(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】エレベータシステム
(51)【国際特許分類】
B66B 1/14 20060101AFI20220531BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
B66B1/14 L
B66B1/14 K
B66B3/00 G
(21)【出願番号】P 2020178285
(22)【出願日】2020-10-23
【審査請求日】2020-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】須藤 豪
(72)【発明者】
【氏名】小村 章
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-114617(JP,A)
【文献】特開平11-139704(JP,A)
【文献】国際公開第2017/072910(WO,A1)
【文献】特開2014-031263(JP,A)
【文献】特開2020-117338(JP,A)
【文献】国際公開第2010/089869(WO,A1)
【文献】特開2019-144918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-1/52;
3/00-3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータを制御する制御装置と、前記制御装置に対し、前記エレベータの利用者の行先階を登録する行先階登録装置と、を含むエレベータシステムであって、
前記行先階登録装置は、前記エレベータが設けられた建物の階床から行先階を選択する第1のモード、および、前記階床のうち、利用者が行こうとしている施設が設けられた複数の施設設置階床から行先階を選択する第2のモードのいずれかを前記利用者が選択可能に表示する表示部と、
前記第2のモードが選択された場合、前記施設設置階床から所定の条件に基づき選択された一部の階床を示す情報を、前記制御装置から取得する取得部と、を備え、
前記表示部は、前記取得部が取得した前記情報に基づき、前記一部の階床を示す表示を行
い、
前記制御装置は、
前記第2のモードが選択された場合、各施設の現時点での利用者の疎密の度合いに基づき、前記施設設置階床から、利用者が最も疎な施設が設置された階床を選択する選択部と、
選択された階床を示す情報を前記行先階登録装置へ出力する出力部と、を備える、
エレベータシステム。
【請求項2】
前記行先階登録装置は、利用者の操作を受け付ける操作受付部を備え、
前記取得部は、前記一部の階床を示す情報として、複数の階床を示す情報を取得し、
前記操作受付部は、前記取得部が取得し
た情報が示す前記複数の階床から1つの階床を選択する選択操作を受け付け、
前記制御装置は、前記選択操作により選択された施設設置階床を行先階とする呼びを実行する呼び実行部を備える、
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記取得部は、前記一部の階床を示す情報として、1つの階床を示す情報を取得し、
前記制御装置は、前記1つの階床を行先階とする呼びを実行する呼び実行部を備える、
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
前記施設は、複数の利用者が同時に利用する施設であり、
前記選択部は、各施設の現時点での利用者の疎密の度合いに基づき、前記施設設置階床から、利用者が最も疎な施設が設置された階床と、当該施設との疎密の度合いの差分が所定値以下である施設が設置された階床と、を選択する、
請求項2に記載のエレベータシステム。
【請求項5】
前記施設は、複数設置された座席の1つに利用者が着席して利用する施設であり、
前記取得部は、前記行先階に設けられた前記施設において前記行先階登録装置の利用者が着席する座席を示す座席情報を前記制御装置から取得し、
前記表示部は、取得した前記座席情報に基づき、前記行先階登録装置の利用者が着席する座席を示す表示を行う、
請求項2から4のいずれか1項に記載のエレベータシステム。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記行先階に設けられた前記施設における、座席の着席者の現時点での決定状況に基づき、前記行先階登録装置の利用者が着席する座席を決定する決定部と、
決定された座席を示す情報を前記行先階登録装置へ出力する座席出力部と、を備える、
請求項5に記載のエレベータシステム。
【請求項7】
前記決定部は、すでに着席者が決定している各座席との距離の合計値が最大となるように前記行先階登録装置の利用者が着席する座席を決定する、
請求項6に記載のエレベータシステム。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記第2のモードが選択されたことに基づき、前記エレベータシステムの外部装置に対し、前記一部の階床の選択指示を送信する送信部と、
前記外部装置から、前記一部の階床を示す情報を取得する第2取得部と、を備え、
前記出力部は、当該情報を前記行先階登録装置へ出力する、
請求項1から3のいずれか1項に記載のエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータを制御する制御装置と、当該制御装置に対しエレベータの利用者の行先階を登録する行先階登録装置とを含むエレベータシステム等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エレベータを管理、制御するシステムに対して呼びを登録する装置に関する技術が開示されている。具体的には、引用文献1には、数字の入力を受け付けるテンキーと、テナント名を検索する検索画面に遷移するボタンとを含む画面を表示する行先階登録装置が開示されている。利用者は、テンキーを用いて数字を入力し、当該数字が示す階床を行先階とする呼びを登録してもよいし、検索画面でテナント名を入力し、テナントがある階床を行先階とする呼びを登録してもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、建物内の施設として、フリーアドレスを導入している企業の執務室など、同一のものが複数の階床に設けられる施設がある。特許文献1の技術はこのような施設へ行く利用者の使用において、改善の余地がある。
【0005】
例えば、テンキーを用いて施設が設けられた階床のいずれかを示す数字を入力する場合、利用者はどの階床に設けられた施設を利用するかを予め決めておく必要がある。また、検索画面に施設名を入力する場合、検索結果として複数の階床が提示される。施設が設けられた階床が多い場合、利用者がいずれの階床を選択するか迷ってしまう可能性がある。
【0006】
本発明の一態様は、複数の階床に設けられた施設を利用するエレベータの利用者にとって、行先階登録の利便性を向上させるエレベータシステムなどを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の態様1に係るエレベータシステムは、エレベータを制御する制御装置と、前記制御装置に対し、前記エレベータの利用者の行先階を登録する行先階登録装置と、を含むエレベータシステムであって、前記行先階登録装置は、前記エレベータが設けられた建物の階床から行先階を選択する第1のモード、および、前記階床のうち、利用者が行こうとしている施設が設けられた複数の施設設置階床から行先階を選択する第2のモードのいずれかを前記利用者が選択可能に表示する表示部と、前記第2のモードが選択された場合、前記施設設置階床から所定の条件に基づき選択された一部の階床を示す情報を、前記制御装置から取得する取得部と、を備え、前記表示部は、前記取得部が取得した前記情報に基づき、前記一部の階床を示す表示を行う。
【0008】
前記の構成によれば、エレベータの利用者は、目的に応じて第1のモードでの行先階の選択と、第2のモードでの行先階の選択とを使い分けることができる。特に、施設を利用しようとしているエレベータの利用者は、第2のモードを選択することにより、すべての施設設置階床から一部が自動的に選択される。1つの階床が選択された場合、利用者自身が選択する必要がなくなる。複数の階床が選択された場合、すべての施設設置階床から選択する場合に比べて選択肢が少なくなるため、利用者の選択に係る時間を低減することができる。結果として、建物の複数の階床に設けられた施設を利用するエレベータの利用者にとって、行先階登録の利便性を向上させることができる。
【0009】
なお、施設は、例えば、フリーアドレスが導入された企業における執務室や、予備校における教室や自習室などが挙げられるが、これに限定されない。
【0010】
本発明の態様2に係るエレベータシステムは、前記態様1において、前記行先階登録装置は、利用者の操作を受け付ける操作受付部を備え、前記取得部は、前記一部の階床を示す情報として、複数の階床を示す情報を取得し、前記操作受付部は、前記取得部が取得した取得した情報が示す前記複数の階床から1つの階床を選択する選択操作を受け付け、前記制御装置は、前記選択操作により選択された施設設置階床を行先階とする呼びを実行する呼び実行部を備えてもよい。
【0011】
前記の構成によれば、施設設置階床の一部として、利用者に複数の階床を提示して選択させる。これにより、すべての施設設置階床から選択する場合に比べて選択肢が少なくなるため、利用者の選択に係る時間を低減することができる。また、利用者に選択の余地を残しているため、利用者は、自身にとって望ましい階床を選択することができる。利用者は、例えば、提示された複数の階床のうち、その日に訪れる予定の別の階床に最も近い階床を選択してもよい。
【0012】
本発明の態様3に係るエレベータシステムは、前記態様1において、前記取得部は、前記一部の階床を示す情報として、1つの階床を示す情報を取得し、前記制御装置は、前記1つの階床を行先階とする呼びを実行する呼び実行部を備えてもよい。
【0013】
前記の構成によれば、利用者が第2のモードを選択すれば、自動的にいずれかの施設設置階床が行先階として登録されるので、施設を利用しようとしているエレベータの利用者は、行先階登録を簡易に行うことができる。
【0014】
本発明の態様4に係るエレベータシステムは、前記態様2または3において、前記制御装置は、前記第2のモードが選択された場合、前記施設設置階床から前記所定の条件に基づき前記一部の階床を選択する選択部と、選択された階床を示す情報を前記行先階登録装置へ出力する出力部と、を備えてもよい。
【0015】
前記の構成によれば、エレベータシステムが施設設置階床から一部の階床を選択するので、当該エレベータシステムを導入するのみで、建物の複数の階床に設けられた施設を利用するエレベータの利用者にとっての行先階登録の利便性を向上させることができる。
【0016】
本発明の態様5に係るエレベータシステムは、前記態様4において、前記施設は、複数の利用者が同時に利用する施設であり、前記選択部は、各施設の現時点での利用者の疎密の度合いに基づき、前記施設設置階床から、利用者が最も疎な施設が設置された階床を選択してもよい。
【0017】
前記の構成によれば、エレベータシステムは、複数の施設設置階床から、現時点での利用者が最も疎な施設が設置された階床を選択するので、各施設における利用者の疎密の度合いが同程度になるように利用者を振り分けることができる。換言すれば、1つの施設において、利用者が極端に密になることを防ぐことができる。また、施設の利用者における、ウィルス等への感染リスクを低減することができる。
【0018】
なお、「最も疎な施設」とは、例えば、利用者数が最も少ない施設であってもよいし、利用者数を施設の定員で除算した利用率であってもよい。
【0019】
本発明の態様6に係るエレベータシステムは、前記態様2において、前記施設は、複数の利用者が同時に利用する施設であり、前記制御装置は、前記第2のモードが選択されたことに基づき、前記施設設置階床から一部の階床を選択する選択部と、選択された階床を示す情報を前記行先階登録装置へ出力する出力部と、を備え、前記選択部は、各施設の現時点での利用者の疎密の度合いに基づき、前記施設設置階床から、利用者が最も疎な施設が設置された階床と、当該施設との疎密の度合いの差分が所定値以下である施設が設置された階床と、を選択してもよい。
【0020】
前記の構成によれば、利用者に対し、利用者数や利用率が少ない施設を選択肢として提示するので、各施設における利用者の疎密の度合いを同程度にしつつ、利用者の希望に沿った階床を選択させることができる。
【0021】
本発明の態様7に係るエレベータシステムは、前記態様2から6のいずれかにおいて、前記施設は、複数設置された座席の1つに利用者が着席して利用する施設であり、前記取得部は、前記行先階に設けられた前記施設において前記行先階登録装置の利用者が着席する座席を示す座席情報を前記制御装置から取得し、前記表示部は、取得した前記座席情報に基づき、前記行先階登録装置の利用者が着席する座席を示す表示を行ってもよい。
【0022】
前記の構成によれば、行先階の施設(すなわち、利用者が利用する施設)において利用者が着席する座席を示す表示を行うので、利用者は、施設に到着後に着席する座席について、エレベータに搭乗する前に知ることができる。例えば、施設が、フリーアドレスが導入された企業における執務室である場合、利用者は、エレベータの行先階登録を行うことにより、その日に使用する座席の登録も行うことができる。
【0023】
本発明の態様8に係るエレベータシステムは、前記態様7において、前記制御装置は、前記行先階に設けられた前記施設における、座席の着席者の現時点での決定状況に基づき、前記行先階登録装置の利用者が着席する座席を決定する決定部と、決定された座席を示す情報を前記行先階登録装置へ出力する座席出力部と、を備えてもよい。
【0024】
前記の構成によれば、エレベータシステムが施設において利用者が着席する座席を決定するので、当該エレベータシステムを導入するのみで、施設が設けられた建物において、施設における利用者の座席決定を実現することができる。
【0025】
本発明の態様9に係るエレベータシステムは、前記態様8において、前記決定部は、すでに着席者が決定している各座席との距離の合計値が最大となるように前記行先階登録装置の利用者が着席する座席を決定してもよい。
【0026】
前記の構成によれば、施設において利用者をバランスよく配置することができる。また、施設の利用者における、ウィルス等への感染リスクを低減することができる。
【0027】
本発明の態様10に係るエレベータシステムは、前記態様1から3のいずれかにおいて、前記制御装置は、前記第2のモードが選択されたことに基づき、前記エレベータシステムの外部装置に対し、前記一部の階床の選択指示を送信する送信部と、前記外部装置から、前記一部の階床を示す情報を取得する第2取得部と、当該情報を前記行先階登録装置へ出力する出力部と、を備えてもよい。
【0028】
前記の構成によれば、一部の階床を外部装置に選択させるので、エレベータシステムにおいて一部の階床の機能を持たせずとも、建物の複数の階床に設けられた施設を利用するエレベータの利用者にとって、行先階登録の利便性を向上させることができる。
【0029】
また、上記の課題を解決するために、本発明の態様11に係る行先階登録装置は、エレベータを制御する制御装置に対し、前記エレベータの利用者の行先階を登録する行先階登録装置であって、前記エレベータが設けられた建物の階床から行先階を選択する第1のモード、および、前記階床のうち、利用者が行こうとしている施設が設けられた複数の施設設置階床から行先階を選択する第2のモードのいずれかを前記利用者が選択可能に表示する表示部と、前記第2のモードが選択された場合、前記施設設置階床から所定の条件に基づき選択された一部の階床を示す情報を、前記制御装置から取得する取得部と、を備え、
前記表示部は、前記取得部が取得した前記情報に基づき、前記一部の階床を示す表示を行う。
【0030】
前記の構成によれば、態様1に係るエレベータシステムと同様の作用効果を奏する。
【0031】
本発明の各態様に係る行先階登録装置および制御装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記行先階登録装置または前記制御装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記行先階登録装置および前記制御装置をコンピュータにて実現させる行先階登録装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、並びに、制御装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0032】
本発明の一態様によれば、複数の階床に設けられた施設を利用するエレベータの利用者にとって、行先階登録の利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の実施形態1~3に係るエレベータシステムに含まれる行先階登録装置および制御装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】行先階登録装置のタッチスクリーンに表示される画像の一例を示す図である。
【
図3】実施形態1に係るエレベータシステムが実行する座席案内処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図4】行先階登録装置のタッチスクリーンに表示される画像の一例を示す図である。
【
図5】距離の合計値の算出処理の一例を説明する図である。
【
図6】実施形態2に係るエレベータシステムが実行する座席案内処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】実施形態3に係るエレベータシステムが実行する座席案内処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】行先階登録装置のタッチスクリーンに表示される画像の一例を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態4に係るエレベータシステムに含まれる行先階登録装置および制御装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
【
図10】実施形態3に係るエレベータシステムが実行する座席案内処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図11】実施形態1~4に係るエレベータシステムが実行するフロア移動処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図12】行先階登録装置のタッチスクリーンに表示される画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係るエレベータシステム1に含まれる行先階登録装置2および制御装置3の要部構成の一例を示すブロック図である。なお、本開示の各実施形態では、エレベータシステムにより制御されるエレベータが設けられた建物の複数の階床に、企業の執務室が設けられている例を説明する。また、当該企業は、フリーアドレスを採用しているものとする。つまり、当該企業の従業員は、日によって勤務する執務室や、利用する座席が異なるものとする。また、本実施形態では、複数の執務室における座席数は同数であるとする。
【0035】
<行先階登録装置2>
行先階登録装置2は、建物の各エレベータ乗り場に設けられ、エレベータを利用する利用者の入力に基づき、制御装置3に利用者の行先階を登録する。これにより、制御装置3は、エレベータのかごを当該利用者のいる階床へ移動させる。そして、制御装置3は、当該利用者のかごへの搭乗後に、かごを利用者が登録した行先階へ移動させる。
【0036】
行先階登録装置2は、制御部20、入力部21(操作受付部)、表示部22および通信部23(取得部)を備える。制御部20は、行先階登録装置2の各部を統括して制御する。入力部21は、利用者の操作入力を受け付け、当該操作を示す信号を制御部20へ出力する。表示部22は、制御部20が生成した画像を表示する。なお、本実施形態では、入力部21と表示部22とがタッチスクリーンを形成している例を説明するが、入力部21および表示部22の具体例はこれに限定されない。通信部23は、制御装置3と情報の送受信を行う。
【0037】
図2は、行先階登録装置2のタッチスクリーンに表示される画像の一例を示す図である。具体的には、
図2は、行先階登録装置2のタッチスクリーンに表示される初期画面、すなわち、利用者が操作入力を行う前の画面を示す図である。
【0038】
図2に示す初期画面において、タッチスクリーンには、画像221および画像222が表示されている。画像221および画像222は、利用者の操作入力を受け付けるグラフィカルユーザインターフェース(GUI)である。本実施形態では、当該操作入力はタッチ操作の入力である例を説明するが、これに限定されない。
【0039】
画像221がタッチ操作を受け付けると、エレベータシステム1は、利用者が本日勤務する執務室および当該執務室において利用者が着席する座席を決定するための処理と、決定した執務室がある階床を行先階として登録するための処理を行う。これらの処理の詳細については後述する。
【0040】
画像222がタッチ操作を受け付けると、エレベータシステム1は、利用者が選択した階床を行先階として登録するための処理を行う。この処理の詳細については後述する。
【0041】
<制御装置3>
再び
図1を参照し、制御装置3の詳細について説明する。制御装置3は、エレベータを制御する装置である。一例として、制御装置3は、行先階登録装置2からの行先階の登録に基づき、エレベータのかごの移動を制御する。この制御の詳細についてはすでに説明しているためここでは繰り返さない。
【0042】
制御装置3は、制御部30、記憶部31および通信部32(出力部、座席出力部)を備える。制御部30は、制御装置3の各部を統括して制御する。記憶部31は、制御装置3が実行する各種プログラムや、制御装置3が使用する各種データを記憶する。通信部32は、行先階登録装置2と情報の送受信を行う。
【0043】
記憶部31は、少なくとも執務室データベース311を記憶している。執務室データベース311は、建物に設けられた各執務室について、現在の勤務人数と、座席を示す情報とを少なくとも格納するデータベースである。ここで、座席の情報とは、執務室における座席の配置、利用可能な座席および利用不可能な座席を示す情報を含む。「利用可能な座席」とは、その時点で利用する人が確定していない座席である。また、「利用不可能な座席」とは、その時点で利用する人が確定している座席である。「利用する人が確定している座席」には、その時点でその座席を利用している人物がいる場合と、その時点でその座席を利用する予約をしている人物がいる場合とを含む。また、現在の勤務人数には、座席を予約している人数が含まれるものとする。
【0044】
なお、執務室データベース311は、さらに、その執務室で勤務している人物を示す情報などを格納していてもよい。
【0045】
制御部30は、通信制御部301、階床選択部302(選択部)、座席選択部303(決定部)および呼び実行部304を含む。
【0046】
通信制御部301は、通信部32を制御し、行先階登録装置2との情報の送受信を行わせる。具体的には、通信制御部301は、通信部32へ情報を出力し、行先階登録装置2へ送信させる。また、通信制御部301は、通信部32が受信した情報を取得し、制御部30の各部へ出力する。
【0047】
階床選択部302は、利用者が画像221へのタッチ操作を入力したことに基づき、利用者に選択肢として提示する階床を選択する。当該階床は、執務室のある階床(施設設置階床)から、所定の条件に基づき選択される。換言すれば、当該階床は、執務室のある階床の一部である。
【0048】
座席選択部303は、利用者が選択肢として提示された階床から1つを選択したことと、当該階床の執務室における座席の着席者の現時点での決定状況とに基づき、当該階床にある執務室から、利用者が本日着席する座席を選択する。
【0049】
呼び実行部304は、行先階の登録に基づき、制御するかご(号機)を決定し、当該かごを、登録内容に応じて移動させる。
【0050】
なお、制御装置3は、複数の装置から成るシステムとして実現されてもよい。例えば、制御装置3は、各号機を制御する制御装置(制御盤)と、制御装置を統括して制御する装置またはシステムとからなる、群管理システムであってもよい。
【0051】
<座席案内処理>
図3は、本実施形態に係るエレベータシステム1が実行する座席案内処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0052】
ステップS1において、表示部22は、モードの選択肢を表示している。具体的には、制御部20が、
図2に示す画面を表示部22に表示させる。
【0053】
ステップS2において、入力部21は、座席案内操作を受け付ける。本実施形態に係る座先案内操作とは、
図2に示す画像221へのタッチ操作である。入力部21は、座席案内操作を示す操作信号を制御部20へ出力する。
【0054】
ステップd1において、制御部20は、座席案内操作を示す操作信号を取得したことに基づき、座席案内開始指示を生成する。そして、制御部20は、通信部23を制御して、座席案内開始指示を制御装置3へ送信する。なお、座席案内開始指示とは、制御装置3に座席案内のための処理を実行させる指示であり、行先階登録装置2を識別する装置識別情報を含む。
【0055】
制御装置3の通信部32は、座席案内開始指示を受信する。通信制御部301は、通信部32から取得した座席案内開始指示を階床選択部302へ出力する。
【0056】
ステップS11において、階床選択部302は、執務室データベース311を参照して、現時点の勤務人数が最少の執務室を特定する。ここで、特定した執務室の勤務人数をPとする。
【0057】
ステップS12において、階床選択部302は、勤務人数がP+C以下の執務室を特定する。ここで、Cは所定値(所定の整数)である。階床選択部302は、ステップS11およびS12で特定した執務室を示す執務室情報を通信制御部301へ出力する。執務室情報には、特定した執務室がある階床を示す階床情報が含まれる。
【0058】
ステップd11において、通信制御部301は、通信部32を制御して、取得した執務室情報を行先階登録装置2へ送信する。執務室情報の送信先である行先階登録装置2は、受信した座席案内開始指示に含まれる装置識別情報が示す行先階登録装置2である。
【0059】
行先階登録装置2の通信部23は、執務室情報を受信する。ステップS3において、制御部20は、通信部23から取得した執務室情報に基づき、階床の選択肢を表示部22に表示させる。
【0060】
図4は、行先階登録装置2のタッチスクリーンに表示される画像の一例を示す図である。具体的には、
図4に示す行先階登録装置2Aは、執務室情報に基づき表示される階床選択画面、すなわち、利用者に行先階を選択させる画面を表示している行先階登録装置2である。
【0061】
行先階登録装置2Aは、画像223を表示している。画像223は、執務室情報に基づき表示されたGUIであり、この例では、「2」、「4」、「10」とのテキストを含む3つのGUIである。3つのGUIは、それぞれ、階床情報に基づく階床、すなわち、制御装置3が選択した執務室がある階床を示す。すなわち、行先階登録装置2Aの例では、画像223は、2階、4階および10階を示すGUIである。
【0062】
また、本実施形態では、画像223が受け付ける操作はタッチ操作である例を説明するが、これに限定されない。行先階登録装置2Aの例では、利用者は2階を示すGUIに対するタッチ操作を入力している。
【0063】
再び
図3を参照して、座席案内処理の説明に戻る。ステップS4において、入力部21は、階床選択操作(選択操作)を受け付ける。階床選択操作の具体例は、
図4に示す行先階登録装置2Aの例における、2階を示すGUIに対するタッチ操作である。入力部21は、階床選択操作を示す操作信号を制御部20へ出力する。
【0064】
ステップd2において、制御部20は、階床選択操作を示す操作信号を取得したことに基づき、選択階床情報を生成する。そして、制御部20は、通信部23を制御して、選択階床情報を制御装置3へ送信する。なお、選択階床情報とは、階床選択操作で選択された階床を示す情報であり、
図4に示す行先階登録装置2Aの例では、2階を示す情報である。また、選択階床情報は、装置識別情報を含む。
【0065】
通信部32は、選択階床情報を受信する。通信制御部301は、通信部32から取得した選択階床情報を座席選択部303および呼び実行部304へ出力する。
【0066】
ステップS13において、座席選択部303は、選択階床情報に応じた執務室を特定する。すなわち、座席選択部303は、選択階床情報が示す階床にある執務室を特定する。
【0067】
ステップS14において、座席選択部303は、特定した執務室における各空き座席について、使用中座席との距離の合計値を算出する。ここで、空き座席とは、現時点で利用可能な座席を指し、使用中座席とは、現時点で利用不可能な座席を指す。
【0068】
図5は、距離の合計値の算出処理の一例を説明する図である。
図5に示す実線の正方形は、執務室の各座席を示す。ここで、空き座席である座席90に着目する。座席90の1つ外側にある座席群91、すなわち、
図5において破線と点線とで囲われた領域内の座席は、座席90からの距離を「1」とする。また、座席群91の1つ外側にある座席群92、すなわち、
図5において点線と一点鎖線とで囲われた領域内の座席は、座席90からの距離を「2」とする。このように、座席選択部303は、空き座席の各々について、使用中座席との距離を特定し、特定した距離を合算して合計値を算出する。
【0069】
なお、この合計値算出の処理は一例である。座席選択部303は、例えば、各座席の実際の距離に基づき、空き座席と使用中座席との距離を特定し、これを合算して合計値を算出してもよい。
【0070】
再び
図3を参照して、座席案内処理の説明に戻る。ステップS15において、座席選択部303は、算出した合計値が最大となる空き座席を、利用者が着席する座席に決定する。そして、座席選択部303は、執務室データベース311を更新する。具体的には、座席選択部303は、特定した執務室の勤務人数をインクリメントし、決定した空き座席を使用中座席に変更する。そして、座席選択部303は、決定した座席を示す座席情報を通信制御部301へ出力する。
【0071】
ステップS16において、呼び実行部304は、取得した選択階床情報に基づき、制御するかご(号機)を決定する。具体的には、呼び実行部304は、選択階床情報が示す、利用者の行先階と、装置識別情報に基づく利用者の出発階とに応じて、制御するかごを決定する。そして、呼び実行部304は、決定したかごを示すかご情報を通信制御部301へ出力する。
【0072】
なお、ステップS16は、ステップS15の後に実行される構成でなくてもよい。ステップS16は、ステップd2で送信された選択階床情報を呼び実行部304が取得した後であれば、その実行タイミングは特に限定されない。例えば、ステップS16は、ステップS13~S15の実行中に実行されてもよい。
【0073】
ステップd12において、通信制御部301は、通信部32を制御して、取得した座席情報およびかご情報を行先階登録装置2へ送信する。これらの情報の送信先である行先階登録装置2は、受信した選択階床情報に含まれる装置識別情報が示す行先階登録装置2である。
【0074】
通信部23は、座席情報およびかご情報を受信する。ステップS5において、制御部20は、通信部23から取得したこれらの情報に基づき、登録内容を表示する。
【0075】
ここで、
図4を参照して登録内容の表示の具体例を説明する。
図4に示す行先階登録装置2Bは、座席情報およびかご情報、並びに、ステップS4で受け付けた階床選択操作に基づき表示される登録内容画面、すなわち、利用者に登録内容を示す画面を表示している行先階登録装置2である。
【0076】
行先階登録装置2Bは、利用者が乗るべきエレベータの号機を示すテキスト、利用者が勤務する執務室の階床および着席する座席の位置を示すテキスト、並びに、当該座席の位置を示す画像224を表示している。画像224において、点のパターンで塗られた正方形が、利用者の着席する座席を示す。また、白抜きの正方形が空き座席を、黒塗りの正方形が使用中座席を示す。
【0077】
利用者は、登録内容画面を視認することにより、自身が乗るべきエレベータの号機、行先階に到着した後、その階の執務室で座るべき座席を認識することができる。
【0078】
再び
図3を参照して、座席案内処理の説明に戻る。ステップS17において、呼び実行部304は、ステップS16で決定したかごを出発階へ移動させる。なお、ステップS17の実行タイミングは、ステップd12の実行後に限定されない。例えば、呼び実行部304は、ステップd12の実行前にステップS17を実行してもよい。
【0079】
<作用効果>
以上のとおり、本実施形態に係るエレベータシステム1において、行先階登録装置2の表示部22は、座席案内のモード(第2のモード)と、フロア移動のモード(第1のモード)のいずれかを利用者が選択可能に表示する。そして、通信部23は、座席案内のモードが選択された場合、すべての執務室から、所定の条件に基づき選択された一部の執務室を示す執務室情報を、制御装置3から取得する。表示部22は、執務室情報に基づき、一部の階床を示す画像223を表示する。この執務室情報は、執務室がある階床を示す情報と表現することもできる。すなわち、すべての執務室から一部の執務室を選択することは、執務室があるすべての階床から、一部の階床を選択することに相当する。
【0080】
この構成によれば、エレベータの利用者は、目的に応じて座席案内のモードでの行先階の選択と、フロア移動のモードでの行先階の選択とを使い分けることができる。特に、執務室を利用しようとしているエレベータの利用者は、座席案内のモードを選択することにより、執務室があるすべての階床から一部が自動的に選択される。これにより、すべての階床から選択する場合に比べて選択肢が少なくなるため、利用者の執務室の選択に係る時間を低減することができる。結果として、建物の複数の階床に設けられた執務室を利用するエレベータの利用者にとって、行先階登録の利便性を向上させることができる。
【0081】
また、本実施形態に係るエレベータシステム1において、入力部21は、画像223から1つの階床を選択する階床選択操作を受け付ける。制御装置3の呼び実行部304は、階床選択操作により選択された階床を行先階とする呼びを実行する。
【0082】
この構成によれば、利用者は、提示された選択肢の中から階床を選択するため、自身にとって望ましい階床を選択することができる。
【0083】
また、本実施形態に係るエレベータシステム1において、階床選択部302は、座席案内のモードが選択された場合、所定の条件に基づき、すべての執務室から一部の執務室を選択する。また、通信部32は、階床選択部302が選択した執務室を示す執務室情報を行先階登録装置2へ送信する。
【0084】
この構成によれば、エレベータシステム1において執務室の選択、換言すれば階床の選択が行われるので、エレベータシステム1を導入するのみで、建物の複数の階床に設けられた執務室を利用するエレベータの利用者にとって、行先階登録の利便性を向上させることができる。
【0085】
また、本実施形態に係るエレベータシステム1において、階床選択部302は、所定の条件を満たす執務室として、現時点での勤務人数が最も少ない執務室を選択する。
【0086】
これにより、各執務室における勤務人数が同程度になるように利用者を振り分けることができる。換言すれば、1つの執務室において、利用者が極端に密になることを防ぐことができる。これにより、例えば、執務室における、ウィルス等への感染リスクを低減することができる。
【0087】
また、本実施形態に係るエレベータシステム1において、階床選択部302は、所定の条件を満たす執務室として、現時点での勤務人数が最も少ない執務室に加え、当該執務室との勤務人数の差分が所定値以下である執務室をさらに選択する。
【0088】
これにより、利用者に複数の階床を選択肢として提示することができるので、利用者の希望に沿った階床を選択させることができるとともに、各執務室の勤務人数を同程度にすることができる。
【0089】
また、本実施形態に係るエレベータシステム1において、通信部23は、利用者が選択した階床の執務室において当該利用者が着席する座席を示す座席情報を制御装置3から受信する。表示部22は、座席情報に基づき、利用者が着席する座席を示すテキストおよび画像224を表示する。
【0090】
この構成によれば、利用者は、エレベータの行先階登録を行うことにより、その日の勤務で使用する座席を登録することができる。また、利用者は、執務室に到着してから着席する座席を、エレベータを利用する前に知ることができる。
【0091】
また、本実施形態に係るエレベータシステム1において、座席選択部303は、利用者が選択した階床の執務室における、座席の着席者の現時点での決定状況に基づき、当該利用者が着席する座席を決定する。通信部32は、座席情報を行先階登録装置2へ送信する。
【0092】
この構成によれば、エレベータシステム1が、執務室において利用者が着席する座席を決定するので、エレベータシステム1を導入するのみで、執務室における利用者の座席決定を実現することができる。
【0093】
また、本実施形態に係るエレベータシステム1において、座席選択部303は、使用中座席との距離の合計値が最大となるように、利用者が着席する座席を決定する。
【0094】
これにより、執務室において利用者をバランスよく配置する、すなわち、利用者が執務室の一部で密にならないように配置することができる。これにより、例えば、執務室における、ウィルス等への感染リスクを低減することができる。
【0095】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、実施形態2以降の実施形態では、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材について同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0096】
<本実施形態の概要>
本実施形態に係るエレベータシステム1は、利用者が勤務する執務室、すなわち、利用者の行先階を、制御装置3が決定する。つまり、利用者は、自身の行先階を選択肢から選択しない。
【0097】
<座席案内処理>
図6は、本実施形態に係るエレベータシステム1が実行する座席案内処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、
図6において、実施形態1で説明した座席案内処理と同じ処理を実行するステップについては、
図3と同じステップ番号を付しており、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
【0098】
ステップS21において、階床選択部302は、ステップS11およびS12で選択した執務室から1つを選択する。例えば、階床選択部302は、選択した執務室から1つをランダムに選択する。階床選択部302は、選択した執務室のある階床を示す階床情報を通信制御部301および呼び実行部304へ出力する。呼び実行部304は、取得した階床情報に基づきステップS16およびS17を実行する。
【0099】
ステップd21において、通信制御部301は、通信部32を制御して、取得した階床情報、座席情報およびかご情報を行先階登録装置2へ送信する。これにより、行先階登録装置2は、ステップS5において、実施形態1で説明した登録内容画面を表示する。
【0100】
<作用効果>
以上のとおり、本実施形態に係るエレベータシステム1において、通信部23は、執務室がある階床の一部を示す情報として、1つの階床を示す階床情報を取得する。表示部22は、当該階床情報に基づき、登録画面を表示する。呼び実行部304は、階床情報が示す階床を行先階とする呼びを実行する。
【0101】
この構成によれば、利用者は座席案内のモードを選択すれば、施設のある階床のいずれかが自動的に行先階として登録される。これにより、執務室へ行こうとしている利用者は、行先階登録を簡易に行うことができる。
【0102】
<実施形態2の変形例>
階床選択部302は、勤務人数が最少の執務室を特定し、当該執務室がある階床を行先階として登録してもよい。つまり、階床選択部302は、
図6に示すステップS12を実行しなくてもよい。
【0103】
〔実施形態3〕
本発明のさらなる別の実施形態について、以下に説明する。
【0104】
<本実施形態の概要>
本実施形態に係るエレベータシステム1では、利用者が行先階登録装置2に対して操作入力を行うことで、その日の勤務で着席する座席を選択する。
【0105】
<座席案内処理>
図7は、本実施形態に係るエレベータシステム1が実行する座席案内処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、
図7において、実施形態1で説明した座席案内処理と同じ処理を実行するステップについては、
図3と同じステップ番号を付しており、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
【0106】
座席選択部303は、ステップS13で特定した執務室の座席の配置、空き座席および使用中座席を示す情報である座席候補情報を通信制御部301へ出力する。なお、座席選択部303は、座席候補情報を、執務室データベース311を参照して生成する。
【0107】
ステップd31において、通信制御部301は、取得した座席候補情報を行先階登録装置へ送信する。
【0108】
通信部23は、座席候補情報を受信する。ステップS31において、制御部20は、通信部23から取得した座席候補情報に基づき、空き座席の選択肢を表示する。
【0109】
図8は、行先階登録装置2のタッチスクリーンに表示される画像の一例を示す図である。具体的には、
図8に示す行先階登録装置2Cは、座席候補情報に基づき表示される座席選択画面、すなわち、利用者に座席を選択させる画面を表示している行先階登録装置2である。
【0110】
行先階登録装置2Cは、画像225を表示している。画像225は、座席候補情報に基づき表示されたGUIである。画像225における白抜きの正方形は空き座席を示し、黒塗りの正方形は使用中座席を示す。白抜きの正方形それぞれがGUIとなっており、利用者は、
図7に示すように、白抜きの正方形のいずれかに対する操作入力を行うことで、座席を選択する。
【0111】
また、本実施形態では、画像225が受け付ける操作はタッチ操作である例を説明するが、これに限定されない。
【0112】
再び
図7を参照して、座席案内処理の説明に戻る。ステップS32において、入力部21は座席選択操作を受け付ける。座席選択操作の具体例は、
図8に示す例における、左下の白抜きの正方形(GUI)に対するタッチ操作である。入力部21は、座席選択操作を示す操作信号を制御部20へ出力する。
【0113】
ステップd32において、制御部20は、座席選択操作を示す操作信号を取得したことに基づき、選択座席情報を生成する。そして、制御部20は、通信部23を制御して、選択座席情報を制御装置3へ送信する。なお、選択座席情報とは、座席選択操作で選択された座席を示す情報である。また、選択座席情報は、装置識別情報を含む。
【0114】
通信部32は、選択座席情報を受信する。通信制御部301は、通信部32から取得した選択座席情報を座席選択部303へ出力する。
【0115】
ステップS33において、座席選択部303は、選択座席情報に基づき、執務室データベース311を更新する。具体的には、座席選択部303は、選択座席情報が示す座席を使用中座席にする。また、座席選択部303は、選択座席情報が示す座席がある執務室の勤務人数をインクリメントする。そして、座席選択部303は、ステップS33の処理が終了したことを示す通知を呼び実行部304へ出力する。これにより、呼び実行部304はステップS16を実行する。
【0116】
<作用効果>
以上のとおり、本実施形態に係るエレベータシステム1において、通信部23は、座席候補情報を制御装置3から取得する。表示部22は、座席候補情報に基づき、画像225を表示する。入力部21は、画像225から1つの座席を選択する座席選択操作を受け付ける。座席選択部303は、座席選択操作により選択された座席を利用者の座席として決定し、使用中座席にする。
【0117】
この構成によれば、利用者は、提示された選択肢の中から座席を選択するため、自身にとって望ましい座席を選択することができる。
【0118】
<実施形態3の変形例>
座席選択部303は、
図3に示すステップS14の処理を実行し、各空き座席について、合計値が所定値以上である座席と、所定値未満である座席とを特定してもよい。すなわち、ステップd31において送信される座席候補情報は、合計値が所定値以上である空き座席、合計値が所定値未満である空き座席および使用中座席を示す情報が含まれる。制御部20は、ステップS31において、合計値が所定値未満である空き座席についても、使用中座席と同様に利用者が選択できない座席として画像225を表示してもよい。これにより、執務室で勤務する利用者を密にならないように配置することができる。
【0119】
〔実施形態4〕
本発明のさらなる別の実施形態について、以下に説明する。
【0120】
図9は、本実施形態に係るエレベータシステム1aに含まれる行先階登録装置2および制御装置3aの要部構成の一例を示すブロック図である。
【0121】
<制御装置3a>
本実施形態に係る制御装置3aが制御装置3と異なる点は、制御部30aを備えている点と、記憶部31を備えていない点である。
【0122】
制御部30aが制御部30と異なる点は、階床選択部302および座席選択部303を備えていない点である。
【0123】
また、本実施形態に係る通信部32(送信部、第2取得部)は、行先階登録装置2の他、フリーアドレス管理システム4(外部装置)と情報の送受信を行う。
【0124】
<フリーアドレス管理システム4>
フリーアドレス管理システム4は、フリーアドレスに関する各種処理を実行するとともに、各種情報を管理する。具体的には、フリーアドレス管理システム4は、制御装置3aからの要求に基づき、エレベータの利用者がその日に勤務する執務室を決定するとともに、当該執務室において利用者が着席する座席を決定する。また、フリーアドレス管理システム4は、執務室データベース311を記憶している。
【0125】
つまり、フリーアドレス管理システム4は、上記実施形態で説明した階床選択部302および座席選択部303と同様の処理を実行する。よって、本実施形態に係るエレベータシステム1aは、フリーアドレス管理システム4に、利用者がその日に勤務する執務室と、当該執務室において利用者が着席する座席とを選択させる。
【0126】
<座席案内処理>
図10は、本実施形態に係るエレベータシステム1aが実行する座席案内処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、
図10において、実施形態1で説明した座席案内処理と同じ処理を実行するステップについては、
図3と同じステップ番号を付しており、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
【0127】
ステップS41において、通信制御部301は、通信部23を制御して、行先階登録装置2から受信した座席案内開始指示に基づき、フリーアドレス管理システム4へ、執務室決定要求(選択指示)を送信する。ここで、執務室決定要求とは、利用者がその日に勤務する執務室の候補をフリーアドレス管理システム4に決定させる指示である。
【0128】
ステップS42において、通信制御部301は、通信部23を介して、上記執務室の候補を示す執務室情報をフリーアドレス管理システム4から受信する。これにより、通信制御部301は、行先階登録装置2へ執務室情報を送信することができる。
【0129】
ステップS43において、通信制御部301は、通信部23を制御して、行先階登録装置2から受信した選択階床情報に基づき、フリーアドレス管理システム4へ、座席決定要求を送信する。ここで、座席決定要求とは、利用者が選択した階床の執務室において、利用者が着席する座席をフリーアドレス管理システム4に決定させる指示である。
【0130】
ステップS44において、通信制御部301は、通信部23を介して、フリーアドレス管理システム4が決定した、利用者が着席する座席を示す座席情報を受信する。これにより、通信制御部301は、行先階登録装置へ座席情報を送信することができる。
【0131】
<作用効果>
以上のとおり、本実施形態に係るエレベータシステム1aにおいて、通信部23は、座席案内のモードが選択された場合、フリーアドレス管理システム4に対し、執務室決定要求を送信し、執務室情報を受信する。ここで、執務室決定要求は、利用者に提示する行先階の候補である、執務室がある階床のうちの一部を選択させる指示と表現することができる。また、執務室情報は、この一部の階床を示す情報と表現することができる。また、通信部23は、受信した執務室情報を行先階登録装置2へ送信する。
【0132】
この構成によれば、上記一部の階床をフリーアドレス管理システム4に選択させるので、既存のフリーアドレス管理システム4と連携すれば、利用者がその日に勤務する執務室の決定しつつ、当該執務室がある階床を行先階として登録することができる。
【0133】
<請求項4の変形例>
本実施形態では、建物に設けられた施設が執務室であることに基づき、フリーアドレス管理システム4が、利用者がその日に勤務する執務室の候補と、利用者が着席する座席とを決定する例を説明した。なお、利用者が利用する施設の候補と、利用者が着席する座席とを決定するシステムまたは装置は、施設に応じたものである。このため、当該システムまたは装置は、フリーアドレス管理システム4に限定されない。例えば、施設が喫煙室である場合、当該システムまたは装置は、喫煙室を管理するシステムまたは装置であればよい。
【0134】
また、通信制御部301は、執務室決定要求として、受信した座席案内開始指示をフリーアドレス管理システム4へ送信してもよい。また、通信制御部301は、座席決定要求として、受信した選択階床情報をフリーアドレス管理システム4へ送信してもよい。
【0135】
また、本実施形態に係る制御装置3aは、利用者がその日に勤務する執務室の候補を選択する機能と、利用者が着席する座席を選択する機能とについて、いずれも備えていない構成であった。これに対し、制御装置3aは、上記2つの機能のいずれかを備えている構成であってもよい。
【0136】
〔フロア移動のモード〕
続いて、フロア移動のモードについて説明する。当該モードは、エレベータの行先階登録のみを行うモード、すなわち、利用者がその日に勤務する執務室や着席する座席の選択は行わないモードである。
【0137】
<フロア移動処理>
図11は、上述したエレベータシステム1または1aが実行するフロア移動処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、
図11において、実施形態1で説明した座席案内処理と同じ処理を実行するステップについては、
図3と同じステップ番号を付しており、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
【0138】
ステップS51において、入力部21は、フロア移動操作を受け付ける。本実施形態に係るフロア移動操作とは、
図2に示す画像222へのタッチ操作である。入力部21は、フロア移動操作を示す操作信号を制御部20へ出力する。
【0139】
ステップS52において、制御部20は、フロア移動操作を示す操作信号を取得したことに基づき、階床の選択肢を表示部22に表示させる。
【0140】
図12は、行先階登録装置2のタッチスクリーンに表示される画像の一例を示す図である。具体的には、
図12に示す行先階登録装置2Dは、フロア移動操作を示す操作信号に基づき表示される階床の選択肢を含む階床選択画面を表示している行先階登録装置2である。
【0141】
行先階登録装置2Dは、画像226を表示している。画像226は、フロア移動操作を示す操作信号に基づき表示されたGUIであり、この例では、2~10のそれぞれのテキストを含む9つのGUIである。これらのGUIは、それぞれ2階から10階を示すGUIである。
【0142】
また、ここでは、画像226が受け付ける操作はタッチ操作である例を説明するが、これに限定されない。行先階登録装置2Dの例では、利用者は5階を示すGUIに対するタッチ操作を入力している。
【0143】
再び
図10を参照して、フロア移動処理の説明に戻る。ステップS53において、入力部21は、階床選択操作を受け付ける。階床選択操作の具体例は、
図11に示す行先階登録装置2Dの例における、5階を示すGUIに対するタッチ操作である。入力部21は、階床選択操作を示す操作信号を制御部20へ出力する。これにより、制御部20は、通信部23を制御して、選択階床情報を制御装置3(又は制御装置3a)へ送信する。
【0144】
ステップd51において、通信制御部301は、通信部32を制御して、呼び実行部304が選択階床情報に基づき決定したエレベータのかご(号機)を示すかご情報を行先階登録装置2へ送信する。かご情報の送信先である行先階登録装置2は、受信した選択階床情報に含まれる装置識別情報が示す行先階登録装置2である。
【0145】
通信部23はかご情報を受信する。ステップS54において、制御部20は、通信部23から取得したかご情報に基づき、登録内容を表示する。
【0146】
ここで、
図11を参照して登録内容の表示の具体例を説明する。
図11に示す行先階登録装置2Eは、かご情報と、ステップS53で受け付けた階床選択操作に基づき表示される登録内容画面、すなわち、利用者に登録内容を示す画面を表示している行先階登録装置2である。
【0147】
行先階登録装置2Eは、画像226、利用者が乗るべきエレベータの号機を示すテキスト、および、利用者の行先階を示すテキストを表示している。利用者は、登録内容画面を視認することにより、自身が乗るべきエレベータの号機を認識することができる。
【0148】
〔変形例〕
本開示に係る各実施形態では、建物に設けられた施設が執務室である例を説明したが、当該施設はこれに限定されない。当該施設は例えば、予備校や専門学校の自習室であってもよい。また、当該施設は、複数の利用者が同時に利用する施設でなくてもよい。また、当該施設は、利用者が座席に着席して利用する施設でなくてもよい。後者の場合、本開示に係るエレベータシステム1は、座席選択部303を備えていなくてもよい。
【0149】
また、建物に設けられた施設が、利用者が座席に着席して利用する施設であっても、本開示に係るエレベータシステム1やフリーアドレス管理システム4は、利用者が着席する座席を選択する機能を備えていなくてもよい。
【0150】
本開示に係るエレベータシステムは、上述した複数の実施形態を組み合わせた構成を含む。例えば、本開示に係るエレベータシステムは、実施形態2と4とを組み合わせた構成であってもよい。すなわち、フリーアドレス管理システム4が、利用者がその日に勤務する執務室を、利用者に選択肢を提示せずに決定してもよい。また例えば、本開示に係るエレベータシステムは、実施形態3と4とを組み合わせた構成であってもよい。すなわち、フリーアドレス管理システム4は、着席する座席の候補を、制御装置3aを介して行先階登録装置2へ送信してもよい。
【0151】
階床選択部302は、執務室の疎密の度合いに基づき、利用者に選択肢として提示する執務室(階床)を選択してもよい。具体的には、各執務室の現時点での勤務人数に代えて、当該勤務人数を各執務室の座席数で除算した値である、現時点での各執務室の利用率に基づき、利用者に選択肢として提示する執務室(階床)を選択してもよい。一例として、階床選択部302は、最も疎な執務室、すなわち、利用率が最少の執務室と、当該執務室との疎密の度合いの差分が所定値以下である執務室、すなわち、最小の利用率の値をpとしたとき、利用率がp+c以下である執務室とを選択してもよい。なお、cは所定の整数である。
【0152】
利用率を用いる構成とすることで、各執務室の座席数が異なっていても、目的に応じた利用者の配置を行うことができる。例えば、利用者を各執務室にバランスよく配置し、特定の執務室が密になることを抑制することができる。
【0153】
実施形態1および2において、座席選択部303は、あらかじめ決められた選択順序に基づき、利用者が着席する座席を決定してもよい。
図13は、座席の選択順序を示す図である。
図13において、座席を示す正方形内に記載された数字が、座席の選択順序を示す。なお、本変形例では、各着席者が隣接しないように、着席不可な座席が予め設定されているものとする。
図13に示す黒塗りの正方形は、当該着席負荷な座席を示す。なお、これは一例であり、すべての座席が着席可能であってもよい。
【0154】
座席選択部303は、選択階床情報が示す階床にある執務室を特定すると、当該執務室について、選択順序が「1」である座席について、座席が空き座席であるか使用中座席であるかを判定する。空き座席であると判定した場合、その座席を利用者が着席する座席として決定する。使用中座席であると判定した場合、次の選択順序の座席、すなわち選択順序が「2」の座席について、同様の処理を実行する。座席選択部303は、この処理を、利用者の座席が決定するまで繰り返す。
【0155】
〔ソフトウェアによる実現例〕
行先階登録装置2、制御装置3および制御装置3aの制御ブロック(特に制御部20、制御部30および制御部30a)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0156】
後者の場合、行先階登録装置2、制御装置3および制御装置3aは、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0157】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0158】
1 エレベータシステム
2 行先階登録装置
3、3a 制御装置
4 フリーアドレス管理システム(外部装置)
21 入力部(操作受付部)
22 表示部
23 通信部(取得部)
32 通信部(出力部、座席出力部、送信部、第2取得部)
302 階床選択部(選択部)
303 座席選択部(決定部)
304 呼び実行部