(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】掘削作業機械の油圧駆動装置
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20220531BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20220531BHJP
E02F 3/43 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
E02F9/20 M
E02F9/20 N
E02F9/22 K
E02F3/43 B
(21)【出願番号】P 2018156095
(22)【出願日】2018-08-23
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】野木 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】前川 智史
(72)【発明者】
【氏名】筒井 昭
(72)【発明者】
【氏名】藤原 翔
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-219727(JP,A)
【文献】特開平5-321297(JP,A)
【文献】特開2016-205495(JP,A)
【文献】特開2018-53675(JP,A)
【文献】国際公開第2018/051511(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0172037(US,A1)
【文献】国際公開第2016/056678(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
E02F 9/22
E02F 3/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体及びこれに取付けられる作業装置を備えた作業機械であって前記作業装置が当該機体に起伏可能に支持されるブームと当該ブームの先端部に回動可能に連結されるアームと当該アームの先端部に取付けられて施工面に押付けられるバケットとを含む作業機械に設けられ、前記ブーム、前記アーム及び前記バケットを油圧により駆動するための油圧駆動装置であって、
駆動源により駆動されることにより作動油を吐出する少なくとも一つの油圧ポンプを含む作動油供給装置と、
前記作動油供給装置からの作動油の供給を受けることにより伸縮して前記ブームを起伏させる少なくとも一つのブームシリンダと、
前記作動油供給装置からの作動油の供給を受けることにより伸縮して前記アームを回動させるアームシリンダと、
前記作動油供給装置からの作動油の供給を受けることにより伸縮して前記バケットを回動させるバケットシリンダと、
前記作動油供給装置と前記少なくとも1つのブームシリンダとの間に介在し、当該作動油供給装置から前記少なくとも一つのブームシリンダに供給される作動油の流量であるブームシリンダ供給流量及び当該ブームシリンダから排出される作動油の流量であるブームシリンダ排出流量を変化させるように開閉動作することが可能なブーム流量制御弁と、
前記バケットによる施工対象の目標形状を特定する目標施工面を設定する目標施工面設定部と、
前記作業装置の姿勢を特定するための情報である姿勢情報を検出する作業姿勢検出部と、
前記少なくとも一つのブームシリンダのヘッド側室及びロッド側室のそれぞれの圧力であるヘッド圧及びロッド圧を検出するブームシリンダ圧検出器と、
前記作業姿勢検出部により検出される前記姿勢情報に基づいて前記ブームシリンダ、前記アームシリンダ及び前記バケットシリンダのそれぞれの作動速度であるシリンダ速度を演算するシリンダ速度算定部と、
前記シリンダ速度算定部により算定されるそれぞれのシリンダ速度に基づいて、前記アームシリンダの伸縮による前記アームの動きに伴って前記バケットにより施工される面を前記目標施工面に近づけるための前記ブームシリンダの作動速度の目標値である目標ブームシリンダ速度を算定する目標ブームシリンダ速度算定部と、
前記目標ブームシリンダ速度が得られるように前記ブーム流量制御弁を作動させるブーム流量操作部と、
前記バケットを施工面に対して押付けるための押付け力の目標値である目標押付け力を設定する目標押付け力設定部と、
前記作業姿勢検出部により検出される前記姿勢情報に基づいて前記作業装置の重心位置についての情報を算定する重心位置情報算定部と、
前記重心位置情報により特定される前記作業装置の自重による荷重と前記ブームシリンダ圧検出器が検出する前記へッド圧及び前記ロッド圧により特定される前記ブームシリンダのシリンダ推力とに基づいて前記バケットが前記施工面に押付けられる押付け力を算定する押付け力算定部と、
前記目標ブームシリンダ速度算定部により算定されるべき前記目標ブームシリンダ速度を前記目標押付け力と算定された前記押付け力との偏差を0に近づける方向に補正する補正部と、を備え、
前記ブーム流量操作部は、前記補正部により補正された前記目標ブームシリンダ速度が得られるように前記ブーム流量制御弁を作動させる、油圧駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の油圧駆動装置であって、前記補正部は、前記目標ブームシリンダ速度算定部により前記目標ブームシリンダ速度が算定された後にその算定された目標ブームシリンダ速度を補正する目標速度補正部である、油圧駆動装置。
【請求項3】
請求項1記載の油圧駆動装置であって、前記目標ブームシリンダ速度算定部は、前記目標施工面に沿って前記バケットの特定部位を動かすべき目標方向を特定する目標方向ベクトルを演算する目標方向ベクトル演算部と、当該目標方向ベクトルと前記ブームシリンダの前記シリンダ速度とに基づいて前記目標ブームシリンダ速度を演算する目標ブームシリンダ速度演算部と、を有し、前記補正部は、前記目標方向ベクトル演算部により演算された前記目標方向ベクトルを前記偏差を0に近づける方向に補正する目標ベクトル補正部である、油圧駆動装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の油圧駆動装置であって、前記ブーム流量制御弁は、ブーム上げパイロットポート及びブーム下げパイロットポートを有するパイロット操作式の方向切換弁であって、前記ブーム上げパイロットポートにブーム上げパイロット圧が入力されるときには前記ブームシリンダが前記ブームを起立させる方向に作動するように前記ブーム上げパイロット圧の大きさに対応した開度で開く一方、前記ブーム下げパイロットポートにブーム下げパイロット圧が入力されるときには前記ブームシリンダが前記ブームを倒伏させる方向に作動するように前記ブーム下げパイロット圧の大きさに対応した開度で開くものである場合、前記ブーム流量操作部は、パイロット油圧源と前記ブーム上げパイロットポートとの間に介在し、かつ、ブーム上げ流量指令信号の入力を受けることにより前記ブーム上げパイロットポートに入力される前記ブーム上げパイロット圧を前記ブーム上げ流量指令信号に対応した大きさのパイロット圧にするように開閉作動するブーム上げ流量操作弁と、前記パイロット油圧源と前記ブーム下げパイロットポートとの間に介在し、かつ、ブーム下げ流量指令信号の入力を受けることにより前記ブーム下げパイロットポートに入力される前記ブーム下げパイロット圧を前記ブーム下げ流量指令信号に対応した大きさのパイロット圧にするように開閉作動するブーム下げ流量操作弁と、前記補正部により補正された前記目標ブームシリンダ速度が得られるように前記ブーム上げ流量操作弁または前記ブーム下げ流量操作弁に流量指令信号を入力するブーム流量指令部と、を有する、油圧駆動装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の油圧駆動装置であって、前記目標押付け力設定部は、作業者による前記作業装置の手動操作によって前記バケットが施工面に押付けられたときに前記押付け力算定部が算定した前記押付け力を前記目標押付け力として記憶し設定する、油圧駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブーム、アーム及びバケットを有する掘削装置を備えた掘削作業機械に設けられ、当該掘削装置を油圧によって駆動するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の掘削作業機械は、一般に、起伏可能なブームと、その先端に回動可能に連結されるアームと、このアームの先端に装着されるバケットと、を含む掘削装置を有する。このような掘削装置を油圧で駆動するための装置は、一般に、油圧ポンプと、当該油圧ポンプに接続される複数の油圧シリンダと、複数のコントロールバルブと、を備える。前記複数の油圧シリンダは、ブーム駆動用のブームシリンダ、アーム駆動用のアームシリンダ及びバケット駆動用のバケットシリンダを含む。前記複数のコントロールバルブは、前記ブームシリンダ、前記アームシリンダ及び前記バケットシリンダにそれぞれ接続される。各コントロールバルブは、例えばパイロット操作式の切換弁により構成され、入力されるパイロット圧に応じて当該コントロールバルブに対応する油圧アクチュエータへの作動油の供給の方向及び流量を変化させるように開弁作動する。
【0003】
さらに近年は、オペレータの負担を軽減すべく、オペレータが簡単な操作を行うだけで前記バケットが予め設定された目標軌跡に沿って動くように前記ブーム及び前記アームの作業装置の駆動を制御する自動制御機能を備えた油圧駆動装置の開発が進められている。
【0004】
例えば特許文献1は、ブーム、アーム(特許文献1では「スティック」)及びバケットを備えた油圧ショベルに設けられる油圧駆動装置であって、アーム操作レバー(特許文献1ではスティック操作レバー)の操作に応じて前記バケットの刃先が目標の軌跡に沿って動くように各油圧シリンダの目標位置及び目標速度を演算して当該速度を制御するものが開示されている。
【0005】
さらに、当該特許文献1には、ブームシリンダの負荷圧にシリンダ内の実質的な受圧面積を乗ずることにより転圧力を演算し、この転圧力を予め設定された目標転圧力に近づけるように前記バケットの高さ位置を自動調整すること(具体的にはバケットの位置を上げることにより掘削面の転圧力を下げ、またはバケット位置を下げることにより転圧力を上げること)により、実際の転圧力を目標転圧力に近づける制御を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1に記載される装置によれば、ブームシリンダの負荷に相当するシリンダ推力が転圧力すなわちバケットを施工面に押付ける押付け力に相当するものとして制御が行われているが、当該押付け力は作業装置の姿勢によっても変化するものであり、必ずしも当該シリンダ推力と完全に対応するものではない。従って、前記装置によれば、実際にバケットが施工面に押付けられる押付け力を正確に把握することができず、当該押付け力の制御を高い精度で行うことは困難である。
【0008】
本発明は、ブーム、アーム及びバケットを含む作業装置を備えた作業機械に設けられる油圧駆動装置であって、前記バケットによる施工面を目標施工面に近づけ、かつ、バケットが施工面に押付けられる押付け力を目標押付け力に近づける制御を高精度で行うことが可能な油圧駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
提供されるのは、機体及びこれに取付けられる作業装置を備えた作業機械であって前記作業装置が当該機体に起伏可能に支持されるブームと当該ブームの先端部に回動可能に連結されるアームと当該アームの先端部に取付けられて施工面に押付けられるバケットとを含む作業機械に設けられ、前記ブーム、前記アーム及び前記バケットを油圧により駆動するための油圧駆動装置であって、駆動源により駆動されることにより作動油を吐出する少なくとも一つの油圧ポンプを含む作動油供給装置と、前記作動油供給装置からの作動油の供給を受けることにより伸縮して前記ブームを起伏させる少なくとも一つのブームシリンダと、前記作動油供給装置からの作動油の供給を受けることにより伸縮して前記アームを回動させるアームシリンダと、前記作動油供給装置からの作動油の供給を受けることにより伸縮して前記バケットを回動させるバケットシリンダと、前記作動油供給装置と前記少なくとも1つのブームシリンダとの間に介在し、当該作動油供給装置から前記少なくとも一つのブームシリンダに供給される作動油の流量であるブームシリンダ供給流量及び当該ブームシリンダから排出される作動油の流量であるブームシリンダ排出流量を変化させるように開閉動作することが可能なブーム流量制御弁と、前記バケットによる施工対象の目標形状を特定する目標施工面を設定する目標施工面設定部と、前記作業装置の姿勢を特定するための情報である姿勢情報を検出する作業姿勢検出部と、前記少なくとも一つのブームシリンダのヘッド側室及びロッド側室のそれぞれの圧力であるヘッド圧及びロッド圧を検出するブームシリンダ圧検出器と、前記作業姿勢検出部により検出される前記姿勢情報に基づいて前記ブームシリンダ、前記アームシリンダ及び前記バケットシリンダのそれぞれの作動速度であるシリンダ速度を演算するシリンダ速度算定部と、前記シリンダ速度算定部により算定されるそれぞれのシリンダ速度に基づいて、前記アームシリンダの伸縮による前記アームの動きに伴って前記バケットにより施工される面を前記目標施工面に近づけるための前記ブームシリンダの作動速度の目標値である目標ブームシリンダ速度を算定する目標ブームシリンダ速度算定部と、前記目標ブームシリンダ速度が得られるように前記ブーム流量制御弁を作動させるブーム流量操作部と、前記バケットを施工面に対して押付けるための押付け力の目標値である目標押付け力を設定する目標押付け力設定部と、前記作業姿勢検出部により検出される前記姿勢情報に基づいて前記作業装置の重心位置についての情報を算定する重心位置情報算定部と、前記重心位置情報により特定される前記作業装置の自重による荷重と前記ブームシリンダ圧検出器が検出する前記へッド圧及び前記ロッド圧により特定される前記ブームシリンダのシリンダ推力とに基づいて前記バケットが前記施工面に押付けられる押付け力を算定する押付け力算定部と、前記目標ブームシリンダ速度算定部により算定されるべき前記目標ブームシリンダ速度を前記目標押付け力と算定された前記押付け力との偏差を0に近づける方向に補正する補正部と、を備え、前記ブーム流量操作部は、前記補正部により補正された前記目標ブームシリンダ速度が得られるように前記ブーム流量制御弁を作動させる。
【0010】
この装置では、作業装置姿勢検出部が検出する作業姿勢情報に基づいて重心位置情報算定部が重心位置情報を算定し、押付け力算定部は、前記ブームシリンダのへッド圧及びロッド圧により特定されるシリンダ推力に加え、前記重心位置上記法線により特定される前記作業装置の自重による荷重を考慮して前記押付け力の算定を行うので、当該押付け力の前記目標押付け力に対する偏差に基づいて、算定されるべき前記目標ブームシリンダ速度の補正が行われることにより、前記バケットによる施工面を前記目標施工面に近づけ、かつ、前記押付け力を前記目標押付け力に近づけるための制御を高精度で行うことが可能である。
【0011】
ここにおいて、「前記目標ブームシリンダ速度算定部により算定されるべき前記目標ブームシリンダ速度を前記目標押付け力と算定された前記押付け力との偏差を0に近づける方向に補正する」補正部は、当該目標ブームシリンダ速度算定部により前記目標ブームシリンダ速度が算定された後にその算定された目標ブームシリンダ速度を補正するものでもいし、当該目標ブームシリンダ速度算定部による前記目標ブームシリンダ速度の算定の完了の前の当該目標ブームシリンダ速度の算定に用いられるパラメータを補正することにより、最終的に算定される前記目標ブームシリンダ速度を補正するものであってもよい。例えば、前記目標ブームシリンダ速度算定部が、前記目標施工面に沿って前記バケットの特定部位を動かすべき目標方向を特定する目標方向ベクトルを演算する目標方向ベクトル演算部と、当該目標方向ベクトルと前記ブームシリンダの前記シリンダ速度とに基づいて前記目標ブームシリンダ速度を演算する目標ブームシリンダ速度演算部と、を有する場合、前記補正部は、前記目標方向ベクトル演算部により演算された前記目標方向ベクトルを前記偏差を0に近づける方向に補正するものでもよい。
【0012】
前記ブーム流量制御弁が、ブーム上げパイロットポート及びブーム下げパイロットポートを有するパイロット操作式の方向切換弁であって、前記ブーム上げパイロットポートにブーム上げパイロット圧が入力されるときには前記ブームシリンダが前記ブームを起立させる方向に作動するように前記ブーム上げパイロット圧の大きさに対応した開度で開く一方、前記ブーム下げパイロットポートにブーム下げパイロット圧が入力されるときには前記ブームシリンダが前記ブームを倒伏させる方向に作動するように前記ブーム下げパイロット圧の大きさに対応した開度で開くものである場合、前記ブーム流量操作部は、パイロット油圧源と前記ブーム上げパイロットポートとの間に介在し、かつ、ブーム上げ流量指令信号の入力を受けることにより前記ブーム上げパイロットポートに入力される前記ブーム上げパイロット圧を前記ブーム上げ流量指令信号に対応した大きさのパイロット圧にするように開閉作動するブーム上げ流量操作弁と、前記パイロット油圧源と前記ブーム下げパイロットポートとの間に介在し、かつ、ブーム下げ流量指令信号の入力を受けることにより前記ブーム下げパイロットポートに入力される前記ブーム下げパイロット圧を前記ブーム下げ流量指令信号に対応した大きさのパイロット圧にするように開閉作動するブーム下げ流量操作弁と、前記補正部により補正された前記目標ブームシリンダ速度が得られるように前記ブーム上げ流量操作弁または前記ブーム下げ流量操作弁に流量指令信号を入力するブーム流量指令部と、を有するものが、好適である。
【0013】
前記目標押付け力設定部は、予めプログラムに組込まれた目標押付け力の値を記憶してこれを設定するものでもよいし、作業者の入力操作によって入力された値を目標押付け力の値として記憶してこれを設定するものでもよいが、作業者による前記作業装置の手動操作によって前記バケットが施工面に押付けられたときに前記押付け力算定部が算定した前記押付け力を前記目標押付け力として記憶し設定するものが、好ましい。このような態様の目標押付け力設定部は、作業者が実際に作業装置を操作して好ましいと判断した押付け力を目標押付け力として設定することを可能にする。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、ブーム、アーム及びバケットを含む作業装置を備えた作業機械に設けられて当該作業装置を油圧により動かす油圧駆動装置であって、前記バケットによる施工面を目標施工面に近づけ、かつ、バケットが施工面に押付けられる押付け力を目標押付け力に近づける制御を高精度で行うことが可能な油圧駆動装置が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態に係る油圧駆動装置が搭載される作業装置の例である油圧ショベルを示す側面図である。
【
図2】前記油圧ショベルに搭載される油圧駆動装置の構成要素を含む油圧回路及びコントローラを示す図である。
【
図3】前記油圧駆動装置に含まれるコントローラの主要な機能を示すブロック図である。
【
図4】前記コントローラがブームシリンダの駆動について実行する演算制御動作を示すフローチャートである。
【
図5】前記コントローラにおける目標ブームシリンダ速度の補正機能についての変形例を示すブロック図である。
【
図6】前記実施の形態に係る油圧駆動装置により制御される押付け力の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態に係る油圧駆動装置が搭載される作業装置の例である油圧ショベルを示す。この油圧ショベルは、地面Gの上を走行可能な下部走行体10と、前記下部走行体10に搭載される上部旋回体12と、上部旋回体12に搭載される作業装置14と、を備える。
【0018】
前記下部走行体10及び前記上部旋回体12は、前記作業装置14を支持する機体を構成する。前記上部旋回体12は、旋回フレーム16と、その上に搭載される複数の要素と、を有する。当該複数の要素は、エンジンを収容するエンジンルーム17や運転室であるキャブ18を含む。
【0019】
前記作業装置14は、掘削作業その他の必要な作業のための動作を行うことが可能であり、ブーム21、アーム22及びバケット24を含む。前記ブーム21は、前記旋回フレーム16の前端に起伏可能すなわち水平軸回りに回動可能に支持される基端部と、その反対側の先端部と、を有する。前記アーム22は、前記ブーム21の先端部に水平軸回りに回動可能に取付けられる基端部と、その反対側の先端部と、を有する。前記バケット24は、前記アーム22の先端部に回動可能に取付けられる。
【0020】
前記油圧駆動装置は、前記作業装置14を油圧により駆動するための装置である。当該油圧駆動装置は、前記ブーム21、前記アーム22及び前記バケット24のそれぞれについて設けられる複数の伸縮可能な油圧シリンダ、具体的には、少なくとも一つのブームシリンダ26、アームシリンダ27及びバケットシリンダ28を含む。
【0021】
前記少なくとも一つのブームシリンダ26は、前記上部旋回体12と前記ブーム21との間に介在し、当該ブーム21に起伏動作を行わせるように伸縮する。当該ブームシリンダ26は、
図2に示されるヘッド側室26h及びロッド側室26rを有し、当該ヘッド側室26hに作動油が供給されることにより伸長して前記ブーム21をブーム上げ方向に動かすとともに前記ロッド側室26r内の作動油を排出する一方、前記ロッド側室26rに作動油が供給されることにより収縮して前記ブーム21をブーム下げ方向に動かすとともに前記ヘッド側室26h内の作動油を排出する。
【0022】
前記少なくとも一つのブームシリンダ26は、単一のブームシリンダのみを含むものでもよいが、この実施の形態では互いに左右方向に並列に配置された一対のブームシリンダ26を含む。
【0023】
前記アームシリンダ27は、前記ブーム21と前記アーム22との間に介在し、当該アーム22に回動動作を行わせるように伸縮するアームアクチュエータである。具体的に、当該アームシリンダ27は、
図2に示されるヘッド側室27h及びロッド側室27rを有し、当該ヘッド側室27hに作動油が供給されることにより伸長して前記アーム22をアーム引き方向(当該アーム22の先端がブーム21に近づく方向)に動かすとともに前記ロッド側室27r内の作動油を排出する一方、前記ロッド側室27rに作動油が供給されることにより収縮して前記アーム22をアーム押し方向(当該アーム22の先端がブーム21から離れる方向)に動かすとともに前記ヘッド側室27h内の作動油を排出する。
【0024】
前記バケットシリンダ28は、前記アーム22と前記バケット24との間に介在し、当該バケット24に回動動作を行わせるように伸縮する。具体的に、当該バケットシリンダ28は、伸長することにより前記バケット24を掬い方向(当該バケット24の先端25がアーム22に近づく方向)に回動させる一方、収縮することにより前記バケット24を開き方向(当該バケット24の先端25がアーム22から離れる方向)に回動させる。
【0025】
図2は、前記油圧ショベルに搭載される油圧回路及びこれに電気的に接続されるコントローラ100を示す図であって、前記油圧駆動装置を構成する要素を含む。前記コントローラ100は、例えばマイクロコンピュータからなり、前記油圧回路に含まれる各要素の作動を制御する。
【0026】
前記油圧回路は、前記シリンダ26~28に加え、第1油圧ポンプ31及び第2油圧ポンプ32を含む作動油供給装置と、ブーム流量制御弁36と、アーム流量制御弁37と、バケット流量制御弁38と、パイロット油圧源40と、ブーム操作器46と、アーム操作器47と、バケット操作器48と、を含む。
【0027】
前記第1油圧ポンプ31及び第2油圧ポンプ32は、駆動源である図略のエンジンに接続され、当該エンジンが出力する動力により駆動されて作動油を吐出する。第1及び第2油圧ポンプ31,32のそれぞれは可変容量型ポンプである。具体的に、当該第1及び第2油圧ポンプ31,32はそれぞれ容量操作弁31a,32aを有し、前記コントローラ100から前記容量操作弁31a,32aに入力されるポンプ容量指令によって前記第1及び第2油圧ポンプ31,32の容量が操作される。
【0028】
前記ブーム流量制御弁36は、前記第2油圧ポンプ32と前記ブームシリンダ26との間に介在し、ブーム流量、すなわち、当該第2油圧ポンプ32から当該ブームシリンダ26に供給される作動油の流量及び当該ブームシリンダ26からタンクに排出される作動油の流量、を変化させるように開閉動作する。具体的に、当該ブーム流量制御弁36は、ブーム上げパイロットポート36a及びブーム下げパイロットポート36bを有するパイロット操作式の3位置方向切換弁からなり、前記第2油圧ポンプ32に接続された第2センターバイパスラインCL2の途中に配置される。
【0029】
前記ブーム流量制御弁36は、図略のスリーブとこれにストローク可能に装填されるスプールとを有する。当該スプールは、前記ブーム上げ及びブーム下げパイロットポート36a,36bのいずれにもパイロット圧が入力されないときは中立位置に保持され、前記第2センターバイパスラインCL2を開通して前記第2油圧ポンプ32と前記ブームシリンダ26との間を遮断することにより、前記ブームシリンダ26を停止状態に保持する。
【0030】
前記ブーム上げパイロットポート36aにブーム上げパイロット圧が入力されると、前記ブーム流量制御弁36の前記スプールは、そのブーム上げパイロット圧の大きさに対応したストロークで前記中立位置からブーム上げ位置にシフトされる。これにより、当該ブーム流量制御弁36は、前記第2センターバイパスラインCL2から分岐する第2供給ラインSL2を通じて前記第2油圧ポンプ32から前記ブームシリンダ26のヘッド側室26hに前記ストロークに応じた流量(ブーム上げ流量)で作動油が供給されることを許容する開口を形成するとともに、当該ブームシリンダ26のロッド側室26rからタンクに作動油が戻ることを許容する開口を形成するように、開弁する。これにより、前記ブームシリンダ26は前記ブーム上げ方向(この実施の形態では伸長方向)に駆動される。
【0031】
前記ブーム流量制御弁36は、逆に、前記ブーム下げパイロットポート36bにブーム下げパイロット圧が入力されるとそのブーム下げパイロット圧の大きさに対応したストロークで前記中立位置からブーム下げ位置に切換えられ、前記第2供給ラインSL2を通じて前記第2油圧ポンプ32から前記ブームシリンダ26のロッド側室26rに前記ストロークに応じた流量(ブーム下げ流量)で作動油が供給されることを許容する開口を形成するとともに、当該ブームシリンダ26のヘッド側室26hからタンクに作動油が戻ることを許容する開口を形成するように、開弁する。これにより、前記ブームシリンダ26は前記ブーム下げ方向(この実施の形態では収縮方向)に駆動される。
【0032】
換言すれば、前記ブーム流量制御弁36は、前記ブーム上げ位置及び前記ブーム下げ位置において前記一対のブームシリンダ26のそれぞれのヘッド側室26h及びロッド側室26rにそれぞれ通ずるヘッド側開口36h及びロッド側開口36rを同時に形成し、かつ、これらの開口(絞り開口)36h,36rの面積である絞り開口面積(絞り開度)を前記ブーム上げ及びブーム下げパイロット圧に対応する前記スプールのストロークによって変化させる。
【0033】
前記アーム流量制御弁37は、前記第1油圧ポンプ31と前記アームシリンダ27との間に介在し、当該第1油圧ポンプ31から当該アームシリンダ27に供給される作動油の流量であるアーム流量を変化させるように開閉動作する。具体的に、当該アーム流量制御弁37は、アーム引きパイロットポート37a及びアーム押しパイロットポート37bを有するパイロット操作式の3位置方向切換弁からなり、前記第1油圧ポンプ31に接続された第1センターバイパスラインCL1の途中に配置される。
【0034】
前記アーム流量制御弁37は、図略のスリーブ及びこれにストローク可能に装填されるスプールを有する。当該スプールは、前記アーム引き及びアーム押しパイロットポート37a,37bのいずれにもパイロット圧が入力されないときは中立位置に切換えられ、前記第1センターバイパスラインCL1を開通して前記第1油圧ポンプ31と前記アームシリンダ27との間を遮断する。これにより、前記アームシリンダ27は停止状態に保持される。
【0035】
前記アーム引きパイロットポート37aにアーム引きパイロット圧が入力されると、前記アーム流量制御弁37の前記スプールは、そのアーム引きパイロット圧の大きさに対応したストロークで前記中立位置からアーム引き位置にシフトされる。これにより、当該アーム流量制御弁37は、前記第1センターバイパスラインCL1から分岐する第1供給ラインSL1を通じて前記第1油圧ポンプ31から前記アームシリンダ27のヘッド側室27hに前記ストロークに応じた流量(アーム引き流量)で作動油が供給されることを許容するとともに、当該アームシリンダ27のロッド側室27rからタンクに作動油が戻ることを許容するように、開弁する。この開弁に伴い、前記アームシリンダ27は前記アーム引きパイロット圧に対応した速度で前記アーム引き方向に駆動される。
【0036】
前記アーム流量制御弁37は、逆に、前記アーム押しパイロットポート37bにアーム押しパイロット圧が入力されるとそのアーム押しパイロット圧の大きさに対応したストロークで前記中立位置からアーム押し位置に切換えられ、前記第1供給ラインSL1を通じて前記第1油圧ポンプ31から前記アームシリンダ27のロッド側室27rに前記ストロークに応じた流量(アーム押し流量)で作動油が供給されることを許容するとともに、当該アームシリンダ27のヘッド側室27hからタンクに作動油が戻ることを許容するように、開弁する。これにより、前記アームシリンダ27は前記アーム押しパイロット圧に対応した速度で前記アーム押し方向に駆動される。
【0037】
前記バケット流量制御弁38は、前記ブーム流量制御弁36とパラレルに配置されて前記第2油圧ポンプ32と前記バケットシリンダ28との間に介在し、当該第2油圧ポンプ32から当該バケットシリンダ28に供給される作動油の流量であるバケット流量を変化させるように開閉動作する。具体的に、当該バケット流量制御弁38は、バケット掬いパイロットポート38a及びバケット開きパイロットポート38bを有するパイロット操作式の3位置方向切換弁からなり、前記第2油圧ポンプ32に接続された第2センターバイパスラインCL2の途中に配置される。
【0038】
前記バケット流量制御弁38は、図略のスリーブ及びこれにストローク可能に装填されるスプールを有する。当該スプールは、前記バケット掬い及びバケット開きパイロットポート38a,38bのいずれにもパイロット圧が入力されないときは中立位置に切換えられ、前記第2センターバイパスラインCL2を開通して前記第2油圧ポンプ32と前記バケットシリンダ28との間を遮断する。これにより、前記バケットシリンダ28は停止状態に保持される。
【0039】
前記バケット掬いパイロットポート38aにバケット掬いパイロット圧が入力されると、前記バケット流量制御弁38の前記スプールは、そのバケット掬いパイロット圧の大きさに対応したストロークで前記中立位置からバケット掬い位置にシフトされる。これにより、当該バケット流量制御弁38は、前記第2供給ラインSL2を通じて前記第2油圧ポンプ32から前記バケットシリンダ28のヘッド側室28hに前記ストロークに応じた流量(バケット掬い流量)で作動油が供給されることを許容するとともに、当該バケットシリンダ28のロッド側室28rからタンクに作動油が戻ることを許容するように、開弁する。この開弁に伴い、前記バケットシリンダ28は前記バケット掬いパイロット圧に対応した速度で前記バケット掬い方向に駆動される。
【0040】
前記バケット流量制御弁38は、逆に、前記バケット開きパイロットポート38bにバケット開きパイロット圧が入力されるとそのバケット開きパイロット圧の大きさに対応したストロークで前記中立位置からバケット開き位置に切換えられ、前記第2供給ラインSL2を通じて前記第2油圧ポンプ32から前記バケットシリンダ28のロッド側室28rに前記ストロークに応じた流量(バケット開き流量)で作動油が供給されることを許容するとともに、当該バケットシリンダ28のヘッド側室28hからタンクに作動油が戻ることを許容するように、開弁する。これにより、前記バケットシリンダ28は前記バケット開きパイロット圧に対応した速度で前記バケット開き方向に駆動される。
【0041】
前記ブーム操作器46は、前記ブーム21を動かすためのブーム操作を受け、当該ブーム操作に対応したブーム上げパイロット圧またはブーム下げパイロット圧が前記ブーム流量制御弁36に入力されることを許容する。具体的に、当該ブーム操作器46は、前記運転室内において前記ブーム操作に相当する回動操作を受けることが可能なブームレバー46aと、当該ブームレバー46aに連結されたブームパイロット弁46bと、を有する。
【0042】
前記ブームパイロット弁46bは、前記パイロット油圧源40と前記ブーム流量制御弁36の両パイロットポート36a,36bとの間に介在する。当該ブームパイロット弁46bは、前記ブームレバー46aに与えられる前記ブーム操作に連動して開弁し、前記両パイロットポートのうち前記ブーム操作の方向に対応するパイロットポートに対して当該ブーム操作の大きさに対応した大きさのブーム上げパイロット圧またはブーム下げパイロット圧が前記パイロット油圧源40から入力されることを許容するように開弁する。例えば、当該ブームパイロット弁46bは、前記ブームレバー46aにブーム上げ動作に対応した方向のブーム操作が与えられると、前記ブーム上げパイロットポート36aに対して前記ブーム操作の大きさに対応したブーム上げパイロット圧が供給されるのを許容するように開弁する。
【0043】
前記アーム操作器47は、前記アーム22を動かすためのアーム操作を受け、当該アーム操作に対応したアーム引きパイロット圧またはアーム押しパイロット圧が前記アーム流量制御弁37に入力されることを許容する。具体的に、当該アーム操作器47は、前記運転室内において前記アーム操作に相当する回動操作を受けることが可能なアームレバー47aと、当該アームレバー47aに連結されたアームパイロット弁47bと、を有する。
【0044】
前記アームパイロット弁47bは、前記パイロット油圧源40と前記アーム流量制御弁37の両パイロットポート37a,37bとの間に介在する。当該アームパイロット弁47bは、前記アームレバー47aに与えられる前記アーム操作に連動して開弁し、前記両パイロットポートのうち前記アーム操作の方向に対応するパイロットポートに対して当該アーム操作の大きさに対応した大きさのアーム引きパイロット圧またはアーム押しパイロット圧が前記パイロット油圧源40から入力されることを許容するように開弁する。例えば、当該アームパイロット弁47bは、前記アームレバー47aにアーム引き動作に対応した方向のアーム操作が与えられると、前記アーム引きパイロットポート37aに対して前記アーム操作の大きさに対応したアーム引きパイロット圧が供給されるのを許容するように開弁する。
【0045】
前記バケット操作器48は、前記バケット24を動かすためのバケット操作を受け、当該バケット操作に対応したバケット掬いパイロット圧またはバケット開きパイロット圧が前記バケット流量制御弁38に入力されることを許容する。具体的に、当該バケット操作器48は、前記運転室内において前記バケット操作に相当する回動操作を受けることが可能なバケットレバー48aと、当該バケットレバー48aに連結されたバケットパイロット弁48bと、を有する。
【0046】
前記バケットパイロット弁48bは、前記パイロット油圧源40と前記バケット流量制御弁38の両パイロットポート38a,38bとの間に介在する。当該バケットパイロット弁48bは、前記バケットレバー48aに与えられる前記バケット操作に連動して開弁し、前記両パイロットポートのうち前記バケット操作の方向に対応するパイロットポートに対して当該バケット操作の大きさに対応した大きさのバケット掬いパイロット圧またはバケット開きパイロット圧が前記パイロット油圧源40から入力されることを許容するように開弁する。例えば、当該バケットパイロット弁48bは、前記バケットレバー48aにバケット掬い動作に対応した方向のバケット操作が与えられると、前記バケット掬いパイロットポート38aに対して前記バケット操作の大きさに対応したバケット掬いパイロット圧が供給されるのを許容するように開弁する。
【0047】
前記油圧駆動装置は、さらに、ブームシリンダヘッド圧センサ56H、ブームシリンダロッド圧センサ56R、作業装置姿勢検出部60、及びモード切換スイッチ120を備える。
【0048】
前記ブームシリンダへッド圧センサ56H及び前記ブームシリンダロッド圧センサ56Rは、ブームシリンダ圧検出器を構成する。具体的に、前記ブームシリンダヘッド圧センサ56Hは、前記ブームシリンダ26のヘッド側室26hにおける作動油の圧力であるブームシリンダヘッド圧Phを検出し、前記ブームシリンダロッド圧センサ56Rは、前記ブームシリンダ26のロッド側室26rにおける作動油の圧力であるブームシリンダロッド圧Prを検出する。前記センサ56H及び56Rのそれぞれは、その検出した物理量をこれに対応する電気信号である検出信号に変換して前記コントローラ100に入力する。
【0049】
前記作業装置姿勢検出部60は、前記作業装置14の姿勢を特定するための情報である姿勢情報を検出する。具体的に、当該作業装置姿勢検出部60は、
図1に示すようなブーム角度センサ61、アーム角度センサ62及びバケット角度センサ64を含む。前記ブーム角度センサ61は、前記機体に対する前記ブーム21の起伏角度であるブーム角度を検出し、前記アーム角度センサ62は、前記ブーム21に対する前記アーム22の回動角度であるアーム角度を検出し、前記バケット角度センサ64は前記アーム22に対する前記バケット24の回動角度であるバケット角度を検出する。これらのセンサ61,62,64により生成される電気信号である角度検出信号も、前記コントローラ100に入力される。
【0050】
前記モード切換スイッチ120は、運転室内に配置されるとともに、前記コントローラ100に電気的に接続される。当該モード切換スイッチ120は、前記コントローラ100の制御モードを手動操作モードと自動制御モードとに切換えるための操作を受けて当該操作に対応するモード指令信号を前記コントローラ100に入力する。
【0051】
前記コントローラ100は、前記モード切換スイッチ120から入力されるモード指令信号に応じて前記手動操作モードと前記自動制御モードとに切換えられる。当該コントローラ100は、前記手動操作モードでは、作業者によって前記ブーム操作器46、前記アーム操作器47及び前記バケット操作器48にそれぞれ与えられる前記ブーム操作、前記アーム操作及び前記バケット操作に対応して前記ブーム流量、前記アーム流量及び前記バケット流量がそれぞれ変化するように前記ブーム流量制御弁36、前記アーム流量制御弁37及び前記バケット流量制御弁38が作動するのを許容する。一方、当該コントローラ100は、前記自動制御モードでは、前記アーム操作に対応した前記アーム22の動きに伴って前記バケット24により施工される施工面が予め設定された目標施工面に近づくように前記アームシリンダ27の伸縮に応じて前記ブームシリンダ26(この実施の形態ではブームシリンダ26及びバケットシリンダ28)の作動を自動制御するように構成されている。
【0052】
具体的に、前記油圧駆動装置は、前記コントローラ100による前記ブームシリンダ26及び前記バケットシリンダ28の自動制御を可能にするための手段として、
図2に示すようなブーム上げ流量操作弁76A、ブーム下げ流量操作弁76B、バケット開き流量操作弁78、シャトル弁71A,71B及びシャトル弁72をさらに備える。
【0053】
前記ブーム上げ流量操作弁76Aは、前記ブーム操作器46とはパラレルに配置されながら前記パイロット油圧源40と前記ブーム上げパイロットポート36aとの間に介在し、前記パイロット油圧源40から前記ブーム上げパイロットポート36aに入力されるパイロット圧を前記コントローラ100から入力されるブーム流量指令信号に応じて(前記ブーム操作器46とは独立して)減圧することにより、前記ブーム上げパイロットポート36aに入力されるパイロット圧を前記コントローラ100が当該ブーム上げ流量操作弁76Aを通じて自動操作することを可能にする。前記シャトル弁71Aは、前記ブーム操作器46及び前記ブーム上げ流量操作弁76Aと前記ブーム上げパイロットポート36aとの間に介在し、前記ブーム操作器46の二次圧及び前記ブーム上げ流量操作弁76Aの二次圧のうち高い方の二次圧が最終的に前記ブーム上げパイロット圧として前記ブーム上げパイロットポート36aに入力されることを許容するように開弁する。
【0054】
同様に、前記ブーム下げ流量操作弁76Bは、前記ブーム操作器46とはパラレルに配置されながら前記パイロット油圧源40と前記ブーム下げパイロットポート36bとの間に介在し、前記パイロット油圧源40から前記ブーム下げパイロットポート36bに入力されるパイロット圧を前記コントローラ100から入力されるブーム流量指令信号に応じて(前記ブーム操作器46とは独立して)減圧することにより、前記ブーム下げパイロットポート36bに入力されるパイロット圧を前記コントローラ100が当該ブーム下げ流量操作弁76Bを通じて自動操作することを可能にする。前記シャトル弁71Bは、前記ブーム操作器46及び前記ブーム下げ流量操作弁76Bと前記ブーム下げパイロットポート36bとの間に介在し、前記ブーム操作器46の二次圧及び前記ブーム下げ流量操作弁76Bの二次圧のうち高い方の二次圧が最終的に前記ブーム下げパイロット圧として前記ブーム下げパイロットポート36bに入力されることを許容するように開弁する。
【0055】
また、前記バケット開き流量操作弁78は、前記バケット操作器48とはパラレルに配置されながら前記パイロット油圧源40と前記バケット開きパイロットポート38bとの間に介在し、前記パイロット油圧源40から前記バケット開きパイロットポート38bに入力されるパイロット圧を前記コントローラ100から入力されるバケット開き流量指令信号に応じて(前記バケット操作器48とは独立して)減圧することにより、前記バケット開きパイロットポート38bに入力されるパイロット圧を前記コントローラ100が当該バケット開き流量操作弁78を通じて自動操作することを可能にする。前記シャトル弁72は、前記バケット操作器48及び前記バケット開き流量操作弁78と前記バケット開きパイロットポート38bとの間に介在し、前記バケット操作器48の二次圧及び前記バケット開き流量操作弁78の二次圧のうち高い方の二次圧が最終的に前記バケット開きパイロット圧として前記バケット開きパイロットポート38bに入力されることを許容するように開弁する。
【0056】
前記流量操作弁76A,76B及び78のそれぞれは、電磁弁(例えば電磁比例減圧弁や電磁逆比例減圧弁)からなり、前記コントローラ100から入力される流量指令信号に対応して開度が変化するように開閉動作することにより、当該流量指令に対応した大きさのパイロット圧を生成する。
【0057】
前記コントローラ100は、前記手動操作モードでは、前記流量操作弁76A,76B,78のそれぞれを実質上全閉の状態にすることにより前記ブーム、アーム及びバケット流量制御弁36,37,38がそれぞれ前記ブーム、アーム及びバケット操作器46,47,48に与えられる操作に連動して開閉することを許容する。一方、前記コントローラ100は、前記自動制御モードでは、前記流量操作弁76A,76B,78のそれぞれに流量指令信号を入力することにより、アームシリンダ27の収縮動作によるアーム22のアーム引き動作に前記ブームシリンダ26及び前記バケットシリンダ28の動作を追従させる自動制御を実行する。
【0058】
具体的に、前記コントローラ100は、前記自動制御を実行するための機能として、
図3に示すような目標施工面設定部101、目標方向ベクトル演算部102、シリンダ長さ演算部103、シリンダ速度演算部104、目標バケットシリンダ速度演算部105、バケット開き流量指令部106、目標ブームシリンダ速度演算部107、重心位置演算部108、シリンダ推力演算部109、押付け力演算部110、目標押付け力設定部111、目標速度補正部112、及びブーム流量指令部113を有する。
【0059】
前記目標施工面設定部101は、前記キャブ18内に設けられた目標施工面入力部122により入力された施工面を記憶し、これを目標施工面として目標方向ベクトル演算部102に入力する。この目標施工面は、掘削対象である地盤の目標形状であって3次元の設計地形を特定する面である。当該目標施工面は、CIMなどの外部データによって特定されてもよいし、機体位置を基準にして設定されたものでもよい。
【0060】
前記目標方向ベクトル演算部102は、前記目標施工面に沿ってバケット24の先端25を動かすために当該バケットの特定部位を動かす方向を特定する目標方向ベクトルを演算する。前記特定部位は、例えば、前記先端25であってもよいし、前記アーム22の先端部に連結される部位であってもよい。
【0061】
前記シリンダ長さ演算部103は、前記作業装置姿勢検出部60により検出される前記姿勢情報に基づいて、前記ブームシリンダ26、前記アームシリンダ27及び前記バケットシリンダ28のシリンダ長さをそれぞれ演算する。前記シリンダ速度演算部104は、各シリンダ長さの時間微分によって前記ブームシリンダ26、前記アームシリンダ27及び前記バケットシリンダ28の伸縮速度であるシリンダ速度を演算する。つまり、この実施の形態に係る前記シリンダ長さ演算部103及び前記シリンダ速度演算部104は、前記姿勢情報に基づいて各シリンダ速度を算定するシリンダ速度算定部を構成する。
【0062】
前記目標バケットシリンダ速度演算部105は、前記目標方向ベクトルと、前記シリンダ速度演算部104により演算される前記シリンダ速度のそれぞれと、に基づき、目標バケットシリンダ速度Vkoを演算する。前記目標バケットシリンダ速度Vkoは、前記アーム22の引き方向の動作にかかわらず前記バケット24の姿勢を一定に保つ(つまり目標施工面に沿ってバケット24を平行移動させる)ための前記バケットシリンダ28のバケット開き方向のシリンダ速度(この実施の形態では収縮方向の速度)の目標値である。
【0063】
前記バケット開き流量指令部106は、前記目標バケットシリンダ速度Vkoを得るための目標バケット開き流量、つまり前記バケットシリンダ28のロッド側室28rに供給されるべき作動油の流量、を演算し、当該目標バケット開き流量を実現するためのバケット開き流量指令信号を生成して前記バケット開き流量操作弁78に入力する。当該バケット開き流量操作弁78は、当該バケット開き流量指令信号に対応した開度で開弁することにより、前記バケット流量制御弁38のバケット開きパイロットポート38bに入力されるパイロット圧を前記目標バケット開き流量を実現するようなパイロット圧に調節する。
【0064】
前記目標ブームシリンダ速度演算部107は、前記目標方向ベクトルと、前記シリンダ速度演算部104により演算される前記シリンダ速度のそれぞれと、に基づき、目標ブームシリンダ速度Vboを演算する。前記目標ブームシリンダ速度Vboは、前記アームシリンダ27の伸長による前記アーム22の引き方向の動作に伴って前記バケット24が施工する面である施工面を前記目標施工面に近づけるための前記ブームシリンダ26のブーム上げ方向のシリンダ速度(この実施の形態では伸長方向の速度)の目標値であり、前記アームシリンダ27のシリンダ速度(伸長速度)に対応する速度値である。
【0065】
従って、前記目標方向ベクトル演算部102及び前記目標ブームシリンダ速度演算部107は、本発明に係る目標ブームシリンダ速度算定部を構成する。一方、前記目標バケットシリンダ速度Vkoの算定は必ずしも要しない。例えば、バケットシリンダ28が静止していること、すなわちアーム22に対するバケット24の角度が固定されていること、を前提に前記目標ブームシリンダ速度Vboが算定されてもよい。このように前記目標バケットシリンダ速度Vkoが演算されない形態、つまりバケットシリンダ28の自動制御が省略される形態、においては、前記バケット開き流量指令部106及び前記バケット開き流量操作弁78は不要である。
【0066】
前記重心位置演算部108は、前記シリンダ長さ演算部103とともに、前記作業装置14の重心位置についての情報である重心位置情報を算定する重心位置情報算定部を構成する。具体的に、前記重心位置演算部108は、前記シリンダ長さ演算部103により演算される前記シリンダ長さのそれぞれに基づき、前記ブーム21、前記アーム22及び前記バケット24のそれぞれの重心位置、より詳しくは、前記作業装置14全体の回動支点であるブーム21の回動中心、すなわちブームフット、を基準とした重心位置、を演算する。
【0067】
前記シリンダ推力演算部109及び前記押付け力演算部110は、前記バケット24を施工面に対して押付ける力である押付け力Fpを算定する押付け力算定部を構成する。
【0068】
前記シリンダ推力演算部109は、前記ブームシリンダヘッド圧センサ56H及び前記アームシリンダロッド圧センサ56Rによりそれぞれ検出される前記ヘッド圧Ph及び前記ロッド圧Prに基づき、前記ブームシリンダ26のシリンダ推力Fctを演算する。当該シリンダ推力Fctは、ブームシリンダ26の伸長方向の推力を正とすると次式(1)で表される。
【0069】
Fct=Ph*Ah-Pr*Ar …(1)
ここにおいて、Ahはブームシリンダ26のヘッド側室26hの断面積、Arはロッド側室26rの断面積であり、当該ロッド側室26rの断面積Arは、一般には、シリンダロッドの断面積の分だけヘッド側室26hの断面積Ahよりも小さい。
【0070】
前記押付け力演算部110は、前記重心位置演算部108により演算される前記ブーム21、前記アーム22及び前記バケット24のそれぞれの重心位置に基づき、当該作業装置14の回動支点であるブーム21のブームフットを中心とする前記作業装置14の自重による下向き荷重のモーメントMwを演算するとともに、前記シリンダ推力Fctによるモーメント(シリンダ推力Fctが正の場合は上向きのモーメント)Mctと、を演算し、両モーメントMw,Mctに基づいて、前記バケット24の先端25を前記施工面に押付ける力である前記押付け力Fpを演算する。
【0071】
前記目標押付け力設定部111は、前記キャブ18内に設けられた目標押付け力入力部124により入力された押付け力を記憶してこれを目標押付け力Fpoとして目標速度補正部112に入力する。当該目標押付け力Fpoの値は、例えば、予めプログラムにおいて組込まれた値であってもよいし、作業者の前記目標押付け力入力部124におけるテンキー等の操作によって入力された値でもよい。
【0072】
あるいは、前記目標押付け力設定部111は、作業者が実際に作業装置14を操作してバケット24を地面に押付けた状態で前記目標押付け力入力部124に含まれる設定スイッチを操作した時点で前記押付け力演算部110により演算される押付け力Fpを前記目標押付け力Fpoとして記憶し設定してもよい。
【0073】
前記目標速度補正部112は、前記目標押付け力Fpoと前記押付け力演算部110により演算された前記押付け力Fpとの偏差ΔFp(=Fpo-Fp)を演算し、当該偏差ΔFpを0に近づける方向に、前記目標ブームシリンダ速度演算部によって107によって演算された前記目標ブームシリンダ速度Vboを補正する。つまり、前記押付け力Fpを前記目標押付け力Fpoに近づけるような前記目標ブームシリンダ速度Vboの補正を行う。
【0074】
前記ブーム流量指令部113は、前記ブーム上げ流量操作弁76A及び前記ブーム下げ流量操作弁76Bとともに、前記目標速度補正部112により補正された後の目標ブームシリンダ速度Vboが得られるように前記ブーム流量制御弁36を作動させるブーム流量操作部を構成する。具体的に、当該ブーム流量指令部113は、前記補正後の目標ブームシリンダ速度Vboを得るための目標ブーム上げ流量または目標ブーム下げ流量を演算し、当該目標ブーム上げ流量を実現するためのブーム上げ流量指令信号を生成して前記ブーム上げ流量操作弁76Aに入力するか、あるいは、当該目標ブーム下げ流量を実現するためのブーム下げ流量指令信号を生成して前記ブーム下げ流量操作弁76Bに入力する。
【0075】
次に、前記自動制御モードにおいて前記コントローラ100が前記ブームシリンダ26の駆動について行う演算制御動作及びこれに伴う油圧駆動装置の作用を、
図4のフローチャートを併せて参照しながら説明する。
【0076】
コントローラ100は、当該コントローラ100に入力される信号、具体的には各センサの検出信号や指定信号を取り込む(
図4のステップS0)。指定信号には、オペレータによる目標施工面入力部122の操作により指定される目標施工面についての信号や、目標押付け力入力部124の操作により指定される目標押付け力Fpoについての信号が含まれる。これらの指定信号に基づき、前記コントローラ100の目標施工面設定部101及び目標押付け力設定部111はそれぞれ目標施工面及び目標押付け力Fpoの設定を行う(ステップS1)。
【0077】
次に、前記コントローラ100の目標ブームシリンダ速度演算部107は、前記目標施工面と、シリンダ長さ演算部103及びシリンダ速度演算部104により算出される実際のシリンダ速度と、に基づき、アームシリンダ27のシリンダ速度に対応する目標ブームシリンダ速度Vboを算定する(ステップS2)。前記目標ブームシリンダ速度Vboは、上述のように、バケット24による施工面を前記目標施工面に近づけるように前記アーム22の引き方向の動作にブーム21の上げ方向の動作を連動させるために必要なブームシリンダ26の上げ方向の速度である。換言すれば、作業者によるアームレバー47の引き方向の操作に伴ってバケット24の特定部位(例えば当該バケット24の先端25、あるいは、アーム22の先端部に支持される基端部)が前記目標施工面に沿って移動するようにブームシリンダ26を作動させるべき速度である。
【0078】
一方、前記コントローラ100の重心位置情報算定部は、作業装置14の重心位置情報を算定し、押付け力算定部は、前記バケット24の先端25を施工面に対して押付ける押付け力Fpを算定する(ステップS3)。具体的には、前記シリンダ長さ演算部103により演算された各シリンダ長さに基づいて前記重心位置演算部108がブーム21、アーム22及びバケット24のそれぞれの重心位置を演算する。一方、前記ブームシリンダヘッド圧センサ56H及びロッド圧センサ56Rがそれぞれ検出するブームシリンダ26のヘッド圧Ph及びロッド圧Prに基づいてシリンダ推力演算部109が当該ブームシリンダ26のシリンダ推力Fct(=Ph*Ah-Pr*Ar)を演算する。そして、前記押付け力演算部110は、前記各重心位置に基づいて前記作業装置14全体の自重による前記ブームフット回りの下向きのモーメントMwと、前記シリンダ推力Fctによる前記ブームフット回りの上向きのモーメントMctと、を演算し、両モーメントMw,Mctの差に基づいて前記押付け力Fpを算定する。
【0079】
なお、前記ショベル24が施工面(法面を含む)から受ける反力であって前記押付け力Fpに相当する反力は、当該施工面の法線方向のベクトルによって与えられる。このときの押付け力Fpは、前記ブームフット回りのモーメントに対応して前記ショベル24から前記施工面に与えられる力(当該モーメントの半径方向に対して直交する方向の力)をFm、当該力Fmの方向と前記法線方向とのなす角度をθとすると、次式(2)で表される。
【0080】
Fp=Fm*cosθ …(2)
前記コントローラ100の目標速度補正部112は、さらに、前記目標押付け力Fpoと前記押付け力Fpとの偏差ΔFp(=Fpo-Fp)を演算し、当該偏差ΔFpを0に近づけるような前記目標ブームシリンダ速度Vboの補正を行う(ステップS4)。この補正は、例えば、前記偏差ΔFpに特定のゲインを乗じた補正量を前記目標ブームシリンダ速度Vboから差し引くことにより、行われる。
【0081】
次に、前記コントローラ100のブーム流量指令部113は、前記のように補正された目標ブームシリンダ速度Vboを得るようなブーム上げ流量指令信号またはブーム下げ指令信号を生成してブーム上げ流量操作弁76Aまたはブーム下げ流量操作弁76Bに入力し(ステップS5、これにより、前記ブーム流量制御弁36の特定の絞り開口の制御を行う。
【0082】
具体的に、前記ブーム流量指令部113は、前記ブーム上げ流量操作弁76A及び前記ブーム下げ流量操作弁76Bのうち前記ブームシリンダ26に供給される作動油の流量を操作する流量操作弁に対して流量指令信号を入力し、これによりブームシリンダ26の速度を制御する。例えば、前記目標ブームシリンダ速度Vboの方向が伸長方向(ブーム上げ方向)である場合、前記ブーム流量指令部113は当該目標ブームシリンダ速度Vboに相当するブーム上げ流量指令信号を生成して前記ブーム上げ流量操作弁76Aに入力する。逆に、前記目標ブームシリンダ速度Vboの方向が収縮方向(ブーム下げ方向)である場合、前記ブーム流量指令部113は当該目標ブームシリンダ速度Vboに相当するブーム下げ流量指令信号を生成して前記ブーム上げ流量操作弁76Aに入力する。
【0083】
前記ブーム流量指令部113は、あるいは、前記目標ブームシリンダ速度Vboの方向と前記シリンダ推力Fctの方向との関係によってはブームシリンダ26から排出される作動油の流量を操作する流量操作弁に流量指令信号を入力してもよい。具体的には、前記目標ブームシリンダ速度Vboの方向と前記シリンダ推力Fctの方向とが逆である場合、つまり、目標ブームシリンダ速度Vboの方向が伸長方向で前記シリンダ推力Fctの方向が収縮方向である場合や、目標ブームシリンダ速度Vboの方向が収縮方向で前記シリンダ推力Fctの方向が伸長方向である場合には、ブームシリンダ26に作用している荷重の向きと同じ向きに、前記シリンダ推力Fctに抗して、ブームシリンダ26を伸長または収縮させるため、ブームシリンダ26の排出側の圧力が保持圧となるので、当該排出側の流量を制御するように、ブーム上げ流量操作弁76A及びブーム下げ流量操作弁76Bのうち操作すべき流量操作弁を選定してもよい。より具体的に、前記ブーム流量指令部113は、前記目標ブームシリンダ速度Vboが伸長方向で前記シリンダ推力Fctが収縮方向である場合にはブーム下げ流量操作弁76Bにブーム下げ流量指令信号を入力し、逆に前記目標ブームシリンダ速度Vboが収縮方向で前記シリンダ推力Fctが伸長方向である場合にはブーム上げ流量操作弁76Aにブーム上げ流量指令信号を入力するような演算制御動作を行ってもよい。
【0084】
以上説明した装置によれば、ブームシリンダ26のシリンダ推力Fctに加え、作業装置姿勢検出部60が検出する作業姿勢情報さらには重心位置情報算定部が算定する重心位置情報により基づいて作業装置14の自重による荷重を考慮した押付け力Fpの算定が行われるので、当該押付け力Fpの目標押付け力Fpoに対する偏差ΔFpに基づいて算定されるべき目標ブームシリンダ速度Vboの補正を行うことにより、バケット24による施工面を目標施工面に近づけ、かつ、前記押付け力Fpを前記目標押付け力Fpoに近づけるための制御を高精度で行うことが可能である。
【0085】
なお、本発明は以上説明した実施の形態に限定されない。本発明は、例えば次のような態様を包含する。
【0086】
(1)算定されるべき目標ブームシリンダ速度の補正について
本発明において「目標ブームシリンダ速度算定部により算定されるべき目標ブームシリンダ速度を目標押付け力と算定された押付け力との偏差を0に近づける方向に補正する」補正部は、前記目標速度補正部112のように目標ブームシリンダ速度算定部により既に算定された目標ブームシリンダ速度Vboを補正するものに限らず、当該目標ブームシリンダ速度算定部による前記目標ブームシリンダ速度の算定の完了の前の当該目標ブームシリンダ速度の算定に用いられるパラメータを補正することにより、最終的に算定される前記目標ブームシリンダ速度を補正するものであってもよい。
【0087】
このような補正部を備えたコントローラ100の変形例を
図5に示す。このコントローラ100は、
図3に示される目標速度補正部112に代えて目標ベクトル補正部114を有する。当該目標ベクトル補正部114は、目標方向ベクトル演算部102により演算された目標方向ベクトルを、目標押付け力Fpoと算定された押付け力Fpとの偏差ΔFpを0に近づける方向に補正する。目標ブームシリンダ速度演算部107は、その補正された後の目標ベクトルとシリンダ速度演算部104が演算したシリンダ速度とに基づいて最終の目標ブームシリンダ速度Vboを演算する。この変形例に係る前記目標ベクトル補正部114も、最終的に算定される目標ブームシリンダ速度Vboを補正することが可能である。
【0088】
(2)ブーム流量制御弁について
本発明に係るブーム流量制御弁の具体的な構成は限定されない。前記実施の形態に係るブーム流量制御弁36は、単一のスプールのストロークによってヘッド側開口36h及びロッド側開口36rの双方の開口面積を変化させるパイロット操作式の3位置方向切換弁により構成されるが、本発明に係るブーム流量制御弁は、例えば、ブームシリンダのヘッド側室及びロッド側室にそれぞれ個別に接続されるヘッド側流量制御弁及びロッド側流量制御弁の組合せであってもよい。
【0089】
(3)目標ブームシリンダ速度の算定について
目標ブームシリンダ速度の算定手法は、前記実施の形態における算定手法に限定されない。当該目標ブームシリンダ速度は、例えば、作業装置の姿勢を特定する姿勢情報と目標ブームシリンダ速度との関係について予め用意されたマップに基づき、実際の姿勢情報に対応して特定されてもよい。
【0090】
(4)アームの作動方向について
前記実施の形態は、アーム22のアーム引き方向の動きに対応してブームシリンダ26のシリンダ速度を制御するものであるが、本発明は、アームのアーム押し方向の動きやアーム引き方向及びアーム押し方向の往復動作に追従したブームシリンダの制御にも適用されることが可能である。例えば、アームの押し方向の動きに伴ってブームシリンダの収縮方向のシリンダ速度の制御が行われる場合でも、その目標ブームシリンダ速度の方向とシリンダ推力の方向とに基づいてブーム上げ流量及びブーム下げ流量のうち制御すべき流量(供給側流量または排出側流量)を選定することにより、前記と同様の効果を得ることが可能である。
【実施例】
【0091】
前記実施の形態に係る装置を作動させたときに実際に生じる押付け力(kN)の時間変化を計測する実験が行われた。その結果を
図6に示す。まず、作業者の手動操作により、ショベル24の背面を施工面に押付ける作業が行われ、そのときに押付け力算定部が算定する押付け力Fpが目標押付け力Fpoとして設定される。その後、当該目標押付け力Fpoと算定される押付け力Fpとの偏差ΔFpを0に近づける補正を含むブームシリンダ26の速度制御が実行されることにより、前記押付け力Fpの値を前記目標押付け力Fpoに近い値に保ちながら前記ショベル24による施工面を目標施工面に近づける自動制御が実現された。
【符号の説明】
【0092】
10 下部走行体(機体)
12 上部旋回体(機体)
14 作業装置
21 ブーム
22 アーム
24 バケット
26 ブームシリンダ
26h ヘッド側室
26r ロッド側室
27 アームシリンダ
28 バケットシリンダ
36 ブーム流量制御弁
40 パイロット油圧源
46 ブーム操作器
47 アーム操作器
48 バケット操作器
56H ブームシリンダヘッド圧センサ(ブームシリンダ圧検出器)
56R ブームシリンダロッド圧センサ(ブームシリンダ圧検出器)
60 作業装置姿勢検出部
76A ブーム上げ流量操作弁(ブーム流量操作部)
76B ブーム下げ流量操作弁(ブーム流量操作部)
100 コントローラ
101 目標施工面設定部
103 シリンダ長さ演算部(目標シリンダ速度算定部及び押付け力算定部)
104 シリンダ速度演算部(目標シリンダ速度算定部)
107 目標ブームシリンダ速度演算部(目標シリンダ速度算定部)
108 重心位置演算部(重心位置情報算定部)
109 シリンダ推力演算部(押付け力算定部)
110 押付け力演算部(押付け力算定部)
111 目標押付け力設定部
112 目標速度補正部(補正部)
113 ブーム流量指令部(ブーム流量操作部)
114 目標ベクトル補正部(補正部)