IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 7Gaa株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両用の無線ネットワーク環境提供装置 図1
  • 特許-車両用の無線ネットワーク環境提供装置 図2
  • 特許-車両用の無線ネットワーク環境提供装置 図3
  • 特許-車両用の無線ネットワーク環境提供装置 図4
  • 特許-車両用の無線ネットワーク環境提供装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】車両用の無線ネットワーク環境提供装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/24 20090101AFI20220531BHJP
   H04W 88/08 20090101ALI20220531BHJP
   H04W 4/42 20180101ALI20220531BHJP
   H04W 84/00 20090101ALI20220531BHJP
   H04B 10/291 20130101ALI20220531BHJP
   H04B 10/2575 20130101ALI20220531BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20220531BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220531BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20220531BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20220531BHJP
   H01S 5/042 20060101ALI20220531BHJP
   B60L 53/12 20190101ALI20220531BHJP
【FI】
H04W16/24
H04W88/08
H04W4/42
H04W84/00 110
H04B10/291
H04B10/2575 120
H02J50/10
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H01L31/02 C
H01L31/10 A
H01S5/042 630
B60L53/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021578145
(86)(22)【出願日】2021-09-22
(86)【国際出願番号】 JP2021034801
【審査請求日】2021-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2020161498
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519441523
【氏名又は名称】7Gaa株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002181
【氏名又は名称】特許業務法人IP-FOCUS
(72)【発明者】
【氏名】黒川 悟
【審査官】中野 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-198445(JP,A)
【文献】特開2012-160936(JP,A)
【文献】実開平05-019053(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04B 10/291
H04B 10/2575
H04W 4/00-99/00
H02J 50/10
H02J 7/00
H01L 31/02
H01L 31/10
H01S 5/042
B60L 53/12
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に対して無線ネットワーク環境を提供する装置であって、
前記車両に設置され、前記車両内に無線ネットワーク環境を形成する車内通信ユニットと、
前記車両の通行路に沿って複数設置され、前記車内通信ユニットと無線で通信が可能な車両通信ユニットと、
光ファイバケーブルと、
前記光ファイバケーブルの端部に接続され、光信号と電気信号とを変換する光信号変換モジュールと、
インターネット又は電話回線網を含むネットワークに接続される基地局と複数の前記車両通信ユニットとを接続する中継装置と、を備え、
隣接する前記車両通信ユニットが、通信可能領域が一部重複して連続する距離に配置され、
前記車両通信ユニットと前記中継装置とが前記光信号変換モジュール及び前記光ファイバケーブルによって接続されており、
前記光信号変換モジュールは、
光信号を電気信号に変換するO/E変換部と、電気信号を光信号に変換するE/O変換部とを有し、
前記O/E変換部は、フォトダイオードを用いて光信号を電気信号に変換するものであり、
前記E/O変換部は、半導体レーザを用いて電気信号を光信号に変換するものであり、
前記E/O変換部は、
一端が電気信号入力部であり、他端が終端部である第1線路と、
一端が前記半導体レーザであり、他端が前記半導体レーザを駆動するために直流電源に接続され電圧を印加する電源接続部である第2線路と、
前記第1線路と前記第2線路とが、所定の空間を介して、使用周波数波長に対して、所定の電気長で電磁結合する結合部と、を有するものであることを特徴とする無線ネットワーク環境提供装置。
【請求項2】
車両に対して無線ネットワーク環境を提供する装置であって、
前記車両に設置され、前記車両内に無線ネットワーク環境を形成する車内通信ユニットと、
前記車両の通行路に沿って複数設置され、前記車内通信ユニットと無線で通信が可能な車両通信ユニットと、
光ファイバケーブルと、
前記光ファイバケーブルの端部に接続され、光信号と電気信号とを変換する光信号変換モジュールと、を備え、
隣接する前記車両通信ユニットが、通信可能領域が一部重複して連続する距離に配置され、
前記車両通信ユニットが前記光ファイバケーブルと前記光信号変換モジュールによって相互に接続され、
複数の前記車両通信ユニットのうち、少なくともいずれか一つの前記車両通信ユニットが、インターネット又は電話回線網を含むネットワークに接続される基地局と接続されており、
前記光信号変換モジュールは、
光信号を電気信号に変換するO/E変換部と、電気信号を光信号に変換するE/O変換部とを有し、
前記O/E変換部は、フォトダイオードを用いて光信号を電気信号に変換するものであり、
前記E/O変換部は、半導体レーザを用いて電気信号を光信号に変換するものであり、
前記E/O変換部は、
一端が電気信号入力部であり、他端が終端部である第1線路と、
一端が前記半導体レーザであり、他端が前記半導体レーザを駆動するために直流電源に接続され電圧を印加する電源接続部である第2線路と、
前記第1線路と前記第2線路とが、所定の空間を介して、使用周波数波長に対して、所定の電気長で電磁結合する結合部と、を有するものであることを特徴とする無線ネットワーク環境提供装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の無線ネットワーク環境提供装置であって、
前記車両通信ユニット毎に、前記車両通信ユニットに電力を供給し、非接触で電力を受給可能な車両通信電源が設けられ、
前記車両に非接触で前記車両通信電源に対して電力供給を行う非接触電力供給手段が設けられていることを特徴とする無線ネットワーク環境提供装置。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の無線ネットワーク環境提供装置であって、
前記車内通信ユニット及び前記車両通信ユニットは、ローカル5Gとして割り当てられている周波数帯を使用可能であることを特徴とする無線ネットワーク環境提供装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道車両等の車両に無線ネットワーク環境を供給する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、Wi-Fi(登録商標)を含む無線ネットワークは、主に施設内で用いられる他、電車等の軌道車両においても用いられている。例えば、特許文献1においては、鉄道沿線に点在する無線LAN地上通信装置と、列車の車上通信装置との通信に関し、動的に接続及び切断を行うことで必要な通信相手との通信経路を確保する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-226670公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
当該特許文献1に記載の技術は、列車に設けられた車上通信装置が、駅や踏切等に設置された複数の地上通信装置に接続する際に、予め地上通信装置テーブルを準備して地上通信装置の通信区間を記憶しておき、現在位置が通信区間内にある地上通信装置と接続し、通信区間内にない場合に地上通信装置とは通信を切断することにより、車上通信装置と地上通信装置との接続を行っている。
【0005】
ところで、現在では通信に使用される周波数は年々高周波化が進んでいる。例えば、いわゆるローカル5G(5G:5th Generation)と呼ばれる通信方式が脚光を浴びている。総務省によれば、ローカル5Gは、地域や産業の個別のニーズに応じて地域の企業や自治体等の様々な主体が、自らの建物内や敷地内でスポット的に柔軟に構築できる通信手段として、次世代の通信技術として期待が寄せられている。
【0006】
このように、通信周波数が高周波化している現状においては、特許文献1に記載の技術では、地上通信装置から車上通信装置に接続可能な通信区間が狭くなる。例えば、4G(4th Generation)の周波数帯域であれば、1箇所の地上通信装置で数Kmの範囲で通信環境をカバーできるが、5Gの周波数帯域では、通信環境は100m程度の範囲でしか実現することができない。従って、特許文献1に記載の技術で高周波信号の通信を行うためには、地上通信装置の数を大幅に増やす必要があるが、そのための設備費等のコストが高騰するため、現実的ではない。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、車両の無線ネットワーク環境の改善を目的とし、さらに詳細には、高周波信号であっても軌道車両等の車両に無線ネットワーク環境を小型軽量で簡易な機器(基地局相当)を多数配置することで、低コストで実現することができる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様の無線ネットワーク環境提供装置は、車両に対して無線ネットワーク環境を提供する装置であって、前記車両に設置され、前記車両内に無線ネットワーク環境を形成する車内通信ユニットと、前記車両の通行路に沿って複数設置され、前記車内通信ユニットと無線で通信が可能な車両通信ユニットと、光ファイバケーブルと、前記光ファイバケーブルの端部に接続され、光信号と電気信号とを変換する光信号変換モジュールと、インターネット又は電話回線網等のネットワークに接続される基地局と複数の前記車両通信ユニットとを接続する中継装置と、を備え、隣接する前記車両通信ユニットが、通信可能領域が一部重複して連続する距離に配置され、前記車両通信ユニットと前記中継装置とが前記光信号変換モジュール及び前記光ファイバケーブルによって接続されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の第1の態様の無線ネットワーク環境提供装置によれば、複数の車両通信ユニットが光ファイバケーブルと光信号変換モジュールによって中継装置と接続され、中継装置を介してネットワークに接続される。また、隣接する車両通信ユニットは、通信可能領域が一部重複して連続する距離に配置される。当該構成により、使用される信号が高周波信号であっても、車内通信ユニットに対して連続した無線ネットワーク環境を提供することができる。また、1箇所の基地局に対して複数の車両通信ユニットを設けることができるので、高周波信号であっても基地局を増やすことなく車両に無線ネットワーク環境を提供することができる。
【0010】
本発明の第2の態様の無線ネットワーク環境提供装置は、車両に対して無線ネットワーク環境を提供する装置であって、前記車両に設置され、前記車両内に無線ネットワーク環境を形成する車内通信ユニットと、前記車両の通行路に沿って複数設置され、前記車内通信ユニットと無線で通信が可能な車両通信ユニットと、光ファイバケーブルと、前記光ファイバケーブルの端部に接続され、光信号と電気信号とを変換する光信号変換モジュールと、を備え、隣接する前記車両通信ユニットが、通信可能領域が一部重複して連続する距離に配置され、前記車両通信ユニットが前記光ファイバケーブルと前記光信号変換モジュールによって相互に接続され、複数の前記車両通信ユニットのうち、少なくともいずれか一つの前記車両通信ユニットが、インターネット又は電話回線網等のネットワークに接続される基地局と接続されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の態様の無線ネットワーク環境提供装置によれば、複数の車両通信ユニットが光ファイバケーブルと光信号変換モジュールによって相互に接続され、少なくともいずれか一つの車両通信ユニットがネットワークに接続される。また、隣接する車両通信ユニットは、通信可能領域が一部重複して連続する距離に配置される。当該構成により、使用される信号が高周波信号であっても、車内通信ユニットに対して連続した無線ネットワーク環境を提供することができる。また、1箇所の基地局に対して複数の車両通信ユニットを設けることができるので、高周波信号であっても基地局を増やすことなく車両に無線ネットワーク環境を提供することができる。
【0012】
本発明の第1及び第2の態様の無線ネットワーク環境提供装置においては、前記光信号変換モジュールを、光信号を電気信号に変換するO/E変換部と、電気信号を光信号に変換するE/O変換部とを有し、前記O/E変換部を、フォトダイオードを用いて光信号を電気信号に変換するものとし、前記E/O変換部を、半導体レーザを用いて電気信号を光信号に変換するものとしている
【0013】
このように、光信号を電気信号に変換するO/E変換部にフォトダイオードを用い、電気信号に光信号に変換するE/O変換部に半導体レーザを用いることにより、低消費電力で無線ネットワーク環境を提供することができる。
【0014】
また、本発明の第1及び第2の態様の無線ネットワーク環境提供装置においては、前記E/O変換部を、一端が電気信号入力部であり、他端が終端部である第1線路と、一端が前記半導体レーザであり、他端が前記半導体レーザを駆動するために直流電源に接続され電圧を印加する電源接続部である第2線路と、前記第1線路と前記第2線路とが、所定の空間を介して、使用周波数波長に対して、所定の電気長で電磁結合する結合部と、を有するものとしている
【0015】
当該構成により、電気信号における高周波信号を半導体レーザにのみ伝搬するように構成することができるので、インダクタ等の部品を要する整合回路を設ける必要がなくなる。従って、高周波の電気信号を簡易な構成で光信号に変換することができる。
【0016】
また、本発明の第1及び第2の態様の無線ネットワーク環境提供装置においては、前記車両通信ユニット毎に、前記車両通信ユニットに電力を供給し、非接触で電力を受給可能な車両通信電源を設け、前記車両に非接触で前記車両通信電源に対して電力供給を行う非接触電力供給手段を設けるようにしてもよい。
【0017】
本発明における車両通信ユニットは、上記構成によって低消費電力とすることができるので、車両通信電源のようなポータブル電源を用いることによっても稼働させることができる。
【0018】
また、本発明の第1及び第2の態様の無線ネットワーク環境提供装置においては、前記車内通信ユニット及び前記車両通信ユニットは、ローカル5Gとして割り当てられている周波数帯を使用可能とすることが好ましい。当該構成によれば、いわゆるローカル5Gと呼ばれる無線の周波数帯(例えば4.6~4.8GHz及び28.2~29.1GHz)を用いることで、通信キャリアが使用する周波数帯と分離可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高周波信号であっても車両に低コストで無線ネットワーク環境を実現することができる装置を提供することができる。具体的には、無線信号として到達距離が数10m程度の高周波信号であっても軌道車両に無線ネットワーク環境を実現できる装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の本実施形態の無線ネットワーク環境提供装置を備えた軌道及び軌道車両を示す説明図であり、(A)は一部拡大図、(B)は広域の構成を示す説明図。
図2図1の無線ネットワーク環境提供装置の機能的構成を示す説明図。
図3】(A)は本実施形態の装置に用いられる光信号変換モジュールの外観を示す説明図、(B)はその内部構造を示す説明図。
図4】光信号変換モジュールのE/O変換部の回路の概要を示す説明図。
図5】第2の実施形態の無線ネットワーク環境提供装置を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態の一例である無線ネットワーク環境提供装置について、図1図5を参照して説明する。図1(A)に示すように、第1の実施形態である無線ネットワーク環境提供装置1は、路面軌道(通行路)Rの上を走行する路面電車T(車両)に無線ネットワーク環境を提供する装置である。
【0022】
本実施形態の無線ネットワーク環境提供装置1は、路面軌道Rに沿って一対の路面軌道Rの間の地中に複数設置された車両通信ユニット10と、路面電車T内に設置される車内通信ユニット20を備えている。隣接する車両通信ユニット10は、それぞれの通信可能領域Fが一部重複して連続する距離に配置されている。
【0023】
図1(B)に示すように、本実施形態においては、車両通信ユニット10は、複数のユニット(本実施形態では9ユニット)が中継装置30に接続されている。各車両通信ユニット10と中継装置30は、光ファイバケーブル41及びその両端に接続された光信号変換モジュール42から構成される光データリンク40により接続されている。
【0024】
また、中継装置30は基地局31に接続され、基地局31を介してインターネット、又は電話回線網等のネットワークに接続されている。中継装置30と基地局31は、光ファイバケーブル32及びその両端に接続された光信号変換モジュール42により接続されている。
【0025】
路面電車Tは、パンタグラフPによって架線Sから電力が供給されている。また、路面電車T内には、車内通信ユニット20の他に、非接触電力供給モジュール(非接触電力供給手段)22が設けられている。これら車内通信ユニット20及び非接触電力供給モジュール22には、架線Sから得られた電力が供給される。また、車内に設置された電池により電力が供給されるものであってもよい。
【0026】
図2を参照して、車両通信ユニット10は、車内通信ユニット20と無線で通信を行う車両通信モジュール11を備えている。この車両通信ユニット10には、光データリンク40の光信号変換モジュール42が接続されている。
【0027】
車両通信ユニット10には、車両通信電源12が接続されている。この車両通信電源12は、車両通信ユニット10内の車両通信モジュール11及び光信号変換モジュール42に電力を供給する電源である。本実施形態では、この車両通信電源12は、非接触で外部からの電源が受給可能な非接触電源装置であり、内部に図示しないバッテリも備えている。
【0028】
路面電車T内に設けられた車内通信ユニット20は、車両通信ユニット10の車両通信モジュール11と無線で通信を行う車両通信モジュール21を備えている。また、車両通信モジュール21と接続され、路面電車T内に無線ネットワーク環境を提供するWi-Fi6用ルータ(以下単に「ルータ」という)23を備えている。この車内通信ユニット20は、路面電車T内の電源から電力が供給される。
【0029】
ここで、車両通信モジュール11及び車両通信モジュール21は、一般に用いられている高速通信用のルータを用いてもよく、5G或いは4G等の電話回線用の通信機器であってもよい。なお、Wi-Fiは「Wireless Fidelity」が語源の無線ネットワークの名称(登録商標)であり、Wi-Fi6は「Wi-Fiの規格の第6世代目」を意味し、正式な規格名は「IEEE 802.11ax」である。
【0030】
本実施形態において、車両通信モジュール11、車両通信モジュール21及びルータ23は、ローカル5Gに割り当てられた周波数帯(4.6~4.8GHz及び28.2~29.1GHz)が使用可能であり、いわゆるローカル5Gへの対応が可能となる。これにより、大手通信キャリアの使用周波数帯と異なる周波数帯で無線通信を行うことができる。
【0031】
次に、本実施形態の光データリンク40について説明する。光データリンク40は、図3(A)に示すように、光ファイバケーブル41の両端に光信号変換モジュール42を接続したものである。光ファイバケーブル41は、1本又は2本の光ファイバであり、本実施形態では2本の光ファイバを備えたケーブルとなっている。
【0032】
光信号変換モジュール42は、図3(B)に示すように、光信号を電気信号に変換するO/E変換部43と、電気信号を光信号に変換するE/O変換部44とを有している。本実施形態の光信号変換モジュール42は、図3(B)に示すように、それぞれがO/E変換部43とE/O変換部44を備える構成としている。
【0033】
O/E変換部43は、図3(B)に示すように、光ファイバケーブル41から受信した光信号を、フォトダイオード45を用いて電気信号に変換し、受信回路47で処理する。
【0034】
また、E/O変換部44は、図3(B)に示すように、電気信号を送信回路48で処理し、半導体レーザ46を用いて光信号に変換する。このE/O変換部44を、さらに具体的に示すと、図4の構成となる。
【0035】
図4に示すように、送信回路48は、回路基板441に、数GHzの高周波の電気信号が入力される電気信号入力部442と終端抵抗を含む終端部443が両端に接続された第1線路444を有している。
【0036】
また、E/O変換部44は、直流電源が接続される電源接続部445と、半導体レーザ46が両端に接続された第2線路446を備えている。また、第1線路444と第2線路446は、所定の空間Dを介して、使用周波数波長に対して所定の電気長Lで電磁結合する結合部447を備えている。
【0037】
電気信号入力部442は、コネクタ等を備え、接続されるネットワーク機器等からの信号が入力される。第1線路444及び第2線路446は、電磁波を伝達する伝送路であり、マイクロストリップ線路、或いはコプレーナ線路等の伝送路で形成される。本実施形態において、終端部443の終端抵抗は各線路の特性インビーダンス(例えば50Ω)としている。
【0038】
電源接続部445は、直流電源に接続され、半導体レーザ46を駆動する電圧が印加される。半導体レーザ46は、本実施形態においては、消費電力の少ない垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)を採用している。
【0039】
結合部447は、第1線路444と第2線路446との間に電磁結合可能な所定の空間Dを設けて、両者が平行となるように配置して形成している。本実施形態では、電気長Lを使用中心周波数の波長λの1/4となるように形成している。また、本実施形態においては、第2線路446にバイパスコンデンサ448を設けて、電源接続部445の電圧の変動を防止している。
【0040】
図4に示すE/O変換部44は、第1線路444と第2線路446との間のカップリング特性の減衰量がアイソレーション特性の減衰量よりも小さい周波数帯域を使用する場合の例である。逆に、第1線路444と第2線路446との間のカップリング特性の減衰量がアイソレーション特性の減衰量よりも大きい周波数帯域を使用する場合は、図4の電気信号入力部442の箇所に終端部443を配置し、図4の終端部443の箇所に電気信号入力部442を配置する。また、この場合、電気長Lは、使用周波数波長λの1/4未満となるように形成する。
【0041】
ここで、第1線路444と第2線路446との間のカップリング特性とは、電気信号入力部442から半導体レーザ46に伝搬する信号の出力の特性であり、アイソレーション特性とは、電気信号入力部442から電源接続部445に伝搬する信号の出力の特性である。これらの値は、横軸を周波数(GHz)、縦軸を減衰量(dB)として、それぞれの測定値をプロットすることにより把握することができる。
【0042】
以上の構成を有する光データリンク40としては、7Gaa株式会社製の双方向タイプの「XGoc」(TM)を用いることができる。
【0043】
中継装置30は、光スイッチ(図示省略)を含む装置であり、光ファイバケーブル32と、複数の光信号変換モジュール42とを相互に接続する装置である。当該中継装置30は、一般に広く用いられている光スイッチと、当該光スイッチを駆動するための電源等で構成される。本実施形態では、光ファイバケーブル32は、長距離の信号送信が可能なシングルモード光ファイバを用いている。
【0044】
次に、図2を参照して、本実施形態の無線ネットワーク環境提供装置1の作動について説明する。図2における矢印Aは、路面電車Tの進行方向を表している。路面電車Tが図2の矢印Aの方向に進行中であるときは、架線Sから車内通信ユニット20及び非接触電力供給モジュール22に電源が供給されている。または、車内に電池による電源が設置されていてもよく、架線からの電源供給がない場合でもよい。
【0045】
非接触電力供給モジュール22によって電力が供給可能な領域に車両通信電源12が存在するときは、非接触電力供給モジュール22から車両通信電源12に電力が供給される。この車両通信電源12からの電力によって、車両通信ユニット10内の車両通信モジュール11及び当該車両通信ユニット10に接続されている光信号変換モジュール42に電力が供給される。なお、図2は車両通信電源12の上を非接触電力供給モジュール22が通過した後の状態を示している。
【0046】
車両通信ユニット10は、光データリンク40によって中継装置30と接続されており、中継装置30は光信号変換モジュール42及び光ファイバケーブル32によって基地局31に接続されている。これにより、車両通信ユニット10内の車両通信モジュール11によって、通信可能領域F内にネットワークへの接続のための無線ネットワーク環境が構築される。
【0047】
図2に示すように、車両通信モジュール11の通信可能領域F内に車内通信ユニット20内の車両通信モジュール21が位置しているときは、車両通信モジュール11と車両通信モジュール21との間で信号の送受信が可能となる。
【0048】
路面電車T内では、車両通信モジュール21とルータ23との間で通信が行われ、ルータ23によって路面電車T内に無線ネットワーク環境が構築される。これにより、路面電車T内の乗客は、自己のスマートフォン等を用いてWi-Fi等の無線通信を利用することができる。
【0049】
このように、本実施形態の無線ネットワーク環境提供装置によれば、図1に示すように、高周波通信環境においても基地局31を増設することなく、路面軌道Rにアクセスポイントとして車両通信ユニット10を増設することができる。また、車両通信ユニット10は、低消費電力で作動させることができるため、大がかりな電源工事等も不要となる。
【0050】
また、本実施形態における光データリンク40によれば、O/E変換部43はフォトダイオード45を用いており、E/O変換部44は半導体レーザ46(例えばVCSEL)を用いているため、光データリンク40を低消費電力で作動させることができる。
【0051】
また、本実施形態の光データリンク40は、E/O変換部44は図4に示す回路、即ち第1線路444、第2線路446及び結合部447という構成となっているため、高周波信号であっても、正確に第2線路446に高周波信号を伝搬させることができる。また、当該構成により、電源接続部445側への高周波信号の流入が阻止されるため、インダクタ等を伴う整合回路を設ける必要が無い。
【0052】
次に、第2の実施形態であるの無線ネットワーク環境提供装置2について、図5を参照して説明する。本実施形態において、第1の実施形態の無線ネットワーク環境提供装置1と同様の構成については、同様の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0053】
本実施形態の無線ネットワーク環境提供装置2は、路面軌道Rに沿って一対の路面軌道Rの間の地中に設けられる複数の車両通信ユニット10と、路面電車T内に設置される車内通信ユニット20を備えている。隣接する車両通信ユニット10は、光データリンク40で相互に接続されている。また、末端にある車両通信ユニット10は、基地局31に接続され、この基地局31を介してインターネット等のネットワークに接続されている。
【0054】
光データリンク40は、第1の実施形態と同様に、光信号変換モジュール42がO/E変換部43とE/O変換部44を備えているため、各車両通信ユニット10間で信号の送受信が可能となる。これにより、各車両通信ユニット10において、通信可能領域Fを構築することができる。
【0055】
この第2の実施形態における無線ネットワーク環境提供装置2のように、車両通信ユニット10を光データリンク40で相互に連結することにより、中継装置30を用いることなく、路面軌道Rに沿って無線ネットワーク環境を構築することができる。
【0056】
なお、上記実施形態においては、車両として路面電車Tを例にして説明したが、軌道車料以外の車両や、通常の電車やモノレール等の軌道車両についても適用することができる。また、車両通信ユニット10は、一対の路面軌道Rの間の地下に設けているが、これに限らず、車内通信ユニット20と無線通信が可能であれば、一対の路面軌道Rの外側に設けてもよく、地上に設けてもよい。
【0057】
また、上記実施形態において、光データリンク40は、光信号変換モジュール42が、光信号を電気信号に変換するO/E変換部43と、電気信号を光信号に変換するE/O変換部44とを1つの筐体にまとめた構成としているが、これに限らず、光ファイバケーブル41の一端にO/E変換部43を設け、他端にE/O変換部44を設けた構成としてもよい。この場合、車両通信ユニット10と中継装置30とを2本の光信号変換モジュールを逆向きに用いて信号の入出力を行うようにすればよい。また、中継装置30と基地局31との接続についても同様である。
【0058】
また、上記実施形態では、光信号変換モジュール42と光ファイバケーブル41とを組み合わせて光データリンク40としているが、これに限らず、これらを別個にしてもよい。また、光信号変換モジュール42を車両通信ユニット10や中継装置30に内蔵するようにしてもよい。この場合、光ファイバケーブル41を車両通信ユニット10や中継装置30に内蔵された光信号変換モジュール42に接続すればよい。
【0059】
また、上記実施形態において、車両通信電源12に太陽光発電装置を併設して、当該太陽光発電装置から電力を供給するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1,2…無線ネットワーク環境提供装置
10…車両通信ユニット
11…車両通信モジュール
12…車両通信電源
20…車内通信ユニット
21…車両通信モジュール
22…非接触電力供給モジュール
23…ルータ
30…中継装置
31…基地局
32…光ファイバケーブル
40…光データリンク
41…光ファイバケーブル
42…光信号変換モジュール
43…O/E変換部
44…E/O変換部
45…フォトダイオード
46…半導体レーザ
441…回路基板
442…電気信号入力部
443…終端部
444…第1線路
445…電源接続部
446…第2線路
447…結合部
448…バイパスコンデンサ
47…受信回路
48…送信回路
F…通信可能領域
P…パンタグラフ
R…路面軌道
S…架線
T…路面電車

【要約】
【課題】無線信号として到達距離が数10m程度の高周波信号であっても軌道車両に無線ネットワーク環境を実現できる装置を提供する。
【解決手段】無線ネットワーク環境提供装置1は、路面軌道Rの上を走行する路面電車Tに無線ネットワーク環境を提供する装置であり、一対の路面軌道Rの間の地中に設けられる複数の車両通信ユニット10と、路面電車T内に設置される車内通信ユニット20を備える。車両通信ユニット10は、光ファイバを用いた光データリンク40で中継装置30に接続されており、中継装置30は光ファイバケーブル32で基地局31に接続され、インターネット等のネットワークに接続される。光データリンク40は、光ファイバケーブル41と光信号変換モジュール42を備え、光信号変換モジュール42は光信号を電気信号に変換するO/E変換部43と、電気信号を光信号に変換するE/O変換部44とを有する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5