IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エッフェ・イ・エッセ − ファッブリカ・イタリアーナ・シンテテイチ・ソチエタ・ペル・アツィオーニの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】ドロキシドパ製造のための酵素法
(51)【国際特許分類】
   C12P 13/22 20060101AFI20220531BHJP
   C07C 229/36 20060101ALI20220531BHJP
   C07C 233/51 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
C12P13/22 Z
C07C229/36
C07C233/51
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020570937
(86)(22)【出願日】2019-06-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2019064979
(87)【国際公開番号】W WO2019243087
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-02-16
(31)【優先権主張番号】18179043.7
(32)【優先日】2018-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514312790
【氏名又は名称】エッフェ・イ・エッセ - ファッブリカ・イタリアーナ・シンテテイチ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】F.I.S. - Fabbrica Italiana Sintetici S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ステファーノ・フォガル
(72)【発明者】
【氏名】パオロ・スタービレ
(72)【発明者】
【氏名】ピエルルイージ・パドヴァン
(72)【発明者】
【氏名】マッテオ・デ・ポーリ
(72)【発明者】
【氏名】アンジェロ・レステッリ
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】特許第2778103(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2017/0335357(US,A1)
【文献】Journal of Organic Chemistry, 2012, Vol.77,pp.8797-8801
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 13/00
PubMed
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
のドロキシドパまたはその塩の製造方法であって、
A) ケトレダクターゼ酵素を利用して、式(II)
【化2】
〔式中、R、Rは独立して水素またはアセチルであり、Rは水素またはC-C直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり、Rは水素またはアミン保護基である。〕
の化合物を酵素還元して、式(III)
【化3】
〔式中、R、R、R、Rは上記と同じ意味を有する;
。〕
の化合物を得て、
B) 工程a)で得た式(III)の化合物を変換して、式(I)のドロキシドパを得る
工程を含む、方法。
【請求項2】
ケトレダクターゼ酵素がKRED(登録商標) 130である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(II)および式(III)の化合物において、Rがエチルまたはメチルである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
式(II)および式(III)の化合物において、Rがテルブチルカルバメート、ベンジルオキシカルボニル、メチルカルバメートまたはエチルカルバメートである、請求項1~3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
式(II)および式(III)の化合物において、Rがエチルであり、Rがテルブチルカルバメートである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
工程B)がRおよび/またはRのアセチルから水素への変換の工程を含む、請求項1~5の何れかに記載の方法。
【請求項7】
工程B)がRのC-C直鎖または分枝鎖アルキル基から水素への変換の工程を含む、請求項1~6の何れかに記載の方法。
【請求項8】
工程B)がRのアミン保護基から水素への変換の工程を含む、請求項1~7の何れかに記載の方法。
【請求項9】
式(III)
【化4】
〔式中、R、Rが独立して水素またはアセチルであり、Rが水素またはC-C直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり、Rが水素またはアミン保護基である。〕
の化合物の製造方法であって、ケトレダクターゼ酵素を用いる、式(II)
【化5】
〔式中、R、R、R、Rが上記と同じ意味を有する。〕
の化合物を酵素還元する工程を含む、方法。
【請求項10】
式(II)
【化6】
〔式中、R、Rが独立して水素またはアセチルであり、Rが水素またはC-C直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり、Rが水素またはアミン保護基である。〕
の化合物の、ケトレダクターゼ酵素を使用する、式(III)
【化7】
〔式中、R、R、R、Rが上記と同じ意味を有する。〕
の化合物の製造
または式(I)
【化8】
のドロキシドパまたはその塩の製造における使用。
【請求項11】
ケトレダクターゼ酵素の、式(II)
【化9】
〔式中、R、Rが独立して水素またはアセチルであり、Rが水素またはC-C直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり、Rが水素またはアミン保護基である。〕
の化合物を酵素還元して、式(III)
【化10】
〔式中、R、R、R、Rが上記と同じ意味を有する。〕
の化合物を得る
または式(I)
【化11】
のドロキシドパまたはその塩を得るための、使用。
【請求項12】
ケトレダクターゼ酵素がKRED(登録商標) 130である、請求項11に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、酵素還元を用いるドロキシドパの製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
ドロキシドパは化学的に(2S,3R)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシプロパン酸として知られ、下式(I)により構造的に表される。それはまたL-threo-ジヒドロキシフェニルセリン、L-threo-DOPS、L-DOPSとしても知られる。ドロキシドパは、経口投与用の100mg、200mgおよび300mg用量のカプセルとしてNorthera(登録商標)として商業的に入手可能である。
【化1】
【0003】
ドロキシドパは経口で活性な合成ノルエピネフリン前駆体であり、最初は1989年に日本でパーキンソン病に付随するすくみ足または立ち眩みの経口処置ならびにシャイドレーガー症候群に付随する起立性低血圧、失神または立ち眩みおよび家族性アミロイドポリニューロパチーの処置に対して上市された。
【0004】
2011年、本製品は米国で承認申請され、2014年にNorthera(登録商標)は、原発性自律神経失調症、ドーパミンベータ-ヒドロキシラーゼ欠損および非糖尿病性自律神経系ニューロパチーが原因の症候性神経原性起立性低血圧を有する成人患者における起立性めまい、意識朦朧または「ブラックアウトしそうな予感」の処置について承認された。
【0005】
ドロキシドパは枯渇したノルエピネフリンを補給し、末梢神経系ニューロンへのノルエピネフリン再取り込みを可能とする。この再取り込みが、続いて、受容体を血管収縮させるように(far)刺激し、症候性神経原性起立性低血圧患者の生理学的改善をもたらす。
【0006】
うつ病などの他の疾患における有効性も示されている。
【0007】
ドロキシドパは、ドーパ脱炭酸酵素により、体中に広範に分布されるノルエピネフリンに直接代謝される合成アミノ酸アナログである。
【0008】
その化学調製は、一般に多工程合成を含む。
【0009】
ドロキシドパは、米国特許3,920,728(以後US’728特許と称する)に開示されている。US’728特許は、(i)3,4-ジベンジルオキシベンズアルデヒドとグリシンの反応、続く酢酸ナトリウム三水和物およびジエチルアミンでの処理によりラセミthreo/erythro-3-(3,4-ジベンジルオキシフェニル)-セリンを得て;(ii)工程(i)で得た化合物をカルボベンズオキシクロライドで処理してラセミthreo/erythro-3-(3,4-ジベンジルオキシフェニル)-N-カルボベンズオキシセリンを得て;(iii)工程(ii)で得た化合物をジシクロヘキシルアミンで処理してラセミthreo-3-(3,4-ジベンジルオキシフェニル)-N-カルボベンズオキシセリンジシクロヘキシルアミン塩を得て、これを、酢酸エチル存在下、HCIガスで処理してラセミthreo-3-(3,4-ジベンジルオキシフェニル)-N-カルボベンズオキシセリンを得て;(iv)工程(iii)で得た化合物を(+)-エフェドリンで処理してL-threo-3-(3,4-ジベンジルオキシフェニル)-N-カルボベンズオキシセリンの(+)-エフェドリン塩を得て;(v)工程(iv)で得た化合物を加水分解してL-threo-3-(3,4-ジベンジルオキシフェニル)-N-カルボベンズオキシセリンを得て、そして(vi)工程(v)で得た化合物をPd/Cで還元して、L-threo-3-(3,4-ジベンジルオキシフェニル)-セリンを得る工程を含む、ドロキシドパの製造法も提供する。US’728特許に開示の方法は、商業的製造のための複雑かつ長い方法である。また、threo/erythro異性体を得るためのキラル分割は、50%分の望ましくない異性体の喪失をもたらし、これは本方法の全体的収率に影響する。
【0010】
一般に、本合成における1以上の必須工程では、反応の標的部位以外の反応性部位を一時的に保護する必要がある。
【0011】
故に、ドロキシドパの合成は、一般に少なくとも1つの保護および付随する脱保護工程を含む。例えば、カテコール部分、アミン部分および/またはカルボキシル部分は、ドロキシドパの製造に使用する合成経路および反応剤により、保護および続く脱保護を必要とし得る。
【0012】
ドロキシドパへのいくつかの合成および酵素アプローチが文献に記載されている。
【0013】
その大部分は、threo-DOPSのジアステレオマー的に富化された混合物を得るための、簡便に保護された3,4-ジヒドロキシベンズアルデヒドとグリシンのカップリングを必要とする。
【0014】
このアプローチは、日本特許出願特開2007-190009(A)に記載され、グリシンまたはその塩と、3,4-ジヒドロキシベンズアルデヒドのトレオニンアルドラーゼをカップリングさせて、対応するエナンチオー的に富化されたアミノ酸誘導体を形成させることを必要とする。
【0015】
別法が特許出願EP0112606A1に記載されており、立体選択的ではなく、threo/erythro混合物を分離するために分別結晶を利用する。
【0016】
保護されたthreo-DOPSのジアステレオマー的に富化された混合物は、それぞれ、特許US4319040およびUS4480109に詳述のとおり、threo-2-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-N-カルボベンジルオキシセリンまたはthreo-2-(3,4-ジベンジルオキシ-フェニル)-N-カルボベンジルオキシセリン、のラセミ混合物の光学的分割により、光学活性D-およびL-threo-DOPSに変換され得る。所望のL-エナンチオマーを得るためのこれらラセミ混合物の光学分割後、ドロキシドパを得るために、メチレンジオキシ基またはベンジル基をカテコール部分から除去しなければならず、カルボベンジルオキシ(Cbz)基をアミン基から除去しなければならない。
【0017】
米国特許4562263は、L-N-フタロイル-3-(3,4-メチレンジオキシフェニル)セリンを得るために、ストリキニン、シンコニジン、L-ノルエフェドリン、S-2-アミノ-1,1-ジフェニル-l-プロパノールおよびL-3-ヒドロキシ-3-(4-ニトロフェニル)-2-アミノ-l-プロパノールから選択される光学活性アミンを使用して、N-フタロイル-3-(3,4-メチレンジオキシフェニル)セリンを光学分割し、得られた化合物とルイス酸を反応させてN-フタロイル-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-セリンを形成させ;次いで、これをヒドラジンを用いるフタロイル基の除去により脱保護して、L-threo-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-セリンを得ることを含むドロキシドパの製造を記載する。この方法は、異性体分離のための錯化剤(complex agent)の使用を含み、また所望の異性体が<50%となる。また、フタロイル基の脱保護に使用されるヒドラジンは遺伝毒性であることが知られ、よって、最終生成物から微量のヒドラジンを除去することが必要である。
【0018】
特許出願EP201039A1に記載の別アプローチによると、threo-2-(3,4-ジベンジルオキシ-フェニル)-N-アセチルセリンのラセミ混合物を、L-アミノアシラーゼ処理によりL-threo-2-(3,4-ジベンジルオキシ-フェニル)-セリンに変換できる。
【0019】
上記合成経路の全てと関連する欠点は、エナンチオマー的に純粋な最終生成物の到達可能な最大収率を50%とする、エナンチオ選択的酵素または光学活性アミンを使用するラセミ出発物質の変換である。
【0020】
分割剤の使用は方法を高価なものとする。分割剤の一部リサイクルは実行可能ではあるが、このようなリサイクルは、付加的工程を必要とするため高価であり、廃棄物発生とも関連する。望ましくないエナンチオマーはリサイクルできず、廃棄される。
【0021】
この収率は、高キラル純度(>95%エナンチオマー過剰)の必要性によりさらに低下し得る。
【0022】
ドロキシドパの立体選択的製造のための別法は特許出願EP375554A1に記載されている。これによると、2箇所の立体中心が野依型の動的速度論的分割を伴う不斉水素化(AH-DKR)と同時に導入される。
【0023】
本工程は、不斉水素化に用いられる最も安価な遷移金属(ルテニウム)およびキラルホスフィン(Binap)により触媒されるため、特に興味深い。
【0024】
しかしながら、100バールの水素圧は通常の工業用容器の範囲外であり;報告される反応時間(ほぼ1週間)は非実際的であり;最良の溶媒は(環境的懸念のため避けるべきである)ジクロロメタンであり;そしてメチレンジオキシ部分の脱保護は大過剰のAIClまたはAlBrを必要とするため、提案される条件は、ドロキシドパの工業的製造に好都合に適するものではない。
【0025】
これら先行文献法は、それ故に、遺伝毒性剤の使用による反応工程の実現不可能性および所望の異性体を低収率で提供する、方法の複雑かつ長い性質により、商業的製造には不利である。
【0026】
故に、効率的かつより特異的方法で所望のL-threo異性体を提供する、良好な合成経路の開発が、明らかに必要とされる。
【0027】
故に、所望のL-threo異性体を得るためにキラル分割を含む合成過程を回避し、それにより、本発明の方法を単純で、効率的で、費用効果が高くかつ産業的に実行可能な方法とする、ドロキシドパの製造を開発する必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
発明の概要
本発明が取り組む課題は、それ故に、エナンチオ選択的方法を介する、式(I)により表される化合物であるドロキシドパのL-threo異性体の製造のためのより良い方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0029】
この課題は、添付する特許請求の範囲に示すドロキシドパの製造法により解決され、その定義は、本記載の必須部分である。
【0030】
特に、本発明は、式(II)
【化2】
〔式中、R、Rは独立して水素、アセチルであり、Rは水素、C-C直鎖または分枝鎖アルキル基であり、Rは水素またはアミン保護基である。〕
の化合物の酵素還元を用いる活性成分ドロキシドパの製造法を提供する。
【0031】
好ましくは、該酵素還元は、KRED(登録商標) 130なる名称のケトレダクターゼ酵素により実施される。
【0032】
さらなる態様において、本発明は、式(II)の化合物の酵素還元のためのケトレダクターゼの使用を提供する。
【0033】
本発明の目的は、危険な反応剤の使用を回避し、医薬使用に適切な純度で所望の化合物を提供する、高い収率および立体制御レベルにより特徴付けられる、ドロキシドパまたはその合成に有用な中間体を製造する化学酵素方法の提供である。
【0034】
実施態様の記載
本発明の目的は、式(I)
【化3】
のドロキシドパまたはその塩の製造方法であって、
A) ケトレダクターゼ酵素を利用して、式(II)
【化4】
〔式中、R、Rは独立して水素またはアセチルであり、Rは水素またはC-C直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり、Rは水素またはアミン保護基である。〕
の化合物を酵素還元して、式(III)
【化5】
〔式中、R、R、R、Rは上記と同じ意味を有する。〕
の化合物を得て、
B) 工程a)で得た式(III)の化合物を変換して、式(I)のドロキシドパを得る
工程を含む、方法である。
【0035】
本発明によると、本方法は、式(I)
【化6】
のL-threo-3,4-ジヒドロキシフェニルセリンを提供する。
【0036】
式(I)の化合物は、2つのステレオジェン炭素、すなわち、ヒドロキシル基に結合したCおよびアミノ基に結合したCで、それぞれRおよびSの配置を有する。従って、(2S,3R)-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2-アミノ-3-ヒドロキシプロパン酸なる名称である。
【0037】
式(II)および(III)の化合物の別の実施態様において、RおよびRは独立してメチル、ベンジルまたは一体となって環を形成するC-Cアルキル基であり得る。
【0038】
好ましい実施態様において、式(II)および(III)の化合物において、Rはエチルまたはメチルである。より好ましいRはエチルである。
【0039】
故に、直鎖または分枝鎖C-Cアルキルの定義は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチルも含む。
【0040】
は、水素または、ベンジル、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、フェニルスルホニル、トリルスルホニル、メチルスルホニル、(CO)ORまたは(CO)Rからなる群から選択されるアミン保護基であってよく、ここで、RはC-C直鎖または分枝鎖アルキルであるかまたはRはアリール-C0-4アルキルまたはC0-4アルキル-(非置換または置換アリール)である。
【0041】
の直鎖または分枝鎖C1-5アルキル基は、非置換であるかまたはヒドロキシルおよびC1-5アルコキシから選択される1個、2個または3個の置換基で置換もされ得る。
【0042】
故に、直鎖または分枝鎖C-Cアルキルの定義は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピルを含む。
【0043】
好ましいR基は、ピバロイル、t-ブチルオキシカルボニル(同義:tert-ブチルオキシカルボニル、Boc、テルブチルカルバメート)、メチルカルバメート、エチルカルバメートまたはベンジルオキシカルボニル(ZまたはCbz)である。より好ましいR基は、テルブチルカルバメート、メチルカルバメート、エチルカルバメートまたはベンジルオキシカルボニル(ZまたはCbz)である。
【0044】
好ましい実施態様によると、式(II)および(III)の化合物において、Rはエチルであり、Rはテルブチルカルバメートである。
【0045】
ケトレダクターゼ酵素(略KRED)により、ケト基の酵素還元と、側炭素の立体中心の同時の産生が実施できることが、実際驚くべきことに判明した。
【0046】
本酵素はさらにエナンチオ選択的還元であり、実際および驚くべきことに、アミノ基に結合する隣接炭素のエナンチオ選択を誘導する。
【0047】
本発明のある実施態様において、式(II)の化合物は、還元酵素、好ましくはケトレダクターゼ(KRED)またはカルボニルレダクターゼなどのキラル還元剤を使用して、好ましくは式(III)の化合物に還元される。好ましくは、キラル還元剤はKRED酵素である。
【0048】
EC 1.1.1.184に属するKRED酵素は、対応するプロステレオメリ(pro-stereoisomeri)ケトン基質からのおよび対応するラセミケトン基質の立体特異的還元による光学活性アルコールの合成に有用である。
【0049】
KRED酵素は、一般にケトン基質を対応するアルコール生成物に変換するが、逆反応である、アルコール基質の対応するケトン生成物への酸化も触媒し得る。KREDなどの酵素によるケトンの還元およびアルコールの酸化は、一般に補因子を必要とする。
【0050】
一般に、還元工程は、ケト還元のための補因子および所望により補因子再生系の存在下、式(II)の化合物とケトレダクターゼ酵素の存在下、実施される。
【0051】
ケトレダクターゼ酵素は、例えば、Codexis, Inc(USA)から商業的に入手可能である。
【0052】
KREDは、広範囲の細菌および酵母に見ることができ、レビューのために、Kraus and Waldman, Enzyme' catalysis in organic synthesis, Vols. 1 and 2.VCH Weinheim 1995; Faber, K., Biotransformations in organic chemistry, 4th Ed. Springer, Berlin Heidelberg New York. 2000; Hummel and Kuia, 1989, Eur. J. Biochem. 184: 1-13. Several KRED gene and enzyme sequences have been reported, e.g., Candida magnoliae (Genbank Ace. No. JC7338; GL 1 1360538) Candida parapsilosis (Genbank Ace. No. BAA24528. l; GI:2815409), Sporobolomyces salmonicolor (Genbank Ace. No. AF160799;GL653973)。
【0053】
KREDは野生型またはバリアント酵素であり得る。野生型およびバリアントKRED酵素の配列は、引用により本明細書に包含させるWO2005/017135に提供される。KRED酵素は商業的に入手可能であり、例えば、Codexisから提供される。これらの例は、KRED-101、KRED-119、KRED-130、KRED-NADH-101、KRED.NAbff:.110、KRED-Pl-A04、KRED-Pl-B02、KRED-Pl-BOS、KRED-Pl-B05、KRED-Pl-B10、KRED-Pl-B12、KRED-Pl-COl、KRED-Pl-H08、KRED-Pl-HlO、KRED-P2-B02、KRED-P2-C02、KRED-P2-Cl 1、KRED-P2-D03、KRED-P2-Dl 1、KRED-P2-D12、KRED-P2-G03、KRED-P2-H07、KRED-P3-B03、KRED-P3-G09、KRED-P3-H12およびこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。最も好ましくは、酵素はKRED 130である。
【0054】
ある好ましい実施態様において、KREDはKRED(登録商標) 130である。
【0055】
好ましい実施態様によると、本発明の酵素還元は、ケトレダクターゼKRED(登録商標) 130により実施され、式(II)の化合物において、Rはエチルであり、Rはテルブチルカルバメートである。
【0056】
好ましくは、ケトレダクターゼは単離される。ケトレダクターゼは、哺乳動物、糸状菌、酵母および細菌などのあらゆる宿主から分離され得る。NADH依存性ケトレダクターゼの単離、精製および特徴づけは、例えば、Kosjek et al., Purification and Characterization of a Chemotolerant Alcohol Dehydrogenase Applicable to Coupled Redox Reactions,. Biotechnology and Bioengineering, 86:55-62 (2004)に記載される。
【0057】
好ましくは、ケトレダクターゼは合成される。ケトレダクターゼは化学合成または組み換え手段を使用して合成され得る。ケトレダクターゼの化学的および組み換え産生は、例えば、EP0918090(A2)に記載される。好ましくは、ケトレダクターゼは、大腸菌(Escherichia coli)における組み換え手段を使用して合成される。好ましくは、ケトレダクターゼは精製され、好ましくは約90%以上の純度、より好ましくは約95%以上の純度を有する。好ましくは、ケトレダクターゼは、実質的に無細胞である。
【0058】
ここで使用する用語「補因子」は、ケトレダクターゼ酵素と組み合わせて作動する非タンパク質化合物をいう。ケトレダクターゼ酵素との使用に適する補因子は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート(NADP+)、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート(NADPH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)および還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)を含むが、これらに限定されない。一般に、補因子の還元形態を、反応混合物に加える。
【0059】
KRED酵素は、しばしば、リン酸化されたまたはリン酸化されていない補因子を使用し得る。
【0060】
KRED酵素は、種々のケト化合物のキラルアルコール生成物への変換のための化学的方法の代わりに使用され得る。これらの生体触媒変換は、生体触媒ケトン還元のためにケトレダクターゼを発現する細胞全体または、特に細胞全体における複数のケトレダクターゼの存在が、エナンチオマー純度および所望の生成物の収率に悪影響を及ぼす場合、精製酵素を用いることができる。インビトロ適用のために、グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)およびギ酸デヒドロゲナーゼなどの補因子(NADHまたはNADPH)再生酵素が、一般にケトレダクターゼと共に使用される。
【0061】
有用な化学的化合物の製造のための生体触媒過程における天然に存在するまたは改変KRED酵素の使用を説明する例は、4-クロロアセトアセテートエステルの不斉還元(Zhou, J. Am. Chem. Soc. 1983 105:5925-5926; Santaniello, J. Chem. Res. (S) 1984:132-133; 米国特許5,559,030;米国特許5,700,670および米国特許5,891,685)、ジオキソカルボン酸の還元(例えば、米国特許6,399,339)、tert-ブチル(S)-クロロ-5-ヒドロキシ-3-オキソヘキサノエートの還元(例えば、米国特許6,645,746およびWO01/40450)、ピロロトリアジンベースの化合物の還元(例えば、米国出願2006/0286646);置換アセトフェノンの還元(例えば、米国特許6,800,477);およびケトチオランの還元(WO2005/054491)を含む。
【0062】
数種のKRED遺伝子および酵素配列が報告されており、カンジダ・マグノリアエ(Candida magnoliae)(Genbank Ace. No. JC7338; GI: 11360538);カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)(Genbank Ace. No. BAA24528.1; Gl:2815409)、 スポロボロミセス・サルモニカラー(Sporobolomyces salmonicolor)(Genbank Ace. No. AF160799; Gl:6539734); ラクトバチルス・ケフィア(Lactobacillus kefir)(Genbank Ace. No. AAP94029.1; GI: 33112056); ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)(Genbank Ace. No. 1NXQ_A; GI: 30749782); イグジォバクテリウム・アセチリカム(Exiguobacterium acetylicum)(Genbank Ace. No. BAD32703.1)およびサーモアナエロバクター・ブロッキイ(Thermoanaerobium brockii)(Genbank Ace. No. P14941; GI: 1771790)を含む。
【0063】
化合物(II)から化合物(III)へのKRED触媒還元は、電子ドナーが溶液に存在することを必要とする。一般に、補因子がKRED還元反応で電子ドナーとして使用される。補因子は、本方法でKREDおよび/またはグルコースデヒドロゲナーゼ(略GDH)と組み合わせて作動される。適当な補因子は、NADP+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート)、NADPH(NADP+の還元形態)、NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)およびNADH(NAD+の還元形態)を含むが、これらに限定されない。一般に、還元形態の補因子が反応混合物に加えられる。従って、NADPH補因子またはNADH補因子から選択される電子ドナーが存在する、本発明の方法が実施される。ある実施態様において、反応条件が、約0.03~0.5g/L、約0.05~0.3g/L、約0.1~0.2g/L、約0.5g/L、約0.1g/Lまたは約0.2g/LのNADHまたはNADPH補因子濃度を含む、方法が実施され得る。
【0064】
本方法のある実施態様において、補因子リサイクル系を、反応において産生されたNADP+/NAD+から(form)補因子NADPH/NADHの再生のために使用する。補因子リサイクル系は、酸化形態の補因子を還元し(例えば、NADP+からNADPH)、それによりKRED触媒の継続を可能とする一組の反応剤をいう。
【0065】
補因子リサイクル系は、第二の基質および、還元剤による酸化形態の補因子の還元を触媒する触媒、例えば、基質グルコースおよび酵素GDHをさらに含み得る。
【0066】
NAD+またはNADP+からそれぞれNADHまたはNADPHを再生するための補因子リサイクル系は当分野で知られ、ここに記載する方法において使用され得る。用い得る適当な補因子リサイクル系の例は、グルコースおよびグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)、ギ酸およびギ酸デヒドロゲナーゼ(FDH)、グルコース-6-ホスフェートおよびグルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ、二級アルコールおよび第二アラルコールデヒドロゲナーゼ、亜リン酸および亜リン酸デヒドロゲナーゼ、分子水素およびヒドロゲナーゼなどを含むが、これらに限定されない。
【0067】
適当な二級アルコールは、低級二級アルコールおよびアリール-アルキルカルビノールを含む。低級二級アルコールの例は、イソプロパノール、2-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、3,3-ジメチル-2-ブタノールなどを含む。特に好ましい実施態様において、二級アルコールはイソプロピルアルコール(IPA)である。適当なアリール-アルキルカルビノールは非置換および置換1-アリールエタノールを含む。
【0068】
これらの系は、補因子としてNADP+/NADPHまたはNAD+/NADHと組み合わせて使用し得る。
【0069】
ヒドロゲナーゼを使用する電気化学的再生も、補因子再生系として使用し得る。例えば、米国特許5,538,867および6,495,023参照(両者とも引用により本明細書に包含させる)。
【0070】
金属触媒および還元剤(例えば、分子水素またはギ酸)を含む化学的補因子再生系も、補因子としてNADP+/NADPHまたはNAD+/NADHと組み合わせて使用し得る。例えば、PCT公開WO2000/053731参照(引用により本明細書に包含させる)。
【0071】
本発明のある実施態様において、補因子リサイクル系は、それぞれD-グルコース(デキストロース)およびNAD+またはNADP+からグルコン酸およびNADHまたはNADPHへの変換を触媒するNAD+またはNADP+依存的酵素であるグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)を含み得る。ここに記載する方法を実施に際する使用に適するGDH酵素は、天然に存在するGDHおよび天然に存在しないGDHの両者を含む。天然に存在するグルコースデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子は文献に報告され、例えば、Bacillus subtilis 61297 GDH遺伝子、B. cereus ATCC 14579およびB. megateriumである。天然に存在しないGDHは、例えば、変異誘発、指向性進化法などを使用して産生され、PCT公開WO2005/018579およびUS公開2005/0095619および2005/0153417に提供される。
【0072】
ある実施態様において、補因子リサイクル系は、それぞれギ酸およびNAD+またはNADP+の二酸化炭素およびNADHまたはNADPHへの変換を触媒するNAD+またはNADP+依存的酵素である、ギ酸デヒドロゲナーゼ(FDH)を含み得る。
【0073】
ここで使用する用語「ギ酸」は、ギ酸アニオン(HCOO-)、ギ酸(HCOOH)およびこれらの混合物をいう。
【0074】
ここに記載するKRED触媒反応で補因子再生系として使用するのに適するFDHは、天然に存在するおよび天然に存在しないギ酸デヒドロゲナーゼを含む。適当なギ酸デヒドロゲナーゼはPCT公開WO2005/018579に記載される。
【0075】
ギ酸は、塩、一般にアルカリまたはアンモニウム塩(例えば、HCONa、KHCO、NHHCOなど)の形態で、ギ酸、一般に水性ギ酸の形態でまたはこれらの混合物で提供され得る。塩基または緩衝液を使用して、所望のpHを提供し得る。
【0076】
ある実施態様において、補因子再生系は、化合物(II)から化合物(III)への還元を触媒するのと同じKRED酵素を含み得る。このような実施態様において、化合物(II)から化合物(III)への還元をを触媒する同じKREDは、二級アルコールの酸化(例えば、イソプロパノールからアセトン酸化)も触媒し、それ故に、同時にNAD+またはNADP+をNADHまたはNADPHに還元する。従って、ある実施態様において、化合物(II)から化合物(III)へのKRED触媒変換は、二級アルコール(例えば、IPA)の存在下、何らNADPHまたはNADH補因子リサイクルのためのコエンザイム(例えば、GDH)を用いず、溶液中で実施され得る。このような実施態様において、適当な反応条件は、IPA濃度約55~75%(v/v)、NADPHまたはNADH補因子負荷約0.03~0.5g/Lを含み、ここで、KRED自体以外の補因子リサイクル酵素は存在しない。
【0077】
ある実施態様において、補因子リサイクル系およびNADPH補因子に結合したKRED酵素を、化合物(III)を得るための(II)の還元に使用する。(II)から化合物(III)へのKRED触媒還元のための適当な反応条件は下におよび実施例に提供される。
【0078】
酵素還元工程は水性溶媒中で実施される。
【0079】
酵素還元工程は、好ましくは水性溶媒および共溶媒中で実施される。
【0080】
共溶媒は、水溶解度が低い化合物の溶解度の増強を助け、それにより、反応の全体的速度を増加させる。適当な共溶媒は、有機溶媒、例えばメタノール、IPA、1-オクタノール、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、ヘプタン、オクタン、メチルt-ブチルエーテル(MTBE)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(Me-THF)、トルエンなど(これらの混合物を含む)およびイオン性液体、例えば1-エチル-4-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートなどを含む。
【0081】
ある実施態様において、水および水性共溶媒系を含む水性溶媒が使用され得る。
【0082】
共溶媒系の水対有機溶媒比は、一般に約90:10~約95:05(v/v)水対有機溶媒の範囲である。好ましくは、溶媒は反応溶液の総体積の5%を超えない。
【0083】
水性溶媒(水または水性共溶媒系)は、pHが緩衝化されていても、緩衝されていなくてもよい。一般に、還元は約10以下、通常約5~約10の範囲のpHで実施され得る。ある実施態様において、還元は約9以下、通常約5~約9の範囲のpHで実施される。ある実施態様において、還元は約8以下、しばしば、約5~約8の範囲および通常約6~約8の範囲のpHで実施される。還元は約7.8以下または7.5以下のpHでも実施され得る。好ましい実施態様において、還元は中性pH、すなわち約7で実施される。
【0084】
還元反応中、反応混合物のpHは変わり得る。反応混合物のpHは、反応中、酸または塩基を加えることにより、所望のpHまたは所望のpH範囲に維持し得る。あるいは、pHを、緩衝剤を含む水性溶媒の使用により制御し得る。
【0085】
所望のpH範囲に維持するための適当な緩衝液は当分野で知られ、例えば、リン酸緩衝液、トリエタノールアミン緩衝液などを含む。緩衝剤と酸または塩基付加の組み合わせも使用し得る。
【0086】
好ましい実施態様によると、本発明の方法は、リン酸緩衝液存在下、pH7で実施され得る。
【0087】
上記反応の実施に使用し得る他の緩衝液は、例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩緩衝液などである。
【0088】
中和のための適当な塩基は、有機塩基、例えばアミン、アルコキシドなどおよび無機塩基;例えば、水酸化物塩(例えば、NaOH)、重炭酸塩(例えばNaHCO)、炭酸塩(例えばKCO)、塩基性リン酸塩(例えばKHPO、NaPO)などである。
【0089】
pH維持のために反応中に加えるのに適当な酸は、有機酸、例えばカルボン酸、スルホン酸、リン酸など、鉱酸、例えばハロゲン化水素酸(例えば塩酸)、硫酸、リン酸など、酸性塩、例えばリン酸二水素塩(例えば、KHPO)、重硫酸塩(例えば、NaHSO)などを含む。ある実施態様はギ酸を使用し、ギ酸濃度および溶液のpH両者が維持される。
【0090】
還元工程は、一般に約0℃~約75℃の温度範囲で実施される。好ましくは、還元工程は、約10℃~約55℃の温度範囲で実施される。さらに他の実施態様において、約20℃~約45℃の温度範囲で実施される。特に好ましい実施態様において、反応は周囲条件下または室温で実施される。
【0091】
本発明の方法の工程B)は、Rおよび/またはRのアセチルから水素への変換の工程b-1)を含み得る。
【0092】
別の実施態様において、本発明の方法の工程B)は、RおよびRのメチルまたはベンジルまたは一体となって環を形成するC-Cアルキル基から水素への変換を含む工程b-1)を含み得る。
【0093】
本発明の方法の工程B)は、Rのアセチル、メチル、ベンジル、一体となって環を形成するC-Cアルキル基から水素への変換、
すなわち式(IV)
【化7】
の化合物を得るための、工程b-1a)を含んでよい。
【0094】
本発明の方法の工程B)は、Rのアセチル、メチル、ベンジル、一体となって環を形成するC-Cアルキル基から水素への変換、
すなわち式(V)
【化8】
の化合物を得るための、工程b-1b)を含んでよい。
【0095】
本発明の方法の工程B)は、RおよびRのアセチル、メチル、ベンジル、一体となって環を形成するC-Cアルキル基から水素への変換、
すなわち式(VI)
【化9】
の化合物を得るための、工程b-1)を含んでよい。
【0096】
本発明の工程b-1)は、RおよびRがアセチルであるとき、エステル基の加水分解の工程であり得る。
【0097】
本発明の工程b-1)は、RおよびRの水素への変換の工程であってよく、RおよびRの性質によって、当業者の技術常識を使用して、種々に実施でき、その根拠は、表題“Protective Groups in Organic Synthesis” (3rt edition 1999)なるTheodora W Greeneの教科書または表題“Handbook of Reagents for Organic Synthesis - Activating Agents and Protecting Groups”なるAnthony J. Pearsonの教科書に見ることができる。
【0098】
本発明の方法の工程B)は、RのC-C直鎖または分枝鎖アルキル基から水素への変換、すなわち式(VII)
【化10】
の化合物を得るための、工程b-2)を含んでよい。
【0099】
本発明の工程b-2)は、Rから水素への変換(すなわちエステル基の加水分解)の工程であってよい、Rの性質によって、当業者の技術常識を使用して、種々に実施でき、その証拠は、“Protective Groups in Organic Synthesis”なる表題のTheodora W Greeneの教科書または表題“Handbook of Reagents for Organic Synthesis - Activating Agents and Protecting Groups”なるAnthony J. Pearsonの教科書に見ることができる。
【0100】
除去(すなわちRから水素への変換)に適当な方法は、C-C直鎖または分枝鎖アルキル基であるとき、加水分解である。この方法は、式(III)の化合物の、水またはアルコール性溶媒またはそれらの混合物中の塩基溶液(例えばNaOH、KOH、LiOH)での処理を必要とする。
【0101】
本発明の方法の工程B)は、Rのアミン保護基から水素への変換、
すなわち式(VIII)
【化11】
の化合物を得るための、工程b-3)を含んでよい。
【0102】
本発明の方法の工程b-3)は、アミン保護基の開裂の工程であり得る。
【0103】
本発明の方法の工程b-3)は、Rから水素への変換(すなわちアミン保護基の開裂)の工程を含んでよく、Rの性質によって、当業者の技術常識を使用して、種々に実施でき、その証拠は、表題“Protective Groups in Organic Synthesis” (3rd ed. 1999)なるTheodora W Greeneの教科書または表題“Handbook of Reagents for Organic Synthesis - Activating Agents and Protecting Groups” (1999)なるAnthony J. Pearsonの教科書に見ることができる。
【0104】
好ましい実施態様によると、工程b-1)、b-2)およびb-3)は、どのような組み合わせ順でも実施し得る。
【0105】
好ましい実施態様によると、本発明の方法の工程B)は、同時のエステル基の加水分解およびアミン保護基の開裂の工程を含み得る。
【0106】
好ましい実施態様によると、本発明の方法の工程B)は、RのC-C直鎖または分枝鎖アルキル基から水素およびRのアミン保護基から水素への同時の変換の工程;
すなわち、式(IX)
【化12】
の化合物を得るための、工程を含んでよい。
【0107】
好ましい実施態様によると、本発明の方法の工程B)は、同時の:
・RおよびRのアセチル、メチル、ベンジル、一体となって環を形成するC-Cアルキル基から水素への変換;
・RのC-C直鎖または分枝鎖アルキル基から水素への変換;
すなわち式(X)
【化13】
の化合物を得るための、工程により特徴づけられる。
【0108】
好ましい実施態様によると、本発明の方法の工程B)は、同時の:
・RおよびRのアセチル、メチル、ベンジル、一体となって環を形成するC-Cアルキル基から水素への変換;
・Rのアミン保護基から水素への変換;
すなわち式(XI)
【化14】
の化合物を得るための、工程により特徴づけられる。
【0109】
好ましい実施態様によると、本発明の方法の工程B)は同時の:
・RおよびRのアセチルから水素への変換;
・RのC-C直鎖または分枝鎖アルキル基から水素への変換;
すなわち、式(X)の化合物を得るための、工程により特徴づけられる。
【0110】
好ましい実施態様によると、本発明の方法の工程B)は、同時の:
・RおよびRのアセチルから水素への変換;
・Rのアミン保護基から水素への変換;
すなわち式(XI)の化合物を得るための、工程により特徴づけられる。
【0111】
好ましい実施態様によると、本発明の方法の工程B)は、同時の:
・RおよびRのアセチルから水素への変換;
・RのC-C直鎖または分枝鎖アルキル基から水素への変換;
・Rのアミン保護基から水素への変換;
すなわち式(I)
【化15】
の化合物を得るための、工程により特徴づけられる。
【0112】
本発明の方法の工程B)は、結晶化による精製または分割の1以上の工程を含み得る。
【0113】
好ましい実施態様によると、工程B)は、式(III)または(IV)または(V)または(VI)または(VII)または(VIII)または(IX)または(X)または(XI)の化合物の精製または分割の工程b-4)を含み、エナンチオマー過剰の点で効率的富化するための望ましくない異性体の効率的パージを可能とする。
【0114】
本発明の方法は、故に、工程B)の最後に、高光学純度を有するドロキシドパ、すなわち、HPLC A/A%で表して、一般に99.0%(e.e.)より高い、すなわち99.5%より高い光学純度を有するドロキシドパを提供する。
【0115】
好ましくは、本発明の方法は、高光学純度を有するドロキシドパ、すなわち、一般に99.4%(e.e.)より高い、すなわち99.7%より高いHPLC A/A%光学純度を有するドロキシドパを提供する。
【0116】
エナンチオマー過剰または省略形「e.e.」もしくは「ee」は、2つのエナンチオマー間のモル分率の絶対的差として定義され、しばしば、エナンチオマー過剰パーセント、%eeとして表され、これは次の計算%ee=|R-S|/|R+S|×100%により得て、ここで、一エナンチオマーの量はしばしばキラルクロマトグラフィーにより測定され得る。
【0117】
明らかにおよび所望により、本発明の方法を、既に光学精製されているドロキシドパに再適用し、100%の光学純度を有するドロキシドパを製造し得る。
【0118】
50:50~99:1の光学異性体threoおよびerythro間の比率は、重量比として意図され、いずれにせよ、HPLC A/A%により決定された量に対応する。
【0119】
本発明の方法の好ましい実施態様によると、式(I)の化合物は、50/50~90/10、より好ましくは50/50~70/30を含むthreoおよびerythro間(threo/erythro)のジアステレオ異性比を有する。
【0120】
本発明の方法のより好ましい実施態様によると、式(I)の化合物は、threoおよびerythro間(threo/erythro)のジアステレオ異性比70/30を有する。
【0121】
本発明の好ましい実施態様によると、工程b-4)において、化合物(III)または(IV)または(V)または(VI)または(VII)または(VIII)または(IX)または(X)または(XI)の光学異性体比は75:25~85:15であり、なぜならこの異性体比が、本発明の酵素還元法で一般に達成されるものであるからである。
【0122】
当業者の技術常識を使用する、結晶化方法による精製または分割する例の根拠は、日本特許出願特開昭50-049252、特開昭54-036233、特開昭56-029551および特開昭51-032540;欧州特許084928;128684;米国特許3920728に見ることができる。
【0123】
本発明の方法の好ましい実施態様によると、式(I)の化合物を得るための式(II)の化合物の反応は、20%~少なくとも95%の範囲からなる変換で起こる。
【0124】
特に、反応をKREDであるKRED(登録商標) 130を用いて行うとき、変換は少なくとも95%である。
【0125】
特に、式(I)の化合物は、式(II)の化合物の反応をKREDであるKRED(登録商標) 130を用いて実施したとき、threoおよびerythro間(threo/erythro)ジアステレオ異性比70/30を有する。
【0126】
本発明の方法の好ましい実施態様によると、式(I)の化合物は、(threo/erythro)ジアステレオ異性比少なくとも75/30および用いたKREDであるKRED(登録商標) 130を有する。
【0127】
本発明の方法の好ましい実施態様によると、式(III)の化合物を得るための式(II)の化合物の反応の実施は、20%~少なくとも95%の範囲を含む変換となる。
【0128】
特に、反応をKREDであるKRED(登録商標) 130を用いて行うとき、変換は少なくとも95%である。
【0129】
本発明の方法の好ましい実施態様によると、式(III)の化合物は、50/50~90/10、より好ましくは50/50~70/30を含む、threoおよびerythro間のジアステレオ異性比(threo/erythro)を有する。
【0130】
本発明の方法のより好ましい実施態様によると、式(III)の化合物は、threoおよびerythro間(threo/erythro)のジアステレオ異性比70/30を有する。
【0131】
特に、式(III)の化合物は、式(II)の化合物の反応をKREDであるKRED(登録商標) 130を用いて行うとき、threoおよびerythro間(threo/erythro)のジアステレオ異性比70/30を有する。
【0132】
本発明の方法の好ましい実施態様によると、式(III)の化合物は、ジアステレオ異性比少なくとも75/30(threo/erythroおよび用いたKREDであるKRED(登録商標) 130を有する。
【0133】
ジアステレオ異性比は、threo異性体モル分率とerythro異性体モル分率の間の絶対的比として定義され、これは、次の計算比=|Threo|/|Erythro|により得られ、ここで、一エナンチオマーの量はしばしばキラルクロマトグラフィーにより測定され得る。
【0134】
式(III)
【化16】
〔式中、R、Rは独立して水素またはアセチルであり、Rは水素、C-C直鎖または分枝鎖アルキル基であり、Rは水素またはアミン保護基である。〕
の化合物は、故に、
式(II)
【化17】
〔式中、R、R、R、Rは上記と同じ意味を有する。〕
の化合物の、ケトレダクターゼ酵素を用いる酵素還元の工程を含む方法により、製造できる。
【0135】
式(II)
【化18】
〔式中、R、Rは独立して水素またはアセチルであり、Rは水素、C-C直鎖または分枝鎖アルキル基であり、Rは水素またはアミン保護基である。〕
の化合物は、式(III)
【化19】
〔式中、R、R、R、Rは上記と同じ意味を有する。〕
の化合物の製造に;
または式(I)
【化20】
のドロキシドパまたはその塩の製造に使用され得る。
【0136】
ケトレダクターゼを、このように、式(II)
【化21】
〔式中、R、Rは独立して水素またはアセチルであり、Rは水素、C-C直鎖または分枝鎖アルキル基であり、Rは水素またはアミン保護基である。〕
の化合物の酵素還元の実施に使用し、式(III)
【化22】
〔式中、R、R、R、Rは上記と同じ意味を有する。〕
の化合物を提供する
または式(I)
【化23】
のドロキシドパまたはその塩を提供することができる。
【0137】
故に、好ましい実施態様によると、式(II)の化合物の酵素還元の実施に使用するケトレダクターゼはKRED(登録商標) 130である。
【0138】
本発明の方法は、それ故に、また新規中間体、すなわち、式(II)
【化24】
〔式中、R、Rは独立して水素またはアセチルであり、Rは水素、C-C直鎖または分枝鎖アルキル基であり、Rは水素またはアミン保護基である。〕
の化合物も提供する。
【0139】
本発明の方法は、故に、中間体、すなわち式(III)
【化25】
〔R、Rは独立して水素またはアセチルであり、Rは水素、C-C直鎖または分枝鎖アルキル基であり、Rは水素またはアミン保護基である。〕
の化合物を提供するが、
- R、RおよびRが水素であり、Rがメチルである;
- R、RおよびRが水素であり、Rがエチルである;
- RおよびRが水素、アセチルであり、Rはエチルであり、Rがアセチルである;
- R、RおよびRがアセチルであり、Rはエチルである
化合物は例外とする。
【0140】
さらに、酵素還元法は、有機金属系キラル触媒が先行技術で使用されている点で、先行技術と比較して、環境的にも有利である。還元剤としての酵素の使用は、有機金属系キラル触媒の使用と比較して安価である。さらに、既知方法によるキラルアミンを使用する分割は、50%分の望ましくない異性体の喪失をもたらし、故に産業的に適当ではない。
【実施例
【0141】
実験セクション
ケトレダクターゼ酵素は、商業的に広く利用可能であり、例えば、Codexis(USA)については、例えばCodexis(登録商標) KREDスクリーニングキットがある。
【0142】
下式:
【化26】
〔式中、R、Rは独立して水素またはアセチルであり、Rは水素またはC-C直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり、Rは水素またはアミン保護基である。〕
を有する出発物質式(II)の化合物は、既知の先行技術合成法により製造される。
【0143】
式(II)の化合物の製造に関していくつかの方法が、例えば、Kazuishi Makino at all in Journal of the American Chemical Society (2005), 127, (16), 5784-5785; Brinton Seashore-Ludlow at all in Organic Letters (2010), 12, (22), 5274-5277; Zheng Long-Sheng at all in Chemical Communications, 54(3), 283-286; 2018; Guan, Yu-Qing at all in Chemical Communications, 53(58), 8136-8139; 2017; Seashore-Ludlow, Brinton at all in Chemistry A European Journal, 18(23), 7219-7223, 2012に記載されている。
【0144】
体積は、生成物の単位あたりの溶媒体積を意味し、故に、例えば、1体積は、1リットル/1キロまたは1mL/1グラムまたは1マイクロリットル/1マイクログラムである。故に、10体積は、例えば10リットル/1キログラムの物質を意味する。
【0145】
実施例1:およびRはアセチルであり、Rはエチルであり、RはBocである式(II)の化合物の酵素還元におけるCodexis(登録商標) KREDキットの使用。
【化27】
反応を、1mlでバイアル中で実施し、イソプロパノール依存的酵素について一夜、室温で振盪し、反応条件は115.2mM リン酸ナトリウム緩衝液、1.53mM 硫酸マグネシウム、1mM NADP+、10%v/v イソプロパノール、10mg/mlの式(II)の化合物(式中、RおよびRはアセチルであり、Rはエチルであり、RはBocである)、10mg/mlの酵素、pH7であった。
グルコース依存的酵素について、反応条件は128mM リン酸ナトリウム、1.7mM 硫酸マグネシウム、1.1mM NADP+1.1mM NAD+、80mM D-グルコース、4.3U/ml グルコースデヒドロゲナーゼ、10mg/mlの式(II)の化合物(式中、RおよびRはアセチルであり、Rはエチルであり、RはBocである)、pH7であった。
反応物をHPLC-MSで分析して、所望の生成物質量を確認した。キラル純度もHPLCで評価し、threoおよびerythro形態間で観察した。
【0146】
実施例2:およびRはアセチルであり、Rはエチルであり、RはBocである式(II)の化合物の酵素還元による式(I)のドロキシドパBOCの合成。
【化28】
1gの式(II)の化合物(式中、RおよびRはアセチルであり、Rはエチルであり、RはBocである)に、50mlの100mM リン酸緩衝液中、20mgのMgSO、50mgのCDX-901(補因子再生酵素、グルコースデヒドロゲナーゼ)、200mgのKRED-130、50mgのNADP+、1gのグルコース、pH7に加えた。反応を25℃で実施し、自動滴定により0.5M NaOHを加えて、pH7に維持した。64時間反応後、分析により約80A%のドロキシドパBOCが得られた。100mlのEtOAcおよび1gのダイカライトを加えて反応停止させ、酵素を除くために濾過し、有機層を分離した。水層を100mlのEtOAcで2回洗浄した。合わせた有機層を蒸留して、0.7gの粗製のドロキシドパBOCを得た。生成物をHPLC-MS分析により分析した。
【0147】
実施例3:およびRはアセチルであり、Rはエチルであり、RはBocである式(II)の化合物の酵素還元による式(I)のドロキシドパBOCの合成。
【化29】
3.0gの式(II)の化合物(式中、RおよびRはアセチルであり、Rはエチルであり、RはBOCである)に、150mlの100mM リン酸緩衝液中、60mgのMgSO、150mgのCDX-901(補因子再生酵素、グルコースデヒドロゲナーゼ)、600mgのKRED-130、150mgのNADP+、3gのグルコース、pH7の溶液を加えた。反応混合物を25℃で撹拌し、自動滴定により0.5M NaOHを加えて、pH7に維持した。反応15時間および24時間後、150mgのNADP+および150mgのCDX-901を加えた。反応変換をHPLCによりモニターし、120時間後、100mlのEtOAcおよび1gのダイカライトで反応停止させ、次いで、懸濁液を濾過して酵素を除去し、有機層を分離した。水層を50mlのEtOAcで2回洗浄した。合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、蒸留して、3.0gの粗製のドロキシドパBOCを得て、これは自然に結晶化した。単離結晶ドロキシドパBOCの分析は、約60A%であった。
【0148】
実施例4:Boc N-保護基の化学的開裂による式(I)のドロキシドパエチルエステルの合成。
【化30】
実施例3で得た70mgのドロキシドパBOCを1mlのジクロロメタンに溶解した。25℃で1mlのTFAを加え、HPLCにより変換をモニターした。BOC開裂完了後、生成物ドロキシドパエチルエステルを、窒素流で濃縮することにより単離した。
【0149】
実施例5:エチルであるRの化学的加水分解による式(I)のドロキシドパの合成。
【化31】
実施例4で得た25mgの単離ドロキシドパエチルエステルに1mlの3M NaOHを加えた。反応物を2時間、室温で撹拌し、HPLCによりモニターした。加水分解完了後、反応物を10% HCl溶液で中和し、粗製ドロキシドパを窒素流による溶液の濃縮により単離した。単離ドロキシドパをHPLCでジアステレオ異性純度について分析し、ここで、threoドロキシドパ形態とerythroドロキシドパ形態間で70:30A%比が観察された。
【0150】
実施例6:Boc N-保護基の化学的開裂による式(I)のドロキシドパエチルエステルの合成。
【化32】
実施例3で得た1gの粗製ドロキシドパBOCを10mlのジクロロメタンに溶解した。25℃で1,5mlのTFAを加え、変換をHPLCによりモニターした。BOC開裂完了後、NaHCO飽和溶液を加えて、pHを中和した。生成物を濃縮により単離して、約1.3gの粗製ドロキシドパエチルエステルを得た。単離生成物をHPLC-MSにより分析して、質量を確認した(Mw 241)。またジアステレオ異性純度をHPLCにより評価し、ここで、threoおよびerythro形態間で72:28A%比を観察した。
【0151】
実施例7:エチルであるRの化学的加水分解による式(I)のドロキシドパの合成。
【化33】
実施例6からの100mgの単離ドロキシドパエチルエステルに1mlの水を加えた。次いで、100μlの10M NaOHを加え、30分間混合した。反応をHPLCによりモニターした。加水分解完了後、反応物を10% HCl溶液で中和し、粗製ドロキシドパを、窒素流による濃縮により単離した。単離生成物、約100mgを、HPLCによりジアステレオ異性純度を評価するため分析した。threoドロキシドパ形態とerythroドロキシドパ形態の間で70:30A%の比が観察された。
【0152】
実施例8:およびRはアセチルであり、Rはエチルであり、RはBocである式(II)の化合物の酵素還元による式(I)のドロキシドパBOCの合成。
【化34】
pH7の75mlの50mM リン酸緩衝液に、20mgのMgSO、25mgのCDX-901(補因子再生酵素、グルコースデヒドロゲナーゼ)、200mgのKRED-130、75mgのNADP+、1.3gのグルコースを加えた。懸濁液を30℃で混合し、pHを0.5M NaOHで7に調節した。その後、3.25mlのDMSOに溶解した1.5gの式(II)の化合物(式中、RおよびRはアセチルであり、Rはエチルであり、RはBOCである)からなる溶液を、10分間で懸濁液に加えた。30℃で反応させ、自動滴定により0.5M NaOHを加えて、pH7に維持した。反応9時間および17時間後、75mgのNADP+および25mgのCDX-901を加えた。反応変換をHPLCによりモニターし、22後、反応物を濾過して、不溶性物質を除去した。母液に、50mlのEtOAcおよび1,5gのダイカライトを加え、30分間混合し、次いで濾過し、濾液を50mlのEtOAcで洗浄した。得られた溶液に20mlのNaClを加え、有機層を分離した。水層を20mlのEtAcで抽出し、合わせた有機層を30mlの水で洗浄した。有機層を蒸留して残渣を得て、30mlのDCMで2回洗浄(stripped)した。最後に0.9gのドロキシドパBOCを得て、分析した。
【0153】
実施例9:Boc N-保護基の化学的開裂による式(I)のドロキシドパエチルエステルの合成。
【化35】
実施例8で得た0.9gのドロキシドパBOCを10mlのジクロロメタンに溶解した。次いで、得られた溶液に、25℃で1,5mlのTFAを10分間添加した。得られた反応混合物を25℃で1時間撹拌した。変換をHPLCによりモニターした。BOC開裂完了後、NaHCO飽和溶液を加えて、pHを中和した。生成物を蒸発により単離して、約0.9gの粗製ドロキシドパエチルエステルを得た。単離生成物をHPLC-MSにより分析して、質量を確認した(Mw 241)。またジアステレオ異性純度をHPLCにより評価し、推定threo形態とerythro形態の72:28A%比が観察された。
【0154】
実施例10:エチルであるRの化学的加水分解による式(I)のドロキシドパの合成。
【化36】
実施例9で得た0.5mgの単離ドロキシドパエチルエステルに6ml 3M NaOHを加えた。反応混合物を1時間、25℃で撹拌し、変換をHPLCによりモニターした。加水分解完了後、反応物を10% HCl溶液で中和し、粗製ドロキシドパを窒素流により溶液の濃度により単離した。単離生成物、約0.5gをHPLCによりジアステレオ異性体純度評価のために分析し、threoドロキシドパ形態とerythroドロキシドパ形態の間の72:28A%比が観察された。
【0155】
実施例11:反応生成物を分析するための分析方法。
HPLCによる純度、ジアステレオ異性純度の決定およびアッセイ:
クロマトグラフィー条件:
カラム:Luna C18(2) 100Å、150×4.6mm、3.0μm
移動相A:1.0gの1-ヘプタンスルホン酸ナトリウムおよび1.36gのリン酸二水素カリウムを1000mLの水に溶解し、リン酸でpHを2.0に調節した。930mLのこの溶液に、70mLのアセトニトリルを加えた。
検出器:220nmのUV
流速:1.0mL/分
カラム温度:25℃
注入体積:50μL
ランタイム:35分間
希釈剤:MilliQ水。