(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】閉鎖セルを有するドレッシングによる創傷の治療のためのシステム
(51)【国際特許分類】
A61M 27/00 20060101AFI20220531BHJP
【FI】
A61M27/00
(21)【出願番号】P 2018534979
(86)(22)【出願日】2016-12-13
(86)【国際出願番号】 US2016066392
(87)【国際公開番号】W WO2017119996
(87)【国際公開日】2017-07-13
【審査請求日】2019-12-12
(32)【優先日】2016-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン,ティモシー,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ロック,クリストファー,ブライアン
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-530344(JP,A)
【文献】特表2012-513831(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0286635(US,A1)
【文献】特表2010-526597(JP,A)
【文献】特表2014-516711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織部位を治療するシステムにおいて、
ポリマーフィルムを含むマニホールドであって、前記フィルムが、流体を収容する複数の閉鎖セルと、前記フィルムの前記閉鎖セルの間に配置され、かつ前記マニホールドの第1側と第2側との間の流体流を可能にするように前記フィルムを通して延在するアパーチャと、前記フィルムのうちの少なくともいくつかの少なくとも外面における表面特徴であって、突起部又は凹部を含む表面特徴とを有するフィルムを含むマニホールドと、
カバーであって、前記カバーの一方の側の前記組織部位および前記マニホールドを含む治療環境と、前記カバーの他方の側の局所外部環境との間に流体シールを提供するように適合されたカバーと、
前記治療環境に流体結合され、かつ遠位チャネルおよび前記アパーチャを通して前記組織部位に負圧を提供するように適合された、負圧源と、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記フィルムが、前記マニホールドを別個の構成要素に引き裂くのを容易にするように構成された少なくとも1つの非漏洩引裂経路をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムにおいて、前記フィルムがポリマーフィルムの2枚のシートをさらに含み、前記少なくとも1つの非漏洩引裂経路が、前記ポリマーフィルムの2枚のシートのうちの少なくとも1枚における穿孔によって形成されていることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記フィルムが、最小領域が20cm
2を超える面積を有する前記フィルムの複数の領域を画定する、非漏洩引裂経路をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記表面特徴が隆起および溝を含むことを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記表面特徴がフィルムにエンボス加工されていることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記表面特徴
が、0.4mm
~1.5mmの範囲の深さまたは高さを有することを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムにおいて、前
記フィルムが、互いに封止されて封止領域を形成する内面を有するポリマーフィルムの2枚のシートを含むことを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項8に記載のシステムにおいて、前記複数の閉鎖セルが、前記ポリマーフィルムの2枚のシートのうちの第1シートに形成されていることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムにおいて、前記閉鎖セルが、半球状、円錐形または円筒形の形状のうちの任意の1つである立体形状を有することを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項9に記載のシステムにおいて、前記ポリマーフィルムの2枚のシートのうちの第2シートから外側に突出し、かつ前記シールと前記組織部位との間に前記アパーチャと流体連通する近位チャネルを形成するように適合された、こぶ状部をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項9に記載のシステムにおいて、前記ポリマーフィルムの2枚のシートのうちの第2シートから外側に突出し、かつ前記シールと前記組織部位との間に前記アパーチャと流体連通する近位チャネルを形成するように適合された、格子をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項8に記載のシステムにおいて、前記複数の閉鎖セルが、前記ポリマーフィルムの2枚のシートの両方に形成されていることを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項13に記載のシステムにおいて、前記閉鎖セルが、半球状、円錐形または円筒形の形状のうちの任意の1つである立体形状を有することを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項13に記載のシステムにおいて、前記閉鎖セルが、概して半球状でありかつ両方のシートにおいて互いに一致して、概して球状の形状を形成する立体形状を有することを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項13に記載のシステムにおいて、前記ポリマーフィルムの2枚のシートのうちの第1シートの前記閉鎖セルの間に遠位チャネルが形成され、前記ポリマーフィルムの2枚のシートのうちの第2シートの前記閉鎖セルの間に、前記アパーチャを通して前記遠位チャネルと流体連通する近位チャネルが形成されていることを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項16に記載のシステムにおいて、前記近位チャネルに隣接して前記ポリマーフィルムの2枚のシートのうちの前記第2シートの前記閉鎖セルから外側に突出するこぶ状部をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項18】
請求項13に記載のシステムにおいて、前記近位チャネルに隣接して前記ポリマーフィルムの2枚のシートのうちの前記第2シートの前記閉鎖セルから外側に突出する格子をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項19】
請求項1に記載のシステムにおいて、前
記フィルムが、互いに封止されて封止領域を形成する表面を有する2枚の外側シートおよび1枚の内側シートを含むポリマーフィルムの3枚のシートを含むことを特徴とするシステム。
【請求項20】
請求項19に記載のシステムにおいて、前記複数の閉鎖セルが、前記ポリマーフィルムの2枚の外側シートのうちの1枚に形成されていることを特徴とするシステム。
【請求項21】
請求項19に記載のシステムにおいて、前記複数の閉鎖セルが、前記ポリマーフィルムの2枚の外側シートの両方に形成されていることを特徴とするシステム。
【請求項22】
請求項21に記載のシステムにおいて、前記閉鎖セルが、概して半球状でありかつ前記2枚の外側シートにおいて互いに一致して、前記内側シートによって分割される概して球状の形状を形成する立体形状を有することを特徴とするシステム。
【請求項23】
請求項1に記載のシステムにおいて、圧力制御モードにおいて前記治療環境に標的圧力を提供するように前記負圧源に作動的に結合されたプロセッサをさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項24】
請求項23に記載のシステムにおいて、前記圧力制御モードが連続圧力モードであることを特徴とするシステム。
【請求項25】
請求項23に記載のシステムにおいて、前記圧力制御モードが間欠圧力モードであることを特徴とするシステム。
【請求項26】
請求項1に記載のシステムにおいて、動的圧力モードにおいて前記治療環境に可変標的圧力を提供するように前記負圧源に作動的に結合されたプロセッサをさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項27】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記治療環境に流体結合され、かつ前記アパーチャを通して前記組織部位に溶液を送達するように適合された正圧源をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項28】
請求項27に記載のシステムにおいて、所定の投与量で前記治療環境に前記溶液を提供するように前記正圧源に作動的に結合されたプロセッサをさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項29】
請求項27に記載のシステムにおいて、所定時間、前記治療環境に前記溶液を提供するように前記正圧源に作動的に結合されたプロセッサをさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項30】
請求項27に記載のシステムにおいて、経時的に所定速度で前記治療環境に前記溶液を提供するように前記正圧源に作動的に結合されたプロセッサをさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項31】
請求項27に記載のシステムにおいて、前記治療環境に前記溶液を提供する前に、前記治療環境に負圧を提供するように前記負圧源および前記正圧源に作動的に結合されたプロセッサをさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項32】
請求項27に記載のシステムにおいて、前記治療環境に前記溶液を提供している間、前記治療環境に負圧を提供するように前記負圧源および前記正圧源に作動的に結合されたプロセッサをさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項33】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記複数の閉鎖セルが、概して半球状であ
り、0.5mm~10mmの直径を有することを特徴とするシステム。
【請求項34】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記複数の閉鎖セル、概して半球状であ
り、1.5mm~15mmの直径を有することを特徴とするシステム。
【請求項35】
請求項1に記載のシステムにおいて、前
記フィルムが、互いに封止され
て10μm~1000μmの厚さを有する封止領域を形成する内面を有する、ポリマーフィルムの2枚のシートを含むことを特徴とするシステム。
【請求項36】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記閉鎖セルが、行および列のパターンで形成されていることを特徴とするシステム。
【請求項37】
請求項36に記載のシステムにおいて、前記行のうちの少なくとも1つにおいて前記閉鎖セルを流体結合して閉鎖チャンバを形成する通路をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項38】
請求項36に記載のシステムにおいて、前記行が入れ子パターンで形成されていることを特徴とするシステム。
【請求項39】
請求項36に記載のシステムにおいて、前記行が一列パターンで形成されていることを特徴とするシステム。
【請求項40】
請求項36に記載のシステムにおいて、前記閉鎖セルが概して球状の形状を有することを特徴とするシステム。
【請求項41】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記閉鎖セルのうちの少なくとも2つを互いに流体結合して閉鎖チャンバを形成する通路をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項42】
請求項41に記載のシステムにおいて、前記閉鎖セルが概して球状の形状を有することを特徴とするシステム。
【請求項43】
組織部位を治療するシステムにおいて、
ポリマーフィルムを含む第1マニホールドであって、前記フィルムが、シールを通して延在するアパーチャにより穿孔された封止領域によって画定された、概して球状の形状を有し、流体を収容する複数の閉鎖セルを有する第1マニホールドと、
ポリマーフィルムを含む第2マニホールドであって、前記フィルムが、シールを通して延在するアパーチャにより穿孔された封止領域によって画定された、概して球状の形状を有する複数の閉鎖セルを有し、前記アパーチャを通して前記第1マニホールドに流体結合されている第2マニホールドと、
カバーであって、前記カバーの一方の側に近接する前記第1マニホールドおよび前記第2マニホールドを含む治療環境と、前記カバーの他方の側の局所外部領域との間に流体シールを提供するように適合され、前記第1マニホールドの前記複数の閉鎖セルが、前記カバーと遠位チャネルを形成するように適合され、前記第2マニホールドの前記複数の閉鎖セルが、前記組織部位と近位チャネルを形成するように適合されている、カバーと、
前記治療環境に流体結合され、かつ前記遠位チャネルおよび前記近位チャネルを通して前記組織部位に負圧を提供するように適合された、負圧源と、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項44】
請求項43に記載のシステムにおいて、
ポリマーフィルムを含む第3マニホールドであって、シールを通して延在するアパーチャにより穿孔された封止領域によって画定された概して球状の形状を有し、流体を収容する複数の閉鎖セルを有し、前記第1マニホールドと前記第2マニホールドとの間に配置され、前記アパーチャを通して前記第1マニホールドおよび前記第2マニホールドに流体結合されている第3マニホールドをさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項45】
請求項43に記載のシステムにおいて、前記第1マニホールドおよび前記第2マニホールドの前記閉鎖セルが、前記シールによって画定される行および列のパターンで形成されていることを特徴とするシステム。
【請求項46】
請求項45に記載のシステムにおいて、前記行のうちの少なくとも1つにおいて前記閉鎖セルを流体結合して閉鎖チャンバを形成する通路をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項47】
請求項45に記載のシステムにおいて、前記行が一列パターンで形成されていることを特徴とするシステム。
【請求項48】
組織部位を治療するドレッシングにおいて、
ポリマーフィルムを含むマニホールドであって、前記フィルムが、流体を収容する複数の閉鎖セルと、前記フィルムの前記閉鎖セルの間に配置され、かつ前記マニホールドの第1側と第2側との間で流体が流れるための通路を画定するように前記フィルムを通して延在するアパーチャとを有するフィルムを含み、前記組織部位と接触するように適合されたマニホールドと、
カバーであって、前記カバーの一方の側の前記マニホールドを含む治療環境と、前記カバーの他方の側の局所外部環境との間に流体シールを提供するように適合され、前記複数の閉鎖セルが、前記カバーと遠位チャネルを形成して、前記通路を通して前記遠位チャネルと前記組織部位との間に流体連通を提供するように適合されている、カバーと、
を含み、
前記治療環境が、前記遠位チャネルおよび前記通路を通して前記組織部位にかけられる負圧を受け取るように適合されていることを特徴とするドレッシング。
【請求項49】
請求項48に記載のドレッシングにおいて、前記フィルムが、互いに封止されて封止領域を形成する内面を有する、ポリマーフィルムの2枚のシートを含むことを特徴とするドレッシング。
【請求項50】
請求項49に記載のドレッシングにおいて、前記複数の閉鎖セルが、前記ポリマーフィルムの2枚のシートのうちの第1シートに形成されていることを特徴とするドレッシング。
【請求項51】
請求項50に記載のドレッシングにおいて、前記ポリマーフィルムの2枚のシートのうちの第2シートから外側に突出し、かつ前記シールと前記組織部位との間に前記通路を通して前記遠位チャネルと流体連通する近位チャネルを形成するように適合された、こぶ状部をさらに含むことを特徴とするドレッシング。
【請求項52】
請求項49に記載のドレッシングにおいて、前記複数の閉鎖セルが、前記ポリマーフィルムの2枚のシートの両方に形成されていることを特徴とするドレッシング。
【請求項53】
請求項52に記載のドレッシングにおいて、前記閉鎖セルが、概して半球状でありかつ両方のシートにおいて互いに一致して概して球状の形状を形成する立体形状を有することを特徴とするドレッシング。
【請求項54】
請求項52に記載のドレッシングにおいて、前記遠位チャネルが、前記ポリマーフィルムの2枚のシートのうちの一方の前記閉鎖セルの間に形成され、前記ポリマーフィルムの2枚のシートのうちの他方の前記閉鎖セルの間に、前記通路を通して前記遠位チャネルと流体連通する近位チャネルが形成されていることを特徴とするドレッシング。
【請求項55】
請求項48に記載のドレッシングにおいて、前記フィルムが、互いに封止されて封止領域を形成する表面を有する2枚の外側シートおよび1枚の内側シートを含むポリマーフィルムの3枚のシートを含むことを特徴とするドレッシング。
【請求項56】
請求項55に記載のドレッシングにおいて、前記複数の閉鎖セルが、前記ポリマーフィルムの2枚の外側シートの両方に形成されていることを特徴とするドレッシング。
【請求項57】
請求項56に記載のドレッシングにおいて、前記閉鎖セルが、概して半球状でありかつ前記2枚の外側シートにおいて互いに一致して、前記内側シートによって分割される概して球状の形状を形成する立体形状を有することを特徴とするドレッシング。
【請求項58】
組織部位を治療するマニホールドにおいて、
ポリマーフィル
ムの第1シー
トと、
ポリマーフィル
ムの第2シートであって、前
記第2シートは、第1シートに封止されて前記第1シートと前記第2シートとの間に封止領域を形成する第2シートと、
前記第1シートおよび前記第2シートのうちの少なくとも一方に形成され、流体を収容する複数の閉鎖セルであって、各々が前記封止領域によって画定された基部を有する、複数の閉鎖セルと、
前記封止領域を穿孔して前記第1シートおよび前記第2シートを通して流体流を可能にする複数のアパーチャと、
を含み、
前記アパーチャを通して流体を受け取りかつ前記組織部位に流体を分配するように、前記閉鎖セルおよび前記封止空間と遠位チャネルを形成するカバーにより、前記組織部位において位置決めされかつ封止されるように適合されていることを特徴とするマニホールド。
【請求項59】
請求項58に記載のマニホールドにおいて、前記閉鎖セルが、概して半球状であ
り、0.5mm~10mmの直径を有することを特徴とするマニホールド。
【請求項60】
請求項58に記載のマニホールドにおいて、前記閉鎖セルが、楕円形であ
り、0.5mm~10mmの長軸を有することを特徴とするマニホールド。
【請求項61】
請求項58に記載のマニホールドにおいて、前記閉鎖セル
が、0.25mm~5.0mmの高さを有することを特徴とするマニホールド。
【請求項62】
請求項58に記載のマニホールドにおいて、前記閉鎖セル
が、1.5mm~15mmのピッチを有することを特徴とするマニホールド。
【請求項63】
請求項58に記載のマニホールドにおい
て、10%
~55%のセル被覆率の表面積を有することを特徴とするマニホールド。
【請求項64】
請求項58に記載のマニホールドにおいて、前記封止領域
が、5μm~200μmの厚さを有することを特徴とするマニホールド。
【請求項65】
請求項58に記載のマニホールドにおいて、前記アパーチャ
が、0.5mm~1.5mmの長軸を有する楕円形であることを特徴とするマニホールド。
【請求項66】
請求項58に記載のマニホールドにおいて、前記アパーチャ
が、0.5mm~1.5mmの長さを有するスリットであることを特徴とするマニホールド。
【請求項67】
請求項58に記載のマニホールドにおいて、前記ポリマーフィルムが、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンの群から選択された任意の1つであることを特徴とするマニホールド。
【請求項68】
請求項58に記載のマニホールドにおいて、前記ポリマーフィルム
が、20MPaを超える降伏強さを有することを特徴とするマニホールド。
【請求項69】
請求項58に記載のマニホールドにおいて、前記ポリマーフィルム
が、30MPaを超えるUTSを有することを特徴とするマニホールド。
【請求項70】
請求項58に記載のマニホールドにおいて、前記ポリマーフィルム
が、5μm
~500μmの厚さを有することを特徴とするマニホールド。
【請求項71】
請求項58に記載のマニホールドにおいて、前記閉鎖セルが、半球状、円錐形または円筒形の形状のうちの任意の1つである立体形状を有することを特徴とするマニホールド。
【請求項72】
請求項58に記載のマニホールドにおいて、前記閉鎖セルが、概して管状である立体形状を有することを特徴とするマニホールド。
【請求項73】
請求項58に記載のマニホールドにおいて、前記閉鎖セルが、概して管状である立体形状を有し、か
つ2.0mm~4.0mmの範囲の平均高さを有することを特徴とするマニホールド。
【請求項74】
請求項73に記載のマニホールドにおいて、前記ポリマーフィルム
が250μmの平均厚さを有し、前記閉鎖セル
が8:1~16:1の範囲の延伸比を有することを特徴とするマニホールド。
【請求項75】
請求項73に記載のマニホールドにおいて、前記ポリマーフィルム
が100μmの平均厚さを有し、前記閉鎖セル
が20:1
~40:1の範囲の延伸比を有することを特徴とするマニホールド。
【請求項76】
請求項73に記載のマニホールドにおいて、前記ポリマーフィルム
が、250μm未満の平均厚さを有し、前記閉鎖セル
が8:1を超える延伸比を有することを特徴とするマニホールド。
【請求項77】
請求項58に記載のマニホールドにおいて、前記閉鎖セルが、大気圧より高い内圧を有することを特徴とするマニホールド。
【請求項78】
請求項58に記載のマニホールドにおいて、前記閉鎖セルが、大気圧
を25psi超える圧力未満の内圧を有することを特徴とするマニホールド。
【請求項79】
請求項58に記載のマニホールドにおいて、前記第1シート及び前記第2シートのうちの少なくとも一方から外側に突出し、かつ前記封止領域と前記組織部位との間に前記アパーチャを通して前記遠位チャネルと流体連通する近位チャネルを形成するように適合された、こぶ状部をさらに含むことを特徴とするマニホールド。
【請求項80】
請求項79に記載のマニホールドにおいて、前記こぶ状部
が、0.2mm
~1.5mmの平均高さを有することを特徴とするマニホールド。
【請求項81】
請求項79に記載のマニホールドにおいて、前記こぶ状部
が、0.4mm
~0.8mmの平均高さ
と0.2mmの基部とを有するスパイク形状を有することを特徴とするマニホールド。
【請求項82】
請求項79に記載のマニホールドにおいて、前記こぶ状部
が、0.4mm
~1.2mmの平均高さ
と0.4mmの基部とを有する円錐形状を有することを特徴とするマニホールド。
【請求項83】
請求項79に記載のマニホールドにおいて、前記こぶ状部
が、0.4mm
~1.0mmの平均基部を有するドーム形状を有することを特徴とするマニホールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、すべての目的で参照により本明細書に援用される、2016年1月6日に出願された「Systems and Methods for the Treatment of Wounds with Dressing Having Closed Cells」と題する米国仮特許出願第62/275,595号明細書の出願の利益を主張する。
【0002】
添付の特許請求の範囲に記載されている本発明は、概して、組織治療システムに関し、より詳細には、ただし限定なしに、陰圧および滴下療法環境において負圧および閉鎖セルおよび穿孔を有するドレッシングを利用する滴下により創傷を治療することに関する。
【背景技術】
【0003】
臨床研究および診療により、組織部位に近接して減圧することによって組織部位における新たな組織の増殖を促進し加速させ得ることが示された。この現象の応用は多数あるが、それは、創傷を治療するのに特に有利であることが分かった。外傷、外科手術または別の原因の何れであっても、創傷の原因に関わらず、創傷の適切なケアが転帰に重要である。減圧を用いる創傷または他の組織の治療は、一般に「陰圧療法」と呼ばれる場合があるが、たとえば、「陰圧創傷療法」、「減圧療法」、「真空療法」、「陰圧補助閉鎖(vacuum-assited closure)」および「局所陰圧」を含む他の名称でも知られている。陰圧療法は、上皮組織および皮下組織の移動、血流の改善、ならびに創傷部位における組織の微小変形を含む多くの利益を提供することができる。これらの利益が合わさって、肉芽組織の成長を促進し、治癒時間を短縮することができる。
【0004】
「滴下」は、一般に、組織部位に流体を低速で導入し、流体を除去する前に指示された期間にわたり流体を放置するプロセスを指す別の行為である。たとえば、溶液流により創傷を洗うことができ、または治療の目的で溶液を用いて腔を洗うことができる。さらに、創傷床にわたる局所治療溶液の滴下を陰圧療法と組み合わせて、創傷床における溶性の汚染物質を弛緩させ、感染性物質を除去することにより装置治癒をさらに促進することができる。その結果、溶性細菌負荷を低減させ、汚染物質を除去し、創傷を洗浄することができる。
【0005】
創傷ドレッシングは、発泡体または繊維状のマニホールドを含むことができ、マニホールドは、組織部位に負圧を分配しかつ流体を滴下することができるように、組織部位の上にシールを形成するドレープによって覆われる。こうしたマニホールドの構造はまた、肉芽形成を促進するようにマクロひずみおよび微小ひずみも生成することができる。こうしたマニホールドは、多くの場合、組織部位に数日間以上放置されなければならず、したがって、組織内部成長および組織部位からの滲出物により詰まった場合、取り除かれなければならない。こうしたマニホールドが交換される前に、組織部位が感染によって汚染されないように、こうしたマニホールドのすべての部品が完全に取り除かれなければならない。マニホールドが取り除かれると、治療を続けるために組織部位に新しいマニホールドが配置される。
【発明の概要】
【0006】
添付の特許請求の範囲において、陰圧および滴下療法環境において、閉鎖セルおよび穿孔またはアパーチャを有するドレッシングを利用する、創傷を治療する新たなかつ有用なシステム、装置および方法が示されている。当業者が請求項に係る主題を作成および使用することを可能にするように、例示的な実施形態もまた提供される。
【0007】
たとえば、いくつかの実施形態では、滴下および陰圧療法システムおよび方法は、ポリマーシートから形成され、シールを通して延在する穿孔またはアパーチャを含む封止領域によって接合されている、閉鎖セルのシートとともに使用した場合、組織肉芽形成を改善するために特に有効である。滴下および陰圧療法で使用した場合に肉芽形成をさらに促進するために、組織部位に面する閉鎖セルのシートに、複数の異なるテクスチャおよび形状も形成することができる。こうしたポリマー構造は、組織内部成長を著しく低減させ、組織部位に配置されるための形状とされるかまたは組織部位から取り除かれるとき、繊維または粒子を脱落させない。
【0008】
より具体的には、一実施形態例では、組織部位を治療するシステムは、無孔フィルムを含み、シールを通して延在するアパーチャにより穿孔された封止領域によって画定された複数の閉鎖セルを有するマニホールドであって、組織部位と接触するように適合されたマニホールドを含むことができる。本システムは、カバーをさらに含むことができ、カバーは、カバーの一方の側に近接するマニホールドを含む治療環境と、カバーの他方の側の局所外部環境との間に流体シールを提供するように適合される。一実施形態では、複数の閉鎖セルは、カバーと遠位チャネルを形成するように適合され、アパーチャは、遠位チャネルと組織部位との間に流体連通を提供するように適合される。本システムは、治療環境に流体結合され、かつ遠位チャネルおよびアパーチャを通して組織部位に負圧を提供するように適合された、負圧源をさらに含むことができる。
【0009】
別法として、別の実施形態例では、組織を治療する方法であって、無孔フィルムを含み、シールを通して延在するアパーチャにより穿孔された封止領域によって画定された複数の閉鎖セルを有するマニホールドを、組織部位と接触するように位置決めするステップを含む方法が開示される。本方法は、マニホールドおよび組織部位をドレープで覆って、ドレープの一方の側に近接するマニホールドを含む治療環境と、ドレープの他方の側における局所外部環境との間に流体シールを提供するステップとをさらに含むことができる。本方法は、複数の閉鎖セルとドレープとの間に遠位チャネルを形成するステップをさらに含むことができ、アパーチャは、遠位チャネルと組織部位との間に流体連通を提供するように適合される。本方法は、治療環境に結合された負圧源から負圧を提供するステップをさらに含むことができ、負圧は、遠位チャネルおよびアパーチャを通して組織部位にかけられる。
【0010】
別法として、別の実施形態例では、組織部位を治療するドレッシングであって、無孔フィルムを含み、シールを通して延在するアパーチャにより穿孔された封止領域によって画定された複数の閉鎖セルを有するマニホールドであって、組織部位と接触するように適合されたマニホールドを備える、ドレッシングが開示される。ドレッシングは、カバーをさらに含むことができ、カバーは、カバーの一方の側に近接するマニホールドを含む治療環境と、カバーの他方の側の局所外部環境との間に流体シールを提供するように適合される。したがって、複数の閉鎖セルを、カバーと遠位チャネルを形成するように適合させることができ、アパーチャは、遠位チャネルと組織部位との間に流体連通を提供するように適合される。治療環境は、遠位チャネルおよびアパーチャを通して組織部位にかけられる負圧を受け取るように適合される。
【0011】
別の実施形態例では、ドレッシングは、マニホールドが組織部位に負圧を分配しかつ流体を滴下することができるように、組織部位の上にシールを形成するドレープによって覆われた、無孔マニホールドを含むことができる。こうしたマニホールドの構造は、肉芽形成を促進するために、組織部位においてマクロひずみおよび微小ひずみも発生させることができる。こうしたマニホールドは、組織部位に数日間以上放置される場合があり、多くの場合、組織内部成長および組織部位からの滲出物により詰まった場合に取り除かれなければならない。陰圧および滴下療法が数日間以上適用された後、組織部位からマニホールドが取り除かれるとき、痛みまたは不快感をもたらす可能性がある組織内部成長の量を低減させることが望ましい。特に迅速に肉芽形成する組織部位に対し、3日間以上、組織部位において放置されるマニホールド構造に対し、かつ/または組織部位内に脱落するかもしくは粒子を放出する傾向があるマニホールド材料に対して、取り除かれるとときに組織部位に残される可能性があるマニホールド構造からの残存物の量を低減させることも望ましい。著しい組織内部成長または取り除かれるときの材料の脱落する残存物なしに肉芽形成を促進するように、組織部位においてマクロひずみおよび微小ひずみを発生させることができるマニホールド構造を使用することも望ましい。
【0012】
別の実施形態例では、ドレッシングにおいて組織部位を治療するマニホールドを使用することができ、本マニホールドは、無孔ポリマーフィルムの第1シートと、無孔ポリマーフィルムの第2シートであって、無孔ポリマーフィルムの第1シートに封止されて第1シートと第2シートとの間に封止領域を形成する第2シートとを含む。本マニホールドは、第1シートおよび第2シートのうちの少なくとも一方に形成された複数の閉鎖セルをさらに含み、閉鎖セルは各々、封止領域によって画定された基部を有する。本マニホールドはまた、封止領域を穿孔して第1シートおよび第2シートを通して流体流を可能にする複数のアパーチャも含む。本マニホールドは、アパーチャを通して流体を受け取りかつ組織部位に流体を分配するように、閉鎖セルおよび封止空間と遠位チャネルを形成するカバーにより、組織部位において位置決めされかつ封止されるように適合されている。本マニホールドは、封止領域によって分離された複数の閉鎖セルと、封止領域を通して延在するアパーチャとを備える、単一構成要素であり、それにより、マニホールドは、組織部位とカバーとの間に配置されたときにマニホールド機能および充填材機能の両方を提供する。
【0013】
請求項に係る主題を作成および使用する目的、利点および好ましい態様は、例示的な実施形態の以下の詳細な説明とともに添付図面を参照することによって最もよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、組織部位に負圧および治療溶液を送達するために組織部位に配置されたマニホールドを備えるドレッシングに治療溶液を送達する、陰圧および滴下療法システムの実施形態例の概略断面図である。
【
図1A】
図1Aは、本明細書による治療溶液を送達することができる
図1の治療システムの実施形態例の機能ブロック図である。
【
図2A】
図2Aは、
図1および
図1Aの陰圧および滴下療法システムに対する圧力制御モードの例示的な実施形態を示すグラフであり、x軸は、分(min)および/または秒(sec)での時間を表し、y軸は、治療システムにおいて負圧をかけるために使用することができる連続圧力モードおよび間欠圧力モードにおいて、時間によって変化する、ポンプによって生成されるトル(mmHg)での圧力を表す。
【
図2B】
図2Bは、
図1および
図1Aの陰圧および滴下療法システムの別の圧力制御モードの例示的な実施形態を示すグラフであり、x軸は、分(min)および/または秒(sec)での時間を表し、y軸は、治療システムで負圧をかけるために使用することができる動的圧力モードにおいて、時間によって変化する、ポンプによって生成されるトル(mmHg)での圧力を表す。
【
図3】
図3は、組織部位におけるドレッシングに治療溶液を送達する陰圧および滴下療法を提供する治療方法の例示的な実施形態を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、
図1および
図1Aの陰圧および滴下療法システムにおいてマニホールドとして使用することができる、無孔ポリマーフィルムのウェブから形成された、閉鎖セルのシートの第1実施形態の平面図である。
【
図4B】
図4Bは、シートから突出するこぶ状部(node)を含む、
図4に示す閉鎖セルのシートの背面図である。
【
図4C】
図4Cは、シートから突出するテクスチャ加工パターンを含む、
図4に示す閉鎖セルのシートの背面図である。
【
図5】
図5は、
図1および
図1Aの陰圧および滴下療法システムにおいてマニホールドとして使用することができる、無孔ポリマーフィルムのウェブから形成された、閉鎖セルのシートの第2実施形態の平面図である。
【
図6】
図6は、
図1および
図1Aの陰圧および滴下療法システムにおいてマニホールドとして使用することができる、無孔ポリマーフィルムのウェブから形成された、閉鎖セルのシートの第3実施形態の平面図である。
【
図7】
図7は、
図1および
図1Aの陰圧および滴下療法システムにおいてマニホールドとして使用することができる、無孔ポリマーフィルムのウェブから形成された、閉鎖セルのシートの第4実施形態の平面図である。
【
図8】
図8は、マニホールドが
図4A1のマニホールドである、負圧および治療溶液を送達する
図1および
図1Aの陰圧および滴下療法システムのカバーおよびマニホールドの概略断面図である。
【
図9】
図9は、マニホールドが
図4A3のマニホールドである、負圧および治療溶液を送達する
図1および
図1Aの陰圧および滴下療法システムのカバーおよびマニホールドの概略断面図である。
【
図10A】
図10Aは、(i)組織部位の底部、(ii)組織部位の短辺側縁部および(iii)組織部位の長辺側縁部における圧力測定値と比較した、
図9のマニホールドに提供された時間(分)にわたる負圧変動(mmHg)を示すチャートである。
【
図10B】
図10Bは、(i)組織部位の底部、(ii)組織部位の短辺側縁部および(iii)組織部位の長辺側縁部における圧力測定値と比較した、
図9のマニホールドに提供された時間(分)にわたる負圧変動(mmHg)を示すチャートである。
【
図11】
図11は、マニホールドが、
図4A3の5層マニホールドを含む多層構造である、負圧および治療溶液を送達する
図1および
図1Aの陰圧および滴下療法システムのカバーおよびマニホールドの概略断面図である。
【
図12】
図12は、
図9および
図11のマニホールドを介して、負圧が間欠的にオン・オフを繰り返して(1分間オン、1分間オフ、オンサイクル中、125mmHgおよび200mmHgの各々3つのサイクルを含む)、負圧により組織部位にかけられている、ニュートン(N)での負荷、すなわち、付着力(apposition force)の2つのグラフを示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施形態例の以下の説明は、当業者が、添付の特許請求の範囲に示されている主題を作成および使用することを可能にする情報を提供するが、当技術分野においてすでに周知のいくつかの詳細は省略されている場合がある。したがって、以下の詳細な説明は、限定するものではなく例示するものとして解釈されるべきである。
【0016】
本明細書では、実施形態例は、添付の図面に示すさまざまな要素間の空間的な関係またはさまざまな要素の空間的な向きに関連して記載されている場合もある。概して、こうした関係または向きは、治療を受けるために適所にある患者に一致するかまたはそうした患者に対する基準系を想定する。しかしながら、当業者であれば認識されるはずであるように、この基準系は、厳密な規定ではなく、説明上の好都合な手段に過ぎない。
【0017】
本明細書で用いる「好ましい」および「好ましくは」という用語は、いくつかの環境下でいくつかの利益を提供する技術の実施形態を指す。しかしながら、同じ環境または他の環境下で他の実施形態も好ましい場合がある。さらに、1つまたは複数の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用でないことを意味するものではなく、本技術の範囲から他の実施形態を排除するようには意図されていない。
【0018】
本技術は、陰圧療法装置およびシステム、ならびに抗菌溶液とともにこうしたシステムを使用する治療方法も提供する。
図1は、組織部位におけるドレッシングに治療溶液を送達する陰圧および滴下療法システムの実施形態例の概略図である。
図1Aは、本明細書による、治療溶液の滴下とともに陰圧療法を提供することができる治療システム100の実施形態例の簡易機能ブロック図である。治療システム100は、治療システム101等の単一の一体化ユニットとしてパッケージ化することができる。治療システム101は、Kinetic Concepts,Inc.(San Antonio、Texas)から入手可能なV.A.C.Ultra(商標)システムであり得る。
【0019】
これに関連して「組織部位」という用語は、限定されないが、骨組織、脂肪組織、筋組織、神経組織、皮膚組織、血管組織、結合組織、軟骨組織、腱または靭帯を含む組織上またはその中に位置する創傷、欠損または他の治療標的を広く指す。創傷としては、たとえば、慢性創傷、急性創傷、外傷性創傷、亜急性創傷および裂開性創傷、II度熱傷、潰瘍(糖尿病性潰瘍、褥瘡または静脈不全性潰瘍等)、皮弁および移植片を挙げることができる。「組織部位」という用語は、必ずしも創傷または欠損のある組織ではなく、代わりに、さらなる組織を追加するかまたはそうした組織の増殖を促進するために望ましい可能性がある領域である任意の組織の領域も指すことができる。たとえば、採取し移植することができるさらなる組織を増殖させるために、ある組織部位に負圧をかけることができる。
【0020】
治療システム100は、負圧供給部を含むことができ、ドレッシング等の分配構成要素を含むかまたはそれに結合されるように構成され得る。概して、分配構成要素は、負圧供給と組織部位との間の流体路において負圧供給部に流体結合されるように構成された任意の補完的または補助的な構成要素を指すことができる。分配構成要素は、好ましくは分離可能であり、使い捨て、再使用可能またはリサイクル可能であり得る。たとえば、ドレッシング102は、
図1Aに示すように負圧源104に流体結合することができる。ドレッシングは、いくつかの実施形態では、カバー、組織インタフェースまたは両方を含むことができる。ドレッシング102は、たとえば、カバー106および組織インタフェース108を含むことができる。負圧源104にコントローラ110等の調節器またはコントローラも結合することができる。治療システム100は、任意選択的に、ドレッシング102および負圧源104に結合された容器112等の流体容器を含むことができる。
【0021】
治療システム100は、滴下溶液源も含むことができる。たとえば、
図1の実施形態例に示すように、ドレッシング102に溶液源114を流体結合することができる。溶液源114は、いくつかの実施形態では正圧源116等の正圧源に流体結合され得るか、または負圧源104に流体結合され得る。溶液源114およびドレッシング102に滴下調節器118等の調節器も流体結合することができる。いくつかの実施形態では、
図1の例に示すように、滴下調節器118はまた、ドレッシング102を通して負圧源104に流体結合することができる。いくつかの実施形態では、負圧源104および正圧源116は、破線119によって示すように単一の圧力源またはユニットであり得る。
【0022】
さらに、治療システム100は、動作パラメータを測定し、それらの動作パラメータを示すフィードバック信号をコントローラ110に提供することができる。
図1に示すように、たとえば、治療システム100は、コントローラ110に結合された圧力センサ120、電気センサ122または両方を含むことができる。圧力センサ120は、分配構成要素および負圧源104にも結合されるか、または結合されるように構成され得る。
【0023】
構成要素は、構成要素間で流体(すなわち液体および/または気体)を移送するための経路を提供するように互いに流体結合することができる。たとえば、構成要素は、管等の流体導体を通して流体結合することができる。本明細書で用いる「管」は、管、パイプ、ホース、導管、または2つの端部間で流体を運ぶように適合された1つもしくは複数の内腔を備えた他の構造を広く含む。典型的には、管は、幾分かの可撓性がある細長い円筒状構造体であるが、形状および剛性は変更することができる。いくつかの実施形態では、構成要素は、物理的に近接するか、単一構造体に一体化されているか、または同じ材料片から形成されることにより結合することも可能である。さらに、いくつかの流体導体を他の構成要素内にはめ込むか、または他の方法で一体的に結合することができる。結合としては、状況により、機械的結合、熱的結合、電気的結合または化学的結合(化学結合等)も挙げることができる。たとえば、いくつかの実施形態では、容器112にドレッシング102を機械的かつ流体的に結合することができる。
【0024】
概して、治療システム100の構成要素は、直接または間接的に結合することができる。たとえば、負圧源104は、コントローラ110に直接結合することができ、ドレッシング102の組織インタフェース108に、導管126および128により容器112を通して間接的に結合することができる。別法として、正圧源116は、コントローラ110に直接結合することができ、導管132、134および138により溶液源114および滴下調節器118を通して組織インタフェース108に間接的に結合することができる。
【0025】
密閉治療環境内等、別の構成要素または位置において減圧するために負圧源を使用する流体機構は、数学的に複雑である可能性がある。しかしながら、陰圧療法および滴下に適用可能な流体機構の基本原理は、当業者に一般に周知であり、減圧するプロセスは、本明細書では、たとえば負圧を「送達する」、「分配する」または「生成する」として例示的に記載するものとする。
【0026】
一般に、滲出物および他の流体は、流体路に沿って圧力の低い方に向かって流れる。したがって、「下流」という用語は、典型的には、流体路内において相対的に負圧源に近い方または正圧源から遠い方のものを意味する。逆に、「上流」という用語は、相対的に負圧源から遠い方または正圧源に近い方のものを意味する。同様に、こうした基準系において、流体「入口」または「出口」に関していくつかの特徴について記載することが好都合な場合がある。この向きは、概して、本明細書においてさまざまな特徴および構成要素について記載する目的で想定される。しかしながら、いくつかの応用では、(負圧源の代わりに正圧源を用いること等により)流体路を反転させることも可能であり、この説明の慣例は限定的な慣例として解釈されるべきではない。
【0027】
「負圧」は、一般に、ドレッシング102によって提供される密閉治療環境の外部の局所環境における周囲圧力等の局所周囲圧力より低い圧力を指す。多くの場合、局所周囲圧力は、組織部位が位置する大気圧でもあり得る。別法として、圧力は、組織部位における組織に関連する静水圧未満であり得る。別段指示のない限り、本明細書で述べる圧力の値はゲージ圧である。同様に、負圧の上昇という場合、それは、通常、絶対圧の低下を指し、負圧の低下は、通常、絶対圧の上昇を指す。組織部位にかけられる負圧の量および性質は、治療要件に従って変化する可能性があるが、圧力は、概して、-5mmHg(-667Pa)~-500mmHg(-66.7kPa)の、一般に粗い真空(rough vacuum)とも呼ばれる低真空である。一般的な治療範囲は、-75mmHg(-9.9kPa)~-300mmHg(-39.9kPa)である。
【0028】
負圧源104等の負圧供給部は、負圧での空気のリザーバであり得るか、またはたとえば真空ポンプ、吸引ポンプ、多くの医療施設で利用可能な壁面吸引ポートまたはマイクロポンプ等、密閉空間内で減圧することができる手動または電動の装置であり得る。負圧供給部は、センサ、処理ユニット、警報表示器、メモリ、データベース、ソフトウェア、表示装置、もしくは治療をさらに容易にするユーザインタフェース等の他の構成要素内に収容されるか、またはそうした他の構成要素とともに使用され得る。たとえば、いくつかの実施形態では、負圧源104をコントローラ110および他の構成要素と組み合わせて、治療システム101等の治療ユニットにすることができる。負圧供給部は、負圧供給部の1つまたは複数の分配構成要素に対する結合および分離を容易にするように構成された1つまたは複数の供給ポートも有することができる。
【0029】
組織インタフェース108は、概して組織部位と接触するように適合され得る。組織インタフェース108は、組織部位と部分的にまたは完全に接触することができる。組織部位がたとえば創傷である場合、組織インタフェース108は、創傷を部分的にまたは完全に塞ぐことができ、または創傷の上に配置され得る。組織インタフェース108は、多くの形態をとることができ、実施されている治療のタイプまたは組織部位の性質およびサイズ等、種々の要素に応じて多くのサイズ、形状または厚さを有することができる。たとえば、組織インタフェース108のサイズおよび形状は、深くかつ不規則な形状の組織部位の輪郭に適合させることができる。さらに、組織インタフェース108の表面の任意のものまたはすべてが組織部位に対してひずみおよび応力を引き起こすことができる、突起または不均一な経路もしくは鋸歯状の輪郭を有することができ、それにより組織部位における肉芽形成を促進することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、組織インタフェース108はマニホールド140であり得る。「マニホールド」は、これに関連して、概して、圧力下で組織部位にわたって流体を収集または分配するように適合された複数の経路を提供する任意の物質または構造を含む。たとえば、マニホールドは、負圧源から負圧を受け取り、組織部位にわたって複数の開口部を通して負圧を分配するように適合させることができ、それには、組織部位にわたって流体を収集し、流体を負圧源に向かって引き寄せるという効果があり得る。いくつかの実施形態では、流体路を反転させることができ、または組織部位にわたる流体の送達を促進するように二次流体路を設けることができる。いくつかの例示的な実施形態では、組織部位にわたる流体の分配または収集を促進するために、マニホールドの経路を相互接続することができる。いくつかの実施形態では、マニホールドは、さらにまたは別法として、相互接続された流体経路を形成する突起を含むことができる。たとえば、相互接続された流体経路を画定する表面突起を提供するようにマニホールドを成形することができる。
【0031】
組織インタフェース108は、疎水性または親水性の何れでもあり得る。親水性材料の例としては、ポリビニルアルコールおよびポリエーテルが挙げられる。組織インタフェース108は、親水性特性を示し、親水性特性を提供するように処理またはコーティングされた疎水性発泡体を含むことができる。組織インタフェース108は、封止治療環境内の圧力が低下した場合、組織部位における肉芽形成をさらに促進することができる。たとえば、組織インタフェース108の表面のうちの任意の何れかまたはすべてが、たとえば、突起または他の規則的なもしくは不規則な形状等、不均一な、粗い、またはギザギザ状の輪郭を有することができ、それにより、組織インタフェース108を通して負圧がかけられるときに、組織部位に微小ひずみおよび応力を引き起こすことができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、カバー106は、細菌バリアおよび物理的外傷からの保護を提供することができる。カバー106は、蒸発損失を低減させ、かつ2つの構成要素、または治療環境と局所外部環境との間等、2つの環境間に流体シールを提供することができる材料からも構築することができる。カバー106は、たとえば、所与の負圧源に対して組織部位において負圧を維持するのに適切なシールを提供することができるエラストマーフィルムまたは膜であり得る。カバー106は、いくつかの応用では高い水蒸気透過率(MVTR)を有することができる。たとえば、MVTRは、いくつかの実施形態では少なくとも300g/m2/24時間であり得る。いくつかの実施形態例では、カバー106は、水蒸気に対して透過性であるが、液体に対して不透過性であるポリウレタンフィルム等のポリマードレープであり得る。こうしたドレープは、通常、25~50ミクロンの範囲の厚さを有する。透過性材料の場合、透過性は、一般に、所望の負圧を維持することができるのに十分低くなければならない。
【0033】
取付装置142等の取付装置を用いて、無傷の表皮、ガスケットまたは別のカバー等の取付面にカバー106を取り付けることができる。取付装置は、多くの形態をとることができる。たとえば、取付装置は、周縁部、一部分または封止部材全体に延在する医学的に許容可能な感圧接着剤であり得る。いくつかの実施形態では、たとえば、カバー106の一部またはすべてに対して、25~65グラム/平方メートル(g.s.m.)のコーティング重量を有するアクリル系接着剤でコーティングすることができる。いくつかの実施形態では、シールを促進し漏れを低減させるように、より厚い接着剤または接着剤の組合せを塗布することができる。取付装置の他の実施形態例としては、両面テープ、糊、親水コロイド、ヒドロゲル、シリコーンゲルまたはオルガノゲルを挙げることができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、ドレッシングインタフェースにより、ドレッシング102への負圧源104の結合を容易にすることができる。負圧源104によって提供される負圧は、導管128を通して、エルボポート146を含むことができる負圧インタフェース144に送達することができる。1つの例示的な実施形態では、負圧インタフェース144は、KCI(San Antonio、Texas)から入手可能なT.R.A.C.(登録商標)パッドまたはSensaT.R.A.C.(登録商標)パッドである。負圧インタフェース144により、負圧をカバー106に送達し、カバー106およびマニホールド140の内部で具現化することができる。この例示的な非限定的な実施形態では、エルボポート146は、カバー106を通ってマニホールド140まで延在するが、多数の配置が可能である。
【0035】
治療システム100はまた、流体送達インタフェース148等、正圧源116のドレッシング102への結合を容易にすることができる第2インタフェースも含むことができる。正圧源116によって提供される正圧は、導管138を通して送達することができる。流体送達インタフェース148はまた、ドレッシング102に流体結合することができ、カバー106にあけられた孔を貫通することができる。流体送達インタフェース148のためにカバー106にあけられた孔は、その位置または負圧インタフェース144が貫通することができるカバー106にあけられた他の孔から分離され得る。流体送達インタフェース148により、本技術の抗菌溶液等の流体を、治療システム100によりカバー106を通してマニホールド140まで送達することができる。いくつかの実施形態では、流体送達インタフェース148は入口パッドを含むことができる。入口パッドは、吸音性でない材料であり得る。いくつかの実施形態では、入口パッドはエラストマーであり得る。たとえば、入口パッドは、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー、ポリエーテルブロックアミド(PEBAX)、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、クロロスルホン化ポリエチレンおよびポリイソブチレン、ブレンドおよびコポリマー等、エラストマーポリマーであり得る。1つの例示的な実施形態では、流体送達インタフェース148および負圧インタフェース144は、Kenetic Concepts,Inc.(San Antonio、Texas)から入手可能なV.A.C.VeraT.R.A.C.(商標)パッド等、組織部位150への溶液の送達および組織部位150からの溶液の除去のための単一パッドに組み込むことができる。
【0036】
コントローラ110等のコントローラは、負圧源104等、治療システム100の1つまたは複数の構成要素を動作させるようにプログラムされたマイクロプロセッサまたはコンピュータであり得る。いくつかの実施形態では、たとえば、コントローラ110は、概して、治療システム100の1つまたは複数の動作パラメータを直接または間接的に制御するようにプログラムされた、プロセッサコアおよびメモリを含む集積回路を含むマイクロコントローラであり得る。動作パラメータとしては、たとえば、負圧源104に印加される電力、負圧源104によって生成される圧力、または組織インタフェース108に分配される圧力を挙げることができる。コントローラ110は、好ましくは、フィードバック信号等の1つまたは複数の入力信号を受け取るようにも構成され、入力信号に基づいて1つまたは複数の動作パラメータを変更するようにプログラムされる。
【0037】
圧力センサ120または電気センサ122等のセンサは、一般に、当技術分野において、物理現象または物理特性を検出するかまたは測定し、検出されるかまたは測定される現象または特性を示す信号を提供するように動作可能な任意の装置として知られる。たとえば、圧力センサ120および電気センサ122は、治療システム100の1つまたは複数の動作パラメータを測定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、圧力センサ120は、空気圧経路における圧力を測定し、測定値を測定された圧力を示す信号に変換するように構成された変換器であり得る。いくつかの実施形態では、たとえば、圧力センサ120は、ピエゾ抵抗ひずみゲージであり得る。電気センサ122は、任意選択的に、いくつかの実施形態では、電圧または電流等、負圧源104の動作パラメータを測定することができる。好ましくは、圧力センサ120および電気センサ122からの信号は、コントローラ110への入力信号として好適であるが、いくつかの実施形態では、何らかの信号処理が適している場合がある。たとえば、信号は、コントローラ110によって処理することができる前にフィルタリングまたは増幅される必要がある場合がある。通常、信号は電気信号であるが、光信号等、他の形態で表すことができる。
【0038】
容器112は、組織部位から引き出された滲出物および他の流体を管理するために使用することができる容器、キャニスタ、パウチまたは他の貯蔵構成要素を表す。多くの環境では、流体の収集、貯蔵および廃棄のために剛性容器が好ましいかまたは必要であり得る。他の環境では、剛性容器による貯蔵なしに流体を適切に廃棄することができ、再使用可能な容器により、陰圧療法に関連する廃棄物を低減させかつコストを削減することができる。
【0039】
溶液源114もまた、滴下療法のための溶液を提供することができる、容器、キャニスタ、パウチ、バッグまたは他の貯蔵構成要素を表すことができる。滴下療法用の溶液は、処方される療法に従って変化する抗菌溶液を含むことができる。他の実施形態では、方法は、他の治療溶液の投与をさらに含むことができる。いくつかの処方に好適であり得るこうした他の治療溶液の例としては、次亜塩素酸塩系溶液、硝酸銀(0.5%)、硫黄系溶液、ビグアニドおよび陽イオン溶液が挙げられる。1つの例示的な実施形態では、溶液源114は、溶液用の貯蔵構成要素と、Kinetic Concepts,Inc.(San Antonio、Texas)から入手可能なV.A.C.VeraLink(商標)カセット等、貯蔵構成要素を保持し溶液を組織部位150に送達する別個のカセットとを含むことができる。
【0040】
動作時、組織部位150等の組織部位中に、その上にわたって、その上に、または他の方法で近接して組織インタフェース108を配置することができる。組織インタフェース108の上にカバー106を配置して、組織部位150の近くの取付面に封止することができる。たとえば、カバー106は、組織部位の周辺の無傷の表皮に封止することができる。したがって、ドレッシング102は、実質的に外部環境から隔離された、組織部位に近接する密閉治療環境を提供することができ、負圧源104は、密閉治療環境において減圧することができる。密閉治療環境において組織インタフェース108を通して組織部位にわたってかけられる負圧は、組織部位においてマクロひずみおよび微小ひずみを引き起こすとともに、容器112内に収集することができる組織部位からの滲出物および他の流体を除去することができる。
【0041】
上述したように、組織部位150は、限定なしに、開放創、手術切開部または罹患組織等、組織の任意の不規則を含む可能性がある。治療システム100は、表皮154、または概して皮膚および真皮156を通り皮下組織(hypodermis)、すなわち皮下組織(subcutaneous tissue)158に達している創傷152を含む粗域部位の状況で提示される。治療システム100を用いて、任意の深さの創傷とともに、開放創、切開部または他の組織部位を含む多くの異なるタイプの創傷を治療することができる。組織部位150は、骨組織、脂肪組織、筋組織、皮膚組織、血管組織、結合組織、軟骨組織、腱、靭帯または他の任意の組織を含む、任意のヒト、動物または他の生物体の体組織であり得る。組織部位150の治療は、滲出物または腹水等、組織部位150から生じる流体、または抗菌溶液等、組織部位150を洗浄または治療するためにドレッシング内に滴下される流体の除去を含むことができる。創傷152は、望ましくない組織160、ドレッシング102または組織部位150の任意の生体表面または非生体表面に形成されたバイオフィルム162、およびドレッシング102内にかつその周囲において液状媒質内に浮遊しているかまたは浮かんでいる浮遊細菌164を含む可能性がある。治療システム100は、生体組織または非生体組織上またはその中に位置する創傷、欠陥または他の治療標的を含む任意のタイプの組織部位を含む、より広い状況で使用することができる。
【0042】
一実施形態では、コントローラ110は、圧力センサ120から、組織インタフェース108に分配される圧力に関連するデータ等のデータを受け取りかつ処理する。コントローラ110は、創傷圧力(WP)と呼ぶ場合もある、組織部位150における創傷152にかけるために組織インタフェース108に分配される圧力を管理するように、治療システム100の1つまたは複数の構成要素の動作も制御することができる。一実施形態では、コントローラ170は、臨床医または他の使用者によって設定される所望の標的圧力(TP)を受け取る入力を含むことができ、組織部位150にかけられる標的圧力(TP)の設定および入力に関するデータを処理するプログラムであり得る。一実施形態例では、標的圧力(TP)は、組織部位150における治療に対して望ましい標的減圧として使用者/介護者が決定し、その後、コントローラ110に入力として提供される固定圧力値であり得る。使用者は、組織部位150がかけられるべき所望の負圧を指示する看護師もしくは医師または他の承認された臨床医であり得る。所望の負圧は、組織部位150を形成する組織のタイプ、(存在する場合には)負傷または創傷152のタイプ、患者の病状、および担当医の選好に基づいて組織部位ごとに変更することができる。所望の標的圧力(TP)を選択した後、組織部位150にかけるように望まれる標的圧力(TP)を達成するように、負圧源104が制御される。
【0043】
より具体的に
図2Aを参照すると、
図1および
図1Aの陰圧および滴下療法システムに使用することができる圧力制御モード200の例示的な実施形態を示すグラフが示されており、そこでは、x軸は、分(min)および/または秒(sec)での時間を表し、y軸は、治療システムで負圧をかけるために使用することができる連続圧力モードおよび間欠圧力モードにおいて、時間によって変化する、ポンプによって生成されるトル(mmHg)での圧力を表す。連続圧力モードでは、実線201および点線202によって示すように、使用者により標的圧力(TP)を設定することができ、そこでは、使用者が負圧源104を停止させるまで創傷圧力(WP)が組織部位150に加えられる。間欠圧力モードでも、実線201、203および205によって示すように、使用者により標的圧力(TP)を設定することができ、そこでは、創傷圧力(WP)は、標的圧力(TP)と大気圧との間で循環する。たとえば、標的圧力(TP)を、使用者により、指定された期間(たとえば、5分)にわたり125mmHgの値に設定することができ、続いて、実線203と205との間の差によって示すように、組織部位150を周囲に排気することにより、指定された期間(たとえば、2分)にわたり治療が停止され、その後、実線205によって示すように、治療を再度開始することによってサイクルを繰り返し、それにより標的圧力(TP)レベルと周囲圧力との間の矩形波パターンが連続的に形成される。
【0044】
いくつかの実施形態例では、組織部位150における創傷圧力(WP)の周囲圧力から標的圧力(TP)への低下は、瞬間的ではなく、むしろ特定の治療に用いられる治療機器およびドレッシングのタイプに応じて漸進的である。たとえば、負圧源104およびドレッシング102は、破線207によって示すように、使用されているドレッシングおよび治療機器のタイプによって変更することができる初期立上り時間を有することができる。たとえば、1つの治療システムに対する初期立上り時間は、約20~30mmHg/秒、またはより具体的には約25mmHg/秒に等しく、別の治療システムでは、約5~10mmHg/秒の範囲であり得る。治療システム100が間欠モードで動作しているとき、実線205で示される繰返し立上り時間は、破線207で示される初期立上り時間と実質的に等しい値であり得る。
【0045】
標的圧力は、動的圧力モードで変化する、コントローラ110によって制御または決定される可変標的圧力(VTP)でもあり得る。たとえば、可変標的圧力(VTP)は、組織部位150における治療に対して望ましい負圧の範囲として使用者によって決定された入力として設定され得る最大圧力値と最小圧力値との間で変化することができる。可変標的圧力(VTP)は、たとえば、組織部位150における治療に対して望まれる所定のまたは時間変化する減圧として使用者によって入力として設定され得る、正弦波または鋸歯状波または三角波等、所定の波形に従って標的圧力(TP)を変更するコントローラ110によっても処理および制御することができる。
【0046】
より具体的に
図2Bを参照すると、
図1および
図1Aの陰圧および滴下療法システムに対する別の圧力制御モードの例示的な実施形態を示すグラフが示されており、そこでは、x軸は、分(min)および/または秒(sec)での時間を表し、y軸は、治療システムで負圧をかけるために使用することができる動的圧力モードにおいて、時間によって変化する、ポンプによって生成されるトル(mmHg)での圧力を表す。たとえば、可変標的圧力(VTP)は、それぞれ+25mmHg/分の速度で設定された立上り時間212および-25mmHg/分で設定された立下り時間211により、最小圧力と最大圧力50~125mmHgの間で変化する三角波形の形態で組織部位150に減圧をかけることにより、有効な治療を提供する減圧であり得る。治療システム100の別の実施形態では、可変標的圧力(VTP)は、+30mmHg/分の速度で設定された立上り時間212および-30mmHg/分で設定された立下り時間211により、25~125mmHgで変化する三角波形の形態で組織部位150に減圧をかける減圧であり得る。
【0047】
図3は、組織部位におけるドレッシングに抗菌溶液または他の治療溶液を送達する陰圧および滴下療法を提供するために使用することができる治療方法300の例示的な実施形態を示すフローチャートである。一実施形態では、コントローラ110は、組織インタフェースに提供される流体に関連するデータ等のデータを受け取りかつ処理する。こうしたデータとしては、臨床医によって処方された滴下溶液のタイプと、組織部位に滴下されるべき流体または溶液の容量(「充填容量」)と、組織部位に負圧をかける前に組織インタフェースを浸漬するために必要な時間の量(「浸漬時間」)とを挙げることができる。充填容量は、たとえば、10~500mLとすることができ、浸漬時間は、1秒~30分であり得る。コントローラ110は、より詳細に上述したように、創傷152に加えるように組織部位150に滴下するために溶液源114から分配される流体を管理するように、治療システム100の1つまたは複数の構成要素の動作も制御することができる。一実施形態では、302に示すように、滴下流体をドレッシング102内に引き込むために組織部位150において減圧するように、負圧源104から負圧をかけることにより、組織部位150に流体を滴下することができる。別の実施形態では、304に示すように、滴下流体を溶液源114から組織インタフェース108に押し込むように負圧源104(図示せず)または正圧源116から正圧をかけることにより、組織部位150に流体を滴下することができる。さらに別の実施形態では、306に示すように、重力により滴下流体を組織インタフェース108内に押し込むために十分な高さまで溶液源114を上昇させることにより、組織部位150に流体を滴下することができる。したがって、治療方法300は、310に示すように、流体を組織インタフェース108内に引き込むかまたは押し込むことにより、組織インタフェース108内に流体を滴下することを含む。
【0048】
治療方法300は、314において連続流を提供するか、または316において組織インタフェース108を浸漬するために間欠流を提供することにより、312において組織インタフェース108に流体溶液を加える流体力学を制御することができる。治療方法300は、320において連続流または間欠浸漬流の何れかを提供するように、組織インタフェース108に負圧をかけることを含むことができる。負圧をかけることは、上述したように、組織インタフェース108を通して滴下流体の連続流量を達成するように322において動作の連続圧力モードを提供するか、または上述したように、組織インタフェース108を通して滴下流体の流量を変更するように324において動作の動的圧力モードを提供するように実施することができる。別法として、負圧をかけることは、上述したように滴下流体が組織インタフェース108内に浸透することを可能にするように、上述したように326において動作の間欠モードを提供するように実施することができる。間欠モードでは、たとえば、治療されている創傷152のタイプと、創傷152を治療するために利用されているドレッシング102のタイプとに応じて、所定の充填容量および浸漬時間を提供することができる。流体の組織インタフェース108内への滴下が完了した後またはその間、治療方法300は、上述したように330において動作の3つのモードの任意の1つを使用して開始することができる。コントローラ110を利用して、310においてさらなる流体を滴下することによって340において別の滴下サイクルを開始する前に、上述したように動作のこれらの3つのモードの任意の1つと陰圧療法の持続時間とを選択することができる。
【0049】
いくつかの例示的な実施形態では、マニホールド140は、互いに結合されて複数の閉鎖セルを画定する封止領域を形成する内面を有する、無孔ポリマーフィルムの2枚のシートを含むことができる。上述したように、マニホールド140が組織部位に配置され、負圧がかけられると、無孔ポリマーフィルムによって形成された閉鎖セルは、マニホールド140および組織部位に負圧をかけるかまたは滴下流体を与えることからもたらされる付着力で完全につぶれない。無孔ポリマーフィルムの2枚のシートは、互いに結合されて閉鎖セルを形成する、2枚のラミネートまたは2枚の別個のシートを有する材料の1枚のシートであり得る。無孔ポリマーフィルムのシートは、最初は、重ね合わされて封止される別個のシートであり得るか、または、ヒートシール可能な面が内向きに面した状態で1枚のシートを独立して折り畳むことにより形成され得る。無孔ポリマーフィルムの各シートはまた、閉鎖セルの用途または所望の構造に応じて、単層構造でも多層構造でもあり得る。
【0050】
無孔ポリマーフィルムのシートは、さまざまな熱可塑性材料、たとえば、ポリエチレンホモポリマーもしくはコポリマー、ポリプロピレンホモポリマーもしくはコポリマー等を含む、閉鎖セルを密閉するように操作することができる任意の可撓性材料を含むことができる。好適な熱可塑性ポリマーの非限定的な例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)および高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレンホモポリマー、ならびに、たとえば、イオノマー、EVA、EMA、不均一(チーグラー・ナッタ触媒)エチレン/アルファ・オレフィンコポリマーおよび均一(メタロセン、シングルサイト触媒)エチレン/アルファ・オレフィンコポリマー等のポリエチレンコポリマーが挙げられる。エチレン/アルファ・オレフィンコポリマーは、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、メチルペンテン等、C3~C20アルファ・オレフィンから選択された1種または複数種のコポリマーとのエチレンのコポリマーであり、ポリマー分子は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、直鎖状中密度ポリエチレン(LMDPE)、超低密度ポリエチレン(very low density polyethylene)(VLDPE)および超低密度ポリエチレン(ultra-low density polyethylene)(ULDPE)を含む、比較的わずかな側鎖分岐を有する長鎖を含む。たとえば、ポリプロピレンホモポリマーまたはポリプロピレンコポリマー(たとえば、プロピレン/エチレンコポリマー)、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート等、他のさまざまな材料もまた適している。
【0051】
上述したように、無孔ポリマーフィルムによって形成される閉鎖セルは、マニホールド140および組織部位に負圧がかけられるかまたは滴下流体が適用されたときにその負圧または滴下流体でつぶれることに対して耐性があることが望ましい。一実施形態では、ポリマーフィルムは、陰圧創傷療法によって生成される付着力の下で伸張に耐えるのに十分な引張強さを有する。材料の引張強さは、応力が単位面積当たりの力、すなわち、パスカル(Pa)、ニュートン/平方メートル(N/m2)、またはポンド/平方インチ(psi)である、応力-ひずみ曲線によって表されるように、伸張に耐える材料の能力である。極限引張強さ(UTS)は、材料が、引っ張られている間に破損または破壊する前に耐えることができる最大応力である。多くの材料が、降伏点、すなわち、材料の降伏強さによって表される非線形領域まで広がることが多い線形応力-ひずみ関係によって定義される、線形弾性挙動を示す。たとえば、高密度ポリエチレン(HDPE)は、高い引張強さを有し、低密度ポリエチレン(LDPE)は、それよりわずかに低い引張強さを有し、それらは、上述したような無孔ポリマーフィルムのシートに対して好適な材料である。直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)も同様に使用されることが多く、それは、力が材料の降伏点まで増大する際に、材料は非常にわずかにしか伸張しないためである。したがって、閉鎖セルは、外力または外圧にさらされたときにつぶれる(または伸張する)ことに耐えることができる。たとえば、HDPEの降伏強さは、26MPa~33MPaの範囲であり、HDPEは37MPaのUTSを有し、LDPEはそれより幾分か低い値を有する。したがって、いくつかの実施形態例では、無孔ポリマーフィルムは、約20MPaを超える降伏強さを有することが望ましい。たとえば、ゴムは、わずか16MPaの降伏強さおよびUTSを有し、したがって、極めて伸縮性があり、わずかな圧力がかけられることにより破壊しやすい。
【0052】
図4および
図4A1~
図4A3をより具体的に参照すると、マニホールド140の一実施形態例は、無孔ポリマーフィルムの2枚のシート、すなわちシート402およびシート403を備えたマニホールド400であり、無孔ポリマーシートは、互いに結合されて、複数の閉鎖セル404を画定する封止領域406を形成する内面を有する。内面を互いに結合して閉鎖セル404を形成することができ、閉鎖セル404は、負圧がかけられることから、閉鎖セルが過度につぶれるのを阻止するように、実質的に気密であり、マニホールドを通る流体の流れを遮断することができる。一実施形態例では、封止領域406は、シート402および403の内面の間のヒートシールによって形成することができる。別の実施形態例では、封止領域406は、シート402および403の間の接着によって形成することができる。別法として、シート402および403を互いに接着接合することができる。閉鎖セル404は、形成されるとき、実質的に気密であり、実質的に周囲圧力である内圧を有することができる。別の実施形態例では、閉鎖セル404は、空気、またはたとえば二酸化炭素もしくは窒素等の他の好適な気体によって膨張させることができる。閉鎖セル404は、圧力下でそれらの形状およびつぶれに対する抵抗を維持するために、大気圧より高い内圧を有するように膨張させることができる。たとえば、閉鎖セル404は、上述したようにつぶれないように、大気圧を最大約25psi上回る圧力まで膨張させることができる。
【0053】
封止領域406は、閉鎖セル404の間に封止セグメントを含み、封止セグメントは、マニホールド400が組織部位の形状に一致するように十分可撓性があるように、十分可撓性があり得る。封止セグメントは、より詳細に後述するように、組織部位に対して最適な陰圧および滴下療法を提供するために、マニホールド400を組織部位に配置される2つ以上の層に折り畳むことができるように、十分に可撓性がありまたはそのようなサイズであり得る。封止領域406の封止セグメントは、隣接する閉鎖セル404の間の共通の境界としての役割を果たす。流体がマニホールド400を通って流れるための経路を提供するために、封止領域406の封止セグメントに穴をあけることも可能である。一実施形態例では、封止領域406は複数のアパーチャ405を含むことができ、それらは、封止領域406において閉鎖セル404の間に形成され、流体がマニホールド400を通って流れることができるようにシート402および403の両方を通して延在する。アパーチャの数は、より詳細に上述したように、システムによって提供される陰圧および滴下療法のタイプに応じて異なり得る。アパーチャは、たとえば、円形、楕円形もしくは矩形、または他の不規則な形状等、異なる形状を有することができる。こうしたアパーチャは、約0.5mm~1.5mmの直径、長軸または長さを有することができる。別の実施形態例では、アパーチャは、封止領域406のセグメントを通して切り取られたスリットによって形成することができる。
【0054】
封止領域406は、閉鎖セル404の基部または断面形状を、図示するように概して円形であるように規定することができるが、他の実施形態では、基部を、矩形もしくは三角形状、六角形または他の幾何学的なもしくは不規則な形状であるものとして規定することができる。閉鎖セル404は、閉鎖セル404の断面形状に対応する立体(volumetric)形状で形成することができる。たとえば、立体形状は、図示するように、概して半球状または球状の形状であり得る。他の実施形態例では、閉鎖セル404は、概して円錐形、円筒形、平坦化したまたは半球状の端部を有する管状、または測地線形状である立体形状で形成することができる。形状が概して半球状または球状である閉鎖セル404は、約0.5mm~10mmの直径を有することができる。閉鎖セル404はまた、約1.5mm~15mmのピッチ、すなわち、閉鎖セル404の各々の間の中心間距離も有することができる。封止領域406は、円形基部の直径を含む閉鎖セル404の基部と隣接する閉鎖セル404のピッチとを規定するため、閉鎖セル404によって覆われるマニホールド400の表面積は、パーセンテージ、すなわちセル被覆率としても決定することができる。閉鎖セル404の直径が約1.0mmであり、ピッチが約2.0mmである、一実施形態例では、セル被覆率は、マニホールド400の表面積の約22%である。閉鎖セル404の直径が約2.0mmであり、ピッチが約5.0mmである、別の実施形態例では、セル被覆率は、マニホールド400の表面積の約14%である。閉鎖セル404の直径が約1.0mmであり、ピッチが約1.5mmである。さらに別の実施形態例では、セル被覆率は、マニホールド400の表面積の約30%である。閉鎖セル404の直径が約1.5mmであり、ピッチが約2.0mmであり、閉鎖セル404が、マニホールド400の10mm2部分において約28.5のセルがあるようにより密に配置されている、さらに別の実施形態例では、セル被覆率は、マニホールド400の表面積の約51%である。閉鎖セル404の直径、ピッチおよび配置に応じて、セル被覆率は、マニホールドの表面積の約10%~約55%の範囲であり得る。他の基部形状または立体形状を有する閉鎖セル404もまた、概して同じ範囲のセル被覆率を有することができる。
【0055】
上述したように、閉鎖セル404の実施形態は、半球形状、球形状、円錐形状、円筒形状、または平坦化したもしくは半球状の端部があるように形成された管状形状を含む、立体形状を有することができる。これらの立体形状は、
図4A1に示す単一の半球形状(閉鎖セル414)および
図4A3に示すような球形状を形成するように互いに位置合せされた2つの半球形状(閉鎖セル434)等、一方または両方のシート402および403に形成することができる。閉鎖セル404は、約0.25mm~約5mm、たとえば、上記例に記載したように半球形状を有する閉鎖セル404の直径の約半分の高さを有することができる。別の実施形態例では、閉鎖セル404は、封止領域406から半球状端部まで延在する概して平行な壁で形成された概して管状の形状を有することができる。さらに別の実施形態では、管状形状を有する閉鎖セル404は、約1.5mmの直径と約2.0mm~4.0mmの範囲の平均高さとを有することができる。閉鎖セルに対するいかなる言及も、上述した立体形状のうちの任意のものに対して等しく適用することができることが理解されるべきである。
【0056】
シート402および403は、各々、約5μm~500μmの厚さを有することができ、封止領域406は、約10μm~1000μmの厚さを有することができる。シート402および403を結合することによって形成された後の閉鎖セル404の壁は、合わさって、シート402および403の平均厚さに対する閉鎖セル404の平均高さの比である延伸比によって定義される、シート402および403の厚さに対する厚さを有することができる。閉鎖セル404が概して管状の形状を有する一実施形態例では、シート402および403は、250μmの平均厚さを有することができ、閉鎖セル404は、約2.0mm~4.0mmの範囲の平均高さを有することができ、直径が約1.5mmである。したがって、閉鎖セル404は、2.0mmおよび4.0mmそれぞれの高さに対して約8:1~約16:1の範囲の延伸比を有する。別の実施形態例では、シート402および403は、100μmの平均厚さを有することができ、閉鎖セル404は、約2.0mm~4.0mmの範囲の平均高さを有することができ、直径は約1.5mmである。したがって、閉鎖セル404は、2.0mmおよび4.0mmそれぞれの高さに対して約20:1~約40:1の範囲の延伸比を有する。さらに他の実施形態例では、シート402および403の厚さが約250μm未満である場合、延伸比は約16:1を超えることが望ましい。シート402および403は、各々、同じかまたは異なる厚さおよび可撓性を有することができるが、マニホールド400に負圧がかけられるかまたは滴下流体が与えられた後に閉鎖セル404が破裂することなく概して一定の容積を維持するように、上述したように実質的に非伸縮性である。したがって、マニホールド400に対して、閉鎖セル404を圧搾して異なる形状にする負荷がかけられた場合であっても、閉鎖セル404は、圧搾された後に破裂することなくそれらの元の形状を回復するように十分に可撓性がある。
【0057】
一実施形態例では、閉鎖セル404は、たとえば、
図4A1に示すように半球形状を有する閉鎖セル414等、封止領域406の一方の側のみから延在するように、シート402および403のうちの一方のみに形成することができる。より具体的には、マニホールド400は、複数の閉鎖セル414を画定するパターンで互いに結合された内面を有する、ポリマーフィルムの2枚のシート、すなわちシート412および413を含むマニホールド410であり得る。シート412および413は、形状が概して半球状である閉鎖セル414を画定する封止領域416において互いに封止することができる。閉鎖セル414は、異なる厚さまたは可撓性を有するポリマーフィルムのシートを用いることにより、封止領域416の一方の側のみに形成することができる。たとえば、シート413に真空をかけることによって、シート413に閉鎖セル414を形成することができ、その場合、シート412は、かけられている真空に耐え、概して平面の形状を維持するように、シート413より十分に厚い。当業者であれば、封止領域406の一方の側のみから延在するように、他の形状を有する閉鎖セル414を形成することができることと、種々の異なる方法を用いることによってこうしたセルを形成することができることとが理解される。たとえば、閉鎖セル414は、シート413において別個に形成することができ、シート413は、シート413と同じ厚さを有することができるシート412に後に結合され、それにより、封止領域416は薄く可撓性があるままである。
【0058】
別の実施形態例では、シート402および403の両方に閉鎖セル404を形成することができ、それにより、閉鎖セル404は、たとえば、
図4A3に示す半球状閉鎖セル等、封止領域406の両側から延在する。より具体的には、マニホールド400は、両シート432およびシート433において複数の閉鎖セルを画定するパターンで互いに結合された内面を有する、ポリマーフィルムの2枚のシート、すなわちシート432およびシート433を含むマニホールド430であり得る。たとえば、シート432および433の各々に形成された閉鎖セルは、たとえば、
図4A3に示すような概して球状の形状を有する単一の閉鎖セル434を形成するように位置合せされる、半球状セル444および半球状セル454等、形状が半球状であり得る。言い換えれば、単一の閉鎖セル434の各々は、シート432および433にそれぞれ形成された2つの半球状セル、すなわち半球状セル444および半球状セル454を含む。形状が概して球状である閉鎖セル434を画定する封止領域436において、シート432および433を互いに封止することができる。他の実施形態例では、各シートにおける閉鎖セルは互いに位置合せされず、対向するシートの封止部分とオーバーラップするかまたは位置合せされる場合もある(図示せず)。異なる厚さまたは可撓性を有するポリマーフィルムのシートを用いることにより、封止領域436の両側に閉鎖セル434を形成することができる。たとえば、シート432および433の場合、閉鎖セル434の形状は非対称であり得る。しかしながら、シート432および433が実質的に同一の厚さまたは可撓性を有する場合、閉鎖セル434の形状は、
図4A3に示すように実質的に球状であり得る。
【0059】
さらに別の実施形態では、マニホールド400は、第3シート(図示せず)を含み、多シート構成を形成することができ、そこでは、第3シートは、シート402および403の間に配置され、材料の第3シートの一部によって分離される2つの半球状部によって形成された、形状が概して球状であり得る閉鎖セル404を形成する。
図4A2をより具体的に参照すると、マニホールド400は、第3シート428に結合または接合されて、複数の閉鎖セル424を画定する封止領域426を形成する内面を有する、ポリマーフィルムのシート422およびシート423を含む、マニホールド420であり得る。閉鎖セル424は、形状が概して球状であり、第3シート428の一部によって分離される2つの半球部によって形成される。たとえば、溶着(たとえば、RF、超音波および熱)、ホットメルトおよび溶剤の両方を用いる接着剤、ならびにプレス加工技法を含む種々の異なる方法を用いて、第3シート428にシート422およびシート423を結合または接合することができる。マニホールド420はまた、各マニホールド410のシート412の外側平面を互いに結合または接合してマニホールド420を形成することにより、マニホールド410のうちの2つを互いに結合することによって、形成することも可能である。第3シート428は、ポリマーフィルムから形成することができ、閉鎖セル424の2つの半球状部の間の空気流を可能にするように穴をあけることも可能である。第3シート428がポリマー材料から形成される場合、第3シート428に対して、吸上げ(ウィッキング)特性を提供するようにテクスチャ加工することも可能である。第3シート428はまた、閉鎖セル424内で吸上げを可能にするようにポリエステル材料から形成することも可能であり、追加の吸上げ特性を可能にするようにポリエステル材料内にフロック加工された繊維をさらに含むことができる。第3シート428はまた、第3シート428にコーティングされた抗菌層または抗菌物質を含むことも可能である。
【0060】
マニホールド400、410、420および430は、組織部位に配置される場合、各々、組織部位に面するそのポリマーフィルムシートのうちの1枚、より具体的には、組織に面するシートの外面を有することができる。組織に面するシートの外面は、突起またはくぼみであり得る表面特徴があるようにテクスチャ加工されて、マニホールドを通る流体流を促進し、肉芽形成を促進するように組織部位に対する微小ひずみを増大させることができる。より具体的には、組織部位に面するシートの外側は、シートの外面にエンボス加工された個々のこぶ状部もしくは突起のパターン、シートの外面にエンボス加工された格子、シートの外面に形成された溝のパターンもしくは格子、または上述したものの任意の組合せをさらに含むことができる。
図4A1および
図4Bに示すような一実施形態例では、概して平面であるシート412の外面に突起またはこぶ状部419をエンボス加工することができ、それにより、マニホールド410が組織部位に配置されたとき、こぶ状部419は組織部位と接触する。
図4A2に示すような別の実施形態例では、シート422の外面に、より具体的には閉鎖セル424の表面に、突起またはこぶ状部429をエンボス加工することができ、それにより、マニホールド420が組織部位に配置されたとき、こぶ状部429は組織部位と接触する。平坦であり、使用するときに組織部位に面する、シート402の外面に、複数の異なるテクスチャまたは形状を形成することができる。一実施形態例では、
図4Cに示すように、組織に面するシート、たとえばシート402またはシート412の外面に、織パターンで格子449をエンボス加工するかまたは押出成形することができる。格子449のパターンは、図示するダイヤモンド形状パターンのような種々の形状を有することができる。マニホールドを通る流体流を促進しかつ/または組織部位の肉芽形成を促進するように、マニホールド400、410、420および430のうちの任意のもののシートの組織に面する面に、多くのタイプの突起または格子を形成することができることが理解されるべきである。さらに、エンボス加工、溶着、または他の任意の同様のタイプの結合機構により、こうした突起または格子のうちの任意のものを形成することができることが理解されるべきである。
【0061】
上述したように、こぶ状部419は、可撓性があるかまたは剛性がある突起であり得る。一実施形態では、突起は、シリコーン等の実質的に気体不透過性の材料から形成することができる。別の実施形態では、突起は、気体半透過性材料から形成することができる。突起は、シート402および403の一体部として形成することができ、したがって、上述したように同じ材料からも形成することができる。一実施形態では、突起は中実であり得るが、他の実施形態では、可撓性を向上させるように中空であり得る。突起は、減圧を分配し、突起の間の流体流を可能にするように、上述したように複数のチャネルおよび/または空隙を形成することができる。突起は、組織部位150において、減圧がかけられたときに肉芽形成を活性化するために組織部位150において微小ひずみをもたらすのに十分な局所負荷点を提供するような寸法とすることができる。突起のパターンおよび位置は、均一である場合もあれば不均一である場合もある。突起は、たとえば、スパイク、円錐体、角錐体、ドーム、円筒または矩形の形状を含む種々の形状を有することができる。突起の形状は、組織部位150に応じて均一でも不均一でもあり得る。突起の形状は、立方体容積によって画定された容積を占有することができ、そこでは、立方体の側面は、約0.2mm~約1.5mmの範囲となる。一実施形態では、スパイク形状は、約0.2mmの基部幅または直径と、約0.4mm~0.8mmの垂直高さとを有することができる。別の実施形態では、円錐体形状は、約0.4mmの基部直径と、0.4mm~1.2mmの垂直高さとを有することができる。さらに別の実施形態では、ドーム形状は、基部直径が約0.4mm~1mmの範囲である、球状キャップまたは放物線形状を有することができる。
【0062】
他のいくつかの例示的な実施形態では、マニホールド400は、相互接続された閉鎖セルによって形成されたチャンバをさらに含むことができ、それにより、チャンバの容積が個々の閉鎖セルの容積より大きいために、負圧をかける結果としてマニホールド400に加えられる付着力をより適切に分配する。
図5に示す一実施形態例では、マニホールド500は、すべての点でマニホールド400に類似しており、複数の閉鎖セル504を画定するパターンで互いに結合された内面を有する、ポリマーフィルムの2枚のシート502および503を含む。シート502および503を互いに封止して、閉鎖セル504を画定する封止領域506を形成することができる。封止領域506に穴をあけることにより、流体がマニホールド500を通って流れるための経路を提供することも可能である。一実施形態例では、封止領域506は、封止領域506において閉鎖セル504の間に形成される複数のアパーチャ505を含むことができ、それらは、流体がマニホールド500を通って流れるのを可能にするように、シート502および503の両方を通して延在する。マニホールド500はまた、閉鎖セル504のうちの少なくとも2つを流体結合して閉鎖チャンバを形成する複数の通路508も含むことができる。一実施形態例では、
図5に示すように、閉鎖チャンバ548は、通路508によって流体結合された行において閉鎖セル504のすべてによって形成される。同様に
図5に示すように、他の6つの行の各々において、閉鎖チャンバ548を形成することができる。任意のパターンの閉鎖セルによる閉鎖チャンバの形成により、マニホールド500にかけられる付着力が、マニホールド500を横切ってより均一に分配される。
【0063】
一実施形態例では、マニホールド500は、
図5A1に示すように、すべての点でマニホールド500にかつ多くの点でマニホールド410に類似するマニホールド510であり得る。より具体的には、マニホールド510は、複数の閉鎖セル514を画定するパターンで互いに結合された内面を有する、ポリマーフィルムの2枚のシート、すなわちシート512およびシート513を含む。形状が概して半球状である閉鎖セル514を画定する封止領域516において、シート512および513を互いに封止することができる。マニホールド510はまた、閉鎖セル514を相互接続して閉鎖チャンバ558を形成する複数の通路518も含むことができる。閉鎖チャンバ558は、
図5A1に示すように封止領域516の一方の側のみから延在するように、シート512および513のうちの一方のみに形成することができる。
【0064】
別の実施形態例では、マニホールド500は、
図5A3に示すように、すべての点でマニホールド500にかつ多くの点でマニホールド430に類似するマニホールド530であり得る。より具体的には、マニホールド530は、複数の閉鎖セル534を画定するパターンで互いに結合された内面を有する、ポリマーフィルムの2枚のシート、すなわちシート532およびシート533を含む。形状が概して球形である閉鎖セル534を画定する封止領域536において、シート532および533を互いに封止することができる。マニホールド530はまた、閉鎖セル534を相互接続して閉鎖チャンバ578を形成する複数の通路538も含むことができる。閉鎖チャンバ578は、封止領域536の両側から延在するように、シート532および533の両方に形成され、封止領域516の一方の側のみから延在する閉鎖チャンバ558より高い可撓性および緩衝作用を提供する。
【0065】
さらに別の実施形態例では、マニホールド500は、
図5A2に示すように、マニホールド500にかつ多くの点でマニホールド420に類似するマニホールド520であり得る。より具体的には、マニホールド520は、複数の閉鎖セル524を画定する封止領域526を形成するように第3シート528に結合または接合された内面を有する、ポリマーフィルムの2枚のシート、すなわちシート522およびシート523を含む。閉鎖セル524は、形状が概して球形であり、第3シート528の一部によって分離される2つの半球状部によって形成される。たとえば、溶着(たとえば、RF、超音波および熱)、ホットメルトおよび溶剤両方を用いる接着剤ならびにプレス加工技法を含む種々の異なる方法を用いて、シート522およびシート523を第3シート528に結合または接合することができる。各マニホールド510のシート512の外側平面を結合または接合してマニホールド520を形成することにより、マニホールド510のうちの2つを互いに結合することによって、マニホールド520を形成することも可能である。第3シート528は、ポリマーフィルムから形成することができ、閉鎖セル524の2つの半球状部の間の空気流を可能にするように穴をあけることも可能である。第3シート528は、ポリマー材料から形成される場合、吸上げ特性を提供するようにテクスチャ加工することも可能である。第3シート528は、閉鎖セル524内で吸上げを可能にするようにポリマー材料から形成することも可能であり、追加の吸上げ特性を提供するようにポリエステル材料内にフロック加工される繊維をさらに含むことができる。第3シート528はまた、第3シート528にコーティングされた抗菌層または抗菌物質も含むことができる。
【0066】
マニホールド400および500はともに、互いに近接して複数の閉鎖セル404および504を画定するパターンで互いに封止された内面を有する、ポリマーフィルムの2枚のシート402、403および502、503を含む。閉鎖セル404を画定する封止領域406および506において、シート402、403および502、503を互いに封止することができる。両実施形態において、個々のセルを交互の行の間により密に互いに入れ子にして、封止領域406、506それぞれによって画定されるように同じ平面に形成されたセルの入れ子パターンを形成することができるように、閉鎖セル404および504の行は互い違いになっている。他の実施形態では、利用されている特定の治療に好適な他のパターンで閉鎖セルを配置することができる。
図6を参照すると、たとえば、マニホールド600はまた、互いに近接して複数の閉鎖セル604を画定するパターンで互いに封止された内面を有する、ポリマーフィルムの2枚のシート602および603も含む。しかしながら、閉鎖セル604の行および列は互い違いではなく、位置合せされたパターンで配置される。閉鎖セル604の直径およびピッチに応じて、セル被覆率は、マニホールド600の表面積の約10%~約55%の範囲であり得る。閉鎖セル604を画定する封止領域606において、シート602および603を互いに封止することができる。この実施形態では、閉鎖セル604の行および列は、一直線に配置されて整列パターンを形成する。マニホールド600はまた、上述したように穴をあけることができる封止領域606も含むことができる。閉鎖セルのパターンは、種々の異なる配置を有することができる。
【0067】
図7に示す別の例示的な実施形態では、マニホールド700は、マニホールド600に類似しており、互いに近接して複数の閉鎖セル704を画定するパターンで互いに封止された内面を有する、ポリマーフィルムの2枚のシート702および703を含む。閉鎖セル704を画定する封止領域706において、シート702および703を互いに封止することができる。流体がマニホールド700を通って流れるための経路を提供するように、封止領域706に穴をあけることも可能である。1つの例示的な実施形態では、封止領域706は、封止領域706において閉鎖セル704の間に形成される複数のアパーチャ705を含むことができ、それらは、マニホールド700を通る流体流を可能にするようにシート702および703の両方を通して延在する。マニホールド700はまた、閉鎖セル704を相互接続して閉鎖チャンバを形成する複数の通路708も含むことができる。1つの例示的な実施形態では、閉鎖チャンバ748は、
図7に示すように通路708によって流体結合された行で閉鎖セル704のすべてによって形成される。同様に
図7に示すように、他の6つの行の各々において、閉鎖チャンバ748を形成することができる。任意のパターンの閉鎖セル704によって閉鎖チャンバ748を形成することにより、閉鎖セルのみを有するマニホールドとは対照的に、マニホールド700にかけられる付着力を、マニホールド700を横切ってより均一に分配することができる。
【0068】
図8を参照すると、カバー106および組織インタフェース108を含むドレッシング102が示されており、そこでは、組織インタフェース108はマニホールド140、より具体的には、
図4A1および
図4Bに示すマニホールド410である。一実施形態では、シート412が創傷152に隣接して配置され、こぶ状部419がシート412から外側に延在して創傷152と接触するように、組織部位150においてマニホールド410を配置することができる。こぶ状部419は、シート412の外面と創傷152との間に空隙812を形成することができる。閉鎖セル414は、カバー106がマニホールド410の上に配置されたときにカバー106と接触するように適合された上面814を有する。閉鎖セル414はまた、治療セッション中に負圧および滴下液体の両方に対する流体流のための通路を提供するために、カバー106および封止領域416と複数のチャネル818を形成する側面816も有する。アパーチャ405は、空隙812にチャネル818を流体結合し、それにより、マニホールド410は、流体送達インタフェース148から組織部位150まで、かつ組織部位150から負圧インタフェース144まで流体連通を提供する。
【0069】
上述したように流体の滴下ありでまたはなしで動作時にマニホールド410に負圧がかけられると、マニホールド410は、減圧サイクル中にカバー106の下で圧縮され、アパーチャ405を介して空隙812およびチャネル818内で生成された真空により、カバー106が創傷152に向かってつぶれるようにする付着力を生成する。付着力により、カバー106は、閉鎖セル414の上面でつぶれ、付着力は、閉鎖セル414を介してこぶ状部419に伝達され、肉芽形成を促進するように創傷152において微小ひずみを増大させる。マニホールド410に負圧をかける間、閉鎖セル414は形状を変化させるかまたは幾分か平坦になる可能性があるが、閉鎖セル414の容積は上述したように実質的に一定のままであり、それにより、マニホールド410は、チャネル818を通る流体流を維持しながらこぶ状部419に付着力を伝達して、創傷152に対して陰圧療法を提供し続ける。したがって、マニホールド410は、こぶ状部419に付着力をかけ、そうした付着力が、チャネル818および空隙812を介して組織部位150との流体連通を維持しながら、肉芽形成を促進する。負圧が減圧サイクル中に上昇し、かつ/または治療中に変更される際、閉鎖セル414の可撓性によってまた、こぶ状部419の動きが促進され、それにより、追加の動きによって肉芽形成がさらに促進される。
【0070】
図9を参照すると、カバー106および組織インタフェース108を含むドレッシング102が示されており、そこでは、組織インタフェース108は、マニホールド140、より具体的には、
図4A3に示すマニホールド430である。一実施形態では、シート432が創傷152に面して配置され、半球状セル454がシート432から創傷152に向かって外側に延在するように、組織部位150にマニホールド430を配置することができる。半球状セル454は、マニホールド430が組織部位150に配置されたときに創傷152と接触するように適合された近位面912を有する。閉鎖セル434はまた、創傷152に対する治療セッション中に負圧および滴下液体の両方に対する流体流のための通路を提供するために、創傷152および封止領域436と複数の近位チャネル916を形成する、側面914も有する。閉鎖セル434の半球状セル444部分は、カバー106がマニホールド430の上に配置されたときにカバー106と接触するように適合された遠位面922を有する。閉鎖セル434の半球状セル444部分はまた、治療セッション中に負圧および滴下液体両方に対する流体流のための通路を提供するように、カバー106および封止領域436と複数の遠位チャネル926を形成する側面924も有する。アパーチャ405は、近位チャネル916および遠位チャネル926を流体結合し、それにより、マニホールド430は、流体送達インタフェース148から組織部位150までかつ組織部位150から負圧インタフェース144まで流体連通を提供する。
【0071】
上述したように、流体の滴下ありでまたはなしで動作中にマニホールド430に負圧がかけられると、マニホールド430は圧縮サイクル中にカバー106の下で圧縮され、アパーチャ405を介して近位チャネル916および遠位チャネル926内で生成される真空により、カバー106が創傷152に向かってつぶれるようにする付着力を生成する。付着力により、カバー106は閉鎖セル434の遠位面922においてつぶれ、この付着力は、閉鎖セル434を介して半球状セル454の近位面912に伝達され、肉芽形成を促進するために創傷152において微小ひずみを増大させる。マニホールド430に負圧をかける間、閉鎖セル434は幾分か平坦化する可能性があるが、閉鎖セル434の容積は実質的に一定のままであり、それにより、マニホールド430は、近位チャネル916および遠位チャネル926を通る流体流を維持しながら、半球状セル454の近位面912に付着力を伝達して、創傷152に対して陰圧療法を提供し続ける。その結果、マニホールド430は、近位面912および/またはこぶ状部429(
図9には図示せず)に付着力をかけ、そうした付着力が、近位チャネル916および遠位チャネル926を介して組織部位150との流体連通を維持しながら肉芽形成を促進する。閉鎖セル434の可撓性により、半球状部分454の近位面912の動きも促進され、それは、負圧が、減圧サイクル中に上昇し、かつ/または治療中に変更され、それにより、追加の動きにより肉芽形成がさらに促進されるためである。
【0072】
マニホールド410およびマニホールド430は、それぞれ封止領域416および436によって分離された、それぞれ閉鎖セル414および434と、封止領域を通して延在するアパーチャ405とを含む単一構成要素であり、それにより、マニホールドは、マニホールド機能および充填材機能の両方を提供する。マニホールド機能は、負圧および滴下流体療法に対して流体流を提供し、充填材機能は、組織部位150とカバー106との間に間隔を提供し、材料は、流体流を維持するためにマニホールドがつぶれないように十分な可撓性および引張強度を有する。付着力により、カバー106はマニホールドの上でつぶれ、この付着力は、閉鎖セルを介して伝達され、創傷152における微小ひずみを増大させ、それにより肉芽形成を促進する。
【0073】
さらに、介護者が、2つの別個の構成要素、すなわち、別個のマニホールド部材および別個の充填部材ではなく1つの構成要素のみを組織部位と接触させるため、創傷に手当をする方法は、より単純かつ迅速である。創傷に手当をする方法に2つの別個の部材が必要である場合、介護者は、最初に、マニホールド部材のサイズを決め、それを組織部位と接触させ、その後、充填部材をマニホールド部材の上方に配置しなければならず、それは、より長い時間を必要とし、かつより困難である。多くの場合、充填部材は、カバーの真下の空間を実質的に充填するように調整され、かつマニホールド部材と適切にインタフェースするように切り取られサイズが変更されなければならない。本明細書に記載する単一構成要素マニホールドを用いることは、2つの部材の使用を必要とする以前の方法より複雑でなく、創傷に手当をするために必要な時間が短くなり、それにより、創傷に手当をする以前の方法において固有の汚染および他の難題の可能性を低減させることができる。さらに、単一構成要素マニホールドはまた、より適切な流体流を提供し、それは、上述したように、治療プロセス中に滴下流体または負圧に適応するように十分多孔質であるかまたは穴があけられていない可能性がある別個の充填部材によって、流体が妨げられないためである。
【0074】
上述したマニホールドのすべてはまた、介護者がマニホールドを組織部位と接触するように配置するために適切にサイズを決めるために別個の構成要素に引き裂くのを可能にする、ポリマーフィルムに形成された引裂経路も含むことができる。引裂経路は、フィルムの複数の領域を画定することができ、そこでは、最小の領域は20cm2より大きい面積を有する。引裂経路は、別個の構成要素に引き裂かれないときは複合マニホールドを依然として利用することができるように、非漏洩性であり得る。一実施形態例では、引裂経路は、ポリマーフィルムに、介護者による引裂きを容易にするようにフィルムに脆弱経路を提供するくぼみによって形成することができる。別の実施形態例では、フィルムはポリマーフィルムの2枚のシートを含むことができ、その場合、ポリマーフィルムの2枚のシートのうちの少なくとも一方における穿孔により、非漏洩引裂経路が形成される。引裂きをさらに促進するようにポリマーフィルムの2枚のシートの両方に穿孔が形成される場合、2枚のシートのうちの一方の穿孔は、引裂経路が漏れないように、2枚のシートのうちの他方の穿孔と、位置合せされるが重ね合わせされないようにすることができる。引裂経路を含むマニホールドを用いることにより、上述したように創傷に手当をする方法を簡略化することができ、それは、組織部位を治療するときにより容易かつ迅速にマニホールドのサイズを決めることができるためである。
【0075】
図10Aおよび
図10Bを参照すると、ともに、創傷の周囲の異なる位置における圧力測定値と比較した、容器112における圧力測定値に対する、時間(分)にわたる負圧変動(mmHg)を示すチャートである。形状が概して矩形である創傷の場合、圧力は、(i)創傷152の底部、(ii)創傷の短辺または幅側の縁部のうちの1つ、および(iii)創傷の長辺または長さ側の縁部のうちの1つにおいて測定された。負圧は、最初、60mLの生理食塩水の滴下の後に、約2分毎にオン・オフが繰り返され、その後、約120mmHgの標的圧力で保持される。より具体的には、
図10Aおよび
図10Bは、たとえば、約1mmの平均径の閉鎖セル434を有するマニホールド430等のマニホールドに対するこれらの測定値を示し、そこでは、
図10Aにおいて測定されたマニホールドはアパーチャ405を有しておらず、
図10Bにおいて試験されたマニホールドはアパーチャ405を含んでいた。いかなるアパーチャ405もないマニホールド430を利用する場合、創傷152の短辺側縁部および長辺側縁部の両方で測定された圧力は、ある期間にわたり60mmHg程度に低く低下し、アパーチャ405を含むマニホールド430は、圧力が約100mmHgまで低下した短期間を除き、120mmHgで極めて安定して測定される。創傷152の底部における圧力測定値は、さらにより劇的である。いかなるアパーチャ405もないマニホールド430を利用する場合、創傷152の底部において測定される圧力は、わずか20mmHgであり、そこでとどまり、一方、アパーチャ405を利用する場合の創傷152の底部における圧力は、100mmHgで極めて安定して測定される。したがって、上述したマニホールドの実施形態例、すなわち、マニホールド400、500、600および700は、たとえば、アパーチャ405、505、605および705を含む、上述したようなアパーチャを含むことが望ましい。
【0076】
別の実施形態例では、マニホールド140は、少なくとも2層のマニホールド、たとえば、マニホールド400、500、600および700を含むことができ、そこでは、2層は、たとえば、相補的な向きにおいて互いに面する半球状閉鎖セル等、対称的な閉鎖セルを含む。再び
図8を参照すると、マニホールド140は、マニホールド410のうちの2つを含むことができ、そこでは、2つのマニホールド410の各々の閉鎖セル414の半球状表面は互いに面し、それにより、カバー106(図示せず)に隣接するマニホールド410、すなわち上部マニホールドのシート412はカバー106と接触する。一実施形態では、2つのマニホールド410の閉鎖セル414を互いに入れ子にすることができ、それにより、各々の上面814は他方の封止領域416に面する。言い換えれば、2つのマニホールド410の閉鎖セル414を互いに入れ子にすることができ、それにより、2つのマニホールド410の封止領域416は別個の平面に位置する。2つのマニホールド410を含むマニホールド140がカバー106の下で組織部位150内に適合するために、閉鎖セル414の半球状面の直径およびピッチを、組織部位150内に適合するように、かつ種々のタイプの創傷および提供されている治療に適応するように変更することができる。上述したように、閉鎖セル414は、組織部位150における創傷152の深さに応じて、約0.5mm~10mmの直径と、約1.5mm~15mmのピッチとを有することができる。2つのマニホールド410を含むマニホールド140は、肉芽形成をさらに促進するように、創傷152にかけられている付着力を増大させることができる。
【0077】
さらに別の実施形態例では、マニホールド140は、2層以上のマニホールド、たとえば、マニホールド400、500、600および700を含むことができ、そこでは、多層は、たとえば、単一のマニホールドを形成するように互いに積み重ねることができる、たとえば球状閉鎖セル等のより対称的な閉鎖セルを含む。
図9および
図11を参照すると、マニホールド140は、
図11に示すようにより深い創傷152または皮下創傷(図示せず)に対して使用することができるマニホールド140を形成するように互いに積み重ねられる、たとえば5つのマニホールド430、すなわち、積み重ねられたマニホールド430(1)~430(5)を含むことができる。この特定の実施形態では、積み重ねられたマニホールド430(3)に対して図示するように、各々の近位面912および遠位面922が他の封止領域436に面するように閉鎖セル434を互いに入れ子にして、閉鎖セル434のブロックをマニホールド140として形成することも可能である。言い換えれば、マニホールドの封止領域436が別個の平面に位置するように、積み重ねられたマニホールド430(1)~430(5)の閉鎖セル434を互いに入れ子にすることができる。近位チャネル916および遠位チャネル926はまた、積み重ねられたマニホールド430(1)~430(5)の各々の間に配置されたものを含む、上述したようにも形成される。上述したように、創傷152をより迅速に治癒させるように肉芽形成をさらに促進するためにより大きい付着力を必要とする可能性があるより深い創傷152に対して、多層マニホールドが必要である場合がある。
【0078】
図12を参照すると、ニュートン(N)での負荷、すなわち、経時的に負圧によって組織部位にかけられている付着力の2つのグラフ、すなわちグラフ1110およびグラフ1120を示すチャートが示されており、負圧は、間欠的にオン・オフを繰り返し、1分間オン、1分間オフであり、オンサイクル中の125mmHgおよび200mmHgの各々3つのサイクルを含む。グラフ1110は、
図9に示すマニホールド430である、単層を含むマニホールド140に負圧をかけることからもたらされる付着力である。この単層マニホールドに対する付着力は、かけられている負圧が約125mmHgであるとき、約4.0N~4.5Nで変化し、かけられている負圧が約200mmHgであるとき、約4.5N~4.7Nで変化した。グラフ1120は、
図10に示すように5層のマニホールド430を含む多層構造を含むマニホールド140に対して負圧をかけることによってもたらされる付着力である。この多層マニホールドに対する付着力は、かけられている負圧が約125mmHgであるとき、約9N~10Nで変化し、かけられている負圧が約200mmHgであるとき、約9N~11Nで変化した。図示するように、閉鎖セル434の間に近位チャネル916および遠位チャネル926が形成される結果として、マニホールド構造を通る滴下流体および負圧の流体連通を犠牲にすることなく、肉芽形成をさらに促進する多層マニホールド構造を利用するとき、付着力は2倍を超える。
【0079】
本技術の機構、機能または有用性を限定することなく、本明細書に記載したシステムおよび方法は、本技術分野において既知であるものの間の治療モダリティに対して著しい利点を提供することができる。たとえば、マニホールド400、500、600および700は、マニホールドにエンボス加工されるかまたは溶接されるこぶ状部またはテクスチャを有することができ、それにより、取り除くときに組織部位に材料が残る可能性がない。さらに、マニホールド400、500、600および700は、こぶ状部またはテクスチャが組み込まれたポリマー材料から形成されるため、マニホールドによる組織内部成長の量を最小限にするかまたはなくすことができ、それにより、陰圧および滴下療法が適用された後、マニホールドが組織部位から取り除かれるときの痛みまたは不快感が軽減する。したがって、こうしたマニホールドを、交換することが必要になる前により長い時間組織部位に放置することができ、マニホールドは、著しい組織内部成長または取り除かれるときの材料の脱落する残留物なしに、肉芽形成を促進するように、組織部位においてより多くのマクロひずみおよび微小ひずみを依然として発生させることができる。
【0080】
いくつかの例示的な実施形態で示したが、当業者であれば、本明細書に記載するシステム、装置および方法に対するさまざまな変形形態および変更形態が可能であることを理解するであろう。さらに、「または」等の用語を用いるさまざまな選択肢の記載は、文脈において明らかに必要でない限り、相互排他性を必要とするものではなく、不定冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」は、文脈において明らかに必要でない限り、その対象を単一の例に限定するものではない。販売、製造、組立または使用の目的で、構成要素は、さまざまな構成において結合または排除することも可能である。たとえば、いくつかの構成では、製造または販売のために、ドレッシング102、容器112または両方を排除するかまたは他の構成要素から分離することができる。他の構成例では、コントローラ110も他の構成要素と独立して製造するか、構成するか、組み立てるか、または販売することができる。
【0081】
添付の特許請求の範囲は、上述した主題の新規かつ進歩性のある態様を示すが、具体的に詳細には記載されていないさらなる主題も包含することができる。たとえば、当業者に既知であることから新規かつ進歩性のある特徴を識別するために必要でない場合、いくつかの特徴、要素または態様を特許請求の範囲から省略することができる。本明細書に記載した特徴、要素および態様はまた、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、組み合わせるか、または同じであるか、均等であるか、もしくは同様の目的に役立つ代替的な特徴によって置き換えることができる。