(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】雨仕舞構造、および雨仕舞構造が配設された屋根ハッチ
(51)【国際特許分類】
E04D 13/14 20060101AFI20220531BHJP
E04D 13/03 20060101ALI20220531BHJP
E04D 1/30 20060101ALI20220531BHJP
E04D 3/40 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
E04D13/14 D
E04D13/03 Z
E04D1/30 601T
E04D3/40 P
(21)【出願番号】P 2018059308
(22)【出願日】2018-03-27
【審査請求日】2021-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】592173685
【氏名又は名称】創機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100111464
【氏名又は名称】齋藤 悦子
(72)【発明者】
【氏名】池野 三吉
(72)【発明者】
【氏名】池野 貴則
(72)【発明者】
【氏名】和田 勉
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-119974(JP,A)
【文献】特開2003-096998(JP,A)
【文献】実開昭62-099719(JP,U)
【文献】特開昭62-291354(JP,A)
【文献】実開昭54-166115(JP,U)
【文献】実開昭54-181619(JP,U)
【文献】特許第6027862(JP,B2)
【文献】特開2017-172156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 1/00- 3/40
E04D 13/00-15/07
E04D 11/00
E04B 1/68- 1/686
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根の上に構築された外部構造物の雨仕舞構造であって、
前記外部構造物の外周板
の外周に配置される防水ケースと、前記防水ケースを前記外部構造物に取り付ける固定部材とを備え、
前記防水ケースは、帯状部と、前記帯状部の下端から延設されるフランジとを一体に成形された枠状物であり、
前記固定部材は、間隙部、防水ケース押え部、防水ケースカバー取付け部、および防水ケースカバー部とを備え、
前記外周板に配設された前記帯状部の上方に前記間隙部が配置され、前記外周板、前記間隙部、前記防水ケース押え部、および防水ケースカバー取付け部がこの順に固設され、前記帯状部が前記外周板と前記防水ケース押え部との間に遊嵌され、
前記防水ケースカバー取付け部に前記防水ケースカバー部が固設されることを特徴とする、雨仕舞構造。
【請求項2】
前記固定部材は、前記間隙部と前記防水ケースカバー取付け部とが縦断面視略逆V字形に一体に形成された間隙・カバー取付け部と、防水ケース押え部、および防水ケースカバー部とを備えるものであり、
前記間隙・カバー取付け部のV字形の一辺に前記間隙部が形成され、他辺に前記防水ケースカバー取付け部が形成され、
前記外周板に、前記間隙・カバー取付け部
の前記間隙部の一方の面が固定され、前記間隙部の他方の面に前記防水ケース押え部が固定され、前記外周板、前記間隙部、前記防水ケース押え部、前記防水ケースカバー取付け部がこの順
に配列されて固設され、
前記間隙・カバー取付け部
の前記防水ケースカバー取付け部に、前記防水ケースカバー部が固設されることを特徴とする、請求項1記載の雨仕舞構造。
【請求項3】
前記固定部材は、更に、防水ケースカバー部に固定される防水補助部を含むことを特徴とする、請求項1または2記載の雨仕舞構造。
【請求項4】
前記防水ケース押え部の下端に、前記
外周板に向かう凸部が形成されることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の雨仕舞構造。
【請求項5】
前記防水ケースのフランジと前記防水ケースカバー部との間に防水材が充填されることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の雨仕舞構造。
【請求項6】
雨仕舞構造が配設された屋根ハッチであって、
前記屋根ハッチは、建物の屋根に形成された貫通孔を覆って立設される外部構造物であり、
天井板と、人が通過可能な第1の開口および前記
第1の開口を開閉可能な第一の蓋を備える底板と、前記底板と前記天井板とを連設して外周板を構成する外周板とを備え、
前記天井板および/または前記外周板には、人が通過可能な第2の開口および前記
第2の開口を開閉可能な第二の蓋を備え、
前記外周板に請求項1~4のいずれかに記載の雨仕舞構造が固設されていることを特徴とする、雨仕舞構造が配設された屋根ハッチ。
【請求項7】
前記屋根ハッチは、前記外周板に、前記固定部材を構成する前記間隙部と前記防水ケースカバー取付け部とが縦断面視略逆V字形に一体に形成された間隙・カバー取付け部が固設されたものであることを特徴とする、請求項6記載の雨仕舞構造が配設された屋根ハッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨仕舞構造、および雨仕舞構造が配設された屋根ハッチに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅などの屋根面の野地板に開口部を形成して取り付けられる外部構造物として、屋根ハッチ、採光窓、屋根換気ユニットなどがある。濾水を防止するため、屋根面と外部構造物との取合い部には雨仕舞構造が行われる。
【0003】
例えば、屋根とその上に形成した外部構造物との雨仕舞構造として、取合い部の上側を雨押え材で覆うようにした雨仕舞構造がある(特許文献1)。特許公報1記載の方法は、雨押え材の下側に、笠木に固定した補助雨押えを設け、補助雨押えの外周板側端部に、上側に折り返した嵌合部を設け、雨押え材の外周板側端部を前記補助雨押えの嵌合部に嵌合固定することを特徴とする。予め柱状の防水材が取合い部に沿って配置され、この防水材の形状に沿って補助雨押えの立ち上がり部が形成され、立ち上がり部の上端から外周板側に突出した後に前記嵌合部が形成される。補助雨押えは、笠木を介して屋根に固定されるが雨押え材は外周板側に固定されないため、施工が容易であるという。
【0004】
また、外周板面と屋根面との取合い部の雨仕舞構造であって、一端部が屋根面側に延びかつ他端部が外周板面に接するベース部材と、ベース部材を覆い一端部が屋根面の上方に位置しかつ他端部が外周板面に接続されるトップ部材、とを用いる方法もある(特許文献2)。ベース部材の一端部を屋根面側に固定し、他端部を外周板面に接続し、外周板面との間でベース側シーリング材収容部を形成させる。このベース側シーリング材収容部の上方でトップ部材の端部を折り曲げてトップ側シーリング材収容部を形成させ、これら2つのシーリング材収納部にそれぞれシーリング材を充填すると、2か所のシーリングにより濾水を回避することができるという。
【0005】
特許文献1や特許文献2は、母屋の屋根上の一部に建築された二階建て部等を対象として、その取合い部の雨仕舞を規格化したものである。このような雨仕舞構造の規格化は、採光窓などのキット製品の雨仕舞にも採用されている。例えば、枠体、採光窓本体、および枠体の外側面及び野地板面を被装する縦断面略L字状の水切り板兼用下枠とが一組となっている採光窓がある(特許文献3)。住宅等の屋根面の野地板に開口部を形成して枠体を固着し、この枠体上に採光窓本体が設置される構成となっている。特許文献3では、枠体の外側面及び野地板面を被装する縦断面略L字状の水切り板兼用下枠の上端部にパッキング材を介して採光窓本体の上枠が嵌着される構成となっている。
【0006】
一方、採光窓よりも大型の外部構造物として、天井板と、人が通過可能な第1の開口および前記開口を開閉可能な第一の蓋を備える底板と、前記底板と前記天井板とを連設して外周板を構成する外周板とを備え、前記天井板および/または前記外周板には、人が通過可能な第2の開口および前記開口を開閉可能な第二の蓋を備える屋根ハッチがある(特許文献4)。前記屋根ハッチは、建物の屋根に形成された貫通孔を覆って立設される外部構造物であり、床蓋を開けると、階段などを使用して室内から屋根ハッチ内に侵入することができ、天蓋を開けると屋根に出ることができる構造物である。屋根に上る手段は、屋外からのアプローチに限定されているが、屋根ハッチを使用すれば、屋内から屋根に上ることができる。この屋根ハッチは、間柱などを使用することなく、住宅の屋上に配設することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-339759号公報
【文献】特開2017-172156号公報
【文献】特開2004-116067号公報
【文献】特許第6027862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来から、一般住宅の二階建て部分の雨仕舞方法などは、現場の作業者の裁量に依存するところが大きい。特許文献1から特許文献3は、作業者の経験に依存せずに雨仕舞ができるように、雨仕舞構造を規格化したものである。しかしながら、屋根の上に構成される外部構造物であっても、住宅の二階建て部、採光窓、屋根ハッチなどは施工場所、構成部材、サイズなどが異なる。例えば、住宅の二階建て部分などは、通し柱、間柱、管柱などを有し、ヒトが居住できるサイズの外部構造物であるが、採光窓は、屋根の一部を開口して装着される比較的小型の外部構造物であり、受梁などを必要としない。また、屋根ハッチは、ヒトが通過でき、通し柱、間柱、管柱などを有しない外部構造物であるが、受梁や棟木などに係止して配設されることが一般的である。したがって、たとえば地震を想定すると、一般住宅の二階建て部分は、通し柱などを介して一階部分と二階部分とが一連に振動すると想定され、一方、採光窓は屋根の一部構造物であるため屋根と一体に振動すると想定される。一方、通し柱を有しない屋根ハッチは、屋根と屋根ハッチとに別個に振動が伝播する可能性がある。したがって、通し柱を有しない外部構造物にも好適な雨仕舞構造が求められる。
【0009】
更に、雨仕舞構造が規格化できれば、作業者の習熟度などに依存することなく雨仕舞を行うことができる。また、予め規格化された雨仕舞構造の一部が屋根ハッチに固定されていれば、雨仕舞作業をより簡便に行うことができる。したがって、雨仕舞に好適な屋根ハッチや雨仕舞構造を含む屋根ハッチキットの開発が望まれる。
【0010】
上記現状に鑑みて、本発明は、屋根の上に構築された外部構造物、特に通し柱を有しない外部構造物にも好適な雨仕舞構造を提供することを目的とする。
【0011】
また本発明は、雨仕舞構造が配設された屋根ハッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、屋根ハッチについて詳細に検討したところ、取合い部の外周を被覆できる防水ケースを固定部材で屋根ハッチに遊嵌し、前記固定部材に防水ケースを被覆するカバー部を含めると、地震などの振動によって屋根ハッチと屋根とに別個に振動が伝播した場合でも雨仕舞の破損を防止して濾水を回避できること、前記防水ケースとカバー部との間に防水材を充填すると、屋根ハッチの外周に敷設される屋根瓦など不定形部材を安定して固定して防水効果を向上させ得ること、カバー部を別個の部材とすることで、防水材の充填後に容易にカバー部を装着できることを見出し、発明を完成させた。
【0013】
すなわち本発明は、屋根の上に構築された外部構造物の雨仕舞構造であって、
前記外部構造物の外周板の外周に配置される防水ケースと、前記防水ケースを前記外部構造物に取り付ける固定部材とを備え、
前記防水ケースは、帯状部と、前記帯状部の下端から延設されるフランジとを一体に成形された枠状物であり、
前記固定部材は、間隙部、防水ケース押え部、防水ケースカバー取付け部、および防水ケースカバー部とを備え、
前記外周板に配設された前記帯状部の上方に前記間隙部が配置され、前記外周板、前記間隙部、前記防水ケース押え部、および防水ケースカバー取付け部がこの順に固設され、前記帯状部が前記外周板と前記防水ケース押え部との間に遊嵌され、
前記防水ケースカバー取付け部に前記防水ケースカバー部が固設されることを特徴とする、雨仕舞構造を提供するものである。
【0014】
また本発明は、前記固定部材は、前記間隙部と前記防水ケースカバー取付け部とが縦断面視略逆V字形に一体に形成された間隙・カバー取付け部と、防水ケース押え部、および防水ケースカバー部とを備えるものであり、
前記間隙・カバー取付け部のV字形の一辺に前記間隙部が形成され、他辺に前記防水ケースカバー取付け部が形成され、
前記外周板に、前記間隙・カバー取付け部の前記間隙部の一方の面が固定され、前記間隙部の他方の面に前記防水ケース押え部が固定され、前記外周板、前記間隙部、前記防水ケース押え部、前記防水ケースカバー取付け部がこの順に配列されて固設され、
前記間隙・カバー取付け部の前記防水ケースカバー取付け部に、前記防水ケースカバー部が固設されることを特徴とする、前記雨仕舞構造を提供するものである。
【0015】
また本発明は、前記固定部材は、更に、防水ケースカバー部に固定される防水補助部を含むことを特徴とする、前記雨仕舞構造を提供するものである。
【0016】
また本発明は、前記防水ケース押え部の下端に、前記外周板に向かう凸部が形成されることを特徴とする、前記雨仕舞構造を提供するものである。
【0017】
また本発明は、前記防水ケースのフランジと前記防水ケースカバー部との間に防水材が充填されることを特徴とする、前記雨仕舞構造を提供するものである。
【0018】
また本発明は、雨仕舞構造が配設された屋根ハッチであって、
前記屋根ハッチは、建物の屋根に形成された貫通孔を覆って立設される外部構造物であり、
天井板と、人が通過可能な第1の開口および前記第1の開口を開閉可能な第一の蓋を備える底板と、前記底板と前記天井板とを連設して外周板を構成する外周板とを備え、
前記天井板および/または前記外周板には、人が通過可能な第2の開口および前記第2の開口を開閉可能な第二の蓋を備え、
前記外周板に上記雨仕舞構造が固設されていることを特徴とする、雨仕舞構造が配設された屋根ハッチを提供するものである。
【0019】
また本発明は、前記屋根ハッチは、前記外周板に、前記固定部材を構成する前記間隙部と前記防水ケースカバー取付け部とが縦断面視略逆V字形に一体に形成された間隙・カバー取付け部が固設されたものであることを特徴とする、前記雨仕舞構造が配設された屋根ハッチを提供するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、外部構造物の外周に防水ケースが配置される。外部構造物の一種である屋根ハッチに雨仕舞構造を組み合わせることで、屋根ハッチの雨仕舞を規格化すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】屋根に構築された外部構造物に雨仕舞された状態を説明する図であり、
図1(A)は斜視図、
図1(B)は縦断面図である。
【
図2】防水ケースを説明する図である。
図2(A)は、2部に分割された防水ケースの一例を示す斜視図であり、
図2(B)は連結部に防水テープが添付された状態を説明する図であり、
図2(C)は、屋根ハッチの外周に取付けられる状態を説明する図である。
【
図3】固定部材を説明する図であり、
図3(A)は固定部材を構成する間隙部、キャップが装着された防水カバー押え部、防水ケースカバー取付け部および防水ケースカバー部の斜視図であり、
図3(B)は、
図3(A)に示す間隙部、防水カバー押え部、防水ケースカバー取付け部、およびキャップが一体に固定された固定部材Aに防水ケースカバー部が取り付けられた状態の斜視図であり、
図3(C)は、
図3(B)記載の固定部材Aを外周板に取付け、固定部材Aに防水ケースカバー部を取り付ける方法を説明する縦断面図である。また、
図3(D)は、屋根ハッチの外周板に防水ケースと固定部材とを装着した際の角部の部分平面図であり、
図3(E)は、その斜視図である。
【
図4】
図4(A)は、間隙・カバー取付け部と防水カバー押え部とが一体に固定された固定部材Bを説明する図であり、
図4(B)は、屋根ハッチの外周板に、固定部材Bが固定され、かつ間隙・カバー取付け部に防水ケースカバー部が固定された態様の部分縦断面図である。
【
図5】防水ケースと固定部材の配設方法を説明する図である。
図5(A)は、図示しない屋根ハッチの外周板に遊嵌された防水ケースの斜視図であり、
図5(B)は、防水ケースに固定部材Aをボルトで固定して防水ケースを遊嵌する方法を説明する部分斜視図であり、
図5(C)は、防水カバー押え部の外周や下部に防水材を充填し、ついで防水ケースカバー部を固定する方法を説明する斜視図である。
【
図6】
図6は、屋根ハッチに雨仕舞構造が配設された棟木側の状態を説明する部分縦断面図である。
【
図7】
図7は、屋根ハッチに雨仕舞構造が配設された流れ側の状態を説明する部分縦断面図である。
【
図8】
図8は、屋根ハッチBを説明する図である。
図8(A)は、屋根ハッチの外周板に、間隙・カバー取付け部が固定された屋根ハッチBの部分断面図であり、
図8(B)は、屋根ハッチBに、防水カバー押え部が固定され、かつ間隙・カバー取付け部に防水ケースカバー部が固定された態様の部分縦断面図であり、
図8(C)は、屋根ハッチBに防水カバー押え部をボルトで固定する態様を説明する図である。
【
図9】屋根ハッチBに雨仕舞する方法を説明する図であり、
図9(A)は、屋根ハッチB(図示せず)の外周板に遊嵌された防水ケースの斜視図であり、
図9(B)は、屋根ハッチBに固設された間隙・カバー取付け部に防水カバー押え部をボルトで固定する態様を説明する図である。また、
図9(C)は、間隙・カバー取付け部の下部に防水材を充填し、ついで防水カバー押え部をボルトで固定する態様を説明する図である。
【
図10】
図10(A)は、瓦棒がある屋根に屋根ハッチBに雨仕舞された棟木側の状態を示す部分縦断面図であり、
図10(B)は、その部分正面図である。
【
図11】
図11(A)は、瓦棒がある屋根に屋根ハッチBに雨仕舞された流れ側の状態を示す部分縦断面図であり、
図11(B)はその部分側面図である。
【
図12】
図12(A)は、屋根ハッチBに雨仕舞された防水ケースカバー部の下部に、瓦棒などの屋根上に形成された突起物の形状に合わせて形成した防水補助板が配設される態様を説明する図であり、
図12(B)は
図12(A)のA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を使用して、本発明の雨仕舞構造を説明する。
【0023】
図1(A)は、屋根の上に構築された外部構造物(10)に雨仕舞された状態を示す斜視図であり、
図1(B)は、本発明の雨仕舞構造によって外部構造物(10)が雨仕舞された状態を示す側面図である。
図1では、外部構造物(10)として、天井板(1)と、人が通過可能な第1の開口(2)および前記開口を開閉可能な第一の蓋(3)を備える底板(4)と、前記底板(4)と前記天井板(1)とを連設して外周を構成する外周板(5)とを備え、前記天井板(1)および/または前記外周板(5)には、人が通過可能な第2の開口(6)および前記開口を開閉可能な第二の蓋(7)を備える屋根ハッチA(10A)を示す。ただし、本発明において外部構造物(10)とは、屋根ハッチA(10A)に限定されるものではない。また、
図1では、棟木(57)から軒の受梁(59)に向かって所定の角度で傾斜する屋根面に、屋根ハッチA(10A)の端部を棟木(57)の上部に掛かるように固定する態様を示すが、屋根ハッチA(10A)の配設位置もこれらに限定されるものではない。ただし、説明の便宜のため、外部構造物(10)が、底板(4)と天井板(1)と4枚の外周板(5)とを有する屋根ハッチA(10A)であり、
図1に示すように、棟木(57)と受梁(59)とを介して配設される場合の雨仕舞について説明する。
【0024】
屋根ハッチA(10A)は、屋根の野地板(55)、図示しない防水紙、および瓦(50)などを屋根ハッチA(10A)の形状に沿って除去して形成された開口に配設される(
図1(A))。屋根ハッチA(10A)の底板(4)と外周板(5)との形状によって、屋根ハッチA(10A)を屋根に取り付けるための係止部(8)を形成すれば、
図1(B)に示すように、この係止部(8)を棟木(57)や受梁(59)、その他の梁や母屋などに係止することで、屋根面に屋根ハッチA(10A)を固定することができる。
【0025】
本発明の雨仕舞構造は、防水ケース(20)と、防水ケース(20)を屋根ハッチA(10A)に取り付ける固定部材(30)とからなる。本発明によれば、取合い部は、防水ケース(20)と固定部材(30)とにより雨仕舞が行われる。固定部材(30)と防水ケース(20)との間に更に防水材(40)を充填すると、屋根面の屋根ハッチA(10A)外周の瓦(50)を固定することができ、かつ瓦(50)を上部から押圧できるので取合い部への濾水を防止することができる。
【0026】
(1)防水ケース
本発明において、防水ケース(20)は、取合い部の上部を被覆する部材であり、表面に凸部や突起物がない帯状部(21)と、この帯状部(21)の下端から延設されるフランジ(23)とが一体に成形された枠状物である。屋根ハッチA(10A)の外周板(5)に帯状部(21)が遊嵌され、帯状部(21)と一体に成形されたフランジ(23)が屋根面側に延設される。
【0027】
本発明で使用する防水ケース(20)を構成する帯状部(21)は、屋根ハッチA(10A)の外周板(5)の全周に装着される。帯状部(21)は、屋根ハッチA(10A)を構成する4枚の外周板(5)に対応して方形に4辺が連結されたものでもよく、4辺のいずれか2以上の辺と他の辺とに分離されたものであってもよい。現場の取付け状況に応じて予め選択することができる。複数に分割される場合は、屋根ハッチA(10A)へ装着する際に、予め相互に連結して枠状物として使用してもよく、屋根ハッチA(10A)を屋根に固設した後に、外周板(5)に連結しながら装着してもよい。
図2(A)に、コの字型の3辺と1辺との2つに分割された帯状部(21a、21b)の斜視図を示す。なお、符号22は、分割された帯状部(21a、21b)の連結部である。分割された帯状部(21a、21b)を連結して方形の防水ケース(20)を形成するには、例えば、帯状部(21)に一体に成形されるフランジ(23)に突出部(22a)を形成し、突出部(22a)同士をボルトやナットで固定すればよい。また、
図2(B)に示すように、接続部(22)の外周を防水テープなどの防水材(40)で被覆してもよい。これにより接続部(22)からの浸水を防止することができる。
図2(C)に屋根ハッチA(10A)の外周板(5)に、コの字型の帯状部(21a)を装着した後に、残りの1辺の帯状部(21a)を固定する態様を示す。
【0028】
本発明では、防水ケース(20)は、屋根ハッチA(10A)の外周板(5)に遊嵌され、これにより、地震その他の振動による雨仕舞の破損を回避することができる。このため、防水ケース(20)の帯状部(21)の長さは、屋根ハッチA(10A)の外周板(5)の全周よりも長尺となる。その程度は、帯状部(21)の厚さや、外周板(5)と帯状部(21)との間に任意に配設する防水紙の厚みやその重ね枚数などを勘案して決定することができる。なお、帯状部(21)の厚みは、使用する板金の厚みであり、好ましくは0.5~3mm、より好ましくは0.8~2mmである。
【0029】
帯状部(21)の下端にはフランジ(23)が一体に延設される。したがって、屋根ハッチA(10A)に防水ケース(20)が装着されると、防水ケース(20)を構成するフランジ(23)によって、屋根の野地板(55)や防水紙(53)を被覆することができる。帯状部(21)とフランジ(23)とのなす角度(θ)は、屋根ハッチA(10A)を取付ける屋根の傾斜や取り付け位置等に対応して適宜選択することができる。例えば、
図2(A)には、棟木側の角度(θ1)が、棟木を中心にして屋根ハッチ(10A)の取付け方向の逆側の屋根の傾斜に合わせて鈍角であり、屋根の左右の流れ側の角度(θ2)が略直角であり、軒側の角度(θ3)が屋根の傾斜角となるように調整された態様を示す。上記角度に調整することで、4辺のフランジ(23)がそれぞれ屋根材に接触することができる。なお、
図2(A)に示すように、防水ケース(20)を、屋根ハッチA(10A)の外周板(5)に沿うように複数に分割して構成すると、帯状部(21)とフランジ(23)との角度の調整が容易である。
【0030】
防水ケース(20)の材質は、木製、FRPその他の合成樹脂製、金属製でもよく、これらの複合部材で製造されるものであってもよい。また、防水ケース(20)が複数に分割される場合に連結する部材としては、ナットやボルトなどが例示されるが、これに限定されるものではなく、金属ワイヤーやU字形バネなどで固定するものであってもよい。
【0031】
(2)固定部材
本発明で使用する固定部材(30)は、間隙部(31)、防水ケース押え部(33)、防水ケースカバー取付け部(35)、および防水ケースカバー部(37)とからなる(
図3(A))。上記構成によって、防水ケース(20)の帯状部(21)を屋根ハッチA(10A)の外周板(5)に固定する部材である。固定部材(30)は、上記各部が個別の構成部品として使用されるものであってもよく、各部の少なくとも2以上が一体に形成されるものでもよい。また、固定部材(30)は、外周板(5)の1枚ごとに、間隙部(31)、防水ケース押え部(33)、防水ケースカバー取付け部(35)、および防水ケースカバー部(37)の2以上が一体に形成されるものを使用して防水ケース(20)の帯状部(21)を固定する態様であってもよい。外周板(5)の1枚を単位に、間隙部(31)、防水ケース押え部(33)および防水ケースカバー取付け部(35)を一体に形成した部材の一例を
図3(B)に固定部材A(30A)として示す。固定部材A(30A)に防水ケースカバー部(37)を固設すると、固定部材(30)として使用することができる。
図3(A)に、外周板(5)のいずれかの1枚の外側に、間隙部(31)、防水ケース押え部(33)、防水ケースカバー取付け部(35)、および防水ケースカバー部(37)を固定する場合の取付け順を説明する部分斜視図を示す。また、
図3(B)に、外周板(5)に固定部材A(30A)が固定され、かつ固定部材A(30A)に防水ケースカバー部(37)が固定する態様を示す。なお、
図3(C)は、
図3(B)の分解縦断面図である。予め、屋根ハッチA(10A)の外周板(5)の内壁側にナット(5a)が固定されている。また、固定部材A(30A)にも予めボルト孔(39’)が形成されている。よって、ボルト(39)を挿入して固定部材A(30A)を外周板(5)に固定することができる。次いで、固定部材A(30A)の防水ケースカバー取付け部(35)に防水ケースカバー部(37)をボルト(39)などで固定する。
【0032】
図3(A)に示すように、固定部材(30)を構成する間隙部(31)は、屋根ハッチA(10A)の外周板(5)を一周する全長を有し、外周板(5)と防水ケース押え部(33)との間に配置される。後記するように、屋根面に固定された屋根ハッチA(10A)の外周に防水ケース(20)が装着された後に固定部材(30)によって防水ケース(20)が遊嵌される。本発明では、防水ケース(20)の帯状部(21)の上部に間隙部(31)が固定されるため、使用する間隙部(31)は、防水ケース(20)を遊嵌できる所定の厚み(t1)を有する。その厚み(t1)は、帯状部(21)の厚み、外周板(5)と帯状部(21)との間に任意に配設できる防水紙(53)の厚みや重ね枚数などを勘案して決定することができる。なお、間隙部(31)の形状は、所定の厚み(t1)を均一に確保するため長尺の板状物であることが好ましいが、これに限定するものではない。また、
図3(D)に、外周板(5)の角部が、外周板(5)に沿う2枚の間隙部(31)で連結される例を示す。同図に示すように、間隙部(31)の1辺の長さを間隙部(31)の厚み分だけ長尺にすると、隙間なく角部を密着させることができる。なお、角部には、
図2(B)に示す帯状部(21)の連結部(22)と同様に、防水テープなどの防水材(40)を添付してもよい。後記する、防水ケース押え部(33)や防水ケースカバー部(37)も同様である。なお、間隙部(31)は、1枚の板材を、外周板(5)の4か所の角部に対応する角部を形成して調製したものであってもよい。
【0033】
防水ケース押え部(33)は、間隙部(31)と共に外周板(5)に固定され、防水ケース(20)の帯状部(21)を外周板(5)と防水ケース押え部(33)との間に遊嵌する部材である。屋根ハッチA(10A)に防水ケース押え部(33)が装着されると、外周板(5)と防水ケース押え部(33)との間で防水ケース(20)の帯状部(21)を遊嵌すると共に外部の風雨などを遮断し、帯状部(21)の劣化を防止することができる。この目的のため、防水ケース押え部(33)の形状は、間隙部(31)と略等しい長さを有する長尺の板状物であるが、間隙部(31)よりも幅広く、すなわち上端を間隙部(31)の上端に揃えた場合、下端が間隙部(31)よりも屋根面近傍に接近できるように幅広であることが好ましい。その程度は、屋根面から間隙部(31)の上端までの高さから適宜算出することができる。これにより防水ケース押え部(33)下端からの雨水の跳ね返りなどを防止し、効率的に防水ケース(20)の劣化を防止することができる。また、間隙部材(31)と同様に、各外周板(5)に沿う複数枚の防水ケース押え部(33)で構成してもよく、外周板(5)の4か所の角部に対応する角部を形成した1枚の防水ケース押え部(33)であってもよい。複数枚で構成する場合は、間隙部(31)と同様に、防水ケース押え部(33)の1辺の長さを防水ケース押え部(33)の厚み分だけ長尺にすると、隙間なく角部を密着させることができる。連結した角部には、防水テープなどの防水材(40)を添付してもよい。なお、本発明では、防水ケース押え部(33)の下端部に、間隙部(31)側に突出する凸部を形成できるキャップ(33a)を装着することが好ましい。キャップ(33a)によって、防水ケース押え部(33)の下端から雨水が帯状部(21)側に侵入するのをより効果的に防止することができる。
【0034】
防水ケースカバー取付け部(35)は、防水ケースカバー部(37)を固定するための部材である。なお、防水ケースカバー部(37)とは、少なくとも防水ケース(20)を構成するフランジ(23)の上部および屋根材の端部を被覆する部材である。後記する
図6に示すように、防水ケースカバー部(37)の下部には、瓦(50)を固定したり、雨水の侵入を防止するための漆喰やガラスウールなどの防水材(40)を充填する。これらの一連の操作を円滑に行うには、防水材(40)を充填した後に防水ケースカバー部(37)を取り付けて防水材(40)を固定することが好ましい。そこで本発明では、カバー部を、防水ケースカバー取付け部(35)と防水ケースカバー部(37)とに分離し、固定部材(30)にこれらを含めることにした。防水ケースカバー取付け部(35)の形状は、間隙部(31)と略等しい長さを有するが、
図3(A)に示すように、間隙部(31)と共に固定されるための間隙部側固定部(35a)と防水ケースカバー部(37)を固定するためのカバー部側固定部(35b)とを含む。双方の固定を容易に行うため、間隙部側固定部(35a)とカバー部側固定部(35b)との角度(θ4)は、棟木側と軒側は屋根勾配に調整し、流れ側は90°に調整すると接続が容易である。板状物を上記角度(θ4)で折り曲げて形成することができる。
【0035】
図3(D)は、屋根ハッチ(10A)の外周板(5)に防水ケース(20)と固定部材(30)とを装着した際の角部の部分平面図を示し、
図3(E)にその部分斜視図を示す。前記したように、本発明で使用する固定部材(30)は、屋根ハッチA(10A)の外周板(5)を構成する1枚ごとに、間隙部(31)、防水ケース押え部(33)、防水ケースカバー取付け部(35)、防水ケースカバー部(37)を固定することができる。その場合には、
図3(D)、(E)に示すように、2枚の外周板(5)が交差する角部で、防水ケースカバー取付け部(35)をボルト(39)などで固定することができる。
【0036】
防水ケースカバー部(37)は、防水ケースカバー取付け部(35)に固定される。防水ケースカバー部(37)の形状は、
図3(A)に示すように、固定部(37a)とカバー部(37b)とを有する。カバー部(37b)による雨水の侵入を防止するため、固定部(37a)とカバー部(37b)とのなす角度(θ5)を適宜選択することができる。なお、固定部材(30)が装着されると、カバー部(37b)の下端が屋根面に接触し、雨水の侵入を防止することができる。したがって、カバー部(37b)の長さは屋根ハッチA(10A)を設置する屋根面の構造を勘案して適宜選択することが好ましい。また、フランジ(23)の上部に防水材(40)を充填した後に被覆できればよく、例えば、縦断面視弧状その他であってもよい。
【0037】
固定部材(30)を構成する間隙部(31)、防水ケース押え部(33)、防水ケースカバー取付け部(35)、防水ケースカバー部(37)は、木製、FRPその他の合成樹脂製、金属製などの何れで構成されるものであってもよい。また、これらの複合部材で構成されるものでもよい。また、これらの2以上が一体に形成される固定部材Aを形成する方法も溶接、ボルト、ビスなどで行うことができ、いずれでもよい。また、キャップ(33a)は、ゴム製、木製、FRPその他の合成樹脂製、金属製などの何れで構成されるものであってもよい。このようなキャップ(33a)として溝ゴムがある。
【0038】
本発明の雨仕舞構造では、防水ケースカバー部(37)と防水ケース(20)との間に、防水材(40)を充填することができる。屋根ハッチA(10A)の設置部近傍には、瓦(50)、瓦棒(56)など不定形状の屋根部材が介在する場合がある。防水材(40)を充填することで空間を埋めて防水効果を増強でき、かつ瓦(50)などを安定に固定することができる。本発明で使用する固定部材(30)によれば、防水材(40)を充填した後に防水ケースカバー取付け部(35)に防水ケースカバー部(37)を固定できるため、防水材(40)の充填および防水ケースカバー部(37)による固定を容易に行うことができる。
【0039】
本発明で使用する防水材(40)としては、漆喰、防水用ゴムパッキン、防水テープ、シリコーンゴム、発泡スチロール、ロックウール、ガラスウールなどがあり、これらを複合して使用してもよい。
【0040】
本発明で使用する固定部材(30)としては、間隙部(31)と防水ケースカバー取付け部(35)とが一体に成形される間隙・カバー取付け部(36)を使用するものであってもよい。
図4(A)に、間隙・カバー取付け部(36)と、これに防水ケース押え部(33)が一体に成形された固定部材(30)の部分縦断面図を示す。本発明では、
図4(A)に示すような、間隙・カバー取付け部(36)と防水ケース押え部(33)とが一体に形成された部材を、固定部材B(30B)と称する。固定部材B(30B)に防水ケースカバー部(37)を固設して、固定部材(30)として使用することができる。
【0041】
間隙・カバー取付け部(36)は、縦断面視略逆V字形に成形された板状物であり、一辺が間隙部(31’)として、他辺が防水ケースカバー取付け部(35’)として使用される。間隙部(31’)と防水ケースカバー取付け部(35’)とのなす角度(θ6)は、屋根の傾斜と等しくなるように調整されている。この形状であれば、間隙部(31’)を介して防水ケース(20)の帯状部(21)を遊嵌でき、かつ防水ケースカバー取付け部(35’)を介して防水ケースカバー部(37)の固定を容易に行うことができる。なお、間隙部(31’)の所定の厚み(t2)は、外周板(5)の全周の長さと、外周板(5)に遊嵌される帯状部(21)の長さとから算出することができる。
【0042】
図4(A)に示すように、固定部材B(30B)の間隙・カバー取付け部(36)の間隙部(31’)および防水ケース押え部(33)には、屋根ハッチA(10A)に固定するためのボルト孔(39’)が形成され、防水ケースカバー取付け部(35’)にも防水ケースカバー部(37)を固定するためのボルト孔(39’)がそれぞれ形成されている。
図4(B)に、屋根ハッチA(10A)の外周板(5)に固定部材B(30B)を固定し、間隙・カバー取付け部(36)の防水ケースカバー取付け部(35’)に防水ケースカバー部(37)をボルト(39)で固定した際の一部縦断面図を示す。
【0043】
固定部材B(30B)は、固定部材A(30A)と同様に、屋根ハッチA(10A)の外周板(5)を構成する1枚ごとに、固定部材B(30B)を固定するものであってもよい。この態様であれば、屋根ハッチA(10A)への装着を容易に行うことができる。
【0044】
なお、固定部材A(30A)の、間隙部(31)と防水ケース押え部(33)との位置や固定部材B(30B)の間隙・カバー取付け部(36)と防水ケース押え部(33)との位置は、屋根ハッチA(10A)に装着した際に、防水ケース(20)の帯状部(21)の上方に間隙部(31)が配設されるように、予め固定しておく。
【0045】
本発明の雨仕舞構造には、防水ケース(20)と固定部材(30)に加え、固定部材(30)を屋根ハッチA(30A)に固定するためのボルトやナットなどを含んでもよい。これに対応し、固定部材(30)を構成する間隙部(31)などには、ボルト穴などが形成されるものであってもよい。
【0046】
(3)固定部材Aを使用した雨仕舞
図5を用いて、屋根ハッチA(10A)に防水ケース(20)および固定部材(30)を使用して雨仕舞する方法を説明する。なお、防水ケース(20)は、1枚ごとに4つに分離された帯状部(21)およびフランジ(23)を予め結合して方形に形成した防水ケース(20)を使用するものとする。また、固定部材(30)は、屋根ハッチA(10A)の外周板(5)の1枚ごとに4つに分割された固定部材A(30A)と防水ケースカバー部(37)とを使用するものとする。更に、固定部材(30)には、屋根ハッチA(30A)に固定するためのボルト孔(39’)、および防水ケースカバー取付け部(35)に防水ケースカバー部(37)を固定するためのボルト孔(39’)が形成されている。屋根ハッチA(10A)は、外周板(5)に固定部材(30)の対応する位置にボルト孔(39’)が形成され、外周板(5)の内壁は溶接されたナットで封止されているものとする。
【0047】
(3-1)屋根ハッチA(10A)の固定
屋根は、例えば
図1(B)に示すように、垂木の上に野地板(55)や図示しない防水紙が積層され、その上部に瓦(50)などの葺き材料が積層されている。まず、屋根ハッチA(10A)を挿入できるように、屋根面の瓦(50)や防水紙、および野地板(55)、更に、必要に応じて垂木の一部を除去し、屋根ハッチAを挿入するための開口を形成する。また、適宜、屋根の強度や構造に応じて、母屋を補強し、または新たな受梁(59)を取り付ける。
【0048】
図5(A)の斜視図に示すように、帯状部(21)およびフランジ(23)を予め方形に固定する。次いで、屋根ハッチA(10A)の外周板(5)に防水ケース(20)を仮止めする。防水ケース(20)を仮止めした屋根ハッチA(10A)の底部を、形成した開口部に挿入して位置決め後に固定する。この際、古い防水紙のまくりを伸ばして屋根ハッチA(10)の外周板(5)に張り付けることが好ましい。次いで、防水ケース(20)の仮止めを解除する。
図2(A)に示すθ1、θ2、θ3を適切に選択することで、フランジ(23)が、野地板(55)やその上部の防水紙に接触することができる。
【0049】
(3-2)防水紙の敷設
古い防水紙は、フランジ(23)下部から、外周板(5)と帯状部(21)との間に延設して添付されている。本発明では、防水ケース(20)のフランジ(23)が野地板(55)や防水紙に着床した後、新しい防水紙を帯状部(21)からフランジ(23)の上面を経て敷設することが好ましい。これにより防水ケース(20)とその近傍の外周板(5)とを一体に新しい防水紙で被覆し、防水効果を確保することができる。
【0050】
(3-3)固定部材Aの固定
次いで、防水ケース(20)の帯状部(21)の上部に間隙部(31)が固定されるように、
図5(B)に示すように、固定部材A(30A)のボルト孔(39’)にボルト(39)を挿入し、外周板(5)の1枚ごとに固定部材A(30A)を固定する。固定部材A(30A)のボルト孔(39’)からボルト(39)を挿入し、外周板(5)の内壁に溶接固定したナット(図示せず)でボルト(39)を螺着すると、固定部材A(30A)を屋根ハッチA(10A)の外周板(5)に固定することができる。固定部材A(30A)の固定順序に限定はないが、まず棟木側を固定し、次いで左右の流れ側を固定し、最後に軒部側を固定すると、各辺の端部を隙間が無いように固定することができる。これにより、防水ケース(20)の帯状部(21)が、屋根ハッチA(10A)の外周板(5)と防水ケース押え部(33)との間に遊嵌され、防水ケース(20)が、屋根の野地板(55)や防水紙の上に離脱不能に固定される。また、防水ケース押え部(33)が、防水ケース(20)の帯状部(21)を被覆するため、防水ケース(20)と屋根ハッチA(10A)外周板(5)との間に水が浸入するのを回避することができる。
【0051】
(3-4)防水材の充填および防水ケースカバー取付け部の装着
次いで、屋根の開口部を形成するために取り外した瓦(50)の一部を、適宜、屋根ハッチA(10A)の外周に戻す。瓦(50)の下部に、瓦葺施工の際に使用する葺き土などの瓦安定材(51)を充填してもよい。瓦(50)は不定形であるため、瓦(50)の位置が固定されても、屋根ハッチA(10A)の外周板(5)と瓦(50)との間には空間が形成され、瓦安定材(51)によって不定形の瓦を安定させることができる。このような瓦安定材(51)としては、葺き土の他、木材、発泡スチロールなどがある。ついで、フランジ(23)の上部に防水材(40)を充填する。これにより、瓦(50)を安定させると共に屋根ハッチA(10A)の外周を防水することができる。防水材(40)としては、柔軟性、緩衝性の高い不燃材料、例えばガラスウールなどを好適に使用することができる。次いで、
図5(C)に示すように、防水材(40)の上部に防水ケースカバー部(37)を被覆し、ボルト・ナットなどで防水ケースカバー部(37)を防水ケースカバー取付け部(35)に固定する。
【0052】
上記方法で屋根ハッチA(10A)に雨仕舞を行った棟木側の縦断面を
図6に示す。屋根ハッチA(10A)に遊嵌された防水ケース(20)の帯状部(21)の上方に間隙部(31)が配置され、間隙部(31)と防水ケース押え部(33)と防水ケースカバー取付け部(35)とがボルト(39)で固定されている。古い防水紙(53)の一端は、屋根ハッチ(10A)の外周板(5)に貼付され、防水ケース(20)の帯状部(21)の上端近傍に至っている。一方、新しい防水紙(53)が帯状部(21)およびフランジ(23)の上面を経て野地板(55)の上に敷設されている。なお、防水ケース押え部(33)の下端にはキャップ(33a)が装着され、下端からの水の侵入を防止している。また、防水ケース(20)と防水ケースカバー部(37)との間に防水材(40)が充填されている。更に、間隙部(31)の上部、すなわち外周板(5)と防水ケース押え部(33)との間に、防水用ゴムパッキンや漆喰などの防水材(40)が充填されている。
【0053】
また、流れ側の縦断面図を
図7に示す。
図6とのおもな相違は、瓦(50)の縦断面形状、および瓦(50)の縦断面形状に対応して瓦安定材(51)の充填位置が異なる点、屋根ハッチA(10A)の外周板(5)と野地板(55)とのなす角度、これに対応する防水ケースカバー取付け部(35)の縦断面視略L字形の角度である。しかしながら、これらは例示であり、瓦安定材(51)の充填位置、防水ケースカバー取付け部(35)の縦断面視略L字形の角度、その他は、屋根ハッチA(10A)を配設する屋根面の状態に合わせて適宜選択することができる。
【0054】
なお、上記は、防水ケース(20)を、予め方形に連結した防水ケース(20)を使用する場合で説明したが、屋根ハッチA(10A)の固定後に、例えばコの字形の一部を外周板(5)に装着し、次いで、他の1辺をボルトなどで固定して装着してもよい。また、固定部材Aを使用せずに、間隙部(31)、防水ケース押え部(33)、カバー取付け部(35)をそれぞれ別個に用意して使用してもよい。
【0055】
(4)固定部材Bを使用した雨仕舞
固定部材B(30B)を使用する場合も、固定部材Aと同様にして雨仕舞することができる。固定部材B(30B)を構成する間隙・カバー取付け部(36)は、縦断面視略逆V字形であるが、屋根ハッチA(10A)に装着される外周板(5)毎に、間隙部(31)とカバー取付け部(35)とのなす角度(θ6)は異なっていてもよい。
【0056】
上記(3-1)、(3-2)と同様に操作する。ついで、防水ケース(20)の帯状部(21)の上部に間隙・カバー取付け部(36)の間隙部(31’)の下端が固定されるように、固定部材B(30B)に形成したボルト孔(39’)からボルト(39)を挿入し、屋根ハッチA(10A)の外周板(5)の内壁に溶接固定したナットでボルト(39)を螺着する。これにより、固定部材B(30B)が屋根ハッチA(10A)の外周板(5)に固定される。防水ケース(20)の帯状部(21)が、屋根ハッチA(10A)の外周板(5)と固定部材B(30B)の防水ケース押え部(33)との間に遊嵌される。
【0057】
次いで、上記(3-4)と同様に瓦(50)を所定位置に戻し、フランジ(23)の上部に防水材(40)を充填し、次いで、間隙・カバー取付け部(36)に防水ケースカバー部(37)を被覆し、ナット(39’)にボルト(39)で防水ケースカバー部(37)を間隙・カバー取付け部(36)に固定する。
【0058】
(5)屋根ハッチB
屋根ハッチA(10A)に代えて、予め、固定部材(30)を構成する間隙部(31)、および/または防水ケースカバー取付け部(35)が屋根ハッチ(10)に一体に形成された屋根ハッチB(10B)を形成し、これを使用してもよい。屋根ハッチB(10B)を屋根面に配設し、雨仕舞構造を構成する他の部を使用して雨仕舞することもできる。この態様を以下に説明する。
【0059】
図8に、屋根ハッチB(10B)の一例として、
図4(A)に示す間隙・カバー取付け部(36)が屋根ハッチ(10)の外周板(5)の外側に溶接などで固定された屋根ハッチB(10B)がある。
図8(A)に、屋根ハッチB(10B)の一部縦断面図を示す。間隙・カバー取付け部(36)の間隙部(31’)には、防水ケース押え部(33)を固定するための螺条が形成されたボルト孔(39’)が形成され、防水ケースカバー取付け部(35’)には、防水ケースカバー部(37)を固定するためのボルト孔(39’)が形成されている。本発明では、間隙部(31)によって防水ケース(20)の帯状部(21)を遊嵌するため、間隙部(31’)は所定の厚さ(t3)を有し、この厚み(t3)は、帯状部(21)の厚み、外周板(5)と帯状部(21)との間に任意に配設できる防水紙(53)の厚みや重ね枚数などを勘案して決定することができる。また、間隙部(31’)と防水ケースカバー取付け部(35’)との角度(θ7)は、配設する屋根の形状や、軒側か流れ側か等に応じて適宜選択し、屋根ハッチB(10B)の辺ごとに異なっていてもよい。
【0060】
図8(B)に、屋根ハッチB(10B)に防水ケース押え部(33)および防水ケースカバー部(37)が固定された態様の縦断面図を示す。
図4(B)に示す、屋根ハッチA(10A)に間隙・カバー取付け部(36)を使用して雨仕舞した態様と相違して、屋根ハッチB(10B)の外周板(5)には、外周板(5)に固定部材(30)を固定するためのボルト孔(39’)がない点で相違する。更に、
図8(C)に、間隙・カバー取付け部(36)が固定された屋根ハッチB(10B)の一部透視断面図と、間隙・カバー取付け部(36)に固定する防水ケース押え部(33)とを示す。
【0061】
なお、屋根ハッチA(10A)や屋根ハッチB(10B)は、木製、FRP等の合成樹脂製、金属製で構成することができ、これらの複合部材で構成してもよい。一方、金属製であれば耐火性に優れる。
【0062】
(6)屋根ハッチBの雨仕舞
屋根ハッチB(10B)に防水ケース(20)を遊嵌する方法を
図9を用いて説明する。なお、
図9(A)は、屋根ハッチB(10B)の外周に配設された方形の防水ケース(20)を示す。前記した(3-1)、(3-2)と同様にして、開口部から屋根ハッチ(10B)を着床させ、および固定する。
【0063】
次いで、
図9(B)に示すように、間隙・カバー取付け部(36)の間隙部(31’)に形成したボルト孔(39’)にボルト(39)を挿入して防水ケース押え部(33)を固定する。これにより、防水ケース(20)の帯状部(21)が外周板(5)と防水ケース押え部(33)との間に遊嵌される。
【0064】
次いで、(3-4)と同様に、屋根瓦(50)を屋根ハッチA(10A)の雨仕舞と同様に処理し、
図9(C)に示すように、防水材(40)を充填し、防水ケースカバー部(37)を間隙・カバー取付け部(36)に固定する。
【0065】
図10に、雨仕舞を施した屋根ハッチB(10B)の棟木(57)側の縦断面図(
図10(A)と部分正面図(
図10(B))を示し、
図11に流れ側の縦断面図(
図11(A))と部分側面図(
図11(B))を示す。屋根ハッチB(10B)に装着された防水ケース(20)の帯状部(21)の上方に間隙部(31’)が配置されている。間隙部(31’)に防水ケース押え部(33)をボルト(39)で固定し、外周板(5)と防水ケース押え部(33)との間に防水ケースの帯状部(21)が遊嵌されている。また、防水ケースカバー取付け部(35’)に防水ケースカバー部(37)がボルト(39)で固定され、その下部のフランジ(23)の上部に防水材(40)が充填されている。なお、古い防水紙(53)の一端が屋根ハッチ(10A)の外周板(5)に貼付され、防水ケース(20)の帯状部(21)の上端近傍に至り、新しい防水紙(53)が帯状部(21)およびフランジ(23)の上面を経て野地板(55)の上に敷設され、濾水を防止している。なお、防水ケース押え部(33)の下端にキャップ(33a)が装着されている。
【0066】
屋根ハッチB(10B)は、屋根ハッチA(10A)と相違して、外周板(5)に間隙・カバー取付け部(36)を固定するためのボルト孔(39’)が存在しない。このため、外周板(5)のボルト孔(39’)から雨水が侵入することが無く、取合い部以外の濾水も効率的に回避することができる。
【0067】
なお、
図10および
図11では、屋根面に瓦棒(56)が配設される態様を示した。
図10(A)は、防水ケースカバー部(37)の下部に軒からの瓦棒(56)が延設される態様を示し、
図10(B)はその正面図であり、瓦棒(56)を避けるように調製された防水補助部(38)が配設される態様を示す。また、
図11(A)は流れ側の縦断面図であり、防水ケースカバー部(37)と並行して瓦棒(56)が固定される態様を示し、
図11(B)はその部分側面図であり、防水ケースカバー部(37)が屋根の傾斜に対応して配設される態様を示す。
【0068】
前記したように、防水ケースカバー部(37)は、固定部(37a)とカバー部(37b)とを有し、防水ケースカバー取付け部(35)に固定されるとカバー部(37b)の下端が屋根面に接触する。しかしながら、屋根面の構成として、例えば、瓦棒(56)やその他の突起物の有無により屋根面に凹凸が形成される場合がある。凹凸の程度によっては、防水ケースカバー部(37)のみではこのような凹凸の隙間から雨水が侵入し、防水が十分でない場合がある。このような屋根面には、防水ケースカバー部(37)の下部に、突起物の形状に合わせて形成した防水補助部(38)をボルト(39)その他によって取付けてもよい。なお、防水補助部(38)は、屋根ハッチB(10B)に限定されず、屋根ハッチA(10A)に固定部材(30)を装着した場合にも配設することができる。
【0069】
防水補助部(38)は、防水ケースカバー部(37)に固定され、屋根面の凹凸に対応して成形される板状物である。
図12(A)では、防水ケースカバー部(37)の下端に2枚の防水補助部(38)が瓦棒(56)を避けるようにボルト(39)で固定される態様を示す。なお、
図12(B)は、
図12(A)のA-A線断面図である。間隙・カバー取付け部(36)の防水ケースカバー取付け部(35’)に防水ケースカバー部(37)がボルト(39)で固定され、更に防水ケースカバー部(37)に防水補助部(38)がボルト(39)で固定される態様を示す。なお、説明のため、防水補助部(38)とそれを取り付けるボルト(39)の位置を破線で示した。
【0070】
本発明の雨仕舞構造は、いずれの場合も、屋根ハッチA(10A)または屋根ハッチB(10B)に防水ケース(20)が遊嵌され、かつ防水ケース(20)の上部に防水ケースカバー部(37)が被覆される。このため、地震などの際に屋根と屋根ハッチ(10)とに別個に振動が伝播される場合にも、雨仕舞の破損を防止し、取合い部の濾水を効果的に防止することができる。更に、本発明の屋根の上に構築された外部構造物の雨仕舞構造は、例えば、屋根ハッチ(10)に対応して、防水カバー(20)、固定部材(30)が一組で構成され、雨仕舞が規格化されているため、作業者の習熟度等に左右されることなく雨仕舞することができる。
【0071】
その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
5:外周板、
10:外部構造物、
10A、10B:屋根ハッチ、
20:防水ケース、
21、21a、21b:帯状部、
23,23a、23b:フランジ、
30:固定部材、
30A:固定部材A、
30B:固定部材B、
31:間隙部、
33:防水ケース押え部、
33a:キャップ、
35:防水ケースカバー取付け部、
36:間隙・カバー取付け部、
37:防水ケースカバー部、
38:防水補助部、
39:ボルト、
39’:ボルト孔、
40:防水材、
50:瓦、
51:瓦安定材、
53:防水紙、
55:野地板
56:瓦棒、
57:棟木
59:受梁