(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】通信不正成立防止システム及び通信不正成立防止方法
(51)【国際特許分類】
E05B 49/00 20060101AFI20220531BHJP
B60R 25/24 20130101ALI20220531BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
E05B49/00 K
B60R25/24
H04Q9/00 301Z
(21)【出願番号】P 2018156297
(22)【出願日】2018-08-23
【審査請求日】2021-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小杉 正則
(72)【発明者】
【氏名】新田 繁則
(72)【発明者】
【氏名】古田 昌輝
(72)【発明者】
【氏名】深貝 直史
(72)【発明者】
【氏名】川村 将之
(72)【発明者】
【氏名】河野 裕己
【審査官】芝沼 隆太
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-183487(JP,A)
【文献】特開2018-71190(JP,A)
【文献】特開2016-38332(JP,A)
【文献】特開2017-106256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
B60R 25/00-99/00
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末が通信相手と通信する際の不正通信を防止する通信不正成立防止システムであって、
前記端末及び前記通信相手の少なくとも一方に配置され、これらの間の距離に準じた測定値を測定する測定部と、
前記測定値が妥当か否かの判定結果に基づき、前記端末と前記通信相手とが無線により行う認証の作動を制御する処理実行部とを備え、
前記測定部による測定は、前記認証の通信が実施されない時間帯に実行され
、
前記認証の通信は、乱数であるチャレンジコードの演算結果としてレスポンスコードを前記端末及び前記通信相手の両方で求めて、これらの一致を確認するチャレンジレスポンス認証を含み、
前記測定値の算出は、前記端末及び前記通信相手の一方から他方に前記チャレンジコードを送信してから前記レスポンスコードが返信されるまでの間の時間帯に実行される通信不正成立防止システム。
【請求項2】
前記認証の通信が実施されない時間帯は、前記認証の通信が開始されてから終了するまでの間において、通信が行われていない時間帯である請求項1に記載の通信不正成立防止システム。
【請求項3】
前記処理実行部は、前記測定値から通信を不正通信と判定した場合、前記端末及び前記通信相手のうち前記チャレンジコードを受信する側が、当該チャレンジコードに対する応答を返信しない作動をとることにより、前記認証の通信を途絶させる請求項1又は2に記載の通信不正成立防止システム。
【請求項4】
前記処理実行部は、前記測定値から通信を不正通信と判定した場合、前記認証の電波を受信することができないように作動させることにより、前記認証の通信を途絶させる請求項1~3のうちいずれか一項に記載の通信不正成立防止システム。
【請求項5】
前記測定部は、前記端末及び前記通信相手の組が正規ペアであることを確認できた場合に、前記測定値の測定、及び当該測定値の妥当性の判定を実行する請求項1~4のうちいずれか一項に記載の通信不正成立防止システム。
【請求項6】
端末が通信相手と通信する際の不正通信を防止する通信不正成立防止方法であって、
前記端末及び前記通信相手の少なくとも一方に配置された測定部により、これらの間の距離に準じた測定値を測定するステップと、
前記測定値が妥当か否かの判定結果に基づき、前記端末と前記通信相手とが無線により行う認証の作動を制御するステップとを備え、
前記測定部による測定は、前記認証の通信が実施されない時間帯に実行され
、
前記認証の通信は、乱数であるチャレンジコードの演算結果としてレスポンスコードを前記端末及び前記通信相手の両方で求めて、これらの一致を確認するチャレンジレスポンス認証を含み、
前記測定値の算出は、前記端末及び前記通信相手の一方から他方に前記チャレンジコードを送信してから前記レスポンスコードが返信されるまでの間の時間帯に実行される通信不正成立防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2者間の不正通信の成立を防止する通信不正成立防止システム及び通信不正成立防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、端末及びその通信相手の間で電波の通信を行ってこれらの間の距離を測定し、測定した距離の妥当性を判定する測距システムが周知である(特許文献1等参照)。この種の測距システムは、2者間の電波通信を通じて算出した測定値が妥当であるか否かの判定結果を基に通信の有効無効を設定する通信不正成立防止システムとして使用されることが検討されている。通信不正成立防止システムは、例えば端末及びその通信相手の間の距離に準じた測定値を求め、この測定値が妥当(所定範囲内)であると判定した場合、例えば2者間の間で無線により実行されたID照合の成立を許容する。これにより、端末で通信相手を操作することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の通信不正成立防止システムを、大きな改変を必要とすることなく搭載することができる技術開発のニーズがあった。
本発明の目的は、大きな改変を必要とすることなく不正通信成立の抑止を可能にした通信不正成立防止システム及び通信不正成立防止方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記問題点を解決する通信不正成立防止システムは、端末が通信相手と通信する際の不正通信を防止する構成であって、前記端末及び前記通信相手の少なくとも一方に配置され、これらの間の距離に準じた測定値を測定する測定部と、前記測定値が妥当か否かの判定結果に基づき、前記端末と前記通信相手とが無線により行う認証の作動を制御する処理実行部とを備え、前記測定部による測定は、前記認証の通信が実施されない時間帯に実行される。
【0006】
本構成によれば、端末及び通信相手が認証の通信を実施するにあたり、認証の通信が実施されない時間帯のときに、測定値の測定を実行する。従って、この種の不正通信の検出機能を端末及び通信相手に設けるようにしても、既存の認証システムの仕様に影響を及ぼし難くすることが可能となる。よって、認証システムに大幅な改変を行うことなく、不正通信の検出機能を端末及び通信装置に設けることが可能となる。
【0007】
前記通信不正成立防止システムにおいて、前記認証の通信が実施されない時間帯は、前記認証の通信が開始されてから終了するまでの間において、通信が行われていない時間帯であることが好ましい。この構成によれば、認証の通信中の空いた時間で測定の通信を行うので、測定の通信を実施するようにしても、通信全体に要する時間が長くならずに済む。
【0008】
前記通信不正成立防止システムにおいて、前記認証の通信は、乱数であるチャレンジコードの演算結果としてレスポンスコードを前記端末及び前記通信相手の両方で求めて、これらの一致を確認するチャレンジレスポンス認証を含み、前記測定値の算出は、前記端末及び前記通信相手の一方から他方に前記チャレンジコードを送信してから前記レスポンスコードが返信されるまでの間の時間帯に実行されることが好ましい。この構成によれば、チャレンジコードとレスポンスコードとのやり取りの間に生じる通信の空白期間を利用して、測定値を求める電波の送受信を効率よく実施することが可能となる。
【0009】
前記通信不正成立防止システムにおいて、前記処理実行部は、前記測定値から通信を不正通信と判定した場合、前記端末及び前記通信相手のうち前記チャレンジコードを受信する側が、当該チャレンジコードに対する応答を返信しない作動をとることにより、前記認証の通信を途絶させることが好ましい。この構成によれば、不正通信と判定された場合に、チャレンジコードに対する応答を返信しないという簡素な処理により、認証システムに大幅な改変を加えることなく認証の通信を成立不可に移行させることが可能となる。
【0010】
前記通信不正成立防止システムにおいて、前記処理実行部は、前記測定値から通信を不正通信と判定した場合、前記認証の電波を受信することができないように作動させることにより、前記認証の通信を途絶させることが好ましい。この構成によれば、不正通信と判定された場合に、認証の電波を受信することができないようにするという簡素な処理により、認証システムに大幅な改変を加えることなく認証の通信を成立不可に移行させることが可能となる。
【0011】
前記通信不正成立防止システムにおいて、前記測定部は、前記端末及び前記通信相手の組が正規ペアであることを確認できた場合に、前記測定値の測定、及び当該測定値の妥当性の判定を実行することが好ましい。この構成によれば、測定値の測定や測定値の妥当性の判定を無駄に行わずに済むので、電源の省電力化を満足することが可能となる。
【0012】
前記問題点を解決する通信不正成立防止方法は、端末が通信相手と通信する際の不正通信を防止する方法であって、前記端末及び前記通信相手の少なくとも一方に配置された測定部により、これらの間の距離に準じた測定値を測定するステップと、前記測定値が妥当か否かの判定結果に基づき、前記端末と前記通信相手とが無線により行う認証の作動を制御するステップとを備え、前記測定部による測定は、前記認証の通信が実施されない時間帯に実行される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、大きな改変を必要とすることなく不正通信成立の抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態の通信不正成立防止システムの構成図。
【
図4】不正通信と判定された場合の通信シーケンス図。
【
図5】第2実施形態の通信不正成立防止システムの構成図。
【
図6】不正通信と判定された場合の通信シーケンス図。
【
図8】別例の測距態様を示すスマート通信のエリア図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、通信不正成立防止システム及び通信不正成立防止方法の第1実施形態を
図1~
図4に従って説明する。
【0016】
図1に示すように、車両1は、無線を通じて端末2の正否を認証することにより車載装置3の作動可否を制御する電子キーシステム4を備える。本例の電子キーシステム4は、車両1からの通信を契機に無線を通じたID照合(スマート照合)を実行するスマート照合システムである。端末2は、例えば主にキー機能を備える電子キー5であることが好ましい。車載装置3は、例えばドア6の施解錠を制御するドアロック装置7や、車両1のエンジン8などがある。
【0017】
車両1は、ID照合を実行する照合ECU11と、車載電装品の電源を管理するボディECU12と、エンジン8を制御するエンジンECU13とを備える。これらECUは、車内の通信線14を介して接続されている。通信線14は、例えばCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)である。照合ECU11のメモリ15には、車両1に登録された端末2のキーIDと、ID照合の認証時に使用するキー固有鍵とが登録されている。ボディECU12は、ドア6の施解錠を切り替えるドアロック装置7を制御する。
【0018】
車両1は、車両1において端末2とのID照合の通信を実行する第1通信部18を備える。第1通信部18は、例えば電子キーシステム4(スマート照合システム)の通信がLF(Low Frequency)-UHF(Ultra High Frequency)の双方向通信の場合、LF電波を送信する電波送信機と、UHF電波を受信する電波受信機とを備える。電波送信機は、例えば車両1の室外の端末2に電波を送信する室外用と、車両1の室内の端末2に電波を送信する室内用とを備えることが好ましい。
【0019】
端末2は、端末2を制御する端末制御部19と、端末2において車両1とのID照合を実行する第1通信部20とを備える。端末制御部19のメモリ21には、ID照合の際に使用する固有のキーID及びキー固有鍵が書き込み保存されている。第1通信部20は、電子キーシステム4(スマート照合システム)の通信がLF-UHFの双方向通信の場合、LF電波を受信する受信部と、UHF電波を送信する送信部とを備える。
【0020】
端末2は、車両1の第1通信部18から定期又は不定期にLF送信されるウェイク信号を受信すると、待機状態から起動し、アック信号をUHF送信する。照合ECU11は、ウェイク信号に対するアック信号の応答を端末2から受信すると、スマート照合を開始する。照合ECU11は、端末2が室外送信機のウェイク信号を受信した場合には、室外の端末2と室外スマート照合を実行し、端末2が室内送信機のウェイク信号を受信した場合には、室内の端末2と室内スマート照合を実行する。スマート照合には、例えば端末2に登録されたキーIDを確認するキーID照合や、キー固有鍵を用いたチャレンジレスポンス認証等がある。チャレンジレスポンス認証は、乱数であるチャレンジコードに対するレスポンスコードを車両1及び端末2の双方に演算させ、これらレスポンスコードの一致を確認する認証である。
【0021】
車両1は、端末2及びその通信相手28(本例は車両1)の間の距離に準じた測定値Dxを測定して測定値Dxの妥当性から認証(本例はスマート照合)の成立可否を切り替える不正通信検出機能(通信不正成立防止システム29)を備える。車両1に通信不正成立防止システム29を設けるのは、例えば車両1から遠く離れた端末2を中継器等により不正に車両1に通信接続してスマート照合を不正成立させてしまう行為に対する対策である。
【0022】
通信不正成立防止システム29は、車両1及び端末2の認証(本例は、スマート照合)の通信途中で、通信が不正通信か否かの判定を実施し、通信が不正通信であると判定した場合、認証の通信を途絶する。また、本例の通信不正成立防止システム29は、認証(本例は、スマート照合)の通信途絶を、端末2側で実施する。
【0023】
通信不正成立防止システム29は、車両1及び端末2の間の距離に準じた測定値Dxを求める測定部30を備える。測定部30は、車両1及び端末2の少なくとも一方に配置されればよく、本例の場合、これら両方に設けられている。この場合、測定部30は、車両1側に設けられた測定部30aと、端末2側に設けられた測定部30bとを備える。また、車両1に距離測定用の第2通信部31が設けられ、端末2に距離測定用の第2通信部32が設けられている。第2通信部31,32は、UWB帯の電波を送受信する。測定部30は、UWB電波Saを車両1及び端末2の間で送受信して、このUWB電波Saの伝搬時間を計算し、この電波時間から2者間の距離に準じた測定値Dxを算出する。測定値Dxは、2者間の距離に相当する測距値である。すなわち、本例の不正通信検出機能は、2者間の距離を求めて、その距離から通信の正否を判定する測距機能である。なお、UWB電波Saが測距電波に相当する。
【0024】
通信不正成立防止システム29は、測定値Dxが妥当か否かの判定結果に基づき認証の通信(本例はスマート通信)を制御する処理実行部33を備える。本例の処理実行部33は、端末2側に設けられている。処理実行部33は、測定値Dxの妥当性を判定し、算出された測定値Dxが妥当である(規定値Dk未満である)場合には、スマート通信の完遂を許可したりスマート照合の照合結果を有効にしたりする。一方、処理実行部33は、算出された測定値Dxが妥当でない(規定値Dk以上である)場合には、スマート通信の完遂を不許可としたりスマート照合の照合結果を無効にしたりする。
【0025】
本例の測定部30は、2者間の距離に準じた測定値Dxを求める処理を、認証の通信(本例はスマート通信)が実施されない時間帯Tsに実行する。認証の通信が実施されない時間帯Tsは、認証の通信(本例はスマート通信)が開始されてから終了するまでの間において、通信が行われていない時間帯であることが好ましい。本例の測定部30は、スマート照合のチャレンジコードが送信された後に測定値Dxを求める処理を実行する。すなわち、測定値Dxを求める処理は、チャレンジコードが送信されてレスポンスコードが返信されるまでの間の時間帯Tsに実行される。また、認証の通信(本例はスマート通信)は、ウェイク信号及びアック信号の通信と、チャレンジコード及びレスポンスコードの通信との両方を含む。
【0026】
次に、
図2~
図4を用いて、本実施形態の通信不正成立防止システム29の作用及び効果について説明する。
図2に示すように、車両1の第1通信部18は、車両1の周囲に端末2が存在するか否かを確認するために、ウェイク信号を定期又は不定期にLF送信する。ウェイク信号は、端末2を起動させるための信号である。端末2は、ウェイク信号の通信エリアに進入して受信すると、待機状態から起動し、自身の第1通信部20からアック信号をUHF送信する。照合ECU11は、ウェイク信号の送信後の規定時間内にアック信号を受信することができると、端末2とのスマート照合を開始する。
【0027】
この場合、照合ECU11は、送信の度に値が毎回異なる乱数からなるチャレンジコードを、第1通信部18からLF送信する。端末2は、車両1側から送信されたチャレンジコードを受信すると、自身のメモリ21に書き込み保存されたキー固有鍵を用いてチャレンジコードを演算する処理、すなわちレスポンスコードの演算を実行する。
【0028】
本例の場合、端末2側の測定部30bは、端末2がチャレンジコードを受信したことを契機に、車両1及び端末2の間の距離に準じた測定値Dx、すなわち測距値の測定を実行する。このように、本例の場合、端末2がチャレンジコードの受信後に演算処理を行ってレスポンスコードを車両1に返信するまでの間に、通信が実施されない時間帯Tsが存在することから、この時間帯Tsの間に、車両1及び端末2の間の測距を実行する。
【0029】
図3に示すように、端末2の測定部30bは、測距開始のタイミング(時刻T1)となったとき、UWB電波Saを第2通信部32から送信する。車両1の測定部30aは、端末2側から送信されたUWB電波Saを第2通信部31で受信する(時刻T2)と、このUWB電波Saを第2通信部31から返信する(時刻T3)。そして、端末2の測定部30bは、車両1側から送信されたUWB電波Saを第2通信部32で受信する(時刻T4)。
【0030】
測定部30bは、時刻T1~時刻T2に要した時間tpを計算し、この時間tpから、車両1及び端末2の間の距離に準じた測定値Dxを算出する。時間tpは、次式(1)により求まり、距離に準じた測定値Dxは、次式(2)により求まる。
tp=(ta-tr)/2 … (1)
Dx=tp×3×108 … (2)
なお、式(1)のtaは、例えば端末2からUWB電波Saを送信して、車両1から返信されたUWB電波Saを受信するまでに要する時間をタイマ等でカウントすることで測定することができる。また、式(2)のtrは、端末2から送信されたUWB電波Saを車両1側で受信して、これを返信するまでに要する時間をタイマ等でカウントすることで測定することができる。
【0031】
処理実行部33は、測定値Dxが規定値Dk未満の場合、車両1及び端末2の間の距離が妥当であると判定し、電子キーシステム(スマート照合)の通信(スマート通信)を途絶しない。すなわち、不正通信検出機能において、スマート通信が許可される。一方、処理実行部33は、測定値Dxが規定値Dk以上の場合、車両1及び端末2の間の距離が妥当でないと判定し、電子キーシステム(スマート照合)の通信(スマート通信)を途絶する。すなわち、不正通信検出機能において、スマート通信が不許可にされる。
【0032】
不正通信検出機能でスマート通信が許可された場合、端末2は、演算したレスポンスコードと、端末2に登録されたキーIDとを、車両1にUHF送信する。また、照合ECU11は、端末2と同様に、自身に登録されたキー固有鍵を用いて自らもレスポンスコードを演算し、端末2からレスポンスコードを受信した場合、自ら演算したレスポンスコードとの一致を確認する。照合ECU11は、レスポンスコードが一致すればチャレンジレスポンス認証を成立とする。また、照合ECU11は、端末2から受信したキーIDも認証する。照合ECU11は、チャレンジレスポンス認証及びキーID照合の両方の成立を確認すると、スマート照合を成立とする。
【0033】
照合ECU11は、室外の端末2とスマート照合(室外スマート照合)が成立した場合、ボディECU12によるドア6の施解錠操作を許可又は実行する。よって、ドア施錠時に車外ドアハンドルがタッチ操作されると、ドア6が解錠され、ドア解錠時に車外ドアハンドルのロックボタンが押し操作されると、ドア6が施錠される。照合ECU11は、室内の端末2とスマート照合(室内スマート照合)が成立した場合、室内のエンジンスイッチ(図史略)による車両電源の遷移操作が許可される。よって、ブレーキペダルを踏み込みながらエンジンスイッチが操作されると、エンジン8が始動する。
【0034】
図4に示すように、不正通信検出機能でスマート通信が不許可とされた場合、端末2は、レスポンスコード(キーIDを含む)を送信しない。このため、照合ECU11は、チャレンジコードに対する応答を一定時間内に得ることができず、チャレンジレスポンス認証を不成立にする。よって、スマート照合が成立に移行せず、例えば中継器等を用いた不正通信を成立させてしまうことがない。
【0035】
さて、本例の場合、車両1及び端末2がスマート照合の通信を実施するにあたり、スマート照合の通信が実施されない時間帯Tsのときに、測定値Dxの測定を実行する。従って、この種の不正通信の検出機能を車両1及び端末2に設けるようにしても、既存の電子キーシステム4の仕様に影響を及ぼし難くすることが可能となる。よって、電子キーシステム4に大幅な改変を行うことなく、不正通信の検出機能を車両1及び端末2に設けることができる。
【0036】
測定部30は、車両1及び端末2の間で測距電波(UWB電波Sa)を無線で送受信させ、その測距電波(UWB電波Sa)の伝搬時間から、測定値Dxとして2者間の測距値を算出する。よって、電波通信から2者間の測距値を求めて、車両1及び端末2の通信(スマート通信)が不正通信か否かを精度よく判定することができる。
【0037】
スマート照合の通信が実施されない時間帯Tsは、スマート照合の通信が開始されてから終了するまでの間において、通信が行われていない時間である。このように、スマート照合の通信中の空いた時間で測定の通信(UWB通信)を行うので、通信全体に要する時間も長くならずに済む。また、ウェイク信号をトリガとして、測定(距離測定)の通信(UWB通信)を開始することもできる。
【0038】
認証の通信(スマート通信)は、チャレンジレスポンス認証を含む。また、測定値Dxの算出は、車両1及び端末2の一方から他方にチャレンジコードを送信してからレスポンスコードが返信されるまでの間の時間帯Tsに実行される。よって、チャレンジコードとレスポンスコードとのやり取りの間に生じる通信の空白期間を利用して、測定値Dxを求める電波(UWB電波Sa)の送受信を効率よく実施することができる。
【0039】
処理実行部33は、測定値Dxから通信を不正通信と判定した場合、車両1及び端末2のうちチャレンジコードを受信する側が、チャレンジコードに対する応答を返信しない作動をとることにより、認証の通信(スマート通信)を途絶させる。よって、不正通信と判定された場合に、チャレンジコードに対する応答を返信しないという簡素な処理により、電子キーシステム4に大幅な改変を加えることなく、スマート通信を成立不可に移行させることができる。
【0040】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を
図5及び
図6に従って説明する。なお、第2実施形態は、第1実施形態のスマート通信の途絶の仕方を変更した実施例である。よって、第1実施形態と同様部分には同じ符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。
【0041】
図5に示すように、本例の通信不正成立防止システム29は、処理実行部33が車両1側(照合ECU11)に設けられることにより、スマート照合の通信途絶を車両1側で実施する。また、第1通信部18は、端末2に向けて電波(LF電波)を送信する送信部41と、端末2からの電波(UHF電波)を受信する受信部42とを備える。処理実行部33は、照合ECU11及び送信部41を繋ぐ配線43を流れる信号を入力可能であり、受信部42の作動を制御することにより、スマート照合の通信途絶を切り替える。
【0042】
処理実行部33は、測定値Dxが規定値Dk以上と判定した場合(スマート通信が妥当ではないと判定した場合)、車両1における電波(例えば、UHF電波)の受信を不可とすることにより、スマート照合の通信途絶を実現する。受信不可は、例えば照合ECU11及び受信部42を繋ぐ信号線44の遮断、受信部42の電源の遮断、信号線44に妨害電波を当てることによる信号ジャムなどがある。
図5の場合、信号線44上に設けたスイッチ部45のオン→オフにより、信号線44を遮断する例が図示されている。
【0043】
図6に示すように、本例の通信不正成立防止システム29は、車両1側から端末2にUWB電波Saを送信し、車両側において測定値Dxを求める態様をとる。この場合、車両1側の測定部30aは、チャレンジコードの送信後、UWB電波Saを第2通信部31から送信する。端末2側の測定部30bは、車両1からUWB電波Saを受信すると、同様のUWB電波Saを第2通信部32から送信する。測定部30aは、端末2からUWB電波Saを受信すると、UWB電波Saの伝搬時間から2者間の距離に相当する測定値Dxを算出する。
【0044】
処理実行部33は、測定値Dxが規定値Dk以上の場合、車両1側において電波を受信不可とすることにより、スマート照合の通信を途絶する。本例の場合、処理実行部33は、信号線44上に配置されたスイッチ部45をオフすることにより、信号線44を遮断する。また、これ以外の方法として、処理実行部33は、受信部42の電源をオフしたり、信号線44に妨害電波を当てて信号ジャムをしたりする。このため、仮に端末2からレスポンスコードが送信されてきても、車両1側では、受信部42でレスポンスコードを受信することができない。よって、不正通信の可能性が高い状況下で、スマート照合を成立に移行させずに済む。
【0045】
一方、処理実行部33は、測定値Dxが規定値Dk未満の場合、スマート照合の通信を途絶しない。この場合、処理実行部33は、スイッチ部45をオンのまま維持する。また、これ以外の方法として、処理実行部33は、受信部42の電源をオンのまま維持したり、信号ジャムをしなかったりする。このため、端末2からレスポンスコードが送信された際には、これを端末2が受信し、スマート照合を通常通り成立に移行させることが可能となる。
【0046】
さて、本例の場合、処理実行部33は、測定値Dxから通信を不正通信と判定した場合、スマート照合で送信されてくる電波(本例は、レスポンスコード)を受信することができないように作動させることにより、認証の通信(スマート通信)を途絶させる。よって、不正通信と判定された場合に、認証の電波を受信することができないようにするという簡素な処理により、電子キーシステム4に大幅な改変を加えることなく、スマート通信を成立不可に移行させることができる。
【0047】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態を
図7に従って説明する。なお、本例も、第1及び第2実施形態とは異なる部分についてのみ詳述する。
【0048】
図7に示すように、本例の通信不正成立防止システム29は、車両1及び端末2の間の認証において組が正規ペアであると確認できたときのみ、UWB電波Saの送受信を通じた測距を実行する。組が正規ペアか否かは、スマート照合を完遂できたことに限定されず、例えばウェイク信号に対するアック応答を受信できることなど、互いの一致性を確認できればよいものとする。
【0049】
本例の場合、測定部30は、車両1及び端末2の組が正規ペアであることを確認できた場合に、測定部30の測定、及び測定値Dxの妥当性の判定を実行する。よって、測定値Dxの測定や測定値Dxの妥当性の判定を無駄に行わずに済むので、電源(車両1や端末2の電源)の省電力化を満足することができる。特に、UWB通信は電力消費が大きいので、この通信を的確に実施できることは電源省電力化の点から非常に効果が高いといえる。
【0050】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・各実施形態において、
図8に示すように、室外スマート照合では、測距のUWB通信を行わず、室内スマート照合のときのみ、測距のUWB通信を行うようにしてもよい。すなわち、車両1の周囲に形成されるLF電波(ウェイク信号)のエリア(室外エリアEa内)では、測距のUWB通信を実施せず、車内に形成されるLF電波(ウェイク信号)のエリア(室内エリアEb内)では、測距のUWB通信を行うようにしてもよい。
【0051】
・各実施形態において、測距のUWB通信は、チャレンジコード及びレスポンスコードのやり取りの間の時間帯Tsに行われることに限らず、通信課程において電波送受信が行われない時間帯であればよい。例えば、ウェイク信号とアック信号との通信の間、アック信号とチャレンジコードとの通信の間などで実施されてもよい。
【0052】
・各実施形態において、通信途絶は、実施例に述べた方法に限定されず、スマート照合(スマート通信)を成立に移行させないようにできる方法であればよい。すなわち、処理実行部33が行う処理は、スマート照合(スマート通信)を成立に移行させないようにできる処理を行うものであればよい。
【0053】
・各実施形態において、測定値Dxが規定値Dk以上の場合、スマート通信を途中で強制的に終了させる方法に限定されない。例えば、スマート照合は完遂するようにし、測定値Dxが規定値Dk以上の場合に、仮にスマート照合においてチャレンジレスポンス認証及びキーID照合の一致性を確認することができても、これらを成立に移行させないようにする態様をとってもよい。
【0054】
・各実施形態において、不正通信検出機能は、測距値を求めて通信の妥当性を判定する方式(測距機能)に限定されない。例えば、電波の信号受信強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)を測定し、この値から不正通信か否かを判定する方式としてもよい。このように、不正通信検出機能の方式は、測距値以外の種々の態様に変更してもよい。
【0055】
・各実施形態において、例えば車両1及び端末2の両方にアンテナを設け、他方にのみ測定部30を設ける態様でもよい。これは、例えばRSSIで測距する場合に適用される。
【0056】
・各実施形態において、車両1及び端末2の一方にのみ、測定部30及びアンテナが設けられる態様でもよい。これは、例えば片側のみにアンテナを設けて、電波の反射波により測定値Dxを求める構成に適用される。
【0057】
・各実施形態において、測距方法(測定値Dxの測定方法)は、例えば複数のチャネルで電波送信を行い、これら各チャネルの電波を演算することで測定値Dxを算出する方法を採用してもよい。
【0058】
・各実施形態において、チャレンジコードの応答は、レスポンスコードに限定されず、例えばチャレンジコードを受信した旨を通知するアック相当の信号でもよい。
・第2実施形態において、認証の電波を受信することができないようにする方法は、信号線線遮断、受信部電源遮断、信号ジャムに限らず、マイクロコンピュータ内で受信信号を受け付けないようにするなど、他の方法に変更可能である。
【0059】
・各実施形態において、測距は、UWB電波Saを送受信する方式に限定されず、他の周波数の電波を使用した態様に変更してもよい。
・各実施形態において、車両1及び端末2の間の各種通信は、電波の周波数や通信方式を種々の態様に変更可能である。
【0060】
・各実施形態において、スマート照合システムは、端末2側からウェイク信号が送信される態様でもよい。
・各実施形態において、スマート照合システムは、例えば車内外の各々にLFアンテナを配置した構成に限定されない。例えば、車体の左右にLFアンテナを配置し、これらLFアンテナから送信されたLF電波に対する電子キー5の応答の組み合わせから、電子キー5の車内外判定を行うようにしてもよい。
【0061】
・各実施形態において、端末2の正否を確認する認証は、チャレンジレスポンス認証に限定されず、端末2及び通信相手28が双方向通信を通じてペアを確認する認証であればよい。
【0062】
・各実施形態において、電子キーシステム4は、スマート照合システムに限定されず、端末2の正否を確認できるシステムであればよい。
・各実施形態において、認証は、端末2及び通信相手28の正当なペアを確認できるものであればよい。
【0063】
・各実施形態において、端末2は、電子キー5に限定されず、例えば高機能携帯電話等の他の端末に変更してもよい。
・各実施形態において、通信相手28は、車両1に限定されず、種々の機器や装置に変更可能である。
【符号の説明】
【0064】
1…車両、2…端末、28…通信相手、29…通信不正成立防止システム、30…測定部、30a…測定部、30b…測定部、33…処理実行部、Ts…時間帯、Dx…測定値、Dk…規定値、Sa…測距電波としてのUWB電波。