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特許7081722クロマトグラフシステム、オートサンプラおよび洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】クロマトグラフシステム、オートサンプラおよび洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/26 20060101AFI20220531BHJP
   G01N 30/24 20060101ALI20220531BHJP
   G01N 30/02 20060101ALI20220531BHJP
   G01N 30/18 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
G01N30/26 Q
G01N30/24 Z
G01N30/02 Z
G01N30/18 G
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021514689
(86)(22)【出願日】2019-04-16
(86)【国際出願番号】 JP2019016352
(87)【国際公開番号】W WO2020213061
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】柳林 潤
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-155516(JP,A)
【文献】国際公開第15/064687(WO,A1)
【文献】国際公開第15/008845(WO,A1)
【文献】特許第3826891(JP,B2)
【文献】特開2009-014396(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0067997(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 -30/96
B01J 20/281-20/292
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離カラムと、
複数の移動相のうち少なくとも1つを用いて分析用移動相または洗浄液を生成する生成部と、
前記生成部により生成された分析用移動相または洗浄液を受け入れ可能なオートサンプラとを備え、
前記オートサンプラは、
前記分析用移動相または前記洗浄液を排出可能なドレインポートと、
前記ドレインポートとは別個に設けられた洗浄液導出ポートと、
洗浄液を導入可能な洗浄液導入ポートと、
洗浄液調製動作時に、前記生成部により生成された洗浄液を前記洗浄液導出ポートから導出する第1の流路を構成し、分析動作時に、前記生成部により生成された分析用移動相および試料を前記分離カラムに供給する第2の流路を構成し、洗浄動作時に、前記洗浄液導入ポートを通して導入される洗浄液を洗浄対象部に供給する第3の流路を構成する流路構成部とを含む、クロマトグラフシステム。
【請求項2】
前記オートサンプラは、
前記分析動作時に、試料を吸入および吐出するニードルと、
前記ニードルにより吸入された試料を保持するサンプルループと、
前記第2の流路の一部を構成する試料注入ポートとをさらに含み、
前記ニードルは、前記分析動作時に、前記サンプルループに保持された試料を前記生成部により生成された分析用移動相とともに前記試料注入ポートに注入し、
前記洗浄対象部は、前記ニードルの内部、前記ニードルの外側、前記サンプルループおよび前記試料注入ポートのうち少なくとも1つを含む、請求項1記載のクロマトグラフシステム。
【請求項3】
前記第1の流路は、前記洗浄液導出ポートにつながる洗浄液注入ポートを含み、
前記ニードルは、前記洗浄液調製動作時に、前記生成部により生成された洗浄液を前記洗浄液注入ポートに注入する、請求項記載のクロマトグラフシステム。
【請求項4】
前記洗浄液注入ポートは、前記ニードルが挿入されたときに前記ニードルを封止するように構成される、請求項3記載のクロマトグラフシステム。
【請求項5】
前記洗浄液導出ポートから導出される洗浄液を貯留する貯留容器をさらに備え、
前記洗浄液導入ポートは、前記貯留容器内に配置される、請求項1または2記載のクロマトグラフシステム。
【請求項6】
前記洗浄液調製動作時に、分析条件に基づいて前記生成部による複数の移動相の混合比を制御する制御部をさらに備えた、請求項1または2記載のクロマトグラフシステム。
【請求項7】
前記制御部は、複数の試料についての連続的な分析動作が行われる場合に、前記分析条件に基づいて前記連続的な分析動作に要する洗浄液の量を算出し、算出された量の洗浄液を生成するように前記生成部を制御する、請求項6記載のクロマトグラフシステム。
【請求項8】
前記生成部は、前記分析動作時に、グラジエント分析が行われるように前記複数の移動相の混合比を変化させ、前記洗浄液調製動作時に、前記グラジエント分析における分析用移動相の溶出力以下の溶出力を有する洗浄液を生成する、請求項1または2記載のクロマトグラフシステム。
【請求項9】
複数の前記洗浄液導出ポートを備える、請求項1または2記載のクロマトグラフシステム。
【請求項10】
前記生成部により生成された洗浄液を前記複数の洗浄液導出ポートに選択的に供給する切替バルブをさらに備えた、請求項9記載のクロマトグラフシステム。
【請求項11】
生成部により生成された移動相が供給されるとともに、移動相および試料を分離カラムに供給するためのオートサンプラであって、
分析用移動相または洗浄液を排出可能なドレインポートと、
前記ドレインポートとは別個に設けられた洗浄液導出ポートと、
洗浄液を導入可能な洗浄液導入ポートと、
洗浄液調製動作時に、前記生成部から供給される移動相を前記洗浄液として前記洗浄液導出ポートから導出する第1の流路を構成し、分析動作時に、前記生成部から供給される移動相を前記分析用移動相として前記分離カラムに供給するとともに試料を前記分離カラムに供給する第2の流路を構成し、洗浄動作時に、前記洗浄液導入ポートから導入される洗浄液を洗浄対象部に供給する第3の流路を構成する流路構成部とを備えた、オートサンプラ。
【請求項12】
オートサンプラを通して分離カラムに移動相を供給するためのポンプにより前記移動相を用いて洗浄液を生成するステップと、
前記生成された洗浄液を貯留するステップと、
前記貯留された洗浄液を用いて前記オートサンプラの予め定められた洗浄対象部を洗浄するステップとを含む、オートサンプラの洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフシステム、オートサンプラおよびその洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフには、所定の量の試料を分離カラムに注入するためにオートサンプラが用いられる。オートサンプラによる試料の注入動作後には、オートサンプラのニードル、サンプルループ、注入ポートおよび計量ポンプのように試料が接触する部分が洗浄される(例えば、特許文献1および2参照)。それにより、分析後の試料の成分が次回の分析で検出されてしまうキャリーオーバ現象を抑制することができる。
【文献】特許第4228502号
【文献】特許第3826891号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載された液体クロマトグラフでは、低圧バルブの切り替えにより洗浄液容器に貯留されたリンス液(洗浄液)で計量ポンプを自動的に浄化することができる。特許文献2に記載されたオートサンプラでは、第1洗浄槽および第2洗浄槽が設けられ、試料ごとに第1洗浄槽と第2洗浄槽とを切り替えることができる。
【0004】
しかしながら、分析条件によって最適な洗浄液が異なる。そのため、分析実行者は、試料の分析前に最適な洗浄液を調製する必要がある。分析条件に応じて分析実行者が洗浄液を調製する作業は煩雑である。
【0005】
本発明の目的は、洗浄液の調製作業の負担を軽減することが可能なクロマトグラフシステム、オートサンプラおよびそれを用いた洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
クロマトグラフシステムは、分離カラムと、複数の移動相のうち少なくとも1つを用いて分析用移動相または洗浄液を生成する生成部と、生成部により生成された分析用移動相または洗浄液を受け入れ可能なオートサンプラとを備え、オートサンプラは、分析用移動相または洗浄液を排出可能なドレインポートと、ドレインポートとは別個に設けられた洗浄液導出ポートと、洗浄液を導入可能な洗浄液導入ポートと、洗浄液調製動作時に、生成部により生成された洗浄液を洗浄液導出ポートから導出する第1の流路を構成し、分析動作時に、生成部により生成された分析用移動相および試料を分離カラムに供給する第2の流路を構成し、洗浄動作時に、洗浄液導入ポートを通して導入される洗浄液を洗浄対象部に供給する第3の流路を構成する流路構成部とを含む。
【0007】
オートサンプラは、生成部により生成された移動相が供給されるとともに、移動相および試料を分離カラムに供給するためのオートサンプラであって、分析用移動相または洗浄液を排出可能なドレインポートと、ドレインポートとは別個に設けられた洗浄液導出ポートと、洗浄液を導入可能な洗浄液導入ポートと、洗浄液調製動作時に、生成部から供給される移動相を洗浄液として洗浄液導出ポートから導出する第1の流路を構成し、分析動作時に、生成部から供給される移動相を分析用移動相として分離カラムに供給するとともに試料を分離カラムに供給する第2の流路を構成し、洗浄動作時に、洗浄液導入ポートから導入される洗浄液を洗浄対象部に供給する第3の流路を構成する流路構成部とを備える。
【0008】
オートサンプラの洗浄方法は、オートサンプラを通して分離カラムに移動相を供給するためのポンプにより移動相を用いて洗浄液を生成するステップと、生成された洗浄液を貯留するステップと、貯留された洗浄液を用いてオートサンプラの予め定められた洗浄対象部を洗浄するステップとを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、洗浄液の調製作業の負担を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は実施の形態に係るクロマトグラフシステムの構成を示す図である。
図2図2は洗浄液注入ポートの構成の一例を示す模式的断面図である。
図3図3は実施の形態のクロマトグラフシステムの動作を示すフローチャートである。
図4図4は実施の形態に係るクロマトグラフシステムの動作を説明するための図である。
図5図5は実施の形態に係るクロマトグラフシステムの動作を説明するための図である。
図6図6は実施の形態に係るクロマトグラフシステムの動作を説明するための図である。
図7図7は実施の形態に係るクロマトグラフシステムの動作を説明するための図である。
図8図8は実施の形態に係るクロマトグラフシステムの動作を説明するための図である。
図9図9は実施の形態に係るクロマトグラフシステムの動作を説明するための図である。
図10図10は実施の形態に係るクロマトグラフシステムの動作を説明するための図である。
図11図11は比較例に係るクロマトグラフシステムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態に係るオートサンプラを含むクロマトグラフシステム、およびオートサンプラの洗浄方法について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
(1)クロマトグラフシステムの構成
図1は実施の形態に係るクロマトグラフシステムの構成を示す図である。図1のクロマトグラフシステム100は、例えば、高速液体クロマトグラフ質量分析システム(LC-MS)である。
【0013】
図1のクロマトグラフシステム100は、オートサンプラ1、クロマトグラフ装置2および制御部5を備える。オートサンプラ1は、サンプルループ11、ニードル12、計量ポンプ13、注入バルブ14、低圧バルブ15、選択バルブ16、試料注入ポート17、洗浄ポート18および洗浄液注入ポート19を含む。試料注入ポート17には、ニードルシールが設けられる。オートサンプラ1の構成要素(1~19)はケーシング内に設けられる。オートサンプラ1は、移動相受け入れポートPM、試料送出ポートPS、ドレインポートDR、洗浄液導出ポートC11~C13、および洗浄液導入ポートC21~C23を有する。オートサンプラ1内には、1または複数の試料容器60が配置される。また、オートサンプラ1の内部または外部に1または複数の洗浄液容器81~83が配置される。本実施の形態では、3個の洗浄液容器81~83が配置される。
【0014】
注入バルブ14は、6個のポートa~fを有し、注入状態と充填状態とに切り替え可能である。注入状態では、ポートa,b間、ポートc,d間、およびポートe,f間が接続される(図1の状態)。充填状態では、ポートb,c間、ポートd,e間、およびポートf,a間が接続される。
【0015】
注入バルブ14のポートaは流路P1を通して移動相受け入れポートPMに接続され、ポートbはサンプルループ11を通してニードル12に接続され、ポートcは流路P3を通して低圧バルブ15に接続される。注入バルブ14のポートdは流路P4を通してドレインポートDRに接続され、ポートeは流路P5を通して試料注入ポート17に接続され、ポートfは流路P6を通して試料送出ポートPSに接続される。
【0016】
低圧バルブ15は、流路P7を通して洗浄ポート18に接続され、流路P8を通して計量ポンプ13に接続される。流路P71の一端は低圧バルブ15に接続され、他端は洗浄液容器81に挿入される。流路P72の一端は低圧バルブ15に接続され、他端は洗浄液容器82に挿入される。流路P73の一端は低圧バルブ15に接続され、他端は洗浄液容器83に挿入される。本実施の形態では、流路P71~P73の他端が洗浄液導入ポートC21~C23に相当する。洗浄ポート18は、流路P10を通してドレインポートDRに接続される。
【0017】
洗浄液容器81~83には、後述する洗浄液調製動作により第1、第2および第3の洗浄液がそれぞれ貯留される。第1の洗浄液は、例えば、試料に含まれる成分を溶解する能力(溶出力)の低い弱溶媒(水、または水に低い濃度で混合された有機溶媒)を含む。第1の洗浄液を低い濃度を有する第1の洗浄液と呼ぶ。第2の洗浄液は、例えば、試料に含まれる成分を溶解する能力の高い強溶媒(有機溶媒、または水に高い濃度で混合された有機溶媒)を含む。第2の洗浄液を高い濃度を有する第2の洗浄液と呼ぶ。第3の洗浄液は、例えば、第1の洗浄液の濃度と第3の洗浄液の濃度との中間の濃度を有する。
【0018】
図2は洗浄液注入ポート19の構成の一例を示す模式的断面図である。図2に示すように、洗浄液注入ポート19は、流路19a、およびテーパ状の内面を有する開口部19bを有する。洗浄液注入ポート19の開口部19bにニードル12の先端が挿入されると、ニードル12の内部の流路12aと洗浄液注入ポート19の流路19aとが連通することにより連続する内部流路が形成されるとともに、ニードル12の先端と開口部19bの内面との隙間が封止される。このような構成により、ニードル12および洗浄液注入ポート19の配置の自由度が高い。例えば、流路12a,19aが横方向に延びるようにニードル12および洗浄液注入ポート19を配置することが可能である。また、洗浄液注入ポート19を開口部19bが下を向くように配置し、ニードル12を洗浄液注入ポート19の下方に配置することも可能である。
【0019】
図1に示すように、洗浄液注入ポート19の流路19a(図2)は、流路P9を通して選択バルブ16に接続される。流路P91の一端は選択バルブ16に接続され、他端は洗浄液容器81に挿入される。流路P92の一端は選択バルブ16に接続され、他端は洗浄液容器82に挿入される。流路P93の一端は選択バルブ16に接続され、他端は洗浄液容器83に挿入される。本実施の形態では、流路P91~P93の他端が洗浄液導出ポートC11~C13に相当する。注入バルブ14、低圧バルブ15、選択バルブ16および流路P1~P9,P71~P73,P91~P93が流路形成部FSを構成する。流路P1~P9,P71~P73,P91~P93は、例えば、配管により形成される。
【0020】
クロマトグラフ装置2は、供給部20、分離カラム24および検出器30を含む。供給部20は、分離ポンプ21,22およびミキサ23を含む。クロマトグラフ装置2の内部または外部に複数の移動相容器71,72が配置される。移動相容器71,72には、異なる種類の移動相が貯留される。例えば、移動相容器71には、小さな溶出力を有する第1の溶媒(通常は、水系溶媒)を含む移動相が貯留され、移動相容器72には、大きな溶出力を有する第2の溶媒(通常は、有機系溶媒)を含む移動相が貯留される。分離ポンプ21,22は、それぞれ移動相容器71,72に貯留された移動相をミキサ23の2つの流入ポートに供給する。ミキサ23は、分離ポンプ21,22により供給された2種類の移動相を混合する。ミキサ23の流出ポートは、移動相受け入れポートPMに接続される。
【0021】
分離カラム24は、試料送出ポートPSと検出器接続部31との間に接続される。検出器接続部31には、検出器30が接続される。検出器30は、ドレインポートDRに接続される。本実施の形態では、検出器30は、質量分析計である。検出器30はクロマトグラフ装置2に含まれてもよく、外部の検出器30がクロマトグラフ装置2の検出器接続部31に接続されてもよい。
【0022】
制御部5は、オートサンプラ1のニードル12、計量ポンプ13、注入バルブ14、低圧バルブ15および選択バルブ16を制御するとともに、クロマトグラフ装置2の供給部20および検出器30を制御する。それにより、クロマトグラフシステム100が動作するとともに、オートサンプラ1の洗浄方法が実施される。この制御部5は、CPU(中央演算処理装置)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(リードオンリメモリ)および記憶装置等を含む。記憶装置は、半導体メモリまたはメモリカード等の記憶媒体を含み、分析プログラムおよび分析メソッドファイルを記憶する。分析メソッドファイルには、種々の試料についての分析条件が規定されている。CPUは、記憶装置に記憶された分析プログラムをRAM上で実行することにより、記憶装置に記憶された分析メソッドファイルに基づいてクロマトグラフシステム100の動作の制御を行う。
【0023】
なお、制御部5は、例えば、オートサンプラ1の各部を制御するオートサンプラ制御部、クロマトグラフ装置2の各部を制御するクロマトグラフ制御部、ならびにオートサンプラ制御部およびクロマトグラフ制御部に各種指令を与えるシステム制御部により構成される。
【0024】
(2)クロマトグラフシステム100の動作
図3は実施の形態のクロマトグラフシステム100の動作を示すフローチャートである。図4図10は実施の形態に係るクロマトグラフシステム100の動作を説明するための図である。図4はパージ動作を示し、図5は洗浄液調製動作を示す。図6は分析動作における平衡化を示し、図7は分析動作における試料吸引を示し、図8は分析動作における試料注入および第1の基本洗浄動作を示し、図9は第2の基本洗浄動作を示し、図10はニードル内洗浄動作を示す。図4図10において、注目する流体の流れが太い実線、点線および一点鎖線で示される。
【0025】
まず、制御部5は、分析メソッドファイルから分析条件を取得する(ステップS1)。次いで、制御部5は、分析条件に基づいて1種類または複数種類の洗浄液の生成に用いる移動相の混合比を決定する(ステップS2)。また、制御部5は、分析条件に基づいて洗浄液の量を算出する(ステップS3)。同一の種類または異なる種類の複数の試料について異なる分析条件または同一の分析条件で連続的な分析動作が行われる場合には、連続的な分析動作に要する洗浄液の量が算出される。
【0026】
その後、クロマトグラフシステム100は、図4に示すパージ動作を行う(ステップS4)。図4に示すように、注入バルブ14が注入状態に切り替えられる。また、ニードル12が試料注入ポート17から洗浄ポート18に移動する。さらに、供給部20の分離ポンプ21,22が動作する。それにより、移動相容器71,72内の移動相が分離ポンプ21,22によりミキサ23に供給される。それにより、2種類の移動相が所定の比率で混合される。混合された移動相は、移動相受け入れポートPM、流路P1、注入バルブ14およびサンプルループ11を通してニードル12に供給される。ニードル12から吐出される移動相は、洗浄ポート18からドレインポートDRに排出される。分離ポンプ21,22の動作が停止し、ニードル12が洗浄ポート18から試料注入ポート17に戻る。それにより、パージ動作が終了する。
【0027】
次に、クロマトグラフシステム100は、図5に示す洗浄液調製動作を行う(ステップS5)。図5に示すように、ニードル12が洗浄液注入ポート19に移動する。また、選択バルブ16が流路P9と流路P91とを接続するように切り替えられる。供給部20の分離ポンプ21,22が動作する。それにより、移動相容器71,72内の移動相が分離ポンプ21,22によりミキサ23に供給され、2種類の移動相が決定された混合比率で混合される。混合された移動相は、移動相受け入れポートPM、流路P1、注入バルブ14およびサンプルループ11を通してニードル12に供給される。ニードル12から吐出される移動相は、第1の洗浄液として、洗浄液注入ポート19に注入され、流路P9、選択バルブ16および流路P91を通して洗浄液導出ポートC11から洗浄液容器81に供給される。それにより、低い濃度を有する第1の洗浄液が洗浄液容器81に貯留される。分離ポンプ21,22の動作が停止し、ニードル12が洗浄液注入ポート19から試料注入ポート17に戻る。それにより、洗浄液調製動作が終了する。
【0028】
次に、制御部5は、分析条件に基づいて他の濃度の洗浄液を調製すべき否かを判定する(ステップS6)。制御部5は、他の濃度の洗浄液を調製すべきと判定した場合には、ステップS2に戻り、調製すべき洗浄液の濃度に対応する混合比を決定し、ステップS3~S6の処理を行う。
【0029】
本実施の形態では、ステップS5の洗浄液調製動作において選択バルブ16が流路P9と流路P92とを接続するように切り替えられる。それにより、高い濃度を有する第2の洗浄液が洗浄液容器82に貯留される。同様にして、ステップS3~S6の処理が行われる。この場合、ステップS5の洗浄液調製動作において選択バルブ16が流路P9と流路P93とを接続するように切り替えられる。それにより、中程度の濃度を有する第3の洗浄液が洗浄液容器83に貯留される。
【0030】
第1の洗浄液は低い溶出力を有する。第2の洗浄液は高い溶出力を有する。第3の洗浄液は中程度の溶出力を有する。本実施の形態では、第1の洗浄液は、後述する高圧グラジエント分析における移動相の初期濃度以下の濃度を有する。それにより、第1の洗浄液は、高圧グラジエント分析における移動相の溶出力以下の溶出力を有する。洗浄液調製動作において構成される流路が第1の流路に相当する。
【0031】
ステップS6において他の洗浄液の調製を行わないと制御部5が判定した場合、クロマトグラフシステム100は分析動作を行う(ステップS7)。分析動作は、分離カラム24の平衡化動作(ステップS71)、試料の吸引動作(ステップS72)、および試料の注入動作(ステップS73)を含む。
【0032】
分離カラム24の平衡化動作では、図6に示すように、供給部20の分離ポンプ21,22が動作する。それにより、移動相容器71,72内の移動相が分離ポンプ21,22によりミキサ23に供給され、2種類の移動相が所定の比率で混合される。混合された移動相は、移動相受け入れポートPM、流路P1、注入バルブ14およびサンプルループ11を通してニードル12に供給される。ニードル12から吐出される移動相は、試料注入ポート17に注入され、流路P5、試料送出ポートPS、分離カラム24および検出器30を通してドレインポートDRから排出される。それにより、分離カラム24が移動相により平衡化される。分離ポンプ21,22の動作は継続する。
【0033】
試料の吸引動作では、図7に示すように、注入バルブ14が充填状態に切り替えられる。また、低圧バルブ15が流路P3と流路P8とを接続するように切り替えられる。ニードル12は、洗浄ポート18に移動する(図示せず)。ニードル12が洗浄ポート18内の洗浄液に浸漬されることによりニードル12の先端が洗浄される。その後、ニードル12は、1つの試料容器60に移動する。計量ポンプ13が吸引動作を行う。それにより、流路P8、低圧バルブ15、流路P3、注入バルブ14、サンプルループ11およびニードル12を通して試料容器60内の試料が吸引される。それにより、試料がサンプルループ11に充填される。その後、ニードル12は、洗浄ポート18に移動する(図示せず)。ニードル12が洗浄ポート18内の洗浄液に浸漬されることによりニードル12の先端が洗浄される。
【0034】
試料の注入動作では、図8に示すように、ニードル12が試料注入ポート17に移動する。また、注入バルブ14が注入状態に切り替えられる。それにより、ミキサ23により混合された移動相が移動相受け入れポートPM、流路P1、注入バルブ14およびサンプルループ11を通してニードル12に供給される。それにより、ニードル12からサンプルループ11内の試料が移動相とともに吐出される。ニードル12から吐出される試料および移動相は、試料注入ポート17、流路P5、注入バルブ14、流路P6および試料送出ポートPSを通して分離カラム24に供給される。それにより、分離カラム24に試料が注入される。分離カラム24において試料の成分が移動相に溶出することにより分離され、分離された試料が溶出試料として検出器30に供給される。それにより、検出器30により溶出試料の検出動作が行われ、クロマトグラムが得られる。分析動作において構成される流路が第2の流路に相当する。
【0035】
本実施の形態では、高圧グラジエント分析が行われる。この場合、分離ポンプ21,22は、オートサンプラ1による注入動作と同時または注入動作の後に、高圧グラジエント送液を実行する。一方の分離ポンプ21は、移動相容器71内の小さな溶出力を有する移動相をミキサ23に供給し、他方の分離ポンプ22は、移動相容器72内の大きな溶出力を有する移動相をミキサ23に供給する。この場合、ミキサ23から移動相受け入れポートPMに供給される移動相の濃度が時間経過とともに上昇するように、分離ポンプ21,22およびミキサ23が制御される。
【0036】
さらに、クロマトグラフシステム100は、図8図10に示す洗浄動作を行う(ステップS8)。洗浄動作は、第1の基本洗浄動作(ステップS81)、第2の基本洗浄動作(ステップS82)、およびニードル内洗浄動作(ステップS83)を含む。第1の基本洗浄動作、第2の基本洗浄動作およびニードル内洗浄動作の一部または全てが分析動作の一部と並行して行われてもよい。
【0037】
第1の基本洗浄動作では、図8に示すように、分離カラム24への試料の注入後、低圧バルブ15が流路P8と流路P71とを接続するように切り替えられる。計量ポンプ13が吸引動作を行うことにより、太い一点鎖線で示すように、洗浄液容器81内の第1の洗浄液が計量ポンプ13内に吸引される。
【0038】
次いで、低圧バルブ15が流路P3と流路P8とを接続するように切り替えられる。計量ポンプ13が吐出動作を行うことにより、太い一点鎖線で示すように、計量ポンプ13内の第1の洗浄液の一部が流路P8、低圧バルブ15、流路P3、注入バルブ14および流路P4を通してドレインポートDRから排出される。それにより、流路P3,P4,P8が洗浄される。
【0039】
第2の基本洗浄動作では、図9に示すように、低圧バルブ15が流路P7と流路P8とを接続するように切り替えられる。計量ポンプ13が吐出動作を行うことにより、太い一点鎖線で示すように、計量ポンプ13内の残りの第1の洗浄液が流路P8、低圧バルブ15、流路P8および洗浄ポート18を通してドレインポートDRから排出される。それにより、流路P7,P8,P10および洗浄ポート18が洗浄される。
【0040】
ニードル内洗浄動作では、図10に示すように、注入バルブ14が充填状態に切り替えられる。また、低圧バルブ15が流路P72と流路P8とを接続するように切り替えられる。計量ポンプ13が吸引動作を行うことにより、洗浄液容器82内の第2の洗浄液が計量ポンプ13内に吸引される。次いで、低圧バルブ15が流路P3と流路P8とを接続するように切り替えられる。計量ポンプ13が吐出動作を行うことにより、計量ポンプ13内の第2の洗浄液が流路P8、低圧バルブ15、流路P3、注入バルブ14およびサンプルループ11を通してニードル12に供給され、さらに試料注入ポート17、流路P5、注入バルブ14および流路P4を通してドレインポートDRから排出される。それにより、サンプルループ11、ニードル12および試料注入ポート17が高い溶出力を有する第2の洗浄液により洗浄される。
【0041】
同様にして、低圧バルブ15が流路P73と流路P8とを接続するように切り替えられ、計量ポンプ13が吸引動作を行うことにより、洗浄液容器83の第3洗浄液が計量ポンプ13内に吸引される。次いで、低圧バルブ15が流路P3と流路P8とを接続するように切り替えられ、計量ポンプ13が吐出動作を行うことにより、サンプルループ11、ニードル12および試料注入ポート17が中程度の溶出力を有する第3の洗浄液により洗浄される。
【0042】
最後に、低圧バルブ15が流路P71と流路P8とを接続するように切り替えられ、計量ポンプ13が吸引動作を行うことにより、洗浄液容器81内の第1の洗浄液が計量ポンプ13内に吸引される。次いで、低圧バルブ15が流路P3と流路P8とを接続するように切り替えられ、計量ポンプ13が吐出動作を行うことにより、サンプルループ11、ニードル12および試料注入ポート17が低い溶出力を有する第1の洗浄液により洗浄される。洗浄動作において構成される流路が第3の流路に相当する。
【0043】
なお、洗浄動作に用いる洗浄液の種類および順序は、上記の例に限定されず、分析条件に基づいて1種類または複数種類の洗浄液が用いられる。
【0044】
(3)比較例に係るクロマトグラフシステム100a
図11は比較例に係るクロマトグラフシステム100aの構成を示す図である。図11のクロマトグラフシステム100aは、図1のクロマトグラフシステム100における洗浄液注入ポート19、選択バルブ16および流路P91~P93を備えない。また、図10のクロマトグラフシステム100aは、洗浄液調製動作を行うことができない。したがって、分析実行者は、試料の分析の前に、分析条件に基づく洗浄液を調製する必要がある。この場合、分析実行者は、調製した洗浄液を洗浄液容器81~83に貯留し、分析前にオートサンプラ1の洗浄液導入ポートC21~C23を洗浄液容器81~83に挿入する。
【0045】
このように、分析実行者は、分析を行うごとに洗浄液の調製作業を行う必要がある。これに対して、本実施の形態に係るオートサンプラ1およびそれを含むクロマトグラフシステム100によれば、以下の効果が得られる。
【0046】
(4)実施の形態の効果
本実施の形態に係るクロマトグラフシステム100によれば、洗浄液調製動作時に、供給部20により複数種類の移動相のうち少なくとも1つを用いて洗浄液が生成される。生成された洗浄液はオートサンプラ1の移動相受け入れポートPM、ニードル12、洗浄液注入ポート19および選択バルブ16を通して複数の洗浄液導出ポートC11~C13のいずれかから選択的に導出される。
【0047】
したがって、洗浄液調製動作により導出された洗浄液を複数の洗浄液容器81~83のうち対応する洗浄液容器に貯留することができる。分析動作後の洗浄動作時には、複数の洗浄液容器81~83のうち選択された洗浄液容器に貯留された洗浄液を用いてサンプルループ11、ニードル12の内部、ニードル12の外側および試料注入ポート17のように試料に接触する洗浄対象部が洗浄される。それにより、キャリーオーバ現象が抑制される。
【0048】
このように、本実施の形態に係るクロマトグラフシステム100によれば、洗浄液の調製作業が自動化される。その結果、分析実行者による洗浄液の調製作業の負担を軽減することが可能となる。
【0049】
また、ニードル12の移動先を試料注入ポート17と洗浄液注入ポート19との間で変更することにより、分析動作時における分離カラム24への試料および移動相の供給と浄液調製動作時における洗浄液導出ポートC11~C13への洗浄液の供給とにおいて、ニードル12を併用することができる。それにより、部品点数の増加を抑制しつつ調製された洗浄液を洗浄液導出ポートC11~C13に導くことができる。
【0050】
さらに、分析条件に基づいて適切な混合比を有する洗浄液を自動的に調製することができる。また、分析条件に基づいて連続分析に要する量の洗浄液を自動的に調製することができる。それにより、分析実行者の作業負担がさらに軽減される。
【0051】
また、分析条件が変更されるごとに変更後の分析条件に適した量および濃度の洗浄液を自動的に調製することができる。それにより、分析実行者の作業負担がさらに軽減されるとともに、多数の種類の洗浄液を貯留する多数の洗浄液容器を保管するスペースが低減される。
【0052】
また、洗浄液調製動作において、高圧グラジエント分析における初期濃度以下の濃度を有する第1の洗浄液が調製されるので、洗浄動作後に第1の洗浄液が分離カラム24に流れ込んだ場合でも、次に分析される試料を分離カラム24で保持することができる。それにより、洗浄液による分離性能の低下が防止される。
【0053】
(5)他の実施の形態
上記実施の形態では、3つの洗浄液導出ポートC11~C13および3つの洗浄液導入ポートC21~C23が設けられているが、洗浄液導出ポートの数および洗浄液導入ポートの数は上記実施の形態における数に限定されない。1つ、2つまたは4つ以上の洗浄液導出ポートが設けられてもよく、1つ、2つまたは4つ以上の洗浄液導入ポートが設けられてもよい。また、上記実施の形態では、1つの洗浄液注入ポート19が設けられているが、複数の洗浄液注入ポート19が設けられてもよい。
【0054】
上記実施の形態では、検出器30として質量分析計が用いられるが、検出器30として、フォトダイオードアレイ検出器、蛍光検出器、紫外・可視検出器、電気化学検出器、電気伝導度検出器、示差屈折率検出器または蒸発光散乱検出器等の他の検出器が用いられてもよい。
【0055】
さらに、上記実施の形態のクロマトグラフシステム100におけるクロマトグラフ装置2は液体クロマトグラフ装置であるが、クロマトグラフ装置2が超臨界流体クロマトグラフ装置等の他のクロマトグラフ装置であってもよい。
【0056】
(6)態様
上述した複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0057】
(第1項) 一態様に係るクロマトグラフシステムは、
分離カラムと、
複数の移動相のうち少なくとも1つを用いて分析用移動相または洗浄液を生成する生成部と、
前記生成部により生成された分析用移動相または洗浄液を受け入れ可能なオートサンプラとを備え、
前記オートサンプラは、
前記分析用移動相または前記洗浄液を排出可能なドレインポートと、
前記ドレインポートとは別個に設けられた洗浄液導出ポートと、
洗浄液を導入可能な洗浄液導入ポートと、
洗浄液調製動作時に、前記生成部により生成された洗浄液を前記洗浄液導出ポートから導出する第1の流路を構成し、分析動作時に、前記生成部により生成された分析用移動相および試料を前記分離カラムに供給する第2の流路を構成し、洗浄動作時に、前記洗浄液導入ポートを通して導入される洗浄液を洗浄対象部に供給する第3の流路を構成する流路構成部とを含んでもよい。
【0058】
第1項に記載のクロマトグラフシステムによれば、洗浄液調製動作、分析動作および洗浄動作が行われる。洗浄液調製動作時には、生成部により生成された洗浄液が第1の流路を通して洗浄液導出ポートから導出される。分析動作時には、生成部により生成された分析用移動相および試料が第2の流路を通して分離カラムに供給される。洗浄動作時には、洗浄液導入ポートを通して導入される洗浄液が第3の流路を通して洗浄対象部に供給される。
【0059】
したがって、洗浄液調製動作により洗浄液導出ポートから導出された洗浄液を貯留容器に貯留することができる。洗浄動作時には、貯留容器に貯留された洗浄液により洗浄対象部を洗浄することができる。
【0060】
このように、洗浄液の調製作業が自動化される。その結果、分析実行者による洗浄液の調製作業の負担を軽減することが可能となる。
【0061】
(第2項) 第1項に記載のクロマトグラフシステムにおいて、
前記オートサンプラは、
前記分析動作時に、試料を吸入および吐出するニードルと、
前記ニードルにより吸入された試料を保持するサンプルループと、
前記第2の流路の一部を構成する試料注入ポートとをさらに含み、
前記ニードルは、前記分析動作時に、前記サンプルループに保持された試料を前記生成部により生成された分析用移動相とともに前記試料注入ポートに注入し、
前記洗浄対象部は、前記ニードルの内部、前記ニードルの外側、前記サンプルループおよび前記試料注入ポートのうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0062】
第2項に記載のクロマトグラフシステムによれば、分析動作時に試料に接触する洗浄対象部が洗浄される。それにより、キャリーオーバ現象が抑制される。
【0063】
(第3項) 第1項または第2項に記載のクロマトグラフシステムにおいて、
前記第1の流路は、前記洗浄液導出ポートにつながる洗浄液注入ポートを含み、
前記ニードルは、前記洗浄液調製動作時に、前記生成部により生成された洗浄液を前記洗浄液注入ポートに注入してもよい。
【0064】
第3項に記載のクロマトグラフシステムによれば、ニードルの移動先を試料注入ポートと洗浄液注入ポートとの間で変更することにより、分析動作時における分離カラムへの試料および移動相の供給と洗浄液調製動作時における洗浄液導出ポートへの洗浄液の供給とにおいて、ニードルを併用することができる。それにより、部品点数の増加を抑制しつつ調製された洗浄液を洗浄液導出ポートに導くことができる。
【0065】
(第4項) 第3項に記載のクロマトグラフシステムにおいて、
前記洗浄液注入ポートは、前記ニードルが挿入されたときに前記ニードルを封止するように構成されてもよい。
【0066】
第4項に記載のクロマトグラフシステムによれば、ニードルから吐出される洗浄液が洗浄液注入ポートから漏れ出ない。したがって、ニードルおよび洗浄液注入ポートの配置の自由度が高くなる。
【0067】
(第5項) 第1項~第4項のいずれか一項に記載のクロマトグラフシステムは、
前記洗浄液導出ポートから導出される洗浄液を貯留する貯留容器をさらに備え、
前記洗浄液導入ポートは、前記貯留容器内に配置されてもよい。
【0068】
第5項に記載のクロマトグラフシステムによれば、洗浄液調製動作時に洗浄液導出ポートから導出される洗浄液が貯留容器に貯留されるので、任意の時点で貯留容器内の洗浄液を洗浄動作に用いることができる。
【0069】
(第6項) 第1項~第5項のいずれか一項に記載のクロマトグラフシステムは、
前記洗浄液調製動作時に、分析条件に基づいて前記生成部による複数の移動相の混合比を制御する制御部をさらに備えてもよい。
【0070】
第6項に記載のクロマトグラフシステムによれば、分析条件に応じて適切な混合比を有する洗浄液を自動的に調製することができる。
【0071】
(第7項) 第6項に記載のクロマトグラフシステムにおいて、
前記制御部は、複数の試料についての連続的な分析動作が行われる場合に、前記分析条件に基づいて前記連続的な分析動作に要する洗浄液の量を算出し、算出された量の洗浄液を生成するように前記生成部を制御してもよい。
【0072】
第7項に記載のクロマトグラフシステムによれば、連続的な分析動作に要する量の洗浄液を自動的に調製することができる。
【0073】
(第8項) 第1項~第7項のいずれか一項に記載のクロマトグラフシステムにおいて、
前記生成部は、前記分析動作時に、グラジエント分析が行われるように前記複数の移動相の混合比を変化させ、前記洗浄液調製動作時に、前記グラジエント分析における分析用移動相の溶出力以下の溶出力を有する洗浄液を生成してもよい。
【0074】
第8項に記載のクロマトグラフシステムによれば、洗浄液が分離カラムに流れ込んだ場合でも、次に分析される試料を分離カラムで保持することができる。それにより、洗浄液による分離性能の低下が防止される。
【0075】
(第9項) 第1項~第8項のいずれか一項に記載のクロマトグラフシステムにおいて、
複数の前記洗浄液導出ポートを備えてもよい。
【0076】
第9項に記載のクロマトグラフシステムによれば、洗浄液調製動作により洗浄液を複数の洗浄液導出ポートから導出し、複数の貯留容器に貯留することが可能となる。したがって、調製された洗浄液を複数の貯留容器に貯留する作業負担が抑制される。
【0077】
(第10項) 第9項に記載のクロマトグラフシステムは、
前記生成部により生成された洗浄液を前記複数の洗浄液導出ポートに選択的に供給する切替バルブをさらに備えてもよい。
【0078】
第10項に記載のクロマトグラフシステムによれば、異なる種類の洗浄液を複数の洗浄液導出ポートから選択的に導出し、複数の貯留容器に貯留することが可能となる。したがって、異なる種類の洗浄液を調製し、複数の貯留容器に貯留する作業負担が抑制される。
【0079】
(第11項) 他の態様に係るオートサンプラは、生成部により生成された移動相が供給されるとともに、移動相および試料を分離カラムに供給するためのオートサンプラであって、
分析用移動相または洗浄液を排出可能なドレインポートと、
前記ドレインポートとは別個に設けられた洗浄液導出ポートと、
洗浄液を導入可能な洗浄液導入ポートと、
洗浄液調製動作時に、前記生成部から供給される移動相を前記洗浄液として前記洗浄液導出ポートから導出する第1の流路を構成し、分析動作時に、前記生成部から供給される移動相を前記分析用移動相として前記分離カラムに供給するとともに試料を前記分離カラムに供給する第2の流路を構成し、洗浄動作時に、前記洗浄液導入ポートから導入される前記洗浄液を洗浄対象部に供給する第3の流路を構成する流路構成部とを備えてもよい。
【0080】
第11項に記載のオートサンプラによれば、洗浄液調製動作により洗浄液導出ポートから導出された洗浄液を貯留容器に貯留することができる。洗浄動作時には、貯留容器に貯留された洗浄液により洗浄対象部を洗浄することができる。
【0081】
このように、洗浄液の調製作業が自動化される。その結果、分析実行者による洗浄液の調製作業の負担を軽減することが可能となる。
【0082】
(第12項) さらに他の態様に係るオートサンプラの洗浄方法は、
オートサンプラを通して分離カラムに移動相を供給するためのポンプにより前記移動相を用いて洗浄液を生成するステップと、
前記生成された洗浄液を貯留するステップと、
前記貯留された洗浄液を用いて前記オートサンプラの予め定められた洗浄対象部を洗浄するステップとを含んでもよい。
【0083】
第12項に記載のオートサンプラの洗浄方法によれば、分析動作時にオートサンプラに移動相を供給するポンプを用いて洗浄液の調製作業が自動化される。その結果、分析実行者による洗浄液の調製作業の負担を軽減することが可能となる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11