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特許7082186プリドピジンによる筋萎縮性側索硬化症の治療方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】プリドピジンによる筋萎縮性側索硬化症の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4465 20060101AFI20220531BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20220531BHJP
   A61K 31/426 20060101ALI20220531BHJP
   A61K 31/4152 20060101ALI20220531BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20220531BHJP
   A61K 31/435 20060101ALI20220531BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
A61K31/4465
A61P21/02
A61K31/426
A61K31/4152
A61K31/485
A61K31/435
A61P43/00 121
A61P43/00 105
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020508347
(86)(22)【出願日】2018-08-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-29
(86)【国際出願番号】 US2018046481
(87)【国際公開番号】W WO2019036358
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-03-10
(31)【優先権主張番号】62/545,315
(32)【優先日】2017-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519062797
【氏名又は名称】プリレニア ニューロセラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲヴァ、ミカル
(72)【発明者】
【氏名】ローファー、ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイデン、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ザック、ネタ
【審査官】一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/138135(WO,A1)
【文献】特表2005-534642(JP,A)
【文献】国際公開第2014/052933(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/052935(WO,A2)
【文献】HANDBOOK OF EXPERIMENTAL PHARMACOLOGY,2017年03月09日,Vol.244,p.81-108
【文献】Human Molecular Genetics,2016年,Vol.25, No.18,p.3975-3987
【文献】Redox Report,2016年,Vol.21, No.3,p.104-112
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹患した対象を治療するための、有効な所定量のプリドピジンを含む組成物。
【請求項2】
前記ALSは、散発性ALSである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記プリドピジンの前記所定量は、前記対象における前記ALSの症状の進行を抑制または低減するのに有効な量である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記症状は、筋肉硬直、筋力低下、筋消耗、筋痙攣、発話困難、嚥下困難、呼吸困難、咀嚼困難、歩行困難、線維束性収縮、及び/または姿勢悪化を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記所定量の前記プリドピジンは、運動ニューロンにおけるBDNF軸索輸送の改善、運動ニューロンにおけるERK活性化の改善、NMJの形成及び保存の改善、NMJ構造の保存、NMJ機能の保存、筋組織の神経支配比の改善、運動ニューロン軸索の成長の改善、軸索変性の低減、運動ニューロン軸索の変性の低減、筋細胞の生存の改善、筋線維の直径及び機能の改善、SOD1凝集の低減、仮性球麻痺疾患の進行の低減、筋線維消耗の進行の低減、及び/または、ALSに罹患した対象における筋収縮の改善、において有効である、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記所定量の前記プリドピジンは、毎日1回またはそれ以上の頻度で投与される、請求項1~5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記所定量の前記プリドピジンは、毎日2回投与される、請求項1~6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記所定量の前記プリドピジンは、経口投与される、請求項1~7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記プリドピジンの前記所定量は、10~90mg/日である、請求項1~8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記プリドピジンは、プリドピジン塩酸塩である、請求項1~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記対象は、ヒト対象である、請求項1~10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
治療有効量の第2の化合物をさらに含み、
前記第2の化合物は、リルゾール、エダラボン、またはデキストロメトルファン/キニジンから選択される、請求項1~11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
前記第2の化合物は、前記プリドピジンを前記対象に投与する前に、前記対象に投与される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記プリドピジンは、前記第2の化合物を前記対象に投与する前に、前記対象に投与される、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記プリドピジンは、前記第2の化合物に対して補助的に投与される、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
前記第2の化合物は、前記プリドピジンに対して補助的に投与される、請求項12に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2017年8月14日出願の米国特許仮出願第62/545、315号に基づく優先権を主張するものである。上記出願の開示内容は、参照により本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
筋萎縮性側索硬化症
【0003】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動皮質、脳幹及び脊髄における運動ニューロンの進行性消失を特徴とする深刻な変性疾患である(Peters、2015)。この急性致死性疾患は、局所的に始まり、その後全身に広がって、四肢筋、呼吸筋及び延髄筋の筋力低下をもたらす。死亡の直前には、四肢及び呼吸の機能がほぼ完全に失われるだけでなく、咀嚼、嚥下及び発話の能力も失われる。
【0004】
ALSはまれな疾患であり、平均発生率はヨーロッパでは2.8人/10万人、北アメリカでは1.8人/10万人、平均有病率はヨーロッパでは5.40人/10万人、北アメリカでは3.40人/10万人である(Bozzoni、2016)。
【0005】
ALS症例の約10%は家族性(FALS)に分類されるが、残りの90%は、散発性(SALS)であって地域社会でランダムに発生するように見える(Riva、2016)。患者の60%は発症後3年以内に通常は呼吸不全により死亡し、約10%は10年以上生存する(Zou、2016)。リルゾールによって、疾患の進行速度を遅くし、生存期間を2~3ヶ月間延長することはできるもの、現在、ALSの分野における疾患修飾療法は存在しない。
【0006】
ALSの主な臨床症状としては、筋力低下及び萎縮、線維束性収縮及び痙攣、痙性筋緊張亢進、反射亢進などが挙げられる。一部の患者では、構音障害、嚥下障害、及び呼吸筋力低下も見られる。非運動症状としては、行動障害、遂行障害、及び前頭側頭型認知症などが挙げられる。
【0007】
ALSの神経病理学的特徴としては、筋萎縮、前角細胞の消失、及び脊髄側索の硬化が挙げられる(Martel、2016)。また、星状膠細胞とミクログリアの活性化として定義される神経膠症も、ALSの特徴である。
【0008】
プリドピジン
【0009】
プリドピジン(以前は、ACR16、Huntexil(登録商標)として知られていた)は、ハンチントン病患者の治療のために開発されたユニークな化合物である。プリドピジンの化学名は4-(3-(メチルスルホニル)フェニル)-1-プロピルピペリジンであり、その化学物質登録番号はCAS346688-38-8(CSID:7971505、2016)である。プリドピジン塩酸塩の化学物質登録番号は、882737-42-0(CSID:25948790、2016)である。プリドピジン及びその薬学的に許容される塩の合成方法は、米国特許第7、923、459号及びPCT出願公開第WO2017/015609号に開示されている。また、米国特許第RE46、117号には、様々な疾患及び障害の治療のためのプリドピジンが開示されている。
【0010】
プリドピジンは、活動亢進を抑制するか、または機能低下を改善することによって、運動活性を調節することが分かっている。プリドピジンはまた、神経保護特性を示す。プリドピジンの神経保護特性は、シグマ-1受容体(S1R、結合IC50=約70~80nM)に対するプリドピジンの高い親和性に起因することが示唆されている(Sahlholm、2013)。一方、プリドピジンの運動活性調節は、主に、ドーパミンD2受容体(D2R)(結合IC50=約10μM)に対するプリドピジンの低親和性拮抗作用によってもたらされることが示唆されている(Ponten、2010;Sahlholm、2015)。プリドピジンは、マイクロモル範囲では、他の受容体に対しては、低~中程度の親和性を示す。
【0011】
S1Rは、脳の細胞分化、神経可塑性、神経保護及び認知機能に関与する小胞体(ER)シャペロンタンパク質である。近年、ラット線条体のトランスクリプトーム分析により、プリドピジン治療が、BDNF、ドーパミン受容体1(D1R)、グルココルチコイド受容体(GR)、及びセリン-トレオニンキナーゼプロテインキナーゼB(Akt)/ホスホイノシチド3キナーゼ(PI3K)経路の発現を活性化することが分かった。プリドピジンは、神経芽細胞腫細胞株中で、神経保護の脳由来神経栄養因子(BDNF)の分泌をS1R依存的に向上させることが分かった(Geva、2016)、また、プリドピジンは、S1Rの活性化によって、脊椎障害及び異常カルシウムシグナル伝達をレスキューすることが分かった(Ryskamp、2017)。
【0012】
PCT国際特許出願公開第WO2016/138135号には、とりわけ、家族性成人筋萎縮性側索硬化症(家族性成人ALS)及び若年性筋萎縮性側索硬化症(若年性ALS)を治療するためのS1Rアゴニストの使用が開示されている。
【0013】
ALS、特に散発性ALSに有効な治療法に対するニーズが依然として存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、少なくとも部分的には、プリドピジン治療が、軸索輸送障害を改善する、SOD1障害筋細胞共培養物においてERK活性化を改善して神経筋接合部(NMJ)の活性を回復させる、脊髄における変異型SOD1凝集体を減少させる、並びに、SOD1障害マウスにおいてNMJの破壊及びその後の筋消耗を減少させる、という予期しない実験的発見に基づいている。
【0015】
本発明は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹患した対象を治療する方法であって、対象を治療するのに有効な所定量のプリドピジンを対象に定期的に投与するステップを含む方法を提供する。
【0016】
本発明はまた、ALSに罹患したヒト対象を治療するのに使用されるプリドピジンを提供する。
【0017】
本発明はまた、ALSの治療方法であって、ALSを治療するのに有効な所定量のプリドピジンを、治療を必要とする対象に定期的に投与するステップを含む方法を提供する。
【0018】
いくつかの実施形態では、対象は、散発性ALSに罹患している。
【0019】
本発明はまた、ALSに罹患したヒト対象を治療するための医薬組成物であって、治療有効量のプリドピジンを含有する医薬組成物を提供する。
【0020】
本発明はまた、ALSの治療用の薬剤の製造のための、プリドピジンの使用を提供する。
【0021】
本発明はまた、パッケージであって、プリドピジンと、任意選択で、ALSを治療するためのプリドピジンの使用に関する説明書とを備えたパッケージを提供する。
【0022】
一実施形態では、プリドピジンは、ALSに罹患した対象に、単剤療法として投与される。他の実施形態では、ALSに罹患した対象は、プリドピジンと、1以上の追加薬剤とにより治療される。
【0023】
本発明はまた、ALSに罹患した対象を治療する方法であって、所定量のリルゾールと、所定量のプリドピジンとを対象に定期的に投与するステップを含む方法を提供する。
【0024】
本発明はまた、ALSに罹患した対象を治療する方法であって、所定量のエダラボンと、所定量のプリドピジンとを対象に定期的に投与するステップを含む方法を提供する。
【0025】
本発明はまた、ALSに罹患した対象を治療する方法であって、所定量のデキストロメトルファン/キニジンと、所定量のプリドピジンとを対象に定期的に投与するステップを含む方法を提供する。
【0026】
本発明はまた、パッケージであって、(a)リルゾール、エダラボン、またはデキストロメトルファン/キニジンから選択される薬剤を所定の量で含有する第1の医薬組成物と、(b)所定量のプリドピジン及び薬学的に許容される担体を含有する第2の医薬組成物とを備えたパッケージを提供する。別の実施形態では、このパッケージは、(c)ALSに罹患した対象を治療するための第1の医薬組成物と第2の医薬組成物との併用使用に関する説明書をさらに備える。
【0027】
いくつかの実施形態では、第2の医薬組成物は、リルゾール、エダラボン、デキストロメトルファンとキニジンとの組み合わせ、または、ラキニモドである。
【0028】
本発明はまた、ALSに罹患した対象の治療において、リルゾールへの追加療法として使用するか、またはリルゾールと組み合わせて使用するためのプリドピジンを提供する。本発明はまた、ALSに罹患した対象の治療において、エダラボンへの追加療法として使用するか、またはエダラボンと組み合わせて使用するためのプリドピジンを提供する。本発明はまた、ALSに罹患した対象の治療において、デキストロメトルファン/キニジンへの追加療法として使用するか、またはデキストロメトルファン/キニジンと組み合わせて使用するためのプリドピジンが提供される。
【0029】
本発明はまた、所定量のリルゾール、エダラボン、またはデキストロメトルファン/キニジンと、所定量のプリドピジンと、少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを含有する医薬組成物を提供する。
本発明はまた、ALSに罹患した対象を治療するのに用いられる製剤の製造のための、
(a)所定量のリルゾール、エダラボン、またはデキストロメトルファン/キニジンと、
(b)所定量のプリドピジンとの使用であって、
所定量のリルゾール、エダラボン、またはデキストロメトルファン/キニジンと、所定量のプリドピジンとが同時にまたは同時期に投与される、使用を提供する。
【0030】
本発明はまた、運動障害に罹患した対象を治療するのに使用される医薬組成物であって、所定量のリルゾール、エダラボン、またはデキストロメトルファン/キニジンを含有しており、所定量のプリドピジンと組み合わせて対象に定期的に投与される医薬組成物を提供する。
【0031】
本発明はまた、運動障害に罹患した対象を治療するのに使用される医薬組成物であって、所定量のプリドピジンを含有しており、所定量のリルゾール、エダラボン、またはデキストロメトルファン/キニジンと組み合わせて対象に定期的に投与される医薬組成物を提供する。
【0032】
本発明はまた、運動障害に罹患した対象を治療するのに使用されるリルゾール及びプリドピジンを提供する。このリルゾール及びプリドピジンは、対象に対して、同時にまたは同時期に投与される。
【0033】
本発明はまた、ALSに罹患した対象を治療するのに同時にまたは同時期に使用される、所定量のリルゾールと、所定量のプリドピジンとを含有する製品(医薬品)を提供する。
【0034】
別の態様では、本発明は、ALSの治療、予防または軽減のための薬剤として使用される、プリドピジンと、リルゾール、エダラボン、またはデキストロメトルファン/キニジンとの組み合わせを提供する。
【0035】
別の態様では、本発明は、薬剤として使用される、プリドピジンと、リルゾール、エダラボン、ラキニモド、またはデキストロメトルファン/キニジンとの組み合わせを提供する。
【0036】
別の態様では、本発明は、医薬組成物であって、治療有効量のプリドピジンと、治療有効量のリルゾール、エダラボン、ラキニモド、またはデキストロメトルファン/キニジンと、1以上のアジュバント、賦形剤、担体及び/または希釈剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0037】
別の態様では、本発明は、生きている動物(ヒトを含む)のALSを治療する方法であって、リルゾール、エダラボン、ラキニモド、またはデキストロメトルファン/キニジンとの併用療法において、治療有効量のプリドピジンを、治療を必要とする動物に投与するステップを含む方法を提供する。
【0038】
別の態様では、本発明は、パーツキット(a kit of parts)であって、
(A)プリドピジンを含有する単位用量製剤と、
(B)リルゾール、エダラボン、またはデキストロメトルファン/キニジンを含有する単位用量製剤とを含む少なくとも2つの別個の単位用量製剤を備えたパーツキットを提供する。
このパーツキットは、任意選択で、(C):(A)のプリドピジンを含有する単位用量製剤と(B)のリルゾール、エダラボン、またはデキストロメトルファン/キニジンを含有する単位用量製剤とを、治療を必要とする対象に同時にまたは同時期に投与することに関する説明書をさらに備える。
【0039】
別の態様では、本発明は、ALSに罹患した対象を治療する方法であって、治療有効量のプリドピジンと、治療有効量のリルゾール、エダラボン、ラキニモド、またはデキストロメトルファン/キニジンとの組み合わせを対象に投与するステップを含む方法を提供する。上記の各治療有効量は、上記の組み合わせがヒト対象に摂取されたときに、ヒト対象を治療するのに有効な量である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1A図1A~1Cは軸索輸送分析を示す。図1A:軸索輸送分析の実験ワークフロー。
図1B】運動ニューロンにおける軸索輸送を追跡するための実験系の概略図(MN)
図1C】Qdot-BDNF(明るいオレンジ色)軸索輸送のタイムラプス画像。
図2A図2A~2Bは、軸索に沿ったQdot-BDNFの瞬間速度値及び粒子停止カウントに対するプリドピジンの効果を示すグラフである(LM(同腹)=WT(野生型))。図2A:WT(青色)、SOD1G93A(赤色)またはシグマ-1受容体ノックアウト(S1R-/-)(灰色)のMNにおける、Qdot-BDNF粒子の瞬間速度値(μm/秒)に対するプリドピジンの効果。
図2B】粒子の停止カウント(Qdot-BDNFの1秒当たりのカウントされた停止数)に対するプリドピジンの効果。
図3】筋肉の神経支配と神経筋接合部(NMJ)機能とを測定する神経筋共培養アッセイの実験手順の概略図。脊髄外植片は近位コンパートメントで培養され、初代筋細胞は遠位コンパートメントで培養されている。
図4】筋コンパートメントに侵入した軸索を有する溝の数を測定している、WT及びSOD1G93Aの軸索成長に対するプリドピジンの効果を示すグラフ。
図5A図5A~5Bはマイクロ流体コンパートメント(MFC)共培養アッセイの結果を示す。図5A:上パネル:軸索で接続された遠位コンパートメントの筋細胞の位相画像(緑色の矢印)。下パネル:筋細胞の高倍率画像:MN接触点。
図5B】筋肉収縮の経時的な強度測定から抽出された筋肉収縮トレース。
図6】WT及びSOD1G93A筋細胞の神経支配率に対するプリドピジンの効果を示すグラフ。
図7A図7A~7BはMN‐筋細胞共培養における収縮筋細胞のレベルを示すグラフである。図7A:腹側脊髄(WTまたはSOD1G93A)切片と初代筋細胞(SOD1G93AまたはLM対照)との共培養における収縮筋芽細胞の割合。
図7B】WTまたはSOD1G93Aの筋肉組織の神経筋接合部(NMJ)及びWTまたはS1R-/-マウスの運動ニューロンに対するプリドピジンの効果。
図8A図8A~8BはERKレベルに対するプリドピジンの効果を示す。図8A:WT、SOD1G93A、及びS1R-/-MNs培養抽出物からのウエスタンブロットで示される、総ERK(tERK)及びリン酸化ERK(pERK)レベルに対するプリドピジンの効果。
図8B】tERK/pERKで測定したERK活性化のプリドピジンの効果の定量化。
図9A図9A~9CはSOD1凝集体に対するプリドピジンの効果を示す。図9A:プリドピジンで処理した、または処理していない、WT及びSOD1G93A脊髄の変異体SOD1凝集体を標識するNC500で蛍光標識された脊髄の可視化及び定量化。
図9B】灰白質で特定された面積あたりの凝集体の数の定量分析。
図9C】白質で特定された面積あたりの凝集体の数の定量分析。
図10A図10A~10Bは筋肉組織に対するプリドピジンの効果を示す。図10A:プリドピジンで処理した、または処理していない、WTまたはSOD1G93Aマウスの腓腹筋のH&E染色断面の代表的な画像。
図10B】筋肉繊維の消耗に対するプリドピジンの効果の評価:筋肉繊維の直径に対するプリドピジンの効果の定量分析。
図11A図11A~11BはNMJに対するプリドピジンの効果を示す。図11A:インビボでのプリドピジンのNMJ保存効果。
図11B】神経支配されたNMJの割合に対するプリドピジンの効果の定量分析。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹患した対象を治療する方法であって、対象を治療するのに有効な所定量のプリドピジンを対象に定期的に投与するステップを含む方法を提供する。
【0042】
本発明の一実施形態では、ALSは、散発性ALSである。
【0043】
本発明の一実施形態では、ALSは、家族性ALS(FALS)である。いくつかの実施形態では、ALSは、若年性ALS(JALS)である。
【0044】
いくつかの実施形態では、ALSは、FALSではない。いくつかの実施形態では、ALSは、若年性ALS(JALS)ではない。
【0045】
本発明の一実施形態では、ALSのタイプは、古典型、延髄、フレイルアーム、フレイルレッグ、錐体及び呼吸ALS、進行性筋萎縮症、原発性側索硬化症、または進行性球麻痺である。
【0046】
本発明の一実施形態では、対象は、ALS病因を引き起こすか、またはALS病因に寄与する遺伝子の突然変異体バージョンを保有している。いくつかの実施形態では、遺伝子の突然変異体バージョンは、スーパーオキシドディスムターゼ1(SOD1)、TDP-43をコードするTAR DNA結合タンパク質(TARDBP)、fused in sarcoma(FUS)、p62(SQSTM1)、ubiliquin-2(UBQLN2)、TANK結合キナーゼ1(TBK1)、プロフィリン1(PFN1)、VCPまたはp97(VCP)、アンジオゲニン(ANG)、オプチニューリン(OPTN)、C9orf72、シグマ-1受容体(S1R)、チューブリンアルファ-4A(TUBA4A)、ダイナクチン(DCTN1)、hnRNPA1(HNRNPA1)、マトリン3(MATR3遺伝子)、Coiled-coil-helix-coiled-coil-helix domain containing 10(CHCHD10)遺伝子、及びそれらの任意の組み合わせからなる遺伝子群から選択される。
【0047】
本発明の一実施形態では、所定量のプリドピジンは、対象におけるALSの症状の進行の阻害または低減において有効である。
【0048】
本発明の一実施形態では、ALSの症状は、ALSの臨床症状である。
【0049】
本発明の一実施形態では、ALSの症状は、筋力低下及び萎縮、筋収縮及び痙攣、痙性筋緊張亢進、反射亢進、構音障害、嚥下障害及び呼吸筋力低下、行動障害、遂行障害、または前頭側頭型認知症である。
【0050】
本発明の一実施形態では、ALSの症状は、神経病理学的症状である。
【0051】
いくつかの実施形態では、症状は、球麻痺または仮性球麻痺(PBA)である。
【0052】
本発明の一実施形態では、ALSの症状は、筋萎縮、運動ニューロンの喪失、前角細胞の喪失、脊髄外側柱の硬化症、または神経膠症である。
【0053】
一実施形態では、ALSの症状は、所定の割合の(a)肺機能の低下、(b)機能障害の低下、または、(c)下肢の能力スコアの低下である。本発明の一実施形態では、プリドピジンの量は、対象の生存を引き起こすか、または対象の神経保護を引き起こすのに有効である。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態では、プリドピジンによる対象の治療は、以下の分野のうちの1以上において、対象における低下の軽減、または改善をもたらす。
(1)スピーチ、(2)唾液分泌、(3)嚥下、(4)手で書くこと、(5)食物のカット及び道具の取り扱い(胃瘻造設の有無にかかわらず)、(6)着衣及び衛生、(7)寝返り及び寝具の調整、(8)歩行、(9)階段を上ること、(10)呼吸、(11)呼吸困難、(12)起座呼吸、(13)機能不全。
【0055】
いくつかの実施形態では、患者は、例えば筋萎縮性側索硬化症機能評価尺度(ALSFRS)または修正ALSFRS(ALSFRS-R)などの評価尺度を使用して、上記分野の変化についてモニタリングされ、患者の機能変化が経時的にモニタリングされる。
【0056】
いくつかの実施形態では、患者における仮性球麻痺(PBA)がモニタリングされる。いくつかの実施形態では、PBAを経験している対象における感情的爆発の重症度及び/または頻度は、プリドピジン治療によって低減される。
【0057】
本発明の一実施形態では、プリドピジンは、毎日投与される。
【0058】
本発明の一実施形態では、プリドピジンは、毎日1回よりも多い頻度で投与される。
【0059】
本発明の一実施形態では、プリドピジンは、毎日2回投与される。本発明の実施形態では、プリドピジンは、毎日3回投与される。
【0060】
本発明の実施形態では、プリドピジンは、例えば、隔日、1週間に3回、1週間に2回、または1週間に1回など、毎日1回よりも少ない頻度で投与される。
【0061】
本発明の一実施形態では、プリドピジンは、経口投与される。
【0062】
いくつかの実施形態では、医薬組成物の単位用量は、10~250mgのプリドピジンを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、45mg、67.5mg、90mg、または112.5mgのプリドピジンを含む。
【0063】
一実施形態では、1日当たり、10~225mgのプリドピジンが患者に投与される。別の実施形態では、1日当たり、45~180mgのプリドピジンが患者に投与される。別の実施形態では、1日当たり、10mg、22.5mg、45mg、67.5、mg、90mg、100mg、112.5mg、125mg、135mg、150mg、または180mgのプリドピジンが患者に投与される。
【0064】
一実施形態では、医薬組成物は、1日当たり、2回投与される。別の実施形態では、各投与で等量の医薬組成物が投与される。一実施形態では、2つの用量は、少なくとも6時間間隔、少なくとも7時間間隔、少なくとも8時間間隔、少なくとも9時間間隔、少なくとも10時間間隔、少なくとも11時間間隔で投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、少なくとも12週間、少なくとも20週間、少なくとも24週間、少なくとも26週間、少なくとも52週間、または少なくとも78週間の間、投与される。
【0065】
本発明の一実施形態では、プリドピジンは、塩酸プリドピジンである
【0066】
本発明の一実施形態では、対象は、ヒト対象である。
【0067】
本発明はまた、ALSに罹患したヒト対象を治療するのに用いられるプリドピジンを提供する。
【0068】
本発明はまた、ALSに罹患した対象を治療するための医薬組成物であって、治療有効量のプリドピジンを含有する医薬組成物を提供する。
【0069】
本発明はさらに、ALSの治療方法であって、ALSを治療するのに有効な所定量のプリドピジンを、治療を必要とする対象に定期的に投与するステップを含む方法を提供する。
【0070】
一実施形態では、医薬組成物は、所定量のプリドピジンと、所定量の第2の化合物、例えば、ALS患者の治療に有用な化合物とを含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、第2の化合物は、リルゾール、エダラボン、デキストロメトルファンとキニジンとの組み合わせ、または、ラキニモドである。
【0072】
一実施形態では、ALSに罹患した対象を治療するのに用いられる医薬組成物は、同時にまたは同時期に投与されるように調製されたプリドピジン及び第2の化合物を含む。
【0073】
一実施形態では、医薬組成物は、ALSに罹患した対象を治療するのに有用な、単位用量製剤形態であり、
(a)所定の量のプリドピジンと、
(b)所定の量の第2の化合物とを含み、
当該医薬組成物中の第2の化合物及びプリドピジンの各量が、1以上の単位用量製剤形態で対象に併用投与したときに、対象を治療するのに有効な量である。いくつかの実施形態では、第2の化合物は、リルゾール、エダラボンまたはデキストロメトルファン/キニジンである。
【0074】
一実施形態では、医薬組成物は、ALSに罹患した対象の治療において、リルゾールである第2の化合物への追加療法として使用される所定量のプリドピジンを含有する。別の実施形態では、医薬組成物は、ALSに罹患した対象の治療において、エダラボンである第2の化合物への追加療法として使用される所定量のプリドピジンを含有する。別の実施形態では、医薬組成物は、ALSに罹患した対象の治療において、デキストロメトルファン/キニジンである第2の化合物への追加療法として使用される所定量のプリドピジンを含有する。
【0075】
一実施形態では、医薬組成物は、ALSに罹患した対象の治療において、リルゾールである第2の化合物と同時にまたは同時期に使用される所定量のプリドピジンを含有する。別の実施形態では、医薬組成物は、ALSに罹患した対象の治療において、エダラボンである第2の化合物と同時にまたは同時期に使用される所定量のプリドピジンを含有する。別の実施形態では、医薬組成物は、ALSに罹患した対象の治療において、デキストロメトルファン/キニジンである第2の化合物と同時にまたは同時期に使用される所定量のプリドピジンを含有する。別の実施形態では、医薬組成物は、ALSに罹患した対象の治療において、ラキニモドである第2の化合物と同時にまたは同時期に使用される所定量のプリドピジンを含有する。一実施形態では、医薬組成物は、ALSに罹患した対象の治療において、プリドピジンへの追加療法として使用されるリルゾールである化合物を所定量で含有する。別の実施形態では、医薬組成物は、ALSに罹患した対象の治療において、プリドピジンへの追加療法として使用されるエダラボンである化合物を所定量で含有する。別の実施形態では、医薬組成物は、ALSに罹患した対象の治療において、プリドピジンへの追加療法として使用されるデキストロメトルファン/キニジンである化合物を所定量で含有する。別の実施形態では、医薬組成物は、ALSに罹患した対象の治療において、プリドピジンへの追加療法として使用されるラキニモドである化合物を所定量で含有する。
【0076】
一実施形態では、医薬組成物は、ALSに罹患した対象の治療において、プリドピジンと同時にまたは同時期に使用されるリルゾールである化合物を所定量で含有する。別の実施形態では、医薬組成物は、ALSに罹患した対象の治療において、プリドピジンと同時にまたは同時期に使用されるエダラボンである化合物を所定量で含有する。別の実施形態では、医薬組成物は、ALSに罹患した対象の治療において、プリドピジンと同時にまたは同時期に使用されるデキストロメトルファン/キニジンである化合物を所定量で含有する。
【0077】
本発明はまた、ALSに罹患した対象の治療において、プリドピジンへの追加療法として使用されるリルゾールである化合物を提供する。
【0078】
本発明はまた、ALSに罹患した対象の治療において、プリドピジンへの追加療法として使用されるエダラボンである化合物を提供する。
【0079】
本発明はまた、ALSに罹患した対象の治療において、プリドピジンへの追加療法として使用されるデキストロメトルファン/キニジンである化合物を提供する。
【0080】
本発明はまた、ALSに罹患した対象の治療において、リルゾールである化合物への追加療法として使用されるプリドピジンを提供する。
【0081】
本発明はまた、ALSに罹患した対象の治療において、エダラボンである化合物への追加療法として使用されるプリドピジンを提供する。
【0082】
本発明はまた、ALSに罹患した対象の治療において、デキストロメトルファン/キニジンである化合物への追加療法として使用されるプリドピジンを提供する。
【0083】
本発明はまた、ALSに罹患した対象の治療において、ラキニモドである化合物への追加療法として使用されるプリドピジンを提供する。
【0084】
一実施形態では、追加療法は、ALSの症状の治療、予防または軽減である。
【0085】
本発明はまた、ALSの症状の治療、予防または軽減に使用される、リルゾールである化合物と、プリドピジンとの組み合わせを提供する。
【0086】
本発明はまた、ALSの症状の治療、予防または軽減に使用される、エダラボンである化合物と、プリドピジンとの組み合わせを提供する。
【0087】
本発明はまた、ALSの症状の治療、予防または軽減に使用される、デキストロメトルファン/キニジンである化合物と、プリドピジンとの組み合わせを提供する。
【0088】
本発明はまた、ALSの治療用の薬剤の製造のための、プリドピジンの使用を提供する。
【0089】
本方法、本使用、及び本組成物は、対象の神経学的悪化の速度を低下させるステップをさらに含む。
【0090】
一実施形態では、本発明の方法は、治療的有効量の、リルゾールまたはエダラボンである第2の化合物を対象に投与するステップをさらに含む。一実施形態では、本発明の方法は、治療有効量の、デキストロメトルファン/キニジンである第2の化合物を対象に投与するステップをさらに含む。一実施形態では、第2の化合物は、リルゾールである。別の実施形態では、第2の化合物は、エダラボンである。別の実施形態では、第2の化合物は、デキストロメトルファン/キニジンである。別の実施形態では、第2の化合物は、ラキニモドである。
【0091】
本発明の一実施形態では、プリドピジン及び第2の化合物は、1つの単位用量製剤で投与される。別の実施形態では、プリドピジン及び第2の化合物は、2以上の単位用量製剤で投与される。
【0092】
一実施形態では、プリドピジン及び第2の化合物は、同時に投与される。一実施形態では、プリドピジン及び第2の化合物の量は同時期に投与される。
【0093】
別の実施形態では、第2の化合物の投与は、プリドピジンの投与に先行して行われる。別の実施形態では、プリドピジンの投与は、第2の化合物の投与に先行して行われる。
【0094】
一実施形態では、対象は、プリドピジン療法を開始する前に、エダラボン療法を受けている。別の実施形態では、対象は、プリドピジン療法を開始する前に、リルゾール療法を受けている。別の実施形態では、対象は、プリドピジン療法を開始する前に、ラキニモド療法を受けている。別の実施形態では、対象は、プリドピジン療法を開始する前に、デキストロメトルファン/キニジン療法を受けている。
【0095】
別の実施形態では、対象は、プリドピジン療法を開始する少なくとも24週間、28週間、32週間、48週間、または52週間前に、エダラボン療法を受けている。別の実施形態では、対象は、プリドピジン療法を開始する少なくとも24週間、28週間、32週間、48週間、または52週間前に、リルゾール療法を受けている。別の実施形態では、対象は、プリドピジン療法を開始する少なくとも1週間、2週間、4週間、または6週間前に、デキストロメトルファン/キニジン療法を受けている。
【0096】
一実施形態では、対象は、エダラボン療法を開始する前に、プリドピジン療法を受けている。別の実施形態では、対象は、エダラボン療法を開始する少なくとも24週間、28週間、48週間、または52週間前に、プリドピジン療法を受けている。
【0097】
一実施形態では、対象は、リルゾール療法を開始する前に、プリドピジン療法を受けている。別の実施形態では、対象は、リルゾール療法を開始する少なくとも24週間、28週間、48週間、または52週間前に、プリドピジン療法を受けている。
【0098】
一実施形態では、対象は、ラキニモド療法を開始する前に、プリドピジン療法を受けている。別の実施形態では、対象は、ラキニモド療法を開始する少なくとも24週間、28週間、48週間、または52週間前に、プリドピジン療法を受けている。
【0099】
一実施形態では、対象は、デキストロメトルファン/キニジン療法を開始する前に、プリドピジン療法を受けている。別の実施形態では、対象は、デキストロメトルファン/キニジン療法を開始する少なくとも24週間、28週間、48週間、または52週間前に、プリドピジン療法を受けている。
【0100】
一実施形態では、ラキニモドは、1日当たり、0.5~1.5mgの量で患者に投与される。別の実施形態では、ラキニモドは、1日当たり、0.5mgまたは1.0mgの量で患者に投与される。一実施形態では、ラキニモドは、経口投与される。
【0101】
一実施形態では、リルゾールは、1日当たり、10~200mgの量で患者に投与される。別の実施形態では、リルゾールは、1日当たり、50mg、100mg、または200mgの量で患者に投与される。
【0102】
一実施形態では、リルゾールは、経口投与される。一実施形態では、デキストロメトルファン/キニジンは、経口投与される。
【0103】
一実施形態では、エダラボンは、1日当たり、5~60mgの量で患者に投与される。別の実施形態では、エダラボンは、1日当たり、30mgまたは60mgの量で患者に投与される。
【0104】
一実施形態では、エダラボンは、静脈内注入によって投与される。別の実施形態では、エダラボンは、10日間にわたって毎日1回投与され、その後14日間の休薬期間がおかれる。別の実施形態では、エダラボンは、14日間にわたって毎日1回投与され、その後14日間の休薬期間がおかれる。
【0105】
一実施形態では、単独で投与する場合の第2の化合物の用量、及び、単独で投与する場合のプリドピジンの用量の両方は、対象を治療するのに有効な量である。別の実施形態では、単独で投与する場合の第2の化合物の用量、及び、単独で投与する場合のプリドピジンの用量の一方または両方は、対象を治療するのに効果の弱い量である。別の実施形態では、単独で投与する場合の第2の化合物の用量、及び、単独で投与する場合のプリドピジンの用量の一方または両方は、対象を治療するのに有効な量ではない。
【0106】
一実施形態では、プリドピジンは、第2の化合物に対して補助的に投与される。別の実施形態では、第2の化合物は、プリドピジンに対して補助的に投与される。
【0107】
一実施形態では、意図される用量とは異なる量の負荷投与が、上記の定期的投与の開始時に所定の期間にわたって投与される。
【0108】
一実施形態では、ALSに罹患した対象における運動ニューロンのBDNF軸索輸送を改善する方法であって、運動ニューロンのBDNF軸索輸送を改善するのに有効な量のプリドピジンを対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0109】
一実施形態では、ALSに罹患した対象における運動ニューロンのERK活性化を改善する方法であって、運動ニューロンのERK活性化を改善するのに有効な量のプリドピジンを対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0110】
一実施形態では、ALSに罹患した対象における筋細胞の神経筋接合部(NMJ)の構造を保存する方法であって、対象の筋肉の神経筋接合部の構造を保存するのに有効な量のプリドピジンを対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0111】
ALSに罹患した対象における筋収縮を改善する方法であって、対象の筋収縮機能を改善するのに有効な量のプリドピジンを対象に投与するステップを含む方法がさらに提供される。
【0112】
ALSに罹患した対象における筋組織の神経支配率を改善する方法であって、筋組織の神経支配率を改善するのに有効な量のプリドピジンを対象に投与するステップを含む方法がさらに提供される。
【0113】
一実施形態では、ALSに罹患した対象における運動ニューロンの軸索の成長を改善する方法であって、運動ニューロンの軸索の成長を改善するのに有効な量のプリドピジンを対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0114】
一実施形態では、ALSに罹患した対象における筋細胞の生存を促進する方法であって、筋細胞の生存を促進するのに有効な量のプリドピジンを対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0115】
一実施形態では、ALSに罹患した対象における筋線維消耗の進行を低減する方法であって、筋線維消耗の進行を低減するのに有効な量のプリドピジンを対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0116】
一実施形態では、ALSに罹患した対象における軸索変性を低減する方法であって、軸索変性を低減するのに有効な量のプリドピジンを対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0117】
一実施形態では、ALSに罹患した対象におけるNMJの形成を保存する方法であって、NMJの形成を保存するのに有効な量のプリドピジンを対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0118】
一実施形態では、ALSに罹患した対象におけるNMJ構造及び機能を保存する方法であって、NMJ構造及び機能を保存するのに有効な量のプリドピジンを対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0119】
一実施形態では、ALSに罹患した対象におけるタンパク質凝集を低減する方法であって、タンパク質凝集を低減するのに有効な量のプリドピジンを対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0120】
一実施形態では、ALSに罹患した対象における仮性球麻痺疾患の進行を低減する方法であって、仮性球麻痺疾患の進行を低減するのに有効な量のプリドピジンを対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0121】
本発明はまた、
パッケージであって、
所定量のプリドピジンを含有する医薬組成物と、任意選択で、
ALSに罹患した対象を治療するための医薬組成物の使用に関する説明書と、
を備えた、パッケージを提供する。
【0122】
本発明はまた、
対象にディスペンスするための、または対象にディスペンスするのに使用するための治療用パッケージであって、
1以上の単位用量製剤であって、各単位用量製剤が、対象に投与されたときに対象のALSを治療するのに有効な量のプリドピジンを含有する、単位用量製剤と、
1以上の単位用量製剤を収容し、かつ、ALSに罹患した患者の治療における当該パッケージの使用を指示するラベルを含む、完成品の医薬容器と、
を備えた、治療用パッケージを提供する。
【0123】
本発明はまた、
パッケージであって、
所定量のプリドピジン、及び薬学的に許容される担体を含有する第1の医薬組成物と、
リルゾール、エダラボン、またはデキストロメトルファン/キニジンから選択される所定量の第2の化合物、及び薬学的に許容される担体を含有する第2の医薬組成物と、任意選択で、
ALSに罹患した対象を治療するための第1の医薬組成物及び第2の医薬組成物の併用使用に関する説明書と、
を備えた、パッケージを提供する。
【0124】
一実施形態では、所定量の第2の化合物及び所定量のプリドピジンは、同時にまたは同時期に投与されるように調製される。
【0125】
本発明はまた、
対象にディスペンスするための、または対象にディスペンスするのに使用するための治療用パッケージであって、
1以上の単位用量製剤であって、各単位用量製剤が、
所定の量のプリドピジン、及び、
リルゾール、エダラボン、またはデキストロメトルファン/キニジンから選択される所定の量の第2の化合物を含み、
各単位用量製剤中のプリドピジン及び第2の化合物の各量が、対象に併用投与されたときに対象を治療するのに有効な量である、1以上の単位用量製剤と、
1以上の単位用量製剤を収容し、かつ、ALSに罹患した患者の治療における当該パッケージの使用を指示するラベルを含む、完成品の医薬容器と、
を備えた、治療用パッケージを提供する。
【0126】
本発明はさらに、ALSを治療する併用療法の方法であって、治療有効量のプリドピジンと、治療有効量のリルゾール、エダラボン、またはデキストロメトルファン/キニジンとを、治療を必要とする対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0127】
前述の実施形態について、本明細書に開示される各実施形態は、開示された他の実施形態のそれぞれに適用可能であると考えられる。例えば、方法の実施形態に列挙された要素は、本明細書に記載の医薬組成物、パッケージ、及び使用の実施形態で使用されてもよく、逆もまた同様である。
【0128】
本明細書に記載の方法及び使用の様々な要素のすべての組み合わせ、部分的組み合わせ、及び交換が想定され、それらは本発明の範囲内である。
【0129】
薬学的に許容される塩
【0130】
本明細書で使用するとき、「プリドピジン」という用語は、プリドピジン塩基または薬学的に許容されるその塩、並びに、誘導体、例えば、重水素濃縮バージョンのプリドピジン及び塩を意味する。重水素濃縮プリドピジン及び塩、並びにその調製法の例は、米国特許出願公開第2013-0197031号、同第2016-0166559号及び2016-0095847号に見出すことができ、これらのそれぞれの全内容は参照により本明細書に組み込まれる。特定の実施形態では、プリドピジンは、HCl塩または酒石酸塩などの薬学的に許容される塩である。本明細書に記載の本発明の任意の実施形態では、プリドピジンはその塩酸塩の形態であることが好ましい。
【0131】
医薬的に許容される付加塩の例には、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、アコニット酸塩、アスコルビン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、桂皮酸塩、クエン酸塩、パモ酸、エナント酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、フタル酸塩、サリチル酸塩、ソルビン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トルエン-p-スルホン酸塩などが挙げられるが、これらに限定されない。このような塩は当技術分野で周知の、記載された手順によって形成し得る。
【0132】
「重水素濃縮」は、一定量の化合物中で、任意の当該部位での重水素の存在量が、その部位の天然の重水素の存在量より多いことを意味する。天然の重水素分布は、約0.0156%である。したがって、「重水素濃縮」化合物では、その当該部位の重水素の存在量は、0.0156%より多く、0.0156%超~100%の範囲にある。重水素濃縮化合物は、水素を重水素と交換するか、または重水素濃縮出発材料を用いて化合物を合成することにより得られる。
【0133】
医薬組成物
【0134】
本発明による使用のためのプリドピジンは、原料化合物の形態で投与することができるが、必要に応じて、プリドピジンを生理学的に許容される塩の形態で、1種または複数のアジュバント、賦形剤、担体、緩衝剤、希釈剤、及び/または他の慣用的な医薬助剤と共に医薬組成物中に導入することが好ましい。
【0135】
一実施形態では、本発明は、1種または複数の医薬的に許容される担体、及び必要に応じ、これらに限定しないが例えばリルゾール、エダラボン、またはNuedexta(デキストロメトルファン/キニジン)を含む、当該技術において既知で、使用されている治療的及び/または予防的成分と共に、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体を含有する医薬組成物を提供する。
【0136】
担体は、他の製剤成分と適合性であり、ヒト対象への投与に適しているという意味で「許容可能」でなければならない。
【0137】
併用療法
【0138】
本発明が活性化合物と追加の1以上の治療的及び/または予防的成分との組み合わせを含む場合、本発明の組み合わせは、少なくとも薬学的に許容される担体、添加剤、アジュバントまたはビヒクルと共に、同時にまたは同時期に投与されるように製剤化され得る。これには、2つの活性化合物の組み合わせを投与できるという意味がある。
-同一の医薬製剤の一部である組み合わせとして、2つの活性化合物を同時に投与する、または
-2つの単位の組み合わせとして、それぞれが同時または同時期に投与される可能性を生じさせる1つの活性物質を含む。
【0139】
単一の薬物の効果は、その吸収、分布、及び排出に関連する。2つの薬物が体内に導入されると、各薬物は他の薬物の吸収、分布、及び排出に影響を与え、他の薬物の効果を変え得る。例えば、ある薬物は、他の薬物の排出の代謝経路に関与する酵素の産生を阻害、活性化、または誘導し得る(Guidance for Industry、1999)。
【0140】
2つの薬物間の相互作用が各薬物の意図された治療活性に影響を与えるだけでなく、相互作用によって毒性代謝産物のレベルが増加し得る(Guidance for Industry、1999)。また、相互作用は、各薬物の副作用を増減させ得る。したがって、疾患を治療するために2つの薬剤を投与すると、各薬剤のマイナス面のプロファイルにどのような変化が生じるかは予測不可能である。
【0141】
さらに、2つの薬物間の相互作用の効果がいつ明らかになるかを正確に予測することは困難である。例えば、薬物間の代謝相互作用は、2つの薬物が定常状態の濃度に達した後、または2つの薬物のうち1つを中断したとき、第2の薬物の最初の投与の際に明らかになる(Guidance for Industry、1999)。
【0142】
一例では、GAとインターフェロン(IFN)との併用投与によって、いずれかの療法の臨床的有効性が無効になることが実験的に示されている(Brod 2000)。別の実験では、IFN-βとの併用療法におけるプレドニゾンの追加が、その上方制御効果に拮抗することが報告された。したがって、同一の状態を治療するために2つの薬物を投与する場合、それぞれがヒト対象の他方の治療的活性を補完するか、影響を与えないか、または干渉するかどうかは予測不可能である。
【0143】
投与
【0144】
本発明の医薬組成物は、所望の治療に適した任意の好都合な経路で投与され得る。好ましい投与経路には、経口投与、特に錠剤、カプセル、糖衣錠、粉末、または液体の形態で、及び非経口投与、特に、皮膚、皮下、筋肉内、または静脈内の注射が含まれる。本発明の医薬組成物は、所望の製剤に適した標準の方法及び従来の技術を使用することにより、当業者が製造することができる。所望であれば、活性成分の持続放出を与えるように適合された組成物を用いてよい。
【0145】
錠剤は、適切な結合剤、滑沢剤、崩壊剤(disintegrant)、着色剤、香料、流動誘導剤、及び融解剤を含んでもよい。例えば、錠剤またはカプセルの単位用量製剤での経口投与の場合、活性薬物成分は、ラクトース、ゼラチン、寒天、デンプン、スクロース、グルコース、メチルセルロース、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトール、結晶セルロースなどの経口の、非毒性の薬学的に許容される不活性担体と組み合わせることができる。適切な結合剤には、デンプン、ゼラチン、グルコースまたはベータラクトースなどの天然糖、コーンスターチ、アカシア、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウムなどの天然及び合成のゴム、ポビドン、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが含まれる。これらの用量製剤で使用される潤滑剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、タルクなどが含まれる。崩壊剤(disintegrant)には、これらに限定しないが、例えばデンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガム、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウムなどが含まれる。
【0146】
本発明において有用な用量製剤を作製するための一般的な技術及び組成物は、以下の参考文献に記載されている:Modern Pharmaceutics, Chapters 9 and 10(Banker&Rhodes,Editors,1979);Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets(Lieberman 1981);Ansel,Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms 2nd Edition(1976);Remington's Pharmaceutical Sciences,17th ed.(Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1985);Advances in Pharmaceutical Sciences(David Ganderton,Trevor Jones,Eds.,1992);Advances in Pharmaceutical Sciences Vol 7.(David Ganderton,Trevor Jones,James McGinity,Eds.,1995);Aqueous Polymeric Coatings for Pharmaceutical Dosage Forms(Drugs and the Pharmaceutical Sciences,Series 36)(James McGinity,Ed.,1989);Pharmaceutical Particulate Carriers:Therapeutic Applications:Drugs and the Pharmaceutical Sciences,Vol 61(Alain Rolland,Ed.,1993);Drug Delivery to the Gastrointestinal Tract(Ellis Horwood Books in the Biological Sciences.Series in Pharmaceutical Technology;J.G.Hardy,S.S.Davis,Clive G.Wilson,Eds);Modern Pharmaceutics Drugs and the Pharmaceutical Sciences,Vol.40(Gilbert S.Banker,Christopher T.Rhodes,Eds)。これらの参考文献は、その全体が参照により本出願に組み込まれている。
【0147】
用語
【0148】
本明細書で使用するとき、別段の記載がない限り、以下の各用語は、下記の定義を有するものとする。
【0149】
本明細書で使用するとき、「リルゾール」という用語は、リルゾールまたは薬学的に許容されるその塩、並びに、誘導体、例えば、重水素濃縮バージョンのリルゾール及び塩を指す。リルゾールは、参照により本明細書に組み込まれる処方者のデジタルリファレンスに記載されている(Riluzole PDR 2017)。
【0150】
本明細書で使用するとき、「エダラボン」という用語は、エダラボンまたは薬学的に許容されるその塩、並びに、誘導体、例えば、重水素濃縮バージョンのエダラボン及び塩を指す。エダラボンは、参照により本明細書に組み込まれる処方者のデジタルリファレンスに記載されている(Edaravone PDR 2017)。
【0151】
「デキストロメトルファンとキニジンとの組み合わせ」若しくは「デキストロメトルファン/キニジン」、または「デキストロメトルファン臭化水素酸塩/キニジン硫酸塩」という用語は、デキストロメトルファン臭化水素酸塩(20mg)とNuedextaなどのキニジン硫酸塩(10mg)との組み合わせを指す。Nuedextaは、とりわけALS患者の仮性球麻痺(PBA)を治療するために現在市販されている薬物である。Nuedextaは、脳のシグマ-1及びNMDA受容体に作用することが示されている。最近のデータにより、この組み合わせがALSの延髄機能に影響を与えるが、運動機能の他の側面には影響を与えないことが実証されている(Smith 2017)。デキストロメトルファン臭化水素酸塩/キニジン硫酸塩は、参照により本明細書に組み込まれる処方者のデジタルリファレンスに記載されている(Dextromethorphan hydrobromide/quinidine sulfate PDR 2017)。
【0152】
本明細書で使用するとき、ミリグラムで測定されるプリドピジンの「量」または「用量」は、製剤の形態に関係なく、製剤中に存在する非誘導体化プリドピジン塩基のミリグラムを指す。「45mgのプリドピジンの用量」という用語は、製剤中のプリドピジンの量が、製剤の形態に関係なく、天然に存在する同位体分布を有する非誘導体化プリドピジン塩基45mgを提供するのに十分であることを指す。したがって、塩、例えばプリドピジン塩酸塩の形態の場合、45mgの非誘導体化プリドピジン塩基の用量を提供するのに必要な塩形態の質量は、追加の塩イオンの存在に起因して、45mgを超える。同様に、重水素濃縮誘導体の形態の場合、天然に存在する同位体分布を有する非誘導体化プリドピジン塩基45mgの用量を提供するために必要な誘導体化形態の質量は、追加の重水素の存在に起因して、45mgを超える。
【0153】
本明細書に開示される任意の範囲によって、その範囲内のすべての100分の1、10分の1、及び整数単位量が本発明の一部として具体的に開示されることを指す。したがって、例えば、0.01mgから50mgは、0.02、0.03...0.09;0.1;0.2...0.9;1、2、...49mgの単位量が本発明の実施形態として含まれることを指す。本明細書で開示される時間の範囲(すなわち、週、月、または年)によって、その範囲内のすべての日、及び/または週の時間の長さが本発明の一部として具体的に開示されることを指す。したがって、例えば、3~6ヶ月には、3ヶ月と1日、3ヶ月と1週間、及び4ヶ月が本発明の実施形態として含まれることを指す。
【0154】
本明細書で使用するとき、数値または範囲の文脈における「約」という用語は、列挙またはクレームされている数値または範囲の±10%を指す。
【0155】
本明細書で使用するとき、「単独療法」という用語は、単一の活性薬剤による治療、例えば、プリドピジン単独による治療を指す。
【0156】
本明細書で使用するとき、「補助的に」という用語は、例えば一次化合物の有効性若しくは安全性を高めるため、またはその活性を促進するための、一次化合物と共の、追加の化合物による治療または追加の化合物の投与を指す。
【0157】
本明細書で使用するとき、「定期的投与」という用語は、一定期間の間隔を開けた反復/周期的投与を指す。投与間の一定期間は、都度一定であるのが好ましい。定期的投与には、例えば、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、週1回、週2回、週3回、週4回、などが含まれ得る。
【0158】
本明細書で使用するとき、「組み合わせ」という用語は、同時または同時期の投与のいずれかによる治療で使用するための試薬の集合体を指す。同時投与は、プリドピジンと第2の化合物(例えば、リルゾール)との混合物(真の混合物、懸濁液、エマルジョン、またはその他の物理的組み合わせのいずれであっても)の投与を指す。この場合、組み合わせは、投与の直前に組み合わされたプリドピジンと第2の化合物との混合であってもよく、または別々の容器に入っていてもよい。同時投与、または同時期の投与とは、プリドピジンと第2の化合物(例えば、リルゾール)との、同時の別々の投与か、または、プリドピジン若しくは第2の化合物のいずれか単独の活性と比較して付加的な、あるいは、好ましくは相乗的な活性が観察される、十分に接近した、若しくは、各薬剤の個々の治療効果が重複するのに十分に時間的に近接した、別々の時間での投与を指す。
【0159】
本明細書で使用するとき、「追加」または「追加療法」という用語は、治療に使用するための試薬の集合体を指し、治療を受ける対象は、1以上の試薬の第1の治療計画を開始した後に、第1の治療計画に加えて1以上の異なる試薬の第2の治療計画を開始し、治療に使用されるすべての試薬が同時に開始されるわけではない。例えば、既にリルゾール療法を受けている患者にプリドピジン療法を追加する。
【0160】
本明細書で使用するとき、プリドピジンの所定量に言及する場合の「有効」という用語は、所望の治療的応答を生じるのに十分なプリドピジンの量を指す。好ましい実施形態では、投与されるプリドピジンの量は、有害な副作用(毒性、刺激、またはアレルギー反応など)をもたらさない。
【0161】
「対象へ投与すること」または「(ヒト)患者へ投与すること」とは、疾患、障害、または状態、例えば、例えば病的状態に関連する症状を緩和、治癒または低減させるために、対象/患者に医薬、薬物、または療法を与えること、投与すること、または適用することを意味する。
【0162】
本明細書で使用するとき、「治療」という用語は、疾患若しくは障害の阻害、退行、若しくは停止を誘導すること、または、疾患若しくは障害の症状の、低減、抑制、阻害、重症度の低減、排除若しくは実質的な排除、若しくは、改善を包含するものである。
【0163】
本明細書で使用するとき、対象における疾患進行または疾患合併の「阻害」という用語、対象における疾患の進行、及び/または疾患の合併症を予防または減少させることを指す。
【0164】
疾患または障害に関連する「症状」には、疾患または障害に関連する臨床症状または検査症状が含まれるが、対象が感じる症状または観察できる症状に限定されない。
【0165】
本明細書で使用するとき、疾患、障害または状態に「罹患している対象」という用語は、疾患、障害または状態を有すると臨床的に診断されている対象を指す。
【0166】
グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)は、GDNF遺伝子によってコードされるタンパク質であり、それらの多くのタイプのニューロンの生存を促進すると考えられている。
【0167】
脳由来神経栄養因子(BDNF)は、ニューロンによって産生されるタンパク質であり、機能を維持し、ニューロンの成長及びニューロン新生を促進する。
【0168】
以下の番号付けされた条項は、本発明の様々な態様及び特徴を定義する。
【0169】
1.筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹患した対象を治療する方法であって、対象を治療するのに有効な所定量のプリドピジンを対象に定期的に投与するステップを含む、方法。
【0170】
2.プリドピジンの所定量は、対象におけるALSの症状の進行を抑止または抑制するのに有効な量である、条項1に記載の方法。
【0171】
3.症状は、筋肉硬直、筋力低下、筋消耗、筋痙攣、発話困難、嚥下困難、呼吸困難、咀嚼困難、歩行困難、線維束性収縮、及び/または姿勢悪化を含む、条項2に記載の方法。
【0172】
4.ALSは、散発性ALSである、条項1~3のいずれかに記載の方法。
【0173】
5.所定量のプリドピジンは、毎日1回またはそれ以上の頻度で投与される、条項1~4のいずれかに記載の方法。
【0174】
6.所定量のプリドピジンは、毎日2回投与される、条項1~4のいずれかに記載の方法。
【0175】
7.所定量のプリドピジンは、毎日1回よりも少ない頻度で投与される、条項1~4のいずれかに記載の方法。
【0176】
8.所定量のプリドピジンは、経口投与される、条項1~7のいずれかに記載の方法。
【0177】
9.プリドピジンの所定量は、22.5~225mg/日である、条項1~8のいずれかに記載の方法。
【0178】
10.プリドピジンの所定量は、45~180mg/日である、条項9に記載の方法。
【0179】
11.プリドピジンの所定量は、5mg、10mg、22.5mg、45mg、67.5mg、90mg、100mg、112.5mg、125mg、135mg、150mg、または180mg/日である、条項9に記載の方法。
【0180】
12.プリドピジンの定期的な投与は、少なくとも24週間継続される、条項1~11のいずれかに記載の方法。
【0181】
13.プリドピジンは、プリドピジン塩酸塩である、条項1~12のいずれかに記載の方法。
【0182】
14.対象は、ヒト対象である、条項1~13のいずれかに記載の方法。
【0183】
15.治療有効量の第2の化合物を対象に投与するステップをさらに含む、条項1~14のいずれかに記載の方法。
【0184】
16.第2の化合物は、リルゾール、エダラボン、または、デキストロメトルファン/キニジンから選択される、条項15に記載の方法。
【0185】
17.プリドピジン及び第2の化合物は、1つの単位用量製剤で投与される、条項15または16に記載の方法。
【0186】
18.プリドピジン及び第2の化合物は、2以上の単位用量製剤で投与される、条項15または16に記載の方法。
【0187】
19.第2の化合物は、リルゾールである、条項15~18のいずれかに記載の方法。
【0188】
20.リルゾールは、1日当たり、10~200mg、50mg、100mg、または200mgの量で対象に投与される、条項19に記載の方法。
【0189】
21.リルゾールは、経口投与される、条項15~20のいずれかに記載の方法。
【0190】
22.第2の化合物は、エダラボンである、条項15~18のいずれかに記載の方法。
【0191】
23.エダラボンは、1日当たり、5~60mg、30mg、または60mgの量で対象に投与される、条項22に記載の方法。
【0192】
24.エダラボンは、静脈内注入によって投与される、条項15~18及び条項22~23に記載の方法。
【0193】
25.エダラボンは、14日間または10日間にわたって毎日1回投与され、その後14日間の休薬期間がおかれる、条項15~18及び条項22~24のいずれかに記載の方法。
【0194】
26.第2の化合物は、デキストロメトルファン/キニジンである、条項15~18のいずれかに記載の方法。
【0195】
27.デキストロメトルファンは、1日当たり、10、20または40mgの量で対象に投与され、キニジンは、1日当たり、5、10または20mgの量で対象に投与される、条項26に記載の方法。
【0196】
28.デキストロメトルファン/キニジンは、経口投与される、条項26または27に記載の方法。
【0197】
29.プリドピジン及び第2の化合物は、同時に投与される、条項15~28のいずれかに記載の方法。
【0198】
30.第2の化合物の投与は、プリドピジンの投与に実質的に先行して行われる、条項15~28のいずれかに記載の方法。
【0199】
31.プリドピジンの投与は、第2の化合物の投与に実質的に先行して行われる、条項15~28のいずれかに記載の方法。
【0200】
32.対象は、プリドピジン療法を開始する前に、エダラボン療法、デキストロメトルファン/キニジン療法、またはリルゾール療法を受けている、条項15~28のいずれかに記載の方法。
【0201】
33.対象は、プリドピジン療法を開始する少なくとも24週間、28週間、32週間、48週間、または52週間前に、エダラボン療法、デキストロメトルファン/キニジン療法、またはリルゾール療法を受けている、条項32に記載に方法。
【0202】
34.対象は、エダラボン療法、デキストロメトルファン/キニジン療法、またはリルゾール療法を開始する前に、プリドピジン療法を受けている、条項15~28のいずれかに記載の方法。
【0203】
35.対象は、エダラボン療法、デキストロメトルファン/キニジン療法、またはリルゾール療法を開始する少なくとも24週間、28週間、48週間、または52週間前に、プリドピジン療法を受けている、条項34に記載の方法。
【0204】
36.単独で投与する場合の第2の化合物の用量、及び、単独で投与する場合のプリドピジンの用量の両方は、対象を治療するのに有効な量である、条項15~35のいずれかに記載の方法。
【0205】
37.単独で投与する場合の第2の化合物の用量、及び、単独で投与する場合のプリドピジンの用量の一方または両方は、対象を治療するのに有効な量ではない、条項15~35項のいずれかに記載の方法。
【0206】
38.単独で投与する場合の第2の化合物の用量、及び、単独で投与する場合のプリドピジンの用量の一方または両方は、対象を治療するのに効果の弱い量である、条項15~35項のいずれかに記載の方法。
【0207】
39.プリドピジンは、第2の化合物に対して補助的に投与される、条項15~38のいずれかに記載の方法。
【0208】
40.第2の化合物は、プリドピジンに対して補助的に投与される、条項15~38のいずれかに記載の方法。
【0209】
41.意図される用量とは異なる量の負荷投与が、上記の定期的投与の開始時に所定の期間にわたって投与される、1~40のいずれかに記載の方法。
【0210】
42.ALSに罹患した対象における運動ニューロンのBDNF軸索輸送を改善する方法であって、運動ニューロンのBDNF軸索輸送を改善するのに有効な量のプリドピジンを対象に投与するステップを含む方法。
【0211】
43.ALSに罹患した対象におけるNMJの形成及び機能を改善する方法であって、NMJの形成及び筋収縮機能を改善するのに有効な量のプリドピジンを対象に投与するステップを含む方法。
【0212】
44.ALSに罹患した対象における筋組織の神経支配率を改善する方法であって、筋組織の神経支配率を改善するのに有効な量のプリドピジンを対象に投与するステップを含む方法。
【0213】
45.ALSに罹患した対象における運動ニューロンの軸索の成長を改善する方法であって、運動ニューロンの軸索の成長を改善するのに有効な量のプリドピジンを対象に投与するステップを含む方法。
【0214】
46.ALSに罹患した対象における筋収縮を改善する方法であって、筋収縮を改善するのに有効な量のプリドピジンを対象に投与するステップを含む方法。
【0215】
47.ALSに罹患した対象における筋収縮を回復させる方法であって、筋収縮を回復させるのに有効な量のプリドピジンを対象に投与するステップを含む方法。
【0216】
48.ALSに罹患した対象を治療するための医薬組成物であって、治療有効量のプリドピジンを含有する医薬組成物。
【0217】
49.ALSに罹患した対象を治療するのに用いられる薬剤の製造のための、所定量のプリドピジンの使用。
【0218】
50.パッケージであって、
(a)所定量のプリドピジンを含有する医薬組成物と、任意選択で、
(b)ALSに罹患した対象を治療するための医薬組成物の使用に関する説明書と、
を備えた、パッケージ。
【0219】
51.対象にディスペンスするための、または対象にディスペンスするのに使用するための治療用パッケージであって、
(a)1以上の単位用量製剤であって、各単位用量製剤が、対象に投与されたときに対象のALSを治療するのに有効な量のプリドピジンを含有する、単位用量製剤と、
(b)1以上の単位用量製剤を収容し、かつ、ALSに罹患した患者の治療における当該パッケージの使用を指示するラベルを含む、完成品の医薬容器と、
を備えた、治療用パッケージ。
【0220】
52.パッケージであって。
(a)所定量のプリドピジン、及び薬学的に許容される担体を含有する第1の医薬組成物と、
(b)リルゾール、エダラボン、またはデキストロメトルファン/キニジンから選択される所定量の第2の化合物、及び薬学的に許容される担体を含有する第2の医薬組成物と、任意選択で、
(c)ALSに罹患した対象を治療するための第1の医薬組成物及び第2の医薬組成物の併用使用に関する説明書と、
を備えた、パッケージ。
【0221】
53.所定量の第2の化合物及び所定量のプリドピジンは、同時にまたは同時期に投与されるように調製された、条項52に記載のパッケージ。
【0222】
54.対象にディスペンスするための、または対象にディスペンスするのに使用するための治療用パッケージであって、
(a)1以上の単位用量製剤であって、各単位用量製剤が、
(i)所定の量のプリドピジン、及び、
(ii)リルゾール、エダラボン、またはデキストロメトルファン/キニジンから選択される所定の量の第2の化合物を含み、
各単位用量製剤中のプリドピジン及び第2の化合物の各量が、対象に併用投与されたときに対象を治療するのに有効な量である、1以上の単位用量製剤と、
(b)1以上の単位用量製剤を収容し、かつ、ALSに罹患した患者の治療における当該パッケージの使用を指示するラベルを含む、完成品の医薬容器と、
を備えた、治療用パッケージ。
【0223】
55.医薬組成物であって、所定量のプリドピジンと、所定量の第2の化合物と、を含み、第2の化合物は、リルゾール、エダラボン、またはデキストロメトルファン/キニジンから選択される、医薬組成物。
【0224】
56.プリドピジンと第2の化合物とが同時に、同時期に、または併用して投与されるように調製された、ALSに罹患した対象の治療に使用される条項55に記載の医薬組成物。
【0225】
57.ALSに罹患した対象を治療するのに有用な、単位用量製剤の医薬組成物であって、
(a)所定の量のプリドピジンと、
(b)リルゾール、エダラボン、またはデキストロメトルファン/キニジンから選択される所定の量の第2の化合物と、
当該医薬組成物中の第2の化合物及びプリドピジンの各量が、1以上の単位用量製剤で対象に併用投与したときに、対象を治療するのに有効な量である、医薬組成物。
【0226】
58.ALSに罹患した対象の治療において、リルゾール、エダラボン、またはデキストロメトルファン/キニジンから選択される第2の化合物への追加療法として使用される医薬組成物であって、所定量のプリドピジンを含有する医薬組成物。
【0227】
59.ALSに罹患した対象の治療において、リルゾール、エダラボン、またはデキストロメトルファン/キニジンから選択される第2の化合物と同時に、同時期に、または併用して使用される医薬組成物であって、所定量のプリドピジンを含有する医薬組成物。
【0228】
60.ALSに罹患した対象の治療において、プリドピジンへの追加療法として使用される医薬組成物であって、リルゾール、エダラボン、またはデキストロメトルファン/キニジンから選択される化合物を所定量で含有する医薬組成物。
【0229】
61.ALSに罹患した対象の治療において、プリドピジンと同時に、同時期に、または併用して使用される医薬組成物であって、リルゾール、エダラボン、またはデキストロメトルファン/キニジンから選択される化合物を所定量で含有する医薬組成物。
【0230】
62.ALSに罹患した対象の治療において、プリドピジンへの追加療法として使用される化合物であって、リルゾール、エダラボン、またはデキストロメトルファン/キニジンから選択される化合物。
【0231】
63.ALSに罹患した対象の治療において、リルゾール、エダラボン、またはデキストロメトルファン/キニジンから選択される化合物への追加療法として使用されるプリドピジン。
【0232】
64.治療が、ALSの症状の治療、予防または軽減である、条項63に記載のプリドピジン。
【0233】
65.ALSの症状の治療、予防または軽減に使用される、リルゾール、エダラボン、またはデキストロメトルファン/キニジンから選択される化合物と、プリドピジンとの組み合わせ。
【0234】
本出願の全体を通して、特定の文献及び特許文献が参照される。これらの参照文献の全ては、本明細書の最後に列挙する。これらの参照文献の開示内容の全体は、本発明が関係する分野の最新技術をより完全に説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0235】
本発明は、下記の「実験の詳細」の欄を参照することにより、より良く理解されるであろう。しかし、詳細に説明される特定の実験は、特許請求の範囲においてより完全に説明される本発明の単なる例示に過ぎないことは、当業者であれば容易に理解するであろう。
【0236】
実験の詳細
【0237】
実験1:軸索輸送分析
【0238】
正常な運動ニューロン(MN)は、軸索を、長距離にわたって、かつ様々な細胞外微小環境を通して伸長させ、筋肉と共にシナプスを形成する。ニューロンがこの特殊な形態を維持する能力は、細胞骨格要素と、細胞体へのまたは細胞体からのタンパク質及び細胞小器官の連続的な輸送とに依存している。細胞骨格変化は、軸索輸送、成長及び神経筋接合部(NMJ)の機能に影響を与えるALSの発症機序に関与する主要経路である(Eykens及びRobberecht、2015)。軸索輸送の変化は、ALSを含む神経変性疾患で生じる最初の細胞過程の1つである。軸索輸送は、神経細胞体をそれらの軸索及びシナプスから分離し、細胞微小環境の特異的モニタリング及び操作による逆行/順行輸送の研究を可能にする、マイクロ流体チャンバのインビトロ・コンパートメントシステムを使用して評価した(図1B:Zahavi、2015;Ionescu、2016)。
【0239】
量子ドット標識化BDNF(Qdot-BDNF)は、マイクロ流体チャンバ(MFC)内で増殖させた運動ニューロン外植片の軸索を通って逆行的に輸送される。MFCを使用して、Qdot-BDNF軸索輸送を解析した。ALSについて、SOD1モデル(SOD1G93A)におけるBDNFの軸索輸送が研究されている(Bilsland、2010;Perlson、2009;De Vos、2007)。運動ニューロンの軸索に沿ったQdot-BDNFの輸送に対するプリドピジンの効果を、SOD1及びWT(野生型)の同腹マウス(LM)の脊髄外植片において評価した。軸索輸送分析の実験ワークフロー(図1A、左から右へ進む):SOD1G93Aまたは野生型の同腹マウス(LM)の脊髄外植片をMFC内で平板培養した。平板培養の約5日後に、軸索が遠位コンパートメントに到達し始めた。平板培養後の6日目に、近位コンパートメント及び遠位コンパートメントの両方に、所定量のプリドピジンを添加した。7日目に、Qdot-BDNFを遠位コンパートメントに添加して、軸索輸送を画像化した。マイクロ流体チャンバシステム(図1B)の概略図:WTまたはSOD1G93A-E12.5マウス胚の脊髄(SC)外植片を、マイクロ流体チャンバの近位コンパートメントにおいて平板培養した。脊髄のMNは、その軸索を遠位コンパートメントに向けて伸ばす。この時点では、Qdot-BDNFは、遠位コンパートメントにのみ適用された。その後、Qdot-BDNFの軸索輸送を、高分解能回転ディスク共焦点イメージングシステムにより可視化し、記録した。
【0240】
回転ディスク共焦点顕微鏡を使用して、Qdot-BDNFを運動ニューロン外植片培養物の軸索に沿って追跡した。60倍の倍率で取得したQdot-BDNF軸索輸送のタイムラプス画像(図1C)。黄色の矢印は、細胞体に向かって逆行的(左向き)に輸送されるQdot-BDNF粒子を示す。スケールバー:10μm。一番下のパネルは、完全なQdot-BDNFタイムラプス動画のキモグラフである。スケールバー:水平10μm;垂直100秒(図1C)。
【0241】
実験6日目に、チャンバの近位コンパートメント及び遠位コンパートメントの両方にビヒクル及びプリドピジンを2つの濃度(0.1μM、1μM)で添加し、一晩インキュベートした後、Qdot-BDNFを遠位コンパートメントに添加した(図1A及び1B)。6つの互いに異なる培養物から採取した6つの互いに独立した生物学的反復サンプルを試験し、各培養物及びニューロン/グリアを含む外植片の約250個のBDNF粒子を、溝内の軸索に沿って追跡した。速度nは、単一のBDNF粒子の運動を指す。シグマ1受容体ノックアウトマウス(S1R-KOまたはS1R-/-)のMNに対して、同様の実験を繰り返した(Langa、2003)。S1R-KOマウス胚の腹側脊髄切片を、上述したようにして、MFC中で培養し、平板培養し、Qdot-BDNFの軸索輸送を分析した。
【0242】
プリドピジンが添加されたまたは添加されていないSOD1G93外植片及びS1R-KO外植片を、同腹対照(LM)と比較した。
【0243】
Qdot-BDNF粒子追跡を、BITPLANE社製のImarisにより、半自動スポット追跡機能を使用して行った。粒子分析の選択基準:追跡の継続時間>10フレーム;平均速度≧0.2μm/秒;停止期間:3フレームについて速度<0.1μm/秒。その後、6つの互いに独立した培養物から粒子輸送、具体的には瞬間速度(図2A)及び停止カウント(図2B)をさらに分析するために、データをMATLABにエクスポートした。
【0244】
結果:
【0245】
図2Aは、プリドピジンが、SOD1G93Aの運動ニューロンにおけるBDNF軸索輸送の瞬間速度を改善することを示す。BDNF逆行性輸送の瞬間速度は、SOD1G93A運動ニューロンにおいて一般的に減少する。SOD1G93AのMNは、WTのMNと比較して遅い瞬間速度を示す。プリドピジン治療は、WTのMN(0.1μM)と、SOD1G93AのMN(0.1μMと1μM)との両方において、瞬間速度を速めた。SOD1G93AのMNに対する25μMまたは100μMのリルゾールの適用は、瞬間速度に影響を与えなかった。S1R-/-のMNは、BDNF軸索輸送障害を示した。0.1μMまたは1μMのプリドピジンは、S1R-KOのMNにおけるこれらの軸索輸送障害を回復することができなかった(図2A)。
【0246】
粒子の停止カウント(Qdot-BDNFの1秒当たりのカウントされた停止数)は、プリドピジンが、WT(青色)のMN(0.1μMのみ)と、SOD1G93A(赤色)のMN(0.1μM及び1μMの両方)とにおける軸索輸送中の停止回数を減少させることを示す。S1R-/-のMNにおけるQdot-BDNFの軸索輸送パラメータは、試験した全ての濃度(図2B)で、プリドピジンに対して応答しないことを示す。
【0247】
これらの結果は、プリドピジンが、SOD1G93Aの運動ニューロンにおけるBDNF軸索輸送を改善し、ALS関連障害を修正する能力を有することを示す。
【0248】
実験2:軸索‐筋肉成長/変性アッセイ
【0249】
ALSの発病における初期のイベントは、軸索変性である。コンパートメント共培養マイクロ流体チャンバシステムを使用して、プリドピジンが軸索変性を変化させるかどうかを判定した(図3)。発症前の(P60)WTまたはSOD1G93Aマウスの初代筋肉細胞を培養した。6日目に、初代骨格筋芽細胞をMFCの遠位コンパートメントで培養した。約6日後(12日目)に、HB9-GFP(特定の運動ニューロンマーカー)を発現するWTまたはSOD1G93A E12.5マウス胚からの腹側脊髄外植片を近位コンパートメントに播種した後、両方のコンパートメントにプリドピジンまたはビヒクルを適用した。プリドピジンは一日おきにリフレッシュした。外植片プレーティングの2日後(14日目)、回転ディスク共焦点システムでのライブイメージングを用いて運動軸索の成長及び変性を評価した。軸索の成長は、8時間にわたって10分ごとにイメージングすることによって追跡した。実験は3回繰り返した。
【0250】
結果:
【0251】
データは、プリドピジンが軸索成長を改善させたことを示す(図4)。SOD1G93A突然変異体を保有する筋細胞では、WT(LM)筋細胞と比較して、微小流体コンパートメントチャンバの遠位コンパートメントに侵入できる健康な軸索の数が減少している。1μMプリドピジン(右端のバー)による治療では、遠位コンパートメント(筋肉細胞のコンパートメント)に侵入する軸索の数が増加していることが示されている。(Y軸は、筋コンパートメントに侵入した軸索を有する溝の平均数である。)
【0252】
これらの結果は、プリドピジンが、軸索の成長を促進し、ALS関連障害を修正する能力を有することを示す。
【0253】
実験3:神経筋接合部(NMJ)の形成及び機能の測定
【0254】
シナプス破壊は、ALSで破壊された最も早い細胞コンパートメントである。ALSモデルのシナプス機能にプリドピジンが影響を及ぼす能力をテストするために、軸索が遠位コンパートメントに伸びてNMJ接続を生成すると、実験2の培養物をさらに約4日間成長させた(18日目)。この共培養では、初代筋細胞が完全に分化し、MN軸索との接続を形成し、これらの接続は、HB9:GFPニューロンと共局在したシナプス後性マーカー(AchR(アセチルコリンR))であった。図5A:上パネル:軸索によって接続された遠位コンパートメントの筋細胞の位相画像(緑色の矢印)。スケールバー:20μm。下パネル:筋細胞の高倍率画像:MN接触点は、シナプス後性AChRとHB9:GFP軸索との共局在化、及びシナプス前後性マーカーの3次元共局在化(coloc)によって見られるNMJの形成を明らかにする。NMJ機能を評価するために、筋肉収縮のムービーを、1秒あたり30フレームのフレームレートで1000フレームにわたって取得した(図5B)。筋収縮の経時的強度測定から抽出された筋収縮トレースは、収縮していない固定筋細胞の平坦なトレース(上)、及び複数の破裂イベントを示す収縮筋細胞のトレース(下)を示す。
【0255】
MN及びNMJの形成及び機能に対するプリドピジンの効果を検討するために、0.1または1μMのプリドピジンまたはビヒクルのいずれかを添加した。筋管における神経支配及び神経支配誘発収縮の割合の測定は、既に報告されているように生細胞イメージングを用いて評価した(Ionescu、2015;Zahavi、2015)。簡単に言えば、少なくとも1つの軸索が重なり合っているMFCの遠位コンパートメントにおける筋肉の収縮活動を調べた。ムービー中の運動活動に応じて、筋肉を、「収縮」または「非収縮」の2群に分類した。筋肉の運動性は、各筋肉の経時的な強度プロットを生成することによって検証した(図5B)。チャンバあたりの収縮筋線維の数を同一のチャンバ内で分析された筋線維の総数で除し、収縮した筋管の割合をNMJ活性についての出力として得た。
【0256】
結果:
【0257】
プリドピジンによる筋細胞の治療は、神経パターンを破裂させる可能性を高める神経支配を誘導することができた。SOD1突然変異体を保有する筋肉の神経支配率は、WT(野生型)筋と比較して低い(WTの約40%と比較して、20%の神経支配)。1μMのプリドピジンは、SOD1突然変異体を保有する筋肉の神経支配率をWTレベル近くまで高める(図6)。
【0258】
共培養における筋線維の収縮の割合は、MNを含有する培養では74%であるのに対して、MNの非存在下では筋肉の約10%のみが収縮したことを示している。SOD1G93Aを発現する細胞型の少なくとも1つを含有する共培養の組み合わせは、収縮する筋細胞の割合が著しく低いことを示している(図7A)。プリドピジンと共培養したSOD1G93A筋細胞(0.1μM及び1μM)の処理によって、収縮する筋細胞の割合が増加し、神経筋活動がWTレベルに戻る。S1R-/-MNsとWT筋細胞との組み合わせは、WT MNsと比較して収縮筋管の数が減少する。S1R-/-共培養への0.1μMプリドピジンの適用は、WTニューロンとの共培養における同一の濃度のプリドピジンで見られるように、神経筋活動を回復させなかった。1μMプリドピジンで処理した後に観察される収縮筋細胞の割合の増加は、未処理及び処理WT培養における収縮筋細胞の割合よりも有意に低い。データは平均±標準誤差として示されている。*p値<0.05;**p値<0.01、***p値<0.001、****p値<0.0001(スチューデントのt検定)。
【0259】
実験4:WT及びSOD1G93A MNにおけるERKの活性化
【0260】
ERK経路は、増殖及び分化を含む多数の細胞機能を促進する。ニューロンのERKリン酸化(活性化)は、BDNFの刺激などの神経栄養シグナル伝達に関連し、その結果、神経保護及び神経細胞の生存が促進される(Bonni、1999)。プリドピジンはS1Rを介してラット線条体におけるBDNFシグナル伝達を強化し、それがERK活性化を強化することは既に立証されている(Geva、2016)。2DIVでの初代MN培養細胞を、ニューロトロフィン及び無血清培地(PNB)で一晩飢餓培養した。翌日、プリドピジンまたは陽性対照としてのBDNFで、培養物を30分間処理した。
【0261】
結果:
【0262】
リン酸化ERK(pERK)についてのウエスタンブロット分析によって、WT MN(左パネル)及びSOD1G93A(中央パネル)の培養では30分という早い時期にプリドピジン(0.1μM及び1μM)によるERKの有意な活性化が示されたが、S1R-/-MNs(右パネル)では示されなかった(図8A)。pERKの定量化によって、それぞれ0.1μM及び1μMのプリドピジン適用後の、最大3.5倍及び最大4倍のWT MNの増加が明らかになった。SOD1G93Aは、それぞれ0.1μM及び1μMのプリドピジン適用後のpERKの約2.9倍及び約8.5倍の増加を示す。プリドピジンは、S1R-/-MNにおいてERKリン酸化を誘導しなかった。データは、平均pERK/ERK比±標準誤差として示されている。*p値<0.05、~p値<0.1(スチューデントのt検定)(図8B)。
【0263】
実験5:SOD1G93Aマウスの脊髄における変異型SOD1凝集体に対するプリドピジンの効果
【0264】
プリドピジンは、軸索輸送、軸索変性、NMJ機能、及びERK活性化に対する効果が実証されているように、S1Rの活性化によって神経保護特性を誘発した。S1Rは、変異型SOD1タンパク質がSOD1G93Aマウスの脊髄で凝集する傾向があるミトコンドリア外膜に近接したER膜上に存在する(Millecamps and Julien、2013)。発症前のSOD1G93Aマウス(5週齢)及びWT対照に、生理食塩水、3または30mg/kgのプリドピジンのいずれかを、11週間(16週齢まで)、毎日皮下投与した。実験の最後に、凍結切片用に腰椎(L1-L6)を抽出し、固定し、埋め込んだ。次に、10μMの切片を調製し、NSC500色素で染色してSOD1凝集体を可視化した(Hammarstrom、2010)。脊髄の灰白質及び白質における変異型SOD1凝集体の数に対するインビボでのプリドピジン治療の効果を評価した。
【0265】
結果:
【0266】
図9A-左パネル:4つのマウス群についての蛍光標識脊髄の低倍率の代表的な画像。右パネル:左パネルで四角で示された領域の高倍率画像。スケールバー:左パネル500μm;右パネル50μm。上から下:WTビヒクル、SOD1G93Aビヒクル、SOD1G93A 0.3mg/kgプリドピジン、SOD1G93A 30mg/kg、すべてNSC500色素で染色して、変異型SOD1タンパク質凝集体を標識している。WTマウスと比較して、SOD1G93Aマウスの脊髄の灰白質及び白質の両方で、mSOD1凝集体の数の有意な増加が観察された。30mg/kgのプリドピジンにより、SOD1G93A脊髄の灰白質及び白質の両方の凝集体の数は約50%減少した(図9A-9C)。データは平均±標準誤差として示されている。*p値<0.05;**p値<0.01(一元配置分散分析後、フィッシャーのLSD事後検定)(図9B-9Cのy軸は、平方mmあたりのNSC500‐陽性SOD1凝集体の数である)。
【0267】
実験6:筋線維萎縮及びNMJの保存のインビボ評価
【0268】
NMJ破壊、及びその後の骨格筋の消耗は、ALSの2つの主な病理である。筋線維萎縮及びNMJの保存に対するプリドピジンの効果をインビボで評価した。発症前のSOD1G93Aマウス及びWT対照(5週齢)を、生理食塩水、またはプリドピジン3若しくは30mg/kgのいずれかを11週間毎日皮下投与することによって、処理した。ビヒクルまたはプリドピジン処理した(30mg/kg、皮下注射)マウスの腓腹筋を16週齢のSOD1G93A及びWTマウスから抽出した。筋肉の断面をヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色し、各群の平均筋線維径を定量化した(図10A)。NMJの保存は、共局在する前(NFH+シナプシンI(緑))及び後(AchR(BTX;赤))のシナプスマーカーの共焦点イメージングと、腓腹筋における完全に神経支配されたNMJの数をカウントすることと、によって評価した(図11A)。
【0269】
結果:
【0270】
図10A:4つの群のマウスの腓腹筋のH&E染色断面の代表的な画像:WT-ビヒクル処理、WT-30mg/kgのプリドピジン処理、SOD1G93A-ビヒクル処理、SOD1G93A-30mg/kgのプリドピジン処理のマウス。SOD1G93A-ビヒクルマウスの筋肉組織は不良であり、WT-ビヒクル及びWT-30mg/kgプリドピジンと比較して、筋線維の直径が小さいことが明らかになった(図10A-10B)。プリドピジン(30mg/kg、毎日の皮下投与)によって、SOD1G93Aの筋肉繊維径が約4μm増加し、WTの筋が約5μm増加した。
【0271】
SOD1G93Aビヒクル処理マウスの筋肉におけるNMJの保存は、WTマウスと比較して、SOD1G93Aマウスの筋肉におけるNMJの約60%の予想される損失量、及びシナプス後装置の形態学的変化あを示す(図11A-11B)。驚くべきことに、プリドピジン処理によって、SOD1G93AマウスのNMJの損失は約20%に制限された。データは平均±標準誤差として示されている。*p値<0.05;**p値<0.01;***p値<0.001(二重盲検法、スチューデントのt検定)。
【0272】
全体として、これらの結果は、プリドピジンがALS細胞及び動物モデルにおいて神経保護効果を発揮したことを示している。SOD1G93A MNでは、インビトロで、プリドピジンはBDNF軸索輸送を改善し、ERK活性化を上方制御し、軸索の成長を改善し、筋肉の神経支配を改善し、NMJの形成及び機能を改善した。これらの神経保護効果はS1Rによって媒介された。インビボでのSOD1G93A ALSマウスのプリドピジン処理によって、脊髄における変異型SOD1凝集(特徴的な疾患表現型の1つ)が減少し、ALSによって減少する筋線維径が増加し、疾患組織で観察される変性NMが保存された。これらのデータは、神経保護剤としてのプリドピジン、及びALS患者の治療のための治療標的としてのS1Rの使用をサポートしている。
【0273】
プリドピジンの試験において有用な追加のALS動物モデルは、例えばMcGoldrick(2013)に記載されている。
【0274】
図において、略語は以下の通りである:Geno.=遺伝子型(すなわち、野生型(LM)、変異型SOD1)、Prido.=プリドピジン、mpk=キログラムあたりのミリグラム。
【0275】
実験7.ヒト対象におけるALSの治療
【0276】
プリドピジンの定期的な経口投与は、ALSに罹患したヒト対象におけるALSの症状を軽減する上で臨床的に意味のある利点をもたらす。プリドピジン療法は、過度の副作用無しに患者の治療に有効性をもたらし、以下の実施形態の少なくとも1つにおいて有効である。
【0277】
本治療法は、ALSの症状の改善において有効である、
本治療法は、運動ニューロンにおけるBDNF軸索輸送の改善、及び/またはERK活性化の改善において有効である、
本治療法は、NMJの形成及び保存の改善、NMJ構造の保存、NMJ機能の保存、及び/または筋組織の神経支配比の改善において有効である、
本治療法は、運動ニューロン軸索の成長の改善、及び/または運動ニューロン軸索の変性を含む軸索変性の低減において有効である、
本治療法は、筋細胞の生存の改善、筋繊維の直径及び機能の改善、筋繊維消耗の進行の低減、及び/または筋収縮の改善において有効である、または、
本治療法は、SOD1凝集の低減、及び/または仮性球麻痺疾患の進行の低減において有効である。
【0278】
いくつかの患者では、主治医がプリドピジン及び第2の化合物を投与し、第2の化合物は、リルゾール、エダラボン、デキストロメトルファン/キニジンである。いくつかの実施形態では、第2の化合物はラキニモドである。
【0279】
(参照文献)
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米国特許第RE46117号明細書
PCT出願公開第WO2016/138135号
PCT出願公開第WO2017/015609号
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11A
図11B
【図 】