(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】生体ナノ触媒固定化用磁性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場
(51)【国際特許分類】
C12N 11/084 20200101AFI20220531BHJP
C12N 11/12 20060101ALI20220531BHJP
C12N 9/02 20060101ALN20220531BHJP
C12N 9/90 20060101ALN20220531BHJP
【FI】
C12N11/084
C12N11/12
C12N9/02
C12N9/90
(21)【出願番号】P 2019505121
(86)(22)【出願日】2017-04-05
(86)【国際出願番号】 US2017026086
(87)【国際公開番号】W WO2017180383
(87)【国際公開日】2017-10-19
【審査請求日】2020-01-16
(32)【優先日】2016-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518366038
【氏名又は名称】ザイムトロニクス キャタリティック システムズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ZYMTRONIX CATALYTIC SYSTEMS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】ステファン コーギー
(72)【発明者】
【氏名】リッキー ハイリル
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-532103(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0138490(US,A1)
【文献】特表2010-535911(JP,A)
【文献】特表2013-500291(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0152326(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0270031(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0203756(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0135312(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 11/08
C12N 9/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不水溶性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場の調製方法であって、
a.水溶性ポリマーと、水および磁性ミクロ粒子(MMP)とを混合して、2.33~3.85cPの懸濁液を形成
することにより、混合物を形成するステップ;
b.架橋試薬を前記混合物に添加するステップ;
c.前記混合物を超音波処理するステップ;
d.前記混合物を-200~0℃の温度で凍結させるステップ;
e.前記混合物を凍結乾燥するステップ;ならびに
f.前記水溶性ポリマーを架橋するステップ;
を含み、
前記架橋するステップで不水溶性ポリマーがもたらされ、
不水溶性の前記ポリマーハイブリッド足場は、
ポリビニルアルコール(PVA)、または
PVAとカルボキシメチルセルロース(CMC)と、の組み合わせ
を含む、方法。
【請求項2】
前記架橋するステップが、紫外光への露出、60~500℃の温度での前記混合物の加熱、または、これらの組み合わせによって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記MMPの磁気モーメントの配列により前記MMPを組織化するために、前記超音波処理ステップ後に磁界を適用するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記水溶性ポリマーはポリビニルアルコール(PVA)である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマーがPVAおよびCMCを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記架橋試薬が、クエン酸、すべてのカルシウム塩、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸(BTCA)、グルタルアルデヒドおよびポリ(エチレングリコール)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記架橋試薬がクエン酸である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記凍結ステップが
、モノリス形状である水溶性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場をもたらす、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記不水溶性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場を10~1000μmのサイズの粉末に粉砕するステップをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記不水溶性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場が、500~5000μmのサイズのビーズ形状とされる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、本明細書において参照によりその全体が援用される、2016年4月16日に出願された米国仮特許出願第62/323,663号明細書に係る利益を主張する。
【0002】
本発明は、生体ナノ触媒(BNC)の効果を支持すると共に高めるための磁性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場を提供する。新規の足場は、不水溶性架橋ポリマーおよび略均一分布の包埋磁性ミクロ粒子(MMP)を含む。架橋ポリマーは、ポリビニルアルコール(PVA)、および、任意選択により追加のポリマー材料を含む。足場は、足場の調製中に鋳造を用いることにより任意の形状とし得る。一定の実施形態において、足場は、生体触媒反応における使用のためにビーズの形状とし得る。代替的な実施形態において、足場は、生体触媒反応における使用のためにミクロ粒子に粉砕され得る。足場の調製方法および使用方法もまた提供されている。
【背景技術】
【0003】
磁性酵素の固定化は、酵素周囲に自己アセンブリするメソポーラス磁性クラスタ中への酵素の包括を含む。固定化効率は、酵素およびナノ粒子の初期濃度、酵素表面の性質、酵素の静電位、ナノ粒子表面の性質、ならびに、接触時間を含む多数の要因に応じる。生体触媒プロセスにおける産業的目的のために用いられる酵素は、効率が高く、プロセスの前およびその最中において安定であり、多数回の生体触媒サイクルにわたって再使用可能であり、および、経済的であるべきである。
【0004】
磁性ナノ粒子のメソポーラス凝集体は、連続するか、または、粒状のマクロポーラス足場に組み込まれ得る。足場は磁性であってもなくてもよい。このような足場は、参照によりその全体が本明細書において援用される、国際公開第2014/055853号パンフレット、および、Corgie et al.,Chem.Today 34(5):15-20(2016)において考察されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、生体ナノ触媒(BNC)の効果を支持すると共に高めるための磁性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場を提供する。新規の足場は、不水溶性架橋ポリマーおよび略均一分布の包埋磁性ミクロ粒子(MMP)を含む。架橋ポリマーは、ポリビニルアルコール(PVA)、および、任意選択により追加のポリマー材料を含む。足場は、足場の調製中に鋳造を用いることにより任意の形状とし得る。代替的に、足場は、バイオ触媒反応における使用のためにミクロ粒子に粉砕され得る。代替的に、足場は、バイオ触媒反応における使用のためにビーズの形状とし得る。足場の調製方法および使用方法もまた提供されている。
【0006】
それ故、本発明は、不水溶性架橋ポリマーおよび略均一分布の包埋磁性ミクロ粒子(MMP)を含む磁性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場を提供する。ポリマーは、少なくともポリビニルアルコール(PVA)を含み、サイズが約50~500nmのMMPを有し、約1~約50μmのサイズの細孔を有し、約20%~95%w/wのMMPを有し、足場は、合計で約1~15m2/gの生体ナノ触媒(BNC)を組み込むための有効表面積を含み;酵素を組み込むための合計有効表面積は約50~200m2/gであり;前記足場は約0.01~約10g/ml.の嵩密度を有し;および、前記足場は、約1.0×10-3~約1×10-4m3kg-1の質量磁化率を有する。好ましい実施形態において、磁性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場は、足場に対して約0~90度の水との接触角を有する。
【0007】
好ましい実施形態において、不水溶性架橋ポリマーは実質的にポリビニルアルコール(PVA)である。さらに好ましい実施形態において、足場は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸塩、ポリメチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、フッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フェノール樹脂、レソルシノールホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリイミド、ポリベンゾイミダゾール、セルロース、ヘミセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、2-ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、キシラン、キトサン、イヌリン、デキストラン、アガロース、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサンおよびポリホスファゼンからなる群から選択されるポリマーをさらに含む。
【0008】
他のさらに好ましい実施形態において、磁性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場は、PVAおよびCMC、PVAおよびアルギン酸塩、PVAおよびHEC、または、PVAおよびEHECを含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、磁性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場はモノリス形状に形成される。他の実施形態において、足場は特定の生体触媒プロセスに適した形状に形成される。他の実施形態において、足場は、粉末の形態であり、前記粉末は約150~約1000μmのサイズの粒子を含む。
【0010】
本発明は、生体ナノ触媒(BNC)をさらに含む、本明細書に開示の磁性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場を提供する。いくつかの実施形態において、BNCは、磁性ナノ粒子(MNP)を含み、ヒドロラーゼ、ヒドロキシラーゼ、過酸化水素生成酵素(HPP)、ニトララーゼ(nitralase)、ヒドラターゼ、脱水酵素、トランスアミナーゼ、エネレダクターゼ(EREDS)、イミンレダクターゼ(IREDS)、オキシダーゼ、オキシドレダクターゼ、ペルオキシダーゼ、オキシニトリラーゼ、イソメラーゼおよびリパーゼからなる群から選択される酵素を含む。
【0011】
本発明は、水溶性ポリマーと、水および磁性ミクロ粒子(MMP)とを混合して、約3~50cPの懸濁液を形成するステップ;架橋試薬を前記混合物に添加するステップ;前記混合物を超音波処理するステップ;前記混合物を約-200~0℃の温度で凍結させるステップ;前記混合物を凍結乾燥するステップ;ならびに、前記水溶性ポリマーを架橋するステップを含む不水溶性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場の調製方法を提供するものであり、ここで、前記架橋するステップで不水溶性ポリマーがもたらされる。
【0012】
いくつかの実施形態において、本方法において、架橋するステップは、紫外光への露出、約60~500℃の温度での混合物の加熱、または、これらの組み合わせによって達成される。好ましい実施形態において、この方法は、前記MMPの磁気モーメントの配列によりMMPを組織化するために、超音波処理ステップ後に磁界を適用するステップをさらに含む。
【0013】
本方法のいくつかの実施形態において、水溶性ポリマーはポリビニルアルコール(PVA)である。他の実施形態において、水溶性ポリマーはさらに、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸塩、ポリメチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、フッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フェノール樹脂、レソルシノールホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリイミド、ポリベンゾイミダゾール、セルロース、ヘミセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、2-ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、キシラン、キトサン、イヌリン、デキストラン、アガロース、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサンおよびポリホスファゼンからなる群から選択されるポリマーを含む。
【0014】
さらに好ましい実施形態において、ポリマーは、PVAおよびCMC、PVAおよびアルギン酸塩、PVAおよびHEC、または、PVAおよびEHECを含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、架橋試薬は、クエン酸、すべてのカルシウム塩、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸(BTCA)、グルタルアルデヒドおよびポリ(エチレングリコール)からなる群から選択される。好ましい実施形態において、架橋試薬はクエン酸である。
【0016】
いくつかの実施形態において、凍結ステップは、モノリス形状である水溶性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場をもたらす。他の実施形態において、凍結ステップは、特定の生体触媒プロセスに適した形状である水溶性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場をもたらす。他の実施形態において、不水溶性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場は、約10~約1000μmのサイズの粉末に粉砕される。
【0017】
本発明は、基質間の反応をBNCが触媒する条件下で、磁性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場を基質に露出させるステップを含む、複数の基質間の反応を触媒する方法を提供する。好ましい実施形態において、この反応は、医薬製品、医薬品、食品製品、衣料品、洗剤、燃料製品、生化学製品、紙製品またはプラスチック製品の生産に用いられる。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態は、約500~約5000μmのサイズのビーズ形状とされる不水溶性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場を形成する方法を提供する。
【0019】
他の実施形態において、本発明は、基質間の反応をBNCが触媒する条件下で、磁性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場を基質に露出させるステップを含む、複数の基質間の反応を触媒する方法を提供し、ならびに、この反応は、溶液から汚染物を除去するプロセスにおいて用いられる。好ましい実施形態において、溶液は水溶液である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、磁性足場生成プロセスの例示的なブロック図を示す。
【
図2A】
図2Aは、磁性足場MO32(1.875gのマグネタイト、3.125mLの10%ポリ(ビニルアルコール)、3.125mLの2%低粘度カルボキシメチルセルロース(CMC)および13.75mLの過剰量の水)の走査型電子顕微鏡写真(SEM)画像を示す。
【
図2B】
図2Bは、磁性足場MO32-50-hi μ(1.875gのマグネタイト、3.125mLの10%ポリ(ビニルアルコール)、3.125mLの2%高粘度カルボキシメチルセルロース(CMC)および43.75mLの過剰量の水)のSEM画像を示す。
【
図3A】
図3Aは、乾燥した固体塊を基準として83%のマグネタイトを含有する、磁性足場MO32(1.875gのマグネタイト、3.125mLの10%ポリ(ビニルアルコール)、3.125mLの2%低粘度カルボキシメチルセルロース(CMC)および13.75mLの過剰量の水)のSEM画像を示す。
【
図3B】
図3Bは、乾燥した固体塊を基準として40%のマグネタイトを含有する失敗した磁性足場MO48(0.90gのマグネタイト、11mLの10%ポリ(ビニルアルコール)、3.71mLの6%低粘度カルボキシメチルセルロース(CMC)および23.2mLの過剰量の水)のSEM画像を示す。
【
図4】
図4Aは、乾燥した固体塊を基準として83%のマグネタイトを含有し、液体窒素浴に垂直に約2Gの均一な磁界を適用しながら凍結された磁性足場MO32-40(1.875gのマグネタイト、3.125mLの10%ポリ(ビニルアルコール)、3.125mLの2%低粘度カルボキシメチルセルロース(CMC)および33.75mLの過剰量の水)のSEM画像を示す。
図4Bは、乾燥した固体塊を基準として83%のマグネタイトを含有し、液体窒素浴に平行に約2Gの均一な磁界を適用しながら凍結された磁性足場MO32-40(1.875gのマグネタイト、3.125mLの10%ポリ(ビニルアルコール)、3.125mLの2%低粘度カルボキシメチルセルロース(CMC)および33.75mLの過剰量の水)のSEM画像を示す。
【
図5】
図5は、通常のマグネタイト粉末と比した足場の低減された表面汚損ポテンシャルを示す。
【
図6】
図6Aは、アンモニア定量化法で蛍光定量的に計測した固定化ニトリラーゼの活性を示す。3種のサンプルが比較されている:(1)非固定化ニトリラーゼ;(2)磁性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場MO32-40に鋳型化された、pH6ニトリラーゼ/20%充填量のpH3マグネタイトナノ粒子BNCから組成されたBMC;および、(3)9.5%の最終有効充填量の単一のマグネタイト粉末(50~100nm)に鋳型化された、pH6ニトリラーゼ/20%充填量のpH3マグネタイトナノ粒子BNCから組成されたBMC。
図6Bは、245nmでのアセトフェノン吸光度で分光測光法的に計測した固定化ω-トランスアミナーゼの活性を示す。3種のサンプルが比較されている:(1)非固定化ω-トランスアミナーゼ;(2)磁性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場MO32-40に鋳型化された、pH7.15ω-トランスアミナーゼ/20%充填量のpH3マグネタイトナノ粒子BNCから組成されたBMC;および、(3)6.2%の有効充填量の単一のマグネタイト粉末(50~100nm)に鋳型化された、pH7.15ω-トランスアミナーゼ/20%充填量のpH3マグネタイトナノ粒子BNCから組成されたBMC。単一のマグネタイト粉末に係る酵素固定化効率が100%未満であるため、捕捉されていない酵素を除去し、適切な量の水で置き換えて、固定化酵素結果に対する非固定化酵素の寄与を排除した。
図6Cは、蛍光定量的なpHに基づく方法により計測した固定化炭酸脱水酵素の活性を示す。3種のサンプルが比較されている:(1)非固定化炭酸脱水酵素;(2)磁性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場MO32-40に鋳型化された、pH6炭酸脱水酵素/20%充填量のpH11マグネタイトナノ粒子BNCから組成されたBMC;および、(3)9.5%の有効充填量の単一のマグネタイト粉末(50~100nm)に鋳型化された、pH6炭酸脱水酵素/20%充填量のpH11マグネタイトナノ粒子BNCから組成されたBMC。
図6Dは、500nmでのキノンイミン染料複合体吸光度で分光測光法的に計測した固定化ホースラディッシュペルオキシダーゼの活性を示す。3種のサンプルが示されている:(1)非固定化ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP);(2)磁性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場MO32-40に鋳型化された、pH5ホースラディッシュペルオキシダーゼ/5%充填量のpH11マグネタイトナノ粒子BNCから組成されたBMC;および、3%の有効充填量の単一のマグネタイト粉末(50~100nm)に鋳型化された、pH5ホースラディッシュペルオキシダーゼ/5%充填量のpH11マグネタイトナノ粒子BNCから組成されたBMC。
【
図7】
図7は、固定化および非固定化クロロペルオキシダーゼ(CPO)活性を示す。(R)-リモネンの(1S,2S,4R)-(+)-リモネン-1,2-ジオールへの生体触媒転換を、アドレノクロームレポーター反応を用いて490nmで分光測光法的に計測した。
【
図8】
図8は、固定化および非固定化リパーゼ活性を示す。p-ニトロフェノールラウリン酸塩のp-ニトロフェノールおよびラウリン酸塩への生体触媒転換を、pH4で、314nmで分光測光法的に計測した。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、BNCの効果を支持すると共に高めるための組成物および方法を提供する。これは、最初に、本明細書に開示の磁性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場を用いることで達成される。新規の足場は、不水溶性架橋ポリマーおよび略均一分布の包埋磁性ミクロ粒子(MMP)を含む。架橋ポリマーは、ポリビニルアルコール(PVA)、および、任意選択により追加のポリマー材料を含む。足場は、足場の調製中に鋳造を用いることにより任意の形状とし得る。代替的に、足場は、マクロ粒子に粉砕され、および、生体触媒反応のための規定のサイズにふるいにかけられ得る。足場の調製方法および使用方法もまた提供されている。
【0022】
被包括酵素を含む自己アセンブリしたメソポーラスナノクラスタは、活性が高く、かつ、頑強である。本技術は、3段階の総合的な組織化レベルでの生化学、ナノテクノロジーおよび生体工学の効果的な融合であり:レベル1は、磁性メソポーラスナノクラスタの合成のための磁性ナノ粒子(MNP)を含む酵素の自己アセンブリである。このレベルでは、酵素の固定化および安定化のために分子自己包括メカニズムが用いられる。レベル2は、MNPの他のマトリックスへの安定化である。レベル3は、レベル1+2を発送するための生成物の検査およびパッケージングである。酵素に吸着された磁性ナノ粒子のアセンブリは、本明細書においては、「生体ナノ触媒」(BNC)とも称される。
【0023】
MNPは、温度、イオン強度およびpHなどの幅広い範囲の操作条件を許容する。(MNPのサイズおよび磁化がNPの形成および構造に関係し、これらはすべて、被包括酵素の活性に対して顕著な影響を有する。種々の反応条件下におけるその意外な復元力のために、MNPは、現在他の同様の薬剤が用いられる場合において向上した酵素または触媒薬剤として用いられることが可能である。さらに、これらは、酵素が考慮されていないか、または、適用可能であることが見出されていない他の用途において用いられることが可能である。
【0024】
BNCは、磁性ナノ粒子間の間隙空間であるメソ細孔を含む。酵素は、BNCのメソ細孔の少なくとも一部分中に包埋または固定化されていることが好ましい。本明細書において用いられるところ、「磁性」という用語は、永久磁性、超常磁性、常磁性、強磁性およびフェリ磁性挙動を含むすべてのタイプの有用な磁性特徴を包含する。
【0025】
磁性ナノ粒子またはBNCはナノ単位(すなわち、一般に500nm以下)のサイズを有する。本明細書において用いられるところ、「サイズ」という用語は、磁性ナノ粒子が略または実質的に球状である場合には磁性ナノ粒子の直径を指すことが可能である。磁性ナノ粒子が略または実質的に球状ではない(例えば、実質的に卵形または不規則)場合においては、「サイズ」という用語は、磁性ナノ粒子の最大の寸法または3つの寸法の平均のいずれかを指すことが可能である。「サイズ」という用語はまた、磁性ナノ粒子群全体のサイズの平均(すなわち、「平均サイズ」)を指し得る。
【0026】
異なる実施形態において、磁性ナノ粒子は、例えば、500nm、400nm、300nm、200nm、100nm、50nm、40nm、30nm、25nm、20nm、15nm、10nm、5nm、4nm、3nm、2nmもしくは1nmのサイズ(正確に、約、以下または未満)、または、前述の例示的なサイズのいずれか2つによって定められる範囲内のサイズを有する。
【0027】
BNCにおいて、個別の磁性ナノ粒子は、上記サイズのいずれかを有する一次ナノ粒子(すなわち、一次微結晶)であると考えることが可能である。BNC中のナノ粒子の凝集体はナノ粒子よりもサイズが大きく、一般に少なくとも約5nmのサイズ(すなわち、二次サイズ)を有する。異なる実施形態において、凝集体は、例えば、5nm、8nm、10nm、12nm、15nm、20nm、25nm、30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、150nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nmもしくは800nmのサイズ(正確に、約、少なくとも、超、以下または未満)、または、前述の例示的なサイズのいずれか2つによって定められる範囲内のサイズを有する。
【0028】
典型的には、一次および/もしくは凝集磁性ナノ粒子またはそのBNCはサイズにばらつきがあり、すなわち、これらは一般に、狭いまたは広いばらつきでサイズがばらついている。異なる実施形態において、一次もしくは凝集体サイズの任意の範囲が、一次もしくは凝集体サイズの全範囲の主たる割合もしくは副次的な割合を構成することが可能である。例えば、いくつかの実施形態において、一次粒径の特定の範囲(例えば、約1、2、3、5または10nm以上、および、約15、20、25、30、35、40、45または50nm以下)または凝集体粒径の特定の範囲(例えば、約5、10、15または20nm以上、および、約50、100、150、200、250または300nm以下)は、一次粒径の全範囲の約50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%または100%以上または超を構成する。他の実施形態において、一次粒径の特定の範囲(例えば、約1、2、3、5もしくは10nm未満、または、約15、20、25、30、35、40、45もしくは50nm超)または凝集体粒径の特定の範囲(例えば、約20、10もしくは5nm未満、または、約25、50、100、150、200、250もしくは300nm超)は、一次粒径の全範囲の約50%、40%、30%、20%、10%、5%、2%、1%、0.5%もしくは0.1%以下または未満を構成する。
【0029】
磁性ナノ粒子の凝集体(すなわち、「凝集体」)またはそのBNCは、これらを形成する個別の一次微結晶の量に応じて、実質的に多孔度を有さないものを含めて任意の多孔度を有することが可能である。特定の実施形態において、凝集体は、間隙のメソ細孔を含有する(すなわち、パッキング配置によって形成される、一次磁性ナノ粒子間に位置するメソ細孔)ことによりメソポーラスである。メソ細孔は一般に、少なくとも2nmおよび50nm以下のサイズである。異なる実施形態において、メソ細孔は、例えば、2、3、4、5、10、12、15、20、25、30、35、40、45もしくは50nmの孔径(正確にまたは約)、または、前述の例示的な孔径のいずれか2つによって定められる範囲内の孔径を有することが可能である。粒径の場合と同様に、メソ細孔は典型的にはサイズにばらつきがあり、すなわち、これらは一般に、狭いまたは広いばらつきでサイズがばらついている。異なる実施形態において、メソ孔径の任意の範囲が、メソ孔径の全範囲または総細孔体積の主たる割合もしくは副次的な割合を構成することが可能である。例えば、いくつかの実施形態において、メソ孔径の特定の範囲(例えば、約2、3または5以上、および、8、10、15、20、25または30nm以下)は、メソ孔径の全範囲または総細孔体積の約50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%または100%以上または超を構成する。他の実施形態において、メソ孔径の特定の範囲(例えば、約2、3、4もしくは5nm未満、または、約10、15、20、25、30、35、40、45もしくは50nm超)は、メソ孔径の全範囲または総細孔体積の約50%、40%、30%、20%、10%、5%、2%、1%、0.5%または0.1%以下または未満を構成する。
【0030】
磁性ナノ粒子は、技術分野において公知である組成のいずれかを有することが可能である。いくつかの実施形態において、磁性ナノ粒子は、磁性を有するゼロ価の金属部分であるか、これを含む。このようなゼロ価の金属のいくつかの例としては、コバルト、ニッケルおよび鉄、ならびに、その混合物および合金が挙げられる。他の実施形態において、磁性ナノ粒子は、コバルト、ニッケルもしくは鉄、または、これらの混合物の酸化物などの磁性金属の酸化物であるかこれらを含む。いくつかの実施形態において、磁性ナノ粒子は、明確なコアと表面部分とを有する。例えば、磁性ナノ粒子は、元素鉄、コバルトまたはニッケルから組成されるコア部分と、金、白金、パラジウムまたは銀の層などの金属酸化物または貴金属コーティングなどの不動態化層から組成される表面部分とを有し得る。他の実施形態において、金属酸化物磁性ナノ粒子もしくはその凝集体は、貴金属コーティングの層で被覆されている。貴金属コーティングは、例えば、磁性ナノ粒子表面における荷電数を低減させ得、これは、溶液中における分散性を高め、および、BNCのサイズの制御が良好となり、有利であり得る。貴金属コーティングは、クエン酸塩、マロン酸塩または酒石酸塩などのキレート化有機酸が生体化学反応またはプロセスにおいて用いられる場合における、リーチングによるまたはキレート化による可溶化、酸化から磁性ナノ粒子を保護する。不動態化層は、いずれかの好適な厚さであって、特に、例えば、0.1nm、0.2nm、0.3nm、0.4nm、0.5nm、0.6nm、0.7nm、0.8nm、0.9nm、1nm、2nm、3nm、4nm、5nm、6nm、7nm、8nm、9nmもしくは10nm(少なくとも、以下または未満、約)、または、これらの値のいずれか2つによって定められる範囲内の厚さを有することが可能である。
【0031】
本発明に有用な磁性材料は技術分野において周知である。非限定的な例は、鉄鉱石(マグネタイトまたは天然磁石)、コバルトおよびニッケルなどの鉱石を含む強磁性体および強磁性材料を含む。他の実施形態においては、希土類磁石が用いられる。非限定的な例としては、ネオジム、ガドリニウム、シスプロシウム(sysprosium)、サマリウム-コバルト、ネオジム-鉄-ホウ素等が挙げられる。さらなる実施形態において、磁石は、複合体材料を含む。非限定的な例としては、セラミック、フェライトおよびアルニコ磁石が挙げられる。好ましい実施形態において、磁性ナノ粒子は酸化鉄組成物を有する。酸化鉄組成物は、式AB2O4(式中、Aは二価金属(例えば、Xn2+、Ni2+、Mn2+、Co2+、Ba2+、Sr2+またはこれらの組み合わせ)であり、および、Bは三価金属(例えば、Fe3+、Cr3+またはこれらの組み合わせ)である)に従う、例えば、マグネタイト(Fe3O4)、ヘマタイト(α-Fe2O3)、磁赤鉄鉱(γ-Fe2O3)またはスピネルフェライトといった技術分野において公知である磁性または超常磁性酸化鉄組成物のいずれかであることが可能である。
【0032】
個別の磁性ナノ粒子もしくはその凝集体またはそのBNCは、任意の好適な程度の磁気を有する。例えば、磁性ナノ粒子、BNCまたはBNC足場アセンブリは、約5、10、15、20、25、30、40、45、50、60、70、80、90または100emu/g以上または以下の飽和磁化(Ms)を有することが可能である。好ましくは、磁性ナノ粒子、BNCまたはBNC-足場アセンブリは、5emu/gを超えない(すなわち、以下)または未満の永久磁化(Mr)を有し、より好ましくは、4emu/g、3emu/g、2emu/g、1emu/g、0.5emu/gまたは0.1emu/g以下または未満の永久磁化(Mr)を有する。磁性ナノ粒子、BNCまたはBNC-足場アセンブリの表面磁界は、例えば、約0.5、1、5、10、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900もしくは1000ガウス(G)(約または少なくとも)、または、前述の値のいずれか2つによって定められる範囲内の磁界であることが可能である。ミクロ粒子が含まれる場合、ミクロ粒子はまた、上記の磁性強度のいずれかを有し得る。
【0033】
磁性ナノ粒子もしくはその凝集体は、結果的なBNCを生成するために、用途に応じて飽和度以下または未満で好適な量の酵素を吸着するよう形成可能である。異なる実施形態において、磁性ナノ粒子もしくはその凝集体は、例えば、1、5、10、15、20、25または30pmol/m2の酵素(約、少なくとも、以下または未満)を吸着し得る。代替的に、磁性ナノ粒子もしくはその凝集体は、例えば、飽和度の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%(約、少なくとも、以下または未満)の量の酵素を吸着し得る。
【0034】
磁性ナノ粒子もしくはその凝集体またはそのBNCは、任意の好適な細孔体積を有する。例えば、磁性ナノ粒子またはその凝集体は、例えば、約0.01、0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95もしくは1cm3/gの細孔体積(約、少なくとも、以下または未満)、または、前述の値のいずれか2つによって定められる範囲内の細孔体積を有することが可能である。
【0035】
磁性ナノ粒子もしくはその凝集体またはそのBNCは、任意の好適な比表面積を有する。例えば、磁性ナノ粒子もしくはその凝集体は、例えば、約50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190または200m2/g(約、少なくとも、以下または未満)の比表面積を有することが可能である。
【0036】
MNP、その構造、組織化、好適な酵素および使用は、参照によりその全体が本明細書において援用される国際公開第2012122437号パンフレットおよび国際公開第2014055853号パンフレットに記載されている。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態は、ヒドロラーゼを含む。ヒドロラーゼは、基質として水を用いることで多くの種類の化学結合の加水分解を触媒する。基質は典型的には、破断される結合部位に水素および水酸基を有する。ヒドロラーゼは、酵素のEC番号分類におけるEC3と分類される。ヒドロラーゼは、これらが作用する結合に基づいて数々のサブクラスにさらに分類されることが可能である。例示的なヒドロラーゼおよびこれらが加水分解する結合は以下を含む:EC3.1:エステル結合(エステラーゼ:ヌクレアーゼ、ホスホジエステラーゼ、リパーゼ、脱リン酸化酵素)、EC3.2:糖(DNAグリコシラーゼ、グリコシドヒドロラーゼ)、EC3.3:エーテル結合、EC3.4:ペプチド結合(プロテアーゼ/ペプチダーゼ)、EC3.5:炭素-窒素結合、ペプチド結合以外、EC3.6酸無水物(ヘリカーゼおよびGTPアーゼを含む酸無水物ヒドロラーゼ)、EC3.7炭素-炭素結合、EC3.8ハライド結合、EC3.9:リン-窒素結合、EC3.10:硫黄-窒素結合、EC3.11:炭素-リン結合、EC3.12:硫黄-硫黄結合、およびEC3.13:炭素-硫黄結合。
【0038】
いくつかの好ましい実施形態において、ヒドロラーゼはグリコシドヒドロラーゼである。これらの酵素は、植物材料の分解(例えば、エタノール生成に用いられるグルコースにセルロースを分解するセルラーゼ)、食品生産(例えば、糖転化、マルトデキストリン生成)および紙生産(紙パルプからのヘミセルロースの除去)を含む多様な用途を有する。
【0039】
いくつかの好ましい実施形態において、ヒドロラーゼはリポラーゼ100L(EC3.1.1.3)である。これは、神経障害性疼痛、不安障害およびてんかんに用いられる抗痙攣薬であるプレガバリン(PfizerからLyrica(登録商標)として市販されている)の合成に用いられる。これらの病状は世界人口の約1%に影響を及ぼしている。リポラーゼ100Lは、必要とされる出発材料を39%低減すると共に、単位当たりの廃棄物を80%削減することが見出されていた。
【0040】
いくつかの好ましい実施形態において、ヒドロラーゼはγ-ラクタマーゼ(例えば、EC3.1.5.49)である。これは、アバカビル生成(HIV/AIDSを処置するための抗レトロウイルス薬)のための中間体であるビンスラクタムの形成に用いられる。化学量論的プロセスを触媒性流動プロセスに変更することで、操作単位数が17から12に減少すると共に、廃棄率が35%低減することが見出された。また、有害物質である塩化シアンの使用が最小限である。
【0041】
いくつかの好ましい実施形態において、ヒドロラーゼはラクターゼ(例えば、EC3.2.1.108)である。これらの酵素は、乳中のラクトースを単一の糖に分解してラクトースを含まない乳を生産する。この重要な生産物は、ラクトース不耐症である世界人口の略15%の役に立っている。
【0042】
いくつかの好ましい実施形態において、ヒドロラーゼはペニシリンアミダーゼ(例えば、EC3.5.1.11)である。これらの酵素はペニシリンをカルボキシレートと6-アミノペニシラン酸(6-APA)とに分離する。6-APAは、天然および合成ペニシリン誘導体におけるコア構造である。これらの酵素は、特定の感染症と戦うために調整された半合成ペニシリンの生成に用いられる。
【0043】
いくつかの好ましい実施形態において、ヒドロラーゼはニトララーゼ(例えば、EC3.5.5.1)である。これらの酵素はニトリルをカルボキシル基に分離する。ニトララーゼは、アトルバスタチン(PfizerからLipitor(登録商標)として市販されている)の生産に用いられる。これは、メソ-3-ヒドロキシグルタロニトリルのエチル(R)-4-シアノ-3-ヒドロキシブチレートへの反応を触媒し、ここで後者は、アトルバスタチンのコアを形成する。
【0044】
ヒドロラーゼは、参照によりその全体が本明細書において援用される以下の文献において検討されている:Anastas,P.T.Handbook of Green Chemistry.Wiley-VCH-Verlag,2009;Dunn,Peter J.,Andrew Wells,and Michael T.Williams,eds.Green chemistry in the pharmaceutical industry.John Wiley & Sons,2010.;Martinez et al.,Curr.Topics Med.Chem.13(12):1470-90(2010);Wells et al.,Organic Process Res.Dev.16(12):1986-1993(2012)。
【0045】
いくつかの実施形態において、本発明は、過酸化水素生成(HPP)酵素を提供する。一定の実施形態において、HPP酵素は、EX1.1.3亜属であり得るオキシダーゼである。特定の実施形態において、オキシダーゼは、EC1.1.3.3(リンゴ酸オキシダーゼ)、EC1.1.3.4(グルコースオキシダーゼ)、EC1.1.3.5(ヘキソースオキシダーゼ)、EC1.1.3.6(コレステロールオキシダーゼ)、EC1.1.3.7(アリール-アルコールオキシダーゼ)、EC1.1.3.8(L-グルノラクトンオキシダーゼ)、EC1.1.3.9(ガラクトースオキシダーゼ)、EC1.1.3.10(ピラノースオキシダーゼ)、EC1.1.3.11(L-ソルボースオキシダーゼ)、EC1.1.3.12(ピリドキシン4-オキシダーゼ)、EC1.1.3.13(アルコールオキシダーゼ)、EC1.1.3.14(カテコールオキシダーゼ)、EC1.1.3.15(2-オキシ酸オキシダーゼ)、EC1.1.3.16(エクジソンオキシダーゼ)、EC1.1.3.17(コリンオキシダーゼ)、EC1.1.3.18(第二級-アルコールオキシダーゼ)、EC1.1.3.19(4-ヒドロキシマンデン酸オキシダーゼ)、EC1.1.3.20(長鎖アルコールオキシダーゼ)、EC1.1.3.21(グリセロール-3-リン酸塩オキシダーゼ)、EC1.1.3.22、EC1.1.3.23(チアミンオキシダーゼ)、EC1.1.3.24(L-ガラクトノラクトンオキシダーゼ)、EC1.1.3.25、EC1.1.3.26、EC1.1.3.27(ヒドロキシフィタン酸オキシダーゼ)、EC1.1.3.28(ヌクレオシドオキシダーゼ)、EC1.1.3.29(ナシルヘキソサミンオキシダーゼ)、EC1.1.3.30(ポリビニルアルコールオキシダーゼ)、EC1.1.3.31、EC1.1.3.32、EC1.1.3.33、EC1.1.3.34、EC1.1.3.35、EC1.1.3.36、EC1.1.3.37、D-アラビノノ-l,4-ラクトンオキシダーゼ)、EC1.1.3.38(バニリルアルコールオキシダーゼ)、EC1.1.3.39(ヌクレオシドオキシダーゼ、H2O2形成)、EC1.1.3.40(D-マンニトールオキシダーゼ)またはEC1.1.3.41(キシリトールオキシダーゼ)であり得る。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態は、ヒドロキシラーゼを含み得る。ヒドロキシル化は、水酸基(-OH)を有機化合物に導入する化学プロセスである。ヒドロキシル化は、空気中における有機化合物の酸化的分解における最初のステップである。ヒドロキシル化は、親油性化合物をより容易に排出される親水性物質に転換することによる解毒に関与する。いくつかの薬物(例えば、ステロイド)は、ヒドロキシル化により活性化または非活性化される。ヒドロキシラーゼは技術分野において周知である。例示的なヒドロキシラーゼとしては、プロラインヒドロキシラーゼ、リシンヒドロキシラーゼおよびチロシンヒドロキシラーゼが挙げられる。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態はニトリラーゼ(NIT)を含む。これらは、高い光学純度を有するキラルカルボン酸とアンモニアとのニトリルの加水分解を触媒する加水分解酵素(EC3.5.5.1)である。NIT活性は、マンデロニトリルの(R)-マンデル酸への転換を監視することにより計測し得る。これはpHの低下をもたらし、これを分光測光法的に監視し得る。ニトリラーゼは、ビタミンB3またはナイアシンとしても知られているニコチン酸の3-シアノピリジンからの生成に用いられる。ニコチン酸は、食品における栄養補助剤食品および薬学的中間体である。例示的な産業的用途が、本明細書における参照によりその全体が本明細書において援用されるGong et al.,Microbial Cell Factories,11(1),142(2012)において検討されている。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態はヒドラターゼを含む。これらは、水の元素の付加または除去を触媒する酵素である。ヒドロラーゼまたはヒドラーゼとしても知られているヒドラターゼは、C-O結合の水和または脱水を触媒し得る。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態はオキシドレダクターゼを含む。これらの酵素は、一の分子から他への電子の移動を触媒する。これには、一の物質から他へのHおよびO原子または電子の移動が含まれる。これらは典型的には、NADPまたはNAD+を補助因子として利用する。
【0050】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、オキシドレダクターゼは、ポリ塩化ビフェニルおよびフェノール系化合物などの汚染物質の分解、石炭の分解および木材加水分解産物の発酵の増強に用いられる。本発明はさらに、バイオセンサおよび病害診断におけるこれらの利用を含む。
【0051】
いくつかの好ましい実施形態において、オキシドレダクターゼは脱水素酵素(DHO)である。このグループのオキシドレダクターゼは、1種以上の水素化物(H-)を、通常はNAD+/NADP+またはFADもしくはFMNなどのフラビン補酵素といった電子受容体に変換する還元反応によって基質を酸化する。例示的な脱水酵素としては、アルデヒド脱水素酵素、アセトアルデヒド脱水素酵素、アルコール脱水素酵素、グルタミン酸脱水素酵素、乳酸脱水素酵素、ピルビン酸脱水素酵素、グルコース-6-リン酸脱水素酵素、グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素、ソルビトール脱水素酵素、イソクエン酸脱水素酵素、α-ケトグルタル酸脱水素酵素、コハク酸脱水素酵素およびリンゴ酸脱水素酵素が挙げられる。
【0052】
いくつかの好ましい実施形態において、オキシドレダクターゼは、アトルバスタチン(PfizerからLipitor(登録商標)として市販されている)の形成に用いられるオキシドレダクターゼであるケトレダクターゼ(EC1.1.1.184)である。この生体触媒プロセスは、実質的に出発材料が減少され、有機溶剤の使用が限定され、および、廃棄物流の生分解性が高められるために商業的に重要である。
【0053】
いくつかの好ましい実施形態において、オキシドレダクターゼは、グルコース脱水素酵素(例えば、EC1.1.99.10)である。これらは、製薬に用いられる補助因子をリサイクルするために製薬会社によって用いられる。これらは、グルコースのグルコネートへの変換を触媒する。NADP+はNADPHに還元される。これはアバスタン生成に用いられる。
【0054】
いくつかの好ましい実施形態において、オキシドレダクターゼはP450(EC1.14.14.1)である。これは、製薬産業において困難な酸化に用いられる。P450により、天然補助因子(例えば、NADPH/NADP+)に付随するコスト、不一致性および非効率性が低減される。
【0055】
いくつかの好ましい実施形態において、オキシドレダクターゼはEC1.11.1.6などのカタラーゼである。これは、食品産業において、チーズの生産に先立つ乳からの過酸化水素の除去、および、グルコン酸などのpH調整剤の生成のために用いられる。カタラーゼはまた、生地産業において布から過酸化水素を除去するために用いられる。
【0056】
いくつかの好ましい実施形態において、オキシドレダクターゼはグルコースオキシダーゼ(例えば、ノタチン、EC1.1.3.4)である。これは、グルコースの過酸化水素およびD-グルコノ-δ-ラクトンへの酸化を触媒する。これは、例えば、ペルオキシダーゼなどの酵素を消費する過酸化水素のための、酸化剤としての過酸化水素の生成に用いられる。
【0057】
いくつかの実施形態において、本発明は、フリーラジカル生成(FRP)酵素を包含する。いくつかの実施形態において、FRPはペルオキシダーゼである。ペルオキシダーゼは生体系中に広く見られ、フェノールから芳香族アミンにわたる多種多様な芳香族化合物を酸化するために過酸化水素(H2O2)を水に還元するオキシドレダクターゼのサブセットを形成する。ペルオキシダーゼはきわめて効力が高い酵素であるが、過剰量の過酸化物の存在下における強力な阻害のために、産業上の環境において採用することが困難であることでもよく知られている。本発明は、高い反応交換回数および低い阻害を提供するものである。それ故、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)などの酵素が産業規模で用いられ得る。
【0058】
ペルオキシダーゼは亜属EC1.11.1に属する。一定の実施形態において、EC1.11.1酵素は、より具体的には、例えば、EC1.11.1.1(NADHペルオキシダーゼ)、EC1.11.1.2(NADPHペルオキシダーゼ)、EC1.11.1.3(脂肪酸ペルオキシダーゼ)、EC1.11.1.4、EC1.11.1.5(チトクロム-cペルオキシダーゼ)、EC1.11.1.6(カタラーゼ)、EC1.11.1.7(ペルオキシダーゼ)、EC1.11.1.8(ヨージドペルオキシダーゼ)、EC1.11.1.9(グルタチオンペルオキシダーゼ)、EC1.11.1.10(クロリドペルオキシダーゼ)、EC1.11.1.11(L-アスコルビン酸ペルオキシダーゼ)、EC1.11.1.12(リン脂質-ヒドロ過酸化物グルタチオンペルオキシダーゼ)、EC1.11.1.13(マンガンペルオキシダーゼ)、EC1.11.1.14(ジアリールプロパンペルオキシダーゼ)またはEC1.11.1.15(ペルオキシレドキシン)であることが可能である。
【0059】
ホースラディッシュペルオキシダーゼ(EC1.11.1.7)は、セイヨウワサビ植物であるセイヨウワサビ(A.rusticana)の根に見出されるヘム含有オキシドレダクターゼ酵素である。これは、通常、過酸化水素と一緒に発色性基質に作用して鮮やかに着色された生成物複合体をもたらすために、生化学シグナル増幅因子およびトレーサとして通例用いられる。これは、目標分子の分光測光法における検出性を向上させる。ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)のこの特徴は、げっ歯類の神経系毛細管の浸透性の研究に適用されている。本発明のいくつかの実施形態において、HRPは、種々の芳香族化合物の分解能のために、フェノール系排水の可能な修復ストラテジーの一部として用いられる。参照により本明細書においてその全体が援用されている、Duan et al.,ChemPhysChem,15(5),974-980(2014)を参照のこと。
【0060】
他の実施形態において、ペルオキシダーゼはまた、例えば、リグニンペルオキシダーゼ、マンガンペルオキシダーゼまたは万能ペルオキシダーゼといった官能性によってさらに特定され得る。ペルオキシダーゼはまた、真菌性、微生物性、動物または植物ペルオキシダーゼとして特定され得る。ペルオキシダーゼはまた、クラスI、クラスII、またはクラスIIIペルオキシダーゼとして特定され得る。ペルオキシダーゼはまた、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、好酸球ペルオキシダーゼ(EPO)、ラクトペルオキシダーゼ(LP)、甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)、プロスタグランジンHシンターゼ(PGHS)、グルタチオンペルオキシダーゼ、ハロペルオキシダーゼ、カタラーゼ、チトクロムcペルオキシダーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ピーナッツペルオキシダーゼ、ダイズペルオキシダーゼ、カブペルオキシダーゼ、タバコペルオキシダーゼ、トマトペルオキシダーゼ、オオムギペルオキシダーゼまたはペルオキシダシンと特定され得る。特定の実施形態において、ペルオキシダーゼはホースラディッシュペルオキシダーゼである。
【0061】
ラクトペルオキシダーゼ/グルコースオキシダーゼ(LP/GOX)抗菌系は、乳、唾液、涙および粘液などの体液中に自然に生じる(Bosch et al.,J.Applied Microbiol.,89(2),215-24(2000))。この系は、哺乳類および高等生物に無害である2種の天然化合物チオシアネート(SCN-)およびヨウ化物(I-)を利用する(Welk et al.Archives of Oral Biology,2587(2011))。LPは、過酸化水素(H2O2)の存在下におけるチオシアネートおよびヨウ化物イオンのそれぞれ次亜チオシアン酸塩(OSCN-)および次亜ヨウ素酸(OI-)への酸化を触媒する。この系中のH2O2は、酸素の存在下におけるβ-D-グルコースに対するGOXの活性によってもたらされる。これらのフリーラジカル化合物は次いで、細菌の細胞膜中のスルフヒドリル基を酸化して(Purdy,Tenovuo et al.Infection and Immunity,39(3),1187(1983);Bosch et al.,J.Applied Microbiol.,89(2),215-24(2000)膜透過性の機能障害をもたらし(Wan,Wang et al.Biochemistry Journal,362,355-362(2001))、最終的に微生物細胞を死滅させる。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態はトランスフェラーゼを含む。「トランスフェラーゼ」は特定の官能基を一の分子から他の分子に転移させる酵素分類を指す。転移される基の例としては、メチル基およびグリコシル基が挙げられる。トランスフェラーゼは、発癌化学物質および環境汚染物質などの物質の処理に用いられる。また、これらは、ヒトの体内に見出される有害化学物質および代謝産物と戦うまたは中和するために用いられる。
【0063】
いくつかの好ましい実施形態において、トランスフェラーゼはトランスアミナーゼである。トランスアミナーゼまたはアミノトランスフェラーゼは、アミノ酸とα-ケト酸との間の反応を触媒する。これらは、アミノ酸の合成において重要である。転移においては、一の分子におけるNH2基が他の分子における他の基(例えば、ケト基)由来の=Oと交換される。
【0064】
さらに好ましい実施形態において、トランスアミナーゼはω-トランスアミナーゼ(EC2.6.1.18)である。これは、とりわけ、シタグリプチン(Merck and Co.により、抗糖尿病薬Januvia(登録商標)として市販されている)の合成に用いられる。改変ω-トランスアミナーゼは、生体触媒活性を例えば25,000倍向上させて、シタグリプチン収率の合計で13%の増加およびプロセス廃棄物全体における19%の低減をもたらすことが見出されている。
【0065】
基質に対する高い立体選択性および生成物に対する高い立体特異性により、ω-トランスアミナーゼは、人工的なアミノ酸および光学的に純粋なキラルアミンまたはケト酸の形成に利用することが可能である(Mathew & Yun,ACS Catalysis 2(6),993-1001(2012))。ω-トランスアミナーゼはまた、活性な薬学的中間体の生体触媒キラル分解における用途を有し、従来の化学的方法よりもプロセスを簡素化する(Schaetzle et al.,Anal.Chem.81(19):8244-48(2009))。前述の文献は参照によりそれらの全体が援用される。
【0066】
いくつかの好ましい実施形態において、トランスフェラーゼはチミジル酸シンテターゼ(例えば、EC2.1.1.45)である。これらの酵素は、糖ヌクレオチドおよびオリゴ糖の生産に用いられる。これらは、例えば、以下の反応を触媒する。
【数1】
【0067】
いくつかの好ましい実施形態において、トランスフェラーゼはグルタチオンS-トランスフェラーゼ(例えば、EC2.5.1.18)である。これらの酵素は、グルタチオンを他のトリペプチドに触媒する。これらは、食品産業において酸化剤として、ならびに、製薬産業における抗老化薬および皮膚配合物の形成に用いられる。
【0068】
いくつかの好ましい実施形態において、トランスフェラーゼはグルコキナーゼ(例えば、EC2.7.1.2)である。これらの酵素は、グルコースのグルコース-6-リン酸塩へのリン酸化を促進させる。これらは、食品産業において生成物流中におけるグルコース濃度を低減するために、ならびに、製薬産業において糖尿病薬物を形成するために用いられる。
【0069】
いくつかの好ましい実施形態において、トランスフェラーゼはリボフラビンキナーゼ(例えば、EC2.7.1.26)である。さらに好ましい実施形態において、リボフラビンキナーゼは、食品産業におけるフラビンモノヌクレオチド(FMN)の生成に用いられる。FMNは、オレンジ-赤色の食品着色添加剤であり、および、過剰量のリボフラビン(ビタミンB
2)を分解する薬剤である。リボフラビンキナーゼは、例えば以下の反応を触媒する。
【数2】
【0070】
本発明のいくつかの実施形態はエネレダクターゼ(EREDS)を含む。これらの酵素は、NAD(P)H-に依存する形式でアルケン還元を触媒する。エネレダクターゼの例としては、オキシドレダクターゼのFMN-含有旧黄色酵素(OYE)ファミリー(EC1.6.99)、クロストリジウムエン酸レダクターゼ(EnoRs、C1.3.1.31)、フラビン非依存性中間鎖脱水素酵素/レダクターゼ(MDR;EC1.3.1)、短鎖脱水素酵素/レダクターゼ(SDR;EC1.1.1.207-8)、ロイコトリエンB4脱水素酵素(LTD)、キノン(QOR)、プロゲステロン5b-レダクターゼ、ラットプレゴンレダクターゼ(PGR)、タバコ二重結合レダクターゼ(NtDBR)、シアノバクテリアOYE、カセイ菌(Lactobacillus casei)由来のLacER、アクロモバクター属の一種(Achromobacter sp.JA81)由来のAchr-OYE4、および、イースト菌OYEが挙げられる。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態はイミンレダクターゼ(IREDS)を含む。イミンレダクターゼ(IRED)は光学的に純粋な第二級環式アミンの合成を触媒する。これらは、ケトンまたはアルデヒド基質および第一級または第二級アミン基質を転換して、第二級または第三級アミン生成化合物を形成し得る。例示的なIREDは、パエニバチルスエルギイ(Paenibacillus elgii B69)、ストレプトマイセスイポモエアエ(Streptomyces ipomoeae 91-03)、シュードモナスプチダ(Pseudomonas putida KT2440)およびアセトバクテリウム・ウッディイ(Acetobacterium woodii)由来のものである。IREDは、参照によりその全体が本明細書において援用されている国際公開第2013170050号パンフレットにおいて詳細に検討されている。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態において、酵素はリアーゼである。これらは、加水分解または酸化以外のプロセスによって基質から原子群が除去される脱離反応を触媒する。度々、新たな二重結合または環構造がもたらされる。リアーゼの7つのサブクラスが存在する。好ましい実施形態において、ペクチンリアーゼは、高エステル化ペクチン(例えば、果実中)の小分子への分解に用いられる。本発明の他の好ましい実施形態は、オキシニトリラーゼ(マンデロニトリルリアーゼまたは脂肪族(R)-ヒドロキシニトリルリアーゼとも称される)を含む。これらは、マンデロニトリルをシアン化水素+ベンズアルデヒドに開裂する。
【0073】
好ましい実施形態において、リアーゼは、ヒドロキシニトリルリアーゼ(例えば、EC4.1.2、アーモンド(Prunus amygdalus)リアーゼの突然変異)である。ヒドロキシニトリルリアーゼは、幅広い範囲の化学反応および酵素反応に対する多用途の構築ブロックとして役立つことが可能であるシアノヒドリンの形成を触媒する。これらは、酵素スループットおよび低pHでの安定性の向上に用いられると共に、クロピドグレル(Plavix(登録商標))の生成に用いられる。反応プロセスは、参照により本明細書においてその全体が援用されているGlieder et al.,Chem.Int.Ed.42:4815(2003)に記載されている。
【0074】
他の好ましい実施形態において、リアーゼは2-デオキシ-D-リボースリン酸塩アルドラーゼ(DERA、EC4.1.2.4)である。これは、例えばLipitor生成といったスタチン側鎖の形成に用いられる。
【0075】
他の好ましい実施形態において、リアーゼは、(R)-マンデロニトリルリアーゼ(HNL、EC4.1.2.10)である。これは、ジルチアゼムの生成に用いられる前駆体シアノヒドリンであるスレオ-3-アリール-2,3-ジヒドロキシプロパン酸の合成に用いられる。ジルチアゼムは、高血圧および胸痛(アンギーナ)を処置する強心薬である。血圧を低下させることで、脳卒中および心臓発作のリスクが低減される。これはカルシウムチャネル遮断薬である。ジルチアゼムおよびその生成は、共に参照によりそれらの全体が援用される、Dadashipour and Asano,ACS Catal.1:1121-49(2011)およびAehle W.2008.Enzymes in Industry,Weiley-VCH Verlag,GmbH Weinheimに記載されている。
【0076】
他の好ましい実施形態において、リアーゼはニトリルヒドラターゼ(EC4.2.1)である。これは、3-シアノピリジンをニオコチンアミド(ビタミンB3、ナイアシンアミド)に転換するために商業的に用いられる。これはまた、Keppra(登録商標)における活性薬学処方成分であるレベチラセタムの調製にも用いられる。
【0077】
他の好ましい実施形態において、リアーゼはフェニルリン酸塩カルボキシラーゼである。これらは、例えば、室温および大気圧未満のCO2圧下におけるフェノールのリン酸化に用いられる。これらの酵素は、フェノールおよびCO2からの100%の選択性を伴う4-OH安息香酸の合成を触媒する。4-OH安息香酸は、そのエステルの調製に用いられる。さらに好ましい実施形態において、酵素は、化粧品および点眼剤における防腐剤として用いられるパラベンの生成に用いられる。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態において、酵素は炭酸脱水酵素(例えば、EC4.2.1.1)である。炭酸脱水酵素は、すべての生体に存在する広範に分布する金属酵素である。これらは知られている中で最も効率的な酵素であり、CO2交換、pH調整およびHCO3
-分泌を含む複数の生理学的な役割を果たす。炭酸脱水酵素はまた、CO2の隔離および方解石の生成において潜在的な産業用途を有する。Lindskog & Silverman,(2000),The catalytic mechanism of mammalian carbonic anhydrases EXS 90:175-195(W.R.Chegwidden et al.eds.2000);In The Carbonic Anhydrases:New Horizons 7th Edition pp.175-95(W.R.Chegwidden et al.eds.2000);McCall et al.,J.Nutrition 130:1455-1458(2000);Boone et al.,Int’l J.Chem.Engineering Volume 2013:22-27(2013)を参照のこと。前述の文献は参照によりそれらの全体が援用される。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態において、酵素はイソメラーゼである。イソメラーゼは、分子異性化、すなわち、一の異性体を他のものに転換する反応を触媒する。これらは、結合が破断および形成される分子内転移を促進させることが可能であり、または、これらは、配座変化を触媒することが可能である。イソメラーゼは技術分野において周知である。
【0080】
好ましい実施形態において、イソメラーゼは糖の生産において用いられる。さらに好ましい実施形態において、イソメラーゼは、グルコースイソメラーゼ、EC5.3.1.18である。他の実施形態において、グルコースイソメラーゼは、アクチノプラネスミズーリエンシス(Actinoplanes missouriensis)、バチルスコアグランス(Bacillus coagulans)またはストレプトマイセス(Streptomyces)種によって産生される。グルコースイソメラーゼは、D-キシロースおよびD-グルコースをD-キシルロースおよびD-フルクトースに転換し、これは、高フルクトースコーンシロップの生成および生物燃料の分野において重要な反応である。
【0081】
他の好ましい実施形態において、イソメラーゼはマレエートcis-transイソメラーゼ(EC5.2.1.1)である。これは、マレイン酸のフマル酸への転換を触媒する。フマル酸は、L-アスパラギン酸、L-リンゴ酸、ポリエステル樹脂、食品および飲料添加剤、ならびに、染料用の媒染剤の生体触媒生成に重要である。
【0082】
他の好ましい実施形態において、イソメラーゼは、リノール酸cis-transイソメラーゼ(EC5.2.1.5)である。これは、共役リノール酸(CLA)の異性化を触媒する。CLAは、肥満症、糖尿病、ガン、炎症およびアテローム発生の処置に係る数多くの潜在的な健康上の有益性を有すると報告されている。CLAの異なる異性体は、異なる生理学的な効果を発揮し得る。それ故、酵素は単一の異性体の調製に用いられる。
【0083】
本発明の他の好ましい実施形態において、イソメラーゼはトリースリン酸イソメラーゼ(EC5.3.1.1)である。これは、D-グリセルアルデヒド3-リン酸塩およびジヒドロキシアセトンリン酸塩の相互変換を触媒する。トランスケトラーゼまたはアルドラーゼとの組み合わせで、トリースリン酸イソメラーゼは、種々の糖または糖類似体の立体選択的多酵素合成に用いられる。好ましい実施形態は、D-キシルロース5-リン酸塩のワンポット酵素調製である。この合成は、D-フルクトース1,6-二リン酸アルドラーゼ(EC4.1.2.13)によるフルクトース1,6-二リン酸の逆アルドール開裂から開始される。続くラセミ化で、トリースリン酸イソメラーゼによって、トランスケトラーゼ(EC2.2.1.1)によってキシルロース5-リン酸塩に転換されるD-グリセルアルデヒド3-リン酸塩の2種の均等物の生成が促進される。
【0084】
本発明の他の実施形態において、酵素はリガーゼである。これらの酵素は、ヌクレオシド-三リン酸の加水分解と組み合わされる2つの分子を一緒に結合する共有結合の形成を触媒する。リガーゼは技術分野において周知であり、通例、組換え核酸用途に用いられる。好ましい実施形態において、DNAリガーゼはEC6.5.1.1である。
【0085】
好ましい実施形態において、リガーゼはアセチル-CoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.2、ACC)である。ACCは、脂質合成のジャンクションおよび酸化経路における役割を有する。これは、本明細書に開示の本発明と共に、抗生物質の生成、糖尿病治療、肥満症および他のメタボリックシンドロームの症状などの臨床目的で用いられる。
【0086】
他の好ましい実施形態において、リガーゼはプロピオニル-CoAカルボキシラーゼ(PCC、EC6.4.1.3)である。これは、ミトコンドリアマトリックスにおいてD-メチルマロニル-CoAを生成するプロピオニル-CoAのビオチン-依存カルボキシル化を触媒する。メチルマロニル-CoAは、多くの有機化合物の生合成、ならびに、炭素同化プロセスにおける重要な中間体である。
【0087】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、本発明において用いられる酵素を発現する組換え細胞を用いる。組換えDNA技術は技術分野において公知である。いくつかの実施形態において、細胞は、酵素を発現するプラスミドなどの発現ベクターで形質転換される。他の実施形態において、ベクターは、例えば転写開始、転写終了、翻訳開始および翻訳終了に係る1つ以上の遺伝子シグナルを有する。ここで、酵素をコードする核酸は、好適な宿主生体中に適当に移された場合に発現されるよう、ベクター中においてクローン化され得る。好適な宿主細胞は、技術分野において周知であるとおりバクテリア、真菌、植物または動物に由来するものであり得る。
【0088】
BNC(レベル1)は酵素固定化能の大部分をもたらすが、往々にして、これらは、標準的な強度の磁石によって容易に捕捉されるには小さすぎる。それ故、マイクロメートル未満の磁性材料(レベル2)が、レベル1に対してバルク磁化および追加的な安定性をもたらすために用いられる。50~500nmの範囲の粒径を有する市販されている非固定化マグネタイト粉末は親水性が高くプラスチックおよび金属表面に貼り付く傾向にあり、これにより、経時的に、所与の反応器系中における実効上の酵素の量が低減されてしまう。加えて、粉末化されたマグネタイトはきわめて高密度であり、それ故、輸送コストが高くなってしまう。また、かなり高価でもあり、特に、100nmよりも小さい粒径では顕著である。これらの限定事項を克服するために、マグネタイト、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)などの不水溶性架橋ポリマーから構成される低密度ハイブリッド材料が開発された。これらの材料は、架橋後における水溶性ポリマーの凍結鋳造および凍結乾燥によって形成される。これらの材料は外部表面に対する接着性が低く、マグネタイトの必要量が少なく、純粋なマグネタイト粉末に少なくとも匹敵するレベル1の捕捉を達成する。
【0089】
一実施形態においては、連続するマクロポーラス足場は架橋ポリマー組成物を有する。このポリマー組成物は、技術分野において公知である固体有機、無機またはハイブリッド有機-無機ポリマー組成物のいずれかであり得、および、バインダとして作用する合成またはバイオポリマーであり得る。好ましくは、ポリマーマクロポーラス足場は、階層型触媒の使用が意図される水または他の媒質中において溶解または分解しない。合成有機ポリマーのいくつかの例としては、ビニル付加ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸またはポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸またはポリメタクリル酸塩、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール等)、フッ素化ポリマー(例えば、フッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等)、エポキシド(例えば、フェノール樹脂、レソルシノール-ホルムアルデヒド樹脂)、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、および、これらのコポリマーが挙げられる。バイオポリマーのいくつかの例としては、多糖類(例えば、セルロース、ヘミセルロース、キシラン、キトサン、イヌリン、デキストラン、アガロースおよびアルギン酸)、ポリ乳酸およびポリグリコール酸が挙げられる。セルロースの特定の事例においては、セルロースは、微生物由来または藻類由来のセルロースであり得る。無機またはハイブリッド有機-無機ポリマーのいくつかの例としては、ポリシロキサン(例えば、ポリジメチルシロキサンなどのゾルゲル合成によって調製されるもの)およびポリホスファゼンが挙げられる。いくつかの実施形態において、上記のポリマー組成物のいずれか1つ以上の分類または特定のタイプのものがマクロポーラス足場として排除される。
【実施例】
【0090】
実施例1-マクロポーラスポリマーハイブリッド足場粉末の調製
前駆体溶液を生成するために、ポリマーのストック溶液を最初に調製した。ポリ(ビニルアルコール)(PVA、Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)(MW=89,000~98,000、99%加水分解)を、70℃で、10%w/wのストック濃度にMilli-Q水に溶解した。HEC(Sigma-Aldrich)、MW=250,000)、CMC(ジェネリック低粘度、Sigma)およびEHEC(EHM 300、Bermocoll)の各々を、2%w/vのストック濃度にMilli-Q水中に溶解した。次いで、2種の異なる粒径分布(「ファイン」(F)、50~100nmおよび「ミディアム」(M)、100~500nm)の1.56~3.00gのマグネタイト粉末(Sigma-Aldrich)を計量し、別に置いておいた。用いた各試薬の量は、マグネタイト対ポリマーの所望の比率、ならびに、凍結乾燥後の乾燥固形分の所望の濃度に応じて様々であった。過剰量の水を添加して粘度を低くして、凍結鋳造中における氷の成長と細孔の形成の度合いを増大させた。
【0091】
凍結鋳造するための溶液の準備ができたら、マグネタイトを固体粉末クエン酸(その後のPVA架橋ステップ用)と共に、250mMの最終濃度にポリマー溶液に添加した。混合物に対して、直ぐに、35%振幅(1/8インチチップ)で3分間超音波処理を行った。超音波処理後、溶液を液体窒素浴中においてそのまま凍結させ、次いで、-10℃および0.01torrで一晩または乾燥するまで凍結乾燥させた。PVA架橋を開始するために、形成した乾燥モノリスを130℃のオーブン中に60~120分間置いた。最後に、モノリスを60℃の水で洗浄して過剰量の架橋剤を除去し、市販のWaringブレンダーで30~60秒間かけて粉砕した。
【0092】
この実施例においては、足場を管状のモノリス形状に鋳造した。「MO」は両方のモノリス前駆体溶液を指す。MOの直後に続く最初の数字の組は、配合物番号を示す。それ故、上記の最適化されたモノリスは、32番目のモノリス配合物における変形である。ハイフンに続く2番目の数字の組は希釈度を示す。未希釈のモノリス(例えば、MO32)にはこの数字が付されておらず、上記から算出可能であるとおり、特定の一定質量のマグネタイト、PVAおよびCMCが溶解された20mLの総体積に相当する。MO32-30は同一の固体塊を示すが、代わりに30mLの総体積中に溶解されており、MO32-40は40mLへの希釈を示し、その他も同様である。前駆体溶液粘度は、株式会社エー・アンド・デイVibro Viscometer SV-10(日本国東京豊島区)により室温で計測した。「Hi μ」は、高粘度(約2000~3800cP)CMCで形成したモノリスを指す。ここで、標識がない場合には、モノリスが低粘度(<50cP)CMCで形成されていることを示す。
【0093】
MO32(1.875gのマグネタイト粉末(50~100nm)、3.125mLの10%ポリ(ビニルアルコール)、3.125mLの2%低粘度カルボキシメチルセルロース[CMC]および13.75mLの水、0.96gのクエン酸と共に架橋)-総体積約20mL。前駆体溶液の粘度は、室温で3.85cPであった。
【0094】
MO32-30(1.875gのマグネタイト粉末(50~100nm)、3.125mLの10%ポリ(ビニルアルコール)、3.125mLの2%低粘度カルボキシメチルセルロース[CMC]および23.75mLの水、0.96gのクエン酸と共に架橋)-総体積約30mL。前駆体溶液の粘度は室温で2.33cPであった。
【0095】
MO32-40-hi μ(1.875gのマグネタイト粉末(50~100nm)、3.125mLの10%ポリ(ビニルアルコール)、3.125mLの2%高粘度カルボキシメチルセルロース[CMC](Ashland製のAqualon 7H3SXFPH)および33.75mLの水、0.96gのクエン酸と共に架橋)-総体積約40mL。前駆体溶液の粘度は室温で3.65cPであった。
【0096】
MO32-50-hi μ(1.875gのマグネタイト粉末(50~100nm)、3.125mLの10%。ポリ(ビニルアルコール)、3.125mLの2%高粘度カルボキシメチルセルロース[CMC](Ashland製のAqualon 7H3SXFPH))および43.75mLの水、0.96gのクエン酸と共に架橋)-総体積約50mL。前駆体溶液の粘度は室温で3.59cPであった。マグネタイトの質量および細かさは、各配合物において用いたSigma製のマグネタイトの特徴を示す。PVAの架橋に用いたクエン酸の質量は既に説明したとおり250mM当量濃度に相当し、以下の式(式1)により、用いたPVAの質量に基づいて算出される。
mCA=(mPVA/0.3125)(0.02cCAMCA)(1)
(式中、
mCAは必要なクエン酸の質量(グラム)である
mPVAは溶液中のPVAの合計質量(グラム)である
cCAはmol/Lでの目標クエン酸濃度である(ここでは、0.25Mを用いた)
MCAはクエン酸の分子量である(192.2 グラム/mol)。
【0097】
マグネタイトおよびクエン酸の体積はサンプルの総体積と比してごくわずかであり、計算中においては無視した。
【0098】
低クエン酸対ポリマー比率(1:1未満)および硬化時間(1時間未満)では、架橋の欠乏がもたらされた。架橋が欠乏している材料は部分的に水に可能性であり、細孔および表面構造が失われてしまう。
【0099】
4種の配合物を、6本の50mLチューブを並行して凍結することにより、各々を300mLの溶液に成功裏にスケールアップさせた。所望のモノリスの目標総乾燥質量m
Tを想定して、溶液の生成は以下の式を適用することにより容易にスケールアップが可能である。
【数3】
(式中、
【0100】
【0101】
そのままのモノリスはマクロポーラスであった。それぞれ449および3.85μmの孔径で、MO32-30は68.07%の多孔度、および、MO32-50は67.7%の多孔度を有していた。水銀ポロシメータ(Micromeritics,Norcross,GA,USA)による計測で、骨格密度は、それぞれ0.86および0.71g/mlであった。
【0102】
含水量が高い場合には、粘度の高いポリマーを用いて、氷の鋳型化に先だって粒状マグネタイトの良好な懸濁を維持した。固形分の総量を一定に維持しながら、置換度の低い水溶性ポリマーを用いることで粘度を調節した。ポリマーの置換度が低い場合には溶液の粘度は高かった。
【0103】
モノリス材料は大部分がマイクロメートル未満のマクロ細孔でマクロポーラスであったが(
図2)、メソ細孔はなかった。粉砕後、マクロ細孔が損失されたためにマクロ多孔度は低下した。合計表面積は、破壊された細孔セルによりマクロ細孔の内表面が粒子の外表面となったため、粉砕の最中に保持された。粒径は、粉砕強度およびふるいがけによって制御した。モノリスM32由来のふるいにかけていない粉末は、2.67m
2/g(ラングミュア表面積)の表面積を有していると計測された。モノリスM32-30由来のふるいにかけていない粉末は、2.8m
2/g(ラングミュア表面積)の表面積を有していると計測された。
【0104】
MO32粉末に対する50%のBNC充填量では、計算上の多孔度は、BNCのメソポーラス構造により2.8m2/gから75m2/gに増加した。
【0105】
粉砕した材料の合計多孔度および嵩密度は、系中の水の量、架橋性ポリマーの量および前駆体溶液の粘度を調節することにより調整が可能である。これらのパラメータが氷結晶の形成を制御する。
【0106】
材料の磁化率を判定するために、Quantum Design(San Diego,CA,USA)Physical Property Measurement System(PPMS)ユニットを用いて、最初に磁気モーメント(μ)を異なる磁界強度(H)で計測した(すなわち、磁性ヒステリシスループ実験を行った)。比較のために、磁性挙動を純粋な50~100nmマグネタイト粉末についても計測した。次いで、これらのモーメントを合計サンプル質量mについて標準化した。-500~500Oe(-39,790A/m~39,790A/m)の磁界強度については、μとHとの間の関係がほとんど線形(R^2>0.985)であることが判定された。質量磁化率χ(m)を、この高度に線形のドメインにおけるヒステリシス曲線の勾配に基づいて計算した(すなわちχ(m)=μ/(m*H))。
【0107】
純粋な50~100nmマグネタイト粉末、ならびに、粉末足場MO32、MO32-30、MO32-40およびMO32-50-hi μの質量磁化率はそれぞれ、9.23・10-4、6.34・10-4、5.63・10-4、6.14・10-4および6.16・10-4m3/kgと計算された。これは、マグネタイトおよび他の同様の磁性鉱物について報告されている典型的な値と一致する。加えて、ポリマーは磁性応答がわずかであるため、ハイブリッド材料感受性の報告されている値は、足場中に残留するマグネタイトのおおよその質量分率(典型的には40~90質量%の範囲)ときわめて良好に対応する。
【0108】
図1は、モノリス材料および粉砕された粉末の生成に係る例示的な生成プロセスをブロック図形式で示す。本明細書に開示されているとおり、このプロセスは、条件および材料のより大きな範囲を包含することが可能である。
【0109】
図2~4は、広く多様な条件下で生成されたモノリス材料の走査型電子顕微鏡写真(SEM)画像を示す。示されているすべてのモノリスは、凍結鋳造、凍結乾燥および高温で架橋を行った。凍結鋳造の最中に氷の結晶が成長するに伴って、これらは層状のチャネル構造を形成し、これが、混合ポリマー(SEM画像中の滑らかな表面)およびマグネタイト(SEM画像中の小さな立方体の結晶)から組成された排除された材料の薄い壁を形成していた。この成長はまた、1~50μm範囲のマクロ細孔をももたらした。理論に束縛されることは望まないが、前駆体溶液における希釈率が高く、かつ、前駆体溶液の粘度が低いほど、より大きな細孔が形成されることとなる。
【0110】
図2Aは、磁性足場MO32(1.875gのマグネタイト、3.125mLの10%ポリ(ビニルアルコール)、3.125mLの2%低粘度カルボキシメチルセルロース(CMC)および13.75mLの過剰量の水)の走査型電子顕微鏡写真(SEM)画像を示す。
【0111】
図2Bは、磁性足場MO32-50-hi μ(1.875gのマグネタイト、3.125mLの10%ポリ(ビニルアルコール)、3.125mLの2%高粘度カルボキシメチルセルロース(CMC)および43.75mLの過剰量の水)のSEM画像を示す。
図2Aおよび2Bの比較で、前駆体溶液の希釈率を高くすると(より多量の水)、見かけ上の孔径が増加することが分かる。
【0112】
図3Aは、乾燥した固体塊を基準として83%のマグネタイトを含有する磁性足場MO32(1.875gのマグネタイト、3.125mLの10%ポリ(ビニルアルコール)、3.125mLの2%低粘度カルボキシメチルセルロース(CMC)および13.75mLの過剰量の水)のSEM画像を示す。
【0113】
最適なモノリス生成は、凍結鋳造の最中に生じるポリマーとマグネタイトとにおける相分離が最小限である場合に生じる。粉末に粉砕する際に、多孔性層状ネットワークは、熱処理、粉砕および水中への分散後に保持される。
図3Bは、乾燥した固体塊を基準としてわずかに40%のマグネタイトを含有する失敗した磁性足場MO48(0.90gのマグネタイト、11mLの10%ポリ(ビニルアルコール)、3.71mLの6%低粘度カルボキシメチルセルロース(CMC)および23.2mLの過剰量の水)のSEM画像を示す。ポリ(ビニルアルコール)対CMCの質量比率は、両方の試験について同じであった。両方の画像は、足場を130℃で1時間加熱して架橋させた後に撮影した。熱処理された後においても、83%マグネタイトを含有するモノリス(3(a))では氷鋳型化チャネル構造および細孔ネットワークが如何に維持されており、一方で、40%マグネタイトモノリス(3(b))では溶融し、細孔が融合してしまっていることに注目されたい。マグネタイト含有量の低減は、100℃超の温度でのポリマーの相転移および相分離により、架橋ステップの最中における細孔構造の完全な損失を招いてしまった。多孔度の損失はまた、硬化の最中にモノリスが顕著に収縮してしまうために、肉眼レベルでも観察された。対照的に、マグネタイトの濃度が高いと、整列した粒子が足場となり、クエン酸と架橋されるに伴ってポリマーがその上に融けていく。この条件においては、マクロ細孔および材料の全体構造は保存された。これは、その上にポリマーが正確に架橋し、十分に分散されたマクロポーラスネットワークを形成することが可能である内部骨格とされるためには、最低限の割合のマグネタイトが必要とされることを示唆していた。
【0114】
図4Aは、乾燥した固体塊を基準として83%のマグネタイトを含有し、液体窒素浴に垂直に約2Gの均一な磁界を適用しながら凍結された磁性足場MO32-40(1.875gのマグネタイト、3.125mLの10%ポリ(ビニルアルコール)、3.125mLの2%低粘度カルボキシメチルセルロース(CMC)および33.75mLの過剰量の水)のSEM画像を示す。
【0115】
図4Bは、乾燥した固体塊を基準として83%のマグネタイトを含有し、液体窒素浴に平行に約2Gの均一な磁界を適用しながら凍結された磁性足場MO32-40(1.875gのマグネタイト、3.125mLの10%ポリ(ビニルアルコール)、3.125mLの2%低粘度カルボキシメチルセルロース(CMC)および33.75mLの過剰量の水)のSEM画像を示す。サンプル位置については、各図の左側の概略的な円柱を参照のこと。
【0116】
チャネル形成およびマグネタイト配列の方向は、凍結容器に対して外部磁界B(平行または垂直)を適用することで制御可能である。マグネタイト粒子の初期の配向および配列で、モノリスの凍結の最中における氷の結晶核形成および指向性のある成長を制約することが可能である。肉眼による観察で、層状材料のモノリスの組織化における差異が見られる。凍結時における外部磁界の平行な配向で、きわめて脆弱で鉛直に剥離する材料がもたらされた。凍結時における外部磁界の垂直な配向で、より頑強で水平に剥離する材料がもたらされた。外部磁界を用いて、材料における好ましい開裂設計を誘起させることが可能である。
【0117】
得られる架橋材料は溶液中において安定であり、マグネタイト粉末とは異なる表面特性を有していた。
図5は、通常のマグネタイト粉末と比した足場の低減された表面汚損ポテンシャルを示す。この写真は、2本のチューブを示す。左側のチューブは、1mLの純粋なマグネタイト粉末(50~100nm)を2.5mg/mLで水溶液中に含んでいた。右側のチューブは、1mLの粉砕した磁性足場MO32を同様に2.5mg/mLで水溶液中に含んでいた。溶液中の磁性材料を引きつけるが、チューブの壁面に付着した磁性材料は引きつけないネオジム磁石を中心に配置した。両方のチューブを、2ヶ月にわたって断続的ではあるが等しく撹拌した。左側のチューブは顕著なファウリングを示していた。右側のチューブは事実上ファウリングを示していなかった。
【0118】
最も微細なモノリス粉末(サイズ<100μm)は、容易にピペットが可能であり、または、非特定的な表面吸着による材料または固定化酵素の損失を伴わない液体の移動により取り扱いが可能である。足場の磁化率は、包埋マグネタイトの量、質量および密度に依存する。
【0119】
実施例2-生体触媒における磁性足場の使用
粉砕したモノリス材料からの粉末を用いてBNCを固定化し、固定化酵素活性について普通のマグネタイト粉末と比較した。表2に、BNC中に固定化した酵素、その固定化効率および有効充填量割合がまとめられている。
【0120】
50%の粉末に鋳型化されたBNCの50%充填量に係るBMC酵素担体(粉末上で鋳型化されたBNC)の合計表面積は約80m2/1グラムの材料と推定され、ここで、表面の95%はBNCによるものであり、5%が足場材料による。モノリス粉末上に固定化されるBNCが多いほど、表面積およびメソポーラス体積が大きくなる。
【0121】
【0122】
固定化効率は、固定化された酵素の質量対固定化前の酵素の合計初期質量の比率として定義される。有効充填量は、固定化前の酵素の合計初期質量対用いられた磁性足場の合計質量の比率に固定化効率を乗じたものとして定義される。固定化効率は式7に定義されている。
【数4】
【0123】
【0124】
本テキストにおいては、充填量(修飾語無し)または公称充填量という用語もまた用いられ得る。これらの用語は有効充填量とは異なっており、式9に定義されている。
【数6】
式中:
・m
IEは、固定化に成功した酵素の質量である
・m
Eは、最初に存在する非固定化酵素合計質量である
・m
MPは、用いられたすべての磁性支持体の合計質量である(これは、マグネタイトナノ粒子の質量および適用される場合には二次足場の質量を含む)
・η
Iは、タンパク質定量化が完了した後に判定される固定化効率である
・L
Eは、有効酵素質量充填量である
・L
E’は、公称酵素質量充填量である
【0125】
固定化ニトリラーゼ
ニトリラーゼ(14の同等のサブユニット(それぞれMW=41kDa、pI=8.1))およびマグネタイトナノ粒子を含有するBNCを20%充填量(LE’=0.2)で合成し、次いで、磁性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場または純粋なマグネタイト粉末に鋳型化して、10%の総有効充填量(LE=0.1)のBMCを形成した。最適化した固定化条件では、ニコチン酸の合成に係る非固定化酵素と比して95%の保持活性がもたらされた。
【0126】
材料および試薬。大腸菌(E.coli)において発現された組換えニトリラーゼ(Sigma-Aldrichカタログ番号04529、バッチ番号BCBL7680V)、3-シアノピラジン、o-フタルジアルデヒド、2-メルカプトエタノール、BICINE-KOHおよびエタノールをSigma-Aldrich(St.Louis,MO,USA)から購入した。塩酸、塩化アンモニウムおよび水酸化カリウムは、Macron Fine Chemicals(CenterValley,PA,USA)製で、Cornell University Chemistry Stockroom(Ithaca,NY,USA)で購入した。Quick Start(商標)Bradford Protein Assayは、Bio-Rad(Hercules,CA,USA)から購入した。マグネタイトナノ粒子を、ZYMtronix Catalytic Systems(Ithaca,NY,USA)でインハウス合成し、ならびに、磁性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場を既述のとおりに合成した。ストック溶液を、Barnstead(商標)Nanopure(商標)により精製した18.2MΩ-cm水中に形成した。蛍光強度を、底が黒い蛍光マイクロプレートであるCorning Costar(登録商標)3925中において、Gen5(商標)ソフトウェアで操作するBiotek(登録商標)Synergy(商標)H1プレートリーダを用いて計測した。
【0127】
方法。凍結乾燥したニトリラーゼを水中に溶解させた。O-フタルジアルデヒド(OPA)ストック溶液(75mM)を100%エタノール中に調製し、氷上で維持するか、または、4℃で保管した。2-メルカプトエタノール(2-ME)ストック溶液(72mM)もまた、使用直前に100%エタノール中に調製した。緩衝OPA/2-ME試薬を、450mLの上記の溶液を、9.1mLの200mM pH9.0 BICINE-KOH緩衝剤に添加することにより調製した。使用直前まで緩衝試薬を氷上で維持し、使用時に室温(21℃)と平衡させた。
【0128】
BNCにおけるニトリラーゼ固定化:ニトリラーゼBNCを、pHを100mMのHClおよびNaOHで調節した水中のナノ粒子懸濁液および非固定化酵素溶液を用いて合成した。非固定化ニトリラーゼストックを250μg/mLに希釈し、pH6に調節した。5mLの1250μg/mL NP懸濁液を、Fisher Scientific FB-505 Sonic Dismembranatorを、1/4インチのプローブを使用して出力40%の設定で用い、1分間超音波処理した。十分に分散させたNP懸濁液をpH3に調節した。20%の公称充填量のBNC混合物を、2mL遠心分離マイクロチューブ中において組み合わせ、反転させて混合した等しい体積の酵素溶液およびNP懸濁液(それぞれ500μL)で形成した。BNC混合物を、ロテータで10分間穏やかに撹拌した。BMC足場におけるニトリラーゼBNC鋳型化:25μLの50mg/mLの十分に混合したBMC足場懸濁液(磁性マクロポーラスポリマーハイブリッドまたは単一のマグネタイト粉末)を1mLのBNC溶液に添加し、次いで、ロテータで穏やかに1時間撹拌して、10%公称充填量BMCを形成した。
【0129】
ニトリラーゼ反応および活性判定。ニトリラーゼ(NIT)反応および活性判定方法は共に、本明細書における参照によりその全体が本明細書において援用されるBanerjee,Biotechnol.Appl.Biochem.37(3):289-293(2003)に記載されている方法の変形に基づいている。簡潔には、ニトリラーゼは、アンモニアを遊離させることにより3-シアノピリジンのニコチン酸への加水分解を触媒した。イソインドール蛍光色素を形成することによりアンモニアを検出して、酵素活性を蛍光定量的に計測した。ニトリラーゼ反応を、50℃で23時間、2mL遠心分離マイクロチューブ中において、50mMの3-シアノピリジン、87.5mMのBICINE-KOH、pH9.0および218nM非固定化または固定化ニトリラーゼ(NIT)を含有する1mLの合計反応体積を用いて実施した。13.35μLの100mMのHClを等しい体積のニトリラーゼ反応混合物に添加することにより反応を停止させた。固定化NITを磁気的にペレット化し;その上澄みもペレット化後にHClで処理した。活性を、ニトリラーゼ反応において形成されたアンモニアの定量化により判定した。緩衝試薬(624μL)を上澄みに添加し、室温で20分間穏やかに混合した。インキュベーションの後、150μLの100mMのHClをこの溶液に添加して蛍光シグナルを増大させた。強度が最も高いウェルと比較してゲインを自動調節しながら、412nmの励起、467nmの発光を用いて蛍光強度を計測した。各蛍光読み取り値は、内部線形NH4Cl検量線(R2>0.99)を含んでいた。ニトリラーゼ活性の単位(U)は、87.5mMのBICINE-KOH(pH9.0)中において、50℃で、1分間に遊離された1μmol NH3と定義した。
【0130】
タンパク質定量化。BMCを磁気的にペレット化し、上澄み中のタンパク質含有量を、線形NIT検量線(R2>0.99)を含む、Bradford,Anal.Biochem.,72(1-2):248-254(1976)に記載の方法を用いて測定した。この手法で非固定化酵素の量を定量化し、これにより、固定化効率および有効充填量の判定を可能とした。
【0131】
結果。対照は、触媒されていないアンモニアの遊離はなかったことを示した。ニトリラーゼBNCを、BMCの有効充填量10%について固定化効率>99%で、磁性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場において鋳型化した。これは、単一のマグネタイト粉末(50~100nm)におけるニトリラーゼBNCの鋳型化と匹敵していた。BMC足場は、95%の固定化効率および9.5%の有効充填量を有していた(表2)。ニトリラーゼハイブリッド足場およびマグネタイト粉末BMCの活性もまた、非固定化ニトリラーゼと比して大部分が保持(>95%)されていた(
図6A)。
【0132】
固定化ω-トランスアミナーゼ
ω-トランスアミナーゼ(MW=195kDa)およびマグネタイトナノ粒子を含有するBNCを20%充填量(LE’=0.2)で合成し、次いで、磁性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場または純粋なマグネタイト粉末において鋳型化して、10%の総有効充填量(LE=0.1)のBMCを形成した。最適化した固定化条件では、(R)-(+)-α-メチルベンジルアミンからのアセトフェノンの合成に係る非固定化酵素と比して、95%の保持活性がもたらされた。
【0133】
材料および試薬。大腸菌(E.coli)において発現されたマイコバクテリウムバンバアレニイ(Mycobacterium vanbaaleni)由来の組換えω-トランスアミナーゼ(ωTA)、(R)-(+)-α-メチルベンジルアミン(MBA)、ピルビン酸ナトリウムおよびアセトフェノン(AP)は、Sigma(St.Louis,MO,USA)製であった。ジメチルスルホキシド(DMSO)を、Fisher Scientific(Fair Lawn,NJ,USA)から購入した。塩酸、水酸化ナトリウムおよびリン酸塩緩衝塩は、Macron Fine Chemicals(CenterValley,PA,USA)製であった。マグネタイトナノ粒子、ならびに、磁性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場は、既述のとおり合成した。Quick Start(商標)Bradford Protein Assayは、Bio-Rad(Hercules,CA,USA)から購入した。ストック溶液を、Barnstead(商標)Nanopure(商標)により精製した18.2MΩ-cm水中に形成した。吸光度を、透明なマイクロプレートであるCostar(商標)3635 UV中において、Gen5(商標)ソフトウェアで操作するBiotek Epoch(商標)プレートリーダを用いて三重に計測した。
【0134】
方法。凍結乾燥したωTAを水中に溶解させた。(R)-(+)-α-メチルベンジルアミン(MBA)ストック溶液を、12.78μLのMBAを100μLのDMSO中に溶解し、次いで、10mMの最終濃度となるよう総体積を水で10mLとすることにより調製した。ピルビン酸ナトリウムの45mMストックを、ピルビン酸ナトリウム粉末を水中に溶解することにより調製した。アセトフェノンストック溶液を、12μLのAPを水中に溶解することにより調製した。すべてのストック溶液を氷上で維持した。希釈物をアッセイにおいて使用直前に形成し、室温(21℃)と平衡させた。
【0135】
ω-トランスアミナーゼ活性アッセイ。ωTA活性判定方法は、マイクロプレートに適応されたSchaetzle(2009)に記載の方法に基づいていた。簡潔には、ωTAは、MBA(アミンドナー)のピルビン酸塩へのアミノ基の転移を触媒して、それぞれAPおよびアラニンを形成した。
【化1】
【0136】
酵素活性を、APの形成による245nmにおける吸光度の増加により計測した。ωTA反応を、21℃で1時間、2mL遠心分離マイクロチューブ中において、50mMのpH8.0のリン酸緩衝食塩水(PBS)、0.1mMのMBA、1mMのピルビン酸塩および349nMのω-トランスアミナーゼを含有する1mLの合計反応体積を用いて行った。固定化ωTAを磁気的にペレット化し、その上澄み吸光度を読み取った。APを、0~0.1mMのAPおよび0~0.1mMのアラニン(R2>0.99)を含有する線形検量線を用いて定量化した。1単位(U)のω-トランスアミナーゼ活性は、21℃で、50mMのPBS(pH8.0)中において1分間で形成される1μmolのAPと定義した。
【0137】
BNCにおけるω-トランスアミナーゼ固定化:ωTA BNCを、pHを100mMのHClおよびNaOHで調節した水中のナノ粒子懸濁液および非固定化酵素溶液を用いて合成した。非固定化ωTAを250μg/mLに希釈し、pH7.15に調節した。5mLの1250μg/mL NP懸濁液を、Fisher Scientific FB-505 Sonic Dismembranatorを、1/4インチのプローブを使用して出力40%の設定で用い、1分間超音波処理した。十分に分散させたNP懸濁液をpH3に調節した。20%公称充填量のBNC混合物を、2mL遠心分離マイクロチューブ中において組み合わせ、反転させて混合した等しい体積の酵素溶液およびNP懸濁液(それぞれ500μL)で形成した。BNC混合物を、ロテータで10分間穏やかに撹拌した。
【0138】
BMC足場におけるω-トランスアミナーゼBNC鋳型化:25μLの50mg/mLの十分に混合したBMC足場懸濁液(磁性マクロポーラスポリマーハイブリッドまたは単一のマグネタイト粉末)を1mLのBNC溶液に添加し、次いで、ロテータで穏やかに1時間撹拌して、10%公称充填量BMCを形成した。
【0139】
タンパク質定量化。BMCを磁気的にペレット化し、上澄み中のタンパク質含有量を、線形ωTA検量線(R2>0.99)を含むBradford法を用いて測定した。この手法で非固定化酵素の量を定量化し、これにより、固定化効率および有効充填量の判定を可能とした。
【0140】
対照は、触媒されていないアセトフェノン形成はなかったことを示した。ω-トランスアミナーゼBNCを、BMCの有効充填量10%について固定化効率>99%で、磁性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場において鋳型化した。磁性マクロポーラス足場の固定化効率は、同等の質量の単一のマグネタイト粉末(50~100nm)BMC足場よりもはるかに優れていた(>99%対62%のωTA固定化効率および10%対6.2%の有効充填量)。表2を参照のこと。ω-トランスアミナーゼ磁性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場およびマグネタイト粉末BMCの活性は、非固定化ω-トランスアミナーゼと比して大部分が保持されていた(>95%)(
図6B)。
【0141】
固定化炭酸脱水酵素
ウシ炭酸脱水酵素II(CAN)(MW=30kDa)およびマグネタイトナノ粒子を含有するBNCを20%充填量(LE’=0.2)で合成し、次いで、磁性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場または純粋なマグネタイト粉末に鋳型化して、9.5%総有効充填量(LE=0.095)のBMCを形成した。最適化した固定化条件では、重炭酸塩の二酸化炭素への脱水に係る非固定化酵素と比して96±9%の保持活性がもたらされた。
【0142】
材料および試薬。ウシ赤血球由来の炭酸脱水酵素II(CAまたはCAN)、BICINE-KOH、HEPES-KOHおよび8-ヒドロキシ-ピレン-1,3,6-トリスルホネート(ピラニン)をSigma(St.Louis,MO,USA)から購入した。塩酸、塩化アンモニウムおよび水酸化カリウムは、Macron Fine Chemicals(CenterValley,PA,USA)製で、Cornell University Chemistry Stockroom(Ithaca,NY,USA)で購入した。Quick Start(商標)Bradford Protein Assayは、Bio-Rad(Hercules,CA,USA)から購入した。マグネタイトナノ粒子を、既述のとおりZYMtronix Catalytic Systems(Ithaca,NY,USA)でインハウス合成し、ならびに、磁性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場を既述のとおり合成した。ストック溶液を、Barnstead(商標)Nanopure(商標)により精製した18.2MΩ-cm水中に形成した。蛍光強度を、底が黒い蛍光マイクロプレートであるCorning Costar(登録商標)3925中において、Gen5(商標)ソフトウェアで操作する、試薬注入システムを備えたBiotek(登録商標)Synergy(商標)H1プレートリーダを用いて計測した。
【0143】
方法。凍結乾燥したCANを水中に溶解させた。試薬Aは、2mMのKHCO3および0.5mMのBICINE-KOH緩衝剤を含有していた(pH8)。試薬Bは、500pMの炭酸脱水酵素、100nMのピラニン、および0.5mMのHEPES-KOH緩衝剤を含有していた(pH6)。
【0144】
炭酸脱水酵素活性アッセイ。CANは、炭酸の二酸化炭素および水への脱水を可逆的に触媒する。標準的な炭酸脱水酵素活性は、Wilbur and Anderson(J.Biol.Chem 176:147-154(1948))のアッセイを用いて計測した。二酸化炭素からの重炭酸塩の形成により引き起こされる、緩衝CO2飽和溶液中8.3から6.3へのpHの低下速度を計測する。代替的な蛍光定量的なpHに基づくアッセイを、Shingles & Moroney(Anal.Biochem.252(1):731-737(1997))に既述されているとおり用いた。簡潔には、ピラニンが蛍光性pHインジケータとして用いられ;重炭酸塩の脱水によるpH増大が蛍光強度の増大に反映される。この反応は、等しい体積の試薬AおよびBを混合することにより開始した。サンプル注入システムを備えるマイクロプレートウェル中において試薬Aを試薬Bに添加し、蛍光の読み取りを直ぐに開始した。高い反応速度のために、すべてのサンプルの読み取りは、1回に1ウェルずつ、3重に行った。pH感受性(Fs)および非感受性(Fis)励起波長(それぞれ466nmおよび413nm)を512nm発光波長と共に用いて蛍光を計測した。各プレートに含まれていた緩衝標準(pH6~10)に対するFs/Fis対pHの線形較正曲線を用いて、蛍光強度をpHに変換した(Shingles & McCarty,Plant Physiol.106(2):731-37(1994))。1単位(U)のCAN活性は、上記の条件下における計測の最初の10秒間の最中の1秒間当たりのpHの変化として定義した。前述の文献は、参照により本明細書においてその全体が援用されている。
【0145】
BNCにおける炭酸脱水酵素固定化:CAN BNCを、pHを100mMのHClおよびNaOHで調節した水中のナノ粒子懸濁液および非固定化酵素溶液を用いて形成した。非固定化CANを250μg/mLに希釈し、pH6に調節した。5mLの1250μg/mL NP懸濁液を、Fisher Scientific FB-505 Sonic Dismembranatorを、1/4インチのプローブを使用して出力40%の設定で用い、1分間超音波処理した。十分に分散させたNP懸濁液をpH11に調節した。20%公称充填量のBNC混合物を、2mL遠心分離マイクロチューブ中において組み合わせ、反転させて混合した等しい体積の酵素溶液およびNP懸濁液(それぞれ500μL)で形成した。BNC混合物を、ロテータで10分間穏やかに撹拌した。
【0146】
BMC足場における炭酸脱水酵素BNC鋳型化:25μLの50mg/mLの十分に混合したBMC足場懸濁液(磁性マクロポーラスポリマーハイブリッドまたは単一のマグネタイト粉末)を1mLのBNC溶液に添加し、次いで、ロテータで穏やかに1時間撹拌して、10%公称充填量BMCを形成した。
【0147】
タンパク質定量化。BMCを磁気的にペレット化し、上澄み中のタンパク質含有量を、線形CAN検量線(R2>0.99)、2.5~10μg/mLを含むBradford法を用いて測定した。この手法で非固定化酵素の量を定量化し、これにより、固定化効率および有効充填量の判定を可能とした。
【0148】
結果。対照は、非特異的な反応によるpHの変化はなかったことを示した。CAN BNCを、BMCの有効充填量9.5%について、固定化効率95%で、磁性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場において鋳型化した。これは、95%の固定化効率および9.5%の有効充填量を有していた(表2)単一のマグネタイト粉末(50~100nm)BMC足場におけるCAN BNC足場と匹敵していた。炭酸脱水酵素ハイブリッド足場およびマグネタイト粉末BMCの活性もまた、非固定化炭酸脱水酵素と比して大部分が保持(>95%)されていた(
図6C)。
【0149】
固定化ホースラディッシュペルオキシダーゼ
ホースラディッシュペルオキシダーゼ(MW=44kDa)およびマグネタイトナノ粒子を含有するBNCを5%公称充填量(LE’=0.05)で合成し、次いで、磁性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場または純粋なマグネタイト粉末において鋳型化し、3%の総有効充填量(LE=0.03)のBMCを形成した。最適化した固定化条件では、フェノールと4-アミノアンチピリン(4-AAP)との複合体生成に係る非固定化酵素と比して、活性の4~5倍の向上がもたらされた。
【0150】
材料および試薬。セイヨウワサビ(A.rusticana)根由来のホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、フェノールおよび4-アミノアンチピリン(4-AAP)をSigma(St.Louis,MO,USA)から購入した。過酸化水素、塩酸、水酸化ナトリウムおよびリン酸塩緩衝塩は、Macron Fine Chemicals(CenterValley,PA,USA)製であり、Cornell University Chemistry Stockroom(Ithaca,NY,USA)で購入した。Quick Start(商標)Bradford Protein Assayは、Bio-Rad(Hercules,CA,USA)から購入した。マグネタイトナノ粒子を、既述のとおりZYMtronix Catalytic Systems(Ithaca,NY,USA)でインハウス合成し、ならびに、磁性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場を既述のとおり合成した。ストック溶液を、Barnstead(商標)Nanopure(商標)により精製した18.2MΩ-cm水中に形成した。吸光度を、透明なマイクロプレートであるCostar(商標)3635 UV中において、Gen5(商標)ソフトウェアで操作するBiotek Epoch(商標)プレートリーダを用いて三重に計測した。
【0151】
方法。凍結乾燥したHRPを水中に溶解してストック溶液を形成した。122mMのリン酸塩-緩衝食塩水(PBS)緩衝剤、pH7.4、0.61mMのフェノールおよび0.61mMの4-AAPを水中に含有する新たなHRP試薬を調製した。この溶液を4℃で保管し、使用直前まで暗中に維持し、使用時に室温と平衡させた。
【0152】
BNCにおけるホースラディッシュペルオキシダーゼ固定化:ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)BNCを、pHを100mMのHClおよびNaOHで調節した水中のマグネタイトナノ粒子(NP)懸濁液および非固定化酵素溶液を用いて形成した。非固定化HRPを250μg/mLに希釈し、pH5に調節した。5mLの5000μg/mL NP懸濁液を、Fisher Scientific FB-505 Sonic Dismembratorを、1/4インチプローブを使用して出力40%の設定で用い、1分間超音波処理した。十分に分散したNP懸濁液をpH11に調節した。5%公称充填量のBNC混合物を、2mL遠心分離マイクロチューブ中において組み合わせ、反転により混合した、等しい体積酵素溶液およびNP懸濁液(それぞれ525μL)で形成した。BNC混合物を、ロテータで10分間穏やかに撹拌した。
【0153】
BMC足場におけるホースラディッシュペルオキシダーゼBNC鋳型化:250μLの2.5mg/mLの十分に混合したBMC足場懸濁液(磁性マクロポーラスポリマーハイブリッドまたは単一のマグネタイト粉末)を500mLのBNC溶液に添加し、次いで、ロテータで穏やかに1時間撹拌して、3%公称充填量HRP BMCを形成した。
【0154】
ホースラディッシュペルオキシダーゼ活性アッセイ。HRPは、過酸化水素を開始剤として用いるフェノールおよび4-AAPの非固定化-ラジカル複合体生成を非可逆的に触媒する。
【化2】
【0155】
得られる生成物は、λ=500nmで顕著な吸光度を示す鮮やかなピンク色-赤色のキノンイミン染料である。標準的なセイヨウワサビ活性アッセイ-Emerson-Trinder法の生体触媒形態(48th Purdue University Industrial Waste Conference Proceedings.423-430(1993)では、フェノール系染料生成物の形成によるλ=500nmにおける吸光度の増加速度が酵素活性と相互に関連付けられる。固定化および非固定化HRPの両方に対するHRPバッチ反応を、21℃で、30分間、5mL遠心分離チューブにおいて、反応を開始するために、最初に50mMのpH7.4リン酸塩緩衝食塩水(PBS)、0.25mMのフェノール、0.25mMの4-AAP、15nMのHRPおよび0.3mMのH2O2を含有する3mLの合計反応体積を用いて行った。バッチ反応は穏やかに撹拌した。指定の時点(1、3、30分間)で、λ=500nmでの吸光度読み取り値を三重で得た。対応する量の固定化および非固定化酵素を含有するブランクも調製して、BMCおよびバックグラウンド物質の吸光度の寄与を差し引いた。BMCは反応容器中においてかなり希釈されていたため、BMC含有ブランクは、PBS中の非固定化酵素および水単独と同じ吸光度を有していた。
【0156】
生成物染料を、500nmでの吸光係数を用いて定量化した(12mM-1cm-1)(Sigma Chemical Corporation and Kessey,J.(1994)Enzymatic Assay of Choline Oxidase(EC 1.1.3.17). https://www.sigmaaldrich.com/content/dam/sigma-aldrich/docs/Sigma/Enzyme_Assay/c5896enz.pdf.)。HRP活性の1単位(U)は、21℃で、50mMのPBS(pH7.4)中において1分間で形成される1mmolのキノンイミン染料として定義した。
【0157】
タンパク質定量化。BMCを磁気的にペレット化し、上澄み中のタンパク質含有量を、線形HRP検量線(R2>0.99)、2.5~25μg/mLを含むBradford法を用いて測定した。この手法で非固定化酵素の量を定量化し、これにより、固定化効率および有効充填量の判定を可能とした。
【0158】
結果。対照は、触媒されていない染料形成はなかったことを示した。HRP BNCを、BMCの有効充填量3%について固定化効率>99%で、磁性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場において鋳型化した。これは、同様に>99%の固定化効率および3%の有効充填量を有していた(表2)単一のマグネタイト粉末(50~100nm)BMC足場における鋳型化されたHRP BNCと匹敵していた。ハイブリッド足場およびマグネタイト粉末BMCにおけるHRPの活性は、非固定化HRPと比して4~5倍(400~500%)向上した(
図6(d))。
【0159】
固定化クロロペルオキシダーゼ
クロロペルオキシダーゼ(MW=42kDa)およびマグネタイトナノ粒子を含有するBNCを4%公称充填量(LE’=0.04)で合成し、次いで、磁性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場において鋳型化して、0.8%の総有効充填量(LE=0.008)のBMCを形成した。この固定化条件では、過ヨウ素酸ナトリウム-エピネフリンレポーター反応による判定で、リモネンの(1S,2S,4R)-(+)-リモネン-1,2-ジオールへの酸化に係る非固定化酵素と比して酵素活性の1.6倍の向上をもたらした。
【0160】
材料および試薬。カルダリオミセスフマゴ(Caldariomyces fumago)由来のクロロペルオキシダーゼ(CPO)は、Bio-Research Products,Inc.(NorthLiberty,IA,USA)から入手した。過酸化水素、塩酸、水酸化ナトリウムおよびリン酸塩緩衝塩は、Macron Fine Chemicals(CenterValley,PA,USA)製であった。アスペルギルスニガー(Aspergillus niger)由来の(R)-リモネン、グルコースオキシダーゼ(GOX)、過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)、ウシ肝臓由来のカタラーゼ、ジメチルスルホキシドおよびエピネフリンは、Sigma-Aldrich(St.Louis,MO,USA)から購入した。D-グルコースは、Alfa Aesar(Haverhill,MA,USA)から入手した。BERMOCOLL(登録商標)EHM 300置換セルロースは、AkzoNobel(Amsterdam,Netherlands)から入手した。Quick Start(商標)Bradford Protein Assayは、Bio-Rad(Hercules,CA,USA)から購入した。マグネタイトナノ粒子は、既述のとおり、Zymtronix Catalytic Systems(Ithaca,NY,USA)でインハウス合成し、ならびに、磁性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場MO32-40(3.125mLの10%ポリ(ビニルアルコール)中の1.875gの50~100nmマグネタイト、3.125mLの2%低粘度カルボキシメチルセルロース(CMC)および33.75mLの水、250mMのクエン酸と共に架橋)を合成した。ストック溶液を、Barnstead(商標)Nanopure(商標)により精製した18.2MΩ-cm水中に形成した。吸光度を、透明なマイクロプレートであるCostar(商標)3635 UV中において、Gen5(商標)ソフトウェアで操作するBiotek Epoch(商標)プレートリーダを用いて三重に計測した。
【0161】
方法。濃縮CPO溶液を水中で希釈してストック溶液を形成した。pH6で100mMのリン酸塩緩衝剤(PB)、100mMのグルコース、0.016m/v%のBERMOCOLL(登録商標)EHM 300で乳化させた100mMのリモネン、および、1v/v%のジメチルスルホキシド(DMSO)を水中に含有する一次試薬混合物を新たに調製した。400μMのNaIO4および10mMのPB(pH6)を含有する二次レポーター混合物を調製し、ならびに、HCl-NaIO4中に溶解した5mMのエピネフリンおよびエピネフリン溶液を個別に維持した。すべての反応混合物を4℃で保管し、使用直前まで暗中に維持し、使用時に室温と平衡させた。
【0162】
BNCにおけるクロロペルオキシダーゼ固定化:クロロペルオキシダーゼ(CPO)BNCを、水中のマグネタイトナノ粒子(NP)懸濁液および非固定化酵素溶液を用いて形成した。非固定化CPOを100μg/mLに希釈した。5mLの2500μg/mL NP懸濁液を、Fisher Scientific FB-505 Sonic Dismembratorを、1/4インチプローブを使用して出力40%の設定で用い、1分間超音波処理した。十分に分散したNP懸濁液をpH11に調節した。4%公称充填量のBNC混合物を、2mL遠心分離マイクロチューブ中において組み合わせ、手で反転により30秒間混合した、等しい体積酵素溶液およびNP懸濁液(それぞれ550μL)で形成した。
【0163】
BMC足場におけるクロロペルオキシダーゼBNC鋳型化:次いで、1mLのBNC溶液を5mgの磁性ポリマー足場MO32-40に添加し、次いで、1時間渦流に供して0.8%の公称充填量のCPO BMCを形成した。
【0164】
クロロペルオキシダーゼ活性アッセイ。CPOは、過酸化水素を開始剤として用いる、(R)-リモネンの(1S,2S,4R)-(+)-リモネン-1,2-ジオールへの酸化を触媒する。模擬産業プロセスにおける磁性ポリマー足場材料の使用を実際に示すために、比較的高い(50mM)濃度のリモネンを用いた。高い過酸化物濃度による過剰量のCPOの失活を回避するために、グルコースオキシダーゼ(GOX)-グルコース系を組み込んで、H2O2をインサイツで増加させながら生成した。形成されたジオールを定量化するために、NaIO4およびエピネフリン(アドレナリン)を採用する2ステップレポーター反応を組み込んだ。NaIO4およびエピネフリンが単独で組み合わされる場合、得られる生成物は、λ=490nmで顕著な吸光度を示す鮮やかなオレンジ色の種であるアドレノクロームである。しかしながら、一次反応混合物中においていくらかのジオールが存在している場合、これは、過ヨウ素酸ナトリウムをヨウ素酸ナトリウムに還元し、エピネフリンに利用可能なNaIO4の量を低減してしまい、それ故、490nmでの吸光度が低下してしまう。実際上、ジオールは、NaIO4との反応のためにエピネフリンと「競合」する。一次およびレポーター反応の両方は、共に参照によりそれらの全体が援用される、Aguila et al.,Green Chemistry 10(52):647-653(2008)、および、Sorouraddin et al.Biomedical Analysis 18:883-888(1998)に記載されているとおりである。
【0165】
リモネンに対するCPO活性は、基質のみの対照と比して、アドレノクローム形成の低減によるλ=490nmでの吸光度の低減と直接的に相互に関連付けられる。固定化および非固定化CPOの両方のための一次バッチ反応は、22℃で、20時間、2mL遠心分離チューブにおいて、最終濃度の50mMのpH6リン酸塩緩衝剤、0.008m/v%のBERMOCOLL(登録商標)EHM 300で乳化させた50mMのリモネン、50mMのグルコース、50nMのCPO、5nMの非固定化GOX、および、0.5v/v%のDMSOを含有する1mLの合計反応体積を用いて、実施した。バッチ反応および適切な対照を、暗中に18rpmで穏やかにタンブルに供した。20時間で、一次反応混合物を、レポーターステップに係る調製において希釈した。
【0166】
形成されたジオールを定量化するために、400μMのNaIO4、10mMのpH6リン酸塩緩衝剤、0.6v/v%の一次反応混合物および100nMのカタラーゼ(残留するH2O2をすべて除去するため)からなる250μLのレポーター反応を行った。このレポーター-一次混合物を、1分間反応に供した。次いで、20μLの5mMのエピネフリンを、250μLのレポーター-一次混合物毎に添加した。追加の1分後、490nmの波長で吸光度を三重に読み取った。酵素活性は、酵素-および基質-非固定化対照および適切な検量線と比して得られるオレンジ色の種(アドレノクローム)の低減により判定した。
【0167】
タンパク質定量化。BMCを磁気的にペレット化し、上澄み中のタンパク質含有量を、線形CPO検量線(R2>0.99)、2.5~25μg/mLを含むBradford法を用いて測定した。この手法で非固定化酵素の量を定量化し、これにより、固定化効率および有効充填量の判定を可能とした。この場合では、0.8%の公称充填量に対してBMCにおける0.8%の有効充填量のCPOが測定され、これは、100%の酵素捕捉率を示している。
【0168】
結果。酵素-非固定化対照は、略20%(10mM)の触媒されていない生成物の形成が存在していたことを示した。このベースラインの変換について補正することで、ハイブリッド足場BMCにおけるCPOによるリモネンの転換が、非固定化CPOと比して60%向上した(
図7)。これは、非固定化CPOに係る25mMに対する、固定化CPOに係る約32mMの合計(ベースライン+酵素)ジオール形成に変換される。
図6Dに示されているとおり、ペルオキシダーゼ活性は、より高い安定性およびH
2O
2による低い阻害のために、非固定化酵素と比して、BMCについて増大されていると仮定される。
【0169】
固定化リパーゼ
リパーゼ(MW=45kDa)およびマグネタイトナノ粒子を含有するBNCを40%の公称充填量(LE’=0.40)で合成し、次いで、磁性マクロポーラスポリマーハイブリッド足場に鋳型化して、3.78%の総有効充填量(LE=0.038)のBMCを形成した。この固定化条件では、p-ニトロフェニルラウリン酸塩のp-ニトロフェノールおよびラウリン酸塩への分解に係る非固定化酵素と比して、活性の100%の保持がもたらされた。
【0170】
材料および試薬。アスペルギルスニガー(Aspergillus niger)由来のリパーゼ(LIP)を、Indo World Trading Corporation(New Delhi,India)から入手した。塩酸、水酸化ナトリウムおよびリン酸塩緩衝塩は、Macron Fine Chemicals(CenterValley,PA,USA)製であった。p-ニトロフェニルラウリン酸塩、p-ニトロフェノール、ウシ血清アルブミン(BSA)およびジメチルスルホキシドは、Sigma-Aldrich(St.Louis,MO,USA)から購入した。Quick Start(商標)Bradford Protein Assayは、Bio-Rad(Hercules,CA,USA)から購入した。マグネタイトナノ粒子を、ポリマーハイブリッド足場MO32-40(3.125mLの10%ポリ(ビニルアルコール)中の1.875gの50~100nmマグネタイト、3.125mLの2%低粘度カルボキシメチルセルロース(CMC)および33.75mLの水、250mMのクエン酸と共に架橋)として合成した。ストック溶液を、Barnstead(商標)Nanopure(商標)により精製した18.2MΩ-cm水中に形成した。吸光度を、透明なマイクロプレートであるCostar(商標)3635 UV中において、Gen5(商標)ソフトウェアで操作するBiotek Epoch(商標)プレートリーダを用いて三重に計測した。
【0171】
BNCにおけるリパーゼ固定化:粉末化したリパーゼを水中に溶解させ、遠心分離した。上澄みを用いてストック溶液を形成した。リパーゼ(LIP)BNCを、水中のマグネタイトナノ粒子(NP)懸濁液および非固定化酵素溶液を用いて形成した。非固定化LIPストックを500μg/mLに希釈し、pH7.4に調節した。5mLの1250μg/mL NP懸濁液を、Fisher Scientific FB-505 Sonic Dismembratorを、1/4インチプローブを使用して出力40%の設定で用い、1分間超音波処理した。十分に分散したNP懸濁液をpH3に調節した。40%公称充填量のBNC混合物を、プラスチック製のディープウェルマイクロプレート中において組み合わせ、60秒間渦流により混合した、等しい体積酵素溶液およびNP懸濁液(それぞれ750μL)で形成した。
【0172】
BMC足場におけるリパーゼBNC鋳型化:次いで、1.5mLのBNC溶液を6.56mgの磁性ポリマー足場MO32-40に添加し、次いで、1時間渦流に供して、5%公称充填量LIP BMCを形成した。
【0173】
リパーゼ活性アッセイ。LIPは、p-ニトロフェニルラウリン酸塩(または、いずれかの近似する脂肪酸誘導体)のp-ニトロフェノールおよびラウリン酸塩への加水分解を触媒する。リパーゼ活性を、参照により本明細書においてその全体が援用されているGupta et al.,Analytical Biochemistry 311:98-99(2002)の方法であって、p-ニトロフェニルパルミテート(16-炭素脂肪酸)を用いるよう変更した方法によって計測した。遊離されたニトロフェノールを定量化するために、反応をpH4で維持し、吸光度の読み取り値をλ=314nmで得た。このpHでは、>99%のニトロフェノールがプロトン化形態にあり、これは、約314~320nmに最大吸光度を有する明るい黄色の種である。
【0174】
p-ニトロフェニルラウリン酸塩におけるLIP活性は、λ=314nmでの吸光度の増大に直接的に関連付けられる。固定化および非固定化LIPの両方に係るバッチ反応を、45℃で、30分間、2mL遠心分離チューブにおいて、最終濃度の100mMのpH4リン酸塩-緩衝食塩水、0.5mMのp-ニトロフェニルラウリン酸塩、0.5mg/mLのLIPおよび2.2v/v%のDMSOを含有する0.25mLの合計反応体積を用いて行った。バッチ反応および適切な対照を穏やかな渦流に供した。30分間で、λ=314nmで吸光度の読み取り値を三重に得た。酵素活性を、酵素-および基質-非固定化対照およびpH4での適切なニトロフェノール検量線と比較した。
【0175】
タンパク質定量化。BMCを磁気的にペレット化し、上澄み中のタンパク質含有量を、線形BSA検量線(R2>0.99)、2.5~10μg/mLを含むBradford法を用いて測定した。この手法で非固定化酵素の量を定量化し、これにより、固定化効率および有効充填量の判定を可能とした。この場合、5%の公称充填量に対して、BMCにおけるLIPの3.78%の有効充填量が測定され、これは、75.6%の酵素捕捉率を示している。
【0176】
結果。酵素-非固定化対照は略4.2%(21μM)の触媒されていない生成物の形成が存在していたことを示した。このベースラインの変換について補正することで、ハイブリッド足場BMCにおけるLIPによるp-ニトロフェニルラウリン酸塩の転換が、非固定化LIPと比して保持された(
図8)。これは、固定化および非固定化CPOの両方に係る約170μMの合計(ベースライン+酵素)ニトロフェノール形成に変換され、これが、ここに記載されている固定化方法および材料は用いられるリパーゼの活性に悪影響を与えないと考えられることを実証している。
【0177】
本明細書において開示され、または、参照されているすべての刊行物および特許文献は、参照によりそれらの全体が援用される。前述の記載は、単なる例示および説明を目的とするためになされている。本記載は、本発明を開示されている詳細な形態に限定することは意図していない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義されることが意図されている。