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7081996眼鏡フレームの形状データを取得するための装置および方法、レンズを提供するためのシステム、ならびに、当該装置を制御するプログラム
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  • -眼鏡フレームの形状データを取得するための装置および方法、レンズを提供するためのシステム、ならびに、当該装置を制御するプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】眼鏡フレームの形状データを取得するための装置および方法、レンズを提供するためのシステム、ならびに、当該装置を制御するプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/20 20060101AFI20220531BHJP
   G01B 21/20 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
G01B5/20 C
G01B21/20 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018124090
(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2020003380
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】509333807
【氏名又は名称】ホヤ レンズ タイランド リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HOYA Lens Thailand Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴江 喬弘
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-243950(JP,A)
【文献】特開平06-066553(JP,A)
【文献】国際公開第2014/103800(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0094589(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00- 5/30
G01B 21/00-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡フレームの形状を計測するための装置であって、
フレームの外形の形状データと前記フレームのリムの形状データとを取得するための取得手段と、
前記リムの形状データの基準点が、前記外形の形状データに基づくフレームセンターとなるように、前記リムの形状データを変換するための変換手段と、
前記外形の形状データと変換後の前記リムの形状データとを出力するための出力手段とを備える、装置。
【請求項2】
眼鏡フレームの形状を計測するための装置であって、
フレームの外形の形状データと前記フレームのリムの形状データとを取得するための取得手段と、
前記外形の形状データの基準点が、前記リムの形状データに基づくフレームセンターとなるように、前記外形の形状データを変換するための変換手段と、
前記リムの形状データと変換後の前記外形の形状データとを出力するための出力手段とを備える、装置。
【請求項3】
前記出力手段は、前記フレームにはめ込まれるレンズの加工注文をさらに出力する、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記外形の形状データと変換後の前記リムの形状データとに基づくレンズの加工の可否を表示するための表示装置をさらに備える、請求項1~3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記フレームの外形の形状データを取得することは、
3次元計測により前記フレームのあおり角を算出することと、
前記あおり角だけ前記フレームを傾けることにより前記フレームを水平にすることと、
水平にされた前記フレームの外形を計測することとを含む、請求項1~4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記取得手段は、スタイラスを含む、請求項1~5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記スタイラスは、その先端が半球面であるスタイラス、または、その断面が円形の一部であるスタイラスのいずれかを含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記リムの形状データを取得することは、
前記スタイラスの円柱部分を前記フレームに押し付けながら前記スタイラスを前記フレームの凹面側のリムに沿って上昇させることと、
前記スタイラスの上昇が停止した後に、前記スタイラスと前記リムとの接触状態を維持しつつ360度旋回させることとを含む、請求項6または7に記載の装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の装置と、
前記装置から出力される前記フレームの外形の形状データと、前記リムの形状データとを出力するための装置とを備える、レンズを提供するためのシステム。
【請求項10】
請求項1~8のいずれかに記載の装置と、
前記フレームの外形の形状データと、前記リムの形状データとに基づくレンズを製造するための3Dプリンタとを備える、レンズを提供するためのシステム。
【請求項11】
眼鏡フレームの形状を計測するための方法であって、
フレームの外形の形状データを取得するステップと、
前記フレームのリムの形状データを取得するステップと、
前記リムの形状データの基準点が、前記外形の形状データに基づくフレームセンターとなるように、前記リムの形状データを変換するステップと、
前記外形の形状データと変換後の前記リムの形状データとを出力するステップとを備える、方法。
【請求項12】
眼鏡フレームの形状を計測するための方法であって、
フレームの外形の形状データを取得するステップと、
前記フレームのリムの形状データを取得するステップと、
前記外形の形状データの基準点が、前記リムの形状データに基づくフレームセンターとなるように、前記外形の形状データを変換するステップと、
前記リムの形状データと変換後の前記外形の形状データとを出力するステップとを備える、方法。
【請求項13】
眼鏡フレームの形状を計測するための装置を制御するプログラムであって、前記プログラムは、前記装置に、
水平状態のフレームの外形の形状データを取得するステップと、
前記フレームの凹面側のリムの形状データを取得するステップと、
前記リムの形状データの基準点が、前記外形の形状データに基づくフレームセンターとなるように、前記リムの形状データを変換するステップと、
前記外形の形状データと変換後の前記リムの形状データとを出力するステップとを実行させる、プログラム。
【請求項14】
眼鏡フレームの形状を計測するための装置を制御するプログラムであって、前記プログラムは、前記装置に、
フレームの外形の形状データを取得するステップと、
前記フレームのリムの形状データを取得するステップと、
前記外形の形状データの基準点が、前記リムの形状データに基づくフレームセンターとなるように、前記外形の形状データを変換するステップと、
前記リムの形状データと変換後の前記外形の形状データとを出力するステップとを実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は眼鏡のレンズに関し、より特定的には、フレームに装着されるレンズを加工するためのデータを取得する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡の提供において、眼鏡のユーザが選択したフレームの形状に適合するようにレンズを加工する技術が知られている。たとえば、特開2012-185490号公報(特許文献1)は、「眼鏡レンズの段付き加工形状を含む眼鏡レンズ加工形状を取得する」ための技術を開示している。当該技術によると、「眼鏡フレームのリムに取り付けられている備え付けレンズに代えて、備え付けレンズよりコバが厚い屈折力を持つ度付きレンズをリムに取り付けるための眼鏡レンズ加工形状取得方法は、備え付けレンズの輪郭を取得するレンズ輪郭取得ステップと、備え付けレンズがリムに取り付けられた状態で、前記備え付けレンズ面上での、リムの内側境界を取得するリム境界取得ステップと、を有し、備え付けレンズの輪郭に基づいて度付きレンズの外形加工形状を取得し、リムの内側境界に基づいて度付きレンズの段付き加工形状を取得する」というものである([要約]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-185490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術によると、レンズの全周のステップ加工は、測定によって得られたステップ量を用いて行なわれていたが、ステップ加工されたレンズの外形形状は、必ずしも品質的に優れているとは言い難かった。多くの場合、ステップ加工の前に事前の加工テストが必要であり、あるいは、サイズ微調整、ステップ形状の修正その他の微修正がステップ加工後に必要であった。
【0005】
また、外形形状を取得するための従来の技術によれば、加工業者のようにレンズの外形形状を取得する者が手元にフレームを有している場合に限り実現できる一方、手間がかかり、また、精度がよくない場合もあった。たとえば、レンズの外形をスキャンする際には、フレームからダミーレンズを取り外し、そのダミーレンズの凹面を上にした状態で水平になるようにスキャナーの土台に配置し、当該スキャナーによる二次元的なスキャンが行なわれていた。この場合、必ずしも凹面を上にしたレンズが水平の状態にあるとは言い難く、その結果、ステップ加工後のレンズの外形形状とフレームのリムの形状とが一致せず、レンズをフレームに入れた後の見た目が良くなかった。また、PD(Pupillary Distance)ずれや軸ずれも発生していた。
【0006】
したがって、レンズのステップ加工の精度を高める技術が必要とされている。また、PDずれや軸ずれが発生しないようにレンズの外形形状を加工するための技術が必要とされている。
【0007】
本開示は、上述のような問題点を解決するためになされたものであって、ある局面における目的は、レンズの加工精度が向上するように眼鏡フレームの形状を計測するための装置を提供することである。別の局面における目的は、フレームが手元にない場合でも当該フレームの形状に応じてレンズを加工できる装置を提供することである。
【0008】
他の局面における目的は、レンズの加工精度が向上するシステムを提供することである。他の局面における目的は、レンズの加工精度が向上するように眼鏡フレームの形状を計測するための方法を提供することである。さらに他の局面における目的は、レンズの加工精度が向上するように眼鏡フレームの形状を計測する装置を制御するためのプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ある実施の形態に従うと、眼鏡フレームの形状を計測するための装置が提供される。この装置は、フレームの外形の形状データとフレームのリムの形状データとを取得するための取得手段と、リムの形状データの基準点が、外形の形状データに基づくフレームセンターとなるように、リムの形状データを変換するための変換手段と、外形の形状データと変換後のリムの形状データとを出力するための出力手段とを備える。
【0010】
他の実施の形態に従う、眼鏡フレームの形状を計測するための装置は、フレームの外形の形状データとフレームのリムの形状データとを取得するための取得手段と、外形の形状データの基準点が、リムの形状データに基づくフレームセンターとなるように、外形の形状データを変換するための変換手段と、外形の形状データと変換後のリムの形状データとを出力するための出力手段とを備える。
【0011】
ある実施の形態に従うと、出力手段は、フレームにはめ込まれるレンズの加工注文をさらに出力する。
【0012】
ある実施の形態に従うと、上記装置は、外形の形状データと変換後のリムの形状データとに基づくレンズの加工の可否を表示するための表示装置をさらに備える。
【0013】
ある実施の形態に従うと、フレームの外形の形状データを取得することは、3次元計測によりフレームのあおり角を算出することと、あおり角だけフレームを傾けることによりフレームを水平にすることと、水平にされたフレームの外形を計測することとを含む。
【0014】
ある実施の形態に従うと、取得手段は、スタイラスを含む。
ある実施の形態に従うと、スタイラスは、その先端が半球面であるスタイラス、または、その断面が円形の一部であるスタイラスのいずれかを含む。
【0015】
ある実施の形態に従うと、リムの形状データを取得することは、スタイラスの円柱部分をフレームに押し付けながらスタイラスをフレームの凹面側のリムに沿って上昇させることと、スタイラスの上昇が停止した後に、スタイラスとリムとの接触状態を維持しつつ360度旋回させることとを含む。
【0016】
ある実施の形態に従うと、上記のいずれかに記載の装置と、当該装置から出力されるフレームの外形の形状データと、リムの形状データとを出力するための装置とを備える、レンズを提供するためのシステムが提供される。
【0017】
ある実施の形態に従うと、上記のいずれかに記載の装置と、フレームの外形の形状データと、リムの形状データとに基づくレンズを製造するための3Dプリンタとを備える、レンズを提供するためのシステムが提供される。
【0018】
ある実施の形態に従うと、眼鏡フレームの形状を計測するための方法が提供される。この方法は、フレームの外形の形状データを取得するステップと、フレームのリムの形状データを取得するステップと、リムの形状データの基準点が、外形の形状データに基づくフレームセンターとなるように、リムの形状データを変換するステップと、外形の形状データと変換後のリムの形状データとを出力するステップとを備える。
【0019】
他の実施の形態に従うと、眼鏡フレームの形状を計測するための方法は、フレームの外形の形状データを取得するステップと、フレームのリムの形状データを取得するステップと、外形の形状データの基準点が、リムの形状データに基づくフレームセンターとなるように、外形の形状データを変換するステップと、外形の形状データと変換後のリムの形状データとを出力するステップとを備える。
【0020】
他の実施の形態に従うと、眼鏡フレームの形状を計測するための装置を制御するプログラムが提供される。このプログラムは、上記装置に、水平状態のフレームの外形の形状データを取得するステップと、フレームの凹面側のリムの形状データを取得するステップと、リムの形状データの基準点が、外形の形状データに基づくフレームセンターとなるように、リムの形状データを変換するステップと、外形の形状データと変換後のリムの形状データとを出力するステップとを実行させる。
【0021】
さらに他の実施の形態に従う、眼鏡フレームの形状を計測するための装置を制御するプログラムは、当該装置に、フレームの外形の形状データを取得するステップと、フレームのリムの形状データを取得するステップと、外形の形状データの基準点が、リムの形状データに基づくフレームセンターとなるように、外形の形状データを変換するステップと、外形の形状データと変換後のリムの形状データとを出力するステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0022】
ある局面において、眼鏡フレームの外形形状を精度よく取得できるのでレンズの加工精度が向上し得る。別の局面において、フレームが手元にない場合でも当該フレームの形状に応じてレンズを加工することができる。
【0023】
この発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】一実施の形態に従うシステム100の構成の概要を表す図である。
図2】端末120または端末130として機能する汎用のコンピュータ200のハードウェア構成を表わすブロック図である。
図3】システム100で行なわれる処理の一部を表すフローチャートである。
図4】フレームトレーサ110の外観を表す図である。
図5】フレームトレーサ110がフレーム400のリム401の外形形状を測定する様子を模式的に表す図である。
図6】一実施の形態に従うスタイラス115の外観を表す図である。
図7】一実施の形態に従うスタイラス115がリム401の内周に接触している状態を表す図である。
図8】一実施の形態に従うスタイラス115とリム401とが接触している状態を表す断面図である。
図9】フレームトレーサによって得られた二次元形状データに基づいて得られるリム401の外形を表す図である。
図10】フレームトレーサによって得られた三次元形状データに基づいて得られるリム401の外形を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0026】
[概要]
まず、本実施の形態において開示される技術思想の概要について説明する。フレームにはめ込まれるレンズをステップ加工するために、フレームの形状データ(ステップ形状のデータ)は、例えば、以下のように取得される。
【0027】
(1)計測者は、公知の測定装置(フレームトレーサ)を用いてフレーム形状の3次元測定を行ない、測定装置は、フレームの煽り(あおり)角を算出する。
【0028】
(2)フレームの煽り角が算出されると、測定装置のチルト機構は、その煽り角と同じ角度だけフレームを傾けて、当該フレームを片目水平の状態とする。当該チルト機構は、例えば、HOYA社から提供されているフレームトレーサ(品番:GT5000)に搭載されているFrame Swing方法により実現される。
【0029】
(3)測定装置は、水平に維持されているフレームの外形形状を測定する。たとえば、測定装置は、レンズがはめ込まれるリムの基底部(溝部)をトレースすることにより、フレームの外形形状を測定し、測定結果を第1のフレーム形状として取得する。
【0030】
(4)測定装置は、第2のフレーム形状を取得する。例えば、測定装置は、スタイラスの円柱部分を当該フレームの内周部分に押しつけながら、フレームの凹面側のリムに沿ってスタイラスを上昇させる。スタイラスの突起部がフレームに当たるとスタイラスが停止する。スタイラスが停止すると、測定装置は、当該スタイラスの上方に負荷をかけることでスタイラスとフレームとの接触状態を維持しつつ、フレームの内周に沿ってスタイラスを一周させて、フレームの3次元形状データを取得する。
【0031】
(5)測定装置は、取得した二つの形状データを従来のフレーム形状データに変換し、フレームの凹面側のリムの形状データを、外形の形状データのフレームセンターを基準とする極座標系(r(θ))における半径データに変換する。変換する理由は、フレーム形状データに基づくフレームセンターと、リムの形状データに基づくフレームセンターとが一致しないためである。測定装置によって算出された変換後の各データは、データ通信端末に入力される。データ通信端末は、例えば、周知の構成を有する汎用コンピュータによって実現される。データ通信端末は、インターネット、VPN(Virtual Private Network)その他の通信回線により、レンズの加工機の制御装置に接続されている。加工機は眼鏡全体あるいはレンズを提供する事業者によって使用される。制御装置は、当該事業者によって、あるいは、当該事業者と密接な関係を有する第三者によって使用される。
【0032】
(6)データ通信端末は、レンズの加工注文と、当該レンズについて取得された上記変換後の各形状データを、レンズメーカーの制御装置に送信する。制御装置が加工注文と各形状データを受信すると、レンズのステップ加工を依頼するための発注が成立する。
【0033】
(7)加工機は、各形状データに基づいてレンズを加工する。より詳しくは、通常のカット工程と同様に、マーキング、レンズブロックの後、レンズが加工機に投入される。制御装置は、加工機に、外形加工のための第1の形状データ(フレームの外形形状データ)と、ステップ加工のための第2の形状データ(リムの形状データ)とを加工機に送信する。加工機は、与えられたデータに従って、フレーム形状のフレームセンターを位置の基準として、外形加工およびステップ加工を行なう。
【0034】
(8)レンズの加工が完了すると、レンズメーカは、レンズの周長を計測し、顧客(眼鏡販売店)に加工後のレンズ(カットレンズともいう。)を供給する。レンズをフレームに入れる注文が発行されている場合には、顧客は、レンズをフレームの枠(リム)に入れる。このような構成によれば、レンズの外周に形成されたステップ形状が、眼鏡フレームのリムの形状に対応していることが確実になるので、レンズをリムにはめ込む場合の精度が向上し得る。
【0035】
(9)なお、各形状データがレンズ加工について規定された条件を満たさない場合には、制御装置は、その旨をデータ通信端末に通知し得る。
【0036】
(10)さらに別の局面において、レンズの試作品が、眼鏡フレームの計測により取得された各形状データを用いて作成されてもよい。例えば、フレームトレーサから出力される各形状データを用いる3Dプリンタがレンズを製造してもよい。この場合、眼鏡販売店は、一般ユーザが選択した眼鏡フレームに対して3Dプリンタで製造された試作レンズを入れることができる。一般ユーザは、試作レンズがはめ込まれた眼鏡を装着することにより使用感を確認することができる。
【0037】
上記のようなアルゴリズムにより、フレームの内周のステップ形状が正確に取得されるので、当該フレームにはめ込まれるレンズの外周部も正確に加工できる。その結果、当該フレームと当該レンズからなる眼鏡全体の外観が向上し得る。
【0038】
ステップ加工されたレンズは、フレームの内周部に形成された段差部によって保持される。レンズとフレームとのはめ合い精度が向上する結果、レンズがフレームに対して計測によって得られた所定の位置に嵌め合されるので、PDずれあるいは軸ずれのような位置決め不備に基づく不良の発生が抑制され得る。
【0039】
[システム構成]
図1を参照して、眼鏡を提供するためのシステム100について説明する。図1は、一実施の形態に従うシステム100の構成の概要を表す図である。システム100は、眼鏡販売店101と、レンズメーカ102とによって実現される。眼鏡販売店101は、フレームトレーサ110と端末120とを備える。レンズメーカ102は、端末130とレンズ加工機140とを備える。端末120と端末130とは、例えばインターネットあるいはVPN(Virtual Private Network)によって、双方向に通信可能に接続されている。
【0040】
フレームトレーサ110は、入力IF(Interface)111と、制御回路112と、チルト機構113と、アクチュエータ114と、スタイラス115と、増幅器116と、AD(Analog to Digital)コンバータ117と、演算回路118と、出力IF119とを備える。フレームトレーサ110は、メガネのフレームの形状、特に、リムの形状を測定する。たとえば、フレームトレーサ110は、リムの基底部(溝部、リム線)をトレースし、また、レンズを受ける端部をトレースする。ある局面に従うフレームにおいて、レンズの装着を受けるリムは、段差形状に構成されている。
【0041】
入力IF111は、フレームトレーサ110に対する指示の入力を受け付ける。入力IF111は、たとえば、タッチパネルその他のソフトキー、ダイヤルスイッチその他のハードキーによって実現される。
【0042】
制御回路112は、入力IF111に対して与えられた指示に基づいて、フレームトレーサ110の動作を制御する。ある局面において、制御回路112は、チルト機構113の位置を制御する。別の局面において、制御回路112は、スタイラス115を移動あるいは旋回させるために、アクチュエータ114に命令を送る。
【0043】
チルト機構113は、フレームの姿勢(傾き)を変えるために、回転するように構成されている。チルト機構113は、たとえば、フレームが載置されるトレイの傾きを変える。
【0044】
アクチュエータ114は、スタイラス115を旋回させる。また、アクチュエータ114は、リムの内周を回転するようにスタイラス115を移動させる。
【0045】
増幅器116は、スタイラス115の移動に応じて出力されるアナログ信号を増幅する。増幅された信号は、ADコンバータ117に入力される。
【0046】
ADコンバータ117は、アナログ信号をデジタル信号に変換する。デジタル信号は演算回路118に入力される。
【0047】
演算回路118は、入力されたデジタル信号を用いて、フレームの形状データ、特に、リムの形状データを算出する。例えば、演算回路118は、3次元計測によりフレームのあおり角を算出し、あおり角だけ傾けることにより水平にされたフレームの外形を計測する。算出される形状データは、二次元データおよび三次元データを含む。
【0048】
出力IF119は、演算回路118によって得られた形状データをフレームトレーサ110の外部に出力する。たとえば、形状データは、端末120に入力される。
【0049】
端末120は、フレームトレーサ110によって取得されたデータの入力を受ける。端末120は、例えば、周知の構成を有する汎用コンピュータによって実現される。汎用コンピュータは、デスクトップ端末、ラップトップ端末、タブレット端末等を含み得る。端末120は、端末130に接続されている。端末120は、フレームの計測によって得られた各形状データと、当該フレームに用いられるレンズの加工を依頼する発注データとを端末130に送信する。
【0050】
レンズメーカ102において、端末130は、端末120から送信された各データを受信する。端末130も、端末120と同様に、周知の構成を有する汎用コンピュータによって実現される。端末130は、受信した各データを用いたレンズ加工が実際に可能かどうかをシミュレーションにより検証する。端末130は、レンズ加工が実際に可能であることを確認すると、レンズの加工を依頼する注文を受け付けた旨を端末120に送信する。また、端末130は、そのデータをレンズ加工機140に送信する。他方、端末130は、受信した各データを用いたレンズ加工が実現できないことを確認すると、端末120にその旨を通知し、当該発注データに基づく発注を受け付けない。これにより、加工後のレンズがリムの内周に設けられた溝(リム線)に適切にはめ込めないという問題の発生を防止できる。
【0051】
注文が受け付けられると、レンズ加工機140は、端末130が端末120から受信した形状データを用いて、レンズのステップ加工を行なう。加工後のレンズは、予め定められた検査工程を経て、当該レンズが良品であると判定されると、眼鏡販売店101に加工済みレンズとして送信される。
【0052】
別の局面において、端末120は、レンズデザイナーが使用する端末(図示しない)に対して、フレームの外形の形状データと、リムの形状データとを送信してもよい。レンズデザイナーは、これらの形状データを用いて、レンズを設計し、必要に応じてレンズの仕様を変更できるので、設計効率が向上し得る。
【0053】
図1に示されるフレームトレーサ110は、以下に限定されないが、少なくとも一つのプロセッサ(CPU)、少なくとも一つのASIC(Application Specific Integrated Circuit)、および/または、少なくとも一つのFPGA(Field Programmable Gate Array)のような少なくとも一つの半導体集積回路を含む回路によって実現され得る。少なくとも一つのプロセッサは、少なくとも一つの機械読み取り可能な有形の記憶媒体から一つ以上の命令を読み取ることにより、フレームトレーサ110の全てのまたは一部の機能を実行するように構成されている。そのような記憶媒体は、以下に限定されないが、あらゆる種類のハードディスク、CD(Compact Disc)またはDVD(Digital Verstaile Disc)のようなあらゆる種類の光媒体、揮発メモリおよび不揮発メモリのようなあらゆる種類の半導体メモリを含む多くの形態をとり得る。揮発媒体は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)およびSRAM(Static Random Access Memory)を含み得る。不揮発媒体は、ROM(Read Only Memory)またはNVRAM(Non-Volatile RAM)を含み得る。半導体メモリは、また、少なくとも一つのプロセッサと共に回路の一部になり得る半導体回路であり得る。ASICは、図1に示される全てのあるいは一部の機能を実行するように構成された集積回路であり得る。FPGAは、製造後に、図1に示される全てのあるいは一部の機能を実行するように構成された集積回路であり得る。
【0054】
[端末の構成]
図2を参照して、端末120,端末130を実現するコンピュータの構成について説明する。図2は、端末120または端末130として機能する汎用のコンピュータ200のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【0055】
コンピュータ200は、主たる構成要素として、プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)1と、コンピュータ200のユーザによる指示の入力を受けるマウス2およびキーボード3と、CPU1によるプログラムの実行により生成されたデータ、又はマウス2若しくはキーボード3を介して入力されたデータを揮発的に格納するRAM4と、データを不揮発的に格納するハードディスク5と、光ディスク駆動装置6と、モニタ8と、通信IF(Interface)7とを備える。各構成要素は、相互にバスによって接続されている。光ディスク駆動装置6には、CD-ROM9その他の光ディスクが装着される。通信IF7は、USB(Universal Serial Bus)インターフェイス、有線LAN(Local Area Network)、無線LAN、Bluetooth(登録商標)インターフェイス等を含むが、これらに限られない。
【0056】
コンピュータ200における処理は、各ハードウェアと、CPU1により実行されるソフトウェアとによって実現される。このようなソフトウェアは、ハードディスク5に予め格納されている場合がある。また、ソフトウェアは、CD-ROM9その他のコンピュータ読み取り可能な不揮発性のデータ記録媒体に格納されて、プログラム製品として流通している場合もある。あるいは、当該ソフトウェアは、インターネットその他のネットワークに接続されている情報提供事業者によってダウンロード可能なプログラム製品として提供される場合もある。このようなソフトウェアは、光ディスク駆動装置6その他のデータ読取装置によってデータ記録媒体から読み取られて、あるいは、通信IF7を介してダウンロードされた後、ハードディスク5に一旦格納される。そのソフトウェアは、CPU1によってハードディスク5から読み出され、RAM4に実行可能なプログラムの形式で格納される。CPU1は、そのプログラムを実行する。
【0057】
図2に示されるコンピュータ200を構成する各構成要素は、一般的なものである。したがって、本実施の形態に係る本質的な部分は、コンピュータ200に格納されたプログラムであるともいえる。コンピュータ200のハードウェアの動作は周知であるので、詳細な説明は繰り返さない。
【0058】
なお、データ記録媒体としては、CD-ROM、FD(Flexible Disk)、ハードディスクに限られず、磁気テープ、カセットテープ、光ディスク(MO(Magnetic Optical Disc)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc))、IC(Integrated Circuit)カード(メモリカードを含む)、光カード、マスクROM、EPROM(Electronically Programmable Read-Only Memory)、EEPROM(Electronically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュROM、SSD(Solid State Drive)などの半導体メモリ等の固定的にプログラムを担持する不揮発性のデータ記録媒体でもよい。
【0059】
ここでいうプログラムとは、CPUにより直接実行可能なプログラムだけでなく、ソースプログラム形式のプログラム、圧縮処理されたプログラム、暗号化されたプログラム等を含み得る。
【0060】
[制御構造]
図3を参照して、システム100の制御構造について説明する。図3は、システム100で行なわれる処理の一部を表すフローチャートである。
【0061】
ステップS310にて、システム100は、フレームをチルトさせることのできる公知のメカ機構を有したフレームトレーサ110でフレームを3次元的に測定し、フレームの煽り角を算出する。
【0062】
ステップS320にて、フレームトレーサ110は、フレームの煽り角を算出したら、そのあおり角と同等なだけチルト機構でフレームを傾け、フレームを片眼水平の状態にする。
【0063】
ステップS330にて、フレームトレーサ110は、フレームの外形形状を再度測定する。
【0064】
ステップS340にて、フレームトレーサ110は、スタイラスの円柱部分をフレームに押しつけながら、スタイラスをフレームの凹面側のリムに沿って上昇させ、スタイラスがある位置で停止したら、上方に負荷をかけながら360度回転させて形状測定を行い、3次元形状を取得する。
【0065】
ステップS350にて、フレームトレーサ110は、3次元の形状測定の結果として、フレーム形状データa(rθz,xyz)と、ステップ形状データb(rθz,xyz)とを取得する。ある局面において、フレーム形状データaは、フレームを構成するリムの基底にある溝部のトレースにより得られるデータに相当する。ステップ形状データbは、フレームの凹面の内側(眼球側)のリムの端部をトレースすることにより得られるデータに相当する。
【0066】
ステップS360にて、フレームトレーサ110は、取得したフレーム形状データa、ステップ形状データbを従来のフレーム形状データの形式に置換する。さらに、フレームトレーサ110は、ステップ形状データbを、フレーム形状データaについてのフレームセンターを基準点とする半径データに置換する。
【0067】
ステップS370にて、フレームトレーサ110は、フレーム形状データaをVCA(Visual Clip Art)形式に則ったフレーム形状データに変換する。フレームトレーサ110は、さらに、フレーム形状データaを、ステップ形状データbに基づくステップ形状の基準点をフレームセンターとする形状データに変換する。
【0068】
ステップS380にて、端末120は、カットオーダー送信時に、これら2つのデータをフロントエンドシステムから工場サーバー(たとえば、端末130)へ転送する。オーダーを受信すると、端末130は、これらのデータを用いて、外形形状と凹面側リム形状との差が予め定められた値以上あるか否かを判断する。例えば、この差が9mm以上ある場合には、工場サーバー(端末130)は、当該注文を受けられない旨を端末120に通知する。他方、端末130は、端末120から送られたデータに基づくレンズ加工が可能であると判断すると、フレーム形状データaおよびステップ形状データbと、レンズ加工を開始する命令とをレンズ加工機140に送信する。レンズ加工機140は、これらのデータを用いてレンズを加工する。加工されたレンズは、レンズメーカ102から眼鏡販売店101に送られる。
【0069】
図4を参照して、フレームトレーサ110の構成について説明する。図4は、フレームトレーサ110の外観を表す図である。フレームトレーサ110は、チルト機構113と本体410とを備える。チルト機構113は、本体410の内部に配置されている制御回路112によって制御される回転機構により、チルト角420だけ回転し得る。
【0070】
図5を参照して、フレームトレーサ110についてさらに説明する。図5は、フレームトレーサ110がフレーム400のリム401の外形形状を測定する様子を模式的に表す図である。ある局面において、スタイラス115は、アクチュエータ114の運動に応じてリム401のリム線まで移動される。その後、スタイラス115は、リム401との接触状態を維持した状態で回転および旋回して、フレーム400の右目レンズ用のリム401および左目用のリム402の形状をそれぞれ計測する。
【0071】
図6を参照して、スタイラス115の構造について説明する。図6は、一実施の形態に従うスタイラス115の外観を表す図である。スタイラス115は、突起部610を有する。リムの内周がリム線による段差を有する場合、突起部610は段差に当たると、リム401とスタイラス115との接触状態が維持される。
【0072】
図7および図8を参照して、フレームとスタイラスとの関係について説明する。図7は、一実施の形態に従うスタイラス115がリム401の内周に接触している状態を表す図である。図8は、一実施の形態に従うスタイラス115とリム401とが接触している状態を表す断面図である。
【0073】
図7に示されるように、突起部610は、リム401の内周に形成された溝(リム線)の側面に接触している。その溝には、ステップ加工されたレンズの外周の端部が嵌め合される。突起部610の外径は、溝の間隔よりも小さいことが望ましい。
【0074】
また、ある局面において、突起部610の形状は、その側面が円筒であり、かつ先端が半球面状(断面が半円形状)であることが好ましい。仮に、突起部610が平たい板のような形状である場合、リム401のカーブに沿ってスタイラスを走査させると、突起部610がリムとの摩擦によって引っかかり、うまくリムの形状を測定できない可能性がある。しかしながら、突起部610の側面が円筒であり、かつ先端が半球面状であれば、リム401のカーブに沿って内側を滑らかに測定することができる。
【0075】
図8に示されるように、より詳しくは、ある局面において、スタイラス115は、突起部610と、スタイラス115の軸の側面とにおいて、リム401の溝の端部と接触している。この接触の状態が維持されるように、突起部610がリム401を押す力がスタイラス115に作用している。図8において、点750は、レンズ外形となるリム溝内側を規定する。点751は、ステップ加工位置となるリム内径を規定する。
【0076】
図9および図10を参照して、形状データに基づいて得られる外形について説明する。図9は、フレームトレーサによって得られた二次元形状データに基づいて得られるリム401の外形を表す図である。線910は、フレームの凹面側の端部の輪郭を表す。ある局面において、当該輪郭は、スタイラス115とリム401との接触部分に相当する。線920は、リム401の内側に形成された溝部に相当する。
【0077】
図10は、フレームトレーサによって得られた三次元形状データに基づいて得られるリム401の外形を表す図である。図9に示される場合と同様に、線1010は、フレームの凹面側の端部の輪郭を表す。ある局面において、当該輪郭は、スタイラス115とリム401との接触部分に相当する。線1020は、リム401の内側に形成された溝部に相当する。
【0078】
以上のようにして、本実施の形態によれば、選択されたフレームのリムのステップ形状の正確なデータを取得することが可能になる。その結果、そのデータを用いて加工されたレンズを当該フレームのリムにはめ込む場合の枠入れ精度が向上する。また、レンズを加工する際に、選択されたフレームの現物は必ずしも必要ではなくなるので、フレームが選択される場所とレンズを加工する場所とが離れていてもよい。したがって、たとえば、眼鏡販売店においてフレームを潜在顧客に選択させ、選択されたフレームの外形を計測することにより形状データを取得し、眼鏡販売店から送られる形状データを用いてレンズを加工し、加工されたレンズを眼鏡販売店に送付することも可能になる。
【0079】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0080】
2 マウス、3 キーボード、4 RAM、5 ハードディスク、6 光ディスク駆動装置、7 通信IF 8 モニタ、9 ROM、100 システム、101 眼鏡販売店、102 レンズメーカ、110 フレームトレーサ、112 制御回路、113 チルト機構、114 アクチュエータ、115 スタイラス、116 増幅器、117 コンバータ、118 演算回路、120,130 端末、140 レンズ加工機、200 コンピュータ、400 フレーム、401,402 リム、410 本体、420 チルト角、610 突起部、910,920,1010,1020 線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10