(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】鉄筋構造体及びその鉄筋構造体を備えた合成スラブ構造
(51)【国際特許分類】
E04B 5/40 20060101AFI20220531BHJP
【FI】
E04B5/40 D
(21)【出願番号】P 2018154504
(22)【出願日】2018-08-21
【審査請求日】2021-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 勝輝
(72)【発明者】
【氏名】島田 稜子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 鐘悟
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特許第6204623(JP,B1)
【文献】実開平05-042432(JP,U)
【文献】特開平07-113291(JP,A)
【文献】実開昭61-025428(JP,U)
【文献】特開昭49-103436(JP,A)
【文献】特開平08-128158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 5/32
E04B 5/38
E04B 5/40
E04C 5/00-5/20
E04G 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の斜材を交差させて形成され、一方向に間隔をあけて複数配置された支持部材と、
それぞれの前記斜材の上部に固着され、複数の前記支持部材を一体的に連結する上弦材と、を備え、
前記一対の斜材のうち、一方の斜材は2本以上の線材で構成され、他方の斜材は1本以上の線材で構成され、前記一方の斜材の線材の間に前記他方の斜材の線材が配置されており、
前記支持部材は、一対の前記斜材の交点を中心に回動させて折り畳み自在に構成されている、鉄筋構造体。
【請求項2】
トラス状の線材を傾斜させた一対の斜材を交差させて形成された支持部材と、
それぞれの前記斜材の上部に固着された上弦材と、を備え、
前記支持部材は、一対の前記斜材の交点を中心に回動させて折り畳み自在に構成されている、鉄筋構造体。
【請求項3】
前記上弦材に並行させて配置され、それぞれの前記斜材の下端部に固着された下弦材を、更に備えている、請求項1又は2に記載の鉄筋構造体。
【請求項4】
前記上弦材に並行させて配置され、前記斜材の中間に固着された補強筋を、更に備えている、請求項1~3のいずれか一項に記載の鉄筋構造体。
【請求項5】
前記上弦材の上面に、該上弦材と交差させて載置された横筋材を、更に備え、
前記横筋材には、前記上弦材に掛け留める第1フック部が設けられている、請求項1~4のいずれか一項に記載の鉄筋構造体。
【請求項6】
前記横筋材には、その上面に載置される補強金網を掛け留める第2フック部が設けられている、請求項5に記載の鉄筋構造体。
【請求項7】
一対の斜材には、回動を調整するヒンジ機構部が設けられている、請求項1~6のいずれか一項に記載の鉄筋構造体。
【請求項8】
山頂面部と谷底面部とが傾斜面部を介して交互に連なって波形断面を成す波形鋼板と、
前記波形鋼板の谷底面部に配置された請求項1~7のいずれか一項に記載した鉄筋構造体と、
前記鉄筋構造体の上面に配置された補強金網と、
前記波形鋼板の上面に打設されたコンクリートと、を備えた、合成スラブ構造。
【請求項9】
前記波形鋼板は、前記傾斜面部に形成された突条部と前記谷底面部とで凹溝部が形成されており、
前記鉄筋構造体の支持部材は、前記斜材の下端部が前記凹溝部に嵌め込まれて固定されている、請求項8に記載の合成スラブ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強金網を支持する鉄筋構造体及びその鉄筋構造体を備えた合成スラブ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成スラブ構造は、山頂面部と谷底面部とが傾斜部を介して交互に連なって波形断面を成す波形鋼板の上面に、鉄筋構造体によって支持された溶接金網等の補強金網が設置され、コンクリートを打設して形成された構成が知られている。補強金網は、コンクリートの補強部材(例えば構造材又はひび割れ拡大防止筋等)として設置するものである。
【0003】
例えば特許文献1では、波形鋼板等の基盤上に、所定の高さに鉄筋を固着した主筋配設体を等間隔で配設し、該鉄筋に溶接金網を配設した構成である。主筋配設体は、ラチス状とした1対の屈曲鉄筋と、屈曲鉄筋の上端屈曲部に溶接固着されて、1対の屈曲鉄筋を接合する上端筋と、各屈曲鉄筋の下部に溶接固着された下端筋と、で構成されている。各屈曲鉄筋の下端部には、外側に向かって拡開した支承部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているような鉄筋構造体は、現場での施工を迅速且つ容易にするため、製造過程で組み立てられた状態で搬送される。上記構成の主筋配設体では、複数体を積み重ねて搬送することが難しいため、搬送効率がわるく、搬送に手間とコストが掛かる。一方、現場で組み立てるとなると、手間が掛かり、施工が長期化するため、工費が嵩むおそれがある。また、予め波形鋼板の寸法に適合するように設計し、目標の溶接金網の高さとなるように調整して製造されるため、施工現場で溶接金網の高さを適宜調整して設置することができない。つまり、波形鋼板の形状及び寸法ごとに種々異なる形態の鉄筋構造体を製造しなければならず、製造コストが掛かっていた。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、製造現場から施工現場への輸送効率を高めることができ、且つ施工現場において容易に組み立てることができ、施工性を向上させることができ、更には強度及びひび割れ防止性能など、コンクリートの機能及び合成効果を向上させることができる鉄筋構造体及びその鉄筋構造体を備えた合成スラブ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(i)本発明に係る鉄筋構造体は、一対の斜材を交差させて形成され、一方向に間隔をあけて複数配置された支持部材と、それぞれの前記斜材の上部に固着され、複数の前記支持部材を一体的に連結する上弦材と、を備え、前記一対の斜材のうち、一方の斜材は2本以上の線材で構成され、他方の斜材は1本以上の線材で構成され、前記一方の斜材の線材の間に前記他方の斜材の線材が配置されており、前記支持部材は、一対の前記斜材の交点を中心に回動させて折り畳み自在に構成されているものである。
【0008】
(ii)本発明に係る合成スラブ構造は、山頂面部と谷底面部とが傾斜面部を介して交互に連なって波形断面を成す波形鋼板と、前記波形鋼板の谷底面部に配置された上記(i)に記載した鉄筋構造体と、前記鉄筋構造体の上面に配置された補強金網と、前記波形鋼板の上面に打設されたコンクリートと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、支持部材が折り畳み自在に構成されているので、折り畳んだ状態で製造現場から施工現場まで搬送することができ、搬送効率を高めることができる。また、施工現場に搬送した後、支持部材を折り畳んだ状態から拡げるだけで容易に組み立てることができるので、現場での施工性を向上させることができる。また、鉄筋構造体とコンクリートと波形鋼板とが一体化することで、合成スラブ構造の強度、機能及び合成効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る鉄筋構造体を備えた合成スラブ構造を示した斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る鉄筋構造体を波形鋼板に設置した状態を示した斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係る鉄筋構造体を波形鋼板に設置した状態を示した正面図である。
【
図4】本発明の実施の形態1に係る鉄筋構造体の支持部材の斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態1に係る鉄筋構造体の支持部材を折り畳んだ状態を示した説明図である。
【
図6】本発明の実施の形態1に係る鉄筋構造体の支持部材を回動させて高さを変更した状態を示した説明図である。
【
図7】本発明の実施の形態1に係る鉄筋構造体のヒンジ機構部の一例を示した要部拡大図である。
【
図8】本発明の実施の形態1に係る鉄筋構造体のヒンジ機構部の一例を示した要部拡大図である。
【
図9】本発明の実施の形態1に係る鉄筋構造体を備えた合成スラブ構造の断面図である。
【
図10】本発明の実施の形態1に係る鉄筋構造体を備えた合成スラブ構造の波形鋼板を示した断面図である。
【
図11】本発明の実施の形態2に係る鉄筋構造体を波形鋼板に設置した状態を示した斜視図である。
【
図12】本発明の実施の形態2に係る鉄筋構造体を波形鋼板に設置した状態を示した正面図である。
【
図13】本発明の実施の形態2に係る鉄筋構造体を備えた合成スラブ構造の断面図である。
【
図14】本発明の実施の形態2に係る鉄筋構造体を波形鋼板に設置する手順を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には、同一符号を付して、その説明を適宜省略又は簡略化する。また、各図に記載の構成について、その形状、大きさ、及び配置等は、本発明の範囲内で適宜変更することができる。
【0012】
実施の形態1.
先ず、
図1~
図10に基づいて、実施の形態1に係る鉄筋構造体100について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る鉄筋構造体を備えた合成スラブ構造を示した斜視図である。
図2は、本発明の実施の形態1に係る鉄筋構造体を波形鋼板に設置した状態を示した斜視図である。
図3は、本発明の実施の形態1に係る鉄筋構造体を波形鋼板に設置した状態を示した正面図である。
図4は、本発明の実施の形態1に係る鉄筋構造体の支持部材の斜視図である。
図5は、本発明の実施の形態1に係る鉄筋構造体の支持部材を折り畳んだ状態を示した説明図である。
図6は、本発明の実施の形態1に係る鉄筋構造体の支持部材を回動させて高さを変更した状態を示した説明図である。なお、
図1では、合成スラブ構造200をわかりやすく説明するため、本実施の形態の鉄筋構造体100を省略した状態を示している。
【0013】
実施の形態1の鉄筋構造体100は、
図1~
図3に示すように、例えば山頂面部50と谷底面部51とが傾斜面部52を介して交互に連なって波形断面を成す波形鋼板5の上面に設置され、補強金網6を所定の高さに保持するために使用するものである。補強金網6は、波形鋼板5の上面に打設したコンクリート7の補強部材(例えば構造材又はひび割れ拡大防止筋等)として設置するものである。
【0014】
実施の形態1に係る鉄筋構造体100は、
図3及び
図4に示すように、支持部材1と、上弦材2と、下弦材3と、補強筋4と、横筋材8と、を備えている。支持部材1、上弦材2、下弦材3、補強筋4及び横筋材8は、すべて線材(例えば鉄筋等)で構成されている。
【0015】
支持部材1は、
図2~
図4に示すように、一対の斜材1a及び1bを交差させて形成され、一方向に間隔をあけて複数配置されており、それぞれの斜材1a及び1bの上部に固着された上弦材2によって一体的に連結されている。一対の斜材1a及び1bのうち、一方の斜材1aは、同一の方向に傾斜させた2本の線材で構成されている。2本の線材は、線材の外径とほぼ同一の寸法の間隔をあけて配置されている。一対の斜材1a及び1bのうち、他方の斜材1bは、1本の線材で構成され、対向する2本の線材の間に配置されている。一対の斜材1a及び1bは、交じり合う交点において接合されておらず、当該交点を中心として回動させることができ、且つ他方の斜材1a又は1bの軸方向にスライドさせることができる。つまり、支持部材1は、一対の斜材1a及び1bの交点を中心に回動させることで、
図5に示すように、折り畳み自在に構成されている。また、支持部材1は、一対の斜材1a及び1bの交点を中心に回動させることで、
図6に示すように、上弦材2の高さを適宜調整することができ、補強金網6を目標の高さで保持することができる。なお、支持部材1は、例えば4本以上の線材で構成してもよい。この場合、一対の斜材1a及び1bは、線材が交互に交差するように配置される。
【0016】
上弦材2は、
図3及び
図4に示すように、斜材1a及び1bと直交する方向に配置されており、各斜材1a及び1bの上部に固着されている。下弦材3は、上弦材2に並行させて配置されており、斜材1a及び1bの下端部に固着されている。上弦材2及び下弦材3は、予め製造現場で斜材1a及び1bに固着された状態で施工現場に搬送される。上弦材2及び下弦材3は、鉄筋構造体100を合成スラブ構造200に使用した場合、打設したコンクリート7のひび割れ拡大防止筋としても機能する。また、上弦材2は、鉄筋構造体100を合成スラブ構造200に使用した場合、打設したコンクリート7の補強部材としても機能する。なお、図示することは省略したが、鉄筋構造体100は、下弦材3を設けることなく上弦材2のみで構成してもよい。
【0017】
補強筋4は、
図2~
図4に示すように、上弦材2に並行させて配置されており、斜材1bの中間に固着されている。補強筋4も、予め製造現場で斜材1bに固着された状態で施工現場に搬送される。補強筋4は、鉄筋構造体100を合成スラブ構造200に使用した場合、打設したコンクリート7の補強部材としても機能する。
図5に示すように、補強筋4は、支持部材1を折り畳んでも邪魔になることがない。なお、補強筋4は、斜材1aの中間に設けてもよいし、上弦材2と下弦材3との間であればどの位置に設けてもよい。また、補強筋4は、図示した1本に限定されず、2本以上設けてもよい。
【0018】
横筋材8は、
図2~
図4に示すように、上弦材2の上面に該上弦材2と交差させて載置されている。横筋材8も、鉄筋構造体100を合成スラブ構造に使用した場合、打設したコンクリート7の補強部材として機能する。横筋材8は、施工現場において、支持部材1を回動させて拡げた後、上弦材2の長さ方向に所定の間隔をあけて複数配置される。
【0019】
横筋材8には、上弦材2に掛け留める下向きの第1フック部8aが設けられている。第1フック部8aは、複数連続して設けた組を横筋材8の長さ方向に間隔をあけて設けられている。斜材1a及び1bの開きの大きさに応じて対応する第1フック部8aを掛け留めるためである。第1フック部8aは、横筋材8を固定する機能を有するほか、支持部材1の斜材1a及び1bの開き止めとしての機能も有する。
【0020】
また、横筋材8には、その上面に載置される補強金網6を掛け留めて固定する上向きの第2フック部8bが設けられている。第2フック部8bは、横筋材8の長さ方向に所定の間隔をあけて複数設けられている。
【0021】
図7及び
図8は、本発明の実施の形態1に係る鉄筋構造体のヒンジ機構部の一例を示した要部拡大図である。
図7及び
図8に示すように、実施の形態1の鉄筋構造体100は、一対の斜材1a及び1bが交じり合う交点において、斜材1a及び1bの回動を調整するヒンジ機構部90又は91を設けてもよい。
図7に示すヒンジ機構部90は、一方の斜材1bにフック部を設けて、該フック部を他方の斜材1aを掛け留める構成である。フック部の形状によって、斜材1a及び1bを回動させる範囲が調整できる。なお、ヒンジ機構部90は、斜材1aにフック部を設けてもよいし、斜材1a及び1bの両方にフック部を設けても良い。
【0022】
また、
図8に示すヒンジ機構部91は、一方の斜材1aの中間部が螺旋状に形成され、該螺旋状によって形成された孔に、他方の斜材1bを通した構成である。ヒンジ機構部91は、斜材1bの中間部を螺旋状としてもよい。なお、ヒンジ機構部90及び91は、一例であって、一対の斜材1a及び1bの回動を調整することができれば、図示した構成に限定されず、他の形態でもよい。
【0023】
以上のように、実施の形態1に係る鉄筋構造体100は、一対の斜材1a及び1bを交差させて形成され、一方向に間隔をあけて複数配置された支持部材1と、それぞれの斜材1a及び1bの上部に固着され、複数の支持部材1を一体的に連結する上弦材2と、を備えている。支持部材1は、一対の斜材1a及び1bの交点を中心に回動させて折り畳み自在に構成されている。よって、鉄筋構造体100は、支持部材1を折り畳んで製造現場から施工現場まで搬送することができるので、搬送効率を高めることができる。また、施工現場に搬送した後、支持部材1を折り畳んだ状態から拡げるだけで、容易に組み立てることができ、補強金網6を所定の高さで保持できるので、現場での施工性を向上させ、工費を削減することもできる。
【0024】
次に、
図1~
図8を参照しつつ
図9及び
図10に基づいて、上記構成の鉄筋構造体100を備えた合成スラブ構造200について説明する。
図9は、本発明の実施の形態1に係る鉄筋構造体を備えた合成スラブ構造の断面図である。
図10は、本発明の実施の形態1に係る鉄筋構造体を備えた合成スラブ構造の波形鋼板を示した断面図である。
【0025】
合成スラブ構造200は、
図1及び
図9に示すように、波形鋼板5と、波形鋼板5の上面に配置された上記構成の鉄筋構造体100と、鉄筋構造体100の上面に配置された補強金網6と、波形鋼板5の上面に打設されたコンクリート7と、を備えている。また、この他に、補強部材を加えて強度及びひび割れ防止などの機能を高めることもできる。
【0026】
波形鋼板5は、
図10に示すように、山頂面部50と、山頂面部50に略平行な谷底面部51と、山頂面部50と谷底面部51とを連結する傾斜面部52と、で構成されており、山頂面部50と谷底面部51とが交互に連なる波形断面の鋼製デッキプレートである。波形鋼板5の寸法は、一例として厚さ0.6mm~2.3mm程度、高さ50mm~120mm(山高)程度で構成されている。
【0027】
波形鋼板5は、2つの山頂面部50と3つの谷底面部51とで成るプレート単体を複数枚並べ、隣接するプレート単体の端部同士を連結することにより形成されている。谷底面部51の溝幅方向における両端部には、隣接する波形鋼板5を接続するための係合部5a及び5bが形成されている。隣接する波形鋼板5は、互いの係合部5a及び5bを係合させることによって一体的に接合されている。係合部5a及び5bは、一例として、上方に屈曲して立ち上がり、一方の係合部5aが他方の係合部5bの上に載ったとき、上方が離脱しないように掛け止まる屈曲させた構成である。
【0028】
波形鋼板5の各傾斜面部52には、谷底面部51に近い位置に谷底面部51と平行に突き出した突条部53が形成されている。突条部53と谷底面部51とによって、凹溝部54が形成されている。また、波形鋼板5の各傾斜面部52には、複数のエンボス55が形成されている。エンボス55は、例えば押圧加工により形成される。合成スラブ構造200は、波形鋼板5の上面に打設されたコンクリート7が、凹溝部54及びエンボス55の周囲に回り込んで硬化することで、波形鋼板5とコンクリート7とがずれる事態を防止でき、耐力や変形性能を高めることができる。
【0029】
上記構成の鉄筋構造体100は、
図9に示すように、波形鋼板5の各谷底面部51に配置され、下端部を波形鋼板5の凹溝部54に嵌め込んで固定されている。具体的には、鉄筋構造体100は、
図5に示すように、支持部材1が製造現場から折り畳んだ状態で運ばれ、谷底面部51に配置してから、
図3に示すように、支持部材1を回動させて拡げ、波形鋼板5の凹溝部54に下弦材3を嵌め込んで固定される。なお、下弦材3を有さない場合には、斜材1a及び1bの下端部が凹溝部54に嵌め込まれて固定される。そして、上弦材2の上面に、横筋材8を上弦材2と交差させて設置し、第1フック部8aを各上弦材2に掛け留めて支持部材1の回動を規制する。
【0030】
補強金網6は、例えば鉄筋を網状に配置して溶接して形成した溶接金網であり、鉄筋構造体100の横筋材8の上面に載置される。補強金網6は、横筋材8に設けた第2フック部8bに、一部の鉄筋が掛け留められており、コンクリート7の打設時に沈下したり、或いは浮き上がったりしないように固定されている。なお、補強金網6を横筋材8の上面に固定する手段は、図示した第2フック部8bに限定されず、例えば補強金網6を横筋材8に溶接等で固定してもよいし、他の手段でもよい。また、補強金網6は、溶接金網に限定されず、例えば異形鉄筋等でもよい。
【0031】
コンクリート7は、鉄筋構造体100と補強金網6とを設置した波形鋼板5の上面に打設される。コンクリート7の厚さは、合成スラブ構造200の用途にもよるが、一例として波形鋼板5の山頂面部50から50mm~300mm程度である。
【0032】
以上のように、実施の形態1における合成スラブ構造200は、山頂面部50と谷底面部51とが傾斜面部52を介して交互に連なって波形断面を成す波形鋼板5と、波形鋼板5の上面に配置された鉄筋構造体100と、鉄筋構造体100の上面に配置された補強金網6と、波形鋼板5の上面に打設されたコンクリート7と、を備えている。よって、合成スラブ構造200は、折り畳まれた状態の支持部材1を回動させて拡げるだけで鉄筋構造体100を波形鋼板5の上面に設置することができるので、鉄筋構造体100の設置作業が容易であり、工期短縮と費用の削減に寄与することができる。
【0033】
また、波形鋼板5は、傾斜面部52に形成された突条部53と谷底面部51とで凹溝部54が形成されている。鉄筋構造体100の支持部材1は、斜材1a及び1bの下端部が凹溝部54に嵌め込まれて固定されている。よって、実施の形態1における合成スラブ構造200は、鉄筋構造体100をしっかりと位置決めして固定することができるし、波形鋼板5の溝幅方向に引っ張り作用が生じて係合部5a及び5bの係合状態を強固なものとし、施工現場での施工及び管理も容易なものとすることができる。
【0034】
また、鉄筋構造体100は、上弦材2に並行させて配置され、それぞれの斜材1a及び1bの下端部に固着された下弦材3を備えているので、下弦材3を波形鋼板5の凹溝部54に嵌め込むことで、鉄筋構造体100をしっかりと固定できる。また、下弦材3が補強部材として機能するので、合成スラブ構造200の強度を高めることができる。
【0035】
また、鉄筋構造体100は、上弦材2に並行させて配置され、斜材1a又は1bの中間に固着された補強筋4を備えているので、その補強効果で合成スラブ構造200の強度を高めることができる。
【0036】
また、鉄筋構造体100は、上弦材2の上面に、該上弦材2と交差させて載置された横筋材8を備えているので、その補強効果で合成スラブ構造200の強度を高めることができる。また、横筋材8には、上弦材2に掛け留める第1フック部8aが設けられているので、第1フック部8aによって横筋材8を上弦材2に固定することができるし、支持部材1の斜材1a及び1bの回動を規制することができる。更に、横筋材8には、その上面に載置される補強金網6を掛け留める第2フック部8bが設けられているので、補強金網6をしっかりと位置決めして固定することができる。
【0037】
更に、合成スラブ構造200は、支持部材1も補強部材としても機能するので合成スラブ構造200の強度を高めることができる。そして、鉄筋構造体100は、支持部材1、上弦材2、下弦材3、補強筋4及び横筋材8など、多くの鋼材を使用して一体化した構成なので、その補強効果で波形鋼板5とコンクリート7との合成効果を向上させ、合成スラブの機能を高めることができる。
【0038】
実施の形態2.
次に、
図11~
図14に基づいて、本発明の実施の形態2に係る鉄筋構造体101について説明する。
図11は、本発明の実施の形態2に係る鉄筋構造体を波形鋼板に設置した状態を示した斜視図である。
図12は、本発明の実施の形態2に係る鉄筋構造体を波形鋼板に設置した状態を示した正面図である。なお、実施の形態1と同一の構成については、同一の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0039】
図11及び
図12に示すように、実施の形態2に係る鉄筋構造体101も、支持部材1と、上弦材2と、補強筋4と、横筋材8と、を備えている。支持部材1、上弦材2、補強筋4及び横筋材8は、すべて線材(例えば鉄筋等)で構成されている。
【0040】
支持部材1は、
図11に示すように、トラス状の線材を傾斜させた一対の斜材1a及び1bを交差させて形成された構成である。一対の斜材1a及び1bは、交じり合う交点において接合されておらず、当該交点を中心として回動させることができ、且つ他方の斜材1a又は1bの軸方向にスライドさせることができる。つまり、支持部材1は、一対の斜材1a及び1bの交点を中心に回動させることで、例えば
図5に示すような折り畳み自在に構成されている。また、支持部材1は、一対の斜材1a及び1bの交点を中心に回動させることで、例えば
図6に示ように、上弦材2の高さを適宜調整することができ、補強金網6を所定の高さに保持することができる。
【0041】
上弦材2は、
図11及び
図12に示すように、斜材1a及び1bと直交する方向に配置されており、各斜材1a及び1bの上部に固着されている。上弦材2は、予め製造現場で斜材1a及び1bに固着された状態で施工現場に搬送される。上弦材2は、鉄筋構造体101を合成スラブ構造201に使用した場合、打設したコンクリート7の補強部材としても機能する。なお、
図11及び
図12に示すように、実施の形態2の鉄筋構造体101では、支持部材1の下端部に下弦材を設けていないが、実施の形態1で説明した下弦材を設けてもよい。下弦材は、上弦材2に並行させて配置され、斜材1a及び1bの下端部に固着される。
【0042】
補強筋4は、
図11及び
図12に示すように、上弦材2に並行させて配置されており、斜材1bの中間に固着されている。補強筋4も、予め製造現場で斜材1bに固着された状態で施工現場に搬送される。補強筋4は、鉄筋構造体101を合成スラブ構造201に使用した場合、打設したコンクリート7の補強部材として機能する。補強筋4は、支持部材1を折り畳んでも邪魔になることがない。なお、補強筋4は、斜材1aの中間に設けてもよい。また、補強筋4は、図示した1本に限定されず、2本以上設けてもよい。
【0043】
横筋材8は、
図11及び
図12に示すように、上弦材2の上面に該上弦材2と直交させて載置されており、一対の斜材1a及び1bの上端部を連結するために設けられている。つまり、横筋材8は、斜材1a及び1bの開き止めとして機能する。なお、横筋材8も、鉄筋構造体101を合成スラブ構造201に使用した場合、打設したコンクリート7の補強部材としても機能する。横筋材8の両端部には、下向きの第1フック部8aが形成されており、第1フック部8aが斜材1a及び1bにそれぞれ掛け留められている。横筋材8は、施工現場において、支持部材1を回動させて拡げた後、上弦材2の長さ方向に所定の間隔をあけて複数配置される。
【0044】
また、横筋材8には、その上面に載置される補強金網6を掛け留めて固定する上向きの第2フック部8bが設けられている。第2フック部8bは、横筋材8の長さ方向に所定の間隔をあけて複数設けられている。
【0045】
なお、実施の形態2の鉄筋構造体101も、
図4及び
図5に示すように、実施の形態1の鉄筋構造体101と同じく、一対の斜材1a及び1bは、交じり合う交点においてヒンジ機構部90又は91等を設けてもよい。
【0046】
以上のように、実施の形態2に係る鉄筋構造体101は、トラス状の線材を傾斜させた一対の斜材1a及び1bを交差させて形成された支持部材1と、それぞれの斜材1a及び1bの上部に固着された上弦材2と、を備えている。支持部材1は、一対の斜材1a及び1bの交点を中心に回動させて折り畳み自在に構成されている。よって、鉄筋構造体101は、支持部材1を折り畳んで製造現場から施工現場まで搬送することができるので、搬送効率を高めることができる。また、施工現場に搬送した後、支持部材1を折り畳んだ状態から拡げるだけで、容易に組み立てることができ、補強金網6を所定の高さで保持できるので、現場での施工性を向上させ、工費を削減することもできる。
【0047】
次に、
図13及び
図14に基づいて、上記構成の鉄筋構造体101を備えた合成スラブ構造201について説明する。
図13は、本発明の実施の形態2に係る鉄筋構造体を備えた合成スラブ構造の断面図である。
図14は、本発明の実施の形態2に係る鉄筋構造体を波形鋼板に設置する手順を示した説明図である。
【0048】
実施の形態2における合成スラブ構造201は、
図13に示すように、波形鋼板5と、上記構成の鉄筋構造体101と、鉄筋構造体101に載置される補強金網6と、波形鋼板5の上面に打設されるコンクリート7と、を備えている。波形鋼板5、補強金網6及びコンクリート7は、上記実施の形態1で説明した構成と同じである。また、この他に、補強部材を加えて強度及びひび割れ防止などの機能を高めることもできる。
【0049】
上記構成の鉄筋構造体101は、
図13に示すように、波形鋼板5の各谷底面部51に配置され、下端部を波形鋼板5の凹溝部54に嵌め込んで固定されている。具体的には、鉄筋構造体101は、支持部材1を製造現場から折り畳んだ状態で運ばれ、
図14に示すように、谷底面部51に配置してから、支持部材1を回動させて拡げ、波形鋼板5の凹溝部54に下弦材3を嵌め込んで固定される。そして、上弦材2の上面に、横筋材8を上弦材2と交差させて載置し、両端の第1フック部8aを各上弦材2に掛け留めて支持部材1の回動を規制する。
【0050】
以上のように、実施の形態2に係る鉄筋構造体101を備えた合成スラブ構造201も、山頂面部50と谷底面部51とが傾斜面部52を介して交互に連なって波形断面を成す波形鋼板5と、波形鋼板5の上面に配置された鉄筋構造体101と、鉄筋構造体101の上面に配置された補強金網6と、波形鋼板5に打設されたコンクリート7と、を備えている。よって、合成スラブ構造201は、折り畳まれた状態の支持部材1を回動させて拡げるだけで鉄筋構造体101を設置できるので、鉄筋構造体101の設置作業が容易であり、工期短縮と費用の削減に寄与することができる。
【0051】
また、波形鋼板5は、傾斜面部52に形成された突条部53と谷底面部51とで凹溝部54が形成されている。鉄筋構造体101の支持部材1は、斜材1a及び1bの下端部が凹溝部54に嵌め込まれて固定されている。よって、実施の形態2における合成スラブ構造201は、鉄筋構造体101をしっかりと位置決めして固定することができるし、波形鋼板5の溝幅方向に引っ張り作用が生じて係合部5a及び5bの係合状態を強固なものとし、施工現場での施工及び管理も容易なものとすることができる。
【0052】
また、鉄筋構造体101は、上弦材2に並行させて配置され、斜材1a又は1bの中間に固着された補強筋4を備えているので、その補強効果で合成スラブ構造201の強度を高めることができる。
【0053】
また、鉄筋構造体101は、上弦材2の上面に、該上弦材2と交差させて載置された横筋材8を備えているので、その補強効果で合成スラブ構造201の強度を高めることができる。また、横筋材8には、上弦材2に掛け留める第1フック部8aが設けられているので、第1フック部8aによって横筋材8を上弦材2に固定することができるし、支持部材1の斜材1a及び1bの回動を規制することができる。更に、横筋材8には、その上面に載置される補強金網6を掛け留める第2フック部8bが設けられているので、補強金網6をしっかりと位置決めして固定することができる。
【0054】
更に、合成スラブ構造201は、支持部材1も補強部材としても機能するので合成スラブ構造201の強度を高めることができる。そして、鉄筋構造体101は、支持部材1、上弦材2、補強筋4及び横筋材8など、多くの鋼材を使用して一体化した構成なので、その補強効果で波形鋼板5とコンクリート7との合成効果を向上させ、合成スラブの機能を高めることができる。
【0055】
以上に本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上述した実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば、波形鋼板5の寸法及び形状、係合部5a及び5bの形状は、この限りではなく、敷地面積、支持梁の設置間隔、構造上必要な強度等に応じて適宜設計変更が可能である。また、鉄筋構造体100及び101は、上記した波形鋼板5に設置する場合に限定されず、他の用途において使用することができる。要するに、本発明は、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更及び応用のバリエーションの範囲を含むものである。
【符号の説明】
【0056】
1 支持部材、1a、1b 斜材、2 上弦材、3 下弦材、4 補強筋、5 波形鋼板、5a、5b 係合部、6 補強金網、7 コンクリート、8 横筋材、8a 第1フック部、8b 第2フック部、50 山頂面部、51 谷底面部、52 傾斜面部、53 突条部、54 凹溝部、55 エンボス、90、91 ヒンジ機構部、100、101 鉄筋構造体、200、201 合成スラブ構造。