(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】織物および衣料
(51)【国際特許分類】
D03D 15/41 20210101AFI20220531BHJP
D03D 15/283 20210101ALI20220531BHJP
D03D 15/47 20210101ALI20220531BHJP
D02G 3/26 20060101ALI20220531BHJP
D02J 1/00 20060101ALI20220531BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20220531BHJP
【FI】
D03D15/41
D03D15/283
D03D15/47
D02G3/26
D02J1/00 K
A41D31/00 502B
A41D31/00 503F
(21)【出願番号】P 2018072384
(22)【出願日】2018-04-04
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】501270287
【氏名又は名称】帝人フロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】永江 卓也
(72)【発明者】
【氏名】宇熊 昭雄
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-204202(JP,A)
【文献】特開2009-138287(JP,A)
【文献】特開2002-067205(JP,A)
【文献】特開2017-082361(JP,A)
【文献】特開2000-110072(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038239(WO,A1)
【文献】特開2019-127672(JP,A)
【文献】国際公開第2018/198846(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D1/00-27/18
A41D13/00-31/32
D02G1/00-3/48
D02J1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
S方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸AとZ方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸Bとを含む複合糸を含む織物であり、前記仮撚捲縮加工糸Aと仮撚捲縮加工糸Bがともに
、ナイロン6またはナイロン66またはナイロン46からなるポリアミド繊維からなり、
前記複合糸においてフィラメント数が20~300本の範囲内であることを特徴とする織物。
【請求項2】
前記複合糸が、30T/m以下のトルクを有する、請求項1に記載の織物。
【請求項3】
前記複合糸において、交絡が交絡の個数30~90個/mの範囲内で付与されてなる、請求項1または請求項2に記載の織物。
【請求項4】
前記複合糸において、捲縮率が5%以上である、請求項1~3のいずれかに記載の織物。
【請求項5】
前記複合糸において、単繊維繊度が4dtex以下である、請求項1~4のいずれかに記載の織物。
【請求項6】
織物の構成糸条が前記複合糸のみである、請求項1~5のいずれかに記載の織物。
【請求項7】
織物のカバーファクターCFが1400~4200の範囲内である、請求項1~6のいずれかに記載の織物。
ただし、カバーファクターCFは下記式により定義される。
CF=(DWp/1.1)
1/2×MWp+(DWf/1.1)
1/2×MWf
[DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWf
は緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]
【請求項8】
織物の組織が、平織組織、綾織組織、サテン織組織、2重織組織、およびこれらの変化組織からなる群より選択されるいずれかである、請求項1~7のいずれかに記載の織物。
【請求項9】
織物に樹脂コーティングが施されているか、またはフィルムがラミネートされている、請求項1~8のいずれかに記載の織物。
【請求項10】
コーティングされた樹脂またはフィルムへの染料の移行昇華がない、請求項9に記載の織物。
【請求項11】
織物の緯方向のストレッチ性が5%以上である、請求項1~10のいずれかに記載の織物。
ただし、ストレッチ性はJIS L 1096 B法により測定するものとする。
【請求項12】
織物の緯方向のストレッチ性回復率が75%以上である、請求項1~11のいずれかに記載の織物。
ただし、ストレッチ性回復率はJIS L 1096 B-1法により測定するものとする。
【請求項13】
耐摩耗性が3級以上である、請求項1~12のいずれかに記載の織物。
ただし、耐摩耗性はJIS L 1058 D-4法により測定するものとする。
【請求項14】
引裂強度が7N以上である、請求項1~13のいずれかに記載の表面がフラットなストレッチ性織物。
ただし、引裂き強度はJIS L 1096 D法により測定するものとする。
【請求項15】
撥水度が3級以上である、請求項1~14のいずれかに記載の表面がフラットなストレッチ性織物。
ただし、撥水度はJIS L 1092 スプレー法により測定するものとする。
【請求項16】
請求項1~15のいずれかに記載の織物を用いてなる衣料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織物表面がフラットであり、ストレッチ性に優れ、染料の移行昇華がない織物および衣料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、織物はスポーツ衣料やファッション衣料に代表されるように、各種衣料用途に用いられてきた。織物はその構造的に生地自体に伸縮性が少ないため、生地にストレッチ性を付与することが難しく、捲縮を有する加工糸やポリウレタン弾性繊維などを用いることによりストレッチ性が付与されてきた(例えば、特許文献1参照)。そして、かかるストレッチ性織物を用いてなる衣服は、その快適性のために近年広く使用されるようになっている。
【0003】
これらストレッチ性のある織物は、捲縮を有する加工糸やポリウレタン弾性繊維などを用いて得られたものがほとんどである。しかしながら、これら捲縮を有する加工糸やポリウレタン弾性繊維などを用いて得られた織物では、ストレッチ性は呈するものの、織物表面に凹凸状のシボが発生し外観のよくないものであった。
【0004】
また、ポリエチレンテレフタレート繊維からなる織物が特許文献2などにより提案されている。しかしながら、コーティング樹脂・フィルム樹脂への染料の移行昇華があり、透湿防水用途への展開が制限されていた。さらに、耐摩耗性、引裂き強度が十分でなく、用途が限定されるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平4-194050号公報
【文献】特開2009-138287号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、織物表面がフラットであり、ストレッチ性に優れ、染料の移行昇華がない織物および衣料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、織物を構成する糸条を巧みに工夫することによって織物表面がフラットであり、ストレッチ性に優れ、染料の移行昇華がない織物が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして、本発明によれば「S方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸AとZ方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸Bとを含む複合糸を含む織物であり、前記仮撚捲縮加工糸Aと仮撚捲縮加工糸Bがともに、ナイロン6またはナイロン66またはナイロン46からなるポリアミド繊維からなり、前記複合糸においてフィラメント数が20~300本の範囲内であることを特徴とする織物。」が提供される。
【0009】
その際、前記複合糸が、30T/m以下のトルクを有することが好ましい。また、前記複合糸において、交絡が交絡の個数30~90個/mの範囲内で付与されていることが好ましい。また、前記複合糸において、捲縮率が5%以上であることが好ましい。また、前記複合糸において、単繊維繊度が4dtex以下であることが好ましい。また、織物の構成糸条が前記複合糸のみであることが好ましい。また、織物のカバーファクターCFが1400~4200の範囲内であることが好ましい。ただし、カバーファクターCFは下記式により定義される。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
[DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]
また、織物の組織が、平織組織、綾織組織、サテン織組織、2重織組織、およびこれらの変化組織からなる群より選択されるいずれかであることが好ましい。また、織物に樹脂コーティングが施されているか、またはフィルムがラミネートされていることが好ましい。その際、コーティングされた樹脂またはフィルムへの染料の移行昇華がないことが好ましい。また、織物の緯方向のストレッチ性が5%以上であることが好ましい。ただし、ストレッチ性はJIS L 1096 B法により測定するものとする。また、織物の緯方向のストレッチ性回復率が75%以上であることが好ましい。ただし、ストレッチ性の回復率はJIS L 1096 B-1法により測定するものとする。また、耐摩耗性が3級以上であることが好ましい。
ただし、耐摩耗性はJIS L 1058 D-4法により測定するものとする。また、引裂強度が7N以上であることが好ましい。ただし、引裂き強度はJIS L 1096 D法により測定するものとする。また、撥水度が3級以上であることが好ましい。ただし、撥水度はJIS L 1092 スプレー法により測定するものとする。
また、本発明によれば、前記の織物を用いてなる衣料が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、織物表面がフラットであり、ストレッチ性に優れ、染料の移行昇華がない織物および衣料が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。仮撚捲縮加工糸には第1ヒーター域で仮撚をセットした、いわゆるone heater仮撚捲縮加工糸と、該糸をさらに第2ヒーター域に導入して弛緩熱処理することによりトルクを減らした、いわゆるsecond heater仮撚捲縮加工糸とがある。
【0012】
本発明の織物は、S方向のトルクを有するポリアミド繊維からなる仮撚捲縮加工糸AとZ方向のトルクを有するポリアミド繊維からなる仮撚捲縮加工糸Bとを含む。
【0013】
ここで、仮撚捲縮加工の条件としては、糸条を第1ローラ、セット温度が90~220℃(より好ましくは100~190℃)の熱処理ヒータを経由して撚り掛け装置によって施撚し、必要に応じてさらに第2ヒーター域に導入して弛緩熱処理する方法が例示される。仮撚加工時の延伸倍率は、0.8~1.6の範囲が好ましく、仮撚数は、仮撚数(T/m)=(32500/√Dtex)×αの式においてα=0.5~1.5が好ましく、通常は0.8~1.2位とするのがよい。用いる撚り掛け装置としては、デイスク式あるいはベルト式の摩擦式撚り掛け装置が糸掛けしやすく、糸切れも少なくて適当であるが、ピン方式の撚り掛け装置であってもよい。
【0014】
ポリアミド繊維としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46いずれでもよく、第3成分を共重合または添加していてもよい。また、ポリアミド成分を1成分とする複合繊維(コンジュゲート繊維)でもよい。さらには、艶消し剤、難燃剤、耐光剤などの添加物を添加していてもよい。
【0015】
また、複合糸に交絡が付与されていることが好ましい。その際、交絡(インターレース)の個数は特に制限はないが、ストレッチ性を損なわないために30~90個/mの範囲内であることが好ましい。該個数が90個/mよりも大きいとストレッチ性が損なわれるおそれがある。逆に、該個数が30個/mよりも小さいと複合糸の集束性が不十分となり、製織性が損なわれるおそれがある。なお、交絡処理(インターレース加工)は通常のインターレースノズルを用いて処理したものでよい。
【0016】
前記複合糸において、トルクは小さいほど好ましくノントルク(0T/m)が最も好ましい。このようにノントルクとするには、S方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸とZ方向の仮撚捲縮加工糸とを合糸する際、トルクの方向が異なること以外は同じトルクを有する2種の仮撚捲縮加工糸を使用するとよい。
【0017】
また、前記仮撚捲縮加工糸Aと仮撚捲縮加工糸Bとにおいて、単繊維繊度や単繊維断面形状などを互いに異ならせてもよい。
【0018】
また、前記複合糸において、捲縮率が5%以上(より好ましくは30%以上、特に好ましくは35~60%)であることが好ましい。該捲縮率が5%未満では十分なストレッチ性が得られないおそれがある。
【0019】
前記複合糸において、単繊維繊度が4dtex以下(好ましくは0.1~1.0dtex)であるが好ましい。該単繊維繊度が4dtexよりも大きいとソフトな風合いが得られないおそれがある。また、複合糸の総繊度としては33~220dtexの範囲内であることが好ましい。さらに、複合糸のフィラメント数としては10~300本(より好ましくは20~300本)の範囲内であることが好ましい。
【0020】
本発明の前記複合糸を含む。織物の経糸または緯糸どちらかに含まれていればよいが、織物の構成糸条が前記複合糸のみであることが好ましい。
【0021】
織物のカバーファクターCFしては、1200~4500の範囲であるであることが好ましい(より好ましくは1400~4200)。織物のカバーファクターがかかる範囲よりも小さいと、糸ズレがおきるおそれがあり、かかる範囲より大きいと十分なストレッチ性が得られないおそれがある。
ただし、カバーファクターCFは下記式により定義される。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
[DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]
本発明の織物は、前記の複合糸を用いて通常の織機を使用して容易に製織することができる。その際、織物の組織は限定されず、平織、綾織、サテン織等が好ましく例示される。また、2重織でもよい。パイル部を有さない織物が好ましい。地組織部の片面または両面にパイル部を有する織物では、使用の際に地組織部表面が外気側に現れないおそれがある。
【0022】
また、前記の複合糸に下記式で表される撚係数3000以下程度の撚糸をしてもよい。
(撚係数)=撚数[T/M]×√(繊度[De])
ただし、繊度[De]は繊度[Dtex]に0.9をかけた値である。
【0023】
また、常法の染色仕上げ加工、吸水加工、撥水加工、樹脂加工、フィルムラミネート、起毛加工、紫外線遮蔽あるいは抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。
なかでも、織物に樹脂コーティングが施されているか、またはフィルムがラミネートされていることが好ましい。
【0024】
織物がフラットであることからコーティングやフィルムラミネート加工が施しやすい。また、ポリアミド繊維と染料が化学的に結合しているため、コーティング樹脂やフィルム樹脂への移行昇華が見られないため、優れたコーティングやフィルムラミ適性が得られる。加工法については、スプレー法、コーティング法(湿式・乾式)、ラミネート法などいずれの方法によっても行うことができ、繊維構造物の形態、コーティング樹脂・フィルム樹脂の種類によって、適宜選択することができる。コーティング樹脂・フィルム樹脂の種類としては、例えば、透湿性を有するウレタン樹脂からなるフィルム、ウレタン樹脂コーティング、アクリル樹脂コーティング、ポリテトラフロロエチレン樹脂フィルム、ポリエステルフィルムなどがあげられるが、限定されるものではない。
【0025】
かくして得られた織物において、厚さは特に限定されないが、1mm以下(より好ましくは0.1~0.5mm)であることが好ましい。目付けも特に限定されないが、200g/m2以下(より好ましくは40~150g/m2)であることが好ましい。
【0026】
本発明の織物において、前記の複合糸が配されているので、ストレッチ性を発現させるために、染色加工工程において十分に糸の捲縮を発現させても、織物表面に凹凸状のシボが発生することなく織物がフラットとなり、また優れた耐摩耗性、引裂き強度、コーティング・フィルムラミ適性、ストレッチ性が得られる。
【0027】
かかるストレッチ性としては、織物の緯方向のストレッチ性が5%以上(好ましくは15~60%以上)であることが好ましい。ただし、ストレッチ性はJIS L 1096 B法により測定するものとする。
【0028】
また、織物の緯方向のストレッチ性回復率が75%以上であることが好ましい。ただし、ストレッチ性回復率はJIS L 1096 B-1法により測定するものとする。
【0029】
また、耐摩耗性が3級以上であることが好ましい。ただし、耐摩耗性はJIS L 1058 D-4法により測定するものとする。
【0030】
また、引裂強度が7N以上(より好ましくは7~20N)であることが好ましい。ただし、引裂き強度はJIS L 1096 D法により測定するものとする。
【0031】
また、撥水度が3級以上であることが好ましい。ただし、撥水度はJIS L 1092 スプレー法により測定するものとする。
【0032】
次に、本発明の衣料は、前記の織物を用いてなるものである。かかる衣料には、各種スポーツ用の上着または下着として着用されるシャツ類、パンツ、ショーツ類が含まれる。競技用、トレーニング用を問わない。例としては、サッカーシャツ、ゴルフシャツ、テニスシャツ、バスケットシャツ、卓球シャツ、バドミントンシャツ、ランニングシャツ、サッカーパンツ、テニスパンツ、バスケットパンツ、卓球パンツ、バドミントンパンツ、ランニングパンツ、ゴルフパンツ、各種スポーツ用アンダーシャツ、各種スポーツ用インナーウエア等、セーター、Tシャツ、ジャージ、トレーナー、ウインドブレーカーなどが含まれる。
【0033】
かかる衣料は前記の織物を用いているので、シボが立たず織物表面がフラットであり、かつ耐摩耗性、引裂き強度、コーティング・フィルムラミ適性、ストレッチ性に優れる。
【実施例】
【0034】
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
(1)トルク
試料(捲縮糸)約70cmを横に張り、中央部に0.18mN×表示テックス(2mg/de)の初荷重を吊るした後、両端を引揃える。糸は残留トルクにより回転しはじめるが初荷重が静止するまでそのままの状態で持ち、撚糸を得る。こうして得た撚糸を17.64mN×表示テックス(0.2g/de)の荷重下で25cm長の撚数を検撚器で測定する。得られた撚数(T/25cm)を4倍にトルク(T/m)を算出する。
(2)インターレース度
交絡糸を8.82mN×表示テックス(0.1g/de)の荷重下で1mの長さをとり、除重後、室温で24時放縮後の結節点の数を読み取り、ケ/mで表示する。
(3)捲縮率
供試糸条を、周長が1.125mの検尺機のまわりに巻きつけて、乾繊度が3333dtexのかせを調製した。前記かせを、スケール板の吊り釘に懸垂して、その下部分に6gの初荷重を付加し、さらに600gの荷重を付加したときのかせの長さL0を測定する。その後、直ちに、前記かせから荷重を除き、スケール板の吊り釘から外し、このかせを沸騰水中に30分間浸漬して、捲縮を発現させる。沸騰水処理後のかせを沸騰水から取り出し、かせに含まれる水分をろ紙により吸収除去し、室温において24時間風乾する。この風乾されたかせを、スケール板の吊り釘に懸垂し、その下部分に、600gの荷重をかけ、1分後にかせの長さL1aを測定し、その後かせから荷重を外し、1分後にかせの長さL2aを測定する。供試フィラメント糸条の捲縮率(CP)を、下記式により算出する。CP(%)=((L1a-L2a)/L0)×100
(4)ストレッチ性
JIS L 1096 B法によりストレッチ性(%)を測定した。
(5)ストレッチ性回復率
JIS L 1096 B-1法によりストレッチ性回復率(%)を測定した。
(6)織物表面の外観
試験者3人の官能評価により、織物表面を、3級:織物表面にシボによる凹凸がなくフラットであり良好、2級:普通、1級:織物表面にシボによる凹凸があり不良、の3段階に評価した。
(7)織物の耐摩耗性
J IS L 1058 D-4法により耐摩耗性(級)を測定した。
(8)織物の引裂き強度
JIS L 1096 D法により引裂き強度(N)を測定した。
(9)移行昇華
生地にウレタン湿式コーティングを行い、目視にて移行昇華の有無を評価した。
(10)撥水度
JIS L 1092 スプレー法により撥水度(級)を測定した。
(11)織物の目付け
JIS L1096により織物の目付け(g/m2)を測定した。
【0035】
[実施例1]
通常のポリアミドを用いて通常の紡糸装置から溶融紡糸し、延伸することなく巻取り、半延伸されたポリアミド糸条28dtex/17filを得た。次いで、該ポリアミド糸条を用いて、延伸倍率1.3倍、仮撚数6000T/m(S方向)、ヒーター温度180℃、糸速350m/分の条件で同時延伸仮撚捲縮加工を行った。また、前記ポリアミド糸条を用いて延伸倍率1.3倍、仮撚数6000T/m(Z方向)、ヒーター温度180℃、糸速350m/分の条件で同時延伸仮撚捲縮加工を行った。次いで、これらS方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸とZ方向の仮撚捲縮加工糸とを合糸して空気交絡処理を行い、複合仮撚捲縮加工糸(44dtex/34fil、捲縮率46%、トルク0T/m)を得た。空気交絡処理は、インターレースノズルを用い、オーバーフィード率1.0%、圧空圧0.07MPa(0.7kgf/cm2)で50個/mの交絡を付与した。次いで、該複合仮撚捲縮加工糸を経糸および緯糸に配して、通常のウォータージェットルーム織機を使用して平組織の織物を織成した。そして、該織物に酸性染料で100℃×45分で黒色に染色加工を行い、通常の撥水加工、コーティング加工したあとでファイナルセットを施した。
【0036】
かくして得られた織物において、目付け63g/m2、経密度160本/2.54cm、緯密度110/2.54cm、カバーファクターは1707、緯ストレッチ性15%、緯方向のストレッチ性回復率90%、表面は3級:織物表面がフラットであり良好と、シボが立たずフラットな目面であり、耐摩耗性、引裂強度、撥水性に優れていた。また、コーティング樹脂への移行昇華もなく、良好な品位であった。
【0037】
[比較例1]
ポリアミドからなる仮撚捲縮加工糸(44dtex/34fil、捲縮率46%、トルク60T/m)を糸条として用いた以外は、実施例1と同様に行った。
かくして得られた織物において、目付け65g/m2、経密度163本/2.54cm、緯密度112/2.54cm、カバーファクターは1739、緯ストレッチ性14%、緯方向のストレッチ性回復率88%、耐摩耗性、引裂強度、撥水性に優れ、移行昇華もなかったものの、表面は1級:織物表面がフラットでなく凹凸状のシボが発生していた。
【0038】
[比較例2]
ポリエステルからなる仮撚捲縮加工糸(44dtex/48fil、捲縮率14%、トルク0T/m)を用い、通常のウォータージェットルーム織機を使用して平組織の織物を織成した。そして、該織物に分散染料で135℃×45分で黒色に染色加工を行い、通常の撥水加工、コーティング加工したあとでファイナルセットを施した。かくして得られた織物において、目付け75g/m2、経密度162本/2.54cm、緯密度112/2.54cm、カバーファクター1733は、緯ストレッチ性19%、緯方向のストレッチ性回復率89%、表面は3級:織物表面がフラットであり良好と、シボが立たずフラットな目面であり、耐摩耗性、引裂強度、撥水性に優れていた。ただし、コーティング樹脂への移行昇華が見られ、品位は良くないものであった。
【0039】
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、織物表面がフラットであり、ストレッチ性に優れ、染料の移行昇華がない織物および衣料が提供され、その工業的価値は極めて大である。