(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】測距方法及び測距装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/487 20060101AFI20220531BHJP
G01S 17/10 20200101ALI20220531BHJP
【FI】
G01S7/487
G01S17/10
(21)【出願番号】P 2018118307
(22)【出願日】2018-06-21
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【氏名又は名称】福田 充広
(74)【代理人】
【識別番号】100181146
【氏名又は名称】山川 啓
(72)【発明者】
【氏名】石川 智之
(72)【発明者】
【氏名】山田 博隆
(72)【発明者】
【氏名】三宮 肇
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-311138(JP,A)
【文献】特開2011-021980(JP,A)
【文献】特開2015-200555(JP,A)
【文献】特開2016-014535(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02182377(EP,A1)
【文献】国際公開第2016/173711(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0003041(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - G01S 7/51
G01S 17/00 - G01S 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象に向けて射出した光の反射成分の受光に関して、ゲインの異なる第1検出及び第2検出の双方で、1回の光射出に対して時間差を有する少なくとも2回の検出を行い、
前記第1及び第2検出の検出パターンの組合せとして、
前記第2検出で少なくとも2回の受光確認をし、かつ、前記第1検出で1回の受光確認をした場合において、前記第1検出での1回の受光確認が、前記第2検出での1回目の受光確認と2回目の受光確認との間である
とき、前記第1検出での受光確認と前記第2検出での各回の受光確認との時間差に基づき
前記第1検出での受光確認及び前記第2検出での2回目の受光確認のうちいずれを採用するかを決定して、測定距離を算出する測距方法。
【請求項2】
前記第2検出での1回目の受光確認と前記第1検出での受光確認との時間差が、前記第1検出での受光確認と前記第2検出での2回目の受光確認との時間差よりも大きい場合、前記第1検出での受光確認に基づき測定距離を算出し、小さい場合、前記第2検出での2回目の受光確認に基づき測定距離を算出する、請求項
1に記載の測距方法。
【請求項3】
前記第1検出は、受信レベルの立ち上りに基づく検出であり、
前記第2検出は、受信信号のフィルタリング信号に基づく検出である、請求項
1及び2のいずれか一項に記載の測距方法。
【請求項4】
前記第1検出では、反射成分の受信レベルが閾値に到達した時点を受光したタイミングとし、
前記第2検出では、反射成分の受信信号のフィルタリング信号についてゼロクロスとなる時点を受光したタイミングとする、請求項
3に記載の測距方法。
【請求項5】
測定対象に向けて射出した光の反射成分を受信する受光素子と、
前記受光素子での受光に関して、ゲインの異なる2種類の検出をするための第1検出部及び第2検出部と、
前記第1及び第2検出部での検出パターンの組合せに基づき測定距離を算出する算出部と
を備え、
前記第1及び第2検出部の双方で、1回の光射出に対して時間差を有する少なくとも2回の検出を行い、
前記算出部は、前記第1及び第2検出の検出パターンの組合せとして、
前記第2検出で少なくとも2回の受光確認をし、かつ、前記第1検出で1回の受光確認をした場合において、前記第1検出での1回の受光確認が、前記第2検出での1回目の受光確認と2回目の受光確認との間である
とき、前記第1検出での受光確認と前記第2検出での各回の受光確認との時間差に基づき
前記第1検出での受光確認及び前記第2検出での2回目の受光確認のうちいずれを採用するかを決定して、測定距離を算出する、測距装置。
【請求項6】
前記第1検出部は、前記受光素子での受光を、受信レベルの立ち上りに基づき検出し、
前記第2検出部は、前記受光素子での受光を、受信信号のフィルタリング信号に基づき検出する、請求項
5に記載の測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象に向けてパルス光等の光を射出し、射出した光の反射成分を受光することで、測定対象までの距離測定を行う測距方法及び測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような方法で距離測定を行うものとして、例えば、立ち上り回路と共振回路とを有するものが知られている(特許文献1参照)。特許文献1では、異なる回路を併用することで、検出される反射光の光量の違い等を利用して、霧などの外乱が生じる場合であっても、測定対象までの距離を測定可能としている。
【0003】
しかしながら、特許文献1の場合、立ち上り回路での閾値等を予め想定した反射光の光量に基づいて定めることになるため、例えば測定対象が非常に反射率の低い物体であるとか、想定外の濃い霧などの外乱が生じているといった場合には、的確な検出ができなくなる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、測定対象が非常に反射率の低い物体や想定外の濃い霧などの外乱が生じる等の種々の場合において、測定対象までの距離測定をより確実に行うことができる測距方法及び測距装置を提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するための測距方法は、測定対象に向けて射出した光の反射成分の受光をゲインの異なる第1検出及び第2検出により、測定対象までの距離測定をする測距方法であって、第1及び第2検出の双方で、1回の光射出に対して時間差を有する少なくとも2回の検出を行い、第1及び第2検出の検出パターンの組合せに基づき測定距離を算出する。
【0007】
上記測距方法では、反射成分の受光についてゲインの異なる検出方法である第1及び第2検出の双方において、1回の光射出に対して時間差を有する少なくとも2回の検出を行った際の検出パターンの組合せに基づき測定距離を算出することで、例えば測定対象が反射率の低い物体である場合や、濃い霧が発生している場合であっても、測定対象までの距離測定を確実に行うことができる。
【0008】
本発明の具体的な側面では、第1検出は、受信レベルの立ち上りに基づく検出であり、第2検出は、受信信号のフィルタリング信号に基づく検出である。この場合、相対的に受信強度の大きなものについては、受信レベルの立ち上りで捉え、相対的に受信強度の小さなものについては、受信信号のフィルタリング信号で捉えることができる。
【0009】
本発明の別の側面では、第1及び第2検出の検出パターンの組合せとして、第2検出で少なくとも2回の受光確認をし、かつ、第1検出で1回の受光確認をした場合、第1検出での受光確認又は第2検出での2回目以降の受光確認に基づき測定距離を算出する。この場合、受光確認結果に基づき、確実に測定対象までの距離測定を行うことができる。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、第1検出での受光確認が、第2検出での2回の受光確認よりも後である場合、第1検出での受光確認に基づき測定距離を算出する。この場合、第1検出での受光確認に基づくことで、確実な距離測定ができる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、第1検出での受光確認が、第2検出での2回の受光確認よりも前である場合、第2検出での2回目の受光確認に基づき測定距離を算出する。この場合、第2検出での2回目の受光確認に基づくことで、確実な距離測定ができる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、第1検出での受光確認が、第2検出での1回目の受光確認と2回目の受光確認との間である場合、第1検出での受光確認と第2検出での各回の受光確認との時間差に基づき、測定距離の算出に際して第1検出での受光確認及び第2検出での2回目の受光確認のうちいずれを採用するかを決定する。この場合、第1検出側での受光確認と第2検出側での受光確認との時間差に基づくことで、確実な距離測定ができる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、第2検出での1回目の受光確認と第1検出での受光確認との時間差が、第1検出での受光確認と第2検出での2回目の受光確認との時間差よりも大きい場合、第1検出での受光確認に基づき測定距離を算出し、小さい場合、第2検出での2回目の受光確認に基づき測定距離を算出する。この場合、第1検出側での受光確認と第2検出側での受光確認との時間差の大小関係に基づくことで、確実な距離測定ができる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、第1検出では、反射成分の受信レベルが閾値に到達した時点を受光したタイミングとし、第2検出では、反射成分の受信信号のフィルタリング信号についてゼロクロスとなる時点を受光したタイミングとする。この場合、第1検出における受信レベルに関する閾値と、第2検出におけるゼロクロスとなる時点(タイミング)とに基づくことで、確実な距離測定ができる。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、測定対象に向けた光の射出時から第1検出での受光確認又は第2検出での受光確認時までの時間差に基づき測定距離を算出する。光の射出時から受光確認時までの時間において光が進む距離を算出することで、正確な距離測定ができる。
【0016】
上記目的を達成するための測距装置は、測定対象に向けて射出した光の反射成分を受信する受光素子と、受光素子での受光をゲインの異なる2種類の検出をするための第1検出部及び第2検出部と、第1及び第2検出部での検出パターンの組合せに基づき測定距離を算出する算出部とを備え、第1及び第2検出部の双方で、1回の光射出に対して時間差を有する少なくとも2回の検出を行う。
【0017】
上記測距装置では、反射成分の受光についてゲインの異なる2種類の検出をするための第1検出部及び第2検出部の双方において、1回の光射出に対して時間差を有する少なくとも2回の検出を行った際の検出パターンの組合せに基づき測定距離を算出することで、例えば測定対象が反射率の低い物体である場合や、濃い霧が発生している場合であっても、測定対象までの距離測定を確実に行うことができる。
【0018】
本発明の具体的な側面では、第1検出部は、受光素子での受光を、受信レベルの立ち上りに基づき検出し、第2検出部は、受光素子での受光を、受信信号のフィルタリング信号に基づき検出する。この場合、受光確認結果に基づき、確実に測定対象までの距離測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る測距装置の光学系の一例について示す斜視図である。
【
図2】測距装置の一構成例についてのブロック図である。
【
図3】測距計測部の一構成例についてのブロック図である。
【
図4】反射成分の検出について一例を説明するためのグラフである。
【
図5】反射成分の受光について説明するための概念的な波形図である。
【
図6】反射成分の検出パターンについて例示する波形図である。
【
図7】反射成分の検出パターンに対応する第1及び第2検出部での受光確認結果の様子を示すタイムチャートである。
【
図8】測距装置による第1及び第2検出部での受光確認結果に対する出力選択の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、
図1等を参照して、一実施形態に係る測距装置を用いた測距方法について一例を説明する。本実施形態の測距装置は、例えば走行する列車の前方確認等において、人間や荷物や自動車等の測定対象までの距離を測定するに際して、霧,雨,雪などの外乱が測距視野に含まれる場合にも測定可能となっている装置である。なお、以下では、典型的な一例として、霧の発生における測定対象までの測距について説明する。
【0021】
図1に例示するように、本実施形態の測距装置1は、2次元走査ミラー(スキャナ)2と、レーザ投光部3と、レーザ受光部4と、投光/受光分離器5bと、ガラス板などの透明板からなるレーザ光を透過させる投受光窓6とを含んで構成され、測定対象OBに向けたレーザ光(パルスレーザ)の投光、及び、測定対象OBからの反射光の受光は、投受光窓6を介してなされる。
【0022】
測距装置1は、レーザ投光部3から測定対象OBへ向けたレーザ光の放射タイミングと、測定対象OBからの反射光をレーザ受光部4が受光した受光タイミングとの時間差及びレーザ光の伝播速度に基づいて、測定対象OBまでの距離が算出される。つまり、測距装置1は、光パルス飛行時間計測法による測定装置である。
【0023】
以下、
図2及び
図3のブロック図を参照して、測距装置1の一構成例について説明する。測距装置1は、例えば
図2に示すように、上記した2次元走査ミラー2等のほか、各種動作を制御する制御部10を有する。制御部10は、例えば2次元走査ミラー2駆動動作の制御等種々の駆動動作や各種信号処理を行うが、ここでは、特に、距離の算定を行うために、測距計測部9を有している。なお、測距計測部9の具体的構成の一例について、
図3を参照して後述する。
【0024】
まず、
図2において、測距装置1のうち、レーザ投光部3は、例えばレーザドライバ、レーザ素子(半導体レーザ)、レンズ等の投光光学系等を含んで構成され、レーザ光(パルス光)を発光させる。なお、レーザ素子から発光されたレーザ光(投光光束)は、投光光学系を介して放射され、反射ミラー5aによって投光/受光分離器5bに向けて反射され、投光/受光分離器5bを透過して2次元走査ミラー2に向かい、2次元走査ミラー2で反射されることで、測定対象OB(
図1参照)の表面を走査する。
【0025】
測距装置1のうち、2次元走査ミラー2は、例えば枠体状の可動部や、可動部に接続され回転させる回転軸となる梁(トーションバー)等を含んで構成され、ミラー21を2次元的に振動する。レーザ投光部3からのレーザ光が、姿勢を変化させるミラー21で反射されることで、測定対象OBに対して、2次元走査がなされる。
【0026】
さらに、測定対象OBで反射された反射レーザ光は、再び、2次元走査ミラー2で反射される。このうち、投光/受光分離器5bで反射された成分が、レーザ受光部4に受光される。
【0027】
レーザ受光部4は、例えば、測定対象OBに向けて射出したレーザ光の反射成分を受信する受光素子(フォトダイオード)4aのほか、受光光学系、プリアンプ、A/D変換器等を含んで構成され、投光/受光分離器5bで反射されたレーザ光の成分(反射成分)を、例えば検出可能なパルス波の状態にして、制御部10の測距計測部9に出力する。
【0028】
一方、レーザ投光部3には、上記のほか、放射されるレーザ光をモニタリングする発光モニタ部31が設けられている。発光モニタ部31は、例えば受光素子(フォトダイオード)を含んで構成され、放射されるレーザ光(パルス光)の一部を受信することで、放射タイミングを計時する。すなわち、発光モニタ部31は、計時スタートパルスを生成する。さらに、発光モニタ部31は、生成した計時スタートパルスを制御部10の測距計測部9に出力する。
【0029】
制御部10のうち、測距計測部9は、測距部9aと、距離値光量値演算処理部9bとを備える。測距部9aは、レーザ投光部3からの計時スタートパルスと、レーザ受光部4からの反射されたレーザ光の反射成分についてのパルス波とに基づいて、レーザ光(パルス光)についての時間差や光量計測を行い、距離値光量値演算処理部9bは、測距部9aでの計測結果に基づいて、測定対象OBまでの距離や光量値を算出する。すなわち、距離値光量値演算処理部9bは、測定距離を算出する算出部として機能している。
【0030】
なお、制御部10は、測距計測部9のほか、例えば2次元走査ミラー2の2次元駆動を行うためのスキャナドライバ11や、2次元走査ミラー2のスキャナ位置(姿勢)を捉えるためのフィルタ12、さらには、スキャナドライバ11に対して駆動信号を送信するとともにフィルタ12からスキャナ位置についての信号を受け取るスキャナ制御部13を備える。
【0031】
また、制御部10は、測距計測部9で算出された距離値や光量値についての情報や、スキャナ制御部13で取得された2次元走査ミラー2のスキャナ位置についての情報を、外部インターフェースIFを介してデータ送信可能となっている。
【0032】
以下、
図3のブロック図を参照して、上記のうち、測距計測部9の一構成例についてより詳細に説明する。
【0033】
図3に示すように、本実施形態では、測距計測部9のうち、測距部9aは、レーザ受光部4の受光素子(フォトダイオード)4aでの受光をゲインの異なる2種類の検出(第1検出及び第2検出)をするための第1検出部DT1及び第2検出部DT2を有している。測距計測部9は、第1検出部DT1及び第2検出部DT2での検出パターンの組合せに基づいて、計時ストップパルスを生成している。
【0034】
また、算出部としての距離値光量値演算処理部9bは、レーザ投光部3からの計時スタートパルスと、測距部9aで生成された計時ストップパルスとによって求められる時間差から、測定距離を算出している。
【0035】
特に、本実施形態では、第1及び第2検出部DT1,DT2の双方で、レーザ投光部3からの1回の光射出に対して、時間差を有する2回の検出を行うものとなっている。これにより、例えば測定対象OBが反射率の低い物体である場合や、濃い霧が発生している場合であっても、的確な計時ストップパルスの生成を可能とすることで、測定対象OBまでの距離測定を確実に行うことができるようにしている。
【0036】
以下、
図3を参照して、測距計測部9のうち、第1及び第2検出部DT1,DT2を有する測距部9aの構成について、より詳細に説明する。
【0037】
まず、測距部9aのうち、第1検出部DT1は、受光素子4aにおいて受光した受光信号について、受信レベルの立ち上りに基づき検出を行う高受信レベル用の受光検出部であり、例えばローゲインアンプとコンパレータとで構成される立ち上り測距回路RC1を有している。さらに、第1検出部DT1は、立ち上り測距回路RC1で検出された受信信号に対して、時間差を有する2回の検出を第1検出として行うべく、第1エコー検出部E11と、第2エコー検出部E12とを有している。なお、各エコー検出部E11,E12では、計測時間についてのデジタル変換を行い、計測結果を、測定距離を算出する算出部である距離値光量値演算処理部9bに対して送信する。
【0038】
一方、測距部9aのうち、第2検出部DT2は、受光素子4aにおいて受光した受光信号について、当該受信信号のフィルタリング信号に基づき検出する低受信レベル用の受光検出部であり、例えば共振回路とハイゲインアンプとコンパレータとで構成される共振測距回路RC2を有している。さらに、第2検出部DT2は、共振測距回路RC2で検出された受信信号に対して、時間差を有する2回の検出を第2検出として行うべく、第1エコー検出部E21と、第2エコー検出部E22とを有している。なお、各エコー検出部E21,E22では、計測時間についてのデジタル変換を行い、計測結果を、距離値光量値演算処理部9bに対して送信する。
【0039】
以下、各検出部DT1,DT2における1回の検出ごとになされる検出の方法について一例を説明する。なお、以下では、各回における検出で、受信(受光)の検出があった場合を、受光確認があった等と表現する。
【0040】
まず、第1検出部DT1は、既述のように、高受信レベル用の受光検出部であり、波形の立ち上りの値を検出することで受光タイミングを検出し、検出結果に基づき計時ストップパルスを生成する立上がりエッジ検出方式となっている。すなわち、立上がりエッジ検出方式における閾値を予め定めておき、受光素子4aから入力されたパルス波(出力信号)をローゲインアンプにより増幅し、増幅された波形信号が閾値に達したか否かをコンパレータにより判定することで、各回の検出における受光確認・未確認が決定する。なお、この場合、受光素子4aから入力されたパルス波としての反射成分の受信レベルが閾値に到達した時点(エッジ点)が受光したタイミングとなる、すなわち、計時ストップパルスが生成されるタイミングとなる。
【0041】
一方、第2検出部DT2は、既述のように、低受信レベル用の受光検出部であり、いわゆるゼロクロス検出方式で受光タイミングを検出し、検出結果に基づき計時ストップパルスを生成するものである。すなわち、受光素子4aから入力されたパルス波(出力信号)に含まれる特定周波数成分を、共振回路で共振させ(フィルタリング)、フィルタリング信号として抽出し、抽出したフィルタリング信号についてゼロクロスとなる時点が受光したタイミングとなる、すなわち、計時ストップパルスが生成されるタイミングとなる。
【0042】
本実施形態の場合、各検出部DT1,DT2で、上記のような検出の動作を、レーザ投光部3での1回の光射出に対してそれぞれ2回行う、したがって、合計で4回の検出の処理が行われ、最大で4回の受光確認がなされ得ることになり、この際の検出結果と検出の状況とを加味することで、受光確認に伴う計時ストップパルスのうちから適切なものを選択できるようにしている。
【0043】
なお、測距計測部9は、上記各検出部DT1,DT2のほか、受光素子4aでの受光について光量検出を行う光量検出回路LCや光量検出回路LCでの検出結果をデジタル信号化して距離値光量値演算処理部9bに送信するA/D変換回路LCd等を有している。
【0044】
以下、
図4のグラフを参照して、外乱が生じる場合の一例として、霧の発生における測定対象までの測距について一実験例を説明する。
図4は、反射成分の検出態様について一例を説明するためのグラフである。ここでの例では、霧の発生が可能な実験室等において、例えば本実施形態の測距装置1や従来の測距装置の設置位置から前方15m程度先の位置に、測定対象OBとして、たとえば白色の壁のような反射性の高い物体を設置した状況下において、霧の濃度を変化させた場合の実験結果を例示している。
図4のグラフにおいて、横軸は、距離あるいは距離に相当する測距装置において測距のために測定される時間差を示しており、縦軸は、受光した反射成分の受信強度に相当する電圧値を示している。なお、この例では、電圧値が負になるほど大きな信号受信が捉えられていることを意味している。
【0045】
図4に示す各曲線C0~C3のうち、曲線C0は、霧が無い場合を示している。この場合、図示のように、測定対象OBが存在する位置に対応する箇所でのみ大きなピークを有する波形となり、この波形を捉えることで、測定対象OBの位置検出がなされることになる。なお、曲線C0となるような状況下で、本実施形態の測距装置1を使用した場合、各検出部DT1,DT2における2回の検出については、ともに1回ずつのみ受光確認がなされる(シングルエコー)ことになる。
【0046】
一方、曲線C1は、視程200mすなわち肉眼で200m先までが視認確認可能な程度の霧が発生している場合を示している。同様に、曲線C2は、視程100m、曲線C3は、視程50mの霧が発生している場合を示している。なお、視程50m程度の霧が発生している場合、列車の運行は略困難な状態になると考えられる。
【0047】
図示から明らかなように、霧の濃度が増すほど、測定対象OBが存在する位置に対応する箇所でのピークが下がっていく。すなわち、受信強度が弱くなっていくことになる。一方、霧の濃度が増すにつれ、測定対象OBの位置よりも手前となる位置において、別のピークを有する波形が生じていることが分かる。これは、霧に反射した成分が検出されることに伴うものと考えられる。この霧に起因するピークは、図示のように、霧の濃度が増すほど大きくなるが、そのピークの位置(検出される距離)については、霧の濃度が増してもあまり変化しないことが分かっている。なお、曲線C1~C3となるような状況下で、本実施形態の測距装置1を使用した場合、各検出部DT1,DT2においてそれぞれなされる2回の検出について、少なくとも一方で2回の受光確認がなされる(デュアルエコー)ことになる。
【0048】
ここで、2回の検出において、2回とも受光確認がなされるデュアルエコーの場合、相対的に早い時間に検出される1回目の受光は、霧に起因する反射であり、相対的に遅い時間に検出される2回目の受光が目的とする測定対象OBの位置を示す反射であると考えられる。したがって、このような場合、2回目の受光タイミングを正確に把握することが非常に重要となる。
【0049】
一方、測定対象OBに関する検出においては、測距装置からの距離を離すほど対応する波形のピークが下がっていく。また、測距装置からの距離が同じであっても、測定対象OBの反射性が低くなるほど、波形のピークが下がっていく。したがって、種々の状況によって、検出のされ方が変わってくると考えられ、状況に応じて正しい判断ができるようにすることが必要となり、そのためには、各検出部DT1,DT2の特性を把握しておくことも重要である。
【0050】
以下、
図5を参照して、測距計測部9を構成する各検出部DT1,DT2の特性について説明する。
図5は、反射成分の受光について説明するための概念的な図であり、図中、例えば波形αは、レーザ投光部3の発光モニタ部31で検出されるレーザ光(パルス光)PL1の一例についての様子を概念的に示している。また、波形βは、第1検出部DT1において検出される受信信号の一例についての様子を概念的に示している。さらに、波形γ,δは、第2検出部DT2において検出される受信信号の一例についての様子を概念的に示している。ここでは、図示のように、例えば霧の発生等により、波形αで示される1回の光射出に対して、霧による反射(第1エコー)EC1と測定対象による反射(第2エコー)EC2とが生じているものとする。
【0051】
以上に対して、まず、既述のように、第1検出部DT1は、受信信号の立ち上りの値を検出することをもって受光タイミングとする高受信レベル用の受光検出部であり、閾値を越える比較的大きな信号のみしか検出対象とならない。したがって、例えば
図5において例示する波形βに示す場合のように、第1エコーEC1及び第2エコーEC2が存在しても、ピークの低い第1エコーEC1については、第1検出部DT1において検出されず、ピークの高い第2エコーEC2のみが検出される、といったことが生じ得る。ただし、第1検出部DT1での検出の場合、比較的大きな受信信号の波形の立ち上りを検出するものであるため、受光確認がされた場合は、その受光タイミングすなわち計時ストップパルスの生成タイミングは、より正確に捉えられたものと考えることができる。
【0052】
次に、第2検出部DT2は、既述のように、特定周波数成分を共振回路で共振させることに基づく、すなわち受信信号のフィルタリング信号に基づいて、当該信号のゼロクロスZCとなる時点を検出することをもって受光タイミングとする低受信レベル用の受光検出部である。つまり、共振を利用することで、受信信号が比較的小さな場合において、これを的確に捉えることが可能になっている。したがって、例えば
図5において波形γに示すように、第1エコーEC1及び第2エコーEC2が存在している場合、これらの双方について検出することが可能である。しかしながら、受信信号が大きくなり過ぎると、共振回路出力が飽和してしまうおそれがある。例えば波形δに例示する場合での第2エコーEC2のように、破線で示すような本来捉えたい波形から形状が崩れてしまい、ゼロクロスZCとなる時点がずれてしまい、タイミング取得の正確性に欠けてしまう可能性がある。なお、図示の場合、計時ストップパルスの生成タイミングが実際よりも遅延したものになってしまうおそれがある。
【0053】
以上のような特性を踏まえた上で、本実施形態では、第1検出部DT1及び第2検出部DT2のそれぞれで2回の検出を行い、検出された結果からどの計時ストップパルスあるいはこれに対応するエコーを距離想定の算出に採用すべきか、を決定している。
【0054】
以下、
図6を参照して、発生することが想定されるいくつかの受信信号(レーザ光の反射成分)の波形パターンについて説明する。
【0055】
なお、
図6のうち、波形αは、
図5の場合と同じくレーザ投光部3の発光モニタ部31で検出されるレーザ光(パルス光)PL1の一例についての様子を概念的に示している。すなわち、計時スタートパルスについて示している。他の波形A1,A2,B1,B2、X1,X2は、実際に生じ得るものとして想定される受信信号の波形について例示したものであり、ここでは、立上がりエッジ検出方式による第1検出部DT1で受光確認されるための閾値を立上り測距閾値とし、共振を利用したゼロクロス検出方式による第2検出部DT2で受光確認されるための閾値を共振測距閾値とし、仮想的に示している。つまり、各閾値以上のピーク波形を有すれば、それぞれに対応する検出部DT1,DT2において、受光確認がなされることを意味している。この場合、高受信レベル用の第1検出部DT1についての閾値である立上り測距閾値のほうが、低受信レベル用の第2検出部DT2についての閾値である共振測距閾値よりも高いものとなる。
【0056】
以上において、まず、波形A1として例示するように、受光素子4aでの受信信号として、比較的ピークの大きい第1エコーEC1のみが存在する場合が考えられる。典型例としては、霧が無いか非常に薄いため反射成分が生じず、測定対象OBの反射率が高い、という状況の場合に、このようになると考えられる。
【0057】
次に、波形A2として例示するように、受光素子4aでの受信信号として、比較的ピークの小さい第1エコーEC1のみが存在する場合が考えられる。典型例としては、霧が無いか非常に薄いため反射成分が生じないものの、測定対象OBの反射率が低いという状況の場合に、このようになると考えられる。
【0058】
次に、波形B1として例示するように、受光素子4aでの受信信号として、比較的ピークの小さい第1エコーEC1と第2エコーEC2とが存在する場合が考えられる。典型例としては、霧がある程度あり、測定対象OBの反射率が低いという状況の場合に、このようになると考えられる。
【0059】
次に、波形B2として例示するように、受光素子4aでの受信信号として、比較的ピークの大きい第1エコーEC1と第2エコーEC2とが存在する場合が考えられる。典型例としては、霧がある程度以上に濃いが、測定対象OBの反射率も高い、という状況の場合に、このようになると考えられる。
【0060】
次に、波形X1として例示するように、受光素子4aでの受信信号として、比較的ピークの小さい第1エコーEC1と比較的ピークの大きい第2エコーEC2とが存在する場合が考えられる。典型例としては、霧がある程度あり、測定対象OBの反射率が高いという状況の場合に、このようになると考えられる。
【0061】
最後に、波形X2として例示するように、受光素子4aでの受信信号として、比較的ピークの大きい第1エコーEC1と比較的ピークの小さい第2エコーEC2とが存在する場合が考えられる。典型例としては、霧がある程度以上に濃いが、測定対象OBの反射率が低いという状況の場合に、このようになると考えられる。
【0062】
なお、以上をまとめると、まず、霧については、無い場合すなわち霧に起因する反射成分が無い場合(第2エコーEC2:無し)と、ある程度ある場合(第1エコーEC1:小)と、濃い場合すなわち霧に起因する反射成分が多い場合(第1エコーEC1:大)との3パターンが考えられる。一方、測定対象については、反射率が低い場合(第1エコーEC1又は第2エコーEC2:小)と、反射率が高い場合(第1エコーEC1又は第2エコーEC2:大)との2パターンが考えられる。以上の結果から、上記した6つの場合(態様)が想定される。
【0063】
以下、
図7のタイムチャートを参照して、以上のような6つの場合に対する第1及び第2検出部DT1,DT2でのそれぞれ2回の検出についての受光確認状況の様子について考察する。
【0064】
図7は、反射成分の検出パターンに対応する第1及び第2検出部DT1,DT2での受光確認結果の様子を示しており、図中において、タイムチャートT1~T4は、
図6に示した上記6つの場合のうち、波形A1,A2,B1,B2の4つの場合にそれぞれ対応している。一方、タイムチャートT5は、上記6つの場合のうち、波形X1,X2の2つの場合に対応し得るものとなっている。タイムチャートT5については、波形X1として想定される状況と、波形X2として想定される状況とから、タイムチャートT5aのようになる場合と、タイムチャートT5bのようになる場合とが想定されるが、これらについて詳しくは後述する。
【0065】
なお、各タイムチャートT1~T5,T5a,T5bにおいて、上段は、第1検出部DT1での検出における受光確認がなされた回数を示し、下段は、第2検出部DT2での検出における受光確認がなされた回数を示している。すなわち、各タイムチャートにおいてパルスがオンになっているところが、受光確認がされたタイミングを示している。また、これは、
図6において示した各閾値を波形のピークが越えるか否かとも対応している。
【0066】
まず、タイムチャートT1は、
図6の波形A1の場合に対応している。波形A1の場合、比較的ピークの大きい第1エコーEC1が存在し、これに対応して、第1及び第2検出部DT1,DT2の双方での検出において、それぞれ1回ずつ受光確認がなされること(シングルエコー)になる。この場合、第2検出部DT2においては、共振回路出力が飽和してしまって正確性を欠いている可能性があるため、第1検出部DT1での検出における受光タイミング(計時ストップパルス)を採用することで、計時を正確にできる。
【0067】
次に、タイムチャートT2は、
図6の波形A2の場合に対応している。波形A2の場合、比較的ピークの小さい第1エコーEC1が存在し、これに対応して、第2検出部DT2の検出のみにおいて、1回の受光確認がなされること(シングルエコー)になる。この場合、第2検出部DT2での検出における受光タイミング(計時ストップパルス)を採用する。
【0068】
次に、タイムチャートT3は、
図6の波形B1の場合に対応している。波形B1の場合、比較的ピークの小さい第1エコーEC1と第2エコーEC2とが存在し、これらに対応して、第2検出部DT2の検出のみにおいて、2回の受光確認がなされること(デュアルエコー)になる。この場合、第2検出部DT2での2回目の検出における受光タイミング(計時ストップパルス)を採用する。
【0069】
次に、タイムチャートT4は、
図6の波形B2の場合に対応している。波形B2の場合、比較的ピークの大きい第1エコーEC1と第2エコーEC2とが存在し、これらに対応して、第1及び第2検出部DT1,DT2の双方での検出において、それぞれ2回ずつ受光確認がなされること(デュアルエコー)になる。この場合、第2検出部DT2においては、共振回路出力が飽和してしまって正確性を欠いている可能性があるため、第1検出部DT1での2回目の検出における受光タイミング(計時ストップパルス)を採用する。
【0070】
次に、タイムチャートT5は、既述のように、
図6の波形X1又は波形X2の場合に対応している。波形X1及び波形X2の場合のいずれにおいても、第1及び第2検出部DT1,DT2のうち、第1検出部DT1での検出において、1回の受光確認がなされ(シングルエコー)、第2検出部DT2の検出において、2回の受光確認がなされる(デュアルエコー)ことになる。すなわち、この場合、例えば第1検出部DT1側と第2検出部DT2側とでの受光確認の回数の比較のみでは、波形X1の場合と波形X2の場合とのうちどちらの状態になっているかを区別することができない。典型的には、図示のように、第1検出部DT1での受光確認が、第2検出部DT2での1回目の受光確認と2回目の受光確認との間である場合が考えられる。
【0071】
このような状況について、まず、波形X1のような場合のように、比較的ピークの小さい第1エコーEC1と比較的ピークの大きい第2エコーEC2とが存在するのであれば、第1検出部DT1における1回の受光確認は、第2エコーEC2側であると考えられ、この場合、第1検出部DT1での受光確認のタイミングは、第2検出部DT2での2回目の受光確認のタイミングに近いはずである。一方、波形X2のような場合、上記とは逆に、第1検出部DT1での受光確認のタイミングは、第2検出部DT2での1回目の受光確認のタイミングに近いはずである。そこで、タイムチャートT5のようになった場合には、タイムチャートT5a,T5bに例示するように、第1検出DT1での受光確認と第2検出DT2での各回の受光確認との時間差に基づいて、波形X1の場合であるか波形X2の場合であるかを判別する。
【0072】
具体的には、例えばタイムチャートT5aに示すように、第2検出部DT2での1回目の受光確認時R21と第1検出部DT1での受光確認時R1との時間差Txが、第1検出部DT1での受光確認時R1と第2検出部DT2での2回目の受光確認時R22との時間差Tyよりも大きい場合、波形X1の場合であると判断し、第1検出部DT1での受光確認時R1を受光タイミング(計時ストップパルス)として採用する。つまり、この場合、第2エコーEC2すなわち測定対象OBを捉えた2回目の第2検出部DT2の検出においては、共振回路出力が飽和してしまって正確性を欠いている可能性があるため、第1検出部DT1での検出における受光タイミング(計時ストップパルス)を採用する。
【0073】
一方、タイムチャートT5bに示すように、時間差Txが、時間差Tyよりも小さい場合、波形X2の場合であると判断し、第2検出部DT2での2回目の受光確認時R22を受光タイミング(計時ストップパルス)として採用する。
【0074】
以上のように、本実施形態では、第1検出部DT1側での受光確認と第2検出部DT2側での受光確認との時間差の大小関係に基づくことで、確実な距離測定ができる。
【0075】
以下、
図8のフローチャートを参照して、測距装置1による第1及び第2検出部DT1,DT2での受光確認結果に対する出力選択の処理動作について一例を説明する。
【0076】
まず、測距計測部9は、レーザ受光部4(受光素子4a)からの受信信号を受け取ると、第1及び第2検出部DT1,DT2での各2回の検出に関して、第2検出部DT2での受光確認が1回であったか否かを確認する(ステップS101)。ステップS101において、第2検出部DT2での受光確認が1回であったと判定された場合(ステップS101:Yes)、測距計測部9は、さらに、第1検出部DT1での受光確認(1回の受光確認)があったか否かを確認する(ステップS102)。ステップS102において、第1検出部DT1での受光確認があったと判定された場合(ステップS102:Yes)、測距計測部9は、
図6の波形A1つまり
図7のタイムチャートT1の場合に相当すると判断し、第1検出部DT1での検出における受光タイミング(計時ストップパルス)を採用し、これに基づく測定距離の算出を行う(ステップS103)。
【0077】
一方、ステップS102において、第1検出部DT1での受光確認が無かったと判定された場合(ステップS102:No)、測距計測部9は、
図6の波形A2つまり
図7のタイムチャートT2の場合に相当すると判断し、第2検出部DT2での検出における受光タイミング(計時ストップパルス)を採用し、これに基づく測定距離の算出を行う(ステップS104)。
【0078】
次に、ステップS101において、第2検出部DT2での受光確認が1回ではなく、2回であったと判定された場合(ステップS101:No)、測距計測部9は、さらに、第1検出部DT1での受光確認(1回の受光確認)があったか否かを確認する(ステップS105)。ステップS105において、第1検出部DT1での受光確認が無かったと判定された場合(ステップS105:No)、測距計測部9は、
図6の波形B1つまり
図7のタイムチャートT3の場合に相当すると判断し、第2検出部DT2での2回目の検出における受光タイミング(計時ストップパルス)を採用し、これに基づく測定距離の算出を行う(ステップS106)。
【0079】
一方、ステップS105において、第1検出部DT1での受光確認があったと判定された場合(ステップS105:Yes)、測距計測部9は、さらに、第1検出部DT1での受光確認が1回であったか否かを確認する(ステップS107)。ステップS107において、第1検出部DT1での受光確認が1回ではなく、2回であったと判定された場合(ステップS107:No)、測距計測部9は、
図6の波形B2つまり
図7のタイムチャートT4の場合に相当すると判断し、第1検出部DT1での2回目の検出における受光タイミング(計時ストップパルス)を採用し、これに基づく測定距離の算出を行う(ステップS108)。
【0080】
次に、ステップS107において、第1検出部DT1での受光確認が1回であったと判定された場合(ステップS107:Yes)、すなわち、第1検出部DT1で1回の受光確認がなされ、第2検出部DT2で2回の受光確認がなされていると判断された場合、測距計測部9は、
図7のタイムチャートT5のような場合であると判断し、さらに、受光確認時の時間差について考察する(ステップS109)。つまり、測距計測部9は、ステップS109において、時間差Txが、時間差Tyよりも大きいか否かを確認する。ステップS109において、時間差Txが、時間差Tyよりも大きいと判断された場合(ステップS109:Yes)、測距計測部9は、
図6の波形X1つまり
図7のタイムチャートT5aの場合に相当すると判断し、第1検出部DT1での受光確認を受光タイミング(計時ストップパルス)として採用し、これに基づく測定距離の算出を行う(ステップS110)。
【0081】
一方、ステップS109において、時間差Txが、時間差Tyよりも大きくないと判断された場合(ステップS109:No)、測距計測部9は、
図6の波形X2つまり
図7のタイムチャートT5bの場合に相当すると判断し、第2検出部DT2での2回目の受光確認を受光タイミング(計時ストップパルス)として採用し、これに基づく測定距離の算出を行う(ステップS111)。
【0082】
以上のように、ここでは、例えば、第1及び第2検出部DT1,DT2の検出パターンの組合せとして、第2検出部DT2で少なくとも2回の受光確認をし、かつ、第1検出部DT1で1回の受光確認をした場合、第1検出部DT1での受光確認又は第2検出部DT2での2回目の受光確認に基づき測定距離を算出している。さらに、第1検出部DT1での受光確認が、第2検出部DT2での1回目の受光確認と2回目の受光確認との間である場合、第1検出部DT1での受光確認と第2検出部DT2での各回の受光確認との時間差Tx,Tyに基づき、測定距離の算出に際して第1検出部DT1での受光確認及び前記第2検出部DT2での2回目の受光確認のうちいずれを採用するかを決定している。これにより、正確な測定距離の算出を可能にしている。
【0083】
また、以上のうち、ステップS109において、例えば第1検出部DT1での受光確認が、第2検出部DT2での2回の受光確認よりも後である場合も、時間差Txが、時間差Tyよりも大きいと判断された場合(ステップS109:Yes)に含まれ、この場合も、第1検出部DT1での受光確認に基づき測定距離を算出することになる。一方、例えば第1検出部DT1での受光確認が、第2検出部DT2での2回の受光確認よりも前である場合は、時間差Txが、時間差Tyよりも大きくないと判断された場合(ステップS109:No)に含まれ、この場合も、第2検出部DT2での2回目の受光確認に基づき測定距離を算出することになる。
【0084】
以上のように、本実施形態に係る測距装置1及びこれを用いた測距方法では、測距計測部9を構成する測距部9aのうち反射成分の受光についてゲインの異なる検出方法である第1及び第2検出によってそれぞれ検出を行う第1及び第2検出部DT1,DT2の双方において、1回の光射出に対して時間差を有する少なくとも2回の検出を行い、第1及び第2検出部DT1,DT2で行った際の検出パターンの組合せに基づいて算出部である距離値光量値演算処理部9bにおいて測定距離を算出することで、例えば測定対象が反射率の低い物体である場合や、濃い霧が発生している場合であっても、測定対象までの距離測定を確実に行うことができる。
【0085】
〔その他〕
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0086】
まず、上記では、1回の光射出に対して第1検出部DT1及び第2検出部DT2のそれぞれで2回の検出を行い、検出された結果からどの計時ストップパルスあるいはこれに対応するエコーを採用すべきかを決定するものとしているが、検出の回数は2回に限らず、3回以上としてもよい。また、上記では、外乱について霧を対象とした一例を説明しているが、雨,雪などの外乱についても対応可能にできる。
【0087】
また、上記では、2次元走査ミラー2における各点での検出結果について説明しているが、各点での検出結果を、ラベリング等の処理により、走査エリア全体の画素、または一定以上の画素においてすなわち2次元的エリアにまとめて取り扱うものとすることができる。なお、この場合において、捉えられる2次元的形状から外乱の特性を確認するものとしてもよい。
【0088】
また、上記では、測距装置1は、走行する列車の前方確認等において、霧,雨,雪などの外乱が測距視野に含まれる場合がある装置であるものとしているが、これに限らず、例えばドアの挟み込み検出、周辺検知、障害物検知等に用いられる装置であって、屋外での使用によるものとすることができる。
【0089】
また、上記実施形態では、2次元走査ミラー2において、例えば光走査部として電磁駆動式の2次元ガルバノミラーを用いることが考えられるが、本発明はこれに限定されるものではなく、電磁駆動式、静電方式、圧電方式、熱方式などの各種の駆動方式で光反射面を有する可動部を揺動駆動する構成の光走査部にも適用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1…測距装置、2…2次元走査ミラー(スキャナ)、3…レーザ投光部、4…レーザ受光部、4a…受光素子、5a…反射ミラー、5b…投光/受光分離器、6…投受光窓、9…測距計測部、9a…測距部、9b…距離値光量値演算処理部、10…制御部、11…スキャナドライバ、31…発光モニタ部、12…フィルタ、13…スキャナ制御部、21…ミラー、A1,A2,B1,B2,X1,X2…波形、C0~C3…曲線、DT1…第1検出部、DT2…第2検出部、E11,E12,E21,E22…エコー検出部、EC1…第1エコー、EC2…第2エコー、IF…外部インターフェース、LC…光量検出回路、OB…測定対象、PL1…レーザ光(パルス光)、R1,R21,R22…受光確認時、RC1…立ち上り測距回路、RC2…共振測距回路、T1~T5,T5a,T5b…タイムチャート、Tx,Ty…時間差、α~δ…波形