(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】タイヤ及び他の廃棄製品を熱処分するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
F27B 5/05 20060101AFI20220531BHJP
B01D 45/12 20060101ALI20220531BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20220531BHJP
C08J 11/12 20060101ALI20220531BHJP
F27B 5/18 20060101ALI20220531BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
F27B5/05 ZAB
B01D45/12
B09B3/40
C08J11/12
F27B5/18
F27D17/00 104D
F27D17/00 104G
F27D17/00 105A
(21)【出願番号】P 2019526191
(86)(22)【出願日】2017-07-25
(86)【国際出願番号】 US2017043704
(87)【国際公開番号】W WO2018022609
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-07-15
(32)【優先日】2016-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519029505
【氏名又は名称】ピーアールティーアイ グローバル マネジメント エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】マション,ウェイン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムス,ジェイソン
【審査官】宮脇 直也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0144476(US,A1)
【文献】特開平08-296825(JP,A)
【文献】特開平05-320658(JP,A)
【文献】特開2001-208318(JP,A)
【文献】特開2016-121252(JP,A)
【文献】特開2010-001471(JP,A)
【文献】特開2012-002386(JP,A)
【文献】特表平11-501864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 5/00 - 5/18
B09B 3/00
C10B 1/04
C10B 53/00
C08J 11/12
F23G 5/30
F23G 7/00
F27D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの熱解重合のためのレトルトチャンバであって、
a)上部と、
b)底部と、
c)前記レトルトチャンバの前記底部又は前記底部の近傍にあり、前記底部を900~1300℃の温度に加熱することができる加熱器と、
d)前記レトルトチャンバの前記底部又は前記底部の近傍に位置する2つ以上の入口ポートと、
e)前記レトルトチャンバの前記上部又は前記上部の近傍に位置する1つ以上の出口ポートと、
f)前記レトルトチャンバの前記上部及び前記底部又は前記上部及び前記底部の近傍にある温度モニターと、
g)前記レトルトチャンバの前記上部と前記底部との間の距離の30~70%の位置にある温度モニターと、
h)前記レトルトチャンバの上部3分の1の範囲内に位置する前記出口ポートに設けられた真空ライン又は吸引器と、を
備え、
前記加熱器は、キャリッジ上に配置されたバーナーであり、
前記キャリッジは、前記バーナーを前記レトルトチャンバの前記底部に沿って移動させることができるように適合されており、
前記レトルトチャンバの前記底部は、複数のレジスタを含み、
前記レジスタは、前記レトルトチャンバの前記底部全体に沿って実質的に等しい圧力を与えるように間隔をおいて配置されており、実質的に等しいとは、前記レトルトチャンバの前記底部に沿った前記圧力が20%を超えて変化しないことを意味し、
前記レトルトチャンバは、タイヤの積み重ねを受け入れ、前記バーナーを用いて最も底にあるタイヤを燃焼させて前記積み重ねにおける他のタイヤの熱解重合のための熱エネルギーを提供するように適合されている、レトルトチャンバ。
【請求項2】
前記入口ポートの1つ以上は、前記レトルトチャンバ内に導入される一定量の水を受け入れるように適合されている、請求項1に記載のレトルトチャンバ。
【請求項3】
前記レトルトチャンバの前記上部又は前記上部の近傍にある1つ以上の入口ポートを更に含み、前記入口ポートは、前記レトルトチャンバ内に導入される一定量の水を受け入れるように適合されている、請求項1に記載のレトルトチャンバ。
【請求項4】
前記入口ポートの1つ以上は、前記レトルトチャンバ内に導入される一定量の空気又は酸素を受け入れるように適合されている、請求項1に記載のレトルトチャンバ。
【請求項5】
前記底部はヒンジ連結されており、開いているとき、材料を前記レトルトチャンバから取り出すことができる、請求項1に記載のレトルトチャンバ。
【請求項6】
前記上部はヒンジ連結されており、開いているとき、材料を前記レトルトチャンバに挿入することができる又は前記レトルトチャンバから取り出すことができる、請求項1に記載のレトルトチャンバ。
【請求項7】
前記レトルトチャンバを回転させ、蓋が開いているときに材料を前記レトルトチャンバから取り出すことができるように適合された、水平軸を有するヒンジを更に含み、前記レトルトチャンバは、前記レトルトチャンバの前記上部が前記レトルトチャンバの前記底部よりも低くなるように回転する、請求項
6に記載のレトルトチャンバ。
【請求項8】
前記出口ポートの1つに取り付けられた脱硫ユニットを更に含む、請求項1に記載のレトルトチャンバ。
【請求項9】
前記出口ポートの1つに取り付けられたサイクロンユニットを更に含み、前記サイクロンユニットは、前記出口ポートを出る気体生成物流から微粒子を除去するように適合されている、請求項1に記載のレトルトチャンバ。
【請求項10】
前記出口ポートの1つに取り付けられた冷却又は凝縮ユニットを更に含み、前記冷却又は凝縮ユニットは、前記冷却又は凝縮ユニットに入る温度においては気相である生成物流を受け入れ、冷却するように適合されており、冷却されると、前記生成物流の少なくとも一部は液相である、請求項1に記載のレトルトチャンバ。
【請求項11】
前記真空ライン又は吸引器は前記冷却又は凝縮ユニットに取り付けられている、請求項
10に記載のレトルトチャンバ。
【請求項12】
タイ
ヤを熱処分するためのプロセスであって、
a)請求項1に記載のレトルトチャンバに
複数のタイ
ヤを装填すること
であって、前記タイヤは、最も底にあるタイヤがあるように積み重ねられており、前記タイヤは、前記レトルトチャンバの底部又は前記底部の近傍から積み重ねが開始されることと、
b)-0.8~-200ミリバールの範囲内の真空が前記レトルトチャンバ内に存在するように前記レトルトチャンバから揮発物及び空気をパージすることと、
c)前記レトルトチャンバの底部又は前記底部の近傍にある前記
最も底にあるタイ
ヤを900~1300℃の温度に加熱することと、
d)前記生成物が前記レトルトチャンバを出る領域内の温度を100~280℃の温度に維持しながら、前記タイ
ヤを熱解重合して、出口ポートの1つを通って前記レトルトチャンバを出る生成物流を形成することであって、前記生成物流は、前記レトルトチャンバを出る間は気相であることと、
を含む、プロセス。
【請求項13】
圧力は、-6~-8ミリバールである、請求項
12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記900~1300℃及び100~280℃の温度は、入口ポートの2つ以上を通して水及び/又は空気若しくは酸素を添加することによって維持される、請求項
12に記載のプロセス。
【請求項15】
熱処分される前記
最も底にあるタイ
ヤは、スチールベル
トを含み
、
前記レトルトチャンバの前記底部又は前記底部の近傍にある入口ポートを通して加えられた水は、前記スチールベルト付きタイヤのスチールと900~1300℃の温度で反応して、水素を形成する、請求項
12に記載のプロセス。
【請求項16】
前記タイヤは、硫黄-硫黄結合及び/又は硫黄-炭素結合を含む加硫ゴムを含み、前記水素は、前記加硫ゴムの前記硫黄-硫黄結合及び/又は前記硫黄-炭素結合を切断する、請求項
15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記生成物流を脱硫条件に曝すことを更に含む、請求項
12に記載のプロセス。
【請求項18】
前記生成物流をサイクロンに曝して微粒子を除去することを更に含む、請求項
12に記載のプロセス。
【請求項19】
前記生成物流は、室温及び大気圧において液体である1種以上の生成物と、室温及び大気圧において気体である1種以上の生成物と、を含み、
室温及び大気圧において液体である前記生成物の一部を凝縮させるために、前記生成物流を冷却器又は凝縮器ユニットに曝すことを更に含む、請求項
12に記載のプロセス。
【請求項20】
熱処分される前記タイ
ヤは、前記レトルトチャンバの、温度が900~1300℃の場所と温度が100~280℃の場所との間の部分において、熱解重合反応を経る、請求項
12に記載のプロセス。
【請求項21】
前記
レトルトチャンバの前記底部又は前記底部の近傍で燃焼する前記タイ
ヤは、前記熱解重合工程のための熱エネルギーを提供する、請求項
20に記載のプロセス。
【請求項22】
前記熱解重合工程の前記温度、したがって、前記生成物の組成は、2つ以上の入口ポートを通して水及び/又は空気若しくは酸素の量を調整することによって制御される、請求項
12に記載のプロセス。
【請求項23】
前記熱解重合工程の完了後、前記レトルトチャンバは、前記レトルトチャンバの前記上部又は前記上部の近傍にある入口ポート、及び/又は、前記レトルトチャンバの前記底部又は前記底部の近傍にある前記入口ポートの1つ以上を通して前記レトルトチャンバに水を導入することにより冷却される、請求項
12に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤなどのポストコンシューマ及び/又はポストインダストリーゴム及び/又はプラスチック製品を熱処分するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄材料を埋立地で保管する代わりに再利用することへの大きな関心がある。これは、使用済みタイヤ、ポストコンシューマ廃棄製品、及びタイヤ製造から生じた廃棄材料、ポストインダストリー廃棄製品に関して特に当てはまる。これらは、燃焼時に硫化水素を形成する硫黄架橋(加硫として周知のプロセス)を含むことから、これら材料の燃焼により有害なガスが生成される可能性がある。
【0003】
使用済みタイヤのゴムを解重合するための様々なプロセスがあり、これには、欧州特許第0694600号及び米国特許第7,628,892号に開示されているものを含む。欧州特許第0694600号は、使用済みタイヤを比較的低圧且つ100~135℃の温度で解重合して気体生成物及び液体生成物を形成し、気体生成物及び液体生成物は後に燃焼される、プロセス及びプラントについて開示している。温度は、デバイス内に水及び空気を導入することにより維持される。
【0004】
米国特許第7,628,892号は、上部ベース及び下部ベースを有する実質的に円筒状の本体を有する解重合デバイスを含むプラントについて開示している。タイヤの熱解重合はデバイスの内部で起こり、生成物混合物はデバイスを出、その後、相セパレータに入り、液体生成物を気体生成物から分離する。相セパレータは、解重合デバイスを大気圧よりも10mBar以下低い圧力で動作させることができる吸引ユニットに接続されている。このプロセスは、炭質燃料生成物と、燃焼させる気体生成物を生成するとされている。
【0005】
‘892特許は、タイヤに酸化カルシウムを添加することについても開示している。タイヤのゴムが蒸気の存在下で解重合される際、酸化カルシウムが水酸化カルシウムに転換し、水酸化カルシウムはその後硫黄と反応して塩を形成し、この塩は、解重合プロセスにより回収されたスチール及び炭素と後に混合する。
【0006】
いくつかの実施形態において、ゴムの加硫プロセスに用いた硫黄と反応させるカルシウム塩の添加を必要とせず、脱硫を、これを所望する場合には、レトルトチャンバの外で行うことができる、タイヤ及び他の廃棄物流を熱処分するための改良されたデバイス及びプロセスを提供すると有利であろう。
【発明の概要】
【0007】
一実施形態では、本発明は、使用済みタイヤ、タイヤ製造による廃棄材料、並びに他のポストコンシューマ及びポストインダストリー廃棄物を熱処分するための装置に関する。
【0008】
用語「熱処分する」は、高分子材料の熱解重合、及びまた、非高分子構成成分の処分を意味する。例として、タイヤを熱処分する場合、解重合プロセスの結果として生成される有機材料、並びにまた、スチールベルトのスチール、及び加硫プロセスで使用した硫黄などの無機材料を分離することが可能であり、硫黄は、硫黄含有化合物の形態で分離することができる。充填高分子製造品中に無機充填剤が使用されている場合、充填剤は、熱解重合される製造品とは別に分離することができる。
【0009】
処分装置は、好ましくは、水平面からずらして(例えば、垂直方向に)方向付けられたレトルトチャンバ(本明細書では、レトルトとも称される)を含む。レトルトチャンバは、直径約1.5~約24フィート、より典型的には約4~約8フィートを有する任意の所望の形状、例えば、円筒形又は円錐形のものであり得る。レトルトチャンバの高さは、典型的には約5~30フィートである。レトルトチャンバの側壁は、動作温度の維持に役立つように絶縁されてもよい。
【0010】
更に、以下でより詳細に記載するように、レトルトチャンバの底部又は底部の近傍にある材料の燃焼又は部分燃焼により、レトルトチャンバ内のより高い位置で熱解重合を実施するための熱エネルギーを有利に供給することができる。レトルトが実質的に垂直である場合、燃焼又は部分燃焼が起こる際に材料を下方に流すことができる。
【0011】
レトルトチャンバの内部は、4つの異なる温度領域を含み、それらの位置は、レトルトチャンバ内の酸素含有量及び含水量、反応温度及び圧力、並びに処分される材料の種類などの様々な要因に応じて異なり得る。
【0012】
要約すると、タイヤなどの高分子材料の熱解重合を開始させるためには相当量の熱エネルギーを必要とする。いくつかの実施形態では、この熱は、レトルトチャンバの外側を加熱することにより、あるいは、マイクロ波エネルギーを使用することにより外部から供給される。他の実施形態では、熱エネルギーは、レトルトチャンバの底部又は底部の近傍にあるタイヤ又は他の高分子材料の部分燃焼によって供給される。部分燃焼には少なくともいくらかの酸素を必要とするが、添加される酸素量はタイヤを完全に燃焼させるのに必要な化学量論量未満に意図的に維持される。熱は上昇し、レトルトチャンバの底部又は底部の近傍にある材料の一部を部分燃焼させることにより生成された熱はレトルトチャンバを上昇し、熱が生成されたレトルトチャンバの部分の上方に存在するタイヤ及び/又は他の高分子材料を解重合するのに必要なエネルギーを供給する。水が加えられる場合、水は熱の量を制御するために使用することができ、水は、また、高温、及びいくつかの実施形態では、タイヤからのスチールの存在下で反応し、酸素と水素を形成することができる。水素は、タイヤのゴムの脱硫を補助し、硫化水素又は他の硫黄化合物を形成することができるとともに、オレフィン系化合物を水素化することができる。所望する場合、解重合プロセスで生成されるオレフィン系化合物が関与し得るこれらの更なる反応に必要な活性化エネルギーを低下させるために、触媒を添加することができる。
【0013】
解重合される材料の組成、これらオレフィン系生成物が形成されるレトルトチャンバの領域の温度、圧力及び流量、並びに触媒、水素及び/又は水の存在又は不存在は、材料が解重合される際に形成される生成物混合物及び更なるプロセス段階に関与する初期生成物に影響を及ぼす可能性がある。
【0014】
レトルトチャンバの底部又は底部の近傍にある第1の領域では、材料は、約150~約550℃、より典型的には約150~約400℃、又は約250~約550℃の温度まで加熱され、燃焼又は部分燃焼される。水、触媒及び/又は酸素を、任意選択的に、供給することができる。酸素が提供される場合、酸素は、例えば、純粋形態で又は空気として、レトルトチャンバの底部又は底部の近傍にあるバルブを通して供給することができる。熱は、例えば、レトルトチャンバの底部又は底部の近傍にある、レトルトチャンバの壁の開口部を通してバーナーを導入することにより供給することができる。材料を燃焼/部分燃焼させることにより生成された熱をその後使用し、所望の解重合温度に到達させる。あるいは、熱エネルギーは、レトルトチャンバの底部に耐火材料の層を設け、誘導加熱器など様々な異なる加熱器のいずれかを用いて耐火材料を所望の温度に加熱することにより供給することができる。他の実施形態では、マイクロ波エネルギーを使用してタイヤ及び/又は他の材料を解重合する。
【0015】
一実施形態では、レトルトチャンバの底部は一連のレジスタを含み、酸素、及び任意選択的に、水及び/又は触媒は一連のレジスタの一端において導入され、バーナーからの炎は一連のレジスタの他端において導入される。バーナーはキャリッジ上に配置することができ、レトルト内におけるバーナーの移動を容易にする。レジスタは、レトルトの底部全体に沿って実質的に等しい圧力を与えるように間隔をおいて配置されている。「実質的に等しい」とは、レトルトチャンバの底部に沿った圧力が20%を超えて変化しないことを意味する。
【0016】
動作時、反応は中央に向かって移動し、これにより、バーナーをレジスタの一端にただ単に導入するのとは対照的に、燃焼される材料に比較的一定の燃焼速度を与える。
【0017】
第1の実施形態においては、酸素(例えば、純粋形態で又は空気として)、水及び/又は触媒の1つ以上の投入、並びに生成物の排出を可能にするとともに、流量、温度及び圧力を測定及び管理するために、いくつかのポートが設けられている。
【0018】
第2の実施形態においては、いくつかの入力ポート及び出力ポートを用いて、複数の生成物を生成する固体、液体及び蒸気の精製用の複数の領域を作成する。
【0019】
いくつかの実施形態では、タイヤのゴムを加硫するために用いた硫黄は硫化物塩を形成する化合物との反応などによってレトルトチャンバの内部で除去され、他の実施形態では、硫黄は生成物流中に存在し、任意選択的にしかし好ましくは、生成物が分離される前に除去される。一実施形態では、生成物を脱硫条件に曝すことができるように、脱硫ユニットがポートに取り付けられている。
【0020】
一実施形態では、サイクロンセパレータを用いて、蒸気中に存在する微粒子を除去する。脱硫ユニットが使用される場合、サイクロンセパレータは脱硫ユニットの前又は後に取り付けることができるが、脱硫ユニットの微粒子混入を最小限にするために、脱硫ユニットの前に取り付けられることが好ましい。
【0021】
レトルトを出る生成物は室温で気相であるが、一部の生成物は液体であり、その他は気体である。装置は生成物分離ユニットを更に含み、生成物分離ユニットは、1つ以上の冷却塔、蒸留塔、冷却器、気体流が通過することができる液体幕等を含み、気体を冷却し、生成物混合物を1種以上の液体と1種以上の気体生成物とに分離する。
【0022】
熱解重合は、典型的には、真空下で、例えば、約-0.8~約-200ミリバール、より典型的には、約0.8~約-50ミリバールの範囲の圧力で実施される。この真空を達成するために、生成物分離ユニットの端部又は端部の近傍に真空ポンプ又は吸引ユニットが取り付けられる。一実施形態では、圧力は、特に解重合プロセス中に気体生成物が発生する際には、約8ミリバールまで増加させることができる。真空が引かれる場合でも、種々の生成物の脱ガスによってこれら圧力に達することができる。これら生成物の、レトルトからの放出を制御することで、圧力の制御を補助することができる。
【0023】
気体生成物は、分離することができる、又は所望する場合、燃焼させることができる。これらが燃焼される場合、装置は、真空ポンプ又は吸引ユニットの後にバーナー又は発生器を含むことができる。バーナーを用いて、気体が燃焼する際に熱を生成することができ、発生器を用いて、気体が燃焼する際に電気を生成することができる。
【0024】
レトルトの上部は、熱処分されるタイヤ及び/又は他の材料をレトルトに装填するために開くことができる。これは、クラムシェル型フード、ヒンジ、ねじぶた、一連のフランジ等を用いてレトルトの残部に上部を取り付けることによって実現することができる。
【0025】
バッチ間においてレトルトを冷却することが望ましい場合がある。操作時、水は、通常、レトルトの底部又は底部の近傍にあるバルブからレトルトに加えられるが、冷却操作中、水は、さらに又は代わりとして、レトルトの上部又は上部の近傍にあるバルブから加えることができる。これにより冷却プロセスを大幅に加速することができ、水がレトルトチャンバの上部から加えられない場合よりも早く次のバッチを処理することができる。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、タイヤが熱解重合されると、スチールベルト中に存在する鉄が、不完全燃焼の結果として(すなわち、化学量論的酸素量未満を使用することにより)形成される一酸化炭素と反応し、導入される水は、「スチーム-アイロン」法(“steam-iron”process)に類似する手法で水素を形成すると考えられる。このようにして形成された水素はタイヤに使用された加硫ゴム中に存在する硫黄-硫黄結合及び炭素-硫黄結合を切断することができ、硫化水素及び他の硫黄含有生成物(COSを含むがこれに限定されない)を形成することができる。
【0026】
バッチ間において、残る材料をレトルトから除去することが望ましい。タイヤの場合、残る材料には、カーボンブラックと、タイヤのスチールベルトのスチールとを含み得る。残る材料をレトルトから除去するためのいくつかの手法がある。1つの例示的手法は、レトルトの底部にヒンジを設け、材料を熱解重合した後に底部を外すことでレトルトから材料を除去することである。別の手法は、レトルトの中間部周辺にある、水平軸を有するヒンジと、レトルトを回転させるためのモータとを設けることである。上部を取り外した後、レトルトはヒンジの水平軸の周りで回転させることができる。レトルトの底部で回収された材料は、その後、レトルトの上部から出る。レトルトは、その後、垂直位置に回転させて戻すことができ、レトルトを回転させるために外されていた任意のパイプ、バルブ、又は他の接続部を再接続させることができる。
【0027】
使用中、レトルトは開かれ、熱処分されるタイヤ及び/又は他の材料がレトルト内に導入される。蓋が閉じられ、ガス及び他の揮発物が安全な手法でシステムからパージされる。例えば、窒素又は二酸化炭素ガスをガス及び他の揮発物とともにレトルトに流入させること、及びレトルトから流出させることができる。これらの化合物は圧力下で捕捉すること、大気中に放出すること、又は燃やすことができる。その後、低圧を加えることができる。システムは完全に密閉され、有害な又は臭気系の蒸気が漏れることはない。
【0028】
レトルトチャンバの底部又は底部の近傍にある、熱解重合されるタイヤ又は他の材料は、その後、加熱される。材料を加熱するのに用いられる機構に応じて、これには、レトルトチャンバの底部にバーナーを導入すること、及び材料との反応を生じさせるためにバルブを通して酸素、水及び/又は触媒を放出することを含み得る、又はレトルトチャンバの底部にある耐火材料も加熱している間にレトルトチャンバの底部に酸素、水及び/又は触媒を導入することを含み得る。
【0029】
レトルト内の温度は監視される。温度がその適切な範囲に達すると、気体生成物がポートから放出される。そこから、気体生成物は、微粒子を除去するためのサイクロン、硫化水素及び他の硫黄含有生成物を除去するための脱硫工程、及び/又は室温で液体である生成物を室温で気体である生成物から分離させるための冷却プロセスに曝すことができる。気体生成物は、回収及び保存することができ、燃焼させることができ、又は電気を生成するために使用することができる。
【0030】
反応が進行するにつれて、レトルトチャンバの底部又は底部の近傍にあるタイヤ及び/又は他の材料は消費され、消費された材料より上にある材料は、その後、重力を用いて、解重合されるまでレトルトチャンバを下に進む。
【0031】
反応の完了後(これは、例えば、様々な領域内の温度の変化によって判断することができる)、例えば、レトルトチャンバの上部又は上部の近傍にあるバルブを通じて水を導入することにより反応を停止させることができる。
【0032】
レトルトチャンバが十分に冷却されると、水は排出することができる。理想的には、真空を維持し、安全規定に準拠するように、操作時、レトルトチャンバは密閉される。各バッチの完了後、密閉を破壊し、水をレトルトチャンバから排出し、固体材料をレトルトチャンバから除去することができる。
【0033】
一実施形態では、これには、レトルトチャンバの底部にあるヒンジを開き、材料を放出することを伴う。別の実施形態では、これには、上部を取り外すこと、出口ポートを分離すること、及びレトルトの中間部又は中間部の近傍に位置する、水平軸を有するヒンジの周りでレトルトを回転させることを伴う。材料は、その後、レトルトチャンバの上部から落下し、レトルトチャンバは、その後、その本来の直立位置に戻すことができる。
【0034】
タイヤの熱処分により入手される生成物は、カーボンブラック、硫黄化合物、スチール(スチールベルトからの)、液体、ナンバー2ディーゼル(number 2 diesel)に類似する性質を有する主としてオレフィン系の画分、メタンガス、C2~4画分、並びに二酸化炭素、一酸化炭素、二酸化硫黄、及び水素などの1種以上の更なる気体を含む傾向がある。オレフィン系画分中のオレフィン類の1種以上は、例えば、ブタジエン(例えば、ニトリルブタジエンゴムの解重合により形成される)などのジエンとのディールス-アルダー反応を経ることにより更に反応して脂環式化合物を形成し、オレフィン二量化/三量化/オリゴマー化(同一オレフィン又は2種以上の異なるオレフィンとの)を経ることにより高級オレフィンを形成し、水素化を経ることにより脂肪族化合物を形成するとともに、芳香族化反応を経ることができる。固体生成物をまだ濡れた状態にある間にレトルトチャンバから除去することでカーボンブラックの分離を容易にすることができる。
【0035】
タイヤに加えて又はその代わりに、処分することができる他の材料としては、バンバリー汚泥(Banbury sludge)、医療廃棄物、木材系廃棄物、油系廃棄物、植物、動物の排泄物、人間の排泄物、魚廃棄物、コンピュータ廃棄物、プリント回路基板、自動車の解体による「毛羽」及びアスファルト増量剤が挙げられる。
【0036】
これら材料の熱処分から生じる生成物はタイヤから得るものとは異なり、動作温度も、ポリマーが熱解重合を経るのに適した温度に応じて異なり得る。
【0037】
本発明は、以下の詳細な説明を参照するとより良く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本明細書に記載される熱解重合プロセスにより調製される油の組成を示す図表である。
【
図2】本明細書に記載されるレトルトチャンバの一実施形態の概略図である。
【
図3】本明細書に記載されるレトルトチャンバの別の実施形態の概略図である。
【
図4】本明細書に記載されるレトルトチャンバの断面図である。
【
図5】生成物がレトルトチャンバを出る際に生成物を回収するための装置の一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
一実施形態では、本発明は、使用済みタイヤ、タイヤ製造による廃棄材料、並びに他のポストコンシューマ及びポストインダストリー廃棄物を熱処分するための装置に関する。
【0040】
定義
本明細書で使用する場合、用語「レトルトチャンバ」とは、物質を加熱して化学反応させ、回収容器に回収され得る又は更なる処理のために使用され得る気体生成物を生成する気密容器を意味する。
【0041】
用語「熱処分する」は、本明細書で使用する場合、高分子材料の熱解重合、及びまた、非高分子構成成分の処分を意味する。例として、タイヤを熱処分する場合、解重合プロセスの結果として生成される有機材料、並びにまた、スチールベルトのスチール、及び加硫プロセスで使用した硫黄などの無機材料を分離することが可能であり、硫黄は、硫黄含有化合物の形態で分離することができる。充填高分子製造品中に無機充填剤が使用されている場合、充填剤は、熱解重合される製造品とは別に分離することができる。
【0042】
I.レトルトチャンバ
装置は、好ましくは、垂直方向に(又は非水平に、水平面からずらして)方向付けられたレトルトチャンバ(本明細書では、レトルトとも称される)を含む。
【0043】
レトルトチャンバの形状
レトルトチャンバは、任意の所望の形状、例えば、円筒形又は円錐形のものであり得る。
【0044】
以下でより詳細に記載するように、レトルトチャンバの底部又は底部の近傍にある材料の燃焼又は部分燃焼により、レトルトチャンバ内のより高い位置で熱解重合を実施するための熱エネルギーを供給する。レトルトが実質的に垂直である場合、燃焼又は部分燃焼が起こる際に材料を下方に流すことができる。
【0045】
レトルトチャンバの直径
レトルトチャンバの直径は、本明細書に記載される化学作用を実施するために重要である。直径は、典型的には約1.5~約24フィートであり、より典型的には約4~約8フィートである。レトルトチャンバの高さは、典型的には約5~30フィートである。レトルトチャンバの側壁は、動作温度の維持に役立つように任意選択的に絶縁される。
【0046】
特定の理論により拘束されることを望むものではないが、直径が上記の範囲内のとき、タイヤ及び/又は他の材料の燃焼による熱はレトルトチャンバ内を流れ、他のタイヤ/他の材料を、これらが熱解重合を経るのに十分な熱エネルギーを有するように加熱することができると考えられる。
【0047】
レトルトチャンバ内の温度領域
レトルトチャンバの内部は、4つの異なる温度領域を含み、それらの位置は、レトルトチャンバ内の酸素含有量及び含水量、反応温度及び圧力、並びに処分される材料の種類などの様々な要因に応じて異なり得る。
【0048】
レトルトチャンバの底部又は底部の近傍にある第1の領域では、材料は、約900℃~約1300℃の温度まで加熱され、燃焼又は部分燃焼される。酸素、水及び/又は触媒の1つ以上を、レトルトチャンバの底部又は底部の近傍にあるバルブを通して任意選択的に供給することができる。酸素は、例えば、純粋形態で又は空気として供給することができる。
【0049】
解重合領域は第1の領域の上にあり、化学作用は、約150~約550℃、例えば、約150~400℃、又は約250~約550℃の温度で起こる。
【0050】
生成物は、解重合領域よりも高い領域においてレトルトチャンバを出、生成物がレトルトチャンバを出る温度は、典型的には、約100~280℃である。
【0051】
実際の解重合領域内の温度を監視することはできるが、1つ以上の出口ポートを通ってレトルトチャンバを出る際の生成物混合物の温度を監視することにより反応の進行を監視する方が操作上より容易な場合がある。
【0052】
反応器の底部で供給される激しい熱から離れた反応器の上部近傍においては、温度は、典型的には、約60~約160℃の範囲内である。
【0053】
レトルトチャンバの底部
例えば、レトルトチャンバの底部又は底部の近傍にある、レトルトチャンバの壁の開口部を通してバーナーを導入することにより、熱を第1の領域に供給することができる。材料を燃焼/部分燃焼させることにより生成された熱をその後使用し、所望の解重合温度に到達させる。あるいは、熱エネルギーは、レトルトチャンバの底部に耐火材料の層を設け、誘導加熱器などの様々な異なる加熱器のいずれかを用いて耐火材料を所望の温度に加熱することにより供給することができる。
【0054】
一実施形態では、レトルトチャンバの底部は一連のレジスタを含み、酸素、空気、水及び/又は触媒は一連のレジスタの一端において導入され、バーナーからの炎は一連のレジスタの他端において導入される。バーナーはキャリッジ上に配置することができ、レトルト内におけるバーナーの移動を容易にする。レジスタは、レトルトの底部全体に沿って実質的に等しい圧力を与えるように間隔をおいて配置されている。「実質的に等しい」とは、レトルトチャンバの底部に沿った圧力が20%を超えて変化しないことを意味する。
【0055】
動作時、バーナーがキャリッジに沿って、レトルトチャンバの底部の中央に向かって移動すると、化学反応、すなわち、タイヤ及び/又は他の材料の燃焼は中央に向かって移動する。これにより、バーナーをレジスタの一端にただ単に導入することとは対照的に、燃焼される材料に比較的一定の燃焼速度を与える。
【0056】
入口ポート/出口ポート
第1の実施形態においては、酸素、空気、水及び/又は触媒の1つ以上の投入、並びに生成物の排出を可能にするとともに、流量、温度及び圧力を測定及び管理するために、いくつかのポートが設けられている。
【0057】
第2の実施形態においては、いくつかの入力ポート及び出力ポートを用いて、複数の生成物を生成する固体、液体及び蒸気の精製用の複数の領域を作成する。
【0058】
入口ポートは、酸素/空気を供給することができ、水/蒸気を供給することができるように、レトルトの底部又は底部の近傍に配置することができる。水もまた、レトルトの上部又は上部の近傍にある入口ポートを通して供給することができる。
【0059】
レトルトに投入される材料の量を制御するために、バルブが各入口ポートに取り付けられている。
【0060】
気体生成物がレトルトを出て、その後、回収され得るように、1つ以上の出口ポートが解重合領域の上方に配置されている。
【0061】
脱硫ユニット
一実施形態では、生成物を脱硫条件に曝すことができるように、脱硫ユニットがポートに取り付けられている。
【0062】
脱硫は、本明細書に記載される熱解重合プロセスによる生成物流などの材料から硫黄を除去するための化学プロセスである。
【0063】
生成物流が形成され、レトルトチャンバを出る際、生成物は気相である。冷却されると、室温及び大気圧において液体である1種以上の生成物と、室温及び大気圧において気体である1種以上の生成物は、別々に分離することができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、気体生成物流から分離された液体生成物から硫黄が除去される。他の実施形態では、気体生成物流又は気体生成物流から分離された気体生成物から硫黄が除去される。
【0065】
別々の液体流及び気体流よりも気体生成物流から硫黄を除去する方が容易な場合があり、このため、気体生成物がレトルトチャンバを最初に出る場所に、すなわち、気体生成物が冷却され、分離される前に脱硫ユニットを含むと有利であり得る。
【0066】
気体流から硫黄を除去するための脱硫条件は当業者には周知である。
【0067】
代表的な条件は、例えば、米国特許第7,687,047号に記載されている。この特許では、H2S及びCOSを含有する硫黄含有ガスを、式MnzZn(1-Z)Al2O4により特徴付けられる置換形固溶体を含む収着剤と接触させる。他の収着剤層としては、アルミナ及び/又は酸化亜鉛が挙げられる。
【0068】
目的がCOS、SO2及びH2Sの同時除去である場合、脱硫プロセスは、典型的には、これらの硫黄化合物のうち1つ以上を含む気体流を収着領域内の収着剤と接触させ、生成物気体流と硫黄を含む収着剤とを生成することを含む。これらの収着剤は、典型的には亜鉛(Zn)を含み、マンガンなどの助触媒金属はもとより、アルミナなどの担体も含むことができる。硫黄で飽和した収着剤は、硫黄を含む収着剤の少なくとも一部を再生領域内で再生気体流と接触させて、再生済み収着剤及びオフガス流を生成することにより再生させることができる。再生済み収着剤の少なくとも一部は、その後、収着領域に戻ることができる。収着剤の再生によりSO2が生じる場合、このガスは、適切な貯蔵タンク内に収容することができる、又は還元して硫黄元素を形成することができる。
【0069】
硫黄を除去することに加えて又はその代わりに、一実施形態では、脱ハロゲン化ユニットを用いて気体流から塩素又は他のハロゲンを除去する。不均一系触媒法及び電解法を用いた還元的脱ハロゲン化は、酸素の不存在に起因するダイオキシン等の微量の汚染物質の生成を回避する一方で、塩素化された気相汚染物質を脱ハロゲン化することができる。ハロゲン置換基の電気陰性特性によって、高度に塩素化された脂肪族化合物は、元素状水素などの電子供与体による還元的脱ハロゲン化(例えば、任意選択的に、炭素、アルミナ、ゼオライト、シリカ、酸化チタン、又は酸化ジルコニウム担体媒体上に存在する白金、パラジウム、又はロジウム触媒の存在下でガスを水素と反応させる)のために熱力学的に配置される。塩素は、遷移金属と反応させて共有結合を形成することもできる。
【0070】
サイクロンセパレータ/微粒子除去
一実施形態では、サイクロンセパレータを用いて、蒸気中に存在する微粒子を除去する。脱硫ユニットが使用される場合、サイクロンセパレータは脱硫ユニットの前又は後に取り付けることができるが、脱硫ユニットの微粒子混入を最小限にするために、脱硫ユニットの前に取り付けられることが好ましい。
【0071】
本明細書で使用する場合、サイクロン分離は、フィルタを使用することなく渦流分離により気体生成物流から微粒子を除去する方法形態である。気体サイクロンを使用し、回転効果及び重力を用いて、気体から固体を分離する。この方法は、気体流から微細な液滴を分離するためにも使用することができる。
【0072】
サイクロンと呼ばれる円筒形又は円錐形容器内に、高速回転する空気流ができる。空気は、サイクロンの中央を通って上部から出る直線流においてサイクロンを出る前に、サイクロンの上部(幅広端部)にて開始し、下(狭)端部にて終端する螺旋パターンで流れる。
【0073】
回転流中の比較的大きく且つ高密度の粒子は、流れの急なカーブに従うには大きすぎる慣性を有する。これらは外壁に当たるとサイクロンの底部に落下し、そこで除去することができる。円錐形のシステムでは、回転する流れがサイクロンの狭端部に向かって移動するにつれて流れの回転半径が減少することで、ますます小さな粒子を分離する。サイクロンの幾何学的形状は、流量とともに、サイクロンのカットポイント、すなわち、50%の効率で流れから除去される粒子径を定義する。カットポイントを超える粒子はより高い効率で除去され、より小さい粒子はより低い効率で除去される。
【0074】
別のサイクロン設計では、サイクロン内で二次空気流を用いて、捕集される粒子が壁に当たらないようにし、壁を摩耗から保護する。微粒子を含む一次空気流はサイクロンの底部から入り、静止スピナーベーンによって強制的に螺旋回転させられる。二次空気流はサイクロンの上部から入り、底部に向かって下方に移動し、一次空気からの微粒子を遮断する。二次空気流は微粒子を捕集エリアに向かって押し、この機能を重力のみに依存して実施しないことから、二次空気流により、捕集器を任意選択的に水平に取り付けることも可能になる。
【0075】
油精製業界では気体生成物混合物から触媒粒子を分離するために類似のセパレータが使用されているため、油精製分野における当業者であれば、サイクロン分離の使用法については周知である。
【0076】
生成物分離/冷却ユニット
レトルトを出る生成物は室温で気相であるが、一部の生成物は液体であり、その他は気体である。装置は生成物分離ユニットを更に含み、生成物分離ユニットは、1つ以上の熱交換器、冷却塔、蒸留塔、冷却器、気体流が通過することができる液体幕等を含み、気体を冷却し、生成物混合物を1種以上の液体と1種以上の気体生成物とに分離する。
【0077】
いくつかの実施形態では、室温及び大気圧において液体である生成物流を可能な限り多く回収することに労力が払われ、他の実施形態では、1種以上の液体生成物を互いに分離することに労力が払われる。
【0078】
いくつかの実施形態では、単一の生成物流中の、室温及び大気圧において気体である生成物を可能な限り多く回収することに労力が払われ、他の実施形態では、1種以上の気体生成物を互いに分離することに労力が払われる。
【0079】
一般に、その鎖に5個以上の炭素を持つ炭化水素生成物(すなわち、C5+炭化水素)は室温で液体である。気体生成物は、典型的には、一酸化炭素、二酸化炭素、水素ガス、硫化水素、二酸化硫黄、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、及びブチレンの1つ以上を含む。その鎖に2~4個の炭素を持つ炭化水素生成物(すなわち、C2~4炭化水素)は、他の気体生成物から、例えば、脱メタンカラムを用いて分離することができる。3~4個の炭素を持つ生成物は、2個の炭素を持つ生成物から、例えば、脱エタンカラムを用いて分離することができる。あるいは、比較的高いBTU値を有する傾向がある気体生成物は、所望の場合、燃焼させ、熱エネルギー又は電気を生成するために使用することができる。
【0080】
気体生成物流は、気体流の温度を低下させるために凝縮器などの1つ以上の熱交換器をまず通過し、第1の液体生成物流と、第1の冷却工程で液化しなかった構成成分で構成された第2の気体流を得ることができる。
【0081】
この液体生成物流は、気体が最初に冷却される場所から下流の位置に圧送され、冷却された液体の幕を作成するために使用することができ、その後、第2の気体流と接触させることができる。これにより第2の気体流を冷却し、最初に回収される液体と第2の気体流を冷却することで得られる液体とを含む第2の液体生成物流を供給する。本プロセスは、所望の場合、繰り返すことができる。
【0082】
一般に、気体生成物流から分離される最初の生成物は最大分子量を持つものであり、気体生成物流から分離される最後の生成物は最小分子量を持つものである。
【0083】
液体生成物及び気体生成物の量は原材料の性質及び反応条件に応じて異なる。しかしながら、液体生成物総含有量(すなわち、本明細書に記載される装置及び技術を用いて熱解重合されるタイヤゴムの「含油率」は、典型的には、タイヤの重量に対して約31~約41%の範囲である。メタン含有量は、典型的には、約25%である。
【0084】
代表的な生成物分布を
図1に示す。炭素数約6~9で有意な生成物画分(すなわち、C
6~9画分)、炭素数14~17で有意な画分(すなわち、C
14~17画分)、及びC
24超でわずかな画分がある。この特定の生成物分布では、情報と信念に基づき、解重合されるタイヤ中のポリマーはこれら鎖長を持つモノマーから形成されたものであり、このことは、C
10~13の範囲内の大きさを有する材料がほとんどない理由を説明するものである。C
5よりも炭素数の少ない生成物は気相中に存在したが、分析の対象ではなかった。異なる温度及び圧力で、例えば、この特定の生成物流を生成するのに用いたものより高温及び/又は高圧で操作した場合、この初期生成物流中のオレフィンは、更に反応してオレフィン二量体/三量体/オリゴマーを形成することができ、ブタジエン又は他のジエンとのディールスアルダー反応に関与して脂環式化合物を形成することができ、水素化して脂肪族化合物を形成することができ、芳香族化反応を経て芳香族化合物を形成することができる、等である。
【0085】
C6~9画分、C14~17画分、及びC24+画分の沸点は大きく異なり、生成物混合物を冷却し、これら種類の画分を分離することは当業者の技能の範囲内である。
【0086】
コスト管理のために、熱交換器及び液体生成物の幕を生成物分離ユニットの少なくとも一部として用いると有利であり得る。
【0087】
真空ポンプ/吸引ユニット
熱解重合は、典型的には、約-0.8~約-200ミリバール、より典型的には、約-6~約-10ミリバールのオーダーの真空下で実施される。この真空を達成するために、生成物分離ユニットの端部又は端部の近傍に真空ポンプ又は吸引ユニットが取り付けられる。いくつかの実施形態では、圧力は、特に気体生成物が生成される際には、約8ミリバールまで増加させることができる。
【0088】
気体生成物は、分離することができる、又は所望する場合、燃焼させることができる。これらが燃焼される場合、装置は、真空ポンプ又は吸引ユニットの後にバーナー(フレア)又は発生器を含むことができる。バーナーを用いて、気体が燃焼する際に熱を生成することができ、発生器を用いて、気体が燃焼する際に電気を生成することができる。
【0089】
レトルトチャンバの冷却
バッチ間においてレトルトを冷却することが望ましい場合がある。操作時、水が、通常、レトルトの底部又は底部の近傍にある入口ポートに取り付けられたバルブからレトルトに加えられる。冷却操作中、水は、さらに又は代わりとして、レトルトの上部又は上部の近傍にある入口ポートに取り付けられたバルブから加えることができる。これにより冷却プロセスを大幅に加速することができ、水がレトルトチャンバの上部から加えられない場合よりも早く次のバッチを処理することができる。
【0090】
温度監視
レトルトチャンバの内部など反応器内部の温度を監視するための様々な手法がある。例としては、温度ゲージ、熱電対、温度計及び/又はサーモスタットが挙げられる。温度計は、熱解重合の生成物がレトルトチャンバを出る領域(すなわち、解重合領域の上方)で好まれ得るが、これは、その温度が、典型的には約100~約280℃の範囲であり、これらは温度計を用いて測定できる温度であるためである。しかしながら、温度が約900℃を超える反応器の底部の近傍、及び温度が250~550℃である解重合領域自体においては、サーモカップルが、温度を測定するための好ましい手法であり得る。
【0091】
レトルトチャンバの上部
レトルトの上部は、熱処分されるタイヤ及び/又は他の材料をレトルトに装填するために開くことができる。これは、クラムシェル型フード、ヒンジ、ねじぶた、一連のフランジ等を用いてレトルトの残部に上部を取り付けることによって実現することができる。
【0092】
レトルトチャンバの上部には、レトルト内に水を流すために、1つ以上の入口ポートと、ポートに取り付けられたバルブとを備えることができる。あるいは、入口ポート及びバルブは、上部が開かれたとき、不燃焼材料が除去されるとき、及び解重合される次の材料バッチが加えられるときにバルブ/ポートを取り外す必要がないように、レトルトチャンバの実際の上部より下ではあるが、レトルトの上部3分の1に配置することができる。
【0093】
レトルトからの固体材料の除去
バッチ間において、残る固体材料をレトルトから除去することが望ましい。タイヤの場合、残る材料には、カーボンブラックと、タイヤのスチールベルトのスチールとを含み得る。残る材料をレトルトから除去するためのいくつかの手法がある。1つの例示的手法は、レトルトの底部にヒンジを設け、材料を熱解重合した後に底部を外すことでレトルトから材料を除去することである。
【0094】
別の手法は、レトルトの中間部周辺にある、水平軸を有するヒンジと、レトルトを回転させるためのモータとを設けることである。上部を取り外した後、レトルトはヒンジの水平軸の周りで回転させることができる。レトルトの底部で回収された材料は、その後、レトルトの上部から出る。レトルトは、その後、垂直位置に回転させて戻すことができ、レトルトを回転させるために外されていた任意のパイプ、バルブ、又は他の接続部を再接続させることができる。
【0095】
II.熱処分することができる材料
一実施形態では、熱処分される材料はタイヤである。タイヤは、タイヤ製造業者(すなわち、ポストインダストリー廃棄物)から、埋立地(すなわち、ポストコンシューマ廃棄物)から、又はその両方から入手することができる。本実施形態のいくつかの態様では、タイヤスクラップは未加硫ゴムを含む。
【0096】
タイヤをタイヤ製造業者から入手する場合、熱解重合から生じたモノマーは、スチールベルト付きタイヤのスチールベルトを製造業者に戻すことができるのと同様に、製造業者に戻すことができる。タイヤを埋立地から入手する場合、生成物混合物を使用し、タイヤに比べて高価値及び低体積の1種以上の生成物を生成することができる。脱硫ユニットが使用される場合、生成物は低硫黄含有量を有し、環境に放出される硫黄の量は、タイヤを単に燃焼させた場合よりも大幅に少なくなる。
【0097】
いくつかの実施形態では、タイヤは無傷でレトルトチャンバに加えられ、他の実施形態では、タイヤは2つ以上の部品に切断され、この部品がレトルトチャンバに加えられる。
【0098】
タイヤがレトルトチャンバ内部で積み重ねられる場合、例えば、解重合されるべき他の材料を充填することができる相当量の空き空間がある。レトルトチャンバの底部から解重合領域に熱を移動させることができるように、適度な量の空隙容量を残すべきである。理想的には、充填され得る空隙空間の量は、75体積%未満、より典型的には約50体積%未満、更により典型的には、約25体積%未満である。
【0099】
タイヤに加えて又はその代わりに、処分することができる他の材料としては、未加硫ゴム、バンバリー汚泥、医療廃棄物、木材系廃棄物、油系廃棄物、植物、動物の排泄物、人間の排泄物、魚廃棄物、コンピュータ廃棄物、プリント回路基板、自動車の解体による「毛羽」及びアスファルト増量剤が挙げられる。
【0100】
これらの材料の熱処分から生じた生成物はタイヤから得るものとは異なり、ポリマーが熱解重合を経るのに適した温度に応じて動作温度も異なり得る。
【0101】
III.熱処分プロセス
本明細書で記載されるプロセスでは、レトルトチャンバの上部を開き、熱解重合されるタイヤ及び/又は他の材料を加える。通常、タイヤは、レトルトの底部から上部へと互いに積み重ねられる。このようにして、底部近傍のタイヤを燃焼させて解重合反応のための熱エネルギーを得る際、燃焼させるタイヤの上に積み重ねられたタイヤが落下できることで、燃焼のための新たな原材料及び解重合反応のための連続的な熱源を供給する。
【0102】
いくつかの実施形態では、気体は高温で空気と接触すると爆発するおそれがあるとともに、熱解重合はルシャトリエの原理の原理に従う、すなわち、ポリマー分子を多くのモノマー分子に変換するためには真空が有利であるのに対し、多くのモノマー分子をポリマー分子に変換するためには圧力が有利であるため、熱解重合は真空下で実施される。通常、空気及び任意の揮発性ガスを確実に除去するために、窒素又は二酸化炭素雰囲気が、例えば、入口ポートを通して設けられ、その後、真空ポンプ、又は本明細書に記載される真空を供給するための他の手段を用いて真空が適用される。レトルトから流出するガス及び他の揮発物を圧力下で捕捉し、プロセス、コスト及び価値に応じて大気中に放出する又は燃やすことができる。
【0103】
窒素、二酸化炭素、又は他の不活性ガスの使用は任意であり、真空を設けることは任意である。通常、熱解重合が実施される圧力は、約-0.8~約-200ミリバール、より典型的には約-6~約-10ミリバールである。システムは完全に密閉され、有害な又は臭気系の蒸気が漏れることはほとんどない。
【0104】
空気及び揮発性ガスがパージされ、真空を設けることができると、反応器の底部に熱が加えられ、熱処分されるタイヤ及び/又は他の材料の最下段を約900~1300℃の温度まで加熱する。これは、例えば、誘導加熱器の使用、耐火材料の加熱、バーナーの使用等による任意の好適な手段を用いて行うことができる。
【0105】
この熱を導入する特に効率的な手法の1つは、レトルトチャンバの底部又は底部の近傍に一連のレジスタを有することである。空気又は酸素などの燃焼剤を、一連のレジスタの一端において導入することができ、バーナーからの炎を一連のレジスタの他端において導入することができる。バーナーはキャリッジ上に配置することができ、レトルト内におけるバーナーの移動を容易にする。レジスタは、レトルトの底部全体に沿って実質的に等しい圧力を与えるように間隔をおいて配置され得る。「実質的に等しい」とは、レトルトチャンバの底部に沿った圧力が20%を超えて変化しないことを意味する。
【0106】
タイヤがこの温度に達すると、タイヤは燃焼し、熱を生成する。反応器の底部又は底部の近傍にある入口ポートを通して加えられた空気又は酸素の定常流れが維持される。酸素が低濃度で存在し、燻焼するタイヤによって消費されるため、これは圧力を著しく増加させない。
【0107】
所望の温度に達すると、熱は上方に流れ、タイヤ及び/又は他の材料の熱解重合を生じさせる。タイヤ中に存在するゴムの熱解重合の所望の温度範囲は約100~280℃であるが、この温度範囲の上限ではより低分子量の生成物が形成される傾向にあり、この温度範囲の下限ではより高分子量の生成物が形成される傾向にある。
【0108】
水もまた、通常、反応器の底部又は底部の近傍にある入口ポートを通して加えられる。水によって、反応温度をある程度制御することができる。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、タイヤが熱解重合されると、スチールベルト中に存在する鉄が、不完全燃焼の結果として(すなわち、化学量論的酸素量未満を使用することにより)形成される一酸化炭素と反応し、導入される水は、「スチーム-アイロン」法に類似する手法で水素を形成するとも考えられている。このようにして形成された水素はタイヤに使用された加硫ゴム中に存在する硫黄-硫黄結合及び炭素-硫黄結合を切断することができ、硫化水素及び他の硫黄含有生成物(COSを含むがこれに限定されない)を形成することができる。
【0109】
本明細書で記載されるプロセスは、生成物分布をある程度制御することができるという点で特有のものである。例えば、主生成物としてメタンを生成することが所望される場合、解重合反応は相対的に高温で行うことができ、モノマーをより多く分離することが所望される場合、解重合反応は相対的に低温で行うことができる。
【0110】
解重合の大部分が起こる温度にかかわらず、反応が完了に近づくと温度は上昇する傾向にある。
【0111】
熱解重合工程の間、レトルト内の温度は監視される。温度は、レトルトチャンバ内の複数箇所で監視することができる。例えば、反応器の底部又は底部の近傍におけるタイヤ及び/又は他の材料の燃焼/燻焼は、温度が800~1300℃、より典型的には900~1300℃の範囲内に確実に留まるように監視され得る。解重合領域内の温度は、温度が約150~550℃、より典型的には約250~550℃、又は約150~450℃の範囲内に確実に留まるように監視され得る、及び/又はレトルトチャンバを出る生成物の温度は、温度が約100~約280℃の範囲内に確実に留まるように監視され得る。
【0112】
温度がその適切な範囲に達すると、気体生成物がポートから放出される。そこから、気体生成物は、微粒子を除去するためのサイクロン、硫化水素及び他の硫黄含有生成物を除去するための脱硫工程、及び室温で液体である生成物を室温で気体である生成物から分離させるための冷却プロセスに曝すことができる。気体生成物は、回収及び保存することができ、燃焼させることができ、又は電気を生成するために使用することができる。
【0113】
冷却プロセスは、全気体及び全液体生成物を混合するように、又は1種以上の液体画分及び/又は1種以上の気体画分を別々に分離するように、所望のように調整することができる。
【0114】
反応が進行するにつれて、レトルトチャンバの底部又は底部の近傍にあるタイヤ及び/又は他の材料は消費され、消費された材料より上にある材料は、その後、重力を用いて、解重合されるまでレトルトチャンバを下に進む。
【0115】
反応の完了後(これは、例えば、様々な領域内の温度の変化によって判断することができる)、例えば、レトルトチャンバの上部又は上部の近傍にあるバルブを通して水を導入することにより反応を停止させることができる。
【0116】
レトルトチャンバが十分に冷却されると、水を排出することができ、固体材料をレトルトチャンバから除去することができる。
【0117】
一実施形態では、これには、レトルトチャンバの底部にあるヒンジを開き、材料を放出することを伴う。別の実施形態では、これには、上部を取り外すこと、出口ポートを分離すること、及びレトルトの中間部又は中間部の近傍に位置する、水平軸を有するヒンジの周りでレトルトを回転させることを伴う。材料は、その後、レトルトチャンバの上部から落下し、レトルトチャンバは、その後、その本来の直立位置に戻すことができる。
【0118】
タイヤの熱処分の生成物
タイヤの熱処分により入手される生成物は、カーボンブラック、硫黄化合物、スチール(スチールベルトからの)、液体、ナンバー2ディーゼルに類似する性質を有する主としてオレフィン系の画分、メタンガス、C2~4画分、並びに二酸化炭素、一酸化炭素、二酸化硫黄、及び水素などの1種以上の更なる気体を含む傾向がある。上記のように、いくつかの実施形態では、オレフィン系画分中のオレフィン類は更に反応して二量体、三量体及びオリゴマー類、脂環式化合物、脂肪族化合物及び/又は芳香族化合物類を形成することができる。固体生成物をまだ濡れた状態にある間にレトルトチャンバから除去することでカーボンブラックの分離を容易にすることができる。
【実施例】
【0119】
本発明は、以下の非限定的実施例を参照するとより良く理解されよう。
【0120】
図2は、本明細書に記載されるレトルトチャンバの一実施形態の概略図である。レトルトチャンバ(10)は、上部(20)と、底部(30)と、上部及び/又は底部にある、ユーザが熱解重合される材料を挿入すること及び/又は熱解重合プロセス後に残る無機材料及び他の残余物を除去できるようにするためのヒンジ(40)と、上部近傍、底部近傍、及びレトルトチャンバの上部と底部との間にある温度センサ(50)と、バーナー(70)を受け入れるためのキャリッジ(60)と、レトルトチャンバの底部近傍にある2つの入口ポート(80)と、レトルトチャンバの上部近傍にある1つの入口ポート(80)と、レトルトチャンバの上部と底部との間にある出口ポート(90)と、を含む。底部に沿って、バーナーと並んで且つバーナーより上にあるのはレジスタ(100)である。熱解重合される材料はレジスタ上に重なる。
【0121】
使用中、熱解重合される材料は、理想的には、レトルトチャンバ(10)の上部にあるヒンジ(40)を開くことによってレトルトチャンバ(10)に導入され、ヒンジ(40)は、材料が導入された後に閉じられる。酸素又は空気が底部入口ポート(80)の1つを通して挿入され、バーナー(70)はキャリッジ(60)を通して導入される。酸素/空気はレジスタ(100)を通過し、バーナー(70)及び酸素が反応器(20)の底部に沿って、及びレジスタ(100)上を移動する際に実質的に均一な加熱を可能にする。
【0122】
酸素/空気の量は、燃焼されるべき材料の急速な燃焼を生じさせるには不十分である。その代わり、これにより、燃焼されるべき材料(タイヤなど)の底層の部分燃焼又は燻焼をもたらす。レトルト(10)の底部(30)又は底部(30)近傍の温度は、約900~1300℃の範囲内に留まるように、温度センサ(50)を用いて監視される。水はレトルト(20の底部又は底部の近傍にある第2の入口ポート(80)を通じてレトルト(10)に加えられる。例えば、熱解重合される材料がタイヤを含み、タイヤがスチールベルトを含む場合、水は、鉄と反応して、水素と酸化鉄を形成することができる。
【0123】
熱解重合が起こると、第2のサーマルセンサ(50)で測定したレトルトチャンバの中間部の温度は所望の範囲まで上昇し、熱解重合生成物が生成される。この材料は出口ポート(90)を通ってレトルト(10)を出る。
【0124】
反応器(20)の上部又は上部近傍の温度は第3の温度センサ(50)を用いて測定することができる。
【0125】
反応が完了すると、レトルトは、反応器の底部又は底部の近傍にある入口ポート(80)を通して、及び任意選択的に、反応器(20)の上部又は上部の近傍にある入口ポート(80)を通して更に多くの水を加えることにより冷却することができる。解重合反応で消費されない無機材料及び他の材料は、例えば、反応器の底部の近傍のヒンジ(40)を開くことによって除去することができる。
【0126】
図3は、本明細書に記載されるレトルトチャンバの別の実施形態の概略図である。本実施形態では、前の実施形態と同様に、レトルトチャンバ(10)は、上部(20)及び底部(30)と、温度センサ(50)と、バーナー(図示せず)用のキャリッジ(60)と、レトルト(10)の底部(30)及び上部(20)にある入口ポート(80)と、出口ポート(90)と、レジスタ(100)と、を含む。しかしながら、レトルト(10)の上部(20)又は上部(20)近傍にあるヒンジ(40)に加えて、レトルトチャンバ(10)の中間部又は中間部近傍にヒンジ(40)があり、これによりレトルト(10)を回転させることができる。使用時、レトルトは
図2に示す実施形態と実質的に同じように使用される。しかしながら、熱解重合工程が完了すると、レトルト(20)の上部を開き、レトルトの中間部又は中間部近傍にあるヒンジ(40)を用いてレトルト(10)を回転させることにより残余物を除去することができる。
【0127】
図4は、本明細書に記載されるレトルトチャンバの断面図である。他の図と同様に、レトルト(10)は、上部(20)及び底部(30)と、上部又は上部近傍にあるヒンジ(40)と、レトルトの底部及び上部にある入口ポート(80)と、レトルトの上部及び底部又は上部及び底部の近傍、並びに上部と底部との間にある温度センサ(50)と、を含む。バーナー(70)はキャリッジ(60)に部分的に挿入されている。レトルト(10)の側部は、耐火材料(110)が充填されているものとして示される。
【0128】
図5は、生成物がレトルトチャンバを出る際に生成物を回収するための装置の一実施形態の概略図である。レトルトチャンバ(10)は出口ポート(90)に接続されており、生成物は、固体微粒子を除去するためのサイクロンチャンバ(120)及び/又は材料がまだ気相である間に材料を脱硫するための脱硫チャンバを任意選択的に通過する。任意選択的に脱硫された材料は1つ以上の冷却/凝縮ユニット(140)を通過し、液化した材料は1つ以上の回収容器(150)内に回収される。解重合反応は真空下で実施され、真空は真空ポンプ(160)を用いて得られる。真空ポンプ(160)は、間にあるサイクロンチャンバ冷却/凝縮ユニット(140)、任意の脱硫チャンバ(130)、任意のサイクロン(120)、及び出口ポート(10)を介してレトルト(10)に間接的に接続されている。気体材料は冷却/凝縮ユニット(140)、及び真空ポンプ(160)を通過し、フレア(170)を用いて任意選択的に燃やされる。
【0129】
図示しない他の実施形態では、気体材料は脱メタン化カラムを通過し、C2~4生成物を圧力下で回収することができる。C1及び低級生成物(メタン、二酸化炭素、一酸化炭素、水素等)は、所望する場合、燃やすことに代えて、後の使用のために圧力下で瓶に詰めることができる。これらの気体を大気中に直接放出することは望ましくない。
【0130】
様々な刊行物が本明細書中に引用されており、これらの開示は、あらゆる目的においてその全体が参照により援用される。
【0131】
本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態によって範囲が限定されるものではない。実際、記載されているものに加えて、本発明の様々な変更形態は、前述の記載及び添付の図から当業者には明らかであろう。このような変更形態は添付の特許請求の範囲の範囲内にあることを意図する。