(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】二次電池の充電装置及び方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/44 20060101AFI20220531BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20220531BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20220531BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
H01M10/44 Q
H02J7/04 H
H02J7/10 B
H01M10/48 P
H01M10/48 301
(21)【出願番号】P 2020543998
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(86)【国際出願番号】 KR2019016504
(87)【国際公開番号】W WO2020116853
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2020-08-19
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】10-2019-0060657
(32)【優先日】2019-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】597158986
【氏名又は名称】オーバーン・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】Auburn University
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ソン-ユル
(72)【発明者】
【氏名】イン、イリン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ハ-ナ
(72)【発明者】
【氏名】ジョー、ウォン-テ
(72)【発明者】
【氏名】アン、ヒョン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】リム、ジン-ヒュン
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-243373(JP,A)
【文献】特開2014-167406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/44
H02J 7/04
H02J 7/10
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の電圧を測定する電圧測定部と、
二次電池の温度を測定する温度測定部と、
前記電圧測定部及び前記温度測定部から電圧測定値及び温度測定値の入力を受け、充電電流の大きさを調節する制御部とを含み、
前記制御部は、
予め定義された電気化学的減次モデルを用いて、アノード粒子の平均イオン濃度、アノード粒子の表面イオン濃度、アノード粒子電位及びアノード電解質電位のうち少なくとも一つを含む二次電池の内部状態を決定するロジックと、
前記平均イオン濃度から二次電池の充電状態を決定するロジックと、
前記アノード粒子電位及び前記アノード電解質電位から副反応速度を決定するロジックと、
充電電流調節条件として、
前記副反応速度が速度上限に到達する条件
が満たされるか否かを決定するロジックと、
前記充電電流調節条件が満たされると、二次電池に印加される充電電流の大きさを減殺させるロジックとを行うように構成された、二次電池の充電装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記充電電流調節条件として、(i)前記電圧測定値がカットオフ電圧に到達する条件、及び(ii)前記アノード粒子の表面イオン濃度が濃度上限に到達する条件のうち少なくとも一つが満たされるか否かを決定するロジックを行うように構成された、請求項1に記載の二次電池の充電装置。
【請求項3】
前記電気化学的減次モデルは、下記のような電極におけるイオン保存方程式、電解質におけるイオン保存方程式、電極における電荷保存方程式、電解質における電荷保存方程式及び電気化学的反応速度方程式によって定義されるフルオーダーモデルから誘導された、請求項
2に記載の二次電池の充電装置。
【数126】
【数127】
【数128】
【数129】
【数130】
【請求項4】
前記電気化学的減次モデルは、前記電極におけるイオン保存方程式を多項式近似法によって単純化させた減次数式(i)'を含む、請求項
3に記載の二次電池の充電装置。
【数131】
【請求項5】
前記電気化学的減次モデルは、前記電解質におけるイオン保存方程式を状態-空間数式に単純化させた減次数式(ii)'を含む、請求項
3に記載の二次電池の充電装置。
【数132】
【請求項6】
前記電気化学的減次モデルは、前記電極における電荷保存方程式を有限差分法によって単純化させた減次数式(iii)'を含む、請求項
3に記載の二次電池の充電装置。
【数133】
【請求項7】
前記電気化学的減次モデルは、前記電解質における電荷保存方程式を有限差分法によって単純化させた減次数式(iv)'を含む、請求項
3に記載の二次電池の充電装置。
【数134】
【請求項8】
前記電気化学的減次モデルは、前記電気化学的反応速度方程式を線形化によって単純化させた減次数式(v)'を含む、請求項
3に記載の二次電池の充電装置。
【数135】
【請求項9】
前記制御部は、下記の充電状態方程式によってアノード粒子の平均イオン濃度から二次電池の状態を決定するように構成された、請求項
2から
8のいずれか一項に記載の二次電池の充電装置。
【数136】
【請求項10】
前記制御部は、下記の副反応速度方程式によって二次電池の副反応速度を決定するように構成された、請求項
2から
9のいずれか一項に記載の二次電池の充電装置。
【数137】
【請求項11】
前記制御部は、固相での平均イオン濃度
【数138】
、固相での平均イオン濃度フラックス
【数139】
及び固相での表面イオン濃度
【数140】
を含む二次電池の内部状態に関する状態-空間方程式と、二次電池の電圧
【数141】
に関する出力方程式とが下記のように定義される拡張カルマンフィルタを用いて、二次電池の推定電圧と前記電圧測定値との差が最小になるように、二次電池の内部状態に対する時間更新及び測定更新を繰り返して行うように構成された、請求項
2から
10のいずれか一項に記載の二次電池の充電装置。
【数142】
【数143】
【数144】
【請求項12】
前記制御部は、前記二次電池に接続されて前記二次電池に充電電流を印加する充電器を制御して充電電流の大きさを調節するように構成された、請求項
2から
11のいずれか一項に記載の二次電池の充電装置。
【請求項13】
請求項1から
12のいずれか一項に記載の二次電池の充電装置を含む、電気駆動装置。
【請求項14】
(a)二次電池の電圧及び温度を測定する段階と、
(b)予め定義された電気化学的減次モデルを用いて、アノード粒子の平均イオン濃度、アノード粒子の表面イオン濃度、アノード粒子電位及びアノード電解質電位のうち少なくとも一つを含む二次電池の内部状態を決定する段階と、
(c)前記アノード粒子の平均イオン濃度から二次電池の充電状態を決定する段階と、
(d)前記アノード粒子電位及び前記アノード電解質電位から副反応速度を決定する段階と、
(e)充電電流調節条件として、
前記副反応速度が速度上限に到達する条件
が満たされるか否かを決定する段階と、
(f)前記充電電流調節条件が満たされると、二次電池に印加される充電電流の大きさを減殺させる段階とを含む、二次電池の充電方法。
【請求項15】
前記充電電流調節条件として、(i)前記測定した電圧測定値がカットオフ電圧に到達する条件、及び(ii)前記アノード粒子の表面イオン濃度が濃度上限に到達する条件のうち少なくとも一つが満たされるか否かを決定する段階を含む、請求項14に記載の二次電池の充電方法。
【請求項16】
前記電気化学的減次モデルは、下記の数式(i)'~(v)'を含む、請求項
15に記載の二次電池の充電方法。
【数145】
【数146】
【数147】
【数148】
【数149】
【請求項17】
前記(c)段階は、下記の充電状態方程式によってアノード粒子の平均イオン濃度から二次電池の状態を決定する段階である、請求項
15または
16に記載の二次電池の充電方法。
【数150】
【請求項18】
前記(d)段階は、下記の副反応速度方程式によって二次電池の副反応速度を決定するように構成された、請求項
15から
17のいずれか一項に記載の二次電池の充電方法。
【数151】
【請求項19】
固相での平均イオン濃度
【数152】
、固相での平均イオン濃度フラックス
【数153】
及び固相での表面イオン濃度
【数154】
を含む二次電池の内部状態に対する状態-空間方程式と、二次電池の電圧
【数155】
に関する出力方程式とが下記のように定義される拡張カルマンフィルタを用いて、二次電池の推定電圧と前記電圧測定値との差が最小になるように、二次電池の内部状態に対する時間更新及び測定更新を繰り返して行う段階をさらに含む、請求項
15から
18のいずれか一項に記載の二次電池の充電方法。
【数156】
【数157】
【数158】
【請求項20】
前記(f)段階は、前記二次電池に接続されて前記二次電池に充電電流を印加する充電器を制御して充電電流の大きさを減殺させる段階である、請求項
15から
19のいずれか一項に記載の二次電池の充電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の充電装置及び方法に関し、副反応を考慮して二次電池の充電時間を短縮させ、退化の加速化を抑制することができる充電装置及び方法に関する。
【0002】
本出願は、2018年12月6日出願の米国特許出願第62/776,117号及び2019年5月23日出願の韓国特許出願第10-2019-0060657号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【0003】
本発明において、記号の命名法は下記の表1~表3の通りである。
【表1】
【0004】
【0005】
【背景技術】
【0006】
リチウムイオン電池は、高い出力と高いエネルギー密度のため、電気自動車に適用される最も有望なエネルギー貯蔵装置のうち一つとして認められている。リチウムイオン電池は、交流(alternating current)グリッドまたはエンジンによって駆動される電気モーターのようなエネルギー源によって充電されるかまたは再生モードで充電が行われる。
【0007】
現在、電気自動車が市場を拡大するためには克服すべき二つの技術的障壁がある。一つは相対的に短い運行距離であり、他の一つは長い充電時間である。
【0008】
運行距離は、より多くの電池を電気自動車に取り付けることで延長できるが、これは逆に充電時間の増加をもたらす。
【0009】
今までDC高速充電(50kW)、スーパーチャージャー(140kW)、またはエクストリーム高速充電(350kW)のような高出力充電器を用いて二次電池の充電時間を短縮させるための様々な試みが行われてきた。しかし、高出力充電によって増加した充電電流は電池の劣化を加速化させ、それによって電池の寿命が著しく短縮してより多くの熱が発生する。
【0010】
したがって、高速充電の設計においては、充電時間の低減だけでなく、電池の劣化率をできる限り低く維持して熱の発生を抑制することが重要である。
【0011】
リチウムイオン電池の充電方法を設計する際は、充電器からの可用電力に加えて、容量、カットオフ電圧、最大温度、最大充電電流及び温度範囲のような電池の仕様に応じた多様な動作特性を考慮しなければならない。
【0012】
一般に、新たな充電方法の設計に利用可能な3つの基本的な充電方法は、定電流(constant current:CC)充電、定電圧(CV:constant voltage)充電及び定電力(constant power:CP)充電を含む。
【0013】
CC充電方法は、定電流を使用するため、充電時間を短縮できるが、微小電流でも電池を過充電させるおそれがある。電池をCP充電方法で充電すると、相対的に高い開始段階の電流が充電時間を短縮できるが、これも過充電を誘発するおそれがある。CV充電方法は、過充電を防止できるものの、CC充電方法と同様に、低いSOCでの高い充電電流が高い温度上昇と高い劣化率を引き起こす。
【0014】
CV充電方法とCC充電方法とを組み合わせたCC/CV充電、または、CV充電方法とCP充電方法とを組み合わせたCP/CV充電方法は、過充電、高い温度上昇及び高い劣化率を防止する。
【0015】
2つの充電方法を組み合わせた充電方法は、電池の電圧がカットオフ電圧に到達するまでCC充電方法とCP充電方法を使用し、電池の電圧が満充電圧に到達した後はCV充電方法を使用する。低いSOCでは、制限し難い電流ピークのため、CP/CV充電方法による充電電流がCC/CV充電方法による充電電流よりも高い。したがって、充電初期の高い充電電流を制限し過充電を防止するという面で、安全な動作と低い劣化率を保障できるCC/CV充電方法が広く用いられている。
【0016】
充電時間、劣化、熱の発生及び安全性の面から、電気等価回路モデル(EECM:Electric Equivalent Circuit Model)や電気化学的モデルを用いてCC/CV充電方法を最適化するための多様な提案があった。
【0017】
EECMはSOC、インピーダンス、温度上昇の推定に用いることができる。推定されたSOCに基づいて電池の劣化速度を維持しながら充電時間を短縮できるように、相異なるSOC範囲で相異なる大きさの充電電流が用いられる。
【0018】
ヒステリシスによって生じるSOC推定値の不正確性は、ヒステシスシを抑制することで除去することができる。電池のインピーダンスは、高温によって引き起こされる劣化速度を減少できるように、熱発生率の制限に用いられる。高い充電電流によって引き起こされる温度上昇は、EECMと熱モデルとを組み合わせることで制限することができる。
【0019】
このような充電方法は、充電時間は短縮できるものの、劣化効果に対しては深く考慮していない。実際に、EECMは、電池の充電時に起きる電池内部のメカニズム、例えばイオン輸送、電気化学的反応、吸蔵/脱離及びイオン拡散については記述していない。結果的に、EECMは、退化速度を考慮して高い充電電流を最適化することができない。
【0020】
電池の内部プロセスは電気化学的モデルを用いてより正確に記述することができる。複数の層を有する大型のパウチ型電池は、幅方向では熱的勾配及びイオン濃度の勾配がなく、かつ、各層上の集電体が同じ電位を有するという仮定の下で、マイクロセルに単純化することができる。マイクロセルは、アノード、カソード及び分離膜を含むサンドイッチ構造である。アノード及びカソードは、集電体上に活物質粒子層がコーティングされた構造を有する。
【0021】
活物質粒子層は、互いに接触している同じ半径の球状粒子から構成され、リチウムイオンは平面を通じて輸送された後、活物質粒子の内部に拡散すると仮定することができる。このような構造を考慮したモデルは、擬二次元(pseudo-two-dimension:P2D)フルオーダーモデル(full order model:FOM)と呼ばれるが、以下、P2D-FOMと略称することにする。
【0022】
P2D-FOMは、SOCとアノードの電位を推定でき、推定されたSOCとアノードの電位は、高速充電方法の設計において、充電状態に応じて充電電流を減らし過充電を防止するのに用いることができる。しかし、P2D-FOMでも、電池劣化の主な原因を代表する副反応が考慮されない。また、P2D-FOMは、複雑な支配方程式によって引き起こされる長い演算時間のため、実際のコントローラに組み込むには適さない。
【0023】
P2D-FOMの偏微分方程式と非線形方程式が常微分方程式と線形方程式に単純化されれば、P2D-FOMは、電池管理システムへよりよく組み込み可能な減次モデル(reduced order model、以下、ROM)になる。P2D-FOMの減次モデルへの変換については、下記の参照論文1に開示されている。
【0024】
[参照論文1]
X. Li、M. Xiao、and S. Y. Choe. "Reduced order model (ROM) of a pouch type lithium polymer battery based on electrochemical thermal principles for real time applications." Electrochimica Acta 97 (2013): 66-78.
【0025】
減次モデルの他の種類である単粒子減次モデル(single particle-ROM、 以下、SP-ROM)では、アノードの活物質層とカソードの活物質層とが同じ模様の球状粒子からなり、かつ、アノードとカソード内の電流分布が同一であるとの仮定の下、P2D-ROMよりもP2D-FOMを単純化することができる。SP-ROMについては、下記の参照論文2に開示されている。
【0026】
[参照論文2]
J. Li、N. Lotfi、R. G. Landers、and J. Park. "A Single Particle Model for Lithium-Ion Batteries with Electrolyte and Stress-Enhanced Diffusion Physics." Journal of The Electrochemical Society 164、no. 4 (2017): A874-A883.
【0027】
高速充電で二次電池の寿命を最大化するため、SP-ROMはSOC、端子電圧、アノード電位及び温度によって与えられる制限条件を考慮して充電プロファイルを最適化するのに用いられる。しかし、SP-ROMでも副反応は考慮されていない。
【0028】
たとえSP-ROMの計算がP2D-ROMの計算よりも速いとしても、P2D-ROMは正確性の面、特に固体イオン濃度勾配と電流分布を正確に計算できるという利点を有する。SOC、表面イオン濃度及び温度上昇を考慮して充電方法を最適化する際、P2D-ROMを用いてみようとの提案がある。しかし、SOC、アノード電位、イオン濃度のような動作条件に依存する副反応が依然として考慮されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明は、上記のような従来技術の背景下で創案されたものであり、二次電池の充電時に内部で生ずる副反応速度(side reaction rate)を定量的に予測し、副反応速度を考慮して二次電池の充電を制御することで、充電時間を短縮させて退化の加速化を抑制することができる二次電池の充電装置及び方法を提供することを目的とする。
【0030】
本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解でき、本発明の実施形態によってより明らかに分かるであろう。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示される手段及びその組合せによって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記の技術的課題を達成するための本発明による二次電池の充電装置は、二次電池の電圧を測定する電圧測定部と、二次電池の温度を測定する温度測定部と、前記電圧測定部及び前記温度測定部から電圧測定値及び温度測定値の入力を受け、充電電流の大きさを調節する制御部とを含む。
【0032】
望ましくは、前記制御部は、予め定義された電気化学的減次モデルを用いてアノード粒子の平均イオン濃度、アノード粒子の表面イオン濃度、アノード粒子電位及びアノード電解質電位を含む二次電池の内部状態を決定するロジックと、前記平均イオン濃度から二次電池の充電状態を決定するロジックと、前記アノード粒子電位及び前記アノード電解質電位から副反応速度を決定するロジックと、充電電流調節条件として、(i)前記電圧測定値がカットオフ電圧に到達する条件、(ii)前記アノード粒子の表面イオン濃度が濃度上限に到達する条件、及び(iii)前記副反応速度が速度上限に到達する条件のうち少なくとも一つが満たされるか否かを決定するロジックと、前記充電電流調節条件が満たされると、二次電池に印加される充電電流の大きさを減殺させるロジックとを行うように構成される。
【0033】
一態様によれば、前記電気化学的減次モデルは、下記のような電極におけるイオン保存方程式、電解質におけるイオン保存方程式、電極における電荷保存方程式、電解質における電荷保存方程式及び電気化学的反応速度方程式によって定義されるフルオーダーモデルから誘導され得る。
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
望ましくは、前記電気化学的減次モデルは、前記電極におけるイオン保存方程式を多項式近似法(polynomial approximation)によって単純化させた減次数式(i)'を含み得る。
【0040】
【0041】
望ましくは、前記電気化学的減次モデルは、前記電解質におけるイオン保存方程式を状態-空間数式に単純化させた減次数式(ii)'を含み得る。
【0042】
【0043】
望ましくは、前記電気化学的減次モデルは、前記電極における電荷保存方程式を有限差分法(finite-difference method)によって単純化させた減次数式(iii)'を含み得る。
【0044】
【0045】
望ましくは、前記電気化学的減次モデルは、前記電解質における電荷保存方程式を有限差分法によって単純化させた減次数式(iv)'を含み得る。
【0046】
【0047】
望ましくは、前記電気化学的減次モデルは、前記電気化学的反応速度方程式を線形化(linearization)によって単純化させた減次数式(v)'を含み得る。
【0048】
【0049】
本発明によれば、前記制御部は、下記の充電状態方程式によってアノード粒子の平均イオン濃度から二次電池の状態を決定するように構成され得る。
【数11】
【0050】
望ましくは、前記制御部は、下記の副反応速度方程式によって二次電池の副反応速度を決定するように構成され得る。
【数12】
【0051】
望ましくは、前記制御部は、固相での平均イオン濃度
【数13】
、固相での平均イオン濃度フラックス
【数14】
及び固相での表面イオン濃度
【数15】
を含む二次電池の内部状態に関する状態-空間方程式及び二次電池の電圧
【数16】
に関する出力方程式が下記のように定義される拡張カルマンフィルタを用いて、二次電池の推定電圧と前記電圧測定値との差が最小になるように、二次電池の内部状態に対する時間更新及び測定更新を繰り返して行うように構成され得る。
【0052】
【0053】
【0054】
望ましくは、前記制御部は、前記二次電池に接続されて前記二次電池に充電電流を印加する充電器を制御して充電電流の大きさを調節するように構成され得る。
【0055】
また、上記の技術的課題を達成するため、本発明は、前記二次電池の充電装置を含む電気駆動装置を提供する。
【0056】
さらに、上記の技術的課題を達成するための本発明による二次電池の充電方法は、(a)二次電池の電圧及び温度を測定する段階と、(b)予め定義された電気化学的減次モデル(ROM)を用いてアノード粒子の平均イオン濃度、アノード粒子の表面イオン濃度、アノード粒子電位及びアノード電解質電位を含む二次電池の内部状態を決定する段階と、(c)前記アノード粒子の平均イオン濃度から二次電池の充電状態を決定する段階と、(d)前記アノード粒子電位及び前記アノード電解質電位から副反応速度を決定する段階と、(e)充電電流調節条件として、(i)前記電圧測定値がカットオフ電圧に到達する条件、(ii)前記アノード粒子の表面イオン濃度が濃度上限に到達する条件、及び(iii)前記副反応速度が速度上限に到達する条件のうち少なくとも一つが満たされるか否かを決定する段階と、(f)前記充電電流調節条件が満たされると、二次電池に印加される充電電流の大きさを減殺させる段階とを含む。
【発明の効果】
【0057】
本発明による二次電池の充電装置及び方法は、副反応速度モデルを有するROMを用いて設計されたものであって、カットオフ電圧、アノードでの表面イオン濃度の飽和、最大副反応速度が充電電流の制限に用いられる。本発明は、伝統的なCC/CV充電方法と比べ、充電時間を略半分程度減少させる。アノードでの表面イオン濃度の制限条件は、容量と出力の退化防止に役立つ。表面イオン濃度と副反応速度によって制限された充電方法は、充電時間と退化の面からテストされた充電方法のうち最も優れた。
【0058】
外にも本発明は他の多様な効果を有し得、このような本発明の他の効果は後述する詳細な説明によって理解でき、本発明の実施形態からより明らかに分かるであろう。
【0059】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】本発明の一実施形態による二次電池の充電装置を示したブロック図である。
【
図2】二次電池が充電されている間、アノード側の電位の関係を示した概略図である。
【
図3】本発明による減次モデル(ROM)で使用される単一マイクロセルを示した概略図である。
【
図4】拡張カルマンフィルタと結合された減次モデル、すなわちROM-EKFを示したブロック図である。
【
図5】本発明の一実施形態による二次電池の充電方法を示したフロー図である。
【
図6a】二次電池のシミュレーション端子電圧及び測定された端子電圧を一緒に示したグラフである。
【
図6b】二次電池のシミュレーション端子電圧及び測定された端子電圧を一緒に示したグラフである。
【
図7a】本発明によるSOCの推定において、拡張カルマンフィルタのトラッキング性能を示したグラフである。
【
図7b】本発明によるSOCの推定において、拡張カルマンフィルタのトラッキング性能を示したグラフである。
【
図8a】CC充電モードでパウチ型リチウム二次電池を充電する際、端子電圧がカットオフ電圧に到達するまでかかる時間を相異なる充電電流(C-レート)毎に示したグラフである。
【
図8b】CC充電モードでパウチ型リチウム二次電池を充電する際、端子電圧がカットオフ電圧に到達するときのSOCを相異なる充電電流毎に示したグラフである。
【
図9a】充電電流の関数として充電時間を示したグラフである。
【
図9b】CV充電による充電時間とCC/CV充電による充電時間との比率を示したグラフである。
【
図10a】ROM-EKFによって推定した活物質粒子の表面イオン濃度を示したグラフである。
【
図10b】時間に応じた、分離膜付近に位置する粒子の表面イオン濃度を示したグラフである。
【
図11a】充電電流の大きさと時間に応じた過電位の変化を示したグラフである。
【
図11b】充電電流の大きさと時間に応じた副反応速度の変化を示したグラフである。
【
図11c】充電電流の大きさと時間に応じたリチウムイオンの損失量を示したグラフである。
【
図11d】充電電流の大きさとSOC(0%~100%)に応じたリチウムイオンの損失量を示したグラフである。
【
図11e】充電電流の大きさとSOC(40%~80%)に応じたリチウムイオンの損失量を示したグラフである。
【
図11f】充電電流の大きさとSOC(80%~100%)に応じたリチウムイオンの損失量を示したグラフである。
【
図12】本発明の一実施形態によって提案された高速充電方法を示したブロック図である。
【
図13】本発明の一実施形態によって充電電流の大きさが減殺されることを概念的に説明したグラフである。
【
図14】4つの制限条件の下、本発明によるROM-EKFを用いて充電電流の関数としてSOCと副反応速度をシミュレートした結果を示したグラフである。
【数19】
と表面イオン濃度の上限
【数20】
を考慮した充電プロトコルにおける電流のシミュレーション結果を示したグラフである。
【数21】
と表面イオン濃度の上限
【数22】
を考慮した充電プロトコルにおける端子電圧のシミュレーション結果を示したグラフである。
【数23】
と表面イオン濃度の上限
【数24】
を考慮した充電プロトコルにおける表面イオン濃度のシミュレーション結果を示したグラフである。
【数25】
と表面イオン濃度の上限
【数26】
を考慮した充電プロトコルにおける副反応速度のシミュレーション結果を示したグラフである。
【
図16a】4つの充電プロトコルにおける副反応速度のシミュレーション結果を示したグラフである。
【
図16b】4つの充電プロトコルにおける消耗されたリチウムイオンのシミュレーション結果を示したグラフである。
【
図17】相異なる充電プロトコルの試験に使用されたBIL(Battery-In-the-Loop)のブロック図である。
【
図18a】5つの充電プロトコルにおける充電時間を示したグラフである。
【
図18b】サイクルに応じた容量変化を示したグラフである。
【
図19a】5つの充電プロトコルにおけるEIS測定結果を示したグラフである。
【
図19b】EIS測定結果から導出したインピーダンスを比べて示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施形態を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0062】
したがって、本明細書に記載された実施形態及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0063】
また、本発明の説明において、関連公知構成または機能についての具体的な説明が本発明の要旨を不明瞭にし得ると判断される場合、その詳細な説明は省略する。
【0064】
明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは特に言及されない限り、他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。また、明細書に記載された「プロセッサ」のような用語は、少なくとも一つの機能または動作を処理する単位を意味し、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアとの組合せとして具現され得る。
【0065】
さらに、明細書の全体において、ある部分が他の部分と「連結(接続)」されるとするとき、これは「直接的な連結(接続)」だけではなく、他の素子を介在した「間接的な連結(接続)」も含む。
【0066】
本明細書において、二次電池は、アノード端子及びカソード端子を備え、物理的に分離可能な一つの独立したセルを意味する。一例として、パウチ型リチウムイオン電池を二次電池として見なし得る。しかし、本発明が二次電池の種類によって限定されることはない。
【0067】
図1は、本発明の一実施形態による二次電池の充電装置100を示したブロック図である。
【0068】
図1を参照すると、本発明の一実施形態による二次電池の充電装置100は、二次電池20の充電を制御する装置であって、二次電池20に電気的に接続される。
【0069】
二次電池20は、電気自動車などのような電力システムが必要とする電気エネルギーを供給するものであって、少なくとも一つの電池セルを含む。電池セルは、例えばリチウムイオン電池であり得る。
【0070】
本発明において、電池セルの種類がリチウムイオン電池に限定されることはなく、繰り返して充放電可能なものであれば特に限定されない。二次電池20に含まれた電池セルは直列及び/または並列で電気的に接続される。
【0071】
スイッチ30は、電池20の充放電のための電流経路に設けられる。スイッチ30の制御端子は、制御部120に電気的に接続可能に提供される。スイッチ30は、制御部120によって出力されるスイッチング信号SSに応答して、スイッチング信号SSのデューティ比に応じてターンオンまたはターンオフされる。スイッチ30は、電界効果トランジスタまたは機械式リレーであり得る。
【0072】
二次電池の充電装置100は、電気化学的減次モデル(ROM)を用いて二次電池20の内部状態を決定し、内部状態を考慮して二次電池20に印加される充電電流の大きさを調節する。
【0073】
そのため、充電装置100は、センシング部110、制御部120、メモリ部130及び通信部140を含む。
【0074】
一実施形態によれば、内部状態は、アノードの平均イオン濃度及び表面イオン濃度、アノードでの電位、アノード電解質での電位、リチウムイオンの副反応速度及び充電状態を含む。ここで、平均イオン濃度及び表面イオン濃度とは、活物質粒子の平均イオン濃度及び活物質粒子の表面イオン濃度を意味する。
【0075】
センシング部110は、一定の時間間隔を置いて、二次電池20の内部状態に係わる物理的/電気的パラメータを検出するように構成される。物理的/電気的パラメータは、二次電池20の電圧、電流及び温度を含む。
【0076】
センシング部110は、電流測定部111、電圧測定部112及び温度測定部113を含む。
【0077】
電流測定部111は、二次電池20の充放電経路に電気的に接続可能に提供される。電流測定部111は、二次電池20を通じて流れる電流を検出し、検出された電流を示す第1センシング信号SIを制御部120に出力するように構成される。ホール効果センサまたはシャント抵抗などが電流測定部111として用いられ得る。
【0078】
電圧測定部112は、二次電池20のカソード端子及びアノード端子に電気的に接続可能に提供される。電圧測定部112は、二次電池20にかかる電圧(すなわち、二次電池20のカソード端子とアノード端子との電位差)を検出し、検出された電圧を示す第2センシング信号SVを制御部120に出力するように構成される。電圧測定部112は、通常の電圧測定回路を含む。
【0079】
温度測定部113は、二次電池20の温度を検出し、検出された温度を示す第3センシング信号STを制御部120に出力するように構成される。温度測定部113は、熱電対であり得る。
【0080】
制御部120は、センシング部110、メモリ部130、通信部140及びスイッチ30に動作可能に結合される。制御部120は、ハードウェア的に、ASICs(application-specific integrated circuits)、DSPs(digital signal processors)、DSPDs(digital signal processing devices)、PLDs(programmable logic devices)、FPGAs(field programmable gate arrays)、マイクロプロセッサまたはその他の機能を実行するための電気的ユニットのうち少なくとも一つを用いて具現され得る。
【0081】
制御部120は、センシング部110によって出力される第1センシング信号SI、第2センシング信号SV及び第3センシング信号STを周期的に受信するように構成される。制御部120は、制御部120に含まれたADC(analog-to-digital converter)を用いて、単位時間毎に受信されるアナログ形態の第1センシング信号SI、第2センシング信号SV及び第3センシング信号STのそれぞれをデジタル形態の電流値、電圧値及び温度値に変換した後、メモリ部130に保存することができる。すなわち、メモリ部130には、二次電池20の電流履歴、電圧履歴及び温度履歴が単位時間毎に保存され得る。
【0082】
メモリ部130は、制御部120に動作可能に結合される。メモリ部130には、後述する制御ロジックを実行するために必要なプログラム及び各種のデータが保存され得る。メモリ部130は、例えばフラッシュメモリ、ハードディスク、SSD(solid state disk)、SDD(silicon disk drive)、マルチメディアマイクロカード、RAM(random access memory)、SRAM(static RAM)、ROM(read only memory)、EEPROM(electrically erasable programmable ROM)、及びPROM(programmable ROM)から選択された少なくとも一つの保存媒体を含み得る。
【0083】
通信部140は、充電器2に通信可能に結合される。充電器2は、制御部120の要請に応じて二次電池20に充電電流を印加する。充電電流の大きさは制御部120によって決定される。充電電流の大きさはC-レートで表される。制御部120は、電気化学的モデルを考慮して副反応速度またはアノードでの表面イオン濃度が予め設定された上限に到達するかまたは二次電池20の端子電圧がカットオフ電圧に到達すれば、充電電流の大きさを調節(減殺)させるために充電電流調節メッセージを充電器2に伝達する。すると、充電器2は制御部120の要請に応じて充電電流の大きさを減殺させる。充電器2は、電気自動車の充電に使用する充電ステーションまたは電気自動車の内部に設けられた充電器であり得る。
【0084】
充電器2は、例えば、ECU(electronic control unit)を含む。通信部140は、充電器2のECUと充電電流の大きさの調節に必要なメッセージを送受信することができる。通信部140は、充電器2とRS-232、LAN(local area network)、CAN(controller area network)、デイジーチェーンのような有線ネットワーク、及び/または、ブルートゥース(登録商標)(Bluetooth(登録商標))、ZigBee(登録商標)、Wi-Fiなどの近距離無線ネットワークを介して通信できるが、本発明が通信プロトコルによって限定されることはない。
【0085】
制御部120は、二次電池20の充電時間を短縮させながらも二次電池20の劣化を抑制できるように、電気化学的減次モデルを用いてアノード粒子の平均イオン濃度、平均イオン濃度フラックス、表面イオン濃度と副反応速度を含む二次電池20の内部状態を推定する。
【0086】
以下、二次電池20劣化の主な原因の一つである二次電池20内部の副反応について詳しく説明する。
【0087】
二次電池20の充電時間は、単に充電電流を増加させることで減少させることができる。しかし、増加した充電電流はより多くの熱を発生させるだけでなく、二次電池20の退化を加速化させる。
【0088】
ニッケル-マンガン-コバルト酸化物/グラファイトまたはリン酸鉄リチウム/グラファイトの化学種を有するリチウムイオン電池を用いて行った劣化メカニズムに関する多数の研究によれば、相異なる動作条件でアノード粒子の表面で起きる副反応が劣化の主な原因であることが明らかになった。
【0089】
副反応は、アノード粒子の表面における電解質溶媒(例えば、エチレンカーボネート)とリチウムイオンとの間の還元プロセスである。副反応の副産物は、アノード粒子の表面に付着される非常に薄いフィルムを形成する。該フィルムは固体電解質界面と称されるSEI(solid electrolyte interphase)層である。
【0090】
最初は、SEI層が形成されることで追加的な副反応が減少する。しかし、アノードが電解質要素の安定性ウィンドウから外れた電位で常に動作するため、副反応は二次電池の全体使用期間にわたって継続的に起きる。
【0091】
副反応で生じた蒸着物はアノード粒子の表面に堆積されてSEI層を成長させる。特に、分離膜の付近に位置したアノード粒子の表面に形成されるSEI層が一層速く成長して追加蒸着層を形成する。
【0092】
結果的に、SEI層のイオン抵抗が増加し、リチウムイオンが接近可能な活物質の面積と空隙が低減し、出力の減殺が起きる。SEI層は、一部アノード粒子を電子から完全に分離できる電気的な分離体であるため、活性を有するアノード物質を減少させ、最終的には容量の低下を起こす。また、活性を有するアノード物質の消失だけでなく、副反応によって消耗されたイオンと電解質溶媒も容量低下のさらに他の要因になる。
【0093】
副反応は、高い温度と高いSOC範囲のような動作条件でさらに増加する。後述するが、高い充電電流も副反応を増加させる。温度が上昇すれば、リチウムイオンと電解質溶媒との反応キネティクスが増加し、結果的により多くのイオンがSEI層を通過して副反応が起きる界面に到達する。したがって、アノード粒子の表面でイオン及び電解質溶媒の濃度が高ければ、副反応の速度も増加する。
【0094】
SOCの範囲と充電電流の大きさが副反応に及ぼす影響は、アノード粒子と電解質との界面における電位の関係を考察することでより詳しく説明できる。
【0095】
充電中のアノード側の電位の関係が
図2に概略的に示されている。
【0096】
二次電池20の充電が行われる間、主反応と副反応を含む2つの化学反応が起きる。全体反応速度
【数27】
は、数式(1)のように2つの化学反応速度の和として表すことができる。
【数28】
【0097】
ここで、
【数29】
及び
【数30】
は主反応及び副反応の反応速度を示す。
【0098】
アノード粒子と電解質との界面において、主反応速度
【数31】
は過電位
【数32】
の関数であり、バトラー・ボルマー(Butler-Volmer:以下、BV)方程式によって数式(2)のように表される。
【数33】
【0099】
ここで、
【数34】
は比反応面積(specific reaction area)である。
【数35】
及び
【数36】
はそれぞれアノード伝達定数及びカソード伝達定数であって、0.5と仮定する。nは主反応に参加するイオンの数であって、1である。Rは一般気体定数(8.3143 Jmol
-1K
-1)である。
【数37】
は交換電流密度である。Tは二次電池20の温度である。
【0100】
副反応速度
【数38】
は、数式(3)で表したBV方程式を用いて計算することができる。
【数39】
【0101】
前記BV方程式(2)の過電位
【数40】
は、次のように表すことができる。
【数41】
【0102】
ここで、
【数42】
及び
【数43】
はそれぞれアノード粒子及び電解質の電位である。
【0103】
アノードの平衡電位
【数44】
は、固相でのイオン濃度とその最大値との比率に該当する化学量論数の関数である。
【数45】
は、SEI層に亘って電位低下を誘発するSEI層の抵抗である。電位低下量は、下記の数式(5)で表すことができる。
【数46】
【0104】
数式(3)において、
【数47】
は副反応に関与するイオンの数であって、2である。
【数48】
は副反応の過電位であって、数式(6)で表すことができる。
【数49】
【0105】
ここで、
【数50】
は副反応の平衡電位である。副反応の交換電流密度
【数51】
は、副反応に関与する2つの反応物であるリチウムイオンと電解質の溶媒、例えばEC(エチレンカーボネート)分子の濃度関数であって、数式(7)で表すことができる。
【数52】
【0106】
ここで、
【数53】
は副反応に対するキネティック率定数である。
【数54】
及び
【数55】
は、それぞれアノード粒子の表面でのリチウムイオンの濃度及びEC分子の濃度である。
【数56】
が電解質溶媒の種類によって変わることは自明である。
【0107】
【数57】
は、他の電位との関係を分析するため、基準値として見なされる。電池が充電されるとき、電解質からアノード粒子へのイオン伝達によって
【数58】
が負の数になるため、過電位
【数59】
は負の数になる。
【0108】
図2を参照すると、SOCが高いとき、アノードでのイオン濃度が高く、平衡電位
【数60】
は小さくなる。また、過電位
【数61】
が一定であるとの仮定下で
【数62】
も小さくなる。
図2に示されたように、
【数63】
が減少すれば、副反応の大きさが減少する。結果的に、高いSOC範囲で二次電池20を充電することは、副反応速度を増加させ、結局、二次電池20の退化を加速化させる。
【0109】
また、高い電流で二次電池20が充電されるとき、過電位
【数64】
の大きさがBV方程式に基づいて増加するため、アノード電位
【数65】
は低くなる。また、副反応の過電位
【数66】
はアノード電位と平衡電位との差であるため、高い電流で電池が充電されるとき、副反応に対する過電位の大きさが増加し、その結果、副反応速度の増加をもたらす。
【0110】
一方、通常の充電方法として、CC/CV充電方法とパルス充電方法が使用されている。2つの充電方法のうち、CC/CV充電方法が最も広く使用される。充電電流が増加すれば、充電時間は減少する。しかし、充電電流を増加させると、CVモードの拡張をもたらすため、有意な充電時間の減少はない。CCモードでは、高い充電電流がSOCの速やかな増加をもたらす。しかし、二次電池の端子電圧は低いSOC区間でカットオフ電圧に到達してしまう。他方、高い充電電流は副反応の過電位の大きさを増加させる。これによって、副反応速度が増加し、電池のサイクル寿命が有意な水準に短縮される。また、カットオフ電圧を増加させれば、CC充電周期が拡張され、CVモードの平均充電電流が増加するため、充電時間が有意に減少する。しかし、カットオフ電圧が増加すれば、CCモードで充電電流の大きさが増加し、副反応の過電位の大きさが増加して、結果的に副反応の速度が増加する。結論的に、CC/CV充電方法で充電電流を増やすか又はカットオフ電圧を増加させることは、充電時間の短縮及び電池の退化速度の遅延という要求条件を充足させることができない。
【0111】
一方、パルス充電方法は、広く提案されているさらなる充電方法のオプションである。パルス充電方法は、休止区間または負パルスの存在如何によって単方向パルス充電と両方向パルス充電とに分けることができる。充電時間はパルス充電電流の平均値によって決定される。したがって、充電時間は専ら正パルスの大きさを増加させることだけでは減少させることができない。しかし、休止区間を設けて負パルスを印加することは、イオン濃度勾配とアノードにおける濃度過電位を減殺させることでリチウムメッキの形成を抑制させる。また、最適化した周波数を有する両方向パルス充電方法は、蒸着されたリチウムが放電が起きる間に溶解されて主化学反応に再び参加するため、リチウムメッキを有意に減少させることができる。しかし、両方向パルス充電方法は、二次電池20の性能とサイクル寿命に肯定的な影響がなく、かえって有害な影響を及ぼす。10Hzより大きい周波数を有するパルス電流に対しては、リチウムイオン電池が電池の大きいキャパシタンスのため低域通過フィルタリングをするように挙動するため、電池の退化はパルス充電電流の平均値によって決定される。また、25Hzのパルス充電電流に対しては、パルス充電方法とCC/CV充電方法とで、充電時間及び退化速度の差を見せないことが確認された。また、充電電流の周波数が10Hzより小さい場合、パルス電流は電池の大きいキャパシタンスによって完全にバッファリングされないため、イオン濃度勾配が有意に増加し、アノードの電位も負の方向にさらに低くなるため、結局副反応速度が有意に増加する。
【0112】
一方、パルス充電方法は、CC/CV充電方法と比べて、より多くの熱を発生させるため、副反応の速度も増加させる。パルス充電電流の大きさが減少すれば、イオン濃度勾配とイオン濃度の飽和が効果的に減少することができる。したがって、本発明ではイオン濃度が飽和限界を超過できないように、高いSOC区間に対しては専ら減少した大きさを有するパルス充電電流が採用される。
【0113】
本発明は、次の3つの面で充電方法を設計する。第一、イオン濃度とアノード電位のような物理的変数をリアルタイムで推定可能なモデルを提供し、進歩した制御を用いてモデル状態エラーと測定ノイズから引き起こされる推定誤謬を減らすことである。第二、開発されたモデルによるCC/CV充電方法が充電時間と退化速度に及ぼす影響を分析することである。第三、相異なる限界ファクターを考慮して充電電流の大きさとパルスの持続時間を決定することである。
【0114】
まず、本発明の一実施形態による減次モデル(ROM)について説明する。
【0115】
リチウムイオン電池が充電されるとき、カソード粒子から脱離(de-intercalate)したリチウムイオンは電解質を介して輸送され、アノード粒子と電解質との界面で電気化学的反応を起こし、最終的にアノード粒子に挿入(intercalate)される。この過程で電子が外部回路を通じて輸送される。同様に、逆の反応が放電中に行われる。このような電気化学的過程は電気化学的、熱的及び機械的原理を用いて数学的に記述することができる。電気化学的原理は質量輸送と電気化学的キネティクスを含み、熱的及び機械的原理はエネルギー方程式と機械的応力-ひずみ(stress-strain)関係式に基づく。
【0116】
リチウムイオン電池の動作中のイオンの挙動を示す物理的変数は実験的に測定することができない。潜在的なアプローチの一つは、物理的変数を数値解釈的に推定できる支配方程式モデルを開発することである。
【0117】
また、退化メカニズムが結合されれば、モデルはBOL(beginning of life)、MOL(middle of life)及びEOL(end of life)状態にある電池の性能を予測することができる。次元によって、モデルは一次元、二次元または三次元であり得、フルオーダーモデルと呼ばれる。
【0118】
パウチ型リチウムイオン電池は、ロールまたはサンドイッチ状に集合された複数のマイクロセルが積層された構造を有する。複数のマイクロセルの間に電気化学的特性の差がなければ、一つのマイクロセルが全体マイクロセルの挙動を代表すると仮定することができる。
【0119】
マイクロセルは、厚さ方向でアノードとカソードとの間に分離膜が介在されたサンドイッチ構造を有する。リチウムイオン電池において、カソード活物質は金属酸化物であり、アノード活物質はカーボンである。活物質の形状は活物質層が占有する空間に均一に分散している球状に近似する。単一マイクロセルの概略図が
図3に示されている。
【0120】
図3を参照すると、マイクロセルが放電するかまたは充電されるとき、リチウムイオンは一方の電極の活物質粒子の格子構造から脱離した後、活物質粒子の表面まで拡散し、電解質と分離膜を通じて他方の電極の活物質粒子の表面まで輸送される。輸送されたリチウムイオンは、他方の活物質粒子の表面で電子及び該当活物質と化学的に反応し、再び活物質粒子の内部に拡散した後、格子構造に挿入される。電子は外部回路を通じて流れることで、電気化学的なレドックス過程が完成される。
【0121】
リチウムイオンの挿入または脱離、拡散、イオン輸送、化学的反応及びこれらから引き起こされる電位の変化を含む電気化学的原理に対する支配方程式が表4に示されている。支配方程式の変数及びパラメータの意味は、明細書の冒頭に定義した命名法に従って理解され得る。
【0122】
【0123】
表4に示された4つの偏微分方程式は、時間と位置に応じて物理的変数を記述する。物理的変数は、(1)球状粒子に対する拡散法則であるフィックの法則(Fick's law)から誘導される活物質粒子でのイオン濃度(c
s)、(2)リチウムイオンの保存に基づいた電解質でのイオン濃度(c
e)、(3)オームの法則(Ohm's law)から誘導される活物質層での電位
【数67】
、(4)キルヒホッフの法則とオームの法則を用いて算出される電解質での電位
【数68】
、及び(5)反応界面での電気化学的キネティクスを記述するBV方程式を含む。
【0124】
リチウムイオン電池の動作中のイオン挙動に対して正確に計算できるにもかかわらず、表4の左側に示したフルオーダーモデル(FOM)は、計算負荷が多いため適用に限界がある。したがって、リチウムイオンが移動する平面を通じてイオン濃度勾配、電位勾配及び電流密度勾配がないという仮定の下、フルオーダーモデルはP2D-ROMという減次モデルに単純化することができる。
【0125】
P2D-ROMの偏微分方程式を解くためには、有限差分法(finite-difference method:FDM)、有限要素法(finite-element method:FEM)、有限体積法(finite-volume method:FVM)のような幾つかの他の数値解釈的方法を採用することができる。
【0126】
P2D-ROMは2つの部分から構成されるが、電極と電解質でのイオン濃度計算が多項式近似法と状態空間法(state space method)をそれぞれ適用して単純化できる。単純化過程を経たP2D-ROMの演算時間は、全体的なモデルの正確性を維持しながらもFOM演算時間の1/6水準まで減少する。単純化したP2D-ROMに関する数式が表4の右側に示されている。以下、特に言及しない限り、減次モデル(ROM)とは単純化したP2D-ROMを意味する。
【0127】
FOMに対する減次アプローチについての詳しい記述は参照論文1から確認することができる。本発明の実施形態において、P2D-ROMに対して使用されたモデルパラメータが下記の表5に示されている。モデルパラメータはメモリ部130に予め保存される。
【0128】
【0129】
再び
図1に戻り、制御部120は、上記の表4に定義された減次モデルを構成する方程式を用いてアノードの平均イオン濃度
【数69】
、アノード電位
【数70】
、アノードでの電解質電位
【数71】
、アノードでの表面イオン濃度
【数72】
及びアノードでの平均イオン濃度フラックス
【数73】
を含む二次電池の内部状態を決定する。ここで、
【数74】
は固相の活物質粒子に関連するものである。また、制御部120は、前記アノード粒子の平均イオン濃度
【数75】
から表4の充電状態(SOC)計算方程式を用いて二次電池の充電状態(SOC)を決定する。充電状態計算方程式に含まれたパラメータ値は表5に記載された予め定義されたデータが参照される。
【0130】
また、制御部は、減次モデルから計算される二次電池20の内部状態から数式(3)~(7)を用いて副反応速度
【数76】
を決定する。副反応速度
【数77】
を計算する方程式に含まれたパラメータは、表5に記載された予め定義されたデータが参照される。
【0131】
また、制御部120は、充電電流調節条件として、(i)電圧測定値がカットオフ電圧に到達する条件、(ii)アノード粒子の表面イオン濃度が濃度上限に到達する条件、または(iii)前記副反応速度が速度上限に到達する条件が充足されるか否かを決定する。
【0132】
また、制御部120は、前記充電電流調節条件がいずれか一つでも満たされると、二次電池20の充電に適用されている充電電流の大きさを減少させる。制御部120は、通信部140を通じて充電器2側に減殺された充電電流情報を含む電流調節メッセージを伝達し、充電器2が二次電池20に印加する充電電流の大きさを減殺させるようにする。充電器2は、制御部120から電流調節メッセージが伝達されれば、該メッセージに含まれた調節される電流情報を参考して充電電流の大きさを減殺させる。
【0133】
一例として、制御部120は、
図13に示されたように、SOCに応じて充電電流の大きさを定義したプロファイルを参照して、充電電流調節条件が満たされた現在時点の充電状態(SOC
k)と予め設定された充電状態変化量(△SOC)とを合算した値(SOC
k+△SOC)に対応する電流をプロファイルから識別し、識別された電流を減殺された充電電流として決定する。
【0134】
また、制御部120は、減殺充電電流が決定されれば、減殺電流情報を含む電流調節メッセージを通信部140を通じて充電器2側に伝達する。すると、充電器2は、減殺電流に応じて充電電流の大きさを調節して二次電池20に印加する。
【0135】
望ましくは、電流の調節は、条件が成立する度に繰り返して行われる。
【0136】
一方、制御部120は、拡張カルマンフィルタを用いてROMによって推定された二次電池20の電圧と、電圧測定部112を通じて測定した電圧測定値との差が最小になるように、二次電池20の内部状態に対する時間更新及び測定更新を繰り返して行うことができる。以下、拡張カルマンフィルタと結合された減次モデルはROM-EKFと称する。
【0137】
本発明の一実施形態によれば、制御部120は、アノード粒子の平均イオン濃度
【数78】
、アノード粒子の平均イオン濃度フラックス
【数79】
及びアノード粒子の表面イオン濃度
【数80】
を含む二次電池の内部状態に関する状態-空間方程式及び二次電池の電圧に関する出力方程式が下記のように定義される拡張カルマンフィルタを用いて二次電池の推定電圧
【数81】
と前記電圧測定値との差が最小になるように、二次電池の内部状態に対する時間更新及び測定更新を繰り返して行うように構成することができる。
【0138】
状態-空間方程式及び出力方程式は、ROMから誘導されたものであって、離散時間モデルによって定義されたものである。△tは二次電池の内部状態に対する時間更新及び測定更新が繰り返される時間周期であり、k及びk-1は時間インデックスである。
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
出力方程式は、拡張カルマンフィルタに適用されるヤコビアン(Jacobian)を計算するために以下のように定義することができる。ここで、端子電圧は固相粒子の表面濃度の関数であることが分かる。U
pとU
nはカソードとアノードの平衡電位である。
【数85】
【0143】
本発明の実施形態によれば、拡張カルマンフィルタを用いて二次電池の内部状態に対する時間更新及び測定更新を繰り返して行うとき、下記の数式で定義されるヤコビアンを適用することができる。
【0144】
【0145】
図4は、拡張カルマンフィルタと結合された減次モデル、すなわちROM-EKFを示したブロック図である。
図4を参照すると、SOCは、活物質粒子に存在可能な最大イオン数と現在存在しているイオン数との比率である。常に、活物質粒子に存在するイオンの数は活物質粒子における平均イオン濃度に基づいて計算することができる。
【0146】
平均イオン濃度の動的なエラーと初期値によって与えられるSOCのエラーは、拡張カルマンフィルタを用いた閉ループ補正によってさらに改善することができる。
【0147】
制御部120は、拡張カルマンフィルタの状態-空間方程式を用いて二次電池20の内部状態
【数87】
を予測する。また、制御部120は、予測された二次電池20の内部状態のうちアノード粒子の平均イオン濃度
【数88】
を用いて、表4に示された充電状態計算方程式を用いて二次電池20の充電状態であるSOCを決定する。また、制御部120は、ROMを用いて二次電池20の内部状態のうちアノード粒子の固相電位
【数89】
とアノードでの電解質電位
【数90】
を決定し、二次電池20の副反応速度
【数91】
を決定する。また、制御部120は、拡張カルマンフィルタの出力方程式を用いて二次電池の推定電圧
【数92】
を決定し、推定電圧
【数93】
と測定電圧(V
t)との差によって二次電池20の内部状態
【数94】
を補正する。
【0148】
拡張カルマンフィルタの状態-空間方程式、出力方程式及びヤコビアンが定義されれば、二次電池20の内部状態に対する時間更新及び測定更新の過程は公知の拡張カルマンフィルタアルゴリズムによって自動的に実行されるため、時間更新及び測定更新の過程についての詳しい説明は省略する。
【0149】
以下、上述した二次電池の充電装置が行う充電方法をフロー図を参照して説明する。
【0150】
図5は、本発明の一実施形態による二次電池の充電方法を示したフロー図である。
【0151】
まず、段階S10において、制御部120は、二次電池20の充電電流の大きさを最大値として決定し、最大充電情報を含む電流調節メッセージを通信部140を通じて充電器2に伝達することで、二次電池20の充電を始める。ここで、電流の最大値は、二次電池20の仕様によって予め決定されるものであって、メモリ部130に予め保存された情報を参照する。
【0152】
充電器2は、最大充電情報を含む電流調節メッセージを制御部120から受信すれば、最大充電電流に該当する充電電流を二次電池20に印加して定電流充電を開始する。
【0153】
段階S20において、制御部120は、二次電池20の充電が開始されれば、拡張カルマンフィルタの状態-空間方程式を用いて二次電池20の内部状態
【数95】
を予測する。
【0154】
段階S30において、制御部120は、充電状態計算方程式を用いてアノード粒子の平均イオン濃度
【数96】
から二次電池20の充電状態(SOC)を決定する。
【0155】
段階S40において、制御部120は、ROMを用いて二次電池20の内部状態のうちアノード粒子の固相電位
【数97】
と電解質電位
【数98】
を決定し、数式(3)~(7)を用いて二次電池20の副反応速度
【数99】
を決定する。
【0156】
段階S50において、制御部120は、拡張カルマンフィルタの出力方程式を用いて二次電池の推定電圧
【数100】
を決定し、推定電圧
【数101】
と測定電圧(V
t)との差によって二次電池20の内部状態
【数102】
を補正する。
【0157】
段階S60において、制御部120は、充電電流調節条件として、(i)電圧測定値(V
t)がカットオフ電圧に到達する条件、(ii)アノード粒子の表面イオン濃度
【数103】
が上限濃度に到達する条件、または(iii)前記副反応速度
【数104】
が上限速度に到達する条件が充足されるか否かを決定する。
【0158】
段階S60において、充電電流調節条件が充足されていないと判断されれば、制御部120は、充電電流の大きさをそのまま維持する。一方、充電電流調節条件が満たされたと判断されれば、制御部120は、プロセスを段階S70に移行する。
【0159】
段階S70において、制御部120は、充電電流の大きさを減殺させる。具体的に、制御部120は、電流の大きさと充電状態との相関関係を定義したプロファイル(
図13)を参照して現在の充電状態(SOC
k)と予め設定された充電状態変化量(△SOC)とを合算した充電状態合算量(SOC
k+△SOC)に対応する充電電流の大きさを識別し、識別された電流を減殺電流として決定する。プロファイルに関するデータはメモリ部130に予め保存されており、充電電流の大きさは、
図13に示されたように、充電状態が増加するほど減少する。
【0160】
段階S80において、制御部120は、減殺電流を含む電流調節メッセージを通信部140を通じて充電器2側に伝達する。すると、充電器2は、減殺電流に対応する電流を二次電池20に印加する。
【0161】
段階S90において、制御部120は、減殺電流に対応する充電電流が二次電池20に印加されれば、段階S20と同様に、拡張カルマンフィルタの状態-空間方程式を用いて二次電池20の内部状態
【数105】
を予測する。また、制御部120は、段階30と同様に、二次電池20の充電状態を決定する。また、制御部120は、段階S40と同様に、減次モデルを用いてアノード粒子の電位
【数106】
とアノード電解質電位
【数107】
を決定し、数式(3)~(7)を用いて二次電池20の副反応速度
【数108】
を決定する。また、制御部120は、段階S50と同様に、拡張カルマンフィルタの出力方程式を用いて二次電池の推定電圧
【数109】
を決定し、推定電圧
【数110】
と測定電圧(V
t)との差によって二次電池20の内部状態
【数111】
を補正する。
【0162】
段階S100において、制御部120は、充電電流調節条件として、(i)電圧測定値(V
t)がカットオフ電圧に到達する条件、(ii)アノード粒子の表面イオン濃度
【数112】
が上限濃度に到達する条件、または(iii)前記副反応速度
【数113】
が上限速度に到達する条件が充足されるか否かを決定する。
【0163】
段階100において、充電電流調節条件が充足されていないと判断されれば、制御部120は、プロセスを段階S110に移行して充電電流の大きさをそのまま維持する。一方、充電電流調節条件が満たされたと判断されれば、制御部120は、プロセスを段階S70に移行して充電電流の大きさを減殺させる。
【0164】
一方、段階S110の後、制御部120は、段階S120において充電中断条件が充足されるか否かを判断する。充電中断条件は、二次電池の充電状態(SOC)が目標値に到達する場合である。目標値は充電が始まる前に設定できる。一例として、目標値はSOC100%であり得る。場合によって、目標値は100%よりも低く設定され得る。
【0165】
段階S120において、充電中断条件が満たされると、制御部120は二次電池20の充電を終了するが、充電中断条件が充足されなければ、制御部120はプロセスを段階S90に移行して継続的に充電を行う。したがって、充電中断条件が充足されるまで、充電電流調節条件が充足される度に充電電流の大きさが減殺される過程が繰り返される。
【0166】
<実施例>
本発明の実施例で使用された二次電池は、パウチ型リチウムイオン電池であって、容量は15.7Ahである。アノードとカソードの活物質はそれぞれグラファイトとNMC(Li[MnNiCo]O2)である。ROM-EKFの検証は充電と放電過程で得た実験データに基づいて行われた。充電電流の大きさは常温(25℃)で1C、2C、3C、4C、5C及び6Cに調節した。二次電池の温度は、高い電流においても実験室に設計されたカロリメーターを用いて一定に維持された。これを通じて充電及び放電特性に温度が及ぼす影響を排除した。
【0167】
[二次電池の端子電圧推定の評価]
図6aはリチウム二次電池の充電時のシミュレーション端子電圧及び実験で測定した端子電圧を一緒に示しており、
図6bはリチウム二次電池の放電時のシミュレーション端子電圧及び実験で測定した端子電圧を一緒に示している。
図6a及び
図6bにおいて、図形のプロットと実線/破線はそれぞれシミュレーションデータと実験データを示す。結果は、ROM-EKFによって推定された端子電圧が実験データとよくマッチングすることを示している。
【0168】
また、SOCの推定において、拡張カルマンフィルタのトラッキング性能が二つのケースに対して確認され、その結果が7a及び
図7bに示されている。
図7aは充電電流の大きさと時間に応じたSOCの変化を示したグラフであり、
図7bは初期SOCにエラーがあるときの拡張カルマンフィルタのトラッキング性能を示したグラフである。図示されたように、一つのケースは初期SOCエラーがある場合であり、他のケースは初期SOCエラーがない場合である。もし初期エラーがなければ、ROM-EKFは5%未満の絶対エラー値を持ってSOCを推定することができる。また、20%の初期エラーが存在する場合においても、ROM-EKFは100ms以内にSOCを追跡することができる。
【0169】
一方、若干のオーバーシュートが現れるが、EKFの誤差共分散を適切に選択して調整可能な水準である。
【0170】
[CC/CV充電が充電時間に及ぼす影響]
CC/CV充電方法は、最も単純であって広く用いられる充電方法である。しかし、充電電流のみを単独で増加させることは、CV充電モードの拡張によって充電時間を有意に減少させることができない。また、増加された充電電流は二次電池の退化を加速化させる。したがって、新たな充電方法を提供する前に、CC/CV充電方法が充電時間と電池の退化、特に副反応に及ぼす影響をまず分析してみた。
【0171】
SOCが100%になる時までの充電時間は二つのファクターによって決定される。一つは定電流充電モードの電流の大きさであり、他の一つは定電圧充電モードのカットオフ電圧である。パウチ型電池を用いて、CCモードで、充電電流の大きさがSOCと充電時間に及ぼす影響を実験的に確認した。その結果が
図8a及び
図8bに示されている。カットオフ電圧は4.15Vと設定した。
図8aに示されたように、高い充電電流は充電時間を減少させるが、端子電圧が低いSOCでもカットオフ電圧である4.15Vに到達した。したがって、CCモードの間に与えられた充電電流で充電可能な最大SOCは制限的である。また、
図8bに示されたように、充電電流と最大充電可能SOCとの関係は充電電流の大きさに反比例する。すなわち、充電電流が高いほど最大充電可能SOCは低くなる。
【0172】
同様に、CVモードと結合されたCC充電が充電時間に及ぼす影響を他の側面で確認した。パウチ型電池をSOC0%から100%まで充電した。充電電流を0.5Cから7Cまで変化させ、カットオフ電圧は4.15Vに設定した。充電電流の関数として充電時間を
図9aに示し、CV充電による充電時間とCC/CV充電による充電時間との比率を
図9bに示した。
図9a及び
図9bを参照すると、充電電流が1.5Cより小さければ、充電電流が少し増加しただけでも充電時間が有意に減少する。また、充電電流が1.5C~4.5Cである場合も、充電時間が有意に減少する。しかし、充電電流が4.5Cより大きくなると、充電電流を増加させても充電時間が有意に減少しない。また、
図9bに示されているように、CV充電方法とCC/CV充電方法との充電時間の比率は、充電電流を増加させるにつれて増加する。充電電流が高いほど低いSOCでカットオフ電圧に到達するまでにかかる時間が短くなるためである。結果的に、CVモードでの充電時間がより長くなり、結果的に全体充電時間を増加させる。
【0173】
[CC/CV充電が副反応に及ぼす影響]
充電が行われるSOC範囲と充電電流を変化させながらCC/CV充電方法が副反応に及ぼす影響を評価した。上述したように、イオン濃度は副反応に大きい影響を及ぼす。活物質粒子の表面イオン濃度をROM-EKFを用いて推定し、その結果を
図10aに示した。
図10aにおいて、x軸はアノードの貫通平面方向における座標である。それぞれの曲線は特定時間における異なるアノード粒子の表面イオン濃度を示す。充電初期に、イオン濃度は電極内で均一に分散している。カソードからより多くのイオンが輸送されるにつれて、イオン濃度は徐々に高勾配を形成し、数分後は最大値に到達してから低くなり、2200秒以後は最終的に0になる。アノードの活物質層と分離膜との界面におけるイオン濃度は、301秒であるとき(CC充電が終わるとき)が2200秒であるとき(CV充電が終わるとき)より高い。また、粒子の表面イオン濃度値は、拡散速度制限とアノードにおける電解質イオン濃度勾配によって粒子の位置によって異なる。粒子が分離膜に近く位置するほど表面イオン濃度はより高くなる。
【0174】
時間に応じた、分離膜付近に位置する粒子の表面イオン濃度が
図10bに示されている。充電電流が4Cより大きければ、平衡状態に到達するまで充電モードが変更される間にイオン濃度のオーバーシュートが観察される。オーバーシュートは単に充電電流の減少のためCVモードで低くなる。SOCが100%に到達した均一状態(steady state)で、イオン濃度は一つの値の付近に収束する。これはアノード粒子がそれ以上リチウム粒子を受け入れることができず、リチウムイオン濃度が飽和状態に到達したことを意味する。SOCが100%であるとき、イオン濃度値は0.035mol/cm
3であり、これは本発明による充電方法でアノード粒子の表面イオン濃度の上限に該当する飽和濃度
【数114】
として選択される。
【0175】
オーバーシュートによって誘発される高いイオン濃度は低い平衡電位につながり、低い平衡電位は副反応に対する活性化過電位の大きさを増加させ、結果的には副反応を促進する。また、過剰イオンは副反応の交換電流密度
【数115】
を増加させる。
【0176】
実質的に、副反応は、数式(3)のようなBV方程式を用いて計算することができる。副反応によって消耗されたイオン量を示すイオン損失量
【数116】
は、数式(8)のように副反応速度
【数117】
をアノード活物質の体積と時間に対して積分した結果と同じである。
【数118】
【0177】
ここで、
【数119】
はAh単位を有し、
【数120】
はアノード活物質の厚さであり、
【数121】
は総動作時間であり、Aはリチウムイオン電池の断面積である。
【0178】
実際に、副反応は、BV方程式において過電位によって支配的な影響を受ける。過電位は充電電流とSOC範囲に対する関数であり、4.15Vのカットオフ電圧で計算された値が
図11aに示されている。また、時間に応じた副反応速度とSOCに応じたイオン損失量が
図11b、11c及び11dに示されている。過電位の大きさは、充電電流が増加するにつれて、端子電圧がカットオフ電圧に到達するまで増加してからCVモードで減少する。したがって、副反応速度は過電位の様子を追従する傾向があり、数式(8)によって計算される消耗イオン量は高い電流で増加する。SOCの関数としてイオン消失量を計算した結果によれば、イオン損失量は低いSOC範囲では無視可能な程度であるが、SOCが増加するとともに増加する。
【0179】
SOCが40%より低いとき、高い充電電流は副反応を増加させるが、充電時間は減少させる。また、充電時間と副反応速度との関係はほぼ線形的である。したがって、数式(8)及び
図11dに鑑みるとき、高い充電電流の退化への寄与はあまり重要ではない。実際に、低いSOC範囲で増加した充電電流は他の範囲と比べて深刻なイオン損失を誘発しないが、充電時間の短縮には寄与する。これはセルの温度が一定であるときに有効である。副反応速度は上昇した温度で一層増加する。
【0180】
中間SOC範囲において、充電時間と副反応の過電位の大きさとは非線形的になり、イオン濃度のオーバーシュートも現れ、このようなものなどが副反応を促進させる原因になる。したがって、SOCが増加するにつれて、充電時間と副反応速度との関係は非線形的になり、勾配の大きさは充電電流の増加とともに増加する。結果的に、高い充電電流は
図11e及び
図11fに示されたように電池退化を大きく加速化させる。
【0181】
高いSOC範囲において、副反応速度はCVモードで連続して充電電流が減少するため、中間SOC範囲の副反応速度より非常に低くなる。しかし、充電時間は他のSOC範囲よりさらに長くかかる。また、高いイオン濃度のため、平衡電位はより低くなり、過電位はより高くなるが、これはより多くのイオン損失を起こす。このようなSOC範囲では、さらに長くなった充電時間とさらに高くなったイオン濃度から始まったさらに速くなった副反応速度のため、充電電流が相変らずリチウムイオンの消失に大きい影響を及ぼす。
【0182】
[新たな高速充電方法の設計]
新たな高速充電方法は、アノード粒子の表面イオン濃度とアノード電位のような変数を提供するROM-EKFに基づいて設計される。変数はSOCと副反応速度の推定に用いられる。カットオフ電圧を活性化させるため、端子電圧が測定される。提案された高速充電方法のブロック図が
図12に示されている。ROM-EKFの入力は充電電流、端子電圧及び二次電池の温度である。一旦要請されたSOC、カットオフ電圧、アノードにおける最大表面イオン濃度及びアノードにおける最大副反応速度に対する基準値(上限)が与えられれば、予測または測定された値と基準値とを比べて充電プロトコルが生成される。充電プロトコルは、充電電流を生成する充電器の制御に用いられる。充電プロトコルは充電電流の大きさに対する減殺スケジュールを含む。充電プロトコルによって電流の減殺要請が充電器に伝達され、充電器はそれに従って充電電流の大きさを減少させる。
【0183】
電池の充電において、要請SOC(SOC目標値)は充電中断条件の一つである。一方、他の基準値は電池の退化防止のため充電電流を調節しなければならない上限値を設定するのに用いられる。本発明による充電プロトコルに対するフロー図は
図5に示されている。
【0184】
開始段階では、三つの基準値のうちいずれか一つでもその上限値に到達するまで最大充電電流が適用される。基準値のうちいずれか一つでもその上限値に到達すれば、充電電流が減少し、SOCが予め定義されたほど変化するまで減少した充電電流が一定に維持される。このような充電プロトコルは、充電を中断すべき条件が成立するまで繰り返される。
【0185】
例えば、4.15Vのカットオフ電圧が設定された状態で、SOCに応じた充電電流の変化を測定した実験データが
図13に示されている。
図13において、実験データを円で示している。まず、要請SOCが充電中断条件の一つとして決定される。充電初期段階に、電池が7.6Cとの最大電流で充電される。最大電流は充電器メーカーによって提供される最大充電電流の大きさである。一旦端子電圧がカットオフ電圧に到達すれば、充電電流は
図13に示されたように与えられた△SOCに応じて低いレベルに減少する。
【0186】
充電プロトコルは、二次電池の退化を防止する他の制限条件を考慮して最適化させることができる。第一制限条件はカットオフ電圧である。電池メーカーは、最大充電電流において4.15Vの代りに4.3Vをカットオフ電圧として勧める。カットオフ電圧の増加効果は後述する。第二の制限条件は、上述した算出されたアノード粒子の最大表面イオン濃度に関するものである。最後の制限条件は、
図11dに示された分析結果に基づいてSOCが40%であるときに選択された最大副反応速度である。SOCが40%であるときはリチウムイオン損失が有意に増加しない。4つの制限条件の下で、本発明によるROM-EKFを用いて充電電流の関数としてSOCと副反応速度をシミュレートした結果が
図14に示されている。
図14に示された結果は、充電時間を減らすと同時に電池の退化を抑制できる最適化された充電プロトコルのため、相異なるSOCで充電電流を如何に決定すべきであるかに関する重要なガイドラインを提供する。
【0187】
制限条件を考慮した上で、表4及び表5に列挙された他の提案条件を結合して幾つかの可能な充電プロトコルを設計し、ROM-EKFを用いて各充電プロトコルをシミュレートした。
図14に示されたシミュレーション結果からも見られるように、充電電流はSOCの増加によって制限される。低いSOC範囲では、最大副反応速度がまず充電電流を制限し、その後、4.15Vのカットオフ電圧がSOCの中間範囲まで適用され、SOC100%まで継続的に適用される。高いSOC区間で4.15Vのカットオフ電圧を有するCVモードでは、表面イオン濃度が最大値を超過してオーバーシュートが発生する。したがって、制限条件は大きく二つの領域に分けられる。領域Iでは、最大表面イオン濃度c
s
*が表面イオン濃度のオーバーシュートを防止しなければならない第一制限条件である。領域IIでは、他の三つの制限条件が充電電流の制限に用いられる。粒子の表面イオン濃度のオーバーシュートは、輸送されたイオンと拡散したイオンとの間の不均衡から始まるので、余分の休止期間を設けることが輸送されたイオンの数を減らすのに役立ち、輸送されたイオンが粒子の内部に拡散して格子構造に挿入できる余分の時間を与える。したがって、休止期間の持続時間はアノード活物質のイオン濃度勾配を考慮して決定する。一方、5Cより高い充電電流は低いSOCでもアノード電位を負の値にする。これはリチウムメッキが起き易い条件を作り出す。したがって、メーカーが7.6Cを勧めても、5Cを最も高い充電電流として選択することが望ましい。
【0188】
例えば、制限条件として提供される最大副反応速度
【数122】
と飽和表面イオン濃度
【数123】
を考慮した充電プロトコルのシミュレーション結果が
図15a~
図15dに示されている。
図15a~
図15dは、それぞれ電流、端子電圧、表面イオン濃度及び副反応速度に対するシミュレーション結果を含む。表面イオン濃度は許容された最大飽和濃度より大きくない。また、副反応速度の場合もCVモードが活性化するまで中間SOC範囲までに制限される。
【0189】
5つの充電プロトコルがシミュレートされ、その結果の充電時間が表6に示されている。二つの伝統的な充電プロトコル、すなわち1C-CC充電後、4.15Vをカットオフ電圧にするCV充電を行う充電プロトコルと、5C-CC充電後、4.15Vをカットオフ電圧にするCV充電を行う充電プロトコルとを比べた。1C-CC/CV充電プロトコルは電池をSOC 0%から100%まで充電するのに71分がかかった。アノードにおける最大表面イオン濃度を制限条件として使用し、4.3Vと4.15Vをそれぞれカットオフ電圧にするFC-4.3V充電プロトコルとFC-4.15V充電プロトコルは、1C-CC/CV充電の充電時間をそれぞれ44%及び52%減少させた。ここで、増加したカットオフ電圧は充電時間の減少に寄与した。
【0190】
【0191】
FC-4.15V充電プロトコルによる充電時間は5C-CC/CV充電プロトコルの充電時間と比較される。FC-4.15V充電プロトコルは、カットオフ電圧と表面イオン濃度を制限条件として考慮するが、充電時間はFC-4.3V充電プロトコルより長い。FC-4.3V充電プロトコルはCCモード中の時間を減らすためである。
【0192】
また、4つの充電プロトコルの副反応速度と消耗されたリチウムイオンのシミュレーション結果が
図16a及び
図16bに示されている。
図16aにおいて、副反応速度によって囲まれた領域は全体消耗されたリチウムイオンを示す。
図16a及び
図16bに示されたように、カットオフ電圧が増加するとき、CC充電期間は長引くが、副反応速度の大きさが高くなってCC充電期間の持続時間が増加する。結果的に、消耗されたリチウムイオンの量が増える。もし、副反応速度が追加的に制限されれば、領域は少し減少し、イオン損失も有意な水準に減少する。しかし、充電時間はさらに長くなる。
【0193】
本発明において、相異なる充電プロトコルは設計された充電のリアルタイム試験を動作できるようにBIL(Battery-In-the-Loop)を用いて実施され、実験的に評価された。BILに対するブロック図が
図17に示されている。試験ステーションは、二次電池と並列で接続されたDC電源と電気負荷を用いて電池を充電または放電させるように設計される。DC電源と電気負荷はPCに搭載されたLabVIEWによって統制される。また、二次電池は設計されたカロリメーターに載置され、カロリメーターは動的に電池によって発生する熱を除去する。カロリメーターは二つの熱電素子(TEMs)、双方性電源及び制御アルゴリズムから構成される。制御アルゴリズムはTEMsに流れる電流の大きさと方向を決定する。TEMsは冷却機能と加熱機能を全て有し、設定された値に電池の表面温度を制御する。最大温度変化は120Aの大きい充電電流でも1℃未満である。したがって、カロリメーターは、電池退化に温度が及ぼす影響を最小化させることができる。
【0194】
制限された充電プロトコルは、MATLAB(登録商標)スクリプトを用いてLabVIEWにROM-EKFを統合することで試験ステーションで実行される。ROM-EKFは、電池の電流、端子電圧に基づいてSOC、表面イオン濃度、副反応速度のような電池の内部変数を推定する。推定された内部変数は、充電電流を抑制し、要請されたSOCによって充電プロトコルを生成するのに用いられる。
【0195】
実験のために使用された二次電池はパウチ型の大容量リチウムイオン電池であって、大きさが200mm×150mm×5mmであり、容量は15.7Ahであり、動作電圧は2.5V~4.15Vである。
【0196】
試験ステーションでROM-EKFを実行してから、異なる充電方法を同じ試験条件下でテストした。試験条件はシミュレーションに対しても同様に用いられた。実験は、100サイクル繰り返されたが、各サイクルにおいて、リチウムイオン電池はSOC 100%まで充電された後、1Cの電流で最小カットオフ電圧まで放電した。異なるSOC区間における五つの充電プロトコルの充電時間が
図18aに示されている。測定された充電時間はシミュレーションによる充電時間とほとんど同じである。一般に勧められる1C-CC/CV充電プトトコルと比べたとき、他の充電プロトコルは低いSOC区間と中間SOC区間で充電時間を半分以上短縮させる。しかし、高いSOC区間では、設計された充電プロトコルが充電時間を追加的に短縮させることができない。設計された充電プロトコルの充電時間は低いSOC区間ではほとんど同じであったが、他の制限条件が適用されたため、中間SOC区間では相異なる。副反応を制限するFC-SRプロトコルは、他の制限条件による充電プロトコルより充電時間が長い。
【0197】
電池の容量は、10サイクル毎に1C-CC/CV充電及び放電方法を行った後測定する。次元のない
【数124】
は、数式(9)のように初期セルの容量対比退化したセルの容量の比率で定義される。
【数125】
【0198】
各充電プロトコルの次元のない容量は
図18bに示されている。FC-4.3V充電プロトコルとFC-4.15V充電プロトコルとを比べると、カットオフ電圧の増加が退化速度を加速化させることが分かる。また、表面イオン濃度による充電電流の制限は容量低下の防止に役立つ。これは、FC-4.15V充電プロトコルと5C-CC/CV充電プロトコルとの比較から立証される。FC-SR充電プロトコルの容量退化は、少なくとも1C-CC/CV充電プロトコルの容量退化に最も近い。したがって、FC-SR充電プロトコルの退化速度は、依然として1C-CC/CV充電プロトコルの退化速度よりは大きい。これは幾つかの可能な理由によって説明される。第一、FC-SRプロトコルによるリチウムイオン損失は、低いSOC区間で1C-CC/CVプロトコルによるリチウムイオン損失よりも少し大きい。第二、FC-SR充電プロトコルによる電池の内部温度は、電池の表面温度がカロリメーターによって一定に維持されても、電池で発生した熱のため1C-CC/CV充電プロトコルによる電池の内部温度よりも少し高い。
【0199】
また、EISによって測定された各充電プロトコルにおけるインピーダンスが
図19a及び
図19bに示されている。
図19aにおいて、高い周波数でインピーダンススペクトルとX軸とが交わる左側交差点はオーム抵抗を示す。そして、第一半円の半径はSEI抵抗を示す。オーム抵抗とSEI抵抗はEIS等価回路モデルを用いて抽出したものである。二つの抵抗が増加することは出力の低下と直結される。各充電プロトコルのオーム抵抗は初期セルのオーム抵抗とほとんど同じである。これは副反応がオーム抵抗の増加に寄与しないことを意味する。100サイクル以後にSEI抵抗が増加することは充電プロトコルに依存するが、
図19bに示されたように、FC-SR充電プロトコルが適用された電池のSEI抵抗は、1C-CC/CV充電プロトコルが適用されたSEI抵抗と競合できるほどである。
【0200】
上記のように、充電時間と二次電池の退化を考慮した充電方法の最適化が提案された。充電電流、カットオフ電圧及び内部変数が退化に及ぼす影響が究明され分析された。最適の充電プロトコルを探すため、二つの内部変数、すなわち表面イオン濃度と副反応速度がROM-EKFによって推定された。最大表面イオン濃度と副反応速度は充電電流の制限に用いられる。本発明の方法はBILで実行され、100サイクルに亘ってテストされたが、少なくとも電池容量と出力退化を究明した。
【0201】
CC/CV充電において、充電電流の大きさが充電時間と副反応に及ぼす影響はSOC区間に依存する。低いSOC区間では、高い充電電流が副反応を増加させるが、充電時間は短縮させる。したがって、充電電流の大きさの退化速度への寄与は有意な水準ではない。しかし、中間及び高いSOC区間では、充電電流が電池の退化速度に有意な影響を及ぼす。
【0202】
提案された充電方法は、副反応速度モデルを有するROM-EKFを用いて設計されたものであって、カットオフ電圧、イオン濃度の飽和、最大副反応速度が充電電流の制限に用いられる。本発明の方法は、伝統的な1C-CC/CV充電方法と比べたとき、充電時間を略半分ほど減少させる。増加したカットオフ電圧は充電時間を短縮させるが、容量出力の退化をもたらす。表面イオン濃度の制限条件は容量と出力の退化を防止するのに役立つ。表面イオン濃度と副反応速度によって制限された充電方法は、充電時間と退化の点で充電方法のうち最も優れる。
【0203】
本発明の一実施形態による二次電池の充電装置は、電気駆動装置に含まれ得る。電気駆動装置は、スマートフォン、タブレットパソコン、ラップトップパソコン、電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグハイブリッド自動車、電気自転車、無人飛行機(ドローン)、電力貯蔵装置、無停電電源供給装置などのように二次電池パックから電力の供給を受ける多様な装置を言う。
【0204】
また、本発明による二次電池の充電装置は、二次電池の充電と放電を制御する二次電池管理システム(Battery Management System)に含まれ得る。
【0205】
本発明の多様な実施形態の説明において、「部」と称される構成要素は物理的に区分される要素ではなく、機能的に区分される要素として理解されねばならない。したがって、それぞれの構成要素は他の構成要素と選択的に統合されるか、または、それぞれの構成要素が制御ロジックの効率的な実行のためにサブ構成要素に分割され得る。しかし、構成要素が統合または分割されても機能の同一性が認定されれば、統合または分割された構成要素も本発明の範囲内であると解釈されることは当業者にとって自明である。
【0206】
以上のように、本発明を限定された実施形態と図面によって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の属する技術分野で通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0207】
本発明による二次電池の充電装置及び方法は、副反応速度モデルを有するROMを用いて設計されたものであって、カットオフ電圧、アノードでの表面イオン濃度の飽和、最大副反応速度が充電電流の制限に用いられる。本発明は、伝統的なCC/CV充電方法と比べたとき、充電時間を略半分ほど減少させる。アノードでの表面イオン濃度の制限条件は容量と出力の退化防止に役立つ。表面イオン濃度と副反応速度によって制限された充電方法は、充電時間と退化の点でテストされた充電方法のうち最も優れる。