(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】改修建具
(51)【国際特許分類】
E06B 1/56 20060101AFI20220531BHJP
E06B 5/16 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
E06B1/56 A
E06B5/16
(21)【出願番号】P 2018172985
(22)【出願日】2018-09-14
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184066
【氏名又は名称】宮崎 恭
(72)【発明者】
【氏名】佐野 龍大
【審査官】鳥井 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-198048(JP,A)
【文献】特開2016-153588(JP,A)
【文献】特開2015-094171(JP,A)
【文献】特開2017-172293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/56-1/60
E06B 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体開口部に残存する既設枠に取付補助材を介して新設上枠、新設下枠及び左右の新設竪枠からなる新設枠を取り付けてなり、
各新設枠は、見込方向の端部位置に長さ方向全長に亘って加熱発泡材を四周に連続するように設けてあり、
新設上枠及び新設竪枠は、取付補助材に対向するように前記加熱発泡材が設けられており、新設下枠は、既設下枠に対向するように前記加熱発泡材が設けられており、
各新設枠に配置した
前記加熱発泡材は、火災時に発泡した際に連続して防火ラインを形成する
改修建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物開口部に残存する既設枠の内周に配置される改修建具に関する。
【背景技術】
【0002】
建物開口部に残存する既設枠の内周に配置される改修建具が公知となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された改修建具は、既設の下枠を残存させたまま建具の改修を行うことができるので、施工性が高く、効率的に建具の改修をすることができる。
近年、建具において、防火性能の向上が求められており、改修サッシにおいても、同様に高い防火性能が求められている。
【0005】
本発明は、改修建具において、高い防火性能を付与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、躯体開口部に残存する既設枠に取付補助材を介して新設上枠、新設下枠及び左右の新設竪枠からなる新設枠を取り付けてなり、各新設枠は、見込方向の端部位置に長さ方向全長に亘って加熱発泡材を四周に連続するように設けてあり、新設上枠及び新設竪枠は、取付補助材に対向するように前記加熱発泡材が設けられており、新設下枠は、既設下枠に対向するように前記加熱発泡材が設けられており、各新設枠に配置した前記加熱発泡材は、火災時に発泡した際に連続して防火ラインを形成する改修建具である。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態の改修建具の構成により、高い防火性能を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る改修建具の竪断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る改修建具の横断面図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る改修建具の竪断面図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る改修建具の横断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る改修建具の補助部材の様子を示す正面図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る改修建具の上枠部分の竪断面図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係る改修建具の下枠部分の竪断面図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態に係る改修建具の竪枠部分の竪断面図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る改修建具の上枠部分の竪断面図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態に係る改修建具の下枠部分の竪断面図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態に係る改修建具の竪枠部分の竪断面図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る改修建具の上枠と竪枠との連結部分の斜視図である。
【
図13】本発明の実施形態に係る改修建具の下枠と竪枠との連結部分の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施形態の改修建具として、
図1及び
図2に示すように、既設の引違い建具の既設枠1の内周に、新設枠2を装着してなる改修建具を用いて説明する。
【0010】
-第1の実施形態-
(全体の構成)
本実施形態の改修建具は、
図1,
図2に示すように、既設上枠11,既設下枠12,既設竪枠13,13からなる既設枠1を除去せずに、既設枠1の内周に新設上枠21,新設下枠22,新設竪枠23,23からなる新設枠2が配置されている。
なお、本実施形態の改修建具は、左右の竪枠部分についてその主たる構成がほとんど同様であるので、竪枠部分についての説明は右竪枠を用いて行う。
【0011】
既設枠1を構成する既設上枠11,既設下枠12,既設竪枠13のそれぞれには上取付補助材31、下取付補助材32及び竪取付補助材33が固定されており、新設枠2は各取付補助材を介して既設枠1に装着されている。
なお、既設枠1は、その全ての部分が除去されずに残存させた状態で取付補助材及び新設枠を装着しても良いが、例えば
図1に示す既設下枠12の室外側下レールが切除されているように、必要に応じて新設枠2を配置するに際して邪魔となる部位が除去されていてもよい。
【0012】
新設枠2は、左右の新設竪枠23,23の上下端部の内周面に新設上枠21及び新設下枠22の両端部を突き合わせて組まれており、左右の新設竪枠23,23は、新設上枠21及び新設下枠22の当接部分において、内周に突出する部材が必要に応じて切欠かれている。
【0013】
(上枠部分の構成)
既設上枠11に固定される上取付補助材31は、見込寸法が既設上枠11の見込寸法とほぼ同程度の見込寸法を有し、
図5に示すように、見付寸法が新設上枠21の長手方向の長さとほぼ同じ長さ寸法の長尺部材からなる。上取付補助材31は、新設上枠21を装着する際の基準となる見込壁部31aと、見込壁部31aの室内外両端付近より外周方向に延設される室内側固定部31b及び室外側固定部31cを有している。
【0014】
そして、見込壁部31aが水平となるように見込壁部31aの外周側面を既設上枠11の室内側壁部11a、室外側壁部11bの下端に当接させた状態で、室内側固定部31b及び室外側固定部31cが既設上枠11の室内側壁部11aの室外側と室外側壁部11bの室内側との間に挿入され、室内側固定部31bが室内側壁部11aにビス等の固定手段bにより固定され、室外側固定部31cが室外側壁部11bにビス等の固定手段bにより固定されている。
【0015】
新設上枠21は、既設上枠11よりも見込寸法が大きく形成されており、見込み方向室内側上面に加熱により膨張する加熱発泡材f1が配置されるとともに、見込み方向の略中央付近において、スペーサー61を介してビス等の固定手段bにより上取付補助材31の見込壁部31aに固定されている。新設上枠21の室内側下面には、後述する上内部カバー71を取り付けるための挿入部21aを有している。
【0016】
新設上枠21は、室外側外周に気密材sを有しており、上取付補助材31を介して既設上枠11に固定された新設上枠21の気密材sが既設上枠11の室外側内周に当接して、既設上枠11と新設上枠21との室外側における気密を行っている。
【0017】
新設上枠21の室内側から既設上枠11の室内側を覆うように、防水シート81が設けられるとともに、防水シート81の室内側には、金属製の上遮炎板91が配置されている。
【0018】
上遮炎板91は、
図6(a)に示すように、見込み方向に延びる当接部91aと、当接部91aの室外側端部から見付け方向(下方)に延びる遮炎部91bと、遮炎部91bの下端から室外方向に延設される開き防止部91cと、を有する断面略カギ状の金属製の長尺部材からなる。
【0019】
そして、上遮炎板91は、当接部91aを躯体開口部の内周面に当接させるとともに遮炎部91bを新設上枠21の室内側面と既設上枠11の室内側面に当接させることで、新設上枠21と既設上枠11との間の間隙を閉塞するように配置されている。
さらに、上遮炎板91は、遮炎部91bの下端から室外方向に延設された開き防止部91cが新設上枠21に室内側面の下端に続く内周面に当接されており、遮炎部91bの上方部分において、既設上枠11の室内側壁部11aと上取付補助材31の室内側固定部31bを固定する固定手段bにより共締め固定されている。
【0020】
防水シート81及び上遮炎板91を覆うように樹脂製の上内部カバー71が配置されている。
樹脂製の上内部カバー71は、見込み方向に延びる固定部71aと、固定部71aの室外側端から見付方向(下方)に延設されるとともに下端が室外側に屈曲して室外方向に延設されてなるカバー部71bと、カバー部71bの見込方向に延びる部位の上面から上方に突設された脚部71cと、を有している。
そして、上内部カバー71は、脚部71cを新設上枠21の挿入部21aに挿入して、固定部71aを躯体開口部の内周面に当接させた状態で、固定部71aをビス等の固定手段bにより固定することで躯体開口部に取り付けられている。
【0021】
(下枠部分の構成)
既設下枠12に固定される下取付補助材32は、室内側取付補助材321と室外側取付補助材322の二つの部材からなる。
室内側取付補助材321は、アルミニウム合金等の金属材料からなり、新設下枠22の室内側の荷重を支持する支持部321aと、支持部321aの室内側に連続する取付壁321bを有し、取付壁321bが既設下枠12の室内側の壁面にビス等の固定手段bにより固定されている。また、室内側取付補助材321の支持部321aは、既設下枠12の室内側下レールに固定された荷重支持部材323にスペーサー62を介して支持されている。
【0022】
室外側取付補助材322は、新設下枠22の室外側の荷重を支持する支持部322a及び新設下枠22の室外側端部の浮き上がりを防止する浮き上がり防止部322bを有し、支持部322aがスペーサー63を介して既設下枠12に載置された状態で見付け方向の複数位置において、既設下枠12の前壁部にビス等の固定手段bにより固定されている。
【0023】
新設下枠22は、既設下枠12よりも見込寸法が大きく形成されており、室内側見込壁を構成する室内側底壁部22aと、室外側見込壁を構成する室外側底壁部22bと、室内側底壁部22aの室内側から立ち上がる室内側壁部22cと、室内側壁部22cの上端よりもやや下方位置の室内側面から室内側に延設される室内側上壁部22dと、室内側底壁部22aと室外側底壁部22bとを連続する立壁部22eと、室外側底壁部22bの室外側端から下方に向かって延設される前壁部22fと、前壁部22fの下端から室内側に屈曲して延設される浮き上がり防止片22gと、室内側底壁部22aの室外側上面に立設される室内下レール22hと、室外側底壁部22bの上面に立設される室外下レール22iと、室内側底壁部22aの室外側に延設される気密材保持片22jを有している。
【0024】
また、新設下枠22は、室内側壁部22cの室内側上壁部22dよりも上方部位に後述する下内部カバー72の室外側を係合する被係合部22kが形成されており、室内側上壁部22dの上面には、下内部カバー72のカバー部72bを支持するリブが長手方向に沿って形成されている。
【0025】
そして、新設下枠22は、室内側底壁部22aの下面の内外2か所に形成された脚部を室内側取付補助材321の支持部321aに載置した状態で、ビス等の固定手段bにより室内側取付補助材321に固定され、既設下枠12に装着されている。
このとき、新設下枠22の室外側は、必要に応じて室外側取付補助材322の支持部322aの上面に支持されており、新設下枠22の浮き上がり防止片22gが室外側取付補助材322の浮き上がり防止部322bの下方に位置している。
【0026】
新設下枠22の室内側壁部22cの室内側面には、加熱により発泡する加熱発泡材f2が配置されている。
また、新設下枠22の室内側壁部22cの室外側面、及び、立壁部22eの室外側面には、それぞれホルダーによって加熱により発泡する加熱発泡材fが配置されている。
【0027】
新設下枠22の室内側上壁部22dの上面から躯体開口部にかけて、防水シート82が配置されていると共に、室内側上壁部22dの上面から躯体開口部にかけて、金属製の下遮炎板92が配置されている。
【0028】
下遮炎板92は、
図7(a)に示すように、見込み方向に延びる当接部92aと、当接部92aの室外側から見付け方向(上方)に延びる遮炎部92bと、遮炎部92bの上端から室外側に延びる開き防止部92cを有する断面略カギ状の金属製の長尺部材からなる。
【0029】
そして、下遮炎板92は、当接部92aを躯体開口部の内周面に当接させるとともに遮炎部92bを室内側上壁部22dの室内側端部に当接させることで、新設下枠22と既設下枠12との間、もしくは新設下枠22と躯体開口部との間の間隙を閉塞するように配置されている。
さらに、下遮炎板92は、遮炎部92bの上端に室外方向に延設した開き防止部92cが、新設下枠22の室内側上壁部22dの上面に当接されており、当接部92aにおいて、躯体開口部に対してネジ等の固定手段bにより固定されている。
【0030】
下遮炎板92を覆うように樹脂製の下内部カバー72が配置されている。
樹脂製の下内部カバー72は、新設下枠22の室内側上壁部22dの上面から室内側に延びてその後下方に屈曲して延設されるカバー部72bと、カバー部72bの室外側端部の下面に形成された係合凸部72cと、カバー部72aの下面から下方に延設された係合爪72e,72eと、を有する長尺部材からなる。
【0031】
そして、下内部カバー72は、室外側に形成された係合凸部72cを新設下枠22の室内側壁部22cに形成された被係合部22kに係合した状態で、係合爪72e,72eを下遮炎板92に係合することで、躯体開口部に固定されている。
【0032】
(竪枠部分の構成)
既設竪枠13に固定される竪取付補助材33は、見込寸法が既設竪枠13の見込寸法とほぼ同程度の見込寸法を有し、
図5に示すように、見付寸法が新設竪枠23の長手方向の長さとほぼ同じ長さ寸法の長尺部材からなる。竪取付補助材33は、新設竪枠23を装着する際の基準となる見込壁部33aと、見込壁部33aの室内外両端付近より外周方向に延設される室内側固定部33b及び室外側固定部33cを有している。
【0033】
そして、竪取付補助材33は、室内側固定部33b及び室外側固定部33cが既設竪枠13の室内側壁部13aの室外側と室外側壁部13bの室内側との間に挿入されることで、見込壁部33aが内周に向く垂直面となるように配置され、室内側固定部33bが室内側壁部13aにビス等の固定手段bにより固定され、室外側固定部33cが室外側壁部13bにビス等の固定手段bにより固定されている。
【0034】
新設竪枠23は、既設竪枠13よりも見込寸法が大きく形成されており、見込み方向室内側外周面に加熱により発泡する加熱発泡材f3が配置されるとともに、見込み方向の略中央付近において、スペーサー64を介してビス等の固定手段bにより竪取付補助材33の見込壁部33aに固定されている。新設竪枠23の室内側内周面には、後述する竪内部カバー73を取り付けるための挿入部23aを有している。
【0035】
新設竪枠23は、室外側外周に気密材sを有しており、竪取付補助材33を介して既設竪枠13に固定された新設竪枠23の気密材sが既設竪枠13の室外側内周に当接して、既設竪枠13と新設竪枠23との室外側における気密を行っている。
【0036】
新設竪枠23の室内側から既設竪枠13の室内側を覆うように、防水シート83が設けられており、防水シート83の室内側には、金属製の竪遮炎板93が配置されている。
【0037】
竪遮炎板93は、
図8(a)に示すように、見込み方向に延びる当接部93aと、当接部93aの室外側端部から見付け方向(内周方向)に延びる遮炎部93bと、遮炎部93bの内周端から室外方向に延設される開き防止部93cと、を有する断面略カギ状の金属製の長尺部材からなる。
【0038】
そして、竪遮炎板93は、当接部93aを躯体開口部の内周面に当接させるとともに遮炎部93bを新設竪枠23の室内側面と既設竪枠13の室内側面に当接させることで、新設竪枠23と既設竪枠13との間の間隙を閉塞するように配置されている。
【0039】
さらに、竪遮炎板93は、遮炎部93bの内周端から室外方向に延設された開き防止部93cが、新設竪枠23の室内側面に続く内周面に当接されており、遮炎部93bの外周側部位において、既設竪枠13の室内側壁部13aと竪取付補助材33の室内側固定部33bを固定する固定手段bにより共締め固定されている。
【0040】
防水シート83及び竪遮炎板93を覆うように樹脂製の竪内部カバー73が配置されている。
樹脂製の竪内部カバー73は、見込み方向に延びる固定部73aと、固定部73aの室外側端から見付方向(内周方向)に延設されるとともに内周端が室外側に屈曲して室外方向に延設されてなるカバー部73bと、カバー部73bの見込方向に延びる部位の外周面から外周方向に突設された脚部73cと、を有している。
【0041】
そして、竪内部カバー73は、脚部73cを新設竪枠23の挿入部23aに挿入して、固定部73aを躯体開口部の内周面に当接させた状態で、固定部73aをビス等の固定手段bにより固定することで躯体開口部に取り付けられている。
なお、竪遮炎板93は、例えば
図2(b)に示すように、新設竪枠23と既設竪枠13との間の間隙を閉塞するように配置されるものであれば、アルミ形材からなる長尺部材によって形成されてもよい。
【0042】
以上の第1の実施形態の遮炎板によれば、躯体開口部の内周面に対向する当接部を備えているので、遮炎板を取り付ける際に当接部を躯体内周面にあてて既設枠の方向に滑らせることで、見込み方向及び見付け方法の位置決めを簡単に行うことができる。
また、本実施形態の遮炎板によれば、見付け方向に延びる遮炎部と見込み方向に延びる当接部とのどちらの部分においてもネジ止め固定ができ、異なる2方向からの固定が可能であるので、施工性が良好であるとともに、見付方向に延びる遮炎部を既設枠に固定することによって、老朽化した既設枠を補強することができる。
【0043】
-第2の実施形態―
次に、本発明の第2の実施形態の改修建具について、
図3,
図4を参考にして説明する。なお、第2の実施形態の改修建具は、内部カバーがアルミニウム合金等の金属により形成されている点で、第1の実施形態の改修建具と異なっている。以下の説明においては、主に、第1の実施形態と異なる点について説明し、同様の構成については説明を省略する。
【0044】
(上枠部分の構成)
本実施形態の改修建具においては、
図3に示すように、新設上枠21の室内側から既設上枠11の室内側を覆うように防水シート81が設けられるとともに、防水シート81を覆うようにアルミニウム合金等の金属製の上内部カバー(上遮炎板)71が配置されている。
【0045】
金属製の上内部カバー71は、見込み方向に延びる固定部(当接部)71aと、固定部71aの室外側端から見付方向(下方)に延設されるとともに下端が室外側に屈曲して見込方向(室外方向)に延設されてなるカバー部(遮炎部)71bと、カバー部71bの見込方向に延びる部位の上面から上方に突設された脚部(開き防止部)71cと、を有している。
【0046】
そして、上内部カバー71は、固定部(当接部)71aを躯体開口部の内周面に当接させるとともに、カバー部(遮炎部)71bの見込方向に延びる部位の室外側端を新設上枠21の室内側面に当接させることで、新設上枠21と既設上枠11との間の間隙を閉塞するように配置されている。
さらに、上内部カバー71は、カバー部71bの見込方向に延びる部位に延設した脚部(開き防止部)71cが新設上枠21の挿入部21aに挿入された状態で、固定部(当接部)71aにおいて、ビス等の固定手段bにより躯体開口部に固定されている。
【0047】
(下枠部分の構成)
本実施形態の改修建具においては、
図3に示すように、新設下枠22の室内側上壁部22dの上面から躯体開口部にかけて、防水シート82が配置されていると共に、室内側上壁部22dの上面から躯体開口部にかけて、防水シート82を覆うように金属製の下内部カバー(下遮炎板)72が配置されている。
【0048】
金属製の下内部カバー72は、新設下枠22の室内側上壁部22dの上面から室内側に延びてその後下方に屈曲して形成されるカバー部(遮炎部)72bと、カバー部72bの室外側端部の下面に形成された係合凸部(開き防止部)72cと、カバー部72bの下面から下方に延設された複数のリブ状部(当接部)72d,72dと、を有する長尺部材からなる。
【0049】
そして、下内部カバー72は、カバー部72bの室外側端を新設下枠22の室内側壁部22cに当接させ係合凸部72cを新設下枠22の被係合部22kに係合させるとともに、カバー部72bの下面を室内側上壁部22dの上面に形成されたリブによって支持し、カバー部72bの室内側下端部(当接部)72aもしくはリブ状部(当接部)72d,72dの少なくともいずれかを躯体開口部の内周面に当接させることによって、新設下枠22と既設下枠12との間もしくは新設下枠22と躯体開口部との間の間隙を閉塞するように配置され、躯体開口部に対してネジ等の固定手段bにより固定されている。
【0050】
(竪枠部分の構成)
本実施形態の改修建具においては、
図4に示すように、新設竪枠23の室内側及び既設竪枠13の室内側を覆うように防水シート83が設けられており、防水シート83を覆うようにアルミニウム合金等の金属製の竪内部カバー73が配置されている。
【0051】
金属製の竪内部カバー73は、見込み方向に延びる固定部(当接部)73aと、固定部73aの室外側端から見付方向(内周方向)に延設されるとともに内周端が室外側に屈曲して見込方向(室外方向)に延設されて形成されるカバー部(遮炎部)73bと、カバー部73bの見込方向に延びる部位の外周面から外周方向に突設された脚部(開き防止部)73cと、を有している。
そして、竪内部カバー73は、固定部(当接部)73aを躯体開口部の内周面に当接させるとともに、カバー部(遮炎部)73bの見込方向に延びる部位の室外側端を新設竪枠23の室内側面に当接させることで、新設竪枠23と既設竪枠13との間の間隙を閉塞するように配置されている。
さらに、竪内部カバー73は、カバー部73bの見込方向に延びる部位に延設した脚部(開き防止部)73cが新設竪枠23の挿入部23aに挿入された状態で、固定部(当接部)73aにおいて、ビス等の固定手段bにより躯体開口部に固定されている。
【0052】
以上の第2の実施形態の遮炎板(内部カバー)によれば、躯体開口部の内周面に対向する当接部を備えているので、遮炎板を取り付ける際に当接部を躯体内周面にあてることで、位置決めを容易に行うことができる。
また、遮炎板には、遮炎部の見込み方向への移動を防止する開き防止部を備えているので、火災時に遮炎板の反り等の変形を抑えることができ、新設枠と遮炎板との間に隙間が生じるのを抑制することができる。
【0053】
次に、本実施形態の改修建具における防火構造について、さらに詳細に説明する。
本実施形態の改修建具の新設上枠21は、
図6(a),
図9(a)に示すように、見込み方向の室内側端部位置において、外周面に長手方向全長にわたってホルダー21bが形成されており、ホルダー21bには、加熱発泡材f1が保持されている。
【0054】
ホルダー21bに保持された加熱発泡材f1は、
図5に示すように、新設上枠21の長手方向全長と同程度の寸法を有し、既設上枠11に固定された上取付補助材31の見込壁部31aに対して、スペーサー61をはさんでほぼ全長にわたって対向している。
【0055】
したがって、火災時には、
図6(b),
図9(b)に示すように、新設上枠21の室内側上面に配置された加熱発泡材f1が発泡し、新設上枠21と上取付補助材31の見込壁部31aとの間で長手方向全長に亘って均一に充満するので、上枠部における室内外の連通を確実に防止することができる。
【0056】
この時、
図6に示す第1の実施形態においては、上遮炎板91の遮炎部91bが発泡した加熱発泡材f1が新設上枠21の室内側部と既設上枠11の室内側部との間から漏れ出すことを防止するので、新設上枠21の室内側端部位置において加熱発泡材f1を密に充満させることができる。
【0057】
本実施形態の改修建具の新設下枠22は、
図7(a),
図10(a)に示すように、室内側壁部22cの室内側面に長手方向全長にわたってホルダー22mが形成されており、ホルダー22mには加熱発泡材f2が保持されている。
【0058】
ホルダー22mに保持された加熱発泡材f2は、
図5に示すように、新設下枠22の長手方向全長にわたって配置されており、室内側上壁部22dの下方において既設下枠12の室内側の垂直部位に対向している。
したがって、火災時には、
図7(b),
図10(b)に示すように、新設下枠22の室内側壁部22cの室内側面に配置された加熱発泡材f2が発泡し、新設下枠22の室内側壁部22c及び室内側上壁部22dと既設下枠12とで形成される空間において迅速に充満し、下枠部における室内外の連通を確実に防止することができる。
【0059】
この時、
図7に示す第1の実施形態においては、下遮炎板92の遮炎部92bが、発泡した加熱発泡材f2が新設下枠22の室内側上壁部22dと躯体開口部及び既設下枠12との間から室内側に漏れ出すことを防止して、新設下枠22の室内側端部位置において加熱発泡材f2を密に充満させることができる。
【0060】
本実施形態の改修建具の新設竪枠23は、
図8(a),
図11(a)に示すように、見込み方向の室内側端部位置において、外周面に長手方向全長にわたってホルダー23bが形成されており、ホルダー23bには加熱発泡材f3が保持されている。
【0061】
ホルダー23bに保持された加熱発泡材f3は、
図5に示すように、新設竪枠23の長手方向全長にわたって配置されており、既設竪枠13に固定された竪取付補助材33の見込壁部33aに対して、スペーサー64をはさんでほぼ全長にわたって対向している。
【0062】
したがって、火災時には、
図8(b),
図11(b)に示すように、新設竪枠23の室内側外周面に配置された加熱発泡材f3が発泡し、対向する竪取付補助材33の見込壁部33aと新設竪枠23との間で長さ方向全長に亘って均一に充満するので、室内外の連通を確実に防止することができる。
【0063】
この時、
図8に示す第1の実施形態においては、竪遮炎板93の遮炎部93bが既設竪枠13の室内側と新設竪枠23の室内側との間から発泡した加熱発泡材f3が室内側に漏れ出すことを防止して、新設竪枠23の室内側端部位置において加熱発泡材f3を密に充満させることができる。
【0064】
そして、以上説明した、新設上枠21の外周面に長手方向全長に亘って配置された加熱発泡材f1と、左右の新設竪枠23の外周面に長手方向全長に亘って配置された加熱発泡材f3,f3は、見込み方向で同一位置に位置されており、
図5に示すように、新設上枠21と新設竪枠23とのコーナー部においてほぼ連続している。
【0065】
また、新設下枠22の室内側壁部22cの室内側面に長手方向全長に亘って配置された加熱発泡材f2は、新設上枠21と新設竪枠23に配置される加熱発泡材f1,f3の室外側端部位置にあわせて配置されているので、各新設枠に配置される加熱発泡材f1,f2,f3が、新設枠2の四周にわたって見込み方向の位置をあわせて連続して配置されている。
なお、ここでいう連続しているとは、加熱発泡材同士が必ずしも当接していなければならないものではなく、近接することなどによって機能上連続した状態にあればよい。
【0066】
そして、火災時には、各加熱発泡材f1,f2,f3が、それぞれ新設枠2と既設枠1もしくは躯体開口部との間の空間に充満し、
図12,
図13に示すように、新設上枠21と新設竪枠23とのコーナー部及び新設下枠22と新設竪枠23とのコーナー部において密に連続することで、新設枠2と既設枠1もしくは補助部材3との間に四周に亘る防火ラインを形成する。
【0067】
以上のように、本実施形態の改修建具によれば、新設枠の見込み方向端部位置の外周に加熱発泡材を四周に連続するように配置して、火災時には、各加熱発泡材がつながって四周にわたって防火ラインを形成するので、改修建具の既設枠と新設枠との間が室内外に連通するのを防止して、高い防火性能を付与することができる。
【0068】
また、加熱発泡材を、見込み方向の端部位置に配置するとともに、取付補助材もしくは既設枠等の平面部分に対向するように配置することで、加熱発泡材の膨張が偏ることなく安定して、比較的少ない量の加熱発泡材によって新設枠との間隙に確実に充満させることができる。
【0069】
なお、以上の実施形態は,請求項に記載された発明を限定するものではなく,例示として取り扱われることは言うまでもない。
例えば、新設枠2に配置される加熱発泡材は、ホルダーによって保持するのではなく、接着剤やビス等によって固定してもよい。
また、加熱発泡材が配置される見込み方向端部は、室内側端部に限定されず、室外側端部でもよい。
さらに、改修される既設枠及び新設建具は、引違い建具に限定されるものではなく、開き建具やすべり出し建具等、建具の種類は何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0070】
1 :既設枠
11 :既設上枠
12 :既設下枠
13 :既設竪枠
2 :新設枠
21 :新設上枠
22 :新設下枠
23 :新設竪枠
3 :補助部材
31 :上取付補助材
32 :下取付補助材
33 :竪取付補助材
91 :上遮炎板
92 :下遮炎板
93 :竪遮炎板