(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】船舶用エレベータ
(51)【国際特許分類】
B66B 9/00 20060101AFI20220531BHJP
B66B 7/00 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
B66B9/00 E
B66B7/00 F
(21)【出願番号】P 2021093055
(22)【出願日】2021-06-02
【審査請求日】2021-10-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500147942
【氏名又は名称】守谷輸送機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114498
【氏名又は名称】井出 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 智一
(72)【発明者】
【氏名】本田 泰之
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-256348(JP,A)
【文献】特開2006-027808(JP,A)
【文献】特開2004-352377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 9/00
B66B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶内で乗員を各階へ輸送する船舶用エレベータであって、
各階を連通すると共に前部壁面には各階の乗降口が設けられた昇降路と、
前記乗降口に面して設けられた乗り籠扉を有すると共に天井には脱出扉を有し、前記昇降路内を昇降して乗員を各階へ輸送する乗り籠と、を備え、
前記昇降路の前部壁面に隣接する一方の昇降路側面は当該乗り籠の運転に必要な構成部材が集中的に配置された集約側面として設けられ、
前記集約側面と前記乗り籠との間には、
水平方向に一定の間隔を空けて前記集約側面に固定された一対の支持部材と、
前記一対の支持部材に固定されると共に前記昇降路内の上下方向に沿って設けられたガイドレールと、
前記ガイドレールに沿って走行すると共に前記乗り籠を片持ち状態で保持する案内部材と、
綱車に巻き付けられた複数のロープを介して前記乗り籠と接続され、当該乗り籠の昇降に伴って前記一対の支持部材の間に設けられた走行路を上下動するカウンターウエイトと、
前記前部壁面と一方の支持部材との間に設けられ前記乗り籠扉を収容する乗降扉引込領域と、
他方の支持部材と前記昇降路の後部壁面の間に設けられて、前記乗り籠に給電するケーブルが当該乗り籠の昇降に伴って移動するケーブル移動領域と、
が設けられ、
前記昇降路の後部壁面と前記乗り籠との間、及び前記集約側面と対向する前記昇降路の側面と前記乗り籠の間には、前記乗り籠から前記脱出扉を介して脱出した乗員が各階へ移動する際に利用する昇降路ラダーを配置可能な脱出領域が設けられていることを特徴とする船舶用エレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンカー、貨物船、客船等の船舶内において、搭乗客や乗務員等の乗員を各階のホールに輸送する船舶用エレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
搭乗客や乗務員等の乗員を乗せる船舶には、各階のホールに対し乗員を輸送する船舶用エレベータが設置されている。そのため、船舶内の乗員は、階段の他、エレベータの乗り籠内に設けられた任意の行き先階ボタンを選択することで各階への移動をすることができる。船舶用エレベータは、水上を渡航する船舶内で作動させるものであるため、揺れや衝撃に耐え得る特殊な設計になっている。
【0003】
船舶用エレベータは、各階を連通する昇降路内に設置される。船舶用エレベータの運転に必要な構成部材、例えば、乗り籠、カウンターウエイト等は、前記昇降路内の4面の側壁に対して分散して設けられている。各構成部材の設置は、側壁に対して溶接して行われる。例えば、昇降路の側壁に対して複数のブラケットを溶接固定し、当該ブラケットに対して乗り籠、カウンターウエイト等を取り付ける。
【0004】
もっとも、前記昇降路内に溶接工事をする際には、溶接した昇降路内の壁面から熱が伝導し、当該壁面の反対側の壁まで高熱になってしまう。これにより、当該壁の塗装が溶けて再塗装の必要が生じるという問題があった。船舶内の塗装は、特殊な塗装で何重にも重ねられており、一定の基準を満たす必要がある。そのため、船舶用エレベータの設置工事に際しては、昇降路内の壁面、すなわち4側面分の壁を再塗装する必要が生じてしまうことによって、多大な時間を要していた。このような課題を解決するものとしては、特許文献1が挙げられる。
【0005】
特許文献1の船舶用エレベータは、昇降路内の四方の壁面のうち一つの壁面に対して一対のガイドレールが固定されている。乗り籠には、前記壁面に対して突出した片持ちアームが固定されており、前記片持ちアームの先端に設けられたローラが前記ガイドレールに組付けられている。また、前記一対のガイドレールの間には、カウンターウエイトの走行路が設けられている。このことから、特許文献1の船舶用エレベータは、乗り籠、カウンターウエイト、ガイドレール等の船舶用エレベータの運転に必要な構成部材を昇降路内の一つの壁面に集約させており、一壁面分の再塗装しか発生しないことから、三壁面分の再塗装を省略することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
もっとも、水上を渡航する船舶ではスペースが限られているため、昇降路の断面積をできる限り小さくする必要がある。一方で、船舶用エレベータでは、乗り籠の天井に脱出扉を設けると共に、昇降路から各階に対して脱出するためのエリアを設けることが義務付けられている。また、脱出エリアに昇降路を上下動する各構成部材が取り付けられていると、乗員が乗り籠から各階へ脱出する際に危険であるため、脱出エリアと各構成部材は干渉しない位置に配置されているのが好ましい。そして、脱出エリアと各構成部材を干渉しない位置に配置する結果、昇降路の断面積が大きくなってしまうという問題があった。そのため、船舶用エレベータには、昇降路の断面積を小さくするニーズがある一方で、船舶用エレベータに必要な各構成部材や脱出エリアを設けるために昇降路の断面積を小さくすることは困難であるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、船舶用エレベータの運転に必要な各構成部材と脱出領域が干渉しない位置で設けつつ、昇降路の断面積を小さくし、船舶内のスペースを効率よく活用することができる船舶用エレベータを提供することにある。
【0009】
すなわち本発明は、船舶内の各階を連通すると共に、前部壁面に各階の乗降口が設けられた昇降路と、前記昇降路の前部壁面に隣接する集約側面に対し水平方向に一定の間隔を空けて固定された一対の支持部材と、前記昇降路内の上下方向に沿って設けられていると共に、一対の前記支持部材に固定されているガイドレールと、前記乗降口に面して設けられた乗り籠扉を有すると共に、前記ガイドレールに沿って走行する案内部材を有し、当該案内部材によって片持ち状態で保持された乗り籠と、綱車に巻き付けられた複数のロープを介して前記乗り籠と接続され、一対の前記支持部材間に設けられた走行路を上下動するカウンターウエイトと、を備え、前記前部壁面と一方の支持部材との間には、前記乗降扉を収容する乗降扉引込領域が設けられ、他方の支持部材と、前記前部壁面と対向する後部壁面の間には、ケーブル移動領域が設けられ、
前記後部壁面と前記乗り籠との間、及び前記集約側面と対向する側面と乗り籠の間には、脱出ラダーを有する脱出通路領域が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の船舶用エレベータによれば、乗り籠、カウンターウエイト等のエレベータの運転に必要な構成部材、乗降扉引込領域、及びケーブル移動領域を乗り籠と集約側面との間に配置していると共に、後部壁面と乗り籠との間、及び集約側面と対向する側面と乗り籠との間に、脱出領域を配置している。そのため、前記船舶用エレベータ1は、各構成部材と脱出領域の干渉を防止しつつ、昇降路の断面積を小さくすることができる。
【0011】
また、本発明の船舶用エレベータは、乗り籠、カウンターウエイト等の各構成部材を集約側面に固定された支持部材に設けているため、船舶用エレベータの設置に際し、集約側面の1面にのみ溶接工事を行えば良い。そのため、船舶用エレベータの設置工事において、溶接による再塗装を1側面分のみに省略できることにより、作業に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0012】
さらに、昇降路内の前部壁面と一方の支持部材との間には乗降扉引込領域が設けられているため、乗り籠の乗降扉を大きく開放することができる。そのため、昇降路の断面積を小さくしつつも乗降扉を大きく開けることができ、横幅の大きい荷物であっても前記船舶用エレベータによって搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明を適用した船舶用エレベータの昇降路の断面を示す平面図である。
【
図3】乗り籠の内側から視たときの船舶用エレベータの縦方向を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を用いて本発明の船舶用エレベータを詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明を適用した船舶用エレベータの実施形態の昇降路の断面を示す平面図である。
図2は、乗り籠の内側から視たときの前記船舶用エレベータの縦方向を示す断面図である。前記船舶用エレベータ1は、タンカー、貨物船、客船等の船舶内で乗員を各階に輸送する際に利用される。
【0016】
図1に示すように、前記船舶用エレベータ1は、昇降路10内に乗り籠50が配置され、前記昇降路10内を乗り籠50が昇降する。前記昇降路10は、断面略矩形状であって、四方が壁面に囲われている。前記昇降路10は、各階フロアの最下階から最上階まで連通している。
図2に示すように、前記昇降路10の最上部には、モータに接続された綱車80が設けられている。前記乗り籠50は、前記綱車80に巻き付けられた6本のロープ8の一端に接続されることにより、吊るして支えられている。一方、前記ロープ8の他端にはカウンターウエイト40が接続されている。
【0017】
前記乗り籠50は、前記昇降路10の最上部に設けられた綱車80によって巻き上げられることによって、前記昇降路10内を昇降する。一方、前記乗り籠50が昇降すると、それに伴ってカウンターウエイト40が前記乗り籠50とは逆方向に昇降する。すなわち、前記乗り籠50が上昇した場合は、前記カウンターウエイト40が下降し、前記乗り籠50が下降した場合は、前記カウンターウエイト40が上昇する。前記昇降路10の最底辺には、スプリング15が設けられている。前記スプリング15は、船舶の非常時に何らかの原因によって前記乗り籠50、カウンターウエイト40が落下したときの衝撃を緩和することができる。
【0018】
前記昇降路10の前部壁面11には、乗降口100が開口している。前記乗降口100は、各階のフロアと昇降路10を連通している。そのため、前記乗降口100は、各階ごとに設けられている。前記乗降口100には、フロア扉110が設けられている。乗員は、フロア扉110、及び乗り籠扉52が開くと前記乗り籠50に乗り込むことができる。
【0019】
乗員は、乗り籠扉52から前記乗り籠50に乗り込み、前記乗り籠50内の操作盤53によって任意の行き先階ボタンを押して前記船舶用エレベータ1を操作する。行き先階ボタンが押されると、制御盤によって綱車に設けられたモータ等が制御され、前記乗り籠50が任意の階まで昇降する。任意の階に到着すると、前記乗り籠50内の乗り籠扉52が開き、各階のフロアに移動することができる。これにより、前記船舶用エレベータ1は、乗員を各階まで輸送することができる。
【0020】
図1に示すように、前記昇降路10の右側に位置する壁面の集約側面12には、複数の取付け部24が溶接して固定されている。前記取付け部24は、前記集約側面12の幅方向を長さ方向とした長尺形状を成している。前記取付け部24は、前記昇降路10の上下方向に沿って一定の間隔をあけて設けられている。
【0021】
各取付け部24には、一対の支持部材20が設けられている。前記一対の支持部材20は、前記前部壁面11側に設けられた支持部材20aと、前記前部壁面11と対向する後部壁面14側に設けられた支持部材20bとで構成されている。前記支持部材20aと20bは、一定の間隔をあけて設けられている。前記支持部材20は、前記昇降路10の中心に向かって突出している。
【0022】
前記支持部材20の中心部には、仕切り板30が設けられている。
図3の点線で示すように、前記仕切り板30は、後述する前記乗り籠50に設けられた案内部材25が走行する第二走行路5、及び前記カウンターウエイト40が走行する第一走行路4を区画するものである。前記第一走行路4は、前記仕切り板30と前記集約側面12との間に設けられている。一方、前記第二走行路5は、前記仕切り板30と前記乗り籠50との間に設けられている。
【0023】
前記第一走行路4には、一対の第一ガイドレール22が設けられている。前記第一ガイドレール22は、前記昇降路10の上下方向に沿った長尺のレールを成している。前記第一ガイドレール22の長さは、前記昇降路10の全長と略同一である。
図2に示すように、前記第一ガイドレール22は、前記支持部材20に対してボルトで固定されている。また、前記第一ガイドレール22は、断面がT字状に形成されている。
【0024】
前記第一走行路4には、つり合い錘としてのカウンターウエイト40が配置されている。前記カウンターウエイト40は、乗り籠50を上下動させる際に、少ないエネルギーで効率的に駆動させるものである。前記カウンターウエイト40は、前記一対の第一ガイドレール22に組付けられている。これにより、前記カウンターウエイト40は、前記第一ガイドレール22に案内されて前記第一走行路4を前記昇降路10の上下方向に沿って走行することができる。前記カウンターウエイト40の重量は、乗り籠50と前記船舶用エレベータ1の定格積載量の半分との和となるように設計されている。
【0025】
前記第二走行路5には、一対の第二ガイドレール21が設けられている。前記第二ガイドレール21は、前記昇降路10の上下方向に沿った長尺のレールを成している。前記第二ガイドレール21の長さは、前記昇降路10の全長と略同一である。
図2に示すように、前記第二ガイドレール21は、前記支持部材20に対してボルトで固定されている。前記第二ガイドレール21は、断面がT字状に形成されている。
【0026】
一対の第二ガイドレール21の間には、前記第二走行路5を昇降する案内部材25が配置されている。前記案内部材25には、一対のスライダ23が設けられている。前記スライダ23は、前記第二ガイドレール21に組付けられている。これにより、前記案内部材25は、前記第二ガイドレール21に案内されて前記第二走行路5を前記昇降路10の上下方向に沿って昇降することができる。
【0027】
前記案内部材25には、前記昇降路10の中央寄りに設けられた乗り籠50が配置されている。前記乗り籠50は、綱車80に巻き付けられたロープ8を介してカウンターウエイト40に接続されており、これによって支持されている。そのため、前記乗り籠50は、前記集約側面12に固定された一対の支持部材20を介して片持ち状態で保持されている。また、前記乗り籠50は、前記案内部材25のスライダ23が前記第二ガイドレール21に組付けられていることによって、前記乗り籠50の水平方向への移動を抑制することができ、前記乗り籠50が揺られることなく昇降動作を円滑にすることができる。
【0028】
前記乗り籠50は、前記昇降路10の前部壁面11側に乗り籠扉52を有している。前記乗り籠扉52が開くと、前記乗り籠扉52は、一対の支持部材20のうち前部壁面11側に設けられた前記支持部材20aと前記前部壁面11との間に設けられた乗降扉引込領域120に収容される。これにより、前記乗降扉52を大きく開放することができる。
【0029】
図3に示すように、前記乗り籠50内には、操作盤53が設けられている。前記操作盤53は、乗員が前記乗り籠50に乗り込み、任意の目的階を指定する際に操作する。これにより、乗員は任意の階のホールに移動することができる。
【0030】
前記乗り籠50に設けられた乗り籠扉52と対向する位置には、脱出用ラダー51が設けられている。前記脱出用ラダー51は、前記乗り籠50内の上方に向かって設けられている。前記乗り籠50内の乗員は、前記乗り籠50が非常事態により緊急停止した場合等、脱出を要するときには、前記脱出用ラダー51を登り、前記乗り籠50の天井に設けられた図示しない脱出扉から前記乗り籠50の外部へ脱出することができる。
【0031】
前記乗り籠50には、前記乗り籠、制御盤、モータ等に電力を供給するための図示しないケーブルが設けられている。前記ケーブルは、一端が前記乗り籠50に接続されており、他端が電源に接続されている。前記ケーブルは、
図4に示すプーリ6に巻き付けられている。前記プーリ6は、前記ケーブルを引き延ばすことによって、常時テンションをかけている。これにより、前記ケーブルのたるみを防ぐことができる。
【0032】
前記プーリ6は、プーリ本体61と、前記プーリ本体61の上下に設けられたローラ62と、から構成されている。前記プーリ6は、前記支持部材20aと対向する前記支持部材20bと、前記前部壁面11と対向する後部壁面14との間に設けられたケーブル移動領域60に設けられている。前記プーリ6は、前記ケーブル移動領域60内に設けられたプーリ用ガイドレール63に対し前記ローラ62を接触させて前記昇降路10内を走行する。
【0033】
前記プーリ6は、前記ケーブルを介して乗り籠50に接続された動滑車で構成されている。そのため、前記プーリ6は、前記乗り籠50の昇降と共に前記乗り籠50の半分の速度で昇降する。すなわち、前記プーリ6は、前記乗り籠50が最下層まで下降したときは、前記昇降路10の最下層に留まる一方、前記乗り籠50が最上階まで昇降したときは、前記昇降路10の半分程度の高さで留まることになる。
【0034】
前記昇降路10のうち、前記乗り籠50と前記後部壁面14との間、及び、前記乗り籠50と前記集約側面12と対向する側壁との間は、脱出領域70から構成されている。前記脱出領域70のうち、前記集約側面12と対向する側面には、昇降路ラダー71が設けられている。乗員は、緊急時に前記乗り籠50内から脱出し、前記昇降路ラダー71を利用することによって、各階に移動することができる。本実施形態では、前記集約側面12と対向する側面に設けられているが、脱出領域70内に設けられていれば、前記船舶用エレベータ1の運転に必要な構成部材、ケーブル移動領域60、又は乗降扉引込領域120と配置が被らないため、適宜変更可能である。
【0035】
以上のように構成された本発明の船舶用エレベータによれば、乗り籠50、カウンターウエイト40等のエレベータの運転に必要な構成部材、乗降扉引込領域120、及びケーブル移動領域70を前記乗り籠50と集約側面12との間に配置しているため、後部壁面14と前記乗り籠50との間、及び前記集約側面12と対向する側面と前記乗り籠50との間に上記各構成部材が配置されていない。これにより、前記昇降路10内のうち、上記各構成部材と干渉しない位置で脱出領域70を設けることができる。従って、船舶用エレベータ1の運転に必要な各構成部材、及び各領域を前記乗り籠50と前記集約側面12との間に集約させることにより、前記昇降路10の断面積を小さくしつつも、各構成部材と干渉しない位置で十分な広さの脱出領域70を設けることができる。
【0036】
また、本発明の船舶用エレベータ1は、前記乗り籠50,前記カウンターウエイト40等のエレベータの運転に必要な構成部材を前記集約側面12に設けた支持部材20によって片持ち状態で保持している。そのため、船舶用エレベータ1の設置に際し、前記昇降路10の四方の壁面のうち、前記集約側面12のみに対して溶接工事を行えば良い。従って、昇降路10の壁面に対する溶接によって生じる再塗装を一側面分のみに省略することができるため、前記船舶用エレベータ1の設置工事に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0037】
さらに、前記昇降路10内の前部壁面11と支持部材20aとの間には、前記乗り籠50に設けられている乗り籠扉52を収容するための乗降扉引込領域120が設けられている。従って、前記船舶用エレベータ1は、前記昇降路10の断面積を小さくしつつも、前記乗り籠扉52を大きく開放することができるため、横幅の大きい荷物であっても搬送することができる。
【符号の説明】
【0038】
1…船舶用エレベータ、11…前部壁面、12…集約側面、14…後部壁面、20…支持部材、21…第二ガイドレール、22…第一ガイドレール、24…取付け部、40…カウンターウエイト、50…乗り籠、60…ケーブル移動領域、70…脱出領域、80…綱車、120…乗降扉引き込み領域
【要約】 (修正有)
【課題】運転に必要な各構成部材を脱出領域が干渉しない位置で設けつつ、昇降路の断面積を小さくし、船舶内のスペースを効率よく活用することが可能な船舶用エレベータを提供する。
【解決手段】昇降路と、前記昇降路の集約側面に固定された一対の支持部材と、前記昇降路に沿って前記支持部材に固定されたガイドレールと、乗り籠扉を有すると共に、前記ガイドレールに沿って走行する案内部材を有し、当該案内部材によって片持ち状態で保持された乗り籠と、綱車に巻き付けられたロープを介して前記乗り籠と接続され、一対の支持部材間を上下動するカウンターウエイトと、を備え、前記前部壁面と一方の支持部材との間には前記乗り籠扉を収容する扉引込領域が設けられ、他方の支持部材と、後部壁面の間には、ケーブル移動領域が設けられ、前記乗り籠と前記後部壁面の間及び前記集約側面と対向する側面の間には、脱出ラダーを有する脱出領域が設けられている。
【選択図】
図1