(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】繊維強化ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20220531BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20220531BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20220531BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20220531BHJP
C08K 3/38 20060101ALI20220531BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L77/00
C08L67/00
C08K7/14
C08K3/38
C08J5/04 CFD
C08J5/04 CFG
(21)【出願番号】P 2019546882
(86)(22)【出願日】2018-03-28
(86)【国際出願番号】 EP2018057858
(87)【国際公開番号】W WO2018178128
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2020-09-15
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2017/079859
(32)【優先日】2017-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】リアオ, ルオグ
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル ブルト, フランク, ピーター, テオドルス, ヨハネス
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-033209(JP,A)
【文献】特開2009-114418(JP,A)
【文献】特開平09-221338(JP,A)
【文献】特開2017-048377(JP,A)
【文献】特開2015-120908(JP,A)
【文献】特開2014-043549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマーとガラス繊維とを含む組成物であって、前記組成物は、
(i)
半結晶性ポリエステ
ル、ポリアミ
ド、ポリカーボネー
ト、ポリフェニレンスルフィ
ド、ポリフェニレンエーテ
ル、ポリエーテルエーテルケト
ン、ポリアリールエーテルケト
ン、ポリアミドイミ
ド、及びポリエーテルイミ
ド、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される熱可塑性ポリマー;
(ii)主として二酸化ケイ素(SiO
2)及び三酸化ホウ素(B
2O
3)を含む、少なくとも22重量%のケイ素-ホウ素ガラス繊維
であって、当該ケイ素-ホウ素ガラス繊維の重量に対して少なくとも90重量%の合計量の二酸化ケイ素及び三酸化ホウ素を含むケイ素-ホウ素ガラス繊維;及び
(iii)0~7重量%のハロゲンフリー難燃剤
を含み、
成分(ii)及び(iii)に関する重量百分率(重量%)は、前記組成物の総重量に対する
ものであり、
前記組成物は、更にレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤を含む、組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性ポリマーが、ポリアミド若しくは半結晶性ポリエステル、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ケイ素-ホウ素ガラス繊維が、(a)65~85重量%のSiO
2;(b)15~30重量%のB
2O
3;(c)0~4重量%の酸化ナトリウム(Na
2O)若しくは酸化カリウム(K
2O)、又はそれらの組み合わせ;及び(d)0~4重量%の他の成分からなり、重量百分率(重量%)は、前記ケイ素-ホウ素ガラス繊維の重量に対する、請求項
1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ケイ素-ホウ素ガラス繊維の重量に対して最大で30重量
%の量のEガラス繊維を含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、
a)30~75重量%のグループ(i)の熱可塑性ポリマー;
b)25~70重量%のケイ素-ホウ素ガラス繊維;及び
c)0~7重量%のハロゲンフリー難燃剤
を含み、
重量百分率(重量%)は、前記組成物の総重量に対する、請求項1~
4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、
a)30~75重量%のポリアミド若しくは半結晶性ポリエステル、又はそれらの組み合わせ;
b)少なくとも22重量%の前記ケイ素-ホウ素ガラス繊維を含む25~70重量%のガラス繊維;及び
c)0~7重量%のハロゲンフリー難燃剤
を含み、
重量百分率(重量%)は、前記組成物の総重量に対する、請求項1~
4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
ポリマー系耐衝撃改質剤を含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
二酸化チタンを含む白色顔料をさらに含む、請求項1~
7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の組成物を含む成型部品。
【請求項10】
モバイル電子機器のためのハウジング又はフレームにおける、請求項1~
8のいずれか一項に記載の組成物の、又は請求項1~
8のいずれか一項に記載の組成物を含む成型部品の使用。
【請求項11】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の組成物で作られるハウジング又はフレームを含むモバイル電子機器。
【請求項12】
スピーカーボックス、オーディオジャックモジュール、アンテナ、又はコネクタの部品における、請求項1~
8のいずれか一項に記載の組成物の、又は請求項1~
8のいずれか一項に記載の組成物を含む成型部品の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリマーと強化繊維とを含む、特に強化繊維としてガラス繊維を含む組成物に関する。本発明は、さらに、熱可塑性成型組成物としてのこの組成物の使用に関し、また、例えば、熱可塑性成型組成物で作られるハウジング又はフレームなどのモバイル電子機器における、又は、スピーカーボックス、オーディオジャックモジュール、アンテナ、コネクタ(例えば、自動車用コネクタ、DDR4コネクタ)、及びスプリッタなどの用途における電気的構成成分に使用するための成型部品における、この組成物の適用に関する。
【0002】
熱可塑性成型組成物は、幅広い用途のための成型部品に成形するために使用される。典型的には、こうした組成物は、成型部品の引張係数、引張強さ、破断時伸び、曲げ強さ、曲げ破断、及び耐衝撃性などの機械特性を向上させるために、強化繊維によって強化される。強化繊維については、一般に、ガラス繊維、炭素繊維、又はそれらの組み合わせが使用される。これらのうち、ガラス繊維が、最も広く用いられる。ガラス繊維は大抵、Eガラスのタイプのものである。こうした強化された組成物に関する問題は、特性の適切なバランスを得ることが難しい可能性があることであり、しばしば、係数及び強さは、例えばガラス繊維の量を増大させることによって、増大させることができるが、これは、破断時伸び及び耐衝撃性を犠牲にするかもしれない。一方で、破断時伸び及び耐衝撃性は、耐衝撃改質剤(impact modifier)を添加することによって増大させることができるが、これは、引張強さ、及び耐薬品性などの他の特性を犠牲にするかもしれない。これらの特性を改良するための他の手法は、扁平ガラス繊維、及び長円形の断面を持つガラス繊維などの、様々な形状を持つガラス繊維の使用である。さらに、強化因子としてのガラス繊維の有効性は、例えば、二酸化チタン及びレーザーダイレクトストラクチャリング(LDS)添加剤などの研磨成分の存在によって低下する可能性がある。
【0003】
本発明の目的は、優れた機械特性、特に、優れた衝撃特性及び優れた引張強さと組み合わせられた高い伸び率、好ましくは優れた引張強さと組み合わせられた高い伸び率及び高い衝撃特性を有する、熱可塑性ポリマーと強化繊維とを含む熱可塑性成型組成物を提供することである。
【0004】
この目的は、
(i)ポリエステル(PES)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPO)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、及び液晶ポリマー(LCP)、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される熱可塑性ポリマー;
(ii)主として二酸化ケイ素(SiO2)及び三酸化ホウ素(B2O3)を含む、少なくとも22重量%のケイ素-ホウ素ガラス繊維;及び
(iii)0~7重量%のハロゲンフリー難燃剤
(ここでは、重量百分率(重量%)は、組成物の総重量に対する)
を含む、本発明による組成物を用いて達成された。
【0005】
本発明による組成物の効果は、Eガラスをベースにする強化繊維を含む相当する組成物と比較して、引張強さをかなりの程度保持しながら、引張伸びが増大され;且つ、しばしば耐衝撃性も向上することである。
【0006】
本発明による組成物は、ケイ素-ホウ素ガラス繊維に次いで、Eガラス繊維を含むことができる。こうした組成物の利点は、完全にEガラス繊維からなる同じ量のガラス繊維を含む相当する組成物と比較して、引張伸びが、より優れていることである。好ましくは、Eガラス繊維は、仮に存在するならば、ケイ素-ホウ素ガラス繊維の重量に対して最大で30重量%、好ましくは最大で15重量%の量で存在する。
【0007】
この組成物は、ポリエステル(PES)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPO)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、及び液晶ポリマー(LCP)、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される熱可塑性ポリマーを含む。このグループを、本明細書ではグループ(i)と称する。適切には、熱可塑性ポリマーは、半結晶性ポリマー若しくは非結晶性ポリマー、又はそれらの組み合わせである。非結晶性ポリマーの例は、ポリカーボネート及び非晶質の半芳香族ポリアミドである。半結晶性ポリマーの例は、半結晶性ポリエステル、脂肪族ポリアミド、及び半結晶性半芳香族ポリアミドである。
【0008】
「繊維」は、本明細書では、長さ寸法が幅及び厚さの横断寸法よりもずっと大きい長さ、幅、及び厚さの寸法を有する細長体と理解される。用語「幅」は、本明細書では、横方向の断面上で測定される最大寸法と理解され、用語「厚さ」は、本明細書では、横方向の断面上で測定される最小寸法と理解される。繊維は、円形形状、又は不規則な形状(すなわち幅と厚さが異なる非円形形状)、例えば幅が厚さよりも大きい豆形形状、楕円形状、長円形形状、又は長方形形状を持つ様々な断面を有することができる。より具体的には、本発明による組成物中の繊維は、適切には、少なくとも10の長さ/幅(L/W)の比によって定義されるアスペクト比を有する。特定の実施形態では、ガラス繊維は、少なくとも20の数平均アスペクト比L/Wを有する。繊維はまた、様々な寸法を持つ断面を有することができる。適切には、繊維は、直径が5~20μm、より具体的には7~15μmの範囲内、例えば8μm、又は10μm又は13μmである円形の断面を有する。或いは、繊維は、幅が5~30μm、より具体的には7~20μmの範囲内、例えば8μm、又は10μm、又は13μm、又は15μmである非円形の断面を有する。
【0009】
熱可塑性ポリマーにおける用語「熱可塑性」は、本明細書では、200℃~360℃の範囲内の融解温度(Tm)を有する半結晶性ポリマー、又は140℃~300℃の範囲内のガラス転移温度(Tg)を有する非結晶性ポリマーと理解される。それらの効果は、組成物を、融解混合(melt mixing)プロセスによって調製できることと、それらの組成物を、成型部品を製造するために溶融加工できることである。
【0010】
半結晶性ポリアミド及び半結晶性ポリエステルにおける用語「半結晶性」は、本明細書では、ポリアミド又はポリエステルが、融解温度(Tm)及び融解エンタルピー(ΔΗm)、並びにガラス転移温度(Tg)を有することと理解される。本明細書では、半結晶性ポリアミド並びに半結晶性ポリエステルは、少なくとも5J/g、好ましくは少なくとも10J/g、さらにいっそう好ましくは少なくとも25J/gの融解エンタルピーを有する。本明細書では、5J/g未満の融解エンタルピーを有するポリマーが、非結晶性ポリマーであると理解される。
【0011】
用語「融解エンタルピー」(ΔΗm)は、本明細書では、N2雰囲気中で、予備乾燥させた試料に対して、ISO-11357-1/3,2011に従うDSC方法によって、20℃/分の昇温及び冷却速度を用いて測定される融解エンタルピーと理解される。本明細書では、(ΔΗm)は、第2加熱サイクルにおける融解ピークの下の面から算出されている。
【0012】
用語「融解温度」は、本明細書では、N2雰囲気中で、予備乾燥させた試料に対して、ISO-11357-1/3,2011に従う示差走査熱量測定(DSC)方法によって、20℃/分の昇温及び冷却速度を用いて測定される温度と理解される。本明細書では、Tmは、第2加熱サイクルにおける最も高い融解ピークのピーク値からの温度である。
【0013】
本発明の特定の実施形態では、熱可塑性ポリマーは、ポリアミド若しくは半結晶性ポリエステル、又はそれらの組み合わせを含む。ポリアミドは、半結晶性ポリアミド若しくは非結晶性ポリアミド、又はそれらのブレンドであり得る。
【0014】
半結晶性ポリエステルは、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリシクロヘキシルテレフタラート(PCT)、ポリエチレンナフタネート(naphthanate)(PEN)、ポリトリメチレンナフタネート(naphthanate)(PTN)、ポリブチレンナフタネート(naphthanate)(PBN)、及びポリシクロヘキシルナフタネート(naphthanate)(PCN)、並びにそれらのブレンド及びコポリマーであり得る。
【0015】
半結晶性の脂肪族ポリアミドは、脂肪族モノマー、例えば脂肪族ラクタム、若しくは脂肪族ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸、又はそれらの組み合わせ由来の繰り返し単位からなるポリアミドである。半結晶性の脂肪族ポリアミドは、例えば、PA-6、PA-66、PA-6/66、PA-46、PA-410、PA-1010、PA-610、PA-11、及びPA-12、並びにそれらのブレンド及びコポリマーであり得る。
【0016】
半芳香族ポリアミドにおける用語「半芳香族」は、本明細書では、ポリアミドが、芳香族モノマーを含むモノマー、すなわち芳香族単位を含むモノマーと、非芳香族モノマー、すなわち芳香族基を含まないモノマーとの組み合わせ由来であることと理解される。
【0017】
半芳香族ポリアミドは、芳香族モノマーと脂肪族モノマーとの組み合わせ由来の繰り返し単位からなるポリアミドである。芳香族モノマーは、芳香環構造を含むモノマーである。適切には、半芳香族ポリアミドは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミン由来の繰り返し単位、若しくは脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジアミン由来の繰り返し単位、又はそれらの組み合わせを含む。芳香族ジカルボン酸の例は、テレフタル酸、イソフタル酸、及びナフタレンジカルボン酸である。脂肪族ジカルボン酸の例は、アジピン酸及びデカン二酸(セバシン酸としても公知である)である。芳香族ジアミンの例は、メタ-キシリレンジアミン及びパラ-キシリレンジアミンである。脂肪族ジアミンは、直鎖ジアミン、分枝ジアミン、及び脂環式ジアミンであり得る。直鎖脂肪族ジアミンは、適切には、直鎖アルファ-オメガC2-C36ジアミン、好ましくは直鎖C4-C12ジアミン、例えば1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、及び1,12-ジアミノドデカンである。
【0018】
半結晶性半芳香族ポリアミドは、例えば、PA-XTホモポリマー、PA-XT/XIコポリマー、PA-XT/YTコポリマー、PA-XT/Y6コポリマー、ΡΑ-ΧΤ/YI/Ζ6、ΡΑ-ΧΤ/YI/Ζ10、及びPA-XT/6コポリマー、並びにそれらのブレンド及びコポリマーであり得る。ここでは、X、Y、及びZは、ジアミン由来の繰り返し単位を表し、Tは、テレフタル酸由来の繰り返し単位を表し、Iは、イソフタル酸由来の繰り返し単位を表し、PA-XT/Y6中のY6及びPA-XT/YI/Z6中のZ6のように、ジアミンと組み合わせた6は、アジピン酸由来の繰り返し単位を表し、PA-XT/6のように、スラッシュ(/)によって他のモノマー単位と分離された独立している6は、カプロラクタム由来の繰り返し単位を表す。ジアミンは、原則として、あらゆる脂肪族ジアミン、又は脂肪族ジアミンと芳香族ジアミンとの組み合わせであり得る。半結晶性半芳香族ポリアミドの例は、PA-6T/10T、PA-6T/6I、PA-6T/46及びPA-6T/6、PA-6T/66及びPA-6T/6I/66である。
【0019】
非晶質の半芳香族ポリアミドの例は、PA-6I/6Tである。
【0020】
本発明による組成物は、本明細書でケイ素-ホウ素ガラス繊維と称される、主として二酸化ケイ素(SiO2)と三酸化ホウ素(B2O3)を含むガラス繊維を含む。主として含むことにおける用語「主として」は、本明細書では、二酸化ケイ素(SiO2)と三酸化ホウ素(B2O3)が、ガラス繊維中の主要成分であることと理解される。ケイ素-ホウ素ガラス繊維は、さらなる成分を含むことができるが、こうした成分は、仮に存在するならば、二酸化ケイ素及び二酸化ホウ素のそれぞれよりも少ない合計量で存在する。適切には、ケイ素-ホウ素ガラス繊維は、ケイ素-ホウ素ガラス繊維の重量に対して少なくとも90重量%の合計量の、二酸化ケイ素及び三酸化ホウ素を含む。特定の実施形態では、ケイ素-ホウ素ガラス繊維は、(a)65~85重量%のSiO2;(b)15~30重量%のB2O3;(c)0~4重量%の酸化ナトリウム(Na2O)若しくは酸化カリウム(K2O)、又はそれらの組み合わせ;及び(d)0~4重量%の他の成分からなる。さらなる実施形態では、ケイ素-ホウ素ガラス繊維は、(a)70~80重量%のSiO2;(b)18~27重量%のB2O3;(c)0~3重量%のNa2O若しくはK2O、又はそれらの組み合わせ;及び(d)0~3重量%の他の成分からなる。それらの例は、(a)70~80重量%のSiO2;(b)20~25重量%のB2O3;(c)0~2重量%のNa2O若しくはK2O、又はそれらの組み合わせ;及び(d)0~2重量%の他の成分からなるケイ素-ホウ素ガラス繊維である。ここでは、重量百分率(重量%)、すなわち(a)~(d)の重量百分率は、ケイ素-ホウ素ガラス繊維の重量に対する。
【0021】
この組成物は、広範囲にわたって変動する量の熱可塑性ポリマー及び強化繊維を含むことができる。適切には、この組成物は、30~90重量%の範囲の量の、例えば、35~80重量%、又は30~75重量%、より具体的には40~70重量%の範囲の量の、前記グループ(i)から選択される熱可塑性ポリマーを含む。
【0022】
熱可塑性ポリマーが、ポリアミド若しくは半結晶性ポリエステル、又はそれらの組み合わせを含む実施形態では、ポリアミド、若しくはポリエステル、又はそれらの組み合わせは、適切には、30~90重量%の量で、例えば、35~80重量%、より具体的には40~70重量%の範囲の量で存在する。この実施形態では、前記グループ(i)からの1種又は複数の他の選択された熱可塑性ポリマーも存在することができる。適切には、ポリアミド、若しくはポリエステル、又はそれらの組み合わせと、前記グループ(i)からの1種又は複数の他の選択された熱可塑性ポリマーの総量は、30~90重量%の範囲内、例えば、35~80重量%、より具体的には40~70重量%の範囲内のままである。熱可塑性ポリマーの量は、例えば、35重量%、45重量%、55重量%、65重量%、又は75重量%である。ここでは、重量百分率(重量%)は、組成物の総重量に対する。
【0023】
組成物中の強化繊維は、ケイ素-ホウ素ガラス繊維に次いで、ケイ素-ホウ素ガラス繊維とは異なる炭素繊維及びガラス繊維などの他の強化繊維を含むことができる。強化繊維は、ケイ素-ホウ素ガラス繊維からなる又は本質的にケイ素-ホウ素ガラス繊維からなる可能性もある。組成物は、適切には、強化繊維として、少なくとも22重量%、好ましくは少なくとも25重量%、より好ましくは少なくとも30重量%のガラス繊維を含む。ガラス繊維は、適切には、最大で70重量%、より具体的には最大で60重量%の量で存在する。ある好ましい実施形態では、組成物は、少なくとも22重量%のケイ素-ホウ素ガラス繊維を含む22~70重量%のガラス繊維を含む。別の好ましい実施形態では、ケイ素-ホウ素ガラス繊維は、25~70重量%の範囲の、例えば30~60重量%の範囲の量で存在する。ケイ素-ホウ素ガラス繊維の量は、例えば、25重量%、30重量%、40重量%、50重量%、又は65重量%である。ここでは、重量百分率(重量%)は、組成物の総重量に対する。
【0024】
ガラス繊維についてのこれらの実施形態は、適切には、グループ(i)の選択された熱可塑性ポリマーのいずれか1つ、又はあらゆるそれらの組み合わせと組み合わせられ、また、熱可塑性ポリマーがポリアミド若しくはポリエステル又はそれらの組み合わせを含む実施形態と組み合わせることもできる。
【0025】
本発明による組成物は、熱可塑性ポリマー及び強化繊維に次いで、1種又は複数の他の成分を含むことができる。他の成分としては、熱可塑性成型組成物中で適切に使用される、あらゆる補助的添加剤を使用することができる。適切な添加剤としては、無機充填剤、耐衝撃改質剤、安定剤-例えば、熱安定剤、抗酸化剤、及びUV安定剤-、難燃剤-ハロゲン含有難燃剤、ハロゲンフリー難燃剤-、可塑剤、導電剤及び/又は帯電防止剤、カーボンブラック、滑沢剤及び離型剤、核形成剤、結晶化促進剤、結晶化遅延剤、染料及び顔料、及び熱可塑性成型組成物に使用することができるあらゆる他の補助的添加剤、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0026】
これらの添加剤は、可変量で使用することができる。とは言っても、これらの添加剤は、限られた量で存在することが好ましい。本発明による組成物では、ハロゲンフリー難燃剤の量は、仮に存在するならば、組成物の総重量に対して最大で7重量%である。適切には、ハロゲンフリー難燃剤の量は、0~6重量%、例えば3重量%、4重量%、又は5重量%である。ハロゲンフリー難燃剤は、あらゆるハロゲンフリー難燃剤であり得る。好ましくは、ハロゲンフリー難燃剤は、ホスフィン酸金属塩若しくはジホスフィン酸金属塩、又はそれらの混合物である。適切には、前記(ジ)ホスフィン酸金属塩は、ジアルキルホスフィン酸金属塩である。それらの例は、ジエチルホスフィン酸アルミニウムである。
【0027】
充填剤は、本明細書では、長さ、幅、及び厚さの寸法を有し、10未満の長さ/幅の比によって定義されるアスペクト比を有する、規則的な球状形状又は不規則な形状を持つ粒子からなる粒子性材料と理解される。適切には、充填剤は、最大で5の数平均アスペクト比を有する。
【0028】
本発明による組成物中で適切に使用することができる充填剤の例としては、限定はされないが、シリカ、メタケイ酸塩、アルミナ、タルク、珪藻土、粘土、カオリン、石英、ガラス、雲母、二酸化チタン、二硫化モリブデン、石膏、酸化鉄、酸化亜鉛、モンモリロナイト、炭酸カルシウム、ガラス粉末、及びガラスビーズが挙げられる。
【0029】
好ましくは、組成物は、ポリマー系(polymeric)耐衝撃改質剤、LDS添加剤、及び二酸化チタン、又はそれらの組み合わせの群から選択される少なくとも1種の成分をさらに含む。用語「1つ又は複数の」と「少なくとも1種の」が、本明細書では、同じ意味を有することを意図し、互換的に使用することができることに留意されたい。
【0030】
適切には、組成物は、0.01~10重量%、好ましくは0.01~5重量%の量のポリマー系耐衝撃改質剤を含む。本発明の組成物の利点は、破断時伸び及び耐衝撃性が増大され、同時に引張強さがさらに良く保持されるので、必要とされるポリマー系耐衝撃改質剤が少ないことである。ケイ素-ホウ素ガラス繊維とポリマー系耐衝撃改質剤を組み合わせることによって、引張強さと破断時伸びと耐衝撃性との間のバランスをさらに最適化することができる。
【0031】
本発明による組成物中のポリマー系耐衝撃改質剤は、適切には、ゴム又はエラストマー、例えば、アクリル樹脂をベースにするポリマー、ポリオレフィンをベースにするポリマー、スチレン系ポリマー、ケイ素をベースにするポリマー、並びにそれらの組み合わせ及び機能化された改変体である。機能化されたポリマー系耐衝撃改質剤は、本明細書では、ポリマーが、ポリアミド中のアミン末端基又はカルボキシル末端基と反応することが可能な官能基を含む、耐衝撃改質剤と理解される。こうした官能基の例は、エポキシ基、無水物基、及びカルボン酸基である。官能基を伴わないポリマー系耐衝撃改質剤が使用される場合、組成物は、相溶化剤を含むことが好ましい。
【0032】
ポリマー系耐衝撃改質剤は、例えば、Additives for Plastics Handbook,ed.J.Murphy,2001(ISBN=0080498612)に記載されている。機能化されたポリマーの例は、機能化された半結晶性ポリオレフィン、例えば、マレイン酸化(すなわち無水マレイン酸で機能化された)ポリエチレン、マレイン酸化ポリプロピレン及びマレイン酸化エチレン-プロピレンコポリマー(EXXELOR(商標)POとして利用可能)、アクリレート修飾ポリエチレン(SURLYN(登録商標)として利用可能)、メタクリル酸修飾ポリエチレン、及びアクリル酸修飾ポリエチレン(PRIMACOR(登録商標)として利用可能)である。
【0033】
別の好ましい実施形態では、組成物は、ポリマー系耐衝撃改質剤を含まない。その利点は、組成物が、ポリマー系耐衝撃改質剤に関連する耐薬品性の低下を伴わず、Eガラスをベースにする相当する組成物と比較して向上した機械特性を有することである。こうした組成物は、ボンネット用途で、自動車において好都合に適用される。
【0034】
組成物は、適切には、0.1~15重量%、好ましくは2~10重量%の範囲の量のLDS添加剤を含む。LDS添加剤とケイ素-ホウ素ガラス繊維との組み合わせを含む本発明の組成物の利点は、この組成物が、機械特性に対するLDS添加剤の負の効果にもかかわらず、引張強さ、破断時伸び、及び耐衝撃性に関する、より優れた機械特性を有することである。
【0035】
LDS添加剤を含む組成物は、導電回路のための担体としても働く成型部品の製造のために使用される。導電回路は、いわゆるレーザーダイレクトストラクチャリングプロセスによって製造される。このプロセスでは、成型部品は、レーザービームで処理されて、成型部品上に活性化された構造が生じ、成型部品の金属めっきがそれに続き、それによって、活性化された構造のパターンを有する導電回路が形成される。
【0036】
本発明はまた、本発明又はそれらの具体的実施形態による組成物を含む又は該組成物で作られる成型部品である、レーザーダイレクトストラクチャリングプロセスによって得られる回路担体に関する。LDS添加剤は一般に、電磁放射線によって活性化され、それによって元素金属核を形成することが可能な、金属化合物である。本明細書で使用することができるLDS添加剤の例は、銅、アンチモン、又はスズのうちの少なくとも1種を含む金属化合物及び金属酸化物、並びに金属化合物の混合物、例えばスピネルをベースにする化合物である。こうしたスピネルをベースにする化合物は、適切には、銅、クロム、鉄、コバルト、若しくはニッケル、又は先の2つ以上のものの混合物を含有し、好ましくは銅を含む。
【0037】
金属酸化物の混合物の例は、少なくともスズと、アンチモン、ビスマス、アルミニウム、及びモリブデンのうちの1種又は複数からの第2の金属の酸化物である。銅化合物の例は、水酸化銅、リン酸銅、硫酸銅、チオシアン酸銅などの銅塩;又はそれらの組み合わせである。
【0038】
LDS添加剤は、適切には、白色顔料、例えば、二酸化チタン(TiO2;アナスターゼ(anastase)又はルチル、又はそれらの組み合わせであり得る)、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、硫酸バリウム(BaSO4)、及びチタン酸バリウム(BaTiOs)と組み合わせられる。
【0039】
本発明及びその種々の実施形態による組成物は、適切には、0.1~15重量%、好ましくは2~10重量%の範囲の量の二酸化チタンを含む。本明細書では、二酸化チタンは、ケイ素-ホウ素ガラス繊維及び熱可塑性ポリマーに次いで、さらなる成分として、例えば、白色顔料として存在する。二酸化チタンとケイ素-ホウ素ガラス繊維との組み合わせを含む組成物の利点は、組成物が、機械特性に対する二酸化チタンの負の効果にもかかわらず、引張強さ、破断時伸び、及び耐衝撃性の点で、より優れた機械特性を有することである。
【0040】
好ましい実施形態では、組成物は、LDS添加剤と二酸化チタンの両方を含む。それらの利点は、組成物が、ケイ素-ホウ素ガラス繊維の代わりにEガラス繊維を含む相当する組成物よりも優れたLDS特性を有し、それと同時に、より優れた機械特性も有することである。熱可塑性成型組成物中には、Eガラス繊維が、最も広く使用され、これは、一般に、シリカ(SiO2、約53から57重量%)、アルミナ(Al2O3、約12から15重量%)、及び酸化カルシウム(CaO)及び酸化マグネシウム(MgO)(合わせて約22から26重量%)、及び少量の酸化ホウ素(B2O3、約5から8重量%)、及び他の微量成分(一般に1から2重量%未満)からなる。
【0041】
LDS添加剤を含むこうした組成物は、好都合には、集積電子機器の用途に適用される。高い伸び率及び耐衝撃性、並びに温度耐性と組み合わせて、明るい色を必要とする用途には、白色顔料との組み合わせが特に使用される。
【0042】
LDS用途については、熱可塑性ポリマーが、少なくとも270℃、好ましくは少なくとも290℃、いっそう素晴らしくは少なくとも310℃の融解温度を持つ半結晶性ポリマーを含むことが好ましい。これは、組成物が、無鉛はんだプロセスに使用するために、より良く適合されるという利点を有する。こうした用途のためには、半結晶性半芳香族ポリアミドを含む組成物が、最良の候補である。
【0043】
本発明及びその種々の特定の及び好ましい実施形態による組成物は、繊維強化された熱可塑性成型組成物を調製するための標準の融解混合装置を使用する標準の融解混合プロセスによって調製することができる。この組成物は、例えば、2軸押出機中で又は混練機中で調製することができる。
【0044】
この組成物は、成型部品を製造するために使用することができる。成型部品は、射出成型及び押出などの標準の溶融加工によって製造することができる。
【0045】
本発明は、さらに、本発明による組成物で作られる成型部品に関する。こうした成型部品の例としては、限定はされないが、モバイル電子機器のためのハウジング及びフレームが挙げられる。モバイル電子機器のためのフレームは、例えば、外側(outer)フレーム又は中間(middle)フレームであり得る。この組成物はまた、スピーカーボックス、オーディオジャックモジュール、アンテナ、コネクタ、及びスプリッタなどの用途における電気的構成成分に使用するための成型部品において好都合に使用される。コネクタ部品は、例えば、自動車用コネクタ又はDDR4コネクタの部品であり得る。
【0046】
本発明を、さらに、以下の実施例及び比較実験を用いて説明する。
【0047】
[材料]
PA-1=半結晶性半芳香族ポリアミド:PA-10T Tm 305℃
PA-2=脂肪族ポリアミド:PA-410、Tm 245℃
PA-3=非結晶性ポリアミド:PA-6I/6T
PA-4=半結晶性半芳香族ポリアミド:PA-4T/6T/66、Tm 325℃
PBT=半結晶性ポリエステル、ポリブチレンテレフタラート
GF-A=Eガラス繊維(φ10μm)、熱可塑性成型組成物についての標準等級
GF-B=ケイ素-ホウ素ガラス繊維(φ10μm)、(75重量% SiO2;22重量% B2O3;3重量% 他の酸化物)
MRA-1=離型剤:エチレンアクリル酸コポリマー(AC540A)
MRA-2=テトラステアリン酸ペンタエリスリチル
IM=ポリマー系耐衝撃改質剤:化学的に修飾されたエチレンアクリレートコポリマー(Fusabond A560)
充填剤=Mica
FR=ハロゲンフリー難燃剤:ジエチルホスフィン酸アルミニウム
LDS=LDS添加剤:亜クロム酸銅黒色スピネル(Sheppard Black 1G)
黒色顔料=カーボンブラックマスターバッチ、20%(PA-6中)(Cabot PA3785)
白色顔料=硫化亜鉛(ZnS)
PTFE=ポリテトラフルオロエチレン(抗ドリッピング等級)
【0048】
[混錬]
[ポリアミド組成物]
ポリアミド組成物を、標準の混錬条件を用いて、2軸押出機で調製した。押し出された溶融物の温度は、典型的には、約350~360℃であった。溶融混錬後、得られた溶融物を糸状に押し出して、冷却し、切断して粒状にした。
【0049】
[ポリエステル組成物]
ポリエステル組成物を、標準の混錬条件を用いて、2軸押出機で調製した。押し出された溶融物の温度は、典型的には、約250~260℃であった。溶融混錬後、得られた溶融物を糸状に押し出して、冷却し、切断して粒状にした。
【0050】
[射出成型-機械的試験のための試験バーの調製]
乾燥させた粒状材料を、型に射出成型して、ISO 527 1A型に適合する試験バーを形成した;試験バーの厚さは、4mmであった。ポリアミド組成物を、標準の射出成型機を使用して、適切な試験型に射出成型した。試験バーは、標準の試験バーのためのシングルゲートの型、又は、ウェルドラインを伴う試験バーの生成のためのダブルゲートの型(各ゲートは、試料の反対側の端に位置し、ウェルドラインの形成がもたらされる)のいずれかを使用して、標準の試験バーと同じ条件を適用しながら調製した。実施例I~V(EX I~V)及び比較実験A~C(CE A~C)のポリアミド組成物についての、射出成型機におけるT-meltの設定温度は、約320℃であり、実施例VI(EX-VI)及び比較実験D(CE-D)の組成物については約340℃であり;型の温度は120℃であった。ポリエステル組成物についての、射出成型機におけるT-meltの設定温度は、約260℃であり;型の温度は80℃であった。
【0051】
[試験]
[融解温度(Tm)]
融解温度(Tm)の測定を、N2雰囲気中で20℃/分の昇温及び冷却速度を使用するMettler Toledo Star System(DSC)を用いて実施した。測定のために、約5mgの予備乾燥させた粉末状のポリマーの試料を使用した。予備乾燥は、高真空、すなわち50mbar未満で、16時間の間130℃で実施した。この試料を、0℃から、融解温度を約30℃上回る温度まで、20℃/分で加熱し、20℃/分で0℃まで直ちに冷却し、続いて、融解温度を約30℃上回る温度まで20℃/分で再び加熱した。融解温度(Tm)については、第2加熱サイクルにおける融解ピークのピーク値を、ISO-11357-1/3,2011の方法に従って決定した。
【0052】
[引張特性]
引張係数(TM)、引張強さ(TS)、及び破断時伸び(EaB)を、ISO 527/1に従う引張試験において、5mm/分の延伸速度で、23℃で測定した。
【0053】
[曲げ特性]
曲げ係数(FM)、曲げ強さ(FS)、及び曲げ破断(FB)を、ISO 178に従う曲げ試験(これらはすべて曲げ特性の標準試験方法(Standard Test Methods for Flexural Properties)である)において、2mm/分の速度で、23℃で測定した。
【0054】
[衝撃特性]
シャルピー(Charpy)ノッチ付き耐衝撃性を、ISO179/1eAに従う方法によって、23℃で試験した。
【0055】
ノッチ付き耐衝撃性を、ISO180/1Aに従う方法によって、23℃で試験した。
【0056】
様々な組成物及び試験結果を、表1~3に列挙している。
【0057】
【0058】
EX-I、II、及びIII(すべてケイ素-ホウ素ガラス繊維をベースにする)は、規則的なガラス繊維(Eガラス)に基づく比較実験A(CE-A)と比較して、わずかに低い引張強さ(TS)を有し、一方で、シャルピーとアイゾットの両方について、CE-Aよりもかなり高い破断時伸び(EaB)及び高い衝撃強度を示す。EX-IIIのように、ガラス繊維の半分を置き換えることによって、CE-Aと比較して、既にEaBの有意な増大が認められる。
【0059】
EX-Iは、4.5重量%低い密度を有し、EX-IIは、10%低い密度を有し;かなり高いEaBを呈しながら引張強さの低下を埋め合わせるために、より厚い寸法を持つ、又は、同じ寸法を持ち、かなり高いEaB及びより優れた耐衝撃性を有する部品を設計することができる。
【0060】
ケイ素-ホウ素ガラス繊維をベースにする組成物(実施例IV)及び規則的なガラス繊維(Eガラス)に基づく比較実験A(どちらも10重量%のPTFEを含む)について、同様の結果が観察される。これらの組成物は、PTFEを含まない相当する組成物よりも低い機械特性を確かに有するが、EX-IVは、CE-Bよりも高いEaB及び耐衝撃性を有しながら、CE-Bと同じ引張強さを有する。
【0061】
【0062】
比較実験Cと実施例Vは、どちらもLDS等級であり、それぞれ、規則的なガラス繊維(Eガラス)及びケイ素-ホウ素ガラス繊維をベースにする。これらの結果は、EX-Vが、TS、EaB、FS、FB、及び耐衝撃性のすべてについて、CE-Cよりも優れた特性を有することを示す。
【0063】
比較実験Dと実施例VIは、どちらも半芳香族ポリアミド組成物であり、それぞれ、規則的なガラス繊維(Eガラス)及びケイ素-ホウ素ガラス繊維をベースにする。これらの結果は、EX-VIが、TS、EaB、FS、FB、及び耐衝撃性のすべてについて、CE-Dよりも優れた特性を有することを示す。
【0064】
【0065】
比較実験Eと実施例VIIは、どちらも30重量%ガラス繊維を持つPBT等級であり、それぞれ、規則的なガラス繊維(Eガラス)及びケイ素-ホウ素ガラス繊維をベースにする。これらの結果は、EX-VIIが、CE-Eに匹敵するTSを有し、且つTS、EaB、及び耐衝撃性について、CE-Eよりも優れた特性を有することを示す。
【0066】
比較実験Fと実施例VIIIは、どちらも40重量%ガラス繊維を持つPBT等級であり、それぞれ、規則的なガラス繊維(Eガラス)及びケイ素-ホウ素ガラス繊維をベースにする。これらの結果は、EX-VIIIが、CE-Fに匹敵するTSを有し、且つTS、EaB、及び耐衝撃性について、CE-Fよりも優れた特性を有することを示す。