IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-イオン組成物およびそれらの関連用途 図1
  • 特許-イオン組成物およびそれらの関連用途 図2
  • 特許-イオン組成物およびそれらの関連用途 図3
  • 特許-イオン組成物およびそれらの関連用途 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】イオン組成物およびそれらの関連用途
(51)【国際特許分類】
   C07D 233/58 20060101AFI20220531BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220531BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20220531BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20220531BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
C07D233/58
C09J11/06
C09J133/00
C09J5/00
C09J201/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019547402
(86)(22)【出願日】2018-03-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 US2018020754
(87)【国際公開番号】W WO2018161025
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2020-12-21
(31)【優先権主張番号】62/466,112
(32)【優先日】2017-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラシュウォル、スタニスラフ
(72)【発明者】
【氏名】フー、ユイフェン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ホンシー
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04483835(US,A)
【文献】国際公開第2016/135341(WO,A1)
【文献】特許第6017217(JP,B2)
【文献】特開2010-037355(JP,A)
【文献】国際公開第2008/150228(WO,A1)
【文献】特表2004-530619(JP,A)
【文献】特開2011-129400(JP,A)
【文献】特開2011-016990(JP,A)
【文献】Registry(STN)[online],1996年04月10日,検索日:2022/02/01, CAS登録番号: 174908-40-8
【文献】Inorg. Chem.,2004年10月07日,Vol. 43,pp. 7068-7074
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 233/58
C09J 11/06
C09J 133/00
C09J 5/00
C09J 201/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(86A)で表されるカチオン性化合物を含む組成物。
【化1】
【請求項2】
以下の構造:
【化2】
を有するアニオン性化合物をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
下記一般式(84A)、又は下記一般式(87A)で表されるカチオン性化合物と、
【化3】
以下の構造:
【化4】
を有するアニオン性化合物とを含む組成物。
【請求項4】
前記カチオン性化合物が前記一般式(84A)で表される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記カチオン性化合物が前記一般式(87A)で表される、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
アクリルポリマーをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
第1基材、第2基材、および第1基材と第2基材の間に配置された請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物を含み、第1基材と第2基材とが前記組成物によって貼り合わされる装置。
【請求項8】
前記第1基材が導電性表面を含み、前記第2基材が導電性表面を含み、前記組成物が導電性表面と接触して配置される、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物を使って第1基材を第2基材に貼着することを含む方法。
【請求項10】
前記第1基材と前記第2基材の間に電位を印加することおよび前記第1基材を前記第2基材から分離することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2017年3月2日に出願された米国仮特許出願第62/466,112号の利益を主張し、その内容は参照によりそのまま本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は概して、2つの物品を選択的に貼り合せるための粘着材料中に使用するか、またはそのような粘着材料として使用することができる、イオン組成物に関する。より具体的には、限定するわけではないが、本開示は、カチオン性イミダゾリウム化合物とスルホニルイミド化合物などのアニオン性化合物とを含むイオン組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
第1基材の導電性表面に塗布される粘着剤コーティングとして使用することができる組成物はいくつか知られている。この粘着剤コーティングは、第1基材と第2基材とを貼り合せまたは接合するために、第1基材の導電性表面と第2基材の導電性表面との間に挟むことができる。第1基材と第2基材とを互いに分離するために電位を印加すると、この粘着剤コーティングは、第1基材および第2基材のうちの一方または両方からデボンディングされる。しかし、このタイプのコーティングのいくつかの形態は、それらが塗布される導電性表面に対して、望ましくない腐食効果を有しうることが、観察されている。したがって、この技術分野では今なお、さらなる貢献が必要とされている。
【0004】
本願において開示し、特許請求する主題は、何らかの短所を解決する実施形態、または上述した環境などの環境でのみ作動する実施形態に限定されない。むしろ、この背景技術は、本開示を利用することができる例を例証するために提供されているに過ぎない。
【発明の概要】
【0005】
本開示は概して、2つの物品を選択的に貼り合せるための粘着材料中に使用するか、またはそのような粘着材料として使用することができる、イオン組成物に関する。より具体的には、限定するわけではないが、本開示は、カチオン性イミダゾリウム化合物とアニオン性スルホニルイミド化合物などのアニオン性化合物とを含むイオン組成物に関する。
【0006】
一実施形態において、組成物は、式(I):
【化1】
[式中、RはC~Cアルキル、C~Cヒドロキシアルキル、C~CアルケニルまたはC~Cアルコキシアルキルを表し、Rは水素またはC~Cアルキルを表し、RはC~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルコキシアルキル、アセトキシ~CアルキルまたはC~C15アリールアルキルを表し、Rは水素またはC1~4アルキルを表し、かつRは水素またはC1~4アルキルを表す]
のカチオン性化合物を含む。この実施形態の一形態において、本組成物は、以下の構造:
【化2】
を有するアニオン性化合物をさらに含む。
【0007】
別の一実施形態において、装置は、式(I):
【化3】
[式中、Rは、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、またはC~Cアルコキシアルキルを表し、Rは水素またはC~Cアルキルを表し、Rは、C~Cアルキル、C~Cヒドロキシアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルコキシアルキル、アセトキシ~Cアルキル、またはC~C15アリールアルキルを表し、Rは水素またはC1~4アルキルを表し、かつRは水素またはC1~4アルキルを表す]
のカチオン性化合物を含む組成物によって貼り合わされる第1基材と第2基材とを含む。
【0008】
別の一実施形態において、方法は、式(I):
【化4】
[式中、Rは、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、またはC~Cアルコキシアルキルを表し、Rは水素またはC~Cアルキルを表し、Rは、C~Cアルキル、C~Cヒドロキシアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルコキシアルキル、アセトキシ~Cアルキル、またはC~C15アリールアルキルを表し、Rは水素またはC1~4アルキルを表し、かつRは水素またはC1~4アルキルを表す]
のカチオン性化合物を含む組成物で第1基材を第2基材に貼着することを伴う。
【0009】
この概要では、概念の一部を簡略化した形で紹介しているが、下記の詳細な説明ではそれらをさらに詳しく述べる。この概要は、請求項に係る主題の重要な特徴または欠くことのできない特質を特定しようとするものではなく、請求項に係る主題の範囲を決定する際の補助として使用されることも意図していない。
【0010】
さらなる特徴および利点を以下の説明において述べるが、一部はその説明から自明となり、また一部は実践によって習得されうる。これらの特徴および利点は、特に添付の特許請求の範囲において指摘される機器および組合せを使って実現され、獲得されうる。これらの特徴および他の特徴は、以下の説明および添付の特許請求の範囲から、より完全に明白になるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】2つの基材を貼り合せるための、本明細書に記載するイオン組成物の使用の概略図である。
図2】電位を印加した時の図1の2つの基材の剥離またはデボンディングの概略図である。
図3】本明細書に記載するイオン組成物の粘着性を試験するために使用される装置の概略図である。
図4図3に関連して試験されたイオン組成物の引剥強度密度対時間のグラフである。
【発明の詳細な説明】
【0012】
本開示の理解を促進するために、ここで下記の実施形態に言及し、具体的な表現を使ってそれらを説明する。それでも、それは本開示の範囲を限定しようとするものではなく、本明細書に記載するような、記載された主題における改変およびさらなる変更、ならびに開示された原理のさらなる応用が、本開示が関係する分野の当業者であれば通常思いつくであろうように想定されることは、理解されるだろう。
【0013】
本開示は概して、2つの物品を選択的に貼り合せるための粘着材料中に使用するか、またはそのような粘着材料として使用することができる、イオン組成物に関する。より具体的には、限定するわけではないが、本開示は、カチオン性イミダゾリウム化合物とスルホニルイミド化合物などのアニオン性化合物とを含むイオン組成物に関する。
【0014】
本明細書において、ある化合物または化学構造について「置換されていてもよい」という場合、それは、置換基を有しない(すなわち無置換の)特徴、または「置換されて」いる特徴(つまり、その特徴は1つ以上の置換基を有する)を含む。置換された基は無置換の親構造から誘導され、そこでは親構造上の1つ以上の水素が1つ以上の置換基で独立して置き換えられている。置換された基は親基構造上に1つ以上の置換基を有しうる。1つ以上の形態において、置換基は、置換されていてもよいアルキルもしくはアルケニル、アルコキシ(例:-OCH-OC 、-OC、-OCなど)、アルキルスルホン(例:-SCH、-SC、-SC、-SCなど)、-NR’R”、-OH、-SH、-CN、-NO、またはハロゲンから独立して選択することができ、ここでR’およびR”は独立してHまたは置換されていてもよいアルキルである。
【0015】
本明細書において、「イミダゾリウム」という用語は、以下の構造:
【化5】
を有する環系を指す。
【0016】
本明細書において、「ビス(スルホニル)イミド」および/または「スルホニルイミド」という用語は、例えば以下の構造:
【化6】
を有するヘテロ原子部分を指す。
【0017】
一実施形態において、イオン組成物は、式(I):
【化7】
[式中、Rは、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、またはC~Cアルコキシアルキルを表すことができ;Rは水素またはC~Cアルキルを表すことができ;Rは、C~Cアルキル、C~Cヒドロキシアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルコキシアルキル、アセトキシ~Cアルキル、またはC~C15アリールアルキルを表すことができ;かつRおよびRは独立して水素またはC1~4アルキルを独立して表すことができる]
のカチオン性イミダゾリウム化合物を含む。
【0018】
いくつかの形態では、R、R、R、RおよびRのうちの1つ以上が、親水性官能基を表しうる。より具体的な一形態では、R 、RおよびR のうちの1つ以上が、親水性官能基を表しうる。これらの形態のうちの1つ以上において、親水性官能基は酸素を含みうる。いくつかの形態において、含酸素親水性官能基は、エーテル、ヒドロキシル、アルコキシおよび/またはエステル基を含みうる。別の形態において、親水性官能基は窒素、硫黄および/またはリンを含みうる。さらに別の形態において、親水性官能基はアミノ基、スルフヒドリル基またはリン酸基を含みうる。
【0019】
1つ以上の形態では、R、R、R、RおよびRのうちの1つ以上が、疎水性官能基を表しうる。より具体的な一形態では、R、RおよびRのうちの1つ以上が疎水性官能基を表しうる。これらの形態のうちの1つ以上において、疎水性官能基は置換されていてもよいアルキル基を含みうる。いくつかの形態において、置換されていてもよいアルキル基はメチル、エチルおよび/またはプロピル基を含みうる。別の形態において、疎水性官能基は置換されていてもよいアリール基を含みうる。いくつかの形態において、置換されていてもよいアリール基はフェニルおよび/またはベンジル基を含みうる。
【0020】
1つ以上の形態では、R、R、R、RおよびRのうちの1つ以上が独立して置換されていてよく、式(I)のカチオン性化合物は非対称でありうる。
【0021】
上に示したとおり、Rは、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、またはC~Cアルコキシアルキルを表しうる。より具体的ないくつかの形態において、RはC~CアルキルまたはC~Cアルコキシアルキルを表しうる。これらの形態のうちの1つ以上において、C~Cアルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、またはイソプロピル基でありうる。いくつかの形態において、C~Cアルコキシアルキルはメチルオキシメチル基を表しうる。
【0022】
上に示したとおり、Rは水素またはC~Cアルキルを表しうる。より具体的ないくつかの形態において、Rは水素を表しうる。より具体的ないくつかの形態において、Rはメチルまたはエチル基を表しうる。
【0023】
上に示したとおり、Rは、C~Cアルキル、C~Cヒドロキシアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルコキシアルキル、アセトキシ~Cアルキル、またはC~C15アリールアルキルを表しうる。より具体的ないくつかの形態において、Rは、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、またはC~Cアルコキシアルキルを表しうる。他のいくつかの形態において、Rは、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cヒドロキシアルキル、例えば-CHCH-OH、C~Cアルコキシ、アセトキシ~Cアルキル、またはC~Cアリールアルキル、例えば-CH-フェニルを表しうる。いくつかの形態において、Rはメチルまたはエチル基を表しうる。別の形態において、Rは、例えばメトキシまたはエトキシ基でありうるC~Cアルコキシを表しうる。いくつかの形態において、RはC~Cヒドロキシアルキル、例えば-CHCH-OHを表しうる。いくつかの形態において、Rはメチルオキシメチルまたはエトキシメチル基を表しうる。別の形態において、Rは、アセトキシエチル基でありうるアセトキシ~Cアルキルを表しうる。いくつかの形態において、Rは、ベンジル基でありうるC~Cアリールアルキル基を表しうる。
【0024】
上に示したとおり、RおよびRは水素またはC1~4アルキルを独立して表しうる。より具体的な一形態において、RおよびRのうちの少なくとも一方はC1~4アルキルである。一特定形態において、RはC~Cアルキルを表し、かつRは水素を表す。別の一形態において、Rは水素を表し、かつRはC~Cアルキルを表す。別の一形態において、Rはメチルを表し、かつRは水素を表す。別の一形態において、Rは水素を表し、かつRはメチルを表す。別の一形態では、RおよびRのうちの一方または両方がC~Cアルキルを表す。さらにもう一つの形態では、RおよびRのうちの一方または両方がC~Cアルキルを表す。さらにもう一つの形態において、RはC~CアルキルまたはC~Cアルキルを表し、かつRは水素を表す。さらなる一形態において、RはC~CアルキルまたはC~Cアルキルを表し、Rは水素を表す。別の一形態において、RおよびRはどちらも、例えばメチル基および/またはエチル基でありうるC~Cアルキルを表す。別の一形態において、RおよびRはどちらもCHを表す。
【0025】
さらに、式(I)のカチオン性化合物には、他のバリエーションも考えられる。例えば一形態において、Rは、-H、-CH、-CH-CH-CH(CH 、および-CH-O-CHから選択することができ、Rは、-H、-CH、および-CH-CHから選択することができ、Rは、-H、-CH、-CH-CH-CH(CH 、-CH-O-CH、-CH-CH-OH、-CH-CH-O-CH
【化8】
、または
【化9】
から選択することができ、Rは、-H、-CH、または-CH-CHから選択することができ、かつ/またはRは、-H、-CH、および/または-CH-CHから選択することができる。もう一つの例として、別の一形態において、Rは、-CH、-CH-CH-CH(CH 、および-CH-O-CHから選択することができ、Rは、-H、-CH、および-CH-CHから選択することができ、Rは、-CH、-CH-CH、-CH-O-CH、-CH-CH-O-CH、または
【化10】
から選択することができ、Rは-Hまたは-CHから選択することができ、かつ/またはRは-Hまたは-CHから選択することができる。さらにもう一つの例として、別の一形態において、Rは、-CH、-CH-CH、および-CH(CH から選択することができ、Rは、-H、-CH、および-CH-CHから選択することができ、Rは、-CHおよび-CH-CHから選択することができ、Rは、-Hまたは-CHから選択することができ、かつ/またはRは-Hまたは-CHから選択することができる。
【0026】
代表的な式(I)の化合物として、表1に提示するものが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【表1】
【0027】
本明細書に開示するイオン組成物はアニオン性化合物も含みうる。一形態において、アニオン性化合物はビス(スルホニル)イミドアニオンでありうる。より具体的な一形態において、ビス(スルホニル)イミドアニオンはビス(フルオロスルホニル)イミド化合物でありうる。一形態において、ビス(フルオロスルホニル)イミド化合物は以下の構造:
【化11】
を有しうる。
【0028】
本明細書に記載するイオン組成物は、2つ以上の物品を剥離可能な形で互いにボンディングするために使用しうる粘着剤として利用するか、またはそのような粘着材料中に利用することができる。言い換えると、前記粘着材料を使用することで、物品を互いに選択的にボンディングしうると共に、所望であれば、前記粘着材料は物品のうちの1つ以上からデボンディングされて物品の分離を容易にすることができる。より具体的には、第1基材と第2基材とを互いにボンディングまたは接合するために、本開示の粘着材料を第1基材の導電性表面上に設け、第2基材の導電性表面を前記粘着材料と接触させて配置することができる。この構成では、粘着材料が第1基材と第2基材との間に挟まれるが、他のバリエーションも想定される。上に示したように、所望であれば、粘着材料は第1基材と第2基材のデボンディングおよび分離を容易にする。より具体的には、電位を印加すると、粘着材料は基材のうちの一方または両方の伝導性表面からデボンディングまたは剥離されて、第1基材と第2基材を互いに分離させることになる。
【0029】
ここまで書いてこなかったが、本明細書に開示する組成物が、カチオン性化合物およびアニオン性化合物の他にも構成要素を含みうることは、理解されるべきである。例えば、一形態において、組成物はポリマーも含みうる。組成物中に存在しうるポリマーの非限定的な例としては、JP2015-204998および/またはJP2015-204996に記載されているものが挙げられる。一形態において、ポリマーは0℃未満のガラス転移温度を有するが、他のバリエーションも考えられる。一形態において、ポリマーは、アクリルポリマー、例えば限定するわけではないが、C~C14アルキル基含有アルキル(メタ)アクリレートエステルから誘導されるモノマー単位を含有するアクリルポリマーでありうる。しかし別の形態において、アクリルポリマーは、C~C14アルキルまたはアルコキシ基から誘導されるモノマー単位を含有することができる。一形態において、アクリルポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートエステルおよび極性基含有モノマーから誘導されるモノマー単位を含有しうる。この形態の一態様において、極性基含有モノマーはカルボキシル基含有モノマーでありうる。この形態のさらなる態様または代替態様において、C~C14アルキル基含有アルキル(メタ)アクリレートエステルはブチル(メタ)アクリレートである。
【0030】
本明細書に記載する組成物は、例えばJP2015-204996および/またはJP20204997に開示されているものを含むいくつかの異なる応用に利用することができると想定される。
【0031】
ここで図1および図2を参照して、装置200において2つの基材を互いに選択的にボンディングするための、本明細書に記載するイオン組成物の使用に関するさらなる詳細を提供する。本明細書に記載するイオン組成物を含む粘着材料203は、基材202の導電性表面206と基材201の導電性表面207との間に配置された層またはコーティングを与える。一形態において、基材201、202のうちの一方または両方は、導電性表面206、207のうちの一方または両方が基材201、202の残りの部分と同じ材料で形成されるように、導電性材料で形成されていてもよい。しかし別の形態では、基材201、202を形成している材料とは異なる1種以上の導電性材料を、導電性表面206、207に使用することも可能である。また、表面206、207が導電性である限りにおいて、基材201、202のうちの一方または両方が、導電性でない1種以上の材料で形成されうることは、理解されるべきである。これらの形態において、導電性表面206、207は、基材201、202上のコーティングまたは層として提供されうる。
【0032】
例証された形態において、導電性表面206、207は、介在スイッチ205を含む閉鎖可能な電気回路において、電力源204と電気的に接続されまたは電気的に連通している。一形態において、電力源204は、約3V~100Vの範囲内のDC電圧を提供する直流電源でありうるが、他のバリエーションも想定される。導電性表面206、207のうちの一方または両方から粘着材料203をデボンディングさせるためにスイッチ205を閉じると、導電性表面206、207間に電位が印加され、結果として、基材201および202を、互いに物理的に分離させることが可能になる。
【0033】
一形態では、基材201、202のうちの一方または両方が導電性炭素質材料または導電性金属を含みうる。上で示唆したように、基材201、202のうちの一方または両方は、限定するわけではないがアルミニウムなどの金属材料で形成されていてもよい導電層も含みうる。導電層は、例えば金属、混合金属、合金、金属酸化物、および/または複合金属酸化物などの従来の材料を含みうるか、伝導性ポリマーを含みうる。導電層のための適切な金属の例としては、第1族金属、第4、5、6族の金属、および第8~10族遷移金属が挙げられる。導電層のための適切な金属のさらなる例としては、ステンレス鋼、Al、Ag、Mg、Ca、Cu、Mg/Ag、LiF/Al、CsFおよび/もしくはCsF/Alならびに/またはそれらの合金が挙げられる。導電層が存在する場合、それは約1nm~約1000μmの範囲の厚さを有しうる。一形態において、導電層は約20nm~約200μmの厚さを有し、別の一形態では導電層が約20nm~約200nmの範囲内の厚さを有する。
【0034】
ここまで論じてこなかったが、本明細書に記載するイオン組成物が一定の応用にとって望ましいさまざまな性質を与えうることは、理解されるべきである。例えばいくつかの形態において、本明細書に開示するイオン組成物は、それらが配置された導電性表面の腐食を排除または低減しうる。例えば一形態において、本明細書に開示するイオン組成物は、導電性表面に直接隣接する環境の酸性度を低減する構成要素を含む。一態様において、粘着材料は、カチオン性化合物およびアニオン性化合物そのものの他にも、導電性表面に直接隣接するイオン性カチオンおよび/またはアニオンの腐食性を低減するために使用されうる1種以上の材料を含みうる。粘着材料の腐食効果は、ASTM G69-12(アルミニウム合金の腐食電位を測定するための標準試験法)に記載の手順に準拠して評価することができる。導電性表面に対する粘着材料の腐食効果を評価するためのさらなる手順は、本願の実施例に記載する。
【0035】
一形態において、本明細書に開示するイオン組成物を含む粘着材料は、導電性電極または導電性材料に対して化学的に安定でありうる。すなわち金属電極と粘着材料との間には、不要な反応がない(またはその存在はごくわずかである)。不要な反応には、例えば金属電極の腐食分解、選択粘着性粘着剤への金属の溶解および/または金属電極の点食が含まれうる。本明細書に開示するイオン組成物を含む粘着材料は、ほんの一例を挙げるとアルミニウム、ステンレス鋼および/またはそれらの混合物に対して、化学的に安定でありうる。一形態において、本明細書に開示するイオン組成物を含む粘着材料の、導電性表面への接触は、少なくとも15分、30分、1時間、3時間、5時間、7時間、24時間、50時間、100時間、125時間、200時間および/または300時間またはそれ以上の期間にわたって、表面のいかなる腐食分解ももたらさないか、表面のあらゆる腐食分解を最小限に抑えうる。いくつかの形態において、本明細書に開示するイオン組成物を含む粘着材料の、導電性表面への直接的接触は、85℃および相対湿度85%の環境において、上述した期間のうちの1つにわたって、表面の腐食分解を最小限に抑えかつ/または防止しうる。一形態において、いかなる腐食分解も存在しないことは、上述した期間のうちの1つにわたって、かつ/または上述した環境条件において、50nm厚の導電性アルミニウム箔シートの貫通がないことによって実証することができる。
【0036】
一形態において、本明細書に記載するイオン組成物を含む粘着材料は、長期にわたる高湿度および高温の条件下で導電性表面の腐食を最小限に抑えるように配合しうる。例えば粘着剤組成物は、加速劣化試験法IIに供している間および供した後に(好ましくは上述した期間のうちの1つにわたって85℃および相対湿度85%に曝露した後に)、2つの基材を互いに固定された関係に維持する能力を有しうる。また、ここまで論じてこなかったが、本明細書に開示するイオン組成物が、1モルあたり約160グラム以下のモル質量を有しうることは、理解されるべきである。
【実施例
【0037】
以下の実施例は例証を目的としており、この文書に開示する主題をこれらの実施例に開示される実施形態だけに限定していると解釈されることは意図していないことを理解すべきである。
【0038】
実施例1:1,3,4-トリメチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(68)の調製
【化12】
【0039】
ヨードメタン(62.2mL、1.0mol)を4-メチルイミダゾール(20.53g、250mmol)、炭酸カリウム(41.40g、300mmol)およびアセトン(300mL)の混合物に2時間以内で滴下し、アルゴン下で激しく撹拌した。反応からの熱が温度を沸点まで上昇させた。添加が完了した後に、混合物を60℃で3時間撹拌した。固形物を熱反応混合物から濾別し、沸騰アセトン(300mL×2)で洗浄した。合わせた濾液および洗液を減圧下で濃縮し、THF(500mL)でトリチュレートすることで、結晶性ヨージド生成物(65)(41.16g、収率69%)を得た。
【0040】
ヨージド(65)(9.52g、40mmol)、KFSI(8.76g、40mmol)およびTHF(100mL)の混合物をアルゴン下で撹拌し、70℃で4時間加熱した。一晩冷却した後、固形物を濾別し、溶媒を減圧下で除去した。残渣の酢酸エチル(100mL)溶液を水(50mL)で洗浄し、濾紙を通して濾過し、溶媒を減圧下で除去することで、イオン液体(68)(8.00g、収率69%)を得た。H NMR(400MHz、DMSO-d):δ8.93(s,1H)、7.42(s,1H)、3.79(s,3H)、3.73(s,3H)、2.26(s,3H)。
【0041】
実施例2:3,4-ジメチル-1-エチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(62)の調製
【化13】
【0042】
ヨードメタン(37.3mL、600mmol)のアセトン(40mL)溶液を4-メチルイミダゾール(41.06g、500mmol)、炭酸カリウム(103g、750mmol)およびアセトン(500mL)の混合物に4時間以内で滴下した。次にその混合物を室温で16時間撹拌した。固形物を濾別し、溶媒を減圧下で除去した。残渣をTHF(200mL)でトリチュレートし、室温で一晩放置した。固形物を濾過によって除去し、溶媒を減圧下で蒸発させることで、出発4-メチルイミダゾールも多少含有する異性体の混合物(53)(30.70g)を得た。
【0043】
イミダゾール(53)(30.00g、312mmol)、ブロモエタン(20mL、268mmol)およびトルエン(50mL)の混合物を圧力反応器に入れ、80℃で16時間加熱した。溶媒を減圧下で除去した。残渣をアセトン(100mL)でトリチュレートし、室温で一晩放置した。得られた結晶を濾別し、アセトンで洗浄し、真空乾燥器中で乾燥することで、イミダゾリウムブロミド(62-Br)(6.43g、収率10%)を得た。
【0044】
イミダゾリウムブロミド(62-Br)(6.43g、30.7mmol)、KFSI(6.57g、30mmol)およびTHF(100mL)の混合物をアルゴン下で撹拌し、75℃で5時間加熱した。50℃に冷却した後、固形物を濾別し、溶媒を減圧下で除去することで、イオン液体(62)(8.61g、収率94%)を得た。H NMR(400MHz、DMSO-d):δ9.01(s,1H)、7.44(s,1H)、4.10(q,J=7.3Hz,2H)、3.79(s,3H)、2.29(s,3H)、1.38(t,J=7.3Hz,3H)。
【0045】
実施例3:1,3-ジエチル-4-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(92)の調製
【化14】
【0046】
4-メチルイミダゾール(39.80g、485mmol)、90%KOH(31.10g、500mmol)および無水DMSO(150mL)の混合物をアルゴン下で3時間撹拌した。反応混合物を氷水浴で冷却しながらブロモエタン(37.2mL、500mmol)を滴下した。次にその混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物を氷水(700mL)に注ぎ込み、5N NaOH(100mL)で処理し、DCM/THF(9:1、300mL×3)で抽出した。抽出物を水(300mL)で洗浄し、無水炭酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下で除去することで、イミダゾール(88-0)(41.97g、収率78%)をほぼ等量の2つの異性体の混合物として得た。
【0047】
イミダゾール(88-0)(11.02g、100mmol)、ブロモエタン(11.2mL、150mmol)および無水トルエン(50mL)の混合物を圧力容器に封入し、80℃で16時間加熱した。冷却後に、下相を分離し、エチルエーテル(100mL)でトリチュレートすることで、結晶性材料を得た。生成物をアセトン(100mL)から再結晶することで、イミダゾリウムブロミド(88-Br)の光沢のある大きな結晶(13.83g、収率63%)を得た。
【0048】
イミダゾリウムブロミド(88-Br)(8.57g、39.1mmol)、KFSI(8.57g、39.1mmol)およびアセトン(100mL)の混合物をアルゴン下で撹拌し、60℃で2時間加熱した。固形物を濾別し、溶媒を減圧下で除去した。残渣のTHF(100mL)溶液を室温で一晩放置し、少量の追加沈殿物を除去するために濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させることで、1,3-ジエチル-4-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(92)(12.48g、収率100%)を得た。H NMR(500MHz、DMSO-d):δ9.07(s,1H)、7.53(s,1H)、4.13(q,J=7Hz,2H)、4.10(q,J=7.0Hz,2H)、2.29(s,3H)、1.40(m,6H)。
【0049】
実施例4:1,3-ビス(メトキシメチル)-4-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(46)の調製
【化15】
【0050】
クロロメチルメチルエーテル(51mL、634mmol)を4-メチルイミダゾール(32.84g、400mmol)、炭酸カリウム(89g、645mmol)およびDCM(200mL)の激しく撹拌した混合物に3時間以内で滴下した。添加後、その混合物を室温で一晩撹拌した。固形物を濾別し、アセトン(300mL)で洗浄した。合わせた濾液および洗液を減圧下で濃縮し、残渣を、シリカゲルおよび酢酸エチル/メタノール(85:15)を使ったクロマトグラフィーにかけることで、モノ-メトキシ-メチル化イミダゾールの異性体混合物(05)(13.48g、収率27%)を得た。
【0051】
クロロメチルメチルエーテル(11.4mL、150mmol)をイミダゾール(05)(12.00g、95mmol)の無水THF(50mL)溶液に滴下し、アルゴン下、室温で撹拌した。添加後、撹拌を5時間続けた。混合物を二層に分けた。下層を分離し、エチルエーテル(200mL)で洗浄し、メタノール(200mL)に溶解した。その暗色溶液をチャコール(10g)で処理し、20時間撹拌した。色は帯黄色になった。その溶液をセライトの層で濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させることで、イミダゾリウムクロリド(43)(17.69g、収率90%)を得た。
【0052】
イミダゾリウムクロリド(43)(9.92g、48mmol)、KFSI(10.52g、48mmol)およびアセトン(100mL)の混合物をアルゴン下、60℃で1時間撹拌した。チャコール(5g)を加え、その混合物を室温で2時間撹拌した。その溶液をセライトの層で濾過し、溶媒を減圧下で除去することで、イオン液体(46)(15.46g、収率92%)を得た。H NMR(400MHz、DMSO-d):δ9.45(s,1H)、7.69(s,1H)、5.55(s,2H,N-CH-O)、5.51(s,2H,N-CH-O)、3.33(s,3H,CHO)、3.32(s,3H,CHO)、2.34(s,3H)。
【0053】
実施例5:1-エチル-3-(2-ヒドロキシエチル)-4(5)-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(90)の調製
【化16】
【0054】
イミダゾールの異性体混合物(88-0)(実施例3)(5.50g、50mmol)、2-ブロモエタノール(5.3mL、75mmol)および無水トルエン(25mL)を圧力反応器に封入し、100℃で16時間加熱した。冷却後、下相を分離し、エチルエーテル(50mL)でトリチュレートすることで、油状生成物を得た。その油状物を真空乾燥器で乾燥することで、異性体の混合物(90-Br)(11.57g、収率98%)を得た。
【0055】
異性体(90-Br)(9.87g、39.6mmol)、KFSI(8.68g、39.6mmol)およびアセトン(100mL)の混合物をアルゴン下で撹拌し、60℃で2時間加熱した。固形物を濾別し、溶媒を減圧下で除去した。残渣のTHF(100mL)溶液を室温で一晩放置した。次に、少量の追加沈殿物を除去するために濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させることで、1-エチル-3-(2-メトキシエチル)-4-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミドとその5-メチルイミダゾリウム異性体との混合物(90)(7.64g、収率97%)を得た。主要異性体のH NMR(500MHz、DMSO-d):δ9.02(s,1H)、7.54(s,1H)、5.14(bs,1H,OH)、4.16(m,4H)、3.70(m,2H)、2.26(s,3H)、1.41(t,J=7.5Hz,3H)。
【0056】
実施例6:1-エチル-3-(2-メトキシエチル)-4(5)-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(91)の調製物
【化17】
【0057】
イミダゾールの異性体混合物(88-0)(実施例3)(5.50g、50mmol)、2-ブロモエチルメチルエーテル(10.42g、75mmol)および無水トルエン(25mL)を圧力反応器に封入し、80℃で16時間加熱した。冷却後、下相を分離し、エチルエーテル(50mL)でトリチュレートすることで、油状生成物を得た。その油状物を真空乾燥機で乾燥することで、異性体の混合物(91-Br)(9.87g、収率79%)を得た。
【0058】
異性体(91-Br)(9.87g、39.6mmol)、KFSI(8.68g、39.6mmol)およびアセトン(100mL)の混合物をアルゴン下で撹拌し、60℃で2時間加熱した。固形物を濾別し、溶媒を減圧下で除去した。残渣のTHF(100mL)溶液を室温で一晩放置し、少量の追加沈殿物を除去するために濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させることで、1-エチル-3-(2-メトキシエチル)-4-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミドとその5-メチルイミダゾリウム異性体との混合物(91)(13.57g、収率98%)を得た。これは、およそのモル比が55:45の2つの異性体の混合物である。主要異性体のH NMR(500MHz、DMSO-d):δ9.03(s,1H)、7.54(s,1H)、4.28(t,J=5.0Hz,2H)、4.16(q,J=7.5Hz,2H)、3.66(t,J=4.5Hz,2H)、3.27(s,3H,MeO)、2.29(s,3H)、1.40(t,J=7.5Hz,3H)。
【0059】
実施例7:1-エチル-3-(2-アセトキシエチル)-4(5)-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(93)の調製
【化18】
【0060】
イミダゾリウムブロミド(90-Br)(実施例5)(6.43g、27.3mmol)および無水酢酸(20mL)の混合物をアルゴン下で撹拌し、100℃で6時間加熱した。その混合物をm-キシレン(100mL)で希釈し、減圧下で濃縮した。m-キシレンによる希釈と減圧下でのエバポレーションを繰り返すことで、生成物(93-Br)(7.20g、収率95%)を、比がおよそ1:1である2つの異性体の混合物として得た。
【0061】
生成物(93-Br)(7.00g、25.2mmol)、KFSI(5.54g、25.2mmol)およびアセトン(100mL)の混合物をアルゴン下で撹拌し、60℃で3時間加熱した。冷却後、固形物を濾別し、溶媒を減圧下で除去した。残渣の無水THF(75mL)溶液を室温で一晩放置してから濾過し、減圧下で濃縮することで、イオン液体(93)を得た。
【0062】
実施例8:1-エチル-3-ベンジル-4(5)-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(94)の調製
【化19】
【0063】
イミダゾール(88-0)(実施例3)(8.30g、75mmol)、臭化ベンジル(11.2mL、100mmol)およびトルエン(100mL)の混合物を80℃で16時間加熱した。冷却後、下層をデカンテーションによって分離し、トルエン(50mL)で洗浄してからTHF(100mL)で洗浄し、真空乾燥器で乾燥することで、ブロミド(94-Br)(20.85g、収率99%)を得た。
【0064】
ブロミド(94-Br)(6.70g、23.8mmol)、KFSI(5.22g、23.8mmol)およびアセトン(100mL)の混合物をアルゴン下で撹拌し、60℃で3時間加熱した。冷却後、固形物を濾別し、溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣を無水THFに溶解し、室温で4時間放置した。その溶液を濾過し、溶媒を減圧下で除去することで、イオン液体(94)(8.59g、収率95%)を得た。
【0065】
実施例9:3-エチル-1-イソプロピル-4(5)-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(86)の調製
【化20】
【0066】
水酸化カリウム(90%,8.40g、134mmol)を4-メチルイミダゾールのDMSO(100mL)溶液に加え、得られた混合物を室温で1時間撹拌した。次に、その混合物を氷水浴で冷却しながら、2-ブロモプロパン(9.4mL、100mmol)を滴下した。添加後は、室温での撹拌を一晩続けた。反応混合物を水(500mL)に注ぎ込み、5N NaOH(100mL)で処理し、DCM(200mL×3)で抽出した。抽出物を水(400mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下で除去することで、イミダゾール(81)(8.80g、収率71%)を、比が2:1である2つの異性体の混合物として得た。
【0067】
イミダゾール(81)(8.50g、72mmol)、ブロモエタン(8mL、107mmol)およびトルエンの混合物を圧力反応器に封入し、80℃で16時間加熱した。冷却後、反応器を開放し、下層をデカンテーションによって分離し、エチルエーテルでトリチュレートすることで、結晶性生成物を得た。生成物を熱THF/アセトン(25+25mL)に溶解し、その溶液を冷THF(150mL)に注ぎ込むことによって、生成物を再結晶した。室温で一晩静置した後、純白の結晶を濾別し、THF(100mL)で洗浄し、真空乾燥器で乾燥することで、イミダゾリウムブロミド(86-Br)(14.62g、収率87%)を得た。
【0068】
イミダゾリウムブロミド(86-Br)(5.60g、24mmol)、KFSI(5.26g、24mmol)およびアセトン(100mL)の混合物をアルゴン下で撹拌し、60℃で3時間加熱した。固形物を濾別し、溶媒を減圧下で除去した。残渣のTHF(100mL)溶液を室温で一晩放置してから、濾過し、減圧下で濃縮することで、イオン液体(86)(8.05g、収率100%)を得た。これは、およそのモル比が2:1の2つの異性体の混合物である。主要異性体のH NMR(500MHz、DMSO-d):δ9.11(s,1H)、7.64(s,1H)、4.54(m,1H)、4.10(q,J=7.5Hz,2H)、2.29(s,3H)、1.45(d,J=7.0Hz,6H)、1.40(t,J=7.5Hz,3H)。
【0069】
実施例10:2,4-ジメチルイミダゾールのメチル化
【化21】
【0070】
メチルメシレート(25.4mL、300mmol)のアセトン(50mL)溶液を、2,4-ジメチルイミダゾール(25.00g、260mmol)、炭酸カリウム(55.20g、400mmol)およびアセトン(500mL)の撹拌混合物に滴下した。次にアルゴン下での撹拌を室温で16時間続けた。得られた固形物を濾別し、溶媒を減圧下で除去した。残渣をTHF(200mL)でトリチュレートすることで、結晶性生成物(59-3)(14.47g、収率25%)を得た。
【0071】
濾液を活性炭で処理し、セライトの層で濾過し、溶媒を減圧下で除去した。残渣を室温で保管したところ、結晶がいくらか形成されたので、それらの結晶を分離し、THFで洗浄し、真空乾燥器で乾燥することで、1,2,4-トリメチルイミダゾール(59-1)(4.01g、収率14%)を得た。濾液の濃縮により、異性体イミダゾール(59-1)および(59-2)の混合物(12.19g、収率43%)を得た。
【0072】
実施例11:1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(64)の調製
【化22】
【0073】
メシレート(59-3)(実施例10)(14.47g、65.7mmol)、KFSI(13.59g、62mmol)およびアセトン(100mL)の混合物をアルゴン下で撹拌し、60℃で3時間加熱した。冷却後、その混合物をTHF(100mL)で希釈し、固形物を濾別し、溶媒を減圧下で除去することで、塩(64)(17.01g、収率90%)を得た。H NMR(400MHz、DMSO-d):δ7.33(s,1H)、3.71(s,3H)、3.62(s,3H)、2.55(s,3H)、2.24(s,3H)。
【0074】
実施例12:3-エチル-1,2,4-トリメチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(60)の調製
【化23】
【0075】
イミダゾール(59-1)(実施例10)(4.00g、36.3mmol)、ブロモエタン(3.7mL、50mmol)およびトルエン(20mL)の混合物を圧力反応器に封入し、80℃で3昼夜加熱した。冷却後、その混合物をTHF(20mL)で希釈した。固形物を濾別し、THF(20mL)で洗浄し、真空乾燥器で乾燥することで、ブロミド(60-Br)(7.46g、収率94%)を得た。
【0076】
(60-Br)(7.46g、34mmol)、KFSI(7.43g、34mmol)およびアセトン(100mL)の混合物をアルゴン下で撹拌し、50℃で16時間加熱した。室温に冷却した後、固形物を濾別した。濾液を減圧下で濃縮することで、イオン液体(60)(11.00g、収率100%)を得た。H NMR(500MHz、DMSO-d):δ7.33(s,1H)、4.10(q,J=7.5Hz,2H)、3.69(s,3H)、2.61(s,3H)、2.27(s,3H)、1.26(t,J=7.5Hz,3H)。
【0077】
実施例13:1-エチル-2,3,4-トリメチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(61)の調製
【化24】
【0078】
イミダゾール(59-1および59-2)(実施例10)(12.00g、109mmol)、ブロモエタン(11.2mL、150mmol)およびトルエンの混合物をアルゴン下で撹拌し、60℃で4時間加熱した。冷却後、得られた固形物を濾別し、THFで洗浄し、アセトニトリルとTHFの混合物から再結晶することで、結晶性ブロミド(61-Br)(8.91g、収率37%)を得た。
【0079】
ブロミド(61-Br)(8.91g、40.6mmol)、KFSI(8.90g、40.6mmol)およびアセトン(100mL)の混合物をアルゴン下で撹拌し、60℃で3時間加熱した。室温に冷却した後、固形物を濾別し、溶媒を減圧下で除去することで、イオン液体(61)(9.20g、収率71%)を得た。H NMR(500MHz、DMSO-d):δ7.41(s,1H)、4.16(q,J=7.5Hz,2H)、3.61(s,3H)、2.58(s,3H)、2.25(s,3H)、1.32(t,J=7.0Hz,3H)。
【0080】
実施例14:1,3-ジエチル-2,4-ジメチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(89)の調製
【化25】
【0081】
2,4-ジメチルイミダゾール(19.23g、200mmol)、90%KOH(15.60g、250mmol)および無水DMSO(100mL)の混合物をアルゴン下、室温で3時間撹拌した。その混合物を氷水浴で冷却しながら、臭化エチル(16.4mL、220mmol)を滴下した。室温で一晩撹拌した後、その混合物を氷水(500mL)に注ぎ込み、5N NaOH(80mL)で処理し、DCM/THF(9:1,300mL×2)で抽出した。抽出物を無水NaCOで乾燥し、溶媒を減圧下で除去することで、2つの異性体モノエチル化生成物の混合物(89-0)(22.49g、収率91%)を得た。
【0082】
イミダゾール(89-0)(7.45g、60mmol)、ブロモエタン(7.46mL、100mmol)および無水トルエン(50mL)の混合物を圧力反応器に封入し、50℃で3日間加熱した。得られた結晶を分離し、エチルエーテルで洗浄し、真空乾燥器で乾燥することで、イミダゾリウムブロミド(89-Br)(11.08g、収率79%)を得た。
【0083】
イミダゾリウムブロミド(89-Br)(5.86g、25.1mmol)、KFSI(5.51g、25.1mmol)およびアセトン(75 mL)の混合物をアルゴン下で撹拌し、60°で2時間加熱した。冷却後、固形物を濾別し、溶媒を減圧下で除去した。残渣の無水THF(100mL)溶液を室温で一晩放置した後、それを濾過し、溶媒を減圧下で除去することで、1,3-ジエチル-2,4-ジメチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(89)(8.40g、収率100%)を得た。H NMR(500MHz、DMSO-d):δ7.43(s,1H)、4.10(m,4H)、2.61(s,3H)、2.28(s,3H)、1.33(t,J=7.5Hz,3H)、1.27(t,J=7.5Hz,3H)。
【0084】
実施例15:1,3-ジエチル-4,5-ジメチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(87)の調製
【化26】
【0085】
酸トラップ付きの還流冷却器を装着した二口フラスコに、4-ヒドロキシメチル-5-メチルイミダゾリウム塩酸塩(10.00g)を入れた。塩化チオニル(40mL)を一度に加えて固形物を溶解させたところ、数分以内に新たな沈殿が形成し始めた。次にその混合物を40℃で1時間加熱し、エチルエーテル(50mL)で希釈し、室温で一晩放置した。固形物を濾別し、エチルエーテル(50mL×2)で洗浄し、真空乾燥器で乾燥することで、イミダゾリウム塩酸塩(82-Cl)(11.11g)を得た。
【0086】
イミダゾリウム塩酸塩(82-Cl)(11.00g、65.8mmol)、10%Pd(C)(2g)およびメタノール(200mL)の混合物を、60psiのHで、16時間水素化した。セライトパッドを使って固形物を濾別し、溶媒を減圧下で除去することで、4,5-ジメチルイミダゾリウム塩酸塩(82)(8.02g、収率92%)を得た。
【0087】
4,5-ジメチルイミダゾリウム塩酸塩(82)(8.00g、60.3mmol)の無水DMSO(100mL)溶液を、固形の90%KOH(11.20g、180mmol)およびブロモエタン(4.9mL、65mmol)で処理した。得られた混合物をアルゴン下で撹拌し、40℃で16時間加熱した。反応混合物を氷水(500mL)に注ぎ込み、5N NaOHで処理し、DCM/THF(9:1、200mL×2)で抽出した。抽出物を水(100mL)で洗浄し、NaCOで乾燥し、溶媒を減圧下で除去することで、1-エチル-4,5-ジメチルイミダゾール(87-0)(5.43g、収率73%)を得た。
【0088】
1-エチル-4,5-ジメチルイミダゾール(87-0)(5.40g、43.5mmol)、ブロモエタン(4.5mL、60mmol)およびトルエン(30mL)の混合物を圧力反応器に入れ、60℃で20時間加熱した。冷却後、下層をデカンテーションによって分離し、アセトン(200mL)から再結晶することで、イミダゾリウムブロミド(87-Br)(6.41g、収率63%)を得た。
【0089】
イミダゾリウムブロミド(87-Br)(6.38g、27.4mmol)、KFSI(6.00g、27.4mmol)およびアセトン(100mL)の混合物を、アルゴン下で撹拌し、60℃で2時間加熱した。室温に冷却した後、固形物を濾別し、溶媒を減圧下で除去した。残渣をTHF(100mL)に溶解し、室温で一晩放置した。少量の固形物がフラスコの底に見いだされた。溶液を濾過し、溶媒を減圧下で除去することで、1,3-ジエチル-4,5-ジメチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(87)(9.10g、収率99%)を得た。H NMR(500MHz、DMSO-d):δ9.01(s,1H)、4.09(q,J=7.5Hz,4H)、2.24(s,6H)、1.38(t,J=7.4Hz,6H)。
【0090】
実施例16:2-エチル-1,3,4-トリメチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(75)の調製
【化27】
【0091】
ヨードメタン(15.6mL、250mmol)の2-ブタノン(50mL)溶液を、2-エチル-4-メチルイミダゾール(11.47g、100mmol)の2-ブタノン(50mL)溶液に懸濁した炭酸カリウム(41.40g、300mmol)に滴下し、アルゴン下で激しく撹拌した。添加(3時間)後に、その混合物を還流冷却器の下、60℃でさらに3時間、加熱した。固形物を温かい反応混合物から濾別し、2-ブタノン(100mL)で洗浄した。合わせた濾液および洗液を室温で一晩放置することでヨージド(75-I)の結晶を生成させ、それを濾別し、真空乾燥器で乾燥した。濾液の濃縮によってヨージド(75-I)のセカンドクロップを得た。沸騰2-ブタノン(200mL)でヨウ化カリウム固形物を洗浄することで、ヨージド(75-I)の追加クロップが2回得られて、計12.89g(収率48%)になった。
【0092】
ヨージド(75-I)(6.34g、23.8mmol)、KFSI(5.22g、23.8mmol)および2-ブタノン(100mL)の混合物をアルゴン下で撹拌し、60℃で4時間加熱した。固形物を濾別した。濾液を酢酸エチル(400mL)で希釈し、1%チオ硫酸ナトリウム(100mL)で洗浄した後、水(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下で除去することで、イオン液体(75)を得た。H NMR(500MHz、DMSO-d):δ7.33(s,1H)、3.74(s,3H)、3.66(s,3H)、3.30(q,J=7.5Hz,2H)、2.24(s,3H)、1.16(t,J=7.5Hz,3H)。
【0093】
実施例17:1,2,3-トリエチル-4-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(84)の調製
【化28】
【0094】
2-エチル-4-メチルイミダゾール(11.02g、100mmol)、炭酸カリウム(13.80g、100mmol)、ブロモエタン(11.2mL、150mmol)およびDMF(100mL)の混合物をアルゴン下で撹拌し、50℃で40時間加熱した。その混合物を酢酸エチル(400mL)で希釈し、15分間撹拌し、固形物を濾別した。その溶液を水(100mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下で除去することで、生成物(78)(2.62g、収率19%)を、2つの異性体の混合物として得た。
【0095】
イミダゾール(78)(2.60g、19.8mmol)の乾燥トルエン(20mL)溶液をブロモエタン(2mL、27mmol)で処理し、得られた混合物を圧力反応器中、80℃で20時間加熱した。室温に冷却した後、反応器を開放し、得られた結晶を濾別し、トルエンで洗浄し、真空乾燥器で乾燥することで、イミダゾリウムブロミド(84-Br)(3.11g、収率64%)を得た。
【0096】
イミダゾリウムブロミド(84-Br)(3.10g、12.5mmol)、KFSI(2.75g、12.5mmol)およびアセトン(75mL)の混合物をアルゴン下で撹拌し、60℃で2時間加熱した。冷却後、固形物を濾別し、溶媒を減圧下で除去した。残渣を乾燥THFに溶解し、得られた溶液を室温で2時間放置した。フラスコの底に少量の沈殿が見られた。その溶液を濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させることで、1,2,3-トリエチル-4-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(84)(4.38g、収率100%)を得た。H NMR(500MHz、DMSO-d):δ7.49(s,1H)、4.13(m,4H)、3.03(q,J=7.5Hz,2H)、2.29(s,3H)、1.37(t,J=7.5Hz,3H)、1.30(t,J=7.5Hz,3H)、1.19(t,J=7.5Hz,3H)。
【0097】
実施例18:1-エチル-2,3,4,5-テトラメチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(57)の調製
【化29】
【0098】
1,2,4,5-テトラメチルイミダゾール(12.42g、100mmol)、ブロモエタン(11.2mL、150mmol)およびトルエン(50mL)の混合物を圧力反応器に封入し、60℃で2時間加熱してから、80℃で2時間加熱し、最後に100℃で16時間加熱した。冷却後、固形物を濾別し、THFで洗浄し、アセトニトリル/アセトンから再結晶することで、生成物(57-Br)(13.70g、収率59%)を得た。
【0099】
生成物(57-Br)(13.70g、59mmol)、KFSI(12.06g、55mmol)およびアセトン(100mL)の混合物をアルゴン下で撹拌し、60℃で3時間加熱した。冷却後、固形物を濾別し、溶媒を減圧下で除去することで、イオン液体(57)(19.50g、収率58%)を得た。H NMR(400MHz、DMSO-d):δ4.10(q,J=7.3Hz,2H)、3.60(s,3H)、2.60(s,3H)、2.24(s,3H)、2.21(s,3H)。
【0100】
実施例19:腐食試験
5μlに設定したマイクロピペットを使って、リファレンスCE-1(1-エチル-3-メチル-イミダゾリウム、Sigma Aldrich、ミズーリ州セントルイス)の第1アリコート試料および第2アリコート試料ならびに表2において特定する各実験例の第1アリコート試料および第2アリコート試料を、50nmアルミニウムフィルム(東レフィルム加工、日本国東京)上に、間隔をあけて置いた。調製済みフィルムを、85℃および相対湿度(RH)85%に設定したベンチトップ型恒温恒湿器(ESPEC North America、米国ミシガン州ハドソンビル、Criterion Temperature & Humidity Benchtop Model BTL-433)に入れ、選択された時間で(最初は1時間ごと)定期的にチェックした。色紙および/または光源を調整済みフィルムの背後に置き、各アリコート付着物のスポットにおける全穿孔のしるしについて、目視検査した。全穿孔が観察された場合は、その時間を記録し、試料を腐食性物品と表示した。結果を下記表2に示す。
【0101】
【表2】
【0102】
実施例20:ポリマー溶液の調製
窒素ガス注入口を装備する冷却器に取付けられた撹拌フラスコに、95質量部のn-ブチルアクリレート、5質量部のアクリル酸および125質量部の酢酸エチルを投入した。反応系から酸素を除去するために約1時間にわたって窒素ガスを導入しながら、その混合物を室温で撹拌した。0.2質量部のアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を加え(これは、その結果生じる混合物の温度を約63°±2℃まで上昇させた)、重合のために約5~6時間混合/撹拌した。反応停止後に、約30%の固形分を有するアクリルポリマー含有溶液が得られた。このポリマー溶液(P1)の見掛けの分子量は約800,000と決定され、約-50℃のガラス転移温度を有した。
【0103】
実施例21:粘着シートの調製
実施例20に記載のポリマー溶液を表3において特定する組成物のそれぞれと混合して電気的にデボンディング可能な粘着剤組成物を得ることによって、粘着シートを調製した。調製された組成物を表面処理されたPETセパレータ(剥離ライナー)(MR38、三菱樹脂製、日本)上に被覆/沈着させて、厚さ約150μmの粘着複合材層を形成させた。次に、その塗膜を130℃で約3分間加熱乾燥してから、50℃で24時間エージングして、約50μmの厚さを有する粘着剤層/シートを得ることで、粘着剤層/シートを得た。PET剥離ライナーを塗膜と整列させてから、50℃で約24時間エージングすることで、約50μmの厚さを有する粘着剤層/シートを得た。
【0104】
実施例22:粘着剤/ガラス基材試験試料の調製
市販の洗浄済みスライドガラス(3×1インチ)を粘着剤コーティングまたは粘着剤層用の基材として使用した。スライドガラス基材をアセトン(Sigma Aldrich、米国ミズーリ州セントルイス)およびイソプロピルアルコール(Aldrich)でさらに洗浄してから、乾燥した。スラリーの粘度を調整するために適切な量の酢酸エチルを加えてから、膜厚調整可能なブレードコーター(BYK Bardnerフィルムキャスティングナイフ)で、洗浄済みガラス基材上にスラリーをキャストした。次に、そのキャストテープを、予熱した乾燥器中、130℃で約3分間硬化させることで、基材上に乾燥コーティングが得られた。PET剥離ライナーを被覆ガラスと整列させて、硬化した粘着剤被覆ガラス基材に適用した。次に、その剥離ライナー重層粘着剤被覆ガラス基材を約50℃で約24時間エージング/乾燥し、必要になるまで周囲条件下で保管した。
【0105】
ナノAl塗層の適用直前に、前述の剥離ライナーを取り除いた。上述のアルミニウム(50nm厚アルミニウム被覆PETフィルム(東レフィルム加工)を、ガラス基材の粘着剤被覆表面に適用した。
【0106】
調製済みフィルムを、85℃および相対湿度85%に設定したベンチトップ型恒温恒湿器(ESPEC North America、米国ミシガン州ハドソンビル、Criterion Temperature & Humidity Benchtop Model BTL-433)に入れ、選択された時間で(最初は1時間ごと)定期的にチェックした。粘着剤とアルミニウム箔の間の界面を、所定の規則的時間間隔で、例えば金属電極の腐食分解、選択粘着性粘着剤への金属の溶解および/または金属電極の点食について調べた。腐食性が観察された場合は、その時間を記録し、その試料を腐食性物品と表示した。結果を下記表3に掲載する。
【0107】
【表3】
【0108】
実施例23:粘着剤組成物の電気的デボンディング試験
粘着剤組成物の電気的デボンディングまたは電気的剥離に関する試験は、JP2015-228951および/またはJP2015-204998に記載されているように、そしてまた図3の装置300に示されているように行った。
【0109】
図3に示すように、粘着材料303(実施例15の組成物(87)を含む)を、幅25mm、長さ100mmの伝導性基材301上に被覆した。その結果得られた基材301を、幅が10mm~25mmで基材301より100mm長い別の屈曲性伝導層302(例えばアルミニウム箔および/または金属被覆されたPETなどのプラスチックフィルム)上に積層した。積層は2kgローラーおよびロールプレスによる転造圧力の適用によって行った。
【0110】
ボンディング/デボンディング試験機(Mark-10、米国ニューヨーク州コペーグ、モデルESM303電動引張/圧縮スタンド)にはMark-10フォースゲージ(シリーズ7-1000)が装着され、下側クランプおよび上側クランプが設けられていた。伝導性基材301を下側クランプに固定してから、電源304(Proteck DC Power Supply 3006B)の正極に電気的に接続した。屈曲性伝導層302を同じDC電源の負極と接続された上側クランプに固定した。この電源は0~100VDCの出力範囲を有した。移動/引剥速度は300mm/分に設定した。スイッチ305が存在し、これを閉じると、基材301と層302との間に電位が印加される。
【0111】
動的試験では、引剥または分離の開始の数秒後に電圧を印加し、時刻とフォースゲージの引剥強度の読みとを、データ取得システム(Mark-10 MESURgauge Plus)によって記録した。図4は、実施例15の組成物(87)が5wt.%の濃度で添加された粘着材料に10VDCを印加した場合の180度引剥強度発現を示している。
【0112】
静的デボンディング試験では、試料を試験機上に固定し、同じように電源に接続した。初期180度引剥を同じ引剥速度で測定した。次に引剥を中止した。DC電圧(例えば10VCD)を同じ時間(例えば10秒間)印加した。次に同じ300mm/分の引剥速度で引剥強度を測定した。実施例15の組成物(87)を含む同じ粘着剤試料の場合、初期引剥強度は3.0N/cmであり、10VDCを10秒間印加した後の残存粘着引剥強度は約0.5N/cmであった。
【0113】
開示したプロセスおよび/または方法に関して、それらのプロセスおよび方法において実行される機能は、文脈によって示されうるとおり、異なる順序で実装することができる。さらにまた、概説した工程および操作は例として提供されているに過ぎず、工程および操作の一部は随意であるか、より少ない工程および操作に統合されるか、追加の工程および操作に拡張することができる。
【0114】
本開示は、他のさまざまな構成要素内に含まれたまたは他のさまざまな構成要素と接続されたさまざまな構成要素を例証する場合がある。描写されたそのようなアーキテクチャは単なる例示であって、同じ機能性または類似する機能性を達成する他の多くのアーキテクチャを実装することができる。
【0115】
本開示および添付の特許請求の範囲(例えば添付の特許請求の範囲の主要部)において使用される用語は、一般に、「非限定的な」用語であるものとする(例えば「~を含む」と言う用語は「~を含むが、それに限定されるわけではない」と解釈されるべきであり、「~を有する」という用語は「少なくとも~を有する」と解釈されるべきであり、「~が挙げられる」という用語は「~が挙げられるが、それに限定されるわけではない」と解釈されるべきであるなど)。また、具体的な要素の数が導入される場合、これは、文脈によって示されうるとおり、少なくとも叙述された数を意味すると解釈することができる(例えば他の修飾語を伴わない「2つの叙述」という裸の叙述は、少なくとも2つの叙述または2つ以上の叙述を意味する)。本開示において使用される場合、2つ以上の代替的用語を提示する離接語および/または離接句はいずれも、それらの用語のうちの一つ、それらの用語のうちのいずれか、または両方の用語を含む可能性を想定していると理解されるべきである。例えば「AまたはB」という句は、「A」または「B」または「AおよびB」の可能性を含むと理解されるであろう。
【0116】
使用される用語および単語は書誌学的な意味に限定されるのではなく、本開示の明瞭で一貫した理解を可能にするために使用されるに過ぎない。単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上そうでないことが明白である場合を除き、複数の指示対象を含むと、理解されるべきである。したがって、例えば「構成要素表面」への言及は、そのような表面のうちの1つ以上への言及を含む。
【0117】
「実質的に」という用語は、叙述された特質、パラメータまたは値が厳密に達成される必要はなく、逸脱または変動が、例えば公差、測定誤差、測定精度限界および当業者に知られる他の因子を含めて、それらの特質によって提供されることが意図されている効果を排除しない量で、存在しうることを意味する。
【0118】
本開示の諸態様は、本発明の要旨または欠くことのできない特質から逸脱することなく、他の形態でも体現しうる。記載された態様は、あらゆる点で制限ではなく例証であると見なされるべきである。請求項に係る主題は、上述の説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示される。請求項の意味および等価な範囲内に入る変化はすべて、それらの範囲内に包含されるべきである。
図1
図2
図3
図4