(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】遠心圧縮機及びシールユニット
(51)【国際特許分類】
F04D 29/16 20060101AFI20220531BHJP
F04D 25/00 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
F04D29/16
F04D25/00
(21)【出願番号】P 2018202008
(22)【出願日】2018-10-26
【審査請求日】2021-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】310010564
【氏名又は名称】三菱重工コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】尺田 将喜
(72)【発明者】
【氏名】得山 伸一郎
【審査官】大屋 静男
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05161943(US,A)
【文献】国際公開第2018/077691(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 25/00、29/16、29/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転する回転軸と、
前記回転軸に固定されたディスク、前記ディスクにおける軸線方向の第一側を向く面に設けられ、前記軸線回りの周方向に間隔をあけて設けられた複数のブレード、及び、前記ディスク及び前記ブレードに対して前記軸線方向の第一側に設けられ、前記軸線方向の第二側に向かうにしたがって径方向の外側に延びる外周面を有したカバーを備えるインペラと、
前記回転軸及び前記インペラを覆い、前記外周面に対して前記軸線方向の第一側に形成されて前記外周面に対向する対向面を有したハウジングと、
前記ハウジングにおける前記対向面よりも前記径方向の内側において、前記外周面との間にクリアランスを形成するシール部材と、
前記シール部材に対して前記周方向に間隔をあけて複数が形成され、それぞれ前記径方向の内側に向かうにしたがって前記回転軸の回転方向と反対側に傾斜して延び、前記外周面と対向する位置で開口する開口部を有した傾斜孔と、
前記開口部に対して前記軸線方向の第二側で前記シール部材に設けられ、前記シール部材から前記外周面に向かって突出する第一フィンと、
前記ハウジングに形成され、前記カバーにおいて最も前記径方向の外側の外周端よりも、前記径方向の内側で前記外周面に対向する位置で開口する導入口を有するとともに前記傾斜孔に連通する連通流路部と、を備え
、
前記ハウジングは、
ハウジング本体と、
前記ハウジング本体に着脱可能に設けられ、前記シール部材を保持するシールホルダと、を有し、
前記連通流路部は、前記シールホルダに形成されている遠心圧縮機。
【請求項2】
前記連通流路部は、
前記周方向に連続し、複数の前記傾斜孔に連通する周方向流路と、
前記導入口と前記周方向流路とを繋ぐ複数の導入流路と、有する
請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項3】
前記開口部に対して前記軸線方向の第一側で前記シール部材に設けられ、前記シール部材から前記外周面に向かって突出する第二フィンをさらに備える請求項1
又は請求項2に記載の遠心圧縮機。
【請求項4】
軸線回りに回転する回転軸と、前記回転軸に固定されたディスク、前記ディスクにおける軸線方向の第一側を向く面に設けられ、前記軸線回りの周方向に間隔をあけて設けられた複数のブレード、及び、前記ディスク及び前記ブレードに対して前記軸線方向の第一側に設けられ、前記軸線方向の第二側に向かうにしたがって径方向の外側に延びる外周面を有したカバーを備えるインペラと、前記回転軸及び前記インペラを覆い、前記外周面に対して前記軸線方向の第一側に形成されて前記外周面に対向する対向面を有したハウジングと、を備える遠心圧縮機に装着されるシールユニットであって、
前記ハウジングにおける前記対向面よりも前記径方向の内側において、前記外周面との間にクリアランスを形成するように配置可能とされた円環状のシール部材と、
前記シール部材に対して前記周方向に間隔をあけて複数が形成され、それぞれ前記径方向の内側に向かうにしたがって前記周方向に傾斜して延び、前記シール部材の内周面で開口する開口部を有した傾斜孔と、
前記開口部に対して前記軸線方向の第二側で前記シール部材に設けられ、前記シール部材から突出する第一フィンと、
前記ハウジングのハウジング本体に着脱可能に設けられ、前記シール部材を保持するシールホルダと、を備え、
前記傾斜孔は、前記カバーにおいて最も前記径方向の外側の外周端よりも前記径方向の内側と連通可能とされ
、
前記シールホルダは、前記カバーにおいて最も前記径方向の外側の外周端よりも、前記径方向の内側で前記外周面に対向する位置で開口する導入口を有するとともに前記傾斜孔に連通する連通流路部を有するシールユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心圧縮機及びシールユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
回転機械の一つとして気体を圧縮する遠心圧縮機が広く知られている。この遠心圧縮機においては、ハウジング内部に設けられたインペラの回転により、吸込口から流入した気体等の作動流体が圧縮され、排出口から排出される。
【0003】
このような遠心圧縮機においては、インペラ等の回転体と、その周囲のハウジング等の静止体との間の隙間に存在する作動流体が、回転体の回転にともなって、回転体の表面に連れ回るように周方向に移動され、旋回流(スワール)を生じる。この旋回流により、インペラが固定されている回転軸に振動が励起されてしまう場合がある。
【0004】
特許文献1には、旋回流による影響を抑えるため、インペラに対して径方向の外側に設けた入口孔と、インペラ(回転体)の入口側でラビリンスシール直後に設けた出口孔とを接続する連通孔を設けた構成が開示されている。出口孔は、インペラ回転方向と逆向きに傾斜して設けられている。このような構成では、インペラを経て圧縮された高圧の作動流体は、出口孔からインペラ外周面に向けて、インペラの回転方向と逆向きに噴出され、インペラの回転にともなう旋回流を緩和する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、出口孔から噴出する作動流体による旋回流の緩和効果を十分に得るには、入口孔と出口孔との差圧を大きくし、作動流体の噴出圧を高める必要がある。このため、特許文献1に開示された構成では、インペラを経て圧縮された高圧の作動流体を取り込めるように、入口孔は、インペラに対して径方向の外側で、ハウジングに形成された流路の側面で開口している。しかしながら、入口孔を出口孔から離れた位置に設けると連通孔が長くなり、連通孔を形成するために大きなスペースが必要となる。その結果、回転機械の小型化の妨げになる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、インペラの回転にともなって生じる旋回流を低減しつつ、必要なスペースを抑えることが可能な遠心圧縮機及びシールユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明の第一態様に係る遠心圧縮機は、軸線回りに回転する回転軸と、前記回転軸に固定されたディスク、前記ディスクにおける軸線方向の第一側を向く面に設けられ、前記軸線回りの周方向に間隔をあけて設けられた複数のブレード、及び、前記ディスク及び前記ブレードに対して前記軸線方向の第一側に設けられ、前記軸線方向の第二側に向かうにしたがって径方向の外側に延びる外周面を有したカバーを備えるインペラと、前記回転軸及び前記インペラを覆い、前記外周面に対して前記軸線方向の第一側に形成されて前記外周面に対向する対向面を有したハウジングと、前記ハウジングにおける前記対向面よりも前記径方向の内側において、前記外周面との間にクリアランスを形成するシール部材と、前記シール部材に対して前記周方向に間隔をあけて複数が形成され、それぞれ前記径方向の内側に向かうにしたがって前記回転軸の回転方向と反対側に傾斜して延び、前記外周面と対向する位置で開口する開口部を有した傾斜孔と、前記開口部に対して前記軸線方向の第二側で前記シール部材に設けられ、前記シール部材から前記外周面に向かって突出する第一フィンと、前記ハウジングに形成され、前記カバーにおいて最も前記径方向の外側の外周端よりも、前記径方向の内側で前記外周面に対向する位置で開口する導入口を有するとともに前記傾斜孔に連通する連通流路部と、を備え、前記ハウジングは、ハウジング本体と、前記ハウジング本体に着脱可能に設けられ、前記シール部材を保持するシールホルダと、を有し、前記連通流路部は、前記シールホルダに形成されている。
【0009】
このような構成とすることで、圧力が上昇した作動流体の一部は、カバーの外周面とハウジングの対向面との隙間に流れ込み、第一フィンに対して軸線方向の第二側に到達する。これに対し、第一フィンに対して軸線方向の第一側は、作動流体の圧力が低い。したがって、連通流路部の導入口の圧力は、傾斜孔の開口部の圧力よりも高くなる。このようにして生じる導入口と開口部との間の差圧により、作動流体の一部は、連通流路部から傾斜孔を経て、開口部から噴出する。複数の傾斜孔の開口部から、回転軸の回転方向と反対向きに噴出する作動流体により、シール部材とカバーの外周面との間の作動流体が、インペラの回転に連れ回されて旋回するのを抑えることができる。また、連通流路部の導入口は、インペラのカバーの外周部よりも径方向の内側で開口している。そのため、導入口を、インペラの径方向の外側に設ける必要がない。したがって、連通流路部を形成するためスペースが少なくて済み、遠心圧縮機の小型化を図ることが可能となる。
また、このように、連通流路部をシールホルダに形成することで、ハウジング本体に連通流路部を形成するための加工を施す必要がない。さらに、連通流路部が形成されたシールホルダ及びシール部材を、ハウジング本体に取り付ければ、インペラの回転にともなって生じる旋回流を低減しつつ、必要なスペースを抑えることが可能な遠心圧縮機を実現することができる。
【0012】
また、本発明の第二態様に係る遠心圧縮機では、前記連通流路部は、前記周方向に連続し、複数の前記傾斜孔に連通する周方向流路と、前記導入口と前記周方向流路とを繋ぐ複数の導入流路と、有していてもよい。
【0013】
このような構成とすることで、インペラを経て径方向の外側に送られる作動流体の一部を、導入流路から周方向流路に合流させて、複数の傾斜孔に送り込むことができる。そのため、周方向に位置よらず、複数の傾斜孔に同じ条件で作動流体を供給できる。
【0014】
また、本発明の第三態様に係る遠心圧縮機では、前記開口部に対して前記軸線方向の第一側で前記シール部材に設けられ、前記シール部材から前記外周面に向かって突出する第二フィンをさらに備えていてもよい。
【0015】
このような構成とすることで、第二フィンにより、圧縮前の作動流体が、傾斜孔の開口部から噴出する作動流体に直接合流してしまうことが抑えられる。したがって、傾斜孔から噴出する作動流体による旋回流の抑制効果を確実に発揮することができる。
【0016】
また、本発明の第四態様に係るシールユニットは、軸線回りに回転する回転軸と、前記回転軸に固定されたディスク、前記ディスクにおける軸線方向の第一側を向く面に設けられ、前記軸線回りの周方向に間隔をあけて設けられた複数のブレード、及び、前記ディスク及び前記ブレードに対して前記軸線方向の第一側に設けられ、前記軸線方向の第二側に向かうにしたがって径方向の外側に延びる外周面を有したカバーを備えるインペラと、前記回転軸及び前記インペラを覆い、前記外周面に対して前記軸線方向の第一側に形成されて前記外周面に対向する対向面を有したハウジングと、を備える遠心圧縮機に装着されるシールユニットであって、前記ハウジングにおける前記対向面よりも前記径方向の内側において、前記外周面との間にクリアランスを形成するように配置可能とされた円環状のシール部材と、前記シール部材に対して前記周方向に間隔をあけて複数が形成され、それぞれ前記径方向の内側に向かうにしたがって前記周方向に傾斜して延び、前記シール部材の内周面で開口する開口部を有した傾斜孔と、前記開口部に対して前記軸線方向の第二側で前記シール部材に設けられ、前記シール部材から突出する第一フィンと、前記ハウジングのハウジング本体に着脱可能に設けられ、前記シール部材を保持するシールホルダと、を備え、前記傾斜孔は、前記カバーにおいて最も前記径方向の外側の外周端よりも前記径方向の内側と連通可能とされ、前記シールホルダは、前記カバーにおいて最も前記径方向の外側の外周端よりも、前記径方向の内側で前記外周面に対向する位置で開口する導入口を有するとともに前記傾斜孔に連通する連通流路部を有する。
【0017】
このようなシールユニットを、遠心圧縮機のハウジング本体に取り付けることで、インペラの回転にともなって生じる旋回流を低減しつつ、必要なスペースを抑えることが可能な遠心圧縮機を実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、インペラの回転にともなって生じる旋回流を低減しつつ、必要なスペースを抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る遠心圧縮機の構成を示す模式図である。
【
図2】上記遠心圧縮機に設けられたインペラの周囲の構造を示す断面図である。
【
図3】上記遠心圧縮機の要部の構成を示す断面図である。
【
図5】本発明の実施形態の変形例に係る遠心圧縮機の要部の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明による遠心圧縮機及びシールユニットを実施するための形態を説明する。しかし、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
【0021】
図1、
図2に示すように、本実施形態に係るギアード遠心圧縮機(遠心圧縮機)1は、ハウジング20(
図2参照)と、ラジアル軸受12(
図1参照)と、回転軸13と、インペラ14と、を備えている。
【0022】
ハウジング20は、ハウジング本体21と、後述するシールホルダ60と、を有している。ハウジング本体21は、ギアード遠心圧縮機1の外殻を形成する。
【0023】
図1に示すように、ラジアル軸受12は、回転軸13の軸線O方向に間隔をあけて一対が設けられている。ラジアル軸受12は、ハウジング本体21に固定されている。
【0024】
図2に示すように、回転軸13は、ハウジング本体21に形成された軸挿通孔21hに挿通されている。軸挿通孔21hの内周面には、回転軸13の外周面に摺接するシールリング23が設けられている。
図1に示すように、回転軸13は、一対のラジアル軸受12に、その軸線O周りに回転自在に支持されている。
【0025】
回転軸13には、一対のラジアル軸受12の間に、ピニオンギア15が設けられている。このピニオンギア15には、大径ギア16が噛み合っている。大径ギア16は、外部の駆動源によって回転駆動される。この大径ギア16は、ピニオンギア15よりも外径寸法が大きく設定されている。したがって、ピニオンギア15を有する回転軸13の回転数は、大径ギア16の回転数よりも大きくなる。
【0026】
このようなピニオンギア15と、大径ギア16とによって、増速伝達部11が構成されている。増速伝達部11は、外部の駆動源による大径ギア16の回転数を、ピニオンギア15を介して増速させて回転軸13に伝達する。
【0027】
また、回転軸13には、ピニオンギア15に対して軸線O方向に離間した位置に、スラスト軸受17を備えている。スラスト軸受17によって、回転軸13は、軸線O方向への移動が拘束されている。
【0028】
インペラ14は、回転軸13の軸線O方向の第一端部13aと、第二端部13bとに、それぞれ設けられている。
図2、
図3に示すように、各インペラ14は、本実施形態において、ディスク41とブレード42とカバー43とを備えた、いわゆるクローズドインペラである。
【0029】
ディスク41は、円盤状で、回転軸13に固定されている。ディスク41は、軸線O方向に沿って、ディスク41の軸線O方向の第一側の第一面41a側から軸線O方向の第二側の第二面41b側に向かって、外径が漸次拡大する凹状湾曲面として形成されている。
【0030】
ここで、
図2に示すように、本実施形態において、ギアード遠心圧縮機1は、回転軸13の軸線O方向の両端にインペラ14を備えている。作動流体は、各インペラ14のディスク41に対し、軸線O方向の第一側(第一面41a側)から軸線O方向の第二側(第二面41b側)に向かって流れる。以下の説明において、軸線O方向の第一側を軸線O方向の上流側とし、軸線O方向の第二側を軸線O方向の下流側とする。すなわち、回転軸13の第一端に設けられた第一段インペラ14Aと、回転軸13の第二端に設けられた第二段インペラ14Bとでは、軸線O方向の上流側と軸線O方向の下流側とは、互いに反対向きとされている。
【0031】
図2、
図3に示すように、ブレード42は、ディスク41において軸線O方向の上流側を向く第一面41aに設けられている。ブレード42は、軸線O回りの周方向に間隔を隔てて複数設けられている。
【0032】
カバー43は、ディスク41及び複数のブレード42に対し、軸線O方向の上流側に設けられている。カバー43は、円盤状で、複数のブレード42を覆うように設けられている。カバー43は、軸線O方向においてディスク41に対向する側が、ディスク41と一定の間隔を隔てて対向する凸状面43fとして形成されている。また、カバー43は、軸線O方向の上流側に、カバー外周面43gを有している。カバー外周面43gは、軸線O方向の上流側から下流端に向かうにしたがって径方向の外側に延びている。カバー外周面43gは、カバー43の軸線O方向の上流側の端部に、軸線O方向に延びる筒状外周面43hを有している。
【0033】
各インペラ14においては、ディスク41とカバー43との間に、インペラ流路45が形成されている。インペラ流路45は、ディスク41の第一面41a側の径方向の内側で軸線O方向に沿って開口する流入口45iと、インペラ14の径方向の外側に向かって開口する流出口45oと、を有している。
【0034】
図2に示すように、ハウジング本体21は、回転軸13及びインペラ14を覆うように設けられている。ハウジング本体21内には、各インペラ14の周囲に、吸気流路18と、排気流路19とが形成されている。吸気流路18は、ハウジング本体21の外部と、インペラ14の径方向の内側に開口したインペラ流路45の流入口45iとを連通する。排気流路19は、インペラ流路45の流出口45oの径方向の外側に形成されている。排気流路19は、軸線O周りに連続する渦巻き状をなしている。
【0035】
図3に示すように、ハウジング本体21は、カバー外周面43gに対し、軸線O方向の上流側に形成された対向面22fを有している。対向面22fは、カバー外周面43gに対し、軸線O方向に間隔をあけて対向している。
【0036】
ハウジング本体21の対向面22fには、シールホルダ60が取り付けられるシール取付部24が形成されている。シール取付部24は、対向面22fから窪む溝である。シール取付部24は、筒状湾曲面24aと、取付端面24bと、を有している。筒状湾曲面24aは、対向面22fの内周縁から軸線O方向の上流側に延びている。筒状湾曲面24aは、円筒状をなすように径方向の内側を向いて湾曲している。取付端面24bは、筒状湾曲面24aにおける軸線O方向の上流側の端部から径方向の内側に直交して延びている。取付端面24bには、軸線O回りの周方向に間隔をあけて複数の雌ネジ孔24hが形成されている。
【0037】
シールホルダ60は、ハウジング本体21のシール取付部24に対して着脱可能に設けられている。シールホルダ60は、後述するシール部材50を保持する。シールホルダ60は、全体として円環状をなしている。シールホルダ60は、ホルダ外周面60fと、先端面60gと、ホルダ対向面60hと、シール保持面60iと、前端対向面60jと、を有している。
【0038】
ホルダ外周面60fは、軸線O方向に延び、径方向の外側を向く湾曲面である。ホルダ外周面60fは、円筒状なしている。ホルダ外周面60fは、筒状湾曲面24aに対して径方向で対向している。先端面60gは、ホルダ外周面60fにおける軸線O方向の上流側の端部から径方向の内側に直交して延びている。先端面60gは、取付端面24bに対し、軸線O方向で対向して突き当たるように形成されている。
【0039】
ホルダ対向面60hは、軸線O方向の下流側を向く面である。ホルダ対向面60hは、シールホルダ60がハウジング本体21に取り付けられた状態で、対向面22fに対して径方向の内側で連続するように形成されている。ホルダ対向面60hは、カバー外周面43gに対し、対向面22fよりも径方向の内側で、軸線O方向に間隔をあけて対向している。
【0040】
シール保持面60iは、ホルダ対向面60hよりも径方向の内側で、径方向の内側を向く面である。シール保持面60iは、軸線O方向の上流側の筒状外周面43hに対し、径方向に間隔をあけて対向するよう形成されている。シール保持面60iには、シール部材50が嵌め込まれるシール装着溝61が形成されている。シール装着溝61は、シール保持面60iから径方向の外側に窪み、軸線O回りの周方向に連続して形成されている。
【0041】
前端対向面60jは、ホルダ対向面60hよりも径方向の内側で、軸線O方向の下流側を向く面である。前端対向面60jは、シール保持面60iにおける軸線O方向の上流側の端部から径方向の内側に直交して延びている。前端対向面60jは、カバー43において軸線O方向の上流側の端部に形成されたカバー前端面43sに対し、軸線O方向に間隔をあけて対向するよう形成されている。
【0042】
シールホルダ60には、周方向に間隔をあけた複数個所に、ボルト挿通孔62が形成されている。各ボルト挿通孔62は、ホルダ対向面60hから先端面60gまでを貫通するよう、軸線O方向に延びている。ボルト挿通孔62は、シールホルダ60がハウジング本体21に取り付けられた状態で、軸線O方向から見た際に、雌ネジ孔24hと同じ位置となるように形成されている。シールホルダ60は、シール取付部24に収容された状態で、ホルダ対向面60h側から各ボルト挿通孔62にボルト63を挿通させ、取付端面24bに形成された雌ネジ孔24hに締結することで、ハウジング本体21に固定されている。ここで、各ボルト挿通孔62には、ボルト63の頭部63aを収容する収容凹部62aが形成されている。
【0043】
さらに、シールホルダ60は、連通流路部64を備える。
図3、
図4に示すように、連通流路部64は、後述するシール部材50の傾斜孔55に連通するよう形成されている。連通流路部64は、導入流路66と、周方向流路67と、を有している。
【0044】
導入流路66は、軸線O回りの周方向に間隔をあけた複数個所に形成されている。本実施形態では、導入流路66は、周方向に等間隔に、例えば六個所に設けられている。各導入流路66は、ボルト挿通孔62と干渉しないよう、周方向に位置をずらして形成されている。各導入流路66は、ホルダ対向面60hから軸線O方向の上流側に延びている。各導入流路66は、ホルダ外周面60fから径方向の内側に窪む溝状に形成されている。
図3に示すように、導入流路66は、ホルダ対向面60hで開口する導入口66iを有している。この導入口66iは、対向面22fよりも径方向の内側に開口している。すなわち、導入口66iは、カバー43の外周端43eよりも径方向の内側でカバー外周面43gに対向した位置で開口している。外周端43eは、カバー43において最も径方向の外側の領域である。外周端43eは、径方向の外側を向く面が形成されている。
【0045】
図3、
図4に示すように、周方向流路67は、軸線O回りの周方向に連続して形成されている。周方向流路67は、導入流路66における軸線O方向の上流側の端部に対して、径方向の内側で連続して形成されている。周方向流路67は、径方向の外側の端部で各導入流路66に連通している。周方向流路67は、径方向の内側に、シール装着溝61における軸線O方向の中央部で開口する導出口67oを有している。導出口67oは、シール装着溝61の底面に形成されている。導出口67oは、周方向全周に連続して開口している。
【0046】
シール部材50は、全体として円環状をなしている。シール部材50の外周部は、シールホルダ60のシール装着溝61に嵌め込まれている。これにより、シール部材50は、対向面22fよりも、径方向の内側、かつ軸線O方向の上流側に設けられている。
【0047】
シール部材50の外周面50fは、シール装着溝61の底面に密着している。シール部材50の内周面50gは、カバー外周面43gのうち、筒状外周面43hに対し、径方向で所定寸法のクリアランスを有して対向するよう設けられている。
【0048】
図3に示すように、シール部材50には、第一フィン(フィン)52と、第二フィン53及び54と、が一体に設けられている。第一フィン52と、第二フィン53及び54とは、周方向に連続してそれぞれ設けられている。第一フィン52と、第二フィン53及び54とは、シール部材50の内周面50gから径方向の内側に突出している。第一フィン52と、第二フィン53及び54とは、その先端が筒状外周面43hに対して微小な隙間を形成している。
【0049】
図3、
図4に示すように、シール部材50には、軸線O回りの周方向に間隔をあけた複数個所に、傾斜孔55が形成されている。各傾斜孔55は、シール部材50の外周面50fと内周面50gとを連通するよう形成されている。傾斜孔55は、外周面50fで周方向流路67に連通している。傾斜孔55は、内周面50gで開口する開口部57を有している。開口部57は、筒状外周面43hと対向する位置で開口している。
【0050】
傾斜孔55は、外周面50f側から径方向の内側に向かうにしたがって、回転軸13の回転方向と反対側に向かうように周方向に傾斜して延びている。傾斜孔55は、軸線O方向から見たときに、軸線Oを中心とした径方向に対する傾斜角θが、例えば40~50°程度となるよう形成するのが好ましい。複数の傾斜孔55の傾斜角θは、周方向で全て同一としてもよいし、周方向の位置に応じて複数の傾斜孔55の傾斜角θを異ならせてもよい。
【0051】
各傾斜孔55は、
図3に示すように、シール部材50の軸線O方向の中央部に形成されている。傾斜孔55の開口部57は、第一フィン52と、第二フィン53及び54との間に配置されている。すなわち、開口部57は、第一フィン52に対し、軸線O方向の上流側に並んで設けられている。開口部57は、第二フィン53及び54に対し、軸線O方向の下流側に並んで設けられている。
【0052】
作動流体は、インペラ14が回転軸13と一体に回転することで、吸気流路18から流入口45iを経てインペラ流路45に取り込まれる。作動流体は、回転軸13と一体に回転するインペラ14で生じる遠心力により、インペラ流路45の流入口45iから流出口45oに向かって流れる。作動流体は、流入口45iから流出口45oに向かって流れる間に圧縮される。圧縮された作動流体は、流出口45oから径方向の外側に流出し、排気流路19に送り込まれる。作動流体は、排気流路19に沿って軸線O周りに旋回する間に、さらに圧縮される。
【0053】
このようなインペラ14、吸気流路18、及び排気流路19によって、遠心圧縮部30が構成されている。これにより、
図1に示すように、ギアード遠心圧縮機1は、増速伝達部11を挟んだ両側に配置される一対の遠心圧縮部30、を備えている。一対の遠心圧縮部30は、増速伝達部11を挟んで第一の側に配置された1段目の遠心圧縮部30Aと、増速伝達部11を挟んで第二の側に配置された2段目の遠心圧縮部30Bと、を備える。すなわち、このギアード遠心圧縮機1は、1軸2段の圧縮機として構成されている。
【0054】
このようなギアード遠心圧縮機1においては、1段目の遠心圧縮部30Aの第一段インペラ14Aによって圧縮された流体は、続いて2段目の遠心圧縮部30Bに流入する。この2段目の遠心圧縮部30Bの第二段インペラ14Bを流通する過程で、この流体はさらに圧縮されて、高圧の流体となる。
【0055】
インペラ流路45を経ることで圧力が上昇し、流出口45oから径方向の外側に流出した作動流体の一部は、カバー43の外周端43eで、カバー外周面43gと対向面22fとの隙間に流入し、第一フィン52に対して軸線O方向の下流側の下流側空間A3に到達する。
【0056】
一方、内周面50gと筒状外周面43hとの間において、第二フィン53及び54よりも軸線O方向の上流側の上流側空間A1の圧力は、作動流体がインペラ流路45に流入して圧縮される前の圧力である。つまり、第二フィン53及び54よりも軸線O方向の上流側の上流側空間A1は、第一フィン52に対して軸線O方向の下流側の下流側空間A3よりも圧力が低い。すると、第一フィン52と、第二フィン53及び54とによって仕切られた空間である開口空間A2の圧力は、上流側空間A1よりも高く、下流側空間A3よりも低くなる。なお、開口空間A2は、傾斜孔55の開口部57が形成されている位置に対応する空間である。開口空間A2は、第一フィン52に対して軸線O方向の上流側の空間であり、第二フィン53及び54に対して軸線O方向の下流側の空間である。
【0057】
導入口66iは、下流側空間A3に臨んで形成されている。また、開口部57は、開口空間A2に臨んで形成されている。これにより、導入口66iの圧力は、開口部57の圧力よりも高くなる。このようにして生じる導入口66iと開口部57との間の差圧により、カバー外周面43gと対向面22fとの隙間に流入した作動流体は、複数の導入流路66を介して周方向流路67に流入する。周方向流路67に流入した作動流体は複数の傾斜孔55に流れ込む。このように、連通流路部64から複数の傾斜孔55を経た作動流体は、開口部57から、開口空間A2に噴出する。複数の傾斜孔55を経て開口部57から噴出された作動流体は、回転軸13の回転方向と反対向きの流れを生じさせる。その結果、第一フィン52の先端と筒状外周面43hとの間や、第二フィン53及び54の先端と筒状外周面43hとの間でインペラ14の回転に連れ回されて回転軸13の回転方向に流れる旋回流が打ち消される。これにより、旋回流の発生が抑えられ、回転軸13の励振が抑えられる。
【0058】
さらに、導入口66iは、カバー43の外周端43eよりも径方向の内側で、カバー外周面43gに対向する位置で開口している。そのため、導入口66iを、排気流路19のようにインペラ14の径方向の外側に設ける必要がない。したがって、連通流路部64を形成するためスペースが少なくて済み、ギアード遠心圧縮機1の小型化を図ることが可能となる。
【0059】
また、連通流路部64を、シールホルダ60に形成することで、連通流路部64を形成するための加工をハウジング本体21に施す必要がない。また、ハウジング本体21に対してシール部材50とシールホルダ60とを取り付ければ、インペラ14の回転にともなって生じる旋回流を低減しつつ、必要なスペースを抑えることが可能なギアード遠心圧縮機1を実現することができる。
【0060】
また、連通流路部64は、導入流路66と、周方向流路67と、を有している。このような構成とすることで、インペラ14を経て径方向の外側に送られる作動流体の一部を、導入流路66から周方向流路67に合流させて複数の傾斜孔55に送り込むことができる。そのため、周方向に位置よらず、複数の傾斜孔55に同じ条件で作動流体を供給できる。
【0061】
また、第一フィン52及び開口部57に対して軸線O方向の上流側に、第二フィン53及び54を設けることにより、傾斜孔55の開口部57から噴出する作動流体に、インペラ14に対して軸線O方向の上流側から流れてきた圧縮前の流体が直接合流してしまうことが抑えられる。その結果、開口部57から噴出した作動流体による旋回流の抑制効果を確実に発揮することができる。
【0062】
また、シールユニット70は、上記傾斜孔55を有したシール部材50と、連通流路部64を有したシールホルダ60とを備えている。このようなシールユニット70を、ギアード遠心圧縮機1のハウジング本体21に取り付けることで、インペラ14の回転にともなって生じる旋回流を低減しつつ、必要なスペースを抑えることが可能なギアード遠心圧縮機1を実現することができる。したがって、既設のギアード遠心圧縮機1に対して、シールユニット70を追設することで、旋回流の低減効果を高めることもできる。
【0063】
(実施形態の変形例)
なお、連通流路部64は、上記実施形態のような構造に限定されるものではない。例えば、
図5に示すように、シールホルダ60Bは、連通流路部64Bを備える。連通流路部64Bは、後述するシール部材50の傾斜孔55に連通するよう形成されている。連通流路部64Bは、導入流路66Bと、周方向流路67Bと、を備えている。
【0064】
導入流路66Bは、軸線O回りの周方向に間隔をあけた複数個所に形成されている。導入流路66Bは、軸方向流路部661と、径方向流路部662と、を有している。軸方向流路部661は、ホルダ対向面60hに形成された導入口66Biから軸線O方向の上流側に延びている。径方向流路部662は、軸方向流路部661の軸線O方向の上流側の端部から径方向の内側に連続して伸びている。導入流路66Bにおける圧力損失を抑えるため、軸方向流路部661と径方向流路部662とは、流路断面積を等しくすることが好ましい。
【0065】
周方向流路67Bは、シールホルダ60Bの内周面60kに周方向に連続して形成されている。周方向流路67Bは、内周面60kから径方向の外側に窪む溝状に形成されている。複数の導入流路66Bの径方向流路部662は、周方向流路67Bに連通している。
【0066】
シール部材50は、その外周部が、シールホルダ60Bの周方向流路67Bに嵌め込まれている。シール部材50の外周面50fは、周方向流路67Bの底面671との間に、間隔をあけて設けられている。これにより、シール部材50の外周面50fと、底面671との間に、周方向に連続する周方向流路67Bが形成されている。
【0067】
このようなシールホルダ60Bでは、各連通流路部64Bの導入口66Biから軸方向流路部661に流入した作動流体は、径方向流路部662を経て、周方向流路67Bで合流する。周方向流路67Bに流入した作動流体は、シール部材50に形成された複数の傾斜孔55を通り、回転軸13の回転方向と反対向きに噴出する。これにより、シール部材50とカバー43のカバー外周面43gとの間の作動流体が、インペラ14の回転に連れ回されて旋回し、旋回流が生じるのが抑えられる。
【0068】
以上、本発明の実施形態及び変形例について図面を参照して詳述したが、実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0069】
例えば、上述の実施形態では、ギアード遠心圧縮機1の態様として、いわゆる1軸2段の構成を例に説明を行った。しかしながら、ギアード遠心圧縮機1の態様はこれに限定されず、設計や仕様に応じて2軸4段や、それ以上の軸数、段数を備えていてもよい。いずれの構成であっても、各段の遠心圧縮部30では、上記の実施形態における記載と同等の作用効果を得ることができる。
【0070】
また、本発明は、ギアード遠心圧縮機1に限らず、外部の駆動源によって回転軸13が直接回転駆動される方式の1軸多段の遠心圧縮機等に適用することもできる。その場合、上記傾斜孔55を有したシール部材50や連通流路部64、64Bを有したシールホルダ60、60Bは、作動流体の流れ方向において最も下流側で、旋回流による励振力が最も大きくなる最終段のインペラに備えるのが好ましい。
【符号の説明】
【0071】
1 ギアード遠心圧縮機(遠心圧縮機)
11 増速伝達部
12 ラジアル軸受
13 回転軸
13a 第一端部
13b 第二端部
14 インペラ
14A 第一段インペラ
14B 第二段インペラ
15 ピニオンギア
16 大径ギア
17 スラスト軸受
18 吸気流路
19 排気流路
20 ハウジング
21 ハウジング本体
21h 軸挿通孔
22f 対向面
23 シールリング
24 シール取付部
24a 筒状湾曲面
24b 取付端面
24h 雌ネジ孔
30、30A、30B 遠心圧縮部
41 ディスク
41a 第一面
41b 第二面
42 ブレード
43 カバー
43e 外周端
43f 凸状面
43g カバー外周面
43h 筒状外周面
43s カバー前端面
45 インペラ流路
45i 流入口
45o 流出口
50 シール部材
50f 外周面
50g 内周面
52 第一フィン(フィン)
53、54 第二フィン
55 傾斜孔
57 開口部
60、60B シールホルダ
60f ホルダ外周面
60g 先端面
60h ホルダ対向面
60i シール保持面
60j 前端対向面
60k 内周面
61 シール装着溝
62 ボルト挿通孔
62a 収容凹部
63 ボルト
63a 頭部
64、64B 連通流路部
66、66B 導入流路
66i、66Bi 導入口
67、67B 周方向流路
67o 導出口
70 シールユニット
661 軸方向流路部
662 径方向流路部
671 底面
A1 上流側空間
A2 開口空間
A3 下流側空間
O 軸線
θ 傾斜角