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特許7081817光学部材保護フィルム用粘着剤組成物及び光学部材保護フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】光学部材保護フィルム用粘着剤組成物及び光学部材保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/08 20060101AFI20220531BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20220531BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220531BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220531BHJP
【FI】
C09J133/08
C09J133/14
C09J11/06
C09J7/38
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018215928
(22)【出願日】2018-11-16
(65)【公開番号】P2020083939
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】藤川 はる奈
(72)【発明者】
【氏名】鴨井 彬
(72)【発明者】
【氏名】狩野 肇
(72)【発明者】
【氏名】竹口 港
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-128636(JP,A)
【文献】特開2014-148598(JP,A)
【文献】特開2008-248223(JP,A)
【文献】特開2017-160383(JP,A)
【文献】特開2018-24782(JP,A)
【文献】特開2008-174595(JP,A)
【文献】国際公開第2008/010367(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
n-ブチルアクリレートに由来する構成単位及び水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含み、ガラス転移温度が-40℃以下であり、かつ、重量平均分子量が20万以上200万以下の範囲である(メタ)アクリル系共重合体(A)と、
n-ブチルメタクリレートに由来する構成単位及び水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含み、ガラス転移温度が0℃以上45℃以下の範囲であり、かつ、重量平均分子量が1万以上20万以下の範囲である(メタ)アクリル系共重合体(B)と、
イソシアネート系架橋剤と、を含み、
前記(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、1質量部以上70質量部以下の範囲である光学部材保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系共重合体(B)における前記n-ブチルメタクリレートに由来する構成単位の含有率が、前記(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して、50質量%以上である請求項1に記載の光学部材保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)における前記n-ブチルアクリレートに由来する構成単位の含有率が、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して、50質量%以上である請求項1又は請求項2に記載の光学部材保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)における前記水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して、0.7質量%以上15質量%以下の範囲である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の光学部材保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル系共重合体(B)における前記水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、前記(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して、0.7質量%以上15質量%以下の範囲である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の光学部材保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、3質量部以上60質量部以下の範囲である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の光学部材保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量が、1万以上15万以下の範囲である請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の光学部材保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項8】
前記イソシアネート系架橋剤が、ヘキサメチレンジイソシアネートである請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の光学部材保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項9】
基材と、前記基材上に設けられ、かつ、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の光学部材保護フィルム用粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、を備える光学部材保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材保護フィルム用粘着剤組成物及び光学部材保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種物品の表面を保護するため、粘着剤層を備えた保護フィルムが広く用いられている。特に、偏光板に代表される各種光学部材では、保護フィルムが多用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、(A)少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び官能基含有モノマーが共重合してなるガラス転移温度が-40℃以下の(メタ)アクリル系ポリマー、(B)(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするガラス転移温度80℃以上の(メタ)アクリル系ポリマー、及び(C)架橋剤を含有し、上記(A)100重量部に対して、上記(B)を5~20重量部で配合する架橋性組成物を、ゲル分率80%以上となるように架橋反応せしめてなる保護シート用感圧接着剤が開示されている。
また、特許文献2には、ガラス転移温度が0℃未満のポリマー(A)100質量部と、重量平均分子量が1000以上50000未満であり、ガラス転移温度が30~300℃である(メタ)アクリル系重合体(B)0.05~3質量部と、ポリオキシアルキレン鎖を有する特定構造のオルガノポリシロキサン化合物(C)と、を含む粘着剤組成物が開示されている。
また、特許文献3には、ヒドロキシ基を有し、酸価0mgKOH/g以上16mgKOH/g未満である(メタ)アクリル系ポリマーと、酸価0.1mgKOH/g以上40mgKOH/g以下であるアルキレンオキシド鎖含有(メタ)アクリル系オリゴマーと、反応性基を有するポリエーテル変性シリコーンと、架橋剤と、イオン性化合物と、を含む粘着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-146151号公報
【文献】特開2013-216769号公報
【文献】特開2017-128636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光学部材に使用する保護フィルムに用いられる粘着剤組成物(以下、「光学部材保護フィルム用粘着剤組成物」ともいう。)には、保護フィルムを光学部材の表面に貼り付けた後、保護が必要な間は、光学部材からの剥がれ、ずれ等の不具合が起こり難く、かつ、保護が不要となった段階で、光学部材から効率良く剥離できる粘着剤層を形成できることが求められる。ここで、光学部材からの剥がれ、ずれ等の不具合が起こり難い粘着剤層であることは、保護フィルムを光学部材から低速(0.3m/分)で剥離した場合に測定される粘着力(所謂、低速剥離力)により評価できる。また、光学部材から効率良く剥離できる粘着剤層であることは、保護フィルムを光学部材から高速(30m/分)で剥離した場合に測定される粘着力(所謂、高速剥離力)により評価できる。
【0006】
ところで、保護フィルムを光学部材から剥離する際に、滑らかに剥離せずにバリバリと音を立てて剥離するジッピングと呼ばれる現象(以下、「ジッピング現象」ともいう。)が起こる場合がある。ジッピング現象が起こると、保護フィルムを剥離した後の光学部材の表面において、スジ状の欠点が確認されることがある。そのため、光学部材保護フィルム用粘着剤組成物には、ジッピング現象を抑制できる粘着剤層を形成できることも求められる。
【0007】
さらに、光学部材保護フィルム用粘着剤組成物には、保護フィルムを貼着した状態で、光学部材の外観を確認できるように、透明性の高い粘着剤層を形成できることが求められる。
【0008】
しかし、保護フィルムが備える粘着剤層の低速剥離力及び高速剥離力を制御しようとすると、両者は同様の挙動を示すため、低速剥離力と高速剥離力とのバランスを調整することは難しい。
また、近年、作業性をより向上させる観点から、光学部材からの保護フィルムの剥離速度がより高速化する傾向がある。加えて、光学部材の薄型化に伴い、保護フィルムの剥離時のジッピング現象に起因する光学部材の表面欠点がより発生しやすい傾向がある。ジッピング現象は、粘着剤層の粘着力の強弱に起因して起こるとされている。一般に、粘着剤層の粘着力は、剥離速度が速くなるほど高くなる傾向を示すことから、ジッピング現象は、保護フィルムを光学部材から高速で剥離する場合に起こりやすい。
それゆえ、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好であること、高速で剥離した場合にジッピング現象が起こり難いこと、及び透明性に優れることを兼ね備えた粘着剤層を形成できる光学部材保護フィルム用粘着剤組成物を実現することは困難であった。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好であり、高速で剥離した場合に起こり得るジッピング現象が十分に抑制され、かつ、透明性に優れる粘着剤層を形成できる光学部材保護フィルム用粘着剤組成物、及び光学部材保護フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> n-ブチルアクリレートに由来する構成単位及び水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含み、ガラス転移温度が-40℃以下であり、かつ、重量平均分子量が20万以上200万以下の範囲である(メタ)アクリル系共重合体(A)と、
n-ブチルメタクリレートに由来する構成単位及び水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含み、ガラス転移温度が0℃以上45℃以下の範囲であり、かつ、重量平均分子量が1万以上20万以下の範囲である(メタ)アクリル系共重合体(B)と、
イソシアネート系架橋剤と、を含み、
上記(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量が、上記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、1質量部以上70質量部以下の範囲である光学部材保護フィルム用粘着剤組成物。
<2> 上記(メタ)アクリル系共重合体(B)における上記n-ブチルメタクリレートに由来する構成単位の含有率が、上記(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して、50質量%以上である<1>に記載の光学部材保護フィルム用粘着剤組成物。
<3> 上記(メタ)アクリル系共重合体(A)における上記n-ブチルアクリレートに由来する構成単位の含有率が、上記(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して、50質量%以上である<1>又は<2>に記載の光学部材保護フィルム用粘着剤組成物。
<4> 上記(メタ)アクリル系共重合体(A)における上記水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、上記(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して、0.7質量%以上15質量%以下の範囲である<1>~<3>のいずれか1つに記載の光学部材保護フィルム用粘着剤組成物。
<5> 上記(メタ)アクリル系共重合体(B)における上記水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、上記(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して、0.7質量%以上15質量%以下の範囲である<1>~<4>のいずれか1つに記載の光学部材保護フィルム用粘着剤組成物。
<6> 上記(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量が、上記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、3質量部以上60質量部以下の範囲である<1>~<5>のいずれか1つに記載の光学部材保護フィルム用粘着剤組成物。
<7> 上記(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量が、1万以上15万以下の範囲である<1>~<6>のいずれか1つに記載の光学部材保護フィルム用粘着剤組成物。
<8> 上記イソシアネート系架橋剤が、ヘキサメチレンジイソシアネートである<1>~<7>のいずれか1つに記載の光学部材保護フィルム用粘着剤組成物。
<9> 基材と、上記基材上に設けられ、かつ、<1>~<8>のいずれか1つに記載の光学部材保護フィルム用粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、を備える光学部材保護フィルム。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好であり、高速で剥離した場合に起こり得るジッピング現象が十分に抑制され、かつ、透明性に優れる粘着剤層を形成できる光学部材保護フィルム用粘着剤組成物、及び光学部材保護フィルムが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0013】
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において、各成分の量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
【0014】
本明細書において、「(メタ)アクリル系共重合体」とは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が全構成単位(即ち、(メタ)アクリル系重合体の全構成単位)の50質量%以上である共重合体を意味する。
【0015】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方を包含する用語である。
【0016】
本明細書において、「n-」はノルマルを意味し、「i-」はイソを意味し、「s-」はセカンダリーを意味し、「t-」はターシャリーを意味する。
【0017】
本明細書において、「粘着剤組成物」とは、架橋反応が終了する前の液状又はペースト状の物質を意味する。
本明細書において、「粘着剤層」とは、粘着剤組成物における架橋反応が終了した後の物質からなる膜を意味する。
本明細書において、「被着体」とは、光学部材を指す。
【0018】
本明細書において、「低速剥離力」とは、被着体に貼着した保護フィルムを、被着体から保護フィルムの長手方向に低速(即ち、0.3m/分)で180°剥離したときに測定される粘着力を意味する。なお、詳細な測定方法は、後述の実施例に示すとおりである。
本明細書において、「適切な低速剥離力」とは、被着体からの剥がれ、ずれ等の不具合が起こり難い程度の強さの粘着力を意味する。
【0019】
本明細書において、「高速剥離力」とは、被着体に貼着した保護フィルムを、被着体から保護フィルムの長手方向に高速(即ち、30m/分)で180°剥離したときに測定される粘着力を意味する。なお、詳細な測定方法は、後述の実施例に示すとおりである。
本明細書において、「適切な高速剥離力」とは、被着体から効率良く剥離できる程度の強さの粘着力を意味する。
【0020】
本明細書において、「低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好な粘着剤層」とは、被着体からの剥がれ、ずれ等の不具合が起こり難く、かつ、被着体から効率良く剥離できる程度の強さの粘着力を有する粘着剤層を意味する。
【0021】
本明細書では、「光学部材保護フィルム」を、単に「保護フィルム」ともいう。
【0022】
[光学部材保護フィルム用粘着剤組成物]
本発明の光学部材保護フィルム用粘着剤組成物(以下、単に「粘着剤組成物」ともいう。)は、n-ブチルアクリレートに由来する構成単位及び水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含み、ガラス転移温度が-40℃以下であり、かつ、重量平均分子量が20万以上200万以下の範囲である(メタ)アクリル系共重合体(A)〔以下、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)」ともいう。〕と、n-ブチルメタクリレートに由来する構成単位及び水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含み、ガラス転移温度が0℃以上45℃以下の範囲であり、かつ、重量平均分子量が1万以上20万以下の範囲である(メタ)アクリル系共重合体(B)〔以下、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)」ともいう。〕と、イソシアネート系架橋剤と、を含み、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、1質量部以上70質量部以下の範囲である。
本発明の粘着剤組成物によれば、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好であり、高速で剥離した場合に起こり得るジッピング現象が十分に抑制され、かつ、透明性に優れる粘着剤層を形成できる。
本発明の粘着剤組成物がこのような効果を奏し得る理由については明らかでないが、本発明者らは以下のように推測している。但し、以下の推測は、本発明の粘着剤組成物を限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
【0023】
本発明の粘着剤組成物に含まれる特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、ガラス転移温度が0℃以上であり、かつ、重量平均分子量が1万以上20万以下の範囲である。また、本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量は、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、1質量部以上70質量部以下の範囲である。このため、本発明の粘着剤組成物により形成される粘着剤層において、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、表面付近(所謂、被着体との界面付近)に適度に局在化すると考えられる。粘着剤層において、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)が被着体との界面付近に適度に局在化すると、粘着剤層の被着体に対する濡れが過度にならないため、粘着剤層が適切な高速剥離力を示すと推測される。また、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度が45℃以下であるため、粘着剤層の被着体に対する濡れが適度となると考えられる。そのため、本発明の粘着剤組成物により形成される粘着剤層では、粘着剤層の被着体に対する濡れが不足することに起因するジッピング現象が抑制されると推測される。
【0024】
本発明の粘着剤組成物に含まれる特定(メタ)アクリル系共重合体(A)は、ガラス転移温度が-40℃以下であり、かつ、重量平均分子量が20万以上200万以下の範囲である。そのため、本発明の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、適切な低速剥離力を示すと推測される。また、本発明の粘着剤組成物により形成される粘着剤層では、高速で剥離した場合に起こり得るジッピング現象が十分に抑制されると推測される。
【0025】
本発明の粘着剤組成物は、単量体組成の異なる特定(メタ)アクリル系共重合体(A)及び特定(メタ)アクリル系共重合体(B)を含む。
一般に、単量体組成の異なる2種以上の共重合体を含む粘着剤組成物により形成される粘着剤層では、透明性の低下(所謂、ヘイズの上昇)の問題が起こりやすい。
本発明の粘着剤組成物に含まれる、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)は、n-ブチルアクリレートに由来する構成単位を含み、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、n-ブチルメタクリレートに由来する構成単位を含む。特定(メタ)アクリル系共重合体(A)と特定(メタ)アクリル系共重合体(B)とは、いずれもn-ブチル基を有する単量体に由来する構成単位を含むため、相溶性が良好となる傾向を示す。そのため、本発明の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、透明性に優れると推測される。
【0026】
本発明の粘着剤組成物に含まれる、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)と特定(メタ)アクリル系共重合体(B)とは、いずれも水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含むため、イソシアネート系架橋剤と適切に架橋反応する。そのため、本発明の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好であると推測される。また、本発明の粘着剤組成物により形成される粘着剤層では、高速で剥離した場合に起こり得るジッピング現象が十分に抑制されると推測される。
【0027】
本発明の粘着剤組成物に対し、特許文献1(特開2005-146151号公報;以下、同じ。)に記載の保護シート用感圧接着剤は、2種の(メタ)アクリル系ポリマーを含んでいるが、成分(B)の(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)が80℃以上であるため、形成される粘着剤層は、被着体に対する濡れが不足し、例えば、剥離速度が30m/分の高速剥離では、ジッピング現象が十分に抑制されない。
特許文献2(特開2013-216769号公報;以下、同じ。)に記載の粘着剤組成物は、2種の共重合体を含んでいるが、(メタ)アクリル系重合体(B)のガラス転移温度(Tg)が59℃以上であるため、特許文献1に記載の保護シート用感圧接着剤と同様に、形成される粘着剤層は、被着体に対する濡れが不足し、例えば、剥離速度が30m/分の高速剥離では、ジッピング現象が十分に抑制されない。また、特許文献2に記載の粘着剤組成物に含まれる2種の共重合体は、単量体組成が大きく異なるため、粘着剤層の透明性が十分ではない。
特許文献3(特開2017-128636号公報)に記載の粘着剤組成物は、2種の(メタ)アクリル系共重合体を含んでいるが、オリゴマーに相当する(メタ)アクリル系共重合体にアルキレンオキシド鎖が含まれているため、形成される粘着剤層の被着体に対する濡れが促進されすぎて、高速剥離力が過度に高くなると考えられる。そのため、特許文献3に記載の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好ではない(例えば、後述の比較例16参照)。
【0028】
以下、本明細書では、「特定(メタ)アクリル系共重合体(A)及び特定(メタ)アクリル系共重合体(B)」を総称して、「特定(メタ)アクリル系共重合体」と称する。
【0029】
〔特定(メタ)アクリル系共重合体(A)〕
本発明の粘着剤組成物は、n-ブチルアクリレートに由来する構成単位及び水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含み、ガラス転移温度が-40℃以下であり、かつ、重量平均分子量が20万以上200万以下の範囲である(メタ)アクリル系共重合体(A)〔即ち、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)〕を含む。
【0030】
<n-ブチルアクリレートに由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)は、n-ブチルアクリレートに由来する構成単位を含む。
本明細書において、「n-ブチルアクリレートに由来する構成単位」とは、n-ブチルアクリレートが付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0031】
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)におけるn-ブチルアクリレートに由来する構成単位の含有率(割合)は、特に限定されない。
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)におけるn-ブチルアクリレートに由来する構成単位の含有率(割合)は、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して、40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)におけるn-ブチルアクリレートに由来する構成単位の含有率(割合)が、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して40質量%以上であると、(メタ)アクリル系共重合体(B)との相溶性がより良好となるため、ヘイズがより抑制された粘着剤層を形成できる傾向がある。
また、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)におけるn-ブチルアクリレートに由来する構成単位の含有率(割合)は、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して、70質量%以下であることが好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)におけるn-ブチルアクリレートに由来する構成単位の含有率(割合)が、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して70質量%以下であると、低速剥離力と高速剥離力とのバランスがより良好な粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0032】
<水酸基を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む。
本明細書において、「水酸基を有する単量体に由来する構成単位」とは、水酸基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0033】
水酸基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
水酸基を有する単量体の具体例としては、2-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-3-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-3-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、ジカプロラクトン2-アクリロイルオキシ-エチルエーテルなどが挙げられる。
これらの中でも、水酸基を有する単量体としては、例えば、n-ブチルアクリレートとの共重合性が良好であるという観点から、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、n-ブチルアクリレートとの相溶性及び共重合性が良好であるという観点、並びに、イソシアネート系架橋剤との反応性が良好であるという観点から、炭素数が1~5のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数が2~4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0034】
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0035】
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率(割合)は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して、0.1質量%以上20質量%以下の範囲であることが好ましく、0.7質量%以上15質量%以下の範囲であることがより好ましく、1質量%以上10質量%以下の範囲であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して0.1質量%以上であることは、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)が水酸基を有する単量体に由来する構成単位を積極的に含むことを意味する。
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して20質量%以下であると、高速で剥離した場合に起こり得るジッピング現象がより十分に抑制された粘着剤層を形成できる傾向がある。また、透明性により優れる粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0036】
<n-ブチルアクリレートとは異なる(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)は、n-ブチルアクリレートとは異なる(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体〔以下、他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(a)」ともいう。〕に由来する構成単位を含むことが好ましい。
他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(a)に由来する構成単位は、粘着剤層の粘着力の調整に寄与する。
【0037】
本明細書において、「他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(a)に由来する構成単位」とは、他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(a)が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0038】
他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(a)としては、n-ブチルアクリレートとは異なる(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体であれば、その種類は、特に限定されない。
他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(a)としては、無置換の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましい。
他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(a)のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい。
また、アルキル基の炭素数は、形成される粘着剤層の、被着体に対する粘着力及び保護フィルムの基材との密着性の観点から、1~18であることが好ましく、1~12であることがより好ましい。
【0039】
他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(a)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチルメタクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、i-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(a)としては、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)を-40℃以下に調整しやすいという観点から、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が好ましい。
【0040】
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)は、他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(a)に由来する構成単位を含む場合、他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(a)に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0041】
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)が他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(a)に由来する構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)における他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(a)に由来する構成単位の含有率(割合)は、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して、10質量%以上59.9質量%以下の範囲であることが好ましく、15質量%以上50質量%以下の範囲であることがより好ましく、20質量%以上40質量%以下の範囲であることが更に好ましい。
【0042】
<カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)が、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含むと、形成される粘着剤層の高速剥離力が低下し、低速剥離力と高速剥離力とのバランスがより良好となる傾向がある。
【0043】
本明細書において、「カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位」とは、カルボキシ基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0044】
カルボキシ基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
カルボキシ基を有する単量体の具体例としては、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、クロトン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート(例えば、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート)、コハク酸エステル(例えば、2-アクリロイルオキシエチル-コハク酸)等が挙げられる。
これらの中でも、カルボキシ基を有する単量体としては、例えば、イソシアネート系架橋剤との反応性が良好であるという観点から、アクリル酸(AA)が好ましい。
【0045】
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0046】
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)がカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率(割合)は、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して、0.1質量%以上5質量%以下の範囲であることが好ましく、0.3質量%以上3質量%以下の範囲であることがより好ましく、0.5質量%以上1.5質量%以下の範囲であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して0.1質量%以上であると、形成される粘着剤層の高速剥離力がより低下する傾向がある。
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して5質量%以下であると、高速で剥離した場合に起こり得るジッピング現象がより十分に抑制された粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0047】
<その他の構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)は、本発明の効果が発揮される範囲内において、既述の構成単位、すなわち、必須の構成単位であるn-ブチルアクリレートに由来する構成単位及び水酸基を有する単量体に由来する構成単位、並びに、任意の構成単位である他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(a)に由来する構成単位及びカルボキシ基を有する構成単位以外の構成単位(所謂、その他の構成単位)を含んでいてもよい。
【0048】
その他の構成単位を構成する単量体は、既述の構成単位を構成する単量体と共重合できるものであれば、特に限定されない。
その他の構成単位を構成する単量体としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートに代表される環状基を有する(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、及びエトキシエチル(メタ)アクリレートに代表されるアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、クロロメチルスチレン、及びビニルトルエンに代表される芳香族モノビニル、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルに代表されるシアン化ビニル、並びに、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びバーサチック酸ビニルに代表されるビニルエステルが挙げられる。また、これらの単量体の各種誘導体が挙げられる。
但し、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)が環状基を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)における環状基を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有率(割合)は、例えば、形成される粘着剤層の透明性の観点から、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましく、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)が環状基を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含まないこと、即ち、0質量%であることが特に好ましい。
【0049】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度>>
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、-40℃以下であり、-50℃以下であることが好ましく、-60℃以下であることがより好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)が-40℃以下であると、高速剥離力が高くなりすぎず、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好な粘着剤層を形成し得る。また、高速で剥離した場合に起こり得るジッピング現象が十分に抑制された粘着剤層を形成し得る。
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)の下限は、特に限定されず、例えば、被着体に対する粘着力の観点から、-70℃以上が好ましい。
【0050】
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、下記の式1から計算により求められる絶対温度(K)をセルシウス温度(℃)に換算した値である。
1/Tg=m1/Tg1+m2/Tg2+・・・+m(k-1)/Tg(k-1)+mk/Tgk (式1)
【0051】
式1中、Tg1、Tg2、・・・、Tg(k-1)、及びTgkは、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する各単量体を単独重合体としたときの絶対温度(K)で表されるガラス転移温度(Tg)をそれぞれ表す。m1、m2、・・・、m(k-1)、及びmkは、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する各単量体のモル分率をそれぞれ表し、m1+m2+・・・+m(k-1)+mk=1である。
なお、絶対温度(K)から273を引くことで絶対温度(K)をセルシウス温度(℃)に換算でき、セルシウス温度(℃)に273を足すことでセルシウス温度(℃)を絶対温度(K)に換算できる。
【0052】
本明細書において、「単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)」とは、その単量体を単独で重合して製造した単独重合体の絶対温度(K)で表されるガラス転移温度(Tg)をいう。
単独重合体のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定装置(DSC)(型番:EXSTAR6000、セイコーインスツル(株)製)を用い、窒素気流中、測定試料10mg、昇温速度10℃/分の条件で測定し、得られたDSCカーブの変曲点を単独重合体のガラス転移温度(Tg)としたものである。
【0053】
代表的な単量体の「単独重合体としたときのセルシウス温度(℃)で表されるガラス転移温度(Tg)」は、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が-76℃、2-エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)が-10℃、n-ブチルアクリレート(n-BA)が-57℃、n-ブチルメタクリレート(n-BMA)が21℃、t-ブチルアクリレート(t-BA)が41℃、t-ブチルメタクリレート(t-BMA)が107℃、i-ブチルメタクリレート(i-BMA)が48℃、メチルアクリレート(MA)が5℃、メチルメタクリレート(MMA)が103℃、イソボニルメタクリレート(IBXMA)が155℃、イソボニルアクリレート(IBXA)が96℃、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)が56℃、エチルアクリレート(EA)が-27℃、エチルメタクリレート(EMA)が42℃、メタクリル酸が185℃、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)が-39℃、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)が-15℃、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)が55℃、アクリル酸(AA)が163℃、イソオクチルアクリレート(i-OA)が-75℃、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)が18℃、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレートが-30℃、2-アクリロイルオキシエチル-コハク酸が-40℃である。
【0054】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量>>
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、20万以上200万以下の範囲であり、25万以上100万以下の範囲であることが好ましく、30万以上80万以下の範囲であることがより好ましく、35万以上55万以下の範囲であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)が20万以上であると、凝集力を得やすくなる傾向がある。
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)が200万以下であると、塗工性が良化しやすい傾向がある。
【0055】
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、下記の方法により測定される値である。具体的には、下記(1)~(3)に従って測定する。
(1)特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の溶液を剥離紙に塗布し、100℃で1分間乾燥し、フィルム状の特定(メタ)アクリル系共重合体(A)を得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の特定(メタ)アクリル系共重合体(A)とテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、下記条件にて、標準ポリスチレン換算値として、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)を測定する。
【0056】
~条件~
測定装置:高速GPC(型番:HLC-8220 GPC、東ソー(株)製)
検出器:示差屈折率計(RI)(HLC-8220に組込、東ソー(株)製)
カラム:TSK-GEL GMHXL(東ソー(株)製)を直列に4本接続
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
注入量:100μL
流量:0.6mL/分
【0057】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の含有率>>
本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の含有率は、特に限定されず、例えば、粘着剤組成物中の全固形分量に対して、50質量%以上99質量%以下の範囲であることが好ましく、60質量%以上90質量%以下の範囲であることがより好ましく、70質量%以上80質量%以下の範囲であることが更に好ましい。
本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の含有率が、粘着剤組成物中の全固形分量に対して50質量%以上であると、高速で剥離した場合に起こり得るジッピング現象がより十分に抑制された粘着剤層を形成できる傾向がある。
本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の含有率が、粘着剤組成物中の全固形分量に対して99質量%以下であると、低速剥離力と高速剥離力とのバランスがより良好な粘着剤層を形成できる傾向がある。
本明細書において、「粘着剤組成物中の全固形分量」とは、粘着剤組成物が溶媒等の揮発性成分を含まない場合には、粘着剤組成物の全質量を意味し、粘着剤組成物が溶媒等の揮発性成分を含む場合には、粘着剤組成物から溶媒等の揮発性成分を除いた残渣の質量を意味する。
【0058】
〔特定(メタ)アクリル系共重合体(B)〕
本発明の粘着剤組成物は、n-ブチルメタクリレートに由来する構成単位及び水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含み、ガラス転移温度が0℃以上45℃以下の範囲であり、かつ、重量平均分子量が1万以上20万以下の範囲である(メタ)アクリル系共重合体(B)〔即ち、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)〕を含む。
また、本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量は、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、1質量部以上70質量部以下の範囲である。
【0059】
<n-ブチルメタクリレートに由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、n-ブチルメタクリレートに由来する構成単位を含む。
本明細書において、「n-ブチルメタクリレートに由来する構成単位」とは、n-ブチルメタクリレートが付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0060】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)におけるn-ブチルメタクリレートに由来する構成単位の含有率(割合)は、特に限定されない。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)におけるn-ブチルメタクリレートに由来する構成単位の含有率(割合)は、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)におけるn-ブチルメタクリレートに由来する構成単位の含有率(割合)が、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して40質量%以上であると、(メタ)アクリル系共重合体(A)との相溶性がより良好となるため、ヘイズがより抑制された粘着剤層を形成できる傾向がある。
また、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)におけるn-ブチルメタクリレートに由来する構成単位の含有率(割合)は、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して、99.9質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましく、97質量%以下であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)におけるn-ブチルメタクリレートに由来する構成単位の含有率(割合)が、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して99.9質量%以下であると、イソシアネート系架橋剤とより適切に架橋するため、低速剥離力と高速剥離力とのバランスがより良好な粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0061】
<水酸基を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む。
本明細書において、「水酸基を有する単量体に由来する構成単位」とは、水酸基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0062】
水酸基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
水酸基を有する単量体の具体例は、既述のとおりであるため、ここでは記載を省略する。
水酸基を有する単量体としては、例えば、n-ブチルメタクリレートとの共重合性が良好であるという観点から、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、n-ブチルメタクリレートとの相溶性及び共重合性が良好であるという観点、並びに、イソシアネート系架橋剤との反応性が良好であるという観点から、炭素数が1~5のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数が2~4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0063】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0064】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率(割合)は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して、0.1質量%以上20質量%以下の範囲であることが好ましく、0.7質量%以上15質量%以下の範囲であることがより好ましく、1質量%以上10質量%以下の範囲であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して0.1質量%以上であることは、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)が水酸基を有する単量体に由来する構成単位を積極的に含むことを意味する。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して20質量%以下であると、低速剥離力と高速剥離力とのバランスがより良好な粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0065】
<n-ブチルメタクリレートとは異なる(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、n-ブチルメタクリレートとは異なる(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体〔以下、他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(b)」ともいう。〕に由来する構成単位を含むことが好ましい。
他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(b)に由来する構成単位は、形成される粘着剤層の粘着力の調整に寄与する。
【0066】
本明細書において、「他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(b)に由来する構成単位」とは、他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(b)が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0067】
他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(b)としては、n-ブチルメタクリレートとは異なる(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体であれば、その種類は、特に限定されない。
他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(b)としては、無置換の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましい。
他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(b)のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい。
また、アルキル基の炭素数は、形成される粘着剤層の、被着体に対する粘着力及び保護フィルムの基材との密着性の観点から、1~18であることが好ましく、1~12であることがより好ましい。
【0068】
他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(b)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチルアクリレート(n-BA)、i-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、i-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(b)としては、例えば、n-ブチルメタクリレート(n-BMA)との共重合性が良好であり、かつ、ガラス転移温度(Tg)が適当であるため、所望の粘着性能を得やすいという観点から、エチルメタクリレート(EMA)が好ましい。また、他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(b)としては、例えば、特定(メタ)アクリル共重合体(A)との相溶性の観点から、n-ブチルアクリレート(n-BA)が好ましい。
【0069】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位(b)を含む場合、他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位(b)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0070】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)が他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(b)に由来する構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)における他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(b)に由来する構成単位の含有率(割合)は、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して、0.1質量%以上59.9質量%以下の範囲であることが好ましい。
【0071】
<カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)が、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含むと、形成される粘着剤層の高速剥離力が低下し、低速剥離力と高速剥離力とのバランスがより良好となる傾向がある。
【0072】
カルボキシ基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
カルボキシ基を有する単量体の具体例は、既述のとおりであるため、ここでは記載を省略する。
カルボキシ基を有する単量体としては、例えば、イソシアネート系架橋剤との反応性が良好であるという観点から、アクリル酸(AA)が好ましい。
【0073】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0074】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)がカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率(割合)は、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して、0.1質量%以上5質量%以下の範囲であることが好ましく、0.3質量%以上3質量%以下の範囲であることがより好ましく、0.5質量%以上1.5質量%以下の範囲であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して0.1質量%以上であると、低速剥離力と高速剥離力とのバランスがより良好な粘着剤層を形成できる傾向がある。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して5質量%以下であると、高速で剥離した場合に起こり得るジッピング現象がより十分に抑制された粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0075】
<その他の構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、本発明の効果が発揮される範囲内において、既述の構成単位、すなわち、必須の構成単位であるn-ブチルメタクリレートに由来する構成単位及び水酸基を有する単量体に由来する構成単位、並びに、任意の構成単位である他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(b)に由来する構成単位及びカルボキシ基を有する構成単位以外の構成単位(所謂、その他の構成単位)を含んでいてもよい。
【0076】
その他の構成単位を構成する単量体は、既述の構成単位を構成する単量体と共重合できるものであれば、特に限定されない。
その他の構成単位を構成する単量体の具体例は、既述のとおりであるため、ここでは記載を省略する。
【0077】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度>>
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度(Tg)は、0℃以上45℃以下の範囲であり、5℃以上40℃以下の範囲であることが好ましく、10℃以上35℃以下の範囲であることがより好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度(Tg)が0℃以上であると、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好な粘着剤層を形成し得る。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度(Tg)が45℃以下であると、高速で剥離した場合に起こり得るジッピング現象が十分に抑制された粘着剤層を形成し得る。
【0078】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度(Tg)は、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)と同様の方法により計算される値である。
【0079】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度(Tg)は、例えば、単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が異なる単量体を2種以上用いることで、適宜調整できる。
【0080】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量>>
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は、1万以上20万以下の範囲であり、1万以上15万以下の範囲であることが好ましく、1.5万以上15万以下の範囲であることがより好ましく、2万以上10万以下の範囲であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)が1万以上であると、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好な粘着剤層を形成し得る。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)が20万以下であると、高速で剥離した場合に起こり得るジッピング現象が十分に抑制された粘着剤層を形成し得る。また、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)との相溶性が向上するため、透明性に優れる粘着剤層を形成し得る。
【0081】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)と同様の方法により測定される値である。
【0082】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は、重合温度、重合時間、有機溶媒の使用量、重合開始剤の種類、重合開始剤の使用量等を調整することにより、所望の値にできる。
【0083】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量>>
本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量は、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、1質量部以上70質量部以下の範囲であり、3質量部以上60質量部以下の範囲であることが好ましく、10質量部以上50質量部以下の範囲であることがより好ましい。
本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して1質量部以上であると、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好な粘着剤層を形成し得る。
本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して70質量部以下であると、高速で剥離した場合に起こり得るジッピング現象が十分に抑制された粘着剤層を形成し得る。また、透明性に優れる粘着剤層を形成し得る。
【0084】
〔特定(メタ)アクリル系共重合体の製造方法〕
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)及び特定(メタ)アクリル系共重合体(B)〔即ち、特定(メタ)アクリル系共重合体〕の製造方法は、特に限定されない。
特定(メタ)アクリル系共重合体は、例えば、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、及び塊状重合に代表される公知の重合方法で、既述の単量体を重合して製造できる。
【0085】
特定(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)は、例えば、単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が異なる単量体を2種以上用いることで、適宜調整できる。
また、特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、重合温度、重合時間、有機溶媒の使用量、重合開始剤の種類、重合開始剤の使用量等を調整することにより、所望の値にできる。
【0086】
重合方法としては、製造後に本発明の粘着剤組成物を調製するにあたり、処理工程が比較的簡単であり、かつ、短時間で行える点で、溶液重合が好ましい。
溶液重合は、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中及び/又は有機溶媒の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させる。この場合、有機溶媒、単量体、重合開始剤及び/又は連鎖移動剤の少なくとも一部を逐次添加してもよい。
【0087】
重合反応時に用いられる有機溶媒としては、芳香族炭化水素化合物、脂肪族系又は脂環式系炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物、グリコールエーテル化合物、アルコール化合物等が挙げられる。
重合反応時に用いられる有機溶媒としては、より具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、テトラリン、デカリン、及び芳香族ナフサに代表される芳香族炭化水素化合物、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、i-オクタン、n-デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、及びテレピン油に代表される脂肪族系又は脂環式系炭化水素化合物、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸2-ヒドロキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、酢酸3-メトキシブチル、及び安息香酸メチルに代表されるエステル化合物、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、及びメチルシクロヘキサノンに代表されるケトン化合物、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルに代表されるグリコールエーテル化合物、並びに、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、s-ブチルアルコール、並びに、t-ブチルアルコールに代表されるアルコール化合物が挙げられる。
重合反応時には、これらの有機溶媒を1種のみ用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0088】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際しては、芳香族炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物、アルコール化合物等の重合反応中に連鎖移動を生じ難い有機溶媒の使用が好ましく、特に、特定(メタ)アクリル系共重合体の溶解性、重合反応の容易さ等の観点から、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、t-ブチルアルコール等の使用が好ましい。
【0089】
重合開始剤としては、通常の溶液重合で用いられる有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、カプロイルペルオキシド、ジ-i-プロピルペルオキシジカルボナート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカルボナート、t-ブチルペルオキシピバレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-アミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-α-クミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)ブタン、及び2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)ブタンが挙げられる。
アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(ABVN)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、及び2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチルが挙げられる。
重合反応時には、これらの重合開始剤を1種のみ用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0090】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際しては、重合反応中にグラフト反応を起こさない重合開始剤の使用が好ましく、特に、アゾビス系の重合開始剤の使用が好ましい。
【0091】
重合開始剤の使用量は、特に限定されず、目的とする特定(メタ)アクリル系共重合体の分子量に応じて、適宜設定される。
【0092】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際しては、本発明の目的及び効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて連鎖移動剤を用いてもよい。
連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸、シアノ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、ブロモ酢酸、ブロモ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、α‐メチルスチレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、及び9-フェニルフルオレンに代表される芳香族化合物、p-ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p-ニトロ安息香酸、p-ニトロフェノール、及びp-ニトロトルエンに代表される芳香族ニトロ化合物、ベンゾキノン及び2,3,5,6-テトラメチル-p-ベンゾキノンに代表されるベンゾキノン誘導体、トリブチルボランに代表されるボラン誘導体、四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2-テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、及び3-クロロ-1-プロペンに代表されるハロゲン化炭化水素化合物、クロラール及びフラルデヒドに代表されるアルデヒド化合物、炭素数1~18のアルキルメルカプタン化合物、チオフェノール及びトルエンメルカプタンに代表される芳香族メルカプタン化合物、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1~10のアルキルエステル化合物、炭素数1~12のヒドロキシアルキルメルカプタン化合物、並びに、ビネン及びターピノレンに代表されるテルペン化合物が挙げられる。
【0093】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際し、連鎖移動剤を用いる場合、連鎖移動剤の使用量は、特に限定されず、目的とする特定(メタ)アクリル系共重合体の分子量に応じて、適宜設定される。
【0094】
重合温度は、特に限定されず、目的とする特定(メタ)アクリル系共重合体の分子量に応じて、適宜設定される。
【0095】
〔イソシアネート系架橋剤〕
本発明の粘着剤組成物は、イソシアネート系架橋剤を含む。
本明細書において、「イソシアネート系架橋剤」とは、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物(所謂、ポリイソシアネート化合物)を意味する。但し、本明細書におけるイソシアネート系架橋剤には、イソシアネート基と、ポリシロキサン構造及びアルキレンオキシド構造と、を有する化合物は、含まれない。本明細書では、イソシアネート基と、ポリシロキサン構造及びアルキレンオキシド構造と、を有する化合物を「シリコーン系イソシアネート化合物」と称し、詳細については、後述する。
【0096】
イソシアネート系架橋剤としては、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族ポリイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、イソホロンジイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート化合物の水素添加物等の脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート化合物などが挙げられる。
また、イソシアネート系架橋剤としては、上記ポリイソシアネート化合物の2量体、上記ポリイソシアネート化合物の3量体、上記ポリイソシアネート化合物の5量体、上記ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物(例えば、トリメチロールプロパン)とのアダクト体、上記イソシアネート化合物のビウレット体等も挙げられる。
これらの中でも、イソシアネート系架橋剤としては、例えば、所望の粘着力を発現させやすいという観点、及び、ヘイズをより抑制できるという観点から、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)が好ましい。
【0097】
ポリイソシアネート化合物としては、市販品を使用できる。
ポリイソシアネート化合物の市販品の例としては、「コロネート(登録商標) HX」、「コロネート(登録商標) HL-S」、「コロネート(登録商標) L」、「コロネート(登録商標) L-45E」、「コロネート(登録商標) 2031」、「コロネート(登録商標) 2030」、「コロネート(登録商標) 2234」、「コロネート(登録商標) 2785」、「アクアネート(登録商標) 200」、及び「アクアネート(登録商標) 210」〔以上、東ソー(株)製〕、「スミジュール(登録商標) N3300」、「デスモジュール(登録商標) N3400」、及び「スミジュール(登録商標) N-75」〔以上、住化コベストロウレタン(株)製〕、「デュラネート(登録商標) E-405-80T」、「デュラネート(登録商標) AE700-100」、「デュラネート(登録商標) 24A-100」、及び「デュラネート(登録商標) TSE-100」〔以上、旭化成(株)製〕、並びに、「タケネート(登録商標) D-110N」、「タケネート(登録商標) D-120N」、「タケネート(登録商標) M-631N」、「MT-オレスター(登録商標) NP1200」、及び「スタビオ(登録商標) XD-340N」〔以上、三井化学(株)製〕が挙げられる。
【0098】
本発明の粘着剤組成物は、イソシアネート系架橋剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0099】
本発明の粘着剤組成物におけるイソシアネート系架橋剤の含有量は、特に限定されず、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.1質量部以上10.0質量部以下の範囲であることが好ましく、0.3質量部以上7.0質量部以下の範囲であることがより好ましく、0.5質量部以上6.0質量部以下の範囲であることが更に好ましく、1.0質量部以上5.0質量部以下の範囲であることが特に好ましい。
本発明の粘着剤組成物におけるイソシアネート系架橋剤の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.1質量部以上であることは、本発明の粘着剤組成物がイソシアネート系架橋剤を積極的に含むことを意味する。
本発明の粘着剤組成物におけるイソシアネート系架橋剤の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して10.0質量部以下であると、形成される粘着剤層の被着体に対する濡れの低下が過度に起きず、粘着剤層がより適切な低速剥離力を示す傾向がある。また、高速で剥離した場合に起こり得るジッピング現象がより十分に抑制される傾向がある。
【0100】
〔有機溶媒〕
本発明の粘着剤組成物は、有機溶媒を含んでいてもよい。
有機溶媒は、粘着剤組成物の塗布性の向上に寄与する。
有機溶媒としては、例えば、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体の重合反応時に用いられる有機溶媒と同様のものが挙げられる。
【0101】
本発明の粘着剤組成物は、有機溶媒を含む場合、有機溶媒を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0102】
本発明の粘着剤組成物が有機溶媒を含む場合、有機溶媒の含有量は、特に限定されず、目的に応じて、適宜設定できる。
【0103】
〔その他の成分〕
本発明の粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、既述した成分以外の成分(所謂、その他の成分)を含んでいてもよい。
その他の成分としては、シリコーン系イソシアネート化合物、シリコーン系イソシアネート化合物とは異なるシリコーン系化合物(以下、「他のシリコーン化合物」ともいう。)、イオン性化合物、特定(メタ)アクリル系共重合体以外の重合体、イソシアネート系架橋剤以外の架橋剤(例えば、金属キレート系架橋剤)、架橋触媒、粘着付与剤、酸化防止剤、着色剤(例えば、染料及び顔料)、光安定剤(例えば、紫外線吸収剤)等が挙げられる。
【0104】
<シリコーン系イソシアネート化合物>
本発明の粘着剤組成物は、既述のイソシアネート系架橋剤に加えて、イソシアネート基と、ポリシロキサン構造及びアルキレンオキシド構造と、を有する化合物(即ち、シリコーン系イソシアネート化合物)を含んでいてもよい。
シリコーン系イソシアネート化合物は、イソシアネート基を有するため、特定(メタ)アクリル系共重合体中の架橋性官能基と反応して架橋構造を形成し、粘着剤層中にアンカーされた状態で保持されやすい。そのため、保護フィルムを剥離する際に、汚染成分の被着体表面への転着が抑制される。よって、本発明の粘着剤組成物がシリコーン系イソシアネート化合物を含むと、耐汚染性に優れた粘着剤層を形成できる傾向がある。
また、シリコーン系イソシアネート化合物は、分子中にポリシロキサン構造を有するため、特定(メタ)アクリル系共重合体と相溶し難く、粘着剤層の表面付近に局在化する傾向がある。さらに、シリコーン系イソシアネート化合物は、分子中にアルキレンオキシド構造を有するため、帯電防止助剤として用いられるアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物と同様に、帯電防止剤に配位した状態で、粘着剤層の表面付近に局在化する傾向がある。そのため、シリコーン系イソシアネート化合物は、形成される粘着剤層に対して、少量で優れた帯電防止性能を付与できる。
本明細書において、「ポリシロキサン構造」とは、シロキサン基(-Si-O-)が連結した構造を指す。
シリコーン系イソシアネート化合物中のポリシロキサン構造に含まれるケイ素原子の数は、1~100の範囲であることが好ましい。
【0105】
シリコーン系イソシアネート化合物は、反応性基を有し、かつ、アルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物と、イソシアネート化合物と、の反応(以下、「プレ反応」ともいう。)により得ることができる。
【0106】
反応性基を有し、かつ、アルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物における反応性基としては、水酸基、カルボキシ基、置換又は無置換のアミド基、置換又は無置換のアミノ基、エポキシ基、メルカプト基、ケイ素含有基等の反応性基が挙げられる。
これらの中でも、反応性基としては、例えば、反応性基とイソシアネート化合物中のイソシアネート基(NCO基)との反応が効果的に促進され、かつ、被着体に対する汚染の発生を効果的に抑制できる観点から、水酸基が好ましい。
反応性基は、アルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物の両末端、片末端、及び側鎖の何れに導入されていてもよい。
ここで、「片末端」とは、例えば、シロキサン基の繰り返し単位を有するポリシロキサン鎖(主鎖)を有するシリコーン化合物の上記主鎖の一方の末端を意味する。「両末端」とは、例えば、シロキサン基の繰り返し単位を有する分子鎖(主鎖)を有するシリコーン化合物の上記主鎖の両方の末端を意味する。
【0107】
反応性基を有し、かつ、アルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物としては、例えば、シリコーン鎖(ポリシロキサン主鎖)に、アルキレンオキシド構造がグラフト状に結合した化合物、又は、ブロック状に結合した化合物が挙げられる。
アルキレンオキシド構造を有する化合物としては、反応性基を有するポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等が挙げられ、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとがブロック状又はランダムに付加したポリアルキレンオキシドであってもよい。
【0108】
反応性基を有し、かつ、アルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物は、例えば、優れた帯電防止性を示し、かつ、被着体に対する汚染を効果的に抑制する観点から、アルキレンオキシド構造と、アルキレンオキシド構造の末端に水酸基が結合した構造と、を含有するシリコーン化合物(以下、「特定アルキレンオキシド構造含有シリコーン化合物」ともいう。)であることが好ましい。
特定アルキレンオキシド構造含有シリコーン化合物が、アルキレンオキシド構造の末端に水酸基が結合した構造を有すると、より優れた耐汚染性を発揮することが可能となる。
アルキレンオキシド鎖を有するシリコーン化合物は、後述の帯電防止剤と相互作用し、粘着剤層の表面付近に局在化する傾向がある。その結果、粘着剤層の表面における表面抵抗値を低下させると推察される。粘着剤組成物がシリコーン系イソシアネート化合物を含むと、粘着剤組成物における帯電防止剤の配合量を抑えることが可能となる。
【0109】
帯電防止性を付与し、かつ、被着体に対する汚染性を低くする観点から、特定アルキレンオキシド構造含有シリコーン化合物としては、ジアルキルシロキサンに由来する構成単位と、アルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンに由来する構成単位と、を含むポリシロキサン化合物であることが好ましい。
ジアルキルシロキサンにおけるアルキル基の炭素数は、1~4であることが好ましく、1であることがより好ましい。
また、アルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンにおけるアルキレンオキシド鎖の炭素数は、2~4であることが好ましく、2~3であることがより好ましい。
アルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンにおけるアルキレンオキシド鎖の含有数は、1~100であることが好ましく、10~100であることがより好ましい。
アルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンにおけるアルキル基の炭素数は、1~4であることが好ましい。
【0110】
特定アルキレンオキシド構造含有シリコーン化合物が、ジアルキルシロキサンに由来する構成単位とアルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンに由来する構成単位とを含む場合、ジアルキルシロキサンに由来する構成単位の含有数は100以下であることが好ましく、1~80であることがより好ましい。また、アルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンに由来する構成単位の含有数は2~100であることが好ましく、2~80であることがより好ましい。
【0111】
特定アルキレンオキシド構造含有シリコーン化合物は、粘着性、帯電防止性及び被着体に対する汚染性を低くする観点から、下記一般式(3)又は一般式(4)で表される化合物であることが好ましい。
【0112】
【化1】

【0113】
一般式(3)中、pは、ジメチルシロキサン構造単位の繰り返し数であって、0~100の整数を表す。qは、ポリエチレンオキシド鎖を有するメチルプロピレンシロキサン構造単位の繰り返し数であって、2~100の整数を表す。aは、エチレンオキシド構造単位の繰り返し数であって、1~100の整数を表す。
ここで、一般式(3)で表される化合物が複数の化合物の集合体である場合、p、q、及びaは、化合物の集合体としての平均値であり、有理数である。
【0114】
エチレンオキシド構造単位の繰り返し数aは、1~100の整数であり、10~100の整数であることが好ましい。aが1以上であると、十分な導電性が得られ、帯電防止効果が更に向上する傾向がある。また、aが100以下であると、粘着剤層の表面付近に局在化しやすくなる。
【0115】
ジメチルシロキサン構造単位の繰り返し数pは、0~100の整数であり、1~80の整数であることが好ましい。pが0以上の場合には、帯電防止効果が向上する傾向がある。また、pが100以下であると、粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性がより向上する傾向がある。
メチルプロピレンシロキサン構造単位の繰り返し数qは、2~100の整数であり、2~80の整数であることが好ましい。qが2以上であると十分な導電性が得られやすく、帯電防止効果を向上させる傾向がある。また、qが100以下であると粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性がより向上する傾向がある。
【0116】
一般式(3)で表される化合物の具体例としては、「SF-8428」、「FZ-2162」、「SH-3773M」、「FZ-77」、「FZ-2104」、「FZ-2110」、「L-7001」、「L-7002」、「SH-3749」等〔以上、東レ・ダウコーニング(株)製〕が挙げられる。
【0117】
【化2】

【0118】
一般式(4)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキレン基を表し、cは、10~80の整数を表し、dは、エチレンオキシド(EO)構成単位の繰り返し数であって、1以上の整数を表し、eは、プロピレンオキシド(PO)構成単位の繰り返し数であって、0以上の整数を表し、d+eは、1~30の整数を表す。エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの順序はランダムであってもよい。
【0119】
一般式(4)で表される化合物の具体例としては、「BY-16-201」、「SF-8427」等〔以上、東レ・ダウコーニング(株)製〕が挙げられる。
【0120】
特定アルキレンオキシド構造含有シリコーン化合物の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、例えば、0.1万以上2万以下の範囲であることが好ましく、0.3万以上1.5万以下の範囲であることがより好ましい。
特定アルキレンオキシド構造含有シリコーン化合物の重量平均分子量(Mw)は、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)と同様の方法により測定される値である。
【0121】
特定アルキレンオキシド構造含有シリコーン化合物のHLB値は、特に限定されない。
特定アルキレンオキシド構造含有シリコーン化合物のHLB値は、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体との相溶性、局在化のしやすさ、及び保護フィルムに適した接着性の観点から、5以上16未満の範囲であることが好ましく、7以上15以下の範囲であることがより好ましい。
【0122】
HLB値は、アルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物の親水性と疎水性とのバランスを示す尺度である。本明細書においては、下記式で算出されるグリフィン法の定義に従う。なお、アルキレンオキシド構造を有するシリコーンが市販品である場合には、市販品のカタログデータを優先して採用する。
HLB= {(親水性基部分の式量の総和)/(アルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物の分子量)}×20
【0123】
特定アルキレンオキシド構造含有シリコーン化合物は、既述の市販品から選択してもよく、また、水素化ケイ素を有するジメチルポリシロキサン主鎖に対し、不飽和結合及びポリエチレンオキシド鎖を有する有機化合物をヒドロシリル化反応によりグラフトさせることによって得てもよい。
【0124】
シリコーン系イソシアネート化合物のプレ反応に用いられるイソシアネート化合物は、上記反応性基を有し、かつ、アルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物と反応できるものであれば、特に限定されない。
このようなイソシアネート化合物としては、例えば、既述のイソシアネート系架橋剤であるポリイソシアネート化合物が挙げられ、具体例は、イソシアネート系架橋剤の具体例と同様である。
【0125】
例えば、プレ反応における反応性の観点からは、プレ反応に用いられるイソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート若しくはキシリレンジイソシアネート、及び、ヘキサメチレンジイソシアネートと、ポリオールと、のイソシアヌレート変性体から選ばれる少なくとも1種が好ましく、後述するプレ反応時のゲル化を特に抑制する観点から、イソホロンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネートの少なくとも一方であることがより好ましい。
【0126】
例えば、帯電防止性の観点からは、プレ反応に用いられるイソシアネート化合物としては、既述のイソシアネート系架橋剤であるポリイソシアネート化合物とは異なるイソシアネート化合物であることが好ましい。
既述のイソシアネート系架橋剤であるポリイソシアネート化合物と、シリコーン系イソシアネート化合物のプレ反応に用いられるイソシアネート化合物とが異なると、粘着剤層中において、既述のイソシアネート系架橋剤であるポリイソシアネート化合物とシリコーン系イソシアネート化合物とが相溶し難く、シリコーン系イソシアネート化合物がより粘着剤層表面へ局在化しやすくなるため、より優れた帯電防止性が得られる傾向がある。
【0127】
プレ反応に用いられるイソシアネート化合物は、1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。例えば、イソホロンジイソシアネートとキシリレンジイソシアネートとを併用した場合、プレ反応時のゲル化をより抑制できる傾向がある。
【0128】
シリコーン系イソシアネート化合物は、下記構造式(1)で表される構造を含むことが好ましい。
【0129】
【化3】

【0130】
構造式(1)中、rは、1~100の整数を表し、bは、1~100の整数を表し、Xは、イソシアネート基を含む1価の有機基を表す。
【0131】
メチルプロピレンシロキサン構造単位の繰り返し数rは、1~100の整数であり、2~80の整数であることが好ましい。rが1以上であると、十分な導電性が得られ、帯電防止性が向上する傾向がある。また、rが100以下であると、粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性が向上する傾向がある。
【0132】
エチレンオキシド構造単位の繰り返し数bは、1~100の整数であり、10~100の整数であることが好ましい。bが1以上であると、十分な導電性が得られ、帯電防止性が向上する傾向がある。また、bが100以下であると、粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性が向上する傾向がある。
【0133】
Xで表される1価の有機基としては、既述のイソシアネート系架橋剤であるポリイソシアネート化合物(即ち、2官能以上のイソシアネート化合物)から、イソシアネート基(NCO基)を1つ除いた1価の基が挙げられる。
これらの中でも、Xで表される1価の有機基としては、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体との反応性の観点から、鎖状若しくは環状の脂肪族ポリイソシアネート化合物、鎖状若しくは環状の脂肪族ポリイソシアネート化合物の2量体、及び、鎖状若しくは環状の脂肪族ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体を含む3量体又は5量体から選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネート化合物からイソシアネート基を1つ除いた1価の基が好ましく、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、又はヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートの2量体、及び、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体を含む3量体又は5量体から選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネート化合物からイソシアネート基を1つ除いた1価の基がより好ましく、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体を含む3量体の少なくとも一方からイソシアネート基を1つ除いた1価の基が更に好ましく、イソホロンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネートの少なくとも一方からイソシアネート基を1つ除いた1価の基が特に好ましい。
また、Xで表される1価の有機基としては、例えば、帯電防止性の観点から、既述のイソシアネート系架橋剤であるポリイソシアネート化合物とは異なる他の2官能以上のイソシアネート化合物から、イソシアネート基(NCO基)を1つ除いた1価の基であることが好ましい。
【0134】
上記構造式(1)で表される構造の具体例を以下に示す。なお、構造式(1)で表される構造は、以下の例示構造に限定されず、例えば、構造式(1)で表される構造に包含される構造であれば、特に制限はない。
【0135】
【化4】

【0136】
【化5】

【0137】
【化6】

【0138】
【化7】

【0139】
【化8】

【0140】
シリコーン系イソシアネート化合物としては、例えば、耐汚染性の観点から、一般式(1-1)及び一般式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、一般式(1-1)で表される化合物であることがより好ましい。
【0141】
【化9】

【0142】
一般式(1-1)中、pは、0~100の整数を表し、q及びrは、それぞれ独立に、1~100の整数を表し、aは、1~100の整数を表し、bは、1~100の整数を表す。また、Xは、イソシアネート基を含む1価の有機基を表す。
ここで、一般式(1-1)で表される化合物が複数の化合物の集合体である場合、p、q、r、a、及びbは、化合物の集合体としての平均値であり、有理数である。
【0143】
エチレンオキシド構造単位の繰り返し数aは、1~100の整数であり、10~100の整数であることが好ましい。aが1以上であると、十分な導電性が得られ、帯電防止性が向上する傾向がある。また、aが100以下であると、粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性が向上する傾向がある。
【0144】
ジメチルシロキサン構造単位の繰り返し数pは、0~100の整数であり、1~80の整数であることが好ましい。pが0以上の場合には、帯電防止性が向上する傾向がある。また、pが100以下であると、粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性が向上する傾向がある。
メチルプロピレンシロキサン構造単位の繰り返し数qは、1~100の整数であり、2~80の整数であることが好ましい。qが1以上であると、十分な導電性が得られ、帯電防止性が向上する傾向がある。また、qが100以下であると、粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性が向上する傾向がある。
【0145】
一般式(1-1)中、r及びbは、構造式(1)中のr及びbと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0146】
【化10】

【0147】
一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキレン基を表し、cは、10~80の整数を表し、dは、エチレンオキシド(EO)構造単位の繰り返し数であって、1以上の整数を表し、eは、プロピレンオキシド(PO)構造単位の繰り返し数であって、0以上の整数を表し、d+eは、1~30の整数を表す。エチレンオキシド構造単位及びプロピレンオキシド構造単位の順序はランダムであってもよい。
【0148】
一般式(2)中、R又はRで表される炭素数1~6のアルキレン基としては、特に限定されず、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、及びブチレン基が挙げられる。
【0149】
エチレンオキシド構造単位の繰り返し数dは、1~100の整数であることが好ましく、10~100の整数であることがより好ましい。dが1以上であると、十分な導電性が得られ、帯電防止性が向上する傾向がある。また、dが100以下であると、粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性が向上する傾向がある。
【0150】
プロピレンオキシド構造単位の繰り返し数eは、1~100の整数であることが好ましく、10~100の整数であることがより好ましい。eが1以上であると、十分な導電性が得られ、帯電防止性が向上する傾向がある。また、eが100以下であると、粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性が向上する傾向がある。
【0151】
エチレンオキシド構造単位の繰り返し数dとプロピレンオキシド構造単位の繰り返し数eとの和は、1~50の整数であることがより好ましい。
【0152】
シリコーン系イソシアネート化合物の具体例を以下に示す。なお、シリコーン系イソシアネート化合物は、以下の例示化合物に限定されず、既述の構造式(1)で表される構造を含む化合物に包含される化合物であれば、特に制限はない。
【0153】
【化11】

【0154】
【化12】

【0155】
【化13】

【0156】
【化14】

【0157】
【化15】

【0158】
【化16】

【0159】
【化17】

【0160】
【化18】

【0161】
【化19】

【0162】
【化20】

【0163】
【化21】

【0164】
【化22】

【0165】
【化23】

【0166】
【化24】

【0167】
【化25】

【0168】
【化26】

【0169】
シリコーン系イソシアネート化合物の製造方法は、特に限定されず、公知の製造方法を適用することができる。
例えば、反応容器に、反応性基を有し、かつ、アルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物と、イソシアネート化合物と、を各々所定量投入し、均一に撹拌して反応(プレ反応)させることで、シリコーン系イソシアネート化合物を得ることができる。
【0170】
プレ反応の温度は、40℃~100℃であることが好ましく、45℃~95℃であることがより好ましく、50℃~95℃であることが更に好ましい。
【0171】
本発明の粘着剤組成物がシリコーン系イソシアネート化合物を含む場合、粘着剤組成物におけるシリコーン系イソシアネート化合物の含有量は、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部~3質量部であることがより好ましく、0.3質量部~2質量部であることが更に好ましい。
シリコーン系イソシアネート化合物の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.1質量部以上であると、耐汚染性に優れる粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0172】
本発明の粘着剤組成物がシリコーン系イソシアネート化合物を含む場合、イソシアネート系架橋剤に対するシリコーン系イソシアネート化合物の質量比[シリコーン系イソシアネート化合物/イソシアネート系架橋剤]は、1/1~1/20であることが好ましく、1/2~1/15であることがより好ましく、1/3~1/10であることが更に好ましい。
質量比[シリコーン系イソシアネート化合物/イソシアネート系架橋剤]が1/1以上であると、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)と、イソシアネート系架橋剤と、が十分に反応して架橋構造を形成することができるため、より適切な粘着力が粘着剤層に付与される傾向がある。
質量比[シリコーン系イソシアネート化合物/イソシアネート系架橋剤]が1/20以下であると、粘着剤組成物中に含まれるイソシアネート系架橋剤が多くなりすぎず、かつ、シリコーン系イソシアネート化合物が適度に存在しているため、耐汚染性に優れる粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0173】
<他のシリコーン化合物>
本発明の粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、シリコーン系イソシアネート化合物以外のシリコーン系化合物(即ち、他のシリコーン化合物)を少なくとも1種含んでいてもよい。
他のシリコーン化合物は、帯電防止助剤として機能し得る。
【0174】
他のシリコーン化合物としては、例えば、シリコーン系イソシアネート化合物のプレ反応に用いられる、反応性基を有し、かつ、アルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物が挙げられる。
他のシリコーン化合物の具体例は、既述の反応性基を有し、かつ、アルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物の具体例と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0175】
<イオン性化合物>
本発明の粘着剤組成物は、イオン性化合物を少なくとも1種含んでいてもよい。
イオン性化合物は、帯電防止剤として機能し得る。
【0176】
イオン性化合物は、特に限定されない。
イオン性化合物としては、アルカリ金属塩、有機塩等が挙げられる。
イオン性化合物としては、例えば、イオン解離性が高く、かつ、少量であっても優れた帯電防止性を発現しやすいという観点から、アルカリ金属塩及び有機塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0177】
アルカリ金属塩としては、リチウムイオン(Li)、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)、ルビジウム(Rb)等をカチオンとする金属塩であれば、特に限定されない。
アルカリ金属塩は、例えば、Li、Na、及びKからなる群より選ばれる少なくとも1種のカチオンと、Cl、Br、I、BF 、PF 、SCN、ClO 、CFSO 、(FSO、(CFSO、(CSO、及び(CFSOからなる群より選ばれる少なくとも1種のアニオンと、から構成される金属塩であることが好ましい。
中でも、アルカリ金属塩としては、例えば、帯電防止性の観点から、LiBr、LiI、LiBF、LiPF、LiSCN、LiClO、LiCFSO(所謂、LiTFS)、Li(FSON、Li(CFSON、Li(CSON、Li(CFSOC等のリチウム塩が好ましく、LiClO、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON、及びLi(CFSOCからなる群より選ばれる少なくとも1種のリチウム塩がより好ましい。
【0178】
有機塩は、有機カチオンとその対イオンとを含む。
有機塩には、例えば、融点が30℃以上のイオン性固体と、融点が30℃未満のイオン性液体とが含まれる。
有機塩は、融点が30℃以上のイオン性固体であることが好ましい。有機塩の融点が30℃以上であると、被着体への移行が少なく、汚染性が低いため、好ましい。
有機カチオンとしては、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、アルキルピロリジニウムカチオン、有機基を置換基として有するアンモニウムカチオン、有機基を置換基として有するスルホニウムカチオン、有機基を置換基として有するホスホニウムカチオン等が挙げられる。
これらの中でも、有機カチオンとしては、例えば、帯電防止性の観点から、ピリジニウムカチオン又はイミダゾリウムカチオンであることが好ましい。
【0179】
有機カチオンの対イオンとなるアニオン部は、特に限定されず、無機アニオン又は有機アニオンのいずれでもよい。有機カチオンの対イオンとなるアニオン部は、帯電防止性に優れるという観点から、フッ素原子を含むフッ素含有アニオンであることが好ましく、ヘキサフルオロホスフェートアニオン(PF )であることがより好ましい。
【0180】
有機塩の例としては、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、アルキルアンモニウム塩、アルキルピロリジニウム塩、アルキルホスホニウム塩等が挙げられる。
これらの中でも、有機塩としては、ピリジニウム塩又はイミダゾリウム塩であることが好ましく、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオンと、フッ素含有アニオンとの塩であることがより好ましい。
【0181】
<架橋触媒>
本発明の粘着剤組成物は、架橋触媒を含んでいてもよい。
架橋触媒としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。
架橋触媒としては、例えば、ジオクチル錫ジラウレート(DOTDL)及び1,3-ジアセトキシテトラブチルスタノキサンに代表される有機金属化合物、並びに、トリエチレンジアミン及びN-メチルモルホリンに代表される第3級アミン化合物が挙げられる。
【0182】
〔用途〕
本発明の粘着剤組成物は、光学部材を保護するための保護フィルム(所謂、光学部材保護フィルム)に好ましく用いられる。
本発明の粘着剤組成物は、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好であり、高速で剥離した場合に発生し得るジッピングが十分に抑制され、かつ、透明性に優れる粘着剤層を形成できるため、光学部材に保護フィルムを貼着する用途に好適である。
【0183】
光学部材としては、画像表示装置、入力装置等の機器(所謂、光学機器)を構成する部材又はこれらの機器に用いられる部材が挙げられる。
光学部材の具体例としては、例えば、偏光板、AG(Anti-Glare)偏光板、波長板、1/2、1/4等の波長板を含む位相差板、視角補償フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルム、ITO(Indium-Tin Oxide)フィルム等の透明導電フィルム、プリズムシート、レンズシート、拡散板などの表示装置に用いられるものが挙げられる。
光学部材の材質としては、例えば、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂、フッ素系樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0184】
[光学部材保護フィルム]
本発明の光学部材保護フィルムは、基材と、上記基材上に設けられ、かつ、既述の本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、を備える。すなわち、本発明の保護フィルムでは、基材と、本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層とが、積層されている。
本発明の保護フィルムは、本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備えるため、被着体の表面に貼り付けた後、保護が必要な間は、被着体からの剥がれ、ずれ等の不具合が起こり難く、かつ、保護が不要となり、被着体から剥離する際には、効率良く剥離できる。換言すると、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好である。
また、本発明の保護フィルムは、本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備えるため、被着体から高速で剥離する際にジッピング現象が起こり難く、被着体の表面にスジ状の欠点が生じさせ難い。
さらに、本発明の保護フィルムは、本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備えるため、透明性に優れる。
【0185】
本発明の保護フィルムにおける基材は、その基材上に粘着剤層を形成できれば、特に限定されない。
基材としては、例えば、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ABS樹脂、フッ素系樹脂等の樹脂を含むフィルムが挙げられる。
例えば、透視による光学部材の検査及び管理の観点からは、基材としては、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、及びアクリル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含むフィルムが好ましい。
また、例えば、表面保護性能の観点からは、ポリエステル系樹脂を含むフィルムが好ましく、実用性を考慮すると、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含むフィルムが特に好ましい。
【0186】
基材は、可塑剤、着色剤(例えば、染料及び顔料)、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
また、基材は、一部又は全体に、模様が施されていてもよい。
【0187】
基材の厚さは、一般には500μm以下であり、300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。
基材の厚さの下限は、例えば、保護フィルムの強度の観点から、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。
【0188】
基材の片面又は両面には、帯電防止層が設けられていてもよい。また、基材の粘着剤層が設けられる側の表面には、基材と粘着剤層との密着性を向上させる観点から、コロナ放電処理、プラズマ放電処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0189】
粘着剤層の形成方法は、特に限定されず、通常用いられる方法を採用できる。
基材上に粘着剤層を形成する方法としては、例えば、以下の方法を採用できる。
本発明の粘着剤組成物を、そのままの状態で、又は、必要に応じて溶媒で希釈した状態で、基材上に塗布し、基材上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥して溶媒を除去した後、養生を行うことにより、基材上に粘着剤層を形成する。
なお、露出した粘着剤層の表面は、剥離フィルムによって保護してもよい。剥離フィルムとしては、粘着剤層の表面からの剥離を容易に行えるものであれば、特に限定されず、例えば、片面又は両面に剥離剤による表面処理が施された紙、樹脂フィルム等が挙げられる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに代表されるポリエステルフィルムが挙げられる。剥離剤としては、フッ素系樹脂、パラフィンワックス、シリコーン、長鎖アルキル基化合物等が挙げられる。
剥離フィルムは、保護フィルムを実用に供するまでの間、粘着剤層の表面を保護し、使用時に剥離される。
【0190】
基材上に粘着剤層を形成する別の方法としては、例えば、以下の方法を採用できる。
本発明の粘着剤組成物を、そのままの状態で、又は、必要に応じて溶媒で希釈した状態で、剥離剤による表面処理が施された紙、樹脂フィルム等の剥離フィルム上に塗布し、剥離フィルム上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥して溶媒を除去する。次いで、剥離フィルムの粘着剤層が形成された側の面を基材に接触させて加圧し、粘着剤層を基材に転写することにより、基材上に粘着剤層を形成する。次いで、養生を行う。
【0191】
基材上又は剥離フィルム上に、粘着剤組成物を塗布する方法としては、特に限定されず、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、バーコーター、アプリケーター等を用いる公知の方法が挙げられる。
基材上又は剥離フィルム上への粘着剤組成物の塗布量は、形成する粘着剤層の厚さに応じて、適宜設定される。
【0192】
粘着剤層の厚さは、保護フィルムに求められる粘着力、被着体の種類(例えば、材質及び形状)、被着体の表面粗さ等に応じて、適宜設定できる。
粘着剤層の厚さは、一般には1μm以上100μm以下の範囲であり、5μm以上50μm以下の範囲が好ましく、10μm以上30μm以下の範囲がより好ましい。
【0193】
基材上又は剥離フィルム上に形成した塗布膜を乾燥させる方法としては、特に限定されず、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、真空乾燥等の方法が挙げられる。
塗布膜の乾燥温度及び乾燥時間は、特に限定されず、塗布膜の厚さ、塗布膜中の有機溶媒の量等に応じて、適宜設定される。
【0194】
養生は、例えば、23℃、50%RHの環境下で1日間~10日間行う。
養生により、粘着剤組成物の架橋反応が終了して粘着剤層が形成される。
【0195】
被着体に貼着した保護フィルムを180°剥離したときの粘着剤層の粘着力(所謂、剥離力)は、剥離速度が0.3m/分(即ち、低速剥離)の場合には、0.10N/25mm以上であることが好ましく、0.15N/25mm以上であることがより好ましく、0.20N/25mm以上であることが更に好ましい。
低速剥離時の粘着力(所謂、低速剥離力)が0.10N/25mm以上であると、保護フィルムの剥がれ又はずれの発生がより抑制される傾向がある。
【0196】
被着体に貼着した保護フィルムを180°剥離したときの粘着剤層の粘着力(所謂、剥離力)は、剥離速度が30m/分(即ち、高速剥離)の場合には、1.50N/25mm未満であることが好ましく、1.00N/25mm未満であることがより好ましく、0.50N/25mm未満であることが更に好ましい。
高速剥離時の粘着力(所謂、高速剥離力)が1.50N/25mm未満であると、被着体から保護フィルムをより効率良く剥離できるため、作業性がより向上し得る。
【0197】
本明細書において、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好な粘着剤層であることは、低速剥離力の値を高速剥離力の値で除した値(低速剥離力/高速剥離力)に基づいて評価する。
(低速剥離力/高速剥離力)は、0.10以上であることが好ましく、0.20以上であることがより好ましく、0.30以上であることが更に好ましい。
【実施例
【0198】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0199】
[(メタ)アクリル系共重合体(A)の製造]
〔製造例A-1〕
温度計、撹拌機、窒素導入管、及び還流冷却器を備えた反応容器内に、酢酸エチル171.0質量部及びt-ブチルアルコール249.0質量部を入れた。
また、別の容器に、n-ブチルアクリレート(n-BA)360.0質量部、2-エチルヘキシルアクリレート〔2EHA;他のアクリル酸アルキルエステル単量体(a)〕217.8質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA;水酸基を有する単量体)18.0質量部、及びアクリル酸(AA;カルボキシ基を有する単量体)4.2質量部を入れ、混合して単量体混合物とした。
この単量体混合物のうち、20.0質量%を上記反応容器内に添加した。次いで、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル〔AIBN;重合開始剤〕0.08質量部を添加し、窒素雰囲気下で撹拌しながら、反応容器内の内容物温度を85℃に昇温させて、初期反応を開始させた。
初期反応がほぼ終了した後の反応容器内に、残りの単量体混合物80.0質量%と、酢酸エチル88.0質量部及びAIBN 0.80質量部の混合物と、を約2時間かけて逐次添加しながら反応容器内の内容物を反応させ、添加終了後に、更に2時間反応させて、反応物(a1)を得た。
その後、反応容器内の反応物(a1)に、酢酸エチル132.0質量部にt-ブチルペルオキシピバレート(重合開始剤)0.60質量部を溶解させて調製した溶液を1時間かけて滴下し、滴下終了後に、更に1.5時間反応させて、反応物(a2)を得た。得られた反応物(a2)を、酢酸エチルを用いて希釈し、固形分が45質量%である(メタ)アクリル系共重合体A-1の溶液を得た。
ここでいう「固形分」とは、(メタ)アクリル系共重合体A-1の溶液から溶媒等の揮発性成分を除いた残りの成分を意味する。以下の(メタ)アクリル系共重合体A-2~A-10の溶液についても同様である。
【0200】
〔製造例A-2~A-10〕
製造例A-1において、(メタ)アクリル系共重合体(A)の単量体組成を、表1に示す単量体組成に変更したこと、並びに、有機溶媒の使用量及び重合開始剤の使用量の少なくとも一方を調整することにより、(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)を、表1に示す重量平均分子量(Mw)に変更したこと以外は、製造例A-1と同様の操作を行い、固形分が45質量%である(メタ)アクリル系共重合体A-2~A-10の各溶液を得た。
【0201】
(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-10の単量体組成(単位:質量%)、ガラス転移温度(Tg、単位:℃)、及び重量平均分子量〔Mw、単位:万(表中では、「×10と表記)〕を表1に示す。
(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-10のガラス転移温度(Tg)は、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)と同様の方法により計算した。また、(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-10の重量平均分子量(Mw)は、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)と同様の方法により測定した。
【0202】
上記にて得られた(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-10のうち、(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-7は、本発明における特定(メタ)アクリル系共重合体(A)に相当する。
【0203】
【表1】
【0204】
表1に記載の各単量体の詳細は、以下に示すとおりである。
「n-BA」:n-ブチルアクリレート
<他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(a)>
「2EHA」:2-エチルヘキシルアクリレート
「MA」:メチルアクリレート
<水酸基を有する単量体>
「4HBA」:4-ヒドロキシブチルアクリレート
<カルボキシ基を有する単量体>
「AA」:アクリル酸
【0205】
表1中、「-」は、該当する欄の単量体を使用していないことを意味する。
表1では、「ガラス転移温度(Tg)」を単に「Tg」と表記し、「重量平均分子量(Mw)」を単に「Mw」と表記した。
【0206】
[(メタ)アクリル系共重合体(B)の製造]
〔製造例B-1〕
温度計、撹拌機、窒素導入管、及び還流冷却器を備えた反応容器内に、酢酸エチル350.0質量部及びt-ブチルアルコール150.0質量部を入れた。
また、別の容器に、n-ブチルメタクリレート(n-BMA)577.8質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA;水酸基を有する単量体)18.0質量部、及びアクリル酸(AA;カルボキシ基を有する単量体)4.2質量部を入れ、混合して単量体混合物とした。
この単量体混合物のうち、20.0質量%を上記反応容器内に添加した。次いで、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル〔AIBN;重合開始剤〕1.80質量部を添加し、窒素雰囲気下で撹拌しながら、反応容器内の内容物温度を85℃に昇温させて、初期反応を開始させた。
初期反応がほぼ終了した後の反応容器内に、残りの単量体混合物80.0質量%と、酢酸エチル80.0質量部及びAIBN 8.0質量部の混合物と、を約2時間かけて逐次添加しながら反応容器内の内容物を反応させ、添加終了後に、更に1時間反応させて、反応物(b1)を得た。
その後、反応容器内の反応物(b1)に、酢酸エチル132.0質量部にt-ブチルペルオキシピバレート(重合開始剤)0.60質量部を溶解させて調製した溶液を1時間かけて滴下し、滴下終了後に、更に2時間反応させて、反応物(b2)を得た。得られた反応物(b2)を、酢酸エチルを用いて希釈し、固形分が45質量%である(メタ)アクリル系共重合体B-1の溶液を得た。
ここでいう「固形分」とは、(メタ)アクリル系共重合体B-1の溶液から溶媒等の揮発性成分を除いた残りの成分を意味する。以下の(メタ)アクリル系共重合体B-2~B-21の溶液についても同様である。
【0207】
〔製造例B-2~B-6、B-10~B-12、及びB-15~B-21〕
製造例B-1において、(メタ)アクリル系共重合体(B)の単量体組成を、表2に示す単量体組成に変更したこと、並びに、有機溶媒の使用量及び重合開始剤の使用量の少なくとも一方を調整することにより、(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)を、表2に示す重量平均分子量(Mw)に変更したこと以外は、製造例B-1と同様の操作を行い、固形分が45質量%である(メタ)アクリル系共重合体B-2~B-6、B-10~B-12、及びB-15~B-21の各溶液を得た。
【0208】
〔製造例B-7~B-9、B-13、及びB-14〕
製造例B-1において、有機溶媒の使用量及び重合開始剤の使用量の少なくとも一方を調整することにより、(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)を、表2に示す重量平均分子量(Mw)に変更したこと以外は、製造例B-1と同様の操作を行い、固形分が45質量%である(メタ)アクリル系共重合体B-7~B-9、B-13、及びB-14の各溶液を得た。
【0209】
(メタ)アクリル系共重合体B-1~B-21の単量体組成(単位:質量%)、ガラス転移温度(Tg、単位:℃)、及び重量平均分子量〔Mw、単位:万(表中では、「×10と表記)〕を表2に示す。
(メタ)アクリル系共重合体B-1~B-20のガラス転移温度(Tg)は、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)と同様の方法により計算した。なお、(メタ)アクリル系共重合体B-21のガラス転移温度(Tg)は、計算しなかった。
また、(メタ)アクリル系共重合体B-1~B-21の重量平均分子量(Mw)は、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)と同様の方法により測定した。
【0210】
上記にて得られた(メタ)アクリル系共重合体B-1~B-21のうち、(メタ)アクリル系共重合体B-1~B-12は、本発明における特定(メタ)アクリル系共重合体(B)に相当する。
【0211】
【表2】
【0212】
表2に記載の各単量体の詳細は、以下に示すとおりである。
「n-BMA」:n-ブチルメタクリレート
<他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(b)>
「EMA」:エチルメタクリレート
「i-BMA」:i-ブチルメタクリレート
「MMA」:メチルメタクリレート
「2EHMA」:2-エチルヘキシルメタクリレート
<その他の単量体>
「CHMA」:シクロヘキシルメタクリレート
「MePEGMA」:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(アルキレンオキシド基の平均付加モル数:23)
<水酸基を有する単量体>
「4HBA」:4-ヒドロキシブチルアクリレート
「2HEA」:2-ヒドロキシエチルアクリレート
「2HEMA」:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
<カルボキシ基を有する単量体>
「AA」:アクリル酸
【0213】
表2中、単量体組成の欄に記載の「-」は、該当する欄の単量体を使用していないことを意味する。
表2では、「ガラス転移温度(Tg)」を単に「Tg」と表記し、「重量平均分子量(Mw)」を単に「Mw」と表記した。
【0214】
[シリコーン系イソシアネート化合物の製造]
撹拌羽根、温度計、窒素導入管、還流冷却器、及び滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、タケネート(登録商標)500〔商品名、キシリレンジイソシアネート(XDI)、三井化学(株)製〕118.0質量部と、SH-3773M〔商品名、ポリエーテル変性シリコーン化合物、東レ・ダウコーニング(株)製〕82.0質量部と、を仕込み、フラスコ内の空気を窒素ガスで置換した後、内温を50℃に昇温させた。内温を50℃に保持しながら、フラスコ内の内容物を6時間撹拌させて、シリコーン系イソシアネート化合物を得た。
【0215】
[粘着剤組成物の調製]
〔実施例1〕
撹拌羽根、温度計、冷却器、及び滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、(メタ)アクリル系共重合体A-1の溶液222.2質量部(固形分として100質量部)と、(メタ)アクリル系共重合体B-1の溶液66.6質量部(固形分として30質量部)と、SH-3773M〔商品名、ポリエーテル変性シリコーン化合物、東レ・ダウコーニング(株)製〕0.30質量部と、LiTFS〔LiCFSO、森田化学工業(株)製〕0.25質量部と、を仕込み、フラスコ内の液温を25℃付近に保持しながら4時間撹拌した。
次いで、フラスコ内に、イソシアネート系架橋剤として、スミジュール(登録商標) N-3300〔商品名、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)の3量体の希釈物、住化コベストロウレタン(株)製〕12.0質量部(固形分として3.00質量部)を添加し、十分に撹拌して、粘着剤組成物を得た。
【0216】
〔実施例2~18〕
実施例2~18では、粘着剤組成物の組成を表3に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、粘着剤組成物を得た。
【0217】
〔実施例19~34〕
実施例19~34では、粘着剤組成物の組成を表4に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、粘着剤組成物を得た。
【0218】
〔比較例1~16〕
比較例1~16では、粘着剤組成物の組成を表5に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、粘着剤組成物を得た。
【0219】
【表3】
【0220】
【表4】
【0221】
【表5】
【0222】
表3~5中、「-」は、該当する成分を含んでいないことを意味する。
【0223】
表3~5に記載の成分の詳細は、以下の通りである。
<イソシアネート系架橋剤>
「N-3300」〔商品名:スミジュール(登録商標) N-3300、住化コベストロウレタン(株)製〕:ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)の3量体の4倍希釈物、固形分:25質量%
「L-45E」〔商品名:コロネート(登録商標) L-45E、東ソー(株)製〕:トリレンジイソシアネート(TDI)とトリメチロールプロパン(TMP)とのアダクト体、固形分:45質量%
「N-3400」〔商品名:デスモジュール(登録商標) N-3400、住化コベストロウレタン(株)製〕:ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)の2量体の4倍希釈物、固形分:25質量%
「D-120」〔商品名:タケネート(登録商標) D-120、三井化学(株)製〕:キシリレンジイソシアネート(XDI)とトリメチロールプロパン(TMP)とのアダクト体、固形分:75質量%
【0224】
<その他の成分>
「SH-3773M」〔商品名、東レ・ダウコーニング(株)製〕:ポリエーテル変性シリコーン化合物(ポリアルキレンオキシ基の末端に反応性基としてヒドロキシ基を有する)、他のシリコーン化合物
「LiTFS」〔森田化学工業(株)製〕:トリフルオロメタンスルホン酸リチウム〔LiCFSO〕、イオン性化合物
「DOTDL」:ジオクチル錫ジラウレート、架橋触媒
「アルミキレート」〔川研ファインケミカル(株)〕:アルミニウムトリスアセチルアセトネート、金属キレート系架橋剤
「TETRAD-X」〔商品名:TETRAD(登録商標)-X、三菱ガス化学(株)製〕:エポキシ系架橋剤
【0225】
[評価]
上記にて調製した粘着剤組成物を用い、以下の評価を行った。
結果を表6~8に示す。
【0226】
1.剥離力
<剥離力評価用保護フィルムの作製>
基材としてのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム〔商品名:テイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルム、型番:G2、厚さ:38μm、帝人フィルムソリューション(株)製〕上に、乾燥後の塗布量が15g/mとなるように、粘着剤組成物を塗布し、塗布膜を形成した。次いで、形成した塗布膜を、100℃で60秒間、熱風循環式乾燥機を用いて乾燥させた。
次いで、乾燥させた粘着膜の露出した面を、シリコーン系剥離剤で表面処理された剥離フィルム〔商品名:フィルムバイナ(登録商標)100E-0010N023、厚さ:100μm、藤森工業(株)製〕の表面処理面に重ね合わせて積層体とした。この積層体を加圧ニップロール対に通して圧着して貼り合わせた後、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下で96時間養生して架橋反応を進行させ、基材/粘着剤層/剥離フィルムの積層構造を有する剥離力評価用保護フィルムを得た。
【0227】
(1)低速剥離力
上記にて作製した剥離力評価用保護フィルムを25mm×150mmの大きさに切断し、剥離力評価用保護フィルム片を準備した。
次いで、準備した剥離力評価用保護フィルム片から剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の面を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム〔商品名:コスモシャイン(登録商標) A4300、厚さ:300μm、東洋紡(株)製〕の面に重ね合わせた後、卓上ラミネート機を用いて圧着して試験サンプルとした。
この試験サンプルを、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下で24時間放置した。次いで、測定装置として、シングルコラム型材料試験機〔型番:STA-1225、(株)エー・アンド・デイ製〕を用い、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、剥離速度0.3m/分の条件にて、PETフィルムから剥離力評価用保護フィルム片(粘着剤層/基材)を長辺(150mm)方向に180°剥離したときの剥離力(単位:N/25mm)を測定した。そして、下記の評価基準に従って、低速剥離力を評価した。
評価結果が「AA」、「A」、又は「B」であれば、低速剥離力が優れると判断した。
【0228】
-評価基準-
AA:剥離力が0.20N/25mm以上である。
A:剥離力が0.15N/25mm以上0.20N/25mm未満である。
B:剥離力が0.10N/25mm以上0.15N/25mm未満である。
C:剥離力が0.10N/25mm未満である。
【0229】
(2)高速剥離力
上記の「(1)低速剥離力」と同様の手順で試験サンプルを得た。
この試験サンプルを、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下で24時間放置した。次いで、測定装置として、剥離試験機〔型番:横型TE-720、テスター産業(株)製〕を用い、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、剥離速度30m/分の条件にて、PETフィルムから剥離力評価用保護フィルム片(粘着剤層/基材)を長辺(150mm)方向に180°剥離したときの剥離力(単位:N/25mm)を測定した。そして、下記の評価基準に従って、高速剥離力を評価した。
評価結果が「AA」、「A」、又は「B」であれば、高速剥離力が優れると判断した。
【0230】
-評価基準-
AA:剥離力が0.50N/25mm未満である。
A:剥離力が0.50N/25mm以上1.00N/25mm未満である。
B:剥離力が1.00N/25mm以上1.50N/25mm未満である。
C:剥離力が1.50N/25mm以上である。
【0231】
(3)低速剥離力と高速剥離力とのバランス
上記の「(1)低速剥離力」にて測定された低速剥離力の値と、上記の「(2)高速剥離力」にて測定された高速剥離力の値と、に基づいて、低速剥離力と高速剥離力とのバランスを評価した。
具体的には、低速剥離力の値を高速剥離力の値で除し、小数点以下3桁目を四捨五入した値に基づき、下記の評価基準に従って、低速剥離力と高速剥離力とのバランスを評価した。
評価結果が「AA」、「A」、又は「B」であれば、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好であると判断した。
【0232】
-評価基準-
AA:「低速剥離力/高速剥離力」が0.30以上である。
A:「低速剥離力/高速剥離力」が0.20以上0.30未満である。
B:「低速剥離力/高速剥離力」が0.10以上0.20未満である。
C:「低速剥離力/高速剥離力」が0.10未満である。
【0233】
2.ジッピング現象の抑制
上記の「(2)高速剥離力」において、PETフィルムから剥離力評価用保護フィルム片(粘着剤層/基材)を剥離したときのジッピング音の有無及び程度を確認した。そして、下記の評価基準に従って、ジッピング現象の抑制を評価した。
評価結果が「AA」、「A」、又は「B」であれば、高速で剥離した場合に発生し得るジッピング現象が十分に抑制されていると判断した。
【0234】
-評価基準-
AA:音が全く聞こえない。
A:かすかに音が聞こえる。
B:やや音が聞こえる。
C:大きな音が聞こえる。
【0235】
3.透明性
<透明性評価用保護フィルムの作製>
基材としてのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム〔商品名:コスモシャイン(登録商標) A4100、厚さ:100μm、東洋紡(株)製〕上に、乾燥後の塗布量が40g/mとなるように、粘着剤組成物を塗布し、塗布膜を形成した。次いで、形成した塗布膜を、100℃で60秒間、熱風循環式乾燥機を用いて乾燥させ、PETフィルム上に粘着膜を形成した。
次いで、PETフィルム上に形成された粘着膜の露出した面を、シリコーン系剥離剤で表面処理された剥離フィルム〔商品名:フィルムバイナ(登録商標)100E-0010N023、厚さ:100μm、藤森工業(株)製〕の表面処理面に重ね合わせて積層体とした。この積層体を加圧ニップロール対に通して圧着して貼り合わせた後、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下で96時間養生して架橋反応を進行させ、基材/粘着剤層/剥離フィルムの積層構造を有する透明性評価用保護フィルムを得た。
【0236】
上記にて作製した透明性評価用保護フィルムを25mm×150mmの大きさに切断し、透明性評価用保護フィルム片とした。この透明性評価用保護フィルム片から剥離フィルムを剥離し、粘着剤層を露出させ、ヘイズの測定に供した。ヘイズの測定には、日本電色工業(株)製のヘーズメーター(型番:NDH 5000SP)を用いた。
測定されたヘイズの値(単位:%)に基づき、下記の評価基準に従って、透明性を評価した。
評価結果が「AA」、「A」、又は「B」であれば、透明性が優れると判断した。
【0237】
-評価基準-
AA:ヘイズ値が1.0%未満である。
A:ヘイズ値が1.0%以上1.5%未満である。
B:ヘイズ値が1.5%以上2.0%未満である。
C:ヘイズ値が2.0%以上である。
【0238】
【表6】
【0239】
【表7】
【0240】
【表8】
【0241】
表6及び表7に示すように、n-ブチルアクリレートに由来する構成単位及び水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含み、ガラス転移温度が-40℃以下であり、かつ、重量平均分子量が20万以上200万以下の範囲である(メタ)アクリル系共重合体(A)〔即ち、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)〕と、n-ブチルメタクリレートに由来する構成単位及び水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含み、ガラス転移温度が0℃以上45℃以下の範囲であり、かつ、重量平均分子量が1万以上20万以下の範囲である特定(メタ)アクリル系共重合体(B)〔即ち、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)〕と、イソシアネート系架橋剤と、を含み、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、1質量部以上70質量部以下の範囲である実施例1~実施例34の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、いずれも低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好であり、高速で剥離した場合に起こり得るジッピング現象が十分に抑制され、かつ、透明性に優れることが確認された。
【0242】
一方、表8に示すように、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)を含まない比較例1の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、低速剥離力が顕著に低く、かつ、高速剥離力が顕著に高く、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好ではないことが確認された。
(メタ)アクリル系共重合体(A)がn-ブチルアクリレートに由来する構成単位を含まない比較例2の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、ヘイズが顕著に高く、透明性に劣ることが確認された。
(メタ)アクリル系共重合体(A)が水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含まない比較例3の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高速剥離力が顕著に高く、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好ではないことが確認された。
(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)が-40℃を超える比較例4の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高速剥離力が顕著に高く、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好ではないことが確認された。
【0243】
(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量が20万を超える比較例5の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高速で剥離した場合に起こり得るジッピング現象を十分に抑制できないことが確認された。また、比較例5の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、ヘイズが顕著に高く、透明性に劣ることが確認された。
(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量が1万未満である比較例6の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、低速剥離力が顕著に低く、かつ、高速剥離力が顕著に高く、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好ではないことが確認された。
(メタ)アクリル系共重合体(B)がn-ブチルメタクリレートに由来する構成単位を含まない比較例7の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、ヘイズが顕著に高く、透明性に劣ることが確認された。
(メタ)アクリル系共重合体(B)が水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含まない比較例8の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高速剥離力が顕著に高く、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好ではないことが確認された。
【0244】
n-ブチルメタクリレートに由来する構成単位及び水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含まず、ガラス転移温度(Tg)が45℃を超え、かつ、重量平均分子量が1万未満である(メタ)アクリル系共重合体(B)を含む比較例9の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高速で剥離した場合に起こり得るジッピング現象を十分に抑制できないことが確認された。また、比較例9の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、ヘイズが顕著に高く、透明性に劣ることが確認された。
n-ブチルメタクリレートに由来する構成単位を含まず、かつ、ガラス転移温度(Tg)が45℃を超える(メタ)アクリル系共重合体(B)を含む比較例10の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高速で剥離した場合に起こり得るジッピング現象を十分に抑制できないことが確認された。また、比較例10の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、ヘイズが顕著に高く、透明性に劣ることが確認された。
(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度(Tg)が45℃を超える比較例11の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高速で剥離した場合に起こり得るジッピング現象を十分に抑制できないことが確認された。また、比較例11の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、ヘイズが顕著に高く、透明性に劣ることが確認された。
(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度(Tg)が0℃未満である比較例12の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、低速剥離力が顕著に低く、かつ、高速剥離力が顕著に高く、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好ではないことが確認された。
【0245】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して70質量部を超える比較例13の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高速で剥離した場合に起こり得るジッピング現象を十分に抑制できないことが確認された。また、比較例13の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、ヘイズが顕著に高く、透明性に劣ることが確認された。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して1質量部未満である比較例14の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、低速剥離力が顕著に低く、かつ、高速剥離力が顕著に高く、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好ではないことが確認された。
イソシアネート系架橋剤を含まない比較例15の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高速で剥離した場合に起こり得るジッピング現象を十分に抑制できないことが確認された。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)が、アルキレンオキシド鎖を含み、かつ、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含まない比較例16の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高速剥離力が顕著に高く、低速剥離力と高速剥離力とのバランスが良好ではないことが確認された。