(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】薬剤の誘導引継ぎ送達のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/168 20060101AFI20220531BHJP
A61M 5/145 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
A61M5/168 504
A61M5/145 500
A61M5/168 530
(21)【出願番号】P 2019520558
(86)(22)【出願日】2017-10-13
(86)【国際出願番号】 US2017056651
(87)【国際公開番号】W WO2018075364
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-09-25
(32)【優先日】2016-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505403186
【氏名又は名称】ケアフュージョン 303、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダーン、ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア、サムエル
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/152294(WO,A1)
【文献】特開2013-192890(JP,A)
【文献】特開2012-090965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168
A61M 5/145
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を含む第1のシリンジのプランジャに結合するように構成された第1の作動可能な構成要素と
同じ前記薬剤を含む第2のシリンジのプランジャに結合するように構成された第2の作動可能な構成要素と
ディスプレイと、
プロセッサと、
を備えたシステムであって、
前記プロセッサが、
前記第1のシリンジの前記プランジャを第1の速度で移動させるように、前記第1の作動可能な構成要素を動作させ、
前記第1の作動可能な構成要素を前記第1の速度で動作させている間に、前記第2のシリンジの前記プランジャを第2の速度で移動させるように、前記第2の作動可能な構成要素を動作させ、
前記第1の速度の減少、及びそれに対応した前記第2の速度の増加について述べるメッセージを提供するように、前記ディスプレイを動作させ、
前記第1のシリンジから
の薬液の送達から、前記第2のシリンジ
からの薬液
の送達に移行する
監視期間内の移行
時に、厳しい監視限界値が設定され、当該厳しい監視限界値が、当初の監視限界値よりも早く到達するように設定されており、
前記厳しい監視限界値に到達した場合、前記第1および第2の作動可能な構成要素の動作を以前の流量設定に戻し、
警報又は警告を生成する
ように構成された、システム。
【請求項2】
前記プロセッサが、前記第1の速度のさらなる減少、及びそれに対応した前記第2の速度のさらなる増加について述べるメッセージを提供するように、前記ディスプレイを動作させるようにさらに構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1のシリンジ及び前記第2のシリンジに結合された注入ラインと、前記注入ライン内の前記薬剤の測定流速を取得するように構成された少なくとも1つの流れセンサとをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサが、前記第1の速度又は前記第2の速度の予定した調整が行われなかったという警告を、前記測定流速に基づいて生成するように、前記ディスプレイを動作させるようにさらに構成された、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロセッサが、前記第1の速度と前記第2の速度に対応する組み合わされた流速が目標の流速に等しくないという警告を、前記測定流速に基づいて生成するように、前記ディスプレイを動作させるようにさらに構成された、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記メッセージが、前記第1の速度を減少させ、前記第2の速度を増加させるための指示を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
コンピュータ実施方法であって、
第1のシリンジから薬液を投与するように前記第1のシリンジを動作させるステップと、
第2のシリンジを検出するステップと、
前記第1のシリンジからの前記薬液の投与から、前記第2のシリンジから所定の箇所への前記薬液の投与に移行するために、1つ又は複数の誘導引継ぎメッセージをユーザに提供するステップと、
前記第1のシリンジから
の薬液の送達から、前記第2のシリンジ
からの薬液
の送達に移行する
監視期間内の移行時に、厳しい監視限界値が設定され、当該厳しい監視限界値が、当初の監視限界値よりも早く到達するように設定されるステップと、
前記厳しい監視限界値に到達した場合、前記第1および第2の作動可能な構成要素の動作を以前の流量設定に戻すステップと、
警報又は警告を生成するステップと
を含む方法。
【請求項8】
前記第1のシリンジからの前記薬液の
送達から、前記第2のシリンジからの前記薬液の
送達に移行する
前記移行
時に
、前記第1のシリンジと前記第2のシリンジから同時に前記薬液を提供するステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のシリンジからの前記薬液の
送達から、前記第2のシリンジからの前記薬液の
送達に移行す
る前記移行
時に、前記第1のシリンジからの前記薬液の第1の流速を定期的に減少させ、前記第2のシリンジからの前記薬液の第2の流速をそれに対応して増加させるステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記1つ又は複数の誘導引継ぎメッセージを提供するステップが、前記第2のシリンジからの前記薬液の前記第2の流速を増加させ、前記第1のシリンジからの前記薬液の前記第1の流速を減少させるための、前記ユーザに対する指示を含む第1の誘導引継ぎメッセージを提供するステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ又は複数の誘導引継ぎメッセージを提供するステップが、前記第1の流速及び前記第2の流速を次に調整するまでの時間を含む第2の誘導引継ぎメッセージを提供するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ又は複数の誘導引継ぎメッセージを提供するステップが、予定した調整が行われなかったという警告を含む第3の誘導引継ぎメッセージを提供するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ又は複数の誘導引継ぎメッセージを提供するステップが、前記第1の流速と前記第2の流速に対応する組み合わされた流速が目標の流速に等しくないという警告を含む第3の誘導引継ぎメッセージを提供するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記動作させるステップが、前記第1のシリンジをポンプで動作させるステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
前記提供するステップが、注入ポンプのディスプレイを使用して前記1つ又は複数の誘導引継ぎメッセージを提供するステップであって、前記ディスプレイが、前記注入ポンプの誘導引継ぎシステムによって操作される、ステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
処理回路及び非一時的な機械読取り可能媒体を備える注入ポンプであって、前記処理回路によって実行されたときに、
第1のシリンジから注入チューブ内に薬液を移動させるように、前記注入ポンプに結合された前記第1のシリンジを動作させることと、
前記注入ポンプに結合された第2のシリンジを検出することと、
前記第1のシリンジからの前記薬液の
送達から、前記第2のシリンジから
の前記注入チューブへの前記薬液の
送達に移行するために、前記注入ポンプのディスプレイに1つ又は複数の誘導引継ぎメッセージを提供することと、
前記第1のシリンジから
の薬液の送達から、前記第2のシリンジ
からの薬液
の送達に移行する監視期間内
の移行時において厳しい監視限界値が設定され、当該厳しい監視限界値が、当初の監視限界値よりも早く到達するように設定されることと、
前記厳しい監視限界値に到達した場合、前記第1および第2の作動可能な構成要素の動作を以前の流量設定に戻すことと、
警報又は警告を生成すること
を、前記処理回路に行わせる命令を、前記非一時的な機械読取り可能媒体が記憶する、注入ポンプ。
【請求項17】
前記1つ又は複数の誘導引継ぎメッセージが、前記第1のシリンジについての第1の流速の調整、及び前記第2のシリンジについての第2の流速の対応した調整までの時間を含む、請求項16に記載の注入ポンプ。
【請求項18】
前記第2の流速の前記対応した調整が、前記第1の流速の前記調整を相殺するようになされる、請求項17に記載の注入ポンプ。
【請求項19】
前記1つ又は複数の誘導引継ぎメッセージが、前記第1の流速又は前記第2の流速の予定した調整が行われなかったという警告を含む、請求項17に記載の注入ポンプ。
【請求項20】
前記1つ又は複数の誘導引継ぎメッセージが、前記第1の流速と前記第2の流速に対応する組み合わされた流速が目標の流速に等しくないという警告を含む、請求項17に記載の注入ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に薬液の投与に関し、特に、薬液を複数のシリンジから送達するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬液は、シリンジを介して患者に送達されることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、いくつかの状況では、単一のシリンジから薬液を送達することが困難な場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
対象技術の態様は、同じ薬剤について、1つの容器源からの注入から、別の容器源からの注入に誘導引継ぎするシステム及び方法に関する。
【0005】
特定の態様によれば、薬剤を含む第1のシリンジのプランジャに結合するように構成された第1の作動可能な構成要素と、同じ薬剤を含む第2のシリンジのプランジャに結合するように構成された第2の作動可能な構成要素と、ディスプレイと、プロセッサとを含むシステムが提供される。プロセッサは、第1のシリンジのプランジャを第1の速度で移動させるように、第1の作動可能な構成要素を動作させ、第1の作動可能な構成要素を第1の速度で動作させている間に、第2のシリンジのプランジャを第2の速度で移動させるように、第2の作動可能な構成要素を動作させ、第1の速度の減少、及びそれに対応した第2の速度の増加について述べるメッセージを提供するように、ディスプレイを動作させるように構成される。
【0006】
特定の態様によれば、第1のシリンジから薬液を投与するように第1のシリンジを動作させるステップと、第2のシリンジを検出するステップと、第1のシリンジからの薬液の投与から、第2のシリンジからの薬液の投与に移行するために、1つ又は複数の誘導引継ぎメッセージをユーザに提供するステップとを含む、コンピュータ実施方法が提供される。
【0007】
特定の態様によれば、処理回路、及び非一時的な機械読取り可能媒体を有する注入ポンプが提供され、非一時的な機械読取り可能媒体は、処理回路によって実行されたときに、第1のシリンジから注入チューブ内に薬液を移動させるように、注入ポンプに結合された第1のシリンジを動作させることと、注入ポンプに結合された第2のシリンジを検出することと、第1のシリンジからの薬液の投与から、第2のシリンジからの薬液の投与に移行するために、注入ポンプのディスプレイに1つ又は複数の誘導引継ぎメッセージを提供することとを、処理回路に行わせる命令を記憶している。
【0008】
対象技術の様々な構成は、当業者には本開示から容易に明らかになり、本開示では対象技術の様々な構成が具体例として示され、説明されることが理解される。理解されるように、対象技術は、他の異なる構成が可能であり、そのいくつかの詳細事項は、様々な他の点で修正することが可能であり、これらはすべて対象技術の範囲から逸脱しない。したがって、概要、図面、及び詳細な説明は、具体的な性質のものとみなされるべきであり、限定するものとみなされるべきではない。
【0009】
添付図面は、さらなる理解を実現するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成しており、開示される実施例を図示し、記述と相まって、開示される実施例の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本開示の特定の態様による、複数のシリンジを使用して患者に薬液を投与するためのシステムを示す図である。
【
図1B】本開示の特定の態様による、薬液を送達するための複数のシリンジを示す図である。
【
図2】本開示の特定の態様による、2つのシリンジから薬剤を投与している間の時間に伴う例示的な流速を示す図である。
【
図3】本開示の特定の態様による、2つのシリンジから薬剤を投与している間の様々な例示的な患者危険要因を示す図である。
【
図4】本開示の特定の態様による、2つのシリンジから薬剤を誘導引継ぎ投与している間の時間に伴う例示的な流速を示す図である。
【
図5】本開示の特定の態様による、2つのシリンジから薬剤を誘導引継ぎ投与している間の時間に伴う例示的な流速のさらなる特徴を示す図である。
【
図6A】本開示の特定の態様による、2つのシリンジから薬剤を誘導引継ぎ投与するための例示的なプロセス中に、ある段階において表示され得るディスプレイ・スクリーンの実例を示す図である。
【
図6B】本開示の特定の態様による、2つのシリンジから薬剤を誘導引継ぎ投与するための例示的なプロセス中に、ある段階において表示され得るディスプレイ・スクリーンの実例を示す図である。
【
図6C】本開示の特定の態様による、2つのシリンジから薬剤を誘導引継ぎ投与するための例示的なプロセス中に、ある段階において表示され得るディスプレイ・スクリーンの実例を示す図である。
【
図6D】本開示の特定の態様による、2つのシリンジから薬剤を誘導引継ぎ投与するための例示的なプロセス中に、ある段階において表示され得るディスプレイ・スクリーンの実例を示す図である。
【
図6E】本開示の特定の態様による、2つのシリンジから薬剤を誘導引継ぎ投与するための例示的なプロセス中に、ある段階において表示され得るディスプレイ・スクリーンの実例を示す図である。
【
図6F】本開示の特定の態様による、2つのシリンジから薬剤を誘導引継ぎ投与するための例示的なプロセス中に、ある段階において表示され得るディスプレイ・スクリーンの実例を示す図である。
【
図6G】本開示の特定の態様による、2つのシリンジから薬剤を誘導引継ぎ投与するための例示的なプロセス中に、ある段階において表示され得るディスプレイ・スクリーンの実例を示す図である。
【
図6H】本開示の特定の態様による、2つのシリンジから薬剤を誘導引継ぎ投与するための例示的なプロセス中に、ある段階において表示され得るディスプレイ・スクリーンの実例を示す図である。
【
図6I】本開示の特定の態様による、2つのシリンジから薬剤を誘導引継ぎ投与するための例示的なプロセス中に、ある段階において表示され得るディスプレイ・スクリーンの実例を示す図である。
【
図6J】本開示の特定の態様による、2つのシリンジから薬剤を誘導引継ぎ投与するための例示的なプロセス中に、ある段階において表示され得るディスプレイ・スクリーンの実例を示す図である。
【
図6K】本開示の特定の態様による、2つのシリンジから薬剤を誘導引継ぎ投与するための例示的なプロセス中に、ある段階において表示され得るディスプレイ・スクリーンの実例を示す図である。
【
図6L】本開示の特定の態様による、2つのシリンジから薬剤を誘導引継ぎ投与するための例示的なプロセス中に、ある段階において表示され得るディスプレイ・スクリーンの実例を示す図である。
【
図6M】本開示の特定の態様による、2つのシリンジから薬剤を誘導引継ぎ投与するための例示的なプロセス中に、ある段階において表示され得るディスプレイ・スクリーンの実例を示す図である。
【
図6N】本開示の特定の態様による、2つのシリンジから薬剤を誘導引継ぎ投与するための例示的なプロセス中に、ある段階において表示され得るディスプレイ・スクリーンの実例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
下に述べる詳細な説明は、対象技術の様々な構成を説明しており、対象技術を実践することができる唯一の構成を表すものではない。詳細な説明は、対象技術の完全な理解を実現することを目的とした特定の詳細事項を含む。したがって、特定の態様に関する寸法が非限定的な実例として提供される場合がある。しかし、これら特定の詳細事項がなくても、対象技術を実践してもよいことが当業者には明らかであろう。いくつかの事例では、よく知られた構造及び構成要素は、対象技術の概念をあいまいにしないために、ブロック図の形で示される。
【0012】
本開示は対象技術の実例を含み、添付の特許請求の範囲を限定しないことを理解すべきである。対象技術の様々な態様を、特定的ではあるが非限定的な実例により、ここで開示する。本開示で説明される様々な実施例は、異なるやり方及び変形形態で、所望の用途又は実装形態に応じて、実施することができる。
【0013】
以下の詳細な説明では、本開示の完全な理解を実現するために、多くの特定の詳細事項が述べられる。しかし、本開示の実施例は、これら詳細事項のうちのいくつかがなくても実施できることが当業者には明らかになろう。他の事例では、よく知られた構造及び技法は、本開示をあいまいにしないように、詳細には示していない。
【0014】
変力物質などの薬液は、1つ又は複数のシリンジから患者に提供されてもよい。変力物質は、24時間などの期間にわたって1つのシリンジから提供されてもよい。しかし、いくつかの状況では、変力物質などの薬液を送達するためのシリンジは、例えば患者の状態に応じて、完全な用量を送達するための時間よりも頻繁に取り替えることが必要になることがある。また、変力物質などの薬液は半減期が短く(例えば2分)、これらの薬物が体内で不適切な濃度になることによって、患者への悪影響、及び/又は危険な影響が生じる恐れがある。したがって、変力物質を投与中の現行のシリンジよりも比較的新しい変力物質を収容した新しいシリンジが、変力物質の継続的な投与中に必要になることがある。例示的な変力物質薬物は、ドーパミン、ドブタミン、ノルアドレナリン、及びフロセミドを含む。
【0015】
いくつかの態様によれば、複数のシリンジからの薬液の投与を誘導引継ぎするためのシステム及び方法が提供され得る。例えば、第1の期間にわたって患者に薬液が(例えば注入ポンプにより制御されて)投与される第1のシリンジが提供されてもよい。第1の期間後の第2の期間中に薬液が投与される第2のシリンジが提供されてもよい。第1と第2の期間の間の移行期間中には、第1と第2のシリンジからの薬液を組み合わせた投与が行われてもよい。移行期間中、第1のシリンジの送達速度を遅くし、それと同時に第2のシリンジの送達速度を上げて、全体的な送達速度を一定に維持することによって、第1のシリンジから第2のシリンジに薬液の投与が引き継がれてもよい。そのような引継ぎ移行中に発生する恐れのある患者危険要因を防ぐために、誘導警告及び通知などの様々な誘導引継ぎメッセージが、(例えば、注入ポンプ、及び/又は他の監視機器によって)提供されてもよく、これについては以下でさらに詳細に説明する。
【0016】
いくつかの態様によれば、本明細書で開示する薬液の投与を誘導引継ぎするためのシステム及び方法は、薬物送達を継続した状態で、作業量の増加を最小に抑えながら、医療従事者が自らの患者を現行のシリンジから新しいシリンジに移行させるのを保証しやすくすることができる。本明細書で開示する薬液の投与を誘導引継ぎするためのシステム及び方法は、複数のシリンジから組み合わされる用量及び送達速度を、患者にとって望ましい送達速度に確立しやすくし、(例えば変力物質の)シリンジ移行の過程全体を通して患者に対する最終的な効果が一定になるように、看護師などの医療従事者が、確立された用量及び送達速度を望ましい用量及び送達速度に維持するように、監視及び誘導する。
【0017】
いくつかの態様によれば、本明細書で開示する薬液の投与を誘導引継ぎするためシステム及び方法は、例えば(i)2つ以上のシリンジの組み合わされた全体の流体速度を監視して、組み合わされた全体の流体速度が、患者に送達するための適切な目標レベルを常に満足するのを保証すること、(ii)シリンジ移行のための今後予定されているステップ、及び/又は期限を過ぎたステップの1つ又は複数のリマインダを表示することであって、いくつかの実施例では、リマインダをベッドサイドで、及び遠隔で見ることができる、こと、並びに(iii)注入の文書化をより容易にすることができるように、組み合わされた注入データを患者データ管理システム(PDMS:Patient Data Management System)に提供することによって、患者のエラーを防ぎやすくすることができる。
【0018】
いくつかの態様によれば、本明細書で開示する薬液の投与を誘導引継ぎするためのシステム及び方法は、(A)複数のシリンジから組み合わされた非治療的な速度によって引き起こされる可能性がある、患者の血流中の薬剤が一定でないことが原因で患者が意識を失うこと、(B)看護師などの医療従事者がシリンジの移行枠を見過ごして、第1のシリンジが空になること、及び/又は(C)組み合わされた注入が、2つのシリンジに関連した2つのポンプ・モジュールの合計であることに起因する文書化のエラーなどの、患者危険要因を防ぎやすくすることができる。
【0019】
いくつかの態様によれば、2つ以上のシリンジの組み合わされた全体の流体速度を監視して、組み合わされた全体の流体速度が、患者に送達するための適切なレベルを常に満足するのを保証することによって、上に記載の危険要因Aに関連する薬剤エラーを防ぎやすくすることができる。いくつかの態様によれば、シリンジ移行のための今後予定されているステップ、及び/又は期限を過ぎたステップの1つ又は複数のリマインダを表示することによって、上に記載の危険要因Bに関連する薬剤エラーを防ぎやすくすることができる。いくつかの態様によれば、注入の文書化をより容易にすることができるように、組み合わされた注入データを患者データ管理システム(PDMS)に提供することによって、上に記載の危険要因Cに関連する薬剤エラーを防ぎやすくすることができる。
【0020】
いくつかの実施例では、誘導引継ぎシステムは、シリンジの移行が行われている、又はもうすぐ行われるという通知を、1つ又は複数のバイタル・サイン監視システムに提供してもよい。誘導引継ぎシステム、及び/又はバイタル・サイン監視システムは、移行中、バイタル・サイン監視システムに対して比較的厳しいバイタル・サイン限界値を提供してもよい。いくつかの態様によれば、シリンジの移行が行われている、又はもうすぐ行われるという通知を、1つ又は複数のバイタル・サイン監視システムに提供することによって、上に記載の危険要因A、B、及びCのうちの1つ又は複数に関連する薬剤エラーを防ぎやすくすることができる。
【0021】
いくつかの実施例では、誘導引継ぎシステムは、注入ライン内の1つ又は複数の箇所に配設された1つ又は複数のセンサを含み、注入ラインの異なる区分内で、又は異なる区分間で、実際の流速を測定してもよい。流速は、移行を監視するために、看護師などの医療従事者に表示されてもよい。いくつかの態様によれば、注入ライン内の1つ又は複数の箇所に配設された1つ又は複数のセンサを提供して、注入ラインの異なる区分内で、又は異なる区分間で、実際の流速を測定することによって、上に記載の危険要因A、B、及びCのうちの1つ又は複数に関連する薬剤エラーを防ぎやすくすることができる。
【0022】
いくつかの実施例では、誘導引継ぎシステムは、バイタル・サイン監視システムから、バイタル・サイン情報などの患者状態情報を受け取ってもよく、この患者状態情報に基づいて、1つ又は複数の薬剤シリンジからの流れが制御されることになる期間を動的に調整してもよい。いくつかの態様によれば、患者状態情報に基づいて、1つ又は複数の薬剤シリンジからの流れが制御されることになる期間を動的に調整することによって、上に記載の危険要因A、B、及びCのうちの1つ又は複数に関連する薬剤エラーを防ぎやすくすることができる。
【0023】
いくつかの実施例では、誘導引継ぎシステムは、患者からの(例えば、バイタル・サイン監視システムからの)バイタル・サイン読取り値に応じて、注入速度を遠隔調整する(例えば、より安全な設定に戻す)ための遠隔制御アクセスを提供してもよい。いくつかの態様によれば、患者からの(例えば、バイタル・サイン監視システムからの)バイタル・サイン読取り値に応じて、注入速度を遠隔調整する(例えば、より安全な設定に戻す)ための遠隔制御アクセスを提供することによって、上に記載の危険要因A、B、及びCのうちの1つ又は複数に関連する薬剤エラーを防ぎやすくすることができる。
【0024】
ここで図を見ると、
図1Aは、薬液を投与するための例示的なシステム100を示す。
図1Aに示すように、システム100は、静脈点滴(IV)バック及びシリンジ・モジュール106に結合されたチューブを操作することによって、IVバッグからの薬液の投与を制御するために、注入ポンプ102、及びポンプ・モジュール104などの1つ又は複数のポンプ・モジュールを含んでもよい。1つ又は複数のポンプ・モジュール104、シリンジ・モジュール106、及び/又はバイタル・サイン監視モジュール(例えば、血圧、心拍数、酸素飽和度(Spo2)、二酸化炭素の分圧若しくは最大濃度(EtCo2)、又は他のバイタル・サインモニタ)、又は識別モジュール(例えば、患者識別子(ID)、医療従事者ID、及び/又は薬物情報を捕捉するための走査モジュール)などの他のモジュールが、注入ポンプ102に結合されてもよく、且つ/又は注入ポンプによって操作されてもよい。
【0025】
図1Aには、1つのシリンジ・モジュール106のみを示しているが、2つ、3つ、又は4つ以上のシリンジ・モジュールが、注入ポンプ102に結合されてもよく、且つ/又は注入ポンプによって操作されてもよい。例えば、注入ポンプ102は、処理回路(例えば1つ若しくは複数の中央処理装置又は専用プロセッサ・モジュール)、及び非一時的な機械読取り可能媒体(例えば、常設及び/又は取外し可能メモリを含む揮発性又は不揮発性メモリ)を含んでもよい。非一時的な機械読取り可能媒体は、処理回路によって実行されたときに、ポンプ・モジュール104、シリンジ・モジュール106、及び/又は他のモジュール若しくは構成要素(例えば、ディスプレイ112、入力/出力構成要素114、及び/又は他のシステム若しくはデバイスと通信するための通信回路)のうちの1つ又は複数を動作させることを、処理回路に行わせる命令又はコードのシーケンスを記憶することができる。非一時的な機械読取り可能媒体は、処理回路によって実行されたときに、第1のシリンジ・モジュール106の第1のシリンジからの薬液の送達を、第2のシリンジ・モジュール106の第2のシリンジからの薬液の送達に移行するための誘導引継ぎプロセスを実行することを、処理回路に行わせる命令又はコードのシーケンスを記憶することができる。こうして、誘導引継ぎシステムを注入ポンプ・システム内に組み込むことができる。
【0026】
注入ポンプ102は、対応するシリンジ・モジュールのそれぞれのシリンジ凹所108にそれぞれ配設された複数のシリンジからの薬液の送達を制御するように、(例えば、作動プラットフォーム110などの作動可能な構成要素を動かすことによって、シリンジのプランジャを制御可能なやり方で押し下げることによって)複数のシリンジ・モジュール106を動作させてもよい。
図1Bは、それぞれのシリンジ・モジュール106の対応するシリンジ凹所108にそれぞれ配設された2つの例示的なシリンジ150を示す。
【0027】
図1Bに示すように、各シリンジ150のプランジャ151は、ポンプ102がプランジャを作動させて、シリンジから医療用チューブ152(例えば注入チューブ)への薬液の流れを制御することができるように、シリンジ・モジュールの作動可能な構成要素110に機械的に結合されている。医療用チューブは、薬液を受ける患者に静脈注射により結合することができる。
図1Bに示すように、流れセンサなどのセンサ154は、チューブ内の薬液の流速を感知するように(例えば、ポンプ102などによって、シリンジ150からの個々の流速、及び/又は両方のシリンジからの全体的な流速を監視するように)、医療用チューブ内に配設されてもよい。また、シリンジ150からの個々の流速、及び/又は両方のシリンジからの全体的な流速は、知られているシリンジのサイズ及び容量に対する作動部材110の動きを監視することによって、追加的に又は代替的に監視されてもよいことが理解されるべきである。以下でより詳細に説明するように、センサ154のうちの1つ又は複数を使用して得られる測定流速に基づいて、1つ又は複数の警告が生成されてもよい。
【0028】
本明細書に記載の誘導引継ぎプロセスは、シリンジ・モジュールに結合された注入ポンプ102によって実行されるものとして説明されることがあるが、他の実施例では、誘導引継ぎプロセスは、注入ポンプ102に通信可能に結合された独立型の誘導引継ぎシステムなど、注入ポンプ・システムから分離した他のシステムによって、全体的に又は部分的に実行されてもよいことが理解されるべきである。
【0029】
図2は、第1のシリンジからの薬液の投与が、第2のシリンジにスムーズに引き継ぎ、又は「受渡し」される移行期間200中の例示的な流速を示すフロー図を示す。
図2に示すように、ブロック210において第1の期間201の間、残りの薬液を有する第1の、すなわち現行シリンジ152が、例えば2mL/hの治療的速度202Aで薬液を送達するように稼働していてもよい(例えば、第1のシリンジのプランジャ151を第1の部材110で押し下げることによって動作している)。ブロック212において第1の期間201の間、第2の、すなわち交換シリンジ150が、同じ薬液をプライミング速度204A(例えば0.5mL/h)で送達する(例えば、第2のシリンジからの2次注入ライン154をプライミングする)ように稼働し始める(例えば、第2のシリンジのプランジャ151を第2の部材110で押し下げることによって動作し始める)。
【0030】
第2の期間203の間(例えば、2次ラインのプライミング完了後)、ブロック214において、交換シリンジはプライミング速度204Aで稼働し続けてもよく、その間、交換シリンジからのプライミング速度での薬液の送達に対応するために、現行シリンジの送達速度が比較的低い速度202B(例えば1.5mL/h)に(例えば自動的に、又は看護師などの医療従事者によって)減少される。
【0031】
第2の期間203の後に、第1のシリンジからの送達速度が落とされてもよく、第2のシリンジからの送達速度がそれに対応して上げられてもよく(例えば0.5mL/hずつ増加)、最終的には薬液の送達が第1のシリンジによる送達から第2のシリンジによる送達に移行される。例えば、第3の期間205の間に、第1のシリンジからの送達は、第2のシリンジからの送達速度204Bに等しい速度202C(例えば1mL/h)で提供されてもよい。第4の期間207の間に、第1のシリンジからの送達は速度202D(例えば0.5mL/h)に減少されてもよく、第2のシリンジからの送達はそれに対応して送達速度204Cに増加されてもよい(例えば1.5mL/h)。第5の期間209の間に、第1のシリンジからの送達は速度202Eに減少されてもよく(例えば、送達を速度0mL/hに減少させることによって第1のシリンジからの送達が停止されてもよく)、第2のシリンジからの送達はそれに対応して治療速度に等しい送達速度204D(例えば2.0mL/h)に上げられて、第2のシリンジによる送達の移行及びバトンタッチが完了してもよい。第1のシリンジからの送達は、第2のシリンジによるスムーズな移行及び一貫したバトンタッチを保証するために、第1のシリンジ内の流体がすべて送達される前に止められてもよい。
【0032】
図3は、本明細書に記載の誘導引継ぎシステムを使用しない場合に、(上に記載の)患者危険要因A、B、及びCのうちの1つ又は複数が生じる恐れがある、移行期間200中の様々な時間に対応した指標を有する
図2のチャートを示す。
【0033】
図4は、
図2のチャートに重ねられた、誘導引継ぎのために実行されてもよい様々な動作のフロー図を示す。
図4の実例に示すように、ブロック400において、注入ポンプ用の誘導引継ぎシステムなどのシステムは、第2の注入(例えば、薬液を送達するように第1のシリンジが動作しているときの第2のシリンジ)が準備されていることを検出し、(例えば、ディスプレイ112にプロンプトを提供することによって)看護師に「誘導引継ぎ」モードに入るよう求める。ブロック402において、例えば流速の次の移行までの時間が3分を切ると、誘導引継ぎシステムによって情報警告メッセージが提供されてもよい(例えば、
図1のディスプレイ112などの、システムのディスプレイ上に警告メッセージが表示されてもよく、又は点滅してもよい)。ブロック404において、予定した移行が、予定した移行時間後の一定期間(例えば3分)以内に行われなかったことが、(例えば、シリンジ凹所内のセンサに基づき、シリンジ・プランジャの作動に基づき、又は注入ライン内からのセンサ情報に基づき)誘導引継ぎシステムによって判定された場合、(例えば注入ポンプのスピーカを使用して)警報が鳴ってもよい。ブロック406において、誘導引継ぎシステムによって注入情報が組み合わされ、PDMSに提供されてもよい。
【0034】
図5は、
図2のチャートに重ねられた、誘導引継ぎのために実行されてもよい様々な動作の別のフロー図を示す。
図5の実例に示すように、ブロック500において、注入ポンプ用の誘導引継ぎシステムなどのシステムは、第2の注入(例えば、薬液を送達するように第1のシリンジが動作しているときの第2のシリンジ)が準備されていることを検出し、看護師に「誘導引継ぎ」モードに入るよう求める。誘導引継ぎのためのステップ及び間隔の数は、患者情報に基づきシステムによって自動的に調整されてもよい。ブロック502において、移行期間200中には、患者のバイタル・サイン監視限界値がより厳しく設定されてもよい。例えば、注入の変更により生じ得る患者のバイタル・サインの変化を迅速に検出し、(例えば前の注入速度に戻すことによって)それに対処することができるように、患者の血圧、血中酸素含量、心拍数などの許容可能な限界値を修正してもよい。ブロック504において、ラインの異なる構成要素内の1つ又は複数のセンサ(例えば、個々のシリンジに関連する注入チューブ内の1つ若しくは複数のセンサ、及び/又は両方のシリンジから薬液を受けるチューブ内の1つ若しくは複数のセンサ)は、その中の実際の流速を測定するための信号を提供してもよい。ライン管理によって一貫した移行が妨げられている場合には、センサからの信号を使用して警告が生成されてもよい。ブロック506において、1回の流速の移行によってバイタル・サインが低下した場合(例えば、厳しくした限界値のうちの1つを超えて低下した場合)には、ポンプは、前のステップの流速設定に戻ってもよく、システムは警報又は警告を生成してもよい。
図5に関して説明した動作のいずれか若しくはすべては、
図4に関して説明した動作のいずれか若しくはすべてとは別個に実行されてもよく、又はそれらと一緒に実行されてもよい。
【0035】
図6Aは、
図1のシステム100などの誘導引継ぎシステムによって生成された例示的なディスプレイ・スクリーン700を示す。例えば、ディスプレイ・スクリーン700は、いくつかの実装形態では
図1のディスプレイ112を使用して表示されてもよい。
図6Aの実例では、ディスプレイ・スクリーン700は、第1のポンプを用いた第1の薬物(例えば、プロポフォール1%)についての監視情報701、及び第2のポンプを用いた、それぞれインシュリン、ドーパミン、及びドーパミンの注入についての監視情報703、705、及び707を示す。例えば、ドーパミンの第1の50mLシリンジが、第1のシリンジ・モジュールによって2mL/hの流速で注入されていてもよく、医療従事者は、ドーパミンの交換シリンジを用意し、この交換シリンジを第2のシリンジ・モジュールに装填して、この第2のシリンジ・モジュールをスタンバイ状態にしてもよい。
【0036】
図6Bに示すように、ディスプレイ・スクリーン700は、同じ薬液(例えばドーパミン)の2つの注入を誘導引継ぎシステムが検出したことに応答して、ユーザ入力を求める視覚的要求(例えば、「この患者に対して2つのドーパミン注入が検出されました。「誘導引継ぎ」モードを開始しますか?」などの質問の視覚的表示)を含む警告702を提供することによって修正されてもよい。図示するように、「はい」及び「いいえ」などの応答の選択肢も警告702で提供することができる。ユーザ(例えば、看護師などの医療従事者)は、例えば「はい」を入力することによって(例えば、ディスプレイ112のタッチスクリーン入力を使用して、又は応答を入力するためのボタンなど、入力/出力構成要素114を使用して)誘導引継ぎシステムにユーザ応答を提供することができる。
【0037】
図6Cに示すように、「誘導引継ぎ」モードに入るための「はい」の応答を受けたことに応答して、ユーザの確認、又は誘導引継ぎの設定調整を求めるさらなる警告704が提供されてもよい。例えば警告704は、図示するように、「「誘導引継ぎ」モードは60分間に3ステップでよろしいですか?」などの質問の視覚的表示を含んでもよい。図示するように、「はい」及び「いいえ-設定調整」などの応答の選択肢も警告704で提供することができる。ユーザは、「はい」を入力して設定を受け入れてもよく、又は「いいえ-設定調整」を入力して、ユーザが誘導移行の流速及び/又は移行期間を設定することができる設定モードに入ってもよい。
【0038】
図6Dに示すように、誘導引継ぎの設定を受け入れる「はい」の応答を受け取ったことに応答して、第1と第2のシリンジの両方から薬液を注入するための移行期間中に、第2の、すなわち交換シリンジを示す指標708が提供されてもよく、第1の、すなわち現行シリンジを示す指標710が提供されてもよい。指標708及び710の拡大版も
図6Dに示してあり、指標708及び710が、どのシリンジの流速が早くなるのか、又は遅くなるのかを視覚的に識別するアイコンであり得る様子を示す。流速調整時間に、誘導引継ぎシステムは、(例えば第1のシリンジの第1の流速を減少させ、それに対応して第2のシリンジの第2の流速を増加させることによって)第1の流速調整を行うように医療従事者に指示するメッセージを含む視覚的警告706を提供してもよい。例えば、図示するように、視覚的警告706は「誘導引継ぎメッセージ:空になりそうなシリンジを1.5mL/hに減少させ、引継ぎシリンジを0.5mL/hに増加させてください」などの文章を含んでもよい。誘導引継ぎされているいずれかの注入についてさらなるアイコン712が提供されてもよい。
【0039】
図6Eに示すように、次の速度変更枠までの時間をカウントする常時メッセージ714(例えば、「誘導引継ぎメッセージ:次の速度変更まで15分。次の速度変更では、空になりそうなシリンジを1mLに、引継ぎシリンジを1mLに変更」などの文章を含むメッセージ)が利用可能であってもよい。メッセージ714は、例えば
図4の期間203の間、表示されてもよい。
【0040】
図6A~
図6Eのディスプレイ・スクリーン700は、特定の患者についての注入情報を表示する誘導引継ぎシステムの患者画面であってもよい。
図6Fに示すように、システム100などの誘導引継ぎシステムは、医療施設の特定の病棟内の複数の患者について、表示部分802及び804などの注入情報を表示する病棟画面ディスプレイ・スクリーン800も提供することができる。病棟画面800の表示部分802に示すように、病棟画面は、誘導引継ぎ中の薬物の指標805、及び各シリンジの速度の次の変更までの時間量を含む情報メッセージ806を含んでもよい。
【0041】
図6Gに示すように、速度変更を行うための設定時間枠中に、さらなる警告716が提供されてもよい。例えば、誘導引継ぎシステムは、速度変更が、速度変更のための時間枠内にあることを医療従事者に示すためのメッセージを警告716に含めるように、ディスプレイ・スクリーン700を更新してもよい。例えば、図示するように、警告716は、「誘導引継ぎメッセージ:速度変更を行うための枠内。空になりそうなシリンジを0.5mLに、引継ぎシリンジを1.5mLに変更してください。」などの文章を含むことができる。
【0042】
図6Hに示すように、予定した速度変更が行われない場合、さらなる警告718が提供されてもよい。例えば、誘導引継ぎシステムは、「誘導引継ぎメッセージ:速度変更枠を過ぎて5分。空になりそうなシリンジを0.5mLに、引継ぎシリンジを1.5mLに変更してください。」などの文章を含むメッセージを警告718に含めるように、ディスプレイ・スクリーン700を更新してもよい。音声警告も生成することができる。警告718は、より深刻な警告を示す、又はエラーが発生した若しくは発生しつつあることを示すために、他の警告及び/又はメッセージ(例えば黄色の警告及び/又はメッセージ)とは異なる色(例えば赤)で提供されてもよい。
【0043】
図6Iに示すように、2つのドーパミン注入を組み合わせた流速が、目的の組合せ速度(例えば2mL/h)になっていない場合には、例えば「誘導引継ぎメッセージ:ドーパミン注入の組合せ流速が、望ましい2mL/hではありません!」という文章を有する警告720が与えられてもよい。
【0044】
図6J及び
図6Kに示すように、警告718又は720に応答して適切な調整が行われた後に、ディスプレイ・スクリーン720は、次の流速変更についての時間及びパラメータを示す警告722、及びその後、次の流速範囲変更のための時間枠になったことを示す警告724を表示するように修正されてもよい。メッセージ722は、例えば
図4の期間205の間、表示されてもよい。
【0045】
図6L及び
図6Mに示すように、警告722及び724に関連する移行の後に、ディスプレイ・スクリーン720は、次の流速変更についての時間及びパラメータを示す警告726、及びその後、次の流速範囲変更のための時間枠になったことを示す警告728を表示するように修正されてもよい。メッセージ726は、例えば
図4の期間207の間、表示されてもよい。
【0046】
図6Nに示すように、第1のシリンジから第2のシリンジへの誘導引継ぎの移行が完了すると、ディスプレイ・スクリーン700は、報告に関する応答を求めるメッセージ730を含むように更新されてもよい。例えば、図示するように、メッセージ730は「「誘導引継ぎ」が完了しました。シリンジ移行情報をPDMSに送信しますか?」などの文章を含んでもよい。図示するように、「はい」及び「いいえ-別にしておく」などの応答の選択肢も警告730で提供することができる。ユーザは、「はい」を入力してシリンジ移行情報をPDMSに送信してもよく、又は「いいえ-別にしておく」を入力して、送信をしないか、又は遅らせてもよい。
【0047】
本明細書に記載の誘導引継ぎメッセージ及び警告は、医療従事者が調整を行うための指示を誘導引継ぎメッセージ及び警告が含む実例を含むが、本明細書に記載のシステム及び方法は、本明細書に記載の第1のシリンジから第2のシリンジへ(又は第1のIVバッグから第2のIVバッグへ)の引継ぎ送信を行うための流速が、(例えば、第1と第2のシリンジの両方を操作している注入ポンプによって)自動的に調整されていることを、単に医療従事者に知らせる誘導引継ぎメッセージ及び警告にも適用され得ることを理解すべきである。
【0048】
対象技術は、例えば上に記載の様々な態様により図示される。これらの態様の様々な実例は、便宜上、番号付けされた概念又は条項(1、2、3など)として説明される。これらの概念又は条項は実例として提供されており、対象技術を限定しない。任意の従属した概念は、任意の組合せで互いに、又は1つ若しくは複数の他の独立した概念と組み合わされて、独立した概念を形成してもよい。以下は、本明細書で提示するいくつかの概念の非限定的な概要である。
概念1 コンピュータ実施方法であって、
第1のシリンジから患者に薬液を投与するように前記第1のシリンジを動作させるステップと、
第2のシリンジを検出するステップと、
第1のシリンジからの薬液の投与から、第2のシリンジからの薬液の投与に移行するために、1つ又は複数の誘導引継ぎメッセージをユーザに提供するステップと
を含む方法。
概念2 第1のシリンジからの薬液の投与から、第2のシリンジからの薬液の投与に移行することが、移行期間中に、この移行期間の少なくとも一部分にわたって第1のシリンジと第2のシリンジから同時に薬液を患者に提供するステップを含む、概念1又は任意の他の概念に記載の方法。
概念3 第1のシリンジからの薬液の投与から、第2のシリンジからの薬液の投与に移行することが、移行期間中に、第1のシリンジから患者へ向かう薬液の第1の流速を定期的に減少させ、第2のシリンジから患者へ向かう薬液の第2の流速をそれに対応して増加させるステップをさらに含む、概念2又は任意の他の概念に記載の方法。
概念4 1つ又は複数の誘導引継ぎメッセージを提供するステップが、第2のシリンジから患者へ向かう薬液の第2の流速を増加させ、第1のシリンジから患者へ向かう薬液の第1の流速を減少させるための、ユーザに対する指示を含む第1の誘導引継ぎメッセージを提供するステップを含む、概念3又は任意の他の概念に記載の方法。
概念5 1つ又は複数の誘導引継ぎメッセージを提供するステップが、第1の流速及び第2の流速を次に調整するまでの時間を含む第2の誘導引継ぎメッセージを提供するステップを含む、概念4又は任意の他の概念に記載の方法。
概念6 1つ又は複数の誘導引継ぎメッセージを提供するステップが、予定した調整が行われなかったという警告を含む第3の誘導引継ぎメッセージを提供するステップを含む、概念5又は任意の他の概念に記載の方法。
概念7 1つ又は複数の誘導引継ぎメッセージを提供するステップが、第1の流速と第2の流速に対応する組み合わされた流速が、目標の流速に等しくないという警告を含む第3の誘導引継ぎメッセージを提供するステップを含む、概念5又は任意の他の概念に記載の方法。
概念8 動作させるステップが、第1のシリンジをポンプで動作させるステップを含む、概念1又は任意の他の概念に記載の方法。
概念9 提供するステップが、注入ポンプのディスプレイを使用して1つ又は複数の誘導引継ぎメッセージを提供するステップであって、ディスプレイが、注入ポンプの誘導引継ぎシステムによって操作される、ステップを含む、概念1又は任意の他の概念に記載の方法。
概念10 処理回路及び非一時的な機械読取り可能媒体を備える注入ポンプであって、処理回路によって実行されたときに、
第1のシリンジから注入チューブ内に薬液を移動させるように、注入ポンプに結合された第1のシリンジを動作させることと、
注入ポンプに結合された第2のシリンジを検出することと、
第1のシリンジからの薬液の投与から、第2のシリンジからの薬液の投与に移行するために、注入ポンプのディスプレイに1つ又は複数の誘導引継ぎメッセージを提供することと
を、処理回路に行わせる命令を、非一時的な機械読取り可能媒体が記憶する、注入ポンプ。
概念11 1つ又は複数の誘導引継ぎメッセージが、第1のシリンジについての第1の流速の調整、及び第2のシリンジについての第2の流速の対応した調整までの時間を含む、概念10又は任意の他の概念に記載の注入ポンプ。
概念12 第2の流速の対応した調整が、第1の流速の調整に等しく、且つそれとは反対である、概念11又は任意の他の概念に記載の注入ポンプ。
概念13 1つ又は複数の誘導引継ぎメッセージが、第1の流速又は第2の流速の予定した調整が行われなかったという警告を含む、概念11又は任意の他の概念に記載の注入ポンプ。
概念14 1つ又は複数の誘導引継ぎメッセージが、第1の流速と第2の流速に対応する組み合わされた流速が目標の流速に等しくないという警告を含む、概念11又は任意の他の概念に記載の注入ポンプ。
概念15 薬剤を含む第1のシリンジのプランジャに結合するように構成された第1の作動可能な構成要素と
同じ薬剤を含む第2のシリンジのプランジャに結合するように構成された第2の作動可能な構成要素と
ディスプレイと、
プロセッサであって、
第1のシリンジのプランジャを第1の速度で移動させるように、第1の作動可能な構成要素を動作させ、
第1の作動可能な構成要素を第1の速度で動作させている間に、第2のシリンジのプランジャを第2の速度で移動させるように、第2の作動可能な構成要素を動作させ、
第1の速度の減少、及びそれに対応した第2の速度の増加について述べるメッセージを提供するように、ディスプレイを動作させる
ように構成されたプロセッサと
を備えるシステム。
概念16 プロセッサが、第1の速度のさらなる減少、及びそれに対応した第2の速度のさらなる増加について述べるメッセージを提供するように、ディスプレイを動作させるようにさらに構成された、概念15又は任意の他の概念に記載のシステム。
概念17 第1のシリンジ及び第2のシリンジに結合された注入ラインと、注入ライン内の薬剤の測定流速を取得するように構成された少なくとも1つの流れセンサとをさらに備える、概念15又は任意の他の概念に記載のシステム。
概念18 プロセッサが、第1の流速又は第2の流速の予定した調整が行われなかったという警告を、測定流速に基づいて生成するように、ディスプレイを動作させるようにさらに構成された、概念17又は任意の他の概念に記載のシステム。
概念19 プロセッサが、第1の速度と第2の速度に対応した組み合わされた流速が目標の流速に等しくないという警告を、測定流速に基づいて生成するように、ディスプレイを動作させるようにさらに構成された、概念17又は任意の他の概念に記載のシステム。
概念20 メッセージが、第1の速度を減少させ、第2の速度を増加させるための指示を含む、概念15又は任意の他の概念に記載のシステム。
【0049】
本開示は、本明細書に記載の様々な態様を任意の当業者が実践できるようにするために提供される。本開示は、対象技術の様々な実例を提供するが、対象技術はこれらの実例に限定されない。これらの態様に対する様々な修正が当業者には容易に明らかであり、本明細書において定義される一般的な原理は、他の態様に適用されてもよい。
【0050】
単数の要素に言及することは、特にそのように記載されていない限り「唯一無二」を意味するものではなく、むしろ「1つ又は複数」を意味するものである。特に別段の記載がない限り、「いくつかの」という用語は、1つ又は複数を指す。男性の代名詞(例えば、彼の)は、女性又は中性(例えば、彼女の、及びその)を含み、その逆も同様である。見出し及び小見出しがある場合には、それらは便宜上使用されているに過ぎず、本発明を限定しない。
【0051】
「例示的な」という単語は、本明細書において「実例又は具体例としての役割を果たす」ことを意味するのに使用される。本明細書において「例示的」として説明される任意の態様又は設計は、必ずしも他の態様又は設計より好ましい又は有利なものとして解釈されるべきではない。一態様では、本明細書において説明される様々な代替的構成及び代替的動作は、少なくとも等価であると考えられてもよい。
【0052】
本明細書で使用するとき、前に述べた一連の項目「のうちの少なくとも1つ」というフレーズは、「又は」という用語を用いて複数の項目のうちのいずれかが切り離されていても、リストの各項目ではなく、リスト全体を修飾する。「のうちの少なくとも1つ」というフレーズは、少なくとも1つの項目の選択を必要としない。むしろこのフレーズは、項目のうちの任意の項目の少なくとも1つ、及び/又は項目のうちの任意の組合せの少なくとも1つ、及び/又はそれぞれの項目のうちの少なくとも1つを含む意味を許容する。例として、「A、B、又はCのうちの少なくとも1つ」というフレーズは、Aのみ、Bのに、若しくはCのみ、又はA、B、及びCの任意の組合せを指すことができる。
【0053】
「態様」などのフレーズは、対象技術にとってこのような態様が必須であること、又は対象技術のすべての構成にこのような態様が該当することを暗示するものではない。一態様に関する開示は、すべての構成に該当してもよく、又は1つ若しくは複数の構成に該当してもよい。一態様は、1つ又は複数の実例を提供することができる。一態様などのフレーズは、1つ又は複数の態様を指すことができ、この逆も同様である。「実施例」などのフレーズは、対象技術にとってこのような実施例が必須であること、又は対象技術のすべての構成にこのような実施例が該当することを暗示するものではない。一実施例に関する開示は、すべての実施例に該当してもよく、又は1つ若しくは複数の実施例に該当してもよい。一実施例は、1つ又は複数の実例を提供することができる。一実施例などのフレーズは、1つ又は複数の実施例を指すことができ、この逆も同様である。「構成」などのフレーズは、対象技術にとってこのような構成が必須であること、又は対象技術のすべての構成にこのような構成が該当することを暗示するものではない。一構成に関する開示は、すべての構成に該当してもよく、又は1つ若しくは複数の構成に該当してもよい。一構成は、1つ又は複数の実例を提供することができる。一構成などのフレーズは、1つ又は複数の構成を指すことができ、この逆も同様である。
【0054】
一態様において、別段の記載がない限り、添付の特許請求の範囲を含め本明細書で述べるすべての測定値、値、評点、位置、大きさ、サイズ、及び他の仕様は、おおよそのものであり、厳密なものではない。一態様では、これらは、これらに関する機能、及びこれらに関する技術分野の慣習に矛盾しない妥当な範囲を有するものである。
【0055】
開示されるステップの、又はプロセス若しくは方法における動作の特定の順番若しくは階層は、例示的な手法の具体例であると理解される。実装の優先度又は状況に基づき、ステップ、動作、又はプロセスの特定の順番若しくは階層は、再構成されてもよいことが理解される。ステップ、動作、又はプロセスの一部は、同時に実行されてもよい。いくつかの実装の優先度又は状況において、特定の動作が実行されてもされなくてもよい。ステップ、動作、又はプロセスの一部又はすべては、ユーザが介入することなく自動で実行されてもよい。添付の方法の特許請求の範囲は、様々なステップ、動作、又はプロセスの要素をサンプルの順番で提示するが、提示された特定の順番又は階層に限定されることを意味するものではない。
【0056】
当業者に知られている、又は今後知られるようになる、本開示全体を通して説明した様々な態様の要素に対するすべての構造的及び機能的な等価物は、参照により本明細書に明白に組み込まれており、特許請求の範囲によって包含されるものである。さらに、本明細書において開示されるいずれのものも、こうした開示が特許請求の範囲に明示的に記載されているかどうかにかかわらず、公共の用に供するものではない。特許請求の要素はいずれも、「~のための手段」というフレーズを用いて明示された場合を除き、又は方法の特許請求の場合には、「~のためのステップ」というフレーズを用いて明示された場合を除き、米国特許法第112条(f)項の規定に従って解釈されるべきではない。さらに、「含む」、「有する」などの用語が使用される限り、このような用語は、請求項で移行語として使用されるときに解釈される「備える」のように、用語「備える」と同じく包含的であるものとする。
【0057】
本開示の名称、背景技術、概要、図面の簡単な説明、及び要約は、本明細書によって本開示に組み込まれており、本開示の具体的な実例として提供され、限定的な説明として提供されるものではない。これらは、特許請求の範囲に記載の範囲及び意味を限定するために使用されるわけではないことが理解されるものとする。加えて、発明を実施するための形態では、説明によって具体的な実例が提供されており、本開示を合理的にするために、様々な特徴が様々な実施例に一緒にまとめられていることがわかる。この開示方法は、特許請求される主題が、各請求項に明示された特徴よりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものと解釈すべきではない。むしろ、添付の特許請求の範囲に反映されるように、本発明の主題は、開示された単一の構成又は動作のすべての特徴にあるわけではない。添付の特許請求の範囲は、本明細書によって発明を実施するための形態に組み込まれており、それぞれの請求項は、別個に特許請求される主題として独立している。
【0058】
特許請求の範囲は、本明細書に記載の態様に限定されるものではなく、特許請求の範囲の文言に矛盾しない最大限の範囲が与えられ、すべての法的等価物を包含するものである。それでもなお、あらゆる特許請求の範囲は、米国特許法第101条、102条、又は103条の要件を満たしていない主題を含まないものとし、又はそのようなやり方で解釈されないものとする。