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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】フルオロポリマーハイブリッド複合体
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/12 20060101AFI20220531BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20220531BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20220531BHJP
   C08L 85/00 20060101ALI20220531BHJP
   C08F 214/18 20060101ALI20220531BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220531BHJP
   H01M 50/426 20210101ALI20220531BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220531BHJP
【FI】
C08L27/12
C08L71/02
C08L83/04
C08L85/00
C08F214/18
C08J5/18 CEW
H01M50/426
H01M10/052
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018525442
(86)(22)【出願日】2016-11-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2016077822
(87)【国際公開番号】W WO2017085101
(87)【国際公開日】2017-05-26
【審査請求日】2019-10-16
(31)【優先権主張番号】15306821.8
(32)【優先日】2015-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591001248
【氏名又は名称】ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】アブスレメ, ジュリオ ア.
(72)【発明者】
【氏名】ラヴァセッリ, マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】ハモン, クリスティーヌ
(72)【発明者】
【氏名】フラッチェ, アルベールト
(72)【発明者】
【氏名】ベサーナ, ジャンバッティスタ
(72)【発明者】
【氏名】カミーノ, ジョヴァンニ
(72)【発明者】
【氏名】ブルソー, セゴレーヌ
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/067816(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/095907(WO,A1)
【文献】特表2015-520781(JP,A)
【文献】特表2014-517129(JP,A)
【文献】国際公開第2015/007706(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0186086(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08J 5/12-5/22
C08F 6/00-246/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 式(I):
4-mM(OY)(I)
(式中、Mは、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、XおよびYは、互いにおよび出現するごとに等しいかまたは異なり、1個以上の官能基を任意選択で含む、炭化水素基であり、mは、1~4に含まれる整数である)
の少なくとも1種の金属化合物[化合物(M)]の少なくとも部分的な加水分解および/または重縮合によって得られ得る少なくとも1種のプレゲル金属化合物[化合物(GM)]を含む、水性媒体、
- 少なくとも1個のヒドロキシル基を含む少なくとも1種の官能性フルオロポリマー[ポリマー(FF)]、ならびに
- 式(II):
HO-(CHCHRO)-R(II)
(式中、Rは、水素原子またはC~Cアルキル基であり、Rは、水素原子または-CHアルキル基であり、nは、2000~40000に含まれる整数である)
の少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)(PAO)
を含み、
前記ポリマー(FF)が、
(a’)少なくとも60モル%のフッ化ビニリデン(VDF)、
(b’)任意選択で、0.1モル%~15モル%の、フッ化ビニル、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)およびそれらの混合物からなる群から選択されるフッ素化モノマー;ならびに
(c’)0.01モル%~20モル%の式(III):
(式中、R、RおよびRのそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、独立して水素原子またはC~C炭化水素基であり、ROHは、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC~C炭化水素基である)
の少なくとも1種の(メタ)アクリルモノマー
に由来する繰り返し単位を含む、組成物[組成物(C)]。
【請求項2】
前記ポリマー(FF)が、式(IV)のビニルエーテルモノマー:
(式中、R、RおよびRのそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、独立して水素原子またはC~C炭化水素基であり、ROHは、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC~C炭化水素基である)
を含む、請求項1に記載の組成物(C)。
【請求項3】
前記化合物(M)が、式(I-A):
4-m’M(ORm’(I-A)
(式中、Mは、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、RおよびRは、互いにおよび出現するごとに等しいかまたは異なり、1個以上の官能基を任意選択で含む、C1~18炭化水素基からなる群から選択され、m’は、1~4に含まれる整数である)
のものである、請求項1または2に記載の組成物(C)。
【請求項4】
前記化合物(GM)が、式-[O-MX4-m*(OY)m*-2]O-(式中、Mは、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、XおよびYは、互いにおよび出現するごとに等しいかまたは異なり、1個以上の官能基を任意選択で含む、炭化水素基であり、mは、2~4に含まれる整数である)
の1つ以上のドメインを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項5】
フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体[複合体(H)]を製造するための方法であって、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物(C)を融解相中で加工する工程を含む、方法。
【請求項6】
前記組成物(C)が、押出機を使用して、融解相中で加工される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の方法によって得られ得るフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体[複合体(H)]であって、少なくとも1種のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位および式-[O-M(OZ)(OZ)]O-(式中、Mは、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、ZおよびZは、互いに等しいかまたは異なり、1個以上の官能基を任意選択で含む、炭化水素基である)の1つ以上のドメインを含む少なくとも1種の官能性モノマー[モノマー(OM)]に由来する繰り返し単位を含む、複合体(H)。
【請求項8】
コンパウンディングされたフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体[複合体(H’)]であって、
- 請求項7に記載の少なくとも1種の複合体(H)、
- 少なくとも1つの金属塩[塩(M)]、および
- 任意選択で、少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]
を含む、複合体(H’)。
【請求項9】
請求項7に記載の少なくとも1種の複合体(H)または請求項8に記載の少なくとも1種の複合体(H’)を含む、フルオロポリマーフィルム。
【請求項10】
請求項9に記載のフルオロポリマーフィルムを製造するための方法であって、請求項7に記載の少なくとも1種の複合体(H)または請求項8に記載の少なくとも1種の複合体(H’)を融解相中で加工する工程を含む、方法。
【請求項11】
請求項7に記載の少なくとも1種の複合体(H)または請求項8に記載の少なくとも1種の複合体(H’)を、押出機を使用して、融解相中で加工する工程を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項9に記載の少なくとも1種のフルオロポリマーフィルムを含む、電気化学デバイスまたは光電気化学デバイス。
【請求項13】
電気化学デバイスのためのセパレータとしての、請求項9に記載のフルオロポリマーフィルムの使用。
【請求項14】
請求項9に記載のフルオロポリマーフィルムを含む、電気化学デバイスのためのセパレータ。
【請求項15】
電気化学デバイスが二次電池である、請求項14に記載のセパレータ。
【請求項16】
電気化学デバイスがリチウムイオン電池である、請求項14に記載のセパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年11月17日出願の欧州特許出願第15306821.8号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体、前記フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体を含むフィルム、および様々な用途、特に電気化学および光電気化学用途における前記フィルムの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム金属ポリマー(LMP)電池は、当技術分野で公知であり、ここでは、アノードは、Li金属箔であり、セパレータは、電解質塩を組み込んで、ポリ(アルキレンオキシド)とフルオロポリマー、好ましくはフッ化ビニリデンポリマーとの固体電解質ポリマーブレンドである。
【0004】
これらのセパレータは、典型的にはフィルム押出しによって得られる。残念なことに、この技術の欠点の一つは、そのように得られたセパレータの80℃未満の温度での低いイオン電導率である。
【0005】
したがって、この分野における課題は、押出し技術をより魅力的にするためにこれらのセパレータのイオン伝導率を高めることである一方で、電極の良好な分離を保証する安全なセパレータを提供することである。
【発明の概要】
【0006】
今や、フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体が、本発明の組成物を融解相中で加工することによって首尾よく得られ得、したがって、汚染性有機溶媒の使用を回避することが見出された。
【0007】
また、本発明の方法によって得られ得るフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体が、有利には自由流動性であり、したがって、容易に取り扱い、および融解相中で加工され得る一定のペレットの形態であることが見出された。
【0008】
さらに、1種以上の電解質塩が、本発明のフルオロポリマーハイブリット有機/無機複合体内に容易に組み込まれ、および/または分散され、それにより、均一な特性を有する電気化学デバイスと光電気化学デバイスとの両方のためのセパレータを提供し得ることが見出された。
【0009】
特に、本発明の方法によって得られ得るフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体が、卓越したイオン伝導率特性を示す電気化学デバイスと光電気化学デバイスとの両方のためのセパレータの製造を首尾よく可能にすることが見出された。
【0010】
第1の例において、本発明は、
- 式(I):
4-mM(OY) (I)
(式中、Mは、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、XおよびYは、互いにおよび出現するごとに等しいかまたは異なり、1個以上の官能基を任意選択で含む炭化水素基から選択され、mは、1から4に含まれる整数である)の少なくとも1種の金属化合物[化合物(M)]の少なくとも部分的加水分解および/または重縮合によって得られ得る少なくとも1種のプレゲル金属化合物[化合物(GM)]を含む、水性媒体、
- 少なくとも1個のヒドロキシル基を含む少なくとも1種の官能性フルオロポリマー[ポリマー(FF)]、ならびに
- 式(II):
HO-(CHCHRO)-R(II)
(式中、Rは、水素原子またはC-Cアルキル基であり、Rは、水素原子または-CHアルキル基であり、nは、2000~40000、好ましくは4000~35000、より好ましくは11500~30000に含まれる整数である)
の少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)(PAO)
を含む、組成物[組成物(C)]に関する。
【0011】
組成物(C)は、フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体[複合体(H)]を製造するための方法における使用に特に適する。
【0012】
フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体[複合体(H)]を製造するための方法は、典型的には、
- 式(I):
4-mM(OY)(I)
(式中、Mは、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、XおよびYは、互いにおよび出現するごとに等しいかまたは異なり、1個以上の官能基を任意選択で含む、炭化水素基から選択され、mは、1~4に含まれる整数である)
の少なくとも1種の金属化合物[化合物(M)]の少なくとも部分的加水分解および/または重縮合によって得られ得る少なくとも1種のプレゲル金属化合物を含む、水性媒体、
- 少なくとも1個のヒドロキシル基を含む少なくとも1種の官能性フルオロポリマー[ポリマー(FF)]、ならびに
- 式(II):
HO-(CHCHRO)-R(I)
(式中、Rは、水素原子またはC-Cアルキル基であり、Rは、水素原子または-CHアルキル基であり、nは、2000~40000、好ましくは4000~35000、より好ましくは11500~30000に含まれる整数である)
の少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)(PAO)
を含む、組成物[組成物(C)]を融解相中で加工する工程を含む。
【0013】
本発明の複合体(H)を製造するための方法の下で、組成物(C)は、典型的には押出機、好ましくは二軸押出機を使用して、融解相中で加工される。
【0014】
第2の例において、本発明は、本発明の方法によって得られ得るフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体[複合体(H)]に関する。
【0015】
複合体(H)は、典型的にはペレットの形態である。
【0016】
複合体(H)は、フルオロポリマーフィルムを製造するための方法における使用に特に適する。
【0017】
複合体(H)は、少なくとも1種の金属塩[塩(M)]、および任意選択で、少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]とさらにコンパウンディングされ、それにより、コンパウンディングされたフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体[複合体(H’)]を与えてもよく、前記複合体(H’)は、
- 少なくとも1種のフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体[複合体(H)]、
- 少なくとも1種の金属塩[塩(M)]、および
- 任意選択で、少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]
を含む。
【0018】
複合体(H’)は、典型的にはペレットの形態である。
【0019】
複合体(H’)は、フルオロポリマーフィルムを製造するための方法における使用に特に適する。
【0020】
したがって、第3の例において、本発明は、フルオロポリマーフィルムを製造するための方法であって、少なくとも1種の複合体(H)または少なくとも1種の複合体(H’)を融解相中で加工する工程を含む方法に関する。
【0021】
本発明によるフルオロポリマーフィルムを製造するための方法は、有利には、少なくとも1種の複合体(H)または少なくとも1種の複合体(H’)を、典型的には押出機、好ましくは単軸押出機を使用して、融解相中で加工する工程を含む。
【0022】
フルオロポリマーフィルムは、典型的には、キャストフィルム押出しまたはブローンフィルム押出しなどのフィルム押出し技術を使用して、少なくとも1種の複合体(H)または少なくとも1種の複合体(H’)を融解相中で加工することによって製造される。
【0023】
塩(M)は、典型的には、粉末形態で、またはそれを含む水性溶液としてのいずれかで提供される。
【0024】
塩(M)の性質は、特に限定されない。
【0025】
塩(M)は、典型的には、MeI、Me(PF、Me(BF、Me(ClO、Me(ビス(オキサラト)ボレート)(「Me(BOB)」)、MeCFSO、Me[N(CFSO、Me[N(CSO、Me[N(CFSO)(RSO)](ここで、Rは、C、CまたはCFOCFCFである)、Me(AsF、Me[C(CFSO、Meからなる群から選択され、ここで、Meは、金属、好ましくは遷移金属、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、より好ましくはMeは、Li、Na、K、またはCsであり、さらにより好ましくはMeは、Liであり、nは、前記金属の原子価であり、典型的にはnは、1または2である。
【0026】
塩(M)は、好ましくはMeCFSO、Me[N(CFSO、Me[N(CSO、Me[N(CFSO)(RSO)](ここで、Rは、C、CまたはCFOCFCFである)、Me(AsF、Me[C(CFSOおよびMeからなる群から選択され、ここで、Meは、金属、好ましくは遷移金属、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、より好ましくはMeは、Li、Na、KまたはCsであり、さらにより好ましくはMeは、Liであり、nは、前記金属の原子価であり、典型的にはnは、1または2である。
【0027】
第4の例において、本発明は、本発明の方法によって得られ得るフルオロポリマーフィルムに関する。
【0028】
本発明のフルオロポリマーフィルムは、典型的には少なくとも1種のフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体[複合体(H)]または少なくとも1種のコンパンウンディングされたフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体[複合体(H’)]を含む。
【0029】
本発明のフルオロポリマーフィルムは、典型的には高密度フィルムである。
【0030】
本発明の目的のために、用語「高密度の(dense)」は、細孔を含まないフィルムを意味することが意図される。
【0031】
本発明のフルオロポリマーフィルムは、典型的には2μm~30μm、好ましくは5μm~100μm、より好ましくは10μm~40μmに含まれる厚さを有する。
【0032】
第5の例において、本発明は、少なくとも1種のフルオロポリマーフィルムを含む電気化学デバイスまたは光電気化学デバイスに関する。
【0033】
本発明のフルオロポリマーフィルムは、電気化学デバイスまたは光電気化学デバイスにおける使用に適する。
【0034】
適当な電気化学デバイスの非限定的な例には、二次電池、好ましくはリチウムイオン電池が含まれる。
【0035】
本発明のフルオロポリマーフィルムは、有利には、電気化学デバイス、好ましくは二次電池のための構成要素の製造のために使用されてもよい。
【0036】
本発明のフルオロポリマーフィルムは、電気化学デバイス、好ましくは二次電池、より好ましくはリチウムイオン電池のためのセパレータとしての使用に特に適する。
【0037】
本発明の目的のために、用語「フルオロポリマー[ポリマー(F)]」は、少なくとも1種のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含むフルオロポリマーを意味することが意図される。
【0038】
ポリマー(F)は、少なくとも1種の水素化モノマーに由来する繰り返し単位をさらに含んでいてもよい。
【0039】
ポリマー(FF)は、典型的には、少なくとも1個のヒドロキシル基を含む少なくとも1種の官能性モノマー[モノマー(OH)]に由来する繰り返し単位をさらに含む、ポリマー(F)である。
【0040】
ポリマー(FF)は、典型的には、少なくとも1種のフッ素化モノマー、および少なくとも1個のヒドロキシル基を含む少なくとも1種の官能性モノマー[モノマー(OH)]に由来する繰り返し単位を含む。
【0041】
用語「少なくとも1種のフッ素化モノマー」は、フルオロポリマーが1種または2種以上のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含んでいてもよいことを意味すると理解される。本文の残りにおいて、表現「フッ素化モノマー」は、本発明の目的のために、複数形および単数形の両方で理解される、すなわち、それらが、上で定義されたようなとおりの1種または2種以上のフッ素化モノマーの両方を意味すると理解される。
【0042】
用語「少なくとも1個の水素化モノマー」は、フルオロポリマーが1種または2種以上の水素化モノマーに由来する繰り返し単位を含んでもよいことを意味すると理解される。本文の残りにおいて、表現「水素化モノマー」は、本発明の目的のために、複数形および単数形の両方で理解される、すなわち、それらが、上で定義されたとおりの1種または2種以上の水素化モノマーの両方を意味すると理解される。
【0043】
用語「少なくとも1種のモノマー(OH)」は、フルオロポリマーが、1種または2種以上のモノマー(OH)に由来する繰り返し単位を含んでもよいことを意味すると理解される。本文の残りにおいて、表現「モノマー(OH)」は、本発明の目的のために、複数形および単数形の両方で、すなわち、それらが、上で定義されたとおりの1種または2種以上のモノマー(OH)の両方を意味すると理解される。
【0044】
ポリマー(FF)のモノマー(OH)は、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むフッ素化モノマーおよび少なくとも1個のヒドロキシル基を含む水素化モノマーからなる群から選択されてよい。
【0045】
用語「フッ素化モノマー」によって、少なくとも1個のフッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーを意味することが本明細書で意図される。
【0046】
用語「水素化モノマー」によって、少なくとも1つの水素原子を含み、フッ素原子を含まないエチレン性不飽和モノマーを意味することが本明細書で意図される。
【0047】
フッ素化モノマーが少なくとも1個の水素原子を含む場合、それは、水素含有フッ素化モノマーと称される。
【0048】
フッ素化モノマーが水素原子を含まない場合、それは、パー(ハロ)フルオロモノマーと称される。
【0049】
フッ素化モノマーは、1個以上の他のハロゲン原子(Cl、Br、I)をさらに含んでもよい。
【0050】
適当なフッ素化モノマーの非限定的な例には、特に、以下:
- C~Cパーフルオロオレフィン、例えば、テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレン;
- C~C水素化フルオロオレフィン、例えば、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、1,2-ジフルオロエチレンおよびトリフルオロエチレン;
- 式CH=CH-Rf0(式中、Rf0は、C~Cパーフルオロアルキル基である)のパーフルオロアルキルエチレン;
- クロロ-および/またはブロモ-および/またはヨード-C~Cフルオロオレフィン、例えば、クロロトリフルオロエチレン;
- 式CF=CFORf1(式中、Rf1は、C~Cフルオロ-またはパーフルオロアルキル基、例えば、CF、C、Cである)の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル;
- CF=CFOXの(パー)フルオロ-オキシアルキルビニルエーテル(式中、Xは、C~C12アルキル基、もしくはC~C12オキシアルキル基、または1個以上のエーテル基を含むC~C12(パー)フルオロオキシアルキル基、例えば、パーフルオロ-2-プロポキシ-プロピル基である);
- 式CF=CFOCFORf2(式中、Rf2は、C~Cのフルオロ-またはパーフルオロアルキル基、例えば、CF、C、Cまたは1個以上のエーテル基を含むC~C(パー)フルオロオキシアルキル基、例えば、-C-O-CFである)の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル;
- 式CF=CFOY(式中、Yは、C~C12アルキルもしくは(パー)フルオロアルキル基、またはC~C12オキシアルキル基もしくは1個以上のエーテル基を含むC~C12(パー)フルオロオキシアルキル基であり、Yは、カルボン酸基またはスルホン酸基を、その酸、および酸ハロゲン化物または塩形態で含む)の官能性(パー)フルオロ-オキシアルキルビニルエーテル;ならびに
- フルオロジオキソール、好ましくはパーフルオロジオキソール
が含まれる。
【0051】
フッ素化モノマーが、水素含有フッ素化モノマー、例えば、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニルなどである場合、フルオロポリマーは、前記少なくとも1種の水素含有フッ素化モノマーおよび任意選択で、少なくとも1種の他のモノマーに由来する繰り返し単位を含む。
【0052】
フッ素化モノマーが、パー(ハロ)フルオロモノマー、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、(パー)フルオロアルキルビニルエーテル、などである場合、フルオロポリマーは、少なくとも1種のパー(ハロ)フルオロモノマーおよび少なくとも1種の水素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む。
【0053】
適当な水素化モノマーの非限定的な例には、特に、エチレン、プロピレン、ビニルモノマー、例えば、酢酸ビニル、およびスチレンモノマー、例えば、スチレンおよびp-メチルスチレンが含まれる。
【0054】
ポリマー(F)は、少なくとも1種のフッ素化モノマーに由来する、好ましくは25モル%超、好ましくは30モル%超、より好ましくは40モル%超の繰り返し単位を含む。
【0055】
ポリマー(F)は、典型的には、少なくとも1種の水素化モノマーに由来する、1モル%超、好ましくは5モル%超、より好ましくは10モル%超の繰り返し単位を含む。
【0056】
ポリマー(F)は、好ましくは、フッ化ビニリデン(VDF)、テトラフルオロエチレン(TFE)およびクロロトリフルオロエチレン(CTFE)からなる群から選択される少なくとも1種のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む。
【0057】
ポリマー(F)は、より好ましくは、フッ化ビニリデン(VDF)、および任意選択で、VDFとは異なる少なくとも1種のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含むポリマー(F-1)からなる群から選択される。
【0058】
ポリマー(F-1)は、好ましくは、
(a)少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも75モル%、より好ましくは少なくとも85モル%のフッ化ビニリデン(VDF)、ならびに
(b)任意選択で、0.1モル%~15モル%、好ましくは0.1モル%~12モル%、より好ましくは0.1モル%~10モル%の、フッ化ビニル、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)およびそれらの混合物から選択されるフッ素化モノマー
に由来する繰り返し単位を含む。
【0059】
ポリマー(F)は、非晶性または半結晶性であってもよい。
【0060】
用語「非晶性」は、本明細書で、ASTM D3418-08に従って測定して、5J/g未満、好ましくは3J/g未満、より好ましくは2J/g未満の融解熱を有するポリマー(F)を意味することである。
【0061】
用語「半結晶性」は、ASTM D3418-08に従って測定して、10~90J/g、好ましくは30~60J/g、より好ましくは35~55J/gの融解熱を有するポリマー(F)を意味することが本明細書で意図される。
【0062】
ポリマー(F)は、好ましくは半結晶性である。
【0063】
ポリマー(FF)は、好ましくは、上で定義されたとおりの少なくとも1種のモノマー(OH)に由来する、少なくとも0.01モル%、より好ましくは少なくとも0.05モル%、さらにより好ましくは少なくとも0.1モル%の繰り返し単位を含む。
【0064】
ポリマー(FF)は、好ましくは、上で定義されたとおりの少なくとも1種のモノマー(OH)に由来する、多くても20モル%、より好ましくは多くても15モル%、さらにより好ましくは多くても10モル%、最も好ましくは多くても3モル%の繰り返し単位を含む。
【0065】
ポリマー(FF)中のモノマー(OH)繰り返し単位の平均モル百分率の決定は、任意の適当な方法によって行うことができる。特に酸-塩基滴定法またはNMR法を挙げることができる。
【0066】
モノマー(OH)は、典型的には、少なくとも1個のヒドロキシル基を含む水素化モノマーからなる群から選択される。
【0067】
モノマー(OH)は、好ましくは、式(III)の(メタ)アクリルモノマーおよび式(IV):
(式中、R、RおよびRのそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、独立して水素原子またはC~C炭化水素基であり、ROHは、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC~C炭化水素基である)
のビニルエーテルモノマーからなる群から選択される。
【0068】
モノマー(OH)は、好ましくは、上で定義されたとおりの式(III)のものである。
【0069】
モノマー(OH)は、より好ましくは、式(III’):
(式中、R’、R’およびR’は、水素原子であり、R’OHは、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC~C炭化水素基である)
のものである。
【0070】
モノマー(OH)の非限定的な例には、特に、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、およびヒドロキシエチルヘキシル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0071】
モノマー(OH)は、最も好ましくは、
- 式:
のヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、
- 式:
のいずれかの2-ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、
- およびそれらの混合物
からなる群から選択される。
【0072】
ポリマー(FF)は、より好ましくは、
(a’)少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも75モル%、より好ましくは少なくとも85モル%のフッ化ビニリデン(VDF)、
(b’)任意選択で、0.1モル%~15モル%、好ましくは0.1モル%~12モル%、より好ましくは0.1モル%~10モル%の、フッ化ビニル、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)およびそれらの混合物からなる群から選択されるフッ素化モノマー、ならびに
(c’)0.01モル%~20モル%、好ましくは0.05モル%~15モル%、より好ましくは0.1モル%~10モル%の上で定義されたとおりの式(III)の少なくとも1種の(メタ)アクリルモノマー
に由来する繰り返し単位を含む。
【0073】
式(I)の化合物(M)は、基Xおよび基Yのいずれか、好ましくは少なくとも1個の基X上に、1個以上の官能基を含んでもよい。
【0074】
上で定義されたとおりの式(I)の化合物(M)が少なくとも1個の官能基を含む場合、それは官能性金属化合物[官能性化合物(M)]と称され;基Xおよび基Yのいずれも官能基を含まない場合、上で定義した式(I)の化合物(M)は非官能性金属化合物[非官能性化合物(M)]と称される。
【0075】
1種以上の官能性化合物(M)と1種以上の非官能性化合物(M)との混合物が、本発明の方法で使用されてもよい。そうでなければ、官能性化合物(M)または非官能性化合物(M)は、別個に使用されてもよい。
【0076】
式(I)の化合物(M)は、好ましくは式(I-A):
4-m’M(ORm’(I-A)
(式中、Mは、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、RおよびRは、互いにおよび出現するごとに等しいかまたは異なり、1個以上の官能基を任意選択で含む、C1-18炭化水素基からなる群から選択され、m’は、1~4に含まれる整数である)
のものである。
【0077】
官能基の非限定的な例には、エポキシ基、カルボン酸基(酸、エステル、アミド、無水物、塩またはハロゲン化物形態)、スルホン酸基(酸、エステル、塩またはハロゲン化物形態)、ヒドロキシル基、リン酸基(酸、エステル、塩またはハロゲン化物形態)、チオール基、アミン基、第4級アンモニウム基、エチレン性不飽和基(ビニル基など)、シアノ基、尿素基、有機シラン基、芳香族基が含まれる。
【0078】
式(I)の化合物(M)が官能性化合物(M)である場合、それは、好ましくは式(I-B):
4-m’’M(ORm’’(I-B)
(式中、Mは、Si、TiおよびZr,からなる群から選択される金属であり、Rは、互いにおよび出現するごとに等しいかまたは異なり、1個以上の官能基を含むC~C12炭化水素基であり、Rは、互いにおよび出現するごとに等しいかまたは異なり、C~C直鎖または分岐アルキル基であり、好ましくはRは、メチルまたはエチル基であり、m’’は、2~3に含まれる整数である)
のものである。
【0079】
官能性化合物(M)の例は、特にビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、式CH=CHSi(OCOCHのビニルトリスメトキシエトキシシラン、式:
の2-(3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン)、式:
のグリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、式:
のグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、式:
のメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、式:
のアミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、式:
NCNHCSi(OCH
のアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、
3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-クロロイソブチルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)メチルジクロロシラン、(3-アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3-(n-アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリクロロシラン、カルボキシエチルシラントリオール、およびそのナトリウム塩、式:
のトリエトキシシリルプロピルマレアミド酸、
式:HOSO-CHCHCH-Si(OH)の3-(トリヒドロキシシリル)-1-プロパン-スルホン酸、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレン-ジアミン三酢酸、およびそのナトリウム塩、式:
の3-(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、
式:HC-C(O)NH-CHCHCH-Si(OCHのアセトアミドプロピルトリメトキシシラン、式Ti(A)(OR)(式中、Aは、アミン置換アルコキシ基、例えばOCHCHNHであり、Rは、アルキル基であり、xおよびyは、x+y=4であるような整数である)のアルカノールアミンチタネートである。
【0080】
非官能性化合物(M)の例は、特にトリメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、テトラ-イソブチルチタネート、テトラ-tert-ブチルチタネート、テトラ-n-ペンチルチタネート、テトラ-n-ヘキシルチタネート、テトライソオクチルチタネート、テトラ-n-ラウリルチタネート、テトラエチルジルコネート、テトラ-n-プロピルジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、テトラ-n-ブチルジルコネート、テトラ-sec-ブチルジルコネート、テトラ-tert-ブチルジルコネート、テトラ-n-ペンチルジルコネート、テトラ-tert-ペンチルジルコネート、テトラ-tert-ヘキシルジルコネート、テトラ-n-ヘプチルジルコネート、テトラ-n-オクチルジルコネート、テトラ-n-ステアリルジルコネートである。
【0081】
本発明の複合体(H)を製造するための方法の下で、式(I)の化合物(M)は、水性媒体の存在下で部分的に加水分解および/または重縮合される。
【0082】
用語「水性媒体」によって、大気圧下20℃で液体状態にある水を含む液体媒体を意味することが本明細書で意図される。
【0083】
式(I)の化合物(M)と水性媒体との重量比は、典型的には50:1~1:50、好ましくは20:1~1:20、より好ましくは10:1~1:10に含まれる。
【0084】
水性媒体は、少なくとも1種の酸触媒をさらに含んでもよい。
【0085】
水性媒体は、典型的には0.5重量%~10重量%、好ましくは1重量%~5重量%の少なくとも1種の酸触媒をさらに含む。
【0086】
酸触媒の選択は、特に限定されない。
【0087】
酸触媒は、典型的には、有機酸および無機酸からなる群から選択される。酸触媒は、好ましくは有機酸からなる群から選択される。
【0088】
非常に良好な結果は、クエン酸で得られた。
【0089】
水性媒体はまた、1種以上の有機溶媒をさらに含んでもよい。
【0090】
適当な有機溶媒の非限定的な例には、特に、以下:
- 脂肪族、脂環式または芳香族エーテルオキシド類、より特には、ジエチルオキシド、ジプロピルオキシド、ジイソプロピルオキシド、ジブチルオキシド、メチルtertイソブチルエーテル、ジペンチルオキシド、ジイソペンチルオキシド、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ベンジルオキシド、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、
- グリコールエーテル類、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル;
- グリコールエーテルエステル類、例えば、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート;
- アルコール類、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、ジアセトンアルコール;
- ケトン類、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、および
- 直鎖または環状エステル類、例えば、イソプロピルアセテート、n-ブチルアセテート、メチルアセトアセテート、ジメチルフタレート、γ-ブチロラクトン
が含まれる。
【0091】
水性媒体が1種以上のさらなる有機溶媒を含む実施形態の場合、水性媒体は、好ましくは、化学物質安全性分類によって発がん性、変異原性、生殖毒性として適格とされる溶媒(CMR溶媒)を含まず;より具体的には、水性媒体は、有利にはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)およびN,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)を含まない。
【0092】
水性媒体は、好ましくは少なくとも1種の酸触媒および1種以上の有機溶媒(S)をさらに含む。
【0093】
水性媒体は、より好ましくは少なくとも1種の酸触媒および1種以上のアルコールをさらに含む。
【0094】
本発明の複合体(H)を製造するための方法の下で、式(I)の化合物(M)の加水分解および/または重縮合は、通常は室温で、または100℃未満の温度での加熱時に行われる。温度は、水性媒体の沸点および/または安定性を考慮して選択される。20℃~90℃、好ましくは20℃~50℃に含まれる温度が、好ましい。
【0095】
本発明の複合体(H)を製造するための方法の下で、式(I)の化合物(M)の基Yは、水性媒体の存在下で部分的に加水分解または重縮合されて、その結果、プレゲル金属化合物[化合物(GM)]を生成すると理解される。
【0096】
これは、当業者によって認識されるとおりに、加水分解および/または重縮合反応によって低分子量の副生成物を通常生じさせ、これは、上で定義されたとおりの式(I)の化合物(M)の性質に応じて、特に水またはアルコールであり得る。
【0097】
したがって、本発明の複合体(H)を製造するための方法の下で、少なくとも1種の化合物(GM)を含む水性媒体は、典型的には1種以上のアルコールをさらに含む。
【0098】
化合物(GM)は、典型的には式-[O-MX4-m*(OY)m*-2]O-(式中、Mは、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、XおよびYは、互いにおよび出現するごとに等しいかまたは異なり、1個以上の官能基を任意選択で含む、炭化水素基であり、mは、2~4に含まれる整数である)の1つ以上のドメインを含む。
【0099】
本発明の複合体(H)を製造するための方法の下で、組成物(C)は、典型的には100℃~300℃、好ましくは150℃~250℃に含まれる温度にて融解相中で加工される。
【0100】
当業者は、ポリマー(FF)の融点に依存して、適切な温度を選択する。
【0101】
組成物(C)は、典型的には、前記少なくとも1種のポリマー(FF)および式(II)の少なくとも1種のPAOの全重量に基づいて、5重量%~95重量%、好ましくは20重量%~80重量%、より好ましくは30重量%~60重量%の少なくとも1種のポリマー(FF)を含む。
【0102】
組成物(C)は、ポリマー(FF)と異なる少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]、例えば、非官能性フルオロポリマー[非官能性フルオロポリマー(F)]をさらに含んでもよい。
【0103】
本発明の目的のために、用語「非官能性ポリマー(F)」は、少なくとも1種の官能性モノマー、例えば、少なくとも1個のヒドロキシル基を含む官能性モノマー[モノマー(OH)]に由来する繰り返し単位を含まないフルオロポリマーを意味することが意図される。
【0104】
非官能性ポリマー(F)の選択は、特に限定されないが、但し、それが化合物(GM)および/または式(II)のPAOと相互作用しないことを条件とする。
【0105】
本発明の複合体(H)を製造するための方法の下で、化合物(GM)の少なくとも一部は、ポリマー(FF)のヒドロキシル基の少なくとも一部および式(II)のPAOのヒドロキシル基の少なくとも一部と反応され、それにより、複合体(H)を与えると理解される。
【0106】
複合体(H)は、典型的には式-[O-M(OZ)(OZ)]O-(式中、Mは、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、ZおよびZは、互いに等しいかまたは異なり、1個以上の官能基を任意選択で含む、炭化水素基である)の1つ以上のドメインを含む。
【0107】
複合体(H)は、有利には式-[O-M(OZ)(OZ)]O-(式中、Mは、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、ZおよびZは、互いに等しいかまたは異なり、1個以上の官能基を任意選択で含む、炭化水素基である)の0.01重量%~60重量%、好ましくは0.1重量%~40重量%の1つ以上のドメインを含む。
【0108】
本発明の第1の実施形態によれば、複合体(H)は、式-[O-M(OZ)(OZ)]O-(式中、Mは、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、ZおよびZは、互いに等しいかまたは異なり、1個以上の官能基を任意選択で含む、炭化水素基であり、前記ZおよびZの少なくとも一方は、少なくとも1種のモノマー(OH)に由来する繰り返し単位を含む炭化水素基である)の1つ以上のドメインを含む。
【0109】
本発明の第2の実施形態によれば、複合体(H)は、式-[O-M(OZ)(OZ)]O-(式中、Mは、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、ZおよびZは、互いに等しいかまたは異なり、1個以上の官能基を任意選択で含む、炭化水素基であり、前記ZおよびZの少なくとも一方は、式-(CHCHRO)-(式中、Rは、水素原子またはC~Cアルキル基であり、nは、2000~40000、好ましくは4000~35000、より好ましくは11500~30000に含まれる整数である)の繰り返し単位を含む炭化水素基である)の1つ以上のドメインを含む。
【0110】
複合体(H)は、好ましくは、少なくとも1種のフッ素化モノマーおよび式-[O-M(OZ)(OZ)]O-(式中、Mは、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、ZおよびZは、互いに等しいかまたは異なり、1個以上の官能基を任意選択で含む、炭化水素基である)の1つ以上のドメインを含む少なくとも1種の官能性モノマー[モノマー(OM)]に由来する繰り返し単位を含む。
【0111】
用語「少なくとも1種のモノマー(OM)」は、複合体(H)が、1種または2種以上のモノマー(OM)に由来する繰り返し単位を含んでもよいことを意味すると理解される。本文の残りにおいて、表現「モノマー(OM)」は、本発明の目的のために、複数形および単数形の両方で、すなわち、それらが、上で定義されたとおりの1種または2種以上のモノマー(OM)の両方を意味すると理解される。
【0112】
モノマー(OH)が少なくとも1個のヒドロキシル基を含むフッ素化モノマーである場合、モノマー(OM)は、式-[O-M(OZ)(OZ)]O-(式中、Mは、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、ZおよびZは、互いに等しいかまたは異なり、1個以上の官能基を任意選択で含む、炭化水素基である)の1つ以上のドメインを含むフッ素化モノマーである。
【0113】
モノマー(OH)が、少なくとも1個のヒドロキシル基を含む水素化モノマーである場合、モノマー(OM)は、式-[O-M(OZ)(OZ)]O-(式中、Mは、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、ZおよびZは、互いに等しいかまたは異なり、1個以上の官能基を任意選択で含む、炭化水素基である)の1つ以上のドメインを含む水素化モノマーである。
【0114】
モノマー(OM)は、好ましくは、式(III-A)の(メタ)アクリルモノマーまたは式(IV-A)のビニルエーテルモノマー:
[式中、R、RおよびRのそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、独立して、水素原子またはC~C炭化水素基であり、ROMは、式-[O-M(OZ)(OZ)]O-(式中、Mは、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、ZおよびZは、互いに等しいかまたは異なり、1個以上の官能基を任意選択で含む、炭化水素基である)の1つ以上のドメインを含むC~C炭化水素基である]
からなる群から選択される。
【0115】
モノマー(OM)は、好ましくは式(III-A)のものである。
【0116】
モノマー(OM)は、より好ましくは式(III’-A):
[式中、R’、R’およびR’のそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、独立して、水素原子またはC~C炭化水素基であり、R’OMは、式-[O-M(OZ)(OZ)]O-(式中、Mは、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、ZおよびZは、互いに等しいかまたは異なり、1個以上の官能基を任意選択で含む、炭化水素基である)の1つ以上のドメインを含むC~C炭化水素基である]
のものである。
【0117】
複合体(H’)は、典型的には少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]をさらに含む。
【0118】
複合体(H’)が少なくとも1種のポリマー(F)をさらに含む場合、前記少なくとも1種のポリマー(F)は、好ましくは非官能性ポリマー(F)である。
【0119】
複合体(H’)は、典型的には、
- 30重量%~99重量%、好ましくは50重量%~95重量%、より好ましくは60重量%~90重量%の少なくとも1種の複合体(H)、
- 1重量%~70重量%、好ましくは5重量%~50重量%、より好ましくは10重量%~40重量%の少なくとも1種の塩(M)、および
- 任意選択で、1重量%~60重量%、好ましくは5重量%~40重量%、より好ましくは10重量%~30重量%の少なくとも1種のポリマー(F)
を含む。
【0120】
本発明の複合体(H)を製造するための実施形態によれば、無機充填剤[充填剤(I)]が、さらに使用されてもよい。
【0121】
充填剤(I)は、別個に供給されてもよいか、または化合物(GM)を含む水性媒体に添加されてもよいか、または組成物(C)に添加されてもよい。
【0122】
充填剤(I)は、もしあれば、典型的には、前記組成物(C)の全重量に基づいて、0.1重量%~90重量%の量で組成物(C)に添加される。
【0123】
充填剤(I)は、典型的には粒子の形態で提供される。充填剤(I)粒子は、一般に0.001μm~1000μm、好ましくは0.01μm~800μm、より好ましくは0.03μm~500μmに含まれる平均サイズを有する。
【0124】
無機充填剤(I)の選択は、特に制限されないが、それにもかかわらず、それらの表面で化合物(GM)に対する反応性基を有する充填剤(I)が好ましい。
【0125】
反応性基の中で、特にヒドロキシル基を挙げることができる。
【0126】
本発明の方法における使用に適する充填剤(I)の中で、金属酸化物を含む無機酸化物、金属硫酸塩、金属炭酸塩、金属硫化物などを挙げることができる。
【0127】
金属酸化物の中で、SiO、TiO、ZnOおよびAlを挙げることができる。
【0128】
参照により本明細書に組み込まれる特許、特許出願、および刊行物のいずれかの開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0129】
本発明は、その目的が本発明の範囲の単に例証となるものであって、限定となるものでない、以下の実施例を参照してこれから説明される。
【0130】
原材料:
ポリマー(FF-1):15g/分(2.16Kg、230℃)のメルトフローインデックス(MFI)を有するVDF-HEA(0.8モル%)。
【0131】
ポリマー(FF-2):15g/分(2.16Kg、230℃)のメルトフローインデックス(MFI)を有するVDF-HEA(0.8モル%)-HFP(2.4モル%)。
【0132】
ポリマー(FF-3):15g/分(2.16Kg、230℃)のメルトフローインデックス(MFI)を有するVDF-HEA(0.8モル%)-HFP(5モル%)。
【0133】
PAO-1:1,000,000~1,200,000に含まれる平均分子量を有するポリ(エチレンオキシド)。
【0134】
イオン伝導率の決定
膜を、2つのステンレス鋼ブロッキング電極を収容するセル中に入れた。セルをオーブン中に置き、イオン伝導率の測定前にそれぞれの温度で1時間調整した。膜の抵抗は、異なる温度で測定した。
イオン導電率(σ)は、以下の式:
イオン伝導率(σ)=d/(R×S)
(式中、dは、フィルムの厚さ[cm]であり、Rは、バルク抵抗[Ω]であり、Sは、ステンレス鋼電極の面積[cm]である)
を使用して計算した。
【0135】
ポリマー(FF-1)の製造
300rpmの速度で動作する羽根車を備えた80リットル反応器に、48204gの脱塩水および20.2gのMETHOCEL(登録商標)K100 GR懸濁化剤を順次導入した。反応器をベントし、窒素で1バールまで加圧し、次いで、10.8gのヒドロキシエチルアクリレート(HEA)モノマーおよび127.7gのジエチルカーボネート(DEC)、続いて204gの、t-アミルパーピバレート開始剤のイソドデカン中75重量%溶液、および25187gのフッ化ビニリデン(VDF)モノマーを反応器に導入した。次いで、反応器を110バールの最終圧力まで52℃に徐々に加熱した。全試行を通して温度は、52℃で一定に維持した。圧力は、合計16.5kgまでHEAモノマーの19.9g/l水溶液を供給することによって全試行を通して110バールで一定に維持した。7時間後、大気圧に達するまで懸濁液を脱気することによって、重合実験を止めた。次いで、そのように得られたポリマーを回収し、脱塩水で洗浄し、65℃でオーブン乾燥させた。そのように得られたVDF-HEAコポリマーの量は、19.1Kgであった。
【0136】
ポリマー(FF-2)の製造
300rpmの速度で動作する羽根車を備えた80リットル反応器に、58242gの脱塩水および11.1gのMETHOCEL(登録商標)K100 GR懸濁化剤を順次導入した。反応器を、真空(30mmHg)および20℃で窒素の順でパージした。次いで、21.6gのヒドロキシエチルアクリレート(HEA)および1873gのヘキサフルオロプロピレン(HFP)モノマー、続いて、149.9gの、t-アミルパーピバレート開始剤のイソドデカン中75重量%溶液を反応器に導入した。最後に、16597gのフッ化ビニリデン(VDF)を反応器に導入した。反応器を57℃での設定点温度まで徐々に加熱し、圧力を110バールに固定した。重合中、240.6gのHEAを含有する13kgの水溶液を供給することによって、圧力を110バールに常に等しく保った。この供給後、それ以上の水溶液を導入せず、圧力は80バールまで低下し始めた。次いで、大気圧に達するまで反応器を脱気することによって重合を止めた。概して、モノマーのほぼ75%の変換が得られた。次いで、そのように得られたポリマーを回収し、脱塩水で洗浄し、65℃でオーブン乾燥させた。
【0137】
ポリマー(FF-3)の製造
300rpmの速度で動作する羽根車を備えた80リットル反応器に、57609gの脱塩水および12.1gのMETHOCEL(登録商標)K100 GR懸濁化剤を順次導入した。反応器を、真空(30mmHg)および20℃で窒素の順でパージした。次いで、149.9gの、t-アミルパーピバレート開始剤のイソドデカン中75重量%溶液、続いて、8.2gのヒドロキシエチルアクリレート(HEA)および4087gのヘキサフルオロプロピレン(HFP)モノマーを反応器に導入した。最後に、16144gのフッ化ビニリデン(VDF)を反応器に導入した。反応器を58℃での設定点温度まで徐々に加熱し、圧力を110バールに固定した。重合中、193gのHEAを含有する13.6kgの水溶液を供給することによって、圧力を110バールに常に等しく保った。この供給後、それ以上の水溶液を導入せず、圧力は80バールまで低下し始めた。大気圧に達するまで反応器を脱気することによって重合を止めた。モノマーの79%での変換に達せられた。次いで、そのように得られたポリマーを回収し、脱塩水で洗浄し、65℃でオーブン乾燥させた。
【0138】
フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体の製造-一般手順
プロセスを、二軸共回転噛み合い押出機(スクリュー直径D18mm、スクリュー長720mm(40D)のLeistritz 18 ZSE 18 HP)中で行った。押出機は、主供給装置および2つの脱気ユニットを備えた。バレルは、所望の温度プロファイルに設定することを可能にする、8つの温度制御ゾーンおよび1つの冷却ゾーン(供給装置での)から構成された。ダイは、それぞれ直径3mmを有する2つの穴から構成された。2つの押出物を水槽中で冷却した。その後、材料を、ペレットに切断する直前にプルローラによって引くと同時に、圧縮空気で乾燥させた。
【0139】
工程(i)の下で、約18重量%のSiOの理論量を有するプレゲル金属化合物を以下のとおり製造した:
a)適度な速度で動作する磁気式撹拌機を備えた500mlビーカー中に、以下の成分を順次導入した:
- TEOS:200g
- 水:69.45g(モル比TEOS:HO=1:4)
- エタノール:50g(重量比TEOS:EtOH=4:1)
- クエン酸:2.69g(1重量%のTEOS+HO);および
b)系を室温で約3時間放置した。
そのように得られたプレゲル金属化合物を、すべてのプロセス中激しい撹拌下で維持した。
【0140】
工程(ii)の下で、ポリマー(FF-1)、(FF-2)および(FF-3)のそれぞれならびにPAO-1を混合し、主ホッパーから押出機に一緒に供給した。同時に、工程(i)で提供されたプレゲル金属化合物も、主ホッパーを通して押出機に供給した。
この工程のためのスクリュープロファイルは、ピッチの規則的減少(ゾーン0からゾーン1)を有する搬送要素の領域、次いで、2つの混練要素により構成される混練ブロック(ゾーン2)、次いで、長い搬送ゾーン(ゾーン3からゾーン4)から構成され;この一連の要素の後、3つの混練要素により構成され、かつ2つの搬送要素と互い違いにされた2つの混練ブロックが置かれた(ゾーン4からゾーン6)。最後に、4つの搬送要素および脱気ユニットが、ダイ出口の前に位置した(ゾーン6からゾーン8)。
使用した温度プロファイルは、以下の表1に報告する。ポリマー(FF)の融点に依存して、2つの異なるプロファイルを使用した:ポリマー(FF-2)およびポリマー(FF-3)のためのプロファイルAならびにポリマー(FF-1)のためのプロファイルB。押出機回転速度は350rpmであった。
【0141】
【0142】
工程(iii)の下で、工程(ii)で提供されたペレットおよびLi[N(CFSO](LiTFSI)水溶液(50重量%)を、主ホッパーを通して押出機に供給した。ペレットを重力測定式供給装置で、およびLiTFSI水溶液を蠕動ポンプで投入した。
この工程のためのスクリュープロファイルは、第1の搬送ゾーン(ゾーン0およびゾーン1)、次いで、3つの混練要素により形成された混練ブロック(ゾーン2)により構成され;これらのブロックの後、スクリューのピッチが最大である長い搬送ゾーン(ゾーン3)があった。このゾーンに、大気圧下で、脱気ユニットが存在した。次いで、2つの混練要素および逆流要素により構成された混練ブロックがあった(ゾーン5)。このブロックの後、スクリューは、最大ピッチを有する搬送ゾーンにより構成され(ゾーン6);このゾーンで、-400ミリバールでの脱気ユニットが、LiTFSI溶液中に存在する水蒸気を主として排気するために存在した。スクリューの最後の部分(ゾーン7およびゾーン8)は、搬送要素から構成された。
使用した温度プロファイルを、以下の表2に報告する。ポリマー(FF)の融点に依存して、2つの異なるプロファイルを使用した:ポリマー(FF-2)およびポリマー(FF-3)のためのプロファイルCならびにポリマー(FF-1)のためのプロファイルD。押出機回転速度は、400rpmであった。
【0143】
【0144】
実施例1
ポリマー(FF-1)とPAO-1との重量比31:69での粉末ブレンドを調製した。
プレゲル金属化合物は、工程(i)の下で調製した。そのように得られたプレゲル金属化合物および粉末ブレンドを、主ホッパーに連続的に供給し、温度プロファイルBに従って押し出した。ポリマーブレンドについての速度は、0.795kg/時間であり、プレゲル金属化合物についての速度は、0.520kg/時間であった。
押出物をペレット化し、真空オーブン中45℃で4時間乾燥させた。そのように得られた複合体は、EDS測定によって7.85重量%のSiOを含有した。
工程(ii)の下で調製したペレット、およびLiTFSI溶液を、それぞれ1.2kg/時間および0.6kg/時間の速度で押出機に供給した。材料を収集し、ペレタイザで切断した。
最終複合体の組成は、以下であった:73.7重量%の、ポリマー(FF-1)とPAO-1とのブレンド(重量比ポリマー(FF-1):PAO-1=31:69)、6.3重量%のSiOおよび20重量%のLiTFSI。
そのように得られた複合体から作られたフィルムのイオン伝導率値を、表3に示す。
【0145】
比較例1
工程(i)を省略した(プレゲル金属化合物を反応器に供給しなかった)以外は、実施例1の下での同じ手順に従った。
工程(ii)および工程(iii)は、プレゲル金属化合物の非存在のために同時に行った。
最終複合体の組成は、以下であった:80重量%の、ポリマー(FF-1)とPAO-1とのブレンド(重量比ポリマー(FF-1):PAO-1=38:62)および20重量%のLiTFSI。
そのように得られた複合体から作られたフィルムのイオン導電率値を、表3に示す。
【0146】
実施例2
ポリマー(FF-1)をポリマー(FF-2)で置き換えることおよび工程(ii)後のプロセスを止めること以外は、実施例1の下での同じ手順に従った。したがって、工程(iii)は省略した。
最終複合体の組成は、以下であった:90.6重量%の、ポリマー(FF-2)とPAO-1とのブレンド(重量比ポリマー(FF-2):PAO-1=31:69)および9.4重量%のSiO
そのように得られた複合体は、一定のペレットの形態であり、これは容易に取り扱い、および融解相中で加工することができる。
【0147】
比較例2
工程(i)および工程(ii)を省略した以外は、実施例2の下での同じ手順に従った。したがって、プレゲル金属化合物および電解質塩は、複合体に加えなかった。工程(ii)の押出物は、顕著なダイ膨張を示した。融解強度は非常に不十分であり、プロセス中、融解脈動および破壊が観察された。これらの理由のために、自動システムで材料を引き、それをカッターで切断し、それにより、一定のペレットを得ることは可能でない。
そのように得られた最終複合体は、ポリマー(FF-2)とPAO-1との重量比31:69でのブレンドを含有した。
【0148】
実施例3
ポリマー(FF-1)の代わりにポリマー(FF-2)を使用した以外は、実施例1の下での同じ手順に従った。
そのように得られた複合体から作られたフィルムのイオン伝導率値を、表3に示す。
【0149】
実施例4
ポリマー(FF-1)の代わりにポリマー(FF-3)を使用した以外は、実施例1の下での同じ手順に従った。
そのように得られた複合体から作られたフィルムのイオン伝導率値を、表3に示す。
【0150】
【0151】
上記を考慮して、意外なことに、本発明による方法によって得られ得る複合体(H)または複合体(H’)のどちらも、有利には、自由流動性であり、したがって、容易に取り扱い、および融解相中で加工することができる一定のペレットの形態であることが見出された。
【0152】
また、意外なことに、本発明による方法によって得られ得る複合体(H)または複合体(H’)のどちらも、卓越したイオン伝導率値を示す電気化学デバイスと光電気化学デバイスとの両方のためのセパレータの製造を首尾よく可能にすることが見出された。