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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】ステアバイワイヤシステムの操舵部
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20220531BHJP
   B62D 1/04 20060101ALI20220531BHJP
   B62D 1/18 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
B62D5/04
B62D1/04
B62D1/18
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020553257
(86)(22)【出願日】2019-10-16
(86)【国際出願番号】 JP2019040751
(87)【国際公開番号】W WO2020080436
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2018197227
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】特許業務法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 祥史
(72)【発明者】
【氏名】田口 雄一郎
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第02442288(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0313341(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0037248(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0175499(US,A1)
【文献】実開昭61-049124(JP,U)
【文献】特開2000-061854(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第02861657(FR,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0273081(US,A1)
【文献】英国特許出願公開第02457244(GB,A)
【文献】米国特許第07862084(US,B2)
【文献】国際公開第2018/109039(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01686039(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/04
B62D 1/18
B62D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向の成分を有する方向に配された中心軸を有し、かつ、車体に対して該中心軸を中心とする回転を不能に支持されたハンドル支持軸と、
前後方向の成分を有する方向に配された回転中心軸を有し、かつ、前記ハンドル支持軸の後端部に対して、該回転中心軸を中心とする回転を自在に支持されたハンドルと、
を備え、
前記ハンドル支持軸の中心軸は、前記ハンドルの回転中心軸に対して上方にずれて配されており、
前記ハンドル支持軸は、前記車体に対して幅方向に配置されたチルト軸を中心とする揺動変位を可能に支持されており、および、
前記チルト軸は、前記ハンドル支持軸の前側に配されている、
ステアバイワイヤシステムの操舵部。
【請求項2】
前記チルト軸は、前記ハンドル支持軸の中心軸よりも下方に配されている、請求項1に記載のステアバイワイヤシステムの操舵部。
【請求項3】
前記チルト軸は、前記ハンドル支持軸の中心軸と上下方向に関して同じ位置に配されている、請求項1に記載のステアバイワイヤシステムの操舵部。
【請求項4】
前記ハンドルの回転中心軸は、前方に向かうほど下方に向かう方向に配されており、前記ハンドル支持軸の中心軸と前記ハンドルの回転中心軸との上下方向に関する間隔が、前方に向かうほど拡がっている、請求項1~3のうちの何れか1項に記載のステアバイワイヤシステムの操舵部。
【請求項5】
前記ハンドルの回転中心軸は、前方に向かうほど下方に向かう方向に配されており、前記ハンドル支持軸の中心軸と前記ハンドルの回転中心軸とが平行になっている、請求項1~3の何れか1項に記載のステアバイワイヤシステムの操舵部。
【請求項6】
前記ハンドル支持軸は、該ハンドル支持軸の後端部に固定された固定側ガイドを備え、前記ハンドルは、回転側ガイドを備え、該回転側ガイドが前記固定側ガイドに対して回転自在に支持されている、請求項1~のうちの何れか1項に記載のステアバイワイヤシステムの操舵部。
【請求項7】
前記回転側ガイドは、前記ハンドルの回転中心軸を中心とする周方向に伸長する形状を有しており、該回転側ガイドは、前記固定側ガイドに対して周方向の移動を自在に支持されている、請求項に記載のステアバイワイヤシステムの操舵部。
【請求項8】
前記固定側ガイドに対して回転自在に支持され、かつ、前記回転側ガイドの外径側および内径側のそれぞれに配された複数個のローラが備えられ、前記回転側ガイドは、前記複数個のローラにより転がり案内される、請求項に記載のステアバイワイヤシステムの操舵部。
【請求項9】
前記回転側ガイドの外径側と内径側とのうちの少なくとも一方の側において、前記ローラが、前記ハンドルの回転中心軸の方向に関する複数箇所に配されている、請求項に記載のステアバイワイヤシステムの操舵部。
【請求項10】
前記回転側ガイドと前記複数個のローラのうちの少なくとも1個のローラとが、前記ハンドルの回転中心軸の方向に関して係合することによって、前記回転側ガイドが前記固定側ガイドに対して、前記ハンドルの回転中心軸の方向に位置決めされている、請求項またはに記載のステアバイワイヤシステムの操舵部。
【請求項11】
前記回転側ガイドは、該回転側ガイドの周面に周方向に形成された周方向溝を備え、該周方向溝と前記少なくとも1個のローラが前記ハンドルの回転中心軸の方向に関して係合する、請求項10に記載のステアバイワイヤシステムの操舵部。
【請求項12】
前記回転側ガイドは、該回転側ガイドの周面に周方向に形成された周方向突条を備え、該周方向突条と前記少なくとも1個のローラとが前記ハンドルの回転中心軸の方向に関して係合する、請求項10に記載のステアバイワイヤシステムの操舵部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両に搭載されるステアバイワイヤシステムの操舵部に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載されるステアバイワイヤシステムは、運転者が操作するハンドルを有する操舵部と、1対の操舵輪に舵角を付与するためのアクチュエータを有する転舵部とを備え、操舵部と転舵部とは、電気的に結合されている。ステアバイワイヤシステムでは、ハンドルの操作量がセンサにより検出され、該センサの出力信号に基づいて、転舵部のアクチュエータが駆動されることにより、1対の操舵輪に舵角が付与される(たとえば、特開2004-268754号公報、特開2006-256453号公報参照)。
【0003】
従来のステアバイワイヤシステムの操舵部は、図18に示すように、運転者が操作するハンドル1と、後端部にハンドル1を支持固定したハンドル支持軸2と、車体に支持され、かつ、内側にハンドル支持軸2を回転自在に支持する筒状のハウジング(コラム)3とを備える。ハンドル支持軸2およびハウジング3は、前方に向かうほど下方に向かう方向に傾斜するように配置されている。ハンドル1は、ハンドル支持軸2と共に、ハウジング3に対して回転する。すなわち、ハンドル1の回転中心軸と、ハンドル支持軸2の中心軸とは、互いにほぼ一致している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-268754号公報
【文献】特開2006-256453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のステアバイワイヤシステムの操舵部は、ハンドル1とハンドル支持軸2とが共に、ハウジング3に対して回転する構造であることから、ハンドル1の回転中心軸とハンドル支持軸2の中心軸とが互いにほぼ一致しているため、ハンドル支持軸2およびハウジング3の存在に基づいて、運転席の足元の空間が上下方向に関して狭くなりやすい。したがって、運転席の足元の空間を上下方向に関してより広くする面から改良の余地がある。
【0006】
本発明の目的は、運転席の足元の空間を上下方向に関して広く確保することができる構造を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のステアバイワイヤシステムの操舵部は、ハンドル支持軸と、ハンドルとを備える。
前記ハンドル支持軸は、前後方向の成分を有する方向に配された中心軸を有し、かつ、車体に対して該中心軸を中心とする回転を不能に支持されている。
前記ハンドルは、前後方向の成分を有する方向に配された回転中心軸を有し、かつ、前記ハンドル支持軸の後端部に対して、該回転中心軸を中心とする回転を自在に支持されている。
前記ハンドル支持軸の中心軸は、前記ハンドルの回転中心軸に対して上方にずれて配されている。
【0008】
前記ハンドルの回転中心軸を、前方に向かうほど下方に向かう方向に配することができる。この場合、前記ハンドル支持軸の中心軸と前記ハンドルの回転中心軸との上下方向に関する間隔を、前方に向かうほど拡がるようにすることができる。あるいは、前記ハンドル支持軸の中心軸と前記ハンドルの回転中心軸とを、平行にすることができる。
【0009】
前記ハンドル支持軸は、該ハンドル支持軸の後端部に固定された固定側ガイドを備え、前記ハンドルは、回転側ガイドを備えることができる。該回転側ガイドが前記固定側ガイドに対して回転を自在に支持されることにより、前記ハンドルは、前記ハンドル支持軸の後端部に対して支持されることができる。
【0010】
前記回転側ガイドは、前記ハンドルの回転中心軸を中心とする周方向に伸長する形状を有することができる。この場合、前記回転側ガイドが前記固定側ガイドに対して周方向の移動を自在に支持されることにより、前記回転側ガイドが前記固定側ガイドに対して回転を自在に支持される。
【0011】
本発明のステアバイワイヤシステムの操舵部は、前記固定側ガイドに対して回転自在に支持され、かつ、前記回転側ガイドの外径側および内径側のそれぞれに配された複数個のローラを備えることができる。この場合、前記回転側ガイドは、前記複数個のローラにより転がり案内されることによって、前記固定側ガイドに対して周方向の移動を自在に支持される。
【0012】
前記回転側ガイドの外径側と内径側とのうちの少なくとも一方の側において、前記ローラは、前記ハンドルの回転中心軸の方向に関する複数箇所に配されることができる。
【0013】
本発明のステアバイワイヤシステムの操舵部は、前記回転側ガイドと前記複数個のローラのうちの少なくとも1個のローラとが、前記ハンドルの回転中心軸の方向に関して係合することによって、前記回転側ガイドが前記固定側ガイドに対して、前記ハンドルの回転中心軸の方向に位置決めされることができる。
【0014】
具体的には、前記回転側ガイドは、該回転側ガイドの周面に周方向に形成された周方向溝を備え、該周方向溝と前記少なくとも1個のローラとが前記ハンドルの回転中心軸の方向に関して係合することによって、前記回転側ガイドが前記固定側ガイドに対して、前記ハンドルの回転中心軸の方向に位置決めされることができる。
【0015】
あるいは、前記回転側ガイドは、該回転側ガイドの周面に周方向に形成された周方向突条を備え、該周方向突条と前記少なくとも1個のローラとが前記ハンドルの回転中心軸の方向に関して係合することによって、前記回転側ガイドが前記固定側ガイドに対して、前記ハンドルの回転中心軸の方向に位置決めされることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のステアバイワイヤシステムの操舵部によれば、運転席の足元の空間を上下方向に関して広く確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施の形態の第1例に係るステアバイワイヤシステムの操舵部を組み付けた車両の運転席およびその周辺部を模式的に示す側面図である。
図2図2(a)は、第1例に係るステアバイワイヤシステムの操舵部を、ハンドルの高さ位置を調節するためのチルト軸と共に示す側面図であり、図2(b)は、第1例の変形例を示す、図2(a)と同様の図である。
図3図3(a)は、第1例に係るステアバイワイヤシステムの操舵部を、ハンドルの前後位置を後端位置に調節した状態で示す側面図であり、図2(b)は、該操舵部をハンドルの前端位置に調節した状態で示す側面図である。
図4図4は、第1例に係るステアバイワイヤシステムの操舵部を示す斜視図である。
図5図5は、第1例に関して、ハンドルおよびハンドル支持軸をハンドルカバーを取り外した状態で示す、図4と同様の図である。
図6図6は、第1例に関して、ハンドルカバーを取り外した状態で示す、ハンドルの斜視図である。
図7図7は、第1例に関して、ハンドルの回転側ガイドとローラとを、ハンドルの回転中心軸の方向から見た模式図である。
図8図8は、第1例に関して、ハンドルの回転側ガイドとローラとを、ハンドルの回転中心軸を含む仮想平面で切断した断面の模式図である。
図9図9は、本発明の実施の形態の第2例に関する、図1に相当する図である。
図10図10は、第2例に係るステアバイワイヤシステムの操舵部の側面図である。
図11図11は、本発明の実施の形態の第3例に関して、ハンドルカバーを取り外した状態で、ハンドルを上方から見た斜視図である。
図12図12は、第3例に関して、ハンドルカバーを取り外した状態で、ハンドルを下方から見た斜視図である。
図13図13は、本発明の実施の形態の変形例の第1例に関して、ハンドルの回転側ガイドとローラとを、ハンドルの回転中心軸を含む仮想平面で切断した断面の模式図である。
図14図14は、本発明の実施の形態の変形例の第2例に関して、ハンドルの回転側ガイドとローラとを、ハンドルの回転中心軸を含む仮想平面で切断した断面の模式図である。
図15図15は、本発明の実施の形態の変形例の第3例に関する、図14と同様の図である。
図16図16は、本発明の実施の形態の変形例の第4例に関する、図13と同様の図である。
図17図17は、本発明の実施の形態の変形例の第5例に関する、図14と同様の図である。
図18図18は、ステアバイワイヤシステムの操舵部の従来構造の1例を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施の形態の第1例]
本発明の実施の形態の第1例について、図1図8を用いて説明する。なお、以下の説明中、ステアバイワイヤシステムに関して、前後方向、幅方向、および上下方向は、ステアバイワイヤシステムが搭載される車体の前後方向、幅方向、および上下方向をいう。
【0019】
本例のステアバイワイヤシステムは、図1に示すように、運転者Dが操作するハンドル1aを有する操舵部と、1対の操舵輪23に舵角を付与するためのアクチュエータを有する図示しない転舵部とを備え、操舵部と転舵部とが電気的に結合されている。本例のステアバイワイヤシステムでは、ハンドル1aの操作量がセンサにより検出され、該センサの出力信号に基づいて、転舵部のアクチュエータが駆動されることにより、1対の操舵輪23に舵角が付与される。
【0020】
本例のステアバイワイヤシステムの操舵部は、ハンドル1aと、ハンドル支持軸2aとを備える。
【0021】
ハンドル1aは、ハンドル支持軸2aの後端部に回転自在に支持されている。ハンドル1aの回転中心軸αは、前方に向かうほど下方に向かう方向に配されている。ハンドル支持軸2aは、前後方向に配された中心軸βを有し、かつ、車体に対して中心軸βを中心とする回転を不能に支持されている。すなわち、図18に示した従来構造と異なり、本例のステアバイワイヤシステムの操舵部では、使用時に、運転者Dの操作により、ハンドル1aが回転した場合でも、ハンドル支持軸2aが回転することはない。ステアバイワイヤシステムの操舵部が存在する前後方向の範囲内において、ハンドル支持軸2aの中心軸βは、ハンドル1aの回転中心軸αに対して上方にずれて配されている。特に、本例では、ハンドル支持軸2aの全体が、ハンドル1aの回転中心軸αよりも上方に配されている。また、ハンドル支持軸2aの中心軸βは、略水平に配されている。換言すれば、ハンドル支持軸2aの中心軸βは、水平面である車室の床面7に対して略平行に配されている。このため、ハンドル支持軸2aの中心軸βとハンドル1aの回転中心軸αとの上下方向に関する間隔は、前方に向かうほど拡がっている。
【0022】
ハンドル支持軸2aは、前側に配された前側軸部4と、後側に配された後側軸部5とを備え、かつ、前側軸部4と後側軸部5とを軸方向の相対変位を可能に同軸に組み合わせることにより、軸方向の伸縮を可能に構成されている。すなわち、ハンドル支持軸2aの中心軸βの方向と、ハンドル支持軸2aが伸縮する際に前側軸部4と後側軸部5とが相対変位する方向とは、互いに一致している。前側軸部4および後側軸部5のそれぞれは、筒状(図示の例では、四角筒状)の形状を有する。なお、本発明を実施する場合、前側軸部および後側軸部のそれぞれの断面形状は、特に問われない。すなわち、前側軸部および後側軸部のそれぞれは、図示の例のような四角筒状に造られたものに限らず、たとえば、円筒状、四角以外の多角筒状、異形筒状などの形状を有することができる。
【0023】
本例では、後側軸部5は、前側軸部4の内径側に、軸方向の摺動のみを可能に挿入されている。前側軸部4は、車体に対して、幅方向に配置されたチルト軸6を中心とする揺動変位のみを可能に支持されている。チルト軸6を中心とするハンドル支持軸2aの揺動変位に基づいて、ハンドル1aの高さ位置の調節を行うことが可能である。
【0024】
本例では、チルト軸6は、図2(a)に示すように、ハンドル支持軸2aの前側で、かつ、ハンドル支持軸2aの中心軸βよりも下方に配されている。より具体的には、チルト軸6は、ハンドル支持軸2aの中心軸βとハンドル1aの回転中心軸αとの上下方向に関する間にある位置に配されている。このため、ハンドル1aの高さ位置を調節する際に、ハンドル1aは、図2(a)の太線の矢印で示すように、回転中心軸αに対して略直角となる方向、すなわち、運転者Dが予測する方向に移動する。このため、ハンドル1aの高さ位置を調節する際に運転者Dに違和感を与えることが抑えられる。ただし、チルト軸6は、他の位置に配することもできる。たとえば、チルト軸6は、図2(b)に示すように、ハンドル支持軸2aの前側で、かつ、ハンドル支持軸2aの中心軸βと上下方向に関して同じ位置に配することもできる。
【0025】
ハンドル1aの高さ位置を調節できる範囲である、チルト軸6を中心としてハンドル支持軸2aを揺動変位させることができる範囲は、所定範囲に規制されている。この所定範囲は、図2(a)と図2(b)のいずれの構成においても、中心角δで示される範囲である。本例では、当該範囲の中央位置において、図示のように、ハンドル支持軸2aの中心軸βが、水平に配される。換言すれば、当該範囲の中央位置において、図1に示すように、ハンドル支持軸2aの中心軸βが、車室の床面7と平行に配される。
【0026】
本例では、ハンドル1aの高さ位置を調節する動作、すなわち、チルト軸6を中心としてハンドル支持軸2aを揺動変位させる動作は、図示しないチルト用電動アクチュエータによって行われる。
【0027】
本例では、ハンドル支持軸2aが伸縮すること、具体的には、前側軸部4に対して後側軸部5が軸方向変位することに基づいて、ハンドル1aの前後位置の調節を行うことができる。
【0028】
ハンドル1aの前後位置を調節できる範囲である、前側軸部4に対して後側軸部5を軸方向に変位させることができる範囲は、所定範囲に規制されている。図3(a)は、当該所定範囲において、ハンドル1aを最も後側に位置させた場合を示している。また、図3(b)は、当該所定範囲において、ハンドル1aを最も前側に位置させた場合を示している。なお、図3(b)に示すハンドル1aを最も前側に位置させた状態で、ハンドル1aの少なくとも一部が運転席の前側に備えられたハンドル収容部内に収容される構成を採用することもできる。
【0029】
本例では、ハンドル1aの前後位置を調節する動作、すなわち、前側軸部4に対して後側軸部5を軸方向に変位させる動作は、図示しないテレスコ用電動アクチュエータによって行われる。
【0030】
次に、ハンドル支持軸2aの後端部にハンドル1aを回転自在に支持するための構造について説明する。
【0031】
本例では、図5に示すように、ハンドル支持軸2aの後端部である後側軸部5の後端部に、固定側ガイド8が結合固定されている。
【0032】
ハンドル1aは、回転側ガイド9と、1対の取っ手10と、ハンドルカバー11とを備える。図5および図6は、ハンドル1aからハンドルカバー11を取り外した状態を示している。
【0033】
回転側ガイド9は、図5図7に示すように、ハンドル1aの回転中心軸αを中心とする周方向に伸長する形状を有しており、具体的には、略半円形状を有している。また、図2図7に示すような車両の直進時のハンドル1aの操舵位置において、回転側ガイド9の周方向中央部は、上端部に位置する。換言すれば、車両の直進時のハンドル1aの操舵位置において、回転側ガイド9は、回転中心軸αを中心とする円周上の略上半部に位置する。本例では、ハンドル支持軸2aの後端部に結合固定された固定側ガイド8に対して、ハンドル1aの回転側ガイド9を周方向の移動を自在に支持することによって、ハンドル支持軸2aの後端部にハンドル1aを、回転中心軸αを中心とする回転自在に支持している。本発明を実施する場合には、回転側ガイドの形状として、任意の中心角を有する円弧形状(中心角が180未満の円弧形状、中心角が180度の円弧形状、中心角が180度よりも大きい円弧形状)を採用できるほか、全周がつながった円形状の形状も採用することもできる。また、回転側ガイドの形状を円弧形状とする場合には、本例のように、車両の直進時のハンドル1aの操舵位置において、回転側ガイドの周方向中央部を上端部に位置させることが好ましい。このようにすれば、回転側ガイドをできるだけ上方に位置させることができるため、その分、運転席の足元の空間17(図1)を広くすることができる。
【0034】
1対の取っ手10は、それぞれの基端部が、回転側ガイド9の周方向両端部に結合固定されている。1対の取っ手10のそれぞれは、回転側ガイド9の周方向両端部から径方向外方に向けて伸長した1対の径方向腕部12と、径方向腕部12のそれぞれの径方向外端部から回転中心軸αと平行に後方に向けて伸長する1対の軸方向腕部13と、軸方向腕部13のそれぞれの後端部同士を連結する握り部14とを備える。握り部14は、運転者Dがハンドル1aを操作する際に握る部分である。なお、本発明を実施する場合、ハンドルの握り部の形状を、一般的な自動車のハンドルと同様の形状である円環形状とすることもできる。
【0035】
ハンドルカバー11は、略矩形箱形状を有しており、回転側ガイド9に取り付けられている。取り付け状態において、ハンドルカバー11の内側に、回転側ガイド9と、1対の取っ手10の径方向腕部12と、ハンドル支持軸2aの後端部に結合固定された固定側ガイド8とが収容される。
【0036】
本例では、ハンドル支持軸2aの後端部に結合固定された固定側ガイド8に対して、ハンドル1aの回転側ガイド9を周方向の移動を自在に支持するために、固定側ガイド8に対して複数個のローラ16が、回転のみを自在に支持されている。複数個のローラ16のそれぞれの回転中心軸γは、ハンドル1aの回転中心軸αと平行である。また、複数個のローラ16は、回転側ガイド9の外径側および内径側のそれぞれに配されている。回転側ガイド9は、複数個のローラ16により転がり案内されることによって、固定側ガイド8に対して周方向の移動を自在に支持されている。
【0037】
本例では、回転側ガイド9の外周面と内周面とのそれぞれに、1本の周方向溝15a、15bが周方向に形成されている。これらの周方向溝15a、15bのそれぞれに、ローラ16の外周部が係合している。これにより、固定側ガイド8に対して回転側ガイド9が軸方向に位置決めされる。
【0038】
本例では、回転側ガイド9の外径側に配されたローラ16と、回転側ガイド9の内径側に配されたローラ16との、周方向に関する配置の位相が互いにずれている。すなわち、回転側ガイド9の外径側に配されたローラ16の個数は、1個である。回転側ガイド9の外径側に配されたローラ16は、図7に示すように、ハンドル1aの回転中心軸αと同じ幅方向位置に対応する周方向位置に配されている。これに対して、回転側ガイド9の内径側に配されたローラ16の個数は、2個である。回転側ガイド9の内径側に配されたローラ16のそれぞれは、図7に示すように、ハンドル1aの回転中心軸αに対し、幅方向両側に同じ距離だけずれた周方向位置に配されている。なお、本発明を実施する場合、回転側ガイド9の外径側に配されたローラ16と、回転側ガイド9の内径側に配されたローラ16との、それぞれの個数および周方向に関する配置の位相は、本例と異ならせることもできる。
【0039】
本例のステアバイワイヤシステムの操舵部は、ハンドル1aの操作量(中立位置を基準とする両方向の回転角度)を検出するための図示しないハンドル操作量センサや、ハンドル1aに操作反力を付与するための図示しない反力付与装置などを備えることができる。ハンドル操作量センサとして、ハンドル1aに取り付けられる力計を採用することができる。また、ハンドル操作量センサとして、固定側ガイド8に対する回転側ガイド9の回転量(中立位置を基準とする両方向の回転角度)に基づいてハンドル1aの操作量を検出するセンサを採用することもできる。このようなセンサとして、回転側ガイド9の回転量を非接触で検出する磁気式の回転センサや、回転側ガイド9の回転量をローラ16、16aや専用のギヤなどの他の回転体の回転に変換してから検出する回転センサなどを採用することができる。
【0040】
本例のステアバイワイヤシステムの操舵部では、ハンドル支持軸2aの中心軸βが、ハンドル1aの回転中心軸αに対して上方にずれて配されている。このため、本例のステアバイワイヤシステムの操舵部によれば、図18に示した従来構造のように、ハンドル支持軸2の中心軸がハンドル1の回転中心軸とほぼ一致している構造に比べて、運転席の足元の空間17(図1)を上下方向に関して広く確保することができる。特に、本例では、ハンドル支持軸2aの全体が、ハンドル1aの回転中心軸αよりも上方に配されている。また、ハンドル支持軸2aの中心軸βは、略水平に配されている。換言すれば、ハンドル支持軸2aの中心軸βとハンドル1aの回転中心軸αとの上下方向に関する間隔は、前方に向かうほど拡がっている。このため、運転席の足元の空間17を上下方向に関して十分に広く確保することができる。したがって、運転席における居住性を向上させることができる。
【0041】
[実施の形態の第2例]
本発明の実施の形態の第2例について、図9および図10を用いて説明する。本例では、ハンドル支持軸2bの姿勢が、第1例と異なっている。すなわち、本例では、ハンドル支持軸2bの中心軸βは、ハンドル1aの回転中心軸αと平行に配されている。本例の構造では、ハンドル1aの前後位置を調節する際に、ハンドル1aは、ハンドル1aの回転中心軸αの方向、すなわち、運転者Dが予測する方向に移動する。このため、ハンドル1aの前後位置を調節する際に運転者Dに与える違和感が十分に抑えられる。その他の構成および作用は、第1例と同様である。
【0042】
[実施の形態の第3例]
本発明の実施の形態の第3例について、図11および図12を用いて説明する。本例では、回転側ガイド9aの外径側に配されるローラ16と、回転側ガイド9aの内径側に配されるローラ16とが、それぞれハンドルの回転中心軸αの方向に関して複数箇所(図示の例では4箇所)に備えられている。これらのローラ16のそれぞれが、回転側ガイド9aの外周面と内周面とに形成された周方向溝15a、15bに係合している。すなわち、本例では、回転側ガイド9aの外周面と内周面とのそれぞれの軸方向複数箇所(図示の例では4箇所)に、周方向溝15a、15bが形成されている。これらの周方向溝15a、15bのそれぞれに、ローラ16が係合している。
【0043】
本例では、回転側ガイド9aの外径側に配されるローラ16の周方向に関する配置の位相と、回転側ガイド9aの内径側に配されるローラ16の周方向に関する配置の位相とは、それぞれ第1例の場合と同じになっている。したがって、本例では、回転側ガイド9aの外径側に配されるローラ16と、回転側ガイド9aの内径側に配されるローラ16とは、それぞれ第1例と同じ周方向位置に、ハンドルの回転中心軸αの方向に関して複数個(図示の例では4個)ずつ並べて配されている。ただし、本発明を実施する場合、ハンドルの回転中心軸αの方向に関する複数箇所に備えられるローラは、必ずしも本例のように、ハンドルの回転中心軸αの方向に並べて配する必要はない。つまり、当該複数箇所に備えられるローラは、それぞれ任意の周方向位置に配することも可能である。
【0044】
本例では、回転側ガイド9aの外周面に形成された複数の周方向溝15aと、回転側ガイド9aの内周面に形成された複数の周方向溝15bとが、それぞれハンドルの回転中心軸αの方向に関して等間隔に配されている。ただし、本発明を実施する場合で、回転側ガイドの周面に複数の周方向溝を形成する場合には、これらの周方向溝をハンドルの回転中心軸αの方向に関して不等間隔に配することもできる。
【0045】
本例では、回転側ガイド9aの外周面に形成された周方向溝15aと、回転側ガイド9aの内周面に形成された周方向溝15bとの、ハンドルの回転中心軸αの方向に関する配置の位相が、互いに一致している。ただし、本発明を実施する場合には、たとえば、図13に示すように、回転側ガイド9bの外周面に形成された周方向溝15aと、回転側ガイド9bの内周面に形成された周方向溝15bとの、ハンドルの回転中心軸αの方向に関する配置の位相を、互いに異ならせることもできる。
【0046】
本例では、回転側ガイド9a(9b)の外径側に配されるローラ16と、回転側ガイド9a(9b)の内径側に配されるローラ16とが、それぞれハンドルの回転中心軸αの方向に関して複数箇所に配置されている。このため、固定側ガイド8(図5参照)に対する回転側ガイド9a(9b)の支持剛性(特に、モーメント剛性)を高めることができる。また、ハンドルの回転中心軸αの方向に関して複数箇所に備えられたローラ16のそれぞれが、回転側ガイド9a(9b)の外周面と内周面とに形成された周方向溝15a、15bに係合している。このため、固定側ガイド8に対する回転側ガイド9a(9b)の軸方向の位置決め剛性を高めることができる。その他の構成および作用は、第1例と同様である。
【0047】
本発明を実施する場合で、回転側ガイドの外径側または内径側に配されるローラを、ハンドルの回転中心軸αの方向に関する複数箇所に備え、かつ、該ローラを回転側ガイドの周面に形成された周方向溝に係合させる場合には、たとえば、図14に示すように、ハンドルの回転中心軸αの方向に関して異なる箇所に配されたローラ16を、回転側ガイド9cの周面に形成された共通の周方向溝15cに係合させることもできる。
【0048】
この場合に、たとえば、図15に示すように、周方向溝15cの幅方向内側面に接触するローラ16の回転中心軸γを、周方向溝15cの幅方向中央側に向かうほど周方向溝15cに近づく方向に傾斜させることもできる。このようにすれば、回転側ガイド9cがハンドルの回転中心軸αの方向に変位しようとする力を、ローラ16によって効率よく支承することができる。
【0049】
本発明を実施する場合で、回転側ガイドの外径側または内径側に配されるローラを、ハンドルの回転中心軸αの方向に関する複数箇所に配置する場合には、該複数箇所のうちの一部の箇所にのみ、ローラを係合させる周方向溝を形成することもできる。
【0050】
本発明を実施する場合には、回転側ガイドの周面とローラとの係合構造として、回転側ガイドの周面に形成された周方向溝とローラとの係合構造に代えて、たとえば、図16に示すような、回転側ガイド9dの外周面および内周面に周方向に形成された周方向突条18a、18bと、ローラ16aの外周面に形成された凹溝19との係合構造を採用することもできる。また、周方向突条18a、18bは、図示のように、回転側ガイド9dの本体部の外周面および内周面に周方向に形成された係合溝20a、20bに係合させたワイヤ21a、21bなどの別部材によって形成することができるほか、回転側ガイド9dの本体部に対して一体に形成することもできる。
【0051】
本発明を実施する場合には、たとえば、図17に示すように、回転側ガイド9eの外周面と内周面とのうちの少なくとも一方の周面を単なる円筒面22として、円筒面22にローラ16を転がり接触させる構成を採用することもできる。
【0052】
本発明の実施形態の各例の構造およびその変形例の構造(図1図17)は、相互に矛盾を生じない限り、適宜組み合わせて実施することができる。また、本発明のステアバイワイヤシステムの操舵部は、ハンドルの位置調節を手動で行う構造に適用したり、ハンドルの位置調節機能を備えていない構造に適用したりすることもできる。
【符号の説明】
【0053】
1、1a ハンドル
2、2a ハンドル支持軸
3 ハウジング
4 前側軸部
5 後側軸部
6 チルト軸
7 床面
8 固定側ガイド
9、9a~9e 回転側ガイド
10 取っ手
11 ハンドルカバー
12 径方向腕部
13 軸方向腕部
14 握り部
15a~15c 周方向溝
16、16a ローラ
17 足元の空間
18a、18b 周方向突条
19 凹溝
20a、20b 係合溝
21a、21b ワイヤ
22 円筒面
23 操舵輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16
図17
図18