(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】麺用丸ナイフ切刃装置
(51)【国際特許分類】
A21C 11/24 20060101AFI20220531BHJP
【FI】
A21C11/24 A
(21)【出願番号】P 2018173012
(22)【出願日】2018-08-29
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000151232
【氏名又は名称】シマダヤ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大田 啓司
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-255832(JP,A)
【文献】特開平11-114878(JP,A)
【文献】特開2018-7651(JP,A)
【文献】特開平10-262539(JP,A)
【文献】実公昭53-46320(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C 1/00-15/04
A23L 7/109-7/113
B26D 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
麺帯を挟み込む方向に回転する切刃ローラー及び受けローラーと、該切刃ローラーの側面外周を構成する丸ナイフに摺接する複数の麺線スクレーパーと、それらの軸支機構と、を含む、断面4隅に角を有する麺線に細断する麺用切刃装置であって、
前記切刃ローラーは、回転軸と、該回転軸に交互に貫通させると共に回転方向に掛合された、複数の丸ナイフおよびスペーサーと、で構成し、
前記受けローラーは、回転軸と、該回転軸に貫通させると共に回転方向に掛合された複数のショートローラーと、で構成し、
該ショートローラーが、回転軸方向にスライド自在な可動状態にあると共に、該側面外周には環状溝と環状山を交互に形成し、該側面外周と前記丸ナイフの刃部の咬合により該ショートローラーの回転軸方向の位置が定まることを特徴とする麺用切刃装置。
【請求項2】
前記ショートローラーの側面外周の環状山と、咬合時に該環状山を両側から挟む前記切刃ローラーの隣り合う2枚の丸ナイフの関係において、
非咬合時には、該環状山の幅寸法より2枚の丸ナイフの刃先間隔が小さく、
かつ、該丸ナイフの厚さが0.1~0.5mmであることを特徴とする、請求項1に記載の麺用切刃装置。
【請求項3】
前記丸ナイフの厚み方向における刃先位置に片寄りがあって、該刃先の片寄る側の盤面を向かい合わせに丸ナイフを配置すると共に、
該刃先の片寄る側の盤面が向かい合わせの丸ナイフ間に、前記ショートローラーの側面外周の環状山を挟むことを特徴とする、請求項1または2に記載の麺用切刃装置。
【請求項4】
前記ショートローラーの環状溝と環状山がそれぞれ細断麺線1本に対応し、
前記麺線スクレーパーが、麺帯細断位置近くで麺線を剥離する麺線スクレーパーと、麺帯細断位置から遠くで麺線を剥離する麺線スクレーパーと、で構成され、
近くで剥離する麺線スクレーパーを前記ショートローラーの環状溝に挿入して咬み合う丸ナイフの間に配置し、遠くで剥離する麺線スクレーパーを前記ショートローラーの環状山を挟んで咬み合う丸ナイフの間に配置することを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の麺用切刃装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麺類の製造工程で厚み調整された麺帯を切刃ローラーの回転により連続して細断する切刃装置であって、切刃ローラーが、外縁を先鋭な刃とした円形の刃物である丸ナイフを、麺帯の細断幅に見合う間隔で複数組み付けた構造により、手打ち風の鋭利な切り口の麺線に細断できる切刃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
手打ち麺は麺線幅単位で包丁を打ち下ろして細断するもので、近年の包丁切りの量産装置では回転軌道による引き切りを高速で行い、手打ちによる包丁切り以上に鋭利な切り口が得られるようになった。しかし、包丁切りを高速に行えば行うほど麺線を食単位に分け取ることが難しく、結果、反転釜などで複数食分をまとめて茹上げ、その後玉取機で計量する必要があった。
【0003】
一方、切刃ローラーの回転による切刃装置では、細断麺線を食単位に分け取ることは容易だが、包丁切り装置と比べ麺線の鋭利な切り口は得られず満足できるものはない。一般的な麺用切刃装置の切刃ローラーは、円柱鋼材から刃部を削り出す加工によるため、材質の硬度を包丁のように上げられず、刃先を先鋭に加工するには限界があった。更に、一対の切刃ローラーで互いの刃先を摺動させるには刃先の面取りが必要になって、なおさら刃部を先鋭にできなかった。
【0004】
その結果、一対の切刃ローラーから得られた麺線は角がつぶれて丸みを帯びた形となり、そのうどんが手打ち風のおいしさを訴求する商品の場合、包丁切りされたものとの違いから相対的に価値を低下させる問題があった。
【0005】
そのような切刃ローラーの課題を解決する為、特許文献1には、本発明の受けローラーに相当する弾性回転体と、本発明の切刃ローラーに相当する回転切刃体による切刃装置が開示され、特許文献2には、本発明の丸ナイフに相当する、薄刃カッターを麺線の間隔で組付けたカッターローラーと受けローラーを回転可能に、かつ、薄刃カッターの刃先を受けローラーに若干喰込み状態で並設する細断装置で、薄刃カッターの周速を受けローラーの周速より高速に回転して麺帯を細断する装置が開示されている。
【0006】
しかし、弾性素材の受けローラーも丸ナイフの先鋭な刃先を食い込み状態で擦り続ければ、轍状の切り溝ができる。そして轍状の切り溝には麺生地の一部が押し込まれて挟まり、固結し、受けローラーの機能が損なわれる。この課題に対し発明者は、特許文献3に開示した切刃装置で対処しようと試みた。すなわち、受けローラーの外周に、回転軸に対し垂直面と斜面による環状溝を複数形成し、切刃ローラーの丸ナイフの刃先と、受けローラーの環状溝の垂直面が近接するように、該切刃ローラーと該受けローラーの互いの外周の凹凸を重ねて併設する切刃装置について検討した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実開昭57-201187号公報
【文献】特開平6-178642号公報
【文献】特開2018-7651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
丸ナイフや丸ナイフの刃先間隔を定めるスペーサーの厚みには公差がある。例えば、300~500mm幅の切刃ローラーを組み上げたときに累積する公差は数mmにもなる。発明者は特許文献3の発明の実施にあたり、累積公差の対策として、先に切刃ローラーを組み上げその刃先間隔を確認した後に受けローラーを設計加工することで全幅450mmあたり±0.1mm程度の公差とした。
それにも拘らず、丸ナイフの刃先と受けローラーの環状溝の垂直面の全ての近接状況が麺線の切り口にとって理想的とはならなかった。
【0009】
その原因を考察すると、切刃ローラーは両側からの挟着締め込みに際し、締め込み位置から中央部にかけて摩擦が斬時累積して大きくなり中央部ほど移動し難くなる。また、丸ナイフやスペーサーは個々に歪みが存在し、丸ナイフのスペーサーで挟まれた部分と刃先とでは軸方向の位置にズレがある。故に、切刃ローラーに組み付けた全ての丸ナイフの刃先の配置やその回転軌道は、丸ナイフとスペーサーの厚みと数から設計上の等分によって示される位置とは誤差があることに思い至った。
【0010】
また、特許文献3に記載の発明を実施する中で、切刃から麺線を長く垂らした時に隣り合う麺線の交互分配が不完全になって切り口が再接着する場合があった。
【0011】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、切刃ローラーの丸ナイフの刃先位置の誤差の影響を受けないこと、丸ナイフの刃先と受けローラーの環状溝の全ての配置を麺線の切り口にとって最適な隙間のない摺接状態にすること、および、隣り合う麺線の交互分配を完全にすること、である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者は、丸ナイフの当る位置に垂直に掘り込んだ環状溝を設けた受けローラーを切刃ローラーと併設した切刃装置について、改めて検討した。
その結果、受けローラーの溝角と丸ナイフの間の隙間が拡がると麺線は切り口がささくれる症状を避けがたく、受けローラーの溝角と丸ナイフの環状の刃先を形成する斜面の回転全周で隙間なく摺接させた区間の麺線はきれいに細断されていた。すなわち、受けローラーの溝角と丸ナイフの刃先の近接状態においては、隙間はない方が良い。
しかしながら、特許文献3に記載の受けローラーのように、垂直面と斜面による環状溝の垂直面に対し、全ての丸ナイフの回転全周で密着させるには、片側に向け強力に押し付ける必要がある。しかしそのように片側に押し付ける仕組みはいずれかの部品に強い摩擦を生じさせ、そのような仕組みは問題で押し付ける部品自体ない方が良い。
【0013】
そこで、垂直に削り込んだ環状溝と環状山を交互に形成する角歯状の受けローラーについて検討した。麺線12本に相当する短い受けローラーを試作し、厚みの薄い丸ナイフで環状山を挟むように咬み合わせる検討を行ったところ、丸ナイフが反った状態で溝角に密着し、麺線の切り口が良好になるだけでなく、丸ナイフが受けローラーの環状山をバランスよく挟むように受けローラーがスライドして自ずと位置が定まるのを目の当たりにして本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明(1)は、麺帯を挟み込む方向に回転する切刃ローラー及び受けローラーと、該切刃ローラーの側面外周を構成する丸ナイフに摺接する複数の麺線スクレーパーと、それらの軸支機構と、を含む、断面4隅に角を有する麺線に細断する麺用切刃装置であって、前記切刃ローラーは、回転軸と、該回転軸に交互に貫通させると共に回転方向に掛合された、複数の丸ナイフおよびスペーサーと、で構成し、前記受けローラーは、回転軸と、該回転軸に貫通させると共に回転方向に掛合された複数のショートローラーと、で構成し、該ショートローラーが、回転軸方向にスライド自在な可動状態にあると共に、該側面外周には環状溝と環状山を交互に形成し、該側面外周と前記丸ナイフの刃部の咬合により該ショートローラーの回転軸方向の位置が定まることを特徴とする麺用切刃装置に関する。
【0015】
本発明に適した切刃装置は、切刃ローラーと受けローラーが両側のフレームにより平行かつ回転可能に軸支され、少なくとも切刃ローラーを自転させ、望ましくは、切刃ローラーの周速を受けローラーの周速より1.3~2.0倍に速めて両軸共に自転させるのがよい。
【0016】
切刃ローラーは、丸ナイフとスペーサーに貫通穴を設け、回転軸に交互に通して両側から挟着する。丸ナイフとスペーサーを交互に組み付ける構成であれば、挟着の程度や挟着後の固定手段は自由にできる。
丸ナイフとスペーサーには、貫通穴の内周の一部にキー溝を設け、回転軸から突起したキーによって、丸ナイフが空転しないように掛合する。
【0017】
丸ナイフには、円盤周縁の刃先の形により両刃と片刃がある。両刃は両面から斜めに切削加工され厚み方向における刃先位置が中央付近、片刃は一方の面からのみ斜めに切削加工され厚み方向における刃先位置は片側盤面と重なる場合が多いが、本発明に適する丸ナイフは刃先位置が片側盤面と重なる片刃を除けば両刃でも両者の中間的な形のいずれでも良い。
【0018】
丸ナイフの刃部とは、両刃では、刃先を形成する環状の斜面とする。片刃のように刃先位置に片寄りのある丸ナイフでは、刃先を形成する環状の斜面とその斜面の裏側に当る盤面縁部とする。丸ナイフと受けローラーを咬み合わせる際は、刃先を避けこの刃部とショートローラーの溝角を摺接させる。
【0019】
受けローラーは、貫通穴のある複数のショートローラーを回転軸に通すことで構成する。
ショートローラーの材質は、丸ナイフと摺接させるため、プラスチック樹脂が良い。食品グレードで、加工精度や耐摩耗性能に優れる樹脂であれば何でも利用できるが、例えばポリアセタール樹脂が好適に例示できる。
【0020】
ショートローラーの貫通穴は回転軸の直径に対し0.1mm程度の余裕をとって大き目に開け、ショートローラーが回転軸に密着せず、かつ、ガタ付かず、スルスルと軸方向にスライドできる状態とする。その上で、ショートローラーの貫通穴の内周の一部に回転軸の向きにキー溝を設け、回転軸から突起したキーによって、ショートローラーが空転しないように掛合する。なお、キーとキー溝の間に十分な隙間を取る。そうすることで、丸ナイフの刃部と咬合させない状態では、ショートローラーは、回転軸方向にスライド自在な状態にすることができる。
【0021】
本発明のショートローラーの側面外周には環状溝と環状山を交互に形成させる。ショートローラーの側面外周と丸ナイフの刃部を咬合し摺接させるため、ショートローラーの溝角を形成する環状溝の内壁の数は丸ナイフの数設ける必要がある。
【0022】
なお、ショートローラーの環状溝の内壁の数は丸ナイフの数以上に設けてもいい。その場合、例えば
図3の受けローラー22jのように丸ナイフの摺接しない環状溝の内壁22jaが存在することになる。この内壁22jaと丸ナイフの隙間は0.5mm以下になると麺線角にバリが生じ易く、麺線の切り口を損ないやすいから、望ましくは1mm以上の隙間を取るのが良い。
【0023】
ショートローラーは複数を回転軸に貫通させて受けローラーとするが、個々のショートローラーの間、隣のショートローラーに面する環状溝または環状山の幅寸法は0.1~1.0mm、望ましくは0.2~0.6mm減らし、ショートローラーの間に隙間をとる。すなわち、丸ナイフの刃先位置に応じる可動余地を確保する。
【0024】
本発明によれば、ショートローラーが回転軸方向にスライドして丸ナイフの配置誤差に応じることができる。そして、丸ナイフの刃先とショートローラーの溝角(環状溝の内壁)の咬み合い位置のずれの累積がショートローラー毎にリセットされるから小さく抑えられ、丸ナイフやスペーサーの厚みやショートローラーの溝幅寸法の公差を無視することができる。
【0025】
また本発明(2)は、前記ショートローラーの側面外周の環状山と、咬合時に該環状山を両側から挟む前記切刃ローラーの隣り合う2枚の丸ナイフの関係において、非咬合時には、該環状山の幅寸法より2枚の丸ナイフの刃先間隔が小さく、かつ、該丸ナイフの厚さが0.1~0.5mmであることを特徴とする、本発明(1)に記載の麺用切刃装置に関する。
【0026】
隣り合う2枚の丸ナイフの刃先間隔が、そこに挟まれるショートローラーの環状山の幅より小さいということは、その隣りの2枚の丸ナイフの刃先間隔では、環状山の隣りの環状溝の幅より大きいことを示している。そのように丸ナイフと溝角の配置に意図的に差を設けることで、全ての丸ナイフをショートローラーの溝角に密着して摺動させることができる。
【0027】
本発明(2)の環状山の幅寸法と隣り合う2枚の丸ナイフの刃先間隔の差は、0.05~0.3mm、望ましくは0.1~0.2mmが適している。
【0028】
咬合状態の丸ナイフには一定の反りが生じ、丸ナイフの靱性による反発力により常時環状山を挟み付ける。また、丸ナイフの材質は、防錆の必要性からステンレスで、靱性については丸ナイフ(刃物)に用いられるステンレス板であれば十分足りる。また、丸ナイフの厚さは0.1~0.5mm、望ましくは0.1~0.3mmが適し、それら丸ナイフの前提としているサイズは直径40~80mmである。
【0029】
本発明(2)によれば、丸ナイフの刃先とショートローラーの溝角の咬み合い位置のずれを、丸ナイフの反り(靱性)により吸収することで、回転中の丸ナイフ刃部をショートローラーの溝角と常時密着状態で摺動させることができる。更に、左右から挟み付ける力が均衡するようにショートローラーがスライドすることで、密着部位での摩擦抵抗を最も小さく抑える作用を奏する。
【0030】
また本発明(3)は、前記丸ナイフの厚み方向における刃先位置に片寄りがあって、該刃先の片寄る側の盤面を向かい合わせに丸ナイフを配置すると共に、該刃先の片寄る側の盤面が向かい合わせの丸ナイフ間に、前記ショートローラーの側面外周の環状山を挟むことを特徴とする、本発明(1)または(2)に記載の麺用切刃装置に関する。
【0031】
本発明(3)の丸ナイフは、両刃を除く片刃に近いものを前提とする。
すなわち、適する刃先の片寄りは、刃先による厚みの分割比で1:9~4:6が良く、更に望ましくは、1:9~3:7が良い。そして、刃先位置の片寄る側とは、厚みの分割比で数字の小さい側、分割比1:9であれば1の側を指す。
0:10の片刃を除く理由は、刃先が溝角に接触して削るためで、そのように刃先が当らず削る等の問題がない場合、例えば1:99~9:91の範囲でも本発明(3)が適用できる。
【0032】
本発明(3)によれば、丸ナイフの刃部と受けローラーの溝角が密着状態で摺接しながらも、刃部の先端にある刃先が溝角と接することなく、刃先と溝角が回転軸方向で近づく作用により、更に先鋭な細断が可能となる。
【0033】
また本発明(4)は、前記ショートローラーの環状溝と環状山がそれぞれ細断麺線1本に対応し、前記麺線スクレーパーが、麺帯細断位置近くで麺線を剥離する麺線スクレーパーと、麺帯細断位置から遠くで麺線を剥離する麺線スクレーパーと、で構成され、近くで剥離する麺線スクレーパーを前記ショートローラーの環状溝に挿入して咬み合う丸ナイフの間に配置し、遠くで剥離する麺線スクレーパーを前記ショートローラーの環状山を挟んで咬み合う丸ナイフの間に配置することを特徴とする、本発明(1)~(3)のいずれかに記載の麺用切刃装置に関する。
【0034】
本発明に用いる麺線スクレーパーには、細断麺線を丸ナイフの間から取り出すだけではなく、丸ナイフに付着した麺カスを剥離除去する機能があるから、麺線スクレーパーは丸ナイフに摺接させる必要がある。よって、麺線スクレーパーの厚み(回転軸方向の寸法)は、対向する切刃ローラーのスペーサーの厚みより0.05~0.15mm薄くすることで回転の抵抗になり難く、かつ麺カスの剥離除去機能が確保できる。また、麺線スクレーパーの材質は金属を避けプラスチック樹脂が良い。対向する切刃ローラーのスペーサーと同じ材質にすれば温度変化による膨張率も同調し、膨張率差から回転抵抗となる等の問題が生じなくて良い。
【0035】
ショートローラーの環状山で押されることで、切り刃ローラーの溝部に深く入り込む麺線は溝部から外れ難く、麺帯細断位置から遠くまで移送可能で、ショートローラーの環状溝に面し押されることのない麺線は、切り刃ローラーから外れ易くなる特性がある。そこで本発明(4)によれば、麺線スクレーパーの剥離位置をこれらの特性に合わせることで、隣り合う麺線の交互分配を確実におこなうことができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、丸ナイフやスペーサーの厚み公差が許容され、全ての丸ナイフの刃部と全ての受けローラーの溝角とを完全な密着状態にすることで、麺帯全幅の細断による全ての麺線を先鋭に細断することができる。また、高い加工精度が不要になるから丸ナイフのスペーサーやショートローラーの素材の選択範囲は広がり、温度による体積変化が大きいプラスチック樹脂等も採用することができる。そして、丸ナイフの刃先と受けローラーが接することがなく、かつ、丸ナイフとショートローラーの摩擦抵抗が低く抑えられるから受けローラーの耐久性を高めることができる。
その他に、隣り合う麺線の交互分配を確実にすることで、細断麺線を長く垂らす場合など、麺帯細断位置近くで切刃から取出す力が強く働く場合にも隣り合う麺線が横並びで取出されることがないから、切り口の再接着を防止できる。
【0037】
その結果、切刃ローラーの回転により連続して細断する切刃装置でありながら、包丁切りによる細断と同等の鋭利な切り口が得られ、手打ち風の角立ちの外観と食感の麺線を得て、商品価値を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図2】
図1の受けローラーと切刃ローラーの咬合部の拡大図
【
図6】本発明(3)の丸ナイフの向きを示す
図5の咬合部の拡大図
【
図7】本発明(4)の2種のスクレーパー4aおよび4b
【
図8】本発明(4)を説明する
図1のA-A断面図とB-B断面図
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0039】
以下、本発明の特徴を
図1~8より説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【実施例1】
【0040】
切刃ローラー1は、
図1、2のように、回転軸1aに丸ナイフ3とスペーサー7を交互に通して両端を挟む方向に締め付け、カラー1dで固定した。次に、受けローラー2は、
図1、2のように、回転軸2aと複数のショートローラー22からなり、ショートローラー22を回転軸2aに通し、
図8のように、回転軸2aのキー2cによりショートローラー22を掛合し、空転を防止した。この時ショートローラー22は回転軸方向にスルスルを滑り良く、スライド自在な状態とした。
麺線スクレーパーは、
図7、8のように麺線毎に独立した大小2種(小4aと大4b)を交互に丸棒4cに通して、串刺し状にすることで稼働中の脱落を防ぐと共に、丸棒4cに対し回転自在かつスライド自在な状態とした。
【0041】
そして、
図2のように、ショートローラー22の側面外周の環状山22aを丸ナイフ3の刃部が挟むように咬合することでショートローラー22の回転軸方向の位置が定まった。
続いて、
図8のように、切刃ローラーの溝部毎に独立の麺線スクレーパー4aと4bを挿入したところ、両側の丸ナイフ3の間で摩擦抵抗の大きさが自ずとバランスするようにセットされた。その後、アングル4dを取り付け、麺線スクレーパーが麺線の圧力で溝部から外れないように補強。最後に、受けローラーの側面外周で麺線の巻き込みを防止する為に、ショートローラー22の凹凸形状に対し0.5mm程度隙間をとって合わせた板状カスリ23を設置した。
【0042】
そのように組み上げた
図1の切刃装置は、切刃ローラー1と受けローラー2が、フレーム5により平行かつ回転可能に軸支され、回転軸2a側から得た駆動は、山数20の歯車2hと山数12の歯車1hを介し、切刃ローラー1と受けローラー2を周速比5:3で自転させた。
この切刃装置に麺帯6を通したところ、断面4隅に先鋭な角のある麺線6aに細断され、麺線6aは麺線スクレーパー4a、4bによって溝部から送り出され、ショートローラー22と丸ナイフ3の咬合状態が麺帯6の細断によって変化することはなかった。
【実施例2】
【0043】
実施例1では切刃ローラー1の丸ナイフ3の刃先間隔と受けローラー2のショートローラー22の環状山の幅は同寸法にしたが、実施例2では
図4に示したように、刃先間隔3aが環状山22aの幅寸法22asより0.1mm小さくなるよう、実施例1のスペーサー7を0.1mmマイナスしたスペーサー7aと0.1mmプラスしたスペーサーの7bの2種に変更し、交互に取り付けた。なお、丸ナイフの厚さは、実施例1同様に0.3mmである。その結果、丸ナイフは、ショートローラー22の側面外周の環状山にぴったり密着して摺動し、この咬合状態で麺帯6を細断したところ、全ての麺線の角立ちは良好だった。
【実施例3】
【0044】
実施例1と2の丸ナイフ3は両刃だったが、実施例3では刃先に片寄りのある丸ナイフ33に変更した。
図5、6に示したように、丸ナイフ33の厚み方向における刃先位置の片寄りは3:7で、該刃先の片寄る側の盤面33bを向かい合わせに丸ナイフを配置すると共に、盤面33bの間に、ショートローラー22の側面外周の環状山22aを挟む咬合状態とした。この咬合状態で麺帯6を細断したところ、全ての麺線の角は極めて先鋭だった。
【実施例4】
【0045】
実施例4は、麺線スクレーパーの大と小、ショートローラーの環状溝と環状山、これらの組み合わせを変え、麺線の交互分配の状態を確認した。
図1、
図2のように、ショートローラー22は、環状山22aと環状溝22bがそれぞれ細断麺線1本に対応している。そして
図8のように、麺線スクレーパーは、麺帯細断位置近くで麺線を剥離する麺線スクレーパー大4bと麺帯細断位置から遠くで麺線を剥離する麺線スクレーパー小4aを交互に配置している。B-B断面のように、麺線スクレーパー大4bを環状溝22bと咬み合う丸ナイフの間に配置し、A-A断面のように、麺線スクレーパー小4aを環状山22aと咬み合う丸ナイフの間に配置した。
この咬合状態で麺帯6を麺線6aに細断したところ、麺線6aを1m垂らした下でカットした場合でも麺線の交互分配状態は保たれ、茹で上げ後、隣り合う麺線の切り口が再接着することはなかったが、麺線スクレーパー大4bと小4aを逆に配置した場合は麺線の交互分配は不完全となり、茹で上げ後に切り口が再接着する麺線があった。
【符号の説明】
【0046】
1 本発明の切刃ローラー
1a 切刃ローラー1の回転軸
1d 切刃ローラー1の丸ナイフとスペーサーを固定するカラー
1h 切刃ローラー1の歯車
2 本発明の受けローラー
2a 受けローラー2の回転軸
2c ショートローラーを係合するキー
2h 受けローラー2の歯車
22 本発明のショートローラー
22a ショートローラー22の環状山
22as 環状山22aの幅寸法
22b ショートローラー22の環状溝
22j ショートローラー22とは異なる事例
22ja ショートローラー22jの丸ナイフに摺接しない環状溝の内壁
23 ショートローラー22の板カスリ
3 丸ナイフ
3a 丸ナイフ3の刃先間隔(寸法)
33 刃先位置に片寄りのある丸ナイフ
33a 丸ナイフ33の刃先
33b 丸ナイフ33の刃先の片寄る盤面
4 本発明の麺線スクレーパー
4a 溝部毎に独立した麺線スクレーパー小
4b 溝部毎に独立した麺線スクレーパー大
4c 麺線スクレーパーを貫通する丸棒
4d 麺線スクレーパーを押える固定具(アングル)
5 切刃フレーム(左右)
6 麺帯
6a 細断された麺線
7 丸ナイフのスペーサー
7a 厚みを薄めにしたスペーサー
7b 厚みを厚めにしたスペーサー