(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】パネル構造体
(51)【国際特許分類】
E04C 2/26 20060101AFI20220531BHJP
E04C 2/28 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
E04C2/26 Q
E04C2/28
(21)【出願番号】P 2020023141
(22)【出願日】2020-02-14
(62)【分割の表示】P 2015240543の分割
【原出願日】2015-12-09
【審査請求日】2020-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】398062574
【氏名又は名称】カナフレックスコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100166958
【氏名又は名称】堀 喜代造
(72)【発明者】
【氏名】金尾 茂樹
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-158111(JP,U)
【文献】実開平07-034116(JP,U)
【文献】国際公開第87/06966(WO,A1)
【文献】特開昭52-148920(JP,A)
【文献】米国特許第4186536(US,A)
【文献】米国特許第4229497(US,A)
【文献】特許第6874273(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 2/00-2/54
B32B 13/02
C04B 38/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1のセラミックスおよび第1の繊維を含むコアパネル
と、前記コアパネルを埋設する外皮
と、を備えるパネル構造
体であって、
前記コアパネルの両面に、
金属製又は繊維補強プラスチック製の補強パネルがそれぞれ配置され、
2枚の前記補強パネルの主面は、前記コアパネルの主面と同形状に形成され、
少なくとも第2のセラミックスおよび
第2の繊維を含む外皮により、前記コアパネルおよび2枚の前記補強パネルの
積層体の外面を包埋してなる、
パネル構造体。
【請求項2】
前記補強パネルが、メッキ鋼板である、請求項1記載のパネル構造体。
【請求項3】
前記外皮に含有される
前記第2の繊維が、
有機繊維および無機繊維からなる群から選択される1又は複数の繊維である、請求項1又は請求項2記載のパネル構造体。
【請求項4】
前記外皮に含有される
前記第2の繊維が、有機繊維であるポリビニルアルコール繊維(ビニロン繊維)、ポリオレフィン系繊維及びアラミド繊維、並びに、無機繊維である鋼繊維、ステンレス繊維、炭素繊維及びガラス繊維からなる群から選択される1又は複数の繊維である、請求項3記載のパネル構造体。
【請求項5】
前記外皮に含有される
前記第2のセラミックスが、無機化合物、セメント又はセメント硬化体である、請求項1~4の何れか1項に記載の
パネル構造体。
【請求項6】
前記外皮が、多孔質である、請求項1~5の何れか1項に記載の
パネル構造体。
【請求項7】
前記外皮が、前記コアパネルおよび2枚の前記補強パネルの外面を、略等しい厚みで包埋している、請求項1~6の何れか1項に記載の
パネル構造体。
【請求項8】
前記コアパネルが、多孔質である、請求項1~7の何れか1項に記載の
パネル構造体。
【請求項9】
壁材として使用される、請求項1~8の何れか1項に記載の
パネル構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル構造体、特に建築材料として使用することのできるパネル構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
建築材料として、例えば、型枠内に鉄筋、メッシュ筋などの配筋材を配置し、その上側からコンクリートを打設して作製されるプレキャストコンクリートパネルなどが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、従来から、鉄筋、メッシュ筋などの配筋材を使用しない軽量なコンクリート製の建築材料として、ECP、ALCパネルなども一般によく知られている。
【0004】
ECP(extruded cement panel、押出成形セメント板)は、セメント、ケイ酸質原料および繊維質原料を主原料として、中空を有する板状に押出成形し、オートクレーブ養生したパネルである。ECPは、主に外壁、間仕切壁として使用される。
【0005】
ALCパネル(autoclaved lightweight aerated concrete panel、オートクレーブ養生した軽量気泡コンクリートパネル)は、セメント、珪石、生石灰、アルミ粉末を主原料として発泡させ、オートクレーブ養生したパネルである。ALCパネルは、主に鉄骨造建築の外壁、間仕切壁、屋根、床として使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
プレキャストコンクリートパネルは、コンクリートの比重が2.4であり、かつ、鉄筋、メッシュ筋などの配筋材を含むため、その重量の増加が避けられないという問題があった。
【0008】
その一方で、ECP、ALCパネルは、軽量で優れた強度を有するが、押し出し成形で製造されるため、パネル形状の設計自由度に乏しい。また、こられのパネルは40~50年以上も前に開発されたものであり、これらのパネルよりもさらに軽量で、これらと同等またはそれ以上の強度や、さらに断熱性、遮音性などの性能をも有する代替品の開発が望まれている。
【0009】
そこで、本発明は、軽量で優れた強度、断熱性、遮音性などの性能を有するパネル構造体の提供、特に従来のECP、ALCパネルの代替品として使用することのできるパネル構造体の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明は、次の(1)~(9)のとおりである。
【0011】
(1) 少なくとも第1のセラミックスおよび第1の繊維を含むコアパネルと、前記コアパネルを埋設する外皮と、を備えるパネル構造体であって、前記コアパネルの両面に、金属製又は繊維補強プラスチック製の補強パネルがそれぞれ配置され、2枚の前記補強パネルの主面は、前記コアパネルの主面と同形状に形成され、少なくとも第2のセラミックスおよび第2の繊維を含む外皮により、前記コアパネルおよび2枚の前記補強パネルの積層体の外面を包埋してなる、パネル構造体。
【0012】
(2) 前記補強パネルが、メッキ鋼板である、(1)記載のパネル構造体。
【0013】
(3) 前記外皮に含有される前記第2の繊維が、有機繊維および無機繊維からなる群から選択される1又は複数の繊維である、(1)又は(2)記載のパネル構造体。
【0014】
(4) 前記外皮に含有される前記第2の繊維が、有機繊維であるポリビニルアルコール繊維(ビニロン繊維)、ポリオレフィン系繊維及びアラミド繊維、並びに、無機繊維である鋼繊維、ステンレス繊維、炭素繊維及びガラス繊維からなる群から選択される1又は複数の繊維である、(3)記載のパネル構造体。
【0015】
(5) 前記外皮に含有される前記第2のセラミックスが、無機化合物、セメント又はセメント硬化体である、(1)~(4)の何れかに記載のパネル構造体。
【0016】
(6) 前記外皮が、多孔質である、(1)~(5)の何れかに記載のパネル構造体。
【0017】
(7) 前記外皮が、前記コアパネルおよび2枚の前記補強パネルの外面を、略等しい厚みで包埋している、(1)~(6)の何れかに記載のパネル構造体。
【0018】
(8) 前記コアパネルが、多孔質である、(1)~(7)の何れかに記載のパネル構造体。
【0019】
(9) 壁材として使用される、(1)~(8)の何れかに記載のパネル構造体。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、軽量で優れた強度、断熱性、遮音性などの性能ならびに必要に応じて優れた外観を有するパネル構造体を提供することができる。また、本発明によると、従来のECP、ACLパネル、特に従来のALCパネルの代替品として使用することができるパネル構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1の実施形態のパネル構造体を示す概略斜視図である。
【
図2】
図1に示す第1の実施形態のパネル構造体のA-A’での概略断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態のパネル構造体の製造方法を断面で示す概略図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態のパネル構造体の概略断面図である。
【
図5】本発明の第3の実施形態のパネル構造体の概略斜視図(a)及びB-B’での概略断面図(b)である。
【
図6】本発明の第4の実施形態の装飾パネル構造体の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態のパネル構造体10を
図1、2に示す。ここで、本発明は、図示する実施形態に限定されるものではない。
【0023】
パネル構造体10は、コアパネル1と、前記コアパネル1の両面にそれぞれ配置される2枚の補強パネル3、3’と、前記コアパネル1および前記2枚の補強パネル3、3’をともに埋設(又は被覆あるいは包埋)してなる外皮2とを含む。
【0024】
[コアパネル]
コアパネル1は、少なくとも第1のセラミックスおよび第1の繊維を含む。コアパネル1の形状は、板状であれば特に限定されないが、幾何学的、力学的な観点から、直方体であることが好ましい。
【0025】
コアパネル1の長手方向の長さに特に制限はなく、例えば、1000mm~5000mm、好ましくは1800mm~2800mmである。
【0026】
コアパネル1の幅方向(長手方向に対して垂直方向)の長さに特に制限はなく、例えば、600mm~2400mm、好ましくは900mm~1200mmである。
【0027】
コアパネル1の厚みに特に制限はなく、例えば、75mm~150mm、好ましくは100mm~125mmである。
【0028】
第1のセラミックスとして、無機の非金属物質から構成され得る固体材料を任意に選択して含むことができ、例えば、炭化物、窒化物、ホウ化物などの無機化合物、セメント(硬化体)などが挙げられる。
【0029】
第1の繊維としては、有機繊維(例えば、ポリビニルアルコール繊維(ビニロン繊維)、ポリプロピレン繊維やポリエチレン繊維等のポリオレフィン系繊維、アラミド繊維など)および無機繊維(例えば、鋼繊維、ステンレス繊維、炭素繊維、ガラス繊維など)からなる群から選択される1又は複数の繊維を含むことができる。
【0030】
第1の繊維の長さに特に制限はなく、例えば1~150mm、好ましくは1~120mm、より好ましくは6mm~40mmの範囲内である。また、その太さにも特に限定はなく、通常1μm~2000μm、好ましくは10μm~1000μmである。
【0031】
コアパネル1における第1の繊維の含有量は、コアパネル1の総重量に対して、例えば0.1重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~1重量%である。
【0032】
本実施形態では、少なくとも上記の第1のセラミックスと第1の繊維とを混合し、セラミックスおよび繊維の種類に応じて、当該分野で既知の方法に基づいて成形し、その後、例えば、焼成、加熱、養生、乾燥することにより固化させることなどによって、コアパネル1を作製することができる。
【0033】
コアパネル1は、その軽量化を目的として、多孔質であってもよい。本明細書においてコアパネルが「多孔質」であるとは、例えば、発泡剤や起泡剤などを用いてコアパネルの内部に独立気泡および/または連続気泡などの気泡を含ませることを意味する。コアパネル1が多孔質である場合、その比重(水に対する比重)は、例えば、0.5~2.0であることが好ましく、より好ましくは0.8~1.2である。
【0034】
コアパネル1は、その軽量化を目的として、樹脂発泡体をさらに含んでいてもよい。コアパネル1が樹脂発泡体を含む場合、コアパネル1は、上記の通り、多孔質であってもよく、あるいは多孔質でなくともよい。
【0035】
樹脂発泡体としては、天然または合成の熱可塑性樹脂の発泡体を特に制限なく使用することができる。例えば、ポリスチレンなどのスチレン系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂、アクリルニトリル-スチレン共重合体、スチレン-エチレン共重合体などの共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの塩化ビニル系樹脂の発泡体などが挙げられる。
【0036】
樹脂発泡体自体の発泡倍率に特に制限はなく、例えば、3倍~200倍、好ましくは30倍~150倍、より好ましくは50~150倍である。
【0037】
樹脂発泡体の球径に特に制限はなく、例えば、1mm~10mm、好ましくは2mm~6mm、より好ましくは3mm~5mmである。
【0038】
樹脂発泡体の含有量は、コアパネル1の総重量に対して、例えば、0.1重量%~10重量%、好ましくは2重量%~8重量%である。
【0039】
コアパネル1が樹脂発泡体を含む場合、コアパネル1の比重(水に対する比重)は、例えば、0.1~0.8、好ましくは0.1~0.6、より好ましくは0.1~0.4である。
【0040】
以下、コアパネル1が第1のセラミックスとしてセメントを含む場合を例として詳しく説明するが、本発明は、このような例に限定して解釈されるべきではない。
【0041】
セメントとしては、例えば、日本工業規格(以下JIS)で規定されるポルトランドセメント(JIS R 5210)(例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメントなど)、混合セメント(例えば、高炉セメント(JIS R 5211)、シリカセメント(JIS R 5212)、フライアッシュセメント(JIS R 5213)など)、エコセメント(JIS R 5204)、超速硬セメント、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント等のセメントを特に制限なく使用することができる。
【0042】
コアパネル1が、第1のセラミックスとしてセメントを使用する場合、コアパネル1の内部には、主として上記のセメントと適切な量の水とが反応して得られるセメント硬化体および第1の繊維とが含まれ得る。このように、コアパネル1は、少なくとも第1の繊維を含むセメント硬化体として成形されるものであってよい。
【0043】
コアパネル1を多孔質とする場合には、上記のセメントに、例えば、セメント用、モルタル用、コンクリート用などとして一般によく知られている起泡剤、より具体的には、タンパク質系起泡剤、界面活性剤系起泡剤、例えばポリエーテル類、芳香族スルホン酸塩類(アルキルベンゼンスルホン酸塩など)、硫黄含有化合物(高級アルキルエーテル硫酸エステル類など)、樹脂系起泡剤等の起泡剤を配合することによって、コアパネル1を多孔質とすればよい。このようにして、コアパネル1は、少なくとも第1の繊維を含む発泡セメント硬化体として成形されるものであってよい。
【0044】
起泡剤の添加方法としては、例えば、プレフォーミング、ミックスフォーミング、アフターフォーミング等が挙げられ、代表的にはプレフォーミングが適用され得る。
【0045】
さらに、必要に応じて、起泡剤とともに、アルミニウム粉末等の金属系の発泡剤を使用してもよい。なお、本実施形態において、使用する起泡剤、発泡剤の量に特に制限はない。
【0046】
上記セメントは、さらに、例えば、パーライトなどの細骨材(例えば、SiO2、Al2O3、Fe2O3、CaO、Na2Oなどの成分を含むもの)や、混和材、減水剤(例えば、ナフタレン系減水剤、スルホン酸系減水剤、ポリカルボン酸系減水剤)などの添加剤を必要に応じて添加してよい。本実施形態において、使用する添加剤の量に特に制限はない。
【0047】
[補強パネル]
補強パネル3、3’は、同一であっても、異なっていてもよく、コアパネル1の少なくとも両面にそれぞれ配置することができる。これにより、コアパネル1、ひいてはパネル構造体10の強度、例えば、曲げ強度などを向上させることができる。
【0048】
補強パネル3、3’は、コアパネル1の両面にそれぞれ配置することができれば、その寸法、形状に特に制限はないが、コアパネル1の主面と同一面積の主面を有することが好ましい。
【0049】
補強パネル3、3’の厚みに特に制限はなく、例えば、50μm~3000μm、より好ましくは50μm~300μmである。
【0050】
補強パネル3、3’として、例えば、金属製または非金属製のパネルなどを使用することができる。金属製のパネルとしては、例えば、鉄、アルミニウム、銅、チタン、モリブデン、クロムなどの金属またはそれらの合金(例えば、鋼、ステンレス鋼など)からなる金属板などが挙げられる。非金属製のパネルとしては、例えば、炭素繊維補強プラスチック(CFRP)、ガラス繊維補強プラスチック(GFRP)、プルトルージョン繊維補強プラスチック(PFRP)、ケプラ繊維補強プラスチック(KFRP)、アラミド繊維補強プラスチック(AFRP)などの繊維補強プラスチック(FRP)からなるパネルなどが挙げられる。なかでも、金属製のパネルを使用することが好ましく、鋼板を使用することが特に好ましい。
【0051】
補強パネル3、3’が金属製である場合、その表面には、腐食防止の観点から、メッキ処理(例えば、溶融(または浸漬)メッキ、電気メッキなど)が施されていてもよく、例えば、溶融亜鉛メッキまたは電気亜鉛メッキされた亜鉛メッキ鋼板や、ガルバリウム鋼板(登録商標)、ZAM鋼板などのメッキ鋼板を使用することができる。
【0052】
また、補強パネル3、3’は、上記金属製のパネルにパンチング加工が施されたパンチングメタルや、網目状に加工されたラスメタルなどであってもよい。
【0053】
本実施形態において、補強パネル3、3’は、コアパネル1の表面に物理的および/または化学的に固定されていることが好ましい。例えば、接着剤(例えば、酢酸ビニル-アクリル系、スチレン-アクリル系、エチレン-酢酸ビニル系、スチレン-ブタジエン系、ニトリルゴム系、クロロプレンゴム系、変性シリコーン系、シアノアクリル系、ウレタン系、エポキシ系、フェノール系、メラミン系、ユリア系、ポリアミド系、ニトロセルロース系、ポリビニルアルコール系、ポリエステル系の接着剤など)によって、補強パネル3、3’をコアパネル1の表面に固定することができる。
【0054】
[外皮]
外皮2は、少なくとも第2のセラミックスおよび第2の繊維を含むものであり、上記のコアパネル1および補強パネル3、3’を埋設(又は被覆あるいは包埋)して含むことができれば、その寸法および形状に特に制限はない。外皮2は、
図1に示す通り、コアパネル1および補強パネル3、3’の外面を、略等しい厚みで包埋していることがこのましい。また、幾何学的、力学的な観点から、直方体であることが好ましい。外皮2が直方体である場合、その辺縁部、特に長手方向の辺縁部は、必要に応じて、面取り処理が施されていてもよい。
【0055】
外皮2が、コアパネル1とその両面に設けられている補強パネル3、3’とを包埋する厚みL1(上面側)およびL2(下面側)(
図2を参照のこと)に特に制限はないが、それぞれ、例えば、10mm~50mm、好ましくは10mm~30mmであり、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0056】
外皮2は多孔質であってもよいし、多孔質でなくてもよい。外皮2を多孔質にするか否かは、用途に応じて適宜決定することができる。例えば、パネル構造体が軽量であることが必要な場合には、多孔質とすることができる。
【0057】
外皮2を多孔質にするためには、上述の発泡剤、起泡剤を用いて、外皮2の内部に独立気泡および/または連続気泡などの気泡を形成すればよい。外皮2を多孔質とする場合、その比重(水に対する比重)は、例えば、0.1~2.2、好ましくは0.5~1.9、より好ましくは0.7~1.9である。
【0058】
第2のセラミックスとしては、第1のセラミックスと同様の材料を使用することができる。本実施形態において、第2のセラミックスは、上記の第1のセラミックスと同一であっても、異なっていてもよい。
【0059】
第2の繊維としては、上述の第1の繊維と同様の有機繊維および無機繊維からなる群から選択される1又は複数の繊維を含むことができる。本実施形態において、第2の繊維は、上記の第1の繊維と同一であっても、異なっていてもよい。
【0060】
第2の繊維の長さや太さに特に制限はなく、例えば、第1の繊維と同様の範囲内であってもよい。
【0061】
外皮2における第2の繊維の含有量は、外皮2の総重量に対して、例えば0.1重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%である。
【0062】
外皮2を多孔質とする場合、パネル構造体の強度を向上させるためには、第2の繊維として、鋼繊維や炭素繊維、ガラス繊維などの硬い繊維を使用したり、第2の繊維の量を増加したりすればよい。
【0063】
本実施形態では、例えば、型枠などを用いて、その内部に、上記のコアパネル1の両面に補強パネル3、3’を配置したものを適切に位置決めして配置し、さらに、この型枠内に、少なくとも上記の第2のセラミックスと第2の繊維とを含む混合物を注入して、セラミックスおよび繊維の種類に応じて、当該分野で既知の方法に従って、例えば、焼成、加熱、養生、乾燥することにより固化させることなどによって、外皮2を成形することができる。
【0064】
外皮2が、第2のセラミックスとしてセメントを使用する場合、コアパネル1と同様の材料を使用することができる。
【0065】
<性能評価>
本発明のパネル構造体の性能、特に比重、強度、断熱性、遮音性について説明する。
【0066】
・比重について
本発明のパネル構造体は、上記の構成および構造を有することによって、0.3~1.2、好ましくは0.5~1.0、より好ましくは0.6~0.8の比重(水に対する比重)を達成することができる。ここで、コアパネルの比重(水に対する比重)は、0.1~0.8、好ましくは0.1~0.6、より好ましくは0.1~0.4であり、パネル本体の比重(水に対する比重)は、0.1~2.2、好ましくは0.5~1.9、より好ましくは0.7~1.9である。
【0067】
・強度について
本発明のパネル構造体は、上記の構成および構造を有することによって、優れた曲げ強度などを達成することができる。曲げ強度は、例えば、1.0N/mm2以上、好ましくは1.5N/mm2以上、より好ましくは2N/mm2以上である。このような曲げ強度は、JIS A 1414-2に準拠して測定することができる。
【0068】
・断熱性について
本発明のパネル構造体は、上記の構成および構造を有することによって、例えば、0.17W/m・K以下、好ましくは0.1W/m・K以下の熱伝導率を達成することができる。また、熱伝導率の下限に特に制限はなく、0W/m・Kを超えるものであればよい。このような熱伝導率は、JIS A 1412-2に準拠して測定することができる。
【0069】
・遮音性について
本発明のパネル構造体は、上記の構成および構造を有することによって、例えば、100Hz~8000Hzの周波数にわたって、優れた遮音性を有することができる。特に1000Hzにおける透過損失は、例えば、パネル構造体の厚みが100mmの場合、40dB以上であることが望ましい。また、このような透過損失の上限に制限はない。
【0070】
<パネルの製造方法>
以下、例示として、
図3を参照しながら、本発明の第1の実施形態のパネル構造体10の製造方法を簡単に説明する。なお、本発明のパネル構造体の製造方法は、このような方法に限定されるものではない。
【0071】
(工程A)
少なくとも第1のセラミックス(又はその前駆体)と第1の繊維とを含む混合物を、型枠内で所望の形状に成形し、従来既知の方法に従って、例えば、焼成、加熱、養生、乾燥することにより固化させて、コアパネル1のインゴット(塊)1’を形成する。
【0072】
(工程B)
インゴット1’を所望の厚みにスライスすることによって、コアパネル1を形成する。なお、工程Aにおいて、インゴット1’をコアパネル1の寸法で成形する場合、この工程Bは省略することができる。
【0073】
(工程C)
コアパネル1の両面にそれぞれ補強パネル3、3’を配置する。好ましくは、物理的および/または化学的に固定する。
【0074】
(工程D)
補強パネル3、3’が配置されたコアパネル1を、例えば、型枠内の適切な位置に配置し、少なくとも第2のセラミックス(又はその前駆体)および第2の繊維を含む混合物を型枠内に注入して、従来既知の方法に従って、例えば、焼成、加熱、養生、乾燥することにより固化させて外皮2を形成することによって、パネル構造体10を得ることができる。
【0075】
<第2の実施形態>
図4は、本発明の第2の実施形態のパネル構造体20の概略断面図である。パネル構造体20は、コアパネル21と、このコアパネル21を埋設(又は被覆あるいは包埋)してなる外皮22とを含む。なお、本実施形態において、構成要素が第1の実施形態とほぼ同じものの符号の下一桁は、第1の実施形態と同じ番号である。すなわち、コアパネル21、外皮22は、第1の実施形態におけるコアパネル1、外皮2にそれぞれ対応し得るものであり、上述の記載がほぼすべて当てはまる。従って、同じ内容についての詳しい説明は省略し、以下にて、第1の実施形態と異なる点のみを記載する。
【0076】
パネル構造体20は、第1の実施形態で使用する補強パネルを含まない。よって、パネル構造体20の強度の向上を目的として、コアパネル21の内部に含まれる第1の繊維を例えば鋼繊維や炭素繊維、ガラス繊維などの硬い繊維とすることが好ましい。
【0077】
<第3の実施形態>
図5に、本発明の第3の実施形態のパネル構造体30の斜視図(a)およびB-B’での断面図(b)を示す。パネル構造体30は、コアパネル31と、その両面にそれぞれ配置される補強パネル33、33’とを含む(
図5の(b)を参照のこと)。本実施形態において、構成要素が第1の実施形態とほぼ同じものの符号の下一桁は、第1実施形態と同じ番号である。この点は、第2の実施形態と同様である。すなわち、コアパネル31、補強パネル33、33’は、それぞれ第1の実施形態におけるコアパネル1、補強パネル3、3’に対応し得るものであり、上述の記載がほぼすべて当てはまる。従って、同じ内容についての詳しい説明は省略し、以下にて、第1の実施形態と異なる点のみを記載する。
【0078】
パネル構造体30において、外皮32は、上述の第1の実施形態の外皮2に対応し得るものであるが、
図5の(a)、(b)に示すように、外皮32の少なくとも2つの側面(例えば、2つの長手方向の側面)には、凸部34、凹部35がそれぞれ形成されている。
図5の(b)において、凸部34、凹部35は、突条と、それに対応する溝として記載されているが、本実施形態において、凸部34、凹部35は、このような形状に限定されるものではなく、互いに対応して係合することができる形状を有していればよい。
【0079】
このような凸部34、凹部35を有するパネル構造体30は、その2枚以上を使用することによって、パネル構造体30の側面同士を互いに係合させるだけで、より大きな面積の面(例えば、壁面、床面)を形成することができる。
【0080】
凸部34、凹部35は、例えば、外皮32の成形時や、成形後の外皮32の切削加工によって形成することができる。
【0081】
パネル構造体30において、外皮32の寸法および形状を、例えば、従来のECP、ALCパネルと同一にすることによって、従来のECP、ALCパネルの代替品として使用することができる。その場合、従来のECP、ALCパネルと同等もしくはそれ以上の強度、断熱性、遮音性などの性能を有していることが望ましい。
【0082】
また、パネル構造体30は打ち込み成形によって製造されるため、タイル貼りや本石貼りを行うことが可能である。特に、押出成形により製造される従来のECPやALCパネルでは、金具を一体成形することができず、本石貼りが不可能であったため、本発明のパネルは、これらのパネルに対して、優れた利点を有する。
【0083】
<第4の実施形態>
図6に、上記のパネル構造体30の外皮32のいずれか一方の主面に装飾パネル46を貼り付けた装飾パネル構造体40を示す。装飾パネル46は、タイルや、天然石や人工石などの本石、天然石材の模様や天然木材の模様を模した図柄などを例えば紙、樹脂シートなどに印刷した印刷層とすることができる。装飾パネル46は、従来の方法、例えば接着剤(タイル貼り)を用いることによって、上記のパネル構造体30に取り付けることができる。特に装飾パネル46を印刷層とした場合、天然石材や天然木材などの高級感に溢れる美しい意匠を上記のパネル構造体30の表面に低コストで簡便に形成することができる。また、印刷層の上面には、紫外線硬化性樹脂などを含む塗料でコーティングを施していてもよく、さらに向上した外観を提供することもできる。
【0084】
上述の通り、本発明のパネル構造体をいくつかの実施形態を挙げて説明してきたが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明のパネル構造体は、上述の通り、軽量で優れた強度、断熱性、遮音性などの性能ならびに必要に応じて優れた意匠を提供することができるので、壁材、間仕切材、屋根材、床材などの建築材料、特に壁材、なかでも外壁材として有益に利用することができる。また、従来のECP、ACLパネル、特にALCパネルの代替品としても利用することが可能である。
【符号の説明】
【0086】
1、21、31 コアパネル
2、22、32 外皮
3、3’、33、33’ 補強パネル
10 パネル構造体(第1の実施形態)
20 パネル構造体(第2の実施形態)
30 パネル構造体(第3の実施形態)
34 凸部
35 凹部
40 装飾パネル構造体(第4の実施形態)
46 装飾パネル