IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゲイツ・ユニッタ・アジア株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-線状体保持構造 図1
  • 特許-線状体保持構造 図2
  • 特許-線状体保持構造 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】線状体保持構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 11/00 20060101AFI20220531BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20220531BHJP
   F16L 3/015 20060101ALI20220531BHJP
   F16G 13/16 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
H02G11/00 060
H02G3/04 075
F16L3/015
F16G13/16
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018190381
(22)【出願日】2018-10-05
(65)【公開番号】P2020061832
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000115245
【氏名又は名称】ゲイツ・ユニッタ・アジア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【弁理士】
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】井上 龍起
【審査官】須藤 竜也
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-200707(JP,A)
【文献】特開平11-041775(JP,A)
【文献】特開2003-244831(JP,A)
【文献】特開2007-110819(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0343079(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 11/00
H02G 3/04
F16L 3/015
F16G 13/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に移動する部分の間に介装される複数の可撓性線状体を保持する線状体保持構造であって、
前記可撓性線状体をその長さ方向に沿って保持する保持部材と、導電性の素材からなる心線を有するベルトと、が厚さ方向に並設され、前記保持部材及び前記ベルトは、前記可撓性線状体の長さ方向で中間部に厚さ方向に湾曲する湾曲部を有すると共に、該湾曲部を移動させながら前記部分の相対的な移動に追随可能とされ、前記保持部材は、複数のケーブルガイドを回転可能に連結してなり、可撓性線状体を収納保持するキャリアケーブルとされたことを特徴とする線状体保持構造。
【請求項2】
前記ベルトは、保持部材よりも湾曲内側に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の線状体保持構造。
【請求項3】
前記ベルトは、給電用ケーブルとされたことを特徴とする請求項1又は2に記載の線状体保持構造。
【請求項4】
前記ベルトは、通信用ケーブルとされたことを特徴とする請求項1又は2に記載の線状体保持構造。
【請求項5】
前記ベルトは、給電及び通信用ケーブルとされたことを特徴とする請求項1又は2に記載の線状体保持構造。
【請求項6】
前記ベルトは、保持部材を厚さ方向に挟んで両側に設けられ、一側のベルトが給電用ケーブルとされ、他側のベルトが通信用ケーブルとされたことを特徴とする請求項1に記載の線状体保持構造。
【請求項7】
相対的に移動する部分の間に介装される複数の可撓性線状体を保持する線状体保持構造であって、
前記可撓性線状体をその長さ方向に沿って保持する保持部材が複数層に設けられ、各保持部材が、前記可撓性線状体の長さ方向で中間部に厚さ方向に湾曲する湾曲部を有すると共に、該湾曲部を移動させながら前記部分の相対的な移動に追随可能とされ、各保持部材は、複数のケーブルガイドを回転可能に連結してなり、可撓性線状体を収納保持するキャリアケーブルとされたことを特徴とする線状体保持構造。
【請求項8】
前記可撓性線状体のうちの少なくとも一部は、流体を収容する配管用チューブとされたことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の線状体保持構造。
【請求項9】
前記可撓性線状体のうちの少なくとも一部は、給電用ケーブルとされたことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の線状体保持構造。
【請求項10】
前記可撓性線状体のうちの少なくとも一部は、通信用ケーブルとされたことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の線状体保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対的に移動する部分の間に介装される複数の可撓性の線状体を保持する線状体保持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、産業用機器や電子機器では、直動ロボットやスライダーのような移動自在な部分に電力や各種信号、空気圧、油圧などを伝達可能なよう、相対的に移動する部分の間に、給電用ケーブルや通信用ケーブル、あるいは空気や油を送る配管用チューブなどの可撓性線状体を介装している。
【0003】
このような相対的に移動する部分に介装された可撓性線状体が絡み合ったり断線したりするのを防止するための構造として、例えば特許文献1は、弾性を有する薄板101にU字状のケーブルガイド102を上下交互に複数個装着することにより、薄板101の両面にケーブル103を屈曲可能に保持して可動するケーブルキャリアを開示している(図3参照)。
【0004】
特許文献1のケーブルキャリアは、薄板101の両面にケーブル103を分離して収納することにより、ケーブル103同士が絡み合ってストレスで断線したり、電気的に影響してケーブル103相互間の信号等にノイズが乗り装置が誤動作するなどの問題をなくすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-244831号公報(請求項1、請求項2、段落0035、図9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1のケーブルキャリアは、複数のケーブルを分離して収納することができるものの、ケーブル本数がさらに多くなると、ケーブルの絡み合いや断線のリスクを抑えるため、ケーブル本数の増大に応じてケーブルキャリアの収納容量を大きくする必要がある。
【0007】
ケーブルキャリアの収納容量を大きくするには、ケーブルキャリアを幅方向及び厚さ方向に大きくする必要があり、ケーブルキャリアを配置するのに要するスペースを増大させる。
【0008】
しかも、ケーブルキャリアが湾曲する部分の曲率半径を一定とすると、ケーブルキャリアの厚さの増大に伴って、ケーブルキャリアの湾曲を許容するためのケーブルガイド間の隙間が大きくなり、内部のケーブルを大きく露出させる。ケーブルキャリアの無理な湾曲を防止してケーブルガイド間の隙間を抑えるには、湾曲部分における曲率半径を大きくする必要があり、ケーブルキャリアの高さ方向に要するスペースを増大させる。
【0009】
本発明は、可撓性線状体の本数が増大した場合にも、その絡み合いや断線を防止しつつ、省スペース化を図ることのできる線状体保持構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る線状体保持構造は、相対的に移動する部分の間に介装される複数の可撓性線状体を保持するためのものであり、可撓性線状体をその長さ方向に沿って保持する保持部材と、導電性の素材からなる心線を有するベルトと、を厚さ方向に並設し、保持部材及びベルトを、可撓性線状体の長さ方向で中間部に厚さ方向に湾曲する湾曲部を有すると共に、この湾曲部を移動させながら前記部分の相対的な移動に追随可能としたものである。
【0011】
上記構成によれば、可撓性線状体をその長さ方向に沿って保持する保持部材と、導電性の素材からなる心線を有するベルトと、を厚さ方向に並設するので、そのベルトを例えば給電用ケーブルや通信用ケーブルとして用いることができ、これらを保持部材で保持する必要がない分、保持部材の厚さを小さくすることができる。これにより、無理な変形を生じさせることなく、保持部材を小さく湾曲させることができ、相対的な移動に追随可能なよう保持部材に設けた湾曲部における曲率半径を小さくして、保持部材の高さ方向に要するスペースを小さくすることができる。
【0012】
また、ベルトを保持部材よりも湾曲内側に設けるようにしてもよい。
【0013】
この構成によると、より小さく湾曲させることのできるベルトを湾曲内側に設けるので、保持部材の内側のデッドスペースにベルトを配置して、線状体保持構造をより省スペース化することができる。なお、ベルトは、保持部材と別部材として設けたものであれば、保持部材の高さ方向に要するスペースを小さくすることができ、保持部材よりも湾曲外側に設けるようにしてもよい。
【0014】
また、ベルトを給電用ケーブルとして用いるようにしてもよく、ベルトを通信用ケーブルとして用いるようにしてもよい。
【0015】
この構成によると、ベルトを給電用ケーブル又は通信用ケーブルとして用いるので、この給電用ケーブル又は通信用ケーブルを保持部材と分離することができ、保持部材が給電用ケーブル及び通信用ケーブルのうちの他方を保持する場合にも、その通信ケーブルにノイズが乗るのを防止することができる。
【0016】
また、ベルトを給電及び通信用ケーブルとして用いるようにしてもよい。
【0017】
この構成によると、給電用ケーブル及び通信用ケーブルの両者について、保持部材で保持する必要がない分、保持部材の厚さをより小さくすることができ、保持部材の高さ方向に要するスペースをより小さくすることができる。
【0018】
また、ベルトを、保持部材を厚さ方向に挟んで両側に設け、一側のベルトを給電用ケーブルとして用いるようにし、他側のベルトを通信用ケーブルとして用いるようにしてもよい。
【0019】
この構成によると、給電用ケーブルと通信用ケーブルとを保持部材と挟んで完全に分離することができ、給電用ケーブルに起因するノイズが通信ケーブルに乗るのをより確実に防止することができる。
【0020】
また、本発明に係る別の線状体保持構造は、相対的に移動する部分の間に介装される複数の可撓性線状体を保持するためのものであり、可撓性線状体をその長さ方向に沿って保持する保持部材を複数層に設け、各保持部材を、可撓性線状体の長さ方向で中間部に厚さ方向に湾曲する湾曲部を有すると共に、この湾曲部を移動させながら前記部分の相対的な移動に追随可能なものとしたものである。
【0021】
上記構成によれば、可撓性線状体をその長さ方向に沿って保持する保持部材を複数層に設けるので、各層を構成する保持部材については、その厚さを小さくすることができる。これにより、無理な変形を生じさせることなく、各保持部材を小さく湾曲させることができ、相対的な移動に追随可能なよう保持部材に設けた湾曲部における曲率半径を小さくして、保持部材の高さ方向に要するスペースを小さくすることができる。
【0022】
ここで、保持部材、複数のケーブルガイドを回転可能に連結してなり、可撓性線状体を収納保持するキャリアケーブルとする。
【0023】
この構成によると、ベルトのように小さく湾曲させるのが難しいキャリアケーブルを保持部材とするが、本発明の上記構成を採用することにより、保持部材の高さ方向に要するスペースを比較的に小さくすることができる。特に、ベルトや湾曲内側の保持部材よりも曲率半径が大きくなる湾曲外側にキャリアケーブルを配置することにより、線状体保持構造の省スペース化を図りつつ、各種の可撓性線状体を無理なく保持することができる。
【0024】
また、可撓性線状体のうちの少なくとも一部を、流体を収容する配管用チューブとするようにしてもよい。
【0025】
この構成によると、ベルトとは別に設けた保持部材や、複数層に設けた保持部材のいずれかで配管用チューブを保持することにより、ベルトや他の保持部材で保持する可撓性線状体と分離し、配管用チューブが絡み合って変形するのを防止することができ、本発明の好適な態様を提供することができる。
【0026】
また、可撓性線状体のうちの少なくとも一部を、給電用ケーブルとするようにしてもよく、通信用ケーブルとするようにしてもよい。
【0027】
この構成によると、ベルトとは別に設けた保持部材や、複数層に設けた保持部材のいずれかで給電用ケーブルや通信用ケーブルを保持することにより、ベルトや他の保持部材で保持する可撓性線状体と分離し、給電用ケーブルや通信用ケーブルが絡み合って変形するのを防止することができる。特に、給電用ケーブル及び通信用ケーブルのいずれか一方を保持することにより、通信用ケーブルとこれにノイズを生じさせる給電用ケーブルとを分離することができ、本発明の好適な態様を提供することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上のとおり、本発明によると、可撓性線状体をその長さ方向に沿って保持する保持部材と、導電性の素材からなる心線を有するベルトと、を厚さ方向に並設することにより、あるいは、保持部材を複数層に設けることにより、各保持部材の厚さを小さくするようにしている。これにより、無理な変形を生じさせることなく、各保持部材を小さく湾曲させることができ、可撓性線状体の本数が増大した場合にも、その絡み合いや断線を防止しつつ、線状体保持構造の省スペース化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係る線状体保持構造の斜視図
図2図1のキャリアケーブル及びベルトの上側端部を移動させた状態を示す図
図3】従来のケーブルキャリアの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る線状体保持構造を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0031】
図1及び図2に示すように、線状体保持構造1は、例えば、産業用機器に装備される直動ロボットやスライダーにおいて、相対的に移動する部分2、3の間に介装される通信用ケーブルである複数の可撓性線状体4を保持して、可撓性線状体4が絡み合ったり断線したりするのを防止するためのものであり、可撓性線状体4をその長さ方向に沿って保持する保持部材としてのキャリアケーブル5と、給電ケーブルとしての歯付ベルト6とが二層に設けられ、キャリアケーブル5及び歯付ベルト6が、可撓性線状体4の長さ方向で中間部に湾曲部7、8を有すると共に、湾曲部7、8を移動させながら部分2、3の相対的な移動に追随可能とされたものである。
【0032】
相対的に移動する部分2、3は、基体9に形成された上下二条のガイド溝10、11に支持され、上側の部分2がガイド溝10に沿って移動自在とされて、下側の部分3がガイド溝11の所定の位置にねじ12によって移動不能に固定されている。
【0033】
キャリアケーブル5は、複数のロ字形のケーブルガイド13を回転可能に順次連結した構造とされ、その内側の空間に通信用ケーブルである可撓性線状体4を収納保持すると共に、全体として二つ折りに構成されている。キャリアケーブル5の両端部は、固定具14、15を介して、相対的に移動する部分2、3に取り付けられ、折り返し部としての湾曲部7の位置を変化させながら、部分2、3の相対的な移動に追随する。
【0034】
歯付ベルト6は、導電性の素材からなるスチール心線などの心線6aを例えば不導体であるウレタン製のベルト本体に埋設してなる通電可能なウレタンベルトとされて給電ケーブルとされ、この歯付ベルト6が全体として二つ折りに構成されて、キャリアケーブル5よりも湾曲内側に配置されている。スチール心線は、屈曲に対する耐久性が高く、二つ折りに構成して部分2、3の相対的な移動に追随させる歯付ベルト6の心線6aとして好適に用いることができる。
【0035】
歯付ベルト6の両端部は、そのベルト歯に噛み合うよう歯切りされた板16により、キャリアケーブル5の両端の固定具14、15との間に挟持され、折り返し部としての湾曲部8の位置を変化させながら、部分2、3の相対的な移動に追随する。なお、歯切りされた板16に代えて、歯切りのない平板やクリップを用いることもできる。
【0036】
上記構成によれば、キャリアケーブル5及び歯付ベルト6を二層に設けて、キャリアケーブル5で通信用ケーブルである可撓性線状体4を保持し、歯付ベルト6を給電用ケーブルとしている。これにより、給電用ケーブルを保持する必要がない分、キャリアケーブル5の断面寸法を小さくすると共に、断面の小サイズ化に伴って湾曲径を小さくすることができ、キャリアケーブル5の省スペース化を図ることができる。
【0037】
しかも、小さく湾曲させることのできる歯付ベルト6をキャリアケーブル5の湾曲内側に配置するので、キャリアケーブル5のデッドスペースを利用することができ、線状体保持構造1の全体としての省スペース化を図ることができる。
【0038】
また、通信用ケーブルである可撓性線状体4を保持するキャリアケーブル5と、給電用ケーブルとしての歯付ベルト6と、を完全に分離するので、給電用ケーブルが生じるノイズが通信用ケーブルである可撓性線状体4に乗るのを確実に防止することができる。
【0039】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、線状体保持構造1が保持する可撓性線状体4は、各種信号を送る通信用ケーブルだけでなく、電力を送る給電用ケーブルであっても、あるいは、空気や油を収容して空気圧や油圧を伝達する配管用チューブなどであってもよく、産業用機器だけでなく電子機器などの他の機器に線状体保持構造1を装備することもできる。
【0040】
また、歯付ベルト6は、給電用ケーブルとして用いるだけでなく、通信用ケーブルとして用いることもでき、給電及び通信用ケーブルとして、給電用と通信用の両方に用いることもできる。
【0041】
また、キャリアケーブル5の湾曲内側に歯付ベルト6を設けるだけでなく、キャリアケーブル5の湾曲外側に歯付ベルト6を設けてもよく、キャリアケーブル5だけを二層に設けてもよく、キャリアケーブル5の厚さ方向で両側に歯付ベルト6を設けるなど、キャリアケーブル5及び歯付ベルト6を三層以上に設けてもよい。また、歯付ベルト6に代えて平ベルトを用いることもでき、キャリアケーブル5に代えてフラットケーブルを用いることもできる。
【符号の説明】
【0042】
1 線状体保持構造
2、3 相対的に移動する部分
4 可撓性線状体(通信用ケーブル)
5 キャリアケーブル
6 歯付ベルト
6a 心線
7、8 湾曲部
9 基体
10、11 ガイド溝
12 ねじ
13 ケーブルガイド
14、15 固定具
16 板
図1
図2
図3