくとも一部を覆ってもよい。上記構成によれば、回折部が射出する回折光によって形成される回折像が、第1画像パターンの表示する第1画像、および、第2画像パターンと隠蔽パターンとの重なりによって判別の制限が解除された第2情報要素の少なくとも一方と重なる。そのため、表示体の意匠性が高まる。また、第1画像あるいは第2情報要素と回折像との位置合わせが必要である分、表示体の変造がより難しくなる。ひいては、表示体の変造をより抑えることができる。
【0011】
上記表示体において、前記隠蔽パターンは金属よって形成されてもよい。上記構成によれば、金属膜のエッチングによって隠蔽パターンを形成することができる。
【0012】
上記表示体において、前記第1画像パターンおよび前記第2画像パターンの少なくとも一方は、複数の印刷ドットが重なった重畳ドットを含んでもよい。
印刷方式の1つであるドットオンドット方式では、複数の印刷ドットが重なった重畳ドットを形成することができる。上記構成によれば、第1画像パターンおよび第2画像パターンのうち、重畳ドットを含む画像パターンが、ドットオンドット方式とは異なる印刷方式で形成されたときに、画像パターンを構成する印刷ドットの形状によって、表示体が変造されたか否かを判断することが可能である。
【0013】
上記表示体において、前記隠蔽パターンは、ドット状または線状を有した複数の隠蔽部を備え、前記隠蔽部は、配列方向において等間隔で並んでいてもよい。上記構成によれば、同一の形状を有した隠蔽部が1つの方向において等間隔で並ぶ。そのため、隠蔽部がランダムな形状を有する場合や、隠蔽部がランダムに並ぶ場合と比べて、隠蔽パターンを形成することが容易である。
【0014】
上記表示体において、第1シートと、前記第1シートとは異なる検証用の第2シートとをさらに備え、前記第1画像パターン、および、前記第2画像パターンは前記第1シートに備えられており、前記隠蔽パターンは前記第2シートに備えられており、前記第2シートは、前記隠蔽パターンが前記第2画像パターンの一部を隠蔽するための第1位置と、前記隠蔽パターンによる隠蔽を解除するための第2位置との間で変位可能であってもよい。
【0015】
上記構成によれば、第2シートの位置を第1位置と第2位置との間で変えることによって、第2画像パターンに埋め込まれた第2情報要素の判別が制限された状態と、第2情報要素の判別が制限された状態との間で、第2情報要素の状態を変えることができる。
【0016】
上記課題を解決するための表示体の製造方法は、複数の印刷ドットの位置を示す印刷情報を前記複数の印刷ドットの一部を隠蔽するための隠蔽パターンの位置に準じて生成することと、前記印刷情報に基づいて印刷対象の表面に前記複数の印刷ドットを形成することと、前記複数の印刷ドットの一部が前記隠蔽パターンに隠蔽された表示体を、前記隠蔽パターンと前記印刷ドットとを重ね合わせることによって製造することとを含む。前記印刷情報を生成することは、前記表面と対向する平面視において、前記表示体における前記複数の印刷ドットの前記一部と前記隠蔽パターンとが重なり、かつ、前記隠蔽パターンがない場合に前記複数の印刷ドットが表示する画像とは色調が異なる画像が表示されるように、前記隠蔽パターンの位置に準じて前記各印刷ドットの位置に関する情報を生成することを含む。
【0017】
上記課題を解決するための表示体の製造装置は、複数の印刷ドットの位置を示す印刷情報を前記複数の印刷ドットの一部を隠蔽するための隠蔽パターンの位置に準じて生成する情報生成部と、前記印刷情報に基づいて印刷対象の表面に前記複数の印刷ドットを形成する形成部と、前記複数の印刷ドットの一部が前記隠蔽パターンに隠蔽されるように前記隠蔽パターンと前記印刷ドットとを重ね合わせる重畳部とを備える。前記情報生成部は、前記表面と対向する平面視において、前記印刷対象における前記複数の印刷ドットの一部と前記隠蔽パターンとが重なり、かつ、前記隠蔽パターンがない場合に前記複数の印刷ドットが表示する画像とは色調が異なる画像が表示されるように、前記隠蔽パターンの位置に準じて前記各印刷ドットの位置に関する情報を生成する。
【0018】
上記各構成によれば、複数の印刷ドットの一部と隠蔽パターンとの重なりによって表示される画像の色調を、複数の印刷ドットのみが表示する画像とは異ならせる。そのため、印刷ドットの位置と、隠蔽パターンの位置との両方を真正の表示体と同じ状態にしなければ、表示体が表示する色調を有した画像と同じ色調を有する画像を表示することはできない。それゆえに、複数の印刷ドットのみによって所定の色調を有した画像を表示する表示体と比べて表示体の変造が難しい。これにより、表示体の変造を抑えることができる。
【0019】
上記表示体の製造方法において、前記複数の印刷ドットは少なくとも第1色の複数の印刷ドットと第2色の複数の印刷ドットとを含み、前記印刷情報を生成することは、前記表面と対向する平面視において、前記表示体における前記複数の印刷ドットのうちの前記第1色の複数の印刷ドットの少なくとも一部と前記隠蔽パターンとが重なり、それによって、前記隠蔽パターンがない場合に前記複数の印刷ドットが表示する画像とは色調が異なる画像が表示されるように、前記隠蔽パターンの位置に準じて前記各印刷ドットの位置に関する情報を生成することを含んでもよい。
【0020】
上記構成によれば、2色以上の印刷ドットにおいて、1色のみの印刷ドットにおける少なくとも一部が隠蔽パターンと重なるため、こうした重なりによって表示される画像の色調では、印刷ドットのみが表示する画像の色調に対して色相が異なる。それゆえに、印刷ドットと隠蔽パターンとの重なりによって表現される色調において、印刷ドットのみが表示する画像に対して明度のみが異なる構成と比べて、表示体の変造によって真正の表示体と同じ色調を表現させることがより難しくなる。結果として、表示体の変造をより抑えることができる。
【0021】
上記表示体の製造方法において、前記印刷ドットは第1画像を表示するための第1印刷ドットと、第2画像を表示するための第2印刷ドットとを含み、前記印刷情報を生成することは、前記表面と対向する平面視において、前記表示体における前記第1印刷ドットの一部と前記隠蔽パターンとが重なり、かつ、前記印刷パターンがない場合に前記印刷ドットが表示する画像とは色調が異なる前記第1画像を表示するように、前記隠蔽パターンの位置に準じて前記各第1印刷ドットの位置に関する情報を生成することと、前記表面と対向する平面視において、前記表示体における前記第2印刷ドットの一部と前記隠蔽パターンとが重なり、かつ、前記隠蔽パターンがない場合に前記印刷ドットのみが表示する画像とは色調が異なる前記第2画像を表示するように、前記隠蔽パターンの位置に準じて前記各第2印刷ドットの位置に関する情報を生成することとを含んでもよい。
【0022】
上記構成によれば、印刷ドットが含む第1印刷ドットの一部と第2印刷ドットの一部とが隠蔽パターンと重なり、かつ、第1印刷ドットにおける重なりと第2印刷ドットにおける重なりとのそれぞれによって、印刷ドットのみが表示する画像とは異なる色調を有した画像を表示体が表示する。そのため、表示体が、印刷ドットのみが表示する画像とは異なる色調の画像を1つのみ表現する構成よりも、表示体の変造が難しく、ひいては、表示体の変造をより抑えることができる。
【0023】
上記表示体の製造方法において、前記表示体は、前記表示体の所有者を認証するための媒体であり、前記印刷情報を生成することは、前記表面と対向する平面視において、前記表示体における前記複数の印刷ドットの前記一部と前記隠蔽パターンとが重なり、かつ、前記隠蔽パターンがない場合に前記複数の印刷ドットが表示する画像とは色調が異なる画像であって、前記所有者に関する画像が表示されるように、前記隠蔽パターンの位置に準じて前記各印刷ドットの位置に関する情報を生成することを含んでもよい。
【0024】
上記構成によれば、印刷ドットの位置と、隠蔽パターンとの位置との両方を真正の表示体と同じ状態にしなければ、所有者に関する情報を表示することができない。それゆえに、表示体が仮に変造されたとしても、表示体が所有者に関する情報を表示しているか否かによって、その表示体が変造された偽の表示体であるか否かが容易に判断される。
【0025】
上記表示体の製造方法において、前記隠蔽パターンがない場合に前記複数の印刷ドットのみが表示する画像は、前記所有者の顔画像と前記顔画像の周りに位置する背景画像とを含み、前記隠蔽パターンと重なる前記印刷ドットは、前記背景画像の一部を形成してもよい。
【0026】
上記構成によれば、隠蔽パターンと重なる印刷ドットが、印刷ドットのみが表示する画像における背景画像の一部であるため、表示体の変造に際して、表示体が含む顔画像とともに表示体から取り除かれやすい。印刷ドットが一旦取り除かれると、印刷ドットの位置と隠蔽パターンの位置とが真正の表示体と同じ状態にならない限りは、隠蔽パターンと印刷ドットとの重なりによって表示される画像を表示させることは難しい。そのため、表示体の変造を抑えることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、表示体、冊子、および、IDカードの変造を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】表示体の製造方法によって製造される表示体の構造を示す平面図。
図2図1のI-I線に沿う構造を示す断面図。
図3】中間転写装置の概略構成を示すブロック図。
図4】中間転写装置の電気的構成を示すブロック図。
図5】表示体の製造方法が有する工程を順に示すフローチャート。
図6】隠蔽パターンの構造を示す平面図。
図7図6における領域Aを拡大して示す部分拡大平面図。
図8】第3ドット群の一部を拡大して示す部分拡大平面図。
図9】印刷パターンの一部を拡大して示す部分拡大平面図。
図10図9における領域Cを拡大して示す部分拡大平面図。
図11】第1認証用画像における関連画像の一部を背景画像の一部とともに拡大して示す部分拡大平面図。
図12図9における領域Bと隠蔽パターンの一部とを拡大して示す部分拡大平面図。
図13図9における領域Cと隠蔽パターンの一部とを拡大して示す部分拡大平面図。
図14】印刷パターンのみが表示する印刷画像を示す平面図。
図15】顔認証用画像を示す平面図。
図16】表示体が変造されるときに表示体が有する第1印刷パターンが除去された状態を示す平面図。
図17】変造後の表示体における平面構造を示す平面図。
図18図1のI-I線に沿う構造を示す断面図。
図19】第1の例における隠蔽層および第2画像パターンの構造を隠蔽パターンおよび第2画像パターンの一部を拡大して示す部分拡大平面図とともに示す平面図。
図20】第1の例における第2情報画像の構造を隠蔽パターンおよび第2画像パターンの一部を拡大して示す部分拡大平面図とともに示す平面図。
図21】第2の例における隠蔽層および第2画像パターンの構造を隠蔽パターンおよび第2画像パターンの一部を拡大して示す部分拡大平面図とともに示す平面図。
図22】第2の例における第2情報画像の構造を隠蔽パターンおよび第2画像パターンの一部を拡大して示す部分拡大平面図とともに示す平面図。
図23】第3の例における隠蔽層および第2画像パターンの構造を隠蔽パターンおよび第2画像パターンの一部を拡大して示す部分拡大平面図とともに示す平面図。
図24】第3の例における第2情報画像の構造を隠蔽パターンおよび第2画像パターンの一部を拡大して示す部分拡大平面図とともに示す平面図。
図25】第4の例における隠蔽層および第2画像パターンの構造を隠蔽パターンおよび第2画像パターンの一部を拡大して示す部分拡大平面図とともに示す平面図。
図26】第4の例における第2情報画像の構造を隠蔽パターンおよび第2画像パターンの一部を拡大して示す部分拡大平面図とともに示す平面図。
図27】第5の例における隠蔽層および第2画像パターンの構造を隠蔽パターンおよび第2画像パターンの一部を拡大して示す部分拡大平面図とともに示す平面図。
図28】第5の例における第2情報画像の構造を隠蔽パターンおよび第2画像パターンの一部を拡大して示す部分拡大平面図とともに示す平面図。
図29】第6の例における隠蔽層および第2画像パターンの構造を隠蔽パターンおよび第2画像パターンの一部を拡大して示す部分拡大平面図とともに示す平面図。
図30】第6の例における第2情報画像の構造を隠蔽パターンおよび第2画像パターンの一部を拡大して示す部分拡大平面図とともに示す平面図。
図31】表示体の一例であるパスポートの平面構造を示す平面図。
図32】表示体の一例であるIDカードの平面構造を示す平面図。
図33】情報シートと検証シートとを重ねて示す平面図。
図34図33のII-II線に沿う検証シートの構造を情報シートの構造とともに示す断面図。
図35】表示体の一例であるパスポートの平面構造を示す平面図。
図36】パスポートにおいて情報シートと検証シートとを重ねた状態を示す平面図。
図37】表示体の製造に用いられる中間転写箔の構造を示す断面図。
図38】隠蔽パターンの一例における構造を示す平面図。
図39図38における領域Dを拡大した構造を示す平面図。
図40】印刷パターンの一例における構造を示す平面図。
図41】中間転写装置が備えるサーマルヘッドの走査方向と中間転写箔の搬送方向との関係を説明するための模式図。
図42】万線パターンの一例における構造を示す平面図。
図43】関連画像の一例を示す平面図。
図44】関連画像の一例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1実施形態]
図1から図17を参照して、表示体、冊子、IDカード、表示体の製造方法、表示体の製造装置の第1実施形態を説明する。以下では、表示体の構成、表示体の製造装置の一例である中間転写装置の構成、表示体の製造方法、および、実施例を順に説明する。
【0030】
[表示体の構成]
図1および図2を参照して、表示体の製造方法によって製造される表示体の構成を説明する。以下では、表示体の一例として、表示体がパスポートの1頁およびIDカードなどの個人認証媒体として具体化された例を説明する。
【0031】
図1が示すように、表示体10は、表示体10の表面10aと対向する平面視において、1つの方向であるX方向とX方向に直交する方向であるY方向とを含むXY平面に沿って広がるシート状を有している。表面10aと対向する平面視において、表示体10では、顔認証用画像11と文字認証用画像12とがX方向に沿って並んでいる。
【0032】
文字認証用画像12は、表示体10の所有者に関する情報を含む画像であり、例えば、複数の文字、および、複数の数字から構成されている。文字認証用画像12は、所有者に関する情報として、例えば、所有者の名前、国籍、および、生年月日を含んでいるが、これら以外の情報を含んでもよい。文字認証用画像12には、所有者に関する情報以外の情報が含まれてもよい。
【0033】
顔認証用画像11は、表示体10の所有者の顔画像11aと、所有者に関する情報を含む関連画像11bと、顔画像11aおよび関連画像11bを取り囲む背景画像11cとから構成されている。顔画像11aはインキから形成される印刷ドットによって構成された画像であって、複数の色から構成された画像である。なお、顔画像11aは1つの色から構成された画像であってもよい。
【0034】
関連画像11bは、印刷ドットと、印刷ドットの一部を隠蔽するための隠蔽パターンとの重なりによって表示される重畳画像である。関連画像11bは、関連画像11bを表示するための印刷ドットのみが表示する画像とは異なる色調を有した画像である。言い換えれば、関連画像11bは、印刷ドットに重なる隠蔽パターンがない場合に印刷ドットが表示する画像とは異なる色調を有した画像である。関連画像11bにおいて、印刷ドットのみが表示する画像とは明度および色相の少なくとも一方が異なっている。
【0035】
関連画像11bは、文字認証用画像12が含む情報の一部に一致する情報を含むことが好ましい。例えば本実施形態では、関連画像11bは、文字認証用画像12が含む情報のうち、所有者の生年月日を情報として含んでいる。関連画像11bの含む情報は、所有者に関する情報のうち、生年月日以外の情報であってもよい。
【0036】
背景画像11cは、関連画像11bと同様、印刷ドットと、印刷ドットの一部を隠蔽するための隠蔽パターンとの重なりによって表示される重畳画像である。背景画像11cは、背景画像11cを表示するための印刷ドットのみが表示する画像とは異なる色調を有した画像であり、かつ、関連画像11bとは異なる色調を有した画像である。言い換えれば、背景画像11cは、印刷ドットに重なる隠蔽パターンがない場合に印刷ドットが表示する画像、および、関連画像11bとは異なる色調を有した画像である。背景画像11cにおいて、印刷ドットのみが表示する画像、および、関連画像11bとは明度および色相の少なくとも一方が異なっている。
【0037】
なお、背景画像11cは、1つの色味から構成されているが、複数の色味から構成されてもよい。また、背景画像11cの一部であって、関連画像11bを取り囲む部分のみが印刷ドットと隠蔽パターンとの重なりによって表示される画像である一方で、それ以外の部分は、印刷ドットのみから表示される画像であってもよい。
【0038】
図2は、図1のI-I線に沿う表示体10の断面構造を示している。なお、図2では、表示体10の断面構造を理解しやすくする便宜上、表示体10が有する各層の厚さが誇張されている。
【0039】
図2が示すように、表示体10は、基材21、パターン層22、隠蔽層23、および、保護層24を備え、表示体10において、これらの層が記載の順に積み重なっている。基材21は、基材21の上に積層されるパターン層22、隠蔽層23、および、保護層24を支持することが可能な強度を有していればよい。基材21の形成材料には、例えば、各種の合成樹脂や、各種の紙を用いることができる。
【0040】
各種の合成樹脂には、例えば、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、および、セルロース系樹脂を挙げることができる。ビニル系樹脂には、ポリ塩化ビニルなどを挙げることができ、ポリエステル系樹脂には、ポリエチレンテレフタレート、および、ポリエチレンナフタレートなどを挙げることができる。ポリオレフィン系樹脂には、ポリプロピレン、および、ポリエチレンなどを挙げることができる。セルロース樹脂には、トリアセチルセルロースなどを挙げることができる。基材21は、これらの各樹脂で形成された1つの層を備える単層構造でもよいし、互いに異なる樹脂で形成された複数の層を備える多層構造であってもよい。
【0041】
なお、基材21を形成する上述した樹脂には、顔料や各種の添加物が添加されてもよい。顔料には、酸化チタン、および、炭酸カルシウムなどを挙げることができる。また、基材21の表面には、帯電防止処理、コロナ処理、および、易接着処理などの処理が行われてもよい。
【0042】
パターン層22は、第1印刷パターン22aと第2印刷パターン22bとを含んでいる。第1印刷パターン22aは複数の印刷ドット22a1から構成され、各印刷ドット22a1はインキによって形成されている。印刷ドット22a1を形成するためのインキは、例えば顔料を含む顔料インキである。印刷ドット22a1を形成するためのインキは、例えば染料を含む染料インキであってもよい。複数の印刷ドット22a1は、2色以上の印刷ドット22a1を含んでいる。
【0043】
第1印刷パターン22aは、上述した顔画像11aを表示するための印刷ドット22a1、関連画像11bを表示するための印刷ドット22a1、および、背景画像11cを表示するための印刷ドット22a1を含んでいる。複数の印刷ドット22a1において、顔画像11aを表示するための印刷ドット22a1の集合が第1ドット群であり、関連画像11bを表示するための印刷ドット22a1の集合が第2ドット群であり、背景画像11cを表示するための印刷ドット22a1の集合が第3ドット群である。
【0044】
第2印刷パターン22bは複数の印刷ドット22b1から構成され、各印刷ドット22b1はインキによって形成されている。印刷ドット22b1を形成するためのインキは、例えば顔料を含む顔料インキである。印刷ドット22b1を形成するためのインキは、例えば染料を含む染料インキであってもよい。複数の印刷ドット22b1は、1色の印刷ドット、例えばブラックの印刷ドット22b1のみから構成されているが、2色以上の印刷ドット22b1を含んでもよい。
【0045】
表示体10の表面10aと対向する平面視において、第2印刷パターン22bは、表面10aを介して上述した文字認証用画像12を表示する。
パターン層22は光透過性を有した接着部22cを含んでいる。接着部22cは、第1印刷パターン22aと第2印刷パターン22bとを覆う層状を有している。接着部22cは、各印刷ドット22a1,22b1に対する受像層として機能する層であり、かつ、パターン層22、隠蔽層23、および、保護層24を基材21に接着するための層でもある。
【0046】
接着部22cの形成材料には、例えば、ポリエステル樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ビニル系樹脂、ウレタン樹脂、および、エポキシ樹脂などを挙げることができる。ポリエステル樹脂には、線状飽和ポリエステルなどを挙げることができ、塩化ビニル系樹脂には、ポリ塩化ビニル、および、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂などを挙げることができる。アクリル系樹脂には、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸‐2‐メトキシエチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸‐2‐ナフチル、ポリアクリル酸イソボルニル、ポリメタクリロメチル、ポリアクリロニトリル、ポリメチルクロロアクリレート、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸‐tert‐ブチル、ポリメタクリル酸イソブチル、ポリメタクリル酸フェニル、および、メタクリル酸メチルとメタクリル酸アルキル(ただし、アルキル基の炭素数は2から6)の共重合樹脂などを挙げることができる。ビニル系樹脂には、ポリジビニルベンゼン、ポリビニルベンゼン、スチレン‐ブタジエン共重合樹脂、スチレンとメタクリル酸アルキル(ただし、アルキル基の炭素数は2から6)との共重合樹脂などを挙げることができる。接着部22cは、これら樹脂のうちの1つから形成されてもよいし、複数の樹脂の混合物によって形成されてもよい。接着部22cには、紫外線吸収剤、および、フィラー類などの各種の添加物が添加されてもよい。
【0047】
なお、第2印刷パターン22bは、インキによって形成されていなくともよい。第2印刷パターン22bは、例えば感熱発色剤を含む層にレーザー光線を照射することによって形成されてもよい。この場合には、基材21が感熱発色剤を含む層であり、第2印刷パターンが基材21に形成されてもよい。あるいは、表示体10は感熱発色剤を含む層を基材21とパターン層22との間に備え、この感熱発色剤を含む層に第2印刷パターンが形成されてもよい。
【0048】
隠蔽層23は、隠蔽パターン23aと透過部23bとを備えている。透過部23bは光透過性を有し、隠蔽層23のうち、隠蔽パターン23a以外の部分を埋める層状を有している。透過部23bは透明な樹脂から形成されてもよいし、透明な誘電体から形成されてもよい。
【0049】
透過部23bが透明な誘電体から形成されているときには、透過部23bは透明反射層として機能する。透明反射層は、単層構造を有してもよいし、多層構造を有してもよい。透明反射層が多層構造を有するときには、透明反射層において反射と干渉とが繰り返し生じるように、すなわち透明反射層が多層干渉膜として機能するように、透明反射層の各層を形成する材料などが選択されてもよい。この場合には、透過部23bの形成材料には、例えば硫化亜鉛および二酸化チタンなどを用いることができる。
【0050】
なお、透明な樹脂、または、透明な誘電体から形成される透過部23bは、目視による認識が難しい程度に微細な金属パターンや印刷パターンを含んでもよい。金属パターンあるいは印刷パターンの有無によって、透過部23bによって覆われた画像が透過部23bを通じて表示する画像は目視での観察において変化しない。
【0051】
透過部23bは、光透過性を有する金属層であって、20nm未満の厚さを有した金属層であってもよい。金属層の形成材料には、例えば、クロム、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、銀、金、および、銅などを用いることができる。
【0052】
隠蔽パターン23aは、複数の隠蔽部23a1から構成されている。各隠蔽部23a1は、透過部23bよりも光透過性が低く、かつ、印刷ドット22a1上に隠蔽部23a1が重なった状態で、印刷ドット22a1が視認されない程度の光しか透過しない。言い換えれば、各隠蔽部23a1は、光透過性をほぼ有しない程度に不透明である。
【0053】
隠蔽部23a1の形成材料には、上述した透過部23bの形成材料として挙げた金属を用いることが可能である。ただし、隠蔽部23a1は、隠蔽部23a1に入射した光をほぼ透過しない程度の厚さを有する点で、透過部23bとは異なっている。隠蔽部23a1の厚さは、20nm以上80nm以下であることが好ましく、また、隠蔽部23a1の形成材料は、上述した金属のなかでもアルミニウムであることが好ましい。
【0054】
表示体10の表面10aと対向する平面視において、第2ドット群の一部が隠蔽パターン23aの一部と重なることによって、顔認証用画像11のうち、関連画像11bが表示され、第3ドット群の一部が隠蔽パターン23aの一部と重なることによって、背景画像11cが表示される。
【0055】
なお、隠蔽パターン23aは、マスクを用いたエッチングによって、金属層が所定のパターンを有するようにパターニングされることによって形成されてもよい。あるいは、隠蔽パターン23aは、凹凸構造を有する下地層に金属層を形成した後、金属層をエッチングすることによって形成されてもよい。この場合には、下地層のうち、表示体10の表面10aと対向する平面視において、隠蔽パターン23aに重なる部分に位置する凹凸構造の大きさを、隠蔽パターン23aとは重ならない部分に位置する凹凸構造よりも大きくすればよい。
【0056】
また、隠蔽パターン23aは、所定の印刷法を用いて形成されてもよい。印刷法には、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、および、フレキソ印刷法などを挙げることができる。
【0057】
保護層24は光透過性を有する層であり、透明な層であることが好ましい。保護層24は、表示体10を構成する隠蔽層23を化学的な損傷や物理的な損傷から保護する。また、保護層24は、表示体10の製造過程において、表示体10を製造するための中間転写箔が有する基材から、保護層24、隠蔽層23、および、パターン層22から構成される多層体を剥離させるための剥離層としても機能する。保護層24のうち、隠蔽層23に接する面とは反対側の面が表面24aであり、保護層24の表面24aが、表示体10の表面10aである。保護層24の形成材料には、各種の合成樹脂を用いることができる。
【0058】
なお、保護層24は回折構造を含んでもよく、回折構造は、ホログラムおよび回折格子の少なくとも一方であればよい。回折構造が化学的に損傷することや、物理的に損傷することが抑えられる点で、保護層24は、表面24aとは反対側の面である裏面に回折構造を備えることが好ましい。また、表示体10は、保護層24とは異なる層であって、保護層24と隠蔽層23との間に位置し、かつ、回折構造を含む層を有してもよい。
【0059】
[中間転写装置の概略構成]
図3および図4を参照して、中間転写装置の概略構成を説明する。中間転写装置は、情報生成部、形成部、および、重畳部を備えている。情報生成部は、複数の印刷ドット22a1の位置を示す印刷情報を複数の印刷ドット22a1の一部を隠蔽するための隠蔽パターン23aの位置に準じて生成する。形成部は、印刷情報に基づいて印刷対象の表面に複数の印刷ドット22a1を形成する。重畳部は、複数の印刷ドット22a1の一部が隠蔽パターン23aに隠蔽されるように隠蔽パターン23aと印刷ドット22a1とを重ね合わせる。
【0060】
情報生成部は、以下を満たすように、隠蔽パターン23aの位置に準じて各印刷ドット22a1の位置に関する情報を生成する。すなわち、情報生成部は、印刷対象の表面と対向する平面視において、印刷対象における複数の印刷ドット22a1の一部と隠蔽パターン23aとが重なり、かつ、隠蔽パターン23aがない場合に複数の印刷ドット22a1が表示する画像とは色調が異なる画像が表示されるように情報を生成する。
【0061】
本実施形態では、図3が示すように、中間転写装置30は、インキリボン搬送部31、転写箔搬送部32、サーマルヘッド33、ステージ34、および、ヒートローラ35を備えている。中間転写装置30において、サーマルヘッド33が、形成部および重畳部の一例である。
【0062】
インキリボン搬送部31は、送り出しローラ31a、巻き取りローラ31b、および、複数の搬送ローラ31cを備えている。送り出しローラ31aは、印刷パターン22a,22bの形成に用いられる前のインキリボン41を送り出し、巻き取りローラ31bは、印刷パターン22a,22bの形成に用いられた後のインキリボン41を巻き取る。各搬送ローラ31cは、インキリボン41の搬送路の途中に位置し、送り出しローラ31aから巻き取りローラ31bに向けたインキリボン41の搬送を行う。
【0063】
転写箔搬送部32は、印刷パターン22a,22bの形成対象である中間転写箔42を搬送する。転写箔搬送部32は、送り出しローラ32a、巻き取りローラ32b、プラテンローラ32c、および、複数の搬送ローラ32dを備えている。
【0064】
送り出しローラ32aは、2つの印刷パターン22a,22bが形成される前の中間転写箔42を送り出し、巻き取りローラ32bは、2つの印刷パターン22a,22bの形成と、2つの印刷パターン22a,22bの転写とが行われた後の中間転写箔42を巻き取る。プラテンローラ32cは、中間転写箔42の搬送路の途中に位置し、かつ、サーマルヘッド33と対向している。各搬送ローラ32dは、中間転写箔42の搬送路の途中に位置し、送り出しローラ32aから巻き取りローラ32bに向けた中間転写箔42の搬送を行う。
【0065】
サーマルヘッド33は、インキリボン41の搬送路の途中に位置し、インキリボン41の一部を加熱しつつプラテンローラ32c上に位置する中間転写箔42に押し付けることで、中間転写箔42に印刷ドット22a1,22b1を形成する。
【0066】
ステージ34は、中間転写箔42の搬送路の途中であって、かつ、プラテンローラ32cよりも搬送路における下流に位置している。ステージ34は、中間転写箔42の一部が転写される基材21を支持する。ヒートローラ35は、中間転写箔42を挟んでステージ34と対向し、中間転写箔42の一部を加熱しつつ基材21に押し付けることで、中間転写箔42の一部を基材21に転写する。
【0067】
インキリボン41は、例えばCMYKカラーモデルに従う印刷パターン22a,22bを形成するためのインキリボンである。インキリボン41において、例えば、シアンのインキが位置する領域、マゼンタのインキが位置する領域、イエローのインキが位置する領域、および、ブラックのインキが位置する領域が、インキリボン41の搬送方向に沿って、記載の順に繰り返し並んでいる。
【0068】
インキリボン41においてインキを支持する支持体には、樹脂フィルムを用いることができる。樹脂フィルムには、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、および、ポリエチレンナフタレートフィルムなどを用いることができる。樹脂フィルムの一方の面には、耐熱層、および、離型層などが位置してもよいし、易接着処理および帯電防止処理などが行われてもよい。
【0069】
インキリボン41が備えるインキは、例えばインキ層として具体化される。インキ層の形成材料には、昇華型インキ、および、熱溶融型インキのいずれかを用いることができる。また、上述したように、インキ層の形成材料には、染料インキ、および、顔料インキのいずれかを用いることができる。印字された画像を安定に保つ上では、インキ層の形成材料には、顔料インキによって形成された熱溶融型インキを用いることが好ましい。
【0070】
中間転写箔42は、基材、上述した保護層24に対応する剥離層、隠蔽層23、および、上述した接着部22cに対応する受像層が、記載の順に重なる多層構造を有している。
図4が示すように、中間転写装置30は、上述した各部に加えて、これら各部の動作を制御する制御部36を備えている。制御部36は、CPU、ROM、および、RAMなどから構成され、機能的な構成として、情報生成部36a、形成制御部36b、リボン搬送制御部36c、転写箔搬送制御部36d、転写制御部36e、および、記憶部36fを備えている。
【0071】
記憶部36fは、各種の制御プログラムやデータを永続的または一時的に記憶する。制御部36は、記憶部36fに記憶されている各種の制御プログラムに基づいて各種の処理を実行する。記憶部36fは、隠蔽パターン23aの位置に関する情報であるマスクデータを記憶している。マスクデータは、受像層に投影される隠蔽パターン23aの画素位置を示すデータである。
【0072】
ここで、印刷パターン22aが形成される受像層は、印刷パターン22aの形成される領域である印刷領域を有している。印刷領域にはX方向およびY方向に沿って並ぶ複数の画像セルが設定され、各画像セルには、各画像セルの位置である画素位置としてXY座標系によるその画像セルに固有の座標が割り当てられている。
【0073】
記憶部36fは、印刷情報を生成するための画像データである第1画像データを記憶している。第1画像データは、所有者の顔画像と、顔画像の周りに位置する背景画像とを画素単位で示す画像データである。第1画像データは、例えばRGBカラーモデルに基づいて表現されたデータである。なお、第1画像データにおいて、背景画像は例えば1つの色味を有する画像である。
【0074】
記憶部36fは、印刷情報を生成するための画像データである第2画像データを記憶している。第2画像データは、印刷ドット22a1と隠蔽パターン23aとの重なりによって表示される画像である重畳画像を画素単位で示すデータである。上述したように、重畳画像は、顔認証用画像11における関連画像11bおよび背景画像11cである。
【0075】
情報生成部36aには、マスクデータ、第1画像データ、および、第2画像データが入力される。情報生成部36aは、重畳画像を描くための領域を第1画像データから切り出し、第1画像データから切り出された領域に対する第2画像データの差分を算出する。こうしたデータ間の差分が、印刷ドット22a1と隠蔽パターン23aとの重なり合いの後において、隠蔽パターン23aによって隠蔽したい色味に相当する。
【0076】
そこで、情報生成部36aは、マスクデータが示す画素位置に隠蔽したい色味を支配する印刷ドット22a1が位置するように、第1画像データに対する印刷用の色変換に際して、各印刷ドット22a1の位置を定める。これにより、各印刷ドット22a1の位置に関する情報である印刷情報が情報生成部36aによって生成される。
【0077】
このように、情報生成部36aは、印刷ドット22a1と隠蔽パターン23aとの重なり合いによって、印刷ドット22a1のみが表示する画像とは異なる色調を有した関連画像11bおよび背景画像11cが表示されるように、印刷情報を生成する。
【0078】
印刷情報は、例えばCMYKカラーモデルに基づいて表現されたデータであり、印刷情報には、第1印刷パターン22aを形成するための各印刷ドット22a1の座標を示すデータが含まれている。
【0079】
形成制御部36bは、各種のドライバを介して、サーマルヘッド33の動作を指示する。形成制御部36bは、情報生成部36aが生成した印刷情報に基づいて、サーマルヘッド33に印刷情報に従った第1印刷パターン22aを形成させる。なお、形成制御部36bは、サーマルヘッド33に第2印刷パターン22bを形成するための印刷情報に従った第2印刷パターン22bも形成させる。
【0080】
また、形成制御部36bは、リボン搬送制御部36c、転写箔搬送制御部36d、および、転写制御部36eとともに、インキリボン41の搬送される状況、中間転写箔42の搬送される状況、および、中間転写箔42の一部が基材21に転写される状況などに応じて、印刷パターン22a,22bを形成するタイミングを決定する。形成制御部36bは、決定したタイミングに従って、サーマルヘッド33に印刷パターン22a,22bを形成させる。
【0081】
リボン搬送制御部36cは、各種のドライバを介して、インキリボン搬送部31に対して、インキリボン搬送部31が有する各機構の動作を指示する。リボン搬送制御部36cは、形成制御部36b、転写箔搬送制御部36d、および、転写制御部36eとともに、印刷パターン22a,22bの形成される状況、中間転写箔42の搬送される状況、および、中間転写箔42の一部が基材21に転写される状況などに応じて、インキリボン41の搬送のタイミングを決定する。リボン搬送制御部36cは、決定したタイミングに従って、インキリボン搬送部31にインキリボン41を搬送させる。
【0082】
転写箔搬送制御部36dは、各種のドライバを介して、転写箔搬送部32に対して、転写箔搬送部32が有する各機構の動作を指示する。転写箔搬送制御部36dは、形成制御部36b、リボン搬送制御部36c、および、転写制御部36eとともに、印刷パターン22a,22bの形成される状況、インキリボン41の搬送される状況、および、中間転写箔42の一部が基材21に転写される状況などに応じて、中間転写箔42の搬送のタイミングを決定する。転写箔搬送制御部36dは、決定したタイミングに従って、転写箔搬送部32に中間転写箔42を搬送させる。
【0083】
転写制御部36eは、各種のドライバを介して、ヒートローラ35の動作を指示する。転写制御部36eは、形成制御部36b、リボン搬送制御部36c、および、転写箔搬送制御部36dとともに、印刷パターン22a,22bの形成される状況、インキリボン41の搬送される状況、および、中間転写箔42の搬送される状況などに応じて、ヒートローラ35によって中間転写箔42の一部を基材21に転写するタイミングを決定する。転写制御部36eは、決定したタイミングに従って、ヒートローラ35に中間転写箔42の一部を基材21に転写させる。
【0084】
[表示体の製造方法]
図5から図10を参照して、表示体10の製造方法を説明する。本実施形態では、表示体10の製造方法のうち、上述した中間転写装置30において行われる処理について詳しく説明する。
【0085】
表示体10の製造方法は、印刷情報を生成することと、印刷ドット22a1を形成することと、隠蔽パターン23aと印刷ドット22a1とを重ね合わせることによって表示体10を製造することとを備えている。
【0086】
印刷情報を生成することは、複数の印刷ドット22a1の位置を示す印刷情報を複数の印刷ドット22a1の一部を隠蔽するための隠蔽パターン23aの位置に準じて生成する。印刷ドット22a1を形成することは、印刷情報に基づいて印刷対象の一例である受像層の表面に複数の印刷ドット22a1を形成する。表示体10を製造することは、複数の印刷ドット22a1の一部が隠蔽パターン23aに隠蔽された表示体10を隠蔽パターン23aと印刷ドット22a1とを重ね合わせることによって製造する。
【0087】
印刷情報を生成することは、以下を満たすように、隠蔽パターン23aの位置に準じて各印刷ドット22a1の位置に関する情報を生成することを含む。すなわち、受像層の表面と対向する平面視において、表示体10における複数の印刷ドット22a1の一部と隠蔽パターン23aとが重なり、かつ、隠蔽パターン23aがない場合に複数の印刷ドット22a1が表示する画像とは色調が異なる画像が表示されるように、各印刷ドット22a1の位置に関する情報を生成する。
【0088】
しかも、複数の印刷ドット22a1は少なくとも第1色の複数の印刷ドット22a1と、第2色の複数の印刷ドット22a1とを含んでもよい。第2色は、第1色とは異なる色である。そして、印刷情報を生成することは、受像層の表面と対向する平面視において、表示体における複数の印刷ドット22a1のうちの第1色の印刷ドット22a1の少なくとも一部のみと隠蔽パターン23aとが重なるように各印刷ドット22a1の位置に関する情報を生成することを含んでもよい。そして、これによって、隠蔽パターン23aがない場合に複数の印刷ドット22a1が表示する画像とは色調が異なる画像が表示されるように、隠蔽パターン23aの位置に準じて各印刷ドット22a1の位置に関する情報を生成することを含んでもよい。
【0089】
さらに、印刷ドット22a1は、第1画像を表示するための第1印刷ドットと、第2画像を表示するための第2印刷ドットとを含んでもよい。上述した関連画像11bが第1画像の一例であり、第2ドット群を構成する各印刷ドット22a1が第1印刷ドットの一例である。また、背景画像11cが第2画像の一例であり、第3ドット群を構成する各印刷ドット22a1が第2印刷ドットの一例である。
【0090】
印刷情報を生成することは、以下を満たすように、隠蔽パターン23aの位置に準じて各第1印刷ドットの位置に関する情報を生成することを含んでもよい。すなわち、受像層の表面と対向する平面視において、表示体における第1印刷ドットの一部と隠蔽パターン23aとが重なり、かつ、隠蔽パターン23aがない場合に印刷ドット22a1が表示する画像とは色調が異なる第1画像を表示するように情報を生成することを含んでもよい。
【0091】
また、印刷情報を生成することは、以下を満たすように、隠蔽パターン23aの位置に準じて各第2印刷ドットの位置に関する情報を生成することを含んでもよい。すなわち、受像層の表面と対向する平面視において、表示体における第2印刷ドットの一部と隠蔽パターン23aとが重なり、かつ、隠蔽パターン23aがない場合に印刷ドット22a1が表示する画像とは色調が異なる第2画像を表示するように情報を生成することを含んでもよい。
【0092】
本実施形態では、図5が示すように、表示体10の製造方法は、情報生成工程(ステップS11)、印刷工程(ステップS12)、および、転写工程(ステップS13)を備えている。情報生成工程において、情報生成部36aが、マスクデータ、第1画像データ、および、第2画像データに基づいて、印刷情報を生成する。
【0093】
印刷工程では、サーマルヘッド33を用いて、受像層の印刷領域に複数の印刷ドット22a1から構成される第1印刷パターン22aを形成する。なお、印刷工程では、印刷ドット22a1の一部が、中間転写箔42が予め有する隠蔽パターン23aと重なるように印刷ドット22a1が形成される。そのため、印刷工程は、印刷ドット22a1を形成すること、および、隠蔽パターン23aと印刷ドット22a1とを重ね合わせることによって表示体10を製造することの一例である。また、印刷工程では、文字認証用画像12を表示するための第2印刷パターン22bも形成される。
【0094】
転写工程では、ヒートローラ35を用いて、受像層、隠蔽層23、および、剥離層から構成される多層体が、基材21に転写される。これにより、図1および図2を参照して先に説明した構成を有した表示体10が製造される。
【0095】
図6から図10を参照して、表示体10の製造方法のうち、情報生成工程をより詳しく説明する。以下では、情報生成工程で用いられるマスクデータの詳細について説明した後に、情報生成工程について説明する。
【0096】
図6が示すように、XY平面と対向する平面視において、隠蔽層23が含む隠蔽パターン23aは、例えば、X方向に対して45°で交差する線状を有した複数の隠蔽部23a1から構成されている。複数の隠蔽部23a1は、Y方向に対して45°で交差する方向であって、隠蔽部23a1の延びる方向と直交する方向に沿って等間隔で並んでいる。
【0097】
図7は、図6における領域Aを拡大して示している。図7では、隠蔽パターン23aのうち、XY座標系において、(m,n)に位置する画像セルP、(m,n+8)に位置する画像セルP、(m+8,n)に位置する画像セルP、および、(m+8,n+8)に位置する画像セルPによって囲まれる領域に位置する隠蔽パターン23aが示されている。なお、nおよびmは1以上の整数であり、例えばnとmとは同じ整数である。
【0098】
図7が示すように、複数の画像セルPには、隠蔽部23a1を構成する隠蔽要素a11が投影される画像セルPと、隠蔽要素a11が投影されない画像セルPとが含まれている。隠蔽要素a11は、X方向に沿う幅およびY方向に沿う幅が2画素分であり、かつ、X方向におけるピッチおよびY方向におけるピッチが6画素であるように並び、これによって複数の隠蔽部23a1が構成されている。
【0099】
例えば、隠蔽要素a11の一部は、(m,n+3)に位置する画像セルPから(m+5,n+8)に位置する画像セルPに向けて、隠蔽要素a11の位置する画像セルPにおいて、X座標における値が1ずつ大きくなるごとにY座標における値が1ずつ大きくなるように並んでいる。また、隠蔽要素a11は、(m,n+4)に位置する画像セルPから(m+4,n+8)に位置する画像セルPに向けて、隠蔽要素a11の位置する画像セルPの座標において、X座標における値が1ずつ大きくなるごとにY座標における値が1ずつ大きくなるように並んでいる。
【0100】
なお、隠蔽パターン23aは、印刷ドット22a1のうち、第2ドット群の一部と第3ドット群の一部とに重なる。そのため、隠蔽パターン23aは、XY座標系における第2ドット群が位置する領域、および、第3ドット群が位置する領域にわたって、上述したピッチに従った形状を有している。
【0101】
記憶部36fが記憶するマスクデータは、こうした各隠蔽要素a11の画素位置に関するデータの集合である。
なお、こうした隠蔽パターン23aは、上述したようにアルミニウムから形成されることが好ましい。これにより、表示体10の製造方法は、中間転写装置30にて行われる処理よりも前の処理であって、隠蔽パターン23aを形成するためのアルミニウム膜をパターニングすることによって隠蔽パターン23aを形成する工程を含むことができる。隠蔽パターン23aを形成する工程では、隠蔽パターン23aが受像層における上述した画素位置に投影されるようにアルミニウム膜がパターニングされる。こうした工程によれば、アルミニウムから形成され、かつ、所定のパターンを有した隠蔽パターン23aを形成することができる。
【0102】
情報生成工程では、マスクデータ、第1画像データ、および、第2画像データに基づき、印刷情報を生成する。情報生成工程では、第1画像データから重畳画像を描くための領域を切り出し、切り出した領域に対する第2画像データの差分を算出する。次いで、差分に基づき、マスクデータが示す画像位置に隠蔽したい色味を支配する印刷ドット22a1が位置するように、各印刷ドット22a1の位置を定めた印刷情報を生成する。
【0103】
本実施形態では、図8が示すように、第1画像データを印刷用に色変換した際に、第3ドット群は、第1の色を有する第1ドットD1、第2の色を有する第2ドットD2、および、第3の色を有する第3ドットD3によって構成される。このうち、第3ドットD3が隠蔽パターン23aによって隠蔽したい色味を支配する印刷ドット22a1であるため、情報生成部36aは、第1ドットD1および第2ドットD2は隠蔽パターン23aに重ならないように、かつ、第3ドットD3は隠蔽パターン23aに重なるように、各印刷ドット22a1の位置を定める。
【0104】
情報生成部36aは、第1ドットD1、第2ドットD2、および、第3ドットD3の各々が、X方向に対して45°で交差する各別の直線上に並ぶように各印刷ドット22a1の位置を定める。また、情報生成部36aは、第1ドットD1の位置する直線、第2ドットD2の位置する直線、および、第3ドットD3の位置する直線が、各直線と直交する方向に沿って、所定の間隔を空けて記載の順に並ぶように、各印刷ドット22a1の位置を定める。これにより、情報生成部36aは、第1ドットD1の列、第2ドットD2の列、および、第3ドットD3の列に1つの周期を構成させるように、各印刷ドット22a1の位置を定める。
【0105】
第1ドットD1、第2ドットD2、および、第3ドットD3の各々は、X方向に沿う幅およびY方向に沿う幅が1画素分であり、かつ、X方向における周期およびY方向における周期が6画素であるように位置が定められる。また、互いに色の異なる印刷ドット22a1間では、X方向に沿う間隔が1画素分になるように、各印刷ドット22a1の位置が定められる。このように、第3ドット群を構成する各印刷ドット22a1の位置は、隠蔽パターン23aにおけるピッチと、印刷ドット22a1における1つの周期の開始位置、すなわち、第1ドットD1の列におけるピッチとが一致するように情報生成部36aによって定められる。
【0106】
こうした印刷情報に従うことによって、例えば、第1ドットD1の一部は、(m,n+2)に位置する画像セルPから(m+6,n+8)に位置する画像セルPに向けて、第1ドットD1の位置する画像セルPの座標において、X座標における値が1ずつ大きくなるごとにY座標における値が1ずつ大きくなるように並ぶ。
【0107】
第2ドットD2の一部は、(m,n)に位置する画像セルPから(m+8,n+8)に位置する画像セルPに向けて、第2ドットD2の位置する画像セルPの座標において、X座標における値が1ずつ大きくなるごとにY座標における値が1ずつ大きくなるように並ぶ。
【0108】
第3ドットD3の一部は、(m+2,n)に位置する画像セルPから(m+8,n+6)に位置する画像セルPに向けて、第3ドットD3の位置する画像セルPの座標において、X座標における値が1ずつ大きくなるごとにY座標における値が1ずつ大きくなるように並ぶ。
【0109】
情報生成部36aが生成する印刷情報は、こうした各印刷ドット22a1の位置に関するデータの集合である。なお、印刷情報がCMYKカラーモデルに従う情報であるとき、例えば、第1ドットD1の色に関する情報において、シアンには0以外の所定の階調値が割り当てられる一方で、マゼンタ、イエロー、および、ブラックには0の階調値が割り当てられている。また、第2ドットD2の色に関する情報において、マゼンタには0以外の所定の階調値が割り当てられる一方で、シアン、イエロー、および、ブラックには0の階調値が割り当てられている。また、第3ドットD3の色に関する情報において、イエローには0以外の所定の階調値が割り当てられる一方で、シアン、マゼンタ、および、ブラックには0の階調値が割り当てられている。
【0110】
図9が示すように、第3ドット群DG3であって、領域Cに位置する印刷ドット22a1を含む印刷ドット22a1の集合では、第1ドットD1、第2ドットD2、および、第3ドットD3の各々の位置が、上述した規則に従って定められる。これに対して、第2ドット群DG2であって、領域Bに位置する印刷ドット22a1を含む印刷ドット22a1の集合では、第1ドットD1、第2ドットD2、および、第3ドットD3の各々の位置が、情報生成部36aによって以下のように定められる。
【0111】
図10は、第2ドット群の一部を含む領域Bを拡大して示す図である。図10では、第2ドット群のうち、XY座標系において、(k,l)に位置する画像セルP、(k,l+8)に位置する画像セルP、(k+8,l)に位置する画像セルP、および、(k+8、l+8)に位置する画像セルPによって囲まれる領域に位置する印刷ドット22a1が示されている。なお、kおよびlは1以上の整数であり、例えばkとlとは同じ整数である。また、kはnとは異なる整数であり、lはmとは異なる整数である。
【0112】
例えば、図10が示すように、第1画像データを印刷用に色変換した際に、第2ドット群は、第3ドット群と同様、第1ドットD1、第2ドットD2、および、第3ドットD3によって構成される。このうち、第1ドットD1が隠蔽パターン23aによって隠蔽したい色味を支配する印刷ドット22a1であるため、情報生成部36aは、第2ドットD2および第3ドットD3は隠蔽パターン23aに重ならないように、かつ、第1ドットD1は隠蔽パターン23aに重なるように、各印刷ドット22a1の位置を定める。
【0113】
情報生成部36aは、第1ドットD1、第2ドットD2、および、第3ドットD3の各々が、領域Cにおける各ドットと同様、X方向に対して45°で交差する各別の直線上に並ぶように各印刷ドット22a1の位置を定める。また、情報生成部36aは、第1ドットD1の位置する直線、第2ドットD2の位置する直線、および、第3ドットD3の位置する直線が、各直線と直交する方向に沿って、所定の間隔を空けて記載の順に並ぶように、各印刷ドット22a1の位置を定める。これにより、情報生成部36aは、第1ドットD1の列、第2ドットD2の列、および、第3ドットD3の列に1つの周期を構成させるように、各印刷ドット22a1の位置を定める。
【0114】
ただし、領域Bに位置する各印刷ドット22a1の位置と、領域Cに位置する各印刷ドット22a1の位置との間では、以下のように各印刷ドット22a1の位置が異なっている。すなわち、領域Bに位置する各印刷ドット22a1の位置は、領域Cに位置する各印刷ドット22a1の位置に対して、第1ドットD1の列、第2ドットD2の列、および、第3ドットD3の列から構成される周期が、Y座標における位置が2画素分だけ大きい座標にずれるように、情報生成部36aは各印刷ドット22a1の位置を定める。
【0115】
言い換えれば、領域Bにおいて第1ドットD1が位置する画像セルPに領域Cでは第3ドットD3が位置し、領域Bにおいて第2ドットD2が位置する画像セルPに領域Cでは第1ドットD1が位置するように、情報生成部36aは、各印刷ドット22a1の位置を定める。また、領域Bにおいて第3ドットD3が位置する画像セルPに領域Cでは第2ドットD2が位置するように、情報生成部36aは、各印刷ドット22a1の位置を定める。これにより、第2ドット群DG2を構成する各印刷ドット22a1の位置は、第3ドット群DG3を構成する各印刷ドット22a1の位置と同様、隠蔽パターン23aにおける周期と、印刷ドット22a1における周期とが一致するように情報生成部36aによって定められる。
【0116】
こうした印刷情報に従うことによって、例えば、第1ドットD1の一部は、(k,l+4)に位置する画像セルPから(k+4,l+8)に位置する画像セルPに向けて、第1ドットD1の位置する画像セルPの座標において、X座標における値が1ずつ大きくなるごとにY座標における値が1ずつ大きくなるように並ぶ。
【0117】
第2ドットD2の一部は、(k,l+2)に位置する画像セルPから(k+6,l+8)に位置する画像セルPに向けて、第2ドットD2の位置する画像セルPの座標において、X座標における値が1ずつ大きくなるごとにY座標における値が1ずつ大きくなるように並ぶ。
【0118】
第3ドットD3の一部は、(k,l)に位置する画像セルPから(k+8,l+8)に位置する画像セルPに向けて、第3ドットD3の位置する画像セルPの座標において、X座標における値が1ずつ大きくなるごとにY座標における値が1ずつ大きくなるように並ぶ。
【0119】
このように、領域Bに含まれる印刷ドット22a1と領域Cに含まれる印刷ドット22a1との間では、各色のドットの位置が異なっている。しかしながら、領域Bにおけるドットの並びの周期と、領域Cにおけるドットの並びの周期とが互いに等しいため、印刷ドット22a1の集合である印刷パターン22aが示す画像においては、領域Bの色調と領域Cの色調とが互いに等しくなる。
【0120】
情報生成部36aが生成する印刷情報は、こうした各印刷ドット22a1の位置に関するデータの集合である。
【0121】
[表示体の作用]
図11から図17を参照して、表示体10の作用を説明する。
図11が示すように、情報生成部36aが生成した印刷情報に基づき、印刷情報に従う第1印刷パターン22aが形成されると、関連画像11bと背景画像11cとが表示され、各画像は他の画像とは異なる色調を有した画像として表示される。
【0122】
図12が示すように、領域Cに含まれる第3ドット群では、印刷ドット22a1と隠蔽パターン23aとの重ね合わせによって、印刷ドット22a1の一部であって、第3ドットD3の全てが隠蔽パターン23aと重なることによって隠蔽される。これに対して、第1ドットD1の全ておよび第2ドットD2の全ては、印刷ドット22a1と隠蔽パターン23aとの重ね合わせによって隠蔽パターン23aと重ならない。これにより、領域Cは、第1ドットD1と第2ドットD2とによって表現される色調を有する。
【0123】
一方で、図13が示すように、領域Bでは、印刷ドット22a1と隠蔽パターン23aとの重ね合わせによって、印刷ドット22a1の一部であって、第1ドットD1の全てが隠蔽パターン23aと重なることによって隠蔽される。これに対して、第2ドットD2の全てと第3ドットD3の全ては、印刷ドット22a1と隠蔽パターン23aとの重ね合わせによって隠蔽パターン23aと重ならない。これにより、領域Bは、第2ドットD2と第3ドットD3とによって構成される色調を有する。
【0124】
このように、印刷ドット22a1と隠蔽パターン23aとの重ね合わせによって製造される表示体10では、印刷ドット22a1と隠蔽パターン23aとの重なりによって、互いに異なる色調を有した関連画像11bと背景画像11cとが表示される。
【0125】
表示体10では、2色以上の印刷ドット22a1において、1色のみの印刷ドット22a1における少なくとも一部が隠蔽パターン23aと重なるため、こうした重なりによって表示される画像の色調では、印刷ドット22a1のみが表示する画像の色調に対して色相が異なる。それゆえに、印刷ドット22a1と隠蔽パターン23aとの重なりによって表現される色調において、印刷ドット22a1のみが表示する画像に対して明度のみが異なる構成と比べて、表示体10の変造によって真正の表示体10と同じ色調を表現させることがより難しくなる。結果として、表示体10の変造をより抑えることができる。
【0126】
さらには、印刷ドット22a1が含む第2ドット群DG2の一部と第3ドット群DG3の一部との双方が隠蔽パターン23aと重なり、かつ、第2ドット群DG2における重なりと第3ドット群DG3における重なりとのそれぞれによって、印刷ドット22a1のみが表示する画像とは異なる色調を有する画像を表示体10が表示する。そのため、表示体10が、印刷ドット22a1のみが表示する画像とは異なる色調の画像を1つのみ表現する構成よりも、表示体10の変造が難しい。ひいては、表示体10の変造をより抑えることができる。
【0127】
図14が示すように、印刷情報に従って形成された複数の印刷ドット22a1のみによって表示される印刷画像51は、所有者の顔画像11aと、顔画像11aの周りに位置する背景画像51aとから構成される。背景画像51aは、第2ドット群DG2と第3ドット群DG3とから構成され、第1ドットD1、第2ドットD2、および、第3ドットD3によって表現される色調を有している。
【0128】
これに対して、図15が示すように、印刷ドット22a1と隠蔽パターン23aとの重なり合いによって、印刷画像51における背景画像51aの一部を形成する印刷ドット22a1が、隠蔽パターン23aと重なる。これにより、顔画像11a、関連画像11b、および、背景画像11cから構成される顔認証用画像11が表示される。しかも、顔認証用画像11における関連画像11bおよび背景画像11cは、それぞれ印刷画像51における背景画像51aとは異なる色調を有し、かつ、顔認証用画像11において、関連画像11bと背景画像11cとは、互いに異なる色調を有する。
【0129】
このように、隠蔽パターン23aと重なる印刷ドット22a1が、印刷ドット22a1のみが表示する画像における背景画像51aの一部であるため、表示体10の変造に際して、表示体10が含む顔画像11aとともに表示体10から取り除かれやすい。印刷ドット22a1が一旦取り除かれると、印刷ドット22a1の位置と隠蔽パターン23aの位置とが真正の表示体10と同じ状態にならない限りは、隠蔽パターン23aと印刷ドット22a1との重なりによって表示される画像を表示させることは難しいため、表示体10の変造を抑えることができる。
【0130】
図16が示すように、こうした顔認証用画像11を表示する表示体10が変造されるときには、まず、パターン層22、隠蔽層23、および、保護層24から構成される多層体が基材21から剥がされる。そして、第1印刷パターン22aが、化学的あるいは物理的にパターン層22から取り除かれる。
【0131】
次いで、図17が示すように、偽の所有者の顔画像61aを含む印刷パターンがパターン層22に形成される。これにより、偽の顔認証用画像61を含む偽の表示体60が製造される。ただし、上述したように、表示体10が表示する関連画像11bおよび背景画像11cは、パターン層22に形成された印刷ドット22a1の一部と隠蔽パターン23aとの重なりによって形成されている。
【0132】
そのため、単に印刷パターンの色調を真正の画像に似せるのみでは、真正の背景画像11cにおける色調と同等の色調を有した背景画像61c、および、真正の関連画像11bと同等の形状を有し、かつ、同等の色調を有した関連画像61bを表示する表示体60を形成することはできない。それゆえに、こうした構造を有する表示体10の製造方法によれば、表示体10の変造を抑えることができる。
【0133】
ここで、顔料インキを用いて形成された印刷ドット22a1は、他のインキ、例えば染料インキを用いて形成された印刷ドットに比べて、印刷ドットが形成された層の表面に位置しやすいため、印刷ドットが形成された層から取り除かれやすい。上述したように、顔料インキから形成される印刷ドット22a1が取り除かれた後に、新しい印刷ドットが付されたとしても、真正の表示体10が表示する画像に似せて印刷ドットを形成するのみでは表示体10と同等の画像が表示されない。そのため、表示体10の製造方法によれば、顔料インキを用いて形成された印刷ドット22a1を有する表示体10において、変造を抑える効果をより顕著に得ることができる。
【0134】
また、表示体10によれば、印刷ドット22a1の位置と、隠蔽パターン23aとの位置との両方を真正の表示体10と同じ状態にしなければ、関連画像11bを表示することができない。それゆえに、表示体10が仮に変造されたとしても、表示体10が関連画像11bを表示しているか否かによって、その表示体が変造された偽の表示体であるか否かが容易に判断される。
【0135】
[実施例1]
基材、剥離層、隠蔽層、および、受像層を有する中間転写箔を準備した。隠蔽層において、受像層のなかで第2ドット群が形成される位置および第3ドット群が形成される位置と、中間転写箔の厚さ方向から見て重なる位置に、予め隠蔽パターンを形成した。なお、隠蔽パターンを構成する複数の隠蔽部を、X方向に対して45°で交差し、かつ、隠蔽部の延びる方向と直交する方向に沿って等間隔で並ぶように形成した。なお、隠蔽部における幅、すなわちY方向に沿う幅を80μmに設定し、Y方向において互いに隣り合う隠蔽部間の距離を160μmに設定した。これにより、隠蔽パターンにおけるピッチを240μmに設定した。
【0136】
マスクデータ、第1画像データ、および、第2画像データに基づいて、制御部における情報生成部によって印刷情報を生成した。このとき、印刷情報として、第2ドット群が以下のように配列され、かつ、第3ドット群が以下のように配列されるように、印刷情報を生成した。
【0137】
すなわち、第3ドット群において、シアン、マゼンタ、および、イエローの各々の印刷ドットが各別の直線上に位置し、かつ、各直線がX方向に対して45°で交差するように、各印刷ドットの位置を設定した。また、複数の直線において、シアンの印刷ドットが位置する直線、マゼンタの印刷ドットが位置する直線、および、イエローの印刷ドットが位置する直線が、各直線の延びる方向と直交する方向に沿って、記載の順に並ぶように各印刷ドットの位置を設定した。
【0138】
なお、各色の印刷ドットが位置する直線の幅、すなわちY方向に沿う幅を40μmに設定し、Y方向において互いに隣り合う直線間の距離を40μmに設定した。これにより、印刷パターンにおけるピッチを、隠蔽パターンにおけるピッチと同様の240μmに設定した。また、各色の印刷ドットが位置する直線のうち、イエローの印刷ドットが位置する直線のみが隠蔽パターンと重なるように、各印刷ドットの位置を設定した。
【0139】
第2ドット群におけるピッチを、第2ドット群におけるピッチと同じ値に設定し、かつ、X方向において、80μmだけ第3ドット群におけるピッチからずらした。これにより、各色の印刷ドットが位置する直線のうち、シアンの印刷ドットが位置する直線のみが隠蔽パターンと重なるように、各印刷ドットの位置を設定した。
【0140】
次いで、こうした印刷情報に従って、中間転写装置(凸版印刷(株)製、eP600)を用いて受像層に複数の印刷ドットを形成した後、受像層、隠蔽層、および、剥離層を含む多層体を基材に転写することによって、表示体を製造した。これにより、背景画像が紫色を有し、かつ、関連画像が橙色を有する顔認証用画像を表示する表示体が得られた。
【0141】
以上説明したように、表示体、冊子、IDカード、表示体の製造方法、および、表示体の製造装置の第1実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1‐1)2色以上の印刷ドット22a1において、1色のみの印刷ドット22a1における少なくとも一部が隠蔽パターン23aと重なるため、こうした重なりによって表示される画像の色調では、印刷ドット22a1のみが表示する画像の色調に対して色相が異なる。それゆえに、印刷ドット22a1と隠蔽パターン23aとの重なりによって表現される色調において、印刷ドット22a1のみが表示する画像に対して明度のみが異なる構成と比べて、表示体10の変造によって真正の表示体10と同じ色調を表現させることがより難しくなる。結果として、表示体10の変造をより抑えることができる。
【0142】
(1‐2)印刷ドット22a1が含む第2ドット群DG2の一部と第3ドット群DG3の一部との双方が隠蔽パターン23aと重なり、かつ、第2ドット群DG2における重なりと第3ドット群DG3における重なりとのそれぞれによって、印刷ドット22a1のみが表示する画像とは異なる色調を有する画像を表示体10が表示する。そのため、表示体10が、印刷ドット22a1のみが表示する画像とは異なる色調の画像を1つのみ表現する構成よりも、表示体10の変造が難しい。ひいては、表示体10の変造をより抑えることができる。
【0143】
(1‐3)印刷ドット22a1が取り除かれた後に、新しい印刷ドットが付されたとしても、真正の表示体10が表示する画像に似せて印刷ドットを形成するのみでは表示体10と同等の画像が表示されない。そのため、表示体10の製造方法によれば、顔料インキを用いて形成された印刷ドット22a1を有する表示体10において、変造を抑える効果をより顕著に得ることができる。
【0144】
(1‐4)印刷ドット22a1の位置と、隠蔽パターン23aとの位置との両方を真正の表示体10と同じ状態にしなければ、関連画像11bを表示することができない。それゆえに、表示体10が仮に変造されたとしても、表示体10が関連画像11bを表示しているか否かによって、その表示体が変造された偽の表示体であるか否かが容易に判断される。
【0145】
(1‐5)隠蔽パターン23aと重なる印刷ドット22a1が、印刷ドット22a1のみが表示する画像における背景画像51aの一部であるため、表示体10の変造に際して、表示体10が含む顔画像11aとともに表示体10から取り除かれやすい。印刷ドット22a1が一旦取り除かれると、印刷ドット22a1の位置と隠蔽パターン23aの位置とが真正の表示体10と同じ状態にならない限りは、隠蔽パターン23aと印刷ドット22a1との重なりによって表示される画像を表示させることは難しい。そのため、表示体10の変造を抑えることができる。
【0146】
[第1実施形態の変形例]
なお、上述した第1実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・隠蔽パターン23aと重なる印刷ドット22a1は、例えば、文字認証用画像12のように、文字および数字を含む画像の周りに位置する背景画像でもよい。あるいは、隠蔽パターン23aと重なる印刷ドット22a1を含む印刷パターン22aによって表示される画像は、顔画像や文字を含む画像などを含まない単色の画像であってもよい。
【0147】
・隠蔽パターン23aと重なる印刷ドット22a1は、顔画像11aを表示する第1ドット群に含まれてもよい。
・印刷ドット22a1と隠蔽パターン23aとの重なりによって表示される画像は、表示体10の所有者に関する画像でなくてもよく、例えば、所有者とは関連性を有しない所定の形状、文字、および、数字などを表現する画像であってもよい。
【0148】
・第2ドット群DG2および第3ドット群DG3では、各ドット群を構成する2色以上のドットが、隠蔽パターン23aと重なってもよい。こうした構成であっても、第2ドット群DG2と第3ドット群DG3とで、隠蔽パターン23aと重なった後の色調が互いに異なっていれば、上述した(1‐2)に準じた効果を得ることはできる。
【0149】
・第2ドット群DG2および第3ドット群DG3の各々を構成する印刷ドット22a1には、2色以下の印刷ドット22a1のみが含まれてもよいし、4色以上の印刷ドット22a1が含まれてもよい。
【0150】
・第2ドット群DG2および第3ドット群DG3のいずれか一方のみが、隠蔽パターン23aと重なる印刷ドット22a1を含んでもよい。こうした構成では、上述した第1実施形態と同様、隠蔽パターン23aと重なる印刷ドット22a1を含むドット群では、1色のみの印刷ドット22a1の少なくとも一部と隠蔽パターン23aとが重なることによって、印刷ドット22a1のみが表示する画像とは異なる色調を有した画像を表示することができる。
【0151】
・隠蔽パターン23aによる隠蔽後の第2ドット群DG2と、隠蔽後の第3ドット群DG3との間では、色相は互いに同じである一方で、明度のみが互いに異なることによって、2つの画像間での色調の違いが表現されてもよい。
【0152】
・情報生成部36aは、隠蔽パターン23aのピッチと、各色のインクの並ぶ列とのピッチとが互いに等しくなるような印刷情報を生成しなくてもよい。情報生成部36aは、各色のインクの並ぶ列のピッチに対して、隠蔽パターン23aのピッチが2以上の整数倍になるような印刷情報を生成してもよい。こうした構成であっても、隠蔽パターン23aと印刷ドット22a1の一部とが重なることで、印刷ドット22a1のみが表示する画像と色調を異ならせることはできる。
【0153】
・隠蔽パターン23aと重なる印刷ドット22a1の全体が隠蔽パターン23aによって隠蔽されなくてもよい。こうした構成は、隠蔽部23a1の幅を印刷ドット22a1の幅よりも小さくすることによって具体化することができる。あるいは、隠蔽部23a1の幅が印刷ドット22a1の幅以上であっても、表示体10の厚さ方向において、印刷ドット22a1の一部が隠蔽部23a1からはみ出すように、隠蔽パターン23aの位置に準じて印刷ドット22a1の位置を定めればよい。
【0154】
・隠蔽パターン23aに対して印刷ドット22a1の一部がはみ出すように印刷ドット22a1を位置させる構成では、隠蔽パターン23aのピッチに対して、印刷ドット22a1のピッチのずれが10%以内になるように、印刷ドット22a1の位置を定めることが好ましい。これにより、隠蔽パターン23aと、印刷ドット22a1との間の干渉によって、モアレを生じさせることができる。
【0155】
・隠蔽部23a1は、XY座標上において各軸に45°以外の角度で交差する直線状を有してもよいし、X軸あるいはY軸に沿って延びる直線状を有してもよい。
・隠蔽部23a1は、1つの方向に沿って等間隔で並んでいなくてもよく、1つの方向に沿って隠蔽部23a1間の距離が、次第に大きくなってもよいし、次第に小さくなってもよい。
【0156】
・隠蔽部23a1は線状を有していなくてもよく、隠蔽パターン23aは、XY座標上に所定の規則に従って配置された点の集合であってもよい。
・印刷ドット22a1の形成方法は、サーマルヘッドを用いた熱転写法に限らず、インクジェット法、および、電子写真法などであってもよい。または、印刷ドット22a1は、熱転写方、インクジェット法、および、電子写真法の少なくとも2つの組み合わせによって形成されてもよい。
【0157】
・表示体10が有する印刷ドット22a1は中間転写方式によって形成されなくてもよく、表示体10を構成する1つの層であって、印刷ドット22a1の受像層に直に形成されてもよい。すなわち、表示体の製造装置は、中間転写装置以外の装置であって、印刷ドット22a1の形成と、印刷ドット22a1と隠蔽パターン23aとの重ね合わせとが可能な装置として具体化されてもよい。
【0158】
こうした構成では、受像層に印刷ドット22a1が形成された後に、受像層に対して隠蔽層23が重ねられることによって、印刷ドット22a1の一部と、隠蔽パターン23aとを重ね合わせてもよい。あるいは、隠蔽パターン23aを含む受像層に印刷ドット22a1を形成することによって、印刷ドット22a1を形成すると同時に、印刷ドット22a1の一部と隠蔽パターン23aとを重ね合わせてもよい。
【0159】
・表示体10は個人認証媒体に限らず、例えば、遊技用のカードなど玩具や、各種のチケットなどに具体化されてもよい。こうした構成であっても、表示体10の変造を抑えることは可能である。
【0160】
[第2実施形態]
図1、および、図18から図32を参照して、表示体、冊子、IDカード、表示体の製造方法、および、表示体の製造装置の第2実施形態を説明する。以下では表示体の構成、隠蔽パターンおよび第2画像パターンの例、表示体の適用例、および、実施例を順に説明する。
【0161】
[表示体の構成]
図1および図18を参照して、表示体の構成を説明する。なお、図1では、図示の便宜上、個人認証媒体が備える回折部によって形成される回折像の図示が省略されている。
【0162】
図1が示すように、表示体10は、観察対象である表面10aを備えている。表面10aと対向する平面視において、表示体10は、文字認証用画像12と、顔画像11a、背景画像11c、および、関連画像11bから構成される顔認証用画像11とを表示している。表示体10は、1つの方向であるX方向と、X方向に直交する方向であるY方向とに沿って広がる板状を有している。
【0163】
文字認証用画像12は、表面10aに覆われ、表示体10の所有者を特定するための1つ以上の第1情報要素を含んでいる。文字認証用画像12は、所有者を特定するための第1情報要素として、所有者の名前、国籍、および、誕生日を含んでいる。文字認証用画像12は、これら以外の所有者を特定するための情報要素を含んでもよいし、所有者を特定するための情報要素以外の情報要素を含んでもよい。本実施形態の表示体10は、所有者を特定するための情報要素以外の情報要素として、表示体10の有効期限を含んでいる。文字認証用画像12は、第1画像パターンの一例である。
【0164】
顔画像11aは、表示体10の所有者の顔画像であり、文字認証用画像12とは異なる画像であり、かつ、表示体10の所有者を特定するための画像である。顔画像11aは第2画像の一例である。背景画像11cは、顔画像11aの周囲を取り囲む画像である。
【0165】
関連画像11bは、第2画像パターンと隠蔽パターンとの重なりによって形成される画像である。関連画像11bは、第2画像パターンのみでは第2画像パターンが表示しない画像であり、かつ、隠蔽パターンが隠蔽パターンのみでは表示しない画像である。関連画像11bは、所有者を特定するための第2情報要素であって、文字認証用画像12が含む第1情報要素の少なくとも一部と同じ情報を含んでいる。本実施形態では、関連画像11bは、所有者に関する第2情報要素として所有者の誕生日を含んでいる。
【0166】
図2が示すように、表示体10は、基材121、接着層122、隠蔽層124、および、保護層125を備え、表示体10において、これらの層が記載の順に積み重なっている。
【0167】
基材121は、基材121の上に積層される接着層122、隠蔽層124、および、保護層125を支持することが可能な強度を有していればよく、基材121の形成材料には、例えば各種の合成樹脂や、各種の紙を用いることができる。
【0168】
基材121が樹脂フィルムまたは樹脂シートであるときには、これらの形成材料には、例えば、ポリエチレンテレフタラート樹脂(PET)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、および、ポリエチレン樹脂(PE)などを挙げることができる。
【0169】
接着層122は、光透過性を有している。接着層122は、隠蔽層124と基材121とを接着することが可能な接着性を有していればよい。接着層122の形成材料には、各種の樹脂を用いることができる。接着層122は、第1画像パターンおよび第2画像パターンの受像層として機能するため、各画像パターンを構成するインキとの密着性が高いことが好ましい。接着層122は、基材121に対するアンカー層としての機能を有してもよい。なお、表示体10は、基材121と接着層122との間に、接着層122とは別の層であるアンカー層を有してもよい。
【0170】
接着層122のうち、隠蔽層124と接する面が表面122Fであり、接着層122の表面122Fには、第1画像パターン123aと第2画像パターン123bとが位置している。第1画像パターン123aは、表面10aに覆われ、表示体10の所有者を特定するための1つの以上の情報を含む文字認証用画像12を、表面10aを通じて表示する画像パターンである。
【0171】
第2画像パターン123bは、表面10aに覆われ、1つ以上の第2情報要素が埋め込まれた画像パターンである。この第2画像パターンに埋め込まれた第2情報要素の判別は、第2画像パターンの一部によって制限されている。第2画像パターン123bは、第1画像パターン123aが表示する文字認証用画像12とは異なり、かつ、表示体10の所有者を特定するための画像を有している。
【0172】
本実施形態では、第2画像パターン123bは、顔画像11aを表示するための部分、および、背景画像11cを表示するための部分を含んでいる。また、第2画像パターン123bは、関連画像11bを隠蔽パターンとともに形成するための部分を含んでいる。このうち、顔画像11aが、第1画像パターン123aが表示する文字認証用画像12とは異なり、かつ、表示体10の所有者を特定するための画像である。また、第2画像パターン123bにおいて関連画像11bを隠蔽パターンとともに形成するための部分が、第2画像パターン123bのなかで第2情報要素が埋め込まれた部分であり、背景画像11cを表示するための部分が、第2画像パターン123bに埋め込まれた第2情報要素の判別を制限するための部分である。
【0173】
第1画像パターン123aは複数の印刷ドット123a1から構成され、各印刷ドット123a1はインキによって形成されている。印刷ドット123a1を形成するためのインキは、例えば顔料を含む顔料インキである。複数の印刷ドット123a1は、1色の印刷ドットから構成され、印刷ドット123a1は、例えばブラックの印刷ドット123a1から構成されている。
【0174】
第1画像パターン123aは、例えば、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法によって形成されるが、インクジェット記録法、および、電子写真法によって形成されてもよい。第1画像パターン123aには、互いに異なる方法によって形成された印刷ドット123a1が含まれてもよい。
【0175】
第2画像パターン123bは複数の印刷ドット123b1から構成され、各印刷ドット123b1はインキによって形成されている。印刷ドット123b1を形成するためのインキは、例えば顔料を含む顔料インキである。複数の印刷ドット123b1は、2色以上の印刷ドット123b1から構成されることが好ましいが、1色の印刷ドット123b1から構成されてもよい。
【0176】
第2画像パターン123bは、第1画像パターン123aと同様、例えば、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法によって形成されるが、インクジェット記録法、および、電子斜進法によって形成されてもよい。
【0177】
なお、隠蔽層124と接着層122との間には他の接着層が位置してもよく、この場合には、他の接着層のうち、隠蔽層124に接する面とは反対側の面に、第1画像パターン123aと第2画像パターン123bとが位置していればよい。
【0178】
また、第1画像パターン123aは、インキによって形成されていなくともよく、例えば感熱発色剤を含む層にレーザー光線を照射することによって形成されてもよい。この場合には、基材121が感熱発色剤を含む層であり、第1画像パターンが基材121に形成されてもよい。あるいは、表示体10は感熱発色剤を含む層を基材121と接着層122との間に備え、感熱発色材を含む層に第1画像パターンが形成されてもよい。この場合には、第1画像パターンは、上述した各種の印刷法によって形成された部分と、感熱発色剤を含む層に形成された部分との両方から構成されてもよい。
【0179】
隠蔽層124は隠蔽パターン124aと透過部124bとを備えている。隠蔽パターン124aは、第2画像パターン123bに対する表面側、すなわち第2画像パターン123bよりも表面10aからの距離が小さい部位に位置し、第2画像パターン123bの一部を隠蔽する。これによって、隠蔽パターン124aは、第2画像パターン123bに埋め込まれた第2情報要素の判別の制限を解除する。このように、隠蔽パターン124aが第2画像パターン123bに埋め込まれた第2情報要素の判別の制限を解除した結果として、上述した関連画像11bが表示される。
【0180】
表示体10によれば、第2画像パターン123bの一部を隠蔽パターン124aが隠蔽することによって第2画像パターン123bに埋め込まれた第2情報要素の判別が制限された状態が解除される。そのため、こうした第2情報要素が、第2画像パターン123bのみによって判別可能な状態である構成と比べて、表示体10の変造が抑えられる。
【0181】
透過部124bは光透過性を有し、隠蔽層124のうち、隠蔽パターン124a以外の部分を埋める層状を有している。透過部124bは透明な樹脂から形成されてもよいし、透明な誘電体から形成されてもよい。
【0182】
透過部124bが透明な誘電体から形成されているとき、透過部124bは透明反射層として機能する。透明反射層は、単層構造を有してもよいし、多層構造を有してもよい。透明反射層が多層構造を有するときには、透明反射層において反射と干渉とが繰り返し生じるように、すなわち透明反射層が多層干渉膜として機能するように、透明反射層の各層を形成する材料などが選択されてもよい。こうした構成では、透過部124bの形成材料には、例えば硫化亜鉛および二酸化チタンなどを用いることができる。
【0183】
透過部124bは、光透過性を有する金属層であって、20nm未満の厚さを有した金属層であってもよい。金属層の形成材料には、例えば、クロム、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、銀、金、および、銅などを用いることができる。
【0184】
隠蔽パターン124aは、複数の隠蔽部124a1から構成されている。各隠蔽部124a1は、透過部124bよりも光透過性が低く、かつ、印刷ドット123b1上に隠蔽部124a1が重なった状態で、印刷ドット123b1が視認されない程度の光しか透過しない。言い換えれば、各隠蔽部124a1は、光透過性をほぼ有しない程度に不透明である。
【0185】
隠蔽部124a1の形成材料には、上述した透過部124bの形成材料として挙げた金属を用いることが可能である。これにより、金属膜のエッチングによって隠蔽パターン124aを形成することができる。ただし、隠蔽部124a1は、隠蔽部124a1に入射した光をほぼ透過しない程度の厚さを有する点で、透過部124bとは異なっている。隠蔽部124a1の厚さは、20nm以上80nm以下であることが好ましく、また、隠蔽部124a1の形成材料は、上述した金属のなかでもアルミニウムであることが好ましい。
【0186】
隠蔽パターン124aは、表面10aと対向する平面視において、少なくとも第2画像パターン123bのうち、関連画像11bを形成するための部分に重なる大きさを有していればよいが、本実施形態では、背景画像11cを表示するための部分にも重なる大きさを有している。
【0187】
なお、隠蔽パターン124aは、マスクを用いたエッチングによって、金属層が所定のパターンを有するようにパターニングされることによって形成されてもよい。あるいは、隠蔽パターン124aは、凹凸構造を有する下地層に金属層を形成した後、金属層をエッチングすることによって形成されてもよい。この場合には、下地層のうち、隠蔽パターン124aに重なる部分に位置する凹凸構造の大きさを、隠蔽パターン124aとは重ならない部分に位置する凹凸構造よりも大きくすればよい。
【0188】
保護層125は光透過性を有する層であり、透明な層であることが好ましい。保護層125は、表示体10を構成する隠蔽層124を化学的な損傷や物理的な損傷から保護する。保護層125のうち、隠蔽層124に接する面が裏面125Rであり、裏面125Rとは反対側の面が表面125Fである。保護層125の表面125Fが、表示体10の表面10aである。
【0189】
保護層125の裏面125Rには、回折部125aが位置している。回折部125aは、隠蔽パターン124aに対する表面側、すなわち隠蔽パターン124aよりも表面10aからの距離が小さい部位に位置するとともに、凹凸によって回折光を射出するように構成されている。言い換えれば、回折部125aは、隠蔽パターン124aと表面10aとの間に位置している。保護層125は2つの回折部125aを含み、表面10aと対向する平面視において、一方の回折部125aは、第1画像パターン123aと重なり、他方の回折部125aは、隠蔽パターン124aと重なっている。
【0190】
このように、表示体10が回折部125aを備える分だけ、より表示体10の変造が難しくなる。ひいては、表示体10の変造がより抑えられる。また、回折部125aの射出する回折光によって形成される回折像が、第1画像パターン123aの表示する文字認証用画像12、および、隠蔽パターン124aと第2画像パターン123bとの重なりによって形成される関連画像11bと重なる。そのため、表示体10の意匠性が高まる。また、各画像と回折像との位置合わせが必要である分、表示体10の変造がより難しくなる。ひいては、表示体10の変造をより抑えることができる。
【0191】
回折部125aは、ホログラムおよび回折格子の少なくとも一方を含んでいればよい。保護層125の形成材料には、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、および、熱可塑性樹脂のいずれかを用いることができる。
【0192】
このうち、光硬化性樹脂は、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系アクリル系樹脂、シリコーン系アクリル系樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィンポリマー、メチルスチレン樹脂、フルオレン樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、および、ポリプロピレン樹脂などである。熱硬化性樹脂は、例えば、アクリルニトリルスチレン共重合体樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、および、アルキド樹脂などである。熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、および、ポリアセタール樹脂などである。なお、保護層125の形成材料は、屈折率が1.5程度であることが好ましい。
【0193】
なお、回折部125aは保護層125の表面125Fに位置してもよいが、回折部125aが化学的に損傷することや、物理的に損傷することが抑えられる点で、回折部125aは保護層125の裏面125Rに位置することが好ましい。また、表示体10は、保護層125とは異なる層であって、保護層125と隠蔽層124との間に位置し、かつ、回折部を含む層を有してもよい。また、回折部125aは割愛されてもよい。
【0194】
[隠蔽パターンおよび第2画像パターンの例]
図19から図30を参照して、隠蔽パターンおよび第2画像パターンの例を説明する。以下では、隠蔽パターンと第2画像パターンの組み合わせとして、隠蔽パターンおよび第2画像パターンの少なくとも一方が互いに異なる6つの例を説明する。
【0195】
[第1の例]
図19および図20を参照して第1の例を説明する。
図19が示すように、表示体10の表面10aと対向する平面視において、第2画像パターン123bは、第1領域123R1と第2領域123R2とを含んでいる。第1領域123R1は、関連画像11bを形成するための複数の印刷ドット123b1から構成され、第2画像パターン123bのなかで第2情報要素が埋め込まれた領域である。第2領域123R2は、背景画像11cを形成するための複数の印刷ドット123b1から構成され、第2画像パターン123bのなかで第2情報要素の判別を制限する領域である。
【0196】
第1画像パターン123aおよび第2画像パターン123bが形成される受像層には、X方向およびY方向に沿って並ぶ複数の画像セルが設定され、各画像セルには、画像セルに位置する画素、すなわち印刷ドット123b1の位置である画素位置としてXY座標系によるその画像セルに固有の座標が割り当てられている。複数の画像セルは、表面10aと対向する平面視において、正方格子を形成している。
【0197】
全ての画像セルのなかで、関連画像11bを形成するための複数の印刷ドット123b1が並ぶ領域が第1セル領域P1であり、背景画像11cを形成するための複数の印刷ドット123b1が並ぶ領域が第2セル領域P2である。
【0198】
第1セル領域P1に属する複数の画像セルPには、(m,n)に位置する画像セルP、(m,n+7)に位置する画像セルP、(m+7,n)に位置する画像セルP、および、(m+7、n+7)に位置する画像セルPに囲まれる複数の画像セルPが含まれる。こうした画像セルPの集合が第1セル単位PU1である。
【0199】
第1セル単位PU1において、第1ドットD1が、(m+2,n+1)に位置する画像セルP、(m+6,n+1)に位置する画像セルP、(m+2,n+5)に位置する画像セルP、および、(m+6,n+5)に位置する画像セルPにそれぞれ位置している。各第1ドットD1は、印刷ドットの一例であり、第1ドットD1が位置する画像セルPにおいて、第1ドットD1は画像セルPに内接する大きさを有する円状を有している。
【0200】
第1セル領域P1には、複数の第1セル単位PU1が隙間なく並ぶため、第1セル領域P1において、X方向における第1ドットD1のピッチは画像セルPの4倍であり、かつ、Y方向における第1ドットD1のピッチは画像セルPの4倍である。
【0201】
第2セル領域P2に属する複数の画像セルPには、(k,l)に位置する画像セルP、(k,l+7)に位置する画像セルP、(k+7,l)に位置する画像セルP、および、(k+7,l+7)に位置する画像セルPに囲まれる複数の画像セルPが含まれる。こうした画像セルPの集合が第2セル単位PU2である。
【0202】
第2セル単位PU2において、第1ドットD1が、(k,l+3)に位置する画像セルP、(k+4,l+3)に位置する画像セルP、(k,l+7)に位置する画像セルP、および、(k+4,l+7)に位置する画像セルPにそれぞれ位置している。
【0203】
第2セル領域P2には、複数の第2セル単位PU2が隙間なく並ぶため、第2セル領域P2において、第1セル領域P1と同様、X方向における第1ドットD1のピッチは画像セルPの4倍であり、かつ、Y方向における第1ドットD1のピッチは画像セルPの4倍である。ただし、第1セル単位PU1と第2セル単位PU2とを重ねたとき、第1セル単位PU1に位置する各第1ドットD1の位置は、X方向において画像セルPの2つ分、かつ、Y方向において画像セルPの2つ分だけ、第2セル単位PU2に位置する第1ドットD1の位置からずれている。
【0204】
隠蔽層124は、第2画像パターン123bが形成される受像層に投影される層であるため、受像層と同様、隠蔽層124にも、X方向およびY方向に沿って並ぶ複数の画像セルPを設定することが可能である。各画像セルPには、画像セルPに位置する画素の位置である画素位置としてXY座標系によるその画像セルPに固有の座標が割り当てられている。複数の画像セルPは、表面10aと対向する平面視において、正方格子を形成している。
【0205】
全ての画像セルPには、(i,j)に位置する画像セルP、(i,j+7)に位置する画像セルP、(i+7,j)に位置する画像セルP、および、(i+7,j+7)に位置する画像セルPに囲まれる複数の画像セルPが含まれる。こうした画像セルPの集合が、第3セル単位PU3である。
【0206】
第3セル単位PU3において、隠蔽部124a1が、(i,j+3)に位置する画像セルP、(i+4,j+3)に位置する画像セルP、(i,j+7)に位置する画像セルP、および、(i+4,j+7)に位置する画像セルPにそれぞれ位置している。各隠蔽部124a1は、画像セルPと同じ大きさを有する正方形状を有している。
【0207】
隠蔽層124のうち、背景画像11cおよび関連画像11bを形成するための部分には第3セル単位PU3が隙間なく並ぶため、第1セル領域P1および第2セル領域P2と同様、X方向における隠蔽部124a1のピッチは画像セルPの4倍であり、かつ、Y方向における隠蔽部124a1のピッチは画像セルPの4倍である。しかも、第2セル単位PU2と第3セル単位PU3とを重ねたとき、各隠蔽部124a1が、他の隠蔽部124a1が重なる第1ドットD1とは異なる第1ドットD1と重なる。
【0208】
このように、隠蔽パターン124aは、ドット状を有した複数の隠蔽部124a1を備え、隠蔽部124a1が、少なくとも1つの方向である配列方向において等間隔で並んでいてもよい。これによれば、同一の形状を有した隠蔽部124a1を配列方向において等間隔で並べるため、隠蔽部がランダムな形状を有する構成や、隠蔽部がランダムに並ぶ構成と比べて、隠蔽パターン124aを形成することが容易である。
【0209】
図20が示すように、隠蔽パターン124aと第2画像パターン123bとが重なることによって、第2画像パターン123bのうち、第1領域123R1に位置する全ての第1ドットD1が隠蔽パターン124aによって隠蔽されない。一方で、第2領域123R2に位置する全ての第1ドットD1が隠蔽パターン124aによって隠蔽される。
【0210】
これにより、背景画像11cは隠蔽パターン124aのみによって形成される一方で、関連画像11bは隠蔽パターン124aと第2画像パターン123bとによって形成されるため、背景画像11cの色調と関連画像11bの色調とが互いに異なる。
【0211】
結果として、第2画像パターン123bに埋め込まれた第2情報要素の判別が制限された状態が解除される。言い換えれば、表示体10の観察者が関連画像11bを視認することが可能なように、隠蔽パターン124aと第2画像パターン123bとによって、関連画像11bが形成される。また、こうした関連画像11bであれば、表示体10の読み取り装置が、関連画像11bを背景画像11cと区別することが可能である。ひいては、読み取り装置が、関連画像11bを読み取ることが可能である。
【0212】
なお、上述したように、第2画像パターン123bのなかで、第1領域123R1と第2領域123R2との間では、第1ドットD1の密度が等しい。そのため、第2画像パターン123bのみが視認されたときには、第2画像パターン123bにおいて、第1領域123R1と第2領域123R2とは、互いから区別されない。これにより、第2領域123R2が、第1領域123R1に埋め込まれた第2情報要素の判別を制限している。
【0213】
また、第1ドットD1は、例えばブラックのインキで形成されているが、第1ドットD1は、シアンの印刷ドット、マゼンタの印刷ドット、および、イエローの印刷ドットの少なくとも一色の印刷ドットによって形成されてもよい。また、第1ドットD1が複数の色の印刷ドットによって形成されるときには、各色の印刷ドットがドットオンドット方式で、すなわち互いに重なるように形成されるため、第2画像パターン123bは、複数の印刷ドットが重なった重畳ドットを含む。ドットオンドット方式は、重畳ドットを形成するような印刷方式である。重畳ドットは、1つの画像セルP内において、複数の印刷ドットが重なるように形成されることによって形成することができる。
【0214】
これによれば、第2画像パターン123bが、ドットオンドット方式とは異なる印刷方式で形成されたときに、第2画像パターンを構成する印刷ドットの形状によって、表示体10が変造されたか否かを判断することが可能である。なお、こうした効果は、第1画像パターン123aが重畳ドットを含む構成においても得ることが可能である。
【0215】
例えば、CMYKカラーモデルに従い画像を形成するカラー複写機によって第2画像パターンが形成されたときには、そのカラー複写機に特有の配列にシアンの印刷ドット、マゼンタの印刷ドット、および、イエローの印刷ドットが並べられる。そのため、こうした第2画像パターンが隠蔽パターン124aと重ねられたとしても、ドットオンドット方式によって形成された印刷ドットによる第2画像パターン123bが隠蔽パターン124aとともに形成する関連画像11bとは同じ画像を形成することが難しい。そのため、表示体10が表示する関連画像11bを観察することによって、表示体10の変造の有無を判断することが可能にもなる。
【0216】
また、画像セルPの単位長さは、5μm以上200μm以下であることが好ましい。言い換えれば、画像セルPに位置する印刷ドット123b1の径、および、隠蔽部124a1の単位長さの各々は、5μm以上200μm以下であることが好ましい。
【0217】
画像セルPの単位長さが5μm以上であることによって、隠蔽パターン124aと第2画像パターン123bとの位置合わせの難しさが抑えられることによって、隠蔽パターン124aの位置と第2画像パターン123bの位置とがずれることが抑えられる。結果として、関連画像11bの含む情報が、表示体10の読み取り装置によって読み取られやすくなる。
【0218】
画像セルPの単位長さが200μm以下であることによって、隠蔽パターン124aと第2画像パターン123bとの間に位置のずれが生じたとしても、こうしたずれが表示体10の観察者に視認される程度に大きくなることが抑えられる。加えて、第2画像パターン123bの解像度が、第2画像パターン123bの変造が抑えられる程度に精細になる。
【0219】
[第2の例]
図21および図22を参照して第2の例を説明する。
図21が示すように、第2の例では、第2画像パターン123bの第1領域123R1および第2領域123R2の各々における第1ドットD1の並び方は、第1の例と同様である。
【0220】
これに対して、隠蔽層124に含まれる第3セル単位PU3では、1つの隠蔽部124a1が、(i,j)に位置する画像セルPから、(i,j+7)に位置する画像セルPまで延びる線状を有している。また、他の隠蔽部124a1が、(i+4,j)に位置する画像セルPから、(i+4,j+7)に位置する画像セルPまで延びる線状を有している。そのため、隠蔽層124において、X方向における隠蔽部124a1のピッチは画像セルPの4倍である。すなわち、隠蔽パターン124aは、複数の線が等間隔で並ぶ万線パターンである。
【0221】
そのため、図22が示すように、隠蔽パターン124aと第2画像パターン123bとが重なることによって、第1の例と同様、第1領域123R1に位置する全ての第1ドットD1が隠蔽パターン124aによって隠蔽されない。一方で、第2領域123R2に位置する全ての第1ドットD1が隠蔽パターン124aによって隠蔽される。
【0222】
上述したように、隠蔽パターン124aは、線状を有した複数の隠蔽部124a1を備え、隠蔽部124a1が、隠蔽部124a1が延びるY方向と交差するX方向、すなわち配列方向において等間隔で並んでもよい。これによれば、線状を有した複数の隠蔽部124a1を配列方向において等間隔で並べるため、隠蔽部がランダムな形状を有する構成や、隠蔽部がランダムに並ぶ構成と比べて、隠蔽パターン124aを形成することが容易である。
【0223】
[第3の例]
図23および図24を参照して第3の例を説明する。
図23が示すように、第3の例では、隠蔽層124における隠蔽部124a1の並び方は、第2の例と同様である。
【0224】
これに対して、第1領域123R1に含まれる第1セル単位PU1では、第1ドットD1が、(m+2,n)に位置する画像セルPから、(m+2,n+7)に位置する画像セルPまでにわたって、Y方向に沿って並ぶ8つの画像セルPの各々に位置している。さらに、第1ドットD1は、(m+6,n)に位置する画像セルPから、(m+6,n+7)に位置する画像セルPまでにわたって、Y方向に沿って並ぶ8つの画像セルPの各々に位置している。
【0225】
また、第2領域123R2に含まれる第2セル単位PU2では、第1ドットD1が、(k,l)に位置する画像セルPから、(k,l+7)に位置する画像セルPまでにわたって、Y方向に沿って並ぶ8つの画像セルPの各々に位置している。さらに、第1ドットD1は、(k+4,l)に位置する画像セルPから、(k+4,l+7)に位置する画像セルPまでにわたって、Y方向に沿って並ぶ8つの画像セルPの各々に位置している。
【0226】
そのため、図24が示すように、隠蔽パターン124aと第2画像パターン123bとが重なることによって、第1の例と同様、第1領域123R1に位置する全ての第1ドットD1が隠蔽パターン124aによって隠蔽されない。一方で、第2領域123R2に位置する全ての第1ドットD1が隠蔽パターン124aによって隠蔽される。
【0227】
[第4の例]
図25および図26を参照して第4の例を説明する。
図25が示すように、第1セル領域P1に属する複数の画像セルPには、(m,n)に位置する画像セルP、(m,n+8)に位置する画像セルP、(m+8,n)に位置する画像セルP、および、(m+8,n+8)に位置する画像セルPに囲まれる複数の画像セルPが含まれる。こうした画像セルPの集合が第1セル単位PU1である。
【0228】
第1セル単位PU1には、第2ドットD2、第3ドットD3、および、第4ドットD4が位置し、第2ドットD2、第3ドットD3、および、第4ドットD4の間では、各ドットの有する色が互いに異なっている。第2ドットD2、第3ドットD3、および、第4ドットD4の各々は、印刷ドット123b1の一例である。
【0229】
第1セル単位PU1において、第2ドットD2は、(m,n)に位置する画像セルPから、(m,n+8)に位置する画像セルPまでにわたって、Y方向に沿って並ぶ9つの画像セルPの各々に位置している。第3ドットD3は、(m+3,n)に位置する画像セルPから、(m+3,n+8)に位置する画像セルPまでにわたって、Y方向に沿って並ぶ9つの画像セルPの各々に位置している。第4ドットD4は、(m+6,n)に位置する画像セルPから、(m+6,n+8)に位置する画像セルPまでにわたって、Y方向に沿って並ぶ9つの画像セルPの各々に位置している。
【0230】
第1セル領域P1には、複数の第1セル単位PU1が隙間なく並ぶため、第1セル領域P1において、X方向における各色の印刷ドットが並ぶ列のピッチは、画像セルPの9倍であり、X方向において互いに隣り合う印刷ドットの列の並ぶピッチは、画像セルPの3倍である。言い換えれば、X方向における各色の印刷ドットが並ぶ列のピッチ、および、X方向において互いに隣り合う印刷ドットの列の並ぶピッチは、画素の一例である印刷ドットの大きさの整数倍である。
【0231】
第2セル領域P2に属する複数の画像セルPには、(k,l)に位置する画像セルP、(k,l+8)に位置する画像セルP、(k+8,l)に位置する画像セルP、および、(k+8,l+8)に位置する画像セルPに囲まれる複数の画像セルPが含まれる。こうした画像セルPの集合が第2セル単位PU2である。
【0232】
第2セル単位PU2において、第4ドットD4は、(k+1,l)に位置する画像セルPから、(k+1,l+8)に位置する画像セルPまでにわたって、Y方向に沿って並ぶ9つの画像セルPの各々に位置している。第2ドットD2は、(k+4,l)に位置する画像セルPから、(k+4,l+8)に位置する画像セルPまでにわたって、Y方向に沿って並ぶ9つの画像セルPの各々に位置している。第3ドットD3は、(k+7,l)に位置する画像セルPから、(k+7,l+8)に位置する画像セルPまでにわたって、Y方向に沿って並ぶ9つの画像セルPの各々に位置している。
【0233】
第2セル領域P2には、複数の第2セル単位PU2が隙間なく並ぶため、第2セル領域P2において、X方向における各色の印刷ドットが並ぶ列のピッチは、第1セル領域P1と同様、画像セルPの9倍であり、X方向において互いに隣り合う印刷ドットの列の並ぶピッチは、画像セルPの3倍である。言い換えれば、X方向における各色の印刷ドットが並ぶ列のピッチ、および、X方向において互いに隣り合う印刷ドットの列のピッチは、画素の一例である印刷ドットの大きさの整数倍である。
【0234】
ただし、第1セル単位PU1と第2セル単位PU2とを重ねたとき、第1セル単位PU1に位置する各色の印刷ドットの位置は、X方向において画像セルPの4つ分だけ、第2セル単位PU2に位置する各色の印刷ドットの位置からずれている。
【0235】
全ての画像セルPには、(i,j)に位置する画像セルP、(i,j+8)に位置する画像セルP、(i+8,j)に位置する画像セルP、および、(i+8,j+8)に位置する画像セルPに囲まれる複数の画像セルPが含まれる。こうした画像セルPの集合が第3セル単位PU3である。
【0236】
第3セル単位PU3において、第1の隠蔽部124a1は、(i+1,j)に位置する画像セルPから、(i+1,j+8)に位置する画像セルPまで延びている。加えて、第1の隠蔽部124a1は、(i+2,j)に位置する画像セルPから、(i+2,j+8)に位置する画像セルPまでのうち、各画像セルPの単位長さの1/2だけを占める幅を有している。すなわち、第1の隠蔽部124a1は、画像セルPの1.5倍の幅を有している。
【0237】
第2の隠蔽部124a1は、(i+4,j)に位置する画像セルPから、(i+4,j+8)に位置する画像セルPまで延び、かつ、画像セルPの1.5倍の幅を有して、X方向において、(i+5,j)に位置する画像セルPから、(i+5,j+8)に位置する画像セルPにまではみ出している。
【0238】
第3の隠蔽部124a1は、(i+7,j)に位置する画像セルPから、(i+7,j+8)に位置する画像セルPまで延び、かつ、画像セルPの1.5倍の幅を有して、X方向において、(i+8,j)に位置する画像セルPから、(i+8,j+8)に位置する画像セルPにまではみ出している。
【0239】
隠蔽層124のうち、背景画像11cおよび関連画像11bを形成するための部分には第3セル単位PU3が隙間なく並ぶため、X方向における隠蔽部124a1のピッチは画像セルPの3倍であり、各セル領域において、X方向における印刷ドットの列が並ぶピッチに等しい。しかも、第2セル単位PU2と第3セル単位PU3とを重ねたとき、各隠蔽部124a1が、他の全ての隠蔽部124a1が重なる印刷ドットの列とは異なる印刷ドットの列と重なる。
【0240】
そのため、図26が示すように、隠蔽パターン124aと第2画像パターン123bとが重なることによって、第2画像パターン123bのうち、第1領域123R1に位置する全ての印刷ドットが隠蔽パターン124aによって隠蔽されない。一方で、第2領域123R2に位置する全ての印刷ドットが隠蔽パターン124aによって隠蔽される。
【0241】
これにより、背景画像11cは隠蔽パターン124aのみによって形成される一方で、関連画像11bは、隠蔽パターン124a、第2ドットD2、第3ドットD3、および、第4ドットD4によって形成されるため、背景画像11cの色調と関連画像11bの色調とが互いに異なる。結果として、第2画像パターン123bに埋め込まれた第2情報要素の判別が制限された状態が解除される。言い換えれば、表示体10の観察者が関連画像11bを視認することが可能なように、隠蔽パターン124aと第2画像パターン123bとによって、関連画像11bが形成される。
【0242】
なお、上述したように、第2画像パターン123bのなかで、第1領域123R1と第2領域123R2との間では、第2ドットD2の列のピッチ、第3ドットD3の列のピッチ、および、第4ドットD4の列のピッチが等しい。そのため、第2画像パターン123bのみが視認されたときには、第2画像パターン123bは、第2ドットD2、第3ドットD3、および、第4ドットD4によって構成される1つの画像であり、第2画像パターン123bにおいて、第1領域123R1と第2領域123R2とが互いから区別されない。これにより、第2領域123R2が、第1領域123R1に埋め込まれた第2情報要素の判別を制限している。
【0243】
また、第1ドットD1、第2ドットD2、および、第3ドットD3は、例えば、それぞれシアンの印刷ドット、マゼンタの印刷ドット、および、イエローの印刷ドットの少なくとも1つによって形成され、かつ、上述したように、第1ドットD1、第2ドットD2、および、第3ドットD3は、互いに異なる色を有する。
【0244】
[第5の例]
図27および図28を参照して第5の例を説明する。なお、第5の例では、上述した第4の例と比べて、複数の画像セルPにおいて、各色の印刷ドットが並ぶ位置が異なり、かつ、隠蔽パターン124aが投影される位置が異なっている。
【0245】
図27が示すように、第1セル領域P1において、第2ドットD2は、(m,n)に位置する画像セルPから、(m,n+8)に位置する画像セルPまでにわたって、Y方向に沿って並ぶ9つの画像セルPの各々に位置している。加えて、第2ドットD2は、(m+6,n)に位置する画像セルPから、(m+6,n+8)に位置する画像セルPまでにわたって、Y方向に沿って並ぶ9つの画像セルPの各々に位置している。
【0246】
第3ドットD3は、(m+2,n)に位置する画像セルPから、(m+2,n+8)に位置する画像セルPまでにわたって、Y方向に沿って並ぶ9つの画像セルPの各々に位置している。加えて、第3ドットD3は、(m+8,n)に位置する画像セルPから、(m+8,n+8)に位置する画像セルPまでにわたって、Y方向に沿って並ぶ9つの画像セルPの各々に位置している。
【0247】
第4ドットD4は、(m+4,n)に位置する画像セルPから、(m+4,n+8)に位置する画像セルPまでにわたって、Y方向に沿って並ぶ9つの画像セルPの各々に位置している。
【0248】
なお、第1セル領域P1では、(m,n)に位置する画像セルP、(m,n+5)に位置する画像セルP、(m+5,n)に位置する画像セルP、および、(m+5,n+5)に位置する画像セルPによって囲まれる領域に位置する複数の画像セルPが、第1セル単位PU1を構成している。第1セル領域P1には、複数の第1セル単位PU1が隙間なく並ぶため、第1セル領域P1において、X方向における各色の印刷ドットが並ぶ列のピッチは、画像セルPの6倍であり、X方向において互いに隣り合う印刷ドットの列のピッチは、画像セルPの2倍である。
【0249】
第2セル領域P2において、第3ドットD3は、(k,l)に位置する画像セルPから、(k,l+8)に位置する画像セルPまでにわたって、Y方向に沿って並ぶ9つの画像セルPの各々に位置している。加えて、第3ドットD3は、(k+6,l)に位置する画像セルPから、(k+6、l+8)に位置する画像セルPまでにわたって、Y方向に沿って並ぶ9つの画像セルPの各々に位置している。
【0250】
第4ドットD4は、(k+2,l)に位置する画像セルPから、(k+2,l+8)に位置する画像セルPまでにわたって、Y方向に沿って並ぶ9つの画像セルPの各々に位置している。加えて、第4ドットD4は、(k+8,l)に位置する画像セルPから、(k+8,l+8)に位置する画像セルPまでにわたって、Y方向に沿って並ぶ9つの画像セルPの各々に位置している。
【0251】
第2ドットD2は、(k+4,l)に位置する画像セルPから、(k+4,l+8)に位置する画像セルPまでにわたって、Y方向に沿って並ぶ9つの画像セルPの各々に位置している。
【0252】
なお、第2セル領域P2では、(k,l)に位置する画像セルP、(k,l+5)に位置する画像セルP、(k+5,l)に位置する画像セルP、および、(k+5、l+5)に位置する画像セルPによって囲まれる領域に位置する複数の画像セルPが、第2セル単位PU2を構成している。第2セル領域P2には、複数の第2セル単位PU2が隙間なく並ぶため、第2セル領域P2において、X方向における各色の印刷ドットが並ぶ列のピッチは、第1セル領域P1と同様、画像セルPの6倍であり、X方向において互いに隣り合う印刷ドットの列のピッチは、画像セルPの2倍である。
【0253】
ただし、第1セル単位PU1と第2セル単位PU2とを重ねたとき、第1セル単位PU1に位置する各色の印刷ドットの位置は、X方向において画像セルPの2つ分だけ、第2セル単位PU2に位置する同じ色の印刷ドットの位置からずれている。
【0254】
隠蔽パターン124aは線状を有した複数の隠蔽部124a1から構成され、各隠蔽部124a1は、Y方向に沿って延び、かつ、各隠蔽部124a1において、X方向における幅が画像セルPの単位長さに等しい。
【0255】
隠蔽パターン124aは、例えば、(i,j)に位置する画像セルPから、(i,j+8)に位置する画像セルPまで延びる隠蔽部124a1を含んでいる。隠蔽パターン124aは、(i+2,j)に位置する画像セルPと(i+3,j)に位置する画像セルPとに跨る位置から、(i+2,j+8)に位置する画像セルPと(i+3,j+8)に位置する画像セルPとに跨る位置まで延びる隠蔽部124a1を含んでいる。
【0256】
隠蔽パターン124aは、(i+5,j)に位置する画像セルPから、(i+5,j+8)に位置する画像セルPまで延びる隠蔽部124a1を含んでいる。隠蔽パターン124aは、(i+7,j)に位置する画像セルPと(i+8,j)に位置する画像セルPとに跨る位置から、(i+7,j)に位置する画像セルPと(i+8,j+8)に位置する画像セルPとに跨る位置まで延びる隠蔽部124a1を含んでいる。
【0257】
隠蔽パターン124aでは、X方向において複数の隠蔽部124a1の並ぶピッチが、画像セルPの2.5倍である。なお、隠蔽パターン124aでは、(i,j)に位置する画像セルP、(i,j+4)に位置する画像セルP、(i+4,j)に位置する画像セルP、および、(i+4、j+4)に位置する画像セルPによって囲まれる領域に位置する複数の画像セルPが、第3セル単位PU3を構成している。
【0258】
第5の例では、X方向において印刷ドットの列が並ぶピッチが、画像セルPの2倍である一方で、X方向において隠蔽部124a1が並ぶピッチが、画像セルPの2.5倍である。言い換えれば、印刷ドットの列が並ぶピッチに対して、隠蔽部124a1の並ぶピッチが25%だけずれている。
【0259】
そのため、図28が示すように、第1セル領域P1および第2セル領域P2の両方では、第2ドットD2の列、第3ドットD3の列、および、第4ドットD4の列の繰り返しにおいて、隠蔽パターン124aにおいて隠蔽される列と、隠蔽パターン124aによって隠蔽されない列とがX方向に沿って変わる。そのため、第1セル領域P1および第2セル領域P2の両方において、隠蔽パターン124aと第2画像パターン123bとの重なり合いによって、虹色を有した画像、言い換えればX方向に沿って色が次第に変わる画像を形成することができる。
【0260】
しかも、第1セル領域P1と第2セル領域P2との間では、X方向において、第2ドットD2の列、第3ドットD3の列、および、第4ドットD4の列の並ぶ順が異なる。そのため、第1セル領域P1に位置する印刷ドットと隠蔽パターン124aとによって形成される画像が有する虹色と、第2セル領域P2に位置する印刷ドットと隠蔽パターン124aとによって形成される画像が有する虹色とは互いに異なる色である。
【0261】
例えば、第1セル領域P1では、X方向において、X方向における幅が1/2である第3ドットD3の列、第4ドットD4の列、第2ドットの列、および、X方向における幅が1/2である第3ドットD3の列が記載の順に並び、これにより虹色を有する画像の一部が形成される。一方で、第2セル領域P2では、X方向において、X方向における幅が1/2である第4ドットD4の列、第2ドットD2の列、第3ドットD3の列、および、X方向における幅が1/2である第4ドットD4の列が記載の順に並び、これにより虹色を有する画像の一部が形成される。
【0262】
なお、第1セル領域P1と第2セル領域P2とに互いに異なる虹色を有した画像を形成させる上では、X方向において、印刷ドットの列が並ぶピッチに対する隠蔽部124a1が並ぶピッチのずれであるピッチ比が、25%以下であることが好ましい。ピッチ比が25%以下であれば、上述したように第1セル領域P1と第2セル領域P2との間で、画像における虹色を互いに異ならせることができる。
【0263】
しかも、ピッチ比が25%以下であれば、ピッチ比が25%よりも大きい構成と比べて、第1セル領域P1に対応する部分、および、第2セル領域P2に対応する部分に、虹色の画像において色が変わるピッチよりも色が変わるピッチの小さい虹色の縞が形成されにくい。こうした虹色の縞では、色が変わるピッチが小さいために、第1セル領域P1によって形成される画像と、第2セル領域P2によって形成される画像との違いが区別されにくい。結果として、関連画像11bが、背景画像11cとは区別して視認されたり、読み取り装置によって背景画像11cとは区別して読み取られたりされにくくなる。
【0264】
この点、ピッチ比が25%以下であれば、虹色の縞が形成されることが抑えられるため、第1セル領域P1によって形成される画像と、第2セル領域P2によって形成される画像とが区別されやすい。
【0265】
[第6の例]
図29および図30を参照して第6の例を説明する。第6の例は、第5の例と同様、隠蔽パターン124aと第2画像パターン123bとの重なりによって、第1セル領域P1に虹色を有した画像を形成させ、かつ、第2セル領域P2に虹色を有した画像を形成させる。一方で、第6の例において、各セル領域における印刷ドットの配列、および、投影された隠蔽部124a1の配列が第5の例とは異なっている。
【0266】
図29が示すように、第1セル単位PU1において、第2ドットD2は、(m+2,n)に位置する画像セルPと、(m+8,n+6)に位置する画像セルPとを結ぶ直線であって、X方向に対して45°で交差する直線上、すなわち延設方向DEに沿って延びる直線上に位置する7つの画像セルPの各々に位置している。また、第2ドットD2は、(m,n+7)に位置する画像セルPと、(m+1,n+8)に位置する画像セルPとを結ぶ直線であって、延設方向DEに沿って延びる直線上に位置する2つの画像セルPの各々に位置している。
【0267】
第3ドットD3は、(m+5,n)に位置する画像セルPと、(m+8,n+3)に位置する画像セルPとを結ぶ直線であって、延設方向DEに沿って延びる直線上に位置する4つの画像セルPの各々に位置している。また、第3ドットD3は、(m,n+4)に位置する画像セルPと、(m+4,n+8)に位置する画像セルPとを結ぶ直線であって、延設方向DEに沿って延びる直線上に位置する5つの画像セルPの各々に位置している。
【0268】
第4ドットD4は、(m,n+1)に位置する画像セルPと、(m+7,n+8)に位置する画像セルPとを結ぶ直線であって、延設方向DEに沿って延びる直線上に位置する8つの画像セルPの各々と、(m+8,n)に位置する画像セルPとに位置している。
【0269】
第1セル領域P1では、複数の第1セル単位PU1が隙間なく並ぶため、第1セル領域P1において、Y方向における各色の印刷ドットが並ぶ列のピッチは、画像セルPの9倍であり、X方向における各色の印刷ドットが並ぶ列のピッチは、画像セルPの9倍である。また、Y方向において互いに隣り合う印刷ドットの列のピッチは、画像セルPの3倍であり、X方向において互いに隣り合う印刷ドットの列のピッチは、画像セルPの3倍である。
【0270】
第2セル単位PU2において、第2ドットD2は、(k+6,l)に位置する画像セルPと、(k+8,l+2)に位置する画像セルPとを結ぶ直線であって、延設方向DEに沿って延びる直線上に位置する3つの画像セルPの各々に位置している。また、第2ドットD2は、(k,l+3)に位置する画像セルPと、(k+5,l+8)に位置する画像セルPとを結ぶ直線であって、延設方向DEに沿って延びる直線上に位置する6つの画像セルPの各々に位置している。
【0271】
第3ドットD3は、(k,l)に位置する画像セルPと、(k+8,l+8)に位置する画像セルPとを結ぶ直線であって、延設方向DEに沿って延びる直線上に位置する9つの画像セルPの各々に位置している。
【0272】
第4ドットD4は、(k+3,l)に位置する画像セルPと、(k+8,l+5)に位置する画像セルPとを結ぶ直線であって、延設方向DEに沿って延びる直線上に位置する6つの画像セルPの各々に位置している。また、第4ドットD4は、(k,l+6)に位置する画像セルPと、(k+2,l+8)に位置する画像セルPとを結ぶ直線であって、延設方向DEに沿って延びる直線上に位置する3つの画像セルPの各々に位置している。
【0273】
第2セル領域P2では、複数の第2セル単位PU2が隙間なく並ぶため、第1セル領域P1と同様、第2セル領域P2において、Y方向における各色の印刷ドットが並ぶ列のピッチは、画像セルPの9倍であり、X方向における各色の印刷ドットが並ぶ列のピッチは、画像セルの9倍である。また、Y方向において互いに隣り合う印刷ドットの列のピッチは、画像セルPの3倍であり、X方向において互いに隣り合う印刷ドットの列のピッチは、画像セルPの3倍である。ただし、第1セル単位PU1と第2セル単位PU2とを重ねたとき、第1セル単位PU1に位置する各色の印刷ドットの位置は、Y方向において画像セルPの4つ分だけ、第2セル単位PU2に位置する同じ色の印刷ドットの位置からずれている。
【0274】
隠蔽パターン124aは、延設方向DEに沿って延びる複数の隠蔽部124a1から構成されている。隠蔽パターン124aは、例えば、(i,j+8)に位置する画像セルPに位置する隠蔽部124a1、および、(i+8,j)に位置する画像セルPに位置する隠蔽部124a1を含んでいる。また、隠蔽パターン124aは、(i,j+4)に位置する画像セルPと、(i+4,j+8)に位置する画像セルPとを結ぶ直線上であって、延設方向DEに沿って延びる直線上に位置する5つの画像セルPに跨る隠蔽部124a1を含んでいる。
【0275】
また、隠蔽パターン124aは、(i,j)に位置する画像セルPと、(i+8,j+8)に位置する画像セルPとを結ぶ直線であって、延設方向DEに沿って延びる直線上に位置する9つの画像セルPに跨る隠蔽部124a1を含んでいる。また、隠蔽パターン124aは、(i+4,j)に位置する画像セルPと、(i+8,j+4)に位置する画像セルPとを結ぶ直線であって、延設方向DEに沿って延びる直線上に位置する5つの画像セルPに跨る隠蔽部124a1を含んでいる。
【0276】
なお、隠蔽パターン124aでは、(i,j+1)に位置する画像セルP、(i,j+4)に位置する画像セルP、(i+3,j+1)に位置する画像セルP、および、(i+3,j+4)に位置する画像セルPによって囲まれる領域に位置する複数の画像セルPが、第3セル単位PU3を構成している。隠蔽パターン124aでは、複数の第3セル単位PU3が、隙間なく並んでいる。
【0277】
そのため、隠蔽パターン124aでは、Y方向において互いに隣り合う隠蔽部124a1の並ぶピッチが、画像セルPの4倍であり、X方向において、互いに隣り合う隠蔽部124a1の並ぶピッチが、画像セルPの4倍である。つまり、隠蔽パターン124aでのX方向におけるピッチが、第2画像パターン123bでのX方向におけるピッチと異なり、かつ、隠蔽パターン124aでのY方向におけるピッチが、第2画像パターン123bでのY方向におけるピッチと異なっている。
【0278】
図30が示すように、延設方向DEと直交する方向が、配列方向DAである。第1セル領域P1および第2セル領域P2の両方では、第2ドットD2の列、第3ドットD3の列、および、第4ドットD4の列の繰り返しにおいて、隠蔽パターン124aによって隠蔽される列と、隠蔽パターン124aによって隠蔽されない列とが、配列方向DAに沿って変わる。そのため、第1セル領域P1および第2セル領域P2の両方において、隠蔽パターン124aと第2画像パターン123bとの重なり合いによって、虹色を有した画像、言い換えれば配列方向DAに沿って色が次第に変わる画像を形成することができる。
【0279】
例えば、第1セル領域P1では、配列方向DAにおいて、第2ドットD2の列、第4ドットD4の列、第2ドットD2の列、および、第3ドットD3の列が記載の順に並び、これにより虹色を有する画像の一部が形成される。一方で、第2セル領域P2では、配列方向DAにおいて、第4ドットD4の列、第2ドットD2の列、第4ドットD4の列、および、第2ドットD2の列が記載の順に並び、これにより虹色を有する画像の一部が形成される。
【0280】
[表示体の適用例]
図31および図32を参照して、表示体の適用例を説明する。
図31が示すように、パスポート150は、表示体10を備える冊子の一例である。パスポート150は、表示体10を支持する基材151を備えている。基材151は、例えば、1つに綴じられた複数の基材のなかの1つであり、紙によって形成されている。なお、基材151の形成材料は、各種の合成樹脂であってもよい。
【0281】
図32が示すように、IDカード160は表示体10を備えている。IDカード160は、表示体10を支持する基材161を備え、基材161は板状を有している。基材161の形成材料は、例えば各種の合成樹脂であるが、紙、金属、セラミック、および、ガラスなどであってもよい。IDカード160が表示する文字認証用画像12は、所有者に関する情報として個人番号を含み、関連画像11bは、所有者に関する情報として個人番号を含んでいる。
【0282】
なお、上述したパスポート150の基材151、および、IDカード160の基材161の各々には、表示体10が以下の方法で転写される。各基材には、表示体10が、ホットスタンプを用いて熱転写される。表示体10の熱転写には、ホットスタンプに代えて、熱ロールおよびサーマルヘッドのいずれかが用いられてもよい。
【0283】
各基材に対する表示体10の接着性を高めるために、各基材のうち、表示体10が転写される面には、アンカー層が形成されてもよい。また、表示体10のなかで、上述した基材121のうち接着層122とは反対側の面に接着層を形成してもよい。これにより、基材に対する表示体10の接着性を高めることができる。
【0284】
[実施例2]
個人認証媒体をパスポートに適用した実施例2を説明する。
まず、パスポート用の冊子として、表紙カバー、データページ、および、VISAページを備える冊子を準備した。データページは、パスポートの所有者に関する情報、および、顔画像が記録されるページであり、データページとして、紙製の基材と易接着層とから構成されるページを準備した。
【0285】
次いで、パスポートプリンタ(実施例1と同じ)を用いて、文字認証用画像を表示する第1画像パターンと、顔画像、背景画像、および、関連画像を表示するための第2画像パターンとを以下の方法によって、データページに形成した。
【0286】
まず、ベースフィルム、剥離層、および、受像層から構成される中間転写媒体を準備した。中間転写媒体において、剥離層は個人認証媒体における保護層としても機能するように構成し、受像層は個人認証媒体の接着層としても機能するように構成した。
【0287】
また、剥離層のうち、受像層に接する面に隠蔽パターンを形成した。なお、隠蔽パターンは、隠蔽パターンが以下の隠蔽部を有するように、蒸着によって形成したアルミニウム膜をエッチングすることによって形成した。すなわち、隠蔽パターンを、線状を有する複数の隠蔽部から構成した。各隠蔽部が、中間転写媒体の搬送方向と45°で交差する方向に沿って延び、かつ、搬送方向における隠蔽部の幅が200μmであり、かつ、搬送方向におけるピッチが400μmであるように、隠蔽パターンを形成した。なお、隠蔽パターン間の隙間は、隠蔽パターン上に形成した受像層によって埋められた。
【0288】
中間転写媒体のうち、隠蔽パターンと重なる部分に、インキリボンとサーマルヘッドとを用いて、以下のように第1画像パターンおよび第2画像パターンを形成した。すなわち、第1画像パターンを形成するための複数の印刷ドットをブラックのインキを用いて形成した。第1画像パターンは、所有者に関する情報として所有者の誕生日を表現する形状を含むように形成した。その後、第2画像パターンを形成するための印刷ドットとして、シアンの印刷ドット、マゼンタの印刷ドット、および、イエローの印刷ドットを順に形成した。
【0289】
なお、第2画像パターンにおける第1セル領域および第2セル領域には、図29を用いて先に説明したように印刷ドットを形成した。このとき、第2ドットをシアンの印刷ドットとし、第3ドットをマゼンタの印刷ドットとし、第4ドットをイエローの印刷ドットとした。また、各印刷ドットの径を80μmに設定し、搬送方向における画像セルのピッチを130μmに設定し、搬送方向におけるドットの列におけるピッチを390μmに設定した。また、第2画像パターンにおける第1領域に、所有者を特定するための情報である所有者の誕生日が埋め込まれるように第2画像パターンを形成した。
【0290】
そして、第1画像パターンおよび第2画像パターンが形成された中間転写媒体のうち、第1画像パターンおよび第2画像パターンを含む部分をデータページに重ね、ヒートローラを用いてこの部分をデータページに熱転写し、実施例2のパスポートを得た。
【0291】
実施例2のパスポートにおいて、データページが広がる平面と対向する平面視において、データページには、第2画像パターンにおける第1領域および第2領域に、それぞれ虹色を有した画像が形成されることが認められた。しかも、第1領域が形成した画像の虹色と、第2領域が形成する画像の虹色とが互いに異なるため、関連画像であって、所有者の誕生日を情報として含む画像を視認することが可能であることが認められた。
【0292】
以上説明したように、表示体、冊子、IDカード、表示体の製造方法、および、表示体の製造装置の第2実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(2‐1)第2画像パターン123bの一部を隠蔽パターン124aが隠蔽することによって第2画像パターン123bに埋め込まれた第2情報要素の判別が制限された状態が解除される。そのため、こうした第2情報要素が、第2画像パターン123bのみによって判別可能な状態である構成と比べて、表示体10の変造が抑えられる。
【0293】
(2‐2)金属膜のエッチングによって隠蔽パターン124aを形成することができる。
(2‐3)表示体10が回折部125aを備える分だけ、より表示体10の変造が難しくなる。ひいては、表示体10の変造がより抑えられる。
【0294】
(2‐4)回折部125aの射出する回折光によって形成される回折像が、第1画像パターン123aの表示する画像、および、隠蔽パターン124aと第2画像パターン123bとの重なりによって形成される関連画像11bと重なる。そのため、表示体10の意匠性が高まる。また、各画像と回折像との位置合わせが必要である分、表示体10の変造がより難しくなる。ひいては、表示体10の変造をより抑えることができる。
【0295】
(2‐5)第1画像パターン123aおよび第2画像パターン123bのうち、重畳ドットを含む画像パターンが、ドットオンドット方式とは異なる印刷方式で形成されたときに、画像パターンを構成する印刷ドットの形状によって、表示体10が変造されたか否かを判断することが可能である。
【0296】
(2‐6)複数のドットから構成される隠蔽パターン124aによれば、同一の形状を有した隠蔽部124a1を配列方向において等間隔で並べる。そのため、隠蔽部124a1がランダムな形状を有する構成や、隠蔽部124a1がランダムに並ぶ構成と比べて、隠蔽パターン124aを形成することが容易である。
【0297】
(2‐7)隠蔽パターン124aが万線パターンであるときには、線状を有した複数の隠蔽部124a1を配列方向において等間隔で並べる。そのため、隠蔽部124a1がランダムな形状を有する構成や、隠蔽部124a1がランダムに並ぶ構成と比べて、隠蔽パターン124aを形成することが容易である。
【0298】
[第2実施形態の変形例]
なお、上述した第2実施形態は、以下のように適宜変更して実施することができる。
・表示体10が有する回折部125aの数は、上述した2に限らず、3以上であってもよいし、1でもよい。また、1つの回折部125aは、表示体10の表面10aと対向する平面視において、2つの画像パターンの両方と重なってもよい。
【0299】
・回折部125aは、表面10aと対向する平面視において、各画像パターンの一部のみを覆ってもよいし、各画像パターンの全体を覆ってもよい。すなわち、回折部125aは、2つの画像パターンの少なくとも一方における少なくとも一方を覆う構成であってよい。
【0300】
・回折部125aは、表面10aと対向する平面視において、第1画像パターン123aおよび第2画像パターン123bの両方に重ならない位置に形成されていてもよい。こうした構成であっても、表示体10が回折部を備える分だけ表示体10の変造がより難しくはなる。
【0301】
・第2画像パターン123bにおける第1領域123R1および第2領域123R2において、印刷ドットは、上述した以外の繰り返しパターンによって、複数の画像セルPに位置していてもよい。
【0302】
また、隠蔽パターン124aは、万線パターンおよびドットパターンに限らず、例えば、少なくとも1つの屈曲部を有した折線状を有する複数の隠蔽部から構成されてもよいし、複数の屈曲部を有した波線状を有する複数の隠蔽部から構成されてもよい。要は、隠蔽パターンは、第2画像パターン123bの少なくとも一部と重なることによって第2画像パターン123bの一部を隠蔽し、これによって関連画像11bを形成することが可能に構成されていればよい。
【0303】
すなわち、隠蔽パターン124aと第2画像パターン123bとの組み合わせは、隠蔽パターン124aと第2画像パターン123bとの重なりによって、第2画像パターン123bに埋め込まれた第2情報要素の判別が、第2画像パターンの一部によって制限された状態を解除することが可能なパターンの組み合わせであればよい。
【0304】
・関連画像11bは、所有者に関する情報として、上述した文字による情報に限らず、例えば、所有者の出身国の国旗や、所有者の顔画像、および、所有者の顔画像など、所有者を特定するための情報を含む絵柄であってもよい。
【0305】
・第2画像パターン123bが表示する画像は、第1画像パターン123aの表示する文字認証用画像12とは異なる画像であれば、文字認証用画像12とは異なる画像は、上述した顔画像11aを含む画像に限らず、例えば、所有者の出身国の国旗など所有者を特定するための情報を含む絵柄であってもよい。
【0306】
・実施例2にて説明したように、隠蔽層124のうち、隠蔽パターン124aの間を埋める透過部124bが、各印刷ドットの受像層として機能し、かつ、基材との接着層として機能する接着層の一部によって形成されてもよい。こうした構成では、表示体10は、保護層、接着層、および、基材を備え、接着層のなかで、保護層と接する面である表面に隠蔽パターンが位置し、かつ、接着層のなかで基材と接する面である裏面に画像パターンが位置していればよい。
【0307】
・表示体10がパスポート150およびIDカード160に適用されるときには、表示体10が備える基材21によってパスポート150およびIDカード160に求められる機械的な強度を達成することが可能であれば、上述した基材151,161は省略されてもよい。
・表示体10は、パスポート150およびIDカード160だけでなく、これら以外の個人認証媒体に適用することも可能である。
【0308】
[第3実施形態]
図33から図36を参照して、表示体、冊子、IDカード、表示体の製造方法、および、表示体の製造装置の第3実施形態を説明する。第3実施形態の表示体は、第2実施形態の表示体と比べて、第2画像パターンと隠蔽パターンとが同一のシートに含まれない点が異なっている。そのため以下では、こうした相違点を詳しく説明し、第2実施形態と共通する構成には同じ符号を付すことによって、その詳しい説明を省略する。また、以下では、表示体の構成、および、表示体の適用例であるパスポートの構成を順に説明する。
【0309】
[表示体の構成]
図33および図34を参照して、表示体の構成を説明する。
図33が示すように、表示体170は、情報シート171と検証シート172とを備えている。情報シート171は第1シートの一例であり、検証シート172は第2シートの一例である。情報シート171は、観察対象である表面171Fを備え、表面171Fと対向する平面視において、文字認証用画像12、顔画像11a、および、背景画像11cを、表面171Fを通じて表示している。ただし、情報シート171が表示する背景画像11cは、第2画像パターン123bのみによって形成される画像であり、関連画像11bに含まれる第2情報要素が埋め込まれた潜像領域11c1を含む点で、第2実施形態の表示体10が表示する画像とは異なっている。
【0310】
検証シート172は、第2画像パターン123bの一部を隠蔽する隠蔽パターン172aを含み、情報シート171の表面171Fに重ねられる。隠蔽パターン172aは、少なくとも背景画像11cの潜像領域11c1の全体を覆う大きさを有していればよい。
【0311】
図34が示すように、情報シート171は、基材121、接着層122、および、保護層125を備え、情報シート171において、これらの層が記載の順に積み重なっている。また、情報シート171は、第1画像パターン123aおよび第2画像パターン123bを備えるシートである。情報シート171において、保護層125の表面125Fが情報シート171の表面171Fである。なお、保護層125の裏面125Rにおける回折部125aが割愛されている点で、保護層125は、第2実施形態の保護層125とは異なっている。
【0312】
第2画像パターン123bは、第2実施形態の第2画像パターン123bと同様、複数の印刷ドット123b1から構成されている。第2画像パターン123bは、検証シート172が情報シート171の表面171Fに重ねられたときに、隠蔽パターン172aとともに関連画像11bを形成する。言い換えれば、検証シート172の隠蔽パターン172aによって、第2画像パターン123bが含む第2情報要素の判別が制限された状態が解除される。
【0313】
検証シート172は、表面172Fと、表面172Fとは反対側の裏面172Rとを含み、裏面172Rは、検証シート172が情報シート171の表面171Fに重ねられるときに、情報シート171の表面172Fと対向する面である。
【0314】
検証シート172は、隠蔽パターン172aが第2画像パターン123bの一部を隠蔽するための第1位置と、隠蔽パターン172aによる隠蔽を解除するための第2位置との間で変位可能である。
【0315】
検証シート172は、隠蔽層181と回折層182とを備えている。隠蔽層181は、第2実施形態の隠蔽層124と同様、複数の隠蔽部172a1から構成される隠蔽パターン172aと透過部181bとを備えている。隠蔽層181のうち、回折層182に接する面とは反対側の面が、検証シート172の裏面172Rである。
【0316】
また、検証シート172は、回折部182aを備え、回折部182aは、隠蔽パターン172aよりも検証シート172の表面172Fからの距離が小さい部位に位置し、凹凸によって回折光を射出するように構成されている。回折部182aは、検証シート172が広がる平面と対向する平面視において、隠蔽パターン172aと重なっている。
【0317】
これにより、検証シート172を介して情報シート171が観察されるときに、関連画像11bと、回折部182aが射出する回折光によって形成される回折像とが観察される。また、検証シート172を介して情報シート171が観察されるときに、回折部182aの射出する回折光によって形成される回折像が、関連画像11bと重なるように視認されるため、検証シート172と情報シート171とにより形成される画像の意匠性が高まる。
【0318】
回折層182は、こうした回折部182aを含んでいる。回折層182において、隠蔽層181に接する面とは反対側の面が、検証シート172の表面172Fである。回折層182のなかで、隠蔽層181に接する面に回折部182aが位置している。検証シート172は、少なくとも隠蔽層181を備えていればよく、回折層182は割愛されてもよい。
【0319】
このように、第2実施形態において、第1画像パターン123a、第2画像パターン123bは、情報シート171に備えてられている。一方で、隠蔽パターン172aは、検証シート172に備えられている。なお、第2実施形態において先に説明した隠蔽パターン124aと第2画像パターン123bとの組み合わせにおける6つの例を、検証シート172の隠蔽パターン172aと、情報シート171の第2画像パターン123bとに適用することが可能である。
【0320】
[パスポートの構成]
図35および図36を参照して、パスポートの構成を説明する。
図35が示すように、パスポート190は、表示体170を備える冊子の一例である。パスポート190は、情報シート171を支持する基材191と検証シート172とを互いに隣り合うページとして有し、基材191と検証シート172とは1つの冊子を構成するように互いに綴じられている。
【0321】
検証シート172と情報シート171とが重ならない状態では、第2画像パターン123bによって形成される画像は、顔画像11aおよび背景画像11cのみである。
これに対して、図36が示すように、情報シート171に検証シート172が重ねられることによって、潜像領域11c1に隠蔽パターン172aが重なると、第2画像パターン123bのなかで、潜像領域11c1を構成する複数の印刷ドット123b1の一部が、隠蔽パターン172aによって隠蔽される。これにより、第2画像パターン123bと隠蔽パターン172aとが、関連画像11bを形成する。このように、情報シート171は、検証シート172が重ねられることによって、所有者に関する情報であって、文字認証用画像12に含まれる第2情報要素を含む関連画像11bを表示することが可能である。
【0322】
[実施例3]
個人認証媒体をパスポートに適用した実施例3を説明する。
まず、パスポート用の冊子として、上述した実施例2と同様の冊子を準備した。次いで、パスポートプリンタ(実施例2と同じ)を用いて、文字認証用画像を表示する第1画像パターンと、潜像領域を含む背景画像を表示するための第2画像パターンとを以下の方法によって、データページに形成した。
【0323】
まず、実施例2の中間転写媒体と同様の構成を有する中間転写媒体を準備し、インキリボンとサーマルヘッドとを用いて、以下のように第1画像パターンおよび第2画像パターンを形成した。すなわち、第1画像パターンを実施例2と同様の方法で形成した。その後、第2画像パターンを形成するための印刷ドットとして、シアンの印刷ドット、マゼンタの印刷ドット、および、イエローの印刷ドットを順に形成した。
【0324】
なお、第2画像パターンにおける第1セル領域および第2セル領域には、図29を用いて先に説明したように印刷ドットを形成した。このとき、第2ドットをシアンの印刷ドットおよびマゼンタの印刷ドットから構成される重畳ドットとした。第3ドットをマゼンタの印刷ドットとイエローの印刷ドットから構成される重畳ドットとした。第4ドットをイエローの印刷ドットとシアンの印刷ドットとから構成される重畳ドットとした。また、各重畳ドットの径を80μmに設定し、搬送方向における画像セルのピッチを130μmに設定し、搬送方向におけるドットの列におけるピッチを390μmに設定した。また、第2セル領域を、所有者の誕生日を表現する形状を有するように形成した。
【0325】
そして、第1画像パターンおよび第2画像パターンが形成された中間転写媒体のうち、第1画像パターンおよび第2画像パターンを含む部分をデータページに重ね、ヒートローラを用いてこの部分をデータページに熱転写した。
【0326】
次いで、検証シートを形成するために、アルミニウムの蒸着膜を備える矩形状の樹脂シートを準備した。アルミニウムの蒸着膜をレーザーマーカー(キーエンス(株)製、MD-V9600A)によってエッチングすることによって、線状を有する複数の隠蔽部から構成される隠蔽パターンを形成した。各隠蔽部は、樹脂シートにおいて互いに直交する各辺に対して45°で交差する方向に沿って延び、かつ、隠蔽部の幅が200μmであり、かつ、ピッチが400μmであるように、隠蔽パターンを形成した。
【0327】
隠蔽パターンが、少なくとも背景画像の潜像領域に重なるように、検証シートとデータページとを重ねた状態で、検証シートとデータページとを綴じることによって、実施例3のパスポートを得た。データページを単独で観察したところ、潜像領域を含む背景画像の全体が、灰色を有することが認められた。これに対して、データページに検証シートを重ねた状態で、データページの表面と直交する方向からデータページを観察したところ、実施例2と同様の虹色を有する関連画像および背景画像が形成されることが認められた。
【0328】
また、データページをカラー複写機で複製することによって複製ページを得た。そして、複製ページに検証シートを重ねた状態で、複製ページの表面と直交する方向から複製ページを観察したところ、虹色を有する関連画像および背景画像が形成されないことが認められた。また、ルーペを用いて複製ページを観察したところ、シアンの印刷ドット、マゼンタの印刷ドット、および、イエローの印刷ドットが、互いに重なることなく所定の角度を形成するように配置されていることが認められた。このように、複製ページがデータページの複製品であることを、検証シートを重ねた状態での目視による観察と、ルーペにより拡大した状態での観察との両方において確認できることが認められた。
【0329】
以上説明したように、表示体、冊子、IDカード、表示体の製造方法、および、表示装置の製造装置の第3実施形態によれば、上述した(2‐1)から(2‐7)の効果に加えて、以下に記載の効果を得ることができる。
【0330】
(3‐1)検証シート172の位置を2つの位置の間で変えることによって、第2画像パターン123bに埋め込まれた第2情報要素の判別が制限された状態と、第2情報要素の判別が制限された状態との間で、第2画像パターン123bに埋め込まれた第2情報要素の状態を変えることができる。
【0331】
(3‐2)検証シート172を介して情報シート171が観察されるときに、関連画像11bと、回折部182aが射出する回折光によって形成される回折像とが観察される。
(3‐3)検証シート172を介して情報シート171が観察されるときに、回折部182aの射出する回折光によって形成される回折像が、関連画像11bと重なるように視認されるため、検証シート172と情報シート171とにより形成される画像の意匠性が高まる。
【0332】
[第3実施形態の変形例]
なお、上述した第3実施形態は以下のように適宜変更して実施することができる。
・表示体170がパスポート190に適用されるとき、情報シート171と検証シート172とは互いに綴じられていなくてもよい。すなわち、パスポートにおいて、情報シート171と検証シート172とは互いから離れたシートとして具体化されてもよい。
・表示体170は、パスポート190だけでなく、上述したIDカードに適用することが可能である。また、IDカード以外の個人認証媒体に適用することも可能である。
【0333】
[第4実施形態]
図1図2、および、図37から図44を参照して、表示体、冊子、IDカード、表示体の製造方法、および、表示体の製造装置の第4実施形態を説明する。以下では、表示体の製造に用いることが可能な中間転写箔の構成、表示体の製造方法、および、表示体の作用を順に説明する。
【0334】
[中間転写箔の構成]
本実施形態の表示体には、図1および図2を参照して先に説明した構成を採用することが可能である。また、本実施形態の表示体は、図37を参照して以下に説明する中間転写箔を用いて製造することもできる。
【0335】
図37が示すように、中間転写箔231は、基材241、保護層242、レリーフ層243、第1反射層244、マスク層245、第2反射層246、および、受像層247を備えている。中間転写箔231において、基材241上に、保護層242が形成され、保護層242上にレリーフ層243が形成されている。レリーフ層243は、保護層242に接する面とは反対側の面に凹凸面であるレリーフ面を含んでいる。
【0336】
第1反射層244は所定のパターンを有し、レリーフ面の一部を覆っている。マスク層245は、第1反射層244上に位置し、第1反射層244と同一のパターンを有している。マスク層245は、第1反射層244をエッチングによってパターニングするためのエッチングマスクである。第2反射層246は誘電体から形成された透明な薄膜であり、レリーフ層243の全体を覆っている。すなわち、第2反射層246は、第1反射層244およびマスク層245の全体を覆っている。受像層247は、第2反射層246の全体を覆っている。
【0337】
保護層242は、中間転写箔231が加熱されたときに、中間転写箔231の基材241に対して剥離性や切れ性を有することが好ましい。また、保護層242は、中間転写箔231において基材241以外の層が上述した基材21に転写された後、保護層24によって覆われた層が、化学的に損傷することや、機械的に損傷することを抑える機能を有することが好ましい。
【0338】
保護層242の形成材料には、例えば、熱可塑性アクリル樹脂、メラミン樹脂、塩化ゴム系樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂、および、塩素化ポリプロピレン樹脂などを挙げることができる。上述した樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種類以上の混合物として用いられてもよい。また、保護層242は、単層構造を有してもよいし、多層構造を有してもよい。
【0339】
保護層242を形成する樹脂には、天然ワックス、合成ワックス、および、耐摩擦剤、および、無機物などが添加されてもよい。天然ワックスには、フッ素樹脂パウダー、ポリエチレンパウダー、動物系ワックス、植物系ワックス、鉱物系ワックス、および、石油系ワックスなどを挙げることができる。合成ワックスには、合成炭化水素系ワックス、脂肪族アルコールと酸系ワックス、アミンおよびアマイド系ワックス、塩素化炭化水素系ワックス、合成動物ロウ系ワックス、および、アルファーオレフィン系ワックスなどを挙げることができる。耐摩擦剤には、ステアリン酸亜鉛などの高級脂肪酸の金属塩などを挙げることができる。
【0340】
レリーフ層243の形成材料には、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、および、放射線硬化樹脂などを用いることができる。熱可塑性樹脂には、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、および、ビニル系樹脂などや、これらの混合物、または、これらの共重合体などを用いることができる。
【0341】
熱硬化性樹脂には、例えば、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂などや、これらの混合物、または、これらの共重合物を用いることができる。ウレタン系樹脂には、ポリオール系樹脂とイソシアネート化合物との架橋反応によって形成される樹脂を用いることができる。ポリオール系樹脂には、アクリル系ポリオール樹脂、および、ポリエステル系ポリオール樹脂などを挙げることができる。
【0342】
放射線硬化樹脂は、重合性化合物と開始剤とを含むことができる。重合性化合物には、例えば、光ラジカル重合が可能な化合物を用いることができる。具体的には、光ラジカル重合が可能な化合物として、エチレン性不飽和結合またはエチレン性不飽和基を有したモノマー、オリゴマー、または、ポリマーを用いることができる。あるいは、光ラジカル重合が可能な化合物として、以下に記載するモノマー、オリゴマー、および、ポリマーを用いることができる。モノマーには、1,6‐ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエイスリトールペンタアクリレート、および、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどを挙げることができる。オリゴマーには、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、および、ポリエステルアクリレートなどを挙げることができる。ポリマーには、ウレタン変性アクリル樹脂、および、エポキシ変性アクリル樹脂などを挙げることができる。
【0343】
重合性化合物として光ラジカル重合が可能な化合物を使用する場合、開始剤には、光ラジカル重合開始剤を用いることができる。光ラジカル重合開始剤には、例えば、ベンゾイン系化合物、アントラキノン系化合物、フェニルケトン系化合物、ベンジルジメチルケタール、チオキサントン、アシルホスフィンオキサイド、および、ミヒラーズケトンなどなどを用いることができる。ベンゾイン系化合物には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、および、ベンゾインエチルエーテルなどを挙げることができる。アントラキノン系化合物には、アントラキノン、および、メチルアントラキノンなどを挙げることができる。フェニルケトン系化合物には、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α‐アミノアセトフェノン、および、2‐メチル‐1‐(4‐メチルチオフェニル)‐2‐モリホリノプロパン‐1‐オンなどを挙げることができる。
【0344】
重合性化合物には、光カチオン重合が可能な化合物を用いてもよい。光カチオン重合が可能な化合物には、例えば、エポキシ基を備えたモノマー、オリゴマー、または、ポリマー、キセタン骨格含有化合物、および、ビニルエーテル類などを用いることができる。
【0345】
重合性化合物として光カチオン重合が可能な化合物を用いる場合、開始剤には、光カチオン重合開始剤を用いる。光カチオン重合開始剤には、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、および、混合配位子金属塩を用いることができる。
【0346】
重合性化合物には、光ラジカル重合が可能な化合物と、光カチオン重合が可能な化合物との混合物を用いてもよい。この場合、開始剤には、例えば、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤との混合物を用いる。または、この場合、光ラジカル重合および光カチオン重合の双方の開始剤として機能し得る重合開始剤を用いてもよい。このような開始剤には、例えば、芳香族ヨードニウム塩、および、芳香族スルホニウム塩などを用いることができる。
【0347】
レリーフ層243の形成材料は、重合開始剤を含んでいなくてもよい。この場合には、レリーフ層243の形成材料に電子線を照射することより、重合性化合物の重合反応を引き起こす方法を用いることができる。
【0348】
放射線硬化樹脂は、増感色素、染料、顔料、重合禁止剤、レベリング剤、消泡剤、タレ止め剤、付着向上剤、塗面改質剤、可塑剤、含窒素化合物、離型剤、および、エポキシ樹脂などの添加剤などの少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0349】
放射線硬化性樹脂の成形性を向上させる目的で、放射線硬化樹脂は、非反応性の樹脂を更に含んでもよい。非反応性の樹脂には、例えば、熱可塑性樹脂、および、熱硬化性樹脂などを単独または混合物として用いることができる。
【0350】
第1反射層244には、金属薄膜、高輝度インキ、誘電体から形成された透明薄膜などを用いることができる。金属薄膜の形成材料には、Al、Sn、Cu、Au、Ag、Cr、および、Feなどの金属を挙げることができる。高輝度インキは、上述した金属薄膜を鱗片状にした後に、インキ化されたインキである。誘電体には、レリーフ層243の屈折率とは異なる屈折率を有する透明な誘電体を用いることができる。誘電体には、例えば、Sb、Fe、TiO、CdS、CeO、ZnS、PbCl、CdO、SbO、WO、SiO、Si、In、PbO、Ta、ZnO、Cd、および、Alなどの無機材料を挙げることができる。また、第1反射層244は、無機材料から形成された複数の薄膜を組み合わせた多層構造を有してもよい。
【0351】
第1反射層244が、第1反射層244よりも下層に形成された画像を隠蔽することが可能である場合には、言い換えれば、第1反射層244が遮光性を有する場合には、第1反射層244は、単独で隠蔽層23における隠蔽パターン23aとしても機能することができる。第1反射層244が光透過性を有する場合には、第2反射層246上に位置するマスク層245が、マスク層245よりも下層に形成された画像を隠蔽することが可能であるため、第1反射層244とマスク層245との組み合わせが、隠蔽パターン23aとして機能することができる。
【0352】
金属薄膜から形成された反射層のパターニングは、例えば、以下の手順で行われる。まず、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、および、放射線硬化樹脂などを用いて、レリーフ層を巻取り可能な基材フィルム上に形成する。その後、レリーフ層に対し、凹凸パターンを有するニッケル製のプレス版を加熱押圧する。これによって、レリーフ層の1つの面にレリーフ面を成形する。次いで、レリーフ層のうち、レリーフ面を含む面の全体に、第1反射層244を形成するための金属薄膜を形成する。金属薄膜を形成する方法には、真空蒸着法、スパッタリング法、および、イオンプレーティング法などを用いることができる。
【0353】
その後、金属薄膜上に任意のパターンを有したマスク層245を印刷する。マスク層を印刷する方法には、オフセット印刷法、グラビア印刷法、および、スクリーン印刷法などを用いることができる。次いで、マスク層245を用いて金属薄膜をエッチングする。これにより、金属薄膜のなかで、マスク層245が位置する部分をレリーフ層243上に残す一方で、それ以外の部分をレリーフ層243から除去することができる。
【0354】
第1反射層244を形成する方法には、以下の方法を用いることもできる。すなわち、例えば、レリーフ層のなかで、金属薄膜を除去したい部分に予め水溶性インキを塗布した後、水溶性インキおよび金属薄膜を水洗することにより、水溶性インキとともに、金属薄膜の一部を除去することができる。また、レリーフ層243が備える特殊なレリーフ構造と、金属薄膜上に位置する誘電体層との組合せなどによって、金属薄膜をパターン状にエッチングすることを可能にする方法などを用いることができる。
【0355】
受像層247の形成材料には、図1を参照して先に説明した接着部22cと同等の材料を用いることができる。
表示体10は、上述した基材21から保護層24までの各層の間に、印刷層、中間層、および、接着層などの機能層を備えてもよい。表示体10が印刷層を備える場合には、印刷層を形成する方法として、各種の印刷法を用いることができる。印刷法には、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、および、フレキソ印刷法などを用いることができる。
【0356】
表示体10が中間層や接着層などを備える場合は、中間層および接着層を形成する方法として、コーティング法や、および、転写法などを用いることができる。コーティング法には、例えば、グラビアコート法、リバースグラビアコート法、ロールコート法、ダイコート法、バーコート法、および、リップコート法などを用いることができる。
【0357】
転写法を用いる場合には、機能層を支持する支持体に機能層を塗布した後、熱や圧力などを機能層に加えることによって、機能層を被転写体に接着した後、支持体を機能層から剥離する。支持体には、樹脂フィルムを用いることができる。樹脂フィルムの形成材料には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、および、ポリカーボネートなどを用いることができる。
【0358】
[表示体の製造方法]
図38から図42を参照して、表示体の製造方法を説明する。以下では、本実施形態における表示体の製造方法を説明する前に、表示体の製造方法における問題点について説明する。
【0359】
図38は、隠蔽パターン223aの一例における平面構造を示している。
図38が示すように、隠蔽パターン223aは、例えば、1つの方向に沿って延びる複数の隠蔽部を含み、隠蔽パターン223aにおいて、複数の隠蔽パターン223aは、各隠蔽パターン223aが延びる方向と直交する方向に沿って等間隔で並んでいる。上述したように、中間転写箔231には、隠蔽パターン223aが予め形成されている。そして、中間転写箔231の受像層247には、隠蔽パターン23aに対する位置合わせが行われながら、予め設定された想定ピッチで、複数の印刷ドット22a1が形成される。これにより、中間転写箔231に印刷パターン22aが形成される。
【0360】
図39は、図38において破線で囲まれた領域Dを拡大して示している。
図39が示すように、隠蔽パターン223aは、万線パターン250で構成されている。万線パターン250は複数の隠蔽部251を含んでいる。各隠蔽部251は、複数の画素251aの連なりである。複数の隠蔽部251において、第1の隠蔽部251を構成する1つの画素251a1と、第1の隠蔽部251と隣り合う第2の隠蔽部251を構成する1つの画素251a2との間の距離が、万線パターン250のピッチaである。第1の隠蔽部251と第2の隠蔽部251とが並ぶ方向において、各画素251aは幅bを有する。
【0361】
ここで、上述したように、中間転写箔231が備える隠蔽パターン223aは、図37を参照して先に説明した第1反射層244によって構成することができる。万線状の第1反射層244は、上述したように、レリーフ層243の全面に、真空蒸着法、スパッタリング法、および、イオンプレーティング法などによって、金属薄膜を形成した後に、マスク層245を所望のパターン状に形成し、次いで、マスク層245を用いて金属薄膜をエッチングすることによって形成される。
【0362】
このような方法で第1反射層244を形成する場合には、第1反射層244を形成するための各工程において、基材の伸縮などが生じる。基材の伸縮などは、巻取り可能な基材に加わるテンション、マスク層245の印刷時や金属薄膜のエッチング時に基材に加わる熱、受像層247への加工時に記載に加わるテンション、および、乾燥オーブンによる加熱などによって生じる。そのため、マスク層245を印刷するための印刷版において、万線パターン250のピッチaや幅bが精度よく設計されている場合であっても、中間転写箔231に備える万線パターン250におけるピッチaや幅bは、設計値と異なる場合がある。
【0363】
図40は、上述した第1印刷パターン22aの一例における平面構造の一部を示している。
図40が示すように、第1印刷パターン22aは、複数の印刷ドット22a1を含んでいる。上述したように、各印刷ドット22a1は、サーマルヘッドによって転写リボンが加熱されることにより、中間転写箔231に形成される。第1印刷パターン22aにおいて、サーマルヘッド33の主走査方向DMにおける印刷ドット22a1の間の距離が第1想定ピッチcであり、サーマルヘッド33の副走査方向DSにおける印刷ドット22a1の間の距離が第2想定ピッチdである。
【0364】
図41は、サーマルヘッド33の主走査方向DMおよび副走査方向DSと、中間転写箔231の搬送方向との関係を模式的に示している。
図41が示すように、サーマルヘッド33は、中間転写箔231の搬送方向に対して、垂直な方向に沿って延びるように配置されている。サーマルヘッド33の走査方向において、中間転写箔231の搬送方向と直交する方向が主走査方向DMであり、中間転写箔231の搬送方向と平行な方向が副走査方向DSである。サーマルヘッド33は、一列に並ぶ複数の発熱体を備え、複数の発熱体が並ぶ方向は、サーマルヘッド33が延びる方向と平行である。言い換えれば、複数の発熱体は、サーマルヘッド33の主走査方向DMに沿って並んでいる。
【0365】
そのため、サーマルヘッド33の主走査方向DMにおける印刷ドット22a1の間隔は、サーマルヘッド33における発熱体の間隔によって決まる。一方で、サーマルヘッド33の副走査方向DSにおける印刷ドット22a1の間隔は、中間転写箔231の送り量によって制御することができる。
【0366】
ここで、上述したように、サーマルヘッド33の主走査方向DMにおける印刷ドット22a1の間隔が第1想定ピッチcであり、サーマルヘッド33の副走査方向DSにおける印刷ドット22a1の間隔が想定ピッチdである。
【0367】
上述した万線パターン250を構成する各隠蔽部251は、例えば、中間転写箔231の搬送方向、すなわち副走査方向DSに沿って延び、かつ、複数の隠蔽部251は主走査方向DMに沿ってピッチaで並ぶことができる。こうした万線パターン250において、各隠蔽部251を構成する画素251aのピッチaを、第1想定ピッチcと同じピッチで常に形成することが可能であれば、ピッチaと第1想定ピッチcとは一定の間隔に保たれる。そのため、こうした表示体によれば、極めて安定した関連画像11b(モアレ画像)を得ることができる。言い換えれば、複数の表示体間において、各表示体が表示する関連画像11bを互いに等しくすることができる。
【0368】
これに対して、万線パターン250を構成する隠蔽部251は、例えば、中間転写箔231の搬送方向に対して垂直な方向、すなわち主走査方向DMに沿って延び、かつ、複数の隠蔽部251は副走査方向DSに沿ってピッチaで並ぶことができる。こうした万線パターン250において、各隠蔽部251を構成する画素251a間のピッチaを、第2想定ピッチdと同じピッチで常に形成することが可能であれば、ピッチaと第2想定ピッチdとは一定の間隔に保たれる。そのため、こうした表示体によれば、極めて安定した関連画像11bを得ることができる。言い換えれば、複数の表示体間において、各表示体が表示する関連画像11bを互いに等しくすることができる。
【0369】
しかしながら、上述したように、中間転写箔231が備える基材には、各工程において基材に加わるテンションや熱により伸縮などが生じる。また、こうした伸縮などは、各工程における条件のばらつきなどにより変動する。そのため、万線パターン250のピッチaが変動する可能性が高い。言い換えれば、万線パターン250のピッチaを完全に安定化させる、言い換えれば、完全に等しくすることは難しい。
【0370】
本願発明者らは、こうした万線パターン250のピッチaにおける変動について鋭意検討するなかで、以下のことを見出した。すなわち、本願発明者らは、ピッチaを、複数の印刷ドット22a1の想定ピッチc,dに対して100.5%以上102%以下の範囲に設定することを見出した。これにより、表示体の製造時において、万線パターン250のピッチaが多少変動しても、複数の表示体間において、関連画像11bが互いに著しく異なることが抑えられる。
【0371】
一方で、印刷ドット22a1の第2想定ピッチdは、上述したように、サーマルヘッド33を用いて中間転写箔231に印刷ドット22a1を形成するときの中間転写箔231の送り量によって制御することができる。しかしながら、中間転写装置30間での性能のばらつきや、中間転写箔231間での特性のばらつきなどによって、中間転写箔231の送り量にばらつきが生じる可能性もある。また、中間転写箔231が中間転写装置30内を搬送されるときのスキュー、すなわち斜行などにより、サーマルヘッド33による印刷ドット22a1の想定ピッチc,dが想定されたピッチであるように、印刷ドット22a1が受像層247上に形成されるとは限らない。
【0372】
本願発明者らは、こうした印刷ドット22a1のピッチにおけるばらつきについて鋭意検討するなかで、以下のことを見出した。すなわち、搬送方向を基準とし、搬送方向と万線パターン250の延びる方向とが形成する角度の設計値をX°に設定するとき、万線パターン250の延びる方向と搬送方向とが形成する角度が、(X-2°)以上(X-0.5°)以下の範囲であることにより、印刷ドット22a1の想定ピッチc,dにずれが生じたとしても、複数の表示体間において関連画像11bが著しく異なることが抑えられることを見出した。
【0373】
図42は、本実施形態の万線パターンの一例における平面構造を示している。
図42が示すように、万線パターン260は、複数の画素261aの連なりである隠蔽部261を複数備えている。万線パターン260のピッチaは、例えば中間転写箔231の搬送方向に沿って設定されている。すなわち、万線パターン260が備える各隠蔽部261は、中間転写箔231の搬送方向に対して傾いている。図42において示される万線パターン260では、搬送方向と万線パターン260、すなわち各隠蔽部261が延びる方向とが形成する角度の設計値は、45°に設定されている。なお、この場合には、印刷ドット22a1が並ぶ方向は、万線パターン260が延びる方向と平行に設定されている。すなわち、搬送方向と印刷ドット22a1が並ぶ方向とが形成する角度の設計値は45°である。そのため、上述したように、搬送方向に対する各隠蔽部261の傾き、言い換えれば、搬送方向と、隠蔽部261が延びる方向とが形成する角度は、(45-2°)以上(45-0.5°)以下、すなわち、43°以上44.5°以下であることが好ましい。なお、各隠蔽部261が搬送方向に対して傾く場合でも、搬送方向において互いに隣り合う隠蔽部261間の距離がピッチaである。
【0374】
[表示体の作用]
図43および図44を参照して、表示体の作用を説明する。
図43は、万線パターンと印刷ドットとの重ね合わせによって形成される関連画像11bの一例である。図43が示す関連画像11bが形成される場合には、例えば、万線パターンが主走査方向DMに沿って延び、かつ、複数の万線パターンがピッチaで等間隔で並び、かつ、ピッチaが印刷ドットの第1想定ピッチcと同一の幅に設定されている。あるいは、万線パターンが副走査方向DSに沿って延び、かつ、複数の万線パターンがピッチaで等間隔で並び、かつ、ピッチaが印刷ドットの第2想定ピッチdと同一の幅に設定されている。
【0375】
図44は、こうした表示体において、万線パターンのピッチaが上述した要因によって変動した場合に、表示体によって表示される関連画像11bを示している。このように、万線パターン250のピッチaが変動することに起因して、複数の表示体間において、各表示体が表示する関連画像11bが著しく異なってしまう。なお、個人認証媒体などのように、極めて高いセキュリティ性が要求される表示体では、複数の表示体間において、認証用画像である関連画像11bが著しく異なることは、表示体の判定者の判断を誤らせる可能性がある。そのため、複数の表示体間において、関連画像11bが互いに異なることは望ましいとは言えない。
【0376】
これに対して、本実施形態の万線パターン260、すなわち、以下の2つを満たす万線パターン260によれば、中間転写箔231において万線パターン260のピッチaにばらつきが生じた場合や、印刷ドット22a1の想定ピッチc,dに多少のばらつきが生じた場合であっても、表示体は、安定した関連画像11bを表示することができる。すなわち、複数の表示体において、各表示体が表示する関連画像11bを、例えば図43が示す関連画像11bにほぼ等しくすることや、図44が示す関連画像11bにほぼ等しくすることができる。
【0377】
(A)ピッチaが想定ピッチc,dの100.5%以上102%以下である。
(B)搬送方向と、万線パターンとが形成する角度の設計値をX°に設定するとき、万線パターンと搬送方向とが形成する角度が、(X-2°)以上(X-0.5°)以下である。
【0378】
また、万線パターンのピッチaが上記(A)の範囲を満たさない場合や、中間転写箔の表面における特定方向に対する万線パターンの角度が上記(B)を満たさない場合には、これらの両方を満たす表示体が表示する関連画像と同様の関連画像を表示体が表示することは難しい。さらには、印刷パターンを形成するときに、印刷ドットが想定ピッチc,dで出力されない場合にも、想定ピッチc,dで形成された印刷ドットを備える表示体が表示する関連画像と同様の関連画像を表示体が表示することは難しい。そのため、表示体の変造が容易に判断でき、結果として、表示体の変造を抑えることが可能である。
【0379】
[第4実施形態の変形例]
なお、上述した第4実施形態は、以下のように適宜変更して実施することができる。
・万線パターンは、表示体の表面と対向する平面視において、顔画像11aと重なっていてもよい。この場合には、表示体の表面と対向する平面視において、背景画像11cと重なる万線パターンの形状と、顔画像11aと重なる万線パターンの形状とが、互いに異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0380】
10,60,170…表示体、10a,24a,122F,125F,171F,172F…表面、11,61…顔認証用画像、11a,61a…顔画像、11b,61b…関連画像、11c,51a,61c…背景画像、11c1…潜像領域、12…文字認証用画像、21,121,151,161,191,241…基材、22…パターン層、22a…第1印刷パターン、22a1,22b1,123a1,123b1…印刷ドット、22b…第2印刷パターン、22c…接着部、23,124,181…隠蔽層、23a,124a,172a,223a…隠蔽パターン、23a1,124a1,172a1,251,261…隠蔽部、23b,124b,181b…透過部、24,125,242…保護層、30…中間転写装置、31…インキリボン搬送部、31a,32a…送り出しローラ、31b,32b…巻き取りローラ、31c,32d…搬送ローラ、32…転写箔搬送部、32c…プラテンローラ、33…サーマルヘッド、34…ステージ、35…ヒートローラ、36…制御部、36a…情報生成部、36b…形成制御部、36c…リボン搬送制御部、36d…転写箔搬送制御部、36e…転写制御部、36f…記憶部、41…インキリボン、42,231…中間転写箔、51…印刷画像、122…接着層、123a…第1画像パターン、123b…第2画像パターン、123R1…第1領域、123R2…第2領域、125a,182a…回折部、125R,172R…裏面、150,190…パスポート、160…IDカード、171…情報シート、172…検証シート、182…回折層、243…レリーフ層、244…第1反射層、245…マスク層、246…第2反射層、247…受像層、250,260…万線パターン、251a,251a1,251a2,261a…画素、a11…隠蔽要素、P…画像セル、D1…第1ドット、D2…第2ドット、D3…第3ドット、D4…第4ドット、P1…第1セル領域、P2…第2セル領域、DG2…第2ドット群、DG3…第3ドット群、PU1…第1セル単位、PU2…第2セル単位、PU3…第3セル単位。
図1
図2
図3
図4
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