(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】コンベヤベルト用ゴム組成物及びコンベヤベルト
(51)【国際特許分類】
C08L 7/00 20060101AFI20220531BHJP
B32B 25/04 20060101ALI20220531BHJP
B65G 15/34 20060101ALI20220531BHJP
C08K 3/011 20180101ALI20220531BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20220531BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20220531BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
C08L7/00
B32B25/04
B65G15/34
C08K3/011
C08K3/04
C08K3/06
C08L9/00
(21)【出願番号】P 2019505722
(86)(22)【出願日】2017-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2017047024
(87)【国際公開番号】W WO2018168156
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2020-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2017048763
(32)【優先日】2017-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】鄒 徳慶
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-089046(JP,A)
【文献】特開2004-018752(JP,A)
【文献】特開2015-208843(JP,A)
【文献】特開2015-224259(JP,A)
【文献】特開2013-133190(JP,A)
【文献】特開2010-095584(JP,A)
【文献】特開2010-013262(JP,A)
【文献】特開2003-105136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B32B 25/04
B65G 15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム及びブタジエンゴムを含むゴム成分と、
窒素吸着比表面積が115~160m
2
/gであり、ジブチルフタレート吸油量が115~140ml/100gであるカーボンブラックと、
硫黄と、
加硫促進剤とを含有し、
前記天然ゴムの含有量が、前記ゴム成分の全量に対して、80質量%超95質量%以下であり、
前記ブタジエンゴムの含有量が、前記ゴム成分の全量に対して、5質量%以上20質量%未満であり、
前記カーボンブラックの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、45~100質量部であり、
前記硫黄の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、0.50~2.00質量部であり、
前記加硫促進剤の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、1.50質量部以下であり、
前記硫黄に対する前記加硫促進剤の質量比が、0.50~3.00である、コンベヤベルト用ゴム組成物。
【請求項2】
前記カーボンブラックの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、50質量部超80質量部以下である、請求項
1に記載のコンベアベルト用ゴム組成物。
【請求項3】
前記硫黄の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、0.50質量部以上2.00質量部未満である、請求項1
又は2に記載のコンベヤベルト用ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載のコンベヤベルト用ゴム組成物で形成された上面カバーゴム層と、
補強層と、
下面カバーゴム層とを有する、コンベヤベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンベヤベルト用ゴム組成物及びコンベヤベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンベヤベルトには、環境に配慮する観点から長寿命であることが要求されている。このような問題に対して、従来、ベルトコンベヤの耐摩耗寿命の向上を目的とするゴム組成物が提案されている。例えば、特許文献1には、ゴム成分として、ネオジウム系触媒により合成したポリブタジエンゴムを含むことを特徴とするベルトコンベアのベルト用ゴム組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようななか、本発明者は特許文献1を参考にしてゴム組成物を調製しこれを評価したところ、このようなゴム組成物の耐摩耗性及び/又は耐衝撃性が悪い場合があることを知見した。
そこで、本発明は、耐摩耗性と耐衝撃性に優れるコンベヤベルト用ゴム組成物及びコンベヤベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、天然ゴムを所定の量で含むゴム成分(更にブタジエンゴムを所定の範囲で含んでもよい。)と、カーボンブラックと、硫黄と、加硫促進剤とをそれぞれ特定量で含有し、硫黄に対する加硫促進剤の質量比が所定の範囲であることによって、所望の効果が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明は上記知見等に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。
【0006】
1. 天然ゴムを80~100質量%、ブタジエンゴムを0~20質量%含むゴム成分と、
カーボンブラックと、
硫黄と、
加硫促進剤とを含有し、
上記カーボンブラックの含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、45~100質量部であり、
上記硫黄の含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、0.50~2.00質量部であり、
上記加硫促進剤の含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、1.50質量部以下であり、
上記硫黄に対する上記加硫促進剤の質量比が、0.50~3.00である、コンベヤベルト用ゴム組成物。
2. 上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積が、115~160m2/gであり、
上記カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量が、115~140ml/100gである、上記1に記載のコンベヤベルト用ゴム組成物。
3. 上記ゴム成分が天然ゴム及びブタジエンゴムを含み、
上記天然ゴムの含有量が、上記ゴム成分の全量に対して、80質量%超95質量%以下であり、
上記ブタジエンゴムの含有量が、上記ゴム成分の全量に対して、5質量%以上20質量%未満である、上記1又は2に記載のコンベヤベルト用ゴム組成物。
4. 上記カーボンブラックの含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、50質量部超80質量部以下である、上記1~3のいずれかに記載のコンベアベルト用ゴム組成物。
5. 上記硫黄の含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、0.50質量部以上2.00質量部未満である、上記1~4のいずれかに記載のコンベヤベルト用ゴム組成物。
6. 上記1~5のいずれかに記載のコンベヤベルト用ゴム組成物で形成された上面カバーゴム層と、
補強層と、
下面カバーゴム層とを有する、コンベヤベルト。
【発明の効果】
【0007】
本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物及び本発明のコンベヤベルトは、耐摩耗性及び耐衝撃性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明のコンベヤベルトの好適な実施態様の一例の一部を模式的に示した断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書において、耐摩耗性及び耐衝撃性のうちの少なくともいずれかがより優れることを、本発明の効果がより優れると称することがある。
【0010】
[コンベヤベルト用ゴム組成物]
本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物(本発明の組成物)は、
天然ゴムを80~100質量%、ブタジエンゴムを0~20質量%含むゴム成分と、
カーボンブラックと、
硫黄と、
加硫促進剤とを含有し、
上記カーボンブラックの含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、45~100質量部であり、
上記硫黄の含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、0.50~2.00質量部であり、
上記加硫促進剤の含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、1.50質量部以下であり、
上記硫黄に対する上記加硫促進剤の質量比が、0.50~3.00である、コンベヤベルト用ゴム組成物である。
【0011】
本発明の組成物はこのような構成をとるため、所望の効果が得られるものと考えられる。その理由は定かではないがおおよそ以下のように推察される。
本発明者は、天然ゴムとブタジエンゴムとを含有するゴム組成物において、耐摩耗性及び/又は耐衝撃性が劣る場合があることを見出した。
本発明者は、天然ゴムを少なくとも含有するゴム組成物において硫黄の多量の使用によって、天然ゴムの結晶性(例えば、伸縮結晶性:伸長されると分子鎖が伸びの方向に配向し、それにより結晶化する性質)が損なわれる可能性があると考えた。
そして、本発明者は、天然ゴムを特定量で含むゴム成分に対して、カーボンブラックと、硫黄と、加硫促進剤とをそれぞれ特定量で含有し、硫黄に対する加硫促進剤の質量比が所定の範囲であることによって、耐摩耗性及び耐衝撃性に優れることを知見した。
以下、本発明の組成物に含有される各成分について詳述する。
【0012】
<<ゴム成分>>
本発明の組成物は、ゴム成分を含有し、ゴム成分は天然ゴムを含む。ゴム成分のすべてが天然ゴムであってもよい。ゴム成分は、本発明の効果により優れるという観点から、更にブタジエンゴムを含むことが好ましい。
【0013】
<天然ゴム>
本発明の組成物に含有される天然ゴムは特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
本発明において、天然ゴムの含有量は、ゴム成分の全量に対して、80~100質量%である。
天然ゴムの含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、ゴム成分の全量に対して、80質量%超95質量部%以下が好ましく、85~95質量%がより好ましい。
【0014】
(ブタジエンゴム)
ブタジエンゴム(BR)はブタジエンの単独重合体である。
【0015】
(ブタジエンゴムの重量平均分子量)
ブタジエンゴムの重量平均分子量は、本発明の効果(特に耐摩耗性)により優れ、加工性に優れるという観点から、50万~100万が好ましく、50万~80万がより好ましい。
本発明において、ブタジエンゴムの重量平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値をもとにした標準ポリスチレン換算値である。
【0016】
(ブタジエンゴムのミクロ構造)
ブタジエンゴムの1,4-シス構造は、本発明の効果(特に耐摩耗性)により優れるという観点から、97%以上が好ましく、98%以上がより好ましい。
ブタジエンゴムの1,4-トランス構造は、本発明の効果(特に耐摩耗性)により優れるという観点から、1.5%以下が好ましく、1.0%以下がより好ましい。
ブタジエンゴムの1,2-ビニル構造は、本発明の効果(特に耐摩耗性)により優れるという観点から、1.5%以下が好ましく、1.0%以下がより好ましい。
本発明において、ブタジエンゴムのミクロ構造は赤外吸収スペクトル分析によって解析された。740cm-1は1,4-シス構造、967cm-1は1,4-トランス構造、910cm-1は1,2-ビニル構造の吸収帯であり、各吸収強度比からミクロ構造を算出した。
【0017】
(ブタジエンゴムの製造方法)
ブタジエンゴムの製造方法としては、ブタジエンを、例えばコバルト系触媒及び/又はネオジウム系触媒のような触媒を用いて重合することによって合成する方法が挙げられる。コバルト系触媒、ネオジウム系触媒は特に制限されない。コバルト系触媒はコバルトを有する化合物とすることができる。ネオジウム系触媒はネオジウム(Nd)を有する化合物とすることができる。
【0018】
<ブタジエンゴムの含有量>
本発明において、ブタジエンゴムの含有量は、ゴム成分の全量に対して、0~20質量%である。
ブタジエンゴムの含有量は、本発明の効果(特に耐摩耗性)により優れるという観点から、ゴム成分の全量に対して、5質量%以上20質量%未満が好ましく、10~15質量%がより好ましい。
【0019】
(天然ゴム及びブタジエンゴム以外のゴム)
本発明において、ゴム成分は天然ゴム及びブタジエンゴム以外のゴムを更に含むことができる。
天然ゴム及びブタジエンゴム以外のゴムとしては例えばジエン系ゴム(天然ゴム及びブタジエンゴムを除く)が挙げられる。
上記ジエン系ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム(IR)、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体ゴム(例えばスチレンブタジエンゴム(SBR))、ニトリルブタジエンゴム(NBR、アクリロニトリルブタジエンゴム)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(例えば、Br-IIR、Cl-IIR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。なかでも、スチレンブタジエンゴムが好ましい。
天然ゴム及びブタジエンゴム以外のゴムの製造方法は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0020】
<<カーボンブラック>>
本発明の組成物は、カーボンブラックを含有する。
【0021】
<カーボンブラックの窒素吸着比表面積>
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、本発明の効果(特に耐摩耗性)により優れるという観点から、115~160m2/gが好ましく、120~150m2/gがより好ましい。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定した値である。
【0022】
<カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量>
カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量(DBP吸油量)は、本発明の効果(特に耐摩耗性)により優れるという観点から、115~140ml/100gが好ましく、120~130ml/100gがより好ましい。
カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量は、JIS K 6217-4:2008「ゴム用カーボンブラック-基本特性-第4部:オイル吸収量の求め方」に準じて測定された。
【0023】
カーボンブラックとしては、例えば、
SAF(Super Abrasion Furnace)カーボンブラック、
ISAF(Intermediate Super Abrasion Furnace)カーボンブラックが挙げられる。
なかでも、上記カーボンブラックは、本発明の効果(特に耐摩耗性)により優れるという観点から、SAFが好ましい。
カーボンブラックの製造方法は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0024】
<カーボンブラックの含有量>
本発明において、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、45~100質量部である。
カーボンブラックの含有量は、本発明の効果(特に耐摩耗性)により優れるという観点から、ゴム成分100質量部に対して、50質量部超(50質量部を超える量)80質量部以下が好ましく、50質量部超70質量部以下がより好ましい。
【0025】
<硫黄>
本発明の組成物に含有される硫黄は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
本発明において、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.50~2.00質量部である。
硫黄の含有量は、本発明の効果(特に耐摩耗性及び/又は耐衝撃性)により優れるという観点から、ゴム成分100質量部に対して、0.50質量部以上2.00質量部未満が好ましく、0.8~1.5質量部がより好ましく、1質量部超1.5質量部以下が更に好ましい。
硫黄の製造方法は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0026】
<加硫促進剤>
本発明の組成物に含有される加硫促進剤はゴム組成物に使用できるものであれば特に制限されない。加硫促進剤としては、例えば、チウラム系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、等が挙げられる。
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(市販品として例えば、ノクセラーNS-P、大内新興化学工業社製)が挙げられる。
加硫促進剤の製造方法は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0027】
本発明において、加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1.50質量部以下である。
加硫促進剤の含有量は、本発明の効果(特に耐摩耗性)により優れるという観点から、ゴム成分100質量部に対して、0.5~1.5質量部が好ましく、1.0~1.5質量部がより好ましい。
【0028】
<加硫促進剤/硫黄>
本発明において、硫黄に対する加硫促進剤の質量比(加硫促進剤/硫黄)は、0.50~3.00である。
加硫促進剤/硫黄は、本発明の効果(特に耐摩耗性)により優れるという観点から、0.50~2.00が好ましく、0.50~1.50がより好ましい。
【0029】
(添加剤)
本発明の組成物は、上述した各成分以外に、本発明の効果、目的を損わない範囲で、更に添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、白色充填剤、老化防止剤6Cのような老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、加工助剤、パラフィンワックス、アロマオイル、液状ポリマー、テルペン系樹脂、熱硬化性樹脂、硫黄以外の加硫剤、加硫助剤、加硫遅延剤が挙げられる。
上記添加剤の含有量は適宜選択することができる。
【0030】
(本発明の組成物の製造方法)
本発明の組成物はその製造方法について特に制限されない。例えば、上述した各成分(硫黄などの加硫剤及び加硫促進剤を除く。)をバンバリーミキサー等で混合して混合物を得て、次いで、上記のとおり得られた混合物に硫黄などの加硫剤及び加硫促進剤を加えてこれらを混練ロール機等で混合することによって、本発明の組成物を製造することができる。
【0031】
また、本発明の組成物の加硫の条件は特に制限されない。上記加硫としては、本発明の組成物を例えば、140~160℃の条件下で加熱し、加圧することによって加硫を行うことができる。
【0032】
本発明の組成物を用いてコンベヤベルトを形成することができる。
本発明の組成物は耐摩耗性及び耐衝撃性に優れることから、本発明の組成物を用いて形成される硬化物は、耐摩耗性及び耐衝撃性に優れる。
本発明の組成物を用いて、例えば、コンベアベルトの上面カバーゴム層を形成することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0033】
[コンベヤベルト]
本発明のコンベヤベルトは、
本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物で形成された上面カバーゴム層と、
補強層と、
下面カバーゴム層とを有する、コンベヤベルトである。
【0034】
上面カバーゴム層を形成するゴム組成物は本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物であれば特に制限されない。
本発明の組成物を用いて形成された上面カバーゴム層は耐摩耗性及び耐衝撃性に優れる。上面カバーゴム層は、上記のとおり耐衝撃性に優れることから、コンベアベルトに対して高所から落下してくる搬送物による衝撃力を効果的に吸収し、上記衝撃力によって補強層が破壊されること(最終的にはコンベアベルトが破壊されること)を防ぐことができる。
上面カバーゴム層は1層又は複数の層とすることができる。補強層、下面カバーゴム層についても同様である。
【0035】
以下、本発明のコンベヤベルトを添付の図面を用いて説明する。なお本発明は添付の図面に制限されない。
図1は、本発明のコンベヤベルトの好適な実施態様の一例の一部を模式的に示した断面斜視図である。
図1において、コンベヤベルト1は、上面カバーゴム層2、補強層3及び下面カバーゴム層4を有し、この順で積層されている。上面カバーゴム層2の表面は運搬物搬送面5となることができる。
【0036】
本発明のコンベアベルトにおいて、上面カバーゴム層が本発明の組成物を用いて形成されればよい。
図1に示すように、上面カバーゴム層が2層以上の層を有する場合、当該2層以上の層のうち少なくとも1層又は全部の層を本発明の組成物を用いて形成することができる。また、少なくとも最外層を本発明の組成物を用いて形成することが好ましい。
図1において、上面カバーゴム層2は、外層11および内層12を有する。外層11及び/又は内層12を本発明の組成物を用いて形成することができ、少なくとも外層11を本発明の組成物を用いて形成することが好ましい。
外層11を本発明の組成物を用いて形成する場合、内層12を補強層3および外層11を接着させるための層とすることができる。
【0037】
下面カバーゴム層に使用されるゴム組成物は特に制限されない。上記ゴム組成物としては例えば本発明の組成物が挙げられる。
図1において、下面カバーゴム層4は、外層16および内層15を有する。外層16と内層15は同じ又は異なるゴム組成物を用いて形成されていてもよい。
【0038】
補強層は特に限定されず、通常のコンベヤベルトに用いられるものを適宜選択して用いることができる。
補強層は、例えば、芯体と接着ゴムとを有することができる。
芯体の材質としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維のような繊維;スチールのような金属が挙げられる。上記繊維は帆布として使用できる。帆布は平織りの布を意味する。
接着ゴムは特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
補強層の形状は特に限定されず、例えば、
図1に示すようなシート状であってもよい。また、補強層内にワイヤー状の補強線(例えば、スチールコード)を並列に埋込むものであってもよい。
上記シート状の補強層としては、例えば、1層の帆布、複数層の帆布の積層体が挙げられる。
【0039】
上面カバーゴム層の厚さは、3~25mmが好ましい。
下面カバーゴム層の厚さは、3~20mmが好ましく、5~15mmがより好ましい。
なお、上面カバーゴム層が2層以上で構成されている場合、上面カバーゴム層の厚さは、これらの層の厚さの合計とすることができる。下面カバーゴム層の厚さも同様である。
【0040】
本発明のコンベヤベルトはその製造方法について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
<組成物の製造>
下記第1表の各成分を同表に示す組成(質量部)で用いて、これらを撹拌機で混合し、組成物を製造した。具体的にはまず、下記第1表に示す成分のうち硫黄および加硫促進剤を除く成分をバンバリーミキサーで140℃の条件下で混合し、次に、得られた混合物に硫黄および加硫促進剤を加えて、これらを混練ロール機を用いて30℃の条件下で混合して、組成物を製造した。
【0042】
<評価>
上記のとおり製造された組成物を用いて以下の評価を行った。結果を第1表に示す。
(評価用加硫ゴムシートの作製)
上記のとおり製造した組成物をシート状に成形し、上記シート状組成物を148℃の条件下で30分間、加熱加硫して、加硫ゴムシートを作製した。
【0043】
(耐摩耗性:DIN摩耗)
・DIN摩耗試験
上記加硫ゴムシートを使用し、JIS K 6264-2:2005 6.4.1に準じて、DIN摩耗試験機を用いて25℃の条件下でDIN摩耗試験を行い、上記加硫ゴムシートの摩耗体積(DIN摩耗 B法)を測定した。
【0044】
・耐摩耗性の評価基準
上記のとおり測定された摩耗体積が130mm3未満である場合、耐摩耗性に優れる。
【0045】
(耐衝撃性:M300)
・引張試験
上記加硫ゴムシートからJIS3号ダンベル状のゴムシート片を打ち抜いて試験片を作製した。上記試験片を用いて、JIS K 6251:2004に準拠して、室温条件下、引張速度500mm/分で引張試験を行い、300%伸び時における引張り応力(M300、単位:MPa]を測定した。
【0046】
・耐衝撃性の評価基準
M300が11MPaを超える場合、耐衝撃性に優れる。
【0047】
【0048】
第1表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
・NR:天然ゴム(RSS#3)
【0049】
・BR1:ブタジエンゴム、重量平均分子量(Mw)50万、(商品名Nipol BR1220、日本ゼオン社製)ミクロ構造:1,4-シス構造98.0%、1,4-トランス構造1.0%、1,2-ビニル構造1.0%)
【0050】
・CB1(N110):カーボンブラック、窒素吸着比表面積144m2/g、ジブチルフタレート吸油量115ml/100g(ショウブラックN110、SAFグレード、キャボットジャパン社製)
【0051】
・CB2(N234):カーボンブラック、窒素吸着比表面積123m2/g、ジブチルフタレート吸油量123ml/100g(商品名ショウブラックN234、ISAF-HSグレード、キャボットジャパン社製)
【0052】
・CB3(N220):カーボンブラック、窒素吸着比表面積111m2/g、ジブチルフタレート吸油量115ml/100g(商品名ショウブラックN220、ISAF-LSグレード、キャボットジャパン社製)
【0053】
・老化防止剤6C:ノクラック6C(大内新興化学工業社製)
・酸化亜鉛:酸化亜鉛3種(正同化学工業社製)
・ステアリン酸:ステアリン酸YR(日油社製)
・パラフィンワックス:OZOACE-0015(日本精蝋社製)
・アロマオイル:A-OMIX(三共油化工業社製)
【0054】
・加硫促進剤NS:N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、ノクセラーNS-P(大内新興化学工業社製)
【0055】
・硫黄:微粉硫黄(細井化学工業株式会社製)
【0056】
第1表に示す結果から明らかなように、加硫促進剤の含有量が所定の範囲を外れる比較例1~2は、耐摩耗性及び耐衝撃性が悪かった。
加硫促進剤/硫黄の質量比が所定の範囲を外れる比較例3は、耐衝撃性が悪かった。
硫黄の含有量、及び、加硫促進剤/硫黄の質量比が所定の範囲を外れる比較例4は、耐摩耗性が悪かった。
天然ゴム及びブタジエンゴムの含有量が所定の範囲を外れる比較例5は、耐衝撃性が悪かった。
【0057】
これに対して、本発明の組成物は耐摩耗性及び耐衝撃性に優れた。
【符号の説明】
【0058】
1:コンベヤベルト
2:上面カバーゴム層
3:補強層
4:下面カバーゴム層
5:運搬物搬送面
11、16:外層
12、15:内層