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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】積層型インダクタ部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20220531BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
H01F17/00 D
H01F27/29 123
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021003684
(22)【出願日】2021-01-13
(62)【分割の表示】P 2017240997の分割
【原出願日】2017-12-15
(65)【公開番号】P2021057619
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】木戸 智洋
(72)【発明者】
【氏名】久保田 正博
(72)【発明者】
【氏名】阪田 智則
(72)【発明者】
【氏名】近藤 健太
(72)【発明者】
【氏名】田邉 新平
(72)【発明者】
【氏名】太田 由士行
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/076024(WO,A1)
【文献】特開2016-009861(JP,A)
【文献】特開2014-045081(JP,A)
【文献】特開2014-182891(JP,A)
【文献】特開2010-232343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00-27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体である素体と、
前記素体内で平面に沿って延伸する複数のコイル導体層が電気的に接続されたコイルと、を備え、
前記コイル導体層は、金属部とガラス部とを含み、
前記素体は、ガラスを含み、
前記コイル導体層の周囲10μm以内の前記素体のガラスを周辺ガラス、前記周辺ガラスよりさらに外側の前記素体のガラスを外郭ガラスとすると、前記周辺ガラスは、Bi,Li,Na,K,Mg,Ca,Sr,Ba,Co,Zn,B,Pb,Al,Zr,P,Vのいずれかであるフィラー元素を一種類以上含み、前記フィラー元素の濃度について、前記周辺ガラスの方が前記外郭ガラスよりも高い、
積層型インダクタ部品。
【請求項2】
請求項1に記載の積層型インダクタ部品において、
前記周辺ガラスのSiの濃度が、前記外郭ガラスのSiの濃度より低い、
積層型インダクタ部品。
【請求項3】
請求項1に記載の積層型インダクタ部品において、
前記素体の前記コイル導体層が延伸する平面に直交する方向の最も外側に位置するガラスを外層ガラスとすると、
前記周辺ガラスのSiの濃度が、前記外層ガラスのSiの濃度より低い、
積層型インダクタ部品。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の積層型インダクタ部品において、
前記複数のコイル導体層が含む金属部は複数の結晶子を形成しており、前記複数の結晶子の平均粒径は、0.5μm以上15.0μm以下である、
積層型インダクタ部品。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の積層型インダクタ部品において、
前記素体が焼結体である、
積層型インダクタ部品。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の積層型インダクタ部品において、
さらに、前記素体の外面に沿って配置され、それぞれ前記コイルの第1端、第2端と電気的に接続される第1外部電極、第2外部電極を備え、
前記外面は、前記第1外部電極及び前記第2外部電極の両方が配置された実装面と、前記第1外部電極のみが配置された第1端面と、前記第2外部電極のみが配置された第2端面とを含み、前記実装面、前記第1端面及び前記第2端面は、前記コイル導体層が延伸する平面と直交する、
積層型インダクタ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁体層とコイル導体層とを積層して形成される積層型インダクタ部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の通信機器のキャリヤ周波数の高周波数化にともない、これらの機器の信号送信部及び信号受信部には、GHz帯の高周波に対応したコイル状のインダクタが多数使用されるようになっている。
【0003】
このようなインダクタの一種類として、絶縁体である素体と素体内で平面に沿って延伸する複数のコイル導体層を有し、各コイル導体層を、素体内に形成されるビアを介して電気的に接続することにより、素体内にコイルを形成した積層型インダクタ部品が実用化されている。コイル導体層は、例えば、金属を樹脂に含有させた導電ペーストの焼成や、スパッタリングやめっき等によって形成される。
【0004】
上記のような積層型インダクタ部品では、高周波数で動作する通信機器の性能を向上させるために、高いQ値(quality factor)を確保することが必要となっている。Q値を向上させるためには、コイルの低抵抗化や素体外形に対して取得可能なインダクタンスの効率(インダクタンス取得効率)を上げることが求められる。
【0005】
ここで、コイル導体層を流れる高周波電流は、表皮効果によりコイル導体層の表面近傍を流れるため、高周波電流に対してコイルを低抵抗化するためには、コイル導体層の表面積を大きくすることが有効である。
【0006】
特許文献1には、焼成時に導電ペースト内において、樹脂がガス化して飛散する前に、当該樹脂の周囲で金属が焼結することによって形成される空孔により、コイル導体層の表面積を大きくしてコイルの低抵抗化を図るようにした積層型インダクタ部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-45081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図11は、特許文献1に開示された積層型インダクタ部品を示す。このインダクタ部品1では、コイル導体層2(コイル導体)内に形成される空孔3により、コイル導体層2の表面積を大きくしてコイルの低抵抗化が図られている。
【0009】
一方、導電ペースト内の樹脂のガス化温度は、通常、導電ペーストの主成分である金属粉の焼結完了温度よりも低いため、焼成後に空孔3がコイル導体層2の金属部に内包される形状とはなりにくい。
【0010】
また、コイル導体層2を覆う素体4の材料、例えばガラス粉等は、金属粉よりも焼結の進行が速いため、導電ペースト内で発生したガスが素体4の外部へ飛散しにくく、コイル導体層2の外周縁付近で滞留しやすく、当該領域で空孔3が形成されやすい。
【0011】
このようにして形成された積層型インダクタ部品1では、コイル導体層2の外周縁付近に形成される空孔3により、その外周縁は、実際には図11(a)や図11(b)に示すような平滑な形状とはならず、激しい凹凸が発生する。このような形状のコイル導体層2では、電流の円滑な流れが阻害され、電流の部分的な集中、磁束方向の乱れによる渦電流の発生等による損失が増大し、インダクタンスの取得効率が低下する。また、コイル導体層2の外周縁付近に形成される空孔3はコイル導体層2の強度を低下させ、コイルの断線や高抵抗化を招く原因ともなり得る。すなわち、特許文献1のように、コイル導体層2の空孔3によってコイルを低抵抗化しようとすると、様々な問題が発生する可能性がある。
【0012】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は空孔によらずコイルを低抵抗化し得る積層型インダクタ部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する積層型インダクタ部品は、絶縁体である素体と、前記素体内で平面に沿って延伸する複数のコイル導体層が電気的に接続されたコイルと、を備え、前記コイル導体層は、金属部とガラス部とを含み、前記素体は、ガラスを含み、前記コイル導体層の周囲10μm以内の前記素体のガラスを周辺ガラス、前記周辺ガラスよりさらに外側の前記素体のガラスを外郭ガラスとすると、前記周辺ガラスは、Bi,Li,Na,K,Mg,Ca,Sr,Ba,Co,Zn,B,Pb,Al,Zr,P,Vのいずれかであるフィラー元素を一種類以上含み、前記フィラー元素の濃度について、前記周辺ガラスの方が前記外郭ガラスよりも高い。
【発明の効果】
【0015】
本発明の積層型インダクタ部品によれば、空孔によらずコイルを低抵抗化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】積層型インダクタ部品を示す斜視図。
図2】積層型インダクタ部品の各部の概要を示す分解斜視図。
図3】(a)~(d)はコイル導体の焼成過程を示す説明図。
図4】(a)~(d)はコイル導体の焼成過程を示す説明図。
図5】(a)~(d)はコイル導体の焼成過程を示す概要図。
図6】焼成工程でのコイル導体を示す概要図。
図7】コイル導体の結晶子の径の算出方法を示す説明図。
図8】焼成工程でのコイル導体を示す概要図。
図9】焼成後の積層体を示す概要断面図。
図10】焼成後の積層体を示す概要平面図。
図11】(a)(b)は、従来の積層型コイル部品を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一態様である実施形態を図面に従って説明する。
図1に示す積層型インダクタ部品10は、絶縁体である素体11と、素体11内に形成されたコイル12と、素体11の外面に沿って配置され、それぞれコイル12の第1端、第2端と電気的に接続された第1外部電極13x、第2外部電極13yとを備える。
【0018】
素体11は、複数の絶縁体層が積層されて形成され、コイル12は、素体11内で絶縁体層の主面に相当する平面に沿って延伸する複数のコイル導体層がビア14で電気的に接続されて形成される。
【0019】
また、素体11の外面は第1外部電極13x及び第2外部電極13yの両方が配置された実装面11aと、第1外部電極13xのみが配置された第1端面11bと、第2外部電極13yのみが配置された第2端面11cとを含み、実装面11a、第1端面11b、第2端面11cは、絶縁体層の主面と直交する。すなわち、図1に示すように積層型インダクタ部品10では、実装面11a、絶縁体層の積層方向及びコイル12の巻回軸が平行となっている。
【0020】
図2は、積層型インダクタ部品10の各部の概略を示す。素体11構成する絶縁体層15a,15b,16a~16c,18、コイル12を構成するコイル導体層12a~12c及び第1外部電極13x、第2外部電極13yを構成する外部電極層13a~13eは、例えば図2の紙面下方から紙面上方に向かって積層される。図1においては、例えば素体11の前面側から背面側に向かって順次積層される。なお、積層方向は図1図2において、逆向きであってもよい。
【0021】
以下に、図2を用いて、積層型インダクタ部品10の製造方法の一例を示す。まず、図示しない基板上にガラス粉を含む絶縁ペーストをスクリーン印刷により繰り返し塗布してマーカ絶縁ペースト層18、外層用絶縁ペースト層15aをこの順に形成する。次いで、外層用絶縁ペースト層15a上に金属粉及びガラス粉を含む感光性の導電ペーストを塗布し、フォトリソグラフ工程によりパターニングして一対の外部電極パターン13aを形成する。
【0022】
一方の外部電極パターン13aは外層用絶縁ペースト層15aの実装面11aに相当する位置から第1端面11bに相当する位置にかけて、他方の外部電極パターン13aは外層用絶縁ペースト層15aの実装面11aに相当する位置から第2端面11c側に相当する位置にかけて、それぞれL字状に形成される。
【0023】
次いで、外部電極パターン13aが形成された外層用絶縁ペースト層15a上にガラス粉を含む感光性の絶縁ペーストを塗布し、フォトリソグラフ工程によりパターニングして外部電極パターン13a上に開口部17が形成された絶縁ペースト層16aを形成する。
【0024】
次いで、絶縁ペースト層16a上及び開口部17に上記の導電ペーストを塗布し、フォトリソグラフ工程によりパターニングして、一対の外部電極パターン13b及び絶縁ペースト層16aの主面に沿って約1周するように延伸するコイル導体パターン12aを形成する。コイル導体パターン12aは、外部電極パターン13bの一方に電気的に接続されるように一体として形成される。外部電極パターン13bは、開口部17を介して外部電極パターン13a上に積層され、互いに電気的に接続される。
【0025】
次いで、外部電極パターン13b及びコイル導体パターン12aが形成された絶縁ペースト層16a上に上記の感光性の絶縁ペーストを塗布し、フォトリソグラフ工程によりパターニングして、絶縁ペースト層16aと同様な開口部17及びビア14が形成された絶縁ペースト層16bを形成する。ビア14は、コイル導体パターン12aの外部電極パターン13bと接続されない側の端部上に形成される。
【0026】
次いで、絶縁ペースト層16b上、開口部17内及びビア14内に上記の導電ペーストを塗布し、フォトリソグラフ工程によりパターニングして一対の外部電極パターン13c及び絶縁ペースト層16bの主面に沿って約1周するように延伸するコイル導体パターン12bを形成する。コイル導体パターン12bの一方の端部は、ビア14内に塗布された導電ペーストを介して下層のコイル導体パターン12aに電気的に接続される。また、外部電極パターン13cは開口部17を介して外部電極パターン13b上に積層され、互いに電気的に接続される。
【0027】
以上と同様な工程を適宜組み合わせて繰り返すことにより、複数層の絶縁ペースト層16a~16d、開口部17を介して接続されたコイル導体パターン12a~12cが積層される。また、最上層のコイル導体パターン12cは、ビア14とは反対の端部側において他方の外部電極パターン13dに電気的に接続されるように一体として形成される。
【0028】
そして、外部電極パターン13eが形成された絶縁ペースト層16d上に絶縁ペーストが塗布されて外層用絶縁ペースト層15b及びマーカ絶縁ペースト層18をこの順に形成することにより、積層体が生成される。
【0029】
なお、図2に示す積層型インダクタ部品10は複数個同時に形成されてもよい。この場合、外部電極パターン13a~13e、コイル導体パターン12a~12cが行列状に複数並んだマザー積層体を形成し、マザー積層体を、ダイシングにより一つずつの積層体にカットすればよい。この時、図1に示すように、積層体の実装面11a、第1端面11b及び第2端面11cに相当する面から外部電極パターン13a~13eを露出させる。また、この場合は外部電極パターン13a~13e及び開口部17はL字状ではなく、T字状や十字状に形成し、上記ダイシングによってL字状としてもよい。
【0030】
次いで、積層体を所定の条件で焼成し、絶縁ペースト層、コイル導体パターン、外部電極パターンを焼結して、絶縁体層、コイル導体層、外部電極層を形成した後、バレル加工を施し、図1に示す素体11、コイル12及び外部電極13x,13yが形成される。その後、外部電極13x,13yに2μm~10μmの厚さを有するNiメッキ、Snメッキをこの順に施すことで、積層型インダクタ部品10が完成する。
【0031】
上記において、外層用絶縁ペースト層15a,15b、絶縁ペースト層16a~16d、マーカ絶縁ペースト層18の材料となる絶縁ペーストは、例えば、ガラス粉をワニスに含有させたガラスペーストである。なお、外層用絶縁ペースト層15a,15b、マーカ絶縁ペースト層18の材料となる絶縁ペーストは感光性であっても、非感光性であってもよい。また、マーカ絶縁ペースト層18の材料となる絶縁ペーストには顔料が含まれていてもよく、これによって、積層型インダクタ部品10の各面を識別することができる。
【0032】
また、コイル導体パターン12a~12c、外部電極パターン13a~13eを形成する感光性導電ペーストは、例えば、Ag、Cu、Auなどの金属粉及びガラス粉をワニスに含有させたペーストである。絶縁ペースト及び導電ペーストに含まれるガラス粉には、Bi,Li,Na,K,Mg,Ca,Sr,Ba,Co,Zn,B,Pb,Al,Zr,P,Vなどが添加されていてもよい。
【0033】
次に、このような金属粉及びガラス粉を含む導電ペーストが焼成工程で焼結したコイル導体層12a~12cの構成を説明する。
図3(a)~(d)は、各焼成温度t1~t3及び焼成時間T1,T2において焼結したコイル導体層12a~12cの構成を、コイル導体層12a~12cの延伸方向に直交する断面(横断面)で示す。
【0034】
焼成温度t1~t3は、t1<t2<t3、焼成時間T1,T2は、T1<T2である。すなわち、焼成工程が完了した際のコイル導体層12a~12cの焼結進行の度合いは図3(a)より図3(b)の方が進んでおり、図3(b)より図3(c)の方が進んでおり、図3(b)より図(d)の方が進んでいる。
【0035】
図3(a)~(d)に示すように、コイル導体層12a~12cは導電ペーストに含まれる金属粉が焼結した金属部Mと、ガラス粉が焼結したガラス部GLAとを含む。また、ガラス部GLAは、金属部Mに内包された内包ガラスGLAiと、金属部Mから露出する露出ガラスGLAoを含む。
【0036】
また、素体11はコイル導体層12a~12cの周囲10μm以内の素体11のガラスとして周辺ガラスGLBを含む。焼結が比較的進行していない図3(a)、図3(b)では、ガラス部GLAは、内包ガラスGLAiだけでなく、露出ガラスGLAoを含む一方、焼結が進行した図3(c)、(d)では、ガラス部GLAは、露出ガラスGLAoを含まず、内包ガラスGLAiのみを含むことが分かる。また、金属部Mの外周縁は、焼結の進行度合いに比例して平滑化されていることが分かる。
【0037】
このコイル導体層12a~12cの焼結過程の詳細を図5に示す模式図で説明する。図5(a)に示すように、焼成前のコイル導体パターン12a~12cは、光硬化した感光性導電ペーストであって、バインダーとしてのワニス19に金属粉Mとガラス粉GLAが分散する状態である。
【0038】
この状態で焼成が開始されると、図5(b)に示すように、ワニス19の燃焼飛散が進み、金属粉Mが焼結して金属部Mになるとともに、局部収縮(necking)が発生し、隣接する金属部Mの界面が増加する。このとき、ガラス粉GLAも焼結してガラス部GLAとなるが、ガラス部GLAのうち、比較的軟化点が低いものは軟化して金属部Mの界面を流動し始める。
【0039】
次いで、図5(c)に示すように、金属部Mの界面を流動する軟化したガラス部GLAによってさらに金属部Mの焼結が促進され、金属部Mの粒径が大きくなる。また、この際、ガラス部GLAとして、比較的軟化点が高く、流動量が少ないことで金属部Mに内包されて焼結した内包ガラスGLAi、比較的軟化点が低く、流動して金属部Mの外周縁で焼結した露出ガラスGLAoが形成される。なお、ガラス部GLAのうち、露出ガラスGLAoよりも軟化流動が進み、金属部Mの周囲に押し出されて焼結したものは素体11の周辺ガラスGLBとなる。したがって、この段階では、図3(a)、図3(b)に示す、金属部Mとガラス部GLAを含み、ガラス部GLAが内包ガラスGLAi及び露出ガラスGLAoを含むコイル導体層12a~12cが形成される。このとき、コイル導体層12a~12cは、軟化が進んだ周辺ガラスGLBに一部囲まれた状態で形成されるため、コイル導体層12a~12cの金属部M及び露出ガラスGLAoで構成される外周縁の平滑化が促進される。
【0040】
そして、図5(d)に示すように、さらに焼成が進行すると金属部Mの粒径がさらに大きくなり、露出ガラスGLAoは金属部Mの周囲に押し出されて周辺ガラスGLBとなる。これにより、この段階では図3(c)、図3(d)に示す、金属部Mとガラス部GLAを含み、ガラス部GLAが内包ガラスGLAiのみを含むコイル導体層12a~12cが形成される。このとき、コイル導体層12a~12cは、露出ガラスGLAoも金属部Mの周囲に押し出された状態で形成されるため、コイル導体層12a~12cの金属部Mの外周縁が平滑化される。
【0041】
上記のように、ガラス部GLAのうち、内包ガラスGLAiの割合は、露出ガラスGLAoの押し出し(周辺ガラスGLB化)量、すなわち焼結の進行度合いで制御することが可能である。
【0042】
図4(a)~(d)は、コイル導体層12a~12cを形成する導電ペーストのガラス粉にBiを添加した場合の各焼成温度t1~t3及び各焼成時間T1,T2において焼結したコイル導体層12a~12cの構成を示す。Biを添加することにより、ガラス粉が焼結したガラス部の軟化する温度(軟化点)は、Biを添加しないガラス粉が焼結したガラス部の軟化点よりも低くなる。
【0043】
この結果、図3と同じ焼成温度、焼成時間で比較しても、図3のコイル導体層12a~12cよりも焼結が進行し、ガラス部GLAのうち、内包ガラスGLAiの割合が多く、コイル導体層12a~12cの外周縁の平滑化が促進されていることが分かる。このように、ガラス部GLAのうち、内包ガラスの割合は、ガラス粉に添加するBiの有無によっても調整可能である。また、Biを添加したガラス粉が焼結したガラス部の軟化点の低下度合いは、Biの添加量に概ね比例する。したがって、上記内包ガラスの割合は、ガラス粉に添加するBiの添加量によっても調整可能である。
【0044】
なお、上記の説明から分かるように、コイル導体パターン12a~12cに含まれるガラス粉のうち、内包ガラスGLAiとならずに露出ガラスGLAoや周辺ガラスGLBとなるものは、比較的軟化点が低く、流動性が高いものである。したがって、コイル導体層12a~12cにおいて、露出ガラスGLAoの軟化点及び周辺ガラスGLBの軟化点は、内包ガラスGLAiの軟化点以下である。また、周辺ガラスGLBの軟化点は、露出ガラスGLAoの軟化点以下である。すなわち、軟化点は周辺ガラスGLB≧露出ガラスGLAo≧内包ガラスGLAiとなる。なお、素体11の中心部や外縁部などの周辺ガラスよりさらに外側の素体11のガラスを外郭ガラスとすると、周辺ガラスGLBの軟化点は、外郭ガラスの軟化点よりも低いことが好ましい。この場合、比較的軟化しやすい周辺ガラスGLBに囲まれた状態でコイル導体層12a~12cが形成されるため、コイル導体層12a~12cの外周辺の平滑化が促進されるとともに、比較的軟化しにくい外郭ガラスを有することで、素体11の強度や形状の安定性が向上する。
【0045】
また、ガラス部の軟化点を低くするためにガラス粉に添加するフィラー元素はBiに限られず、Bi,Li,Na,K,Mg,Ca,Sr,Ba,Co,Zn,B,Pb,Al,Zr,P,Vのいずれかであればよい。すなわち、周辺ガラスGLBは上記フィラー元素を一種類以上含むことが好ましく、このとき、フィラー元素の濃度(上記フィラー元素の濃度の合計値)について、周辺ガラスGLBの方が、外郭ガラスよりも高いことが好ましい。また、焼結過程の軟化点の観点から、コイル導体パターン12a~12cを形成する導体ペーストに含まれるガラス粉に、上記フィラー元素が一種類以上含まれる場合は、フィラー元素の濃度は、周辺ガラスGLB≧露出ガラスGLAo≧内包ガラスGLAiとなる。
【0046】
なお、図6に示すように、コイル導体層12a~12cの周囲10μmを超える領域、すなわち外郭ガラスにおいて、軟化点が低下すると、金属部Mの過度の流動により、隣接するコイル導体層12a~12c間で短絡が発生する可能性があるため、外郭ガラスにおいては、上記フィラー元素は含まないか、周辺ガラスGLBのフィラー元素の濃度よりも低いことが好ましい。
【0047】
また、ガラス中におけるフィラー元素の濃度が高いほど、ガラス中におけるSiの濃度が低くなるため、Siの濃度は、周辺ガラスGLB<外郭ガラスとなる。
また、積層型インダクタ部品10では、コイル導体層12a~12cが含む金属部Mは複数の結晶子を形成しており、結晶子の平均粒径は0.5μm以上15.0μm以下であることが好ましい。上記結晶子の平均粒径が0.5μm以上であることにより、電流の流れを抑制する結晶粒界が減少するため、コイル12の低抵抗化が可能となる。また、上記結晶子の平均粒径が15.0μm以下であることにより、結晶子の過度な大型化が抑制されてコイル導体層12a~12cの外周縁の平滑化が促進される。
【0048】
結晶子の平均粒径は、画像解析装置であるOIM(Orientation Imaging Microscopy)により解析される。また、OIMによって測定ができない場合は、FIB(Focused ion beam)及びSIM(Scanning ion Microscopy)を採用して解析してもよい。
【0049】
なお、後者の場合、図7に示すように、具体的にはコイル導体層12a~12cの断面画像において、金属部Mの結晶子20の面積を算出し、この面積と同一面積の真円の直径dを算出して、粒径とした上で、平均粒径を算出する。平均粒径の算出においては、例えば素体11の中央部を通過する断面からコイル導体層12a~12cの断面画像を5個取得し、その画像における結晶子20の粒径の算術平均を算出すればよい。
【0050】
また、軟化点の測定方法としては、素体11又はコイル導体層12a~12cから各ガラスを含む部分を試料として切り出して、高温顕微鏡により溶融状態の確認を行えばよい。詳しくは、真空中で試料を高温顕微鏡で観察しながら近赤外線等を用いて加熱し、試料の軟化状態を確認し、軟化が始まった点を軟化点とすればよい。
【0051】
なお、図8は、積層型インダクタ部品10の実施例において、焼成工程を完了させた状態を示す図である。図8においては、ガラスに含まれるフィラー元素の濃度を濃淡で表現しており、コイル導体層の部分を除いて、淡い部分がフィラー元素の濃度が高い領域、濃い領域がフィラー元素の濃度が低い領域である。上記実施例においては、ガラス粉を含む絶縁ペーストと、金属粉及びガラス粉を含む導電ペーストを用いて、当該絶縁ペーストからなる複数の絶縁ペースト層間に当該導電ペーストからなるコイル導体パターンが配置された積層体を形成した。また、上記実施例では、焼成工程によって、前記積層体を焼成して、上記金属粉、上記ガラス粉をそれぞれ金属部、ガラス部に焼結させた。さらに、上記実施例では、上記導電ペーストに含まれるガラス粉には、上記絶縁ペーストに含まれるガラス粉よりも軟化点が低いものを用いた。
【0052】
図8に示すように、上記積層体を焼成する工程において、上記導電ペーストに含まれるガラス粉が金属部に内包されて焼結した内包ガラスGLAi(図8のAの部分)と、上記導電ペーストに含まれるガラス粉が金属部の周囲に押し出されて焼結した周辺ガラスGLB(図8のBの部分)と、上記絶縁ペーストに含まれるガラス粉が焼結した外郭ガラス(図8のCの部分)が形成されていることが分かる。また、フィラー元素の濃度は、周辺ガラスGLB>外郭ガラスであることが分かる。
【0053】
また、素体11のコイル導体層12a~12cが延伸する平面に直交する方向(図9の紙面上下方向)の最も外側に位置するガラスを外層ガラスとすると、積層型インダクタ部品10においては、絶縁体層18(マーカ層)に含まれるガラスが外層ガラスとなる。ここで、周辺ガラスのSiの濃度が、外層ガラスのSiの濃度より低い、すなわち、外層ガラスにおける前述のフィラー元素の濃度が、周辺ガラスのフィラー元素の濃度よりも低い場合、素体11の最も外側に位置する絶縁体層18の明瞭性が向上する。このとき、図10に示すように、マザー積層体の絶縁体層18に個片化する際に使用されるアライメントマーク21が形成されているとすると、絶縁体層18の明瞭性の向上により、アライメントマーク21の視認性が向上し、個片化精度が向上する。
【0054】
一方、周辺ガラスのSiの濃度が、外層ガラスのSiの濃度より高い場合、外層ガラスにおいて機械的強度を向上させるフィラーを添加することが可能となり、素体11の強度が向上する。
【0055】
上記のように構成された積層型インダクタ部品では、次に示す効果を得ることができる。
(1)コイル導体層12a~12cは、金属部Mとガラス部GLAとを含み、ガラス部GLAは、金属部Mに内包された内包ガラスGLAiを含む。この構成では、内包ガラスGLAiによってコイル導体層12a~12cの表面積が大きくなる。すなわち、空孔によらずコイル12を低抵抗化することができ、前述の様々な問題が発生しない。
【0056】
また、例えば、積層型インダクタ部品10において、インダクタンスの取得効率を向上させるために、コイル導体層12a~12cの内径を拡大し、コイル導体層12a~12cの外周縁が素体11の外周縁に接近した場合でも、コイル導体層12a~12cには空孔が存在しないので、素体11の強度低下を抑制できる。
【0057】
(2)コイル導体層12a~12cの延伸方向に直交する横断面には、ガラス部GLAのうち、前記内包ガラスの割合が、面積比で50%未満となる横断面が含まれることが好ましい。この構成では、露出ガラスGLAoによっても、コイル導体層12a~12cの表面積が大きくなるため、コイル12の低抵抗化をさらに図ることができる。
【0058】
(3)コイル導体層12a~12cの延伸方向に直交する横断面には、ガラス部GLAのうち、前記内包ガラスの割合が、面積比で50%以上となる横断面が含まれることが好ましい。この構成では、コイル導体層12a~12cの表面積を大きくするとともに、コイル導体層12a~12cの金属部Mの外周縁の平滑化が促進される。従って、コイル12の中央部における磁束の発生方向の不均一による渦電流の発生を抑制して、高周波での損失を低減することができる。また、コイル12の機械的強度の低下を防止することができる。
【0059】
(4)コイル導体層12a~12cの延伸方向に直交する横断面には、ガラス部GLAのうち、内包ガラスGLAiの割合が、面積比で100%となる横断面が含まれることが好ましい。この構成では、コイル導体層12a~12cの金属部Mの外周縁の平滑化がさらに促進される。
【0060】
(5)コイル導体層12a~12cの延伸方向に直交する横断面には、コイル導体層12a~12cに対する内包ガラスGLAiの割合が、面積比で1.0%以上20.0%以下となる横断面が含まれることが好ましい。この構成では、上記内包ガラスGLAiの割合が、20.0%以下であることにより、コイル導体層12a~12cにおける電流の円滑な流れが促進される。また、上記内包ガラスGLAiの割合が、1.0%以上であることにより、コイル導体層12a~12cの表面積を大きくすることが可能となる。なお、上記で言及した面積比は、コイル導体層12a~12cの最も長い直線部分の中央断面にて達成されることが好ましく、また最も外側に位置するコイル導体層12a又はコイル導体層12bの断面にて達成されることが好ましい。これらの構成では、上記面積比による効果が最も顕著に発揮される。
【0061】
(6)周辺ガラスGLBの軟化点は、外郭ガラスの軟化点より低いことが好ましい。この構成では、比較的軟化しやすい周辺ガラスGLBに囲まれた状態でコイル導体層12a~12cが形成されるため、コイル導体層12a~12cの外周縁の平滑化が促進される。
【0062】
(7)周辺ガラスGLBの軟化点は、内包ガラスGLAiの軟化点以下とすることが好ましい。この構成では、比較的軟化しやすい周辺ガラスGLBに囲まれた状態でコイル導体層12a~12cが形成されるため、コイル導体層12a~12cの外周縁の平滑化が促進される。
【0063】
(8)周辺ガラスGLBには、フィラー元素を一種類以上含み、フィラー元素の濃度について、周辺ガラスGLBの方が外郭ガラスよりも高いことが好ましい。この構成では、比較的軟化しやすい周辺ガラスGLBに囲まれた状態でコイル導体層12a~12cが形成されるため、コイル導体層12a~12cの外周縁の平滑化が促進される。
【0064】
(9)周辺ガラスGLBのSiの濃度が、外郭ガラスのSiの濃度より低いことが好ましい。この構成では、比較的軟化しやすい周辺ガラスGLBに囲まれた状態でコイル導体層12a~12cが形成されるため、コイル導体層12a~12cの外周縁の平滑化が促進される。
【0065】
(10)周辺ガラスGLBのSiの濃度が、最外層の絶縁体層18が含む外層ガラスのSiの濃度より低いことが好ましい。この構成では、素体11の最も外側に位置する部分の明瞭性が向上し、アライメントマーク21の視認性が向上するので、個片化精度が向上する。
【0066】
(11)周辺ガラスGLBのSiの濃度を外層ガラスのSiの濃度より高くしても良く、この構成では、素体11の強度が向上する。
(12)コイル導体層12a~12cが含む金属部Mの結晶子の平均粒径は、0.5μm以上15.0μm以下であることが好ましい。この構成では、電子の流れを抑制する結晶粒界が減少するので、コイル導体層12a~12cの低抵抗化が可能となるとともに、結晶子の過度な大型化が抑制されてコイル導体層12a~12cの外周縁の平滑化が促進される。
【0067】
(13)素体11が焼結体であることが好ましい。この構成では、素体11の強度が向上する。
(14)素体11の外面は、第1外部電極13x及び第2外部電極13yの両方が配置された実装面11aと、第1外部電極13xのみが配置された第1端面11bと、第2外部電極13yのみが配置された第2端面11cとを含むことが好ましい。この構成では、積層型インダクタ部品10の基板実装時に、実装はんだが第1端面11b及び第2端面11cでフィレットを形成し、積層型インダクタ部品10の基板への固着力を向上することができる。また、この場合、実装面11a、第1端面11b及び第2端面11cは、コイル導体層12a~12cが延伸する平面(絶縁体層の主面)と直交することが好ましい。この構成では、コイル12で発生する磁束が第1外部電極13x及び第2外部電極13yに遮られにくく、渦電流損によるQ値低下を抑制することができる。
【0068】
(15)周辺ガラスGLBの軟化点は、ガラス部GLA(内包ガラスGLAi、露出ガラスGLAo)の軟化点以下であることが好ましい。この構成により、比較的軟化しやすい周辺ガラスGLBに囲まれた状態でコイル導体層12a~12cが形成されるため、コイル導体層12a~12cの外周縁の平滑化が促進される。
【0069】
(16)積層型インダクタ部品10は、ガラス粉を含む絶縁ペーストと、金属粉及びガラス粉を含む導電ペーストを用いて、絶縁ペーストからなる複数の絶縁ペースト層間に導電ペーストからなるコイル導体パターン12a~12cが配置された積層体を形成する工程と、積層体を焼成して、金属粉、ガラス粉をそれぞれ金属部M、ガラス部GLAに焼結させる工程と、を備え、導電ペーストに含まれるガラス粉には、絶縁ペーストに含まれるガラス粉よりも軟化点が低いものを用い、積層体を焼成する工程において、導電ペーストに含まれるガラス粉が金属部Mに内包されて焼結した内包ガラスGLAiと、導電ペーストに含まれるガラス粉が金属部Mの周囲に押し出されて焼結した周辺ガラスGLBを形成する製造方法を用いることが好ましい。この方法では、積層体を焼成する工程において形成される内包ガラスGLAi及び周辺ガラスGLBにより、コイル導体パターン12a~12cが焼結したコイル導体層12a~12cについて、表面積が大きくなり、外周縁の平滑化が促進される。
【0070】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・コイル導体層12a~12cの金属部Mは、Ag以外の良導体、例えばCuやAuで形成してもよい。また絶縁体層15a,15b,16a~16c,18は、ガラスではなく、フェライトや樹脂などを含む構成であってもよい。すなわち、素体11はガラス以外の焼結体や、焼結体以外であってもよい。なお、素体11が焼結体であれば、素体11の強度が向上する。また、外部電極に施されるめっきは特に限定されず、Sn,Ni,Ag,Cu,Pd,Auの単体及び合金、さらにこれらを複数組み合わせた多層構成であってもよい。
【0071】
・絶縁体層16と、絶縁体層16の開口部17、ビア14は、フォトリソグラフ以外の製法、例えば絶縁材料シートの圧着、スピンコート、絶縁ペーストの塗布後のレーザ加工あるいはドリル加工で形成してもよい。
【0072】
・コイル導体層12a~12cは、横断面の幅wと厚さtの比であるアスペクト比t/wが高いことが好ましい。表皮効果によって高周波電流はコイル導体層12a~12cの巻回形状の内側の側面を主に通過するため、厚さtが大きいと高周波電流に対する電気抵抗を低減できる。また、幅wが小さいと、相対的にコイル導体層12a~12cの巻回形状の内径部分を広く取ることができ、インダクタンスの取得効率を向上できる。
【0073】
・外部電極の形状は、特に限定されず、第1端面及びその隣接する4面並びに第2端面及びその隣接する4面に形成された形状であってもよいし、実装面だけに形成された形状であってもよい。
【0074】
・積層方向と実装面との関係も特に限定されず、積層方向と実装面とが直交する構成であってもよい。
・外形サイズは特に限定されず、例えば実装面における長手寸法と短手寸法を基準に、1005、0804、0603、0402などのサイズであってもよいし、これ以外の比率であってもよい。また高さ寸法は任意であって、長手寸法や短手寸法と同一であってもよい、これらと異なる寸法であってもよい。
【0075】
上記実施形態及び変更例から導き出せる技術思想を列挙する。
・絶縁体である素体と、前記素体内で平面に沿って延伸する複数のコイル導体層が電気的に接続されたコイルと、を備え、前記コイル導体層は、金属部とガラス部とを含み、前記ガラス部は、前記金属部に内包された内包ガラスを含む、積層型インダクタ部品。
【0076】
・絶縁体である素体と、前記素体内で平面に沿って延伸する複数のコイル導体層が電気的に接続されたコイルと、を備え、前記コイル導体層は、金属部とガラス部とを含み、前記素体は、ガラスを含み、前記コイル導体層の周囲10μm以内の前記素体のガラスを周辺ガラス、前記周辺ガラスよりさらに外側の前記素体のガラスを外郭ガラスとすると、前記周辺ガラスの軟化点は、前記外郭ガラスの軟化点より低い、積層型インダクタ部品。
【0077】
・ガラス粉を含む絶縁ペーストと、金属粉及びガラス粉を含む導電ペーストを用いて、前記絶縁ペーストからなる複数の絶縁ペースト層間に前記導電ペーストからなるコイル導体パターンが配置された積層体を形成する工程と、前記積層体を焼成して、前記金属粉、前記ガラス粉をそれぞれ金属部、ガラス部に焼結させる工程と、を備え、前記導電ペーストに含まれる前記ガラス粉には、前記絶縁ペーストに含まれる前記ガラス粉よりも軟化点が低いものを用い、前記積層体を焼成する工程において、前記導電ペーストに含まれる前記ガラス粉が前記金属部に内包されて焼結した内包ガラスと、前記導電ペーストに含まれる前記ガラス粉が前記金属部の周囲に押し出されて焼結した周辺ガラスを形成する、積層型インダクタ部品の製造方法。
【符号の説明】
【0078】
11…素体、12…コイル、13…外部電極、14…ビア、15a,15b…絶縁体層・外層用絶縁ペースト層、16a~16d…絶縁体層・絶縁ペースト層、20…結晶子、GLAi…内包ガラス、GLAo…露出ガラス、GLB…周辺ガラス。
図1
図2
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図5
図6
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図11