(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】冷凍ラーメン製造方法、冷凍ラーメン食品及びラーメン提供方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20220531BHJP
【FI】
A23L7/109 C
(21)【出願番号】P 2022016718
(22)【出願日】2022-02-04
【審査請求日】2022-02-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522049484
【氏名又は名称】光主 茂忠
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】特許業務法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】光主 茂忠
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-332492(JP,A)
【文献】特開平05-244888(JP,A)
【文献】実開平02-116985(JP,U)
【文献】特開平06-189703(JP,A)
【文献】特開2013-034407(JP,A)
【文献】特開2005-269937(JP,A)
【文献】"シリーズ発売から10年で3,000%強伸長!類型販売数1億3千万食を突破した「お水がいらない」シリーズ新商品「お水がいらない 札幌味噌ラーメン」が登場!2021年8月23日(月)新発売”,[online],令和3年7月15日(掲載日),[令和4年4月7日検索],インターネット,<URL: https://www.atpress.ne.jp/news/265388/>,2021年07月15日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/109
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍ラーメン食品を製造する冷凍ラーメン製造方法であって、
上方が開口した容器内にラーメン用スープを貯留して前記容器を冷却することにより、前記ラーメン用スープを冷凍固化した一次冷凍物を生成する第1冷凍手順と、
前記容器内における、前記第1冷凍手順で生成された前記一次冷凍物の上に、ラーメン用の茹で麺の麺塊を載置する茹で麺載置手順と、
前記茹で麺載置手順で前記一次冷凍物の上に載置された前記麺塊に対し、当該麺塊を上下方向に貫通し下端が前記一次冷凍物の上面に至る少なくとも1つの導熱用貫通孔スペースを穿孔し、穿孔済み麺塊を生成する穿孔手順と、
前記穿孔手順で生成された前記穿孔済み麺塊を内部に含む前記容器の、前記上方の開口に蓋をする蓋閉じ手順と、
前記蓋閉じ手順で蓋をされた前記容器を再度冷却することにより、前記一次冷凍物の上部に、前記穿孔済み麺塊を冷凍固化して導熱用貫通孔を有する二次冷凍物を生成する第2冷凍手順と、
を有することを特徴とする冷凍ラーメン製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の冷凍ラーメン製造方法において、
前記穿孔手順では、
前記麺塊のうち径方向中央部において相対的に大径の第1導熱用貫通孔スペースを穿孔するとともに、
前記麺塊のうち径方向外周部において相対的に小径の複数の第2導熱用貫通孔スペースを穿孔し、
前記第2冷凍手順
にて、大小異径の第1導熱用貫通孔及び第2導熱用貫通孔を有する二次冷凍物を生成する、
ことを特徴とする冷凍ラーメン製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の冷凍ラーメン製造方法において、
前記導熱用貫通孔の内径と同一の外径若しくは当該内径以下の外径を備えた、ラーメン用スープを冷凍固化した補助冷凍物を生成する第3冷凍手順と、
前記穿孔手順で前記容器の内部に生成された前記穿孔済み麺塊の前記導熱用貫通孔スペースに対し、前記第3冷凍手順で生成した前記補助冷凍物を挿入する補助冷凍物挿入手順と、
をさらに有し、
前記蓋閉じ手順では、
前記補助冷凍物挿入手順で前記補助冷凍物が挿入された前記穿孔済み麺塊を内部に含む前記容器に蓋をし、
前記第2冷凍手順では、
前記蓋閉じ手順で蓋をされた前記容器を再度冷却することにより、前記一次冷凍物の上部に、前記補助冷凍物が挿入された前記穿孔済み麺塊を冷凍固化した前記二次冷凍物を生成する
ことを特徴とする冷凍ラーメン製造方法。
【請求項4】
上方が開口した容器と、
前記容器内の下部に配置され、ラーメン用スープが冷凍固化され形成されている第1冷凍層と、
前記容器内における前記第1冷凍層の上に配置され、ラーメン用の茹で麺の麺塊が冷凍固化されて形成されるとともに上下方向に貫通する少なくとも1つの導熱用貫通孔が形成された、第2冷凍層と、
前記容器の、前記上方の開口を閉じる蓋と、
を有し、
前記蓋の下方に位置する前記容器の内部空間において、前記第2冷凍層及び前記導熱用貫通孔の上端を、前記蓋の下面に臨ませるようにした
ことを特徴とする冷凍ラーメン食品。
【請求項5】
上方が開口した容器、前記容器内の下部に配置され、ラーメン用スープが冷凍固化されて形成されている第1冷凍層、前記容器内における前記第1冷凍層の上に配置され、ラーメン用の茹で麺の麺塊が冷凍固化されて形成されるとともに上下方向に貫通する少なくとも1つの導熱用貫通孔が形成された、第2冷凍層、及び、前記容器の、前記上方の開口を閉じる蓋、を有し、前記蓋の下方に位置する前記容器の内部空間において、前記第2冷凍層及び前記導熱用貫通孔の上端を、前記蓋の下面に臨ませるようにした冷凍ラーメン食品と、
前記冷凍ラーメン食品に付随して設けられ、前記ラーメン用の茹で麺の上にトッピングするためのトッピング材の真空パックと、
を用いて、温熱状態のラーメンを提供するラーメン提供方法において、
前記冷凍ラーメン食品を電子レンジにて加熱することで、
前記第2冷凍層において、前記導熱用貫通孔以外の部分の上面に対しては前記蓋の下方に位置する前記容器の内部空間から授熱を行うとともに、径方向外周側に位置する部分に対しては前記容器越しに径方向外側から授熱することにより、当該第2冷凍層を順次融解させ、
前記第1冷凍層において、前記導熱用貫通孔の直下に位置する第1領域に対しては前記蓋の下方に位置する前記容器の内部空間から前記第2冷凍層の前記導熱用貫通孔を介して授熱を行うとともに、径方向外周側に位置する部分に対しては前記容器越しに径方向外側から授熱することにより、当該第1冷凍層を順次融解させ、
前記容器内において前記第1冷凍層の融解により当該容器内の下部に液体のスープ層を現出させるとともに、前記第2冷凍層の融解により前記麺塊を現出させて前記スープ層の内部に浸漬させ、
前記真空パックを未開封の状態で湯煎した後に、当該真空パックを開封し、パック内部の前記トッピング材を取り出し、少なくとも下部が前記スープ層に浸漬された前記麺塊の上部に対して載置する
ことを特徴とするラーメン提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所謂生麺を用いたラーメンを電子レンジにて使用可能な容器内において冷凍し、長期保存を可能としつつ、店舗で食する出来立てと遜色の無い食感を有する生ラーメンとする冷凍ラーメン製造方法、冷凍ラーメン食品及びラーメン提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器内に収容した冷凍麺と冷凍だしとを用意し、食前に沸騰したお湯を注いで冷凍麺と冷凍だしとを解凍して冷やし麺として食する容器入り冷凍麺が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような冷凍麺では、容器の底部に載置した冷凍麺の上に冷凍だしを配置し、冷凍麺と冷凍だしとをお湯の重量比率について所定割合に構成することにより、喫食時に喫水線にまで満たされた所定量のお湯によって短い調理時間で冷凍麺がほぐれるとともに、冷凍だしを崩しながら溶かすことにより喫食品温が略均一の低温状態の冷やし麺として食することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術の冷凍ラーメン製造方法では、冷凍麺と冷凍だしとを用いるとともに、別途お湯を注ぐタイプであるために、お湯の温度が下がってしまうため、一般的な暖かい(熱い)ラーメンとして食することができないという問題が生じていた。
【0006】
また、一般的な冷凍食品としては、例えば、アルミ製の簡易鍋容器にスープを下側とし、具材を上側としたものも多種見受けられるが、これらはガス調理器具等の火力を用いて極薄のアルミ鍋の底を加熱するため、耐熱対策として必然的にスープが下側となる。
【0007】
ここで、所謂カップ麺や上記従来技術のように、お湯を注ぐ場合には冷凍だし(或いは粉末状や液体状のだし)は、後入れ(食べる直前)の場合を含めて冷凍麺よりも上側に位置しているのが好ましい。これに対し、例えば、電子レンジを用いて冷凍麺と冷凍スープとを一つの容器で同時に解凍する(ラーメンとして食する際に適した温度にまで加熱する意味を含む)場合、解凍時の食べ易さやラーメンとしての見掛け上の自然さ等を考慮すると、上側に冷凍麺、下側に冷凍スープとするのが好ましい。
【0008】
その場合、電子レンジによる電磁波特性を考慮すると、スープの温度と麺のゆで加減との塩梅が適切で無いと、麺の食感が損なわれる、或は、スープ温度がぬるいといった不具合が発生する。
【0009】
また、近年のインターネットを利用した物品販売形態、所謂ネット販売での一般的な冷凍ラーメンは、タレとスープとが一緒に真空パックされているとともに、麺は加熱されていない(茹でられていない)生麺のまま真空パックされている。
【0010】
したがって、これら2つの真空パックは、沸騰した2つの鍋に別々に入れて加熱調理しなければならず、しかも、スープ側の解凍時間(解凍/沸騰時間)と麺側の加熱時間(又は茹で時間)とが異なるうえ、火加減等によって15分~20分位の不確定な調理中に調理場から離れられないなど、手間を要するものであった。
【0011】
本発明の目的は、生麺を用いたものでありながら、電子レンジを用いた解凍時において、麺の食感とスープの温度とを最適に確保することができる冷凍ラーメン製造方法、冷凍ラーメン食品及びラーメン提供方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本願発明は、冷凍ラーメン食品を製造する冷凍ラーメン製造方法であって、上方が開口した容器内にラーメン用スープを貯留して前記容器を冷却することにより、前記ラーメン用スープを冷凍固化した一次冷凍物を生成する第1冷凍手順と、前記容器内における、前記第1冷凍手順で生成された前記一次冷凍物の上に、ラーメン用の茹で麺の麺塊を載置する茹で麺載置手順と、前記茹で麺載置手順で前記一次冷凍物の上に載置された前記麺塊に対し、当該麺塊を上下方向に貫通し下端が前記一次冷凍物の上面に至る少なくとも1つの導熱用貫通孔スペースを穿孔し、穿孔済み麺塊を生成する穿孔手順と、前記穿孔手順で生成された前記穿孔済み麺塊を内部に含む前記容器の、前記上方の開口に蓋をする蓋閉じ手順と、前記蓋閉じ手順で蓋をされた前記容器を再度冷却することにより、前記一次冷凍物の上部に、前記穿孔済み麺塊を冷凍固化して導熱用貫通孔を有する二次冷凍物を生成する第2冷凍手順と、を有する冷凍ラーメン製造方法である。
【0013】
一次冷凍物の上に載置した麺塊に導熱用貫通孔スペースを穿孔してから冷凍して導熱用貫通孔を有する二次冷凍物を生成することにより、この冷凍ラーメン食品を電子レンジで解凍する場合には、上記導熱用貫通孔を介し、貫通孔直下にある一次冷凍物の上面に対し電子レンジから授熱を行うことができる。
【0014】
すなわち、二次冷凍物については、導熱用貫通孔以外の部分の上面に対しては蓋の下方に位置する容器の内部空間から授熱が行われるとともに、径方向外周側に位置する部分に対しては容器越しに径方向外側から授熱が行われる。これらの授熱を受けて、二次冷凍物に含まれる凍った状態の麺塊が順次融解する。
【0015】
一方、一次冷凍物については、二次冷凍物の導熱用貫通孔の直下に位置する領域に対しては、上記容器の内部空間から導熱用貫通孔を介して授熱が行われるとともに、径方向外周側に位置する部分に対しては、上記容器越しに径方向外側から授熱が行われる。これらの授熱を受けて、一次冷凍層に含まれる凍ったラーメン用スープが順次融解する。
【0016】
上記のように、導熱用貫通孔を介し下層となる一次冷凍層に熱を届き易くすることで、貫通孔を設けない場合のように一次冷凍層に熱が届きにくくなるのを防止し、凍ったラーメン用スープを速やかに融解させることができる。
【0017】
上記の際、仮に、先に麺塊を凍らせ、その冷凍層を下段において上からスープを注いで上段にて凍らせようとした場合、スープが完全に凍り付くより前に液体状態のスープが凍った麺塊に侵入して麺塊の一部を融解させ、その部分の麺がスープの水分を吸って延びてしまう。
【0018】
これに対して本願発明においては、先にスープを凍らせそれを下において後から麺塊を載せることにより、液体状態のスープが麺塊に接するのを回避し、上記のように麺が延びてしまうのを防止できる。
【0019】
また、上記目的を達成するために、本願発明は、上方が開口した容器と、容器内の下部に配置され、ラーメン用スープが冷凍固化され形成されている第1冷凍層と、容器内における第1冷凍層の上に配置され、ラーメン用の茹で麺の麺塊が冷凍固化されて形成されるとともに上下方向に貫通する少なくとも1つの導熱用貫通孔が形成された、第2冷凍層と、容器の、上方の開口を閉じる蓋と、を有し、蓋の下方に位置する容器の内部空間において、第2冷凍層及び導熱用貫通孔の上端を、蓋の下面に臨ませるようにした、冷凍ラーメン食品である。
【0020】
さらに、上記目的を達成するために、本願発明は、上方が開口した容器、容器内の下部に配置され、ラーメン用スープが冷凍固化されて形成されている第1冷凍層、容器内における第1冷凍層の上に配置され、ラーメン用の茹で麺の麺塊が冷凍固化されて形成されるとともに上下方向に貫通する少なくとも1つの導熱用貫通孔が形成された、第2冷凍層、及び、容器の、上方の開口を閉じる蓋、を有し、蓋の下方に位置する容器の内部空間において、第2冷凍層及び導熱用貫通孔の上端を、蓋の下面に臨ませるようにした冷凍ラーメン食品と、冷凍ラーメン食品に付随して設けられ、ラーメン用の茹で麺の上にトッピングするためのトッピング材の真空パックと、を用いて、温熱状態のラーメンを提供するラーメン提供方法において、冷凍ラーメン食品を電子レンジにて加熱することで、第2冷凍層において、導熱用貫通孔以外の部分の上面に対しては蓋の下方に位置する容器の内部空間から授熱を行うとともに、径方向外周側に位置する部分に対しては容器越しに径方向外側から授熱することにより、当該第2冷凍層を順次融解させ、第1冷凍層において、導熱用貫通孔の直下に位置する第1領域に対しては蓋の下方に位置する容器の内部空間から第2冷凍層の導熱用貫通孔を介して授熱を行うとともに、径方向外周側に位置する部分に対しては容器越しに径方向外側から授熱することにより、当該第1冷凍層を順次融解させ、容器内において第1冷凍層の融解により当該容器内の下部に液体のスープ層を現出させるとともに、第2冷凍層の融解により麺塊を現出させてスープ層の内部に浸漬させ、真空パックを未開封の状態で湯煎した後に、当該真空パックを開封し、パック内部のトッピング材を取り出し、少なくとも下部がスープ層に浸漬された麺塊の上部に対して載置する、ラーメン提供方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、電子レンジを用いた解凍時において、麺の食感とスープの温度とを最適に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施の形態に係る冷凍ラーメン食品の一例を示し、(A)は冷凍ラーメン食品パッケージの斜視図、(B)はトッピング具材及び蓋体を外した要部の斜視図である。
【
図2】(A)~(F)は本実施の形態に係る冷凍ラーメン製造方法の一例を時系列で示す説明図である。
【
図4】(A)は同径の導熱用貫通孔を複数設けた場合の冷凍ラーメン食品の説明図、(B)は大小異径の導熱用貫通孔を複数設けた場合の冷凍ラーメン食品の説明図である。
【
図5】補助冷凍物を用いた場合の冷凍ラーメン食品の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。まず、
図1において販売形態としての冷凍ラーメン食品の一例を示す。
【0024】
図1において、冷凍ラーメン食品10は、上方が開口した容器11と、容器11の下部に配置されてラーメン用スープが冷凍固化され形成されている一次冷凍物(以下、「第1冷凍層」又は「スープ層」とも称する。)21と、容器11における一次冷凍物21の上に配置されてラーメン用の茹で麺の麺塊が冷凍固化されて形成されるとともに上下方向に貫通する少なくとも1つの導熱用貫通孔22aが形成された、(以下、「第2冷凍層」又は「麺塊層」とも称する。)22と、容器11の上方の開口を閉じる蓋12と、例えば、チャーシュー13や野菜類(例えば、キクラゲ14)等を真空パッケージした真空パック15と、を有する。
【0025】
容器11は、合成樹脂等の電子レンジでの使用が可能な材質からなり、所謂ラーメンどんぶり状の上方に開口するものが用いられている。
【0026】
蓋12は、容器11の開口を塞ぐ円盤状の平面部12aと、平面部12aの外周縁を取り巻くように立ち上げられた縁部12bと、が合成樹脂等の電子レンジでの使用が可能な材質から一体に成形されている。なお、縁部12bは、容器11の開口を塞いでいるときには下向きである。また、電子レンジでの使用を前提としているため、容器11の内部に対する蓋12の密閉性は高く確保する必要はないが、例えば、空気穴等(図示せず)を形成してもよいし、開閉を容易にするために縁部12bに摘み用の舌片部12cを一体に形成してもよいし、容器11よりも軟質材料から形成してもよい。
【0027】
次に、
図2を参照しつつ、冷凍ラーメン食品の製造手順について説明する。
【0028】
先ず、予め所定の原料配分で作成したラーメン用スープS(約300ml)を容器11に貯留し(
図2(A))、そのラーメン用スープSと一緒に容器11を急速冷却することによってラーメン用スープSを冷凍固化した一次冷凍物21を生成する(第1冷凍手順(
図2(B))。
【0029】
次に、その容器11の一次冷凍物21の上に茹であげた一人前(約220g)の麺からなる麺塊Mを載置する(茹で麺載置手順(
図2(C))。
【0030】
さらに、一次冷凍物21の上に載置された麺塊Mに対して上下方向に貫通し下端が一次冷凍物21の上面に至るように少なくとも1つの導熱用貫通孔スペースM1を穿孔して穿孔済み麺塊M2を生成する(穿孔手順(
図2D))。
【0031】
この際、穿孔済み麺塊M2は、導熱用貫通孔スペースM1の形状を維持し難いため、例えば、ステンレスやアルミ等の円塔体(図示せず)によって保形性を確保してもよい。
【0032】
次に、上層に一次冷凍物21及び下層に穿孔済み麺塊M2を内部に含む容器11の開口に蓋12をしたうえで(蓋閉じ手順(
図2(E))、容器11を再度冷却することにより、一次冷凍物21の上部に穿孔済み麺塊M2を冷凍固化して導熱用貫通孔22aを有する二次冷凍物22を生成する(第2冷凍手順(
図2(F))。
【0033】
これにより、容器11の下層にラーメン用スープSからなる第1冷凍層としてスープ層の一次冷凍物21、容器11の上層に容器11の径方向中心と略同軸の導熱用貫通孔22aを有する茹で麺Mからなる第2冷凍層として麺塊層の二次冷凍物22を生成することができる。
【0034】
この際、
図2(F)に示すように、蓋12の下方に位置する容器11の内部空間には、二次冷凍物22及び導熱用貫通孔22aの上端(上面)22bが、蓋12の下面12dに臨んでいる。すなわち、二次冷凍物22及び導熱用貫通孔22aの上端(上面)22bと蓋12の下面12dとの間には、電子レンジ(図示せず)によって調理する際の電磁波加熱による授熱が容易となっている。
【0035】
また、導熱用貫通孔22aは、空間領域形状が円筒状となるように導熱用貫通孔スペースM1を穿孔するのが望ましく、さらに、容器11の径方向中心と空間領域形状の中心とが同軸上にあるのが望ましい。
【0036】
また、導熱用貫通孔22aの孔径は、
図2(D)に示すように、穿孔済み麺塊M2としたときの導熱用貫通孔スペースM1の孔径H1が、導熱用貫通孔スペースM1を除く穿孔済み麺塊M2の径方向の幅H2,H3と略同じ、すなわち、上端22bの径方向の約1/3程度に形成するのが望ましい。
【0037】
なお、導熱用貫通孔22aの孔径は、上述したように1/3程度とするのが最適であるが、麺の分量や麺の太さ(業界で一般的に通用している極細麺、細麺、中太麺、太麺など)や状態(ストレート麺、縮れ麺等)等によってある程度、例えば、1/2~1/4の範囲で変更可能である。
【0038】
ここで、孔径を1/2以上に大きくしまうと、
図3に示すように、一次冷凍物(スープ層)21の授熱が高過ぎて融解が早まり、結果的に二次冷凍物(麺塊層)22の融解に村が発生して一部の麺が茹で過ぎ状態となってしまうからである。
【0039】
また、孔径を1/4以下に小さくしてしまうと、
図3に示すように、一次冷凍物(スープ層)21の授熱が低過ぎて融解が遅くなり、スープ温度が低くなってしまうからである。
【0040】
一方、下層に一次冷凍物21及び上層に導熱用貫通孔22aを有する二次冷凍物22を生成した容器11は、蓋12によって閉じられた状態で、チャーシュー13や野菜類(例えば、キクラゲ14)等を真空パッケージした真空パック15とセットで一人前の冷凍ラーメン食品10として出荷・販売される。
【0041】
実食時(調理時)いは、例えば、出荷・販売用にパッケージ化された冷凍ラーメン食品10から、真空パック15を取り出し、湯煎等によって別途加熱処理を施しておく。具体的には、60℃~80℃のお湯をボウルか手鍋に約2Lのお湯を入れ、チャーシュー13、野菜(キクラゲ)14、その他(例えば、とき卵等)を真空パック15に入れたまま湯煎にて解凍する。
【0042】
一方、蓋12で閉じられた容器11は、例えば、電子レンジにて加熱(例えば600w/8分)する。
【0043】
時間経過(8分)後、容器11を電子レンジからいったん取り出し、蓋12を開けて二次冷凍物(麺塊層)22を軽くほぐした後に、蓋12を容器11に軽く乗せて再度電子レンジにて加熱(例えば、600w/3分)する。この際、蓋12は容器11に軽く乗せる程度で良い。これは、蓋12で容器11を塞いでしまうと、完成時に蓋12で容器11を開放した際、蒸気が一気に漏れてしまうためである。
【0044】
その後、溶解した一次冷凍物21(以降、単に「スープ」とも称する。)と一緒に二次冷凍物22(以降、単に「麺」とも称する。)をほぐし、湯煎した具材を添え付ける。
【0045】
このように、容器11にラーメン用スープSのみを先に入れて急速冷凍し、その冷凍物(一次冷凍物21)の上に軽く茹でた麺塊Mを乗せて孔開け(導熱用貫通孔スペースM1)し、蓋12で容器11を閉じた状態で再び急速冷凍するだけで良い。
【0046】
これにより、スープ層に麺塊を乗せて孔開けしない場合の電子レンジによる調理時間に対して、孔開けした場合の調理時間のほうが1分程度短縮することができた。
【0047】
このような時短は、特に、麺を余分に加熱してしまうという不具合を解消することができるうえ、例えば、フードコートなどの調理時間に追われる場所でのラーメン食品の提供に際して大きな利点とすることができる。
【0048】
すなわち、上方が開口した容器11、容器11の下部に配置されてラーメン用スープSが冷凍固化されて形成されている一次冷凍物21、容器11における一次冷凍物21の上に配置され、ラーメン用の茹で麺の麺塊Mが冷凍固化されて形成されるとともに上下方向に貫通する少なくとも1つの導熱用貫通孔22aが形成された二次冷凍物22、及び、容器11の上方の開口を閉じる蓋12、を有し、蓋12の下方に位置する容器11の内部空間において、二次冷凍物22及び導熱用貫通孔22aの上端を、蓋12の下面12dに臨ませるようにした冷凍ラーメン食品10と、冷凍ラーメン食品10に付随して設けられたトッピング材の真空パック15と、を用い、冷凍ラーメン食品10を電子レンジにて加熱することで、二次冷凍物22において、導熱用貫通孔22aを除く部分の上面に対しては蓋12の下方に位置する容器11の内部空間から授熱を行うとともに、径方向外周側に位置する部分に対しては容器11の器越しに径方向外側から授熱することにより、二次冷凍物22を順次融解させ、一次冷凍物21において、導熱用貫通孔22aの直下に位置する第1領域(H1相当)に対しては蓋12の下方に位置する容器11の内部空間から二次冷凍物22の導熱用貫通孔22aを介して授熱を行うとともに、径方向外周側に位置する部分(H2,H3相当)に対しては容器11の器越しに径方向外側から授熱することにより、一次冷凍物21を順次融解させ、容器11において一次冷凍物21の融解により容器11の下部に液体のスープ層を現出させるとともに、二次冷凍物22の融解により麺塊を現出させてスープ層の内部に浸漬させ、真空パック15を未開封の状態で湯煎した後に、当該真空パック15を開封し、真空パック15の内部のトッピング材(13,14)を取り出し、少なくとも下部がスープ層に浸漬された麺塊の上部に対してトッピングすることにより、冷凍ラーメン食品10を提供することができる。
【0049】
ところで、上記実施の形態では、一つの導熱用貫通孔22aを二次冷凍物22に設けた場合で説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、
図4(A)に示すように、略同径の2つの導熱用貫通孔32aを有する二次冷凍物32としてもよい。
【0050】
また、上記穿孔手順において、麺塊Mのうち径方向中央部において相対的に大径の第1導熱用貫通孔スペースを穿孔するとともに、麺塊Mのうち径方向外周部において相対的に小径の複数の第2導熱用貫通孔スペースを穿孔することによって、
図4(B)に示すように、第2冷凍手順にいて、大小異径の第1導熱用貫通孔42a及び第2導熱用貫通孔42bを有する二次冷凍物42を生成することができる。
【0051】
このように、大小異径の導熱用貫通孔42a,42bを複数設けることにより、一次冷凍物21に含まれる凍ったラーメン用スープSの融解をさらに迅速化することができる。その際、径方向中央部の第1導熱用貫通孔42aを相対的に大径とし、径方向外周部に相対的に小径の第2導熱用貫通孔42bを複数個設けることにより、一次冷凍物21の融解挙動の径方向均一化を図ることができる。
【0052】
さらに、上記実施の形態では、導熱用貫通孔22aを単なる孔とした場合で説明したが、例えば、導熱用貫通孔22aの内径と同一の外径若しくは当該内径以下の外径(及び、麺塊Mと略同一の上下方向厚み)を備えた、第2の(すなわち、一次冷凍物21と同一又は少し濃い味等の味変した)ラーメン用スープを冷凍固化した補助冷凍物を生成する第3冷凍手順をさらに加え、
図5に示すように、穿孔手順で容器11の内部に生成された穿孔済み麺塊M2の導熱用貫通孔スペースM1に対し、第3冷凍手順で生成した補助冷凍物31を挿入してもよい。
【0053】
これにより、補助冷凍物挿入手順で補助冷凍物31が挿入された穿孔済み麺塊M2を内部に含む容器11に蓋(
図4では図示せず)をし、第2冷凍手順では、蓋閉じ手順で閉じられた容器11を再度冷却することにより、一次冷凍物21の上部に、補助冷凍物31が挿入された穿孔済み麺塊M2を冷凍固化した二次冷凍物22を生成することができる。
【0054】
このように、二次冷凍物22において、導熱用貫通孔22aを除く部分の上面に対して容器11の内部空間から授熱が行われて融解し、径方向外周側の部分に対しては径方向外側から授熱が行われて麺塊が融解する。
【0055】
本例では、そのとき、併せて導熱用貫通孔22aに挿入された補助冷凍物31が融解し、これによって液体のラーメン用スープが現出する。この結果、下層となる一次冷凍層に熱が届きにくく凍ったラーメン用スープの融解が進まない傾向となるのを補助冷凍物31の融解によって補い、液体のラーメン用スープを迅速に現出することができる。
【0056】
なお、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一(同軸)」「等しい」「異なる」、或いは数値等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一(同軸)」「等しい」「異なる」等とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一(同軸)」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0057】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0058】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0059】
10 冷凍ラーメン食品
11 容器
12 蓋
12a 平面部
12b 縁部
12c 舌片部
12d 下面
13 チャーシュー
14 キクラゲ
15 真空パック
21 一次冷凍物(第1冷凍層/スープ層)
22 二次冷凍物(第2冷凍層/麺塊層)
22a 導熱用貫通孔
22b 上端(上面)
31 補助冷凍物
32 二次冷凍物
32a 導熱用貫通孔
42 二次冷凍物
42a 第1導熱用貫通孔
42b 第2導熱用貫通孔
H1 孔径
M 麺塊
M1 導熱用貫通孔スペース
M2 穿孔済み麺塊
S ラーメン用スープ
【要約】
【課題】電子レンジを用いた解凍時において、麺の食感とスープの温度とを最適に確保することができる。
【解決手段】ラーメン用スープSを貯留した容器11を冷却してラーメン用スープSを冷凍固化した一次冷凍物21を生成する第1冷凍手順と、容器11の一次冷凍物21の上に茹で麺の麺塊Mを載置する茹で麺載置手順と、一次冷凍物21の上に載置された麺塊Mに対して上下方向に貫通し下端が一次冷凍物21の上面に至る少なくとも1つの導熱用貫通孔スペースM1を穿孔して穿孔済み麺塊M2を生成する穿孔手順と、穿孔済み麺塊M2を内部に含む容器11の開口に蓋12をする蓋閉じ手順と、容器11を再度冷却することにより、一次冷凍物21の上部に穿孔済み麺塊M2を冷凍固化して導熱用貫通孔22aを有する二次冷凍物22を生成する第2冷凍手順と、を有する。
【選択図】
図2