(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】幼児用椅子
(51)【国際特許分類】
A47D 1/04 20060101AFI20220531BHJP
A47D 3/00 20060101ALN20220531BHJP
A47C 3/04 20060101ALN20220531BHJP
【FI】
A47D1/04
A47D3/00
A47C3/04
(21)【出願番号】P 2018077716
(22)【出願日】2018-04-13
【審査請求日】2021-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】599077030
【氏名又は名称】丸紅木材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100166958
【氏名又は名称】堀 喜代造
(72)【発明者】
【氏名】清水 文孝
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-152219(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02625986(EP,A1)
【文献】特開2013-141547(JP,A)
【文献】中国実用新案第205963562(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47D 1/04
A47D 3/00
A47C 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して平行に配置される二枚の側板と、前記側板と直交するとともに前記側板の後端部に当接して設けられる背板と、前記二枚の側板及び前記背板に対して直交して設けられる座板と、を備え、正立姿勢と、該正立姿勢から上下方向を反転させた倒立姿勢との両方で使用可能とされる幼児用椅子であって、
前記座板は前記側板の上下方向中央部分から上下方向の一側に偏った位置に設けられ、
前記二枚の側板における上下方向の一端部には、複数個の凸形状が形成され、
前記二枚の側板における上下方向の他端部には、前記凸形状と同じ前後方向位置に、前記凸形状と同形状の凹形状が形成され
、
前記二枚の側板の前端部と、前記背板の左右方向両端部と、のうち一方には上下方向に沿って突条部が形成され、他方には前記突条部より大きな溝条部が形成される、幼児用椅子。
【請求項2】
前記背板は、前記側板と上下方向長さが等しくなるように形成され、
前記背板における上下方向の一端部には、少なくとも一個の凸部が形成され、
前記背板における上下方向の他端部には、前記凸部と同じ左右方向位置に、前記凸部と同形状の凹部が形成される、請求項1に記載の幼児用椅子。
【請求項3】
前記座板の前端部は、左右方向中央部の前後方向長さが短くなるように凹状に形成される、
請求項1又は請求項2に記載の幼児用椅子。
【請求項4】
前記側板の上下方向の両端部には、前記側板を貫通する取手孔が開口され、
前記取手孔は前記側板の前後方向の中央部よりも後方に形成される、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の幼児用椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幼児が学習や食事等の際に用いる幼児用椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、幼児が学習や食事等の際に座るための幼児用椅子が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1には、背板、両側板、及び、これらと直交する座板を備えた幼児用椅子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の特許文献1には、幼児用椅子を二つ隣接させて、机等として使用する例が記載されている。しかし、前記特許文献に記載の幼児用椅子の構成では、少しの接触等により力が加わると幼児用椅子が移動するため、隣の幼児用椅子とのずれが生じやすく、使い勝手が悪くなっていた。
【0005】
また、幼児用椅子を使用しない場合に、複数の幼児用椅子を安定して積み重ねることがある。特に、幼稚園や保育園等、多数の幼児用椅子が使用される場所では、保育スペースを有効に活用するために幼児用椅子を積み重ねる必要性が高い。しかし、前記特許文献に記載の幼児用椅子を積み重ねた場合は、少しの力でバランスが崩れる可能性があるため、安定して積み重ねることができなかった。
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、複数の幼児用椅子を隣接させて用いる際の使い勝手を向上させるとともに、不使用時に積み重ねた際の安定性を高めることの可能な幼児用椅子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下では、上記課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
本発明に係る幼児用椅子は、対向して平行に配置される二枚の側板と、前記側板と直交するとともに前記側板の後端部に当接して設けられる背板と、前記二枚の側板及び前記背板に対して直交して設けられる座板と、を備え、正立姿勢と、該正立姿勢から上下方向を反転させた倒立姿勢との両方で使用可能とされる幼児用椅子であって、前記座板は前記側板の上下方向中央部分から上下方向の一側に偏った位置に設けられ、前記二枚の側板における上下方向の一端部には、複数個の凸形状が形成され、前記二枚の側板における上下方向の他端部には、前記凸形状と同じ前後方向位置に、前記凸形状と同形状の凹形状が形成され、前記二枚の側板の前端部と、前記背板の左右方向両端部と、のうち一方には上下方向に沿って突条部が形成され、他方には前記突条部より大きな溝条部が形成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る幼児用椅子によれば、複数個を隣接させて用いる際の使い勝手を向上させるとともに、不使用時に積み重ねた際の安定性を高めることが可能となる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る幼児用椅子の正立姿勢を示す斜視図。
【
図5】(a)及び(b)は同じく幼児用椅子の倒立姿勢及び机姿勢を示す斜視図。
【
図6】机姿勢の幼児用椅子を隣接させて使用する状態を示す斜視図。
【
図7】(a)及び(b)は正立姿勢の幼児用椅子を積み重ねた状態を示す前方斜視図及び後方斜視図。
【
図8】(a)は机姿勢の幼児用椅子を積み重ねた状態を示す斜視図、(b)は机姿勢を上下に反転させた幼児用椅子を積み重ねた状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では
図1から
図8を用いて、本発明の一実施形態に係る幼児用椅子(以下、単に「椅子」と記載する)10について説明する。各図に示す矢印は、椅子10を配置する空間における絶対的な方向を示している。本実施形態における椅子10は、ヒノキ等の木材を組み合わせて構成されている。なお、椅子10の素材は木材に限定されず、樹脂等の他の素材を用いて構成することも可能である。
【0012】
椅子10は
図1から
図4に示す如く、二枚の側板(右側板1及び左側板2)、背板3、及び、座板4を組み合わせて構成される。右側板1と左側板2とは左右方向に対して直交するように、対向して平行に配置される。背板3は、前後方向に直交するように、右側板1及び左側板2と直交するとともに、右側板1及び左側板2の後端部に当接して設けられる。
図2から
図4に示す如く、両側板1・2と背板3とはそれぞれ四個のダボD1によって接合される。なお、ダボD1の個数は限定されるものではない。
【0013】
座板4は上下方向と直交するように、右側板1、左側板2、及び、背板3と直交して設けられる。座板4は両側板1・2及び背板3にそれぞれ形成された溝部1g・2g・3gに挿入される。また、
図2から
図4に示す如く、座板4と両側板1・2とはそれぞれ二個のダボD2によって接合されている。なお、ダボD2の個数は限定されるものではない。
【0014】
椅子10の使用者である幼児は、座板4に座ることにより椅子10を使用する。座板4には、上下方向における一端側の面に一端側凹部4aが形成され、他端側の面に他端側凹部4bが形成されている。この一端側凹部4a及び他端側凹部4bにより、幼児が座板4に座った際の座り心地を向上させている。また、座板4の前端部には、左右方向中央部の前後方向長さが短くなるように凹状部4cが形成されている。
【0015】
両側板1・2には、上下方向の一端部1a・2aと他端部1b・2bとが形成されている。
図1においては、一端部1a・2aを上方に向け、他端部1b・2bを下方に向けて(他端部1b・2bが床面に接地されて)配置されている。本実施形態においては、
図1に示す如く一端部1a・2aを上方に向けて配置した椅子10の姿勢を「正立姿勢」と記載する。
【0016】
図5(a)に示す如く、椅子10は正立姿勢から上下方向を反転させた姿勢で使用することもできる。即ち、他端部1b・2bを上方に向け、一端部1a・2aを下方に向けて(一端部1a・2aが床面に接地されて)配置するのである。本実施形態においては、
図5(a)に示す如く他端部1b・2bを上方に向けて配置した椅子10の姿勢を「倒立姿勢」と記載する。
【0017】
本実施形態に係る椅子10において、座板4は両側板1・2の上下方向中央部分から上下方向の一側(
図1における下側)に偏った位置に設けられている(
図2を参照)。換言すれば、座板4は他端部1b・2b側の端部からの距離である正立座板高さh1よりも、一端部1a・2a側の端部からの距離である倒立座板高さh2が大きくなるように、他端部1b・2bに近い側に設けられている。このため、椅子10を正立姿勢で使用する場合は、座板4の上下位置は椅子10の上下方向中央部分よりも低くなる。逆に、椅子10を倒立姿勢で使用する場合は、座板4の上下位置は椅子10の上下方向中央部分よりも高くなる。このように、椅子10は正立姿勢の使用時と倒立姿勢の使用時とで座板4の高さを変更することを可能としている。これにより、使用者である幼児の身長によって座板4の高さを変更することができる。
【0018】
また、
図5(b)に示す如く、椅子10は背板3の背面を上側に向けた姿勢で使用することもできる。即ち、正立姿勢又は倒立姿勢の椅子10を、背板3の反対側に90度回転させ、背板3を上側に向けて配置するのである。本実施形態においては、
図5(b)における椅子10の姿勢を「机姿勢」と記載する。椅子10を机姿勢とすることにより、使用者である幼児は背板3の上で学習や絵画等の作業を行うことが可能となる。
【0019】
なお、机姿勢の椅子10を椅子として(背板3の上に座って)使用しても差し支えない。また、椅子10の両側板1・2の何れか一方を床面に接地した状態で、他方の上面を用いて机又は椅子として使用することも可能である。また、二個の椅子10・10のうち、一方を正立姿勢又は倒立姿勢とし、他方を机姿勢として、椅子10・10を椅子と机のセットとして使用することも可能である。
【0020】
図1及び
図4に示す如く、両側板1・2の一端部1a・2aには、三個の凸形状11・21が形成されている。詳細には、三個の凸形状11・21と凹形状12・22とが交互に形成されている。また、両側板1・2の他端部1b・2bには、凸形状11・21と同じ前後方向位置に、凸形状11・21と同形状の凹形状13・23が三個形成されている。詳細には、三個の凹形状13・23と凸形状14・24とが交互に形成されている。なお、凸形状11・21、凹形状12・22、凹形状13・23、及び凸形状14・24の個数は三個に限定されるものではなく、複数個であれば二個又は四個以上とすることも可能である。
【0021】
椅子10においては上記の如く構成することにより、複数の椅子10を机姿勢で隣接させる際に、
図6に示す如く一端部1a・2aに形成された凸形状11・21を他端部1b・2bに形成された凹形状13・23に挿入し、互いにかみ合わせることができる。このため、一方の椅子10に対して上下方向に力が加わっても、他方の椅子10とのずれが生じにくい。即ち、複数の椅子10を机姿勢で隣接して使用する際の使い勝手を向上させることが可能となる。
【0022】
また、本実施形態に係る椅子10は、
図7(a)及び(b)に示す如く、一端部1a・2aに形成された凸形状11・21を他端部1b・2bに形成された凹形状13・23に挿入し、互いにかみ合わせた状態で積み重ねることができる。このため、上下方向に並ぶ椅子10・10同士で前後方向にずれを生じにくくすることができ、複数の椅子10を安定して積み重ねることができる。これにより、幼稚園や保育園等で多数の椅子10を使用する場合でも、複数の椅子10を積み重ねることにより、保育スペースを有効に活用することが可能となる。即ち、本実施形態に係る椅子10によれば、不使用時の収納性を高めることができるのである。
【0023】
なお、一端部1a・2aと他端部1b・2bとにおいて、凸形状11・21と凹形状13・23との個数は必ずしも一致する必要はない。例えば、凸形状11・21を二個形成し、二個の凸形状11・21を挿入可能な一個の凹形状13・23を形成することも可能である。即ち、凸形状11・21が凹形状13・23に挿入された際に、椅子10・10の前後方向への変位が規制される構成であれば、その形状及び個数は限定されるものではない。
【0024】
また、本実施形態に係る椅子10において、背板3は両側板1・2と上下方向長さが等しくなるよう(上端から下端までの長さが等しくなるように)に形成されている。そして、
図2に示す如く、背板3の上端部には凸部31が形成され、背板3の下端部には凸部31と同じ左右方向位置に、凸部31と同形状の凹部32が形成されている。
【0025】
椅子10においては上記の如く構成することにより、複数の椅子10を机姿勢で隣接させる際に、
図6に示す如く凸部31を凹部32に挿入することができる。このため、一方の椅子10に対して水平方向に力が加わっても、他方の椅子10とのずれが生じにくい。即ち、複数の椅子10を机姿勢で隣接して使用する際の使い勝手をより向上させることが可能となる。
【0026】
また、本実施形態に係る椅子10は、
図7(a)及び(b)に示す如く、凸部31を凹部32に挿入した状態で積み重ねることができる。このため、上下方向に並ぶ椅子10・10同士で左右方向にずれを生じにくくすることができ、複数の椅子10を安定して積み重ねることができる。なお、本実施形態において凸部31及び凹部32の数はそれぞれ一個としているが、複数個の凸部31及び凹部32を形成することも可能である。
【0027】
また、本実施形態に係る椅子10において、両側板1・2の前端部には上下方向に沿って突条部15・25が形成され(
図5(a)を参照)、背板3の背面における左右方向両端部には突条部15・25より大きな溝条部33・33が形成されている(
図5(a)を参照)。溝条部33・33は、椅子10を机姿勢で用いる際に、筆記具等が落下することを防止するストッパーとしての機能を備えている。
【0028】
椅子10においては上記の如く構成することにより、
図8(a)及び(b)に示す如く、机姿勢、又は、机姿勢を上下に反転させた姿勢で積み重ねる際に、突条部15・25を溝条部33・33に挿入した状態にすることができる。このため、上下方向に並ぶ椅子10・10同士でずれを生じにくくすることができ、複数の椅子10を安定して積み重ねることができる。なお、本実施形態においては両側板1・2に突条部15・25、背板3に溝条部33・33を形成しているが、突条部と溝条部を逆に形成しても差し支えない。
【0029】
また、本実施形態に係る椅子10において、座板4の前端部には、左右方向中央部の前後方向長さが短くなるように凹状部4cが形成されている。これにより、幼児が椅子10を使用する際に、座板4においてより奥側に座ることが可能となるため、椅子10の安定感を向上させることができる。なお、本実施形態において座板4は、凹状部4cの中央部が両側板1・2の他端部1b・2bにおける最も前側の凸形状14・24と前後位置が同じ位置となるように形成されている。これにより、幼児が椅子10を使用した際に、前側に倒れる回転の発生を抑制できる。
【0030】
また、本実施形態に係る椅子10において、両側板1・2における一端部1a・2a側の端部には、側板を貫通する取手孔17・27が開口されている。また、両側板1・2における他端部1b・2b側の端部には、側板を貫通する取手孔18・28が開口されている。これらの取手孔17・18・27・28は、両側板1・2の前後方向におけるやや後方よりに形成される。これにより、取手孔17・18・27・28を持って椅子10を持ち運ぶ際に、椅子10の重心の上側を把持することができるため、容易に持ち運びすることが可能となる。
【符号の説明】
【0031】
1 右側板 1a 一端部
1b 他端部 1g 溝部
2 左側板 2a 一端部
2b 他端部 2g 溝部
3 背板 3g 溝部
4 座板 4a 座部
4b 座部 4c 凹状部
10 椅子(幼児用椅子) 11 凸形状
12 凹形状 13 凹形状
14 凸形状 15 突条部
17 取手孔 18 取手孔
21 凸形状 22 凹形状
23 凹形状 24 凸形状
25 突条部 27 取手孔
28 取手孔 31 凸部
32 凹部 33 溝条部
D1 ダボ D2 ダボ
h1 正立座板高さ h2 倒立座板高さ