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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】治療用ヌクレアーゼ組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20220531BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20220531BHJP
   C12N 9/16 20060101ALI20220531BHJP
   C12N 9/22 20060101ALI20220531BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
C07K19/00
A61K38/46
C12N9/16 Z
C12N9/22
C12N15/62 Z ZNA
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018024633
(22)【出願日】2018-02-15
(62)【分割の表示】P 2016045546の分割
【原出願日】2010-11-02
(65)【公開番号】P2018087224
(43)【公開日】2018-06-07
【審査請求日】2018-03-15
【審判番号】
【審判請求日】2020-07-30
(31)【優先権主張番号】61/370,752
(32)【優先日】2010-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/257,458
(32)【優先日】2009-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514104933
【氏名又は名称】ユニヴァーシティ オブ ワシントン
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】レッドベター ジェフリー エー.
(72)【発明者】
【氏名】ハイデン―レッドベター マーサ
(72)【発明者】
【氏名】エルコン キース
(72)【発明者】
【氏名】サン シチャン
【合議体】
【審判長】上條 肇
【審判官】高堀 栄二
【審判官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/122511(WO,A2)
【文献】独国特許出願公開第102005009219(DE,A1)
【文献】特表2004-525630(JP,A)
【文献】Cancer Sci.(2009.Aug.),Vol.100,No.8,p.1359-1365
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K19/00
C12N15/00-15/62
CA/BIOSIS/WPIDS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のヌクレアーゼドメイン、第2のヌクレアーゼドメイン、およびFcドメイン変異体からなるポリペプチドであって、
該第1および第2のヌクレアーゼドメインが、互いに直列に連結しており、該第1および第2のヌクレアーゼドメイン間の連結が、直接的もしくはポリペプチドリンカーを介した連結、化学的コンジュゲート、または遺伝的融合であり、かつヌクレアーゼドメインの縦列アレイが、該Fcドメイン変異体のC末端またはN末端のいずれかと連結しており、該ヌクレアーゼドメインと該Fcドメイン変異体との連結が、直接的もしくはポリペプチドリンカーを介した連結、化学的コンジュゲート、または遺伝的融合であり、
該第1および第2のヌクレアーゼドメインはRNaseおよびDNaseから選択され、
該Fcドメイン変異体における変異は、Fcγ受容体もしくは補体タンパク質またはその両方に対する結合性を野生型ヒトIgG1 Fcドメインと比較して低下させる、1個、2個、3個、または4個のアミノ酸置換であり、
かつ該Fcドメイン変異体が抗体全体を含まない、前記ポリペプチド。
【請求項2】
前記第1および第2のヌクレアーゼドメインの少なくとも一方、ヒトRNaseまたはヒト膵臓RNase1であるRNaseである、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記第1および第2のヌクレアーゼドメインの少なくとも一方DNaseであり、該DNaseが、ヒトDNase I型、ヒトDNase1L3、またはヒトTREX1からなる群より選択されるヒトDNaseである、請求項1または2記載のポリペプチド。
【請求項4】
(a)前記Fcドメイン変異体、ヒンジドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む、かつ/または
(b)前記Fcドメイン変異体が、3つのヒンジシステインの1つもしくは複数に置換を含む改変されたヒンジドメインを含むか、もしくは3つのヒンジシステインの1つもしくは複数のセリンへの置換を含む改変されたヒンジドメインを含む、かつ/または
(c)前記Fcドメイン変異体が、P238S、P331S、N297S、もしくはそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの置換を含む改変されたCH2ドメインを含む、
請求項1記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記アミノ酸置換が、P238S、P331S、K322S、N297Sから選択される1つまたは複数の置換である、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記アミノ酸置換が、3つのヒンジ領域システイン残基のセリンへの1つまたは複数の置換ある、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記ヌクレアーゼドメインと前記Fcドメイン変異体との連結が、Gly-Serリンカーであるポリペプチドリンカーを介した連結である、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項8】
請求項1記載のポリペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む、成物。
【請求項9】
請求項1記載のポリペプチドを含む二量体。
【請求項10】
請求項記載の二量体および薬学的に許容される担体を含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年11月2日に提出された米国仮出願第61/257,458号および2010年8月4日に提出された米国仮出願第61/370,752号の恩典を主張し、これらの開示内容はすべて、目的を問わず、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
連邦政府による資金援助を受けた研究または開発に関する申告
本発明は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)(助成金AI44257、NS065933およびAR048796)、ループス研究同盟(Alliance for Lupus Research)およびワシントン州ライフサイエンスディスカバリー基金(Washington State Life Science Discovery Fund)(2087750)による支援を受けて行われた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
配列表の参照
本出願は、20XX年X月に作成された、サイズがXバイトであるXXXXXPCT_sequencelisting.txtという名前のテキストファイルとして電子的に提出された配列表を含む。この配列表は参照により組み入れられる。
【背景技術】
【0004】
背景
死細胞および瀕死細胞からの(リボ)核タンパク質粒子の過剰放出は、二通りの機序によってループス病態を引き起こす可能性がある:(i)クロマチン/抗クロマチン複合体の沈着またはインサイチュー形成が腎炎を引き起こし、腎機能の低下を招く;および(ii)核タンパク質が、toll様受容体(TLR)7、8および9ならびにTLR-非依存的経路を介して先天性免疫を活性化する。核タンパク質の放出は、SLEにおける自己抗体の強力な抗原として働いて、抗原受容体およびTLRの共関与(coengagement)を通じてB細胞およびDC活性化の増幅をもたらす可能性がある。したがって、それを必要とする対象において、誘発抗原を除去するため、ならびに/または免疫刺激、免疫増幅、および免疫複合体媒介性疾患を弱めるための手段に対しては、需要が存在する。
【発明の概要】
【0005】
概要
本明細書において開示するのは、第1のヌクレアーゼドメインおよびFcドメインを含むハイブリッド型ヌクレアーゼ分子であって、第1のヌクレアーゼドメインがFcドメインと機能的に接続されているハイブリッド型ヌクレアーゼ分子である。いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は第1のリンカードメインをさらに含み、第1のヌクレアーゼドメインは第1のリンカードメインによってFcドメインと機能的に接続されている。
【0006】
いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子はポリペプチドであり、ここで第1のヌクレアーゼドメインのアミノ酸配列はヒトの野生型RNaseのアミノ酸配列を含み、第1のリンカードメインは(Gly4Ser)nであり、式中、nは0、1、2、3、4または5であり、Fcドメインのアミノ酸配列はヒトの野生型IgG1 Fcドメインのアミノ酸配列を含み、かつ、第1のリンカードメインは第1のヌクレアーゼドメインのC末端およびFcドメインのN末端と接続されている。いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、表2に示された配列を含む、または該配列からなるポリペプチドである。いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、SEQ ID NO:149を含むポリペプチドである。いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、SEQ ID NO:145を含むポリペプチドである。いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、SEQ ID NO:161を含むポリペプチドである。いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、SEQ ID NO:162を含むポリペプチドである。いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、SEQ ID NO:163を含むポリペプチドである。
【0007】
いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、野生型のヒトIgG1と連結された野生型のヒトDNase1を含む。いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、(gly4ser)nリンカードメインによって野生型のヒトIgG1 Fcドメインと連結されたヒトDNase1 G105R A114Fを含み、式中、n=0、1、2、3、4または5である。いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、野生型のヒトDNase1と連結された野生型のヒトIgG1と連結された野生型のヒトRNase1を含む。いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、ヒトDNase1 G105R A114Fと連結された野生型のヒトIgG1と連結された野生型のヒトRNase1を含む。いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子はポリペプチドであり、ここで第1のヌクレアーゼドメインのアミノ酸配列はRNaseのアミノ酸配列を含み、第1のリンカードメインは5~32アミノ酸長であり、Fcドメインのアミノ酸配列はヒトのFcドメインのアミノ酸配列を含み、かつ第1のリンカードメインは第1のヌクレアーゼドメインのC末端およびFcドメインのN末端と接続されている。いくつかの態様において、リンカードメインは(gly4ser)5ならびに制限部位BglII、AgeIおよびXhoIを含む。いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子はポリペプチドであり、ここで第1のヌクレアーゼドメインのアミノ酸配列はヒトRNaseのアミノ酸配列を含み、第1のリンカードメインは5~32アミノ酸長のNLGペプチドであり、Fcドメインのアミノ酸配列はヒトの野生型Fcドメインのアミノ酸配列を含み、かつ第1のリンカードメインは第1のヌクレアーゼドメインのC末端およびFcドメインのN末端と接続されている。
【0008】
いくつかの態様において、Fcドメインはヒト細胞上のFc受容体と結合する。いくつかの態様において、前記分子の血清中半減期は第1のヌクレアーゼドメインのみの血清中半減期よりも有意に長い。いくつかの態様において、前記分子の第1のヌクレアーゼドメインのヌクレアーゼ活性はヌクレアーゼドメインのみと同じであるかまたはそれよりも高い。いくつかの態様において、マウスに対する前記分子の投与は、マウスのループスモデルのアッセイにより測定されるそのマウスの生存率を高める。
【0009】
いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子はリーダー配列を含む。いくつかの態様において、リーダー配列はヒトκ軽鎖ファミリー由来のヒトVK3LPペプチドであり、リーダー配列は第1のヌクレアーゼドメインのN末端と接続されている。
【0010】
いくつかの態様において、分子はポリペプチドである。いくつかの態様において、分子はポリヌクレオチドである。
【0011】
いくつかの態様において、第1のヌクレアーゼドメインはRNaseを含む。いくつかの態様において、RNaseはヒトRNaseである。いくつかの態様において、RNaseは、表2に記載のRNaseのアミノ酸配列に対して少なくとも90%類似するアミノ酸配列を含むポリペプチドである。いくつかの態様において、RNaseはヒトRNaseAファミリーのメンバーである。いくつかの態様において、RNaseはヒト膵臓RNase1である。
【0012】
いくつかの態様において、第1のヌクレアーゼドメインはDNaseを含む。いくつかの態様において、DNaseはヒトDNaseである。いくつかの態様において、DNaseは、表2に記載のDNaseのアミノ酸配列に対して少なくとも90%類似するアミノ酸配列を含むポリペプチドである。いくつかの態様において、DNaseはヒトDNaseI、TREX1およびヒトDNase1L3からなる群より選択される。
【0013】
いくつかの態様において、FcドメインはヒトFcドメインである。いくつかの態様において、Fcドメインは野生型Fcドメインである。いくつかの態様において、Fcドメインは突然変異型Fcドメインである。いくつかの態様において、FcドメインはヒトIgG1 Fcドメインである。いくつかの態様において、Fcドメインは、表2に記載のFcドメインのアミノ酸配列に対して少なくとも90%類似するアミノ酸配列を含むポリペプチドである。
【0014】
いくつかの態様において、第1のリンカードメインは約1~約50アミノ酸の長さを有する。いくつかの態様において、第1のリンカードメインは約5~約31アミノ酸の長さを有する。いくつかの態様において、第1のリンカードメインは約15~約25アミノ酸の長さを有する。いくつかの態様において、第1のリンカードメインは約20~約32アミノ酸の長さを有する。いくつかの態様において、第1のリンカードメインは約20アミノ酸の長さを有する。いくつかの態様において、第1のリンカードメインは約25アミノ酸の長さを有する。いくつかの態様において、第1のリンカードメインは約18アミノ酸の長さを有する。いくつかの態様において、第1のリンカードメインはgly/serペプチドを含む。いくつかの態様において、gly/serペプチドは式(Gly4Ser)nのものであり、式中、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9および10からなる群より選択される正の整数である。いくつかの態様において、gly/serペプチドは(Gly4Ser)3を含む。いくつかの態様において、gly/serペプチドは(Gly4Ser)4を含む。いくつかの態様において、gly/serペプチドは(Gly4Ser)5を含む。いくつかの態様において、第1のリンカードメインは少なくとも1つの制限部位を含む。いくつかの態様において、第1のリンカードメインは、少なくとも1つの制限部位を含む約12個またはそれ以上のヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、第1のリンカードメインは2つまたはそれ以上の制限部位を含む。いくつかの態様において、第1のリンカードメインは多数の制限部位を含む。いくつかの態様において、第1のリンカードメインはNLGペプチドを含む。いくつかの態様において、第1のリンカードメインはN結合型グリコシル化部位を含む。
【0015】
いくつかの態様において、第1のヌクレアーゼドメインはFcドメインのN末端と連結されている。いくつかの態様において、第1のヌクレアーゼドメインはFcドメインのC末端と連結されている。
【0016】
いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、第2のヌクレアーゼドメインをさらに含む。いくつかの態様において、第1および第2のヌクレアーゼドメインは異なるヌクレアーゼドメインである。いくつかの態様において、第1および第2のヌクレアーゼドメインは同じヌクレアーゼドメインである。いくつかの態様において、第2のヌクレアーゼドメインはFcドメインのC末端と連結されている。いくつかの態様において、第2のヌクレアーゼドメインはFcドメインのN末端と連結されている。いくつかの態様において、第2のヌクレアーゼドメインは第1のヌクレアーゼドメインのC末端と連結されている。いくつかの態様において、第2のヌクレアーゼドメインは第1のヌクレアーゼドメインのN末端と連結されている。
【0017】
同じく本明細書において開示されるのは、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含む二量体ポリペプチドであって、第1のポリペプチドが第1のヌクレアーゼドメインおよびFcドメインを含み、第1のヌクレアーゼドメインがFcドメインと機能的に接続されている二量体ポリペプチドである。いくつかの態様において、第2のポリペプチドは第2のヌクレアーゼドメインおよび第2のFcドメインを含む第2のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子であり、第2のヌクレアーゼドメインは第2のFcドメインと機能的に接続されている。
【0018】
同じく本明細書において開示されるのは、本明細書に記載の少なくとも1つのハイブリッド型ヌクレアーゼ分子および/または少なくとも1つの二量体ポリペプチドならびに薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物である。
【0019】
同じく本明細書において開示されるのは、本明細書に開示されたハイブリッド型ヌクレアーゼ分子をコードする核酸分子である。同じく本明細書において開示されるのは、本明細書に開示された核酸分子を含む組換え発現ベクターである。同じく本明細書において開示されるのは、本明細書に開示された組換え発現ベクターによって形質転換された宿主細胞である。
【0020】
同じく本明細書において開示されるのは、本明細書に開示されたハイブリッド型ヌクレアーゼを作製する方法であって、以下の段階を含む方法である:ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子をコードする核酸配列を含む宿主細胞を用意する段階;および、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子が発現される条件下に宿主細胞を維持する段階。
【0021】
同じく本明細書において開示されるのは、異常な免疫応答と関連のある病状を治療または予防するための方法であって、それを必要とする患者に対して、本明細書に開示された単離されたハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の有効量を投与する段階を含む方法である。いくつかの態様において、病状は自己免疫疾患である。いくつかの態様において、自己免疫疾患は、インスリン依存性真性糖尿病、多発性硬化症、実験的自己免疫性脳脊髄炎、関節リウマチ、実験的自己免疫性関節炎、重症筋無力症、甲状腺炎、実験型ブドウ膜網膜炎、橋本甲状腺炎、原発性粘液水腫、甲状腺中毒症、悪性貧血、自己免疫性萎縮性胃炎、アジソン病、早発閉経、男性不妊症、若年型糖尿病、グッドパスチャー症候群、尋常性天疱瘡、類天疱瘡、交感性眼炎、水晶体起因性ブドウ膜炎、自己免疫性溶血性貧血、特発性白血球減少症、原発性胆汁性肝硬変、活動性慢性肝炎Hbs-ve、特発性肝硬変、潰瘍性大腸炎、シェーグレン症候群、強皮症、ヴェーゲナー肉芽腫症、多発性筋炎、皮膚筋炎、円板状エリテマトーデス、全身性エリテマトーデス(SLE)および結合組織病からなる群より選択される。いくつかの態様において、自己免疫疾患はSLEである。
[本発明1001]
第1のヌクレアーゼドメインおよびFcドメインを含むハイブリッド型ヌクレアーゼ分子であって、第1のヌクレアーゼドメインがFcドメインと機能的に接続されている、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1002]
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子がポリペプチドであり、第1のヌクレアーゼドメインのアミノ酸配列がSEQ ID NO:149に記載のヒトの野生型RNaseのアミノ酸配列を含み、Fcドメインのアミノ酸配列がSEQ ID NO:145に記載のヒトの野生型IgG1 Fcドメインのアミノ酸配列を含む、本発明1001のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1003]
SEQ ID NO:163からなるポリペプチドである、本発明1001のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1004]
野生型のヒトIgG1と連結された野生型のヒトDNase1を含む、本発明1001のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1005]
野生型のヒトIgG1と連結されたヒトDNase1 G105R A114Fを含む、本発明1001のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1006]
野生型のヒトDNase1と連結された野生型のヒトIgG1と連結された野生型のヒトRNase1を含む、本発明1001のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1007]
ヒトDNase1 G105R A114Fと連結された野生型のヒトIgG1と連結された野生型のヒトRNase1を含む、本発明1001のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1008]
Fcドメインがヒト細胞上のFc受容体と結合する、本発明1001のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1009]
前記分子の血清中半減期が第1のヌクレアーゼドメインのみの血清中半減期よりも有意に長い、本発明1001のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1010]
前記分子の第1のヌクレアーゼドメインのヌクレアーゼ活性がヌクレアーゼドメインのみと同じかまたはそれよりも高い、本発明1001のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1011]
マウスに対する前記分子の投与が、マウスのループスモデルのアッセイにより測定される該マウスの生存率を高める、本発明1001のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1012]
前記分子が第1のリンカードメインをさらに含み、かつ第1のヌクレアーゼドメインが第1のリンカードメインによってFcドメインと機能的に接続されている、本発明1001のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1013]
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子がポリペプチドであり、第1のヌクレアーゼドメインのアミノ酸配列がRNaseのアミノ酸配列を含み、第1のリンカードメインが5~32アミノ酸長であり、Fcドメインのアミノ酸配列がヒトのFcドメインのアミノ酸配列を含み、かつ第1のリンカードメインが第1のヌクレアーゼドメインのC末端およびFcドメインのN末端と接続されている、本発明1012のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1014]
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子がポリペプチドであり、第1のヌクレアーゼドメインのアミノ酸配列がヒトRNaseのアミノ酸配列を含み、第1のリンカードメインが5~32アミノ酸長のNLGペプチドであり、Fcドメインのアミノ酸配列がヒトの野生型Fcドメインのアミノ酸配列を含み、かつ第1のリンカードメインが第1のヌクレアーゼドメインのC末端およびFcドメインのN末端と接続されている、本発明1012のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1015]
リーダー配列をさらに含む、本発明1001のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1016]
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子がポリペプチドであり、リーダー配列がヒトVK3LPペプチドであり、かつリーダー配列が第1のヌクレアーゼドメインのN末端と接続されている、本発明1015のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1017]
ポリペプチドである、本発明1001のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1018]
ポリヌクレオチドである、本発明1001のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1019]
第1のヌクレアーゼドメインがRNaseを含む、本発明1001のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1020]
RNaseがヒトRNaseである、本発明1019のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1021]
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子がポリペプチドであり、かつRNaseが、表2に記載のRNaseのアミノ酸配列に対して少なくとも90%類似するアミノ酸配列を含むポリペプチドである、本発明1019のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1022]
RNaseがヒト膵臓RNase1である、本発明1019のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1023]
第1のヌクレアーゼドメインがDNaseを含む、本発明1001のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1024]
DNaseがヒトDNaseである、本発明1023のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1025]
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子がポリペプチドであり、かつDNaseが、表2に記載のDNaseのアミノ酸配列に対して少なくとも90%類似するアミノ酸配列を含むポリペプチドである、本発明1023のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1026]
DNaseがヒトDNaseI、TREX1およびヒトDNase1L3からなる群より選択される、本発明1023のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1027]
FcドメインがヒトFcドメインである、本発明1001のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1028]
Fcドメインが野生型Fcドメインである、本発明1001のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1029]
Fcドメインが突然変異型Fcドメインである、本発明1001のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1030]
FcドメインがヒトIgG1 Fcドメインである、本発明1001のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1031]
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子がポリペプチドであり、かつFcドメインが、表2に記載のFcドメインのアミノ酸配列に対して少なくとも90%類似するアミノ酸配列を含むポリペプチドである、本発明1001のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1032]
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子がポリペプチドであり、かつ第1のリンカードメインが約1~約50アミノ酸の長さを有する、本発明1012のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1033]
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子がポリペプチドであり、かつ第1のリンカードメインが約5~約32アミノ酸の長さを有する、本発明1012のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1034]
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子がポリペプチドであり、かつ第1のリンカードメインが約15~約25アミノ酸の長さを有する、本発明1012のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1035]
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子がポリペプチドであり、かつ第1のリンカードメインが約20~約32アミノ酸の長さを有する、本発明1012のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1036]
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子がポリペプチドであり、かつ第1のリンカードメインが約20アミノ酸の長さを有する、本発明1012のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1037]
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子がポリペプチドであり、かつ第1のリンカードメインが約25アミノ酸の長さを有する、本発明1012のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1038]
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子がポリペプチドであり、かつ第1のリンカードメインが約18アミノ酸の長さを有する、本発明1012のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1039]
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子がポリペプチドであり、かつ第1のリンカードメインがgly/serペプチドを含む、本発明1012のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1040]
gly/serペプチドが式(Gly4Ser)nのものであり、式中、nが1、2、3、4、5、6、7、8、9および10からなる群より選択される正の整数である、本発明1039のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1041]
gly/serペプチドが(Gly4Ser)3、(Gly4Ser)4または(Gly4Ser)5を含む、本発明1039のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1042]
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子がポリペプチドであり、かつ第1のリンカードメインがNLGペプチドを含む、本発明1012のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1043]
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子がポリペプチドであり、かつ第1のリンカードメインがN結合型グリコシル化部位を含む、本発明1012のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1044]
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子がポリペプチドであり、かつ第1のヌクレアーゼドメインがFcドメインのN末端と連結されている、本発明1001のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1045]
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子がポリペプチドであり、かつ第1のヌクレアーゼドメインがFcドメインのC末端と連結されている、本発明1001のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1046]
第2のヌクレアーゼドメインをさらに含む、本発明1001のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1047]
第1および第2のヌクレアーゼドメインが異なるヌクレアーゼドメインである、本発明1046のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1048]
第1および第2のヌクレアーゼドメインが同じヌクレアーゼドメインである、本発明1046のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1049]
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子がポリペプチドであり、かつ第2のヌクレアーゼドメインがFcドメインのC末端と連結されている、本発明1046のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1050]
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子がポリペプチドであり、かつ第2のヌクレアーゼドメインがFcドメインのN末端と連結されている、本発明1046のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1051]
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子がポリペプチドであり、かつ第2のヌクレアーゼドメインが第1のヌクレアーゼドメインのC末端と連結されている、本発明1046のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1052]
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子がポリペプチドであり、かつ第2のヌクレアーゼドメインが第1のヌクレアーゼドメインのN末端と連結されている、本発明1046のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子。
[本発明1053]
第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含む二量体ポリペプチドであって、第1のポリペプチドが第1のヌクレアーゼドメインおよびFcドメインを含み、第1のヌクレアーゼドメインがFcドメインと機能的に接続されている、二量体ポリペプチド。
[本発明1054]
第2のポリペプチドが第2のヌクレアーゼドメインおよび第2のFcドメインを含む第2のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子であり、第2のヌクレアーゼドメインが第2のFcドメインと機能的に接続されている、本発明1053の二量体ポリペプチド。
[本発明1055]
本発明1001~1054のいずれかの少なくとも1つのハイブリッド型ヌクレアーゼ分子および/または少なくとも1つの二量体ポリペプチド、ならびに薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物。
[本発明1056]
本発明1017のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子をコードする核酸分子。
[本発明1057]
本発明1056の核酸分子を含む組換え発現ベクター。
[本発明1058]
本発明1057の組換え発現ベクターによって形質転換された宿主細胞。
[本発明1059]
以下の段階を含む、本発明1001のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を作製する方法:ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子をコードする核酸配列を含む宿主細胞を用意する段階;およびハイブリッド型ヌクレアーゼ分子が発現される条件下で該宿主細胞を維持する段階。
[本発明1060]
異常な免疫応答と関連のある病状を治療または予防するための方法であって、それを必要とする患者に対して、本発明1001の単離されたハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の有効量を投与する段階を含む、方法。
[本発明1061]
病状が自己免疫疾患である、本発明1060の方法。
[本発明1062]
自己免疫疾患が、インスリン依存性真性糖尿病、多発性硬化症、実験的自己免疫性脳脊髄炎、関節リウマチ、実験的自己免疫性関節炎、重症筋無力症、甲状腺炎、実験型ブドウ膜網膜炎、橋本甲状腺炎、原発性粘液水腫、甲状腺中毒症、悪性貧血、自己免疫性萎縮性胃炎、アジソン病、早発閉経、男性不妊症、若年型糖尿病、グッドパスチャー症候群、尋常性天疱瘡、類天疱瘡、交感性眼炎、水晶体起因性ブドウ膜炎、自己免疫性溶血性貧血、特発性白血球減少症、原発性胆汁性肝硬変、活動性慢性肝炎Hbs-ve、特発性肝硬変、潰瘍性大腸炎、シェーグレン症候群、強皮症、ヴェーゲナー肉芽腫症、多発性筋炎、皮膚筋炎、円板状エリテマトーデス、全身性エリテマトーデス(SLE)および結合組織病からなる群より選択される、本発明1061の方法。
[本発明1063]
自己免疫疾患がSLEである、本発明1061の方法。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の上記および他の特徴、局面および利点は、以下の説明および添付の図面との関連で、より良く理解されるようになるであろう。
【0023】
図1-1】P238S、K322SおよびP331Sに突然変異を有するmRNase-mIgG2aのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示している。この配列は配列表に、huVK3LP+mrib1+mIgG2A-C-2S(SEQ ID NO:114)として列記されている。
図1-2】P238S、K322SおよびP331Sに突然変異を有するmRNase-mIgG2aのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示している。この配列は配列表に、huVK3LP+mrib1+mIgG2A-C-2S(SEQ ID NO:114)として列記されている。
図1-3】P238S、K322SおよびP331Sに突然変異を有するmRNase-mIgG2aのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示している。この配列は配列表に、huVK3LP+mrib1+mIgG2A-C-2S(SEQ ID NO:114)として列記されている。
図2】本明細書に記載のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子のいくつかの態様の概略図を示している。
図3】還元条件および非還元条件の両方におけるmRNase-mIgG2a-cのSDS-PAGEゲル分析を示している。
図4】mRNasemIg2a-cのゲル免疫沈降分析を示している。
図5】RNase-Igハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の静脈内注射の前および後の、マウス410の抗RNA抗体のELISA力価を示している。このデータは、RNase-Igの注射が抗RNA抗体の力価の低下を引き起こし、それが3週間にわたって持続したことを示している。
図6】SLE患者(J11)由来の血清+核抽出物(NE)によって形成された免疫複合体を用いて刺激したヒト末梢血単核細胞からのインターフェロン-αの誘導が、RNase-Igの添加により消失したことを示している。抗RNA抗体の力価はRNase-Igの注射後に低下した。
図7】SLE患者(J11)由来の血清+核抽出物によって形成された免疫複合体を用いて刺激したヒト末梢血単核細胞からのインターフェロン-αの誘導が、RNase-Igの添加により消失したことを示している。
図8】正常B6マウスと比較した、2匹のRNaseトランスジェニック(Tg)マウスの血清の一元放射酵素拡散(SRED)分析を示している。
図9】ELISAによって測定した、Tgマウスおよび二重Tg(DTg)マウスにおけるRNaseAの濃度を示している。各ドットは、個々のマウスで測定された濃度を表している。
図10】TLR7.1 TgマウスおよびTLR7.1×RNaseA DTgマウスの生存を示している。
図11】TgマウスおよびDTgマウスの脾臓におけるIRGの定量的PCRを示している。
図12】ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の種々の態様を作り出すためのプロトタイプ構造を示している。
図13】RNase Alert Substrate(商標)を用いて測定した、hRNase1-G88D-hIgG1 SCCH-P238S-K322S-P331Sハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の酵素反応速度を示している。
図14】hRNase1-WT-hIgG1-WTとヒト単球性細胞株U937およびTHP1との結合を示している。両方のプロットにおいて左側のピークは対照であり、両方のプロットにおいて右側のピークはhRNase1-WT-hIgG1-WTである。
図15】hRNase1-WT-hIgG1-WTによるU937細胞およびTHP-1細胞との結合に対するヒトIVIgの遮断活性を示している。
図16】Trex1-(g4s)n-mIgGの代替形態によるDNA消化アッセイの結果を示している。
図17】COS-7一過性トランスフェクションによるtrex1-(Gly4S)4-Igおよびtrex1-(G1y4S)5-Ig培養上清に対するウエスタンブロットの結果を示している。
図18】DNase1L3-mIgG2a-cハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を発現する、2A3、3A5および8H8と命名された、安定的にトランスフェクトされた異なるCHO DG44クローンによるDNA消化パターンを示している。
図19】酵素阻害薬としてのヘパリンの存在下および非存在下におけるさまざまなインキュベーション時間後の、DNase1L3-Igハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の量の減少に伴うDNA消化パターンを示している。
図20】hRNase1-Ig-hDNase1またはhDNase1-Igハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の種々の態様を発現する、一過性にトランスフェクトされたCOS細胞からの、免疫沈降した融合タンパク質のウエスタンブロットを示している。
図21】hRNase1-Ig-hDNase1またはhDNase1-Igハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の種々の態様を発現するCOS上清中のRNase活性の存在を評価するためのSRED分析を示している。
図22】トランスフェクトされた細胞由来のCOS上清に対して行ったDNaseヌクレアーゼ活性アッセイの結果を表示している合成図を示している。図21による番号付けの記載(例えば、090210-8および091210-8)が、この図にも同じく該当する。
図23】RNase Alert Substrate(Ambion/IDT)を用いてアッセイした酵素反応速度、およびSpectramax M2マイクロプレートリーダーを用いて定量した蛍光を示している。データはSoftmax Proソフトウエア(Molecular Devices)を用いて解析した。種々の基質濃度での反応速度を測定し、データをラインウィーバー・バーク(Lineweaver-Burk)プロットとして示した。容量に関して補正した見かけのKmは280nMである。
図24】トランスジェニックマウスの加齢に伴う継続的間隔での、H564およびH564RNaseA二重トランスジェニックマウス由来のマウス血清中の抗RNA抗体のレベルを示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
特許請求の範囲および本明細書で用いられる用語は、別に指定する場合を除き、以下の記載のように定義される。親の仮特許出願で用いられる用語と相反する場合には、本明細書で用いられる用語が優先するものとする。
【0025】
「アミノ酸」とは、天然のアミノ酸および合成アミノ酸のほか、天然のアミノ酸と同じように機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体のことも指す。天然のアミノ酸には、遺伝暗号によってコードされるもののほか、翻訳後に修飾されたもの、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸およびO-ホスホセリンなどがある。アミノ酸類似体とは、天然のアミノ酸と同じ基本的化学構造、すなわち水素、カルボキシル基、アミノ基およびR基と結合したα炭素を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムなどのことを指す。そのような類似体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有するが、天然のアミノ酸と同じ基本的化学構造を保っている。アミノ酸模倣体とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するものの、天然のアミノ酸と類似した様式で機能する化合物のことを指す。
【0026】
アミノ酸は、本明細書において、一般的に公知であるそれらの三文字記号によって称してもよく、またはIUPAC-IUBの生化学物質命名委員会(Biochemical Nomenclature Commission)によって推奨されている一文字記号によって称してもよい。同様にヌクレオチドも、一般的に認められているそれらの一文字コードによって称することができる。
【0027】
「アミノ酸置換」とは、所定のアミノ酸配列(出発ポリペプチドのアミノ酸配列)中の少なくとも1つの既存のアミノ酸残基を、第2の異なる「置き換え」アミノ酸残基により置き換えることを指す。「アミノ酸挿入」とは、所定のアミノ酸配列中へ、少なくとも1つの追加のアミノ酸を組み入れることを指す。挿入は通常、1個または2個のアミノ酸残基の挿入からなると考えられるが、ここではより大規模な「ペプチド挿入」、例えば、約3~約5個、またはさらには最大で約10個、15個もしくは20個のアミノ酸残基の挿入も行うことができる。挿入される残基は天然のものでもよく、または上記に開示されたような非天然のものでもよい。「アミノ酸欠失」とは、所定のアミノ酸配列から少なくとも1つのアミノ酸残基を除去することを指す。
【0028】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、本明細書において、アミノ酸残基の重合体を指して互換的に用いられる。これらの用語は、天然のアミノ酸重合体および非天然のアミノ酸重合体のほか、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然のアミノ酸の化学模倣体であるアミノ酸重合体に対しても適用される。
【0029】
「核酸」とは、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、および一本鎖または二本鎖形態のいずれかにあるそれらの重合体のことを指す。別に具体的に限定する場合を除き、この用語は、参照核酸と類似の結合特性を有し、かつ天然のヌクレオチドと類似した様式で代謝される、天然ヌクレオチドの公知の類似体を含む核酸を範囲に含む。別に指定する場合を除き、個々の核酸配列は、その保存的に改変された変異体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列、さらには明示的に指定された配列も、暗黙のうちに範囲に含む。具体的には、縮重コドン置換体は、選択した1つまたは複数の(またはすべての)コドンの第3の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基によって置換された配列を作製することによって得ることができる(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081, 1991;Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608, 1985);およびCassol et al., 1992;Rossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98, 1994)。アルギニンおよびロイシンについては、第2の塩基での改変も保存的である可能性がある。核酸という用語は、遺伝子、遺伝子によってコードされるcDNAおよびmRNAと互換的に用いられる。
【0030】
本発明のポリヌクレオチドは任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドで構成されてよく、それは修飾されていないRNAもしくはDNAであってもよく、または修飾されたRNAもしくはDNAであってもよい。例えば、ポリヌクレオチドは、一本鎖および二本鎖のDNA、一本鎖領域と二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖および二本鎖のRNA、ならびに一本鎖領域と二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖であってもよいがより典型的には二本鎖であるかまたは一本鎖領域と二本鎖領域の混合物である、DNAおよびRNAを含むハイブリッド分子で構成されうる。加えて、ポリヌクレオチドが、RNAもしくはDNA、またはRNAおよびDNAの両方を含む三本鎖領域で構成されてもよい。また、ポリヌクレオチドが、安定性のため、または他の理由のために、1つまたは複数の修飾された塩基またはDNA骨格もしくはRNA骨格を含むこともできる。「修飾された」塩基には、例えば、トリチル化塩基、およびイノシンなどの特殊な塩基が含まれる。種々の修飾をDNAおよびRNAに加えることができる;それ故に、「ポリヌクレオチド」は、化学的、酵素的または代謝的に修飾された形態を包含する。
【0031】
本明細書で用いる場合、「ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子」という用語は、少なくとも1つのヌクレアーゼドメインおよび少なくとも1つのFcドメインを含む、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドのことを指す。ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、融合タンパク質および融合遺伝子とも称される。例えば、1つの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、DNaseおよび/またはRNaseなどのヌクレアーゼドメインと連結された少なくとも1つのFcドメインを含むポリペプチドでありうる。別の例として、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、RNaseヌクレアーゼドメイン、リンカードメインおよびFcドメインを含みうる。SEQ ID NO:161は、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の一例である。他の例は、以下により詳細に記載されている。1つの態様において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、さらなる修飾を含むことができる。別の態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を、機能的モイエティー(例えば、PEG、薬物または標識)が付加されるように修飾してもよい。
【0032】
ある局面において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子に、ポリペプチドリンカーなどの1つまたは複数の「リンカードメイン」を使用することができる。本明細書で用いる場合、「リンカードメイン」という用語は、直鎖状配列において2つまたはそれ以上のドメインをつなぐ配列のことを指す。本明細書で用いる場合、「ポリペプチドリンカー」という用語は、ポリペプチド鎖の直鎖状アミノ酸配列において2つまたはそれ以上のドメインをつなぐペプチド配列またはポリペプチド配列(例えば、合成のペプチド配列またはポリペプチド配列)のことを指す。例えば、ヌクレアーゼドメインとFcドメインをつなぐためにポリペプチドリンカーを用いてもよい。好ましくは、そのようなポリペプチドリンカーは、ポリペプチド分子に柔軟性を与えることができる。ある態様において、ポリペプチドリンカーは、1つもしくは複数のFcドメインおよび/または1つもしくは複数のヌクレアーゼドメインをつなぐ(例えば、遺伝的に融合させる)ために用いられる。本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、複数のリンカードメインまたはペプチドリンカーを含んでよい。
【0033】
本明細書で用いる場合、「gly-serポリペプチドリンカー」という用語は、グリシン残基およびセリン残基からなるペプチドのことを指す。例示的なgly/serポリペプチドリンカーは、アミノ酸配列Ser(Gly4Ser)nを含む。1つの態様において、n=1である。1つの態様において、n=2である。別の態様において、n=3であり、すなわちSer(Gly4Ser)3である。別の態様において、n=4であり、すなわちSer(Gly4Ser)4である。別の態様において、n=5である。さらに別の態様において、n=6である。別の態様において、n=7である。さらに別の態様において、n=8である。別の態様において、n=9である。さらに別の態様において、n=10である。別の例示的なgly/serポリペプチドリンカーは、アミノ酸配列Ser(Gly4Ser)nを含む。1つの態様において、n=1である。1つの態様において、n=2である。1つの好ましい態様において、n=3である。別の態様において、n=4である。別の態様において、n=5である。さらに別の態様において、n=6である。
【0034】
本明細書で用いる場合、「連結された」、「融合した」または「融合」という用語は互換的に用いられる。これらの用語は、化学的結合(chemical conjugation)または組換え手段を含む何らかの手段によって、2つまたはそれ以上(two more)の要素または構成要素またはドメインを連結して1つにすることを指す。化学的結合の方法(例えば、ヘテロ二官能性架橋剤を用いる)は、当技術分野において公知である。
【0035】
本明細書で用いる場合、「Fc領域」という用語は、ネイティブな免疫グロブリンの2つの重鎖の各々のFcドメイン(またはFcモイエティー)によって形成される、ネイティブな免疫グロブリンの部分と定義されるものとする。
【0036】
本明細書で用いる場合、「Fcドメイン」という用語は、単一の免疫グロブリン(Ig)重鎖の一部分のことを指す。そのため、Fcドメインを「Ig」または「IgG」と称することもできる。いくつかの態様において、Fcドメインは抗体のパパイン切断部位のすぐ上流のヒンジ領域に始まり、C末端で終わる。したがって、完全なFcドメインは、少なくともヒンジドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む。ある態様において、Fcドメインは以下のもののうち少なくとも1つを含む:ヒンジ(例えば、上方、中央および/または下方のヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、CH4ドメイン、またはそれらの変異体、一部分もしくは断片。他の態様において、Fcドメインは完全なFcドメイン(すなわち、ヒンジドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメイン)を含む。1つの態様において、Fcドメインは、CH3ドメイン(またはその一部分)と融合したヒンジドメイン(またはその一部分)を含む。別の態様において、Fcドメインは、CH3ドメイン(またはその一部分)と融合したCH2ドメイン(またはその一部分)を含む。別の態様において、FcドメインはCH3ドメインまたはその一部分からなる。別の態様において、Fcドメインはヒンジドメイン(またはその一部分)およびCH3ドメイン(またはその一部分)からなる。別の態様において、FcドメインはCH2ドメイン(またはその一部分)およびCH3ドメインからなる。別の態様において、Fcドメインはヒンジドメイン(またはその一部分)およびCH2ドメイン(またはその一部分)からなる。1つの態様において、Fcドメインは、CH2ドメインの少なくとも一部分(例えば、CH2ドメインの全体または一部)を欠いている。1つの態様において、本発明のFcドメインは、少なくとも、FcRn結合のために必要なことが当技術分野において公知であるFc分子の部分を含む。別の態様において、本発明のFcドメインは、少なくとも、FcγR結合のために必要なことが当技術分野において公知であるFc分子の部分を含む。1つの態様において、本発明のFcドメインは、少なくとも、プロテインA結合のために必要なことが当技術分野において公知であるFc分子の部分を含む。1つの態様において、本発明のFcドメインは、少なくとも、プロテインG結合のために必要なことが当技術分野において公知であるFc分子の部分を含む。本明細書におけるFcドメインとは、免疫グロブリン重鎖のFcドメインの全体または一部を含むポリペプチドのことを全般的に指す。これには、CH1ドメイン、ヒンジドメイン、CH2ドメインおよび/またはCH3ドメインの全体を含むポリペプチド、ならびに例えばヒンジドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインのみを含む、そのようなペプチドの断片が非限定的に含まれる。Fcドメインは、ヒトのIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgEまたはIgM抗体を非限定的に含む、任意の種および/または任意のサブタイプの免疫グロブリンに由来してよい。Fcドメインは、ネイティブなFc分子およびFc変異体分子を範囲に含む。Fc変異体およびネイティブなFcの場合と同じく、Fcドメインという用語は、抗体全体から消化されたかまたは他の手段によって生成されたかを問わず、単量体または多量体の形態にある分子を含む。
【0037】
本明細書に記載の通り、任意のFcドメインを、天然の免疫グロブリン分子のネイティブなFcドメインとはアミノ酸配列が異なるように改変してもよいことは、当業者には理解されるであろう。ある例示的な態様において、Fcドメインは、エフェクター機能(例えば、FcγR結合)を保っている。
【0038】
本発明のポリペプチドのFcドメインが、異なる免疫グロブリン分子に由来してもよい。例えば、ポリペプチドのFcドメインが、IgG1分子に由来するCH2および/またはCH3ドメイン、ならびにIgG3分子に由来するヒンジ領域を含んでもよい。別の例において、Fcドメインは、一部がIgG1分子に由来し、かつ一部がIgG3分子に由来する、キメラヒンジ領域を含みうる。別の例において、Fcドメインは、一部がIgG1分子に由来し、かつ一部がIgG4分子に由来する、キメラヒンジを含みうる。
【0039】
ある指定のポリペプチドまたはタンパク質「に由来する」ポリペプチド配列またはアミノ酸配列とは、ポリペプチドの起源を指す。好ましくは、ある特定の配列に由来するポリペプチド配列またはアミノ酸配列は、その特定の配列と、もしくは少なくとも10~20アミノ酸、好ましくは少なくとも20~30アミノ酸、より好ましくは少なくとも30~50アミノ酸からなるその一部分と、本質的に同一なアミノ酸配列を有するか、または配列中にその起源を有することが当業者によって別の様式で同定可能なアミノ酸配列を有する。
【0040】
別のペプチドに由来するポリペプチドが、出発ポリペプチドに比して1つまたは複数の突然変異、例えば、別のアミノ酸残基によって置換された1つもしくは複数のアミノ酸残基、または1つもしくは複数のアミノ酸残基の挿入もしくは欠失などを有してもよい。
【0041】
ポリペプチドは、非天然のアミノ酸配列を含みうる。そのような変異体は必ず、出発ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子に対して100%未満の配列同一性または類似性を有する。1つの好ましい態様において、変異体は、例えば変異体分子の全長にわたって、出発ポリペプチドのアミノ酸配列に対して約75%から100%未満までの、より好ましくは約80%から100%未満までの、より好ましくは約85%から100%未満までの、より好ましくは約90%から100%未満までの(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)、および最も好ましくは約95%から100%未満までのアミノ酸配列同一性または類似性を有すると考えられる。
【0042】
1つの態様において、出発ポリペプチド配列とそれに由来する配列との間にはアミノ酸1個の違いがある。この配列に対する同一性または類似性は、本明細書において、最大の配列一致度(percent sequence identity)が得られるように配列のアラインメントを行い、必要に応じてギャップを導入した後に、出発アミノ酸残基と同一な(すなわち、同じ残基である)候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。
【0043】
1つの態様において、本発明のポリペプチドは、表2から選択されるアミノ酸配列およびその機能的活性変異体からなるか、本質的にそれらからなるか、またはそれらを含む。1つの態様において、ポリペプチドは、表2に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なアミノ酸配列を含む。1つの態様において、ポリペプチドは、表2に記載の連続したアミノ酸配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一な、連続したアミノ酸配列を含む。1つの態様において、ポリペプチドは、表2に記載のアミノ酸配列のうちの少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、300、400または500(またはこれらの数の範囲内の任意の整数)個の連続したアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む。
【0044】
1つの態様において、本発明のペプチドはヌクレオチド配列によってコードされる。本発明のヌクレオチド配列は、以下のものを含む数多くの用途に有用である:クローニング、遺伝子治療、タンパク質の発現および精製、突然変異導入、それを必要とする宿主のDNAワクチン接種、例えば受動免疫処置などのための抗体作製、PCR、プライマーおよびプローブの作製、siRNAの設計および作製(例えば、Dharmacon siDesign社のウェブサイトを参照)など。1つの態様において、本発明のヌクレオチド配列は、表2から選択されるヌクレオチド配列を含むか、それらからなるか、または本質的にはそれらからなる。1つの態様において、ヌクレオチド配列は、表2に記載のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、ヌクレオチド配列は、表2に記載の連続したヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一な、連続したヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、ヌクレオチド配列は、表2に記載のヌクレオチド配列のうちの少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、300、400または500(またはこれらの数の範囲内の任意の整数)個の連続したヌクレオチドを有するヌクレオチド配列を含む。
【0045】
本発明の好ましいハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、ヒトの免疫グロブリン配列に由来する配列(例えば、少なくとも1つのFcドメイン)を含む。しかし、配列が、別の哺乳動物種由来の1つまたは複数の配列を含んでもよい。例えば、霊長動物のFcドメインまたはヌクレアーゼドメインが本配列中に含まれてもよい。または、1つまたは複数のマウスアミノ酸がポリペプチド中に存在してもよい。いくつかの態様において、本発明のポリペプチド配列は非免疫原性である、および/または免疫原性が低い。
【0046】
また、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を、その由来であった天然の配列またはネイティブな配列とは配列が異なるように、ネイティブな配列の望ましい活性は保ちながら、改変しうることも当業者には理解されるであろう。例えば、「非必須」アミノ酸残基において保存的置換または変化をもたらすヌクレオチドまたはアミノ酸の置換を行うことができる。免疫グロブリン(例えば、Fcドメイン)に由来するハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の非天然変異体をコードする単離された核酸分子は、コードされるタンパク質に1つまたは複数のアミノ酸置換、付加または欠失が導入されるように、免疫グロブリンのヌクレオチド配列に1つまたは複数のヌクレオチド置換、付加または欠失を導入することによって作り出すことができる。突然変異は、部位特異的変異誘発、およびPCRを介した変異誘発などの標準的な手法によって導入することができる。
【0047】
本発明のペプチド性ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、1つまたは複数のアミノ酸残基の箇所に、例えば必須または非必須アミノ酸残基の箇所に、保存的アミノ酸置換を含んでもよい。「保存的アミノ酸置換」とは、あるアミノ酸残基が類似した側鎖を有するアミノ酸残基によって置換されることである。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術分野において定義されており、これには塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。このため、結合性ポリペプチド中の非必須アミノ酸残基が、好ましくは、同じ側鎖ファミリー由来の別のアミノ酸残基によって置き換えられる。別の態様において、アミノ酸の連続鎖を、側鎖ファミリーのメンバーの順序および/または組成が異なる構造的に類似した連続鎖によって置き換えることができる。または、別の態様において、飽和突然変異誘発法などにより、コード配列の全体または一部にわたってランダムに変異を導入し、その結果得られた突然変異体を本発明の結合性ポリペプチドに組み入れて、それらが所望の標的と結合する能力活性に関してスクリーニングすることもできる。
【0048】
「改善すること」という用語は、疾患状態、例えば自己免疫性疾患状態(例えば、SLE)などの治療における、その予防、重症度もしくは進行の軽減、寛解または治癒を含む、治療的に有益な何らかの効果のことを指す。
【0049】
「インサイチュー」という用語は、生体から離れて成長している、例えば組織培養下で成長している生細胞において起こる過程のことを指す。
【0050】
「インビボ」という用語は、生体において起こる過程のことを指す。
【0051】
本明細書で用いる「哺乳動物」または「対象」または「患者」という用語は、ヒトおよび非ヒトの両方を含み、これにはヒト、非ヒト霊長動物、イヌ科動物、ネコ科動物、ネズミ科動物、ウシ科動物、ウマ科動物およびブタ科動物が非限定的に含まれる。
【0052】
2つまたはそれ以上の核酸配列またはポリペプチド配列の文脈において、「一致度(percent "identity")」という用語は、下記の配列比較アルゴリズムの1つ(例えば、BLASTPおよびBLASTN、または当業者が利用しうる他のアルゴリズム)を用いた、または目視検査による測定で、最大の対応関係が得られるように比較およびアラインメントを行った場合に、同じヌクレオチドまたはアミノ酸残基を規定のパーセンテージで有する、2つまたはそれ以上の配列または部分配列のことを指す。用途に応じて、「一致度」は、比較する配列のある領域、例えば機能的ドメインにわたって存在することもでき、または代替的に、比較する2つの配列の全長にわたって存在することもできる。
【0053】
配列の比較のためには、典型的には、1つの配列を、被験配列と比較するための参照配列として利用する。配列比較アルゴリズムを用いる場合には、被験配列および参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じて部分配列の座標を指定して、配列アルゴリズムプログラムのパラメーターを指定する。続いて、配列比較アルゴリズムが、指定されたプログラムのパラメーターに基づいて、参照配列に対する被験配列の配列一致度を計算する。
【0054】
比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所的相同性アルゴリズムにより、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)の相同性アラインメントアルゴリズムにより、Pearson & Lipman, Proc. Nat'l. Acad Sci. USA 85:2444 (1988)の類似性検索法により、これらのアルゴリズムのコンピュータ・インプリメンテーション(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.中のGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)により、または目視検査により、行うことができる(概要については、Ausubel et al., 下記を参照)。
【0055】
配列一致度および配列類似度(percent sequence similarity)を決定するために適したアルゴリズムの一例はBLASTアルゴリズムであり、これはAltschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990)に記載されている。BLAST解析を行うためのソフトウエアは、米国国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)のウェブサイトを通じて公開されている。
【0056】
「十分な量」という用語は、所望の効果を生じさせるのに十分な量、例えば、細胞内のタンパク質凝集を変化させるのに十分な量のことを意味する。
【0057】
「治療的有効量」という用語は、疾患の症状を改善するのに有効な量のことである。予防は治療法とみなしうることから、治療的有効量は「予防的有効量」であってもよい。
【0058】
本明細書および添付の特許請求の範囲に用いる場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈において別のことが明確に指示されていない限り、複数の言及物を含むことに注意すべきである。
【0059】
組成物
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子
いくつかの態様において、本発明の組成物はハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を含む。いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、Fcドメインと機能的に連結されたヌクレアーゼドメインを含む。いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、Fcドメインと連結されたヌクレアーゼドメインを含む。いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子はヌクレアーゼタンパク質である。いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子はヌクレアーゼポリヌクレオチドである。
【0060】
いくつかの態様において、ヌクレアーゼドメインはリンカードメインを介してFcドメインと連結されている。いくつかの態様において、リンカードメインはリンカーペプチドである。いくつかの態様において、リンカードメインはリンカーヌクレオチドである。いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、リーダー分子、例えばリーダーペプチドを含む。いくつかの態様において、リーダー分子は、ヌクレアーゼドメインのN末端に位置するリーダーペプチドである。いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は終止コドンを含むと考えられる。いくつかの態様において、終止コドンはFcドメインのC末端にあると考えられる。
【0061】
いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、第2のヌクレアーゼドメインをさらに含む。いくつかの態様において、第2のヌクレアーゼドメインは第2のリンカードメインを介してFcドメインと連結されている。いくつかの態様において、第2のリンカードメインはFcドメインのC末端にあると考えられる。図12は、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の少なくとも1つの態様を示している。いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は表2に示された配列を含む。
【0062】
いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、細胞外免疫複合体と特異的に結合するFcドメインと付着したRNase分子またはDNase分子または多酵素分子(例えば、RNaseおよびDNaseの両方、または基質に対する特異性の異なる2つのRNAヌクレアーゼもしくはDNAヌクレアーゼ)である。いくつかの態様において、Fcドメインは、Fcγ受容体と有効には結合しない。1つの局面において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子はC1qと有効には結合しない。他の局面において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、IgG1由来のインフレームFcドメインを含む。他の局面において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、ヒンジドメイン、CH2ドメインおよび/またはCH3ドメイン中に突然変異をさらに含む。他の局面において、突然変異はP238S、P331SまたはN297Sであり、3つのヒンジシステインの1つまたは複数に突然変異を含んでよい。いくつかのそのような局面において、3つのヒンジシステインの1つまたは複数における突然変異は、SCCまたはSSSでありうる。他の局面において、分子はSCCヒンジを含むが、それ以外はヒトIgG1 Fc CH2ドメインおよびCH3ドメインに関して野生型であり、Fc受容体と有効に結合して、結合している細胞のエンドサイトーシス区画中へのハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の取り込みを促進する。他の局面において、分子は一本鎖および/または二本鎖RNA基質に対する活性を有する。
【0063】
いくつかの局面において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の活性はインビトロおよび/またはインビボで検出可能である。いくつかの局面において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は細胞、悪性細胞または癌細胞と結合して、その生物活性に干渉する。
【0064】
別の局面においては、結合特異性を有する別の酵素または抗体、例えばRNAを標的とするscFv、または第1のドメインと同じもしくは異なる特異性を有する第2のヌクレアーゼドメインなどと付着した、多機能性RNase分子が提供される。
【0065】
別の局面においては、結合特異性を有する別の酵素または抗体、例えばDNAを標的とするscFv、または第1のドメインと同じもしくは異なる特異性を有する第2のヌクレアーゼドメインなどと付着した、多機能性DNase分子が提供される。
【0066】
別の局面において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、Fc領域と付着したハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を、それを必要とする哺乳動物に対して、疾患が予防または治療される治療的有効量で投与することによって、哺乳動物における疾患または障害を予防または治療するために適合化されている。他の局面において、疾患または障害は自己免疫性疾患または癌である。いくつかのそのような局面において、自己免疫疾患は、インスリン依存性真性糖尿病、多発性硬化症、実験的自己免疫性脳脊髄炎、関節リウマチ、実験的自己免疫性関節炎、重症筋無力症、甲状腺炎、実験型ブドウ膜網膜炎、橋本甲状腺炎、原発性粘液水腫、甲状腺中毒症、悪性貧血、自己免疫性萎縮性胃炎、アジソン病、早発閉経、男性不妊症、若年型糖尿病、グッドパスチャー症候群、尋常性天疱瘡、類天疱瘡、交感性眼炎、水晶体起因性ブドウ膜炎、自己免疫性溶血性貧血、特発性白血球減少症、原発性胆汁性肝硬変、活動性慢性肝炎Hbs-ve、特発性肝硬変、潰瘍性大腸炎、シェーグレン症候群、強皮症、ヴェーゲナー肉芽腫症、多発性筋炎、皮膚筋炎、円板状エリテマトーデス、全身性エリテマトーデスまたは結合組織病である。
【0067】
いくつかの態様において、RNaseハイブリッド型ヌクレアーゼ分子のRNase酵素活性の標的は主として細胞外にあり、例えば、抗RNP自己抗体との免疫複合体の中に含まれるRNA、およびアポトーシスを起こしている細胞の表面上に発現されるRNAからなる。いくつかの態様において、RNaseハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、エンドサイトーシス小胞の酸性環境内で活性がある。いくつかの態様において、RNaseハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、該分子がFcRと結合して、免疫複合体によって用いられる進入経路を通じてエンドサイトーシス区画中に入ることを可能にする目的で、野生型(wt)Fcドメインを含む。いくつかの態様において、wt Fcドメインを含むRNaseハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、細胞外およびエンドサイトーシス環境(TLR7が発現されうる場所)内の両方で活性があるように適合化される。いくつかの局面において、これは、wt Fcドメインを含むRNaseハイブリッド型ヌクレアーゼ分子が、以前に貪食された免疫複合体を介する、またはウイルス感染後にTLR7を活性化するRNAによる、TLR7シグナル伝達を、停止させることを可能にする。いくつかの態様において、RNaseハイブリッド型ヌクレアーゼ分子のwt RNaseは、RNaseの細胞質内阻害因子による阻害に対する耐性がない。いくつかの態様において、RNaseハイブリッド型ヌクレアーゼ分子のwt RNaseは、細胞の細胞質中で活性がない。
【0068】
いくつかの態様において、wt Fcドメインを含むハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、自己免疫疾患、例えばSLEなどの治療法のために用いられる。
【0069】
いくつかの態様において、Fc受容体(FcR)に対するFcドメインの結合性は、例えば、グリコシル化の改変および/またはアミノ酸配列の変化を介して高めることができる。いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、FcR結合性を高める1つまたは複数のFc改変を含む。
【0070】
Fcドメインと付着したハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を構築するための代替的な方式も想定される。いくつかの態様においては、FcR結合性を保ち、かつ活性ヌクレアーゼドメインを有するIg-RNase分子またはIg-DNase分子またはRNase-Ig分子またはRNase-Ig分子を構築するために、ドメインの向きを変更することができる。
【0071】
いくつかの態様において、DNaseハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、例えば該分子がFcRと結合した後にエンドサイトーシスを受けることを可能にする、wt Fcドメインを含む。いくつかの態様において、DNaseハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、例えば、可溶性形態にあるかまたは不溶性複合体として沈着しているかのいずれかである、DNAを含む細胞外免疫複合体に対する活性を有しうる。
【0072】
いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、DNaseおよびRNaseの両方を含む。いくつかの態様において、これらのハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、それらが、例えばRNA、DNA、またはRNAおよびDNAの両方の組み合わせを含む免疫複合体を消化することができるため;かつ、それらがwt Fcドメインをさらに含む場合には、それらは細胞外、ならびにTLR7およびTLR9が局在しうる場所であるエンドサイトーシス区画内の両方で活性を有しうるため、SLEの治療法を改善することができる。
【0073】
いくつかの態様において、リンカードメインは、リンカーの長さを5アミノ酸ずつ変化させる(gly4ser)3、4または5変異体を含む。別の態様において、リンカードメインはおよそ18アミノ酸長であって、N結合型グリコシル化部位を含み、これはインビボでのプロテアーゼ切断に対する感受性を有してもよい。いくつかの態様において、N結合型グリコシル化部位は、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子がリンカードメインで切断されるのを防ぐことができる。いくつかの態様において、N結合型グリコシル化部位は、リンカードメインによって隔てられた独立した機能ドメインのフォールディングを区分するのを補助することができる。
【0074】
いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、突然変異型および/または野生型ヒトIgG1 Fcドメインの両方を含みうる。いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、COSの一過性トランスフェクションおよびCHOの安定トランスフェクションの両方から発現されうる。いくつかの態様において、CD80/86結合性およびRNase活性の両方がハイブリッド型ヌクレアーゼ分子において保持されている。いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、DNase1L3-Ig-リンカー-RNase構築物を含む。いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、DNase1-Ig-リンカー-RNase構築物またはRNase-Ig-リンカー-DNase構築物を含む。いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の酵素ドメインと他のドメインとの間の融合連結部は最適化されている。
【0075】
いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子には、DNase-Igハイブリッド型ヌクレアーゼ分子および/またはハイブリッド型DNase-RNaseハイブリッド型ヌクレアーゼ分子が含まれる。
【0076】
いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子はTREX1を含む。いくつかの態様において、TREX1ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子はクロマチンを消化することができる。いくつかの態様において、TREX1ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は細胞によって発現される。いくつかの態様において、発現されたハイブリッド型ヌクレアーゼ分子はマウスTREX-1およびマウス(wtまたは突然変異型)Fcドメインを含む。いくつかの態様において、DNase活性を可能にするためには、TREX1とIgGヒンジとの間に20~25アミノ酸(aa)のリンカードメインが必要でありうる。いくつかの態様において、15aaのリンカードメインを有するハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は活性を有しない。いくつかの態様において、20アミノ酸および25アミノ酸のリンカードメイン(これに加えて、制限部位を組み入れるための2つまたはそれ以上のアミノ酸)の使用は、クロマチン消化によって測定される機能的活性をもたらす。いくつかの態様においては、リンカードメインを介してFcドメインと融合させる前に、およそ72aaの疎水性領域をTREX-1のCOOH端から除去することができる。いくつかの態様において、20アミノ酸リンカードメインバージョンのハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、対照および/または他のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子と比較して高い発現レベルを呈する。いくつかの態様においては、速度論的酵素アッセイを用いて、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子および対照の酵素活性を定量的な様式で比較する。
【0077】
いくつかの態様において、TREX1酵素の短縮のために選択した融合連結部のさらなる最適化を利用して、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の発現を改善することができる。
【0078】
いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、20aaおよび/または25aaのリンカードメインを有するヒトTREX1-リンカー-Ig Fcドメインハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を含む。いくつかの態様において、リンカードメインは、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子構築物中への組み入れのために付着させた1つまたは複数の制限部位を有する、(gly4ser)4または(gly4ser)5カセットの変異体である。いくつかの態様においては、TREX1酵素活性に有用な頭-尾二量体化のため、柔軟でより長いリンカードメインを適正なフォールディングを促進するために用いることができる。
【0079】
いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、TREX1-タンデムハイブリッド型ヌクレアーゼ分子である。いくつかの態様において、TREX1の頭-尾フォールディングを促進するための代替的な方法は、2つのTREX1ドメインをタンデムに組み入れ、その後にリンカードメインおよびIg Fcドメインが続いている、TREX1-TREX1-Igハイブリッドのハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を作製することである。いくつかの態様においては、TREX1カセットの頭-尾様式での配置を、免疫酵素のいずれかのアーム上での頭-尾フォールディングのために修正して、分子の各アームに単一のTREX1機能ドメインを導入することができる。いくつかの態様において、各免疫酵素のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、単一のIgG Fcドメインと付着した2つの機能的TREX1酵素を有する。
【0080】
いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、TREX1-リンカー1-Ig-リンカー2-RNaseを含む。
【0081】
いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、RNase-Ig-リンカーTREX1を含む。いくつかの態様において、カセットは、酵素立体配置が反転しているハイブリッド型ヌクレアーゼ分子へ組み入れるための各酵素のアミノおよびカルボキシルの両方の融合のためにもたらされる。いくつかの態様において、RNase酵素は、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子中でのその位置にかかわらず同等な機能的活性を呈する。いくつかの態様においては、特定の立体配置がハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の構成要素の発現および/または機能の向上を示すか否かを検証するために、代替的なハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を設計することもできる。
【0082】
いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は1L3-Igを含む。いくつかの態様において、1L3 DNaseはマウス配列から構築されて発現される。いくつかの態様において、酵素は活性を有する。いくつかの態様においては、マウス1L3 DNase-Ig-RNaseハイブリッド型ヌクレアーゼが構築されて発現される。いくつかの態様において、前記分子はヒト1L3-Ig、ヒト1L3-Ig-RNase、および/またはヒトRNase-Ig-1L3を含む。
【0083】
いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子はDNase1-Igを含む。いくつかの態様においては、アクチンに対する感受性低下を示す天然の変異型アレルであるA114Fを、DNase1-Igハイブリッド型ヌクレアーゼ分子に含める。いくつかの態様において、この突然変異は、ヒトDNase1のより安定な誘導体を作製するためにハイブリッド型ヌクレアーゼ分子に導入される。いくつかの態様においては、20aaまたは25aaのリンカードメインを含むDNase1-リンカー-Igを作製する。いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子はRNase-Ig-リンカー-DNase1を含み、ここでDNase1ドメインはIg FcドメインのCOOH側に位置する。いくつかの態様においては、DNase1を組み入れたハイブリッド型ヌクレアーゼ分子が作製され、これには以下のものが含まれる:DNase1-リンカー-Ig-リンカー2-RNase、および/またはRNase-Ig-リンカー-DNase1。
【0084】
本発明の別の局面は、障害、疾患および病状を1つまたは複数のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子によって治療または予防するために遺伝子治療の方法を用いることである。遺伝子治療の方法は、本発明の1つまたは複数のポリペプチドの発現を達成するための、動物へのハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の核酸(DNA、RNAおよびアンチセンスDNAまたはRNA)配列の導入に関する。この方法は、標的組織によるポリペプチドの発現のために必要なプロモーターおよび任意の他の遺伝要素と機能的に連結された、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子のポリペプチドをコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドの導入を含みうる。
【0085】
遺伝子治療の用途では、治療的に有効な遺伝子産物のインビボ合成を達成する目的で、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の遺伝子を細胞に導入する。「遺伝子治療」には、一度の治療によって永続的効果が達成される従来の遺伝子治療、および治療的に有効なDNAまたはmRNAの単回投与または反復投与を伴う遺伝子治療薬の投与の両方が含まれる。オリゴヌクレオチドは、例えば、それらの負に荷電したホスホジエステル基を非荷電基によって置換することにより、それらの取り込みが強化されるように改変することができる。
【0086】
Fcドメイン
いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子はFcドメインを含む。本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を作製するために有用なFcドメインは、いくつかの異なる供給源から得ることができる。好ましい態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子のFcドメインはヒト免疫グロブリンに由来する。しかし、Fcドメインが、例えば、齧歯動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット)または非ヒト霊長動物(例えば、チンパンジー、マカク)種を含む、別の哺乳動物種の免疫グロブリンに由来してもよいことは理解されよう。さらに、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子のFcドメインまたはその一部分は、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEを含む任意の免疫グロブリンクラス、ならびにIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む任意の免疫グロブリンアイソタイプに由来してもよい。1つの好ましい態様においては、ヒトのアイソタイプIgG1を用いる。
【0087】
種々のFcドメイン遺伝子配列(例えば、ヒト定常領域遺伝子配列)が、一般公開されている寄託物の形で入手可能である。特定のエフェクター機能を有する(もしくは特定のエフェクター機能を欠く)か、または免疫原性を低下させるための特定の改変を有する、Fcドメイン配列を含む定常領域ドメインを選択することができる。抗体および抗体をコードする遺伝子の多くの配列が公表されており、適したFcドメイン配列(例えば、ヒンジ配列、CH2配列および/もしくはCH3配列、またはそれらの部分)を、当技術分野で認知されている手法を用いて、これらの配列から導き出すことができる。続いて、前記の方法の任意のものを用いて得られた遺伝物質を改変または合成して、本発明のポリペプチドを得ることができる。さらに、本発明の範囲が、定常領域DNA配列のアレル、変異体および突然変異も範囲に含むことは理解されよう。
【0088】
Fcドメイン配列は、例えばポリメラーゼ連鎖反応および関心対象のドメインを増幅するために選択されたプライマーを用いて、クローニングすることができる。Fcドメイン配列を抗体からクローニングするために、ハイブリドーマ細胞、脾細胞またはリンパ細胞からmRNAを単離し、逆転写させてDNAにした上で、抗体遺伝子をPCRによって増幅してもよい。PCR増幅法は、米国特許第4,683,195号;第4,683,202号;第4,800,159号;第4,965,188号;ならびに例えば、"PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications" Innis et al. eds., Academic Press, San Diego, Calif. (1990);Ho et al. 1989. Gene 77:51;Horton et al. 1993. Methods Enzymol. 217:270)に詳述されている。PCRは、コンセンサス定常領域プライマーによって、または公表されている重鎖および軽鎖のDNA配列およびアミノ酸配列に基づくより特異的なプライマーによって開始することができる。上記に考察したように、抗体軽鎖および重鎖をコードするDNAクローンを単離するためにPCRを用いてもよい。この場合には、ライブラリーを、コンセンサスプライマー、またはマウス定常領域プローブなどのより大型の相同プローブによってスクリーニングすることができる。抗体遺伝子の増幅のために適した多数のプライマーセットが当技術分野において公知である(例えば、精製された抗体のN末端配列に基づく5'プライマー(Benhar and Pastan. 1994. Protein Engineering 7:1509);cDNA末端の迅速増幅(Ruberti, F. et al. 1994. J. Immunol. Methods 173:33);抗体リーダー配列(Larrick et al. 1989 Biochem. Biophys. Res. Commun. 160:1250)。抗体配列のクローニングはさらに、1995年1月25日に提出されたNewmanらの米国特許第5,658,570号にも記載されており、これは参照により本明細書に組み入れられる。
【0089】
本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、1つまたは複数のFcドメイン(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれ以上のFcドメイン)を含みうる。1つの態様において、Fcドメインは、異なる種類のものであってもよい。1つの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子中に存在する少なくとも1つのFcドメインは、ヒンジドメインまたはその一部分を含む。別の態様において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、少なくとも1つのCH2ドメインまたはその一部分を含む少なくとも1つのFcドメインを含む。別の態様において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、少なくとも1つのCH3ドメインまたはその一部分を含む少なくとも1つのFcドメインを含む。別の態様において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、少なくとも1つのCH4ドメインまたはその一部分を含む少なくとも1つのFcドメインを含む。別の態様において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、少なくとも1つのヒンジドメインまたはその一部分と、少なくとも1つのCH2ドメインまたはその一部分とを(例えば、ヒンジ-CH2の向きで)含む少なくとも1つのFcドメインを含む。別の態様において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、少なくとも1つのCH2ドメインまたはその一部分と、少なくとも1つのCH3ドメインまたはその一部分とを(例えば、CH2-CH3の向き)で含む少なくとも1つのFcドメインを含む。別の態様において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、少なくとも1つのヒンジドメインまたはその一部分と、少なくとも1つのCH2ドメインまたはその一部分と、少なくとも1つのCH3ドメインまたはその一部分とを、例えばヒンジ-CH2-CH3、ヒンジ-CH3-CH2またはCH2-CH3-ヒンジの向きで含む、少なくとも1つのFcドメインを含む。
【0090】
ある態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、1つまたは複数の免疫グロブリン重鎖に由来する少なくとも1つの完全なFc領域(例えば、ヒンジドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含むFcドメイン、ただしこれらが同じ抗体に由来する必要はない)。他の態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、1つまたは複数の免疫グロブリン重鎖に由来する少なくとも2つの完全なFcドメインを含む。好ましい態様において、完全なFcドメインは、ヒトIgG免疫グロブリン重鎖(例えば、ヒトIgG1)に由来する。
【0091】
別の態様において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、完全なCH3ドメインを含む少なくとも1つのFcドメインを含む。別の態様において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、完全なCH2ドメインを含む少なくとも1つのFcドメインを含む。別の態様において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、少なくともCH3ドメインと、ヒンジ領域およびCH2ドメインのうちの少なくとも1つとを含む少なくとも1つのFcドメインを含む。1つの態様において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、ヒンジドメインとCH3ドメインとを含む少なくとも1つのFcドメインを含む。別の態様において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、ヒンジドメインと、CH2ドメインと、CH3ドメインとを含む少なくとも1つのFcドメインを含む。好ましい態様において、FcドメインはヒトIgG免疫グロブリン重鎖(例えば、ヒトIgG1)に由来する。
【0092】
本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子のFcドメインを構成する定常領域ドメインまたはそれらの部分が、異なる免疫グロブリン分子に由来してもよい。例えば、本発明のポリペプチドが、IgG1分子に由来するCH2ドメインまたはその一部分、およびIgG3分子に由来するCH3領域またはその一部分を含んでもよい。別の例において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、一部がIgG1分子に由来し、かつ一部がIgG3分子に由来するヒンジドメインを含むFcドメインを含んでもよい。本明細書に記載の通り、Fcドメインを、天然の抗体分子とはアミノ酸配列が異なるように改変しうることは当業者には理解されよう。
【0093】
別の態様において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、1つまたは複数の短縮型Fcドメインであって、それでもなおFc受容体(FcR)結合特性をFc領域に付与するのには十分である短縮型Fcドメインを含む。したがって、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子のFcドメインは、FcRn結合部分を含みうるか、またはFcRn結合部分からなりうる。FcRn結合部分は、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む、任意のアイソタイプの重鎖に由来しうる。1つの態様においては、ヒトアイソタイプIgG1の抗体由来のFcRn結合部分を用いる。別の態様においては、ヒトアイソタイプIgG4の抗体由来のFcRn結合部分を用いる。
【0094】
1つの態様において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、完全なFc領域の1つまたは複数の定常領域ドメインを欠いている、すなわち、それらは部分的または全体的に欠失している。ある態様において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子はCH2ドメイン全体を欠いている(ΔCH2構築物)。抗体の異化速度(catabolic rate)に対するCH2ドメインの調節特性を理由として、そのような構築物が好まれる場合があることが当業者には分かるであろう。ある態様において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、IgG1ヒト定常領域ドメインをコードするベクター(例えば、IDEC Pharmaceuticals, San Diego製)由来のCH2ドメイン欠失Fc領域を含む(例えば、WO02/060955A2号およびWO02/096948A2号を参照)。この例示的なベクターはCH2ドメインを欠失するように操作されており、ドメイン欠失IgG1定常領域を発現する合成ベクターを与える。これらの例示的な構築物は、結合性CH3ドメインが各々のFcドメインのヒンジ領域と直接融合するように操作されていることが好ましいことを指摘しておく。
【0095】
他の構築物において、1つまたは複数の構成要素Fcドメインの間にペプチドスペーサーを用意することが望ましいことがある。例えば、ペプチドスペーサーをヒンジ領域とCH2ドメインとの間および/またはCH2ドメインとCH3ドメインとの間に配置してもよい。例えば、CH2ドメインを欠失させ、残ったCH3ドメイン(合成または非合成)を1~20、1~10または1~5アミノ酸のペプチドスペーサーを用いてヒンジ領域とつないだ適合性構築物を発現させることができる。そのようなペプチドスペーサーは、例えば、定常領域ドメインの調節エレメントが自由かつアクセス可能に確実に保たれるように、またはヒンジ領域が柔軟に確実に保たれるように、付加することができる。好ましくは、本発明との適合性のある任意のリンカーペプチドは、免疫原性が比較的なく、Fcの適正なフォールディングを妨げないと考えられる。
【0096】
Fcアミノ酸に対する変化
ある態様において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子で使用されるFcドメインは、例えばアミノ酸突然変異(例えば、付加、欠失または置換)によって改変される。本明細書で用いる場合、「Fcドメイン変異体」という用語は、Fcドメインが由来する野生型Fcと比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を有するFcドメインのことを指す。例えば、FcドメインがヒトIgG1抗体に由来する場合、変異体は、ヒトIgG1 Fc領域の対応する位置に、野生型アミノ酸と比較して少なくとも1つのアミノ酸突然変異(例えば、置換)を含む。
【0097】
Fc変異体のアミノ酸置換は、抗体中のFc領域にその残基を割り当てる部分番号に対応すると称されるFcドメイン内の位置にあってもよい。
【0098】
1つの態様において、Fc変異体は、ヒンジドメインまたはその一部分に位置するアミノ酸位置に置換を含む。別の態様において、Fc変異体は、CH2ドメインまたはその一部分に位置するアミノ酸位置に置換を含む。別の態様において、Fc変異体は、CH3ドメインまたはその一部分に位置するアミノ酸位置に置換を含む。別の態様において、Fc変異体は、CH4ドメインまたはその一部分に位置するアミノ酸位置に置換を含む。
【0099】
ある態様において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、複数のアミノ酸置換を含むFc変異体を含む。本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれ以上のアミノ酸置換を含みうる。好ましくは、アミノ酸置換は、少なくとも1個のアミノ酸位置ごとにまたはそれ以上の間隔をおいて、例えば少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のアミノ酸位置ごとにまたはそれ以上の間隔をおいて、互いに空間的に配置されている。より好ましくは、操作されたアミノ酸は、少なくとも5個、10個、15個、20個または25個のアミノ酸位置ごとにまたはそれ以上の間隔をおいて、互いに隔たって空間的に配置されている。
【0100】
ある態様において、Fc変異体は、前記野生型Fcドメインを含むFcドメインによって与えられる少なくとも1つのエフェクター機能の改善(例えば、FcドメインがFc受容体(例えば、FcγRI、FcγRIIまたはFcγRIII)もしくは補体タンパク質(例えば、C1q)と結合する能力、または抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)、食作用または補体依存性細胞傷害作用(CDCC)を誘発する能力の改善)をもたらす。他の態様において、Fc変異体は、操作されたシステイン残基を提供する。
【0101】
本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子には、エフェクター機能および/またはFcR結合性の改善をもたらすことが公知である、当技術分野で認知されたFc変異体を使用することができる。具体的には、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、例えば、それぞれ参照により本明細書に組み入れられる国際PCT公開公報WO88/07089A1号、WO96/14339A1号、WO98/05787A1号、WO98/23289A1号、WO99/51642A1号、WO99/58572A1号、WO00/09560A2号、WO00/32767A1号、WO00/42072A2号、WO02/44215A2号、WO02/060919A2号、WO03/074569A2号、WO04/016750A2号、WO04/029207A2号、WO04/035752A2号、WO04/063351A2号、WO04/074455A2号、WO04/099249A2号、WO05/040217A2号、WO04/044859号、WO05/070963A1号、WO05/077981A2号、WO05/092925A2号、WO05/123780A2号、WO06/019447A1号、WO06/047350A2号およびWO06/085967A2号;米国特許出願公開第US2007/0231329号、US2007/0231329号、US2007/0237765号、US2007/0237766号、US2007/0237767号、US2007/0243188号、US20070248603号、US20070286859号、US20080057056号;または米国特許第5,648,260号;第5,739,277号;第5,834,250号;第5,869,046号;第6,096,871号;第6,121,022号;第6,194,551号;第6,242,195号;第6,277,375号;第6,528,624号;第6,538,124号;第6,737,056号;第6,821,505号;第6,998,253号;第7,083,784号;および第7,317,091号に開示されているアミノ酸位置の1つまたは複数での変化(例えば、置換)を含んでよい。1つの態様において、特定の変化(例えば、当技術分野において開示されている1つまたは複数のアミノ酸の特定の置換)を、開示されるアミノ酸位置の1つまたは複数に加えることができる。別の態様において、開示されているアミノ酸位置の1つまたは複数に、異なる変化(当技術分野において開示されている1つまたは複数のアミノ酸の、異なる置換)を加えることもできる。
【0102】
ある態様において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、抗体の抗原非依存的なエフェクター機能、特に抗体の循環血中半減期を変化させる、Fcドメインに対するアミノ酸置換を含む。そのようなハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、これらの置換を欠くハイブリッド型ヌクレアーゼ分子と比較して、FcRnに対する結合性の増大または低下のいずれかを呈し、このため、血清中半減期の延長または短縮のそれぞれを呈する。FcRnに対する親和性が向上したFc変異体はより長い血清半減期を有すると予想され、そのような分子は、例えば慢性疾患または慢性障害を治療するためというように、投与されるポリペプチドの長い半減期が望まれる哺乳動物の治療方法において有用な用途がある。対照的に、FcRn結合親和性が低下したFc変異体はより短い半減期を有すると予想され、そのような分子も、短縮した循環時間が有用と考えられるような哺乳動物に対する投与のために、例えばインビボ画像診断のために、または出発ポリペプチドが循環血液中に長期にわたって存在すると有害副作用を有する状況においては有用である。また、FcRn結合親和性が低下したFc変異体は胎盤を通過する可能性が低く、それ故に、妊娠女性における疾患または障害の治療にも有用である。加えて、FcRn結合親和性の低下が望まれうる他の用途には、脳、腎臓および/または肝臓での局在が望まれる用途も含まれる。1つの例示的な態様において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、血管系から腎糸球体の上皮を経由する輸送の低下を呈する。別の態様において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、脳から血液脳関門(BBB)を経由して血管内腔へと至る輸送の低下を呈する。1つの態様において、FcRn結合性が改変されたハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、Fcドメインの「FcRn結合性ループ」内に、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する少なくとも1つのFcドメイン(例えば、1つまたは2つのFcドメイン)を含む。FcRn結合活性を変化させる例示的なアミノ酸置換は、国際PCT公開公報WO05/047327号に開示されており、これは参照により本明細書に組み入れられる。
【0103】
他の態様において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、例えば野生型Fc領域と比較して、ポリペプチドの抗原依存的エフェクター機能、特にADCCまたは補体活性化を変化させるアミノ酸置換を含むFc変異体を含む。例示的な態様において、前記ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、Fcγ受容体(例えば、CD16)に対する結合性の変化を呈する。そのようなハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、野生型ポリペプチドと比較して、FcRγに対する結合性の増大または低下のいずれかを呈し、このため、エフェクター機能の強化または低下をそれぞれ媒介する。FcγRに対する親和性が向上したFc変異体はエフェクター機能を強化すると予想され、そのような分子は標的分子の破壊が望まれる哺乳動物の治療方法において有用な用途がある。対照的に、FcγR結合親和性が低下したFc変異体はエフェクター機能を低下させると考えられ、そのような分子も、例えば、正常細胞が標的分子を発現すると考えられる場合、またはポリペプチドの長期投与が望まれない免疫系活性化をもたらす可能性がある場合といった、標的細胞の破壊が望ましくない病状の治療のために有用である。1つの態様において、Fcを含むポリペプチドは、野生型Fc領域を含むポリペプチドと比較して、オプソニン作用、食作用、補体依存性細胞傷害作用、抗原依存性細胞性細胞傷害作用(ADCC)またはエフェクター細胞モジュレーションからなる群より選択される少なくとも1つの改変された抗原依存的エフェクター機能を呈する。
【0104】
1つの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、活性化FcγR(例えば、FcyI、FcγIIaまたはFcγRIIIa)に対する改変された結合性を呈する。別の態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、抑制性FcγR(例えば、FcγRIIb)に対する改変された結合親和性を呈する。FcR結合活性または補体結合活性を変化させる例示的なアミノ酸置換は、国際PCT公開公報WO05/063815号に開示されており、これは参照により本明細書に組み入れられる。
【0105】
本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子はまた、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子のグリコシル化を変化させるアミノ酸置換を含んでもよい。例えば、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子のFcドメインが、グリコシル化(例えば、N結合型もしくはO結合型グリコシル化)の減少につながる突然変異を有するFcドメインを含んでもよく、または野生型Fcドメインの改変されたグリコフォーム(例えば、低フコースグリカンまたはフコース非含有グリカン)を含んでもよい。別の態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、グリコシル化モチーフ、例えばアミノ酸配列NXTまたはNXSを含むN結合型グリコシル化モチーフの近傍または内部に、アミノ酸置換を有する。グリコシル化を減少させるかまたは変化させる例示的なアミノ酸置換は、国際PCT公開公報WO05/018572号および米国特許出願公開第2007/0111281号に開示されており、それらは参照により本明細書に組み入れられる。
【0106】
他の態様において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、溶媒曝露表面に位置する操作されたシステイン残基またはその類似体を有する少なくとも1つのFcドメインを含む。好ましくは、操作されたシステイン残基またはその類似体は、Fcによって付与されるエフェクター機能と干渉しない。より好ましくは、その改変は、FcがFc受容体(例えば、FcγRI、FcγRIIまたはFcγRIII)もしくは補体タンパク質(例えば、C1q)と結合する能力、または免疫エフェクター機能(例えば、抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)、食作用または補体依存性細胞傷害作用(CDCC))を誘発する能力と干渉しない。好ましい態様において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、第2のシステイン残基とのジスルフィド結合を実質的に含まない少なくとも1つの操作された遊離システイン残基またはその類似体を含むFcドメインを含む。上記の操作されたシステイン残基またはそれらの類似体の任意のものを、その後に、当技術分野で認知された手法を用いて機能ドメインとコンジュゲートさせる(例えば、チオール反応性ヘテロ二官能性リンカーとコンジュゲートさせる)ことができる。
【0107】
1つの態様において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、本明細書に記載のFcドメインから独立に選択されるその構成要素Fcドメインの2つまたはそれ以上を有する遺伝的に融合されたFcドメインを含んでもよい。1つの態様において、Fcドメインは同じである。別の態様において、Fcドメインの少なくとも2つは異なる。例えば、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子のFcドメインは、同数のアミノ酸残基を含んでもよく、またはそれらは、長さが1個または複数のアミノ酸残基(例えば、約5アミノ酸残基(例えば、1、2、3、4または5アミノ酸残基)、約10残基、約15残基、約20残基、約30残基、約40残基または約50残基)異なっていてもよい。さらに別の態様において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子のFcドメインは、1つまたは複数のアミノ酸位置で異なってもよい。例えば、Fcドメインの少なくとも2つが、約5個のアミノ酸位置(例えば、1個、2個、3個、4個または5個のアミノ酸位置)、約10個の位置、約15個の位置、約20個の位置、約30個の位置、約40個の位置または約50個の位置)で配列が異なってもよい。
【0108】
リンカードメイン
いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子はリンカードメインを含む。いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は多数のリンカードメインを含む。いくつかの態様において、リンカードメインはポリペプチドリンカーである。ある局面においては、ポリペプチドリンカーを使用して1つまたは複数のFcドメインを1つまたは複数のヌクレアーゼドメインと融合させてハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を形成させることが望ましい。
【0109】
1つの態様において、ポリペプチドリンカーは合成である。本明細書で用いる場合、ポリペプチドリンカーに関する「合成」という用語は、アミノ酸の直鎖状配列の中で、自然下で天然には連結していない配列(天然に存在してもそうでなくてもよい)(例えば、Fcドメイン配列)と連結されているアミノ酸配列(天然に存在してもそうでなくてもよい)を含むペプチド(またはポリペプチド)を含む。例えば、ポリペプチドリンカーは、天然のポリペプチドの改変形態(例えば、付加、置換もしくは欠失などの突然変異を含む)である非天然ポリペプチド、または第1のアミノ酸配列(天然に存在してもそうでなくてもよい)を含む非天然ポリペプチドを含んでもよい。本発明のポリペプチドリンカーは、例えば、適正なフォールディングおよび機能的Fcドメインの形成が確実に起こるようにFcドメインを確実に並置させるために使用することができる。好ましくは、本発明と適合性のあるポリペプチドリンカーは免疫原性が比較的なく、結合性タンパク質の単量体サブユニット間の非共有結合的な会合を阻害しないと考えられる。
【0110】
ある態様において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、任意の2つまたはそれ以上のドメインを単一のポリペプチド鎖中にインフレームでつなぐためにポリペプチドリンカーを使用する。1つの態様において、2つまたはそれ以上のドメインは、本明細書で考察したFcドメインまたはヌクレアーゼドメインのいずれかから独立に選択されうる。例えば、ある態様においては、ポリペプチドリンカーを用いて同一なFcドメインを融合させ、それにより、ホモマーのFc領域を形成させることができる。他の態様においては、ポリペプチドリンカーを用いて異なるFcドメイン(例えば、野生型FcドメインおよびFcドメイン変異体)を融合させ、それにより、ヘテロマーのFc領域を形成させることができる。他の態様において、本発明のポリペプチドリンカーは、第1のFcドメイン(例えば、ヒンジドメインまたはその一部分、CH2ドメインまたはその一部分、完全なCH3ドメインまたはその一部分、FcRn結合部分、FcγR結合部分、補体結合部分、またはその一部分)のC末端を、第2のFcドメイン(例えば、完全なFcドメイン)のN末端と遺伝的に融合させるために用いることができる。
【0111】
1つの態様において、ポリペプチドリンカーは、Fcドメインの一部分を含む。例えば、1つの態様において、ポリペプチドリンカーは、IgG1、IgG2、IgG3および/またはIgG4抗体の免疫グロブリンヒンジドメインを含むことができる。別の態様において、ポリペプチドリンカーは、IgG1、IgG2、IgG3および/またはIgG4抗体のCH2ドメインを含むことができる。他の態様において、ポリペプチドリンカーは、IgG1、IgG2、IgG3および/またはIgG4抗体のCH3ドメインを含むことができる。免疫グロブリン(例えば、ヒト免疫グロブリン)の他の部分も同様に用いることができる。例えば、ポリペプチドリンカーが、CH1ドメインもしくはその一部分、CLドメインもしくはその一部分、VHドメインもしくはその一部分、またはVLドメインもしくはその一部分を含むことができる。前記部分は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3および/またはIgG4抗体を含む、任意の免疫グロブリンに由来しうる。
【0112】
例示的な態様において、ポリペプチドリンカーは、免疫グロブリンヒンジ領域の少なくとも一部分を含むことができる。1つの態様において、ポリペプチドリンカーは、上方ヒンジドメイン(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4の上方ヒンジドメイン)を含む。別の態様において、ポリペプチドリンカーは、中間ヒンジドメイン(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4の中間ヒンジドメイン)を含む。別の態様において、ポリペプチドリンカーは、下方ヒンジドメイン(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4の下方ヒンジドメイン)を含む。
【0113】
他の態様においては、ポリペプチドリンカーを、同じまたは異なる抗体アイソタイプに由来するヒンジエレメントから構築することができる。1つの態様において、ポリペプチドリンカーは、IgG1ヒンジ領域の少なくとも一部分とIgG2ヒンジ領域の少なくとも一部分とを含むキメラヒンジを含む。1つの態様において、ポリペプチドリンカーは、IgG1ヒンジ領域の少なくとも一部分とIgG3ヒンジ領域の少なくとも一部分とを含むキメラヒンジを含む。別の態様において、ポリペプチドリンカーは、IgG1ヒンジ領域の少なくとも一部分とIgG4ヒンジ領域の少なくとも一部分とを含むキメラヒンジを含む。1つの態様において、ポリペプチドリンカーは、IgG2ヒンジ領域の少なくとも一部分とIgG3ヒンジ領域の少なくとも一部分とを含むキメラヒンジを含む。1つの態様において、ポリペプチドリンカーは、IgG2ヒンジ領域の少なくとも一部分とIgG4ヒンジ領域の少なくとも一部分とを含むキメラヒンジを含む。1つの態様において、ポリペプチドリンカーは、IgG1ヒンジ領域の少なくとも一部分と、IgG2ヒンジ領域の少なくとも一部分と、IgG4ヒンジ領域の少なくとも一部分とを含むキメラヒンジを含む。別の態様において、ポリペプチドリンカーは、IgG1の上方および中間ヒンジ、ならびに単一のIgG3中間ヒンジ反復モチーフを含みうる。別の態様において、ポリペプチドリンカーは、IgG4上方ヒンジ、IgG1中間ヒンジおよびIgG2下方ヒンジを含みうる。
【0114】
別の態様において、ポリペプチドリンカーは、gly-serリンカーを含むか、またはgly-serリンカーからなる。本明細書で用いる場合、「gly-serリンカー」という用語は、グリシン残基およびセリン残基からなるペプチドのことを指す。例示的なgly/serリンカーは、式(Gly4Ser)nのアミノ酸配列を含み、式中、nは正の整数(例えば、1、2、3、4または5)である。好ましいgly/serリンカーは(Gly4Ser)4である。別の好ましいgly/serリンカーは(Gly4Ser)3である。別の好ましいgly/serリンカーは(Gly4Ser)5である。ある態様において、gly-serリンカーを、他の2つのポリペプチドリンカー配列(例えば、本明細書に記載のポリペプチドリンカー配列のいずれか)の間に挿入してもよい。他の態様において、gly-serリンカーは、別のポリペプチドリンカー配列(例えば、本明細書に記載のポリペプチドリンカー配列のいずれか)の一方または両方の末端と付着している。さらに別の態様において、2つまたはそれ以上のgly-serリンカーは、ポリペプチドリンカー中に直列に組み入れられている。1つの態様において、本発明のポリペプチドリンカーは、上方ヒンジ領域の少なくとも一部分(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4分子に由来)、中間ヒンジ領域の少なくとも一部分(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4分子に由来)および一連のgly/serアミノ酸残基(例えば、(Gly4Ser)nなどのgly/serリンカー)を含む。
【0115】
1つの態様において、本発明のポリペプチドリンカーは、非天然の免疫グロブリンヒンジ領域ドメイン、例えば、ヒンジ領域ドメインを含むポリペプチド中に天然には見られないヒンジ領域ドメイン、および/または天然の免疫グロブリンヒンジ領域ドメインとはアミノ酸配列が異なるように改変されたヒンジ領域ドメインなどを含む。1つの態様において、本発明のポリペプチドリンカーを作製するために、ヒンジ領域ドメインに突然変異を加えることができる。1つの態様において、本発明のポリペプチドリンカーは、天然のシステイン数を含まないヒンジドメインを含み、すなわち、ポリペプチドリンカーは、天然のヒンジ分子よりも少ないシステインまたは多いシステインのいずれかを含む。
【0116】
他の態様において、本発明のポリペプチドリンカーは、生物学的に関連性のあるペプチド配列またはその配列の一部分を含む。例えば、生物学的に関連性のあるペプチド配列には、拒絶反応抑制ペプチドまたは抗炎症ペプチドに由来する配列が非限定的に含まれうる。前記拒絶反応抑制ペプチドまたは抗炎症ペプチドは、サイトカイン抑制ペプチド、細胞接着抑制ペプチド、トロンビン抑制ペプチドおよび血小板抑制ペプチドからなる群より選択されうる。1つの好ましい態様において、ポリペプチドリンカーは、IL-1抑制性またはアンタゴニストペプチド配列、エリスロポエチン(EPO)模倣体ペプチド配列、トロンボポエチン(TPO)模倣体ペプチド配列、G-CSF模倣体ペプチド配列、TNFアンタゴニストペプチド配列、インテグリン結合性ペプチド配列、セレクチンアンタゴニストペプチド配列、抗病原体ペプチド配列、血管作動性腸管ペプチド(VIP)模倣体ペプチド配列、カルモジュリンアンタゴニストペプチド配列、マスト細胞アンタゴニスト、SH3アンタゴニストペプチド配列、ウロキナーゼ受容体(UKR)アンタゴニストペプチド配列、ソマトスタチンまたはコルチスタチン模倣体ペプチド配列、ならびにマクロファージおよび/またはT細胞抑制性ペプチド配列からなる群より選択されるペプチド配列を含む。その1つをポリペプチドリンカーとして使用しうる例示的なペプチド配列は、米国特許第6,660,843号に開示されており、それは参照により本明細書に組み入れられる。
【0117】
これらの例示的なポリペプチドリンカーの変異型を、1つまたは複数のアミノ酸置換、付加または欠失がポリペプチドリンカーに導入されるように、ポリペプチドリンカーをコードするヌクレオチド配列に1つまたは複数のヌクレオチド置換、付加または欠失を導入することによって作り出すことができることは理解されよう。例えば、突然変異は、部位特異的変異誘発、およびPCRを介した変異誘発などの標準的な手法によって導入することができる。
【0118】
本発明のポリペプチドリンカーは少なくとも1アミノ酸長であり、さまざまな長さであることができる。1つの態様において、本発明のポリペプチドリンカーは約1~約50アミノ酸長である。この文脈で用いる場合、「約」という用語は、+/-2アミノ酸残基を指し示している。リンカーの長さは正の整数でなければならないため、約1アミノ酸から約50アミノ酸までの長さとは、1アミノ酸から48~52アミノ酸までの長さを意味する。別の態様において、本発明のポリペプチドリンカーは約10~20アミノ酸長である。別の態様において、本発明のポリペプチドリンカーは約15~約50アミノ酸長である。
【0119】
別の態様において、本発明のポリペプチドリンカーは、約20~約45アミノ酸長である。別の態様において、本発明のポリペプチドリンカーは約15~約25アミノ酸長である。別の態様において、本発明のポリペプチドリンカーは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56,57、58、59、60アミノ酸長またはそれ以上のアミノ酸長である。
【0120】
ポリペプチドリンカーは、当技術分野において公知の手法を用いて、ポリペプチド配列に導入することができる。改変はDNA配列解析によって確認することができる。プラスミドDNAを用いて、産生されるポリペプチドの安定した産生のために宿主細胞を形質転換させることができる。
【0121】
ヌクレアーゼドメイン
ある局面において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子はヌクレアーゼドメインを含む。したがって、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、典型的には、少なくとも1つのヌクレアーゼドメインおよび少なくとも1つの連結したFcドメインを含む。ある局面において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は多数のヌクレアーゼドメインを含む。
【0122】
いくつかの態様において、ヌクレアーゼドメインはDNaseである。いくつかの態様において、DNaseはI型分泌性DNaseである。いくつかの態様において、DNaseはDNase1および/またはDNase1様(DNaseL)酵素1-3である。いくつかの態様において、DNaseはTREX1である。
【0123】
いくつかの態様において、ヌクレアーゼドメインはRNaseである。いくつかの態様において、RNaseはRNaseAスーパーファミリーの細胞外または分泌性RNase、例えばRNaseAである。
【0124】
1つの態様において、ヌクレアーゼドメインは、FcドメインのN末端と機能的に連結されている(例えば、化学にコンジュゲートされている、または遺伝的に融合されている(例えば、直接的に、またはポリペプチドリンカーを介するかのいずれか))。別の態様において、ヌクレアーゼドメインは、FcドメインのC末端と機能的に連結されている(例えば、化学にコンジュゲートされている、または遺伝的に融合されている(例えば、直接的に、またはポリペプチドリンカーを介するかのいずれか))。他の態様において、ヌクレアーゼドメインは、Fcドメインのアミノ酸側鎖を介して機能的に連結されている(化学にコンジュゲートされている、または遺伝的に融合されている(例えば、直接的に、またはポリペプチドリンカーを介するかのいずれか))。ある例示的な態様において、ヌクレアーゼドメインは、ヒト免疫グロブリンのヒンジドメインまたはその一部分を介してFcドメインと融合されている。
【0125】
ある態様において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、2つまたはそれ以上のヌクレアーゼドメインおよび少なくとも1つのFcドメインを含む。例えば、ヌクレアーゼドメインが、FcドメインのN末端およびC末端の両方と機能的に連結されてもよい。他の例示的な態様において、ヌクレアーゼドメインが、ともに直列に連結してFcドメインの縦列アレイを形成している複数のFcドメイン(例えば、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上のFcドメイン)のN末端およびC末端の両方と機能的に連結されてもよい。
【0126】
他の態様において、2つまたはそれ以上のヌクレアーゼドメインは互いに直列に連結しており(例えば、ポリペプチドリンカーを介して)、ヌクレアーゼドメインの縦列アレイは、FcドメインまたはFcドメインの縦列アレイのC末端もしくはN末端のいずれかと機能的に連結されている(化学にコンジュゲートされている、または遺伝的に融合されている(例えば、直接的に、またはポリペプチドリンカーを介するかのいずれか))。他の態様において、ヌクレアーゼドメインの縦列アレイは、FcドメインまたはFcドメインの縦列アレイのC末端およびN末端の両方と機能的に連結されている。
【0127】
他の態様において、1つまたは複数のヌクレアーゼドメインを2つのFcドメインの間に挿入してもよい。例えば、1つまたは複数のヌクレアーゼドメインが、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子のポリペプチドリンカーの全体または一部を形成してもよい。
【0128】
本発明の好ましいハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、少なくとも1つのヌクレアーゼドメイン(例えば、RNaseまたはDNase)、少なくとも1つのリンカードメイン、および少なくとも1つのFcドメインを含む。
【0129】
ある態様において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、生物学的効果を媒介する標的分子に特異的な少なくとも1つのヌクレアーゼドメインを含む。別の態様において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の、標的分子(例えば、DNAまたはRNA)との結合は、標的分子の、例えば細胞、組織からの、または循環血からの減少または排除をもたらす。
【0130】
ある態様において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子が、2つまたはそれ以上のヌクレアーゼドメインを含んでもよい。1つの態様において、ヌクレアーゼドメインは同一であり、例えば、RNaseとRNase、またはTREX1とTREX1である。別の態様において、ヌクレアーゼドメインは異なり、例えば、DNaseとRNaseである。
【0131】
他の態様において、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子をともに、または他のポリペプチドと集合させて、2つまたはそれ以上のポリペプチドを有する結合性タンパク質(「多量体」)を形成させてもよく、ここで多量体の少なくとも1つのポリペプチドは本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子である。例示的な多量体形態には、二量体、三量体、四量体および六量体である改変された結合性タンパク質などが含まれる。1つの態様において、多量体のポリペプチドは同一である(すなわち、改変されたホモマーの結合性タンパク質、例えば、ホモ二量体、ホモ四量体)。別の態様において、多量体のポリペプチドは異なる(例えば、ヘテロマー)。
【0132】
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の作製方法
本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、主として、組換えDNA手法を用いた形質転換宿主細胞において作られる。それを行うためには、そのペプチドをコードする組換えDNA分子を調製する。そのようなDNA分子を調製する方法は当技術分野において周知である。例えば、それらのペプチドをコードする配列を、適した制限酵素を用いてDNAから切り出すことができる。または、ホスホルアミデート法などの化学合成手法を用いてDNA分子を合成することもできる。また、これらの手法の組み合わせを用いることもできる。
【0133】
本発明はまた、それらのペプチドを適切な宿主において発現することのできるベクターも含む。本ベクターは、発現制御配列と機能的に連結された、それらのペプチドをコードするDNA分子を含む。DNA分子をベクターに挿入する前または後のいずれかに、この機能的連結に影響を与える方法は周知である。発現制御配列には、プロモーター、アクチベーター、エンハンサー、オペレーター、リボソームヌクレアーゼドメイン、開始シグナル、終止シグナル、キャップ(cap)シグナル、ポリアデニル化シグナル、および転写または翻訳の制御に関与する他のシグナルが含まれる。
【0134】
その結果生じた、DNA分子をその上に有するベクターを用いて、適切な宿主を形質転換させる。この形質転換は、当技術分野において周知の方法を用いて行うことができる。
【0135】
利用可能かつ周知である多数の宿主細胞の任意のものを、本発明の実施に際して用いることができる。具体的な宿主の選択は、当技術分野において認知されているいくつかの要因に依存する。これらには、例えば、選択した発現ベクターとの適合性、DNA分子によってコードされるペプチドの毒性、形質転換率、ペプチドの回収の容易さ、発現特性、生物学的安全性および費用が含まれる。すべての宿主が特定のDNA配列の発現に関して同等に有効であるとは限らないことを把握した上で、これらの要因の釣り合いをとらなければならない。これらの一般的な指針において、有用な微生物宿主には、培養下にある細菌(大腸菌(E. coli)種など)、酵母(サッカロミセス(Saccharomyces)種など)および他の真菌、昆虫、植物、哺乳動物(ヒトを含む)の細胞、または当技術分野において公知である他の宿主が含まれる。
【0136】
次に、形質転換された宿主を培養して精製する。宿主細胞を、所望の化合物が発現されるように従来の発酵条件下で培養してもよい。そのような発酵条件は当技術分野において周知である。その上で、当技術分野において周知の方法によって培養物からペプチドを精製する。
【0137】
化合物を合成法によって作製することもできる。例えば、固相合成手法を用いることができる。適した手法は当技術分野において周知であり、これには、Merrifield (1973), Chem. Polypeptides, pp. 335-61 (Katsoyannis and Panayotis eds.);Merrifleld (1963), J. Am. Chem. Soc. 85: 2149;Davis et al. (1985), Biochem. Intl. 10: 394-414;Stewart and Young (1969), Solid Phase Peptide Synthesis;米国特許第3,941,763号;Finn et al. (1976), The Proteins (3rd ed.) 2: 105-253;およびErickson et al. (1976), The Proteins (3rd ed.) 2: 257-527に記載されたものが含まれる。固相合成は、小型ペプチドを作製するために最も費用対効果の高い方法であるため、個々のペプチドを作製するために好ましい手法である。誘導体化されたペプチドを含有するか、または非ペプチド基を含有する化合物は、周知の有機化学手法によって合成することができる。
【0138】
分子の発現/合成のための他の方法は、当業者には一般に公知である。
【0139】
薬学的組成物および治療的使用法
ある態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は単独で投与される。ある態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、少なくとも1つの他の治療薬の投与の前に投与される。ある態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、少なくとも1つの他の治療薬の投与と同時に投与される。ある態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、少なくとも1つの他の治療薬の投与後に投与される。他の態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、少なくとも1つの他の治療薬の投与の前に投与される。当業者には理解されるであろうが、いくつかの態様においては、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を他の薬剤/化合物と組み合わせる。いくつかの態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子および他の薬剤を同時に投与する。いくつかの態様においては、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子および他の薬剤を同時には投与せず、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を、薬剤を投与する前または後に投与する。いくつかの態様において、対象は、同じ予防期間、障害発生時および/または治療期間中に、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子および他の薬剤の両方の投与を受ける。
【0140】
本発明の薬学的組成物は、併用療法の形で、すなわち、他の薬剤と組み合わせて投与することができる。ある態様において、併用療法は、ヌクレアーゼ分子と、少なくとも1つの他の薬剤との組み合わせを含む。薬剤には、インビトロ合成により調製した化学的組成物、抗体、抗原結合領域、ならびにそれらの組み合わせおよび結合物が非限定的に含まれる。ある態様において、薬剤は、アゴニスト、アンタゴニスト、アロステリックモジュレーターまたは毒素として作用することができる。
【0141】
ある態様において、本発明は、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を、薬学的に許容される希釈剤、担体、溶解補助剤、乳化剤、保存料および/または補助剤とともに含む薬学的組成物を提供する。
【0142】
ある態様において、本発明は、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子、および少なくとも1つの追加的な治療薬の治療的有効量を、薬学的に許容される希釈剤、担体、溶解補助剤、乳化剤、保存料および/または補助剤とともに含む薬学的組成物を提供する。
【0143】
ある態様において、許容される製剤材料は、好ましくは、使用される投与量および濃度ではレシピエントに対して無毒性である。いくつかの態様において、製剤材料は皮下および/または静脈内投与用である。ある態様において、薬学的組成物は、例えば組成物のpH、浸透圧、粘度、清澄度、色調、等張性、香り、無菌性、安定性、溶解もしくは放出の速度、吸着性または浸透性を改変するため、維持するため、または保つための製剤材料を含むことができる。ある態様において、適した配合材料には以下のものが非限定的に含まれる:アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジンなど);抗菌薬;抗酸化物質(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウムまたは亜硫酸水素ナトリウムなど);緩衝剤(ホウ酸塩、炭酸水素塩、Tris-HCl、クエン酸塩、リン酸塩または他の有機酸など);増量剤(マンニトールまたはグリシンなど);キレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など);錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、β-シクロデキストリンまたはヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなど);フィラー;単糖類;二糖類;および他の糖質(グルコース、マンノースまたはデキストリンなど);タンパク質(血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなど);着色・香味・希釈剤;乳化剤;親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);低分子量ポリペプチド;塩形成性対イオン(ナトリウムなど);保存料(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸または過酸化水素など);溶媒(グリセリン、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなど);糖アルコール(マンニトールまたはソルビトールなど);懸濁剤;界面活性剤または湿潤剤(プルロニック、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート類、例えばポリソルベート20、ポリソルベート80など、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサポールなど);安定性強化剤(スクロースまたはソルビトールなど);張性増強剤(アルカリ金属ハロゲン化物、好ましくは塩化ナトリウムもしくは塩化カリウム、マンニトール ソルビトールなど);送達媒体;希釈剤;賦形剤、ならびに/または薬学的補助剤。(Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition, A. R. Gennaro, ed., Mack Publishing Company (1995)。いくつかの態様において、製剤は、PBS;20mM NaOAC、pH 5.2、50mM NaCl;および/または10mM NAOAC、pH 5.2、9%スクロースを含む。
【0144】
ある態様においては、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子および/または治療用分子を、当技術分野において公知の半減期延長媒体と連結させる。そのような媒体には、ポリエチレングリコール、グリコーゲン(例えば、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子のグリコシル化)およびデキストランが非限定的に含まれる。そのような媒体は、例えば、現在は米国特許第6,660,843号である米国特許出願第09/428,082号、およびPCT出願公開公報第WO 99/25044号に記載されており、それらは目的を問わず、参照により本明細書に組み入れられる。
【0145】
ある態様において、最適な薬学的組成物は、例えば、意図する投与経路、送達方式および所望の投与量に応じて、当業者によって決定される。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、前記を参照。ある態様において、そのような組成物は、本発明の抗体の物理的状態、安定性、インビボ放出速度およびインビボ排出速度に影響を及ぼす可能性がある。
【0146】
ある態様において、薬学的組成物における主要な媒体または担体は、水性または非水性のいずれの性質でもよい。例えば、ある態様において、適した媒体または担体は、場合により非経口投与用の組成物において一般的な他の材料を加えた、注射用水、生理的食塩液または人工脳脊髄液でありうる。いくつかの態様において、生理食塩水には等張リン酸緩衝生理食塩水が含まれる。ある態様において、中性緩衝生理食塩水、または血清アルブミンと混合した生理食塩水は、さらなる例示的な媒体である。ある態様において、薬学的組成物は、pHが約7.0~8.5であるTris緩衝液、またはpHが約4.0~5.5である酢酸緩衝液を含み、これはさらにソルビトールまたはその適した代替物も含みうる。ある態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を少なくとも1つの追加的な治療薬を伴うかまたは伴わずに含む組成物は、所望の純度を有する選択したその組成物を任意選択的な製剤用剤(Remington's Pharmaceutical Sciences、前記)とともに混合することにより、凍結乾燥した固形物(cake)または水溶液の形態として、貯蔵用に調製することができる。さらに、ある態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を少なくとも1つの追加的な治療薬を伴うかまたは伴わずに含む組成物を、スクロースなどの適切な賦形剤を用いて凍結乾燥物として製剤化することもできる。
【0147】
ある態様において、薬学的組成物を、非経口的送達用に選択することができる。ある態様において、組成物を吸入用、または消化管を通じた送達用、例えば経口用などのために選択することができる。そのような薬学的に許容される組成物の調製は当業者の能力の範囲内にある。
【0148】
ある態様において、製剤の構成要素は投与の部位にとって許容可能な濃度で存在する。ある態様においては、組成物を生理的pHまたはそれよりも幾分低いpHに、典型的には約5~約8のpH範囲に維持するために、緩衝剤を用いる。
【0149】
ある態様において、非経口的投与を想定している場合に、治療用組成物は、薬学的に許容される媒体中に所望のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を追加的な治療薬を伴うかまたは伴わずに含む、パイロジェンフリーの、非経口的に許容される水溶液の形態でありうる。ある態様において、非経口的注入のための媒体は、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子が、追加的な治療薬を伴うかまたは伴わずに、適切に保存された無菌性等張液として製剤化されている滅菌蒸留水である。ある態様において、調製物は、所望の分子と、生成物の制御放出または持続放出をもたらす注射用マイクロスフェア、生体内分解性粒子、高分子化合物(ポリ乳酸またはポリグリコール酸)、ビーズまたはリポソームなどの物質との製剤を含みうるものであり、続いてそれはデポー注射を介して送達されうる。ある態様において、ヒアルロン酸を用いることもでき、これは循環血中での持続期間を向上させる効果を有しうる。ある態様において、所望の分子の導入のためのその他の適した手段には、植え込み型の薬物送達デバイスが含まれる。
【0150】
ある態様において、薬学的組成物を吸入用に製剤化することができる。ある態様においては、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を、少なくとも1つの追加的な治療薬を伴うかまたは伴わずに、吸入用の乾燥粉末として製剤化することができる。ある態様においては、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を少なくとも1つの追加的な治療薬を伴うかまたは伴わずに含む吸入用溶液を、エアロゾル送達のための噴霧剤とともに製剤化することができる。ある態様において、溶液を霧状にすることもできる。肺への投与は、化学修飾タンパク質の肺送達を記載しているPCT出願第PCT/US94/001875号にさらに記載されている。
【0151】
ある態様においては、製剤を経口投与しうることを想定している。ある態様においては、この様式で投与されるハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を、少なくとも1つの追加的な治療薬を伴うかまたは伴わずに、錠剤およびカプセル剤などの固体剤形の調合に通常用いられる担体を伴うかまたは伴わずに製剤化することができる。ある態様においては、生物学的利用能が最大でかつ全身移行前の分解が最小限に抑えられるような消化管内の箇所で製剤の活性部分を放出するように、カプセルを設計することができる。ある態様においては、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子および/または任意の追加的な治療薬の吸収を促進させるために、少なくとも1つの追加的な薬剤を含めることができる。ある態様において、希釈剤、香味剤、低融点ワックス、植物油、潤滑剤、懸濁剤、錠剤崩壊剤、および結合剤を用いることもできる。
【0152】
ある態様において、薬学的組成物は、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の有効量を、少なくとも1つの追加的な治療薬を伴うかまたは伴わずに、錠剤の製造に適した非毒性賦形剤との混合物中に含みうる。ある態様においては、錠剤を滅菌水または別の適切な媒体中に溶解させることにより、溶液を単位用量剤形として調製することができる。ある態様において、適した賦形剤には、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムもしくは炭酸水素ナトリウム、ラクトース、もしくはリン酸カルシウムなどの不活性希釈剤;またはデンプン、ゼラチンもしくはアラビアゴムなどの結合剤;またはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸もしくはタルクなどの潤滑剤が非限定的に含まれる。
【0153】
そのほかの薬学的組成物は、持続送達または制御送達用の製剤中に、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を少なくとも1つの追加的な治療薬を伴うかまたは伴わずに含む製剤を含め、当業者には明らかであろう。ある態様において、リポソーム担体、生体内分解性微粒子または多孔性ビーズおよびデポー注射といった、種々のその他の持続送達または制御送達の手段を製剤化するための手法も当業者には公知である。例えば、薬学的組成物の送達のための多孔性高分子微粒子の制御放出について記載しているPCT出願第PCT/US93/00829号を参照されたい。ある態様において、持続放出製剤には、例えば薄膜またはマイクロカプセルなどの成形物品の形態にある半透過性ポリマーマトリックスが含まれうる。持続放出マトリックスには、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号およびEP 058,481号)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタミン酸との共重合体(Sidman et al., Biopolymers, 22:547-556 (1983))、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)(Langer et al., J. Biomed. Mater. Res., 15:167-277 (1981)およびLanger, Chem. Tech., 12:98-105 (1982))、エチレン酢酸ビニル(Langer et al., 前記)またはポリ-D(-)-3-ヒドロキシ酪酸(EP 133,988号)が含まれうる。ある態様において、徐放性組成物にはまた、当技術分野において公知であるいくつかの方法のうちいずれかによって調製しうるリポソームも含まれうる。例えば、Eppstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:3688-3692 (1985);EP 036,676号;EP 088,046号およびEP 143,949号を参照されたい。
【0154】
インビボ投与に用いるための薬学的組成物は、典型的には無菌性である。ある態様において、これは、無菌濾過膜を通す濾過によって達成することができる。ある態様において、組成物を凍結乾燥させる場合、この方法を用いる滅菌は凍結乾燥および再構成の前または後のいずれかで行うことができる。ある態様において、非経口的投与用の組成物は、凍結乾燥形態で、または溶液として保存することができる。ある態様において、非経口的組成物は一般に、無菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射用針によって貫通しうる栓を有する静脈注射用溶液バッグまたはバイアルに入れられる。
【0155】
ある態様においては、薬学的組成物を製剤化した後に、それを適切な無菌バイアル中に溶液、懸濁液、ゲル、乳濁液、固体として、または脱水もしくは凍結乾燥した粉末として貯蔵することができる。ある態様において、そのような製剤は、そのまま使用できる形態、または投与前に再構成する形態(例えば、凍結乾燥したもの)のいずれかで貯蔵することができる。
【0156】
ある態様においては、単回用量投与単位を作製するためのキットを提供する。ある態様において、本キットは、乾燥タンパク質を有する第1の容器、および水性製剤を有する第2の容器の両方を含みうる。ある態様においては、単一チャンバー型および多チャンバー型の充填済みシリンジ(例えば、液体シリンジおよびリオシリンジ(lyosyringe))を収容したキットも含まれる。
【0157】
ある態様において、治療的に使用される、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を少なくとも1つの追加的な治療薬を伴うかまたは伴わずに含む薬学的組成物の有効量は、例えば治療の状況および目的に依存すると考えられる。当業者は、治療のために適切な投与量レベルが、ある態様によれば、それ故に一部には、分子が送達される際、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を少なくとも1つの追加的な治療薬を伴うかまたは伴わずに用いる適応症、投与経路、ならびに患者の体格(体重、体表面積または臓器サイズ)および/または状態(年齢および全般的健康状態)に応じて異なることを理解しているであろう。ある態様において、臨床医は、最適な治療効果を得るために、投与量を設定し、投与経路を変更することができる。ある態様において、典型的な投与量は、上述した要因に応じて約0.1μg/kgから最大で約100mg/kgまたはそれ以上までの範囲にわたりうる。ある態様において、投与量は0.1μg/kgから最大で約100mg/kgまで;または1μg/kgから最大で約100mg/kgまで;または5μg/kgから最大で約100mg/kgまでの範囲にわたりうる。
【0158】
ある態様において、投薬の頻度は、用いられる製剤中のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子および/または任意の追加的な治療薬の薬物動態パラメーターを考慮に入れると考えられる。ある態様において、臨床医は、投与量が所望の効果を達成するところに到達するまで、組成物を投与する。ある態様において、組成物はこのため、単回投与として、または時間をかけた2回もしくはそれ以上の回数の投与として(それは所望の分子を同じ量で含んでもよく、そうでなくてもよい)、または植え込みデバイスもしくはカテーテルを介した連続注入として、投与することができる。適切な投与量のさらなる微修正は当業者によって日常的に行われており、当業者によって日常的に行われる作業の範囲内にある。ある態様において、適切な投与量は、適切な用量反応データを用いることによって確定することができる。
【0159】
ある態様において、薬学的組成物の投与経路は、例えば経口により、静脈内、腹腔内、脳内(実質内)、脳室内、筋肉内、皮下、眼内、動脈内、門脈内もしくは病巣内の経路による注射を通じて;持続放出システムにより、または植え込みデバイスにより等の、公知の方法に従う。ある態様において、組成物は、ボーラス注射によって投与してもよく、または注入によって連続的に投与してもよく、または植え込みデバイスによって投与してもよい。
【0160】
ある態様において、組成物は、所望の分子がその上に吸着されるかまたは封入されている膜、スポンジまたは別の適切な物質の植え込みを介して局所投与することができる。ある態様において、植え込みデバイスを用いる場合、デバイスは任意の適した組織または臓器に植え込むことができ、所望の分子の送達は拡散、徐放性ボーラスまたは連続的投与を介したものでありうる。
【0161】
ある態様において、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を少なくとも1つの追加的な治療薬を伴うかまたは伴わずに含む薬学的組成物をエクスビボ様式で用いることが望ましいことがある。そのような場合には、患者から取り出した細胞、組織および/または臓器を、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を少なくとも1つの追加的な治療薬を伴うかまたは伴わずに含む薬学的組成物に曝露させ、その後に細胞、組織および/または臓器を患者の体内に移植して戻す。
【0162】
ある態様においては、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子および/または任意の追加的な治療薬は、それらのポリペプチドを発現して分泌するように、本明細書に記載された方法等の方法を用いて遺伝的に操作されたある種の細胞を移植することによって送達することができる。ある態様において、そのような細胞は動物細胞またはヒト細胞であってよく、自己、異種またはゼノジェニック(xenogeneic)のいずれでもよい。ある態様において、細胞は不死化されていてもよい。ある態様においては、免疫学的応答の可能性を低下させる目的で、周囲組織の浸潤を防ぐために細胞を封入してもよい。ある態様において、封入材料は典型的には、タンパク質産物の放出を可能にするが、患者の免疫系による、または周囲組織からの他の有害因子による細胞の破壊を妨げる、生体適合性で半透性のポリマー封入物または膜である。
【0163】
本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、自己免疫性障害または異常な免疫応答の治療に特に有効である。これに関して、本発明のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を、外部抗原および自己抗原の両方に対する望まれない免疫応答を抑えるため、抑制するため、モジュレートするため、治療するため、または消失させるために用いうることは理解されるであろう。さらに別の態様において、本発明のポリペプチドは、インスリン依存性真性糖尿病、多発性硬化症、実験的自己免疫性脳脊髄炎、関節リウマチ、実験的自己免疫性関節炎、重症筋無力症、甲状腺炎、実験型ブドウ膜網膜炎、橋本甲状腺炎、原発性粘液水腫、甲状腺中毒症、悪性貧血、自己免疫性萎縮性胃炎、アジソン病、早発閉経、男性不妊症、若年型糖尿病、グッドパスチャー症候群、尋常性天疱瘡、類天疱瘡、交感性眼炎、水晶体起因性ブドウ膜炎、自己免疫性溶血性貧血、特発性白血球減少症、原発性胆汁性肝硬変、活動性慢性肝炎Hbs-ve、特発性肝硬変、潰瘍性大腸炎、シェーグレン症候群、強皮症、ヴェーゲナー肉芽腫症、多発性筋炎、皮膚筋炎、円板状エリテマトーデス、全身性エリテマトーデス、または結合組織病を非限定的に含む免疫障害を治療するために用いることができる。
【実施例
【0164】
以下は、本発明を実施するための具体的な態様の例である。これらの実施例は例示のみを目的として提供され、本発明の範囲を限定することは全く意図していない。用いている数字(例えば、量、温度など)に関して正確であるように努力は払っているが、ある程度の実験的誤差および偏差は当然ながら許容されるべきである。
【0165】
本発明の実施には、別に指定する場合を除き、当技術分野の範囲内にある、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術および薬理学の従来の方法を用いるものとする。そのような手法は、文献中に十分に説明されている。例えば、T.E. Creighton, Proteins: Structures and Molecular Properties (W.H. Freeman and Company, 1993);A.L. Lehninger, Biochemistry (Worth Publishers, Inc., current addition);Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd Edition, 1989);Methods In Enzymology (S. Colowick and N. Kaplan eds., Academic Press, Inc.);Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition (Easton, Pennsylvania: Mack Publishing Company, 1990);Carey and Sundherg Advanced Organic Chemistry 3rd Ed (Plenum Press) Vols. A and B (1992)を参照のこと。
【0166】
実施例1:RNase-Ig融合遺伝子の構築
マウスRNase1を、ESTライブラリー(Dr. C. Raine, Albert Einstein School of Medicine, Bronx, NYによる。彼は本発明者らの研究室にMTAを交わさずにクローンを送ってきた)から完全長cDNAとして増幅した。用いた配列特異的な5'および3'プライマーは、公開配列によるものとした。クローンの配列を配列解析によって確かめた。Genebankアクセッション番号はNCBI geneID 19752である。完全長ヒトRNase1は、ヒト膵臓全RNA由来のランダムプライマー法およびオリゴdTプライマー法によるcDNA(Ambion/Applied Biosystems, Austin, TX)から単離した。
【0167】
完全長クローンを単離した上で、マウスIgG2a(SEQ ID NO:114)またはヒトIgG1(SEQ ID NO:110)のFcドメインとの融合遺伝子を作り出すためのプライマーを設計した。Fc尾部のアミノ末端で融合する5'配列用に2種類のプライマーを設計した;第1のものはマウス(またはヒト)RNase由来のネイティブなリーダーペプチドを組み入れ、一方、第2のものは、RNaseを本発明者らが既にクローニングして他の発現試験のために用いているヒトVKIIIリーダーペプチドと融合させる目的で、AgeI部位を、RNaseのアミノ末端に、予想されるシグナルペプチド切断部位の箇所で付着させた。マウスRNaseに関して、第1のプライマーの配列は以下である:
mribNL5'
30mer(ネイティブなリーダーおよびHindIII+Kozakを有するRNase 5')
【0168】
第2のプライマーは、既存のリーダー配列とRNaseの5'末端の成熟配列との間に、予想されるリーダーペプチド切断部位の箇所またはその近傍に遺伝子融合連結部を作り出す。
27mer(RNase5'成熟配列(リーダーなし、AgeI部位を有する)
【0169】
RNaseのカルボキシ末端およびFc尾部のアミノ末端の箇所でのマウスIgG2aに対する融合のための3'プライマーの配列は、以下の通りである:
mrib3NH2
28mer(mIgG2aとの融合用のXhoI部位を有する、RNase3'末端)。
【0170】
-Ig尾部はRNase酵素ドメインに対してアミノ末端側にある-Ig-RNase融合遺伝子を作り出すために、さらに2つのオリゴ体を設計した。
mrib5X
リンカーaaおよびFcドメインのカルボキシ末端との融合用のXbaI部位を有する、36merのRNase5'末端
mrib3X
2つの終止コドンおよびFcドメインのカルボキシ末端との融合用のXbaI部位を有する、31merのRNase3'末端
【0171】
実施例2:モノクローナル抗体を発現するハイブリドーマからの抗RNAまたは抗DNA scFvの単離
H564と命名された抗RNAハイブリドーマを用いて、RNAに特異的なV領域を単離した。採取の前に、H564抗RNAハイブリドーマ細胞を、グルタミン、ピルビン酸、DMEM非必須アミノ酸およびペニシリン-ストレプトマイシンを加えたRPMI 1640培地(Invitrogen/Life Technologies, Gaithersburg, Md.)中で数日間、対数期増殖に保った。遠心によって培地から細胞をペレット化し、2×107個の細胞をRNAの調製に用いた。QIAGEN RNAeasyキット(Valencia、Calif.)全RNA単離用キットおよびQIAGEN QIAshredderをキットに添付の製造元の指示に従って用いて、RNAをハイブリドーマ細胞から単離した。4マイクログラム(4μg)の全RNAを、逆転写によってcDNAを調製するためのテンプレートとして用いた。そのRNA、300ngのランダムプライマーおよび500ngのOligo dT(12-18)および1μlの25mM dNTPを混ぜ合わせ、80℃で5分間変性させ、その後に酵素を添加した。Superscript III逆転写酵素(Invitrogen, Life Technologies)を、酵素とともに提供された第二鎖緩衝液および0.1M DTTの存在下で総容量25μlのRNA+プライマー混合物に添加した。逆転写反応は50℃で1時間進行させた。
【0172】
逆転写酵素反応で生成されたcDNAをQIAquick PCR精製キット(QIAGEN, Valencia CA)によって精製し、ターミナルトランスフェラーゼ(Invitrogen, Carlsbad, CA)を製造元の指示に従って用いてポリ-G配列による尾部を付した。尾部付きcDNAをQIAquick PCR精製によって再び精製し、キットに備えられた30ulの溶出用緩衝液(EB緩衝液)中に溶出させた。H564抗体の軽鎖および重鎖用の可変領域をPCRによって増幅するために、2マイクロリットルの尾部付きcDNAをテンプレートとして、ポリ-Cドメインを含むアンカー-尾部(anchor-tail)5'プライマー、および定常領域に特異的な縮重3'プライマーとともに用いた。増幅および制限酵素消化の後に、リンカー配列に対する2つのV領域の三者間ライゲーションによってscFvが組み立てられるように、制限酵素部位を有する2つの可変鎖を設計した。
【0173】
2つのV領域の間に挿入する(gly4ser)4ペプチドリンカーは、分子を二等分したそれぞれをコードする重複プライマーを用いる重複伸長PCRによる、このリンカー配列の増幅によって組み入れた。PCR断片をアガロースゲル電気泳動によって単離し、ゲルから適切なバンドを切り出すことによって断片を単離して、増幅されたDNAをQIAquickゲル抽出キット(QIAGEN, Valencia, CA)を用いて精製した。H564ハイブリドーマからのscFv派生物を、より大規模な-Ig融合遺伝子のいずれかの末端と付着させることができると考えられるVH-リンカー-VL融合遺伝子として組み立てた。V.sub.Hドメインはリーダーペプチドを有しないように増幅したが、V.sub.Lとの融合用の5' AgeI制限部位、およびリンカードメインとの融合用の3'末端でのBglII制限部位は含めた。
【0174】
scFv-Igは、scFv HindIII-XhoI断片を、ヒトIgG1ヒンジ領域、CH2領域およびCH3領域を含むpDG中に挿入することによって組み立て、それを制限酵素HindIIIおよびXhoIで消化した。ライゲーションの後に、ライゲーション産物のDH5-α細菌への形質転換導入を行った。このscFv-Ig cDNAを、96℃での10秒間の変性、50℃での30秒間のアニーリングおよび72℃での4分間の伸長による25サイクルのプログラムを用いる、PE 9700 thermocyclerでのサイクルシークエンス法に供した。シークエンシング用プライマーは、pDG順方向および逆方向プライマー、ならびにIgG定常領域部分の中のヒトCH2ドメイン(CH2 domain human)とアニーリングする内部プライマーとした。シークエンシング反応は、Big Dye Terminator Ready Sequencing Mix v3.1(PE-Applied Biosystems, Foster City, Calif.)を製造元の指示に従って用いて行った。その後にAutoseq G25カラム(GE Healthcare)を用いて試料を精製し、溶出液をSavant減圧乾燥器の中で乾燥させ、Template Suppression Reagent(PE-ABI)中で変性させた上で、ABI 310 Genetic Analyzer(PE-Applied Biosystems)で分析した。配列を編集し、変換した上で、ベクターNtiバージョン10.0(Informax/Invitrogen, 、North Bethesda, Md.)を用いて解析した。
【0175】
ヒトRNaseI-hIgG1(SEQ ID NO:125~127)融合遺伝子の構築
ヒトRNase1(SEQ ID NO:113)を、Ambion/Applied Biosystems(Austin, TX)から入手したヒト膵臓全RNAからPCR増幅によって単離した。4マイクログラム(4μg)の全RNAを、逆転写によってcDNAを調製するためのテンプレートとして用いた。そのRNA、300ngのランダムプライマーおよび500ngのOligo dT(12-18)および1ulの25mM dNTPを混ぜ合わせ、80℃で5分間変性させ、その後に酵素を添加した。Superscript III逆転写酵素(Invitrogen, Life Technologies)を、酵素とともに提供された第二鎖緩衝液および0.1M DTTの存在下で総容量25μlのRNA+プライマー混合物に添加した。逆転写反応は50℃で1時間進行させた。反応物をQIAquick PCR精製カラムによってさらに精製し、cDNAを40マイクロリットルのEB緩衝液中に溶出させて、その後にPCR反応に用いた。2マイクロリットルのcDNA溶出液を、ヒトRNase1に特異的な50pmolの5'および3'プライマーを含むPCR反応物に添加し、45マイクロリットルのPCR high fidelity supermix(Invitrogen, Carlsbad, CA)を0.2mlのPCR反応チューブに添加した。PCR反応はC1000サーマルサイクラー(BioRad, Hercules CA)を用いて行った。反応には、95Cでの2分間の初期変性段階、その後に94℃、30秒間の変性、50℃、30秒間のアニーリングおよび68℃、1分間の伸長段階を34サイクル、その後に最終的な72℃での4分間の伸長を含めた。野生型尾部を単離した上で、断片をpCR2.1ベクター中にTOPOクローニングし;QIAGEN spin plasmid miniprepキットを製造元の指示に従って用いてDNAを調製した。ABI Dye Terminator v3.1 ready reaction mixを製造元の指示に従って用いて、プラスミドDNAの配列を決定した。
【0176】
実施例3:ヒトおよびマウス-Fcドメインの単離、ならびにコード配列中への突然変異の導入
マウス-Fcドメイン(SEQ ID NO:114)およびヒト-Fcドメイン(SEQ ID NO:110)の単離のために、以下の通りにマウスまたはヒトの組織からRNAを導き出した。マウス脾臓からRPMI培地中の単細胞浮遊液を作製した。または、Lymphocyte Separation Media(LSM)Organon Teknika(Durham, NC)を用いて新鮮な全血からヒトPBMCを単離し、バフィコートを製造元の指示に従って採取して、PBS中で細胞を3回洗浄した後に用いた。遠心によって培地から細胞をペレット化し、2×107個の細胞をRNAの調製に用いた。QIAGEN RNAeasyキット(Valencia, Calif.)全RNA単離キットおよびQIAGEN QIAshredderカラムをキットに添付の製造元の指示に従って用いて、RNAを細胞から単離した。1マイクログラム(4μg)の全RNAを、逆転写によってcDNAを調製するためのテンプレートとして用いた。このRNA、300ngのランダムプライマーおよび500ngのOligo dT(12-18)および1μlの25mM dNTPを混ぜ合わせ、80℃で5分間変性させ、その後に酵素を添加した。Superscript III逆転写酵素(Invitrogen, Life Technologies)を、酵素とともに提供された第二鎖緩衝液および0.1M DTTの存在下で総容量25μlのRNA+プライマー混合物に添加した。逆転写反応は50℃で1時間進行させた。cDNAをQIAquick(QIAGEN)PCR精製カラムを用いて精製し、40マイクロリットルのEB緩衝液中に溶出させた後に、PCR反応に用いた。
【0177】
野生型のマウスおよびヒト-Fcドメインを、上記のcDNAをテンプレートとして用いるPCR増幅によって単離した。以下のプライマーを野生型配列の初期増幅のために用いたが、所望の所望の突然変異性変化がヒンジドメインに組み入れられた:
【0178】
PCR反応は、C1000サーマルサイクラー(BioRad, Hercules CA)またはEppendorfサーマルサイクラー(ThermoFisher Scientific, Houston TX)を用いて行った。反応には、95℃での2分間の初期変性段階、それに続く94℃、30秒間の変性、50℃、30秒間のアニーリングおよび72℃、1分間の伸長段階による34サイクルと、それに続く最終的な72℃での4分間の伸長を含めた。野生型尾部を単離した上で、断片をpCR2.1ベクター中にTOPOクローニングし、QIAGEN spin plasmid miniprepキットを製造元の指示に従って用いてDNAを調製して、ABI Dye Terminator v3.1シークエンシング反応を製造元の指示に従って用いてクローンの配列を決定した。
【0179】
正しいクローン由来のDNAを、マウスIgG2aまたはヒト-IgG1のコード配列中の所望の位置に突然変異を導入するための重複伸長PCRにおけるテンプレートとして用いた。PCR反応は、テンプレートとしての完全長野生型クローン(1マイクロリットル)、各方向から所望の突然変異部位までの、およびそれを含む-Fcドメインの各部分のPCRを行うための50pmolの5'および3'プライマー、ならびにPCR hi fidelity Supermix(Invitrogen, Carlsbad CA)を50マイクロリットルの反応容量中に用い、短い増幅サイクルを用いて設定した。重複PCR突然変異誘発の一例として、P331S突然変異をヒト-IgG1に導入するために用いたプライマーの組み合わせは以下の通りであった:
【0180】
5'サブフラグメントは完全長野生型クローンをテンプレートとして用いて増幅し、ここで5'プライマーはhIgG1-5scc:
とし、一方、3'プライマーはP331AS:
とした。3'サブフラグメントは完全長野生型クローンをテンプレートとして用いて増幅し、ここで5'プライマーはP331S:
とし、一方、3'プライマーはmahIgG1S:
とした。
【0181】
サブフラグメントを増幅し、アガロースゲル電気泳動によって単離した上で、それらをQIAquickゲル精製カラムによって精製し、30マイクロリットルのEB緩衝液中に製造元の指示に従って溶出させた。続いて2回のPCRを、2つのサブフラグメントを新たな反応における重複テンプレートとして用いて行った。サイクラーを休止させ、5'(hIgG1-5scc、上記参照)および3'(mahIgG1S、上記参照)フランキングプライマーを反応物(各50pmol)に添加した。続いてPCR増幅を、野生型分子に関して上述した条件で34サイクル行った。完全長断片をゲル電気泳動によって単離して、配列解析のためにpCR2.1ベクター中にTOPOクローニングした。続いて、正しい配列を有するクローン由来の断片を、本明細書に記載の各種のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を作り出すために、発現ベクター中にサブクローニングした。
【0182】
実施例4:安定なCHO細胞株における、RNase-Ig(SEQ ID NO 124、125、126、127、174(ヌクレオチド)または160、161、162、163、175(アミノ酸))、DNase-Ig(SEQ ID NO 118、119、120、121、122、123、186(ヌクレオチド)またはSEQ ID NO 154、155、156、157、158、159、187(アミノ酸))、多サブユニットIg融合構築物(SEQ ID NO:115、116、117、172、176、178、180(ヌクレオチド)またはSEQ ID NO 151、152、153、173、177、179、181(アミノ酸))およびH564 scFv-Ig融合タンパク質の発現
本実施例は、本明細書に記載の各種の-Ig融合遺伝子の真核細胞株における発現、ならびに 発現された融合タンパク質のSDS-PAGEおよびIgGサンドイッチELISAによる特性決定について例証する。
【0183】
正しい配列を有する-Ig融合遺伝子断片を哺乳動物発現ベクターpDG中に挿入し、陽性クローン由来のDNAを、QIAGENプラスミド調製キット(QIAGEN, Valencia, Calif.)を用いて増幅した。続いて組換えプラスミドDNA(100μg)を、AscIによる消化によって非必須領域で線状化し、フェノール抽出によって精製して、組織用培地Excell 302(カタログ番号14312-79P、JRH Biosciences, Lenexa, Kans./SAFC)中に再懸濁させた。トランスフェクション用の細胞であるCHO DG44細胞を対数増殖下に保ち、107個ずつの細胞を各トランスフェクション反応のために採取した。線状化されたDNAを、エレクトロポレーションのために、総容量0.8ml中のCHO細胞に添加した。
【0184】
-Ig融合タンパク質の安定した産生は、CMVプロモーターの制御下にあるRNase-Ig cDNAを含む選択可能かつ増幅可能なプラスミドpDGの、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞内へのエレクトロポレーションによって達成された。このpDGベクターは、プラスミドに対する選択圧を高めるために減弱化されたプロモーターを有する、DHFR選択マーカーをコードするpcDNA3の改変された型である。Qiagen maxiprepキットを用いてプラスミドDNAを調製し、精製されたプラスミドを唯一のAscI部位で線状化した後に、フェノール抽出およびエタノール沈殿を行った。サケ精子DNA(Sigma-Aldrich, St. Louis, Mo.)を担体DNAとして添加し、100μgずつのプラスミドおよび担体DNAを用いて、107個のCHO DG44細胞にエレクトロポレーションによってトランスフェクトした。本明細書中で以後「Excell 302完全」培地と称する、グルタミン(4mM)、ピルビン酸、組換えインスリン、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび2×DMEM非必須アミノ酸(すべてLife Technologies, Gaithersburg, Md.から)を含むExcell 302培地(JRH Biosciences)中で、細胞を対数期になるまで増殖させた。トランスフェクトされていない細胞用の培地にも、HT(ヒポキサンチンおよびチミジンの100×溶液から希釈)(Invitrogen/Life Technologies)を含めた。選択下でのトランスフェクション用の培地には、50nMから1μMまでの範囲にわたるさまざまなレベルのメトトレキサート(Sigma-Aldrich)を選択剤として含めた。エレクトロポレーションは280ボルト、950マイクロファラッドで行った。トランスフェクトされた細胞を非選択培地中に一晩おいて回復させた後に、96ウェル平底プレート(Costar)中への選択的プレーティングを、細胞125個/ウェルから細胞2000個/ウェルまでのさまざまな系列希釈で行った。細胞クローニング用の培地は、50nMメトトレキサートを含むExcell 302完全培地とした。クローン増殖が十分になったところで、マスターウェルからの培養上清の系列希釈物を、-IgGサンドイッチELISAを用いることによって-Ig融合タンパク質の発現に関してスクリーニングした。手短に述べると、NUNC immulon IIプレートを、PBS中の7.5マイクログラム/mlのF(ab'2)ヤギ抗マウスIgG(KPL Labs, Gaithersburg, MD)により、4℃で一晩かけてコーティングした。プレートをPBS/3% BSA中でブロックし、培養上清の系列希釈物を室温で2~3時間インキュベートした。プレートをPBS/0.05% Tween 20中で3回洗浄して、それぞれPBS/1.0% BSA中に1:3500とした西洋ワサビペルオキシダーゼ結合F(ab'2)ヤギ抗マウスIgG2a(Southern Biotechnologies)およびヤギ抗マウスIgG(KPL)を混合したものとともに室温で1~2時間インキュベートした。プレートをPBS/0.05% Tween 20中で4回洗浄し、SureBlue Reserve、TMB基質(KPL Labs, Gaithersburg, MD)によって結合を検出した。等容量の1N HClの添加によって反応を停止させ、プレートの450nMでの読み取りをSpectramax Proプレートリーダー(Microdevices, Sunnyvale CA)で行った。融合タンパク質の産生が最も高度であったクローンをT25フラスコ内で、続いてT75フラスコ内で増やして、凍結のため、および融合タンパク質の産生規模拡大のために十分な数の細胞を得た。優れた上位4つのクローンからの培養物における産生レベルを、メトトレキサート含有培地中での累進増幅によってさらに高めた。DHFRプラスミドが増幅された細胞のみが生存しうるように、細胞の連続継代のたびに、Excell 302完全培地に含めるメトトレキサートの濃度を徐々に高めた。RNaseIg CHOトランスフェクト体からの、増幅されていないマスターウェルの上位4つの産生レベルは、30~50マイクログラム/ml培養物の範囲であった。増幅された培養物は、産生レベルを決定するために現在アッセイしているところである。
【0185】
RNase-Igを発現するCHO細胞から上清を収集し、0.2μmのPES expressフィルター(Nalgene, Rochester, N.Y.)に通して濾過した上で、プロテインA-アガロース(IPA 300架橋アガロース)カラム(Repligen, Needham, Mass.)に通過させた。カラムをカラム洗浄用緩衝液(90mM Tris塩基、150mM NaCl、0.05%アジ化ナトリウム、pH 8.7)で洗浄し、結合したタンパク質を0.1Mクエン酸緩衝液、pH 3.0を用いて溶出させた。画分を収集し、Nanodrop(Wilmington DE)マイクロサンプル分光光度計を用いて280nMでタンパク質濃度を決定するとともに、0.1Mクエン酸緩衝液、pH 3.0を用いて空試験も行った。融合タンパク質を含む画分をプールした上で、エンドトキシン混入の恐れを減らすために、centricon濃縮器を用いたPBS中での連続スピンの後に0.2μmのフィルターデバイスに通して濾過することによって緩衝液交換を行った。Vector Nti Version 10.0ソフトウエアパッケージ(Informax, North Bethesda, Md.)中のタンパク質分析ツール、およびオンラインのExPasyタンパク質分析ツールから予測された切断部位を用いて、消衰係数は1.05と求められた。
【0186】
実施例5:RNaseIg融合タンパク質のSDS-PAGE分析
精製されたRNase-Ig(SEQ ID NO:115)を、SDS-ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動によって分析した。融合タンパク質試料をジスルフィド結合の還元を伴うおよび伴わないSDS試料用緩衝液中で煮沸し、SDS 10% Tris-BISゲル(カタログ番号NP0301、Novex, Carlsbad, Calif.)に適用した。各精製タンパク質の5マイクログラムずつをゲル上にローディングした。電気泳動後に、クーマシーブルー染色(Pierce Gel Code Blue Stain Reagent、カタログ番号24590、Pierce, Rockford, Ill.)および蒸留水中での脱染によってタンパク質を可視化した。分子量マーカーを同じゲル上に含めた(Kaleidoscope Prestained Standards, カタログ番号161-0324、Bio-Rad, Hercules, Calif)。他の試料の泳動は以下の通りに行った:サンプリング緩衝液(5% 2-メルカプトエタノールを伴うおよび伴わない、62.5mM Tris-HCl、pH6.8、2% SDS、10%グリセロール、0.01%ブロモフェノールブルー)中のRNase-Ig融合タンパク質を4~12%のプレキャストゲル(Bio-RAD)上にローディングした。色素がゲルを泳動して流出するまで、ゲルの泳動を100ボルトで行った。室温で一晩かけてゲルをGelCode Blue(Thermo scientific)中で染色し、続いて水で洗浄した。
【0187】
図3は、RNase-Ig融合タンパク質をマウスIgGと比較して示している。トランスフェクトされたCHO細胞の上清から、RNase-Igを、プロテインAセファロースとの結合およびそれからの溶出によって精製した。SDS-PAGEゲルは、RNase-Igが還元された場合にはおよそ50kDaであって、還元されていない場合にはおよそ110kDaであることを示している。
【0188】
実施例6:マウス血清中のRNase-Igの検出
SREDアッセイ
2%アガロースゲルを、蒸留水を用いて調製した。ポリ-IC(Sigma)を蒸留水中に3mg/mlで溶解させて、ゲルプレートを以下の通りに調製した:1.5mlの反応緩衝液(0.2M Tris-HCl pH 7.0、40mM EDTAおよび0.1mg/ml臭化エチジウム)、1mlのポリ-ICおよび0.5mlの水をチューブに入れ、50℃に5分間維持した。3mlのアガロース(50℃に保つ)をチューブに添加した。この混合物を直ちにガラスプレート上に注いだ。ゲルへの穿孔によってサンプリングウェルを作製した。2μlの各血清試料をウェル中にローディングし、湿潤チャンバー内でゲルを37℃で4時間インキュベートした。続いてゲルを、緩衝液(20mM酢酸ナトリウムpH5.2、20mg/ml臭化エチジウム)中にて氷上で30分間インキュベートし、UV下で読み取りを行った。
【0189】
図4は、RNase-Ig融合タンパク質(SEQ ID NO:150)(この実験では、トランスフェクトされたCOS細胞の上清から、プロテインAセファロースとの結合およびそれからの溶出によって精製)の静脈内注射後の3匹のマウス(410、413および418)によるRNase活性を示している。標準物質を一番上の列に用いた。マウス410(矢印参照)に対する2週間後の2回目の注射に留意されたい。3匹のマウスのそれぞれからの2μlの血清を、0.5mg/mlポリ-Cを含む1%アガロースゲル上にローディングした。湿潤チャンバー内でゲルを37℃で4時間インキュベートし、続いて20mM酢酸ナトリウムおよび20ug/ml臭化エチジウムを含む緩衝液中に30分間浸漬させた。RNase活性は、中央ウェルの周りのサイズおよび強度に反映される。このデータは、RNase-Ig融合タンパク質がマウス血清中で、延長した半減期を有することを示している。
【0190】
実施例7:マウス血清中のRNA特異的抗体を測定するための抗RNA ELISAの使用
96ウェルプレート(Nunc、Thermal fisher scientific)を、50μg/mlのポリ-L-リジン(Sigma)により、一晩かけてコーティングした。0.05% Tweenを含むPBSで5回洗浄した後に、プレートをPBS中の10μg/mlの酵母RNAによって4℃で一晩かけてコーティングした。5回洗浄した後に、1% BSAを含むPBSにより、室温で2時間かけてプレートをブロックした。1:50に希釈した血清試料をプレートに添加し、4℃で一晩インキュベートした。ハイブリドーマH564(抗RNA)培地を、1:300からの2倍系列希釈を用いて、標準物質として用いた。検出抗体はアルカリホスファターゼと結合させた抗マウスIgG(Jackson Lab)とし、これをプレートに1:5000で添加して室温で1時間おいた。ホスファターゼ基質(Sigma)を現像用緩衝液(ThermoFisher Scientific)中に溶解させ、プレートに50μl/ウェルで添加した。Spectramax Plusプレートリーダー(Microdevices, Sunnyvale, CA)を用いて、試料の405nmでの読み取りを行った。
【0191】
図5は、RNase-Ig融合タンパク質(SEQ ID NO:150)の静脈内注射の前および後の、マウス410の抗RNA抗体のELISA力価の結果を示している。事前にコーティングしたポリ-L-リジン(50μg/ml)プレートを10ug/mlの酵母RNAによってコーティングした。血清(1:50)をプレート上にローディングし、4℃で一晩インキュベートした。検出抗体は抗マウスIgG-アルカリホスファターゼ(Jackson Labs)を1:5000にて室温で1時間とし、続いてホスファターゼ基質を添加して405nmで読み取りを行った。このデータは、RNase-Igの注射が抗RNA抗体の力価の低下を引き起こし、それが3週間にわたって持続したことを示している。
【0192】
図6は、RNase-Ig融合タンパク質(SEQ ID NO:150)の注射の前後3週間以内の、マウス413の抗RNA抗体のELISA力価の結果を示している。実験はマウス410に関して記載した通りに行った。抗RNA抗体の力価は、RNase-Igの注射後に低下した。
【0193】
実施例8:ヒトPBMCによるIFN-α産生は、インビトロの培養物に対するRNaseIg添加によって阻害される
RNase-Ig(SEQ ID NO:150)の添加は、SLE患者(J11)からの血清+核抽出物(NE)によって形成された免疫複合体を用いて刺激したヒト末梢血単核細胞からのインターフェロン-αの誘導を消失させた。手短に述べると、ELISAプレートを50マイクロリットルの1:2500捕捉抗体(抗IFNα、PBL 21112-1, Piscataway, NJ)によってコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートをPBS/0.05% Tween 20で洗浄し、PBS/1% BSA中に室温で2時間おいてブロックし、PBS/0.05% Tween-20で洗浄した上で、IFN-αの標準的な希釈物または血清試料の系列希釈物とともに室温で2時間インキュベートした。プレートを洗浄し、PBS/1% BSA中の1:2000検出抗体(PBL 31101-2, Piscataway, NJ)とともにインキュベートした。プレートをPBS/0.05% Tween-20中で洗浄し、PBS/1% BSA中に1:12,000とした50マイクロリットルのロバ抗ウサギHRP(Jackson Immunoresearch, Westgrove, PA)とともにインキュベートした。プレートを5回洗浄し、その後にTMB基質を添加した。1/2容量の2N H2S04の添加によって反応を停止させ、試料の450nmでの読み取りをSpectramax Proプレートリーダー(MicroDevices, Sunnyvale, CA)で行った。その結果は図7に示されており、これはRNase-Igの添加が、SLE患者(J11)からの血清+核抽出物によって形成された免疫複合体を用いて刺激したヒト末梢血単核細胞からのインターフェロン-αの誘導を消失させたことを示している。
【0194】
実施例9:TLR7.1×RNaseA二重トランスジェニックマウスの表現型
本発明者らは、RNaseAを過剰発現するマウス(RNaseTg)を作製した。このヌクレアーゼはRNaseTgマウスにおいて高レベルで発現される(図8参照)。本発明者らは、血清中のRNaseを定量するための一元放射拡散(SRED)法(左のパネル)、およびはるかにより定量的なELISAを開発した(図9参照)。本発明者らは、RNaseA TgをTLR7.1 Tgマウスと交配させて二重Tg(DTg)を作製した。TLR7.1マウスはTLR7のコピーを8~16個有しており、悪性度が非常に高い急速進行性のループス様疾患を発症し、3カ月齢の時点で死亡し始め、生存期間中央値は6カ月である。予備分析において、本発明者らは、DTgマウスが改善の徴候を示すか否かを調べるために、DTgおよび同腹仔対照を3カ月齢まで育てた(bled)。図8に示されているように、DTgマウスは、それらの血清中のRNaseのレベルが非常に高かった(比活性993U/mgの本発明者らの標準物質に基づけば、13U/mlを上回るRNaseに相当)。図9に示されているように、TgおよびDTgマウスにおけるRNaseA濃度をELISAアッセイによっても測定した。RNaseA TgマウスおよびTLR7.1×RNaseA Dtgマウスは、RNaseAの血清中濃度が1~2ng/mlであった。
【0195】
RNaseA ELISAのための詳細な方法(実施例9、図9
1.プレートを抗RNaseA Abcam Ab(ab6610)でコーティングする:4C中に2.5~10ug/ml O/N。
2.0.05% Tween/1×PBSでプレートを3回洗浄する。
3.PBS中の1% BSAにより、少なくとも1時間かけてブロックする。
4.0.05% Tween/1×PBSによってプレートを3回洗浄する。
5.試料をローディングする。試料の希釈度は1:50。
6.室温で2時間インキュベートする。
7.0.05% Tween/1×PBSによってプレートを3回洗浄する。
8.ビオチン標識抗RNaseAbの希釈度1:4500(2.2ug/ml)の希釈物を調製する。室温で1時間放置する(Rockland 200-4688:10mg/ml)。
9.プレートを3回洗浄する。
10.StrepAV HRP(Biolegend 405210)を1:2500に希釈する。ホイルで覆い、室温で25~30分間放置する。
11.6回洗浄し、洗浄の間には液体をウェル中で少なくとも30秒間静置する。
12.BD OptEIA基質A+Bを1:1で添加する。色調が5~10分で最大になるまで待つ。一番上のウェルの標準物質が1.0を上回らないようにする。80ulを添加する(カタログ番号:51-2606KC;試薬A、51-2607KC;試薬B)
13.反応を停止させるために1M硫酸40ulを添加する。
【0196】
製品/試薬の情報:
RNaseA Ab:ab6610(90mg/ml)
ELISA緩衝液:PBS中の1% BSA
ELISA洗浄用緩衝液:0.05% Tween/1×PBS
抗RNaseAビオチン結合Ab:Rockland:200-4688(10mg/ml)
Strep AV HRP:Biolegend 405210
BD OptEIA試薬AおよびB:51-2606KCおよび51-2607KC
【0197】
実施例10.TLR7.1トランスジェニックマウス系統の生存曲線
DTgとTLR7.1同腹仔対照との間には、生存に関して高度の有意差が認められた。図10に示されているように、10カ月の時点でTLR7.1マウスの61%が死亡したのに対して、DTgマウスは31%が死亡した。このデータは、RNaseAの過剰発現が強い治療効果を発揮したことを示している。TLR7.1マウスが早発性に死亡した理由は完全には明らかでないが、重症貧血、血小板減少および糸球体腎炎が役割を果たした可能性が考えられる。DTgマウスにおいて、赤血球数および血小板数がRNaseA発現によって良い影響を受けたか否かを明らかにするために、本発明者らは血算を行ったが、TLR7.1マウスとDTgマウスとの間に差は見いだされなかった。対照的に、DTgマウスでは腎臓の組織病理に有意な改善が認められた。本発明者らは、DTgマウスにおいてIgGおよびC3の沈着減少を観察した。メサンギウムにおける炎症を反映するPAS染色も、DTgマウスではTLR7.1同腹仔対照と比較して低下していた。本発明者らが今回、腎臓のマクロファージ浸潤を抗MAC-2(ガレクチン3)抗体(Lyoda et al. Nephrol Dial Transpiat 22: 3451, 2007)を用いて比較したところ、mac-2陽性細胞はDTgマウスの糸球体の方が非常に少なかった。各群当たり5匹ずつのマウスにおいてマウス1匹当たり20個の糸球体で算定したところ、単独TgおよびDTgに関する平均+/-SEはそれぞれ3.8+/-1.1および1.4+/-0.2であり、p=.05であった。加えて、本発明者らは糸球体係蹄サイズも定量し、DTgマウスにおける糸球体係蹄サイズの有意な減少を観察した(単独TgおよびDTgにおいてそれぞれ179+/-41および128+/-16.8um2、p=0.037)。以上を要約すると、TLR7.1×RNaseA DTgマウスはそれらの単独Tg TLR7.1同腹仔よりも長く生存し、かつそれらの腎臓における炎症および傷害はより軽度である。
【0198】
実施例11.TLR Tgマウスの脾臓におけるIRGの分析
TLR7.1 TgマウスおよびTLR7.1×RNaseA DTgマウスの脾臓におけるインターフェロン応答遺伝子(IRG)の分析により、DTgマウスにおいてIRF7遺伝子の発現が有意に低いことが示された(p=0.03)。MX1およびVIG1を含む他のいくつかのIRGは、Tgマウスと比較してDTgマウスの方が低値であったが、その差は有意ではなかった。図11参照。定量的PCRを以下の通りに行った:RNeasy miniキット(Qiagen, Valencia, CA, USA)を用いてマウス脾臓から全RNAを単離し、Turbo DNA-free(Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)を用いてDNaseを処理した上で、RNA-to-cDNAキット(Applied Biosystems)により、ランダムプライマーを用いて第一鎖cDNAを生成させた。単離されたRNAに関して、NanoDrop(Thermo Scientific, Waltham, MA, USA)を用いた測定では、260/280値は1.7~2.0の間であった。cDNAを1ng/ul全RNAに相当するよう希釈し、1つの反応につき8ulを用いた。参照遺伝子(18s)および関心対象の遺伝子(GOI)用のプライマーを合成し(IDT, Coralville, Iowa, USA)、分子グレードの水(molecular grade water)を用いてqPCR用に適切な濃度に希釈した。プライマーのBLASTの結果から、参照遺伝子またはGOIのみに対する特異的な配列相同性が示されている。SensiMix SYBR low-ROX master mix(Bioline, London, UK)に対するテンプレートおよびプライマーの1:1混合物を用いて、ABI Fast7500システムで、2つずつの反応物(20ul)を進行させた。年齢を一致させた野生型B6マウスを各GOIに関する変化倍数を求めるためのベースラインとして用いる2-ddCT法を用いて、相対的定量の算出を行った。反応物に関する解離曲線から、各遺伝子に関して単一の融解ピークが示されている。標準曲線からは、各遺伝子に関して同程度の増幅効率が示され、テンプレート濃度はプライマーセットのそれぞれに関して直線範囲(linear dynamic range)内にあった。
【0199】
実施例12.ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を作製するための構造
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を、単酵素構造または多酵素構造の所望の構造および機能的活性が組み入れられるように、シャトリング(shuttling)およびドメイン交換のための適合性制限酵素部位を有するモジュール式カセットとして設計した。ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の種々の態様の模式的構造は図12に図示されている。プライマーは表1に示されている。代表的なハイブリッド型ヌクレアーゼ分子のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は表2に示されている。
【0200】
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の作製のための一般的アプローチ
QIAgen RNAeasyキット(Valencia, CA)および細胞溶解物を均質化するためのQIAshredderキット(Qiagen, Valencia, CA)を用いて、ヒト膵臓RNA(Ambion)または正常ヒト末梢血リンパ球(およそ5×10e6個)由来のヒトPBMC RNAからヒトcDNAを単離した。ヒトPBMCは、D-PBS中に1:1に希釈したヘパリン添加ヒト血液から単離し、LSM Lymphocyte Separation Medium(MP Biomedicals, Irvine, CA)のFicoll勾配上に重層させた。
【0201】
マウス脾臓RNAは、およそ5×10e6個の脾細胞から、QIAgen RNAeasyキット(Valencia, CA)を用いて単離した。遠心によって培地から細胞をペレット化し、5×10e6個の細胞をRNAの調製に用いた。QIAGEN RNAeasyキット(Valencia、Calif.)全RNA単離用キットおよびQIAGEN QIAshredderをキットに添付の製造元の指示に従って用いて、RNAを細胞から単離した。1~2マイクログラム(1~2μg)の全RNAを、逆転写によってcDNAを調製するためのテンプレートとして用いた。そのRNA、300ngのランダムプライマーおよび500ngのOligo dT(12-18)および1μlの25mM dNTPを混ぜ合わせ、80℃で5分間変性させて、その後に酵素を添加した。Superscript III逆転写酵素(Invitrogen, Life Technologies)を、酵素とともに提供された5×第二鎖緩衝液および0.1M DTTの存在下で総容量25μlのRNA+プライマー混合物に添加した。逆転写反応は50℃で1時間進行させた。
【0202】
10~100ngのcDNAを、関心対象のヌクレアーゼ遺伝子(RNaseA、RNase1、DNase1、Trex1、DNase1L3など)に特異的なプライマーを用いるPCR増幅反応に用いた。初期クローニング反応のために、関心対象の遺伝子をコードする完全長cDNAまたは短縮産物を単離するためのプライマーを設計した。完全長PCR断片または短縮したPCR断片をアガロースゲル電気泳動によって単離し、ヌクレオチド、プライマーおよび望まれない増幅産物を除去するためにQiagen QIAquickカラムを用いて精製した。精製した断片をpCR2.1 TOPOクローニングベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA)中にクローニングし、TOP10コンピテント細菌への形質転換導入を行った。単離したコロニーを摘出して、50ug/mlカルベニシリンを含むLuria Broth培地に入れ、プラスミドを単離するために一晩増殖させた。TOPOクローンを、EcoRI(NEB, Ipswich, MA)制限酵素による消化および消化断片のアガロースゲル電気泳動により、正しいサイズのインサートに関してスクリーニングした。ABI Ready Reaction Mix v 3.1を用いて陽性クローンのDNA配列解析を行い、ABI 3730 XL DNAシーケンサーを用いて解析した。正しいクローンが得られたところで、さらなる配列改変物を設計し、所望のアレルまたは発現カセットを作製するためにPCR反応を行った。短縮産物およびアレルは、遺伝子中の特定の位置への突然変異の導入のために重複プライマーを用いるPCR突然変異誘発によって作製した。リンカーは、内部重複プライマーを用いる重複PCR、および追加配列を各末端に付着させるためのPCRの連続実施によって合成した。ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、いくつかの互換的カセットの連鎖として組み立てられた。好ましい態様の分子は、既定のリーダーペプチド、ヌクレアーゼカセット、いくつかの異なるポリペプチドリンカーから選択されたものをコードする任意選択的なカセット、終止コドンまたはリンカーのいずれかをCH3ドメインのカルボキシル末端に有する-Ig Fcドメインカセットを含み、さらにresolvICase型分子の場合には、第2のリンカーカセットとそれに続く第2のヌクレアーゼカセットを含む。図12はこれらのハイブリッド型ヌクレアーゼ分子のカセット型構造、および各位置に挿入される可能性のある配列の例を図示している。ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子が組み立てられたところで、メトトレキサートによるDHFRに関する選択を用いて、それらを、COS7または他の細胞における一過性発現、およびCHO DG44細胞における安定した発現のために適切な哺乳動物発現プラスミドpDGに移行させる。
【0203】
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の一過性発現
COS-7細胞に対して、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子遺伝子のインサートを含む発現ベクターpDGを一過性にトランスフェクトした。トランスフェクションの前日に、細胞を、4ml DMEM(ThermoFisher/Mediatech cell gro)+10% FBS組織培地中にて、60mmディッシュ当たり4×10e5個で播種した。DMEM基本培地に4.5g/Lのグルコース、ピルビン酸ナトリウム、L-グルタミン4mM、および非必須アミノ酸を加えた。ウシ胎仔血清(Hyclone, Logan, UT ThermoFisher Scientific)を、最終容量比10%となるように培地に添加した。細胞を37℃、5% CO2にて一晩インキュベートしたところ、トランスフェクションの日の集密度はおよそ40~80%となった。Qiagen(Valencia, CA)QIAprep miniprepキットを製造元の指示に従って用いてプラスミドDNAを調製し、50ulのEB緩衝液中に溶出させた。Nanodrop 1000(ThermoFisher Scientific, Wilmington DE)分光光度計を用いてDNA濃度を測定した。プラスミドDNAは、Polyfect(Qiagen, Valencia, CA)トランスフェクション試薬を製造元の指示に従って用い、60mmディッシュ当たり2.5ugのプラスミドDNA、および150ulの無血清DMEMトランスフェクション用カクテル中の15ulのpolyfect試薬を用いてトランスフェクトした。複合体の形成後に、反応物を血清およびすべての添加物を含む1mlの細胞増殖培地中に希釈して、3mlの新たなDMEM完全培地を含むプレートに滴下した。一過性トランスフェクション物を48~72時間インキュベートした後、さらなる分析のために培養上清を採取した。
【0204】
関心対象のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を発現する、安定したCHO DG44トランスフェクト体の作製
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の安定した産生は、CMVプロモーターの制御下にあるヌクレアーゼ-Ig cDNAを含む選択可能かつ増幅可能なプラスミドpDGの、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞内へのエレクトロポレーションによって達成された。このpDGベクターは、プラスミドに対する選択圧を高めるために減弱化されたプロモーターを有する、DHFR選択マーカーをコードするpcDNA3の改変された型である。Qiagen maxiprepキットを用いてプラスミドDNAを調製し、精製されたプラスミドを唯一のAscI部位で線状化した後に、フェノール抽出およびエタノール沈殿を行った。サケ精子DNA(Sigma-Aldrich, St. Louis, Mo.)を担体DNAとして添加し、100μgずつのプラスミドおよび担体DNAを用いて、107個のCHO DG44細胞にエレクトロポレーションによってトランスフェクトした。本明細書中で以後「Excell 302完全」培地と称する、グルタミン(4mM)、ピルビン酸、組換えインスリン、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび2×DMEM非必須アミノ酸(すべてLife Technologies, Gaithersburg, Md.から)を含むExcell 302培地(JRH Biosciences)中で、細胞を対数期になるまで増殖させた。トランスフェクトされていない細胞用の培地にも、HT(ヒポキサンチンおよびチミジンの100×溶液から希釈)(Invitrogen/Life Technologies)を含めた。選択下でのトランスフェクション用の培地には、50nMから1μMまでの範囲にわたるさまざまなレベルのメトトレキサート(Sigma-Aldrich)を選択剤として含めた。エレクトロポレーションは280ボルト、950マイクロファラッドで行った。トランスフェクトされた細胞を非選択培地中に一晩おいて回復させた後に、96ウェル平底プレート(Costar)中への選択的プレーティングを、細胞125個/ウェルから細胞2000個/ウェルまでのさまざまな系列希釈で行った。細胞クローニング用の培地は、50nMメトトレキサートを含むExcell 302完全培地とした。クローン増殖が十分になったところで、マスターウェルからの培養上清の系列希釈物を、-IgGサンドイッチELISAを用いることによってハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の発現に関してスクリーニングした。手短に述べると、NUNC immulon IIプレートを、PBS中の7.5マイクログラム/mlのF(ab'2)ヤギ抗マウスIgG(KPL Labs, Gaithersburg, MD)または2ug/mlのヤギ抗ヒトもしくは抗マウスIgG(Jackson Immunoresearch, WestGrove PA)により、4℃で一晩かけてコーティングした。プレートをPBS/2~3% BSA中でブロックし、培養上清の系列希釈物を室温で2~3時間インキュベートした。プレートをPBS/0.05% Tween 20中で3回洗浄して、それぞれPBS/1.0% BSA中に1:3500とした西洋ワサビペルオキシダーゼ結合F(ab'2)ヤギ抗マウスIgG2a(Southern Biotechnologies)およびヤギ抗マウスIgG(KPL)を混合したものとともに、または1:2500とした西洋ワサビペルオキシダーゼ結合F(ab')2ヤギ抗ヒトIgG1(Jackson Immunoresearch, WestGrove, PA)中にて、室温で1~2時間インキュベートした。プレートをPBS/0.05% Tween 20中で4回洗浄し、SureBlue Reserve、TMB基質(KPL Labs, Gaithersburg, MD)によって結合を検出した。等容量の1N HClの添加によって反応を停止させ、プレートの450nMでの読み取りをSpectramax Proプレートリーダー(Microdevices, Sunnyvale CA)で行った。融合タンパク質の産生が最も高度であったクローンをT25フラスコ内で、続いてT75フラスコ内で増やして、凍結のため、および融合タンパク質の産生規模拡大のために十分な数の細胞を得た。優れた上位4つのクローンからの培養物における産生レベルを、メトトレキサート含有培地中での累進増幅によってさらに高めた。DHFRプラスミドが増幅された細胞のみが生存しうるように、細胞の連続継代のたびに、Excell 302完全培地に含めるメトトレキサートの濃度を徐々に高めた。
【0205】
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を発現するCHO細胞から上清を収集し、0.2μmのPES expressフィルター(Nalgene, Rochester, N.Y.)に通して濾過した上で、プロテインA-アガロース(IPA 300架橋アガロース)カラム(Repligen, Needham, Mass.)に通過させた。カラムをカラム洗浄用緩衝液(90mM Tris塩基、150mM NaCl、0.05%アジ化ナトリウム、pH 8.7)で洗浄し、結合したタンパク質を0.1Mクエン酸緩衝液、pH 3.0を用いて溶出させた。画分を収集し、Nanodrop(Wilmington DE)マイクロサンプル分光光度計を用いて280nMでタンパク質濃度を決定するとともに、0.1Mクエン酸緩衝液、pH 3.0を用いて空試験も行った。ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を含む画分をプールした上で、エンドトキシン混入の恐れを減らすために、centricon濃縮器を用いたPBS中での連続スピンの後に0.2μmのフィルターデバイスに通して濾過することによって緩衝液交換を行った。
【0206】
実施例13.hRNase1-G88D-hIgG1[SCCH-P238S-K322S-P331S]に関する酵素反応速度の分析
ヌクレアーゼ分子に関して実施例12に記載した通りに、ランダムプライマー法によるcDNAおよびPCR増幅によって、ヒト膵臓RNAからヒトRNase1配列を単離した。PCRプライマーの表に列記されたプライマーセットからの以下のプライマーを、1つの反応につき50pmolで用いた。
【0207】
細胞質内阻害因子に対する酵素の耐性を変化させる88位での突然変異を導入するためのPCR反応および重複PCR反応に以下の2つのプライマーを用いて、突然変異型のヒトRNaseG88Dを作り出した。
【0208】
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子に関して上述した通りに、野生型および突然変異型のヒトRNase1の両方を単離してクローニングした。野生型配列は、上記に列記したうちの最初の2つのプライマーを用いてクローニングした。RNase断片のTOPOクローニングを行って配列を決定した上で、AgeI-XhoIカセットを、ヒトVK3LPインサートおよびヒトIgG1-WTカセットを既に含むpDG発現ベクターに移行させた。構築物を消化によって確かめ、プラスミドDNAを一過性トランスフェクション用に調製した。小規模の一過性トランスフェクション物によって機能を確認した上で、さらなるインビトロ分析のために十分な量を発現させる目的で、これらの分子をCHO DG44に安定的にトランスフェクトした。野生型ヒトRNase1融合タンパク質は表2に示されており、hVK3LP-hRNase1-WT-hIgG1-WT(SEQ ID NO:163)である。同様に、野生型ヒトRNase1を、hRNaseカセットとhIgG1 Fcドメインとの間に挿入された(gly4ser)4(SEQ ID NO:125もしくはSEQ ID NO:161)または(gly4ser)5(SEQ ID NO:126もしくはSEQ ID NO:162)リンカードメインとの融合遺伝子としても発現させた。表2に列記されているように、ヒトRNase1のG88D突然変異体を、hVK3LP-hRNase-G88D-hIgG1-WT(SEQ ID NO:124もしくは160)またはhIgG1-SCCH-P238S-K322S-P331S(SEQ ID NO:174もしくは175)と命名された融合遺伝子としても発現させた。
【0209】
突然変異型hRNase1-G88D-hIgG1[SCCH-P238S-K322S-P331S](SEQ ID NO:175)に関する酵素反応速度のラインウィーバー・バーク(Lineweaver Burk)プロットは、図13に示されている。この二価RNase-Ig融合タンパク質の機能的特徴をさらに明確にするために、本発明者らはミカエリス定数Kmの予備的決定を行った。精製ヒトRNase1-Ig融合タンパク質の酵素反応速度を、RNase Alert Substrate(Ambion/IDT, San Diego, CA.)を製造元の指示に従って用いてアッセイし、Spectramax M2マイクロプレートリーダー(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)を用いて蛍光をアッセイした。蛍光データを30分間のインキュベーションの過程にわたり30秒間隔で収集し、SoftmaxProソフトウエア(Molecular Devices)を用いて解析した。種々の基質濃度での反応速度を測定し、そのデータをラインウィーバー・バークプロットの形で示している。
【0210】
実施例14.ヒト単球株に対するhRNase1-hIgGの結合の分析
野生型または突然変異型Fc含有分子のFcRを介した結合を評価するために、プロテインAにより精製したハイブリッド型ヌクレアーゼ分子であるhRNase1-hIgG1-WTを、ヒト単球細胞株THP-1またはU937とともにインキュベートした。図14は、これらの2つの細胞株に対するhRNase1-WT-hIgG1-WT(SEQ ID NO:161)の結合パターンを示している。細胞をPBS/2% FBS中の5ug/mlの精製融合タンパク質とともに氷上で45分間インキュベートし、PBS/2% FBS中で3回洗浄して、1:200のFITC-ヤギ抗ヒトIgG(Fc特異的)(Jackson Immunoresearch, WestGrove, PA)とともに氷上で45分間インキュベートした。細胞をPBS/2% FBS中で2回洗浄し、FACS Canto(BD, Franklin Lakes, NJ)フローサイトメーターおよびFlowJoソフトウエア(TreeStar, Ashland, OR)を用いるフローサイトメトリーによって分析した。
【0211】
実施例15.ヒト単球株に対するhRNase1-hIG1の結合のIVIgによる遮断
THP-1細胞またはU937細胞を、96ウェルプレートのウェル全体にわたって10mg/mlから出発して10倍系列希釈を行ったIVIgとともにあらかじめインキュベートした。細胞(ウェル1個当たりおよそ1×10e6個)は氷上で45分インキュベートした。あらかじめ結合した細胞を2回洗浄し、各ウェルに対してAF750結合hRNase1-WT-hIgG1-WT(SEQ ID NO:161)をおよそ5ug/mlで添加した。結合反応物を氷上で45分間インキュベートし、PBS/2% FBS中で2回洗浄して、上記の通りにフローサイトメトリーによって分析した。IVIgは標識ヌクレアーゼ融合タンパク質の結合を部分的に遮断することができたが、10mg/mlでも、バックグラウンドを上回る残留結合が依然として検出可能であった。図15は、hRNase1-WT-hIgG1-WT(SEQ ID NO:161)によるU937細胞およびTHP-1細胞との結合に対するヒトIVIgの遮断活性を示している。
【0212】
実施例16.Trex1-Ig活性アッセイ
以下に列記するプライマーを用いて、マウスcDNAからマウスTrex1をクローニングした:
【0213】
94C 30秒間;50C 60秒間;68C 90秒間による増幅を35サイクル行う増幅プロフィールで、50pmolの各プライマーを総容量50ul中で用いて、PCR反応を行った。プロトタイプヌクレアーゼ融合遺伝子のクローニングに関して前述した通りに、PCR産物をpCR2.1ベクター中にクローニングし、TOPOクローンをスクリーニングした。配列を確かめた上で、カセットを、mIgG尾部と融合させたpDG発現ベクター中にサブクローニングするか、または種々の長さのリンカーを有するTrex1-lnk分子を構築するために(g4s)nリンカーの1つと共クローニングした。プロトタイプヌクレアーゼ融合遺伝子に関して記載した通りに、プラスミド単離物を上記の通りにCOS細胞に一過性にトランスフェクトするとともに、安定したCHOトランスフェクト体を作製した。
【0214】
Trex1Igをコードする融合遺伝子は以下の通りに構築した:これらの遺伝子は、ヒトVK3リーダーペプチドを、COOH末端が72アミノ酸短縮したマウスTrex1(細胞内の核標的指向性配列を除去するため)と融合させ、それを(gly4ser)4(SEQ ID NO:130)または(gly4ser)5リンカー(SEQ ID NO:131)と融合させ、それをBalb/c IgG2aアレルのIgGc配列に比していくつかの変化を組み入れたマウスIgG2a/cアレルと融合させたものを組み入れている。
【0215】
20mM Tris(pH7.5)、5mM MgCl2、2mM DTTを含む30ulの反応物におけるTrex1-Igのエキソヌクレアーゼ活性を、36merオリゴヌクレオチドを基質として用いて測定した。インキュベーション反応を37℃で20~30分間進行させた。試料を23%ポリアクリルアミドDNAゲル上での電気泳動に一晩にわたって供した。0.5ug/ml臭化エチジウムを含むTBE緩衝液中でゲルをインキュベートした。UVトランスイルミネーターによってDNAを可視化し、臭化エチジウムフィルターを装着したKodak EDAS 290デジタルカメラを用いて写真を撮影して、Kodak Molecular Imagingソフトウエアを用いて解析した。mTrex1-(g4s)4-mIgG2a-c(SEQ ID NO:166)およびmTrex1-(g4s)5-mIgG2a-c(SEQ ID NO:167)を産生したCOSに関するtrex1活性アッセイの結果は、図16に示されている。
【0216】
実施例17.COS-7の一過性トランスフェクションによって産生されたmTrex1-Ig単一ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子のウエスタンブロット
COS-7細胞に対して、Trex1-Igをコードするハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を含むプラスミドを、以下の通りに一過性にトランスフェクトした:これらの遺伝子は、ヒトVK3リーダーペプチドを、COOH末端が72アミノ酸短縮したマウスTrex1(核膜標的指向性配列を除去するため)と融合させ、それを(gly4ser)4または(gly4ser)5リンカーと融合させ、それをBalb/c IgG2aアレルのIgGc配列に比していくつかの変化を組み入れたマウスIgG2a/cアレルと融合させたものを組み入れている。COS上清を72時間後に採取し、0.5~1.0mlの試料(実験による)を、100ulのプロテインA-アガロースビーズにより、4℃で一晩かけて免疫沈降させた。プロテインAビーズを遠心し、PBS中で2回洗浄した後に、還元性SDS-PAGEローディング緩衝液中に再懸濁させた。試料を100Cで5分間熱処理し、プロテインAビーズを遠心してペレット化させて、試料用緩衝液を10% SDS-PAGEゲル上にローディングした。試料の電気泳動を150ボルトで1.5~2時間行い、ニトロセルロースメンブレンへのゲルのブロッティングを30mAmpで1時間行った。ウエスタンブロットをTBS/5%脱脂乳中に一晩おいてブロックした。ブロットを1:2500のHRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)結合ヤギ抗マウスIgG2a/c(Fc特異的、KPL)とともに室温で1.5時間インキュベートし、PBS/0.5% Tween20中で5回またはそれ以上の回数洗浄した上で、ECL試薬を用いてブロットの現像を行った。図17は、mTrex1-(g4s)4(SEQ ID NO:166)または(g4s)5-mIgG2a-c(SEQ ID NO:167)融合タンパク質を発現するCOS7培養上清からの免疫沈降物のウエスタンブロットを示している。
【0217】
実施例18.DNase1L3Ig CHO由来の融合タンパク質のエキソヌクレアーゼ活性
DNase1L3を、そのネイティブなリーダーペプチド配列を含むmDNase1L3をクローニングするための以下のプライマー対を用いて、マウス脾臓cDNAからクローニングした。
【0218】
または、ネイティブなリーダーの代わりにヒトVK3リーダーペプチドを付着させる、以下のプライマー対を用いるPCR反応を設定した。
【0219】
94C 30秒間;50C 60秒間;68C 90秒間による増幅を35サイクル行う増幅プロフィールで、50pmolの各プライマーを総容量50ul中で用いてPCR反応を行った。プロトタイプヌクレアーゼ融合遺伝子のクローニングに関して前述した通りに、PCR産物をpCR2.1ベクター中にクローニングし、TOPOクローンをスクリーニングした。配列を確かめた上で、カセットを、mIgG尾部と融合させたpDG発現ベクター中にサブクローニングした。プロトタイプヌクレアーゼ融合遺伝子に関して記載した通りに、プラスミド単離物を上記の通りにCOS細胞に一過性にトランスフェクトするとともに、安定したCHOトランスフェクト体を作製した。
【0220】
DNase1L3Ig(SEQ ID NO:185)CHOクローンからのタンパク質抽出物におけるエキソヌクレアーゼ活性を、20mM Tris(pH7.5)、5mM MgCl2、2mM DTTおよび基質を含む30ulの反応物において測定した。インキュベーションは37℃で20~30分間とした。続いて試料をアガロースDNAゲル上で一晩かけて泳動させた。臭化エチジウムを含むTBE緩衝液中でゲルをインキュベートした。DNAをUV下で可視化出した。クロマチン消化分析の結果は図18に示されている。
【0221】
実施例19.CHO上清の容量増加に伴うエキソヌクレアーゼ活性に関する用量のタイトレーション
図19は、DNase1L3Ig融合タンパク質(SEQ ID NO:183または185)を発現するCOS上清から得たエキソヌクレアーゼ消化パターンのタイトレーション分析を示している。核DNA分解アッセイを以下の通りに行った:HeLa細胞をDMEM培地中で培養し、NP-40溶解を用いて10e5個の細胞から核を単離した。10mM Hepes(pH 7.0)、50mM NaCl、2mM MgCl2、2mM CaCl2および40mM b-グリセロリン酸を含む200ulの反応緩衝液中に核を希釈させた。DNase1L3をトランスフェクトしたCOS細胞からの図に表記された培養上清の容量中で、核を37℃で3時間インキュベートした。QiAmp blood DNA minikitを用いて核DNAを単離した。DNAを1.5%アガロースゲル電気泳動によって分析した。対照反応物に関しては、ヌクレアーゼ活性を阻害するためにヘパリンを250i.u./mlで用いた。
【0222】
実施例20.DNase1-Ig単一および二重酵素ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の構築および発現
ヒトDNase1分子またはDNase1様分子の天然のアレルが報告されている。A114F突然変異が、ヒトDNase1様酵素の天然変異体に存在すること、およびこの配列変化を含む酵素のアクチン耐性をもたらすことが以前に報告されている。Pan, CQ, Dodge TH, Baker DL, Prince WE, Sinicropi DV, and Lazarus RA. J Biol Chem 273: 18374-18381, (1998);Zhen A, Parmelee D, Hyaw H, Coleman TA, Su K, Zhang J, Gentz R, Ruben S, Rosen C, and Li Y. Biochem and Biophys Res Comm 231: 499-504 (1997);およびRodriguez AM, Rodin D, Nomura H, Morton CC, Weremowicz S, and Schneider MC. Genomics 42: 507-513 (1997)を参照のこと、これらはすべて参照により本明細書に組み入れられる。
【0223】
同様に、G105R突然変異は、一部の集団または全集団において多型性であり、かつ自己免疫に関連する、ヒトDNase1をコードする遺伝子における一塩基多型として最近報告されている(Yasuda T, Ueki M, Takeshita H, Fujihara J, Kimura-Kataoka K, Lida R, Tsubota E, Soejima M, Koda Y, Dato H, Panduro A. Int J Biochem Cell Biol 42(7): 1216-1225 (2010)を参照のこと、これは参照により本明細書に組み入れられる)。この位置でのアレル変異体は、野生型に比して高い活性を保有するDNase1アイソフォームをもたらした。別の天然の多型性突然変異(R21S)も、より高い活性を付与することが報告されている(Yasuda、前記を参照)。
【0224】
SLE患者ではDNase1活性のレベルが有意に低いことが報告されている(Martinez-Valle F, Balada E, Ordi-Ros J, Bujan-Rivas S, Sellas-Femandez A, Vilardell-Tarres M. Lupus 18(5): 418-423 (2009)を参照のこと、これは参照により本明細書に組み入れられる)。
【0225】
それ故に、天然の酵素変異体は、これらのアイソフォームがヒト集団に存在するために、患者に投与された場合に免疫原性がより低い可能性がある。本発明者らは、A114Fに類似したアレルのアクチン耐性特性と、G105Rのようなアレルの酵素活性上昇との組み合わせにより、インビトロおよびインビボで臨床活性の改善を示す可能性のあるヒトDNase1の新規アレル変異体が作製されるであろうと推論した。本発明者らの知る限り、本発明者らの報告は、G105RおよびA114Fという2つの天然の変異体の組み合わせによって作製されたDNase1のこの新たな突然変異型に関する初の報告である。
【0226】
ヒトDNase1を、以前の記載の通りに、ランダムプライマー法によるcDNA逆転写および以下のプライマーセットを用いるPCRによって、ヒト膵臓RNA(Ambion)から単離した:
【0227】
または、3'DNaseカセットを、以下のプライマー対を用いるPCRによって増幅した:
【0228】
PCR反応は、Platinum PCR Supermixを以前の記載の通りに用い、総容量50ul中で50pmolの各プライマー、2ulのcDNAを用いて行った。増幅プロフィールは94C 30秒間;55C 30秒間;68C 90秒間を35サイクルとした。
【0229】
野生型遺伝子をPCRによって増幅した上で、断片をゲル電気泳動に供し、850bp断片をQIAquickカラム精製によって精製した。他の構築物に関して記載した通りに、断片をpCR2.1中にクローニングし、製造元の指示に従ったTOPOクローニングによって形質転換を行った。配列を確かめた上で、PCRプライマーを、比活性を改善し、かつアクチンの阻害活性に対する耐性を改善することが報告されているDNase1の天然のアレルを含むサブフラグメントの作製のために用いた。これらのサブフラグメントは重複配列を含んでおり、そのため所望のアレル変異を含む完全なDNase1サブクローンの増幅が可能であった。60mmディッシュ中にて、Polyfect(Qiagen, Valencia, CA)トランスフェクション試薬を用いて、COS7細胞を一過性にトランスフェクトした。プラスミドDNAは、Qiagen QIAprep miniprepキットを製造元の指示に従って用いて調製した。プラスミドを50ulのEB緩衝液中に溶出させた。DNA濃度をNanodropを用いて測定し、2.5ugのプラスミドDNAに相当するアリコートを各トランスフェクション反応に用いた。各DNaseIg(SEQ ID NOS:118、119、120、121、122または123)またはRNase-Ig-DNase(SEQ ID NO:115、116、117)発現カセットを、pcDNA3.1の派生物である哺乳動物発現ベクターpDG中に挿入した。トランスフェクトされた細胞を37℃、5% CO2にて72時間インキュベートし、その後にさらなる分析のために培養上清を採取した。培養上清採取し、残りの細胞を溶液から遠心沈降させて、液体を新たなチューブに移した。
【0230】
COS-7細胞に対して、ヒトDNase1の野生型(SEQ ID NO:118)または天然のDNase1突然変異アレル(G105Rおよび/またはA114F)(SEQ ID NO:115、116または117)を野生型ヒトIgG1 Fcドメインと融合させたものを含むプラスミドを一過性にトランスフェクトした。このヒンジ-CH2-CH3カセットは、このドメイン内の最初のシステインを消失させる単一のC→S突然変異をヒンジ領域に含むが、これは抗体の軽鎖中に存在するその対合パートナーが存在しないことが原因でそれが非対合性になるためである。加えて、より複雑な多ヌクレアーゼ融合タンパク質も、COS細胞の一過性トランスフェクション物によって発現された。一過性トランスフェクト体からの上清に対してウエスタンブロット分析を行った。図20に示されている分子は、ヒトDNase1がヒトIgG1野生型Fcドメイン(SEQ ID NO:154、155、156もしくは159)と融合したものを含むか、またはヒトRNase1(野生型)がヒトIgG1のSCCヒンジ-CH2-CH3 Fcドメインと融合し、その後にリンカードメインをプロテアーゼ切断から保護するN結合型グリコシル化部位を含む新規リンカーが続き、さらに野生型(SEQ ID NO:153)もしくは突然変異アレル(SEQ ID NO:151もしくは152)型のヒトDNase1を分子のカルボキシ末端に有するものを含む。COS上清を72時間後に採取し、0.5~1.0mlの試料(実験による)を、100ulのプロテインA-アガロースビーズにより、4℃で一晩かけて免疫沈降させた。プロテインAビーズを遠心し、PBS中で2回洗浄した後に、還元性または非還元性のLDS試料用緩衝液であるNuPAGEゲル用のSDS-PAGEローディング緩衝液中に再懸濁させた。試料を製造元の指示に従って加熱し、プロテインAビーズを遠心してペレット化させて、試料用緩衝液を5~12%のNuPAGE勾配ゲル上にローディングした。試料の電気泳動を150ボルトで1.5~2時間行い、ニトロセルロースメンブレンへのゲルのブロッティングを30mAmpで1時間行った。ウエスタンブロットをTBS/5%脱脂乳中に一晩おいてブロックした。ブロットを1:2500のHRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)結合ヤギ抗ヒトIgG(Fc特異的、Jackson Immunoresearch)またはヤギ抗マウスIgGとともに室温で1.5時間インキュベートし、PBS/0.5% Tween20中で5回またはそれ以上の回数洗浄した上で、ECL試薬を用いてブロットの現像を行った。
【0231】
実施例22.ヌクレアーゼ酵素活性に関するCOS上清のスクリーニング
図21は、hDNase1IgおよびhRNase1-Ig-hDNase1融合タンパク質を発現する採取したCOS上清に対する、SREDによるRNase活性アッセイ(SRED)分析の結果を示している。
【0232】
hDNaseIg単一または多重特異的ヌクレアーゼの一過性トランスフェクション物からのCOS上清を、以下の通りにヌクレアーゼ活性に関してアッセイした。2%アガロースゲルを、蒸留水を用いて調製した。ポリ-C(Sigma)を蒸留水中に3mg/mlで溶解させて、ゲルプレートを以下の通りに調製した:1.5mlの反応緩衝液(0.2M Tris-HCl pH 7.0、40mM EDTAおよび0.1mg/ml臭化エチジウム)、1mlのポリ-Cおよび0.5mlの水をチューブに入れ、50Cに5分間維持した。3mlのアガロース(50Cに保つ)をチューブに添加した。この混合物を直ちにガラスプレート上に注いだ。ゲルへの穿孔によってサンプリングウェルを作製した。およそ2μlの各試料をローディングし、湿潤チャンバー内でゲルを37℃で4時間インキュベートした。続いてゲルを、緩衝液(20mM酢酸ナトリウムpH5.2、20mg/ml臭化エチジウム)中にて氷上で30分間インキュベートした。UVトランスイルミネーター上でのゲルの写真を、臭化エチジウムフィルターを装着したKodak DC290デジタルカメラを用いて撮影し、Kodak Molecular Imagingソフトウエアを用いて解析した。
【0233】
図22は、トランスフェクトされた細胞からのCOS上清に対して行ったDNaseヌクレアーゼ活性アッセイの結果を表示している合成図を示している。DNase1野生型および突然変異型Ig融合タンパク質の以下のクローンをトランスフェクトしてから72時間後に培養上清を採取した:(1)090210-8=hDNase1-WT-hIgG1 WT(SEQ ID NO:154);(2)090210-9=hDNase1-G105R;A114F-hIgG1 WT(SEQ ID NO:159);(3)091210-8=hRNase1-WT-hIgG1-WT-DNase1-G105R;A114F(SEQ ID NO:151)、および(4)091210-14=hRNase-WT-hIgG1-WT-DNase1-A114F(SEQ ID NO:152)。
【0234】
発現された-Ig融合タンパク質のプロテインAアガロースビーズに対する結合を促進するために、上清のpHは炭酸水素緩衝液によって0.0に調整した。図23のパネルAは、プラスミドDNA消化のゲル電気泳動分析を示している:プロテインAアガロースのスラリー(試料当たり50ul)をPBS中で洗浄し、-Ig融合タンパク質を免疫沈降させるための100ulの培養上清とともに4℃で一晩インキュベートした。免疫沈降物を750ulのPBS中で4~5回洗浄し、およそ3500rpmで遠心した後に、PBSを吸引した。最終的なプロテインA沈降物を、1.5ugのプラスミドDNA(pDG発現ベクター)を含む、20mM Tris ph7.5、2mM CaCl2および2mM MgCl2を含む50ulの反応緩衝液中に再懸濁させた。反応物を37℃で30分間インキュベートし、65℃で5分間加熱して、反応物中に存在するDNAを、1.5% TBE-アガロースゲル上でのアガロースゲル電気泳動によって分析した。
【0235】
パネルBは、DNase Alert Kit(IDT/Ambion)を用いて同じ培養上清に対して行った、ヌクレアーゼ活性アッセイの結果を示している。凍結乾燥させたDNase Alert Substrate(50pmol)を含む反応チューブを、キットに付属して供給される5ulのヌクレアーゼ非含有ddH2O、5ulの10×DNase alert緩衝液によって再懸濁させて、40ulのプロテインAスラリーを以下の通りに免疫沈降させた:これらの免疫沈降のためには、50ulのプロテインAアガロースビーズを50ulの培養上清とともに一晩インキュベートした。続いて試料を0.75mlのPBSで5回洗浄した。最終的なプロテインA沈降物を80ulのヌクレアーゼ非含有ddH2O中に再懸濁させて、40ulのスラリー(沈降物の半分)を反応チューブに移した。モックトランスフェクションを行ったIPおよびddH2Oを用いる陰性対照も設定した。キットに備えられたDNase1(2単位)を含む陽性対照も設定した。反応物を37℃で1時間インキュベートして、蛍光を可視化するために短波長UV透過照明に曝露させた。DNA消化の相対量が蛍光の度合いによって指し示される。
【0236】
実施例22.DTgマウスにおけるmac-2陽性細胞の検討
早期ループスによる死亡は通常、腎炎、または腎炎を治療するための免疫抑制に起因する感染が原因である。このため、あらゆる新たな治療法にとって極めて重要なアウトカムは、腎炎の改善である。ヒトでの試験はタンパク尿およびクレアチニンの定量に限られるが、マウスでは組織学的検査および免疫細胞化学検査によって腎臓の炎症および損傷の正確な評価を得ることができる。本発明者らは、TLR7.1×RNase二重トランスジェニック(DTg)マウスで、抗RNA抗体がより少なく、B細胞活性化がより低下しており、免疫沈着物がより少なく、かつPASで陽性染色される糸球体がより少ないことを報告している。本発明者らはさらに、抗Mac-2(ガレクチン3)抗体を用いて腎臓のマクロファージ浸潤を比較した(Iyoda et al. Nephrol Dial Transplant 22: 3451, 2007)。単独Tgまたは二重Tgから入手した腎臓からの凍結切片を、記載の通りに(Iyoda et al)、Mac-2陽性マクロファージの数ならびに糸球体サイズに関して検討した。無作為に選択した20個の糸球体(腎臓の外側から内側に)を陽性細胞に関して算定した。DTgにおける糸球体内のmac-2陽性染色細胞は、単独Tgマウスと比較してはるかに少なかった(データ非提示)。各群でn=4~5であるパイロット試験においてマウス1匹当たり20個の糸球体を算定した結果により、平均+/-SEは単独TgおよびDTgに関してそれぞれ3.8+/-1.1および1.4+/-0.2であり、p=0.05であることが明らかになった。加えて、本発明者らは糸球体係蹄サイズも定量し、DTgマウスにおける糸球体係蹄サイズの有意な減少を観察した(単独TgおよびDTgにおいてそれぞれ179.4+/-41および128+/-16.8um2、p=0.037)。
【0237】
実施例23.精製マウスRNaseA-Ig融合タンパク質のKm
二価RNase-Ig融合タンパク質(SEQ ID NO:150)の機能的特徴をさらに明確にするために、本発明者らはミカエリス定数Kmの決定を行った。図23に示されているように、この酵素は高い親和性を有し、暫定的Kmは280nMである(これと比較して、ポリCを基質として用いた場合のRNaseAのKmは34nMである(delCardayre et al, Prot Eng 8:261, 1995))。図23は、RNase Alert Substrate(Ambion/IDT)を用いてアッセイし、Spectramax M2マイクロプレートリーダーによって定量した酵素反応速度を示している。データはSoftmax Proソフトウエア(Molecular Devices)を用いて解析した。種々の基質濃度での反応速度を測定し、そのデータをラインウィーバー・バークプロットとして示している。容量に関して補正した見かけのKmは280nMである。
【0238】
実施例24.抗RNA抗体に関する564Igi Tgマウスの分析
564 Igi Tgマウス:Dr. Imanishi-Karaは、H564ハイブリドーマ由来のVDJ遺伝子を内因性のIgh遺伝子座およびIgk遺伝子座の中で再編成させて、B6をバックグラウンドとする564Igiマウスを作製した。これらのマウス由来の血清は固定細胞の細胞質および核小体を染色し、このことは際立った抗RNA特異性を指し示している。この知見に一致し、かつ本特許出願に特に関連することとして、これらのマウスをTRL7欠損性にすると抗体産生は抑制され、このことは抗体産生を刺激するものがまさにRNAであることを指し示している。このマウス系統は遅発性糸球体腎炎を発症する。本発明者らは、H564に関してトランスジェニック性であるマウス、さらには564Ig導入遺伝子およびRNase導入遺伝子を共発現する二重トランスジェニックマウスにおける抗RNA抗体の発現を分析した。図24は、これらのトランスジェニックマウスの加齢に伴う継続的間隔でのマウス血清中の抗RNA抗体のレベルを比較している。
【0239】
Gavalchin, J., R.A. Seder, and S.K. Datta. 1987. The NZB X SWR model of lupus nephritis. I. Cross-reactive idiotypes of monoclonal anti-DNA antibodies in relation to antigenic specificity, charge, and allotype. Identification of interconnected idiotype families inherited from the normal SWR and the autoimmune NZB parents. J. Immunol. 138:128-137;およびBerland, R., L. Fernandez, E. Kari, J.H. Han, I. Lomakin, S. Akira, H.H. Wortis, J.F. Kearney, A.A. Ucci, and T. Imanishi-Kari. 2006. Toll-like receptor 7-dependent loss of B cell tolerance in pathogenic autoantibody knockin mice. Immunity 25:429-440を参照。
【0240】
実施例25.ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の生物活性のインビトロ評価
1つまたは複数のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を、例えば、上記の実施例に以前に記載したように、アフィニティークロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーによって精製する。ある場合には、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子はポリペプチドである。ある場合には、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、表2からの1つまたは複数の配列を含む。ある場合には、分子はSEQ ID NO:161、162または163である。ある場合には、分子はSEQ ID NO:145およびSEQ ID NO:149を含む。ある場合には、分子はSEQ ID NO:151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、166、167、169、170、171、173、175、177、179、181、187、189、191、193、195、197、199、201、203、205または207である。ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、本明細書に開示されたもののいずれか、および、例えば、ヌクレアーゼドメインを選び、それをFcドメインと連結すること;または例えば、ヌクレアーゼドメインを選び、それをリンカードメインとともにFcドメインと連結することによって、本明細書に開示された配列(表2参照)から構築することができる任意のものでありうる。さまざまなリンカードメイン(例えば、本明細書に記載されたもの)を、Fcドメインおよび/またはヌクレアーゼドメインを連結するために用いることができる。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40またはそれ以上のアミノ酸の長さであるリンカードメインを用いることができる。分子を、それらが所望のヌクレアーゼ機能を有することを確かめるための定性的アッセイを用いて、インビトロでのヌクレアーゼ比活性に関してアッセイする。続いて一般には、RNaseまたはDNase Alert Kit試薬などの基質、および時間の関数として読み取りを行うように設定された蛍光プレートリーダーを利用する蛍光に基づく速度論的アッセイによって、比活性が決定される。加えて、一般には、タンパク質溶液を、検出限界が0.06EU/mlである、Cape Cod,Inc.(E. Palmouth, MA)のPyrotellカブトガニアメーバ様細胞溶解物(Limulus Amebocyte Lysate)(LAL)キットなどの市販のキットを用いて、溶液をエンドトキシン混入に関して検査する。続いて分子を、生物活性に関する種々のインビトロアッセイを用いてアッセイする。
【0241】
一連のインビトロアッセイにより、培養物中の分子の存在下または非存在下における、さまざまな刺激に応答したヒトPBMCによるサイトカイン産生に対する分子の効果が測定されるであろう。正常ヒトPBMCまたは患者ヒトPBMC(およそ1×10e6個の細胞)を、アッセイに応じて24、48または96時間培養する。PBMCを、TLRリガンド、共刺激(costimulatory)抗体、免疫複合体、および正常血清または自己免疫性血清などの刺激の存在下で培養する。サイトカイン産生に対する分子の効果を、IL-6、IL-8、IL-10、IL-4、IFN-γ、TNF-αに対するBiolegend(San Diego, CA)による抗体ペアキットなどの市販の試薬を用いて測定する。サイトカイン産生に対する分子の効果を判定するために、インビトロ培養物からの培養上清を、24、48時間の時点またはより以後の時点で採取する。IFN-α産生は、例えば、PBLインターフェロンの供給元(Piscataway, NJ)などから入手しうる抗ヒトIFN-α抗体および標準曲線試薬を用いて測定される。類似した一群のアッセイを、ヒトリンパ球の部分集団(単離された単球、B細胞、pDC、T細胞など)を用いて行い;例えば、Miltenyi Biotech(Auburn, CA)から入手しうる市販の磁性ビーズを利用した単離用キットなどを用いて精製する。
【0242】
加えて、CD5、CD23、CD69、CD80、CD86およびCD25などのリンパ球活性化受容体の発現に対する分子の効果を、刺激後のさまざまな時点で評価する。これらの分子が免疫細胞活性化と関連のある種々の受容体の発現にどのようにして影響するかを明らかにするために、PBMCまたは単離された細胞部分集団を多色フローサイトメトリーに供する。
【0243】
別の一群のアッセイは、インビトロでの種々のリンパ球部分集団の増殖に対するこれらの分子の効果を測定するものと考えられる。これらのアッセイは、例えば、刺激の前にヒトPBMCのCFDA-SE染色(Invitrogen, Carlsbad, CA)を利用する。5mMのCFSEを、10e7~10e8個のPBMCまたは精製された細胞サブセットとともにPBS/0.5% BSA中に1:3000に希釈し、標識反応物を37Cで3~4分間インキュベートした後に、残りのCFSEを除去するためにRPMI/10% PBS中で数回洗浄する。続いて、CFSE標識細胞をさまざまな刺激(TLRリガンド、共刺激抗体など)および分子とともに共培養反応物中で4日間インキュベートし、その後に、色素と結合させた、細胞部分集団に特異的な抗体を用いるフローサイトメトリーによって細胞増殖について分析する。
【0244】
DCおよびマクロファージへの単球のインビトロ成熟に対するこれらの分子の効果も、正常PBMC試料および患者PBMC試料の両方を用いて評価する。
【0245】
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の有効性は、本明細書に開示されたハイブリッド型ヌクレアーゼ分子で処理した細胞によるアッセイの結果を、対照製剤で処理した細胞によるアッセイの結果と比較することによって実証される。処理の後に、上記のさまざまなマーカー(例えば、サイトカイン、細胞表面受容体、増殖)のレベルは一般に、有効な分子で処理した群において、処理の前に存在したマーカーレベルに比して、または対照群において測定されたレベルに比して改善する。
【0246】
実施例26:ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の、それを必要とする哺乳動物に対する投与
哺乳動物(例えば、マウス、ラット、齧歯動物、ヒト、モルモット)を試験に用いる。哺乳動物に対して、表2からの1つもしくは複数の配列を含む1つもしくは複数のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子、または対照を、(例えば、静脈内に)投与する。ある場合には、分子は SEQ ID NO:161、162または163である。ある場合には、分子はSEQ ID NO:145およびSEQ ID NO:149を含む。ある場合には、分子はSEQ ID NO:151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、166、167、169、170、171、173、175、177、179、181、187、189、191、193、195、197、199、201、203、205または207である。ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、本明細書に開示されたもののいずれか、および、例えば、ヌクレアーゼドメインを選び、それをFcドメインと連結すること;または例えば、ヌクレアーゼドメインを選び、それをリンカードメインとともにFcドメインと連結することによって、本明細書に開示された配列(表2参照)から構築することができる任意のものでありうる。さまざまなリンカードメイン(例えば、本明細書に記載されたもの)を、Fcドメインおよび/またはヌクレアーゼドメインを連結するために用いることができる。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40またはそれ以上のアミノ酸の長さであるリンカードメインを用いることができる。ある場合には、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を薬学的に許容される担体と製剤化する。ある場合には、分子を、上記の薬学的組成物の項に記載したように、薬学的組成物として製剤化する。ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、RNaseおよび/またはDNaseを標的とする。
【0247】
有用と考えられる場合には、多回投与を用いる。IFN-αレベル、IFN-α応答性遺伝子レベル、自己抗体の力価、腎臓の機能および病態、ならびに/または循環血中の免疫複合体レベルに対する効果を、哺乳動物においてモニターする。同様の試験を、異なる治療プロトコールおよび投与経路(例えば、筋肉内投与など)を用いて行う。ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の有効性は、本明細書に開示されたハイブリッド型ヌクレアーゼ分子によって治療された哺乳動物におけるIFN-αレベル、IFN-α応答性遺伝子レベル、自己抗体の力価、腎臓の機能および病態、ならびに/または循環血中の免疫複合体レベルを、対照製剤によって治療された哺乳動物と比較することによって実証される。
【0248】
一例においては、治療を必要とするヒト対象を選択するかまたは同定する。対象は、例えば、SLEの原因または症状を減少させることを必要としてもよい。対象の同定は、臨床の場において行われてもよく、または他の場所、例えば、対象の家庭で、対象自らが自己検査キットを用いることによって行われてもよい。
【0249】
ゼロ時間の時点で、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の適した初回用量を対象に投与する。ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、本明細書に記載の通りに製剤化する。初回投与からある期間、例えば、7日間、14日間および21日間の後に、例えばIFN-αレベル、IFN-α応答性遺伝子レベル、自己抗体の力価、腎臓の機能および病態、ならびに/または循環血中の免疫複合体レベルなどを測定することによって、対象の状態を評価する。他の関連した基準を測定することもできる。投薬の回数および強度を、患者の必要性に応じて調整する。
【0250】
治療の後に、対象のIFN-αレベル、IFN-α応答性遺伝子レベル、自己抗体の力価、腎臓の機能および病態、ならびに/または循環血中の免疫複合体レベルは、治療の前に存在したレベルに比して、または同程度に罹患しているが治療されていない/対照対象におけるレベルに比して低下する、ならびに/または改善する。
【0251】
別の例においては、治療を必要とする齧歯動物対象を選択するかまたは同定する。対象の同定は研究室の場であってもよく、または他の場所であってもよい。
【0252】
ゼロ時間の時点で、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の適した初回用量を対象に投与する。ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、本明細書に記載の通りに製剤化する。初回投与からある期間、例えば、7日間、14日間および21日間の後に、例えばIFN-αレベル、IFN-α応答性遺伝子レベル、自己抗体の力価、腎臓の機能および病態、ならびに/または循環血中の免疫複合体レベルなどを測定することによって、対象の状態を評価する。他の関連した基準を測定することもできる。投薬の回数および強度を、対象の必要性に応じて調整する。
【0253】
治療の後に、対象のIFN-αレベル、IFN-α応答性遺伝子レベル、自己抗体の力価、腎臓の機能および病態、ならびに/または循環血中の免疫複合体レベルは、治療の前に存在したレベルに比して、または同程度に罹患しているが治療されていない/対照対象におけるレベルに比して低下する、ならびに/または改善する。
【0254】
本発明を、好ましい態様およびさまざまな代替的態様を参照しながら、詳細に示し、説明してきたが、関連した技術分野の当業者には、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、形態および詳細のさまざまな変更を行いうることが理解されるであろう。
【0255】
本明細書の本文中に引用された参考文献、交付済み特許および特許出願はすべて、目的を問わず、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0256】
【表1】
【0257】
【表2】
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2
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【配列表】
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