(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】両面ディスプレイを有する時計
(51)【国際特許分類】
G04B 19/00 20060101AFI20220531BHJP
【FI】
G04B19/00 C
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021020606
(22)【出願日】2021-02-12
【審査請求日】2021-02-12
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507276380
【氏名又は名称】オメガ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・キスリング
(72)【発明者】
【氏名】リュック-アラン・グランジャン
(72)【発明者】
【氏名】ロッコ・カタネーゼ
(72)【発明者】
【氏名】カロリーネ・シュスター
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第00/002100(WO,A1)
【文献】特表2013-533477(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0163391(US,A1)
【文献】国際公開第2019/138058(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 - 99/00
G04F 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面ディスプレイを有する時計(1000)であって、前記時計(1000)は、少なくとも1つのムーブメント(3000)を支える構造(2000)を備え、
かつ、前記構造(2000)の第1の面に第1の表示手段(100)、および前記構造(2000)の前記第1の面とは反対側の第2の面に第2の表示手段(200)を備え、
かつ、第1の共通軸上で同軸であり、第1の共通アーバー(10)と一体である、前記第1の表示手段(100)に含まれている第1の表示部材(1)を前記第1の面に備え、
かつ、前記第2の表示手段(200)に含まれている第2の表示部材(2)を前記第2の面に備える、一体化された少なくとも第1の対の表示部材を備え、前記第1の表示部材(1)の質量の中心、および前記第2の表示部材(2)の質量の中心は、前記第1の共通軸(D1)に対して直角の平面への投影において、前記直角平面の前記第1の共通軸(D1)の投影と整列されるか、または前記第1の共通軸(D1)の投影と一致する、時計(1000)において、前記第1の表示部材(1)および/または前記第2の表示部材(2)は、視覚動画を表示するように配置され、
かつ、バック(5)の上方を移動可能であり、
かつ、完全にではなく部分的に前記バック(5)を覆って、前記バック(5)が前記時計(1000)の使用者には見えない隠された領域(8)と隣接する可視領域(7)を明らかにするマスクの上方、または、前記バック(5)と前記マスク(6)との間の、いずれかにおいて移動可能であり、前記共通軸(D1)に対するその角度位置に応じて前記可視領域(7)または前記隠された領域(8)の上方を移動する、ことを特徴とする時計(1000)。
【請求項2】
前記マスク(6)は、前記第2の面の前記時計を密閉している水晶(60)上に配置されること、前記バック(5)は少なくとも1つの開口(9)を有し、前記開口(9)を通して少なくとも第3の表示部材(3)を見ることができること、
かつ、前記第2の表示部材(2)は、前記バック(5)と前記水晶(60)との間を移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の時計(1000)。
【請求項3】
少なくとも前記バック(5)または前記マスク(6)は、少なくとも1つの開口(9)を有し、前記開口(9)を通して少なくとも第3の表示部材(3)を見ることができることを特徴とする請求項1に記載の時計(1000)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第3の表示部材(3)は、前記ムーブメント(3000)によって、永久的に、または前記時計(1000)の使用者による要求に応じて駆動されることを特徴とする請求項3に記載の時計(1000)。
【請求項5】
前記時計(1000)は、第2の共通軸(D2)上で同軸であり、第2の共通アーバー(20)と一体である、前記第2の表示手段(200)に含まれている前記第3の表示部材(3)を前記第3の面に備え、
かつ、前記第1の表示手段(100)に含まれている第4の表示部材(4)を前記第1の面に備える、一体化された少なくとも第2の対の表示部材を有することを特徴とする請求項3または4に記載の時計(1000)。
【請求項6】
前記第3の表示部材(3)の質量の中心および前記第4の表示部材(4)の質量の中心は、前記第2の共通軸(D2)に対して直角の平面への投影において、前記第2の共通軸(D2)と整列されるか、または前記第2の共通軸(D2)と一致することを特徴とする請求項5に記載の時計(1000)。
【請求項7】
前記第4の表示部材(4)はクロノグラフ表示部材であることを特徴とする請求項5または6に記載の時計(1000)。
【請求項8】
前記バック(5)は、星間空間の表現であり、前記マスク(6)は第1の天体の表現であり、前記第3の表示部材(3)は第2の天体の表現であり、
かつ、前記第2の表示部材(2)は、宇宙飛行士および/または宇宙船の表現であることを特徴とする請求項3~7のいずれか一項に記載の時計(1000)。
【請求項9】
前記バック(5)は前記ムーブメント(3000)を覆っており、
かつ、開口(50)を含み、前記開口(50)は、前記第2の面の前記ムーブメント(3000)から突出している前記第1の共通アーバー(10)上の前記第2の表示部材(2)が取り付けられた前記ムーブメント(3000)上の前記バック(5)の、前記第1の共通軸(D1)の方向における正面挿入を可能にするように配置されていることを特徴とする請求項3~8のいずれか一項に記載の時計(1000)。
【請求項10】
前記第1の表示部材(1)は、宇宙飛行士および/または宇宙船の表現であることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の時計(1000)。
【請求項11】
前記第4の表示部材(4)は針であるか、または宇宙飛行士および/または宇宙船の表現であることを特徴とする請求項5~7のいずれか一項に記載の時計(1000)。
【請求項12】
前記時計(1000)に含まれている一体化された前記対の表示部材の各々について、一体化された前記対を構成している前記2つの表示部材の質量の中心は、それらの共通軸に対して直角の平面への投影において、前記共通軸の投影と整列され、または前記共通軸の投影と一致することを特徴とする請求項5および請求項1~11のいずれか一項に記載の時計(1000)。
【請求項13】
前記時計(1000)は小型時計であり、前記小型時計は、前記第1の面に少なくともクロノグラフ機能のディスプレイを含み、
かつ、前記第2の面に、前記ムーブメント(3000)によって駆動されて連続して、または前記クロノグラフ機能を制御するアクションによる、または前記動画もしくはミニッツ・リピーターもしくは前記時計(1000)に含まれている別の機能を制御するための手段(4000)に対するアクションによる使用者による要求に応じて不連続に、のいずれかで動作する視覚動画を含むことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の時計(1000)。
【請求項14】
前記第1の表示部材(1)の質量の中心および前記第2の表示部材(2)の質量の中心は、前記第1の共通軸(D1)に対して直角の平面への投影において、前記共通軸(D)の投影の両側に存在することを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載の時計(1000)。
【請求項15】
前記第1の表示部材(1)の質量の中心および前記第2の表示部材(2)の質量の中心は、前記第1の共通軸(D1)に対して直角の平面への投影において、前記第1の共通軸(D1)の投影の同じ側に存在することを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載の時計(1000)。
【請求項16】
前記第1の表示部材(1)および前記第2の表示部材(2)は、それぞれ、前記第1の共通軸(D1)に対して、軸に対する第1の慣性および軸に対する第2の慣性を有し、結果として得られる前記第1の表示部材(1)および前記第2の表示部材(2)の全体の慣性であるその合計値は0.55g.mm
2以下であることを特徴とする請求項15に記載の時計(1000)。
【請求項17】
前記第1の慣性および/または前記第2の慣性は0.388g.mm
2以下であることを特徴とする請求項16に記載の時計(1000)。
【請求項18】
前記第1の慣性および/または前記第2の慣性は0.248g.mm
2以下であることを特徴とする請求項17に記載の時計(1000)。
【請求項19】
前記第1の慣性および/または前記第2の慣性は0.14g.mm
2以下であることを特徴とする請求項18に記載の時計(1000)。
【請求項20】
前記第1の表示部材(1)および/または第2の表示部材(2)は、前記共通軸(D1)に対して半径方向に延びている針ボディーを備える針であり、石英ガラスまたは少なくとも部分的に非晶質の材料でできていることを特徴とする請求項1~19のいずれか一項に記載の時計(1000)。
【請求項21】
前記時計(1000)は制御手段(4000)を備えており、前記制御手段(4000)は、前記時計(1000)の使用者による要求に応じて、前記第1の表示部材(1)および前記第2の表示部材(2)を同時に可動する機能を起動することを特徴とする請求項1~20のいずれか一項に記載の時計(1000)。
【請求項22】
前記第1の表示部材(1)および前記第2の表示部材(2)は、異なる機能を表示するように配置されていることを特徴とする請求項1~21のいずれか一項に記載の時計(1000)。
【請求項23】
前記第1の表示部材(1)または前記第2の表示部材(2)はクロノグラフ表示部材であることを特徴とする請求項1~22のいずれか一項に記載の時計(1000)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面ディスプレイを有する時計に関し、時計は、少なくとも1つのムーブメントを支える構造を備え、また、前記構造の第1の面に第1の表示手段、および前記構造の前記第1の面とは反対側の第2の面に第2の表示手段を備え、また、第1の共通軸上で同軸であり、第1の共通アーバーと一体である、前記第1の表示手段に含まれている第1の表示部材を前記第1の面に備え、また、前記第2の表示手段に含まれている第2の表示部材を前記第2の面に備える、一体化された少なくとも第1の対の表示部材を備える。
【0002】
本発明は時計表示機構の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
時計、とりわけ小型時計のための市場は、記念的なモデル、または排他的あるいは限定版のモデルを要求しており、また、手頃な価格のコンプリケーションを同じく要求している。視覚動画は、製造者が提供することができる回答の一部であり、それらは小型時計の名声にしばしば寄与している。いくつかの時計機能は、従来、小型時計の頂部部分のような時計の第1の面に表示されているが、とりわけ小型時計が小さい直径の発振おもりを有している場合、あるいは発振おもりが欠けている場合、反対側の面にコンプリケーションまたは他の機能を取り付けることもしばしば可能であり、さらに、発振おもりは、情報媒体を形成することができることが同じく知られているが、通常、差動デバイスが必要であり、そのために厚さが分厚くなり、また、小型時計の原価が高くなっている。
【0004】
何らかの可動部品の取付けには、厚さと同義の軸受が必要であり、また、追加ディスプレイの追加は、このサイズ制限にしばしば遭遇する。また、とりわけ表示に関しては最適に平衡を取ることができないことがある駆動輪の慣らし中、時計の時間測定性能を妨害しないことも問題である。
【0005】
TECHNOWATCHの名称のスイス特許第CH684769G号は両面クロノグラフを開示しており、2つの文字盤が単一のムーブメントによって駆動される2つの指示器部材とそれぞれ共同している。これらの指示器部材は、それぞれ、クロノメータ目盛りを支えている一方の文字盤の中心から、時間に関連する少なくとも1つの物理的大きさを測定するための同心指示を支えている第2の文字盤の中心へ延びているクロノメータ・アーバーの2つの端部にくさびで留められている。
【0006】
WEBER & COの名称のフランス特許第FR1190944号は、人間バイオリズムを指示するためのデバイスを開示している。4つの円形の同軸または同心の指示器要素がケースの中に配置され、また、それぞれ3つの人間バイオリズム・サイクルおよびカレンダー・サークルの表現を支えており、これらの指示は、読取り目盛りに隣接するケースの開口を通って出現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】スイス特許第CH684769G号
【文献】フランス特許第FR1190944号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、使用者によってしばしば望まれる従来の主ディスプレイの反対側の面への追加ディスプレイの取付けを提案する。より詳細には、本発明は、このような追加ディスプレイを視覚動画の形態で製造するように工夫されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために、本発明は、請求項1に記載の両面ディスプレイを有する時計に関する。
【0010】
以下で説明される図は記念時計の例であり、この場合、宇宙飛行士が同じファミリーからの小型時計を着用した宇宙ミッションの記念日に献呈された小型時計である。
【0011】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むことによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】時間表示とクロノグラフ表示を組み合わせた小型時計の上部部分の略正面図である。
【
図2】大型水晶によって完全に開閉される、同じ小型時計の下部部分を
図1と同様の方法で示す図であり、月宇宙ミッションの動画追憶を見ることができ、水晶の下側には、月面の表現であるマスクが存在し、黒い星のバックの上方は星間空間を表し、この星間空間に、惑星地球の回転表現が、バックの中に配置された開口中に、月マスクによって部分的に隠されて出現し、三角形によって表された宇宙飛行士を運んでいる、五角形の形態の宇宙船は、バックと月マスクとの間を移動し、また、月マスクによって隠されていない場合、宇宙船を見ることができる。
【
図3】小型時計の主軸を通り、また、図の右側部分から見たクロノグラフ・プッシャーを通る、制御手段を形成している、
図1および
図2の小型時計のムーブメントの略部分断面図であり、この図は、様々な車セットが配置される3つの平行軸を示している。 - 中央部分では、第1の軸は小型時計の主軸であり、この主軸の周りを、上部部分では時間針および分針、ならびにここではクロノグラフ秒針であり、第1のアーバーによって固着される第1の表示部材がピボットし、下部部分は、ここでは針である第2の表示部材であり、この図ではその管のみが見られ、また、そのボディーは透明であり、とりわけ石英ガラスまたは類似でできており、また、ボディーの遠位端はこの宇宙船によって形成されている。 - 左側部分では、第2の軸は二次軸であり、この軸の周りを、下部部分では、ここでは惑星地球を表す円板である第3の表示部材を支えている第2のアーバーがピボットし、また、小型時計の上部部分では、9時の位置の小さい文字盤中をピボットする針である第4の表示部材がピボットする。 - 右側分では、第3の軸は、上部部分で見ることができるクロノグラフ車セットの軸である。
【
図4】小型時計の主軸を通り、また、小型時計の巻付けおよび時間設定クラウンを通る部分断面図を
図3と同様の方法で示す図であり、ムーブメントは、上部水晶によって、また、下部水晶によって包まれ、かつ、保護されており、月面を表すマスクは前記下部水晶上に表されている。
【
図5】第2のアーバーの下部端の部分断面図を
図4と同様の方法で示す図であり、惑星地球を表す円板を見ることができ、その開口に挿入されており、この円板と下部水晶との間に見ることができる空間は、第2の表示部材が移動する宇宙船を支える空間である。
【
図6】宇宙船がマスクによって隠され、使用者には見ることができない位置における同じ小型時計の下部部分を
図2と同様の方法で示す図である。
【
図7】星間空間を表すバックの右側の可視領域および左側の隠された領域を示す略図である。
【
図8】星間空間を表す同じバックの略図であり、時計ムーブメントの前に、第1のアーバー上で宇宙船を支えている第2の表示部材が既に取り付けられているムーブメント上のバックの正面挿入のための開口が貼り付けられ、この第2の表示部材は透明な針ボディーを備えており、ここでは既に取り付けられて表されており、また、9時の位置に配向されており、また、このバックは、第2の軸上の惑星地球を表す円板を挿入し、かつ、表示するためのその開口を有している。
【
図9】月面を表すマスクの略図であり、ムーブメント側の下部水晶に貼り付けられている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、両面ディスプレイを有する時計1000、とりわけ小型時計に関する。
【0014】
この時計1000は、少なくとも1つのムーブメント3000を支える構造2000を備え、また、時計1000は、構造2000の第1の面に第1の表示手段100、および構造2000の第1の面とは反対側の第2の面に第2の表示手段200を備えている。
【0015】
時計1000は、第1の共通軸上で同軸であり、第1の共通アーバー10と一体である、第1の表示手段100に含まれている第1の表示部材1を第1の面に含み、また、第2の表示手段200に含まれている第2の表示部材2を第2の面に含む、一体化された少なくとも第1の対の表示部材を備える。
【0016】
第1の表示部材1の質量の中心および第2の表示部材2の質量の中心は、第1の共通軸D1に対して直角の平面への投影において、第1の共通軸D1と整列されるか、または第1の共通軸D1と一致する。
【0017】
より詳細には、第1の表示部材1の質量の中心および第2の表示部材2の質量の中心は、第1の共通軸D1に対して直角の平面への投影において、共通軸Dの両側に存在している。この180°構成は、結果として生じる不平衡を著しく低減するため、有利である。
【0018】
別の構成では、第1の表示部材1の質量の中心および第2の表示部材2の質量の中心は、第1の共通軸D1に対して直角の平面への投影において、第1の共通軸D1の同じ側に存在している。好ましくは、この構成は、表示部材を小さい不平衡で使用するために確保される。
【0019】
より詳細には、第1の表示部材1および第2の表示部材2は、それぞれ、第1の共通軸D1に対して、軸に対する第1の慣性モーメントおよび第2の慣性モーメントを有している。それらのそれぞれの慣性は0.388g.mm2以下である。より詳細には、それらのそれぞれの慣性は0.248g.mm2以下である。
【0020】
より詳細には、第1の慣性は0.14g.mm2以下である。
【0021】
より詳細には、第2の慣性は0.14g.mm2以下である。
【0022】
より詳細には、第1の表示部材1および/または第2の表示部材2は、第1の共通軸D1に対して半径方向に延びている針ボディーを備える針であり、軽合金、とりわけアルミニウムおよび/またはチタンの合金、もしくは石英ガラスまたは少なくとも部分的に非晶質の材料あるいはプレキシ・ガラス、圧入樹脂、等々でできている。
【0023】
好ましくは、結果として得られる、第1の表示部材1および第2の表示部材2の全体の慣性は0.55g.mm2以下である。
【0024】
慣性値を最小化することが有利であり、慣性値は、軸の両側の幾何構造および/または材料を調整することによって相殺することも可能である。
【0025】
詳細には、時計1000は小型時計であり、第1の面に、時間または日付表示などの少なくとも1つの小型時計機能、またはクロノグラフ機能の少なくともディスプレイを有しており、また、第2の面に、ムーブメント3000によって駆動されて連続して、またはクロノグラフ機能などの小型時計機能を制御するアクションによる、または動画もしくはミニッツ・リピーターもしくは時計1000の別の機能を制御するための手段4000に対するアクションによる使用者による要求に応じて不連続に、動作するように配置された視覚動画を有している。
【0026】
したがって、より詳細には、時計1000は制御手段4000を備えており、制御手段4000は、時計1000の使用者による要求に応じて、第1の表示部材1および第2の表示部材2を同時に可動する機能を起動するように配置されている。
【0027】
より詳細には、第1の表示部材1および第2の表示部材2は、異なる機能を表示するように配置されている。
【0028】
より詳細には、第1の表示部材1または第2の表示部材2はクロノグラフ表示部材である。
【0029】
より詳細には、第1の表示部材1および/または第2の表示部材2は、視覚動画を表示するように配置されている。
【0030】
本発明は、特定の非制限の方法で、第1の表示100としてクロノグラフ表示を表し、また、第2の表示として視覚動画表示を表す図によって例証されている。
【0031】
本発明によれば、視覚動画を表示するように配置されている少なくとも第1の表示部材1または第2の表示部材2(図の事例の場合のように)は、バック5の上方を移動することができる。また、視覚動画専用のこの表示部材は、完全にではなく部分的にバック5を覆って、バック5が時計1000の使用者には見えない隠された領域8と隣接する可視領域7を残すマスク6の上方、または、バック5とマスク6との間の、いずれかにおいて移動可能であり、共通軸Dに対するその角度位置に応じて可視領域7または隠された領域8の上方を移動する。
【0032】
より詳細には、マスク6は、第2の面の時計を密閉している水晶60の上に配置され、バック5は少なくとも1つの開口9を含み、この開口9を通して少なくとも第3の表示部材3を見ることができ、また、第2の表示部材2は、バック5と水晶60との間を移動可能である。このマスク6は、シルク・スクリーン印刷、デカール、水晶60の表面処理、塗装、エナメル加工、等々によって製造することができる。また、マスク6は、水晶60の真下に直接置かれた円板からなっていてもよく、この円板は、隠された領域8の上方に不透明または実質的に不透明な部分、および可視領域7を画定している透明または実質的に透明な部分を備えている。
【0033】
より詳細には、少なくともバック5またはマスク6は、少なくとも1つの開口9を有しており、この開口9を通して少なくとも第3の表示部材3を見ることができる。図によって例証されている変形態様では、バック5がこの開口9を有している。
【0034】
第2の表示部材2と同様、この少なくとも1つの第3の表示部材3は、設計に応じて、ムーブメント3000によって永久的に駆動することができ、あるいは制御手段4000に対するアクションによって、時計1000の使用者による要求のみによって駆動することができる。
【0035】
より詳細には、図によって例証されているように、時計1000は、第2の共通軸D2上で同軸であり、第2の共通アーバー20と一体である、第2の表示手段200に含まれている第3の表示部材3を第3の面に備え、また、第1の表示手段100に含まれている第4の表示部材4を第1の面に備える、一体化された少なくとも第2の対の表示部材を備える。
【0036】
より詳細には、第3の表示部材3の質量の中心および第4の表示部材4の質量の中心は、第2の共通軸D2に対して直角の平面への投影において、第2の共通軸D2と整列されるか、または第2の共通軸D2と一致する。
【0037】
より詳細には、第4の表示部材4はクロノグラフ表示部材である。
【0038】
第3の表示部材3および第4の表示部材4に対する許容慣性値および慣性モーメント値は、第1の表示部材1および第2の表示部材2に対して上で説明した許容慣性値および慣性モーメント値と同様である。
【0039】
好ましくは、結果として得られる、第1の表示部材1、第2の表示部材2、第3の表示部材3および第4の表示部材4の全体の慣性は0.55g.mm2以下である。
【0040】
より詳細には、バック5は、星間空間の表現であり、マスク6は、第1の天体、例えば月面の表現であり、第3の表示部材3は、第2の天体、例えば地球の表現であり、また、第2の表示部材2は、宇宙船の中の宇宙飛行士を描写している図から分かるように、宇宙飛行士および/または宇宙船の表現である。
【0041】
より詳細には、バック5はムーブメント3000を覆っており、また、開口50を備えており、この開口50は、第2の面のムーブメント3000から突出している第1の共通アーバー10上の第2の表示部材2が取り付けられたムーブメント3000上のバック5の、第1の共通軸D1の方向における正面挿入を可能にするように配置されている。この開口50は、好ましくは隠された領域8に存在しており、したがって使用者には見えない。この構造は、小型時計の組立てを容易にしている。例証されていない変形態様では、第2の表示部材2は、針の代わりに、パターンを担っている透明円板であってもよいが、その場合、組立てがより複雑になる。
【0042】
より詳細には、第1の表示部材1は大型クロノグラフ秒針であり、第2の表示部材は、宇宙船(五角形)の宇宙飛行士(三角形)を図式的に表している図から分かるように、宇宙飛行士および/または宇宙船の表現である。
【0043】
より詳細には、第4の表示部材4は、9時の位置に置かれた文字盤の上方を動くことができる針であり、変形態様では、この第4の表示部材4は、目盛り、等々を担っている円板であってもよい。
【0044】
より詳細には、時計1000に含まれている一体化された対の表示部材の各々について、この一体化された対を構成している2つの表示部材の質量の中心は、それらの共通軸に対して直角の平面への投影において、共通軸と整列され、または共通軸と一致する。
【0045】
より詳細には、時計1000は小型時計であり、この小型時計は、第1の面に少なくともクロノグラフ機能のディスプレイを含み、また、第2の面に、ムーブメント3000によって駆動されて連続して、またはクロノグラフ機能を制御するアクションによる、またはこの動画もしくはミニッツ・リピーターもしくは時計1000に含まれている別の機能を制御するための手段4000に対するアクションによる使用者による要求に応じて不連続に、のいずれかで動作する視覚動画を含む。
【0046】
本発明は、機械式時計と、クオーツまたは電気あるいは電子機械式時計の両方のために実現することができ、そのディスプレイは、とりわけ回転で動くホイール・セットを含む。
【0047】
本発明は、既存のムーブメントに適合して、妥当なコストで視覚動画を創り出すことを可能にする。使用される厚さまたは深さは、追加アーバーのための軸受を取り付ける必要がなく、追加の厚さは、動画に関するホイール・セットの厚さ、およびそれらの間の安全性のための隙間に制限されている限りにおいて、適度である。
【0048】
したがって、いずれの時計も変形することができ、また、容易にカスタマイズすることができ、これは、否定できない商業上の利点を表している。
【符号の説明】
【0049】
1 第1の表示部材
2 第2の表示部材
3 第3の表示部材
4 第4の表示部材
5 バック
6 マスク
7 可視領域
8 隠された領域
9 開口
10 第1の共通アーバー
20 第2の共通アーバー
50 開口
60 水晶
100 第1の表示手段(第1の表示)
200 第2の表示手段
1000 時計
2000 構造
3000 ムーブメント
4000 制御手段
D1 第1の表示部材および第2の表示部材の共通軸
D2 第2の共通軸