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特許7082189ホスホコリン誘導体を含有する脂肪分解組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】ホスホコリン誘導体を含有する脂肪分解組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/685 20060101AFI20220531BHJP
   A61K 31/575 20060101ALI20220531BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20220531BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20220531BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
A61K31/685
A61K31/575
A61P3/04
A61K8/55
A61Q19/00
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020512641
(86)(22)【出願日】2018-04-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-21
(86)【国際出願番号】 KR2018004296
(87)【国際公開番号】W WO2019088378
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-01-22
(31)【優先権主張番号】10-2017-0145750
(32)【優先日】2017-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520066050
【氏名又は名称】ペンミクス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PENMIX LTD.
【住所又は居所原語表記】33,Georimak-gil,Jiksan-eup,Seobuk-gu,Cheonan-si,Chungcheongnam-do 31032, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】パク,ドンギュ
(72)【発明者】
【氏名】イ,サンユン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ヤンソプ
(72)【発明者】
【氏名】キム,スリン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジェファン
(72)【発明者】
【氏名】ムン,ジヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ,スンジュン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ハナ
(72)【発明者】
【氏名】チ,スンホ
【審査官】小川 知宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-515494(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0287199(US,A1)
【文献】国際公開第2009/67182(WO,A1)
【文献】Journal of Clinical and Aesthetic Dermatology,2016年,9(12),44-50
【文献】日本食品工業学会誌,1969年,16(11),504-507
【文献】GASTROENTEROLOGY,1981年,80(1),60-65
【文献】Experimental Physiology,1991年,76,39-52
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/685
A61K 31/575
A61P 3/04
A61K 8/55
A61Q 19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を活性成分として含む、脂肪分解を誘導するための、あるいは、局所の脂肪沈着を改善、抑制、または治療するための組成物であって、
前記化合物が、
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ステアロイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;および
1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンからなる群から選択される1種以上であり、かつ、
前記組成物が、局所投与用医薬組成物の形態であるか、あるいは、皮膚、皮下組織、筋肉組織、または腹部組織に適用するための、化粧料組成物の形態である組成物
【請求項2】
記化合物が、
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ステアロイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;および
1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンからなる群から選択される1種以上である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
記化合物が、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンである請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
有効量の胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩をさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩が、コール酸、グリココール酸、グリコデオキシコール酸、デオキシコール酸、タウロコール酸、ウルソデオキシコール酸、タウロウルソデオキシコール酸、タウロデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、グリコウルソデオキシコール酸、デオキシコール酸ナトリウム、およびタウロコール酸ナトリウムからなる群から選択される1種以上である請求項に記載の組成物。
【請求項6】
前記胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩が、グリココール酸、デオキシコール酸、タウロコール酸、タウロウルソデオキシコール酸、グリコウルソデオキシコール酸、デオキシコール酸ナトリウム、およびタウロコール酸ナトリウムからなる群から選択される1種以上である請求項に記載の組成物。
【請求項7】
記化合物またはその薬学的に許容可能な塩と前記胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩との重量比が、0.5:1~40:1の範囲である請求項に記載の組成物。
【請求項8】
前記局所投与用医薬組成物が、経皮投与用製剤の形態、皮下投与用製剤の形態、筋肉内投与用製剤の形態、または腹腔内投与用製剤の形態である請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記局所投与用医薬組成物が、液剤の形態または乾燥粉末製剤の形態である請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記局所投与用医薬組成物が、溶液、エマルションまたは凍結乾燥粉末の形態である請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記局所投与用医薬組成物が、pH調整剤、等張化剤、界面活性剤、安定化剤、保存剤、キレート化剤、緩衝剤、および凍結保護剤からなる群から選択される1種以上の薬学的に許容可能な添加剤;ならびに油、有機溶媒、および水性溶媒からなる群から選択される1種以上の薬学的に許容可能な担体を含む請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記化粧料組成物が、液体の形態または乾燥粉末の形態である請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記化粧料組成物が、溶液、エマルションまたは凍結乾燥粉末の形態である請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記化粧料組成物が、pH調整剤、等張化剤、界面活性剤、安定化剤、保存剤、キレート化剤、緩衝剤、および凍結保護剤からなる群から選択される1種以上の添加剤;ならびに油、有機溶媒、および水性溶媒からなる群から選択される1種以上の担体を含む請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
脂肪分解の誘導用の、あるいは、局所の脂肪沈着の改善、抑制、または治療用の薬剤を製造するための、化合物またはその薬学的に許容可能な塩の使用であって、
前記化合物が、
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ステアロイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;および
1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンからなる群から選択される1種以上であり、かつ、
前記薬剤が、局所投与用医薬組成物の形態であるか、あるいは、皮膚、皮下組織、筋肉組織、または腹部組織に適用するための化粧料組成物の形態である使用
【請求項16】
記化合物が、
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ステアロイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;および
1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンからなる群から選択される1種以上である請求項15に記載の使用。
【請求項17】
記化合物が、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンである請求項15に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスホコリン誘導体またはその薬学的に許容可能な塩を含む、脂肪分解のための、あるいは、局所の脂肪沈着を改善、抑制、または治療するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪は、白色脂肪組織に過剰摂取されたエネルギーの蓄積に由来し、白色脂肪組織で過剰に脂肪が蓄積された状態は一般的に肥満と呼ばれる。例えばホルモン感受性リパーゼ(Hormone sensitive lipase、HSL)による中性脂肪の遊離脂肪酸(FFA)とグリセロールへの分解は、脂肪分解(lipolysis)と呼ばれる。
【0003】
局所の脂肪沈着(LFD)を含む肥満の改善のために、外科的手術である脂肪吸引が行われている。脂肪吸引は、脂肪形成(lipoplasty)または脂肪彫刻吸引切除(liposculpture suction lipectomy)としても知られており、腹部、大腿、臀部、首、上腕など、人体の様々な部位から脂肪を除去する美容外科手術である。しかし、脂肪吸引は、手術部位での傷、腫脹、麻痺および灼熱感、感染の危険性;皮膚や神経の損傷;または重要な臓器での穿刺傷を含む、重大な副作用が発生するおそれがある。また、脂肪吸引は、治療や回復にかなりの期間を要し、また、手術の過程で局所麻酔または全身麻酔を必要とするため、麻酔に関連する危険性が存在する。
【0004】
ホスファチジルコリン(PC)は、ヘッド基としてコリンが導入されたリン脂質類である。これらは、動物、植物、酵母、および真菌類に広く見られ、レシチンまたは不飽和レシチンとも呼ばれる。これらは、哺乳動物の脳、神経、血球、卵黄などに主に含まれており、植物では大豆、ヒマワリの種、小麦胚芽などに主に含まれている。ホスファチジルコリンは、分子内に4つの二重結合を有するため、製造過程や保管過程で容易に酸化されてその構造が変化する。このような欠点を克服するために、不飽和レシチンに水素を添加して製造される飽和レシチン形態が開発された。米国公開特許公報第2005/0287199号は、レシチンを注入することを含む、脂肪組織を減少させる方法を開示している。また、米国公開特許公報第2016/0339042号は、レシチンおよび胆汁酸またはその塩を含む組成物を近位または遠位脂肪組織に局所投与することを含む、局所の脂肪組織を減少させる方法を開示している。しかし、脂肪分解を誘導するためのレシチンの局所注射は、紅斑、炎症、組織壊死、浮腫、陥凹変形(dimpling)などの副作用につながる。また、レシチン含有製剤を長期間保管する場合は、安定性と脂肪分解活性が低下するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、優れた脂肪分解活性及び製剤安定性を有し、有意な副作用がない、脂肪分解のための、あるいは、局所の脂肪沈着(LFD)を改善、抑制、または治療するための組成物を開発するために、様々な研究を行った。本発明者らは、様々なコリン誘導体の活性、副作用、および安定性を評価した。その結果、本発明者らは、特定のホスホコリン誘導体を含有する組成物が、従来のホスファチジルコリン含有製剤に比べて、均一かつ優れた脂肪分解活性および安定性を有し、投与または適用部位での炎症、組織壊死などの副作用を最小限に抑えることができることを発見した。
【0006】
したがって、本発明は、前記ホスホコリン誘導体を活性成分として含む、脂肪分解を誘導するための、あるいは、局所の脂肪沈着を改善、抑制、または治療するための組成物を提供する。
【0007】
また、本発明は、有効量の前記ホスホコリン誘導体を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物で脂肪分解を誘導するための、あるいは、局所の脂肪沈着を改善、抑制、または治療するための方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、脂肪分解の誘導用の、あるいは、局所の脂肪沈着の改善、抑制、または治療用の薬剤を製造するための、前記ホスホコリン誘導体の使用を提供する。
【発明を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様において、有効量の化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を活性成分として含む、脂肪分解を誘導するための、あるいは、局所の脂肪沈着を改善、抑制、または治療するための組成物が提供される:
<化学式1>
式中、
XおよびYは、それぞれ独立に、C~C17アルキル基;または1つもしくは2つの二重結合を有するC15~C21アルケニル基であり、
但し、XおよびYは、同時にC17アルキル基ではなく;また、XおよびYは、同時に2つの二重結合を有するC17アルケニル基ではない。
【0010】
本発明の組成物において、前記化学式1の化合物は、
1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ミリストイル-2-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ミリストイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-パルミトイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ステアロイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ステアロイル-2-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;および
1-ステアロイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0011】
好ましくは、本発明の組成物において、前記化学式1の化合物は、
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ステアロイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;および
1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン
からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0012】
より好ましくは、本発明の組成物において、前記化学式1の化合物は、
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ステアロイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;および
1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン
からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0013】
最も好ましくは、本発明の組成物において、前記化学式1の化合物は、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンであってもよい。
【0014】
本発明の組成物は、有効量の胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩をさらに含んでもよい。前記胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩は、コール酸、グリココール酸、グリコデオキシコール酸、デオキシコール酸、タウロコール酸、ウルソデオキシコール酸、タウロウルソデオキシコール酸、タウロデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、グリコウルソデオキシコール酸、デオキシコール酸ナトリウム、およびタウロコール酸ナトリウムからなる群から選択される1種以上であってもよい。好ましくは、前記胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩は、グリココール酸、デオキシコール酸、タウロコール酸、タウロウルソデオキシコール酸、グリコウルソデオキシコール酸、デオキシコール酸ナトリウム、およびタウロコール酸ナトリウムからなる群から選択される1種以上であってもよい。一実施形態において、前記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩と前記胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩との重量比は、0.5:1~40:1の範囲であってもよい。
【0015】
本発明の組成物は、局所投与用医薬組成物の形態であってもよい。前記局所投与用医薬組成物は、経皮投与用製剤の形態、皮下投与用製剤の形態、筋肉内投与用製剤の形態、または腹腔内投与用製剤の形態であってもよい。また、前記局所投与用医薬組成物は、液剤の形態または乾燥粉末製剤の形態;好ましくは溶液、エマルションまたは凍結乾燥粉末の形態であってもよい。前記局所投与用医薬組成物は、pH調整剤、等張化剤、界面活性剤、安定化剤、保存剤、キレート化剤、緩衝剤、および凍結保護剤からなる群から選択される1種以上の薬学的に許容可能な添加剤;ならびに油、有機溶媒、および水性溶媒からなる群から選択される1種以上の薬学的に許容可能な担体を含んでもよい。
【0016】
本発明の組成物は、皮膚、皮下組織、筋肉組織、または腹部組織に適用するための化粧料組成物の形態であってもよい。前記化粧料組成物は、液体の形態または乾燥粉末の形態;好ましくは溶液、エマルションまたは凍結乾燥粉末の形態であってもよい。前記化粧料組成物は、pH調整剤、等張化剤、界面活性剤、安定化剤、保存剤、キレート化剤、緩衝剤、および凍結保護剤からなる群から選択される1種以上の添加剤;ならびに油、有機溶媒、および水性溶媒からなる群から選択される1種以上の担体を含んでもよい。
【0017】
本発明の他の態様において、有効量の化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物で脂肪分解を誘導するための、あるいは、局所の脂肪沈着を改善、抑制、または治療するための方法が提供される。
【0018】
本発明の方法において、前記化学式1の化合物は、
1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ミリストイル-2-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ミリストイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-パルミトイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ステアロイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ステアロイル-2-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;および
1-ステアロイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0019】
好ましくは、本発明の方法において、前記化学式1の化合物は、
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ステアロイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;および
1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン
からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0020】
より好ましくは、本発明の方法において、前記化学式1の化合物は、
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ステアロイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;および
1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン
からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0021】
最も好ましくは、本発明の方法において、前記化学式1の化合物は、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンであってもよい。
【0022】
本発明のさらに他の態様において、脂肪分解の誘導用の、あるいは、局所の脂肪沈着の改善、抑制、または治療用の薬剤を製造するための、化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の使用が提供される。
【0023】
本発明の使用において、前記化学式1の化合物は、
1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ミリストイル-2-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ミリストイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-パルミトイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ステアロイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ステアロイル-2-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;および
1-ステアロイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0024】
好ましくは、本発明の使用において、前記化学式1の化合物は、
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ステアロイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;および
1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン
からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0025】
より好ましくは、本発明の使用において、前記化学式1の化合物は、
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ステアロイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;および
1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン
からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0026】
最も好ましくは、本発明の使用において、前記化学式1の化合物は、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンであってもよい。
【発明の効果】
【0027】
特定のホスホコリン誘導体、すなわち前記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含有する本発明の組成物は、従来のホスファチジルコリン含有製剤に比べて、優れた脂肪分解活性を示すのみならず、脂肪分解活性において均一性を示す。また、本発明の組成物は、投与または適用部位での炎症、組織壊死などの副作用を最小限に抑えることができる。また、本発明の組成物は、優れた貯蔵安定性を有する。したがって、本発明の組成物は、皮下脂肪の不均衡な配置およびそれによる審美的なダメージ(aesthetic damages)を防止することができるので、脂肪分解の誘導、あるいは、局所の脂肪沈着の改善、抑制、または治療に有用に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明の製剤、比較例の製剤、およびビークル(vehicle)を投与したラットの非投与部位(点線の円)と投与部位(実線の円)での脂肪分解活性を観察して、得られた結果を示す。
図2図2は、本発明の製剤、比較例の製剤、およびビークル(vehicle)を投与したラットの非投与部位(点線の円)と投与部位(実線の円)での脂肪分解活性を観察して、得られた結果を示す。
図3図3は、本発明の製剤、比較例の製剤、およびビークルを投与したラットから摘出した皮下脂肪のヘマトキシリン‐エオジン染色によって、炎症などの副作用を測定して、得られた結果を示す。
図4図4は、本発明の製剤、比較例の製剤、およびビークルを投与したラットから摘出した皮下脂肪のオイルレッドO(Oil Red O)反応によって、脂肪分解の均一性を測定して、得られた結果を示す。図4において、赤色オイルサイズが小さいほど、脂肪分解が優れていることを示す。
図5図5は、室温で7日間および30日間保管した後、本発明の製剤と比較例の製剤の安定性を評価して、得られた結果を示す。各パネルの第一、第二、および第三のサンプルは、それぞれ、製造時、7日間室温で保管した後、および30日間室温で保管した後の外観を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明のホスホコリン誘導体は、均一かつ優れた脂肪分解活性を有し、また、投与または適用部位で、炎症、組織壊死などの副作用を最小限に抑えることができることから、脂肪分解を誘導するための、あるいは、局所の脂肪沈着(LFD)を改善、抑制、または治療するための組成物に有用に適用することができる。したがって、本発明は、前記ホスホコリン誘導体を活性成分として含む、脂肪分解を誘導するための、あるいは、局所の脂肪沈着(LFD)を改善、抑制、または治療するための組成物を提供する。具体的には、本発明は、有効量の化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を活性成分として含む、脂肪分解を誘導するための、あるいは、局所の脂肪沈着を改善、抑制、または治療するための組成物を提供する:
<化学式1>
式中、
XおよびYは、それぞれ独立に、C~C17アルキル基;または1つもしくは2つの二重結合を有するC15~C21アルケニル基であり、
但し、XおよびYは、同時にC17アルキル基ではなく;また、XおよびYは、同時に2つの二重結合を有するC17アルケニル基ではない。
【0030】
本発明の組成物において、前記化学式1の化合物は、
1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DDPC);
1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC);
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC);
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC);
1-ミリストイル-2-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(MPPC);
1-ミリストイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(MSPC);
1-パルミトイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(PMPC);
1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(PSPC);
1-ステアロイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(SMPC);
1-ステアロイル-2-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(SPPC);
1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DEPC);
1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC);
1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC);および
1-ステアロイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(SOPC)
からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0031】
好ましくは、本発明の組成物において、前記化学式1の化合物は、
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC);
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC);
1-ステアロイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(SMPC);
1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DDPC);
1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(PSPC);および
1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)
からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0032】
より好ましくは、本発明の組成物において、前記化学式1の化合物は、
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ステアロイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;および
1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン
からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0033】
最も好ましくは、本発明の組成物において、前記化学式1の化合物は、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)であってもよい。
【0034】
前記化学式1の化合物またはその塩は、公知の化合物であり、公知の方法により製造することができる。例えば、前記化学式1の化合物またはその塩は、大豆レシチンを加水分解および精製してグリセロホスホコリンを得た後、前記グリセロホスホコリンをミリスチン酸などの脂肪酸と反応させることによって、製造してもよい。また、前記化学式1の化合物またはその塩は、商業的に購入することができる(例えば、Sigma-Aldrich)。
【0035】
前記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、不斉炭素を含有する置換基を有していてもよく、したがって、ラセミ混合物(RS)の形態、または(R)もしくは(S)異性体などの光学異性体の形態であってもよい。したがって、特に記載がない限り、前記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、ラセミ混合物(RS)および(R)または(S)異性体などの光学異性体を含む。
【0036】
本発明の化学式1の化合物は、薬学的に許容可能な塩の形態であってもよい。前記塩は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、または炭酸などの無機酸から誘導された塩およびクエン酸、酢酸、乳酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、ラクトビオン酸、サリチル酸、マロン酸、ギ酸、プロピオン酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸、グルコン酸、メタンスルホン酸、グリコール酸、コハク酸、p-トルエンスルホン酸、グルタミン酸、またはアスパラギン酸などの有機酸から誘導された塩を含む、酸付加塩の形態であってもよいが、これらに限定されない。また、前記塩は、リチウム塩、ナトリウム塩、もしくはカリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩もしくはマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;またはクロム塩を含む。
【0037】
本発明の組成物は、化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩に加えて、活性成分として有効量の胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩をさらに含んでもよい。前記胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩は、コール酸、グリココール酸、グリコデオキシコール酸、デオキシコール酸、タウロコール酸、ウルソデオキシコール酸、タウロウルソデオキシコール酸、タウロデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、グリコウルソデオキシコール酸、デオキシコール酸ナトリウム、およびタウロコール酸ナトリウムからなる群から選択される1種以上であってもよい。好ましくは、前記胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩は、グリココール酸、デオキシコール酸、タウロコール酸、タウロウルソデオキシコール酸、グリコウルソデオキシコール酸、デオキシコール酸ナトリウム、およびタウロコール酸ナトリウムからなる群から選択される1種以上であってもよい。より好ましくは、前記胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩は、グリココール酸、デオキシコール酸、タウロウルソデオキシコール酸、デオキシコール酸ナトリウム、およびタウロコール酸ナトリウムからなる群から選択される1種以上であってもよい。最も好ましくは、前記胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩は、グリココール酸またはその塩(例えば、ナトリウム塩)あるいはタウロコール酸またはその塩(例えば、ナトリウム塩)であってもよい。本発明の組成物が、化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩に加えて、活性成分として有効量の胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩をさらに含む場合、炎症、組織壊死などの副作用を最小限に抑え、また、効果的な脂肪分解を提供するために、前記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩と前記胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩との重量比は、0.5:1~40:1の範囲、好ましくは1:1~35:1の範囲、より好ましくは1:1~20:1の範囲、さらに好ましくは1:1~10:1の範囲であってもよい。
【0038】
本発明の組成物は、非経口投与されてもよく、より好ましくは非経口経路で局所投与されてもよい。前記局所投与は、目の下、あごの下、腕の下、臀部、ふくらはぎ、背中、大腿、足首、腹部などの部位での局所投与を含む。例えば、本発明の組成物は、局所投与用医薬組成物の形態であってもよい。前記局所投与用医薬組成物は、経皮投与用製剤の形態、皮下投与用製剤の形態、筋肉内投与用製剤の形態、または腹腔内投与用製剤の形態であってもよい。また、前記局所投与用医薬組成物は、単回投与用または多回投与用製剤であってもよい。前記多回投与用製剤は、約0.5mlの用量を1日1回以上、3日~14日の間隔で投与するのに適した製剤として製造されてもよい。必要に応じて、前記多回投与用製剤は、0.5~2.0cmの間隔を空けて複数の箇所に反復投与されてもよい。
【0039】
前記局所投与用医薬組成物は、液剤の形態または乾燥粉末製剤の形態であってもよい。前記液剤は、溶液、エマルション、懸濁液などを含み、好ましくは、溶液またはエマルションの形態を含む。前記液剤は、細菌フィルターなどで滅菌濾過した後、アンプルまたはバイアルに充填されてもよい。前記乾燥粉末製剤は、溶液、エマルション、懸濁液などを回転蒸発乾燥、噴霧乾燥、流動層乾燥、および凍結乾燥(lyophilization)などの通常の方法で乾燥させて得られた粉末の形態、好ましくは凍結乾燥粉末の形態を含む。前記乾燥粉末製剤は、患者に投与する前に、注射用水、滅菌精製水、注射用水、生理食塩水、グルコース液、グルコース注射液、キシリトール注射液、D-マンニトール注射液、フルクトース注射液、デキストラン-40注射液、デキストラン-70注射液、アミノ酸注射液、リンゲル液、ラクトリンゲル液などで希釈されてもよい。
【0040】
前記液剤または乾燥粉末製剤の形態の局所投与用医薬組成物は、薬学的に許容可能な添加剤および/または担体を使用して、薬剤学の分野で使用される通常の方法によって製造されてもよい。したがって、前記局所投与用医薬組成物は、pH調整剤、等張化剤、界面活性剤、安定化剤、保存剤(抗菌剤)、キレート化剤、緩衝剤、および凍結保護剤からなる群から選択される1種以上の薬学的に許容可能な添加剤;ならびに油、有機溶媒、および水性溶媒からなる群から選択される1種以上の薬学的に許容可能な担体を含んでもよい。
【0041】
前記pH調整剤は、注射製剤で通常使用されるpH調整剤を含み、例えば、水酸化ナトリウム、クエン酸、酢酸、リン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、コハク酸などを含むが、それらに制限されるものではない。本発明の医薬組成物は、pH3~pH9のpH範囲、好ましくはpH5~pH8のpH範囲を有していてもよい。前記pH範囲を有する医薬組成物は、局所投与した際に、痛みおよび/または炎症を最小限に抑えることができる。
【0042】
前記等張化剤は、糖、糖アルコール、塩類などを含み、例えば、グルコース、グリセリン、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、分子量1000以下のポリエチレングリコール)、デキストロース、ヒドロキシプロピルベータデクス、マンニトール、塩化カリウム、デキストラン、フィコール、ゼラチン、ヒドロキシエチルスターチなどを含むが、それらに制限されるものではない。一実施形態において、前記等張化剤は、グリセリンおよび/または塩化ナトリウムであってもよい。特に、グリセリンは、製剤の安定性の向上に寄与し得る。前記等張化剤は、生理学的に許容可能な浸透圧を提供するのに適した量で使用されてもよい。
【0043】
前記界面活性剤は、イオン性、非イオン性、および/または両性界面活性剤を含む。一実施形態において、前記界面活性剤は、非イオン性界面活性剤であってもよい。前記非イオン性界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル[例えば、Tween系界面活性剤(Tween series surfactants)]、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体[例えば、ポロキサマー系界面活性剤(Poloxamer series surfactants)]などを含むが、それらに制限されるものではない。
【0044】
前記安定化剤は、例えば、コレステロール、β-コレステロール、シストステロール、エルゴステロール、スティグマステロール、スティグマステロールアセテート、ラノステロールおよびそれらの組み合わせを含むが、それらに制限されるものではない。一実施形態において、前記安定化剤は、コレステロールであってもよい。
【0045】
前記保存剤は、薬剤学の分野で通常使用される抗菌剤を含む。前記保存剤は、ベンジルアルコール、グリセリン、m-クレゾール、フェノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、アカシア、アルブミン、アルコール、アルギン酸、パルミチン酸アスコルビル、アスパルテーム、ホウ酸、クエン酸、グリセリン、ペンテト酸、酢酸ナトリウム、ソルビン酸、クロロブタノール、o-クレゾール、ρ-クレゾール、クロロクレゾール、硝酸フェニル水銀、チメロサール、安息香酸、コレステロールなどを含むが、それらに制限されるものではない。一実施形態において、前記保存剤は、ベンジルアルコールおよび/またはグリセリンであってもよい。
【0046】
前記キレート化剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ブチレンジアミン四酢酸、シクロヘキサン-1,2-ジアミン四酢酸(CyDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DETPA)、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン-N,N,N’,N’-四酢酸(DHPTA)、メチルイミノ二酢酸、プロピレンジアミンテトラ酢酸、1,5,9-トリアザシクロドデカン-N,N',N”-トリス(メチレンホスホン酸)(DOTRP)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-テトラキス(メチレンホスホン酸)(DOTP)、ニトリロトリス(メチレン)トリホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DETAP)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1-ヒドロキシエチレン-1,1-ジホスホン酸、ビス(ヘキサメチレン)トリアミンホスホン酸、1,4,7-トリアザシクロノナン-N,N',N''-トリス(メチレンホスホン酸)(NOTP)、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、マルトール、酒石酸、グルコン酸、グリセリン酸、シュウ酸、フタル酸、マレイン酸、マンデル酸、マロン酸、乳酸、サリチル酸、サリチル酸メチル、5-スルホサリチル酸、没食子酸、没食子酸プロピル、ピロガロール、8-ヒドロキシキノリン、システインなどを含むが、それらに制限されるものではない。
【0047】
前記緩衝剤は、リン酸水素二ナトリウム(二塩基性リン酸ナトリウム)、クエン酸、クエン酸ナトリウム水和物、クエン酸カリウム、酢酸、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸三カルシウム、乳酸カルシウム、グリシン、マレイン酸、リンゴ酸、グルタミン酸ナトリウム、グルタミン酸モノナトリウム、乳酸ナトリウム、リン酸ナトリウムおよびそれらの混合物などを含むが、それらに制限されるものではない。
【0048】
前記凍結保護剤は、糖、糖アルコールまたはそれらの混合物であってもよい。前記糖はラクトース、マルトース、スクロース、マンノース、トレハロース、キシロース、フルクトース、およびラフィノースからなる群から選択される1種以上であっても良い。前記糖アルコールは、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、マルチトール、キシリトール、およびラクチトールからなる群から選択される1種以上であっても良い。また、前記凍結乾燥保護剤は、グリシン、ヒスチジン、ポリビニルピロリドン(PVP)などをさらに含んでもよいが、それらに限定されるものではない。
【0049】
前記有機溶媒は、エタノール(無水エタノール、発酵スピリッツなどを含む)、メタノール、アセトン、ジアセトン、オクタノール、イソプロピルアルコール、ラウリルアルコール、ポリビニルアルコールなどのアルコール類;ポリエチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンエチレングリコール、チオグリコール酸などのグリコール類を含むが、それらに制限されるものではない。
【0050】
前記油は、植物油、中鎖トリグリセリド(MCTs)、コレステロール、ステアリン酸グリセリル、オレイン酸などを含むが、それらに制限されるものではない。一実施形態において、前記油は、植物油および/またはオレイン酸であってもよい。前記植物油は、綿実油、コーン油、ゴマ油、大豆油、オリーブ油、ココナッツ油、ピーナッツ油、ひまわり油、サフラワー油、アーモンド油、アボカド油、パーム油、パームカーネル油、ババス油、ブナの実油、亜麻仁油、キャノーラ油、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。一実施形態において、前記植物油は、大豆油であってもよい。
【0051】
前記水性溶媒は、注射用水、滅菌精製水、塩水、デキストロース水溶液またはスクロース水溶液などを制限なしで含む。
【0052】
本発明に係る局所投与用医薬組成物は、通常、密封および滅菌されたプラスチック容器または有機容器に収容される。前記容器は、アンプル、バイアル、シリンジ、またはカートリッジなどの規定容量の形状で提供されるか、あるいは注射用バックまたは注射用瓶などの大容量の形状で提供されてもよい。
【0053】
本発明に係る局所投与用医薬組成物において、前記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、1日あたり約1mg/kg~約1,500mg/kgの範囲の有効量で投与されても良く、この量は患者の年齢、体重、感受性、症状または製剤の形態などに応じて変更されても良い。一実施形態において、前記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、単位製剤当たり、1~1,000mg、好ましくは1~500mgの範囲の量で配合されていてもよい。また、前記したように、前記胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩の有効量は、化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩との重量比を考慮して、適切に定められてもよい。
【0054】
本発明の組成物は、また、皮膚、皮下組織、筋肉組織、または腹部組織に適用するための化粧料組成物の形態であってもよい。本発明の化粧料組成物は、約0.5mlの用量を1日1回以上、3日~14日の間隔で適用するのに適した化粧料として製造されてもよい。必要に応じて、本発明の化粧料組成物は、0.5~2.0cmの間隔を空けて複数の箇所に反復適用されてもよい。
【0055】
本発明の化粧料組成物は、様々な形態であってもよく、その形態は限定されない。すなわち、本発明の化粧料組成物は、クリーム、パック、ローション、エッセンス、クレンジングウォーター、ファンデーション、メイクアップベース、局所注射など通常の化粧料組成物形態であってもよい。前記化粧料組成物は、液体の形態または乾燥粉末の形態であってもよい。前記液体形態は、溶液、エマルション、懸濁液などを含み、好ましくは、溶液またはエマルションの形態を含む。必要に応じて、前記液体形態は、細菌フィルターなどで滅菌濾過した後、アンプルまたはバイアルに充填されてもよい。前記乾燥粉末形態は、溶液、エマルション、懸濁液などを回転蒸発乾燥、噴霧乾燥、流動層乾燥、凍結乾燥(lyophilization)などの通常の方法で乾燥させて得られた粉末の形態、好ましくは凍結乾燥粉末の形態を含む。前記乾燥粉末形態は、対象に適用する前に、注射用水、滅菌精製水、注射用水、生理食塩水などで希釈されてもよい。
【0056】
前記液体形態または乾燥粉末の形態の化粧料組成物は、添加剤および/または担体を使用して、化粧料の分野で使用される通常の方法によって製造されてもよい。したがって、前記化粧料組成物は、pH調整剤、等張化剤、界面活性剤、安定化剤、保存剤、キレート化剤、緩衝剤、および凍結保護剤からなる群から選択される1種以上の添加剤;ならびに油、有機溶媒、および水性溶媒からなる群から選択される1種以上の担体を含んでもよい。前記添加剤および担体は、上記の通りである。また、前記化粧料組成物は、通常、密封および滅菌されたプラスチック容器または有機容器に収容される。前記容器は、アンプル、バイアル、シリンジ、またはカートリッジなどの規定容量の形状で提供されるか、あるいは注射用バックまたは注射用瓶などの大容量の形状で提供されてもよい。
【0057】
本発明に係る化粧料組成物において、前記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、1日あたり約1mg/kg~約1,500mg/kgの範囲の量で適用されても良く、この量は対象の年齢、体重、感受性、症状、製剤の形態などに応じて変更されても良い。一実施形態において、前記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、単位化粧料組成物当たり、1~1,000mg、好ましくは1~500mgの範囲の量で配合されていてもよい。また、前記したように、前記胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩の有効量は、化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩との重量比を考慮して、適切に定められてもよい。
【0058】
本発明は、また、有効量の化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物で脂肪分解を誘導するための、あるいは、局所の脂肪沈着を改善、抑制、または治療するための方法を含む。
【0059】
本発明の方法において、前記化学式1の化合物は、
1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ミリストイル-2-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ミリストイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-パルミトイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ステアロイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ステアロイル-2-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;および
1-ステアロイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0060】
好ましくは、本発明の方法において、前記化学式1の化合物は、
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ステアロイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;および
1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン
からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0061】
より好ましくは、本発明の方法において、前記化学式1の化合物は、
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ステアロイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;および
1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン
からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0062】
最も好ましくは、本発明の方法において、前記化学式1の化合物は、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンであってもよい。
【0063】
本発明は、また、脂肪分解の誘導用の、あるいは、局所の脂肪沈着の改善、抑制、または治療用の薬剤を製造するための、化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の使用を含む。
【0064】
本発明の使用において、前記化学式1の化合物は、
1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ミリストイル-2-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ミリストイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-パルミトイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ステアロイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ステアロイル-2-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;および
1-ステアロイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0065】
好ましくは、本発明の使用において、前記化学式1の化合物は、
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ステアロイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;および
1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン
からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0066】
より好ましくは、本発明の使用において、前記化学式1の化合物は、
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1-ステアロイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;
1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;および
1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン
からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0067】
最も好ましくは、本発明の使用において、前記化学式1の化合物は、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンであってもよい。
【0068】
以下、下記実施例および試験例により本発明についてさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例および試験例は、本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲はそれらによって制限されるものではない。
【実施例
【0069】
実施例1:凍結乾燥製剤の製造
表1に示した成分および含有量に従って、凍結乾燥粉末形態の凍結乾燥製剤を製造した。表1の含有量は、各成分の重量(mg)を示す。オレイン酸、グリセリン、コレステロール、およびベンジルアルコールを、エタノール(50ml)に、300rpmで攪拌しながら溶解させた。DMPCを、得られた溶液に、70±10℃に加温しながら溶解させて、第1溶液を得た。
【0070】
前記第1溶液を、マンニトール(62.5mg)を注射用水(800ml)に溶解した溶液に加え、高圧ホモジナイザー(Homogenizer Unidrive x1000D display、CAT GmbH、German)を用いて、15,000rpmで、約60分間均質化して、エマルションを得た。得られたエマルションを、メンブレンフィルター(PVDF 0.22μm フィルター、Millipore、USA)で無菌濾過した後、下記の条件下で凍結乾燥して、凍結乾燥粉末形態の製剤を得た。前記凍結乾燥製剤は、10mlバイアルに保管した。
【0071】
実施例2~18:凍結乾燥製剤の製造
表1および2に示した成分および含有量に従って、凍結乾燥粉末形態の凍結乾燥製剤を製造した。表1および2の含有量は、各成分の重量(mg)を示す。DMPCまたは他のホスホコリン誘導体を使用して、実施例1と同様の方法で、第1溶液を調製した。
【0072】
別の容器で、リン酸水素二ナトリウム、塩化ナトリウム、および水酸化ナトリウムを、注射用水(150ml)に、300rpmで攪拌しながら溶解させた。得られた溶液に、胆汁酸またはその塩を溶解させて、それぞれの第2溶液を調製した。
【0073】
前記第1溶液(50ml)および前記第2溶液(150ml)を、70±10℃で加温しながら混合した後、高圧ホモジナイザー(Homogenizer Unidrive x1000D display、CAT GmbH、German)を用いて、10,000rpmで、約30分間均質化して、それぞれのエマルションを得た。得られたエマルションを、マンニトール(62.9mg)を注射用水(800ml)に溶解した溶液に加えた後、高圧ホモジナイザー(Homogenizer Unidrive x1000D display、CAT GmbH、German)を用いて、15,000rpmで、約60分間均質化して、それぞれのエマルションを得た。得られたエマルションを、メンブレンフィルター(PVDF 0.22μm フィルター、Millipore、USA)で無菌濾過した後、実施例1と同様の条件下で凍結乾燥して、凍結乾燥粉末形態の製剤を得た。前記凍結乾燥製剤は、10mlバイアルに保管した。
【表1】
【表2】
【0074】
実施例19:溶液の製造
表3に示した成分および含有量に従って、溶液形態の製剤を製造した。表3の含有量は、各成分の重量(mg)を示す。ベンジルアルコールおよびTween80を、約30℃に加温した注射用水(7~8ml)に、溶解させた。DMPCを、得られた溶液に、300rpmで約1時間攪拌しながら溶解させた。約30℃に加温しながら、リン酸水素二ナトリウム、塩化ナトリウム、および水酸化ナトリウムを、得られた溶液に溶解してpHを調節した後、注射用水を使用して、溶液の最終容量を10mlに調節した。得られた溶液を、メンブレンフィルター(PVDF 0.22μm フィルター、Millipore、USA)で無菌濾過した後、バイアルに充填した。
【0075】
実施例20~36:溶液の製造
表3および4に示した成分および含有量に従って、溶液形態の製剤を製造した。表3および4の含有量は、各成分の重量(mg)を示す。ベンジルアルコールおよびTween80を、約30℃に加温した注射用水(7~8ml)に、溶解させた。それぞれの胆汁酸またはその塩を、前記溶液に、300rpmで1時間攪拌しながら溶解させた(第2溶液)。第2溶液を約30℃に加温しながら、DMPCまたは他のホスホコリン誘導体を、それぞれの第2溶液に、300rpmで1時間攪拌しながら溶解させた。リン酸水素二ナトリウム、塩化ナトリウム、および水酸化ナトリウムを溶解してpHを調節した後、注射用水を使用して、各溶液の最終容量を10mlに調節した。得られた溶液を、メンブレンフィルター(PVDF 0.22μm フィルター、Millipore、USA)で無菌濾過した後、バイアルに充填した。
【表3】
【表4】
【0076】
比較例1
DMPCの代わりに、ホスファチジルコリン(150mg)を使用し、実施例19と同様の手順に従って、ホスファチジルコリンを含有する溶液を製造した。
【0077】
比較例2
DMPCおよびタウロコール酸ナトリウムの代わりに、ホスファチジルコリン(150mg)およびデオキシコール酸ナトリウム(20mg)をそれぞれ使用し、実施例20と同様の手順に従って、ホスファチジルコリンおよびデオキシコール酸ナトリウムを含有する溶液を製造した。
【0078】
試験例1:脂肪分解活性の測定
1.動物モデルの準備と投与
Sprague-Dawleyラット(4週齢、Orient Bio Inc.、Seongnam、大韓民国)に、高脂肪食(D12492、脂肪から5%のカロリー、タンパク質から20%のカロリー、および炭水化物から35%のカロリー、RESEARCH DIET Inc.、New Brunswick、NJ、USA)を、9週間摂取させた。ラットは、20.0~24.0℃、40~60%の相対湿度の条件下で、12時間の明暗サイクルで飼育し、水は自由に(ad libitum)与えた。ラットの体重をモニタリングして、高脂肪ラットを得た(9週間摂取、13週齢)。各群のラットの平均体重は、下記表5に示すとおりである(13週齢、n=10)。
【0079】
活性成分を含んでいないビークル(vehicle)、実施例1~36の製剤、および比較例1および2の製剤を、0.2mlずつ、各群の高脂肪ラット(n=10)の左鼠径部(left groin)に、週1回4週間、皮下注射した。実施例1~18の製剤は、注射用水(10ml)にそれぞれの凍結乾燥粉末を溶解して、皮下注射した。
【表5】
【0080】
2.副作用と脂肪分解効果の評価
4週間の投与に続く2週間の回復期間後に、各群のラットを致死させた後、炎症および壊死の観察;投与部位での脂肪減少率の測定;ヘマトキシリン‐エオジン染色による炎症などの副作用の評価;オイルレッドO反応による脂肪分解効果の測定を行った。
【0081】
(1)炎症および壊死の観察
4週間の投与に続く2週間の回復期間後に、各群のラットを致死させた後、皮下注射部位の肉眼観察と触診を行った。その結果、本発明の製剤を投与した群では、注射部位に壊死と炎症が観察されず;触診でも硬い部位は確認されなかった。しかし、比較例1および2の製剤を投与した群では、注射部位に壊死および炎症が肉眼で観察され;触診でも非常に硬い変化が確認された。
【0082】
(2)投与部位での脂肪減少率の測定
4週間の投与に続く2週間の回復期間後に、各群のラットを致死させた後、組織解剖を行った。右鼠径部と左鼠径部(投与部位)の皮下組織を、肉眼で観察して、異常所見を確認し、写真を撮った。次に、組織を摘出し、その重量を測定した。相対重量および減少率を、下記の式に基づいて計算した。その結果を表6に示し、これらの写真を図1に示す。
相対重量(g)=鼠径部の脂肪重量(g)/体重(g)
減少率(%)=[1-(左(g)/右(g))]x100%
【表6】
【0083】
前記表6に示すように、本発明の製剤を投与した群は、投与部位の臓器重量および相対重量の著しい減少を示すことから、優れた脂肪分解活性を示すことが確認できる。また、図1及び図2に示すように、肉眼での観察により、非投与部位(点線の円)に比べて、投与部位(実線の円)での脂肪分解活性が著しく優れていることが確認できる。
【0084】
(3)ヘマトキシリン‐エオジン染色による副作用の評価
致死させたラットの腹部と鼠径部を解剖した後、それぞれの皮下脂肪を速やかに摘出し、10%中性緩衝ホルムアルデヒド溶液に浸漬して固定した。水洗と脱水の後、細胞をパラフィン溶液で処理して、パラフィンブロックを作製した。それぞれのパラフィンブロックを4~5μmの厚さに切り、ヘマトキシリン‐エオジンで染色した後、光学顕微鏡で観察した。その結果、図3に示すように、本発明の製剤を投与した群では、ほとんど完全な脂肪細胞が観察されたが、比較例1および2の製剤を投与した群では、炎症反応所見が観察された。
【0085】
(4)オイルレッドO反応による脂肪分解効果の測定
致死させたラットの腹部と鼠径部を解剖した後、それぞれの皮下脂肪を速やかに摘出し、鼠径部の脂肪組織を4%ホルムアルデヒド溶液で24時間固定した。30%スクロース溶液を使用して24時間脱水した後、クライオトーム(cryotome)(FSE Cryostats、Thermo Scientific)を使用して、OCT包埋クライオスタット(OCT-embedding cryostats)切片を作製した。10μmの厚さでスライドを準備した後、オイルレッドO(Lipid Stain)染色キット(製品番号:ab150678、abcam社、USA)で脂肪組織を染色し、光学顕微鏡で脂肪分解程度を観察した。その結果、図4に示すように、本発明の製剤を投与した群は、均一な脂肪分布を示すが、比較例1および2の製剤を投与した群は、脂肪の凝集、つまり、不均一な脂肪分布を示すことが確認できる。したがって、本発明の製剤は、投与部位で均一な脂肪分解活性を有するが、比較例1および2の製剤では、均一な脂肪分解が得られないことが確認できる。
【0086】
試験例2.安定性試験
実施例1~4、6、12、19~22、24、26、28、および30の製剤と比較例1および2の製剤を、7日間および30日間室温で保管した。実施例1~4、6、および12の製剤は、注射用水(10ml)に溶解させて保管した。それぞれの製剤の最初の製造時、7日間室温で保管時、および30日間室温で保管時の結果を図5に示した。図5の結果から、本発明の製剤は、優れた安定性を有することが分かる。
図1
図2
図3
図4
図5