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特許7081968基地局、無線端末局および無線通信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】基地局、無線端末局および無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/04 20090101AFI20220531BHJP
   H04W 28/06 20090101ALI20220531BHJP
   H04W 72/04 20090101ALI20220531BHJP
   H04W 92/18 20090101ALI20220531BHJP
【FI】
H04W28/04 110
H04W28/06 110
H04W72/04 131
H04W92/18
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018077613
(22)【出願日】2018-04-13
(65)【公開番号】P2019186820
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】金森 勝美
(72)【発明者】
【氏名】イット ワンシット
【審査官】伊東 和重
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-212865(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02844000(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TDMA(Time Division Multiple Access)方式の無線通信によってデータ情報を中継して伝送する基地局において、
1つのフレームに、前記データ情報および前記データ情報の応答情報の通信に用いられるデータ情報タイムスロットMDTSと、前記データ情報タイムスロットMDTSの後に前記データ情報を中継する少なくとも1つのデータ情報中継タイムスロットRDTSとを配置させる配置情報、および、前記データ情報タイムスロットMDTSに無線端末局を割り当て、前記データ情報タイムスロットMDTSの後の最初のデータ情報中継タイムスロットに前記基地局を割り当てる割り当て情報を含むフレーム構成情報を生成する制御部と、
前記データ情報タイムスロットMDTSにおいて、前記無線端末局と前記データ情報の宛先の無線端末局との間で送受信される前記データ情報および前記応答情報を受信する受信部と、
前記配置情報および前記割り当て情報を含む前記フレーム構成情報をブロードキャストし、前記応答情報が前記宛先の無線端末局で前記データ情報の受信が成功しなかったことを示す場合、または、前記応答情報が受信されない場合に、前記基地局に割り当てられた前記データ情報中継タイムスロットRDTSを使用して、前記基地局から前記宛先の無線端末局に前記データ情報を送信する送信部と、
を含むことを特徴とする基地局。
【請求項2】
前記制御部は、
前記データ情報中継タイムスロットRDTSにおいて、前記データ情報の受信が成功したことを示す情報を前記宛先の無線端末局から前記受信部で受信する場合には、前記データ情報中継タイムスロットRDTSにおいて、前記基地局から前記無線端末局に、前記宛先の無線端末局で前記データ情報の受信が成功したことを示す情報を前記送信部に送信させることを特徴とする請求項1に記載の基地局。
【請求項3】
前記制御部は、
前記基地局に割り当てた前記データ情報中継タイムスロットRDTSの後に、前記無線端末局および前記宛先の無線端末局とは異なる他の無線端末局を割り当てたデータ情報中継タイムスロットRDTSを少なくとも1つ配置させることを特徴とする請求項1または2に記載の基地局。
【請求項4】
前記制御部は、
前記他の無線端末局が割り当てられた前記データ情報中継タイムスロットRDTSにおいて、前記他の無線端末局と前記宛先の無線端末局との間で送受信されるデータ情報および応答情報を前記受信部に受信させ、当該データ情報の受信が成功したことを示す情報を前記宛先の無線端末局から前記受信部が受信しない場合には、前記他の無線端末局が割り当てられた前記データ情報中継タイムスロットRDTSの後に配置されたデータ情報中継タイムスロットRDTSにおいて、前記データ情報を前記宛先の無線端末局に前記送信部から送信させることを特徴とする請求項3に記載の基地局。
【請求項5】
前記制御部は、
前記データ情報タイムスロットMDTSの次のタイムスロットに前記データ情報中継タイムスロットRDTSを配置し、同一のデータ情報を中継する前記データ情報中継タイムスロットRDTSが複数ある場合には、前記データ情報中継タイムスロットを隣接させて配置させることを特徴とする請求項1に記載の基地局。
【請求項6】
TDMA(Time Division Multiple Access)方式の無線通信によってデータ情報を伝送する無線端末局において、
1つのフレームに含まれる、前記データ情報および前記データ情報の応答情報の通信に用いられるデータ情報タイムスロットMDTSと、前記データ情報タイムスロットMDTSの後に配置される前記データ情報を中継する少なくとも1つのデータ情報中継タイムスロットRDTSとの配置情報と割り当て情報を基地局から受信する受信部と、
前記無線端末局に割り当てられたデータ情報タイムスロットMDTSにおいて、前記データ情報を送信した後に、前記データ情報の宛先の無線端末局から前記データ情報の受信が成功したことを示す情報が前記無線端末局で受信されない場合に、前記データ情報中継タイムスロットRDTSにおいても、前記データ情報の宛先の無線端末局から前記データ情報の受信が成功したことを示す情報が中継受信されない場合には、前記1つのフレーム以降のフレームのデータ情報タイムスロットMDTSで前記データ情報を前記宛先の無線端末局に再送信する送信部、を備えることを特徴とする無線端末局。
【請求項7】
TDMA(Time Division Multiple Access)方式の無線通信によってデータ情報を中継して伝送する無線端末局において、
1つのフレームに含まれる、前記データ情報および前記データ情報の応答情報の通信に用いられるデータ情報タイムスロットMDTSと、前記データ情報タイムスロットMDTSの後に配置される前記データ情報を中継する少なくとも2つのデータ情報中継タイムスロットRDTSとの配置情報と割り当て情報を基地局から受信し、
他の無線端末局に割り当てられたデータ情報タイムスロットMDTSにおいて、前記データ情報の宛先の無線端末局から前記データ情報の受信が成功したことを示す情報が前記他の無線端末局で受信されない場合に、前記データ情報タイムスロットMDTSの次のタイムスロットに配置された、前記基地局に割り当てられた前記データ情報中継タイムスロットRDTSにおいて、前記基地局と前記宛先の無線端末局との間で送受信される前記データ情報および前記応答情報を受信する受信部と、
前記応答情報が前記宛先の無線端末局で前記データ情報の受信が成功しなかったことを示す場合、または、前記応答情報が受信されない場合には、前記基地局に割り当てられた前記データ情報中継タイムスロットRDTSに後続する、前記無線端末局に割り当てられているデータ情報中継タイムスロットRDTSで、前記無線端末局から前記宛先の無線端末局に前記データ情報を中継して送信する送信部と、
を含むことを特徴とする無線端末局。
【請求項8】
前記無線端末局に割り当てられている前記データ情報中継タイムスロットにおいて受信した前記応答情報が、前記宛先の無線端末局で前記データ情報の受信が成功したことを示す場合には、前記無線端末局に割り当てられている前記データ情報中継タイムスロットRDTSにおいて、前記送信部が前記応答情報を前記他の無線端末局に中継して送信することを特徴とする請求項7に記載の無線端末局。
【請求項9】
請求項1~5のいずれかに記載の基地局と、
請求項6に記載の無線端末局と、
前記データ情報の前記宛先の無線端末局と、
を含むことを特徴とする無線通信システム。
【請求項10】
請求項7または8に記載の無線端末局をさらに含む請求項9に記載の無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TDMA(Time Division Multiple Access)方式の無線通信システムにおいて中継伝送を行う基地局、無線端末局および無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、TDMA方式の無線通信システムにおいて、親局である基地局のサービスエリア(ネットワーク)内で、子局である無線端末局間の直接通信を基地局が監視し、所定の場合に、基地局を経由した子局間の通信に切り替えることが行われていた。
【0003】
例えば、図22(a)および図22(b)(特許文献1の図1(a)および図1(b)に対応する)に示すように、基地局201は、制御チャネル(制御キャリア(F1))の空きタイムスロット(例えば、図22(a)のタイムスロット番号「3」のタイムスロット)を使用して、無線端末局202と203との間の無線端末局間通信に用いる電波(この場合、通信キャリア(f3))の強度を検知している。そして、この電波強度がこのサービスエリア200内における他の無線通信に影響を及ぼすレベルになると、基地局201は、制御チャネル(制御キャリア(F1))に無線端末局間通信の通信レベルが規定レベル以上になったことを示す制御情報を付加し、これを無線端末局202と203に送信する。この後、基地局201、無線端末局202および無線端末局203との間で発呼とその受付が繰り返された後に、無線端末局202と無線端末局203とは、図22(b)に示すように、基地局201を介して、使用されずに空いている上りの通信キャリア(f2)と下りの通信キャリア(F2)を用いることにより、それらの間の通信を確立することとなる。すなわち、それまで無線端末局間直接通信に用いていた通信キャリア(f3)を、当該サービスエリア200内の他の通信に影響を及ぼさない通信キャリア(f2、F2)に再配置することとなる。
【0004】
この構成によれば、基地局(親局)が、空きタイムスロットを利用して、無線端末局(子局)間の直接通信の送信レベルを検出する。そして、当該無線端末局間の直接通信の送信レベルが所定のレベル以上に達した場合には、他の通信と干渉する可能性があるため、基地局が空きタイムスロット、あるいは、プレストークの空き時間を利用し、通信を中断させることなく、基地局を経由した通信キャリアによる通信に自動的に移行させる。この基地局を経由した通信キャリアによる通信によって、無線端末局間の直接通信を他の通信に影響を与えないようにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-102065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、基地局(親局)が無線端末局(子局)間の直接通信の送信レベルが所定のレベル以上であることを検出した後に、基地局が無線端末局との通信を開始するので通信遅延が発生する。すなわち、基地局を経由した通信へ切り替えるために、基地局と無線端末局との間で発呼要求、通信可否問合せ等の制御を行うために、確実に数フレーム分の通信遅延が発生してしまうという課題があった。
【0007】
また、基地局が検出した無線端末局間の直接通信の送信レベルに基づいて、無線端末局間の直接通信から基地局を経由した通信へ切り替えるために、無線端末局間の電波環境が悪化した場合に、通信が中断する場合があるという課題があった。
そこで、本発明はこのような課題を解決する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成を採用する。
すなわち、請求項1に係る発明は、TDMA(Time Division Multiple Access)方式の無線通信によってデータ情報を中継して伝送する基地局において、
1つのフレームに、前記データ情報および前記データ情報の応答情報の通信に用いられるデータ情報タイムスロットと、前記データ情報タイムスロットの後に前記データ情報を中継する少なくとも1つのデータ情報中継タイムスロットとを配置させる配置情報、および、前記データ情報タイムスロットに無線端末局を割り当て、前記データ情報タイムスロットの後の最初のデータ情報中継タイムスロットに前記基地局を割り当てる割り当て情報を含むフレーム構成情報を生成する制御部と、
前記データ情報タイムスロットにおいて、前記無線端末局と前記データ情報の宛先の無線端末局との間で送受信される前記データ情報および前記応答情報を受信する受信部と、
前記配置情報および前記割り当て情報を含む前記フレーム構成情報をブロードキャストし、前記応答情報が前記宛先の無線端末局で前記データ情報の受信が成功しなかったことを示す場合、または、前記応答情報が受信されない場合に、前記基地局に割り当てられた前記データ情報中継タイムスロットを使用して、前記基地局から前記宛先の無線端末局に前記データ情報を送信する送信部と、
を含むことを特徴とする。
上記構成によれば、基地局が、他の無線端末局間の直接通信を傍受し、同一通信フレーム内で基地局を経由した中継伝送を行うため、通信遅延を最小限に抑制できる。また、直接通信を行っていた他の無線端末局間の電波環境が悪化した場合でも、通信を中断することなく継続することができる。
【0009】
上記課題を解決するために、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の基地局において、
前記制御部は、
前記データ情報中継タイムスロットにおいて、前記データ情報の受信が成功したことを示す情報を前記宛先の無線端末局から前記受信部で受信する場合には、前記データ情報中継タイムスロットにおいて、前記基地局から前記無線端末局に、前記宛先の無線端末局で前記データ情報の受信が成功したことを示す情報を前記送信部に送信させることを特徴とする。
上記構成によれば、1つのデータ情報中継タイムスロットにおいて、データ情報の中継送信、応答情報の受信、および、応答情報の中継送信を行うことができるので、時間遅延を発生することなく、送信元の無線端末局においてデータ情報の送受信が成功したことを確認することができる。また、最小の個数のタイムスロットを使用して実現するので、無線資源を有効に活用できる。
【0010】
上記課題を解決するために、請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の基地局において、
前記制御部は、
前記基地局に割り当てた前記データ情報中継タイムスロットの後に、前記無線端末局および前記宛先の無線端末局とは異なる他の無線端末局を割り当てたデータ情報中継タイムスロットを少なくとも1つ配置させることを特徴とする。
上記構成によれば、基地局による中継伝送が失敗した場合に、迅速に他の電波環境が良好な無線端末局が中継伝送を行うことができるようにするので、無線資源を無駄にせずに、通信遅延を最小限に抑制し、通信を中断することなく継続することができる。
【0011】
上記課題を解決するために、請求項4に係る発明は、請求項3に記載の基地局において、
前記制御部は、
前記他の無線端末局が割り当てられた前記データ情報中継タイムスロットにおいて、前記他の無線端末局と前記宛先の無線端末局との間で送受信されるデータ情報および応答情報を前記受信部に受信させ、当該データ情報の受信が成功したことを示す情報を前記宛先の無線端末局から前記受信部が受信しない場合には、前記他の無線端末局が割り当てられた前記データ情報中継タイムスロットの後に配置されたデータ情報中継タイムスロットにおいて、前記データ情報を前記宛先の無線端末局に前記送信部から送信させることを特徴とする。
上記構成によれば、無線端末局による中継伝送が失敗した場合に、基地局と宛先の無線端末局との電波環境が回復していることが考えられるので、基地局の中継伝送を再度行わせて、通信遅延を最小限に抑制し、通信を中断することなく継続することができる。
【0012】
上記課題を解決するために、請求項5に係る発明は、請求項1に記載の基地局において、
前記制御部は、
前記データ情報タイムスロットの次のタイムスロットに前記データ情報中継タイムスロットを配置し、同一のデータ情報を中継する前記データ情報中継タイムスロットが複数ある場合には、前記データ情報中継タイムスロットを隣接させて配置させることを特徴とする。
上記構成によれば、無線端末局による直接通信が失敗した直後に、基地局または他の無線端末局による中継送信を連続して行うようにしたので、通信遅延を最小限に抑制し、中継伝送の信頼度を上げることができる。
【0013】
上記課題を解決するために、請求項6に係る発明は、TDMA(Time Division Multiple Access)方式の無線通信によってデータ情報を伝送する無線端末局において、
1つのフレームに含まれる、前記データ情報および前記データ情報の応答情報の通信に用いられるデータ情報タイムスロットと、前記データ情報タイムスロットの後に配置される前記データ情報を中継する少なくとも1つのデータ情報中継タイムスロットとの配置情報と割り当て情報を基地局から受信する受信部と、
前記無線端末局に割り当てられたデータ情報タイムスロットにおいて、前記データ情報を送信した後に、前記データ情報の宛先の無線端末局から前記データ情報の受信が成功したことを示す情報が前記無線端末局で受信されない場合に、前記データ情報中継タイムスロットにおいても、前記データ情報の宛先の無線端末局から前記データ情報の受信が成功したことを示す情報が中継受信されない場合には、前記1つのフレーム以降のフレームのデータ情報タイムスロットで前記データ情報を前記宛先の無線端末局に再送信する送信部、を備えることを特徴とする。
上記構成によれば、同一フレームにおける中継伝送が失敗した場合であっても、後続するフレームで再送信できるようにしたので、システムの信頼度を上げることが可能になる。
【0014】
上記課題を解決するために、請求項7に係る発明は、TDMA(Time Division Multiple Access)方式の無線通信によってデータ情報を中継して伝送する無線端末局において、
1つのフレームに含まれる、前記データ情報および前記データ情報の応答情報の通信に用いられるデータ情報タイムスロットと、前記データ情報タイムスロットの後に配置される前記データ情報を中継する少なくとも2つのデータ情報中継タイムスロットとの配置情報と割り当て情報を基地局から受信し、
他の無線端末局に割り当てられたデータ情報タイムスロットにおいて、前記データ情報の宛先の無線端末局から前記データ情報の受信が成功したことを示す情報が前記他の無線端末局で受信されない場合に、前記データ情報タイムスロットの次のタイムスロットに配置された、前記基地局に割り当てられた前記データ情報中継タイムスロットにおいて、前記基地局と前記宛先の無線端末局との間で送受信される前記データ情報および前記応答情報を受信する受信部と、
前記応答情報が前記宛先の無線端末局で前記データ情報の受信が成功しなかったことを示す場合、または、前記応答情報が受信されない場合には、前記基地局に割り当てられた前記データ情報中継タイムスロットに後続する、前記無線端末局に割り当てられているデータ情報中継タイムスロットで、前記無線端末局から前記宛先の無線端末局に前記データ情報を中継して送信する送信部と、
を含むことを特徴とする。
上記構成によれば、基地局による中継伝送が失敗した場合であっても、同一フレーム内で無線端末局による中継伝送を行えるようにしたので、通信遅延を最小限に抑制し、中継伝送の信頼度を上げることができる。
【0015】
上記課題を解決するために、請求項8に係る発明は、請求項7に記載の無線端末局において、
前記無線端末局に割り当てられている前記データ情報中継タイムスロットにおいて受信した前記応答情報が、前記宛先の無線端末局で前記データ情報の受信が成功したことを示す場合には、前記無線端末局に割り当てられている前記データ情報中継タイムスロットにおいて、前記送信部が前記応答情報を前記他の無線端末局に中継して送信することを特徴とする。
上記構成によれば、1つのデータ情報中継タイムスロットにおいて、データ情報の中継送信、応答情報の受信、および、応答情報の中継送信を行うことができるので、時間遅延を発生することなく、送信元の無線端末局においてデータ情報の送受信が成功したことを確認することができる。また、最小の個数のタイムスロットを使用して実現するので、無線資源を有効に活用できる。
【0016】
上記課題を解決するために、請求項9に係る発明は、請求項7または8に記載の無線端末局において、
前記受信部は、前記無線端末局を宛先としない前記データ情報を送信した別の無線端末局の識別情報を傍受し、あらかじめ定められた時間、前記別の無線端末局の識別情報を記憶し、前記送信部は、前記宛先となった無線端末局の識別情報と、前記別の無線端末局の識別情報とを比較し、識別情報が一致する場合に前記データ情報を中継して送信し、識別情報が一致しない場合に前記データ情報を中継して送信しないことを特徴とする。
上記構成によれば、無線端末局が中継送信をする場合に、所定の時間内にデータ情報の受信が成功した送信元の無線端末局を宛先とする中継送信だけを行うので、無線資源を無駄にせずに、中継伝送の信頼度を上げることができる。
【0017】
上記課題を解決するために、請求項10に係る発明は、無線通信システムにおいて、
請求項1~5のいずれかに記載の基地局と、
請求項6~9のいずれかに記載の無線端末局と、
を含むことを特徴とする。
上記構成によれば、基地局または無線端末局が、他の無線端末局間の直接通信を傍受し、同一フレームで中継伝送を行うので、低遅延で信頼度の高いデータ伝送を可能にする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、親局(基地局)または子局(無線端末局)が、他の子局(無線端末局)間の直接通信を傍受し、同一通信フレーム内で親局または子局を経由した中継伝送を行うため、通信遅延を最小限に抑制できる。また、直接通信を行っていた他の子局間の電波環境が悪化した場合でも、通信を中断することなく継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】親局と子局が時分割アクセス制御(TDMA)方式を用いた無線通信を行う無線通信ネットワークの構成の一例である。
図2】通信フレーム構成の一例である。
図3】各タイムスロット内に配置される機能チャネルを説明するための図面である。
図4】実施例1における親局の動作の概要の一例を示すフローチャートである。
図5】実施例1および2における親局がACTSで割り当て要求信号を受信する動作を説明するフローチャートである。
図6】実施例1および2における親局がMDTSでデータを受信する動作を説明するフローチャートである。
図7】実施例1および2における親局がRDTSでデータを送信する動作を説明するフローチャートである。
図8】実施例1および2における親局がMDTSでデータを送信する動作を説明するフローチャートである。
図9】実施例1における子局の動作の概要の一例を示すフローチャートである。
図10】実施例1および2における子局がACTSで割り当て要求信号を送信する動作を説明するフローチャートである。
図11】実施例1および2における子局がMTDSでデータを送信する動作を説明するフローチャートである。
図12】実施例1および2における子局がMTDSでデータを受信する動作を説明するフローチャートである。
図13】実施例1における子局がRDTSで親局から送信された中継データを受信する動作を説明するフローチャートである。
図14】実施例2における親局の動作の概要の一例を示すフローチャートである。
図15】実施例2における親局がRDTSで送信された中継データを受信する動作を説明するフローチャートである。
図16】実施例2における子局の動作の概要の一例を示すフローチャートである。
図17】実施例2における子局がRDTSで親局または他の子局から送信された中継データを受信する動作を説明するフローチャートである。
図18】実施例2における子局がRDTSで中継データを送信する動作を説明するフローチャートである。
図19】子局から子局へ直接通信を行う場合のフレーム構成の一例である。
図20】実施例1における親局を経由して中継通信を行う場合のフレーム構成の一例である。
図21】実施例2における子局を経由して中継通信を行う場合のフレーム構成の一例である。
図22】従来技術を説明するための図面である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。まず、図1図3を参照して、時分割アクセス制御(TDMA(Time Division Multiple Access))方式を用いる無線通信ネットワークの基本的構成例について説明する。
【0021】
図1は、基地局である親局4と無線端末局である子局1、子局2、子局3がTDMA方式を用いた無線通信を行う無線通信ネットワークの構成の一例である。図1では、障害物5によって、子局1と子局3との間の無線通信ができなくなっている。また、図1において、親局4はネットワーク内の全ての子局の通信タイミングの集中制御を行う。すなわち、親局はネットワーク内の全ての子局の通信フレームの通信タイミングを制御し、子局と子局間のデータ情報を傍受し、データ情報を記憶できる。そして、所定の条件の場合にデータ情報の中継送信を行う。また、通信タイミング情報および割り当て情報等の必要な情報を親局から受信した子局も、データ情報を傍受し、当該データ情報を記憶できる。そして、所定の条件の場合に子局もデータ情報の中継送信を行うことができる。所定の条件については以下のフローチャートにおいて詳述する。
【0022】
図2は通信フレーム構成の一例である。スーパーフレームは複数のフレームから構成され、各フレームは複数のタイムスロットから構成される。一つのスーパーフレームに含まれるフレームの数および一つのフレームに含まれるタイムスロットの数は親局またはシステムで自由に決定することができる。
【0023】
各フレームの先頭のタイムスロットには、後続のタイムスロットの配置情報および割り当て情報を含むフレーム構成情報をネットワーク内の子局へブロードキャストするためのタイムスロットであるフレ一ム構成情報スロット(BETS:Beacon Time Slot)が配置される。また、各フレームの2つ目以降のタイムスロットには、親局と子局の間、または、子局と子局の間でデータ通信を行うためのデータ情報タイムスロットである情報データスロット(MDTS:Message Data Time Slot)、あるいは、子局と子局の間のデータ情報の中継伝送を親局または他の子局が行うためのデータ情報中継タイムスロットである中継データスロット(RDTS:Relay Data Time Slot)が配置される。
【0024】
さらに、各フレームの最後のタイムスロットには、親局に対して、子局が送信を行うためのタイムスロットの割り当て要求を親局に通知するための割り当て要求伝送スロット(ACTS:ACtivation Time Slot)が配置される。
【0025】
図3は、各タイムスロット内に配置される機能チャネルを説明するための図面である。図3に示すようにタイムスロットの種別に応じて、各タイムスロット内にさまざまな種類の機能チャネルが配置される。
【0026】
BETS内には、親局が子局にタイムスロットの配置情報および割り当て情報を含むフレーム構成情報を送信するためのフレーム構成情報チャネル(BEC:Beacon Channel)が配置される。フレーム構成情報を受信した子局はフレーム内のどのタイムスロットがどのタイミングで自局または他局に割り当てられたかを知ることができる。
【0027】
MDTS内には、データ情報を伝送する送信局のための情報データチャネル(MDC:Message Data Channel)と、当該データ情報が伝送される宛先となった局が応答信号を送信するための応答信号送信チャネル(AKC:AcKnowledge Channel)が配置される。送信局には親局と子局が含まれ、応答信号には肯定応答信号(ACK:ACKnowledge)と否定応答信号(NACK:Negative ACKnowledge)が含まれる。
【0028】
RDTS内には、親局または子局がデータ情報を中継伝送する情報データ中継チャネル(RDC:Relay Data Channel)と、当該データ情報の宛先となったその他の子局が応答信号を送信するための応答信号送信チャネル(AKC:AcKnowledge Channel)と、中継伝送を成功させた親局または子局が送信元の別の子局へ宛先となったその他の子局から受信した応答信号を中継するための応答信号中継送信チャネル(RAKC:Relay AcKnowledge Channel)が配置される。
【0029】
ACTS内には、子局が割り当て要求信号を送信するための割り当て要求送信チャネル(ACC:Activation Channel)が複数配置される。子局はACTS内の割り当て要求送信チャネル(ACC)をランダムに選択し使用する。
【0030】
BETSは親局の送信専用タイムスロットであり、MDTSは各MDTSが割り当てられた局専用の送受信タイムスロットであり、RDTSは親局または子局の送受信タイムスロットであり、ACTSは全ての子局が送信可能なタイムスロットである。また、各タイムスロット内には伝送データが前後の時間のデータとお互いに干渉しないことを目的とするために用いるガードタイムが配置される。
親局は図2に示すように連続的に通信フレームを生成し、各フレームの先頭に配置されるBETS内のBECで、タイムスロットの配置情報および割り当て情報を含むフレーム構成情報を含むビーコン信号を子局に対してブロードキャストする。通信フレームは図3に示す各種のタイムスロットを組み合わせて構成され、先頭のBETSに続きMDTS、および、必要に応じてRDTSが続き、最後尾にACTSが配置される。
【0031】
<実施例1>
実施例1では、MDTSにおける子局から子局へのデータ情報の直接通信が失敗した場合に、直接通信を傍受していた親局が、同一フレーム内にあるRDTSで直接通信が失敗したデータ情報を宛先となっていた子局へ中継伝送するとともに、同一のRDTSで応答情報も中継伝送する形態を説明する。
【0032】
図20は、実施例1における親局を経由して中継通信を行う場合のフレーム構成の一例である。
フレーム1のACTSにおいて、子局1から親局に割り当て要求情報が送信される。
フレーム2のBETSにおいて、親局はMDTSを子局1に割り当て、MDTSに後続するRDTSに親局を割り当てる。親局を割り当てるRDTSはMDTSの直後のタイムスロットであってもよいし、他のMDTSが間に入ってもよい。
【0033】
フレーム2の子局1に割り当てられたMDTSにおいて、子局1は子局3に親局を経由せずにデータ情報を直接送信するが、子局3がデータ情報を正常に受信できなかったことが子局1で検知される。例えば、MDTSのAKCで肯定応答信号(ACK)が子局1で受信されない場合や、否定応答信号(NACK)が子局1で受信される場合である。また、応答信号が受信されない場合も子局3でデータ情報を正常に受信できなかったことになる。
【0034】
フレーム2の子局1に割り当てられたMDTSの直後のタイムスロットであるRDTSにおいて、親局はMDTSで送信されたデータ情報を子局3に中継送信する。当該RDTS内のAKCを使用して子局3はデータ情報を正常に受信できたこと示す情報(例えばACK)を親局に送信し、当該RDTS内のRAKCを使用して親局は子局1に子局3がデータ情報を正常に受信できたこと示す情報(例えばACK)を中継送信する。
【0035】
以下に、実施例1における親局と子局の動作についてフローチャートを用いて具体的に説明する。
最初に、図4図8を参照して、実施例1における親局の動作フローチャートを示す。親局における図4図8の処理手順は、親局が有するマイクロコンピュータ(図示せず)のROM(Read Only Memory)に格納されたプログラムにしたがいCPU(Central Processing Unit)が実行する。
【0036】
なお、以下の処理手順の一部または全部は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアにより実行させることもできる。但し本実施例では、ROMのプログラムにしたがってCPUが実行する形態とした場合について説明する。
【0037】
図4は、親局の動作の概要の一例を示すフローチャートである。
まず、図4のステップS401において、子局からの割り当て要求信号を受信するか、親局自らに送信要求が発生した場合にフレームを生成する。すなわち、親局はACTS内の割り当て要求送信チャネル(ACC)で子局からの割り当て要求信号を受信すると、次のフレームのMDTSに対して該当する子局の割り当てを行う。また、自らの送信要求が発生した場合、次のフレームのMDTSに対して自局の割り当てを行う。
また、直前のフレームのMDTSで直接送信を失敗した子局が、ACCで割り当て要求信号を送信してきた場合には、次のフレームには該当する子局に割り当てたMDTSと、当該MDTSの後方に親局に割り当てられたRDTSを配置する。
さらに、送信成功確率が所定の値よりも低い子局が、ACCで割り当て要求信号を送信してきた場合には、次のフレームには該当する子局に割り当てたMDTSと、当該MDTSの後方に親局に割り当てられたRDTSを配置する。所定の値は親局またはシステムが任意の値に設定することができる。
このように、次のフレームにおけるタイムスロットの配置情報および割り当て情報を含むフレーム構成情報を生成し、次のフレームを生成する。次にステップS402に進む。
【0038】
ステップS402において、親局はフレームタイマーの初期化を行い、フレームと同期を取り、ステップS403に進む。
【0039】
ステップS403において、親局は初期化されたフレームタイマーを参照して、通信するべきフレームの開始タイミングになったか否かを判断する。初期化された時刻から開始タイミングまでの時間はシステムが任意の時間を設定することができる。ステップS403において、通信するべきフレームの開始タイミングになった場合(ステップS403:YES)には、ステップS404に進み、通信するべきフレームの開始タイミングになっていない場合(ステップS403:NO)には、ステップS403を繰り返す。
【0040】
ステップS404において、親局はスロットタイマーの初期化を行う。これは、タイムスロットと同期を取るために使用される。次に、ステップS405に進む。
【0041】
ステップS405において、親局はフレーム内のタイムスロットの種別を先頭のタイムスロットから順番に判断する。タイムスロットがBETSである場合にはステップS406に進み、タイムスロットがMDTSである場合にはステップS407に進み、タイムスロットがRDTSである場合にはステップS410に進み、タイムスロットがACTSである場合にはステップS412に進む。
【0042】
ステップS406において、親局はBETSを使用したビーコン通信によってタイムスロットの配置情報と割り当て情報を含むフレーム構成情報をブロードキャストする。すなわち、BETSによって、フレーム内のタイムスロットの配置情報と割り当て情報が子局に送信される。このビーコン通信によって、子局はフレーム内のMDTSまたはRDTSが当該子局に割り当てられたか否かを判断し、フレーム内のMDTSまたはRDTSのタイミングを知ることができる。
【0043】
ステップS407において、親局はMDTSが自局用のデータ送信タイムスロットであるか否かを判断する。MDTSが自局用のデータ送信タイムスロットでない場合(ステップS407:NO)にはステップS408に進み、自局用のデータ送信タイムスロットである場合(ステップS407:YES)にはステップS409に進む。
【0044】
ステップS408において、当該MDTSは親局用のタイムスロットではないので、親局は、当該MDTSを使用して子局が送信したデータ情報を受信(傍受)する。また、データ情報を受信した他の子局が送信する肯定応答信号(ACK)または否定応答信号(NACK)を受信(傍受)する。親局は、当該ACKまたはNACKによって、子局間の直接通信においてデータ情報が正常に送受信されたか否かを判断することができる。また、当該MDTSのAKCで応答信号を受信しない場合には子局間の通信においてデータ情報が正常に送受信されなかったと判断することができる。子局間の通信においてデータ情報が正常に送受信されなかった場合には、中継フラグを設定する(例えば中継フラグを「1」に設定する)。中継フラグは親局で記憶されるフラグである。
【0045】
ステップS409において、当該MDTSは親局用のタイムスロットであるので、親局は、当該MDTSを使用して親局のデータ情報を他局へ送信する。
【0046】
ステップS410において、親局は中継フラグを読み出し、中継フラグが設定されている場合(例えば中継フラグが「1」の場合)(ステップS410:YES)には、ステップS411に進み、中継フラグが設定されていない場合(例えば中継フラグが「0」の場合)(ステップS410:NO)には、ステップS413に進む。
【0047】
ステップS411において、親局は、データ情報を中継送信する。すなわち、子局での直接通信が失敗したMDTS(傍受していた親局が中継フラグを設定したMDTS)で子局が送信したデータ情報を、当該MDTSで宛先となっていた子局に送信する。当該データ情報はステップS408で親局が傍受した情報である。
【0048】
ステップS412において、親局は、ACTSを通じて、子局から割り当て要求を受信する。
ステップS413において、親局は、ステップS401において生成したフレーム構成情報に基づいて、処理を行ったタイムスロットが最終タイムスロットであるか否かを判断する。最終タイムスロットである場合(ステップS413:YES)には、ステップS401に進み、最終タイムスロットでない場合(ステップS413:NO)には、ステップS404に進む。
【0049】
次に、図5を用いて、親局のACTSでの割り当て要求信号の受信動作フローについて説明する。
ステップS501において、親局は1つのACTS内のウィンドウ数をカウントするためのウィンドウカウンタを初期化し、次にステップS502に進む。
【0050】
ステップS502において、ウィンドウ開始タイミングになったか否かを判断する。ウィンドウ開始タイミングはシステムで任意の時間を設定することができる。ウィンドウ開始タイミングになった場合(ステップS502:YES)には、ステップS503に進み、開始タイミングになっていない場合(ステップS502:NO)には、ステップS502を繰り返す。
【0051】
ステップS503において、親局はウィンドウタイマーを初期化してウィンドウと同期を取り、ステップS504に進む。
【0052】
ステップS504において、親局はACCを使用して子局から割り当て要求が受信されたか否かを判断する。子局から割り当て要求が受信された場合(ステップS504:YES)には、ステップS505に進み、子局から割り当て要求が受信されない場合(ステップS504:NO)には、ステップS506に進む。ACCは子局がランダムに選択して使用するので、ACCの順番と特定の子局が対応しているわけではない。
【0053】
ステップS505において、親局はACCを使用して子局から割り当て要求が受信されたことを記憶する。この場合、割り当て要求を送信した子局の識別情報を記憶する。次に、ステップS506に進む。なお、図4のステップS401のフレーム生成時に、割り当て要求を送信した子局にMDTSを割り当てる。
【0054】
ステップS506において、親局はウィンドウタイマーがタイムアウトしたか否かを判断する。ウィンドウタイマーがタイムアウトした場合(ステップS506:YES)には、ステップS507に進み、ウィンドウタイマーがタイムアウトしない場合(ステップS506:NO)には、ステップS504に戻る。
【0055】
ステップS507において、親局はACTS内の最終ウィンドウを処理したか否かを判断する。最終ウィンドウを処理した場合(ステップS507:YES)には、ステップS509に進み、最終ウィンドウを処理していない場合(ステップS207:NO)には、ステップS508に進む。
ステップS508において、親局はウィンドウカウンタをカウントアップして次のACCによる割り当て要求情報の受信に備え、ステップS502に進む。
【0056】
ステップS509において、親局はACTSのスロットタイマーがタイムアウトしたか否かを判断する。スロットタイマーがタイムアウトした場合(ステップS509:YES)には、処理を終了し、スロットタイマーがタイムアウトしていない場合(ステップS509:NO)には、ステップS509を繰り返す。
【0057】
次に、図6を用いて、親局のMDTSでのデータ受信動作フローについて説明する。
ステップS601において、親局は子局がMDTSで送信したデータ情報を受信したか否かを判断する。子局がMDTSで送信したデータ情報を受信した場合(ステップS601:YES)には、ステップS602に進み、子局がMDTSで送信したデータ情報を受信しない場合(ステップS601:NO)には、ステップS606に進む。
【0058】
ステップS602において、親局は子局が送信したデータ情報が親局である自局宛であるか否かを判断する。子局が送信したデータ情報が自局宛である場合(ステップS602:YES)には、ステップS603に進み、子局が送信したデータ情報が自局宛でない場合(ステップS602:NO)には、ステップS604に進む。
【0059】
ステップS603において、親局は子局が送信したデータ情報を正常に受信したか否かを示す情報(例えば、ACKまたはNACK)を当該子局に送信し、ステップS606に進む。子局が送信したデータ情報を正常に受信したか否かを示す情報は、図3のMDTSに示すように、同一のMDTS内にあるAKCを通じて、データ情報を送信した子局に送信される。
【0060】
ステップS604において、親局は子局が他の子局宛に送信したデータ情報の応答信号を受信したか否かを判断する。図3のMDTSに示すように、同一のMDTS内のAKCで、宛先となった他の子局がデータ情報を正常に受信したことを示す肯定応答信号(ACK)が受信された場合(ステップS604:YES)には、ステップS606に進み、宛先となった他の子局がデータ情報を正常に受信したことを示す肯定応答信号(ACK)が受信されない場合(ステップS604:NO)には、ステップS605に進む。あるいは、MDTS内のAKCで、他の子局がデータ情報を正常に受信しなかったことを示す否定応答信号(NACK)が受信された場合(ステップS604:NO)にも、ステップS605に進む。また、肯定応答信号(ACK)と否定応答信号(NACK)のいずれも受信しなかった場合にも、ステップS605に進む。
ステップS605において、親局は親局にある中継フラグをセットし、ステップS606に進む。例えば、親局は親局にある中継フラグを「1」に設定する。中継フラグがセットされている場合には、MDTSにおいて子局間で直接通信されたデータ情報が宛先となった子局で正常に受信されていないことを示す。
【0061】
ステップS606において、親局はMDTSのスロットタイマーがタイムアウトしたか否かを判断する。スロットタイマーがタイムアウトした場合(ステップS606:YES)には、処理を終了し、スロットタイマーがタイムアウトしない場合(ステップS606:NO)には、ステップS606を繰り返す。
【0062】
次に、図7を用いて、親局のRDTSでのデータ送信動作(データ情報を中継して送信する動作)フローについて説明する。
ステップS701において、親局はデータ情報の中継送信を行う。すなわち、親局は中継フラグがセットされていることを確認し、中継フラグがセットされたMDTSで送信されたデータ情報を、親局から中継して送信する。再送する宛先は当該MDTSで宛先となっていた子局であり、当該MDTSで送信されたデータ情報を正常に受信できなかった子局である。当該データ情報は、図6のステップS601で親局が傍受したデータ情報である。
【0063】
ステップS702において、親局は、データ情報を送信した子局から応答信号を受信したか否かを判断する。図3に示すように、RDTS内のAKCで、子局からデータ情報を正常に受信したことを示す肯定応答信号(ACK)を受信した場合(ステップS702:YES)には、ステップS703に進み、子局がデータ情報を正常に受信したことを示す肯定応答信号(ACK)を受信しない場合、または、子局がデータ情報を正常に受信なかったことを示す否定応答信号(NACK)を受信した場合(ステップS702:NO)には、ステップS704に進む。また、応答信号を受信できなかった場合にもステップS704に進む。
【0064】
ステップS703において、親局は、図3に示すように、RDTS内のRAKCを使用して、中継送信したデータ情報を受信した子局からの肯定応答信号(ACK)または否定応答信号(NACK)を、当該データ情報をMDTSで送信した子局に送信する。すなわち、RDTSに先行するMDTS内で子局間の直接通信が失敗した場合には、直接通信を傍受していた親局がMDTSと同一フレームにあるRDTSのRDCで当該データ情報を宛先となった子局に送信するとともに、AKCで応答信号がある場合にはMDTSでデータ情報を送信した子局にRAKCを使用して当該応答信号を中継送信する。これらのRDC、AKC、RAKCは同一のRDTSにあるものが使用される。
【0065】
ステップS704において、親局は、中継フラグをクリアする。例えば、親局は親局にある中継フラグを「0」に設定する。そして、当該データ情報を破棄する。すなわち、データ情報の中継送信を行った親局は、同一タイムスロット(RDTS)内の応答信号送信チャネル(AKC)で宛先の局から応答信号が受信されない場合(中継伝送が失敗した場合)、応答信号中継送信チャネル(RAKC)で応答信号を送信した場合(中継伝送が成功した場合)のいずれの場合であっても、データ情報を破棄し、再送信を行わない。
【0066】
ステップS705において、親局はRDTSのスロットタイマーがタイムアウトしたか否かを判断する。スロットタイマーがタイムアウトした場合(ステップS705:YES)には、処理を終了し、スロットタイマーがタイムアウトしない場合(ステップS705:NO)には、ステップS705を繰り返す。
【0067】
次に、図8を用いて、親局がMDTSでデータを送信する動作フローについて説明する。
ステップS801において、MDTSが親局に割り当てられている場合には、図3に示すように、MDTSのMDCを使用して親局が有するデータ情報を子局に送信する。
【0068】
ステップS802において、親局はデータ情報を送信した子局から応答信号を受信したか否かを判断する。子局から肯定応答信号を受信した場合(ステップS802:YES)には、ステップS804に進み、子局からの肯定応答信号を受信しない場合(ステップS802:NO)には、ステップS803に進む。
【0069】
ステップS803において、子局がデータ情報の受信に失敗したことを検知した親局は親局にある再送フラグをセットし、ステップS804に進む。例えば、親局は再送フラグを「1」に設定する。親局は次以降のフレームのMDTSで当該データ情報を再送する。なお、同一フレームにおいて子局による中継送信が成功した場合には、再送フラグがクリアされる。
【0070】
ステップS804において、親局はMDTSのスロットタイマーがタイムアウトしたか否かを判断する。スロットタイマーがタイムアウトした場合(ステップS804:YES)には、処理を終了し、スロットタイマーがタイムアウトしない場合(ステップS804:NO)には、ステップS804を繰り返す。
【0071】
次に図9図13を参照して、実施例1に係わる子局の動作フローチャートを示す。子局における図9図13の処理手順は、子局が有するマイクロコンピュータ(図示せず)のROMに格納されたプログラムにしたがいCPUが実行する。
【0072】
なお、以下の処理手順の一部または全部は、例えば、DSPやASIC等のハードウェアにより実行させることもできる。但し本実施例では、ROMのプログラムにしたがってCPUが実行する形態とした場合について説明する。
【0073】
図9は、子局の動作の概要の一例を示すフローチャートである。
まず、図9のステップS901において、子局は親局から送信されたビーコン信号を受信したか否かを判断する。ビーコン信号を受信した場合(ステップS901:YES)には、ステップS902に進み、ビーコン信号を受信しない場合(ステップS901:NO)には、ステップS901を繰り返す。
【0074】
ステップS902において、子局はスロットタイマーの初期化を行い、BETSと同期を取る。そして、子局は親局が送信するBETS内のフレーム構成情報チャネル(BEC)で、ビーコン信号に含まれるフレーム構成情報を受信し、フレームの構成及び通信タイミングを認識する。すなわち、ビーコン信号のフレーム構成情報にはフレーム内のタイムスロットの配置情報および割り当て情報が含まれるので、子局は自局に割り当てられたタイムスロットがあるか否か、並びに、当該タイムスロットの位置および種類を認識することができる。また、他局に割り当てられたタイムスロットの位置および種類も認識することができるので、他局のデータ情報および応答情報を受信(傍受)することができる。次に、ステップS903に進む。
【0075】
ステップS903において、子局はBETSのスロットタイマーがタイムアウトしたか否かを判断する。スロットタイマーがタイムアウトした場合(ステップS903:YES)には、ステップS904に進み、スロットタイマーがタイムアウトしない場合(ステップS903:NO)には、ステップS903を繰り返す。
【0076】
ステップS904において、子局はスロットタイマーの初期化を行い、タイムスロットと同期を取り、各タイムスロットで送信される情報を受信する。次にステップS905に進む。
【0077】
ステップS905において、子局は受信されたタイムスロットの種別を先頭のタイムスロットから順番に判断する。タイムスロットがMDTSである場合にはステップS906に進み、タイムスロットがRDTSである場合にはステップS909に進み、タイムスロットがACTSである場合にはステップS910に進む。
【0078】
ステップS906において、子局はMDTSが自局用のデータ送信タイムスロットであるか否かを判断する。MDTSが自局用のデータ送信タイムスロットではない場合(ステップS906:NO)にはステップS907に進み、自局用のデータ送信タイムスロットである場合(ステップS906:YES)にはステップS908に進む。
【0079】
ステップS907において、当該MDTSは自局用の送信タイムスロットではないので、子局は当該MDTSを使用して他局が送信したデータ情報を受信(傍受)して記憶するとともに宛先となったその他の他局からの応答信号を受信(傍受)し、ステップS911に進む。
【0080】
ステップS908において、当該MDTSは自局用の送信タイムスロットであるので、子局は、当該MDTSを使用して自局のデータ情報を他局に送信し、他局からの応答信号の受信を待ち、ステップS911に進む。
【0081】
ステップS909において、子局はRDTSのRDCを使用して親局が中継したデータ情報を受信する。また、AKCを用いて応答信号の受信(傍受)を行い、ステップS911に進む。
【0082】
ステップS910において、子局は割当要求信号の送信処理を行い、ステップS911に進む。
【0083】
ステップS911において、子局は、ビーコンによって送信されたフレーム構成情報に基づいて、処理を行ったタイムスロットが最終タイムスロットであるか否かを判断する。最終タイムスロットである場合(ステップS911:YES)には、ステップS901に進み、最終タイムスロットでない場合(ステップS911:NO)には、ステップS904に進む。
【0084】
次に、図10を用いて、子局がACTSで割り当て要求信号を送信する動作フローについて説明する。
ステップS1001において、子局は自局からデータ情報を送信するための割り当て要求が発生したか否かを判断する。割り当て要求が発生した場合(ステップS1001:YES)にはステップS1002に進み、割り当て要求が発生していない場合(ステップS1001:NO)にはステップS1003に進む。例えば、同一フレームのMDTSで子局の通信が失敗した場合、または、子局自身のデータ処理によって他局にデータ情報を送信する必要がある場合などに、子局は割り当て要求を発生させる。
【0085】
ステップS1002において、図3のACTSに示すように子局は割り当て要求を送信するためのACCの送信ウィンドウを選定する。送信ウィンドウの選定はランダムにできる。また、選定した送信ウィンドウは、ACTS内のACCの順番によって特定することができる。
ステップS1003において、子局はウィンドウカウンタを初期化する。子局はウィンドウカウンタによって1つのACTS内のACCの送信ウィンドウの数をカウントできる。
【0086】
ステップS1004において、子局はウィンドウ開始タイミングになったか否かを判断する。ウィンドウ開始タイミングになった場合(ステップS1004:YES)には、ステップS1005に進み、開始タイミングになっていない場合(ステップS1004:NO)には、ステップS1004を繰り返す。
ステップS1005において、子局はウィンドウタイマーを初期化し、ウィンドウと同期を取り、次にステップS1006に進む。
【0087】
ステップS1006において、子局は、ステップS1002で自局が選定した選定ウィンドウになったか否かを判断する。選定ウィンドウになった場合(ステップS1006:YES)には、ステップS1007に進み、選定ウィンドウではない場合(ステップS1006:NO)には、ステップS1008に進む。選定ウィンドウであるか否かの判断は、ウィンドウカウンタによって、1つのACTS内のACCの送信ウィンドウの数をカウントすることで判断することができる。
ステップS1007において、子局はACTS内のACCの送信ウィンドウで割り当て要求を親局に送信する。
【0088】
ステップS1008において、子局はウィンドウタイマーがタイムアウトしたか否かを判断する。ウィンドウタイマーがタイムアウトした場合(ステップS1008:YES)には、ステップS1009に進み、ウィンドウタイマーがタイムアウトしない場合(ステップS1008:NO)には、ステップS1008を繰り返す。
【0089】
ステップS1009において、子局はACTS内の最終ウィンドウを処理したか否かを判断する。最終ウィンドウを処理した場合(ステップS1009:YES)には、ステップS1011に進み、最終ウィンドウを処理していない場合(ステップS1009:NO)には、ステップS1010に進む。
ステップS1010において、子局はウィンドウカウンタをカウントアップして、ステップS1004に進む。
【0090】
ステップS1011において、子局はACTSのスロットタイマーがタイムアウトしたか否かを判断する。スロットタイマーがタイムアウトした場合(ステップS1011:YES)には、処理を終了し、スロットタイマーがタイムアウトしない場合(ステップS1011:NO)には、ステップS1011を繰り返す。
【0091】
次に、図11を用いて、子局がMTDSでデータを送信する動作フローについて説明する。これは、子局が直前のフレームのACTSのACCで割り当て要求を行い、割り当て要求が認められた場合に該当する。
【0092】
ステップS1101において、図3のMDTSに示すように子局はMDTSのMDCを使用して、データ情報を他局に送信する。次に、ステップS1102に進む。このデータ情報は親局も受信(傍受)する。なお、当該データ情報は先行するフレームのMDTSで送信され、当該先行するフレームのRDTSで中継送信が失敗したデータ情報である場合もある。
【0093】
ステップS1102において、子局は、ステップS1101におけるデータを送信した後の所定時間内に、データの宛先となった他局から応答信号を受信したか否かを同一のMDTSのAKCを使用して判断する。ここで、所定時間はシステムが任意の時間に設定できる。
子局が所定時間内に肯定応答信号(ACK)を受信した場合(ステップS1102:YES)には、ステップS1104に進み、所定時間内に肯定応答信号(ACK)を受信しない場合、または、否定応答信号(NACK)を受信した場合(ステップS1102:NO)には、ステップS1103に進む。ここで、子局が所定時間内に否定応答信号または肯定応答信号を受信しない場合にも、ステップS1103に進む。
【0094】
ステップS1103において、子局は、再送フラグをセットする。すなわち、ステップS1101において送信したデータが宛先の他局で正常に受信されなかったので、再送フラグを設定する。この再送フラグは、同一のフレーム内の後続するRDTSにおける親局によるデータ情報の中継送信が成功した場合には、当該RDTSのRAKCによって肯定応答信号を受信した後にクリアされる。
【0095】
ステップS1104において、子局はMDTSのスロットタイマーがタイムアウトしたか否かを判断する。スロットタイマーがタイムアウトした場合(ステップS1104:YES)には、処理を終了し、スロットタイマーがタイムアウトしない場合(ステップS1104:NO)には、ステップS1104を繰り返す。
【0096】
次に、図12を用いて、MDTSで他局が送信したデータ情報を子局が受信する動作フローについて説明する。
ステップS1201において、図3のMDTSに示すように子局はMDTSのMDCを使用して、他局からデータ情報を受信したか否かを判断する。他局からデータ情報を受信した場合(ステップS1201:YES)には、ステップS1202に進み、他局からデータ情報を受信しない場合(ステップS1201:NO)には、ステップS1204に進む。
【0097】
ステップS1202において、子局は受信したデータ情報が自局宛か否かを判断する。自局宛のデータ情報を受信した場合(ステップS1202:YES)には、ステップS1203に進み、自局宛のデータ情報ではない場合(ステップS1202:NO)には、ステップS1204に進む。自局宛のデータであるか否かの判断はデータ情報のヘッダー情報等に含まれる識別子を参照することによって行うことができる。
【0098】
ステップS1203において、子局はデータ情報を正常に受信したか否かを示す応答信号を、同一のMDTS内のAKCを使用して、データ情報を送信した他局に送信する。すなわち、子局がデータを正常に受信した場合には肯定応答信号(ACK)を送信し、子局がデータを正常に受信しなかった場合には否定応答信号(NACK)を送信する。
ステップS1204において、子局はMDTSのスロットタイマーがタイムアウトしたか否かを判断する。スロットタイマーがタイムアウトした場合(ステップS1204:YES)には、処理を終了し、スロットタイマーがタイムアウトしない場合(ステップS1204:NO)には、ステップS1204を繰り返す。
【0099】
次に、図13を用いて、子局がRDTSで親局から中継送信されたデータ情報を受信する動作フローについて説明する。
【0100】
ステップS1301において、図3のRDTSに示すように子局はRDTSのRDCを使用して、親局からデータ情報を中継受信したか否かを判断する。親局からデータ情報を中継受信した場合(ステップS1301:YES)には、ステップS1302に進み、親局からデータ情報を中継受信しなかった場合(ステップS1301:NO)には、ステップS1307に進む。
この中継されるデータ情報は、RDTSより先行するMDTSのMDCで他の子局から送信されたデータ情報であって、宛先となった子局で正常に受信されなかったデータ情報である。また、当該データ情報は親局が傍受したデータ情報である。
【0101】
ステップS1302において、子局は中継受信されたデータ情報が自局宛であるか否かを判断する。自局宛のデータ情報を中継受信した場合(ステップS1302:YES)には、ステップS1303に進み、自局宛のデータ情報ではない場合(ステップS1302:NO)には、ステップS1304に進む。自局宛のデータ情報であるか否かは中継されたデータ情報のヘッダー情報等に含まれる識別子を参照することによって行うことができる。
自局宛のデータ情報である場合には、RDTSより先行するMDTSのMDCで他の子局から送信されたデータ情報の宛先の子局が自局であることを示す。
【0102】
ステップS1303において、子局は中継されたデータ情報を正常に受信したか否かを示す応答信号を、同一のRDTS内のAKCを使用して、中継されたデータ情報を送信した他局に送信する。すなわち、子局がデータ情報を正常に受信した場合には肯定応答信号(ACK)を送信し、子局がデータ情報を正常に受信しなかった場合には否定応答信号(NACK)を送信する。このデータ情報は同一フレーム内の先行するMDTSで他の子局から自局宛に送信されたデータ情報であって、当該MDTSでは正常に受信されなかったデータ情報である。
【0103】
ステップS1304において、ステップS1301で受信された親局からのデータ情報が、同一フレームの先行するMDTSのMDCで自局から送信されたデータ情報であるか否かを判断する。データ情報を送信した子局が自局である場合(ステップS1304:YES)には、ステップS1305に進み、データ情報を送信した子局が自局ではない場合(ステップS1304:NO)には、ステップS1307に進む。
ステップS1305において、子局は、データ情報の宛先となった他の子局がデータ情報を正常に受信したか否かを、同一のRDTSのRAKCを介して親局から中継送信される応答情報を受信して判断する。
【0104】
子局が宛先となった他の子局から肯定応答信号を中継受信した場合(ステップS1305:YES)には、ステップS1306に進み、子局が宛先となった他の子局から肯定応答信号を中継受信しない場合(ステップS1305:NO)には、ステップS1307に進む。ここで、宛先となった他の子局は肯定応答信号の代わりに、否定応答信号を親局に送信し、親局は否定応答信号を中継送信してもよい。この場合には、ステップS1307に進む。
【0105】
ステップS1306において、子局は、図11のステップS1103で設定した再送フラグをクリアする。これは、RDTSより前のMDTSで自局から送信し、他の子局で正常に受信されなかたデータ情報が、親局が中継送信をおこなったRDTSで正常に受信されたためである。
【0106】
ステップS1307において、子局はRDTSのスロットタイマーがタイムアウトしたか否かを判断する。スロットタイマーがタイムアウトした場合(ステップS1307:YES)には、処理を終了し、スロットタイマーがタイムアウトしない場合(ステップS1307:NO)には、ステップS1307を繰り返す。
【0107】
以上、実施例1について説明したが、子局は以下の動作を引き続き行うこともある。
すなわち、実施例1では、子局は自らが割り当てられたMDTSでデータ情報を送信した後に、所定の時間内に同一MDTS内のAKCで肯定応答信号を受信できず、または、否定応答信号を受信した場合には、後続のRDTSで親局からデータ情報を中継送信することが開示されている。しかし、当該後続のRDTSのAKCにおいても、宛先となった子局から肯定応答信号を受信できず、または、否定応答信号を受信する場合がある。
この場合には、子局はACCで次のフレームのMDTSの割り当て要求信号を親局に送信し、割り当てられたフレームのMDTSにおいて当該データ情報の再送信を行う。再送信は所定の回数行われ、それでも肯定応答信号を受信できない場合には再送信を中止するとともに当該データ情報を破棄する。
【0108】
以上の説明からも明らかなように、本実施例1では、図4のステップS401が請求項1の制御部に対応する処理となっている。また、本実施例1では、図4のステップS408、図6のステップS601、ステップS604が請求項1の受信部に対応する処理となっている。さらに、本実施例では、図4のステップS406、図4のステップS411、図6のステップ604、図7のステップS701が請求項1の送信部に対応する処理となっている。
【0109】
また、本実施例1では、図7のステップS702、S703が請求項2の制御部に対応する処理となっている。
【0110】
さらに、本実施例1では、図9のステップS901、ステップS902が請求項6の受信部に対応する処理となっている。また、本実施例1では、図11のステップS1101、ステップS1102、ステップS1103、図13のステップS1305が請求項6の送信部に対応する処理となっている。
【0111】
<実施例2>
実施例2は、図21のフレーム2に示すように、MDTSで子局から子局へのデータ情報の直接通信が失敗した場合に、直接通信を監視していた親局が、直接通信が失敗したデータ情報を同一フレームのRDTSで中継送信する。しかし、親局による中継送信も失敗した場合には、その他の子局が、直接通信が失敗したデータを同一フレームの他のRDTSで再度、中継送信する形態を示している。
【0112】
図21は、実施例2における子局を経由して中継通信を行う場合のフレーム構成の一例である。
フレーム1のACTSにおいて、子局1から親局に割り当て要求情報が送信される。
フレーム2のBETSにおいて、親局は子局1にMDTSを割り当て、MDTSの次のタイムスロットであるRDTSに親局を割り当て、親局に割り当てられたRDTSの次のタイムスロットであるRDTSに子局2を割り当てる。なお、子局2を割り当てるRDTSは親局に割り当てられたRDTS以降の同一フレームのタイムスロットであれば、いずれの位置であってもよい。
フレーム2の子局1に割り当てられたMDTSにおいて、子局1は子局3に親局を経由せずにデータ情報を直接送信するが、子局3でデータ情報の受信が失敗する。親局および子局2は、子局1と子局3の間のデータ情報と応答信号を受信(傍受)する。
フレーム2の子局1に割り当てられたMDTSの直後のRDTSにおいて、親局はMDTSで送信されたデータ情報を子局3に中継送信するが、子局3でのデータ情報の受信が失敗する。子局2は、親局と子局3の間のデータ情報と応答信号を受信(傍受)する。
フレーム2の親局に割り当てられたRDTSの後に続くRDTSにおいて、子局2はMDTSで送信されたデータ情報を子局3に中継送信する。子局3はデータ情報を正常に受信できたこと示す応答信号を子局2に同一のRDTSのACKを使用して送信し、子局2は子局1に子局3がデータ情報を正常に受信できたこと示す応答信号を同一のRDTSのRACKを使用して送信する。
【0113】
以下に、実施例2における親局と子局の動作についてフローチャートを用いて具体的に説明する。
【0114】
最初に、図14図15を参照して、実施例2における親局の動作フローチャートを示す。なお、親局のACTS割り当て要求信号受信動作フロー(図5)、親局のMDTSデータ受信動作フロー(図6)、親局のRDTSデータ送信動作フロー(図7)、親局のMDTSデータ送信動作フロー(図8)は実施例1と重複するので、ここでの説明は省略する。親局における図14図15の処理手順は、親局が有するマイクロコンピュータ(図示せず)のROMに格納されたプログラムにしたがいCPUが実行する。
【0115】
なお、以下の処理手順の一部または全部は、例えば、DSPやASIC等のハードウェアにより実行させることもできる。但し本実施例では、ROMのプログラムにしたがってCPUが実行する形態とした場合について説明する。
【0116】
図14は、実施例2における親局の動作の概要の一例を示すフローチャートである。
まず、S1401において、子局からの割り当て要求信号を受信するとフレームを生成する。すなわち、親局はACTS内の割り当て要求送信チャネル(ACC)で子局からの割り当て要求信号を受信すると、次のフレームのMDTSに対して該当する子局の割り当てを行う。また、同一フレーム内において、MDTSの後方に少なくとも2つ以上のRDTSを配置する。前記RDTSの中の先頭のRDTS(MDTSの後方の最初のRDTS)は親局に割り当て、2番目以降のRDTSは子局にも割り当てを行う。この子局は、MDTSに対して割り当てられた子局とは異なる子局であって、データ情報の宛先の子局とも異なる。例えば、電波環境が良好な設置環境にある子局、または、データ情報の宛先の子局との通信品質が良い子局などが割り当てられる。このように、次のフレームに含まれるタイムスロットの割り当てを行い、次のフレームを生成する。
【0117】
なお、親局は、MDTSの次のタイムスロットにRDTSを配置し、同一のデータ情報を中継するRDTSが複数ある場合には、前記RDTSを隣接させて配置させることもできる。
また、データ情報中継タイムスロットを同一フレーム内で分散させて配置させることもできる。次にステップS1402に進む。
ステップS1402において、親局はフレームタイマーの初期化を行い、フレーム同期を取り、ステップS1403に進む。
【0118】
ステップS1403において、親局は初期化されたフレームタイマーを参照して、通信するべきフレームの開始タイミングになったか否かを判断する。初期化された時刻から開始タイミングまでの時間はシステムが任意の時間を設定することができる。ステップS1403において、通信するべきフレームの開始タイミングになった場合(ステップS1403:YES)には、ステップS1404に進み、通信するべきフレームの開始タイミングになっていない場合(ステップS1403:NO)には、ステップS1403を繰り返す。
【0119】
ステップS1404において、親局はスロットタイマーの初期化を行う。これは、タイムスロットと同期を取るために使用される。次に、ステップS1405に進む。
ステップS1405において、親局は1フレーム内のタイムスロットの種別を先頭のタイムスロットから順番に判断する。タイムスロットがBETSである場合にはステップS1406に進み、タイムスロットがMDTSである場合にはステップS1407に進み、タイムスロットがRDTSである場合にはステップS1410に進み、タイムスロットがACTSである場合にはステップS1412に進む。
【0120】
ステップS1406において、親局はBETSを使用したビーコン通信によってフレーム構成情報をブロードキャストする。このビーコン通信によって、子局はフレーム内のMDTSまたはRDTSが当該子局に割り当てられたか否かを判断し、当該MDTSまたはRDTSの位置を把握することができる。すなわち、BETSによって、フレームの割り当て情報および配置情報が子局に送信される。また、ACTSの位置を把握することもできる。
【0121】
ステップS1407において、親局はMDTSが自局用のデータ送信タイムスロットであるか否かを判断する。MDTSが自局用のデータ送信タイムスロットではない場合(ステップS1407:NO)にはステップS1408に進み、自局用のデータ送信タイムスロットである場合(ステップS1407:YES)にはステップS1409に進む。
【0122】
ステップS1408において、当該MDTSは親局用のタイムスロットではないので、親局は、当該MDTSを使用して子局が送信したデータ情報と、データ情報の宛先となった他の子局からの応答信号を受信(傍受)する。親局は、応答信号の種類と、応答信号が実際に受信されたか否かに基づいて、子局間の直接通信においてデータ情報が正常に送受信されたか否かを判断することができる。子局間の直接通信においてデータ情報が正常に送受信されなかった場合には、親局の中継フラグをセットする(例えば中継フラグを「1」に設定する)。
【0123】
ステップS1409において、当該MDTSは親局用のタイムスロットであるので、親局は、当該MDTSを使用して親局のデータ情報を他局に送信する。他局で正常にデータ情報が受信されない場合には、再送フラグをセットする(例えば再送フラグを「1」に設定する)。
ステップS1410において、親局は中継フラグを読み出し、中継フラグが設定されている場合(例えば中継フラグが「1」の場合)(ステップS1410:YES)には、ステップS1411に進み、中継フラグが設定されていない場合(例えば中継フラグが「0」の場合)(ステップS1410:NO)には、ステップS1414に進む。
【0124】
ステップS1411において、中継フラグが設定されているので、親局は、データ情報を中継送信する。すなわち、中継フラグが設定されたMDTSのデータ情報を、当該MDTSで宛先となった子局に中継送信する。中継送信するRDTSは、中継フラグが設定されたMDTSの直後のタイムスロットである場合と、子局が中継送信したRDTSの後に配置されたRDTSである場合がある。
ステップS1414において、親局は、子局が中継したデータ情報および応答情報を受信(傍受)し、ステップS1413に進む。
ステップS1412において、親局は、ACTSを通じて、子局から割り当て要求を受信する。
【0125】
ステップS1413において、親局は、生成したフレーム構成情報に基づいて、処理を行ったタイムスロットが最終タイムスロットであるか否かを判断する。最終タイムスロットである場合(ステップS1413:YES)には、ステップS1401に進み、最終タイムスロットでない場合(ステップS1413:NO)には、ステップS1404に進む。
【0126】
次に、図15を用いて、親局がRDTSで中継送信されたデータ情報を受信する動作フローについて説明する。
【0127】
ステップS1501において、図3のRDTSに示すように親局はRDTSのRDCを使用して、子局からデータ情報である中継データを受信したか否かを判断する。子局から中継データを受信した場合(ステップS1501:YES)には、ステップS1502に進み、子局から中継データを受信しない場合(ステップS1501:NO)には、ステップS1509に進む。この中継データは、宛先となった局で正常に受信されなかったデータ情報である。
【0128】
ステップS1502において、親局は受信した中継データが自局宛か否かを判断する。自局宛の中継データを受信した場合(ステップS1502:YES)には、ステップS1503に進み、自局宛の中継データではない場合(ステップS1502:NO)には、ステップS1504に進む。自局宛のデータであるか否かは中継データのヘッダー情報等に含まれる識別子を参照することによって行うことができる。
【0129】
ステップS1503において、親局は中継データを正常に受信したか否かを示す応答信号を、同一のRDTS内のAKCを使用して、中継データを送信した他局に送信する。すなわち、親局が中継データを正常に受信した場合には肯定応答信号(ACK)を送信し、親局が中継データを正常に受信しなかった場合には否定応答信号(NACK)を送信し、ステップS1509に進む。
【0130】
ステップS1504において、親局はステップS1501で受信した中継データが、自局から送信したデータ情報である場合(ステップS1504:YES)には、ステップS1505に進み、自局から送信したデータ情報ではない場合(ステップS1504:NO)には、ステップS1507に進む。
【0131】
ステップS1505において、親局は、中継データの宛先となった子局が中継データを正常に受信したか否かを、RDTSのRAKCを使用して中継データの宛先となった子局から中継送信される肯定応答信号(ACK)または否定応答信号(NACK)を受信して判断する。中継データの宛先となった子局が中継データを正常に受信した場合(ステップS1505:YES)にはステップS1506に進み、中継データの宛先となった子局が中継データを正常に受信しなかった場合(ステップS1505:NO)にはステップS1509に進む。
【0132】
ステップS1506において、親局は、再送フラグをクリアする。これは、親局から送信されたデータ情報が宛先の子局で正常に受信されなかった(この場合に再送フラグ設定される)が、他の子局が中継したRDTSで当該データ情報が当該宛先の子局で正常に受信されたからである。次にステップS1509に進む。
【0133】
ステップS1507において、親局は、他の子局が送信した中継データの宛先の子局が当該中継データを正常に受信したか否かを、RDTSのAKCを使用して宛先の子局から送信される肯定応答信号または否定応答信号を傍受して判断する。他の子局が送信した中継データの宛先の子局が当該中継データを正常に受信した場合(ステップS1507:YES)には、ステップS1509に進み、当該中継データを正常に受信していない場合(ステップS1507:NO)には、ステップS1508に進む。
【0134】
ステップS1508において、親局は、中継フラグをセットし、ステップS1509に進む。例えば、親局は親局にある中継フラグを「1」に設定する。中継フラグがセットされている場合には、中継データが宛先の子局で正常に受信されていないことを示す。この場合には、同一フレームの後続するRDTSで傍受したデータ情報の再中継を親局が行う。
【0135】
ステップS1509において、親局はRDTSのスロットタイマーがタイムアウトしたか否かを判断する。スロットタイマーがタイムアウトした場合(ステップS1509:YES)には処理を終了し、スロットタイマーがタイムアウトしていない場合(ステップS1509:NO)には、ステップS1509の判定を繰り返す。
【0136】
次に図16図17を参照して、発明の実施例2による子局の動作フローチャートを示す。なお、子局のACTS割り当て要求信号送信動作フロー(図10)、子局のMDTSデータ送信動作フロー(図11)、子局のMDTSデータ受信動作フロー(図12)は実施例1と重複するので、ここでの説明は省略する。子局における図16図17の処理手順は、子局が有するマイクロコンピュータ(図示せず)のROMに格納されたプログラムにしたがいCPUが実行する。
【0137】
なお、以下の処理手順の一部または全部は、例えば、DSPやASIC等のハードウェアにより実行させることもできる。但し本実施例では、ROMのプログラムにしたがってCPUが実行する形態とした場合について説明する。
【0138】
図16は、実施例2における子局の動作の概要の一例を示すフローチャートである。
まず、図16のステップS1601において、子局は親局から送信されたビーコン信号を受信したか否かを判断する。ビーコン信号を受信した場合(ステップS1601:YES)には、ステップS1602に進み、ビーコン信号を受信しない場合(ステップS1601:NO)には、ステップS1601を繰り返す。
【0139】
ステップS1602において、子局はスロットタイマーの初期化を行い、子局は親局が送信するBETS内のフレーム構成情報チャネル(BEC)で、ビーコン信号に含まれるフレーム構成情報を受信し、通信フレームの構成及び通信タイミングを認識するとともに、自局に割り当てられたタイムスロットを認識する。すなわち、ビーコン信号のフレーム構成情報にはフレーム内のタイムスロットの配置情報および割り当て情報が含まれるので、子局は自局に割り当てられたタイムスロットがあるか否か、並びに、当該タイムスロットの位置および種類を認識することができる。また、他局に割り当てられたタイムスロットの位置および種類も認識することができるので、他局のデータ情報および応答情報を受信(傍受)することができる。ここでは、MDTSの直後のスロットに親局に割り当てられたRDTSが配置され、その後に少なくとも1つのRDTSが配置される。次に、ステップS1603に進む。
【0140】
ステップS1603において、子局はBETSのスロットタイマーがタイムアウトしたか否かを判断する。スロットタイマーがタイムアウトした場合(ステップS1603:YES)には、ステップS1604に進み、スロットタイマーがタイムアウトしない場合(ステップS1603:NO)には、ステップS1603を繰り返す。
【0141】
ステップS1604において、子局はスロットタイマーの初期化を行い、各タイムスロットと同期させて各タイムスロットで送信される情報を受信し、または、各タイムスロットで情報を送信する。次にステップS1605に進む。
【0142】
ステップS1605において、子局は受信されたタイムスロットの種別を先頭のタイムスロットから順番に判断する。タイムスロットがMDTSである場合にはステップS1606に進み、タイムスロットがRDTSである場合にはステップS1609に進み、タイムスロットがACTSである場合にはステップS1612に進む。各タイムスロットの送受信タイミングおよび割り当てられた局はビーコン信号に含まれるフレーム構成情報で判断する。
【0143】
ステップS1606において、子局はMDTSが自局用のデータ送信タイムスロットであるか否かを判断する。MDTSが自局用のデータ送信タイムスロットではない場合(ステップS1606:NO)にはステップS1607に進み、自局用のデータ送信タイムスロットである場合(ステップS1606:YES)にはステップS1608に進む。
【0144】
ステップS1607において、当該MDTSは自局用の送信タイムスロットではないので、子局は、当該MDTSを使用して他局が送信したデータ情報を受信(傍受)して記憶するとともに宛先となったその他の他局からの応答信号を受信(傍受)し、ステップS1613に進む。また、子局は傍受したデータ情報を送信した他局の識別情報を所定期間、記憶することができる。
【0145】
ステップS1608において、当該MDTSは自局用の送信タイムスロットであるので、子局は、当該MDTSを使用して自局のデータ情報を他局に送信する。他局で正常にデータ情報が受信されない場合には、再送フラグをセットする(例えば再送フラグを「1」に設定する)。次に、ステップS1613に進む。
【0146】
ステップS1609において、子局は、中継フラグがセットされているか否かを判断する。中継フラグがセットされている場合(ステップS1609:YES)にはステップS1611に進み、中継フラグがセットされていない場合(ステップS1609:NO)にはステップS1610に進む。中継フラグがセットされている場合には、同一フレームの先行するRDTSでの親局によるデータ情報の中継送信が失敗していることを意味する(例えば、図21のフレーム2の親局から子局3へのRDTS)。なお、同一フレームにおいて、親局によるデータ情報の中継送信が失敗した後の子局でもさらにデータ情報の中継送信が失敗していることを意味する場合もある。
【0147】
ステップS1610において、子局は親局または他の子局が中継送信したデータ情報、および、中継送信の宛先の局からの応答信号を受信(傍受)し、ステップS1613に進む。また、子局は傍受したデータ情報を送信した他局の識別情報を所定期間、記憶することができる。
【0148】
ステップS1611において、子局は、親局または他の子局が中継したデータ情報を、親局または他の子局が中継したデータ情報の宛先の子局に送信する。すなわち、先行するRDTSでの他局によるデータ情報の中継送信が失敗しているので、自局でデータ情報の中継送信を行い、ステップS1613に進む。
なお、子局は、自局を宛先としないデータ情報を送信した他局の識別情報を傍受し、あらかじめ定められた時間、前記他局の識別情報を記憶しておき、前記宛先となった無線端末局の識別情報と、前記他局の識別情報とを比較し、一致する場合にデータ情報の中継送信を行い、一致しない場合にはデータ情報の中継送信を行わないこともできる。
【0149】
ステップS1612において、子局は割当て要求信号の送信処理を行い、ステップS1613に進む。
【0150】
ステップS1613において、子局は、ビーコンによって送信されたフレーム構成情報に基づいて、処理を行ったタイムスロットが最終タイムスロットであるか否かを判断する。最終タイムスロットである場合(ステップS1613:YES)には、ステップS1601に進み、最終タイムスロットでない場合(ステップS1613:NO)には、ステップS1604に進む。
【0151】
次に、図17を用いて、子局がRDTSで親局または他の子局から中継送信された中継データを受信する動作フローについて説明する。
【0152】
ステップS1701において、図3のRDTSに示すように子局はRDTSのRDCを使用して、親局または他の子局から中継データを受信したか否かを判断する。親局または他の子局から中継データを受信した場合(ステップS1701:YES)には、ステップS1702に進み、親局または他の子局から中継データを受信しない場合(ステップS1701:NO)には、ステップS1710に進む。また、子局は受信したデータ情報が自局宛ではない場合に、データ情報を送信した他局の識別情報を所定期間、記憶することができる。所定期間は、システムによってあらかじめ定められ、任意の期間とすることができる。
【0153】
ステップS1702において、子局は受信した中継データが自局宛か否かを判断する。自局宛の中継データを受信した場合(ステップS1702:YES)には、ステップS1703に進み、自局宛のデータではない場合(ステップS1702:NO)には、ステップS1704に進む。自局宛のデータであるか否かは中継データのヘッダー情報等に含まれる識別子を参照することによって判断することができる。
【0154】
ステップS1703において、子局は中継データを正常に受信したか否かを示す応答信号を、同一のRDTS内のAKCを使用して、中継データを送信した他局に送信する。すなわち、子局がデータを正常に受信した場合には肯定応答信号(ACK)を送信し、子局がデータを正常に受信しなかった場合には否定応答信号(NACK)を送信する。
【0155】
ステップS1704において、ステップS1701で受信した中継データが、先行するMDTSで自局である子局が送信したデータ情報であるか否かを判断する。中継データが自局で送信したデータ情報である場合(ステップS1704:YES)には、ステップS1705に進み、中継データが自局で送信したデータ情報ではない場合(ステップS1704:NO)には、ステップS1707に進む。
【0156】
ステップS1705において、子局は、中継データの宛先となった他の子局が中継データを正常に受信したか否かを、同一のRDTSのRAKCを使用して送信される肯定応信号によって判断する。ここで、他の子局は肯定応答信号の代わりに、否定応答信号を送信してもよい。子局が肯定応答信号を受信した場合(ステップS1705:YES)には、ステップS1706に進み、子局が肯定応答信号を受信しない場合(ステップS1705:NO)には、ステップS1710に進む。
【0157】
ステップS1706において、子局は、図11のステップS1103で設定した再送フラグをクリアする。これは、当該RDTSより前のMDTS(図21のフレーム2の場合では子局1が割り当てられている)およびRDTS(図21のフレーム2の場合では親局が割り当てられているが、その後の子局に割り当てられたRDTSが含まれる場合もある)で宛先となった子局(図21の場合には子局3)で正常に受信されなかったデータ情報が、当該RDTS(図21のフレーム2の場合では子局2が割り当てられている)で正常に受信されたことを示すためである。再送フラグがクリアされることで、子局(図21の場合には子局1)は当該データ情報を次のフレーム以降で再送する必要がなくなる。
【0158】
ステップS1707において、子局は、他局が送信した中継データの宛先となった子局が中継データを正常に受信したか否かを、RDTSのAKCを使用して送信される肯定応答信号によって判断する。すなわち、RDTSのAKCを使用して送信される肯定応答信号を受信(傍受)する。子局が、肯定応答信号を受信した場合(ステップS1707:YES)にはステップS1710に進み、肯定応答信号を受信しない場合(ステップS1707:NO)には、中継送信が必要であるか否かを判断するためにステップS1708に進む。
【0159】
ステップS1708において、子局は、受信された中継データが、同一フレーム内の先行するRDTSで親局から送信されたデータ情報であるか否かを判断する。受信された中継データが、上記RDTSで親局から送信されたデータ情報である場合(ステップS1708:YES)にはステップS1709に進み、受信された中継データが、上記RDTSで親局から送信されたデータ情報ではない場合(ステップS1708:NO)にはステップS1710に進む。
なお、上記RDTSで親局から送信されたデータ情報ではない場合であっても、同一フレームの先行するRDTSですでに親局からの中継送信が失敗し、その後のRDTSでも他局からの中継送信が失敗している場合には、後続のRDTSで中継送信を行う子局が中継フラグを設定する場合もある。
【0160】
ステップS1709において、子局は中継フラグをセットし、ステップS1710に進む。すなわち、中継データが、中継データの宛先である子局で正常に受信されなかった場合に中継フラグがセットされ(例えば中継フラグを「1」にセットする)、子局が後続するRDTSで中継送信を行う(例えば、図21のフレーム2における子局2が2番目のRDTSで中継送信を行う)。
ステップS1710において、子局はRDTSのスロットタイマーがタイムアウトしたか否かを判断する。スロットタイマーがタイムアウトした場合(ステップS1710:YES)には、処理を終了し、スロットタイマーがタイムアウトしていない場合(ステップS1710:NO)には、ステップS1710を繰り返す。
【0161】
次に、図18を用いて、子局によるRDTSにおける中継データの送信動作のフローについて説明する。
【0162】
ステップS1801において、子局は中継フラグがセットされている場合にデータ情報の中継送信を行う。すなわち、子局は子局で記憶されている中継フラグがセットされている(例えば「1」になっている)ことを確認し、RDTSに先行する中継フラグがセットされたRDTSで送信されたデータ情報を、子局から中継送信する。再送する宛先は当該RDTSで宛先となっていた子局であり、当該RDTSで送信されたデータ情報を正常に受信できなかった子局である。ここでの中継フラグがセットされた当該RDTSに割り当てられた局は、図17のステップS1708における親局である場合と、親局が中継送信した以降のRDTSで中継送信が失敗した子局である場合がある。
なお、子局は、自局を宛先としないデータ情報を送信した他局の識別情報を傍受し、あらかじめ定められた時間、前記他局の識別情報を記憶しておき、前記宛先となった無線端末局の識別情報と、前記他局の識別情報とを比較し、一致する場合にデータ情報の中継送信を行い、一致しない場合にはデータ情報の中継送信を行わないことができる。
【0163】
ステップS1802において、子局は、データ情報を送信した他の子局から応答信号を受信したか否かを判断する。図3に示すように、同一のRDTS内のAKCで、他の子局がデータ情報を正常に受信したことを示す肯定応答信号を受信した場合(ステップS1802:YES)には、ステップS1803に進み、子局がデータ情報を正常に受信したことを示す肯定応答信号を受信しない場合(ステップS1802:NO)には、ステップS1804に進む。
【0164】
ステップS1803において、子局は、図3に示すように、同一のRDTS内のRAKCを使用して、中継送信したデータ情報を受信した子局からの肯定応答信号を、当該データ情報を先のMDTSで送信した子局に中継送信する。これによって、当該データ情報を先のMDTSで送信した子局は、次のフレームで当該データ情報を再送する必要がなくなったことを認識する。
【0165】
ステップS1804において、子局は、中継フラグをクリアする。例えば、子局は子局で記憶されている中継フラグを「0」に設定する。そして、当該データ情報を破棄する。すなわち、同一の子局において中継送信の再送信は行わない。
【0166】
ステップS1805において、子局はRDTSのスロットタイマーがタイムアウトしたか否かを判断する。スロットタイマーがタイムアウトした場合(ステップS1805:YES)には、処理を終了し、スロットタイマーがタイムアウトしていない場合(ステップS1805:NO)には、ステップS1805を繰り返す。
【0167】
以上の説明からも明らかなように、本実施例2では、図4のステップS1401が請求項3の制御部に対応する処理となっている。
【0168】
また、本実施例2では、図15のステップS1501、ステップS1507、ステップS1508が請求項4の受信部に対応する処理となっている。図14のステップ1411における処理が請求項4の送信部に対応する処理となっている。
【0169】
さらに、本実施例2では、図14のステップS1401が請求項5の制御部に対応する処理となっている。
【0170】
さらに、本実施例2では、図16のステップS1601、ステップS1602、ステップS1607、ステップ1610、図17のステップS1707、ステップS1708、ステップS1709が請求項7の受信部に対応する処理となっている。また、本実施例2では、図16のステップS1611、図18のステップS1801が請求項7の送信部に対応する処理となっている。
【0171】
さらに、本実施例2では、図18のステップS1802、ステップS1803が請求項8の送信部に対応する処理となっている。
【0172】
さらに、本実施例2では、図16のステップS1607、ステップS1610が請求項9の受信部に対応する処理となっている。また、図16のステップS1611、図18のステップS1801が請求項8の送信部に対応する処理となっている。
【0173】
(変形例1)
以上、実施例2について説明したが、親局は以下の動作を引き続き行うこともある。
すなわち、実施例2では、子局は自らが割り当てられたMDTSでデータ情報を送信した後に、所定の時間内に同一のMDTS内のAKCで肯定応答信号を受信できず、または、否定応答信号を受信した場合には、同一フレーム内の後続のRDTSで親局からデータ情報を中継送信し、その中継送信も失敗した場合には、同一フレーム内のさらに後続するRDTSでその他の子局からデータ情報を中継送信することが開示されている。しかし、当該後続のRDTSのAKCにおいても、宛先となった子局から肯定応答信号を受信できず、または、否定応答信号を受信する場合がある。
【0174】
この場合に、RDTSのデータ情報を傍受していた親局が、さらに後続するRDTSを使用して、当該データ情報の中継送信を再度行うことができる。この場合には、1フレームにRDTSが少なくとも3個含まれることになり、MDTSの次のタイムスロットである1番目のRDTSは親局に割り当てられ、2番目のRDTSは子局に割り当てられ、3番目のRDTSは親局に割り当てられている。1番目のRDTSと、2番目のRDTSと3番目のRDTSとは隣接していてもよい。または、1番目のRDTSと2番目のRDTSと間に別のタイムスロットが存在してもよいし、2番目のRDTSと3番目のRDTSと間に別のタイムスロットが存在してもよい。
【0175】
(その他の変形例)
また、RDTSを使用する子局は、過去に傍受したデータ情報の送信元の局を所定期間記憶し、記憶されている局以外を宛先とする局への中継送信を行わないこともできる。
これは、記憶されている局との通信が成功する確率は高いが、過去の所定期間に通信を行っていない局との通信は失敗する確率も高いことが考えられるために、無線資源を有効に活用すること等を考慮したものである。また、例えば、システム間の無線資源の干渉を減らすこともできる。
【0176】
さらに、1フレーム内に配置されるタイムスロットの数やタイムスロットの配置は無線ネットワーク内の局数や適用されるシステムに応じて決定される。また、フレーム構成は、全てのフレームにおいて共通する方式と、必要に応じて動的に変更する方式とすることができる。
【0177】
例えば、実施例1および実施例2では、1つのフレームに1つのMDTSだけを配置させたが、1つのフレームに複数のMDTSを配置させることもできる。例えば、1つのフレームに複数のMDTSをまとめて配置し、まとめて配置された複数のMDTSの後ろに複数のRDTSをまとめて配置することができる。また、1つのフレームに1つのMDTSを配置し、当該MDTSの後ろに当該MDTSに対応するRDTSを少なくとも1つ以上配置し、その後に再び他の局に割り当てられたMDTSを配置し、当該MDTSの後ろに当該MDTSに対応するRDTSを少なくとも1つ以上配置することもできる。
さらに、上述した内容と重複する部分があるが、親局は子局の所定時間内の通信成功率を管理し、通信成功率が所定の閾値を下回る子局に対してMDTSの割当を行う場合、MDTSの後方に1個以上のRDTSを配置する。また、親局はMDTSにおける子局の通信を傍受し、宛先からの肯定応答信号が受信されないか否定応答信号が受信され、さらに当該子局からの割当要求を受信し次フレームで当該子局に対してMDTSの割当を行う場合、MDTSの後方に1個以上のRDTSを配置することができる。
【0178】
さらに、RDTSを割り当てられる子局は、通信環境が良好な場所にあらかじめ配置される子局であってもよい。また、親局は子局毎に所定時間内の通信状況を管理し、中継の宛先の局に対する通信品質が良い子局を、中継送信を行う子局としてRDTSに割り当てを行うこともできる。所定時間はシステムが任意の期間を設定することができる。
【0179】
以上、さまざまな実施例を説明したが、それらの実施例の一部または全部を組み合わせて新たな実施例とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0180】
本発明は、TDMA(Time Division Multiple Access)方式の無線通信によってデータ情報を中継して伝送する場合に用いて、極めて有用である。
【符号の説明】
【0181】
1・・・子局1
2・・・子局2
3・・・子局3
4・・・親局
5・・・障害物
図1
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