(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】電池用外部端子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/564 20210101AFI20220531BHJP
H01M 50/516 20210101ALI20220531BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20220531BHJP
【FI】
H01M50/564
H01M50/516
H01M50/55 101
(21)【出願番号】P 2018015644
(22)【出願日】2018-01-31
【審査請求日】2020-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩二
(72)【発明者】
【氏名】手島 政和
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-109235(JP,A)
【文献】特開2016-018675(JP,A)
【文献】特開2016-195036(JP,A)
【文献】特開2015-011807(JP,A)
【文献】特許第5342090(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50 - 50/598
B21J 5/02
B21K 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接によりバスバーが接合される頭部と、集電板が接続される軸部とを備える電池用外部端子の製造方法であって、
所定の長さに切断された金属片を一端が突出させるように受け駒で保持し、押圧面の中心部に突部を有
し、その突部の側面が傾斜状に成形されたパンチで金属片の一端を押圧することにより頭部を成形するとともに
、頭部表面の中心部に傾斜状の内周面を有する凹みを形成し、頭部表面
の中心部を除いて平滑に仕上げて、その平滑に仕上げられた頭部表面にバスバーを接合することを特徴とする電池用外部端子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池等に適用可能な電池用外部端子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池等の充放電可能な二次電池が自動車の動力源として採用されている。自動車の動力源として使用する場合、大容量の電池が必要になることから、例えば、特許文献1に示すように、複数の電池セルをモジュール化したものが搭載される。
【0003】
前記電池セルの外部端子は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料で形成されており、頭部と、この頭部に一体成形される軸部とから構成される。軸部は、電池セルの内部に収納された集電板に接続される。
【0004】
また、電池用外部端子の製造方法としては、特許文献2に示すように、冷間圧造による成型が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6258858号公報
【文献】特許第6112157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電池用外部端子を冷間圧造(ヘッダー加工)によって成形した場合、スプリングバックの影響により頭部表面が部分的に膨張してまう。電池セルは、外部端子同士を導電性のバスバーで溶接によって接続することでモジュール化されるものであるが、バスバーとの接合面である外部端子の頭部表面の平滑性が低いと、バスバーとの密着性が低くなり、安定した導電性を確保することができなくなる問題を有していた。
【0007】
また、ヘッダー加工では加工油を用いるが、その加工油が頭部上面に滞留した状態でヘッダーパンチを押圧すると、頭部表面とヘッダーパンチとの境界面で逃げ場を失った加工油が、ヘッダーパンチに押圧されて頭部表面に打痕を発生させてしまう問題もあった。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みて創成されたものであり、バスバーを溶接するにあたり、接合面の平滑性を高め、安定した導電性を確保することができる電池用外部端子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、溶接によりバスバーが接合される頭部と、集電板が接続される軸部とを備える電池用外部端子の製造方法であって、所定の長さに切断された金属片を一端が突出させるように受け駒で保持し、押圧面の中心部に突部を有し、その突部の側面が傾斜状に成形されたパンチで金属片の一端を押圧することにより頭部を成形するとともに、頭部表面の中心部に傾斜状の内周面を有する凹みを形成し、頭部表面の中心部を除いて平滑に仕上げて、その平滑に仕上げられた頭部表面にバスバーを接合する電池用外部端子の製造方法によって解決できる。
【0010】
なお、前記パンチの突部は、基端側から先端側にかけて外径が小さくなるように形成されていることが好ましい。
【0011】
なお、前記パンチの突部は、その側面が傾斜面に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電池用外部端子の製造方法によれば、押圧面に突部が設けられたパンチで頭部を成形するので、スプリングバックの影響により頭部表面に膨張部が発生することを抑制するため、頭部表面の平滑性に優れた電池用外部端子を製造することができる。
【0013】
また、仮に、押圧面が平坦なパンチを用いて頭部を成形した場合、スプリングバックの影響により頭部表面に発生する膨張部は山形状となる。そこで、突部が基端側から先端側にかけて外径が小さくなるように形成されたパンチを用いることにより、山形状の膨張部を概ね過不足なく相殺することで、頭部表面の平滑性がより優れたものとなる。
【0014】
また、押圧面に突部を有するパンチで頭部を成形した場合、頭部表面に若干の凹部が成形される。頭部の成形は、加工油を用いたヘッダー加工で行われるため、この凹部に加工油が滞留し、滞留した加工油が突部に押し出されて頭部表面に溢れでる。このため、溢れ出た加工油がパンチに押圧されることにより、頭部表面に打痕を発生させる問題がある。そこで、突部の側面を傾斜面にすることで、このような突部によって形成された凹部の側面は、加工油を塞き止める機能を果たし、加工油が凹部から溢れ出ないようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の電池用外部端子の製造方法によって製造される電池用外部端子の正面視一部切り欠き断面図である。
【
図2】本発明の電池用外部端子の製造方法によって製造される電池用外部端子の平面図である。
【
図3】本発明の電池用外部端子の製造方法によって製造される電池用外部端子の使用形態を示す斜視図である。
【
図4】本発明の電池用外部端子の製造方法における切断工程を示す工程図である。
【
図5】本発明の電池用外部端子の製造方法における絞り工程を示す工程図である。
【
図6】本発明の電池用外部端子の製造方法における予備成形工程を示す工程図である。
【
図7】本発明の電池用外部端子の製造方法における仕上げ工程を示す工程図である。
【
図8】本発明の電池用外部端子の製造方法における排出工程を示す工程図である。
【
図9】
図7に示す仕上げ工程で用いられるパンチの正面視一部切り欠き断面図である。
【
図11】本発明の他の実施形態に係る電池用外部端子の製造方法によって製造される電池用外部端子の正面視一部切り欠き断面図である。
【
図12】本発明の他の実施形態に係る電池用外部端子の製造方法によって製造される電池用外部端子の平面図である。
【
図13】本発明の他の実施形態に係る電池用外部端子の製造方法において仕上げ工程で用いられるパンチの正面視一部切り欠き断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1および
図2において、10は、本発明である電池用外部端子の製造方法によって製造される電池用外部端子10である。この電池用外部端子10は、アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料で形成されており、頭部11と、この頭部に一体成形される軸部12とから構成される。
【0017】
図3に示すように、電池用外部端子10は、電池の一例であるリチウムイオン電池1の正極端子として用いられ、電池用外部端子10の軸部12には、リチウムイオン電池1の筐体内部に収納された集電板(図示せず)が接続される。また、電池用外部端子10の頭部11同士をバスバー2で溶接により接続することによって、複数のリチウムイオン電池1がモジュール化されている。
【0018】
ここで、本発明である電池用外部端子の製造方法を、
図3に基づいて説明する。本発明の電池用外部端子の製造方法は、
図4ないし
図8に示すように、線材20を所定の長さに切断する切断工程と、前記切断工程により切断した棒状素材23の先端部23aを絞り加工して軸部12を成形する絞り工程と、前記棒状素材23の他端部23bを押圧して頭部11を予備成形する予備成形工程と、予備成形された棒状素材の他端部23bを押圧して頭部11を圧造成形する仕上げ工程と、仕上げ工程によって棒状素材23を成形することにより製作された電池用外部端子10を受け駒から排出する排出工程とから成る。
【0019】
図4に示すように、切断工程は、材質がアルミニウムである線材20を切り駒21の貫通孔21aへ挿通するとともに、線材20の先端がストッパ22に当接するまで繰出し、切り駒21の貫通孔21aの開口部分から突出した線材20を所定の長さに切断し、金属片の一例である棒状素材23を製作する工程である。また、線材20の切断は、線材20の軸線と直交する方向(矢印Aで示す方向)へ移動するカッター24により行われる。
【0020】
図5に示すように、絞り工程は、前記切断工程によって切断した棒状素材23の先端部23aを絞り駒31を用いて小径に絞り込む工程である。この絞り駒31には、棒状素材23の外径より小径の絞り孔31aと、この絞り孔31aに連通するとともに棒状素材23の外径より若干大径の挿通孔31bとが中心軸線上に穿設されている。
【0021】
そこで、絞り工程では、まず、絞り駒31の挿通孔31bに棒状素材23を挿入する。続いて、この棒状素材23を絞りピン32で絞り孔31aの位置する方向(矢印Bで示す方向)へ押圧する。すると、棒状素材23の先端部23aは、塑性変形により絞り孔31aへ流入し、小径に絞り込まれる。最後に、絞り駒31の絞り孔31a側から挿入されたノックアウトピン33を挿通孔31bの位置する方向(矢印Cで示す方向)へ移動させることによって、棒状素材23は絞り駒31から排出する。
【0022】
図6に示すように、予備成形工程は、受け駒41および予備成形パンチ42を用いて、前記絞り工程によって成形された棒状素材23の他端部23bを頭部11の完成形状に近づけるための工程である。この受け駒41は、棒状素材23の先端部23aを挿入可能で、かつ他端部23bを挿入不可能な内径に設定された挿入孔41aと、挿入孔41aに連通するとともに、棒状素材23の他端部23bを一部突出した状態で収容可能な予備成形穴部41bとを有する。
【0023】
また、予備成形パンチ42は、端面にすり鉢形状の予備成形凹部42aを有する。予備成形パンチの予備成形凹部41bを棒状素材23の他端部23bに向かって(矢印Dで示す方向)押圧する。これにより、棒状素材23の他端部23bは予備成形穴部41bの内周面に沿って胴部膨れするように変形して頭部11(他端部23b)が予備成形される。
【0024】
さらに、予備成形パンチ42の予備成形凹部42aの底面は、その中央部分に突部42bを有している。このため、予備成形された棒状素材23の頭部11(他端部23b)の表面には中央部分に凹み23cが形成される。
【0025】
図7に示すように、前記仕上げ工程は、予備成形された棒状素材23の頭部11(他端部23b)を、パンチ52で押圧することによって、
図1及び
図2に示す完成品である電池用外部端子10の頭部形状に成形する工程である。このパンチ52は、
図9及び
図10に示すように、端面にはその中央部分に半円球状の突部52bを有している。このように構成されたパンチ52で、受け駒41に保持されている予備成形された棒状素材23の頭部11(他端部23b)を押圧する。すると、棒状素材23の頭部11(他端部23b)が予備成形凹部41bを充填するように塑性変形することによって、頭部11が完成する。もちろん、突部52bを有するパンチ52で成形したため、棒状素材23の頭部表面の中央部分には凹み23eが形成されている。
【0026】
図8に示すように、前記排出工程では、電池用外部端子10に成形された棒状素材23が、受け駒41の挿入孔41a側から挿入されたノックアウトピン43を予備成形穴部41bの位置する方向(矢印Eで示す方向)へ移動させることによって、受け駒41から排出される。
【0027】
ここで、前記仕上げ工程において、パンチ52の押圧面(端面)52cの中央部分に突部52bを設ける理由としては、従来のように、押圧面に突部が無く平らなものを用いた場合、電池用外部端子の頭部表面が平滑性の低いものが成形されてしまう問題があった。これに対し、本発明のようなパンチ52を用いて成形された電池用外部端子10の頭部11の表面においては、凹み23eの周辺部23dが平滑性の高いものとなり、ここにバスバー2をレーザー溶接あるいはスポット溶接するのに好適なものとなる。
【0028】
以下、本発明の他の実施形態として、パンチ52に代えて、
図13及び
図14に示すパンチ152を用いて、
図11及び
図12に示す電池用外部端子110を製造する方法を説明する。なお、当該他の実施形態においては、仕上げ工程で用いるパンチ152の構成以外の部分は、前述した電池用外部端子の製造方法と同様であるため、相違点のみ説明する。パンチ152は、押圧面152cの中央部分に円錐台の突部152bを有しており、突部152bの側面は傾斜面152dに成形されている。
【0029】
図11及び
図12に示すように、パンチ152を用いて成形された電池用外部端子110は、頭部111の表面に凹み123eが成形されるとともに、その周辺部123dは平滑性の高いものとなる。また、パンチ152の突部152bの傾斜面152dによって成形された凹み123eの内周面も傾斜面123fに成形される。
【0030】
ここで、凹み123eに傾斜面123fを成形する理由としては、仕上げ工程では、加工油を用いて棒状素材23の成形が行われる。このため、その加工油が電池用外部端子110の頭部111の表面に滞留した状態でパンチ152を押圧すると、頭部111の表面とパンチ152との境界面で逃げ場を失った加工油が、パンチ152の押圧面152cに押圧されて頭部111の表面に打痕を発生させてしまう問題もあった。これに対し、本発明のようなパンチ152を用いて成形された電池用外部端子10においては、頭部11に成形された凹み123eの内周面が傾斜面123fに成形されているので、凹み123eに滞留した加工油が傾斜面123fによって塞き止められる。このため、加工油は、周辺部123dへ溢れ出ないので、周辺部123dの平滑性が損なわれることがない。凹み123eの内周面および底面には加工油によって多少の打痕ができてしまうが、この部分はバスバー2の溶接に影響を与えない部分であるから問題ない。
【0031】
1 リチウムイオン電池
2 バスバー
10,110 電池用外部端子
11,111 頭部
12,112 軸部
23 棒状素材(金属片)
23d、123d 周辺部
23e,123e 凹み
123f 傾斜面
41 受け駒
52,152 パンチ
52b,152b 突部
52c,152c 押圧面
152d 傾斜面