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特許7082078抽出装置および抽出装置における抽出溶媒除去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】抽出装置および抽出装置における抽出溶媒除去方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 11/02 20060101AFI20220531BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
B01D11/02 A
C12N1/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019049798
(22)【出願日】2019-03-18
(65)【公開番号】P2020151615
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2020-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】592042750
【氏名又は名称】株式会社アルビオン
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(72)【発明者】
【氏名】篠原 悟史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 章悟
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 昭吾
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-071903(JP,A)
【文献】特開2011-031170(JP,A)
【文献】特開2001-000964(JP,A)
【文献】特開2018-186796(JP,A)
【文献】特開2007-118005(JP,A)
【文献】特開2008-049220(JP,A)
【文献】特開昭58-152472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 11/02
C07B 63/00
C11B 9/00
C12N 1/00
G01N 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽出溶媒を用いて、生体原料から生体組織由来の抽出物を抽出する抽出装置であって
前記生体原料を前記抽出溶媒と接触させる抽出槽と、
前記抽出槽から導出された抽出液から前記抽出溶媒を分離する分離槽と、
前記抽出槽に対する超音波照射により、前記抽出液の導出後に前記抽出槽に残った抽出残渣に対して超音波振動を伝えて、前記抽出残渣から前記抽出溶媒を除去する第1の振動発生装置を備える
抽出装置。
【請求項2】
前記分離槽に対する超音波照射により、前記分離槽内の前記抽出液に対して超音波振動を伝えて、前記抽出液から前記抽出溶媒を除去する第2の振動発生装置を更に備える、
請求項1に記載の抽出装置。
【請求項3】
前記抽出槽の重量変化を測定することにより、前記抽出溶媒の除去具合を検知する除去具合検知手段を更に備える、
請求項1または2に記載の抽出装置。
【請求項4】
前記抽出槽及び分離槽から除去された前記抽出溶媒を再度抽出溶媒として循環再利用させる、
請求項に記載の抽出装置。
【請求項5】
前記第1の振動発生装置は、前記超音波振動周波数を調整可能である、
請求項1ないしのいずれか一項に記載の抽出装置。
【請求項6】
前記抽出残渣の温度制御を行う温度制御手段を更に備える、
請求項1ないしのいずれか一項に記載の抽出装置。
【請求項7】
抽出溶媒を用いて、生体原料から生体組織由来の抽出物を抽出する抽出溶媒除去方法であって、
抽出槽で前記生体原料を前記抽出溶媒と接触させる工程と、
分離槽で前記抽出槽から導出された抽出液から前記抽出溶媒を分離する工程と、
前記抽出槽に対する超音波照射により、前記抽出液の導出後に前記抽出槽に残った抽出残渣に対して超音波振動を伝えて、前記抽出残渣から前記抽出溶媒を除去する工程を含
抽出溶媒除去方法。
【請求項8】
抽出溶媒を用いて、生体原料から生体組織由来の抽出物を抽出した抽出残渣を製造する抽出残渣製造方法であって、
抽出槽で前記生体原料を前記抽出溶媒と接触させる工程と、
分離槽で前記抽出槽から導出された抽出液から前記抽出溶媒を分離する工程と、
前記抽出槽に対する超音波照射により、前記抽出液の導出後に前記抽出槽に残った抽出残渣に対して超音波振動を伝えて、前記抽出残渣から前記抽出溶媒を除去する工程を含む、
抽出残渣製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抽出装置および抽出装置における抽出溶媒除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、抽出溶媒として液化ジメチルエーテルを用いる抽出方法が特許文献1に提案されている。かかる特許文献1では、水分及び油分を含有する対象材料に対して飽和量の水分が溶存する液化ジメチルエーテルを接触させて液化ジメチルエーテルと油分との混合物、並びに脱油された対象材料を得ることが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、抽出溶媒として用いた液化ジメチルエーテルの抽出後の生体内成分からの除去について、蒸発乾固(凍結乾燥、噴霧乾燥など)を行う技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献2に開示の蒸発乾固によれば、確かに抽出後の生体内成分からジメチルエーテルを除去することが可能であるが、ジメチルエーテルの除去に長い時間を要することになる。
【0005】
しかしながら、長い時間をかけて抽出後の生体内成分からジメチルエーテル除去を行う場合、抽出後の生体内成分について、大気開放下(減圧下も含む)に置かない、UV(紫外線:ultraviolet)に当てないなどの管理が難しくなる、という問題が生じる。生体内成分は、大気開放下(減圧下も含む)に置かれてしまうと、成分の一部が揮発、または酸化してしまう。また、生体内成分は、UVに当たってしまうと、成分の一部が分解してしまう。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、蒸発乾固に比べて速く抽出溶媒を除去することで、生体内成分が揮発、分解することを抑制し、より生体内に存在していた生体内成分を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、溶媒を用いて、生体原料から生体組織由来の抽出物を抽出する抽出装置において、前記抽出物と、前記生体組織から前記抽出物を抽出した抽出残渣との少なくとも何れか一方から前記抽出溶媒を除去する除去手段を有し、前記除去手段は、前記抽出物と前記抽出残渣との少なくとも何れか一方を振動させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、蒸発乾固に比べて速く抽出溶媒を除去することができ、生体内成分が揮発、分解することを抑制し、より生体内に存在していた生体内成分を得ることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る抽出装置の一例を示す模式図である。
図2図2は、生体原料の抽出物及び抽出残渣の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、実施例に係る抽出装置の一例を示す模式図である。
図4図4は、超音波振動を加えた抽出液の除去時間と除去率の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、抽出装置および抽出装置における抽出溶媒除去方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係る抽出装置100の一例を示す模式図である。なお、図1は、抽出装置100を理解することができる程度に、構成要素の形状、大きさ及び配置を概略的に示すものに過ぎない。
【0012】
抽出装置100は、飽和量以下の補助溶媒が添加された抽出溶媒である液化ジメチルエーテル2を貯蔵する貯槽1と、生体原料7を液化ジメチルエーテル2と接触させる抽出槽6と、抽出槽6から導出された液体を分離する分離槽11と、貯槽1から抽出槽6へ液化ジメチルエーテル2を送液するポンプ3とを有している。抽出槽6には、フィルタ8が上流側及び下流側に設置されている。
【0013】
上記貯槽1に貯蔵される液化ジメチルエーテル2は、ジメチルエーテルを飽和蒸気圧以上にすることにより、液体状態とされるものであるが、飽和量以下の水やアルコール等の補助溶媒が添加されたものであることが好ましい。ここで補助溶媒の添加量は、液化ジメチルエーテル中への飽和量以下が好ましく、より具体的には液化ジメチルエーテル2に対して7質量%以下であることが好ましい。補助溶媒を加えることにより、液化ジメチルエーテルの溶解度や極性といった溶媒特性を変化させることができる。
【0014】
また抽出装置100は、液化ジメチルエーテル2を導出又は導入する導管5,10,12,14,16,19,20,23、各槽内の気圧を調節し、液化ジメチルエーテル2の導出及び導入を制御するバルブ4,9,13,15,21,22,25,26,27、背圧弁18、逆止弁24を有している。抽出槽6及び分離槽11は、液化ジメチルエーテル2の液体状態を維持するため、温度については1~40℃に調整することができ、圧力については0.2~5MPaに調整することができる。また、ガス検知装置28が、導管14に接続されている。
【0015】
上記抽出装置100において、貯槽1から抽出槽6に液化ジメチルエーテル2を導入するポンプ3、バルブ4,27及び導管5が、送液手段として機能する。抽出槽6は、接触手段として機能する。抽出槽6から液化ジメチルエーテル2を導出させる導管10,12、背圧弁18及びバルブ13,15,21が、導出手段として機能する。また分離槽11は、分離手段として機能する。導管14に接続された凝縮器17は、凝縮手段として機能する。分離槽11に接続された導管12及びバルブ22は、気化手段として機能する。貯槽1は、貯蔵手段として機能する。導管19,20は、供給手段として機能する。
【0016】
抽出装置100は、各槽内の温度及び気圧を検知する温度計及び圧力計、各槽内における撹拌を実施するための撹拌機、各槽内及び導管内における例えば酸素等の活性ガスをパージするための例えば窒素等の不活性ガスを流通させる装置等の任意の構成要素をさらに含むものである。
【0017】
図1に示すように、抽出槽6は、振動発生装置29と、温度制御装置30とを備えている。
【0018】
振動発生装置29は、除去手段として機能するものであって、抽出槽6に対する超音波照射によって超音波振動を伝える。なお、除去手段として機能する振動発生装置29は、抽出溶媒の突沸を防ぐために、振動周波数を調整可能としている。また、振動発生装置29は、超音波照射によって超音波振動を伝えるものに限られない。例えば、振動発生装置29は、抽出槽6を揺れ動かしたり回転させたりして振動を発生させるものであってもよい。また、振動発生装置29による振動は、周期的でなくてもよい。
【0019】
温度制御装置30は、温度制御手段として機能するものであって、抽出槽6からの抽出液や抽出残渣の温度を制御する。温度制御装置30は、例えば冷却装置やヒータなどであって、抽出槽6からの抽出液や抽出残渣の温度を一定に保つ。例えば、超音波照射を続けると組織の温度上昇が生じ、その結果、成分の分解、変性に繋がることになる。これを防ぐために、温度制御装置30によって定温度状況下に維持する。また、抽出残渣の凍結による組織損傷や熱変性を防止することもできる。
【0020】
また、図1に示すように、分離槽11は、温度制御装置31と、振動発生装置32と、除去具合検知装置33とを備えている。
【0021】
振動発生装置32は、除去手段として機能するものであって、分離槽11に対する超音波照射によって超音波振動を伝える。なお、除去手段として機能する振動発生装置32は、抽出溶媒の突沸を防ぐために、振動周波数を調整可能としている。また、振動発生装置32は、超音波照射によって超音波振動を伝えるものに限られない。例えば、振動発生装置32は、分離槽11を揺れ動かしたり回転させたりして振動を発生させるものであってもよい。また、振動発生装置32による振動は、周期的でなくてもよい。
【0022】
温度制御装置31は、温度制御手段として機能するものであって、分離槽11からの抽出液の温度を制御する。温度制御装置31は、例えば冷却装置などであって、抽出槽6からの抽出液の温度を一定に保つ。例えば、超音波照射を続けると組織の温度上昇が生じ、その結果、成分の分解、変性に繋がることになる。これを防ぐために、温度制御装置31によって定温度状況下に維持する。
【0023】
除去具合検知装置33は、分離槽11の重量変化を測定する。除去具合検知装置33は、抽出溶媒である液化ジメチルエーテルの除去具合を検知する除去具合検知手段として機能する。これは、必要以上の処理時間をかけないようにするためである。なお、除去具合検知装置33は、分離槽11の重量変化を測定するものに限るものではなく、ガス検知などにより抽出溶媒である液化ジメチルエーテルの除去具合を検知するものであってもよい。
【0024】
図2は、生体原料の抽出物及び抽出残渣の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【0025】
生体原料の抽出物及び抽出残渣の製造方法は、図2に示すように、抽出工程(ステップS101)と、分離工程(ステップS102)と、抽出物濃縮工程(ステップS103)と、抽出残渣生成工程(ステップS104)とを含むものである。
【0026】
以下においては、上記抽出装置100の動作を説明しながら生体原料から抽出される抽出物及び抽出残渣の製造方法の各工程を説明する。
【0027】
まず、抽出槽6に動植物組織7を導入する。このとき、バルブ4、9、13、15、21、22、25、26、27は、閉状態である。
【0028】
ここで、貯槽1に液化ジメチルエーテル2が十分に貯蔵されていない場合は、バルブ25を閉、バルブ26を開状態とし、導管20を経由して、貯槽1に液化ジメチルエーテル2を供給した後、バルブ26を閉状態とする。なお、貯槽1の圧力をジメチルエーテルの飽和蒸気圧以上にすることにより、液化ジメチルエーテル2が生成される。
【0029】
(抽出工程(ステップS101))
次に、バルブ27、4、9、13、15、21を開状態とし、背圧弁18を所定圧力に設定し加圧ポンプ3により、貯槽1内の液化ジメチルエーテル2を所定時間抽出槽6に導出することで動植物組織7の抽出液が分離槽11に導入され、抽出残渣としての動植物組織7が抽出槽6に残る。その後、バルブ9、13、15、21を閉とする。
【0030】
(分離工程(ステップS102)、抽出物濃縮工程(ステップS103))
次に、バルブ22、25を開とし、振動発生装置32で抽出液に超音波による振動を加えることで、液化ジメチルエーテル2が溶解した抽出液からジメチルエーテルが分離される。
【0031】
振動発生装置32で抽出液に超音波照射による超音波振動を伝えている間は、温度制御装置31により抽出液の温度が1から40℃の範囲の任意の温度に制御されることが好ましい。抽出液から分離された液化ジメチルエーテル2は、凝縮器17に導入される。その結果、分離されたジメチルエーテルは凝縮される。その結果、生成した液化ジメチルエーテル2を再度抽出溶媒として循環再利用することができる。
【0032】
このように液化ジメチルエーテル2を再度抽出溶媒として循環再利用させることにより、低コスト化を図るとともに、分解や酸化の防止、ガス引火の防止が可能になる。
【0033】
除去具合検知装置33により重量変化が無くなった時点で液化ジメチルエーテル2の除去の完了とし、バルブ22、25を閉とする。また、ガス検知装置28により液化ジメチルエーテル2が検知されなくなった時点で液化ジメチルエーテル2の除去の完了としてもよい。
【0034】
(抽出残渣生成工程(ステップS104))
次に、バルブ13、25を開とし、振動発生装置29で抽出残渣に超音波による振動を加えることで、液化ジメチルエーテル2が含侵した抽出残渣からジメチルエーテルが分離される。
【0035】
このように超音波による振動で生じる抽出残渣中の圧力差により、液化ジメチルエーテル2の大気への放出が促進され短時間に抽出残渣に含侵した液化ジメチルエーテル2を除去することができる。このため抽出残渣が酸素に触れることによる劣化の少なく、かつ液化ガスの除去された安全性の高い抽出残渣を効率よく製造することができる。
【0036】
振動発生装置29で抽出残渣に超音波照射によって超音波振動を伝えている間は、温度制御装置30により抽出残渣の温度が1から40℃の範囲の任意の温度に制御されることが好ましい。抽出残渣の温度が1℃より低い温度では水分の凍結により抽出残渣である細胞組織が損傷を受けてしまう。抽出残渣の温度が40℃より高い温度では抽出残渣である細胞組織のたんぱく質に変性が生じて損傷を受けてしまう。分離された液化ジメチルエーテル2は、凝縮器17に導入される。その結果、分離されたジメチルエーテルは凝縮される。その結果、生成した液化ジメチルエーテル2を再度抽出溶媒として循環再利用することができる。
【0037】
このように液化ジメチルエーテル2を再度抽出溶媒として循環再利用させることにより、低コスト化を図るとともに、分解や酸化の防止、ガス引火の防止が可能になる。
【0038】
なお、抽出槽6内の抽出残渣としての動植物組織7には振動が伝わりにくいため、振動発生装置32の振動エネルギーを大きくするようにしてもよい。また、エバポレータで減圧することによって、液化ジメチルエーテル2を積極的に気化させるようにしてもよい。
【0039】
ガス検知装置28により液化ジメチルエーテル2が検知されなくなった時点で液化ジメチルエーテル2の除去の完了とする。
【0040】
なお、上記の操作は、生体内成分の酸化や分解を防ぐため、不活性ガス雰囲気維持装置101により不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。
【0041】
このように本実施の形態によれば、抽出液や抽出残渣に対して振動(例えば、超音波など)を与えることによって、抽出溶媒として用いた液化ガス(液化ジメチルエーテル)を除去する。これにより、蒸発乾固に比べて速く液化ガス(液化ジメチルエーテル)を除去することができる。その結果、生体内成分が揮発、分解することを抑制し、より生体内に存在していた生体内成分を得ることができる。
【0042】
なお本明細書および特許請求の範囲において、生体原料とは、細胞が細胞壁を有する植物、菌類、古細菌、真正細菌、もしくは細胞が細胞壁を有しない動物のいずれかを由来とする原料を意味する。このとき、植物由来原料の場合は、葉、枝、樹木、花弁、茎、根、果肉、果皮及び種子の少なくとも1つを由来とする原料であり、動物由来原料の場合は、ヒトまたは異種哺乳動物由来の皮膚、血管、心臓弁膜、角膜、羊膜、硬膜等を含む軟組織またはその一部、心臓、腎臓、肝臓、膵臓、脳等を含む臓器またはその一部、骨、軟骨、腱またはその一部等の少なくとも1つである動物由来原料である。生体組織とは細胞壁を有する植物、菌類、古細菌、真正細菌、もしくは細胞壁を有しない動物のいずれかから得られる組織のことを意味する。
【0043】
なお本明細書および特許請求の範囲において、液化ガスとは、常温常圧(0℃、1atm(0.101325MPa)で気体である物質の液化物である。
【0044】
液化ガスとしては、生体組織から生体成分を抽出することが可能であれば、特に限定されないが、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ホルムアルデヒド、ケテン、アセトアルデヒド、プロパン、ブタン、液化石油ガス等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、比較的低温低圧で液化する点で、エチルメチルエーテル、ジメチルエーテルが好ましく、ジメチルエーテルが特に好ましい。
【0045】
ジメチルエーテルは、1~40℃、0.2~5MPa程度で液化するため、装置のコストが安価となる。また、液化ジメチルエーテルは、常温常圧下で容易に気化することから、抽出液及び抽出残渣に残留しにくい。
【実施例
【0046】
以下において、実施例を参照して本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態は、実施例に限定されない。
【0047】
[実施例1]
図3に示す抽出装置を用いて、植物原料の抽出物及び抽出残渣の製造方法を実施し、抽出物及び抽出残渣を生成した。なお、植物原料としてマカダミアナッツを用いた。
【0048】
具体的には、フィルタ55,58が上流側及び下流側に設置されている抽出槽56に、マカダミアナッツ57を載置した。続いて、バルブ53を閉状態にし、シリンジポンプ50に補助溶媒を添加したジメチルエーテル51を充填して、0.7MPaとして液化させた。分離槽62を予めジメチルエーテルで置換し、バルブ53,54,59,60,61を閉状態とした。なお、補助溶媒として水を用いた。
【0049】
次に、背圧弁63の設定圧力を0.7MPaとし、バルブ53,54,59,60を開状態とし、シリンジポンプ50で液化ジメチルエーテルを供給した。液化ジメチルエーテルで抽出槽56が満たされたところで、シリンジポンプ50を停止させ、バルブ54,59を閉状態とすることで、マカダミアナッツ57を液化ジメチルエーテルに浸漬させて混合液とした。
【0050】
そして、バルブ54,59を開状態とし、シリンジポンプ50で液化ジメチルエーテルを再度供給し、流量を2.5mL/minに調整して、混合液(抽出液)を分離槽62で回収した。
【0051】
次に、上記の操作により得た抽出液の液化ガス(液化ジメチルエーテル)を除去した。具体的には、抽出液が入った分離槽62を介して抽出液に対して28kHzの振動を加えた。所定時間毎の重量変化を測定し、重量変化が無くなった時点で、液化ガス(液化ジメチルエーテル)の除去の完了とした。
【0052】
超音波振動を加えた抽出液は、超音波振動を加えない抽出液に比べて短時間で、液化ガス(液化ジメチルエーテル)の除去が完了した。
【0053】
[実施例2]
実施例1と同様に、図3に示す抽出装置を用いて、マカダミアナッツからの抽出液を得た。
【0054】
次に、上記の操作により得た抽出液の液化ガス(液化ジメチルエーテル)を除去した。具体的には、抽出液が入った分離槽62を介して抽出液に45kHzの振動を加えた。所定時間毎の重量変化を測定し、重量変化が無くなった時点で、液化ガス(液化ジメチルエーテル)の除去の完了とした。
【0055】
超音波振動を加えた抽出液は、超音波振動を加えない抽出液に比べて短時間で、液化ガス(液化ジメチルエーテル)の除去が完了した。
【0056】
[実施例3]
実施例1と同様に、図3に示す抽出装置を用いて、マカダミアナッツからの抽出液を得た。
【0057】
次に、上記の操作により得た抽出液の液化ガス(液化ジメチルエーテル)を除去した。具体的には、抽出液が入った分離槽62を介して抽出液に100kHzの振動を加えた。所定時間毎の重量変化を測定し、重量変化が無くなった時点で、液化ガス(液化ジメチルエーテル)の除去の完了とした。
【0058】
ここで、図4は超音波振動を加えた抽出液の除去時間と除去率の関係を示す図である。なお、比較例として超音波振動を加えない抽出液の除去時間と除去率の関係も示す。図4に示すように、超音波振動を加えた抽出液は、超音波振動を加えない抽出液に比べて短時間で、液化ガス(液化ジメチルエーテル)の除去が完了した。
【0059】
[実施例4]
マカダミアナッツの代わりにブタ大動脈を用いる点以外は実施例1と同様にして、図3に示す抽出装置を用いて、ブタ大動脈からの抽出液を得た。
【0060】
次に、上記の操作により得た抽出液の液化ガス(液化ジメチルエーテル)を除去した。具体的には、抽出液が入った分離槽62を介して抽出液に超音波振動を加えた。所定時間毎の重量変化を測定し、重量変化が無くなった時点で、液化ガス(液化ジメチルエーテル)の除去の完了とした。
【0061】
超音波振動を加えた抽出液は、超音波振動を加えない抽出液に比べて短時間で、液化ガス(液化ジメチルエーテル)の除去が完了した。
【0062】
[実施例5]
マカダミアナッツの代わりにバラ花弁を用いる点以外は実施例1と同様にして、図3に示す抽出装置を用いて、バラ花弁からの抽出液を得た。
【0063】
次に、上記の操作により得た抽出液の液化ガス(液化ジメチルエーテル)を除去した。具体的には、抽出液が入った分離槽62を介して抽出液に超音波振動を加えた。所定時間毎の重量変化を測定し、重量変化が無くなった時点で、液化ガス(液化ジメチルエーテル)の除去の完了とした。
【0064】
超音波振動を加えた抽出液は、超音波振動を加えない抽出液に比べて短時間で、液化ガス(液化ジメチルエーテル)の除去が完了した。
【0065】
[実施例6]
マカダミアナッツの代わりにクロモジを用いる点以外は実施例1と同様にして、図3に示す抽出装置を用いて、クロモジからの抽出液を得た。
【0066】
次に、上記の操作により得た抽出液の液化ガス(液化ジメチルエーテル)を除去した。具体的には、抽出液が入った分離槽62を介して抽出液に超音波振動を加えた。所定時間毎の重量変化を測定し、重量変化が無くなった時点で、液化ガス(液化ジメチルエーテル)の除去の完了とした。
【0067】
超音波振動を加えた抽出液は、超音波振動を加えない抽出液に比べて短時間で、液化ガス(液化ジメチルエーテル)の除去が完了した。
【0068】
[実施例7]
図3に示す抽出装置を用いて、マカダミアナッツからの抽出残渣を得た。具体的には、フィルタ55,58が上流側及び下流側に設置されている抽出槽56に、マカダミアナッツ57を載置した。続いて、バルブ53を閉状態にし、シリンジポンプ50に補助溶媒を添加したジメチルエーテル51を充填して、0.7MPaとして液化させた。分離槽62を予めジメチルエーテルで置換し、バルブ53,54,59,60,61を閉状態とした。なお、補助溶媒として水を用いた。
【0069】
次に、背圧弁63の設定圧力を0.7MPaとし、バルブ53,54,59,60を開状態とし、シリンジポンプ50で液化ジメチルエーテルを供給した。液化ジメチルエーテルで抽出槽56が満たされたところで、シリンジポンプ50を停止させ、バルブ54,59を閉状態とすることで、マカダミアナッツ57を液化ジメチルエーテルに浸漬させて混合液とした。
【0070】
そして、バルブ54,59を開状態とし、シリンジポンプ50で液化ジメチルエーテルを再度供給し、流量を2.5mL/minに調整して、混合液(抽出液)を分離槽62で回収した。
【0071】
次に、上記の操作により得た抽出残渣の液化ガス(液化ジメチルエーテル)を除去した。具体的には、抽出残渣が入った抽出槽56を介して抽出残渣に超音波による振動を加えた。所定時間毎の重量変化を測定し、重量変化が無くなった時点で、液化ガス(液化ジメチルエーテル)の除去の完了とした。
【0072】
超音波振動を加えた抽出残渣は、超音波振動を加えない抽出残渣に比べて短時間で、液化ガス(液化ジメチルエーテル)の除去が完了した。
【0073】
[実施例8]
マカダミアナッツの代わりにブタ大動脈を用いる点以外は実施例7と同様にして、図3に示す抽出装置を用いて、ブタ大動脈からの抽出残渣を得た。
【0074】
次に、上記の操作により得た抽出残渣の液化ガス(液化ジメチルエーテル)を除去した。具体的には、抽出残渣が入った抽出槽56を介して抽出残渣に超音波振動を加えた。所定時間毎の重量変化を測定し、重量変化が無くなった時点で、液化ガス(液化ジメチルエーテル)の除去の完了とした。
【0075】
超音波振動を加えた抽出残渣は、超音波振動を加えない抽出残渣に比べて短時間で、液化ガス(液化ジメチルエーテル)の除去が完了した。
【0076】
[実施例9]
マカダミアナッツの代わりにバラ花弁を用いる点以外は実施例7と同様にして、図3に示す抽出装置を用いて、バラ花弁からの抽出残渣を得た。
【0077】
次に、上記の操作により得た抽出残渣の液化ガス(液化ジメチルエーテル)を除去した。具体的には、抽出残渣が入った抽出槽56を介して抽出残渣に超音波振動を加えた。所定時間毎の重量変化を測定し、重量変化が無くなった時点で、液化ガス(液化ジメチルエーテル)の除去の完了とした。
【0078】
超音波振動を加えた抽出残渣は、超音波振動を加えない抽出残渣に比べて短時間で、液化ガス(液化ジメチルエーテル)の除去が完了した。
【0079】
[実施例10]
マカダミアナッツの代わりにクロモジを用いる点以外は実施例7と同様にして、図3に示す抽出装置を用いて、クロモジからの抽出残渣を得た。
【0080】
次に、上記の操作により得た抽出残渣の液化ガス(液化ジメチルエーテル)を除去した。具体的には、抽出残渣が入った抽出槽56を介して抽出残渣に超音波振動を加えた。所定時間毎の重量変化を測定し、重量変化が無くなった時点で、液化ガス(液化ジメチルエーテル)の除去の完了とした。
【0081】
超音波振動を加えた抽出残渣は、超音波振動を加えない抽出残渣に比べて短時間で、液化ガス(液化ジメチルエーテル)の除去が完了した。
【符号の説明】
【0082】
100 抽出装置
29、32 除去手段
30、31 温度制御手段
33 除去具合検知手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0083】
【文献】特開2010-240609号公報
【文献】特開2001-106636号公報
図1
図2
図3
図4