(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】キーユニット及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H01H 13/14 20060101AFI20220531BHJP
H01H 13/70 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
H01H13/14 Z
H01H13/70
(21)【出願番号】P 2020053997
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2021-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】島田 善行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友厚
(72)【発明者】
【氏名】三角 和則
(72)【発明者】
【氏名】深谷 庄一
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-099721(JP,U)
【文献】特開2019-121594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/14
H01H 13/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キーを操作する操作者から見て、左右方向及び前後方向にそれぞれ複数のキーが配置され
、ケースの枠内に収容されるキーユニットであって、
前記複数のキーのうち
前記ケースの枠内の後端部に配置され
るキーは、
操作面を有するキートップ部材と、
前記キートップ部材を弾性変形部を介して基部上に支持する支持部材を具備し、
前記弾性変形部は、前記操作面の前記複数のキーの配列の前後方向における前端側に設けられた第1弾性変形部と、前記操作面の前記前端に対向する後端側に設けられた第2弾性変形部と、を有し、
前記第1弾性変形部の前記操作面の中央からの距離は、前記第2弾性変形部の前記操作面の中央からの距離よりも長く、かつ、前記第1弾性変形部の弾性係数は前記第2弾性変形部の弾性係数よりも小に設定されているキーユニット。
【請求項2】
前記複数のキーは、キーシートにより形成されている請求項1に記載のキーユニット。
【請求項3】
前記第1弾性変形部の前記操作面の前記前端側からの距離は、前記第2弾性変形部の前記後端側からの距離よりも短く、かつ、前記第1弾性変形部の弾性係数は前記第2弾性変形部の弾性係数よりも小に設定されている請求項1又は2に記載のキーユニット。
【請求項4】
前記第1弾性変形部の長さを前記第2弾性変形部の長さよりも長くすることで、前記第1弾性変形部の弾性係数が前記第2弾性変形部の弾性係数よりも小さくなるように設定されている請求項1乃至3のいずれか一項に記載のキーユニット。
【請求項5】
前記第1弾性変形部の太さを前記第2弾性変形部の太さよりも細くすることで、前記第1弾性変形部の弾性係数が前記第2弾性変形部の弾性係数よりも小さくなるように設定されている請求項1乃至3のいずれか一項に記載のキーユニット。
【請求項6】
前記操作面上でユーザが押圧することを想定した仮想領域を設定するとともに、前記キートップ部材の許容される傾きである許容傾きを設定し、設定した前記仮想領域内で前記操作面が押圧された場合の前記キートップ部材の傾きが、設定した前記許容傾き以下となるように、前記キートップ部材の前後の長さ、前記支持部材に設けられた前記第1弾性変形部と前記第2弾性変形部との間隔、前記キートップ部材の中心と前記支持部材の中心とのずれ量、前記第1弾性変形部と前記第2弾性変形部それぞれの弾性係数、が設定されている請求項1乃至5のいずれか一項に記載のキーユニット。
【請求項7】
キーを操作する操作者から見て、左右方向及び前後方向にそれぞれ複数のキーが配置されたキーユニットを収容するケース部と、
前記複数のキーのうち
前記ケース部の枠内の後端
部に配置され
るキーは、
操作面を有するキートップ部材と、
前記キートップ部材を弾性変形部を介して基部上に支持する支持部材を具備し、
前記弾性変形部は、前記操作面の前記複数のキーの配列の前後方向における前端側に設けられた第1弾性変形部と、前記操作面の前記前端に対向する後端側に設けられた第2弾性変形部と、を有し、
前記第1弾性変形部の前記操作面の中央からの距離は、前記第2弾性変形部の前記操作面の中央からの距離よりも長く、かつ、前記第1弾性変形部の弾性係数は前記第2弾性変形部の弾性係数よりも小に設定されている電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーユニット及びこのキーユニットを有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子辞書等の電子機器への入力部として、複数のキーをシート状に一体成形することで、キー部を大型化して視認性や操作性を向上させたキーユニット112が知られている。
【0003】
このキーユニット112は、通常キーシート部とファンクションキーシート部を有しており、
図8に示すように、通常キーシート部とファンクションキーシート部との間を外観ケース113の桟部113aが上から押さえるようにしている。なお、
図8中111は配線、接点、電極等を有する回路基板を搭載する基板が組み込まれた内蔵ケースを示している。
【0004】
通常キーシート部の複数のキーは、個々のキーの周囲に枠(外観ケースの桟部)が設けられていないので、キートップを大きくすることができる。また、通常キーシート部のキーは、キートップの後側を支点として前側がストロークして接点に接触する片支持方式を採用しているので、簡単な構造であっても操作性を損なうことがないようになっている。
【0005】
一方、ファンクションキーシート部の複数のキーについては、
図9、
図10に示すように構成されている。これらの図中200は回路基板、210はキーシートを示している。キーシート210は、一対の座屈部(キー支持部)211,212を有し、この座屈部212に支持されたキー支持部213と、このキー支持部213の上部に貼り付けられたキートップ214と、取付用のベース板215を備えている。
【0006】
図9,10に示すように、個々のキーの周囲に枠220が設けられているので、キートップ214を大きくすることができない。
【0007】
また、通常キーシート部のキーと比較してファンクションキーシート部のキーのキートップ214が小さいので、片支持方式を採用することができず、
図9,10に示すように、キートップ214を水平に保ったままでストロークさせる構造を採用している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ファンクションキーシート部の複数のキーについても、通常キーシート部の複数のキーと同様に、個々のキーの周囲の枠を無くすことによりキートップ214を大きくするようなことは可能であるが、その場合であっても、ファンクションキーシート部のキーの後部には内部ケースの枠が存在しているため、
図10に示すように、キートップ214の中心位置とキー支持部213の中心位置をずらした構造をとる必要がある。なお、
図11はキー支持部213
にキートップ214が貼り付けられる前の状態を示している。
【0010】
しかしながら、このようにキートップ214の中心位置αとキー支持部213の中心位置βが差分δだけずれていると、
図12、
図13に示すように、ユーザが指Pでキートップ214の中央を押圧したつもりでも、実際はキー支持部213の中心からずれた位置に力が加わることになるため、キー支持部213の周囲にスカート状に設けられた座屈部211,212のうち、後側の座屈部212が早期に座屈してしまい、キートップ214を水平に保ったままでストロークすることができないという問題がある。
【0011】
本発明は、キーシートのキーにおいて、キートップと(キー)支持部との位置関係に制約があるような場合であっても、安定したキー入力を行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様として、キーを操作する操作者から見て、左右方向及び前後方向にそれぞれ複数のキーが配置され、ケースの枠内に収容されるキーユニットであって、前記複数のキーのうち前記ケースの枠内の後端部に配置されるキーは、操作面を有するキートップ部材と、前記キートップ部材を弾性変形部を介して基部上に支持する支持部材を具備し、前記弾性変形部は、前記操作面の前記複数のキーの配列の前後方向における前端側に設けられた第1弾性変形部と、前記操作面の前記前端に対向する後端側に設けられた第2弾性変形部とを有し、前記第1弾性変形部の前記操作面の中央からの距離は、前記第2弾性変形部の前記操作面の中央からの距離よりも長く、かつ、前記第1弾性変形部の弾性係数は前記第2弾性変形部の弾性係数よりも小に設定されている。
【0014】
本発明の一態様として、電子機器は、キーを操作する操作者から見て、左右方向及び前後方向にそれぞれ複数のキーが配置されたキーユニットを収容するケース部と、前記複数のキーのうち前記ケース部の枠内の後端部に配置されるキーは、操作面を有するキートップ部材と、前記キートップ部材を弾性変形部を介して基部上に支持する支持部材を具備し、前記弾性変形部は、前記操作面の前記複数のキーの配列の前後方向における前端側に設けられた第1弾性変形部と、前記操作面の前記前端に対向する後端側に設けられた第2弾性変形部とを有し、前記第1弾性変形部の前記操作面の中央からの距離は、前記第2弾性変形部の前記操作面の中央からの距離よりも長く、かつ、前記第1弾性変形部の弾性係数は前記第2弾性変形部の弾性係数よりも小に設定されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、キーシートのキーにおいて、キートップと(キー)支持部との位置関係に制約があるような場合であっても、安定したキー入力を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電子機器を示す模式図である。
【
図2】同電子機器の第1筐体を示す分解斜視図である。
【
図3】同電子機器に組み込まれたキーユニットを
図1におけるA-A線で矢視した断面図である。
【
図5】同キーユニットの要部における動作状態を示す説明図である。
【
図7】同キーユニットの要部の変形例を示す説明図である。
【
図8】一般的な電子機器の第1筐体を示す分解斜視図である。
【
図9】同キーシートのキーの構成を示す説明図である。
【
図10】同キーシートのキーの構成を示す説明図である。
【
図11】同キーシートのキーの要部を示す斜視図である。
【
図12】同キーシートのキーの動作状態を示す説明図である。
【
図13】同キーシートのキーの動作状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る電子機器10を説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る電子機器10を示す模式図、
図2は、電子機器10の第1筐体12を示す分解斜視図、
図3は、電子機器10に組み込まれたキーシート(キーユニット)40を
図1におけるA-A線で矢視した断面図である。なお、以下の説明中前端はキーの配列の前後方向における前端側、後端はキーの配列の前後方向における後端側としている。
【0019】
図1に示すように、電子機器10は、第1筐体12と、第2筐体14と、ヒンジ部16とを備える。第1筐体12と第2筐体14はヒンジ部16を軸として回動し、電子機器10は第1筐体12と第2筐体14が重なった状態に折り畳まれる。電子機器10は、例えば電子辞書である。第1筐体12及び第2筐体14は、例えば、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート等の絶縁性の樹脂から作製される。
【0020】
第1筐体12は、
図2に示すように、内蔵ケース20と、この内蔵ケース20に載置される基板30と、基板30の上に配置されたキーシート40とを備えている。第2筐体14は、
図1に示すように、表示部18が配置される。表示部18は、例えば液晶ディスプレイであり、ユーザからの入力
内容、検索結果等を表示する。
【0021】
基板30は、配線、接点、電極等を有する回路基板である。後述するキーシート40の通常キーシート部50及びファンクションキーシート部51の支持部材が、基板30の接点に接触することにより、支持部材と基板30の配線が導通する。これにより、電子機器10への入力が実行される。
【0022】
キーシート40は、第1筐体12の1つの開口部13から突出している。また、電子機器10が折り畳まれ、第1筐体12と第2筐体14が重なった状態において、第1筐体12の開口部13から突出したキーシート40が、第2筐体14に対向する。
【0023】
キーシート40は、電子機器10のユーザによる入力を受ける入力部である。キーシート40は、
図1,2に示すように、通常キーシート部50と、通常キーシート部50に対し、後端側(ヒンジ部16側)に位置する複数のファンクションキーシート部51を備えている。
【0024】
通常キーシート部50は、
図1、2に示すように、左右方向及び前後方向に複数配列された複数のキー(いわゆるQWERTYキー)を有している。通常キーシート部50の各キーは、後端側に設けられた座屈部と、前端側に設けられた座屈部に支持されている。後端側に設けられた座屈部はキートップの後端に設けられた凸部(図示せず)に支持されるために座屈することなく、キートップの前側のみがストロークする片支持方式となっている。キーが押圧されると、前端側の座屈部が座屈して、キーの底面側に設けられた接点部が基板30の接点に接触することで入力が行われる。
【0025】
図3に示すように、ファンクションキーシート部51は、内蔵ケース20又は基板30上に取り付けられるシート基部60と、このシート基部60から上方に延設される前側座屈部(第1弾性変形部)61と、後側座屈部(第2弾性変形部)62と、これら前側座屈部61及び後側座屈部62に周縁部が支持された支持部材70と、この支持部材70の上部に貼り付けられたキートップ80を備えている。キートップ80における前後方向における中央位置をNで示している。シート基部60は、ベース板90によって基板30上に留め付けられている。
【0026】
キートップ80の図中上面は、ユーザの指先が接触する操作面である。操作面の前端(第1端)側に設けられた前側座屈部61とキートップ80の中央位置Nからの前後方向(図中水平方向)に沿った距離t1は、操作面の後端(第2端)側に設けられた後側座屈部62とキートップ80の中央位置Nからの前後方向(図中水平方向)に沿った距離t2よりも長く設定されている。
【0027】
シート基部60、前側座屈部61及び後側座屈部62、支持部材70は、シリコンゴム、エラストマ等の絶縁性の弾性材料から一体的に構成されている。キートップ80は、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート等から構成される。ベース板90は、比較的曲げ剛性が大きい材料、例えば、ステンレス、アルミニウム合金等の金属、ポリカーボネート等の樹脂から構成される。
【0028】
支持部材70の中央下部には接点部71が設けられている。また、支持部材70の一部を構成する前側座屈部61及び後側座屈部62は、
図3に示すように、支持部材70の周囲からスカート状に延びて接点部71とシート基部60とを接続する。また、前側座屈部61及び後側座屈部6
2は、
支持部材70をシート基部60に対して第1筐体12の開口部13から突出する方向に、弾性的に支持する。前側座屈部61及び後側座屈部62は、キートップ80が押圧された場合に座屈し、キートップ80から押圧が除かれた場合に復元する。
【0029】
図4に示すように、後側座屈部62は、支持部材70側に肉厚部62aが形成されており、座屈する範囲が前側座屈部61より短く形成されている。すなわち、前側座屈部61は後側座屈部62よりも弾性係数が小さく形成されている。なお、肉厚部62aは後側座屈部62と同一材料で一体に成形しても良いし、同一又は異なる材料で形成し、接着しても良い。
【0030】
このように構成されたキーユニットは、次のように動作する。すなわち、通常キーシート部50の支持部材については、ユーザによって押圧されて、後端側を支点にし、前端側が下方へ変位する。一方、ファンクションキーシート部51の支持部材70は、前側座屈部61と後側座屈部62に支持されているが、ユーザによってキートップ80の中心位置が押圧されると、
図5に示すように前側座屈部61と後側座屈部62が座屈する。この時、後側座屈部62が短く、弾性係数が大きいため、前側座屈部61よりも変形しにくい。このため、中心位置に入力された押圧力は、押圧位置に近い後側座屈部62に大きく加わるが、変形し易い前側座屈部61と変形し難い後側座屈部62とが同時に座屈する。すなわち、支持部材70は基板30に対して垂直に下降し、支持部材70の底面と基板30が接触して導通する。これにより、入力が実行される。
【0031】
したがって、ユーザがキートップの中心位置を押圧した場合には、キートップ80が大きく傾くことなく、キートップ80をストロークさせることができる。
【0032】
また、ユーザがキートップ80の中心位置を押そうとしても中心位置からずれる場合もあるため、ある程度は中心位置からずれた位置を押圧してもキートップ80の傾きが許容される傾き以内に収まるようにするのが望ましい。
【0033】
この場合、中心位置からずれる可能性が高い領域を仮想領域として設定し(例えば、キートップ80全体の前後方向の長さに対して10%の位置ずれを許容するものとして仮想領域を設定する)、その領域内でキートップ80が押圧された場合のキートップ80の傾きが許容される傾き以下(例えば、10°以下)になるようにする。
【0034】
そして、そのような条件を満たすために、キートップ80の前後の長さ、支持部材70に設けられた前後の座屈部の間隔、キートップ80の中心と支持部材70の中心とのずれ量、前後の座屈部それぞれの弾性係数、などを設定する。これらの条件は、実験的に決めるようにしてもよい。
【0035】
また、ユーザがキートップ80の中心位置を押圧しようとせずに、キートップ80の自由な位置を押圧しようとした場合には、押圧される位置がキートップ80の中心から大きくずれた位置になる場合もあり、この場合には、キートップ80の中心に対する前後それぞれの座屈部までの距離よりも、キートップ80の前端に対する前側の座屈部までの距離と、キートップ80の後端に対する後側の座屈部までの距離の方が重要になってくる場合もある。
【0036】
その場合には、キートップ80の前端に対する前側の座屈部までの距離は、キートップ80の後端に対する後側の座屈部までの距離よりも短く、かつ、前側の座屈部の弾性係数は後側の座屈部の弾性係数よりも小に設定するものとする。
【0037】
そして、キートップ80の周辺からの距離が所定以上となるような領域を前記仮想領域として設定し、上述したような条件を満たすように設計するようにしてもよい。
【0038】
したがって、ファンクションキーシート部のキーのように、キートップ80と支持部材70との位置関係に制約があるような場合であっても、安定したキー入力を行うことができる。
また、キートップ80の中心からずれた位置が押圧された場合であっても、キートップ80が大きく傾くことなく、確実な入力を行うことができ、また、キートップ80の中心に対する押圧する位置のずれが所定の範囲内に収まっていれば、キートップ80の傾きを許容範囲内に収めることができ、ユーザ操作の自由度を高めることができる。更に、キートップ80の端部に対する押圧する位置までの距離が所定以上であれば、キートップ80の傾きを許容範囲内に収めることができ、更にユーザ操作の自由度を高めることができる。
【0039】
また、外部ケースの桟部でキーシートを上から押さえる必要が無いので、キーの周囲の枠が無くなり、各キーの大きさを最大限大きくすることで、使い勝手を維持することができる
また、内部ケースにキーシートを収めた場合に、ファンクションキーのような周辺部に位置するキーが内部ケースの壁に近い位置にあったとしても、キーの操作性を維持するためのキー部の設計の自由度を増すことができる。
【0040】
なお、
図6は上述したキーユニットの効果を補足するための参考図である。すなわち、キートップ214の中心位置αと、キー支持部213の中心位置βとがずれないように、
図6のような構造を採用することも可能であるが、この場合、キートップ214の面積に対して、キー支持部213の周囲にスカート状に設けられた座屈部211,212の面積が小さくなってしまうので、キートップ214が前後左右のどちらの方向にも傾きやすくなり不安定である。
【0041】
図7はキーユニットの要部の変形例を示す説明図である。本変形例においては、後側座屈部62の代わりに、後側座屈部63を設けた。後側座屈部63は、前側座屈部61よりも全体が厚く形成されている。したがって、後側座屈部63の弾性係数が大きいため、前側座屈部61よりも変形しにくい。このため、上述した後側座屈部62を用いた時と同様に、中心位置に入力された押圧力は、押圧位置に近い後側座屈部63に大きく加わるが、変形し易い前側座屈部61と変形し難い後側座屈部63とが同時に座屈する。すなわち、支持部材70は基板30に対して垂直に下降し、支持部材70の底面と基板30が接触して導通する。これにより、入力が実行される。
【0042】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述した例では、複数のキーがシート状に一体成型されたキーシートに適用したが、特に、一体成型には限らず、通常キーシート部とファンクションキーシート部とは分離していても良い。
【0043】
このようなキーユニットを備える電子機器10は、電子辞書に限らず、電卓、携帯電話機、PCのキーボード等であってもよい。また、傾斜の組み合わせは上述したもの以外も含まれると共に、傾斜を組み合わせてもよい。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明は特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
操作面を有するキートップ部材と、
弾性変形部を有するとともに、前記キートップ部材を前記弾性変形部を介して基部上にストローク可能な状態で支持する支持部材と、
を備えるキー構造において、
前記弾性変形部は、前記操作面の第1端側に設けられた第1弾性変形部と、前記操作面の前記第1端に対向する第2端側に設けられた第2弾性変形部と、を有し、
前記第1弾性変形部の前記操作面の中央からの距離は、前記第2弾性変形部の前記操作面の中央からの距離よりも長く、かつ、前記第1弾性変形部の弾性係数は前記第2弾性変形部の弾性係数よりも小に設定されているキー構造。
[付記2]
前記第1弾性変形部の前記操作面の第1端側からの距離は、前記第2弾性変形部の前記第2端側からの距離よりも短く、かつ、前記第1弾性変形部の弾性係数は前記第2弾性変形部の弾性係数よりも小に設定されている[付記1]に記載のキー構造。
[付記3]
前記第1弾性変形部の長さを前記第2弾性変形部の長さよりも長くすることで、前記第1弾性変形部の弾性係数が前記第2弾性変形部の弾性係数よりも小さくなるように設定されている[付記1]または[付記2]に記載のキー構造。
[付記4]
前記第1弾性変形部の太さを前記第2弾性変形部の太さよりも細くすることで、前記第1弾性変形部の弾性係数が前記第2弾性変形部の弾性係数よりも小さくなるように設定されている[付記1]乃至[付記3]のいずれか一項に記載のキー構造。
[付記5]
前記操作面上でユーザが押圧することを想定した仮想領域を設定するとともに、前記キートップ部材の許容される傾きである許容傾きを設定し、設定した前記仮想領域内で前記操作面が押圧された場合の前記キートップ部材の傾きが、設定した前記許容傾き以下となるように、前記キートップ部材の前後の長さ、前記支持部材に設けられた前記第1弾性変形部と前記第2弾性変形部との間隔、キートップ部材の中心と前記支持部材の中心とのずれ量、前記第1弾性変形部と前記第2弾性変形部それぞれの弾性係数、が設定されている[付記1]乃至[付記4]のいずれか一項に記載のキー構造。
[付記6]
左右方向及び前後方向にそれぞれキーが配置されたキーユニットであって、
前記キーのうち後端部に配置されたキーは、
操作面を有するキートップ部材と、
前記キートップ部材を弾性変形部を介して基部上に支持する支持部材を具備し、
前記弾性変形部は、前記操作面の前記キーの配列の前後方向における前端側に設けられた第1弾性変形部と、前記操作面の前記前端に対向する前記後端側に設けられた第2弾性変形部と、を有し、
前記第1弾性変形部の前記操作面の中央からの距離は、前記第2弾性変形部の前記操作面の中央からの距離よりも長く、かつ、前記第1弾性変形部の弾性係数は前記第2弾性変形部の弾性係数よりも小に設定されているキーユニット。
[付記7]
前記キーは、キーシートにより形成されている[付記6]に記載のキーユニット。
[付記8]
前記第1端は前記キーの配列の前後方向における前端、前記第2端は前記キーの配列の前後方向における後端である[付記6]又は[付記7]に記載のキーユニット。
[付記9]
左右方向及び前後方向にそれぞれキーが配置されたキーユニットを収容するケース部と、
前記キーのうち前記キーの配列の前後方向における後端側に配置されたキーは、
操作面を有するキートップ部材と、
前記キートップ部材を弾性変形部を介して基部上に支持する支持部材を具備し、
前記弾性変形部は、前記操作面の前記キーの配列の前後方向における前端側に設けられた第1弾性変形部と、前記操作面の前記前端に対向する前記後端側に設けられた第2弾性変形部と、を有し、
前記第1弾性変形部の前記操作面の中央からの距離は、前記第2弾性変形部の前記操作面の中央からの距離よりも長く、かつ、前記第1弾性変形部の弾性係数は前記第2弾性変形部の弾性係数よりも小に設定されている電子機器。
【符号の説明】
【0045】
10…電子機器、12…第1筐体、13…開口部、14…第2筐体、16…ヒンジ部、18…表示部、20…内蔵ケース、30…基板、40…キーシート(キーユニット)、50…通常キーシート部、51…ファンクションキーシート部、60…シート基部、61…前側座屈部(第1弾性変形部)、62…後側座屈部(第2弾性変形部)、62a…肉厚部、63…後側座屈部、70…支持部材、71…接点部、80…キートップ、81…前端、82…後端、90…ベース板、112…キーユニット、113…外観ケース、113a…桟部、200…回路基板、210…キーシート、211…座屈部(キー支持部)、212…座屈部(キー支持部)、213…キー支持部、214…キートップ、215…ベース板、220…枠。