(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】無線通信デバイス製造システム
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20220531BHJP
B65H 20/10 20060101ALI20220531BHJP
H05K 13/04 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
G06K19/077 136
G06K19/077 196
G06K19/077 280
B65H20/10 B
H05K13/04 B
(21)【出願番号】P 2022502077
(86)(22)【出願日】2021-04-12
(86)【国際出願番号】 JP2021015178
(87)【国際公開番号】W WO2021210535
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2020072278
(32)【優先日】2020-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】山脇 喜典
(72)【発明者】
【氏名】加藤 登
(72)【発明者】
【氏名】鷲田 亮介
【審査官】松尾 真人
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-209009(JP,A)
【文献】特開2002-342735(JP,A)
【文献】実開平05-040247(JP,U)
【文献】特開2005-242971(JP,A)
【文献】特開2010-231728(JP,A)
【文献】特開2005-339502(JP,A)
【文献】特開2007-108983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/00-19/18
B65H 20/10
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナパターンを備えるアンテナ基材に、RFICチップを含むRFICモジュールを固定する無線通信デバイス製造システムであって、
前記RFICモジュールが絶縁性の接着層を介して固定される前記アンテナ基材を、前記RFICモジュールの実装位置を通過するように搬送する搬送装置と、
前記実装位置で前記アンテナ基材上に前記接着層を介して前記RFICモジュールを実装する実装装置と、
前記RFICモジュール実装後の前記アンテナ基材をその厚さ方向に挟持して前記RFICモジュールを前記接着層に押し付けるローラ対と、
前記実装装置に対して前記アンテナ基材の搬送方向の上流側で、自由に移動可能な状態で前記アンテナ基材上に載置された第1のダンサーローラと、
前記ローラ対に対して前記搬送方向の下流側で、自由に移動可能な状態で前記アンテナ基材上に載置された第2のダンサーローラと、を有し、
前記第1および第2のダンサーローラそれぞれは、前記アンテナ基材に載置される円筒部と、前記円筒部の両端に設けられた係止部とを備える、無線通信デバイス製造システム。
【請求項2】
前記実装位置で前記アンテナ基材を吸引して支持する吸着テーブルを有し、
前記吸着テーブルが前記アンテナ基材を吸引している間、前記ローラ対の2つのローラが互いに離間して前記アンテナ基材をリリースする、請求項1に記載の無線通信デバイス製造システム。
【請求項3】
前記吸着テーブルが前記アンテナ基材を吸引し、その後に前記ローラ対が前記アンテナ基材をリリースすると、前記実装装置が前記RFICモジュール
の感圧性
の前記接着層への載置を開始する、請求項2に記載の無線通信デバイス製造システム。
【請求項4】
前記吸着テーブルが、昇降可能であって、
前記吸着テーブルが、前記アンテナ基材の搬送中、降下して前記アンテナ基材から離間している、請求項2または3に記載の無線通信デバイス製造システム。
【請求項5】
前記搬送装置が、前記第2のダンサーローラに対して前記搬送方向の下流側に配置されて前記RFICモジュールが実装された前記アンテナ基材を巻き取り回収する回収リールを含んでいる、請求項1から4のいずれか一項に記載の無線通信デバイス製造システム。
【請求項6】
前記ローラ対が搬送装置に設けられ、
前記ローラ対の一方のローラが、前記アンテナ基材を搬送する搬送ローラである、請求項1から5のいずれか一項に記載の無線通信デバイス製造システム。
【請求項7】
前記接着層が、前記RFICモジュールが固定される前記アンテナ基材の部分上に予め設けられている、請求項1から6のいずれか一項に記載の無線通信デバイス製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信デバイスの製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、アンテナパターンが設けられたベースフィルム(アンテナ基材)を実装位置に向かって搬送し、その実装位置でアンテナパターンにシール付きRFIC(Radio-Frequency Integrated Circuit)素子(RFICモジュール)を貼り付けるRFIDタグ(無線通信デバイス)の製造方法が開示されている。テープに貼り付けられたシール付きRFIC素子をピックアップし、そのピックアップしたシール付きRFIC素子をアンテナパターンに貼り付ける(固定する)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された製造方法の場合、テープからシール付きRFIC素子を剥がしてピックアップする必要があるため、そのピックアップに時間がかかる。その結果、RFIC素子のアンテナ基材への固定に時間がかかる。
【0005】
そこで、本発明は、RFICチップを含むRFICモジュールとアンテナパターンとを有する無線通信デバイスにおいて、RFICモジュールをアンテナパターンが設けられたアンテナ基材に短時間で固定することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術的課題を解決するために、本発明の一態様によれば、
アンテナパターンを備えるアンテナ基材に、RFICチップを含むRFICモジュールを固定する無線通信デバイス製造システムであって、
前記RFICモジュールが絶縁性の接着層を介して固定される前記アンテナ基材を、前記RFICモジュールの実装位置を通過するように搬送する搬送装置と、
前記実装位置で前記アンテナ基材上に前記接着層を介して前記RFICモジュールを実装する実装装置と、
前記RFICモジュール実装後の前記アンテナ基材をその厚さ方向に挟持して前記RFICモジュールを前記接着層に押し付けるローラ対と、
前記実装装置に対して前記アンテナ基材の搬送方向の上流側で、自由に移動可能な状態で前記アンテナ基材上に載置された第1のダンサーローラと、
前記ローラ対に対して前記搬送方向の下流側で、自由に移動可能な状態で前記アンテナ基材上に載置された第2のダンサーローラと、を有し、
前記第1および第2のダンサーローラそれぞれは、前記アンテナ基材に載置される円筒部と、前記円筒部の両端に設けられた係止部とを備える、無線通信デバイス製造システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、RFICチップを含むRFICモジュールとアンテナパターンとを有する無線通信デバイスにおいて、RFICモジュールをアンテナパターンが設けられたアンテナ基材に短時間で固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る無線通信デバイス製造システムで製造される一例の無線通信デバイスの斜視図
【
図5】本発明の一実施の形態に係る無線通信デバイス製造システムの概略的構成図
【
図6】RFICモジュールを実装中の無線通信デバイス製造システムの部分的斜視図
【
図8】ロールシートの搬送に関連する複数のローラを示す斜視図
【
図10】無線通信デバイス製造システムの動作のタイミングチャート
【
図11】RFICモジュールを実装中の無線通信デバイス製造システムを示す図
【
図12】RFICモジュールが実装されたロールシートの部分を実装装置から搬出中の無線通信デバイス製造システムを示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様の無線通信デバイス製造システムは、アンテナパターンを備えるアンテナ基材に、RFICチップを含むRFICモジュールを固定する無線通信デバイス製造システムであって、前記RFICモジュールが絶縁性の接着層を介して固定される前記アンテナ基材を、前記RFICモジュールの実装位置を通過するように搬送する搬送装置と、前記実装位置で前記アンテナ基材上に前記接着層を介して前記RFICモジュールを実装する実装装置と、前記RFICモジュール実装後の前記アンテナ基材をその厚さ方向に挟持して前記RFICモジュールを前記接着層に押し付けるローラ対と、前記実装装置に対して前記アンテナ基材の搬送方向の上流側で、自由に移動可能な状態で前記アンテナ基材上に載置された第1のダンサーローラと、前記ローラ対に対して前記搬送方向の下流側で、自由に移動可能な状態で前記アンテナ基材上に載置された第2のダンサーローラと、を有し、前記第1および第2のダンサーローラそれぞれは、前記アンテナ基材に載置される円筒部と、前記円筒部の両端に設けられた係止部とを備える。
【0010】
このような態様によれば、RFICチップを含むRFICモジュールとアンテナパターンとを有する無線通信デバイスにおいて、RFICモジュールをアンテナパターンが設けられたアンテナ基材に短時間で固定することができる。
【0011】
例えば、無線通信デバイス製造システムは、前記実装位置で前記アンテナ基材を吸引して支持する吸着テーブルを有し、前記吸着テーブルが前記アンテナ基材を吸引している間、前記ロール対の2つのローラが互いに離間して前記アンテナ基材をリリースしてもよい。アンテナ基材が薄い場合、ロール対がアンテナ基材をリリースすることにより、吸着テーブルは、しわや浮きを発生することなくアンテナ基材を吸引することができる。
【0012】
例えば、前記吸着テーブルが前記アンテナ基材を吸引し、その後に前記ローラ対が前記アンテナ基材をリリースすると、前記実装装置が前記RFICモジュールの前記感圧性接着層への載置を開始してもよい。これにより、実装装置は、しわや浮きがない平坦なアンテナ基材上の感圧性接着剤層にRFICモジュールを実装することができる。
【0013】
例えば、前記吸着テーブルが、昇降可能であって、前記吸着テーブルが、前記アンテナ基材の搬送中、降下して前記アンテナ基材から離間してもよい。これにより、搬送中のアンテナ基材と吸着テーブルとの間の摩擦の発生を抑制でき、少なくとも一方の摩耗を抑制し静電気の発生を抑制することができる。
【0014】
例えば、前記搬送装置が、前記第2のダンサーローラに対して前記搬送方向の下流側に配置されて前記RFICモジュールが実装された前記アンテナ基材を巻き取り回収する回収リールを含んでいてもよい。回収リールに巻回されることにより、RFICモジュールが感圧性接着層に向かって押圧され続け、それによりRFICモジュールが時間をかけて感圧性接着層に固定される。
【0015】
例えば、前記ローラ対が搬送装置に設けられる場合、前記ローラ対の一方のローラが、前記アンテナ基材を搬送する搬送ローラであってもよい。
【0016】
例えば、前記接着層が、前記RFICモジュールが固定される前記アンテナ基材の部分上に予め設けられてもよい。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態に係る無線通信デバイス製造システムで製造される一例の無線通信デバイスの斜視図であって、
図2は無線通信デバイスの上面図である。図中のu-v-w座標系は、発明の理解を容易にするためのものであって、発明を限定するものではない。u軸方向は無線通信デバイスの長手方向を示し、v軸方向は幅方向を示し、w軸方向は厚さ方向を示している。
【0019】
図1および
図2に示すように、無線通信デバイス10は、ストリップ状であって、いわゆるRFID(Radio-Frequency IDentification)タグとして使用される。
【0020】
具体的には、
図1および
図2に示すように、無線通信デバイス10は、アンテナ部材12と、アンテナ部材12に設けられたRFIC(Radio-Frequency Integrated Circuit)モジュール14とを有する。
【0021】
無線通信デバイス10のアンテナ部材12は、ストリップ状(細長い矩形状)であって、アンテナ基材16と、アンテナ基材16の一方の表面16a(アンテナ部材12の第1の主面12a)に設けられたアンテナパターン18A、18Bとを備える。
【0022】
アンテナ基材16は、ポリイミド樹脂などの絶縁材料から作製された可撓性のシート状の部材である。
図1および
図2に示すように、アンテナ基材16はまた、アンテナ部材12の第1の主面12aおよび第2の主面12bとして機能する表面16a、16bを備える。アンテナ部材12の主要の構成要素であるアンテナ基材16が可撓性を備えるので、アンテナ部材12も可撓性を備えることができる。
【0023】
アンテナパターン18A、18Bは、無線通信デバイス10が外部の通信装置(例えば、無線通信デバイス10がRFIDタグとして使用されている場合には、リーダ/ライター装置)と無線通信するためのアンテナとして使用される。本実施の形態の場合、アンテナパターン18A、18Bは、例えば、銀、銅、アルミニウムなどの金属箔から作製された導体パターンである。
【0024】
また、アンテナパターン18A、18Bは、電波を送受信するための放射部18Aa、18Baと、RFICモジュール14と電気的に接続するための結合部18Ab、18Bb(第1および第2の結合部)とを含んでいる。
【0025】
本実施の形態1の場合、アンテナパターン18A、18Bの放射部18Aa、18Baは、ダイポールアンテナであって、ミアンダ状である。また、放射部18Aa、18Baそれぞれは、アンテナ基材16の長手方向(u軸方向)の中央部分に設けられた結合部18Ab、18Bbから該アンテナ基材16の両端に向かって延在する。
【0026】
アンテナパターン18A、18Bの結合部18Ab、18Bbは、詳細は後述するが、RFICモジュール14の端子電極と電気的に接続する。結合部18Ab、18Bbそれぞれは、矩形状のランドである。
【0027】
図3は、RFICモジュールの分解斜視図である。
図4は、無線通信デバイスの等価回路図である。
【0028】
図3および
図4に示すように、RFICモジュール14は、例えば900MHz帯、すなわちUHF帯の通信周波数でアンテナパターン18A、18Bを介して無線通信を行うデバイスである。
【0029】
図3に示すように、本実施の形態の場合、RFICモジュール14は、多層構造体である。具体的には、RFICモジュール14は、主要の構成要素であるモジュール基材として、絶縁材料から作製されて積層される二枚の薄板状の絶縁シート20A、20Bを備える。絶縁シート20A、20Bそれぞれは、ポリイミドや液晶ポリマなどの絶縁材料から作製された可撓性のシートである。
【0030】
図3および
図4に示すように、RFICモジュール14は、RFICチップ22と、そのRFICチップ22に接続される端子電極24A、24B(第1および第2の端子電極)とを備える。また、RFICモジュール14は、RFICチップ22と端子電極24A、24Bとの間に設けられた整合回路26を備える。モジュール基材である絶縁シート20A、20Bからなる積層体は、RFICチップ22に比べて平面寸法が大きい。より具体的には、RFICチップ22が設けられる、モジュール基材の主面の平面視で、モジュール基材の外形寸法は、RFICチップ22の外形寸法よりも大きい(モジュール基材の輪郭内にRFICチップ22を含むことが可能な寸法関係である)。
【0031】
RFICチップ22は、UHF帯の周波数(通信周波数)で駆動するチップであって、シリコン等の半導体を素材とする半導体基板に各種の素子を内蔵した構造を有する。また、RFICチップ22は、第1の入出力端子22aと第2の入出力端子22bとを備える。さらに、
図4に示すように、RFICチップ22は、内部容量(キャパシタンス:RFICチップ自身が持つ自己容量)C1を備える。ここで、端子電極24A、24Bの面積は第1の入出力端子22a、第2の入出力端子22bの面積に比べて大きい。これにより、無線通信デバイス10の生産性が向上する。その理由は、RFICチップ22の第1および第2の入出力端子22a、22bを直接、アンテナパターン18A、18Bの結合部18Ab、18Bb上に位置合わせすることに比べて、RFICモジュール14を、アンテナパターン18A、18Bに位置合わせすることの方が容易であるからである。
【0032】
また、RFICチップ22は、
図3に示すように、多層構造体であるRFICモジュール14に内蔵されている。具体的には、RFICチップ22は、絶縁シート20A上に配置され、その絶縁シート20A上に形成された樹脂パッケージ28内に封止されている。樹脂パッケージ28は、例えばポリウレタンなどのエラストマー樹脂、またはホットメルト樹脂から作製される。この樹脂パッケージ28により、RFICチップ22は保護される。また、この樹脂パッケージ28により、可撓性の絶縁シート20A、20Bからなる多層構造体のRFICモジュール14はたわみ剛性が向上する(絶縁シート単体の剛性に比べて)。その結果、RFICチップ22が内蔵されたRFICモジュール14を、電子部品と同様に、後述するようなパーツフィーダなどの部品供給装置で取り扱うことができる(参考までに、RFICチップ22単体は、チッピングなどの破損が生じる恐れがあるため、パーツフィーダなどで取り扱うことができない)。
【0033】
端子電極24A、24Bは、銀、銅、アルミニウムなどの導体材料から作製された導体パターンであって、RFICモジュール14の第1の主面14aを構成する絶縁シート20Bの内側面20Ba(第1の主面14aに対して反対側であって且つ絶縁シート20Aと対向する面)に設けられている。すなわち、本実施の形態の場合、端子電極24A、24Bは、RFICモジュール14の外部に露出せずに、内蔵されている。また、端子電極24A、24Bは、その形状が矩形状である。なお、これらの端子電極24A、24Bは、後述するが、アンテナパターン18A、18Bの結合部18Ab、18Bbと、感圧性接着層42を介して電気的に接続するための電極である。
【0034】
図4に示すように、RFICチップ22と端子電極24A、24Bとの間に設けられる整合回路26は、複数のインダクタンス素子30A~30Eから構成されている。
【0035】
複数のインダクタンス素子30A~30Eそれぞれは、絶縁シート20A、20Bそれぞれに設けられた導体パターンによって構成されている。
【0036】
RFICモジュール14の絶縁シート20Aの外側面20Aa(樹脂パッケージ28が設けられる面)には、銀、銅、アルミニウムなどの導体材料から作製された導体パターン32、34が設けられている。導体パターン32、34それぞれは、渦巻きコイル状のパターンであって、外周側端にRFICチップ22と電気的に接続するためのランド部32a、34aを備える。なお、ランド部32aとRFICチップ22の第1の入出力端子22aは、例えばはんだまたは導電性接着剤を介して電気的に接続されている。同様に、ランド部34aと第2の入出力端子22bも電気的に接続されている。
【0037】
絶縁シート20A上の一方の渦巻コイル状の導体パターン32は、
図4に示すように、インダクタンスL1を持つインダクタンス素子30Aを構成している。また、他方の渦巻コイル状の導体パターン34は、インダクタンスL2を持つインダクタンス素子30Bを構成している。
【0038】
絶縁シート20Aに隣接する絶縁シート20Bには、銀、銅、アルミニウムなどの導体材料から作製された導体パターン36が設けられている。導体パターン36は、端子電極24A、24Bと、渦巻コイル部36a、36bと、ミアンダ部36cとを含んでいる。絶縁シート20Bにおいて、渦巻コイル部36a、36bとミアンダ部36cは、端子電極24A、24Bの間に配置されている。
【0039】
絶縁シート20B上の導体パターン36における一方の渦巻コイル部36aは、端子電極24Aに電気的に接続されている。また、渦巻コイル部36aの中心側端36dは、絶縁シート20Aに形成されたスルーホール導体などの層間接続導体38を介して、その絶縁シート20A上の渦巻コイル状の導体パターン32の中心側端32bに電気的に接続されている。また、導体パターン32を流れる電流と渦巻コイル部36aを流れる電流の周回方向が同一になるように、渦巻コイル部36aは構成されている。さらに、渦巻コイル部36aは、
図4に示すように、インダクタンスL3を持つインダクタンス素子30Cを構成している。
【0040】
絶縁シート20B上の導体パターン36における他方の渦巻コイル部36bは、端子電極24Bに電気的に接続されている。また、渦巻コイル部36bの中心側端36eは、絶縁シート20Aに形成されたスルーホール導体などの層間接続導体40を介して、その絶縁シート20A上の渦巻コイル状の導体パターン34の中心側端34bに電気的に接続されている。また、導体パターン34を流れる電流と渦巻コイル部36bを流れる電流の周回方向が同一になるように、渦巻コイル部36bは構成されている。さらに、渦巻コイル部36bは、
図4に示すように、インダクタンスL4を持つインダクタンス素子30Dを構成している。
【0041】
絶縁シート20B上の導体パターン36におけるミアンダ部36cは、一方の渦巻コイル部36aの外周側端と多方の渦巻コイル部36bの外周側端とを電気的に接続する。また、ミアンダ部36cは、
図4に示すように、インダクタンスL5を持つインダクタンス素子30Eを構成している。
【0042】
このようなインダクタンス素子30A~30Eを含む(RFICチップ22の自己容量C1も含む)整合回路26により、RFICチップ22と端子電極24A、24Bとの間のインピーダンスが、所定の周波数(通信周波数)で整合されている。またインダクタンス素子30A~30EとRFICチップ22で閉じたループ回路になっており、端子電極24A、24B間は、インダクタンス素子30Eに繋がっているので低周波域(DC~400MHzの周波数帯域)では、低インピーダンスとなる。これによりロールシートSが高速でロール搬送される時にアンテナパターン18A、18B間に静電気による高電位差が発生しても、端子電極24A、24Bは低電圧に抑制され、RFICチップ22が静電気で破壊することがなくなる。またロールシートSに帯電防止処理や除電ブローなどの特殊な処理をしなくても、RFICチップ22を保護することができる。
【0043】
このような無線通信デバイス10によれば、アンテナパターン18A、18BがUHF帯の所定の周波数(通信周波数)の電波(信号)を受信すると、アンテナパターン18A、18BからRFICチップ22に信号に対応する電流が流れる。その電流の供給を受けてRFICチップ22は駆動し、その内部の記憶部(図示せず)に記憶されている情報に対応する電流(信号)をアンテナパターン18A、18Bに出力する。そして、その電流に対応する電波(信号)がアンテナパターン18A、18Bから放射される。
【0044】
これまでは、無線通信デバイス10の構成を説明してきた。ここからは、無線通信デバイス10を製造する無線通信デバイス製造システムについて説明する。
【0045】
図5は、本発明の一実施の形態に係る無線通信デバイス製造システムの概略的構成図である。
図6は、RFICモジュールを実装中の無線通信デバイス製造システムの部分的斜視図である。なお、図に示すX-Y-Z座標系は、発明の理解を容易にするためのものであって、発明を限定するものではない。X軸方向およびY軸方向は水平方向を示し、Z軸方向は高さ方向を示している。
【0046】
図5に示すように、本実施の形態に係る無線通信デバイス製造システム100は、ロールシートSを搬送する搬送装置102と、ロールシートS上に形成されたアンテナパターン18A、18BにRFICモジュール14を載置する実装装置104とを含んでいる。
【0047】
図6に示すように、無線通信デバイス製造システム100は、RFICモジュール14を、ロールシートS上に形成された複数のアンテナパターン(18A、18B)それぞれに固定するように構成されている。ロールシートSは、アンテナ基材16の材料である。無線通信デバイス製造システム100によってロールシートSにRFICモジュール14が固定された後、そのロールシートSが無線通信デバイス製造システム100とは別の装置(図示せず)によって複数に切断されることにより、
図1に示す無線通信デバイス10が完成する。
【0048】
RFICモジュール14をロールシートSに固定するために、ロールシートSには、RFICモジュール14が固定される位置に、感圧性接着層42が予め設けられている。本実施の形態の場合、感圧性接着層42は、絶縁性の感圧性接着剤の層であって、例えばスクリーン印刷によってロールシートS上に予め設けられている。感圧性接着剤は、例えば、オレフィン系、アクリル系、ポリアミド系の接着剤である。具体的には、感圧性接着層42は、アンテナパターン18Aの結合部18Abとアンテナパターン18Bの結合部18Bbとを一体の感圧接着層42で覆うように、ロールシートSに設けられている。このような感圧性接着層42上にRFICモジュール14が固定されることにより、アンテナパターン18Aの結合部18Abと端子電極24Aとが感圧性接着層42を介して対向する。それとともに、アンテナパターン18Bの結合部18Bbと端子電極24Bとが感圧性接着層42を介して対向する。その結果、
図4に示すように、結合部18Abと端子電極24Aとが容量C2を介して電気的に接続するとともに、結合部18Bbと端子電極24Bとが容量C3を介して電気的に接続する。また感圧接着層42とRFICモジュール14間に空気層を挟まないようにしている。これにより無線通信デバイス10のRFICモジュール14搭載面にラベル紙や両面テープでカバーされたのちに、実使用環境での温度変化などでRFICモジュール14の下部にある空気層が膨張し、RFICモジュール14を押し上げて、アンテナパターン(18A、18B)との結合容量を変化させ電気的な特性劣化を及ぼすことを防いでいる。
【0049】
図5に示すように、無線通信デバイス製造システム100の搬送装置102は、本実施の形態の場合、ロールシート供給装置110と、ロールシート回収装置112とから構成されている。ロールシート供給装置110とロールシート回収装置112との間に、実装装置104が配置されている。
【0050】
搬送装置102は、実装装置104におけるRFICモジュール14をロールシートSに実装する位置(実装位置)を通過するように、ロールシートSを長手方向(u軸方向)に搬送するように構成されている。すなわち、ロールシートSは、ロールシート供給装置110から、実装装置104を通過し、ロールシート回収装置112に向かって搬送される。なお、本実施の形態の場合、実装装置104は2台であるが、実装装置104の数は1台、または3台以上であってもよい。
【0051】
搬送装置102におけるロールシート供給装置110は、本実施の形態の場合、ロールシートSを供給する供給リール114を交換可能に備える。供給リール114は、感圧性接着層42が設けられたロールシートSを巻回するリールである。供給リール114を交換することにより、無線通信デバイス10の製造、すなわちRFICモジュール14のロールシートSへの固定を連続的に実行することができる。なお、RFICモジュール14が実装中のロールシートSの搬送方向(長手方向(u軸方向))の後端と、交換によって新たに取り付けられた供給リール114のロールシートSの前端とを連結するシート連結装置116が、ロールシート供給装置110に設けられている。
【0052】
また、ロールシート供給装置110は、供給リール114を回転駆動する供給リール用モータ118を備える。さらに、供給リール114から実装装置104の実装位置MPに向かってロールシートSをガイドするための複数のガイドローラ120A、120B、120Cを備える。
【0053】
さらにまた、本実施の形態の場合、ロールシートSは、セパレート紙Spを重ねた状態で供給リール114に巻回されている。このセパレート紙Spは、ロールシートSの第1の表面Sa(アンテナパターン18A、18Bが形成されている面)に重ねられている。このセパレート紙Spにより、ロールシートSの第1の表面Sa上の感圧性接着層42が、第1の表面Saから離れて第2の表面Sb(第1の表面Saに対して反対側の面)に貼り付くことが抑制されている。そのセパレート紙SpをロールシートSから回収するセパレート紙回収リール122と、その回収リール122を回転駆動するセパレート紙回収用モータ124とを、ロールシート供給装置110は備える。
【0054】
実装装置104は、ロールシート供給装置110から供給されたロールシートSに対してRFICモジュール14を実装する。
【0055】
【0056】
図7に示すように、実装装置104は、水平方向(X軸方向およびY軸方向)と高さ方向(Z軸方向)に平行移動可能な実装ヘッド126を備える。
図5に示すように、実装ヘッド126には、RFICモジュール14を吸引して保持する複数のノズル128が設けられている。実装ヘッド126は、いわゆるロータリーヘッドであって、高さ方向視で、複数のノズル128をサークル状に並んだ状態で支持するとともに、これらのノズル128をサークル中心に周回するように構成されている。また、ノズル128それぞれも、ノズル中心を通過して高さ方向に延在するノズル中心線を中心として自転可能である。
【0057】
実装ヘッド126のノズル128それぞれは、パーツフィーダなどの部品供給装置130によって供給位置FPに配置されたRFICモジュール14を吸引保持(ピックアップ)する。なお、部品供給装置130は、
図3に示すように、第1の主面14aが下に向いた状態で、RFICモジュール14を供給位置FPに配置する。
【0058】
実装装置104は、ノズル128にピックアップされた状態のRFICモジュール14を撮像するカメラ132を備える。カメラ132は、供給位置FPと実装位置MPとの間に配置され、全てのノズル128がRFICモジュール14をピックアップした状態の実装ヘッド126を、下方から撮影する。カメラ132によって撮影された撮影画像に基づいて、ノズル128にそれぞれにピックアップされているRFICモジュール14の姿勢を検出することができる。
【0059】
実装装置104はまた、ロールシートS上の感圧性接着層42の位置を検出するためのカメラ134を備える。本実施の形態の場合、カメラ134は、実装ヘッド126に搭載され、アンテナパターン18A、18Bに対して所定の位置関係にあるロールシートS上の位置に形成されたアライメントマークScを撮影する。その撮影画像に基づいてアライメントマークScの位置を検出することにより、アンテナパターン18A、18Bの結合部18Ab、18Bbの位置、すなわち結合部18Ab、18Bb上の感圧性接着層42の位置を検出することができる。なお、カメラ134は、実装ヘッド126に搭載される代わりに、実装装置104の本体に設けられてもよい。
【0060】
実装装置104(その制御部)は、カメラ132の撮影画像に基づいて検出されたノズル128それぞれにピックアップされている状態のRFICモジュール14の姿勢と、カメラ134の撮影画像に基づいて検出された感圧性接着層42の位置とに基づいて、実装ヘッド126の位置およびノズル128それぞれの自転角度とを制御する。これにより、実装ヘッド126は、
図2に示すように、アンテナパターン18Aの結合部18AbとRFICモジュール14の端子電極24Aとが対向し、且つ、アンテナパターン18Bの結合部18Bbと端子電極24Bとが対向するように、感圧性接着層42上にRFICモジュール14を実装することができる。
【0061】
なお、実装装置104の実装ヘッド126がRFICモジュール14をロールシートS(その感圧性接着層42)上に実装するときにそのロールシートSを下方から支持する吸着テーブル136が設けられている。
【0062】
吸着テーブル136は、ロールシートSを吸引することにより、ロールシートSを保持する。また、吸着テーブル136は、高さ方向(Z軸方向)に昇降可能に構成されている。吸着テーブル136上のロールシートSの部分における全ての感圧性接着層42に対してRFICモジュール14の実装が完了すると、吸着テーブル136は、吸引を停止してロールシートSをリリースし、そして降下する。RFICモジュール14の実装が完了したロールシートSの部分は、搬送装置102のロールシート回収装置112に搬送される。
【0063】
図5に戻り、搬送装置102のロールシート回収装置112は、RFICモジュール14が実装されたロールシートSを巻き取り回収する回収リール140を交換可能に備える。また、ロールシート回収装置112は、回収リール140を回転駆動する回収リール用モータ142を備える。さらに、実装装置104からのロールシートSを回収リール140に向かってガイドするガイドローラ144を備える。ロールシートSの回収が完了した回収リール140は、ロールシート回収装置112から取り外され、後工程の装置、例えば、ロールシートSを複数に切断して無線通信デバイス10を作成する装置(図示せず)に搬送される。
【0064】
なお、本実施の形態の場合、ロールシート回収装置112は、ロールシートSの幅方向(X軸方向)のエッジを検出するEPC(Edge Position Control)センサ146を備える。また、ロールシート回収装置112は、回収リール140をその回転中心線の延在方向(X軸方向)に進退させるアクチュエータ148を備える。EPCセンサ146によって検出されたロールシートSのエッジ位置(X軸方向位置)に基づいて、アクチュエータ148が回収リール140を進退させてその位置(X軸方向位置)を調節する。それにより、回収リール140は、ロールシートSを幅方向のエッジが揃った状態で巻き取ることができる。
【0065】
また、無線通信デバイス製造システム100は、
図5に示すように、実装装置104から回収リール140までのロールシートSの搬送経路上に、ロールシートSを挟持するローラ対150を備える。
【0066】
本実施の形態の場合、ローラ対150は、搬送装置102におけるロールシート回収装置112に設けられている。また、ローラ対150は、シート搬送用ローラ152と、ニップローラ154とから構成されている。
【0067】
本実施の形態の場合、シート搬送用ローラ152は、シート搬送用モータ156に回転駆動され、ロールシートSを搬送する搬送装置102の搬送手段として機能する。ニップローラ154は、例えば自由回転可能なウレタンローラであって、アクチュエータ(図示せず)によって昇降する。昇降することにより、ニップローラ154は、シート搬送用ローラ152に対して接近または離間する。ニップローラ154が回転中のシート搬送用ローラ152に接近することにより、ロールシートSがこれらのローラ152、154によって挟持されつつ搬送される。
【0068】
ローラ対150のシート搬送用ローラ152とニップローラ154との間をロールシートSが通過することにより、実装装置104によって感圧性接着層42上に実装されたRFICモジュール14がその感圧性接着層42に押し付けられる。
【0069】
具体的には、本実施の形態の場合、RFICモジュール14は、感圧性接着層42に対して段階的に固定される。まず、実装装置104の実装ヘッド126のノズル128による実装により、RFICモジュール14が感圧性接着層42に仮固定される。例えば、10~100gの荷重でノズル128がRFICモジュール14を感圧性接着層42に押し付けることにより、RFICモジュール14が感圧性接着層42に仮固定される。
【0070】
次に、RFICモジュール14が仮固定されたロールシートSは、ローラ対150のシート搬送用ローラ152とニップローラ154との間を通過する。それにより、例えば約0.2MPaの力でRFICモジュール14は、感圧性接着層42に押し付けられて本固定される。
【0071】
そして、ローラ対150によってRFICモジュール14が本固定されたロールシートSは、回収リール140に巻回される。それにより、RFICモジュール14が感圧性接着層42に向かって押圧され続け、RFICモジュール14が感圧性接着層42に時間をかけて固定される。
【0072】
さらに、無線通信デバイス製造システム100は、
図5に示すように、第1および第2のダンサーローラ160、162を備える。
【0073】
第1および第2のダンサーローラ160、162は、実装装置104を挟んで設けられている。具体的には、第1のダンサーローラ160は、実装装置104に対してロールシートSの搬送方向の上流側に、本実施の形態の場合にはロールシートSの搬送経路における供給リール114と実装装置104との間に、配置されている。第2のダンサーローラ162は、ローラ対150に対してロールシートSの搬送方向の下流側に、本実施の形態の場合には、ロールシートSの搬送経路におけるローラ対150と回収リール140との間に、配置されている。
【0074】
第1および第2のダンサーローラ160、162は、自由に移動可能な状態、すなわち搬送装置102(ロールシート供給装置110およびロールシート回収装置112)と、実装装置104とに支持されていない。第1および第2のダンサーローラ160、162は、ロールシートS上に載置され、自重によってロールシートSとの接触を維持している。
【0075】
図8は、ロールシートの搬送に関連する複数のローラを示す斜視図である。
【0076】
図8に示すように、第1および第2のダンサーローラ160、162以外のローラ120A、120B、120C、144、152、154およびリール114、140は、搬送装置102(ロールシート供給装置110およびロールシート回収装置112)に、互いに平行な回転中心線Cを中心として回転可能に支持されている。ロールシートSは、その幅方向Wdが第1および第2のダンサーローラ160、162以外のローラおよびリールの回転中心線Cの延在方向(X軸方向)に対して実質的に平行な状態で、その長手方向Ldに搬送される。それにより、ロールシートS上に載置されている第1および第2のダンサーローラ160、162も、搬送されているロールシートSによって実質的にロールシートSの幅方向Wdに延在する回転中心線Ca、Cbを中心として転動される。その結果、第1および第2のダンサーローラ160、162が、他のローラやリールそれぞれの回転中心線Cに対して平行な回転中心線Ca、Cbを中心として回転する。
【0077】
第1および第2のダンサーローラ160、162は、ロールシートS上から落下しないように、ロールシートS上に載置される円筒部160a、162aと、その円筒部の両端に設けられてロールシートSを係止する係止部160b、162bとを備える。ロールシートSが係止部160b、162bに係止されることにより、第1および第2のダンサーローラ160、162はロールシートS上に留まることができる。なお、第1のダンサーローラ160における2つの係止部160b間の距離と第2のダンサーローラ162における2つの係止部162b間の距離は、ロールシートSの幅Wに比べて大きい。また、第1および第2のダンサーローラ160、162の円筒部160a、160bの外周面は、感圧性接着層42がロールシートSから円筒部160a、160bに転写しないように、コーティング処理などの表面処理が施されている。
【0078】
このような第1および第2のダンサーローラ160、162の役割について説明する。
【0079】
まず、第1の役割として、第1および第2のダンサーローラ160、162は、ロールシートSの蛇行を抑制する。本明細書で言う「蛇行」は、ロールシートSが正常姿勢とは異なる姿勢で搬送されることを言う。本実施の形態においては、ロールシートSの正常姿勢は、ロールシートSの長手方向LdがロールシートSの搬送方向と一致する姿勢である。
【0080】
図9は、蛇行が発生したときのロールシートを示す図である。
【0081】
図9に示すように、ロールシートSのその長手方向Ldの搬送中、蛇行が発生することがある。なお、
図9は、蛇行が発生する前のロールシートSと第1および第2のダンサーローラ160、162を二点鎖線で示している。
【0082】
図9に示すようなロールシートSの蛇行は、様々な原因で起こりうる。一例として、ローラ対150におけるシート搬送用ローラ152とニップローラ154との間でロールシートSのスリップが生じることによって起こりうる。具体的には、シート搬送用ローラ152とニップローラ154との間でロールシートSの一部分がスリップすると、ロールシートSの幅方向Wdの一方側の搬送量と他方側の搬送量とが異なり、ロールシートS全体が搬送方向Fdに対して傾く可能性がある。
【0083】
そのようなロールシートSの蛇行が実装装置104で発生し、その蛇行状態が維持されると、ロールシートS上の感圧性接着層42が実装位置MPに搬送されない可能性がある。その結果、実装装置104が感圧性接着層42上にRFICモジュール14を正常に実装することができない可能性がある。また例えば、実装装置104のカメラ134がロールシートS上のアライメントマークScを検出できない可能性がある。
【0084】
図9に示すように、ロールシートSの蛇行が発生すると、そのロールシートS上の第1および第2のダンサーローラ160、162が変位する。これにより、第1および第2のダンサーローラ160、162の回転中心線Ca、Cbが傾く。すなわち、第1および第2のダンサーローラ160、162の回転中心線Ca、Cbは、ローラ対150におけるシート搬送用ローラ152の回転中心線Cに対して平行な状態から非平行な状態に変化する。
【0085】
このとき、第1および第2のダンサーローラ160、162は、ロールシートSの蛇行が発生する前の姿勢(二点鎖線)に復帰する。具体的には、ロールシートSが傾いても、ローラ対150のシート搬送用ローラ152の搬送方向Fdは変化していない。そのため、第1および第2のダンサーローラ160、162は、搬送方向Fdに搬送されているロールシートSにより、搬送方向Fdに対して直交する方向に延在する回転中心線を中心として転動しようとする。その結果として、第1および第2のダンサーローラ160、162は、それぞれの回転中心線Ca、Cbがシート搬送用ローラ152の回転中心線Cに対して平行な蛇行発生前の姿勢に戻る。そのとき、係止部160b、162bが傾いたロールシートSに接触し、そのロールシートSを蛇行発生前の状態に復帰させる。このような第1および第2のダンサーローラ160、162の復帰挙動によってロールシートSの蛇行が抑制される。
【0086】
また、第2の役割として、第1および第2のダンサーローラ160、162は、ロールシートSにテンションを付与するテンションローラとして機能する。具体的には、第1および第2のダンサーローラ160、162は、これらの間のロールシートSの部分、すなわち実装位置MPに位置するロールシートSの部分を平坦にする。この第2の役割により、実装位置MPに位置する吸着テーブル136は、しわや浮きを発生させることなく、ロールシートSを吸引保持することができる。その結果、実装装置104は、正常にRFICモジュール14をロールシートSの感圧性接着層42上に実装することができる。なお、本実施の形態の場合、吸着テーブル136がロールシートSを吸引した後、第1および第2のダンサーローラ160、162間のロールシートSの部分を平坦にしやすくするために、ローラ対150がロールシートSをリリースする(ニップローラ154が、シート搬送用ローラ152から離れる)。この場合、第1および第2のダンサーローラ160、162は、実質的に同一の重量であるのが好ましい。重量差が大きすぎると、ローラ対150がロールシートSをリリースした直後に、吸着テーブル136に吸着されている状態のロールシートSが、重量が大きいダンサーローラ側に移動する可能性がある。
【0087】
さらに、第3の役割として、第1および第2のダンサーローラ160、162は、ロールシートSをバッファリングするバッファローラとして機能する。具体的には、
図5に示すように、第1および第2のダンサーローラ160、162によってロールシートSがたるむことにより、所定のバッファ量のロールシートSが、実装装置104に対してロールシートSの搬送方向の上流側および下流側にバッファされる。なお、ロールシートSをバッファリングする理由については後述する。また、そのバッファ量を検出するために、第1および第2のダンサーローラ160、162を検出する複数の位置センサ170~176が設けられている。
【0088】
第1のダンサーローラ160に関して、上側位置センサ170は、上側位置に存在する第1のダンサーローラ160、すなわちロールシートSのバッファ量が少ないときの第1のダンサーローラ160を検出できる位置に配置されている。また、下側位置センサ172は、下側位置に存在する第1のダンサーローラ160、すなわちロールシートSのバッファ量が多いときの第1のダンサーローラ160を検出できる位置に配置されている。
【0089】
下側位置センサ172が第1のダンサーローラ160を検出しているとき、実装装置104の上流側に所定のバッファ量のロールシートSがバッファリングされている。上側センサ170が第1のダンサーローラ160を検出しているとき、ロールシートSのバッファ量が不足し、バッファ量を増加させる必要がある。
【0090】
第2のダンサーローラ162に関して、上側位置センサ174は、上側位置に存在する第2のダンサーローラ162、すなわちロールシートSのバッファ量が少ないときの第2のダンサーローラ162を検出できる位置に配置されている。また、下側位置センサ176は、下側位置に存在する第2のダンサーローラ162、すなわちロールシートSのバッファ量が多いときの第2のダンサーローラ162を検出できる位置に配置されている。
【0091】
下側位置センサ176が第2のダンサーローラ162を検出しているとき、実装装置104の下流側に所定のバッファ量のロールシートSがバッファリングされている。上側位置センサ174が第2のダンサーローラ162を検出しているとき、ロールシートSのバッファ量が不足し、バッファ量を増加させる必要がある。
【0092】
ここまでは、無線通信デバイス製造システムの構成に説明してきた。ここからは、無線通信デバイス製造システムの動作について説明する。
【0093】
図10は、無線通信デバイス製造システムの動作のタイミングチャートである。また、
図11は、RFICモジュールを実装中の無線通信デバイス製造システムを示す図である。そして、
図12は、RFICモジュールが実装されたロールシートの部分を実装装置から搬出中の無線通信デバイス製造システムを示す図である。
【0094】
図10に示すように、無線通信デバイス製造システムは、RFICモジュールを14ロールシートSに実装する実装動作と、実装動作以外のその他の動作とを1サイクルとし、そのサイクルを繰り返し実行するように構成されている。実装動作以外のその他の動作には、
図7に示すように供給位置FPでRFICモジュール14を実装ヘッド126がピックアップするためのピックアップ動作と、実装位置MPでRFICモジュール14の実装が完了しロールシートSの部分を実装装置104から搬出するシート搬送動作とが含まれる。
【0095】
図10および
図11に示すように、実装ヘッド126がRFICモジュール14をロールシートSに実装している間、そのロールシートSを支持するために、吸着テーブル136が支持位置に配置され、ロールシートSを吸引保持している。このとき、ローラ対150のニップローラ154は、シート搬送用ローラ152に対して離間している(退避位置に位置する)。すなわち、このとき、ローラ対150は、ロールシートSを挟持していない。また、シート搬送用モータ156は停止し、それによりシート搬送用ローラ152は回転していない。
【0096】
RFICモジュール14によるロールシートSの実装中、搬送装置102のロールシート供給装置110においては、供給リール用モータ118による供給リール114の回転とともに第1のダンサーローラ160の自重による降下により、供給リール114からロールシートSが実装装置104に向かって送り出される。実装装置104の上流側に所定のバッファ量のロールシートSがバッファリングされると、すなわち第1のダンサーローラ用の下側位置センサ172が第1のダンサーローラ160を検出する(センサ172がONになる)と、供給リール用モータ118が供給リール114の回転駆動を停止する(OFFになる)。
【0097】
RFICモジュール14によるロールシートSの実装中、搬送装置102のロールシート回収装置112においては、回収リール用モータ142による回収リール140の回転により、第2のダンサーローラ162によってバッファリングされたロールシートSが回収リール140に巻き取られる。実装装置104の下流側にバッファリングされたロールシートSのバッファ量が減少すると、すなわち第2のダンサーローラ162が上昇して第2のダンサーローラ用の上側位置センサ174によって検出される(センサ174がONになると)と、回収リール用モータ142が回収リール140の回転駆動を停止する(OFFになる)。
【0098】
吸着テーブル136上のロールシートSの部分に対するRFICモジュール14の実装が完了すると(実装動作が完了すると)、
図10および
図12に示すように、ローラ対150がロールシートSを挟持する。すなわち、ニップローラ154が退避位置からシート搬送用ローラ152に対してロールシートSを介して接触する挟持位置に移動する。そのニップローラ154が挟持位置に到達する(ローラ対150がロールシートSを挟持する)と、吸着テーブル136が吸引を停止(ロールシートSをリリース)し、ロールシートSから離間するために退避位置に向かって降下する。
【0099】
図10に示すように、吸着テーブル136が退避位置に向かって降下し始めると、シート搬送用モータ156が、ローラ対150のシート搬送用ローラ152を回転駆動し始める(ONになる)。これにより、RFICモジュール14が実装されたロールシートSの部分が、実装装置104から搬出される。このとき、吸着テーブル136が離れているために、吸着テーブル136とロールシートSとの間に摩擦が発生しない。その結果、シート搬送用モータ156は、小さい駆動力(トルク)でシート搬送用ローラ152を回転駆動することができる(吸着テーブル136とロールシートSとの間に摩擦が発生する場合に比べて)。また、吸着テーブル136とロールシートSの少なくとも一方の摩耗を抑制しロールシートSの帯電発生を抑制または防止することができる。なお、シート搬送用モータ156は、RFICモジュール14が実装されたロールシートSの部分が実装装置104、より具体的には吸着テーブル136の上方位置から完全に搬出されるまで、シート搬送用ローラ152を回転駆動する。
【0100】
なお、ローラ対150のロールシート用搬送ローラ152によるロールシートSの搬送中、
図9に示すような第1および第2のダンサーローラ160、162の挙動により、ロールシートSの蛇行が抑制される。
【0101】
図10に示すように、RFICモジュール14が実装されたロールシートSの部分が実装位置装置104Pから完全に搬出される前に、すなわちシート搬送用モータ156がシート搬送用ローラ152を回転駆動し始めて所定の時間t1経過したタイミングで、吸着テーブル136が退避位置からロールシートSと接触する支持位置に向かって上昇し始める。この所定の時間t1は、RFICモジュール14が実装されたロールシートSの部分が実装位置MPから完全に搬出されたタイミングに、吸着テーブル136が支持位置に到達するための時間である。
【0102】
吸着テーブル136が支持位置に到達すると同時に吸引を開始すると、シート搬送用モータ156によるシート搬送用ローラ152の回転が停止する(OFFになる)。その結果、ロールシートSの搬送が停止する。それとほぼ同時に、ニップローラ154が、シート搬送用ローラ152から離間して退避位置に向かって上昇し始める。ニップローラ154が退避位置に到達した後、実装装置104がRFICモジュール14のロールシートSへの実装を開始する。
【0103】
図12に示すように、シート搬送用モータ156がシート搬送用ローラ152を回転駆動すると、吸着テーブル136上のロールシートSの部分(RFICモジュール14の実装が完了した部分)が移動する。その結果、実装装置104の上流側のロールシートSのバッファ量が減少し、第1のダンサーローラ160が上昇する。
図10に示すように、シート搬送用モータ156が停止する(OFFになる)と、第1のダンサーローラ用の上側位置センサ170が第1のダンサーローラ160を検出する(ONになる)。その検出タイミングで、供給リール用モータ118が供給リール114を回転し始め、それにより、第1のダンサーローラ160によってロールシートSが実装装置104の上流側に新たにバッファリングされる。
【0104】
シート搬送用モータ156がシート搬送用ローラ152を回転駆動すると、吸着テーブル136上のロールシートSの部分(RFICモジュール14の実装が完了した部分)が移動する。その結果、実装装置104の下流側のロールシートSのバッファ量が増加し、第2のダンサーローラ162が降下する。
図10に示すように、シート搬送用モータ156が停止する(OFFになる)と、第2のダンサーローラ用の下側位置センサ176が第2のダンサーローラ162を検出する(ONになる)。その検出タイミングで、回収リール用モータ142が回収リール140を回転し始め、回収リール140が実装装置104の下流側にバッファリングされたロールシートSを巻き取り始める。
【0105】
以上のような実施の形態によれば、RFICチップを含むRFICモジュールとアンテナパターンとを有する無線通信デバイスにおいて、RFICモジュールをアンテナパターンが設けられたアンテナ基材16(ロールシートS)に短時間で固定することができる。
【0106】
具体的には、RFICモジュール14をロールシートSに固定する感圧性接着層42が、RFICモジュール14ではなく、ロールシートSに設けられている。そのため、RFICモジュール14を短時間でピックアップすることができる。
【0107】
この場合、感圧性接着層42がロールシートSに設けられているために、RFICモジュール14の実装位置MPに、感圧性接着層42を正確に搬送する必要がある。第1および第2のダンサーローラ160、162がロールシートSの蛇行を抑制することにより、ロールシートS上の感圧性接着層42を実装位置MPに正確に搬送することができる。
【0108】
以上、上述の実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明の実施の形態はこれに限らない。
【0109】
例えば、上述の実施の形態の場合、ローラ対150の一方のローラ152は、シート搬送用モータ156に回転駆動されてロールシートSを搬送するシート搬送用ローラであるが、本発明の実施の形態はこれに限らない。ローラ対の両方のローラが自由回転可能なアイドルローラであってもよい。この場合、回収リール用モータによって回転駆動される回収リールが、ロールシートの搬送手段として機能してもよい。あるいは、ロールシートの搬送経路上に別の搬送ローラを設けてもよい。この場合、ロール対は、実装装置に対して下流側、例えば実装装置と搬送装置のロールシート回収装置との間に配置されてもよい。
【0110】
また、上述の実施の形態の場合、RFICモジュール14が実装されたロールシートSは回収リール140に巻き取られる。しかしながら、本発明の実施の形態はこれに限らない。RFICモジュールが実装されたロールシートは、回収リールに巻き取られることなく、別工程の装置に搬送されてもよい。例えば、ロールシートを複数に切断して複数の無線通信デバイスを作成する装置に搬送されてもよい。
【0111】
さらに、上述の実施の形態の場合、
図5に示すように、実装位置MPに位置するロールシートSの部分を吸引して支持する吸着テーブル136が、無線通信デバイス製造システム100に設けられている。第1および第2のダンサーローラのつり合いがとれてロールシートが実装位置で停止したまま維持できるのであれば、ロールシートを吸引せずに支持するだけのテーブルが設けられてもよい。
【0112】
さらにまた、上述の実施の形態の場合、
図10および
図12に示すように、吸着テーブル136がロールシートSを吸引しているとき、ローラ対150がロールシートSをリリースしている。これにより、吸着テーブル136に、しわや浮きが発生していない状態でロールシートSが吸着する。しかしながら、ロールシートに厚みがあってしわや浮きが発生にくい場合には、吸着テーブルがロールシートを吸着しているときに、ローラ対がロールシートを挟持していてもよい。
【0113】
加えて、上述の実施の形態の場合、
図10および
図11に示すように、ロールシートSの搬送中、吸着テーブル136は降下してロールシートSから離れている。これにより、搬送中のロールシートSと吸着テーブル136との間の摩擦をなくし、少なくとも一方の摩耗を抑制している。しかしながら、ロールシートSと吸着テーブルとの間の摩擦が小さい場合、吸着テーブルを摺動しつつロールシートSは搬送されてもよい。この場合、吸着テーブルを昇降させる機構を省略することができる。
【0114】
加えてまた、上述の実施の形態の場合、RFICモジュール14が、感圧性接着層42を介してアンテナ基材16(ロールシートS)に固定される。しかしながら、本発明の実施の形態はこれに限らない。感圧性接着層42に代わって、例えば、ホットメルト接着剤の層を介して、RFICモジュールがアンテナ基材に固定されてもよい。この場合、ホットメルト接着剤を加熱して軟化させるヒータなどの加熱デバイスが使用される。
【0115】
さらに加えて、上述の実施の形態の場合、RFICモジュール14とアンテナ基材16(ロールシートS)とを互いに固定するための接着剤の層は、アンテナ基材16に予め設けられている。これに代わって、RFICモジュール14に接着剤の層が予め設けられてもよい。
【0116】
すなわち、本発明の実施の形態は、広義には、アンテナパターンを備えるアンテナ基材に、RFICチップを含むRFICモジュールを固定する無線通信デバイス製造システムであって、前記RFICモジュールが絶縁性の接着層を介して固定される前記アンテナ基材を、前記RFICモジュールの実装位置を通過するように搬送する搬送装置と、前記実装位置で前記アンテナ基材上に前記接着層を介して前記RFICモジュールを実装する実装装置と、前記RFICモジュール実装後の前記アンテナ基材をその厚さ方向に挟持して前記RFICモジュールを前記接着層に押し付けるローラ対と、前記実装装置に対して前記アンテナ基材の搬送方向の上流側で、自由に移動可能な状態で前記アンテナ基材上に載置された第1のダンサーローラと、前記ローラ対に対して前記搬送方向の下流側で、自由に移動可能な状態で前記アンテナ基材上に載置された第2のダンサーローラと、を有し、前記第1および第2のダンサーローラそれぞれは、前記アンテナ基材に載置される円筒部と、前記円筒部の両端に設けられた係止部とを備える。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明は、RFICチップを含むRFICモジュールとアンテナとを有する無線通信デバイスに適用可能である。
【符号の説明】
【0118】
100 無線通信デバイス製造システム
102 搬送装置
104 実装装置
150 ローラ対
160 第1のダンサーローラ
162 第2のダンサーローラ
MP 実装位置
S アンテナ基材(ロールシート)