(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】エンコーダ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20220531BHJP
G01D 5/244 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
G01D5/245 110B
G01D5/245 H
G01D5/245 R
G01D5/245 110L
G01D5/245 110M
G01D5/244 H
(21)【出願番号】P 2018080640
(22)【出願日】2018-04-19
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 豊
(72)【発明者】
【氏名】奥村 宏克
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/153839(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/062778(WO,A1)
【文献】特開2007-271443(JP,A)
【文献】国際公開第2008/136054(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0007589(US,A1)
【文献】特開2012-118000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00-7/34
G01D 5/00-5/252
5/39-5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向にN極とS極とが複数交互に着磁された回転磁石と、
前記回転磁石の位置を検出する第1感磁素子と、前記第1感磁素子の出力に対して電気角で90°の位相差を有する位置に配置され前記回転磁石の位置を検出する第2感磁素子と、を有する複数の感磁素子センサ部と、
を備え、
前記感磁素子センサ部として、前記回転磁石に対して所定の誤差範囲を許容して
前記感磁素子センサ部のうちの第1等間隔感磁素子センサ部と第2等間隔感磁素子センサ部とを前記回転磁石の回転方向において等間隔に配置される等間隔感磁素子センサ部を有し、
前記所定の誤差範囲は、等間隔となる位置から磁気周期で1周期以内の範囲であって、
前記第1等間隔感磁素子センサ部の前記第1感磁素子の出力と
前記第2等間隔感磁素子センサ部の前記第1感磁素子の出力、並びに、前記第1等間隔感磁素子センサ部の前記第2感磁素子の出力と前記
第2等間隔感磁素子センサ部の前記第2感磁素子の出力
が、電気角で180°の偶数倍の位相差を有する位置関係を満たすことが可能な範囲であり、
前記第1等間隔感磁素子センサ部のプラス出力端子と前記第2等間隔感磁素子センサ部のプラス出力端子とが接続され、前記第1等間隔感磁素子センサ部のマイナス出力端子と前記第2等間隔感磁素子センサ部のマイナス出力端子とが接続され
、
前記感磁素子センサ部として、前記等間隔感磁素子センサ部に加えて、前記等間隔感磁素子センサ部の少なくとも1つに対して機械角で30°以下に配置される近接感磁素子センサ部が設けられ、
前記等間隔感磁素子センサ部と前記近接感磁素子センサ部との組を3つ以上有することを特徴とするエンコーダ。
【請求項2】
周方向にN極とS極とが複数交互に着磁された回転磁石と、
前記回転磁石の位置を検出する第1感磁素子と、前記第1感磁素子の出力に対して電気角で90°の位相差を有する位置に配置され前記回転磁石の位置を検出する第2感磁素子と、を有する複数の感磁素子センサ部と、
を備え、
前記感磁素子センサ部として、前記回転磁石に対して所定の誤差範囲を許容して
前記感磁素子センサ部のうちの第1等間隔感磁素子センサ部と第2等間隔感磁素子センサ部とを前記回転磁石の回転方向において等間隔に配置される等間隔感磁素子センサ部を有し、
前記所定の誤差範囲は、等間隔となる位置から磁気周期で1周期以内の範囲であって、
前記第1等間隔感磁素子センサ部の前記第1感磁素子の出力と
前記第2等間隔感磁素子センサ部の前記第1感磁素子の出力、並びに、前記第1等間隔感磁素子センサ部の前記第2感磁素子の出力と前記
第2等間隔感磁素子センサ部の前記第2感磁素子の出力が、電気角で180°の奇数倍の位相差を有する位置関係を満たすことが可能な範囲であり、
前記第1等間隔感磁素子センサ部のプラス出力端子と前記第2等間隔感磁素子センサ部のマイナス出力端子とが接続され、前記第1等間隔感磁素子センサ部のマイナス出力端子と前記第2等間隔感磁素子センサ部のプラス出力端子とが接続され
、
前記感磁素子センサ部として、前記等間隔感磁素子センサ部に加えて、前記等間隔感磁素子センサ部の少なくとも1つに対して機械角で30°以下に配置される近接感磁素子センサ部が設けられ、
前記等間隔感磁素子センサ部と前記近接感磁素子センサ部との組を3つ以上有することを特徴とするエンコーダ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエンコーダにおいて、
前記感磁素子センサ部は、前記第1感磁素子および前記第2感磁素子を1つのパッケージ内に有していることを特徴とするエンコーダ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のエンコーダにおいて、
前記第1感磁素子および前記第2感磁素子は、ホール素子であることを特徴とするエンコーダ。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載のエンコーダにおいて、
前記第1感磁素子および前記第2感磁素子は、磁気抵抗素子であることを特徴とするエンコーダ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1に記載のエンコーダにおいて、
前記所定の誤差範囲を許容する機械角で180°の配置で、2つの等間隔感磁素子センサ部を備えることを特徴とするエンコーダ。
【請求項7】
請求項6に記載のエンコーダにおいて、
前記2つの等間隔感磁素子センサ部を2組以上備えることを特徴とするエンコーダ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のエンコーダにおいて、
前記回転磁石は、周方向にN極とS極とが複数交互に着磁された第1回転磁石であって、
前記第1回転磁石と共に回転可能であって周方向にN極とS極とが着磁された第2回転磁石と、前記第2回転磁石の位置を検出する第2回転磁石用感磁素子と、を備えることを特徴とするエンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々なエンコーダが使用されている。このうち、回転磁石と感磁素子を用いる磁気式のロータリエンコーダが多く使用されている。
例えば、特許文献1には、電気角で90°の位相差で磁気スケール(回転磁石)の移動検出を行うことが可能なロータリエンコーダが開示されている。
また、例えば、特許文献2および特許文献3には、永久磁石(回転磁石)と、機械角で90°おきに配置されたホールセンサ(感磁素子)と、これらホールセンサに対して機械角で60°ずつずらした位置に配置されたホールセンサと、を備える磁気式のエンコーダ(ロータリエンコーダ)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-118000号公報
【文献】WO2007/132603号公報
【文献】WO2009/84346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で開示されるように、電気角で90°の位相差で磁気スケールの移動検出を行うことで、高精度なエンコーダとすることができる。
また、特許文献2および特許文献3で開示されるように、複数の位置に感磁素子を配置することでも高精度なエンコーダとすることができる。
しかしながら、回転磁石を有する磁気式のエンコーダ(ロータリエンコーダ)においては、回転磁石が回転することに伴って着磁位置による着磁強度の周期的な変動が生じる場合があり、磁束変動が生じる場合ある。そして、該磁束変動の影響を受け、エンコーダの性能が低下する場合があった。そして、例えば、電気角で90°の位相差で検出可能な位置に感磁素子を設けたユニットを、単に複数設けただけでは、磁束変動の影響を抑制できない。すなわち、該ユニット(感磁素子)の位置や感磁素子同士の接続の仕方などによっては、磁束変動の影響を抑制できない場合がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、高精度、且つ、磁束変動の影響を抑制可能なエンコーダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係るエンコーダは、周方向にN極とS極とが複数交互に着磁された回転磁石と、前記回転磁石の位置を検出する第1感磁素子と、前記第1感磁素子の出力に対して電気角で90°の位相差を有する位置に配置され前記回転磁石の位置を検出する第2感磁素子と、を有する複数の感磁素子センサ部と、を備え、前記感磁素子センサ部として、前記回転磁石に対して所定の誤差範囲を許容して等間隔に配置される等間隔感磁素子センサ部を有し、前記所定の誤差範囲は、等間隔となる位置から磁気周期で1周期以内の範囲であって、前記等間隔感磁素子センサ部のうちの第1等間隔感磁素子センサ部の前記第1感磁素子の出力と前記等間隔感磁素子センサ部のうちの第2等間隔感磁素子センサ部の前記第1感磁素子の出力、並びに、前記第1等間隔感磁素子センサ部の前記第2感磁素子の出力と前記等間隔第2感磁素子センサ部の前記第2感磁素子の出力が、電気角で180°の偶数倍の位相差を有する位置関係を満たすことが可能な範囲であり、前記第1等間隔感磁素子センサ部のプラス出力端子と前記第2等間隔感磁素子センサ部のプラス出力端子とが接続され、前記第1等間隔感磁素子センサ部のマイナス出力端子と前記第2等間隔感磁素子センサ部のマイナス出力端子とが接続されていることを特徴とする。
【0007】
本態様によれば、電気角で90°の位相差で検出可能な位置に感磁素子を設けた感磁素子センサ部を複数有するので、高精度なエンコーダとすることができる。また、等間隔となる位置から磁気周期で1周期以内の範囲であって、第1等間隔感磁素子センサ部同士の出力および第2等間隔感磁素子センサ部同士の出力を電気角で180°の偶数倍の位相差を有する位置関係を満たすことが可能な範囲に配置し、且つ、第1等間隔感磁素子センサ部のプラス出力端子と第2等間隔感磁素子センサ部のプラス出力端子とを接続し第1等間隔感磁素子センサ部のマイナス出力端子と第2等間隔感磁素子センサ部のマイナス出力端子とを接続する。すなわち、磁気周期で1周期分位相がずれた位置であって機械的に離れた位置に配置される第1等間隔感磁素子センサ部および第2等間隔感磁素子センサ部の出力を平均化することで、磁束変動の影響を抑制することができる。
【0008】
本発明の第2の様態に係るエンコーダは、周方向にN極とS極とが複数交互に着磁された回転磁石と、前記回転磁石の位置を検出する第1感磁素子と、前記第1感磁素子の出力に対して電気角で90°の位相差を有する位置に配置され前記回転磁石の位置を検出する第2感磁素子と、を有する複数の感磁素子センサ部と、を備え、前記感磁素子センサ部として、前記回転磁石に対して所定の誤差範囲を許容して等間隔に配置される等間隔感磁素子センサ部を有し、前記所定の誤差範囲は、等間隔となる位置から磁気周期で1周期以内の範囲であって、前記等間隔感磁素子センサ部のうちの第1等間隔感磁素子センサ部の前記第1感磁素子の出力と前記等間隔感磁素子センサ部のうちの第2等間隔感磁素子センサ部の前記第1感磁素子の出力、並びに、前記第1等間隔感磁素子センサ部の前記第2感磁素子の出力と前記等間隔第2感磁素子センサ部の前記第2感磁素子の出力が、電気角で180°の奇数倍の位相差を有する位置関係を満たすことが可能な範囲であり、前記第1等間隔感磁素子センサ部のプラス出力端子と前記第2等間隔感磁素子センサ部のマイナス出力端子とが接続され、前記第1等間隔感磁素子センサ部のマイナス出力端子と前記第2等間隔感磁素子センサ部のプラス出力端子とが接続されていることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、電気角で90°の位相差で検出可能な位置に感磁素子を設けた感磁素子センサ部を複数有するので、高精度なエンコーダとすることができる。また、等間隔となる位置から磁気周期で1周期以内の範囲であって、第1等間隔感磁素子センサ部同士の出力および第2等間隔感磁素子センサ部同士の出力を電気角で180°の奇数倍の位相差を有する位置関係を満たすことが可能な範囲に配置し、且つ、第1等間隔感磁素子センサ部のプラス出力端子と第2等間隔感磁素子センサ部のマイナス出力端子とを接続し第1等間隔感磁素子センサ部のプラス出力端子と第2等間隔感磁素子センサ部のマイナス出力端子とを接続する。すなわち、磁気周期で1/2周期分位相がずれた位置であって機械的に離れた位置に配置される第1等間隔感磁素子センサ部および第2等間隔感磁素子センサ部の出力の一方を反転させて平均化することで、磁束変動の影響を抑制することができる。
【0010】
本発明の第3の態様に係るエンコーダは、前記第1または第2の態様において、前記感磁素子センサ部は、前記第1感磁素子および前記第2感磁素子を1つのパッケージ内に有していることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、第1感磁素子および第2感磁素子が1つのパッケージ内に設けられているので、高い精度で第1感磁素子と第2感磁素子とを位置決めでき、特に高精度なエンコーダとすることができる。
【0012】
本発明の第4の態様に係るエンコーダは、前記第1から第3のいずれか1項の態様において、前記第1感磁素子および前記第2感磁素子は、ホール素子であることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、第1感磁素子および第2感磁素子はホール素子であり、単独で磁界の方向(N極とS極の判別)を検出できるので、安価にエンコーダを形成することができる。
【0014】
本発明の第5の態様に係るエンコーダは、前記第1から第3のいずれか1つの態様において、前記第1感磁素子および前記第2感磁素子は、磁気抵抗素子であることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、磁気抵抗素子を用いてエンコーダを形成することができるので、対向する磁石の回転磁界を検出する為、ホール素子のように磁束の強弱を検出する場合と比較すると、着磁バラツキや回転部の振れにより磁束強度が変動しても安定して回転位置を検出することができる。
【0016】
本発明の第6の態様に係るエンコーダは、前記第1から第5のいずれか1つの態様において、前記所定の誤差範囲を許容する機械角で180°の配置で、2つの等間隔感磁素子センサ部を備えることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、例えば等間隔第1感磁素子センサ部および等間隔第2感磁素子センサ部の2つで等間隔感磁素子センサ構成することで安価にエンコーダを形成することが可能となる。また、2つの等間隔感磁素子センサ部を所定の誤差範囲を許容する機械角で180°の配置とすることで、効果的に磁束変動の影響を抑制することができる。
【0018】
本発明の第7の態様に係るエンコーダは、前記第1から第6のいずれか1つの態様において、前記2つの等間隔感磁素子センサ部を2組以上備えることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、2つの等間隔感磁素子センサ部を2組以上備えることで、特に高精度なエンコーダとすることができる。
【0020】
本発明の第8の態様に係るエンコーダは、前記第1から第7のいずれか1つの態様において、前記回転磁石は、周方向にN極とS極とが複数交互に着磁された第1回転磁石であって、前記第1回転磁石と共に回転可能であって周方向にN極とS極とが着磁された第2回転磁石と、前記第2回転磁石の位置を検出する第2回転磁石用感磁素子と、を備えることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、第2回転磁石と第2回転磁石用感磁素子により、回転磁石(第1回転磁石)の回転量だけでなく絶対位置を検出できる。
【0022】
本発明の第9の態様に係るエンコーダは、前記第1から第8のいずれか1つの態様において、前記感磁素子センサ部として、前記等間隔感磁素子センサ部に加えて、前記等間隔感磁素子センサ部の少なくとも1つに対して機械角で30°以下に配置される近接感磁素子センサ部が設けられていることを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、等間隔感磁素子センサ部と近接する位置に近接感磁素子センサ部を有するので、等間隔感磁素子センサ部の出力と近接感磁素子センサ部の出力とを利用(例えば平均化)することで、外部磁束の影響を抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、高精度、且つ、磁束変動の影響を抑制可能なエンコーダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明を適用したエンコーダ(ロータリエンコーダ)の外観等を示す説明図(斜視図)である。
【
図2】本発明を適用したエンコーダの外観等を示す説明図(平面図)である。
【
図3】本発明を適用したエンコーダの固定体の一部を切り欠いて示す側面図である。
【
図4】本発明を適用したエンコーダの回転磁石および感磁素子センサ部のレイアウトを示す説明図である。
【
図5】本発明を適用したエンコーダにおける検出原理を示す説明図である。
【
図6】本発明を適用したエンコーダにおける検出原理を示す説明図である。
【
図7】本発明を適用したエンコーダにおける角度位置の決定方法の基本的構成を示す説明図である。
【
図8】本発明を適用したエンコーダにおける回転磁石に対する感磁素子センサ部の配置を説明するための概略平面図である。
【
図9】本発明を適用したエンコーダにおける回転磁石に対する感磁素子センサ部の配置を説明するための概略拡大図である。
【
図10】本発明を適用したエンコーダにおける感磁素子センサ部の配線を示す図である。
【
図11】1つの感磁素子センサ部を用いた場合であって、外部磁束なし、磁束変動なし、回転磁石の回転ずれなしの場合のリサージュ円を示す図である。
【
図12】2つの感磁素子センサ部を用いた場合であって、外部磁束なし、磁束変動なし、回転磁石の回転ずれなしの場合のリサージュ円を示す図である。
【
図13】1つの感磁素子センサ部を用いた場合であって、外部磁束なし、磁束変動なし、回転磁石の回転ずれなしの場合の検出角度誤差を示す図である。
【
図14】2つの感磁素子センサ部を用いた場合であって、外部磁束なし、磁束変動なし、回転磁石の回転ずれなしの場合の検出角度誤差を示す図である。
【
図15】1つの感磁素子センサ部を用いた場合であって、外部磁束あり、磁束変動なし、回転磁石の回転ずれなしの場合のリサージュ円を示す図である。
【
図16】2つの感磁素子センサ部を用いた場合であって、外部磁束あり、磁束変動なし、回転磁石の回転ずれなしの場合のリサージュ円を示す図である。
【
図17】1つの感磁素子センサ部を用いた場合であって、外部磁束あり、磁束変動なし、回転磁石の回転ずれなしの場合の検出角度誤差を示す図である。
【
図18】1つの感磁素子センサ部を用いた場合であって、外部磁束あり、磁束変動あり、回転磁石の回転ずれなしの場合のリサージュ円を示す図である。
【
図19】2つの感磁素子センサ部を用いた場合であって、外部磁束あり、磁束変動あり、回転磁石の回転ずれなしの場合のリサージュ円を示す図である。
【
図20】1つの感磁素子センサ部を用いた場合であって、外部磁束あり、磁束変動あり、回転磁石の回転ずれなしの場合の検出角度誤差を示す図である。
【
図21】2つの感磁素子センサ部を用いた場合であって、外部磁束あり、磁束変動あり、回転磁石の回転ずれなしの場合の検出角度誤差を示す図である。
【
図22】4つの感磁素子センサ部を用いた場合であって、外部磁束あり、磁束変動あり、回転磁石の回転ずれありの場合のリサージュ円を示す図である。
【
図23】4つの感磁素子センサ部を用いた場合であって、外部磁束あり、磁束変動あり、回転磁石の回転ずれありの場合の検出角度誤差を示す図である。
【
図24】本発明を適用したエンコーダにおける回転磁石に対する感磁素子センサ部の配置を説明するための概略拡大図である。
【
図25】本発明を適用したエンコーダにおける感磁素子センサ部の配線を示す図である。
【
図26】本発明を適用したエンコーダにおける回転磁石に対する感磁素子センサ部の配置を説明するための概略平面図である。
【
図27】本発明を適用したエンコーダにおける回転磁石に対する感磁素子センサ部の配置を説明するための概略平面図である。
【
図28】本発明を適用したエンコーダにおける回転磁石に対する感磁素子センサ部の配置を説明するための概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明のエンコーダ(ロータリエンコーダ)の一実施例について説明する。
なお、以下の説明では、ロータリエンコーダとして、感磁素子センサ部が磁石および感磁素子(磁気抵抗素子、ホール素子)によって構成された磁気式ロータリエンコーダを中心に説明する。この場合、固定体に磁石を設け、回転体に感磁素子を設けた構成、および固定体に感磁素子を設け、回転体に磁石を設けた構成のいずれの構成を採用してもよいが、以下の説明では、固定体に感磁素子を設け、回転体に回転磁石を設けた構成を中心に説明する。つまり、以下の「回転磁石」には、該回転磁石は回転せず、感磁素子が回転する構成で使用される場合(回転磁石は回転しないが回転磁石と感磁素子とが相対的に回転する場合)も含まれる。また、以下に参照する図面において、回転磁石および感磁素子等の構成について模式的に示してあり、例えば回転磁石における磁極の数や感磁素子からの出力線の本数などについてはその数を減らして示してある場合がある。また、構成を分かり易くするため、一部構成部品を省略(簡略化)して表している場合がある。
【0027】
(全体構成)
図1は、本実施例のエンコーダ1の外観等を示す説明図であり、エンコーダ1を回転軸線方向Lの一方の側(L1側)かつ斜め方向からみた斜視図である。また、
図2は、本実施例のエンコーダ1の外観等を示す説明図であり、回転軸線方向Lの一方の側(L1側)からみた平面図である。そして、
図3は、本実施例のエンコーダ1の固定体10の一部を切り欠いて示す側面図である。
【0028】
図1から
図3に示すエンコーダ1は、固定体10に対する回転体2の軸線周り(回転軸線周り)の回転を磁気的に検出する装置であり、固定体10は、モータ装置のフレーム等に固定され、回転体2は、モータ装置の回転出力軸等に連結された状態で使用される。固定体10は、センサ基板15と、センサ基板15を支持する複数の支持部材11とを備えており、本実施例において、支持部材11は、円形の開口部122が形成された底板部121を備えたベース体12と、ベース体12に固定されたセンサ支持板13とからなる。なお、
図1から
図3では内部構成を見やすくするため省略して表されているが、回転軸線方向Lを基準として図中の支持部材11と対向する位置に、該支持部材11と同様の構成の支持部材11が形成されている(一方の支持部材11に後述の感磁素子センサ部61および62が形成され、他方の支持部材11に後述の感磁素子センサ部63および64が形成されている)。そして、各々の支持部材11には、詳細は後述するがホール素子である感磁素子を有する感磁素子センサ部60(感磁素子センサ部61、62、63および64:
図4参照)が設けられている。感磁素子センサ部60は、着磁面31に周方向にN極とS極とが複数交互に着磁された第1回転磁石30によって形成される磁界の方向を検出する感磁素子を備えた感磁素子センサ部である。
【0029】
センサ支持板13は、ベース体12において開口部122の縁部分から回転軸線方向Lの一方の側であるL1側に向けて突出した略円筒状の胴部123にネジ191、192等により固定されている。なお、
図1および
図3では、回転軸線方向LにおけるL1側とは反対側をL2側として表している。センサ支持板13からは、回転軸線方向LのL1側に向けて複数本の端子16が突出している。胴部123において回転軸線方向LのL1側に位置する端面には、突起124や穴125等が形成されており、かかる穴125等を利用して、胴部123にはセンサ基板15がネジ193等により固定されている。その際、センサ基板15は、突起124等により所定位置に位置決めされた状態で精度よく固定される。
【0030】
センサ基板15において、回転軸線方向LのL1側の面にはコネクタ17が設けられている。さらに、センサ基板15には、磁気抵抗素子(MR素子)である感磁素子センサ部40と、ホール素子である感磁素子センサ部50と、が設けられている。感磁素子センサ部40、並びに、感磁素子センサ部50は、着磁面21にN極とS極とが1極ずつ着磁された第2回転磁石20によって形成される磁界の方向を検出する感磁素子である。
【0031】
回転体2は、第1回転磁石30および第2回転磁石20などを有し、胴部123の内側に配置される円筒状の部材であって、その内側にはモータの回転出力軸(図示せず)が嵌合等の方法で連結されている。従って、回転体2は、軸線周りに回転可能である。
【0032】
(回転磁石および感磁素子センサ部のレイアウト)
図4は、本実施例のエンコーダ1の回転磁石および感磁素子センサ部のレイアウトを示す説明図である。なお、
図4において、矢印は第1回転磁石30の回転方向である。また、
図4におけるデータ処理部90は、不図示のメモリに予め格納されているプログラムに基づいて動作するCPU等を備えている。
【0033】
図3に示すように、本実施例のエンコーダ1には、以下に説明する複数の感磁素子センサ部(第1回転磁石30の磁界を検出する4つの感磁素子センサ部60、並びに、第2回転磁石20の磁界を検出する感磁素子センサ部40および2つの感磁素子センサ部50)が設けられている。
【0034】
本実施例のエンコーダ1は、回転体2の側に、第2回転磁石20に対して径方向の外側で離間する位置でN極とS極とが周方向において交互に複数着磁された環状の着磁面31を回転軸線方向LのL1側に向ける第1回転磁石30を有している。本実施例の第1回転磁石30では、N極とS極との対が計32対形成されている。ただし、N極とS極との対の数は32対に限定されない。また、本実施例のエンコーダ1は、固定体10の側に、第1回転磁石30の着磁面31に対して回転軸線方向LのL1側で対向する感磁素子センサ部60(感磁素子センサ部61、感磁素子センサ部62、感磁素子センサ部63および感磁素子センサ部64)を備えている。感磁素子センサ部60(感磁素子センサ部61、感磁素子センサ部62、感磁素子センサ部63および感磁素子センサ部64)の詳細については後述する。
【0035】
本実施例のエンコーダ1は、N極とS極とが周方向において1極ずつ着磁された着磁面21を回転軸線方向LのL1側に向ける第2回転磁石20を有している。また、本実施例のエンコーダ1は、固定体10の側に、第2回転磁石20の着磁面21に対して回転軸線方向LのL1側で対向する感磁素子センサ部40と、第2回転磁石20の着磁面21に対して回転軸線方向LのL1側で対向する感磁素子センサ部50(感磁素子センサ部51および感磁素子センサ部52)と、を備えている。感磁素子センサ部52は、感磁素子センサ部51に対して、回転中心軸線周り(周方向)に機械角で90°ずれた位置に配置されている。
【0036】
第1回転磁石30および第2回転磁石20は、回転体2と一体に回転軸線周りに回転する。第2回転磁石20は円盤状の永久磁石からなる。第1回転磁石30は円筒状であり、第2回転磁石20に対して径方向の外側で離間する位置に配置されている。第1回転磁石30および第2回転磁石20はボンド磁石等からなる。
【0037】
感磁素子センサ部40は、第2回転磁石20に対して、互いに電気角で90°の位相差を有するA相(SIN)の磁気抵抗パターンとB相(COS)の磁気抵抗パターンとを備えた磁気抵抗素子である。かかる感磁素子センサ部40において、A相の磁気抵抗パターンは、180°の位相差をもって回転体2の移動検出を行う+a相(SIN+)の磁気抵抗パターン43および-a相(SIN-)の磁気抵抗パターン41を備えている。B相の磁気抵抗パターンは、180°の位相差をもって回転体2の移動検出を行う+b相(COS+)の磁気抵抗パターン44および-b相(COS-)の磁気抵抗パターン42を備えている。ここで、+a相の磁気抵抗パターン43および-a相の磁気抵抗パターン41は、ブリッジ回路を構成しており、+b相の磁気抵抗パターン44および-b相の磁気抵抗パターン42も、+a相の磁気抵抗パターン43および-a相の磁気抵抗パターン41と同様、ブリッジ回路を構成している。
【0038】
本実施例においては、感磁素子センサ部40、感磁素子センサ部51、感磁素子センサ部52および感磁素子センサ部60(感磁素子センサ部61、感磁素子センサ部62、感磁素子センサ部63および感磁素子センサ部64)はいずれも、センサ基板15の回転軸線方向LのL2側の面に設けられている(
図3参照)。また、センサ基板15には、感磁素子センサ部40に電気的に接続されたアンプ91、感磁素子センサ部50に電気的に接続されたアンプ92、感磁素子センサ部60に電気的に接続されたアンプ93が設けられている。そして、感磁素子センサ部61からアンプ93を介してデータ処理部90まで出力線201が接続され、感磁素子センサ部62からの出力線202が出力線201に接続され、感磁素子センサ部63からの出力線203が出力線201と出力線202との接続点よりもデータ処理部90側で出力線201に接続され、感磁素子センサ部64からの出力線204が出力線203に接続されている。なお、
図4においては、出力線201、出力線202、出力線203および出力線204は、簡略化して表現されている(詳細は
図10参照)。
【0039】
本実施例のエンコーダ1は、上記のようなレイアウトとなっていることで、感磁素子センサ部40および感磁素子センサ部50の検出結果から、第2回転磁石20の大まかな絶対位置(すなわち回転体2の大まかな絶対位置)を検出できる。さらに、感磁素子センサ部60の検出結果から、第1回転磁石30の詳細な回転量(すなわち回転体2の詳細な回転量)を検出できる。そして、感磁素子センサ部40および感磁素子センサ部50の検出結果と、感磁素子センサ部60の検出結果と、に基づいて、回転体2の詳細な絶対位置(角度位置)を検出できる。
【0040】
本実施例のエンコーダ1は、上記のように、感磁素子センサ部60としてホール素子を用いているが、感磁素子センサ部60として磁気抵抗素子(MR素子)を用いてもよい。感磁素子センサ部60として磁気抵抗素子を用いる場合、第1回転磁石30として、本実施例のようにN極とS極とが周方向に1周分交互に複数着磁された環状の着磁面31を有する構成ではなく、N極とS極とが周方向に内側と外側で2周分交互に複数着磁され、該内側と該外側でN極とS極とが互い違い(市松模様:スタッガ)になるように構成された着磁面31を有する構成のものを用いることができる。感磁素子センサ部60として磁気抵抗素子を用いる場合、このような第1回転磁石30を用いることで、周方向の磁界の変化とともに径方向の磁界の変化、すなわち回転磁界を磁気抵抗素子で検出できる。
【0041】
(角度位置の検出原理)
図5は、本実施例のエンコーダ1における検出原理を示す説明図であり、感磁素子センサ部から出力される信号等の説明図である。また、
図6は、本実施例のエンコーダ1における検出原理を示す説明図であり、
図5で表される信号と回転体2の角度位置(電気角)との関係を示す説明図である。そして、
図7は、本実施例のエンコーダ1における角度位置の決定方法の基本的構成を示す説明図である。
【0042】
図4に示すように、本実施例のエンコーダ1において、感磁素子センサ部40、感磁素子センサ部50および感磁素子センサ部60の出力は、アンプ91、アンプ92およびアンプ93を介して、補間処理や各種演算処理を行うCPU等を備えたデータ処理部90に出力される。データ処理部90は、感磁素子センサ部40、感磁素子センサ部50および感磁素子センサ部60からの出力に基づいて、固定体10に対する回転体2の角度位置(絶対位置)を求める。
【0043】
より具体的には、エンコーダ1において、回転体2が1回転すると、第2回転磁石20の着磁面21の磁束は
図5の一番上の正弦波で表されるように変化する。回転体2が1回転すると、第2回転磁石20が1回転するので、感磁素子センサ部40からは、
図5の上から2番目の正弦波で表されるように、正弦波信号sin、cosが2周期分、出力される。従って、データ処理部90において、
図6に示すように、正弦波信号sin、cosからθ=tan
-1(sin/cos)を求めれば、回転体2の角度位置θが分かる。また、本実施例では、第2回転磁石20の中心からみて90°ずれた位置に、共にホール素子である感磁素子センサ部51および感磁素子センサ部52が配置されている。このため、
図5の上から3番目の波形および
図5の一番下の波形からわかるように、現在位置が正弦波信号sin、cosのいずれの区間に位置するかが分かるので、回転体2の絶対角度位置が分かる。
【0044】
また、感磁素子センサ部60の詳細な構成については後述するが、各々の感磁素子センサ部60(感磁素子センサ部61、感磁素子センサ部62、感磁素子センサ部63および感磁素子センサ部64)は、第1感磁素子70(
図8参照)と、該第1感磁素子70と電気角で90°の位相差(第1回転磁石30の位相を基準とした位相差)を有する位置に第2感磁素子79(
図8参照)と、を備えている。そして、本実施例のエンコーダ1では、N極とS極とが周方向において交互に複数着磁された環状の着磁面31を備えた第1回転磁石30が用いられており、かかる第1回転磁石30に対向する各々の感磁素子センサ部60(感磁素子センサ部61、感磁素子センサ部62、感磁素子センサ部63および感磁素子センサ部64)からは、回転体2が第1回転磁石30の磁極の1周期分を回転する度に、正弦波信号sin、cosが出力される。詳細には、第1感磁素子70から正弦波信号cos、第2感磁素子79から正弦波信号sinが出力される。従って、各々の感磁素子センサ部60から出力された正弦波信号sin、cosについても、
図6に示すように、正弦波信号sin、cosからθ=tan
-1(sin/cos)を求めれば、第1回転磁石30の磁極の1周期分に相当する角度内における回転体2の角度位置θが分かる。
【0045】
そこで、本実施例では、1回転1周期の絶対角度データ(
図7の一番上のデータ)と、1回転N周期のインクリメンタル角度データ(
図7の上から2番目のデータ)とに基づいて、回転体2の瞬間時の角度位置を検出する。従って、1回転1周期の絶対角度データの分解能が低い場合でも、高分解能絶対値データ(
図7の一番下のデータ)に示すように、分解能の高い絶対角度データを得ることができる。
【0046】
かかる検出方式を採用するにあたって、1回転1周期の絶対角度データを第1回転磁石30の磁極対の数(N:2以上の正の整数)に内挿分割した第2絶対角度データを作成しておき、瞬間時に感磁素子センサ部40および感磁素子センサ部50からの出力が、第2絶対角度データの周期1、2・・n-1、n、n+1・・Nのいずれの周期に位置するかを検出する。また、瞬間時に感磁素子センサ部60からの出力が、インクリメンタル角度データの周期1、2・・m-1、m、m+1・・N内におけるいずれの位置に相当するかを検出する。そして、瞬間時における感磁素子センサ部40および感磁素子センサ部50における出力が、第2絶対角度データのいずれの周期にあるかをデジタルデータの上位データとし、感磁素子センサ部60からの出力が、インクリメンタル角度データのいずれの位置に相当するかをデジタルデータの下位データとして、瞬間時の回転体2の絶対角度位置を検出する。
【0047】
図4に示すデータ処理部90には、第2絶対角度データおよびインクリメンタル角度データを記憶しておく不図示のメモリが設けられている。さらに、データ処理部90には、瞬間時における感磁素子センサ部40および感磁素子センサ部50からの出力、瞬間時における感磁素子センサ部60からの出力、メモリに記憶されている第2絶対角度データおよびメモリに記憶されているインクリメンタル角度データに基づいて、瞬間時の回転体2の絶対角度位置を決定する不図示の角度位置決定部が設けられている。
【0048】
(第1回転磁石30に対する感磁素子センサ部60の配置)
次に、本実施例のエンコーダ1の感磁素子センサ部60の構成、並びに、第1回転磁石30に対する各々の感磁素子センサ部60の配置について説明する。
ここで、
図8は、本実施例のエンコーダ1における第1回転磁石30に対する感磁素子センサ部60(感磁素子センサ部61、感磁素子センサ部62、感磁素子センサ部63および感磁素子センサ部64)の配置を説明するための概略平面図である。なお、
図8において、矢印は第1回転磁石30の回転方向である。また、
図9は、本実施例のエンコーダ1における第1回転磁石30に対する感磁素子センサ部61、感磁素子センサ部62、感磁素子センサ部63および感磁素子センサ部64の配置を説明するための概略拡大図である。そして、
図10は、本実施例のエンコーダ1における第1回転磁石30に対する感磁素子センサ部61、感磁素子センサ部62、感磁素子センサ部63および感磁素子センサ部64の配線を示す図である。
【0049】
図8および
図9で表されるように、本実施例の感磁素子センサ部61、感磁素子センサ部62、感磁素子センサ部63および感磁素子センサ部64は何れも、2つの感磁素子(第1感磁素子70および第2感磁素子79)を備えている。具体的には、感磁素子センサ部61は第1感磁素子70としての感磁素子71および第2感磁素子79としての感磁素子72、感磁素子センサ部62は第1感磁素子70としての感磁素子73および第2感磁素子79としての感磁素子74、感磁素子センサ部63は第1感磁素子70としての感磁素子75および第2感磁素子79としての感磁素子76、感磁素子センサ部64は第1感磁素子70としての感磁素子77および第2感磁素子79としての感磁素子78、を備えている。本実施例の感磁素子センサ部61、感磁素子センサ部62、感磁素子センサ部63および感磁素子センサ部64は、第1回転磁石30に対する配置が異なるだけで、何れも同じものである。
【0050】
また、
図9で表されるように、感磁素子センサ部61、感磁素子センサ部62、感磁素子センサ部63および感磁素子センサ部64においては何れも、第1感磁素子70と第2感磁素子79とは、第1回転磁石30の着磁面31のN極とS極とに対応する電気角で90°の位相差を有する位置(磁気周期で1/4周期分離れた位置)に配置されている。本実施例の感磁素子センサ部60は、このような構成となっていることで、上記のように、回転体2が第1回転磁石30の磁極の1周期分を回転する度に、正弦波信号sin、cosが出力される。
【0051】
また、
図9で表されるように、感磁素子センサ部62は、感磁素子センサ部61の出力に対して電気角で540°の位相差を有する位置(磁気周期で1周期半離れた位置)に配置されている。そして、
図8および
図9で表されるように、感磁素子センサ部63は感磁素子センサ部61に対して機械角で180°ずれた位置(周方向において機械角で180°ずれた位置)に配置され、感磁素子センサ部64は感磁素子センサ部62に対して機械角で180°ずれた位置に配置されている。
【0052】
すなわち、感磁素子センサ部61の第1感磁素子である感磁素子71からの出力に対して、感磁素子センサ部62の第1感磁素子である感磁素子73からの出力は、正弦波信号cosが磁気周期で1/2周期分ずれる。また、感磁素子センサ部61の第1感磁素子である感磁素子71からの出力に対して、感磁素子センサ部63の第1感磁素子である感磁素子75からの出力は、正弦波信号cosの位相ずれがない。そして、感磁素子センサ部63の第1感磁素子である感磁素子75からの出力に対して、感磁素子センサ部64の第1感磁素子である感磁素子77からの出力は、正弦波信号cosが磁気周期で1/2周期分ずれる。
【0053】
同様に、感磁素子センサ部61の第2感磁素子である感磁素子72からの出力に対して、感磁素子センサ部62の第2感磁素子である感磁素子74からの出力は、正弦波信号sinが磁気周期で1/2周期分ずれる。また、感磁素子センサ部61の第2感磁素子である感磁素子72からの出力に対して、感磁素子センサ部63の第2感磁素子である感磁素子76からの出力は、正弦波信号sinの位相ずれがない。そして、感磁素子センサ部63の第2感磁素子である感磁素子76からの出力に対して、感磁素子センサ部64の第2感磁素子である感磁素子78からの出力は、正弦波信号sinが磁気周期で1/2周期分ずれる。
【0054】
上記のことから、本実施例においては、
図10で表されるような配線となっている。ここで、図中のVCは電圧端子、GNDは接地端子、HE1Pは第1感磁素子70からのプラス出力端子、HE1Nは第1感磁素子70からのマイナス出力端子、HE2Pは第2感磁素子79からのプラス出力端子、HE2Nは第2感磁素子79からのマイナス出力端子、を表している。具体的には、感磁素子センサ部61の出力線201に対して、感磁素子センサ部62の出力線202を、プラスとマイナスを逆にして接続している。そして、感磁素子センサ部63の出力線203に対して、感磁素子センサ部64の出力線204を、プラスとマイナスを逆にして接続している。そして、さらに、出力線202が接続された出力線201に対して、出力線204が接続された出力線203を、プラス同士およびマイナス同士で接続している。
【0055】
(本実施例のエンコーダ1の効果)
次に、本実施例のエンコーダ1の効果について説明する。
ここで、
図11は、1つの感磁素子センサ部61のみを用いた場合であって、外部磁束なし、磁束変動なし、回転磁石の回転ずれなしの場合のリサージュ円を示す図である。また、
図12は、2つの感磁素子センサ部61および62を用いた場合であって、外部磁束なし、磁束変動なし、回転磁石の回転ずれなしの場合のリサージュ円を示す図である。また、
図13は、1つの感磁素子センサ部61のみを用いた場合であって、外部磁束なし、磁束変動なし、回転磁石の回転ずれなしの場合の検出角度誤差を示す図である。また、
図14は、2つの感磁素子センサ部61および62を用いた場合であって、外部磁束なし、磁束変動なし、回転磁石の回転ずれなしの場合の検出角度誤差を示す図である。また、
図15は、1つの感磁素子センサ部61のみを用いた場合であって、外部磁束あり、磁束変動なし、回転磁石の回転ずれなしの場合のリサージュ円を示す図である。また、
図16は、2つの感磁素子センサ部61および62を用いた場合であって、外部磁束あり、磁束変動なし、回転磁石の回転ずれなしの場合のリサージュ円を示す図である。また、
図17は、1つの感磁素子センサ部61のみを用いた場合であって、外部磁束あり、磁束変動なし、回転磁石の回転ずれなしの場合の検出角度誤差を示す図である。また、
図18は、1つの感磁素子センサ部61のみを用いた場合であって、外部磁束あり、磁束変動あり、回転磁石の回転ずれなしの場合のリサージュ円を示す図である。また、
図19は、2つの感磁素子センサ部61および62を用いた場合であって、外部磁束あり、磁束変動あり、回転磁石の回転ずれなしの場合のリサージュ円を示す図である。また、
図20は、1つの感磁素子センサ部61のみを用いた場合であって、外部磁束あり、磁束変動あり、回転磁石の回転ずれなしの場合の検出角度誤差を示す図である。また、
図21は、2つの感磁素子センサ部61および62を用いた場合であって、外部磁束あり、磁束変動あり、回転磁石の回転ずれなしの場合の検出角度誤差を示す図である。また、
図22は、4つの感磁素子センサ部61、62、63および64を用いた場合であって、外部磁束あり、磁束変動あり、回転磁石の回転ずれありの場合のリサージュ円を示す図である。そして、
図23は、4つの感磁素子センサ部61、62、63および64を用いた場合であって、外部磁束あり、磁束変動あり、回転磁石の回転ずれありの場合の検出角度誤差を示す図である。
【0056】
なお、
図11、
図15および
図18は、最高温度(Max)を25℃、-20℃、105℃とした場合、並びに、最低温度(Min)を25℃、-20℃、105℃とした場合における、横軸を感磁素子71の差動電圧(単位はV)とし、縦軸を感磁素子72の差動電圧(単位はV)としたリサージュ円である。また、
図12、
図16および
図19は、最高温度を25℃、-20℃、105℃とした場合、並びに、最低温度を25℃、-20℃、105℃とした場合における、横軸を感磁素子71と感磁素子73とにおける差動電圧(単位はV)とし、縦軸を感磁素子72と感磁素子74とにおける差動電圧(単位はV)としたリサージュ円である。また、
図22は、最高温度を25℃、-20℃、105℃とした場合、並びに、最低温度を25℃、-20℃、105℃とした場合における、横軸を感磁素子71と感磁素子73と感磁素子75と感磁素子77とにおける差動電圧(単位はV)とし、縦軸を感磁素子72と感磁素子74と感磁素子76と感磁素子78とにおける差動電圧(単位はV)としたリサージュ円である。
【0057】
また、
図13、
図14、
図17、
図20、
図21および
図22は、最高温度を25℃、-20℃、105℃とした場合、並びに、最低温度を25℃、-20℃、105℃とした場合における、横軸を第1回転磁石30の角度位置(単位はdeg)とし、縦軸を検出角度誤差(単位はdeg)とした、検出角度誤差を示すグラフである。
【0058】
外部磁束、磁束変動、第1回転磁石30の回転ずれがいずれもない場合、1つの感磁素子センサ部61のみを用いると、
図11で表されるようなリサージュ円となる場合があり、
図13で表されるような角度誤差が検出される場合がある。一方、2つの感磁素子センサ部61および62を用いると、
図12で表されるようなリサージュ円となり、
図14で表されるように、角度誤差がほとんど検出されない。
【0059】
図12で表されるリサージュ円は横軸0Vと縦軸0Vの交点を中心に同心円状のリサージュ円となっており、このため、
図14で表されるように検出角度誤差が0degから360degに亘りほぼ0となっている。一方、
図11で表されるリサージュ円は横軸0Vと縦軸0Vの交点を中心としたリサージュ円となっておらず、
図13で表されるように角度誤差が検出されている。
【0060】
なお、4つの感磁素子センサ部61、62、63および64を用いると、2つの感磁素子センサ部61および62を用いた場合と同様、
図12で表されるリサージュ円と略同様の形状のリサージュ円となり、
図14で表される角度誤差のグラフと同様に角度誤差がほとんど検出されない。
【0061】
外部磁束があり、磁束変動および第1回転磁石30の回転ずれがない場合、1つの感磁素子センサ部61のみを用いると、
図15で表されるようなリサージュ円となり、
図17で表されるような角度誤差が検出される。一方、2つの感磁素子センサ部61および62を用いると、
図16で表されるようなリサージュ円(
図12で表されるリサージュ円と略同様)となり、
図14で表されるように、角度誤差がほとんど検出されない。
【0062】
2つの感磁素子センサ部61および62を用いた場合に角度誤差がほとんど検出されないのは、感磁素子センサ部61および62のように近接した位置で各々磁場を検出し、それらの検出結果を組み合わせる(信号合算する)ことにより、外部磁場による磁場の変化の影響(外部磁場による磁場のオフセット)をキャンセルすることが可能になるためである。特に、本実施例のように、感磁素子センサ部61および62の検出結果を反転させて組み合わせる構成とすることで、外部磁場による磁場の変化の影響を効果的にキャンセルすることができる。
【0063】
なお、4つの感磁素子センサ部61、62、63および64を用いると、2つの感磁素子センサ部61および62を用いた場合と同様、
図16で表されるリサージュ円と略同様の形状のリサージュ円となり、
図14で表される角度誤差のグラフと同様に角度誤差がほとんど検出されない。
【0064】
外部磁束および磁束変動があり、第1回転磁石30の回転ずれがない場合、1つの感磁素子センサ部62のみを用いると、
図18で表されるようなリサージュ円となり、
図20で表されるような角度誤差が検出される。また、2つの感磁素子センサ部61および62を用いると、
図19で表されるようなリサージュ円となり、
図21で表されるような角度誤差が検出される。すなわち、2つの感磁素子センサ部61および62を用いた場合、1つの感磁素子センサ部62のみを用いた場合ほどではないが、角度誤差が検出される。
【0065】
一方、4つの感磁素子センサ部61、62、63および64を用いると、
図16で表されるリサージュ円と略同様の形状のリサージュ円となり、
図14で表される角度誤差のグラフと同様に角度誤差がほとんど検出されない。4つの感磁素子センサ部61、62、63および64を用いた場合に角度誤差がほとんど検出されないのは、感磁素子センサ部61および63、並びに、感磁素子センサ部62および64のように対向する位置(別の表現をすると、第1回転磁石30に対して略等間隔の配置)で各々磁場を検出し、それらの検出結果を組み合わせる(信号合算する)ことにより、磁束変動による磁場の変化の影響(磁束変動による磁場のオフセット)をキャンセルすることが可能になるためである。
【0066】
なお、磁束変動があり、外部磁束および第1回転磁石30の回転ずれがない場合などにおいては、例えば、感磁素子センサ部61および63の2つ、或いは、感磁素子センサ部62および64の2つを用いても、角度誤差を効果的に抑制することができる。このような構成であっても、第1回転磁石30に対して略等間隔の配置で各々磁場を検出し、それらの検出結果を組み合わせる(信号合算する)ことにより、磁束変動による磁場の変化の影響(磁束変動による磁場のオフセット)をキャンセルすることが可能になるためである。
【0067】
外部磁束、磁束変動、第1回転磁石30の回転ずれがいずれもある場合、1つの感磁素子センサ部62のみを用いると、
図18で表されるようなリサージュ円とほぼ同様のリサージュ円となり、
図20で表されるような角度誤差と同様の角度誤差が検出される。また、2つの感磁素子センサ部61および62を用いると、
図19で表されるようなリサージュ円とほぼ同様のリサージュ円となり、
図21で表されるような角度誤差と同様の角度誤差が検出される。また、4つの感磁素子センサ部61、62、63および64を用いると、
図22で表されるようなリサージュ円となり、
図23で表されるような角度誤差が検出される。
図23で表される角度誤差のグラフにおいては、該角度誤差が正弦波の形状をしている。
【0068】
角度誤差が正弦波の形状をしている場合、高精度誤差検出装置(例えば光学的に角度誤差を検出可能な光学式エンコーダ)などを利用して、該角度誤差を簡単に補正することができる。以下に、該角度誤差の補正方法の一例として、補正テーブルを作成することにより該角度誤差を補正する方法について説明する。ただし、このような補正方法に限定されない。
【0069】
該角度誤差の補正方法は、感磁素子の信号から第1回転磁石30の角度位置を検出するエンコーダ1の誤差を補正する補正テーブルを作成する補正テーブル作成装置(本実施例ではデータ処理部90)により実行される方法(補正テーブル作成方法)である。そして、不図示の高精度誤差検出装置を利用して、被測定対象となるエンコーダ1により検出される第1回転磁石30の角度位置の誤差を一回転分算出し、算出された一回転分の誤差をフーリエ変換することにより固有誤差成分を測定し、算出された固有誤差成分の主要誤差周期成分の値のみを逆フーリエ変換し、各角度位置における誤差量を補正値とする補正テーブルを作成し、作成された補正テーブルをエンコーダ1の記憶手段(本実施例ではデータ処理部90に設けられたメモリ)に保存する。このように、主要誤差周期成分により補正テーブルを作成して、精度高い補正テーブルを作成することにより、角度誤差の補正が可能になる。
【0070】
別の表現をすると、本実施例のエンコーダ1は、感磁素子の信号から角度位置を検出するエンコーダ1の誤差を補正する補正テーブルを作成する補正テーブル作成装置である。そして、エンコーダ1により検出される第1回転磁石30の角度位置の誤差を、高精度誤差検出装置を利用して一回転分算出する一回転誤差算出手段と、該一回転誤差算出手段により算出された一回転分の誤差をフーリエ変換することにより固有誤差成分を算出する固有誤差成分算出手段と、該固有誤差成分算出手段により算出された固有誤差成分の主要誤差周期成分の値のみを逆フーリエ変換し、各角度位置における誤差量を補正値とする補正テーブルを作成する補正テーブル作成手段と、該補正テーブル作成手段により作成された補正テーブルを、エンコーダ1の記憶手段に保存する補正テーブル保存手段とを備えている。このような構成であるので、固有誤差成分の中で主要誤差周期成分により補正テーブルを作成して、精度の高い補正テーブルを作成することにより、角度誤差の補正が可能になる。
【0071】
また、本実施例のエンコーダ1は、高調波の影響を抑制することが可能な構成になっている。具体的には、本実施例のエンコーダ1は、上記のように、感磁素子センサ部40、感磁素子センサ部50及び感磁素子センサ部60の検出結果(検出データ)に基づき、データ処理によって回転体2の角度位置を求めるデータ処理部90を備えているが、さらに、所定の次数(例えば7次)以下の高調波をキャンセルする高調波キャンセルパターンが設けられ、データ処理部90は、所定の次数を超える高調波を打ち消す補正データにより感磁素子センサ部60の検出データを補正することが可能な構成となっている。すなわち、所定の次数以下(例えば7次以下)の高調波を高調波キャンセルパターンによりキャンセルし、所定の次数を超える(例えば7次を超える)高調波を補正データによりキャンセルすることが可能な構成となっている。
【0072】
(別の構成の実施例)
次に、上記のエンコーダ1とは別の構成(感磁素子センサ部60の配置が異なる構成)の実施例について、
図24および
図25を用いて説明する。
図24は、エンコーダ1における第1回転磁石30に対する感磁素子センサ部61、感磁素子センサ部62、感磁素子センサ部63および感磁素子センサ部64の配置を説明するための概略拡大図であり、
図9に対応する図である。そして、
図25は、エンコーダ1における第1回転磁石30に対する感磁素子センサ部61、感磁素子センサ部62、感磁素子センサ部63および感磁素子センサ部64の配線を示す図であり、
図10に対応する図である。
【0073】
図9および
図10などで表されるエンコーダ1は、感磁素子センサ部61と感磁素子センサ部62の出力、並びに、感磁素子センサ部63と感磁素子センサ部64の出力が電気角で540°の間隔で配置され、感磁素子センサ部61と感磁素子センサ部63が機械角で180°の間隔で配置されていた(
図9参照)。一方、
図24および
図25で表されるエンコーダ1は、感磁素子センサ部61と感磁素子センサ部62の出力、並びに、感磁素子センサ部63と感磁素子センサ部64の出力が電気角で360°の間隔で配置され、感磁素子センサ部61と感磁素子センサ部63が機械角で180°プラス電気角で180°の間隔で配置されている(
図24参照)。
【0074】
上記のように、
図9および
図10などで表されるエンコーダ1では、感磁素子センサ部61と感磁素子センサ部62、並びに、感磁素子センサ部63と感磁素子センサ部64は、第1回転磁石30の位相を基準として磁気周期で1/2周期分ずれて配置されている。そして、感磁素子センサ部61と感磁素子センサ部63は、第1回転磁石30の位相を基準として位相がずれることなく配置されている。一方、
図24および
図25で表されるエンコーダ1は、感磁素子センサ部61と感磁素子センサ部62、並びに、感磁素子センサ部63と感磁素子センサ部64は、第1回転磁石30の位相を基準として位相がずれることなく配置されている。そして、感磁素子センサ部61と感磁素子センサ部63は、第1回転磁石30の位相を基準として磁気周期で1/2周期分ずれて配置されている。
【0075】
そこで、
図24および
図25で表されるエンコーダ1の配線は、
図25で表されるような配線となっている。具体的には、感磁素子センサ部61の出力線201に対して、感磁素子センサ部62の出力線202を、プラス同士およびマイナス同士で接続している。そして、感磁素子センサ部63の出力線203に対して、感磁素子センサ部64の出力線204を、プラス同士およびマイナス同士で接続している。そして、さらに、出力線202が接続された出力線201に対して、出力線204が接続された出力線203を、プラスとマイナスを逆にして接続している。
【0076】
また、
図9および
図10などで表されるエンコーダ1、並びに、
図24および
図25で表されるエンコーダ1では、感磁素子センサ部61と感磁素子センサ部63、並びに、感磁素子センサ部62と感磁素子センサ部64が機械角で180°あるいは略180°の間隔で配置されているが、このような構成に限定されない。例えば、感磁素子センサ部61および62のそれぞれに対して周方向における両側に機械角で略120°の間隔をおいて感磁素子センサ部を配置(すなわち、等間隔あるいは略等間隔に3つずつの感磁素子センサ部を配置)してもよい。同様に、4つ以上の感磁素子センサ部を等間隔あるいは略等間隔に配置してもよい。ただし、感磁素子センサ部同士の出力が電気角で180°の整数倍の位相差を有する位置であることが好ましい。このような構成であれば、各々の感磁素子センサ部の検出結果を組み合わせることで、効果的に磁束変動の影響をキャンセルできるためである。
【0077】
感磁素子センサ部61と感磁素子センサ部63、並びに、感磁素子センサ部62と感磁素子センサ部64のように、等間隔あるいは略等間隔に配置された感磁素子センサ部を等間隔感磁素子センサ部と表現できる。そして、等間隔感磁素子センサ部は、所定の誤差範囲を許容して等間隔に配置されると表現できる。ここで、該所定の誤差範囲は、等間隔となる位置から磁気周期で1周期以内の範囲であって、等間隔感磁素子センサ部のうちの第1等間隔感磁素子センサ部としての感磁素子センサ部61と等間隔感磁素子センサ部のうちの第2等間隔感磁素子センサ部としての感磁素子センサ部63とが、電気角で180°の整数倍の位相差を有する位置関係を満たすことが可能な範囲であるとする。
【0078】
ここで、
図26は、
図9および
図10などで表されるエンコーダ1における回転磁石に対する感磁素子センサ部(等間隔感磁素子センサ部)の配置を説明するための概略平面図である。そして、
図26は、等間隔感磁素子センサ部である感磁素子センサ部61と感磁素子センサ部63、並びに、感磁素子センサ部62と感磁素子センサ部64が、機械角で180°の間隔(等間隔)を置いて配置された例を表している。
【0079】
図27は、上記とは別のエンコーダ1における回転磁石に対する感磁素子センサ部(等間隔感磁素子センサ部)の配置を説明するための概略平面図である。そして、
図27は、等間隔感磁素子センサ部である感磁素子センサ部61と感磁素子センサ部161と感磁素子センサ部63と感磁素子センサ部163、並びに、感磁素子センサ部62と感磁素子センサ部162と感磁素子センサ部62と感磁素子センサ部164が、機械角で90°の間隔(等間隔)を置いて配置された例を表している。
【0080】
図28は、上記とはさらに別のエンコーダ1における回転磁石に対する感磁素子センサ部(等間隔感磁素子センサ部)の配置を説明するための概略平面図である。そして、
図28は、等間隔感磁素子センサ部である感磁素子センサ部61と感磁素子センサ部261と感磁素子センサ部263、並びに、感磁素子センサ部62と感磁素子センサ部262と感磁素子センサ部264が、機械角で略120°の間隔(略等間隔:所定の誤差範囲を許容する等間隔)を置いて配置された例を表している。
【0081】
また、感磁素子センサ部60の配置のほか、感磁素子センサ部40や感磁素子センサ部50を別の構成とすることもできる。すなわち、
図4で表されるエンコーダ1は、第2回転磁石20の中心と対向する位置に磁気抵抗素子である感磁素子センサ部40と、第2回転磁石20と対向する位置にホール素子である感磁素子センサ部51と、第2回転磁石20と対向する位置であって感磁素子センサ部51に対して周方向において機械角で90°ずれた位置にホール素子である感磁素子センサ部52と、を備えているが、第2回転磁石20の大まかな絶対位置を検出できるのであれば、感磁素子センサ部40や感磁素子センサ部50を別の構成とすることができる。
【0082】
例えば、
図4で表されるエンコーダ1において感磁素子センサ部40を省略した構成、すなわち、第2回転磁石20と対向する位置にホール素子である感磁素子センサ部51と、第2回転磁石20と対向する位置であって感磁素子センサ部51に対して周方向において機械角で90°ずれた位置にホール素子である感磁素子センサ部52と、を備えている構成とすることができる。このような構成であっても、ホール素子である感磁素子センサ部51および52は、何れもN極からS極への磁場の方向を検出できるので、第2回転磁石20の大まかな絶対位置を検出できる。
【0083】
また、例えば、
図4で表されるエンコーダ1において感磁素子センサ部40を省略し、感磁素子センサ部51に対して周方向において機械角で180°ずれた位置にホール素子である感磁素子センサ部を設け、さらに、感磁素子センサ部52に対して周方向において機械角で180°ずれた位置にホール素子である感磁素子センサ部を設ける構成とすることができる。このような構成であっても、ホール素子である感磁素子センサ部は、4つとも、N極からS極への磁場の方向を検出できるので、第2回転磁石20の大まかな絶対位置を検出できる。
【0084】
ここで、本発明を適用可能なエンコーダ1についてまとめると、本発明を適用可能なエンコーダ1は、周方向にN極とS極とが複数交互に着磁された回転磁石である第1回転磁石30と、第1回転磁石30の位置を検出する第1感磁素子70と、第1感磁素子70の出力に対して電気角で90°の位相差を有する位置に配置され第1回転磁石30の位置を検出する第2感磁素子79と、を有する複数の感磁素子センサ部60と、を備えている。
そして、
図4および
図8で表されるように、感磁素子センサ部60として、第1回転磁石30に対して所定の誤差範囲を許容して等間隔に配置される等間隔感磁素子センサ部(例えば、感磁素子センサ部61)を有する。
ここで、所定の誤差範囲は、等間隔となる位置から磁気周期で1周期以内の範囲であって、等間隔感磁素子センサ部のうちの第1等間隔感磁素子センサ部(例えば、感磁素子センサ部61)の第1感磁素子70(例えば感磁素子71)の出力と等間隔感磁素子センサ部のうちの第2等間隔感磁素子センサ部(例えば、感磁素子センサ部63)の第1感磁素子70(例えば感磁素子75)の出力、並びに、第1等間隔感磁素子センサ部(例えば、感磁素子センサ部61)の第2感磁素子79(例えば感磁素子72)の出力と等間隔第2感磁素子センサ部(例えば、感磁素子センサ部63)の第2感磁素子79(例えば感磁素子76)の出力が、電気角で180°の偶数倍(すなわち1位相分である360°の整数倍)の位相差を有する位置関係を満たすことが可能な範囲である。
また、
図10で表されるように、第1等間隔感磁素子センサ部のプラス出力端子(例えば感磁素子センサ部61のプラス出力端子HE1PおよびHE2P)と第2等間隔感磁素子センサ部のプラス出力端子(例えば感磁素子センサ部63のプラス出力端子HE1PおよびHE2P)とが接続され、第1等間隔感磁素子センサ部のマイナス出力端子(例えば感磁素子センサ部61のマイナス出力端子HE1NおよびHE2N)と第2等間隔感磁素子センサ部のマイナス出力端子(例えば感磁素子センサ部63のマイナス出力端子HE1NおよびHE2N)とが接続されている。
【0085】
電気角で90°の位相差で検出可能な位置に感磁素子を設けた感磁素子センサ部60を複数有することで、高精度なエンコーダとすることができる。また、等間隔となる位置から磁気周期で1周期以内の範囲であって、第1等間隔感磁素子センサ部同士の出力および第2等間隔感磁素子センサ部同士の出力を電気角で180°の偶数倍の位相差を有する位置関係を満たすことが可能な範囲に配置し、且つ、第1等間隔感磁素子センサ部のプラス出力端子HE1PおよびHE2Pと第2等間隔感磁素子センサ部のプラス出力端子HE1PおよびHE2Pとを接続し第1等間隔感磁素子センサ部のマイナス出力端子HE1NおよびHE2Nと第2等間隔感磁素子センサ部のマイナス出力端子HE1NおよびHE2Nとを接続する。すなわち、位相のずれが無い位置(磁気周期で1周期分位相がずれた位置)であって機械的に離れた位置に配置される第1等間隔感磁素子センサ部および第2等間隔感磁素子センサ部の出力を平均化することで、磁束変動の影響を抑制することができる。
【0086】
なお、上記説明においては、感磁素子センサ部61を第1等間隔感磁素子センサ部とし、感磁素子センサ部63を第2等間隔感磁素子センサ部とする例で説明したが、感磁素子センサ部63を第1等間隔感磁素子センサ部と考え、感磁素子センサ部61を第2等間隔感磁素子センサ部と考えることもできる。同様に、感磁素子センサ部62を第1等間隔感磁素子センサ部と考え、感磁素子センサ部64を第2等間隔感磁素子センサ部と考えること、並びに、感磁素子センサ部64を第1等間隔感磁素子センサ部と考え、感磁素子センサ部62を第2等間隔感磁素子センサ部と考えることもできる。
【0087】
また、
図24で表されるように、所定の誤差範囲は、等間隔となる位置から磁気周期で1周期以内の範囲であって、等間隔感磁素子センサ部のうちの第1等間隔感磁素子センサ部(例えば、感磁素子センサ部61)の第1感磁素子70(例えば感磁素子71)の出力と等間隔感磁素子センサ部のうちの第2等間隔感磁素子センサ部(例えば、感磁素子センサ部63)の第1感磁素子70(例えば感磁素子75)の出力、並びに、第1等間隔感磁素子センサ部(例えば、感磁素子センサ部61)の第2感磁素子79(例えば感磁素子72)の出力と等間隔第2感磁素子センサ部(例えば、感磁素子センサ部63)の第2感磁素子79(例えば感磁素子76)の出力が、電気角で180°の奇数倍(すなわち磁気周期で1周期分である360°の整数倍-180°)の位相差を有する位置関係を満たすことが可能な範囲である。
そして、
図25で表されるように、第1等間隔感磁素子センサ部のプラス出力端子HE1PおよびHE2Pと第2等間隔感磁素子センサ部のマイナス出力端子HE1NおよびHE2Nとが接続され、第1等間隔感磁素子センサ部のマイナス出力端子HE1NおよびHE2Nと第2等間隔感磁素子センサ部のプラス出力端子HE1PおよびHE2Pとが接続されている。
【0088】
電気角で90°の位相差で検出可能な位置に感磁素子を設けた感磁素子センサ部60を複数有することで、高精度なエンコーダとすることができる。また、等間隔となる位置から磁気周期で1周期以内の範囲であって、第1等間隔感磁素子センサ部同士の出力および第2等間隔感磁素子センサ部同士の出力を電気角で180°の奇数倍の位相差を有する位置関係を満たすことが可能な範囲に配置し、且つ、第1等間隔感磁素子センサ部のプラス出力端子HE1PおよびHE2Pと第2等間隔感磁素子センサ部のマイナス出力端子HE1NおよびHE2Nとを接続し第1等間隔感磁素子センサ部のプラス出力端子HE1PおよびHE2Pと第2等間隔感磁素子センサ部のマイナス出力端子HE1NおよびHE2Nとを接続する。すなわち、磁気周期で1/2周期分位相がずれた位置であって機械的に離れた位置に配置される第1等間隔感磁素子センサ部および第2等間隔感磁素子センサ部の出力の一方を反転させて平均化することで、磁束変動の影響を抑制することができる。
【0089】
また、
図8及び
図9などで表されるように、本発明を適用可能なエンコーダ1において、感磁素子センサ部60は、第1感磁素子70および第2感磁素子79を1つのパッケージ内に有している。このため、高い精度で第1感磁素子70と第2感磁素子79とを位置決めでき、特に高精度なエンコーダ1とすることができる。
【0090】
また、上記のように、本発明を適用可能なエンコーダ1において、第1感磁素子70および第2感磁素子79は、ホール素子であり、単独で磁界の方向(N極とS極の判別)を検出できるので、安価にエンコーダ1を形成することができる。
しかしながら、上記のように、第1感磁素子70および第2感磁素子79を、磁気抵抗素子としてもよい。そうすることで、対向する磁石の回転磁界を検出する為、着磁バラツキや回転部の振れにより磁束強度が変動しても安定して回転位置を検出することができる。
【0091】
また、本発明を適用可能なエンコーダ1は、例えば、感磁素子センサ部61と感磁素子センサ部63からなる組と、感磁素子センサ部62と感磁素子センサ部64からなる組と、のように、2つの等間隔感磁素子センサ部を、2組以上備えていてもよい。2つの等間隔感磁素子センサ部を2組以上備えることで、特に高精度なエンコーダとすることができる。
【0092】
また、
図4などで表されるように、本発明を適用可能なエンコーダ1は、周方向にN極とS極とが複数交互に着磁された第1回転磁石30と、第1回転磁石30の位置を検出する第1回転磁石用感磁素子としての感磁素子センサ部60と、第1回転磁石30と共に回転可能であって周方向にN極とS極とが着磁された第2回転磁石20と、第2回転磁石20の位置を検出する第2回転磁石用感磁素子である感磁素子センサ部40及び50と、を備えている。このため、第2回転磁石20と感磁素子センサ部40及び50とにより、第1回転磁石30(回転体2)の回転量だけでなく絶対位置(角度位置)を検出できる。
なお、上記エンコーダ1においては、周方向にN極とS極とが1極ずつ着磁された第2回転磁石20を備える構成であったが、回転体2の絶対位置(角度位置)を検出できる構成であれば、第2回転磁石20は周方向にN極とS極とが1極ずつ着磁される構成に限定されない。
【0093】
また、
図8および
図9などで表されるように、本発明を適用可能なエンコーダ1は、感磁素子センサ部60として、等間隔感磁素子センサ部(たとえば感磁素子センサ部61と感磁素子センサ部63)に加えて、等間隔感磁素子センサ部の少なくとも1つ(たとえば感磁素子センサ部61)に対して機械角で30°以下に配置される近接感磁素子センサ部(たとえば感磁素子センサ部62)が設けられている。
このように、等間隔感磁素子センサ部と近接する位置に近接感磁素子センサ部を有することで、等間隔感磁素子センサ部の出力と近接感磁素子センサ部の出力とを利用(例えば平均化)することで、外部磁束の影響を抑制することができる。例えば、エンコーダ1の外部で大電流が流れる給電線が近接する場合、発生する磁界に対して、第1感磁素子センサ部61と第2感磁素子センサ部62を同じレベルで磁束をキャンセルさせる為に、機械角で30°以下に配置して外部磁束の影響を抑制することができる。
【0094】
なお、上記説明においては、感磁素子センサ部61および感磁素子センサ部63を等間隔感磁素子センサ部とし、感磁素子センサ部62を感磁素子センサ部61に対する近接感磁素子センサ部として説明したが、感磁素子センサ部61および感磁素子センサ部63を等間隔感磁素子センサ部と考え、感磁素子センサ部64を感磁素子センサ部63に対する近接感磁素子センサ部と考えることもできる。同様に、感磁素子センサ部62および感磁素子センサ部64を等間隔感磁素子センサ部と考え、感磁素子センサ部61を感磁素子センサ部62に対する近接感磁素子センサ部と考えること、並びに、感磁素子センサ部62および感磁素子センサ部64を等間隔感磁素子センサ部と考え、感磁素子センサ部63を感磁素子センサ部64に対する近接感磁素子センサ部と考えることもできる。さらには、さらに別の感磁素子センサ部を設けていてもよい。
【0095】
しかしながら、感磁素子センサ部60は、所定の誤差範囲を許容する機械角で180°の配置で、2つの等間隔感磁素子センサ部で構成されていてもよい。例えば、等間隔第1感磁素子センサ部としての感磁素子センサ部61および等間隔第2感磁素子センサ部としての感磁素子センサ部63の2つで等間隔感磁素子センサ部(感磁素子センサ60)を構成することで、安価にエンコーダを形成することが可能となる。また、2つの等間隔感磁素子センサ部を所定の誤差範囲を許容する機械角で180°の配置とすることで、効果的に磁束変動の影響を抑制することができる。
【0096】
本発明は、上述の実施例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。
また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0097】
1…エンコーダ(ロータリエンコーダ)、2…回転体、10…固定体、
11…支持部材、12…ベース体、13…センサ支持板、15…センサ基板、
16…端子、17…コネクタ、20…第2回転磁石、21…着磁面、
30…第1回転磁石、31…着磁面、
40…感磁素子センサ部(第2回転磁石用感磁素子)、41…磁気抵抗パターン、
42…磁気抵抗パターン、43…磁気抵抗パターン、44…磁気抵抗パターン、
50…感磁素子センサ部(第2回転磁石用感磁素子)、51…感磁素子センサ部、
52…感磁素子センサ部、60…感磁素子センサ部(第1回転磁石用感磁素子)、
61…感磁素子センサ部(第1感磁素子センサ部)、
62…感磁素子センサ部(第2感磁素子センサ部)、
63…感磁素子センサ部(第3感磁素子センサ部)、
64…感磁素子センサ部(第4感磁素子センサ部)、70…第1感磁素子、
71…感磁素子、72…感磁素子、73…感磁素子、74…感磁素子、
75…感磁素子、76…感磁素子、77…感磁素子、78…感磁素子、
79…第2感磁素子、90…データ処理部、91…アンプ、92…アンプ、
93…アンプ、121…底板部、122…開口部、123…胴部、124…突起、
125…穴、191…ネジ、192…ネジ、193…ネジ、201…出力線、
202…出力線、203…出力線、204…出力線、GND…接地端子、
HE1N…マイナス出力端子、HE1P…プラス出力端子、
HE2N…マイナス出力端子、HE2P…プラス出力端子、VC…電圧端子